(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】編組カップ形状を有するインプラント送達システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
A61B17/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020190716
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-09-22
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】レイシー・ゴロチョウ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526440(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185230(WO,A1)
【文献】特表2019-519304(JP,A)
【文献】特開2019-111343(JP,A)
【文献】特表2016-501683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
細長い部材と、前記細長い部材の遠位端に配設された係合機構と、を含む係合ワイヤと、
プルワイヤと、
インプラントであって、
カテーテル
の内部に収容される大きさの送達形状から動脈瘤頸部を閉塞する大きさのインプラント形状へと移動可能な編組と、
前記編組に取り付けられた
近位環及び遠位環と、
前記近位環に取り付けられ、開口部が中を貫通する分離機構と、
を含むインプラントと、
前記インプラントに分離可能に取り付けられた送達チューブと、
前記送達チューブに取り付けられたループワイヤと、
を備え、
前記編組が前記送達形状にある時、前記プルワイヤ及び前記細長い部材は前記遠位環を通って延在し、前記係合機構は前記遠位環に対して遠位方向にあり、
前記プルワイヤ及び前記細長い部材は、前記係合機構を前記遠位環に係合させ、前記遠位環を近位に移動させるように近位方向に移動可能であり、
前記編組は、前記遠位環の近位移動時に、前記送達形状から前記インプラント形状へと移動可能であ
り、
前記ループワイヤは、前記分離機構の前記開口部を通って延びる、
システム。
【請求項2】
前記編組が前記送達形状にある時、前記プルワイヤ及び前記細長い部材は前記近位環を通って延び、
前記編組が前記送達形状にある時、前記近位環は前記遠位環に対して前記近位方向にある、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プルワイヤ及び前記細長い部材の一方又は両方が、前記ループワイヤを通って延び、
前記プルワイヤは、前記ループワイヤから出るように移動可能であり、
前記細長い部材及び前記係合機構は、前記プルワイヤが前記ループワイヤから出た後に前記ループワイヤから出るように移動可能であり、
前記ループワイヤは、前記プルワイヤ及び前記細長い部材の両方が前記ループワイヤから出る時に前記開口部から出るように移動可能である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記送達チューブは、前記送達チューブの遠位端に近接したノッチを含み、
前記ノッチ内に前記分離機構が配置されている、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記インプラントの前記近位環と係合する中空プッシュロッドを更に備え、
前記中空プッシュロッドは内径を有し、前記内径は、前記プルワイヤの直径と前記細長い部材の直径との合計よりも大きい、
請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記係合機構の直径が前記遠位環の内径よりも小さい、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記遠位環の内径が、前記プルワイヤの直径と前記細長い部材の直径との合計よりも大きく、
前記遠位環の前記内径は、前記プルワイヤの前記直径と前記係合機構の直径との合計よりも小さい、
請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には医療器具に関し、より具体的には、動脈瘤治療用インプラントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概略的には医療装置に関し、より具体的には、血管障害を治療するためのインプラントシステム及び方法に関する。例えば、本発明は、動脈瘤を治療するためのインプラントシステム及び方法に関してもよい。動脈瘤は、血管壁の弱化に起因する血管の拡張である。拡張は、正常な血流によって加えられる圧力によって発生し、血管の弱くなった部分を膨張させる可能性がある。場合によっては、この膨張は、主血管又は親血管から嚢、又はバルーン状のポリープを突出させる。バルーン状の動脈壁の継続的な成長及び/又は最終的な破裂は、患者に破滅的な結果をもたらす可能性がある。そのため、まだ破裂していない動脈瘤を治療して、出血を防ぐ必要がある。更に、破裂した動脈瘤を治療して、その後の破裂及び/又は更なる損傷を回避することができる。
【0003】
動脈瘤の治療に使用されるいくつかの既知の医療装置及び治療方法としては、動脈瘤の嚢内に1つ以上の塞栓コイルを充填することが挙げられる。いくつかの治療では、プラチナ塞栓コイルは、送達ワイヤから電解分離されてコイル内に電荷を誘発し、これが動脈瘤に血栓効果をもたらし得る。しかしながら、送達システムからコイルを分離するために電気を使用することは、ペースメーカー又は同様の装置を有する患者にとっては望ましくない。他の治療では、塞栓コイルは、送達チューブから機械的に分離される。残念ながら、既知の処置では再開通が問題となりやすく、すなわち、血流が動脈瘤に戻り、コイルを充填した動脈瘤を更に膨張させるおそれがある。加えて、このような既知の装置及び方法では、患者の処置に長時間を要し、それに応じて患者の放射線被ばく量も多くなる。更に、そのような装置及び方法は、動脈瘤の頸部、すなわち、幹血管と動脈瘤の嚢との間の領域を治療しない。
【0004】
別の既知の治療方法には、塞栓コイル及びステントの両方の使用が含まれる。コイルは、上述のように動脈瘤の嚢に送達され、ステントは、ステントの一部が動脈瘤の頸部上に配設されるように親血管内に配置される。ステントは、塞栓コイルが親血管内に突出することを防止するために、広頸動脈瘤の治療でしばしば必要とされる。このような処置は、いくつかの欠点を有する。一つには、種類の異なる2つの装置(すなわち、コイル及びステント)の送達は、より複雑な処置であり、多くの場合、患者の処置時間が長くなる。ステントは、血管のステント内狭窄を引き起こす可能性がある。加えて、患者は、処置後は無期限に抗凝血剤を服用することが必要とされる可能性が高い。更に、そのような装置及び方法は、血管の分岐部(すなわち、隣接する血管枝間)に位置する動脈瘤の治療には適していない。
【0005】
別の既知の装置及び治療方法は、動脈瘤頸部に隣接する幹血管に送達されるフローダイバータの使用を含む。最も一般的には、フローダイバータは、親血管内に動脈瘤頸部を覆うように配置され、血管から動脈瘤内への更なる血流を防止する。現在の処置では、典型的には、血流が動脈瘤から適切に迂回できるようにするためには、動脈瘤ごとに複数のフローダイバータが必要とされる。そのような装置及び治療方法は、上述のステントの使用と同様の欠点を有する。具体的には、フローダイバータは血管の狭窄につながる可能性があり、患者は、処置後は無期限に抗凝血剤を服用することが必要とされる可能性が高い。更に、多くの既知のフローダイバータは、血管の分岐部に位置する動脈瘤の治療には適していない。更に、フローダイバータを使用して治療された患者の長期的な経過観察は、動脈瘤への再開通の確率が高いことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本明細書に記載するように、バルーン状動脈瘤などの血管障害を治療するための改善されたシステム、装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上述の必要性を満たすシステム、装置、及び方法を提供することである。
【0008】
例示的なインプラントシステムが、係合ワイヤと、プルワイヤと、遠位環を上に有するインプラントと、を有することができ、係合ワイヤ及びプルワイヤは、遠位環と係合してインプラントを再成形し、インプラントが再成形された後に遠位環を係合解除するように構成されている。係合ワイヤは、細長い部材と、細長い部材の遠位端に配設された係合機構とを有することができる。インプラントは、カテーテルを横断する大きさの送達形状から動脈瘤頸部を閉塞する大きさのインプラント形状へと移動可能な編組を有することができる。遠位環を編組に取り付けてもよい。編組が送達形状にある時、プルワイヤ及び細長い部材は遠位環を通って延びてもよく、係合機構は遠位環に対して遠位方向にあってもよい。プルワイヤ及び細長い部材は、係合機構を遠位環に係合させ、遠位環を近位に移動させるように近位方向に移動可能であってもよい。編組は、遠位環の近位移動時に、送達形状からインプラント形状へと移動可能であってもよい。
【0009】
いくつかの例では、インプラントは、編組に取り付けられた近位環も含むことができる。編組が送達形状にある時、プルワイヤ及び細長い部材は近位環を通って延びてもよく、近位環は遠位環に対して近位方向に位置してもよい。
【0010】
いくつかの例では、インプラントシステムは、インプラントに分離可能に取り付けられた送達チューブを含んでもよい。システムは、送達チューブに取り付けられたループワイヤを含んでもよい。インプラントは、開口部が中を貫通する分離機構を含んでもよい。ループワイヤは、分離機構の開口部を通って延びてもよい。プルワイヤ及び細長い部材の一方又は両方が、ループワイヤを通って延び、ループワイヤが分離機構の開口部から出ることを阻止してもよい。プルワイヤがループワイヤを通って延びる例では、プルワイヤは、ループワイヤから出るように移動可能であってもよい。加えて又は代替的に、細長い部材がループワイヤを通って延びる例では、細長い部材及び係合機構は、ループワイヤを出るように移動可能であってもよい。ループワイヤは、プルワイヤ及び細長い部材の両方がループワイヤから解放されている時に分離機構の開口部から出るように移動可能であってもよい。
【0011】
いくつかの例では、送達チューブは、遠位端付近にノッチを含むことができる。分離機構は、ノッチ内に配置されてもよい。分離機構は、1つ以上の軸に対して非対称であってもよい。
【0012】
いくつかの例では、インプラントシステムは、インプラントの近位環と係合するように構成された中空プッシュロッドを含むことができる。中空プッシュロッドを、送達チューブ及び分離機構の代わりに、又はそれらに加えて、インプラントを遠位に並進させるために使用することができる。中空プッシュロッドは、プルワイヤの直径と細長い部材の直径との合計よりも大きい内径を有することができる。係合機構は、係合機構が遠位環を通過することを可能にするために、遠位環の内径よりも小さい直径を有してもよい。プルワイヤと係合ワイヤの細長い部材部分の両方が遠位環を通過することができるように、遠位環の内径を、プルワイヤの直径と細長い部材の直径との合計よりも大きくしてもよい。プルワイヤ及び細長い部材の両方を遠位環を通して延ばす時に、係合機構が遠位環を通過することが阻止されるように、遠位環の内径を、プルワイヤの直径と係合機構の直径との合計よりも小さくしてもよい。
【0013】
遠位環及び送達用の管状編組を有するインプラントを構成するための例示的な方法が、順不同で提示される以下の工程のうちの1つ以上を含むことができ、本方法は、ここでは含まれていない追加の工程を含むことができる。本方法は、インプラントの遠位環を管状編組の遠位端上に配置することを含んでもよい。更に、係合機構を、細長い部材の遠位端から半径方向に延びるように配置してもよい。細長い部材を、管状編組のルーメン及び遠位環のルーメンを通して延ばすことができる。更に、係合機構が遠位環のルーメンを通過することをプルワイヤが阻止するように、プルワイヤを管状編組のルーメン及び遠位環のルーメンを通して延ばしてもよい。本方法は、係合機構を近位方向に後退させて、インプラントを動脈瘤内に固定することを更に含むことができる。プルワイヤをインプラントから近位方向に後退させることができる。更に、インプラントが少なくともプルワイヤ及び係合機構から係合解除されて、インプラントが送達チューブから係合解除されるように、係合機構をインプラントから近位方向に後退させることができる。本方法は、細長い部材及びプルワイヤが中を貫通しているインプラントを、係合機構が遠位環に対して遠位方向に配置されるように送達カテーテル内に配置することを更に含んでもよい。近位環を管状編組の近位端に取り付けてもよく、細長い部材及びプルワイヤを、近位環のルーメンを通して延ばしてもよい。
【0014】
いくつかの例では、本方法は、分離機構を近位環に取り付けることと、分離機構を送達チューブに分離可能に取り付けることと、分離機構を送達チューブの遠位端のノッチ内に配置することと、を更に含むことができる。本方法はまた、ループワイヤを送達チューブに取り付けることと、ループワイヤを分離機構の開口部を通して延ばすことと、少なくともプルワイヤ又は細長い部材をループワイヤの開口部を通して延ばすことと、を更に含むことができる。加えて又は代替的に、本方法は、中空プッシュロッドが治療中に近位環を係合解除するように構成されるように、中空プッシュロッドの遠位端を近位環に係合させることを更に含む。
【0015】
動脈瘤を治療するための例示的な方法は、順不同で提示される以下の工程のうちの1つ以上を含むことができ、本方法は、ここでは含まれていない追加の工程を含むことができる。本方法は、遠位環を上に備えるインプラントを送達カテーテル内に配置することを含むことができる。更に、プルワイヤ及び上に係合機構を有する細長い部材を、係合機構が遠位環に対して遠位方向に配置されるように、かつ、係合機構が遠位環のルーメンを通過することをプルワイヤが阻止するように、遠位環のルーメンを通して配置することができる。更に、インプラントは、動脈瘤の頸部を通して延びてもよい。本方法は、プルワイヤが遠位環を通して延ばされる一方で細長い部材を後退させることによって、インプラントを動脈瘤内で再成形することを更に含むことができる。これにより、係合機構が遠位環と係合し、遠位環を近位に移動させる。更に、プルワイヤをインプラントから近位方向に後退させることができる。本方法は、インプラントが少なくともプルワイヤ及び係合機構から係合解除され、インプラントを送達チューブから係合解除するように、係合機構をインプラントから近位方向に後退させることを更に含むことができる。
【0016】
いくつかの例では、本方法は、送達チューブをインプラントに係合させることと、送達チューブ、インプラント、プルワイヤ及び細長い部材を送達カテーテル内に配置することと、送達チューブを遠位に押すことにより、送達カテーテルを通してインプラントを遠位に移動させることと、を更に含むことができる。本方法は、送達チューブに取り付けられたループワイヤの開口部から最初にプルワイヤを、次いで細長い部材を後退させて、ループワイヤがインプラントを係合解除できるようにすることによって、インプラントから送達チューブを係合解除することを更に含むことができる。加えて又は代替的に、本方法は、送達チューブを近位環に対して近位方向に配置することを更に含むことができ、近位環はインプラントの近位端に近接して配設され、送達チューブは中空プッシュロッドである。更に、プルワイヤ及び細長い部材を、中空プッシュロッドのルーメン内及び近位環のルーメン内に配置してもよい。本方法は、中空プッシュロッドを近位環に対して遠位方向に押すことによって、送達カテーテルを通してインプラントを遠位に移動させることを更に含むことができる。更に、インプラントが動脈瘤の頸部を通して延ばされる間及び、細長い部材を後退させることによってインプラントを再成形する間、近位環を送達カテーテル内に維持してもよい。更に、プルワイヤが遠位環を通して延ばされる一方で細長い部材を後退させてもよい。本方法は、プルワイヤが遠位環を通して延ばされる一方で細長い部材を後退させることによってインプラントが再成形される間に、中空プッシュロッドを近位環に係合させることを更に含むことができる。更に、プルワイヤを遠位環から近位方向に後退させて、プルワイヤを遠位環のルーメンから除去することができる。本方法は、プルワイヤが遠位環から除去される間に、係合機構を遠位環を通して近位方向に後退させることを更に含むことができる。更に、プルワイヤを近位環を通して近位方向に後退させてもよい。本方法は、係合機構を近位環を通して近位方向に後退させることと、中空プッシュロッドを近位方向に後退させることにより、中空プッシュロッドを近位環から係合解除することと、を更に含むことができる。
【0017】
いくつかの例では、本方法は、動脈瘤内にインプラントを固定することを更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記及び更なる態様は、
添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することが重視されている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ以上の実装形態を描写している。
【
図1】本発明の態様による、動脈瘤の断面内に展開するシステムの図である。
【
図2A】本発明の態様による、インプラント及び送達システムの例示的な遠位端の図である。
【
図2B】本発明の態様による、インプラント及び送達システムの例示的な遠位端の図である。
【
図2C】本発明の態様による、インプラント及び送達システムの例示的な遠位端の図である。
【
図3A】本発明の態様による例示的なシステムにおける、インプラントから分離する送達システムの断面図である。
【
図3B】本発明の態様による例示的なシステムにおける、インプラントから分離する送達システムの断面図である。
【
図4】本発明の態様による例示的なシステムの断面図である。
【
図5A】それぞれ、本発明の態様による、動脈瘤の外側の所定の状態の例示的なインプラント、動脈瘤の断面内の展開状態のインプラント及び、変形/送達構成の例示的なインプラントの図である。
【
図5B】それぞれ、本発明の態様による、動脈瘤の外側の所定の状態の例示的なインプラント、動脈瘤の断面内の展開状態のインプラント及び、変形/送達構成の例示的なインプラントの図である。
【
図5C】それぞれ、本発明の態様による、動脈瘤の外側の所定の状態の例示的なインプラント、動脈瘤の断面内の展開状態のインプラント及び、変形/送達構成の例示的なインプラントの図である。
【
図6A】本発明の態様による、例示的なシステムの展開シーケンスの図である。
【
図6B】本発明の態様による、例示的なシステムの展開シーケンスの図である。
【
図6C】本発明の態様による、例示的なシステムの展開シーケンスの図である。
【
図6D】本発明の態様による、例示的なシステムの展開シーケンスの図である。
【
図7A】本発明の態様による、例示的なインプラントを動脈瘤内で展開するための例示的なシステムの断面図である。
【
図7B】本発明の態様による、例示的なインプラントを動脈瘤内で展開するための例示的なシステムの断面図である。
【
図8】本発明の態様による、例示的なインプラントの展開の間に実行可能な例示的方法の各工程を概説するフロー図である。
【
図9】本発明の態様による、例示的なシステムを構築するための例示的な方法の各工程を概説するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、本明細書に記載する例示的なシステムは、遠位環を上に有する拡張可能な本体と、動脈瘤内にインプラントを配置及び成形するように構成された送達システムとを含むことができる。インプラントは、インプラントがマイクロカテーテルを通して動脈瘤治療部位に送達されるように成形された変形構成から、インプラントが動脈瘤嚢内から動脈瘤を閉塞するように成形された展開構成へと拡張可能な編組であってもよい。送達システムは、遠位環のルーメン及び編組のルーメンを通過するように構成されたプルワイヤ及び係合ワイヤを含むことができる。プルワイヤ及び係合ワイヤは、相前後して後退して編組をカップ形状の展開構成に移動させることが可能であり、これにより、嚢内でインプラントを調節するための機械的手段を提供する。係合ワイヤは、環を通過する大きさのビード又は他のそのような係合機構を遠位端に有することができ、プルワイヤは、プルワイヤ及び係合ワイヤの双方が遠位環のルーメンを通して配置される時に、係合機構が遠位環を通過することが阻止される大きさとすることができる。システムはまた、プルワイヤ及び/又は係合ワイヤがインプラントを送達システムから機械的に解放するように機能するような構成であってもよい。
【0020】
図1は、例示的なシステムの断面図である。図示のように、システムは、送達システム200に分離可能に取り付けられたインプラント100を有することができる。インプラント100は、編組110、近位環122及び遠位環124を有することができる。近位環122及び遠位環124はそれぞれ、治療中にインプラントの配置を補助するための放射線不透過性材料を含むことができる。各環122、124を、編組110に溶接、接着、又はその他の方法で取り付けてもよい。
【0021】
編組110を、例えば、ニチノール又は他の好適な記憶形状材料などの形状記憶合金から構築してもよい。編組110は、所定の構成、変形構成及び展開構成を有することができる。編組110の所定の構成は、編組110が、例えば熱処理によって記憶するように訓練される構成である。所定の構成を、カップ状又はボウル状の形状とすることができる。編組110の変形構成は、編組110がガイドカテーテル310内にある間の編組110の構成である。変形構成では、編組110を細長い管状の形状に伸ばすことができる。編組110を、所定の構成から変形構成に移動させて、編組110がカテーテル310を動脈瘤10まで横断する大きさとすることができる。編組110の展開構成が、所定の構成又は、例えば非対称のカップ状構成などの、所定の構成の別の形に基づいてもよい。展開構成が、所定の構成を変化させたものであってもよく、このことは、編組110が、動脈瘤10内にある間に所定の構成に戻るように移動する際に、動脈瘤10の壁14に接触し、これによって拘束されることで、所定の構成に逸脱を生じさせて展開構成をもたらし得ることを意味する。
【0022】
送達システム200は、送達チューブ210、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230を有することができる。送達システム200を、動脈瘤10内にインプラント100を配置し展開するために使用することができる。ガイドカテーテル310を使用して、インプラント100を動脈瘤10に送達するため、及び/又は動脈瘤10内のインプラント100の配置及び展開を支援するための手段を提供することができる。
【0023】
図2A~
図2Cは、変形構成から展開構成へのインプラント100の再成形を支援するための例示的なシステムの遠位端の図である。
図2Aに示すように、係合ワイヤ230は細長い部材236を有することができ、細長い部材236の遠位端に係合機構238が取り付けられている。図示のように、プルワイヤ220及び細長い部材236は、遠位環124のルーメン128を並列構成で通過するように構成されている。しかしながら、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220もルーメン128内にある間は係合機構238がルーメン128を通過することができないため、ここまでしか通過できない。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、中実又は中空のいずれであってよく、締まり嵌めを可能にするのに十分な特性を有する材料で作製されていることに留意されたい。
【0024】
図2Bは、遠位環124のルーメン128から後退したプルワイヤ220の図である。この位置から編組110の解放が開始され、係合ワイヤ230に加えられる近位方向の力がインプラント100を解放する。しかしながら、締まり嵌めは、解放後であっても、プルワイヤ220をルーメン128を通して戻すことによって再係合させることができる。これにより、医師は、編組110を更に移動又は変形させることが全く不可能となる前に、動脈瘤10内のインプラント100の配置を検証することができる。
【0025】
図2Cは
図2Aの断面図である。細長い部材236は、細長い部材直径D5を有することができる。係合機構238は、係合機構直径D1を有することができる。プルワイヤ220は、プルワイヤ直径D2を有することができる。プルワイヤ直径D2と係合機構直径D1との合計は、合計直径D12であってもよい。遠位環124は、環内径D4を有してもよい。合計直径D12が環内径D4よりも大きいことで、最初にプルワイヤ220が後退するまでは係合機構238が遠位環124のルーメン128を通って後退することを不可能とする締まり嵌めがもたらされることに留意されたい。この構成では、係合機構直径D1が環内径D4よりも小さいことで、係合ワイヤ230が遠位環124のルーメン128から後退可能とされていることが明らかである。D2+D5<D4及びD1+D2=D12>D4の異なる関係も、上記に含まれる。
【0026】
図3A及び
図3Bは、インプラント100から分離する送達システム200の図であり、
図3Aは、送達システム200に分離可能に取り付けられたインプラント100を示し、
図3Bは、インプラント100の分離直後のインプラント100及び送達システム200を示す。
【0027】
図3A及び
図3Bを合わせて参照すると、インプラントは、成形されたインプラントに取り付けられるか、又は送達システム200と分離可能に係合するように構成された分離機構123を含むことができる。インプラント100は、近位環122を更に含むことができる。分離機構123及び/又は近位環122は、インプラント100の配置の可視化を補助するために、放射線不透過性材料で構成することができる。近位環122は、編組110の近位端を収縮させる役割を果たすことができ、及び/又は、近位環122は、編組110を分離機構123に固定するのを助ける構造を提供することができる。
【0028】
図3Aに示すように、インプラント100が送達システム200に取り付けられている時には、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、互いに平行に構成されてもよく、ループワイヤ218の開口部218a、近位環122のルーメン126及び編組110のルーメン125を通過するように構成されてもよい。ループワイヤ218は、送達チューブ210に取り付けられてもよく、分離機構123の開口部123aを通過してもよい。この構成では、ループワイヤ218は分離機構123を送達チューブ210に分離可能に固定する。分離機構123は、インプラント100の近位環122に取り付けられてもよく、送達チューブ210内のノッチ216(
図4参照)に分離可能に取り付けられてもよい。ノッチ216を、送達チューブ210の遠位端214に配設してもよい。
【0029】
送達チューブ210は、ステンレス鋼などの生体適合性材料で製造され得る。チューブ210は、インプラント100を本明細書に記載されるように動脈瘤10に送達及び展開するために好適な大きさであり得る。
【0030】
図3Bに示すように、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、ループワイヤ218の開口部218aから送達チューブ210内へと近位方向に後退させることができる。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230が送達チューブ210内へと後退すると、ループワイヤ218は、分離機構123の開口部123aから脱落し、以降は分離機構123を送達チューブ210に固定しないことにより、分離機構123が送達チューブ210から分離することを可能にする。
【0031】
いくつかの例では、ループワイヤ218は、太さが毛髪程度と比較的小さい場合があるので、偶発的な接触による損傷を防ぐために、ループワイヤが送達チューブ210内で完全に保護されていることが望ましくてもよい。ループワイヤ218は、開口部を形成するように曲げられる細長いワイヤであってもよい。あるいは、ループワイヤ218は、開口部を有する単一の細長いワイヤであってもよい。ループワイヤ218は、ニチノール及びステンレス鋼を含む任意の数の材料で形成することができる。
【0032】
図4は、
図3Aの側方断面図である。図示のように、分離機構123は、送達チューブ210の遠位端214に位置するノッチ216に分離可能に取り付けられていることが分かる。更に、分離機構123は、近位環122に取り付けられていることが分かる。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、ループワイヤ218の開口部218aを通過することが分かる。ループワイヤ218は、分離機構123の開口部123aを通過し、分離機構123をノッチ216に固定することが分かる。
【0033】
図5A~
図5Cは、それぞれ、動脈瘤10の外側の所定の構成及び動脈瘤10の断面内の展開構成にある例示的なインプラント100の図である。例示的なインプラント100は、本明細書に図示及び/又は記載されているか、あるいは当業者に知られているような編組110、近位環122、遠位環124及び分離機構123を有することができる。近位環122を編組110の近位端112上に配設してもよく、遠位環124を編組110の遠位端114上に配設してもよい。上述のように、分離機構123は、開口部123aを有することができる。
【0034】
図5Aに示すように、所定の形状では、編組110はボウル状又はカップ状の形状を有することができる。遠位環124及び近位環122を、編組110の中心軸に沿って配置してもよい。編組110を、ボウルが2つの入れ子状のボウルを画定するように折り畳んでもよい。遠位環124及び近位環122を、各入れ子状のボウル形状のトラフにそれぞれ配置してもよい。
【0035】
図5Bに示すように、展開構成になった後のインプラント100の編組110は、折り目117、内側袋116、外側袋118を有することができる。折り目117は、内側袋116を外側袋118から区分する編組110の湾曲部であってもよい。外側袋118は、動脈瘤10の壁14に接触することができる。
【0036】
編組110は、記憶形状材料を含むことができ、所定の形状を形成するようにヒートセット又は他の方法でセットすることができる。変形時には、編組110は、接触血液又はその他の体液からの熱によって活性化され、所定の形状へと移動してもよい。あるいは、編組110が記憶形状材料を含む必要はなく、本明細書に図示及び説明するような送達システム200が、
図5Cに示す変形形状から
図5Bに示す展開構成へと編組110を移動させるのに十分であってもよい。
【0037】
図5Cに示すように、変形構成では、インプラント100は、ガイドカテーテル310内に嵌合するように畳まれ、及び/又は伸長されてもよい。
【0038】
図6A~
図6Dは、例示的な送達システム200及びインプラント100の展開シーケンスの図である。
図6Aに示すように、インプラント100は、カテーテル310から出るのに伴って、動脈瘤10内の変形構成から拡張し始める。
図6Aでは、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は双方共に、近位環122のルーメン126、編組110のルーメン125及び遠位環124のルーメン128を通過するように配置される。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、
図2Aに関して上述した並列構成であってもよく、又は他の方法で本明細書に記載されるように配置されてもよい。
図6Bに示すように、係合ワイヤ230及びプルワイヤ220は、遠位環124が近位環122のより近くへと近位方向に移動するように、近位方向に後退させることができる。係合ワイヤ230及びプルワイヤ220が後退している間に、編組110は、外側袋118が動脈瘤10の壁14に接触するように、変形構成から展開構成へと再構成される。インプラント100は、記憶形状材料を含むことができ、インプラント100は、インプラント100の所定の形状に少なくとも部分的に基づいて再成形することができる。あるいは、いくつかの例では、編組110が記憶形状材料を含む必要はなく、そのような場合、係合ワイヤ230及びプルワイヤ220の移動が、編組110を展開形状へと再成形するのに十分であってもよい。
【0039】
図6Cに示すように、プルワイヤ220は、送達チューブ210内へと近位方向に後退させることができる。係合ワイヤ230を遠位方向にわずかに調整することにより、プルワイヤ220を後退させることができる。プルワイヤ220は、遠位環124のルーメン128、編組110のルーメン125、近位環122のルーメン126、及びループワイヤ218の開口部218aを通過するように構成され得る。後退に関しては、
図2A~
図2Cで更に詳述されている。
【0040】
図6Dに示すように、係合ワイヤ230は、送達チューブ210内へと近位方向に後退させることができる。係合ワイヤ230は、遠位環124のルーメン128、編組110のルーメン125、近位環122のルーメン126及びループワイヤ218の開口部218aを通過するように構成されている。後退に関しては、
図2A~
図2Cで更に詳述されている。
【0041】
図7A及び
図7Bは、例示的なインプラント100を動脈瘤10内に展開するための別の例示的な送達システム200の断面図である。
【0042】
図7Aに示すように、中空プッシュロッド320の遠位端324は、インプラント100の近位環122と係合することができる。中空プッシュロッド320のルーメン326は、係合ワイヤ230及びプルワイヤ220が中空プッシュロッド320を通過することを可能にする大きさとすることができる。中空プッシュロッド320を遠位方向に押すことで、係合されたインプラント100もガイドカテーテル310の遠位端314に向かって遠位に押され、そこから出るようにしてもよい。インプラント100は、
図5Cに示すような変形構成であってもよい。ガイドカテーテルの内径D7は、中空プッシュロッド320及びインプラント100がガイドカテーテル310のルーメン316を通過することを可能にする大きさとすることができる。プッシュロッド内径D6は、合計直径D12以上になるように構成されている。
【0043】
図7Bに示すように、中空プッシュロッド320の遠位端324は、係合ワイヤ230及びプルワイヤ220が中空プッシュロッド320内へと近位方向に後退する際に、近位環122に係合したままであってもよい。この反応の結果として、インプラント100は、
図7Aに示す変形構成から、ここで示す展開構成へと移動されてもよい。編組110が動脈瘤内で完全に展開されるまでは、編組110の近位端をガイドカテーテル310内に保持してもよい。編組110が展開された後に、プルワイヤ220、次いで係合ワイヤ230を後退させてもよい。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230がインプラント100から係合解除された後に、カテーテル310を後退させることでインプランテーションを完了させることができる。
【0044】
上述の図面の説明は、本発明による略中空の管又は送達チューブ210を示す。本明細書で使用される時、用語「管状」及び「管」は、広義に解釈されるものとし、直円柱構造や、断面が厳密に円形である構造、長さにわたって均一な断面である構造に制限されるものではない。例えば、管状構造又は管状システムは、一般に、実質的に直円柱構造として図示される。しかしながら、管状システムは、本発明の範囲から逸脱することなく、テーパ状又は湾曲した外側表面を有し得る。
【0045】
図8は、本明細書に提示される例示的なインプラント100及び/又は例示的な送達システム200などのインプラント及び送達システム、当業者によって認識及び理解されるであろうそれらの変形又はそれらの代替物を構築又は構成するための例示的な方法800を示す。
【0046】
ブロック802で、遠位バンドを有するインプラントをガイドカテーテル内に配置することができる。遠位バンド及びガイドカテーテルは、本明細書に提示される遠位バンド124及びガイドカテーテル310、当業者によって認識及び理解されるであろうそれらの変形又はそれらの代替物であってもよい。いくつかの例では、送達チューブを、ガイドカテーテル内のインプラントに近接した位置に配置することができる。送達チューブは、本明細書に提示される送達チューブ210、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物であってもよい。送達チューブ、ガイドカテーテル及びインプラントは、本明細書に提示されるように、又は当業者によって認識及び理解されるであろう他の方法で配置されてもよい。加えて又は代替的に、送達チューブは、本明細書に提示される中空プッシュロッド320、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又は代替物であってもよい。そのような例では、中空プッシュロッドは、本明細書で提示されるようにガイドカテーテル内のインプラントに近接した位置に、又は当業者によって認識及び理解されるであろう他の方法で配置されてもよい。
【0047】
ブロック804で、プルワイヤ及び係合ワイヤを、ループワイヤの開口部及び近位環のルーメンを通して延ばす。プルワイヤ、係合ワイヤ、ループワイヤ及び近位環は、それぞれ、本明細書に提示されるプルワイヤ220、係合ワイヤ230、ループワイヤ218及び近位環122、当業者によって認識及び理解されるであろうそれらの変形又はそれらの代替物であってもよい。いくつかの例では、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばすことができる前に、ループワイヤ218の開口部218aを通して延ばすことができる。あるいは、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を近位環122のルーメン126を通して延ばすことができる前に、近位環122のルーメン126を通して延ばすことができる。いくつかの例では、係合ワイヤ230をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばす必要はない。いくつかの例では、プルワイヤ220をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばす必要はない。いくつかの例では、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230のいずれも、ループワイヤ218の開口部218aを通して延ばされることはなく、分離機構123が存在する必要はない。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、編組110のルーメン125を通して延ばすことができる。いくつかの例では、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を編組110のルーメン125を通して延ばすことができる前に、編組110のルーメン125を通して延ばすことができる。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230は、遠位バンド124のルーメン128を通って延びる。いくつかの例では、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を遠位バンド124のルーメン128を通して延ばすことができる前に、遠位バンド124のルーメン128を通して延ばすことができる。プルワイヤ220及び係合ワイヤ230が中を貫通しているインプラント100は、係合機構238を遠位バンド124に対して遠位方向に配置することが可能となるように、送達カテーテル310内に配置することができる。
【0048】
ブロック806で、インプラント100は、中空プッシュロッド320又は送達チューブ210のいずれかを使用してインプラント100を押すことにより、動脈瘤10の頸部16を通過して動脈瘤嚢12に入ることができる。いくつかの例では、中空プッシュロッド320の遠位端は、インプラント100の近位バンド122と係合して、中空プッシュロッド320がインプラント100を動脈瘤10の嚢12内に押し込むことを可能にしてもよい。いくつかの例では、分離機構123は、ループワイヤ218を介して送達チューブ210のノッチ216に固定され、送達チューブ210がインプラント100を動脈瘤10の嚢12内に押し込むことを可能にしてもよい。
【0049】
ブロック808で、プルワイヤ220を遠位バンド124のルーメン128を通して延ばした状態で係合ワイヤ230を近位方向に後退させることによって、インプラント100を嚢12内に再成形してもよい。これにより、遠位バンド124は近位方向に移動し、それによって編組110を再成形する。
【0050】
ブロック810で、プルワイヤ220を、遠位環124のルーメン128、編組110のルーメン125、及び近位バンド122のルーメン126を通して近位方向に後退させてもよい。いくつかの例では、プルワイヤ220は、ループワイヤ218の開口部218aを通して後退させることができる。
【0051】
ブロック812で、係合ワイヤ230を、遠位バンド124のルーメン128、編組110のルーメン125、及び近位バンド122のルーメン126を通して近位方向に後退させてもよい。いくつかの例では、係合ワイヤ230は、ループワイヤ218の開口部218aを通して後退させることができる。
【0052】
ブロック814で、送達チューブ210を後退させることでインプラント100が送達システム200から係合解除され、その結果、ループワイヤ218が分離機構123の開口部123aから脱落することにより、分離機構123が送達チューブ210のノッチ216から外れることが可能となってもよい。あるいは、中空プッシュロッド320が、分離機構123又はループワイヤ218を使用せずに、インプラント100をガイドカテーテル310から嚢12内へと押し込む。
【0053】
図9は、本明細書に提示される例示的なインプラント100及び/又は例示的な送達システム200などの送達システム、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物を使用してインプラントを展開するための例示的な方法900を示す。
【0054】
ブロック902で、遠位環を中心軸に沿って管状編組の遠位端に近接して配置してもよい。遠位環及び管状編組はそれぞれ、本明細書に提示される遠位環124及び管状編組110、当業者によって認識及び理解されるであろうそれらの変形又はそれらの代替物であってもよい。遠位環124は、管状編組110の遠位端114に取り付けられてもよい。
【0055】
ブロック904で、送達システムは、係合機構及び細長い部材を含む係合ワイヤを含むことができ、係合機構は、細長い部材の遠位端に配置されてもよい。係合ワイヤは、本明細書に提示される係合ワイヤ230、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物であってもよい。係合機構238は、細長い部材236の遠位端234から半径方向に延びてもよい。係合機構は、研削、溶接、接着又はその他の当業者によって認識及び理解されるであろう手段によって形成することができる。例えば、ポリマースリーブ又は金属スリーブをコアワイヤの一部に取り付けてもよく、コアワイヤが係合ワイヤの細長い部材を形成してもよく、スリーブを所望の形状に研磨して係合機構を形成してもよい。あるいは、コアワイヤの端部に溶接ビードを形成することによって係合機構を形成してもよく、コアワイヤは、係合ワイヤの細長い部材を形成する。
【0056】
ブロック906で、近位環を編組の近位端に配置してもよい。近位環は、本明細書に提示される近位環122、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物であってもよい。近位環122は、管状編組110の近位端112に取り付けられてもよい。いくつかの例では、本明細書に提示される分離機構123などの分離機構、その変形又はその代替物を、近位環122に取り付けることができる。
【0057】
ブロック908で、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230を、ループワイヤ218の開口部218a及び近位環122のルーメン126を通して延ばす。プルワイヤ及びループワイヤは、それぞれ、本明細書に提示されるプルワイヤ220及びループワイヤ218、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物であってもよい。ループワイヤ218を、本明細書に提示される送達チューブ210、当業者によって認識及び理解されるであろうその変形又はその代替物に取り付けてもよい。ループワイヤ218及び/又はプルワイヤ220をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばすことが、インプラント100を送達チューブ210に解放可能に固定するのに役立ってもよい。例示的なシステムでは、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばすことができる前に、ループワイヤ218の開口部218aを通して延ばすことができる。別の例示的なシステムでは、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を近位環122のルーメン126を通して延ばすことができる前に、近位環122のルーメン126を通して延ばすことができる。更に別の例示的なシステムでは、係合ワイヤ230をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばす必要はない。更に別の例示的なシステムでは、プルワイヤ220をループワイヤ218の開口部218aを通して延ばす必要はない。更に別の例示的なシステムでは、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230のいずれも、ループワイヤ218の開口部218aを通して延ばされることはなく、分離機構123が存在する必要はない。
【0058】
ブロック910で、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230を、管状編組110のルーメン125を通して延ばす。例示的なシステムでは、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を管状編組110のルーメン125を通して延ばすことができる前に、管状編組110のルーメン125を通して延ばすことができる。
【0059】
ブロック912で、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230を、遠位環124のルーメン128を通して延ばす。例示的なシステムでは、係合ワイヤ230は、プルワイヤ220を遠位環124のルーメン128を通して延ばすことができる前に、遠位環124のルーメン128を通して延ばすことができる。
【0060】
ブロック914で、プルワイヤ220及び係合ワイヤ230が中を貫通しているインプラント100は、係合機構238を遠位環124に対して遠位方向に配置することが可能となるように、送達カテーテル310内に配置することができる。
【0061】
ブロック916で、遠位環124のルーメン128、管状編組110のルーメン125及び近位環122のルーメン126からプルワイヤ220及び係合ワイヤ230を後退させることで、インプラント100を送達システム200から係合解除してもよい。例示的なシステムでは、プルワイヤ220又は係合ワイヤ230のうちの少なくとも一方をループワイヤ218の開口部218aから後退させることができる。
【0062】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されるように、本発明は、本明細書に記載の要素及び部品の代替的な幾何学的形状、代替的な編組形状、本明細書に記載の又は本明細書に記載されていない機能を実行するために、編組を編組、編成、製織又はその他の方法で形成するための複数の手段のうちの1つ以上を利用すること、各部品又は要素に(例えば、放射線不透過性材料、記憶形状材料、ポリマー、金属などの)代替材料を利用すること、更なる部品を利用することを含む、インプラントシステムの多くの変形及び修正を企図する。これらの修正は、本発明が関連する当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲に含まれることを意図したものである。
【0063】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
細長い部材と、前記細長い部材の遠位端に配設された係合機構と、を含む係合ワイヤと、
プルワイヤと、
インプラントであって、
カテーテルを横断する大きさの送達形状から動脈瘤頸部を閉塞する大きさのインプラント形状へと移動可能な編組と、
前記編組に取り付けられた遠位環と、
を含むインプラントと、
を備え、
前記編組が前記送達形状にある時、前記プルワイヤ及び前記細長い部材は前記遠位環を通って延在し、前記係合機構は前記遠位環に対して遠位方向にあり、
前記プルワイヤ及び前記細長い部材は、前記係合機構を前記遠位環に係合させ、前記遠位環を近位に移動させるように近位方向に移動可能であり、
前記編組は、前記遠位環の近位移動時に、前記送達形状から前記インプラント形状へと移動可能である、
システム。
(2) 前記インプラントは、前記編組に取り付けられた近位環を更に含み、
前記編組が前記送達形状にある時、前記プルワイヤ及び前記細長い部材は前記近位環を通って延び、
前記編組が前記送達形状にある時、前記近位環は前記遠位環に対して前記近位方向にある、
実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記インプラントに分離可能に取り付けられた送達チューブと、
前記送達チューブに取り付けられたループワイヤと、
を更に備え、
前記インプラントは、開口部が中を貫通する分離機構を含み、
前記ループワイヤは、前記分離機構の前記開口部を通って延び、
前記プルワイヤ及び前記細長い部材の一方又は両方が、前記ループワイヤを通って延び、
前記プルワイヤは、前記ループワイヤから出るように移動可能であり、
前記細長い部材及び前記係合機構は、前記プルワイヤが前記ループワイヤから出た後に前記ループワイヤから出るように移動可能であり、
前記ループワイヤは、前記プルワイヤ及び前記細長い部材の両方が前記ループワイヤから出る時に前記開口部から出るように移動可能である、
実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記送達チューブは、前記送達チューブの遠位端に近接したノッチを含み、
前記ノッチ内に前記分離機構が配置されている、
実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記インプラントの前記近位環と係合する中空プッシュロッドを更に備え、
前記中空プッシュロッドは内径を有し、前記内径は、前記プルワイヤの直径と前記細長い部材の直径との合計よりも大きい、
実施態様2に記載のシステム。
【0064】
(6) 前記係合機構の直径が前記遠位環の内径よりも小さい、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記遠位環の内径が、前記プルワイヤの直径と前記細長い部材の直径との合計よりも大きく、
前記遠位環の前記内径は、前記プルワイヤの前記直径と前記係合機構の直径との合計よりも小さい、
実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記係合機構は1つ以上の軸に関して非対称である、実施態様1に記載のシステム。
(9) 送達のための、遠位環と、管状編組とを含むインプラントを構成するための方法であって、
前記遠位環を前記管状編組の遠位端に近接して配置することと、
係合機構を、細長い部材の遠位端から半径方向に延びるように配置することと、
前記細長い部材を前記管状編組のルーメン及び前記遠位環のルーメンを通して延ばすことと、
前記係合機構が前記遠位環の前記ルーメンを通過することをプルワイヤが阻止するように、前記プルワイヤを前記管状編組の前記ルーメン及び前記遠位環の前記ルーメンを通して延ばすことと、
前記係合機構を近位方向に後退させて、前記インプラントを動脈瘤内に固定することと、
前記プルワイヤを前記インプラントから近位方向に後退させることと、
前記インプラントが少なくとも前記プルワイヤ及び前記係合機構から係合解除されるように、前記係合機構を前記インプラントから近位方向に後退させることと、
前記インプラントを送達チューブから係合解除することと、
を含む、方法。
(10) 前記細長い部材及び前記プルワイヤが中を貫通している前記インプラントを、前記係合機構が前記遠位環に対して遠位方向に配置されるように送達カテーテル内に配置することを更に含む、
実施態様9に記載の方法。
【0065】
(11) 近位環を前記管状編組の近位端に取り付けることと、
前記細長い部材及び前記プルワイヤを前記近位環のルーメンを通して延ばすことと、
を更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 分離機構を前記近位環に取り付けることと、
前記分離機構を送達チューブに分離可能に取り付けることと、
を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記送達チューブの遠位端のノッチ内に前記分離機構を配置することを更に含む、
実施態様12に記載の方法。
(14) ループワイヤを前記送達チューブに取り付けることと、
前記ループワイヤを前記分離機構の開口部を通して延ばすことと、
少なくとも前記プルワイヤ又は細長い部材を、前記ループワイヤの開口部を通して延ばすことと、
を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 中空プッシュロッドが治療中に前記近位環を係合解除するように構成されるように、前記中空プッシュロッドの遠位端を前記近位環に係合させることを更に含む、
実施態様11に記載の方法。
【0066】
(16) インプラントの配置方法であって、
遠位環を上に備える前記インプラントを送達カテーテル内に配置することと、
プルワイヤ及び上に係合機構を有する細長い部材を、前記係合機構が前記遠位環に対して遠位方向に配置されるように、かつ、前記係合機構が前記遠位環のルーメンを通過することを前記プルワイヤが阻止するように、前記遠位環の前記ルーメンを通して配置することと、
前記インプラントを動脈瘤の頸部を通して延ばすことと、
前記プルワイヤが前記遠位環を通して延ばされる一方で前記細長い部材を後退させることによって、前記動脈瘤内で前記インプラントを再成形し、前記係合機構を前記遠位環に係合させ、前記遠位環を近位に移動させることと、
前記プルワイヤを前記インプラントから近位方向に後退させることと、
前記インプラントが少なくとも前記プルワイヤ及び前記係合機構から係合解除されるように、前記係合機構を前記インプラントから近位方向に後退させることと、
前記インプラントを送達チューブから係合解除することと、
を含む、方法。
(17) 前記インプラントを前記動脈瘤内に固定することを更に含む、
実施態様16に記載の方法。
(18) 前記送達チューブを前記インプラントに係合させることと、
前記送達チューブ、前記インプラント、前記プルワイヤ及び前記細長い部材を前記送達カテーテル内に配置することと、
前記送達チューブを遠位に押すことにより、前記インプラントを前記送達カテーテルを通して遠位に移動させることと、
を更に含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 最初に前記プルワイヤを、次いで前記細長い部材を前記送達チューブに取り付けられたループワイヤの開口部から後退させて、前記ループワイヤが前記インプラントを係合解除できるようにすることによって、前記送達チューブを前記インプラントから係合解除することを更に含む、
実施態様18に記載の方法。
(20) 前記送達チューブを近位環に対して近位方向に配置することであって、前記近位環は前記インプラントの近位端に近接して配設され、前記送達チューブは中空プッシュロッドである、ことと、
前記プルワイヤ及び前記細長い部材を、前記中空プッシュロッドのルーメン内及び前記近位環のルーメン内に配置することと、
前記中空プッシュロッドを前記近位環に対して遠位方向に押すことによって、前記インプラントを前記送達カテーテルを通して遠位に移動させることと、
前記インプラントが前記動脈瘤の前記頸部を通して延ばされる間及び、前記プルワイヤが前記遠位環を通して延ばされる一方で前記細長い部材を後退させることによって前記インプラントが再成形される間、前記近位環を前記送達カテーテル内に維持することと、
前記プルワイヤが前記遠位環を通して延ばされる一方で前記細長い部材を後退させることによって前記インプラントが再成形される間に、前記中空プッシュロッドを前記近位環に係合させることと、
前記プルワイヤを前記遠位環から前記近位方向に後退させて、前記遠位環の前記ルーメンから前記プルワイヤを除去することと、
前記プルワイヤが前記遠位環から除去される間に、前記係合機構を前記遠位環を通して前記近位方向に後退させることと、
前記プルワイヤを前記近位環を通して前記近位方向に後退させることと、
前記係合機構を前記近位環を通して前記近位方向に後退させることと、
前記中空プッシュロッドを前記近位方向に後退させることにより、前記中空プッシュロッドを前記近位環から係合解除することと、
を更に含む、実施態様16に記載の方法。