(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】トランジスタ基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20240930BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G06F3/042 472
G06F3/041 660
(21)【出願番号】P 2020194461
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 元
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075009(WO,A1)
【文献】特開2020-184227(JP,A)
【文献】特開2005-099317(JP,A)
【文献】特開2003-216063(JP,A)
【文献】国際公開第2020/053692(WO,A1)
【文献】特表2007-518467(JP,A)
【文献】特開2019-136498(JP,A)
【文献】特開2012-086394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装される光源と、
前記基板上に実装されるセンサ素子と、
を備え、
前記センサ素子は、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続されるスイッチング素子と、前記画素電極と対向する共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に設けられる有機受光素子層と、を有し、
前記光源は、前記有機受光素子層と同層に設けら
れ、
前記光源は、光の出射面に設けられる上部電極と、前記出射面とは反対の下面に設けられる下部電極と電気的に接続し、
前記上部電極は、前記共通電極であり、
前記下部電極と電気的に接続される電源配線は、前記下部電極と平面視において重畳する領域においては第1線幅を有し、前記下部電極と平面視において重畳しない領域においては前記第1線幅よりも細い第2線幅を有する、
トランジスタ基板。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、第1方向に沿って延出する走査線と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延出する信号線と電気的に接続され、
前記光源および前記センサ素子は、前記走査線および前記信号線によって区画される画素領域に配置される、
請求項1に記載のトランジスタ基板。
【請求項3】
前記共通電極と電気的に接続される電源配線は、
前記画素領域毎に設けられる、
請求項2に記載のトランジスタ基板。
【請求項4】
前記センサ素子に関し、前記画素電極が陰極として機能し、前記共通電極が陽極として機能する場合、前記有機受光素子層は、電子輸送層、活性層、正孔輸送層の順に積層された積層構造を有する、
請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載のトランジスタ基板。
【請求項5】
前記センサ素子に関し、前記画素電極が陽極として機能し、前記共通電極が陰極として機能する場合、前記有機受光素子層は、正孔輸送層、活性層、電子輸送層の順に積層された積層構造を有する、
請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載のトランジスタ基板。
【請求項6】
平面視において、前記センサ素子の受光面と、前記光源の出射面と重畳する領域を除く領域には、黒色材が設けられる、
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のトランジスタ基板。
【請求項7】
前記光源の周囲を囲むように黒色材が設けられる、
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のトランジスタ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トランジスタ基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機受光素子(OPD: Organic Photo Detector)を用いたセンサ装置が普及してきている。このようなセンサ装置としては、有機受光素子を備えるセンサ素子と、当該センサ素子でデータをセンシングする際に必要となる光を出射する光源とを、別々の基板に設ける構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、有機受光素子を用いたセンサ装置の低コスト化を図ることが可能なトランジスタ基板およびその製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によれば、
基板と、前記基板上に実装される光源と、前記基板上に実装されるセンサ素子と、を備え、前記センサ素子は、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続されるスイッチング素子と、前記画素電極と対向する共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に設けられる有機受光素子層と、を有し、前記光源は、前記有機受光素子層と同層に設けられ、前記光源は、光の出射面に設けられる上部電極と、前記出射面とは反対の下面に設けられる下部電極と電気的に接続し、前記上部電極は、前記共通電極であり、前記下部電極と電気的に接続される電源配線は、前記下部電極と平面視において重畳する領域においては第1線幅を有し、前記下部電極と平面視において重畳しない領域においては前記第1線幅よりも細い第2線幅を有する、トランジスタ基板が提供される。
【0006】
本実施形態によれば、
基板上に光源を実装する第1工程と、画素電極と、前記画素電極と電気的に接続されるスイッチング素子と、前記画素電極と対向する共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に設けられる有機受光素子層とを含むセンサ素子であって、前記有機受光素子層が前記光源と同層に設けられるセンサ素子を前記基板上に実装する第2工程と、を備える、トランジスタ基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は一実施形態に係るトランジスタ基板の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図2は
図1に示すA-B線で切断された断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は同実施形態に係る有機受光素子層の積層構造を説明するための図である。
【
図4】
図4は同実施形態に係る有機受光素子層の別の積層構造を説明するための図である。
【
図5】
図5は同実施形態に係るトランジスタ基板の別の構成例を示す平面図である。
【
図6】
図6は同実施形態に係るトランジスタ基板の別の構成例を示す断面図である。
【
図7】
図7は同実施形態に係るトランジスタ基板のさらに別の構成例を示す平面図である。
【
図8】
図8は同実施形態に係るトランジスタ基板のさらに別の構成例を示す断面図である。
【
図9】
図9は同実施形態に係るトランジスタ基板の別の構成例を示す平面図である。
【
図10】
図10は同実施形態に係るトランジスタ基板に配置される光源の配置レイアウトの一例を示す平面図である。
【
図11】
図11は同実施形態に係るトランジスタ基板に配置されるダミーセンサ素子について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実施の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0009】
図1は、一実施形態に係るトランジスタ基板TRの構成例を示す平面図である。本実施形態に係るトランジスタ基板TRは、例えば、指静脈や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、心拍数、血圧脈波、脂肪率等、各種生体データを計測・検出するセンサ装置に用いられる。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るトランジスタ基板TRは、第1方向Xおよび第2方向Yに沿ってマトリクス状に配置されたセンサ素子SEと光源LEDとを備えている。本実施形態に係る光源LEDは、自発光素子であるマイクロLEDである。マイクロLEDとしては、赤外線を発光可能なマイクロLEDや緑色のマイクロLEDが用いられる。例えば、動脈内のヘモグロビンは緑色の光を吸収しやすい性質を有しているので、トランジスタ基板TRが心拍数を計測・検出するためのセンサ装置に用いられる場合、トランジスタ基板TRに実装される光源LEDには、例えば緑色のマイクロLEDが用いられる。
【0011】
図1に示すように、トランジスタ基板TRは、第1方向Xに沿って延出し、第2方向Yに間隔を置いて設けられる複数の走査線GLと、第2方向Yに沿って延出し、第1方向Xに間隔を置いて設けられる複数の信号線SLとを備えている。センサ素子SEおよび光源LEDは、複数の走査線GLと複数の信号線SLとによって区画される画素領域に配置されている。詳細については
図2の説明と共に後述するが、センサ素子SEは、スイッチング素子SWと、画素電極PEと、共通電極CEと、有機受光素子層OPDと、等を備えている。
【0012】
スイッチング素子SWは、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成され、走査線GLおよび信号線SLと電気的に接続されている。走査線GLは、第1方向Xに並んだセンサ素子SEの各々におけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。信号線SLは、第2方向Yに並んだセンサ素子SEの各々におけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。画素電極PEの各々は、コンタクトホールCH1を通り、スイッチング素子SWに接続されている。画素電極PEの各々は、共通電極CEと対向している。有機受光素子層OPDは、各画素電極PEと共通電極CEとにより挟持されている。有機受光素子層OPDは、光を受光すると正孔および電子の対を発生させる。有機受光素子層OPDより発生した正孔および電子の対によれば、電流が流れ、この電流の強度に応じた電気信号が信号線SLを介して読み出されることにより、各種生体データが計測・検出される。
【0013】
光源LEDは、半田などの接続導電部材SOにより下部電極UEと電気的に接続されている。下部電極UEは、コンタクトホールCH2を通り、電源配線PLに接続されている。電源配線PLは、信号線SLと同様に、第2方向Yに沿って延出する。電源配線PLは、光源LEDが実装される領域においては第1方向Xに沿った所定の線幅W1を有し、それ以外の領域においては上記した所定の線幅W1よりも細い線幅W2を有している。これによれば、光源LEDが実装される領域において、ある場所には電源配線PLがあるが、別の場所には電源配線PLがない等、電源配線PLの有無に起因して段差が生じてしまうことを抑制することが可能である。
【0014】
なお、
図1では、3×3の画素領域に、一つの光源LEDと八つのセンサ素子SEとが配置されている場合を例示しているが、光源LEDとセンサ素子SEの配置レイアウトはこれに限定されない。例えば、光源LEDの配置数は必要光源量に応じて決定されて構わない。
【0015】
また、本実施形態に係るトランジスタ基板TRは、上記したように、各種生体データを計測・検出するためのセンサ装置に用いられ、画像を表示する必要がないことから、トランジスタ基板TRに設けられる光源LEDはアナログ階調を出す必要がなく、光源LEDは(接続導電部材SOおよび下部電極UEを介して)電源配線PLに直結されて構わない。
【0016】
さらに、本実施形態に係るトランジスタ基板TRにおいては、光源LEDが配置された画素領域にはセンサ素子SEを配置することができないため、当該画素領域からはセンシングデータを取得することができないが、例えば、周囲に位置する八つのセンサ素子SEにより取得されたセンシングデータの中央値を算出し、これを当該画素領域のセンシングデータとしても構わない。
【0017】
図2は、
図1に示すA-B線で切断されたトランジスタ基板TRの断面を示す断面図である。
図2に示すトランジスタ基板TRは、絶縁基板11を備えている。絶縁基板11としては、TFT工程中の処理温度に耐え得るものであれば特に材質は問わないが、主に石英、無アルカリガラス等のガラス基板、またはポリイミド等の樹脂基板を用いることができる。樹脂基板は可撓性を有し、シート状のトランジスタ基板TRを構成することができる。なお、樹脂基板としては、ポリイミドに限らず、他の樹脂材料を用いてもよい。
【0018】
絶縁基板11上には、三層積層構造のアンダーコート層12が設けられている。詳細についての図示は省略するが、アンダーコート層12は、シリコン酸化物(SiO2)で形成された最下層、シリコン窒化物(SiN)で形成された中層、およびシリコン酸化物(SiO2)で形成された最上層を有している。最下層は、基材である絶縁基板11との密着性向上のために設けられる。中層は、外部からの水分および不純物のブロック膜として設けられる。最上層は、中層内に含有する水素原子が後述する半導体層SC側に拡散しないようにするブロック膜として設けられる。
【0019】
なお、アンダーコート層12は、この構造に限定されるものではない。アンダーコート層12は、さらに積層があってもよいし、単層構造あるいは二層構造であってもよい。例えば、絶縁基板11がガラス基板である場合、シリコン窒化膜は比較的密着性がよいため、当該絶縁基板11上に直接シリコン窒化膜を形成しても構わない。
【0020】
絶縁基板11の上には、遮光膜13が配置されている。遮光膜13の位置は、後にTFTを形成する箇所に合わせられている。遮光膜13は、金属材や黒色材等、遮光性を有する材料で形成されていればよい。このような遮光膜13によれば、TFTのチャネル裏面への光の侵入を抑制することができるため、絶縁基板11側から入射され得る光に起因したTFT特性の変化を抑制することが可能である。なお、遮光膜13を導電材で形成した場合には、当該遮光膜13に所定の電位を与えることで、TFTにバックゲート効果を付与することが可能である。
【0021】
アンダーコート層12の上にはTFTが形成される。TFTとしては半導体層SCにポリシリコンを利用するポリシリコンTFTを例としている。但し、半導体層SCはポリシリコンに限らず酸化物半導体やアモルファスシリコンであってもよい。本実施形態において、半導体層SCは低温ポリシリコンを利用して形成されている。TFTは、NchTFT、PchTFTのいずれを用いてもよい。また、NchTFTとPchTFTを同時に形成してもよい。以下では、TFTとしてNchTFTが用いられた場合について説明する。
【0022】
NchTFTの半導体層SCは、第1領域と、第2領域と、第1領域および第2領域の間のチャネル領域と、チャネル領域および第1領域の間ならびにチャネル領域および第2領域の間にそれぞれ設けられた低濃度不純物領域と、を有する。第1領域および第2領域のうちの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能している。
【0023】
ゲート絶縁膜GIはシリコン酸化膜を用い、ゲート電極GEはMoW(モリブデン・タングステン)で形成されている。なお、ゲート電極GEは、TFTのゲート電極としての機能に加え、後述する保持容量電極としての機能も有している。ここではトップゲート型のTFTを例示しているが、TFTはボトムゲート型のTFTであってもよい。
【0024】
ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEの上には、パッシベーション層14が設けられている。パッシベーション層14は、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEの上に、例えば、シリコン窒化膜およびシリコン酸化膜を順に積層して構成されている。
【0025】
パッシベーション層14の上に、TFTの第1電極E1および第2電極E2が設けられている。また、パッシベーション層14の上には、電源配線PLが設けられている。第1電極E1、第2電極E2、および電源配線PLは、それぞれ三層積層構造(Ti系/Al系/Ti系)が採用され、Ti(チタン)、Tiを含む合金等Tiを主成分とする金属材料からなる最下層と、Al(アルミニウム)、Alを含む合金等Alを主成分とする金属材料からなる中層と、Ti、Tiを含む合金等Tiを主成分とする金属材料からなる最上層と、を有している。
【0026】
第1電極E1は、半導体層SCの第1領域に接続され、第2電極E2は、半導体層SCの第2領域に接続されている。例えば、半導体層SCの第1領域がドレイン領域として機能する場合、第1電極E1はドレイン電極であり、第2電極E2はソース電極である。第1電極E1は、パッシベーション層14、および、TFTのゲート電極GE(保持容量電極)と共に、保持容量を形成している。第1電極E1には、基準電圧が印加される。
【0027】
パッシベーション層14、第1電極E1、第2電極E2、および電源配線PLの上に、平坦化膜15が設けられている。平坦化膜15は、センサ素子SEの画素電極PEとTFTとがコンタクトする領域、および、光源LEDの下部電極UEと電源配線PLとがコンタクトする領域では除去され、開口(コンタクトホールCH1およびCH2)を有している。平坦化膜15としては、感光性アクリル等の有機絶縁材料が多く用いられる。これは、CVD等により形成される無機絶縁材料に比べて、配線段差のカバレッジ性や、表面の平坦性に優れている。
【0028】
センサ素子SEにおいて、平坦化膜15の上には、画素電極PEが設けられている。画素電極PEは、平坦化膜15に形成されたコンタクトホールCH1を通り第1電極E1に接続されている。光源LEDにおいて、平坦化膜15の上には、下部電極UEが設けられている。下部電極UEは、平坦化膜15に形成されたコンタクトホールCH2を通り電源配線PLに接続されている。
【0029】
平坦化膜15、画素電極PE、下部電極UEは、無機絶縁膜16により覆われている。無機絶縁膜16は、有機受光素子層OPDと画素電極PEとがコンタクトする領域、および、接続導電部材SOと下部電極UEとがコンタクトする領域では除去され、開口を有している。無機絶縁膜16は、例えばシリコン窒化膜で形成されている。
【0030】
画素電極PEおよび無機絶縁膜16は、複数の層からなる有機受光素子層OPDにより覆われている。センサ素子SEにおいて、画素電極PEは、無機絶縁膜16に形成された開口にて有機受光素子層OPDと接触する。また、下部電極UEの上であって、無機絶縁膜16に形成された開口には接続導電部材SOが設けられている。接続導電部材SOの上には光源LEDが設けられている。詳細については後述するが、光源LEDは、真上方向にしか光を出射せず、横方向には光を出射しないタイプの光源であることが望ましい。
【0031】
なお、有機受光素子層OPDは高温プロセスに耐えることができないため、光源LEDが実装された後に形成されることが望ましい。このとき、有機受光素子層OPDは、光源LEDの上部表面(出射面)を露出させる。
【0032】
有機受光素子層OPDおよび光源LEDの上には、一つの共通電極CEが有機受光素子層OPDおよび光源LEDを覆うように設けられている。共通電極CEは、センサ素子SEに関しては、画素電極PEに対向する電極として設けられている。共通電極CEは、光源LEDに関しては、下部電極UEに対向する上部電極として設けられている。
【0033】
図2では図示を省略しているが、共通電極CEに電源供給するための電源配線は、例えば、第1電極E1、第2電極E2、電源配線PLと同層に設けられる。この電源配線は、画素領域毎に複数設けられてもよいし、全画素領域で共用するとして一つだけ設けられてもよい。但し、全画素領域で共用するとして電源配線が一つだけ設けられる場合、当該電源配線から離れた位置の画素領域ほど、共通電極CEの抵抗に基づく電圧降下により、印加される電圧が小さくなってしまう。このため、共通電極CEに電源供給するための電源配線は画素領域毎に設けられている方が望ましく、この場合、全画素領域で共用する場合に比べて低抵抗化を図ることが可能である。
【0034】
共通電極CEは、光源LEDからの出射光を取り出すために、透明電極として形成される必要がある。共通電極CEは、透明導電材料として例えばITOを用いて形成される。
【0035】
共通電極CEの上には、封止層17が設けられている。封止層17は、有機受光素子層OPDに、外部から水分が侵入してしまうことを抑制するために設けられる。封止層17は、有機絶縁膜18およびこれを挟む一対の無機絶縁膜19の積層構造となっている。封止層17の上には、保護膜として機能する樹脂層20が設けられている。
【0036】
以上説明したトランジスタ基板TRは、例えば以下のような製造方法によって製造することが可能である。ここでは、トランジスタ基板TRの製造方法のうちの主な工程のみを説明する。
【0037】
まず、センサ素子SEが配置される画素領域において、絶縁基板11の上に遮光膜13が形成される。その後、絶縁基板11および遮光膜13を覆うようにアンダーコート層12が形成される。続いて、センサ素子SEが配置される画素領域において、アンダーコート層12の上にはTFTが形成される。このTFTと遮光膜13とは平面視において重畳する。また、光源LEDが配置される画素領域において、上記したTFTと同層には電源配線PLが形成される。続いて、TFTおよび電源配線PLを覆うように平坦化膜15が形成される。
【0038】
平坦化膜15のうち、センサ素子SEが配置される画素領域であって、TFTと画素電極PEとが接触する領域には、コンタクトホールCH1が形成される。また、平坦化膜15のうち、光源LEDが配置される画素領域であって、電源配線PLと下部電極UEとが接触する領域には、コンタクトホールCH2が形成される。その後、画素電極PEおよび下部電極UEが平坦化膜15の上にそれぞれ形成される。画素電極PEはコンタクトホールCH1を通ってTFTに接続し、下部電極UEはコンタクトホールCH2を通って電源配線PLに接続する。
【0039】
続いて、画素電極PE、下部電極UEおよび平坦化膜15を覆うように無機絶縁膜16が形成される。無機絶縁膜16のうち、センサ素子SEが配置される画素領域であって、画素電極PEと有機受光素子層OPDとが接触する領域には開口が設けられる。また、無機絶縁膜16のうち、光源LEDが配置される画素領域であって、光源LEDの実装領域には開口が形成される。光源LEDの実装領域には、半田などの接続導電部材SOを介して光源LEDが実装される。光源LEDは接続導電部材SOを介して下部電極UEおよび電源配線PLと電気的に接続される。
【0040】
光源LEDが実装された後に、画素電極PEおよび無機絶縁膜16の上には有機受光素子層OPDが形成される。このとき、有機受光素子層OPDは、光源LEDの出射面を露出させるように形成される。続いて、有機受光素子層OPDおよび光源LEDの上に、共通電極CEが形成される。しかる後、共通電極CEの上に、封止膜17および保護膜20が形成され、トランジスタ基板TRが製造される。
【0041】
ここで、複数層からなる有機受光素子層OPDの積層構造の一例について説明する。
図3は、有機受光素子層OPDの積層構造の一例を説明するための図である。
図3の積層構造は、センサ素子SEにおいて、画素電極PEが陰極として機能し、共通電極CEが陽極として機能する場合の積層構造である。この場合、有機受光素子層OPDにおいては、
図3に示すように、電子輸送層ETL、活性層AL、正孔輸送層HTLがこの順序で積層されている。電子輸送層ETLと画素電極PEとは無機絶縁膜16に形成された開口にて接触する。活性層ALは、光を受光すると、電荷分離により電子および正孔の対を発生させる。発生した電子は電子輸送層ETLを通って輸送される。発生した正孔は正孔輸送層HTLを通って輸送される。
【0042】
図4は、有機受光素子層OPDの積層構造の別の例を説明するための図である。
図4の積層構造は、センサ素子SEにおいて、画素電極PEが陽極として機能し、共通電極CEが陰極として機能する場合の積層構造である。この場合、有機受光素子層OPDにおいては、
図4に示すように、正孔輸送層HTL、活性層AL、電子輸送層ETLがこの順序で積層されている。正孔輸送層HTLと画素電極PEとは無機絶縁膜16に形成された開口にて接触する。活性層ALは、光を受光すると、電荷分離により電子および正孔の対を発生させる。発生した電子は電子輸送層ETLを通って輸送される。発生した正孔は正孔輸送層HTLを通って輸送される。
【0043】
なお、センサ素子SEにおいて、画素電極PEおよび共通電極CEが陽極として機能するか、陰極として機能するかは、第1電極E1を介して画素電極PEに印加される基準電圧に対して、共通電極CEにどのような電圧を印加するかにより適宜選択することが可能である。
【0044】
以上説明したように、一実施形態に係るトランジスタ基板TRは、光を受光することで電流を発生し、その電流の強度に応じた電気信号を読み出すことで各種生体データを計測・検出可能なセンサ素子SEと、センサ素子SEによるセンシングに必要な光を出射する光源LEDとを同一基板上に備えている。これによれば、センサ素子SEを構成する有機受光素子層OPDが、光源LEDを実装するにあたって必要となる平坦化膜を兼ねることが可能である。
【0045】
また、有機受光素子層OPDが光源LEDを実装するにあたって必要となる平坦化膜を兼ねることにより、有機受光素子層OPDの上面に設けられる電極と、光源LEDの上面に設けられる電極とを共通化することが可能である。これによれば、各種構成を共通化することができるため、トランジスタ基板TRの低コスト化を図ることが可能であり、ひいては、有機受光素子を用いたセンサ装置の低コスト化を図ることが可能である。
【0046】
なお、各種生体データを計測・検出するためには、センサ素子SEは、検出対象によって反射された光を受光する必要があり、光源LEDからの光が直接入射したとしても、検出対象の生体データを計測・検出することはできない。また、光源LEDからの光がセンサ素子SEに直接入射してしまうと、意図しない電流がトランジスタ基板TRに流れてしまう恐れがあり、トランジスタ基板TRが故障してしまう恐れもある。このため、本実施形態に係るトランジスタ基板TRは、光を真上方向にしか照射しないタイプの光源LEDを実装し、かつ、センサ素子SEと光源LEDとの間を無機絶縁膜16により絶縁するとしたが、トランジスタ基板TRの構成はこれに限定されない。
【0047】
例えば
図5および
図6に示すように、センサ素子SEの受光面と、光源LEDの出射面と以外に黒色材BMを設けることで、光源LEDからセンサ素子SEに光が直接入射することを抑制し、かつ、センサ素子SEと光源LEDとの間の絶縁性を保持する構成としてもよい。この構成においては、
図5および
図6に示すように、黒色材BMは、格子状に設けられ、全ての画素領域に亘って、無機絶縁膜16、コンタクトホールCH1およびCH2を覆うように設けられている。
【0048】
あるいは、
図7および
図8に示すように、光源LEDの周囲のみに黒色材BMを設けることで、光源LEDからセンサ素子SEに光が直接入射することを抑制し、かつ、センサ素子SEと光源LEDとの間の絶縁性を保持する構成としてもよい。この構成においては、
図7および
図8に示すように、黒色材BMは、光源LEDが配置された画素領域において、無機絶縁膜16を覆うように設けられている。
【0049】
図5~
図8に示した構成であっても、トランジスタ基板TRは、センサ素子SEと光源LEDとを同一基板上に備えている。また、有機受光素子層OPDは、光源LEDを実装するにあたって必要となる平坦化膜を兼ね、有機受光素子層OPDの上面に設けられる電極と、光源LEDの上面に設けられる電極とを共通化することが可能である点も変わりない。このため、
図5~
図8に示した構成であっても、トランジスタ基板TRの低コスト化を図ることが可能である。
【0050】
以上説明した本実施形態においては、光源LEDが上面と下面とに電源電圧が印加される電極(下部電極UEと共通電極CE)を備えているとしたが、光源LEDは下面に電源電圧が印加される二つの電極を備えた、いわゆるフリップチップ型の光源LEDを用いてもよい。
図9は、フリップチップ型の光源LEDが下面に電源電圧が印加される二つの電極UE1およびUE2を備えている場合の構成を示す平面図である。
【0051】
この場合、
図9に示すように、光源LEDは、下面に二つ電極UE1およびUE2を備え、これら二つの下部電極UE1およびUE2は、走査線GLに沿って第1方向Xに延出する2本の電源配線PL1およびPL2にそれぞれ接続されている。フリップチップ型の光源LEDに接続されものであり、例えば電源配線PL1はアノード電源配線もしくはカソード電源配線であり、電源配線PL2はカソード電源配線もしくはアノード電源配線となる。この構成であっても、トランジスタ基板TRは、センサ素子SEと光源LEDとを同一基板上に備えている。また、有機受光素子層OPDが、光源LEDを実装するにあたって必要となる平坦化膜を兼ねる点も変わりはないため、トランジスタ基板TRの低コスト化を図ることが可能である。
【0052】
図10は、トランジスタ基板TRに設けられる多数の光源LEDの配置レイアウトの一例を示す平面図である。
図10(a)では、多数の光源LEDが正方配置された配置レイアウトを示している。なお、
図10(a)では、3×3の画素領域に一つの光源LEDが配置される場合を想定している。
図10(a)に示す配置レイアウトは、主に、必要光源量が高く、光源LEDの配置数が多い場合に有効な配置レイアウトである。一方、
図10(b)では、多数の光源LEDが六方配置(千鳥配置)された配置レイアウトを示している。
図10(b)に示す配置レイアウトは、主に、必要光源量が低く、光源LEDの配置数が少ない場合に有効な配置レイアウトである。なお、
図10(b)に示す配置レイアウトにおいては、光源LEDが配置された画素を繋ぐことにより形成される形状が正三角形に近く、最密充填構造に近い構造を採る方が好ましい。但し、光源LEDが配置される画素の第1方向Xのピッチと、第2方向Yのピッチとは等しくなくても構わない。
【0053】
図11は、トランジスタ基板TRに設けられるダミーセンサ素子DSEについて説明するための図である。ダミーセンサ素子DSEは、センサ素子SEが配置される画素領域の一部に配置され、センサ素子SEとして機能しないものを指す。ダミーセンサ素子DSEは、例えば、当該画素領域においてのみ、有機受光素子層OPDの代わりに黒色材BMを配置することで形成される。あるいは、ダミーセンサ素子DSEは、当該画素領域においてのみ、スイッチング素子SWと画素電極PEとを電気的に接続しないことで形成される。
【0054】
ダミーセンサ素子DSEが形成されることにより、ダミーセンサ素子DSEが形成される領域とダミーセンサ素子DSEが形成されない領域との検出強度に強弱をつけることが可能となる。例えば
図11に示すように、3×3の画素領域を一つの検出領域とした場合、ダミーセンサ素子DSEが形成されている検出領域の検出強度を、ダミーセンサ素子DSEが形成されていない検出領域の検出強度に比べて、相対的に低くすることが可能である。
【0055】
以上説明した一実施形態によれば、有機受光素子を用いたセンサ装置の低コスト化を図ることが可能なトランジスタ基板およびその製造方法を提供することが可能である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
TR…トランジスタ基板、GL…走査線、SL…信号線、SE…センサ素子、SW…スイッチング素子、CH1…コンタクトホール、PE…画素電極、OPD…有機受光素子層、PL…電源配線、CH2…コンタクトホール、UE…下部電極、SO…接続導電部材、LED…光源、CE…共通電極。