(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ダム管理システム、流出予測装置、およびダム運用支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240930BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240930BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2020196077
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 茜
(72)【発明者】
【氏名】下平 興二
(72)【発明者】
【氏名】太田 亘
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-219828(JP,A)
【文献】特開2016-130428(JP,A)
【文献】特開2016-161314(JP,A)
【文献】特開2006-236367(JP,A)
【文献】特開2011-180899(JP,A)
【文献】特開2001-174571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムに流入する流入量を予測する流出予測装置と、
異なる降雨パターンに基づく複数の予測データを含む予測データテーブル
と、それぞれの前記予測データに付随する、洪水発生日時、洪水発生時期、降雨成因、洪水規模、流域平均最大雨量、流域平均総雨量、最大流入量、最大放流量、最高水位、分類、および、記事の少なくともいずれかの項目を含むメタデータを登録したメタデータテーブルとを記憶するデータベースとを具備し、
前記流出予測装置は、
降雨の観測データの入力を受け付ける観測データ入力部と、
前記データベースから複数の予測データを取得する予測データ取得部と、
前記取得された複数の予測データの各々と前記観測データとの類似度を計算する類似度計算部と、
前記類似度を基準として前記予測データを並べ替えて配列したリストを作成
し、前記リストにおける予測データに付随する前記メタデータを前記メタデータテーブルから取得して前記リストに配置するリスト作成部と
を備える、ダム管理システム。
【請求項2】
表示装置をさらに具備し、
前記流出予測装置は、
前記リストを前記表示装置に表示する表示制御部をさらに備える、
請求項1に記載のダム管理システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、期間を指定するためのダイアログウインドウを前記表示装置に表示し、
前記類似度計算部は、前記ダイアログウインドウで指定された期間における観測データと予測データとの類似度を計算する、
請求項2に記載のダム管理システム。
【請求項4】
前記リスト作成部は、前記類似度が既定値以上の予測データを前記リストに配列する、請求項1に記載のダム管理システム。
【請求項5】
ダムに流入する流入量を予測する流出予測装置において、
降雨の観測データの入力を受け付ける観測データ入力部と、
異なる降雨パターンに基づく複数の予測データを含む予測データテーブルと、それぞれの前記予測データに付随する、洪水発生日時、洪水発生時期、降雨成因、洪水規模、流域平均最大雨量、流域平均総雨量、最大流入量、最大放流量、最高水位、分類、および、記事の少なくともいずれかの項目を含むメタデータを登録したメタデータテーブルとを記憶するデータベースから複数の予測データを取得する予測データ取得部と、
前記取得された複数の予測データの各々と前記観測データとの類似度を計算する類似度計算部と、
前記類似度を基準として前記予測データを並べ替えて配列したリストを作成するリスト作成部と
前記類似度を基準として前記予測データを並べ替えて配列したリストを作成し、前記リストにおける予測データに付随する前記メタデータを前記メタデータテーブルから取得して前記リストに配置するリスト作成部と
を具備する流出予測装置。
【請求項6】
ダムの運用を補助するダム運用支援方法であって、
観測データ入力部が、降雨の観測データの入力を受け付ける過程と、
予測データ取得部が、異なる降雨パターンに基づく複数の予測データを含む予測データテーブルと、それぞれの前記予測データに付随する、洪水発生日時、洪水発生時期、降雨成因、洪水規模、流域平均最大雨量、流域平均総雨量、最大流入量、最大放流量、最高水位、分類、および、記事の少なくともいずれかの項目を含むメタデータを登録したメタデータテーブルとを記憶するデータベースから複数の予測データを取得する過程と、
類似度計算部が、前記取得された複数の予測データの各々と前記観測データとの類似度を計算する過程と、
リスト作成部が、前記類似度を基準として前記予測データを並べ替えて配列したリストを作成する過程と、
リスト作成部が、前記リストにおける予測データに付随する前記メタデータを前記メタデータテーブルから取得して前記リストに配置する過程と
を具備するダム運用支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダム管理システム、流出予測装置、およびダム運用支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治水としての洪水調節、、上水道、農業用水(かんがい)、あるいは水力発電などを目的として、多数のダムが建設されている。多くのダムに、流入量に応じて放流量を調整するダム管理用制御処理システム(ダムコンとも称される)が設けられている。国土交通省発行の非特許文献1には、ダムコンの標準設計仕様が詳しく記載されており、これからのダムコンはこの仕様書に沿って設計されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-15453号公報
【文献】特開2006-30013号公報
【文献】特開2006-184206号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】国土交通省「ダム管理用制御処理設備 標準設計仕様書・同解説(平成28年8月)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダムコンの操作者は、標準仕様書の枠を超えて、多様なサービスを求めている。例えば、ダム管理者の状況判断を支援する機能の充実である。とりわけ昨今、大規模洪水の発生率が年々増加しているなかで、ダム管理における洪水時対応の頻度も増加する傾向にあるといえる。洪水時のダム管理におけるダム管理者の状況判断の遅れは、下流域の被害の拡大をもたらす恐れがある。
【0006】
そこで、目的は、ダム管理者の判断を支援し、洪水被害の抑制に資するダム管理システム、流出予測装置、およびダム運用支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ダム管理システムは、ダムに流入する流入量を予測する流出予測装置と、異なる降雨パターンに基づく複数の予測データを含む予測データテーブルと、それぞれの前記予測データに付随する、洪水発生日時、洪水発生時期、降雨成因、洪水規模、流域平均最大雨量、流域平均総雨量、最大流入量、最大放流量、最高水位、分類、および、記事の少なくともいずれかの項目を含むメタデータを登録したメタデータテーブルとを記憶するデータベースとを具備する。流出予測装置は、観測データ入力部、予測データ取得部、類似度計算部、および、リスト作成部を備える。観測データ入力部は、降雨の観測データの入力を受け付ける。予測データ取得部は、データベースから複数の予測データを取得する。類似度計算部は、取得された複数の予測データの各々と観測データとの類似度を計算する。リスト作成部は、類似度を基準として予測データを並べ替えて配列したリストを作成し、リストにおける予測データに付随するメタデータをメタデータテーブルから取得してリストに配置する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係わるダム管理システムの一例を示す機能ブロック図。
【
図2】流出予測装置60の一例を示す機能ブロック図。
【
図3】予測データテーブル70aに登録される内容の一例を示す図。
【
図4】メタデータテーブル70bに登録される内容の一例を示す図。
【
図5】予測データのリストを示すウインドウの一例を示す図。
【
図6】流出予測装置60の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】類似降雨検索ダイアログウインドウの一例を示す図。
【
図8】観測データと予測データとの類似度の計算方法について説明するための図。
【
図9】観測データと予測データとの類似度の他の計算方法について説明するための図。
【
図10】予測データが類似度順でソートされた状態のウインドウの一例を示す図。
【
図11】予測データのデータ詳細を表示するウインドウの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[構成]
図1は、実施形態に係わるダム管理システムの一例を示す機能ブロック図である。このダム管理システムは、関係各所1と通信可能な情報入力・提供装置10、および訓練装置30を備え、これらは情報系LAN(Local Area Network)に接続される。また、ダム管理システムは、放流操作装置50、および流出予測装置60を備え、これらは情報系LANと、制御系LANとに接続される。情報入力・提供装置10、訓練装置30、放流操作装置50、および流出予測装置60は、例えば工場用コンピュータ(Factory Automation PC:FA-PC)として実現される。
【0010】
入出力装置80、および、遠方手動操作装置90が制御系LANに接続される。入出力装置80、および、遠方手動操作装置90は、機側伝送装置2に接続される。これにより、ダムの各種設備を遠隔から制御できるようになっている。入出力装置80、および、遠方手動操作装置90は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として実現される。
【0011】
図1において、情報入力・提供装置10は、ダム管理システムに各種の情報を入力したり、各種の情報を提供するために用いられる。訓練装置30は、各種の情報を液晶パネルディスプレイ(表示装置)などに表示するための制御を行う。
【0012】
放流操作装置50および流出予測装置60は互いに冗長化され、一方が他方の予備系として機能することが可能である。放流操作装置50は、ダムの放流ゲートを開閉するための制御を行う。
【0013】
流出予測装置60は、予測データベース70にアクセスし、予測データベース70に格納される各種の情報に基づいて、実施形態に係わる「類似降雨検索機能」を実現する。
【0014】
例えば、流出予測装置60のアプリケーションにおける機能の一部として、流出予測機能が実装される。そして、この流出予測機能における機能の一部として「類似降雨検索機能」を実装することができる。なお、「流出予測」とは、非特許文献1に記載される用語であり、意味合いとしては、ダムに流入する流入量を予測することと理解されることもできる。
【0015】
予測データベース70は、例えばリレーショナルデータベース(関係データベース)として構築され、ダム運用に係わる種々のテーブルと、問い合わせを受けたデータを目的のテーブルから取り出すデータベースマネジメントシステム(DBMS)とを含む。
【0016】
図2は、流出予測装置60の一例を示す機能ブロック図である。コンピュータである流出予測装置60は、降雨予測に関する情報などを視覚的に表示する表示装置61、ユーザインタフェースとしての入出力部62、情報系LAN、制御系LANに接続されるLANインタフェース(I/F)63を備える。また、流出予測装置60は、メモリ64、およびプロセッサ65を備える。メモリ64に記憶されたプログラム64aに含まれる命令をプロセッサ65が実行することで、実施形態に係わる各機能が実現される。
【0017】
また、実施形態では、流出予測装置60が、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等の記録メディアに予測データベース70を記憶する。予測データベース70は、予測データテーブル70a、およびメタデータテーブル70bを記憶する。
【0018】
図3は、予測データテーブル70aに登録される内容の一例を示す図である。予測データテーブル70aは、異なる降雨パターンに基づく複数の予測データを含む。予測データテーブル70aの各レコード(行)は、番号(No.)で区別され、それぞれの予測データは、フィールド(列)に項目分けされた、例えば10分おきの時刻ごとの降水量パターンが登録されている。予測データとしては、過去の観測データを登録しても良いし、操作者がオフラインで作成したデータを登録しても良い。
【0019】
図4は、メタデータテーブル70bに登録される内容の一例を示す図である。メタデータテーブル70bは、それぞれの予測データに付随するメタデータを登録したテーブルである。
図4に示されるように、メタデータテーブル70bのフィールドは、洪水発生日時、洪水発生時期、…、分類、記事、などの項目を含む。一つのレコードに、番号(No.)で区別される予測データの、各フィールドの値が登録される。
【0020】
操作者は、流出予測装置60からの操作により、予測データの取得を要求するクエリを予測データベース70に送信すると、複数の予測データおよび対応するメタデータが返信される。流出予測装置60は返信された各データを解釈し、予測データをリストアップし、データの一覧を示す
図5のウインドウを作成して表示装置61に表示する。
【0021】
図5は、予測データのリスト示すウインドウの一例を示す図である。
図5の一覧画面における列ラベルはクリック可能なボタンになっており、ボタンをクリックすることで、各ボタンに割り当てられた内容で予測データを並び替えることができる。例えば、このウインドウは、[類似降雨検索]ボタンを備える。この[類似降雨検索]ボタンがクリックされると、観測データと、予測データベース70の予測データとの類似度を計算する処理が開始される。
【0022】
図2に戻って説明を続ける。
図2に示されるプロセッサ65は、実施形態に係わる処理機能として、観測データ入力部65a、予測データ取得部65b、類似度計算部65c、リスト作成部65d、および、表示制御部65eを備える。
【0023】
観測データ入力部65aは、降雨の観測データの入力を受け付ける。観測データは、入出力部62を用いた操作者の手入力により入力されても良い。または、放流操作装置50および流出予測装置60のファイリングデータから実雨量データを取得しても良い。あるいは、関係各所1(
図1)から公表されるリアルタイムの観測データを情報入力・提供装置10を介して取得し、流出予測装置60のメモリ64等に記憶して良い。
【0024】
予測データ取得部65bは、予測データベース70から複数の予測データを取得する。予測データベース70の全てのレコードの予測データを取得しても良いし、あるいは指定された範囲(期間、番号など)の予測データを取得しても良い。
【0025】
類似度計算部65cは、取得された複数の予測データの各々と、入力された観測データとの類似度を計算する。
リスト作成部65dは、類似度計算部65cにより計算された類似度を基準として、取得された予測データを並べ替え(ソート)、表形式に配列したリストを作成する。その際、リスト作成部65dは、リストにおける予測データに付随するメタデータをメタデータテーブル70bから取得し、リストに配置することで、より詳細な情報を提示する。なお、予測データ取得部65bにより取得されたすべての予測データをリストアップしても良いし、類似度が既定値以上の予測データのみをリストに配列してもよい。
【0026】
表示制御部65eは、リスト作成部65dにより作成されたリストを、表示装置61に表示する。表示制御部65eは、例えば、流出予測装置60にインストールされたブラウザの画面、あるいは専用のアプリ画面にウインドウを表示し、当該ウインドウに上記リストを表示する。また、表示制御部65eは、操作者の操作を受け付けるための各種のダイアログウインドウを表示装置61に表示する。
【0027】
次に、上記構成における作用を説明する。
[作用]
図6は、流出予測装置60の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0028】
図5の[類似降雨検索]ボタンがクリックされると、流出予測装置60は、予測データとの比較対象とするための観測データの入力を受け付ける(ステップS1)。次に流出予測装置60は、表示装置61に類似降雨検索ダイアログウインドウを表示し、予測データの対象期間の範囲指定を受け付ける(ステップS2)。
【0029】
図7は、類似降雨検索ダイアログウインドウの一例を示す図である。このウインドウの、「基準降雨時間」欄、あるいは、過去[□]時間と示される欄に所望の期間を入力し、[開始]ボタンがクリックされると、流出予測装置60に対象期間が入力される。
【0030】
図6に戻り、流出予測装置60は、予測データベース70から複数の予測データを取得する(ステップS3)。そして、それぞれの予測データごとに、観測データとの類似度を計算する(ステップS4)。
【0031】
図8は、観測データと予測データとの類似度の計算について説明するための図である。類似度計算部65cは、類似降雨検索ダイアログウインドウで指定された期間(比較降雨期間)における予測データと、観測データとの類似度を計算する。
【0032】
図8に示されるように、類似度計算部65cは、観測データの波形と、各予測データの波形とを、同じ比較降雨期間にわたって比較し、類似度を評価する。例えば予測データNo.2が観測データに最も類似し、予測データNo.3が2番目に類似し、予測データNo.1が3番目に類似するならば、各予測データはその順で順位付けされ、結果がメモリ64(
図2)に記憶される。
【0033】
類似度の計算において、実際の降雨データ、つまり観測データ(時制T=0~TJ)の予測データ時間雨量をRJ_HOUR_Tとし、累計雨量をRJ_TOTAL_Tとする。また、予測データベース70に登録済みの予測データi(時制T=0~TCi)の時間雨量をRCi_HOUR_T、累計雨量をRCi_TOTAL_Tとする。累加雨量修正係数をCとする。
【0034】
予測データと観測データ波形kとの類似度simを、式(1)により計算することができる。
【0035】
【0036】
類似度simが低いほうから順に類似度が高いデータとする。なお、類似降雨を抽出する際、実際の降雨データの中に登録済み予測データと完全に一致する降雨が存在するとは限らない。そこで、降雨比較時間内の登録済み予測データ時間雨量の和と実際の降雨データの時間雨量の和が等しくなるように、登録済み予測データパターンの引き延ばしを行う。累加雨量修正係数Cは、式(2)により求められる。
【0037】
【0038】
図9は、観測データと予測データとの類似度の他の計算について説明するための図である。
図9(a)に示される観測データと、
図9(b)に示される一つの予測データから、同じ長さの期間にわたる複数データを抽出し、それぞれの期間データの類似度を計算して比較することも可能である。この場合、抽出された予測データの波形は、その類似度応じた順序(昇順、または降順)で並べ替えられ(
図9(c))、表示装置61に表示される。
【0039】
図6に戻って説明を続ける。類似度の計算が終了すると、流出予測装置60は、予測データを類似度の昇順、または降順でソート(並べ替え)し(ステップS5)、配列したウインドウを作成する(ステップS6)。このウインドウのデータはメモリ64に保存され、所定の操作者操作に応じて読み出されて、表示装置61の画面に表示される(ステップS7)。
【0040】
図10は、予測データが類似度順でソートされた状態のウインドウの一例を示す図である。
図5のウインドウにおいて[類似降雨順位]がクリックされると、メモリ64に記憶された類似度順に従って予測データが並べ替えられ、
図10の状態になる。与えられた観測データに最も類似する予測データは、類似降雨順位が1の予測データであり、
図10においては(No.5)が該当することが示される。操作者は、何れかの予測データをクリックすると、その詳細を知ることができる。
【0041】
図11は、予測データのデータ詳細を表示するウインドウの一例を示す図である。
図11のウインドウは例えば[予測結果表示・削除画面]と称され、この画面上で、当該予測データの類似度を参照することができる。
図11のウインドウの左上に、予測結果(No.2)、および類似度50%であることが示される。またこの画面では、比較元の観測データ(実降雨データ)を、予測データと同じグラフに描画することができる。
【0042】
なお、ウインドウのタイトルバーに[予測:貯留関数法]とあるように、例えば貯留関数法による流出予測処理を用いることができる。もちろん、貯留関数法等に限られるものではなく、他の手法を適用することも可能である。
【0043】
[効果]
以上述べたように実施形態では、ダム管理システムに類似降雨検索機能を実装し、データベースに保存されている予測データ群を一覧表示する際、指定した期間の観測データと各予測データとの類似度を算出する。そして、データベースの参照可能な予測データに対して類似度を計算し、予測結果一覧を画面に「類似降雨順位」でソートして表示するようにした。
【0044】
すなわち実施形態の流出予測装置60は、予測データベース70に予め登録された様々なパターンの降雨データ(予測データ)と、実観測した観測データとを比較し、類似度(比較結果の数値化)を算出し、算出した類似度で予測データの順位付けを行う。これにより、操作者が参照すべきデータの優先度が数値化され、より定量的なデータ比較が実現される。
【0045】
また
図11に示されるように、比較元のデータによるグラフを比較先のグラフに重ねて表示することにより、視覚的に比較できるようにした。これにより、数値化された定量的データ評価に加え、感覚的な比較を同時に行うことができ、操作者のノウハウによる状況判断に対しても詳細に支援することができる。つまり、1つのデータあたりの降雨データ、予測データ傾向を捉えることが容易になる。また、様々なファクターによる予測データ整理ができるようになる。
【0046】
従って実施形態によれば、洪水時といった、緊急事態にカテゴライズされるような事態にあっても、より正確な状況判断や、より効果的なゲートの制御計画を立てることを支援することができる。つまり、洪水時のダム管理において、ダム管理者である操作者にとってはより迅速、かつ正確な状況判断に基づいて予測データを選び取ることができる。ひいては、下流の水害を最小限に留めるようなダム管理を実現することができる。
【0047】
これらのことから、実施形態によれば、ダム管理者の判断を支援し、洪水被害の抑制に資するダム管理システム、流出予測装置、およびダム運用支援方法を提供することが可能となる。
【0048】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば
図2において、予測データベース70を流出予測装置60に実装する形態を説明した。これに限らず、ネットワークに予測データベース70を構築することももちろん可能である。例えば、データセンタやクラウドコンピューティングシステムに予測データベース70を設ける形態が考えられる。あるいは、
図1の情報系LANにサーバを接続し、このサーバに予測データベース70を記憶させても良い。要するに、流出予測装置60からアクセスすることが可能であれば、予測データベース70の形態は問われない。
【0049】
また、実施形態では流出予測装置60が表示装置61を備える形態を示したが、このほか、流出予測装置60に無線アクセス可能なタブレットなどの端末を表示装置としても良い。
【0050】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…関係各所、2…機側伝送装置、10…情報入力・提供装置、30…訓練装置、50…放流操作装置、60…流出予測装置、70…予測データベース、80…入出力装置、90…遠方手動操作装置、61…表示装置、62…入出力部、63…LANインタフェース、64…メモリ、64a…プログラム、65…プロセッサ、65a…観測データ入力部、65b…予測データ取得部、65c…類似度計算部、65d…リスト作成部、65e…表示制御部、70a…予測データテーブル、70b…メタデータテーブル。