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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】工業炉およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20240930BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F27D1/00 V
F27D21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020199933
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087767
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 方彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 学
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173358(JP,A)
【文献】特開2006-176828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の外壁の内部に耐火レンガ層が積層されているとともに、内部の温度を検出するための熱電対および保護管が前記外壁および耐火レンガ層を貫通するように設けられた工業炉であって、
内部へ突出した熱電対および保護管の周囲を覆うように金属製の枠体が外壁の内面に固着されているとともに、その枠体の内部に不定形耐火物が充填されており、かつ、前記枠体以外の部分に耐火レンガが組み付けられていることを特徴とする工業炉。
【請求項2】
前記枠体の内部においてアンカーが前記外壁に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の工業炉。
【請求項3】
金属製の外壁の内部に耐火レンガ層が積層されているとともに、内部の温度を検出するための熱電対および保護管が前記外壁および耐火レンガ層を貫通するように設けられた工業炉の施工方法であって、
内部へ突出した熱電対および保護管の周囲を覆うように金属製の枠体を外壁の内面に固着させる熱電対被覆工程と、
前記金属製の枠体の内部に不定形耐火物を充填する不定形耐火物充填工程と、
前記金属製の枠体以外の部分に耐火レンガを組み付ける耐火レンガ組付工程とを有することを特徴とする工業炉の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属製の周壁(外壁)の内側に耐火レンガ層が積層されているとともに、内部の温度を検知するための熱電対が設けられた各種の工業炉、および、その施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造等に用いられる工業用の炉として、長尺な円筒状のキルン本体を、長手方向に沿った軸を中心として回転可能に設けたロータリーキルンが知られている(特許文献1)。かかるロータリーキルンは、外周が所定の厚みを有する金属(炭素鋼等)製の外壁(鉄皮)によって覆われており、その外壁の内部に、耐火レンガを組み付けることによって耐火レンガ層が形成されている。また、内部の温度を検出するための棒状の複数の熱電対が、円筒状の保護管に覆われた状態で、キルン本体の外壁面に対して直交するように設けられている(特許文献2)。
【0003】
従来、ロータリーキルンを築炉する際には、外壁の内側に、耐火レンガを組み付けていき、熱電対および保護管の設置部位に差し掛かった時点で、重なり合う耐火レンガを、内側へ突出した熱電対および保護管の形状に合わせて切削して組み付けていた。また、ロータリーキルンを補修する際には、溶損後の残存した耐火レンガをすべて剥離してから、同様の方法で新たな耐火レンガが組み付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-159042号公報
【文献】特開2018-173358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のロータリーキルンの築炉あるいは補修方法は、熱電対の設置位置において、その熱電対の突出位置に合わせて、耐火レンガを個別に穿設、裁断しなければならないため、熱電対の設置位置での耐火レンガの組み付け(敷設)作業に非常に手間がかかる。また、ロータリーキルンにおいては、使用により熱電対が保護管とともに屈曲してしまうことがあるため、その屈曲形状に合わせて耐火レンガを個別に穿設、裁断しなければならないため、築炉あるいは補修作業が一段と手間の掛かるものとなってしまう。加えて、そのように熱電対の屈曲形状に合わせて耐火レンガを穿設、裁断すると、使用中に、その部分からクラックが生じてしまう。ロータリーキルンの回転に伴って耐火レンガに周方向のずれが生じた場合には、クラックの発生した箇所から耐火レンガが剥落し易くなる。そして、耐火レンガが剥落すると、短い周期で、再度の補修が必要になってしまう。その上、ロータリーキルンの回転に伴って、特に、熱電対周囲の耐火レンガに周方向のずれが生じた場合には、熱電対が損傷する事態も生じ得る。そして、熱電対が損傷してしまうと、炉内の温度測定ができなくなり、炉の操業に支障が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の工業炉(熱電対による内部の温度検知機能を備えた工業炉)の築炉あるいは補修方法が有する問題点を解消し、築炉作業や補修作業が非常に容易な上、築炉あるいは補修後の耐用期間を長くして補修頻度を低減させ、炉の安定操業を可能とする工業炉の施工方法を提供することにある。また、そのような施工方法で施工された補修頻度が少なく、安定操業が可能な工業炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、金属製の外壁の内部に耐火レンガ層が積層されているとともに、内部の温度を検出するための熱電対および保護管が前記外壁および耐火レンガ層を貫通するように設けられた工業炉であって、内部へ突出した熱電対および保護管の周囲を覆うように金属製の枠体が外壁の内面に固着されているとともに、その枠体の内部に不定形耐火物が充填されており、かつ、前記枠体以外の部分に耐火レンガが組み付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記枠体の内部においてアンカーが前記外壁に固着されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、金属製の外壁の内部に耐火レンガ層が積層されているとともに、内部の温度を検出するための熱電対および保護管が前記外壁および耐火レンガ層を貫通するように設けられた工業炉の施工方法であって、内部へ突出した熱電対および保護管の周囲を覆うように金属製の枠体を外壁の内面に固着させる熱電対被覆工程と、前記金属製の枠体の内部に不定形耐火物を充填する不定形耐火物充填工程と、前記金属製の枠体以外の部分に耐火レンガを組み付ける耐火レンガ組付工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の工業炉は、施工作業(築炉作業あるいは補修作業)が容易であり、短期間で施工することができる。その上、枠体が外壁の内面に固着されており、耐火レンガの周方向のずれが抑えられることで、熱電対の周囲の耐火レンガが剥落しにくいので、必要な補修の頻度を低く抑えることができる上、熱電対の損傷も防止できるので、炉の安定操業につながる(寄与する)。
【0011】
請求項2に記載の工業炉は、枠体の内部においてアンカーが外壁に固着されているため、熱電対の周囲の不定形耐火物が外壁の内面から剥落しにくいので、熱電対の損傷をより効果的に防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の工業炉の施工方法(築炉方法あるいは補修方法)によれば、熱電対が損傷しにくく必要な補修の頻度が低い安定操業可能な工業炉を、短期間で効率的に施工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ロータリーキルンのキルン本体を示す説明図(斜視図)である。
図2】キルン本体の鉛直断面を示す説明図である。
図3】熱電対の設置部位(図2におけるA部分)を示す説明図である(aは断面図であり、bは内面側から見た正面図である)。
図4】枠体を示す説明図である(aは斜視図であり、bは内面側から見た正面図であり、cは右側面図であり、dはbにおけるB-B線断面図である)。
図5】アンカーを示す説明図(正面図)である。
図6】ロータリーキルンを施工する様子を示す説明図である(aは内面側から見た正面図であり、bは断面図である)。
図7】ロータリーキルンを施工する様子を示す説明図である(aは内面側から見た正面図であり、bは断面図である)。
図8】ロータリーキルンを施工する様子を示す説明図である(aは内面側から見た正面図であり、bは断面図である)。
図9】ロータリーキルンを施工する様子を示す説明図である(aは内面側から見た正面図であり、bは断面図である)。
図10】ロータリーキルンを施工する様子を示す説明図である(aは内面側から見た正面図であり、bは断面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る工業炉およびその施工方法(築炉あるいは補修方法)の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、セメント製造用のロータリーキルンの一部であるキルン本体を示したものであり、ロータリーキルンは、燃焼室として機能するキルン本体1が、長尺な円筒状に形成されており、当該キルン本体1が、図示しない回転駆動装置によって、長手方向に沿った中心軸の周りに回転可能になっている。
【0015】
また、図2は、キルン本体1の鉛直断面(長手方向に対して垂直な鉛直断面)を示したものである。キルン本体1は、外周が金属(炭素鋼)製の外壁2によって覆われており、その内部に、耐火レンガ3,3・・が組み付けられており(敷設されており)、耐火レンガ層が積層された状態になっている。さらに、キルン本体1には、内部の温度を計測するための長尺な円柱状の熱電対4,4・・が、長手方向に沿って所定の間隔で設けられており、外壁2および耐火レンガ3を貫通した状態になっている。なお、それらの熱電対4,4・・は、円筒状の金属管(保護管)によって被覆されている。
【0016】
また、図3は、熱電対4の設置部分を拡大して示したものである。熱電対4の設置部分においては、金属製の枠体5が、外壁2の内面に溶接されており、当該枠体5によって、内部へ突出した熱電対4の先端際(温度検知部分)が覆われた状態になっている。
【0017】
図4は、熱電対4を覆った枠体5を示したものであり、枠体5は、側面を形成するための略扇形の2枚の金属板(鋼鉄板)5a,5aと、上下面を形成するための略長方形状の2枚の金属板(鋼鉄板)5b,5bとを溶接することによって、奥側の上下の高さが手前側の上下の高さより高い中空な四角柱状に形成されている。さらに、奥側の外周縁および内周縁には、開先が傾斜状に形成されている(図4(d)参照)。かかる枠体5は、開先の形成された奥側の外周縁および内周縁を溶接することによって、外壁2の内面に固着されている。
【0018】
さらに、枠体5の内部においては、Y字状のアンカー6が、外壁2の内面に溶接されており、熱電対4と隣接した状態になっている。図5は、アンカー6を示したものであり、アンカー6は、への字状に屈曲させた長短2つの円柱状体を溶接することによって形成されている。そして、かかるアンカー6は、先端の外周を円形状に溶接することによって、外壁2の内面に固着されている。
【0019】
さらに、上記の如く外壁2に溶接された枠体5の内部には、不定形耐火物7が充填されており、その不定形耐火物7によって、熱電対4の先端面を除いた周囲およびアンカー6が覆われた状態になっている。さらに、それらの枠体5の設置部分以外の外壁2の内面には、モルタル(主原料が耐火レンガと同じであるもの)によって、耐火レンガ3,3・・が組み付けられている。それらの耐火レンガ3,3・・は、奥側の上下の高さが手前側の上下の高さより高い略直方体状(四角錐台状)に形成されたものである。なお、枠体5と隣接した部分においては、耐火レンガ3,3・・が所定の左右幅に裁断されて、周囲の耐火レンガ3,3・・の設置状態に合わせて、長さおよび幅が調整されている。また、熱電対4の先端面は、不定形耐火物7の表面に露呈した状態になっており、枠体5の前端縁は、不定形耐火物7の表面より約20mm内側に位置した状態(埋まった状態)になっている。
【0020】
<工業炉の施工方法>
以下、上記の如く構成されたロータリーキルンの施工方法(築炉あるいは補修方法)について説明する。ロータリーキルンの施工方法は、a.耐火レンガ組付工程、b.熱電対被覆工程、c.不定形耐火物充填工程という3つの工程を実施するものである。以下、各工程について説明する。
【0021】
[a.耐火レンガ組付工程]
図6図10は、ロータリーキルンを施工(築炉あるいは補修)する様子を示したものである。ロータリーキルンを築炉する際には、まず、図6の如く、外壁(鉄皮)2の内面(熱電対4,4・・の設置部分以外)に、モルタルを用いて耐火レンガ3,3・・を組み付けるとともに外壁2に接着させる。なお、使用後のロータリーキルンを補修する際には、外壁2の内面に組み付けられた耐火レンガ(溶損したもの)3,3・・を引き剥がして、外壁2の内面を露出させた後に、新たな耐火レンガ3,3・・を組み付ける。
【0022】
ロータリーキルンの施工(築炉あるいは補修)においては、組み付け途中の耐火レンガ3,3・・が外壁2の内面から剥離しないように、キルン本体1を所定の回転位相で固定した状態で、耐火レンガ3,3・・を下側から上方へ順次組み付けていくのが好ましい。また、一定の上下幅の耐火レンガ3,3・・を組み付けた後には、未だ外壁2に接着されていない(モルタルが固化していない)耐火レンガ3,3・・の重力が外壁2の内面から引き剥がす方向に作用しないように、キルン本体1を適宜回転させるのが好ましい。また、耐火レンガ3,3・・としては、各種のものを用いることができる。
【0023】
[b.熱電対被覆工程]
上記の如く耐火レンガ3,3・・を組み付ける過程で、熱電対4の設置部分に差し掛かった際(すなわち、組み付けた最上の耐火レンガ3と熱電対4との間が所定の長さ(たとえば、耐火レンガ3の高さ)未満となった場合)には、その熱電対4を覆うように枠体5を外壁2の内面に溶接する。なお、その際には、枠体5の下側の金属板5bを、組み付けた最上の耐火レンガ3,3・・の上面に載置するように配置させる。また、外壁2の内面へ枠体5を溶接する際には、熱電対4を覆うように枠体5を外壁2の内面に当接させて、その状態で、開先の形成された枠体5の各金属板5a,5b・・の奥側の外周縁および内周縁を外壁2の内面に溶接する。
【0024】
なお、枠体5は、筒状のものであれば、特に形状は限定されないが、上記した図4の如き、中空な四角柱状のものであると、周囲に耐火レンガ3,3・・を組み付け易いので好ましい。また、枠体5は、前後の幅が周囲に敷設する耐火レンガ3,3・・の前後の幅よりも10~50mm短いものであると好ましい。枠体5の前後の幅と耐火レンガ3,3・・の前後の幅との差が10mm未満であると、施工後のロータリーキルンの使用時に熱による枠体5の溶損が起こり易くなるので好ましくなく、反対に、枠体5の前後の幅と耐火レンガ3,3・・の前後の幅との差が50mmを超えると、不測の応力が熱電対4に加わる事態を十分に防止することができなくなるので好ましくない。
【0025】
また、そのように熱電対4を覆うように枠体5を外壁2の内面に溶接した後には、その枠体5の内側に、Y字状等の形状を有するアンカー6を溶接する(すなわち、アンカー6の基端の外周を外壁2の内面に溶接する)。当該アンカー6としては、L字状に屈曲したものやY字状等に分岐したもの等を好適に用いることができる。そして、上記の如く、熱電対4を覆うように枠体5を外壁2の内面に溶接した後には、その枠体5の周囲に耐火レンガ3,3・・を組み付ける。なお、枠体5の周囲に耐火レンガ3,3・・を組み付ける場合には、必要に応じて、耐火レンガ3,3・・を上下あるいは左右に分割する。
【0026】
[c.不定形耐火物充填工程]
そして、すべての熱電対4,4・・を覆うように枠体5,5・・を外壁2の内面に溶接し、かつ、外壁2の内面全体に耐火レンガ3,3・・を組み付けた後には、外壁2に溶接された各枠体5,5・・の内部に不定形耐火物7を充填する。かかる不定形耐火物7の種類は、特に限定されず、アルミナセメントの水和セメント結合を利用したキャスタブル、分散剤やシリカヒューム等の超微粉を使用した低セメントキャスタブル、多孔質の軽量骨材とセメント材料等を混合した軽量キャスタブル、耐火性骨材に可塑性のある材料を加えたプラスチック材、プラスチック材に比べて可塑性の低いラミング材等を好適に用いることができる。なお、枠体5の内部に不定形耐火物7を充填する場合には、熱電対4の先端面が不定形耐火物7によって覆われないように配慮する。
【0027】
上記の如く、熱電対4,4・・を覆った枠体5,5・・の内部に不定形耐火物7を充填した後には、当該不定形耐火物7を十分に養生させることによって、ロータリーキルンの施工(築炉あるいは補修)を完了する。なお、ロータリーキルンを施工する際には、上記の如く、下側から順に耐火レンガ3,3・・を組み付ける途中で熱電対4,4・・の設置位置に差し掛かった時点で、その熱電対4の設置位置に枠体5を溶接することも可能であるし、すべての熱電対4,4・・の設置位置において枠体5,5・・を溶接した後に、耐火レンガ3,3・・を外壁2の内面に組み付けることも可能である。
【0028】
<工業炉(ロータリーキルン)の効果>
ロータリーキルンは、上記の如く、内部へ突出した熱電対(保護管で覆われたもの)4,4・・の周囲を覆うように金属製の枠体5,5・・が外壁2の内面に固着されているとともに、それらの枠体5,5・・の内部に不定形耐火物7が充填されており、かつ、枠体5,5・・以外の部分に耐火レンガ3,3・・が組み付けられたものであるため、施工作業(築炉あるいは補修作業)が容易であり、短期間で施工することができる。その上、枠体5,5・・が外壁2の内面に固着されており、耐火レンガ3,3・・の周方向のずれが抑えられることで、熱電対4,4・・の周囲の耐火レンガ3,3・・が剥落しにくいので、必要な補修の頻度を低く抑えることができる上、熱電対4,4・・の損傷も防止できるので、炉の安定操業につながる。
【0029】
また、ロータリーキルンは、各枠体5,5・・の内部においてアンカー6が外壁2に固着されているため、各熱電対4,4・・の周囲の不定形耐火物7が外壁2の内面から剥落しにくいので、各熱電対4,4・・の損傷をより効果的に防止することができる。
【0030】
一方、上記したロータリーキルンの施工方法(築炉あるいは補修方法)は、内部へ突出した熱電対4(保護管で覆われたもの),4・・の周囲を覆うように金属製の枠体5,5・・を外壁2の内面に固着させる熱電対被覆工程と、金属製の枠体5,5・・の内部に不定形耐火物7を充填する不定形耐火物充填工程と、金属製の枠体5,5・・以外の部分に耐火レンガ3,3・・を組み付ける耐火レンガ組付工程とを有するものであるため、熱電対4,4・・が損傷しにくく必要な補修の頻度が低い安定操業可能なロータリーキルンを、短期間で効率的に施工することができる。
【0031】
<工業炉およびその施工方法の変更例>
本発明に係る工業炉は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、外壁、耐火レンガ、熱電対、枠体、アンカー、不定形耐火物等の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。また、本発明に係る工業炉の施工方法も、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、熱電対被覆工程、不定形耐火物充填工程、耐火レンガ組付工程の各工程の内容等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0032】
たとえば、本発明に係る工業炉は、上記実施形態の如く、枠体の内部において外壁に不定形耐火物の剥落防止用のアンカーを溶接したものに限定されず、枠体を構成する鉄板の内面に単一あるいは2個以上の突起やアンカーを溶接したものでも良い。また、枠体内の不定形耐火物の剥落防止用のアンカーは、上記実施形態の如く、への字状に屈曲させた長短2つの円柱状体を溶接することによって形成されたY字状のものに限定されず、L字状のものや三つ叉状のもの等に変更することも可能である。さらに、耐火レンガや枠体内に充填する不定形耐火物の材質は、工業炉の用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【0033】
加えて、本発明に係る工業炉は、上記実施形態の如く、ロータリーキルンに限定されず、熱電対による内部の温度検知機能を備えた工業炉であれば、各種のものに適用することができる。なお、本発明に係る工業炉をロータリーキルンとした場合には、キルン本体の回転に伴って耐火レンガが周方向へずれることによる熱電対の損傷をより効果的に防止することが可能となる、というメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る工業炉は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、熱電対による内部の温度検知機能を備えた工業炉として好適に用いることができる。また、本発明に係る工業炉の施工方法は、熱電対による内部の温度検知機能を備えた工業炉を築炉あるいは補修するための方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・キルン本体
2・・外壁(鉄皮)
3・・耐火レンガ
4・・熱電対
5・・枠体
6・・アンカー
7・・不定形耐火物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10