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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】膨張機及びランキンサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F01B 3/02 20060101AFI20240930BHJP
   F25B 9/06 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F01B3/02
F25B9/06 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020200368
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088109
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 耕
(72)【発明者】
【氏名】飯田 登
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-252803(JP,A)
【文献】特開平09-053590(JP,A)
【文献】特開2001-255031(JP,A)
【文献】特開2004-197640(JP,A)
【文献】特開2005-090447(JP,A)
【文献】特開2006-170035(JP,A)
【文献】特開2006-183517(JP,A)
【文献】特開2009-185772(JP,A)
【文献】特開2019-015228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045124(US,A1)
【文献】米国特許第05775883(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01B 3/02
F25B 9/06
F25B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された作動流体を受け入れる高圧空間と、
前記作動流体が膨張する複数の作動室と、
前記複数の作動室で膨張した外部へ排出されるべき前記作動流体を受け入れる低圧空間と、
前記高圧空間と前記作動室とを連通させる吸入通路と、
前記低圧空間と前記作動室とを連通させる吐出通路と、
前記吸入通路の開閉期間及び前記吐出通路の開閉期間を調整して、前記作動流体が前記作動室へ吸入される吸入行程と、前記作動室において前記作動流体が膨張する膨張行程と、前記作動流体が前記作動室から前記吐出通路を通って吐出される吐出行程とを順次切り替えるバルブと、
前記高圧空間と、前記膨張行程にある前記作動室とを連通させる連通路と、を備えた、
膨張機。
【請求項2】
前記連通路の断面積は、前記吸入通路の断面積よりも小さい、請求項1に記載の膨張機。
【請求項3】
前記連通路の前記断面積は、前記吸入通路の前記断面積の10分の1以下である、請求項2に記載の膨張機。
【請求項4】
前記連通路は、前記バルブに形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の膨張機。
【請求項5】
前記作動室の容積を変動させるピストンをさらに備え、
前記バルブは、前記バルブの回転により前記吸入通路の前記開閉期間及び前記吐出通路の前記開閉期間を調整し、
前記バルブの回転軸線に垂直な特定の平面において、前記ピストンの上死点に対応する前記バルブの外周上の位置と前記バルブの回転軸線とを結ぶ第一直線と、前記バルブの回転方向における前記連通路の端と前記バルブの回転軸線とを結ぶ第二直線とがなす角は、150°以下である、
請求項4に記載の膨張機。
【請求項6】
前記バルブは、前記バルブの回転により前記吸入通路の前記開閉期間及び前記吐出通路の前記開閉期間を調整し、
前記バルブは、前記バルブの回転方向に延びている、前記連通路をなす溝を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の膨張機。
【請求項7】
前記バルブは、前記吸入通路をなす凹部を有し、
前記溝は、前記凹部から前記バルブの回転方向に延びている、請求項6に記載の膨張機。
【請求項8】
前記吸入通路が閉じた時点の前記作動室の容積に対する、前記吐出通路が開いた時点の前記作動室の容積の比は、2以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載の膨張機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の膨張機を備えた、ランキンサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張機及びランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の膨張のために膨張機が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷凍空調機において冷媒を膨張させるための膨張機が記載されている。この膨張機は、シリンダと、ピストンとを有する。シリンダには、冷媒が導入される。ピストンは、シリンダの内部を往復可能に配設されている。導入開始タイミングにおいて、シリンダの内部へ冷媒を導入し始める。ピストンは、上死点到達タイミングにおいて上死点に達する。膨張機は、導入開始タイミングが上死点到達タイミングよりも早いタイミングとなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-255031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高い膨張比を実現しつつ始動させやすい膨張機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における膨張機は、
外部から供給された作動流体を受け入れる高圧空間と、
前記作動流体が膨張する複数の作動室と、
前記複数の前記作動室で膨張した外部へ排出されるべき前記作動流体を受け入れる低圧空間と、
前記高圧空間と前記作動室とを連通させる吸入通路と、
前記低圧空間と前記作動室とを連通させる吐出通路と、
前記吸入通路の開閉期間及び前記吐出通路の開閉期間を調整して、前記作動流体が前記作動室へ吸入される吸入行程と、前記作動室において前記作動流体が膨張する膨張行程と、前記作動流体が前記作動室から前記吐出通路を通って吐出される吐出行程とを順次切り替えるバルブと、
前記高圧空間と、前記膨張行程にある前記作動室とを連通させる連通路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示における膨張機の始動において、連通路によって、高圧空間と、膨張行程にある作動室とが連通し、その作動室に高圧空間から作動流体が流入して作動室の内部の圧力が上昇し、大きなトルクが発生しやすい。そのため、本開示における膨張機は、高い膨張比を実現しつつ始動させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における膨張機の断面図
図2】実施の形態1における膨張機の機構部を拡大した断面図
図3図2のIII-III線を切断線とする機構部の断面図
図4】実施の形態1における膨張機のバルブの斜視図
図5】実施の形態1における膨張機のバルブの断面図
図6】実施の形態1における膨張機におけるトルクとクランク角との関係を示すグラフ
図7】実施の形態1における膨張機におけるトルクと角度θ1との関係を示すグラフ
図8】実施の形態2におけるランキンサイクル装置の構成図。
図9】他の実施の形態における膨張機のバルブの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らが本開示を想到するに至った当時、太陽光などの自然エネルギー又は各種排熱を利用するシステムの一つとして、ランキンサイクルを有する発電システムがあった。このようなランキンサイクルでは、例えば、高温かつ高圧の作動流体によって膨張機を作動させ、膨張機によって生成された動力によって発電がなされる。
【0010】
膨張機に関する技術として、シリンダと、ピストンとを有し、導入開始タイミングが上死点到達タイミングよりも早いタイミングとなるように膨張機を構成する技術があった。この技術では、導入開始タイミングにおいて、シリンダの内部へ冷媒を導入し始める。加えて、ピストンは、上死点到達タイミングにおいて上死点に達する。
【0011】
ランキンサイクルにおいて、膨張機が既に作動している状態では、例えば、複数の作動室は、バルブによって、順次、吸入通路及び吐出通路のそれぞれと所定時間連通する。特定の作動室において、吸入行程では、例えば、ピストンが上死点近傍に位置するときに吸入通路が作動室と連通し、高圧の作動流体が作動室の内部へ吸入され、作動流体の圧力によりピストンが下死点に向かって移動する。その後、膨張行程では、吸入通路が閉じて作動室が閉塞状態になり、作動室の内部の高圧の作動流体が膨張する。加えて、依然として膨張後の作動流体の圧力より高い作動室の内部の作動流体によってピストンが押されながら下死点まで移動する。その後、吐出行程では、作動室が吐出通路に連通している期間に、ピストンが上死点に向かって移動し、作動室の内部の流体が吐出通路を通って排出される。このように、作動室の内部の流体からピストンが受ける圧力によってピストンに下死点に向かって力が作用し、この力がトルクに変換される。さらに、このトルクは、例えば、発電機にて電力として回収される。
【0012】
一方、膨張機が静止した状態から膨張機を始動する場合、膨張機を作動させるために十分な大きさのトルクが得られない可能性がある。吸入行程では、吸入通路が作動室に連通しているので、高圧の作動流体が作動室に吸入され、上死点近傍にあるピストンには作動流体の圧力によって下死点に向かって力が作用する。膨張行程にある作動室には、高圧の作動流体が吸入されないことに加えて、作動室が閉塞されているので、作動室の容積が拡大すると作動流体の圧力が低下する。この場合、膨張機の始動を阻むトルクが発生しうる。吐出行程にある作動室は、吐出通路に連通しており、ピストンの移動方向両端において圧力差は発生しにくい。膨張機を作動させるトルクは複数の作動室においてピストンに作用する力の合計となるので、膨張機が既に作動している場合に比べて、膨張機の始動において小さいトルクしか得ることができない。
【0013】
高効率化のために、膨張機において高い膨張比を実現する場合、吸入行程が短く、膨張行程が長くなるので、膨張機の始動において得られるトルクは小さくなりやすく、膨張機の始動が困難であるという課題があった。また、機構各部の摩擦又は発電機による抵抗によって静止した状態から膨張機を始動させることが難しい場合があった。
【0014】
このように、本発明者らは、作動流体が膨張する複数の作動室と、吸入通路の開閉期間及び吐出通路の開閉期間を調整するバルブとを備えた膨張機では、作動流体の圧力差のみで膨張機を始動することが困難であるという課題を発見した。その課題を解決するために、本発明者らは、本開示の主題を構成するに至った。
【0015】
そこで、本開示は、高い膨張比を実現しつつ始動させやすい膨張機を提供する。
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図1図2図3図4図5図6、及び図7を用いて、実施の形態1を説明する。
【0018】
[1-1.構成]
図1図2、及び図3に示す通り、膨張機1aは、高圧空間11と、複数の作動室20と、低圧空間12と、吸入通路31と、吐出通路32と、バルブ40aと、連通路50とを備えている。高圧空間11は、膨張機1aの外部から供給された作動流体を受け入れる空間である。複数の作動室20において作動流体が膨張する。低圧空間12は、複数の作動室20で膨張した外部へ排出されるべき作動流体を受け入れる空間である。吸入通路31は、高圧空間11と作動室20とを連通させる。吐出通路32は、低圧空間12と作動室20とを連通させる。バルブ40aは、吸入通路31の開閉期間及び吐出通路32の開閉期間を調整して、吸入行程と、膨張行程と、吐出行程とを順次切り替える。吸入行程において、作動流体が作動室20へ吸入される。膨張行程にある作動室20において作動流体が膨張する。吐出行程において、作動流体が作動室20から吐出通路32を通って吐出される。連通路50は、高圧空間11と、膨張行程にある作動室20とを連通させる。
【0019】
図1に示す通り、膨張機1aは、例えば、密閉容器60と、機構部25と、発電機80とを備えている。機構部25及び発電機80は、密閉容器60の内部に配置されている。機構部25の内部には、高圧空間11と、低圧空間12の一部をなす上部空間12aが形成されている。また、密閉容器60の内部には、低圧空間12の別の一部をなす下部空間12bが形成されている。密閉容器60の内部空間には、作動流体が封入されている。作動流体は、特定の流体に限定されない。作動流体は、例えば、ランキンサイクルで使用可能な作動流体である。ランキンサイクルで使用可能な作動流体は、例えば、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)系の作動流体、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系の作動流体、又はイソペンタン等の炭化水素系の作動流体である。
【0020】
図1に示す通り、下部空間12bの下方にはオイル90が貯留されている。機構部25は、シャフト70と、給油機構95とを備えている。給油機構95は、オイル90に浸漬している。密閉容器60には、供給管61と、排出管62とが取り付けられている。供給管61の内部は、高圧空間11につながっており、排出管62の内部は、下部空間12bにつながっている。
【0021】
発電機80は、例えば、固定子81と、回転子82とを備えている。固定子81は、例えば、鉄心と、その鉄心に巻かれた銅線とを備えている。回転子82には、例えば、永久磁石が内蔵されている。固定子81は、例えば、密閉容器60の内面に固定されている。回転子82は、固定子81の内面に面して配置されており、シャフト70に取り付けられている。
【0022】
図2に示す通り、機構部25は、例えば、シリンダブロック21aと、下ブロック21bとを備えている。下ブロック21bは、例えば板状の部品であり、下ブロック21bの周縁は、溶接等の方法によって密閉容器60の内面に接合されている。これにより、機構部25が密閉容器60に固定されている。下ブロック21bは、例えば、下軸受29bを有する。下ブロック21bの中央部分は、例えば、円筒状に形成されている。下軸受29bは、下ブロック21bの中央部分に形成された孔をなす面によって構成されている。下ブロック21bは、例えば、連通穴12cを有する。連通穴12cは、下ブロック21bの上方の空間と下ブロック21bの下方の下部空間12bとを連通させている。下軸受29bは、例えば滑り軸受である。
【0023】
シリンダブロック21aは、下ブロック21bの上面に固定されている。これにより、シリンダブロック21aの下端に形成された開口が下ブロック21によって塞がれ、シリンダブロック21aと下ブロック21bとによって囲まれた空間として上部空間12aが形成されている。シリンダブロック21aは、例えば、上軸受29aを有する。上軸受29aは、例えば、シリンダブロック21aの中央部分に形成された孔をなす面によって構成されている。その孔は、シリンダブロック21aの中央における円筒状の部分によって形成されている。上軸受29aは、例えば滑り軸受である。シリンダブロック21aは、例えばアルミニウム合金で形成されている。
【0024】
図2に示す通り、シリンダブロック21aには、例えば、ハウジング27が形成されている。ハウジング27は、円環状の空間であり、ハウジング27の軸線は、上軸受29aの軸線上に位置する。ハウジング27の底部には、吐出通路32の一部をなす底部空間32bが形成されている。シリンダブロック21aは、例えば、吐出通路32の一部をなす縦通路32cを有する。縦通路32cは、上軸受29aの周囲に形成されており、ハウジング27の底部空間32bと上部空間12aとを連通させている。
【0025】
機構部25は、例えば、斜板28a及びホルダ28hをさらに備えている。斜板28aは、円盤状の部品であり、ホルダ28hによってシャフト70に固定されている。斜板28aは、シャフト70の周囲において環状の平面部を有し、その平面部の法線はシャフト70の軸線に対して傾斜している。加えて、斜板28aのその平面部は、シャフト70の軸線に垂直な平面に対しても傾斜している。
【0026】
シャフト70は、上軸受29a及び下軸受29bとの間に小さなクリアランスを形成した状態で回転可能に上軸受29a及び下軸受29bに挿入されている。これにより、シャフト70が半径方向に支持される。
【0027】
機構部25は、例えば、スラスト軸受28kをさらに備えている。スラスト軸受28kは、例えば、玉軸受である。スラスト軸受28kは、シャフト70の軸線方向において、ホルダ28hと下ブロック21bとの間に配置されている。スラスト軸受28kは、例えば、転動体として鋼球を備えている。
【0028】
機構部25は、例えば、ヘッド26をさらに備えている。ヘッド26は、例えば、環状かつ板状の部品である。ヘッド26は、シリンダブロック21aの上端に取り付けられている。
【0029】
図2及び3に示す通り、機構部25において、シリンダブロック21aの上軸受29aの周囲には、例えば、6つのシリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fが等間隔で配置されている。シリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fのそれぞれは、円柱状の孔をなしている。機構部25は、例えば、ピストン22を備えている。ピストン22は、作動室20の容積を変動させる。シリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fのそれぞれには、ピストン22が往復動可能な状態で挿入されている。ピストン22は、例えばアルミニウム合金で形成されている。機構部25は、6つのシリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fに対応して6つのピストン22を備えている。複数の作動室20のそれぞれは、シリンダ24a、24b、24c、24d、24e、又は24fと、ピストン22と、ヘッド26とによって囲まれた空間として形成されている。シリンダブロック21aのシリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fのそれぞれとハウジング27との間には、吸入吐出口20aが形成されている。吸入吐出口20aは、シリンダブロック21aのシリンダ24a、24b、24c、24d、24e、及び24fのそれぞれとハウジング27との間に形成された開口である。吸入吐出口20aは、作動室20の一部をなす。
【0030】
図2に示す通り、機構部25は、例えば、シュー28bをさらに備えている。シュー28bは、上シュー28m及び下シュー28nを含む。シュー28bは、斜板28aの周縁部に取り付けられている。各ピストン22は、シュー28bによって斜板28aに揺動可能に連結されている。斜板28aは、シャフト70とともに回転する。斜板28aの回転位置により、シャフト70の軸線方向における各ピストン22の位置が定まる。加えて、斜板28aの傾斜角度により、ピストン22のストロークが定まる。6つのピストン22は、シャフト70の軸線周りに等間隔で配置されているので、これらのピストン22は、シャフト70の回転に伴い、所定の位相差で互いに連動して往復動する。
【0031】
図2に示す通り、バルブ40aは、例えば、ハウジング27に回転可能な状態で収納されている。機構部25は、例えば、カバー27aをさらに備えている。カバー27aによって、ハウジング27が覆われている。供給管61は、例えば、カバー27aに取り付けられている。高圧空間11は、例えば、ハウジング27において、カバー27a及びバルブ40aによって囲まれた空間である。
【0032】
バルブ40aは、例えばロータリバルブであり、バルブ40aの回転により吸入通路31の開閉期間及び吐出通路32の開閉期間を調整する。バルブ40aは、例えば、シャフト70の回転及びピストン22の往復動と同期して回転する。バルブ40aの回転軸は、例えば、シャフト70の回転軸と平行である。バルブ40aの回転軸は、例えば、シャフト70の回転軸と一致している。バルブ40aは、例えば、シャフト70の一端部に取り付けられている。バルブ40aが取り付けられたシャフト70の一端部の直径は、例えば、その一端部に隣接する部分の直径よりも小さい。
【0033】
図4に示す通り、バルブ40aは、例えば円筒状である。バルブ40aは、例えば、第一凹部41と、第二凹部42とを有する。第一凹部41は、例えば、バルブ40aの回転軸線方向に延びる外周面45とバルブ40aの上面46とに跨る凹部として形成されている。第一凹部41は、吸入通路31をなす。第二凹部42は、バルブ40aの下面と外周面45とに跨る凹部として形成されている。第二凹部42は、吐出通路32の一部をなす。バルブ40aの中央には、バルブ40aの回転軸線方向に延びる貫通孔47が形成されている。例えば、この貫通孔47にシャフト70の一端部が挿入された状態でバルブ40aがシャフト70に取り付けられる。
【0034】
連通路50は、例えば、バルブ40aに形成されている。図4に示す通り、バルブ40aは、例えば、溝43aを有する。溝43aは、バルブ40aの回転方向に延びており、連通路50をなす。溝43aは、例えば、第一凹部41からバルブ40aの回転方向に延びている。換言すると、溝43aは、第一凹部41につながっている。溝43aは、例えば、外周面45に形成されている。
【0035】
例えば、所定のタイミングで吸入吐出口20aの開閉がなされるように、バルブ40aの回転方向において第一凹部41が形成される範囲及び第二凹部42が形成される範囲が定められている。
【0036】
図5は、バルブ40aの回転軸線に垂直な特定の平面を切断面とするバルブ40aの断面図である。例えば、その特定の平面は、連通路50と交差する。図5において、バルブ40aは、矢印に示す通り、反時計回りに回転する。図5において、バルブ40aの外周上の位置Bは、ピストン22の上死点に対応している。例えば、バルブ40aの位置Bが、バルブ40aの回転方向における吸入吐出口20aの中心と向かい合っているときに、その吸入吐出口20aを含む作動室20の容積を変動させるピストン22が上死点にある。バルブ40aの回転方向において、位置Bは、バルブ40aの外周上の位置Gと位置Cとの間に存在する。バルブ40aの回転方向において位置Gと位置Cとの間には、吸入通路31及び吐出通路32は存在していない。このため、ピストン22の上死点では吸入吐出口20aはバルブ40aによって閉塞される。なお、上死点において作動室20の容積は最小となる。しかし、ピストン22とヘッド26との間には小さな隙間が形成されており、作動室20の容積は零にはならない。この上死点における作動室20の容積と吸入吐出口20aの容積との合計は、死容積と呼ばれる。
【0037】
図5に示す通り、バルブ40aの回転方向において、位置Cと位置Dとの間に吸入通路31が形成されている。吸入通路31と吸入吐出口20aとが向かい合うことによって高圧空間11と作動室20とが連通する。バルブ40aの回転方向において、例えば、位置Dと位置Eとの間に連通路50が形成されている。位置Eは、バルブ40aの回転方向における連通路50の端に対応している。吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Dと位置Eとの間の部分と向かい合っているとき、その吸入吐出口20aを含む作動室20は連通路50を通過する作動流体の影響を受ける。しかし、吸入吐出口20aは、バルブ40aによって概ね閉塞される。
【0038】
吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Eと位置Fとの間の部分と向かい合っているとき、吸入吐出口20aはバルブ40aによって閉塞されている。
【0039】
図5に示す通り、バルブ40aの回転方向において、位置Fと位置Gとの間に吐出通路32が形成されている。吐出通路32と吸入吐出口20aとが向かい合うことによって低圧空間12と作動室20とが連通する。
【0040】
図5に示す通り、バルブ40aの回転軸線Oに垂直な特定の平面において、第一直線L1と、第二直線L2とがなす角θ1は、例えば150°以下であり、90°以上120°以下であってもよい。第一直線L1は、その特定の平面において、位置Bとバルブの回転軸線Oとを結ぶ直線である。第二直線L2は、その特定の平面において、位置Eと回転軸線Oとを結ぶ直線である。
【0041】
図5に示す通り、上記の特定の平面において、位置Cと回転軸線Oとを結ぶ第三直線L3と、第一直線L1とがなす角は、例えば10°以上20°以下である。上記の特定の平面において、位置Dと回転軸線Oとを結ぶ第四直線L4と第一直線L1とがなす角は、例えば50°以上60°以下である。上記の特定の平面において、位置Fと回転軸線Oとを結ぶ第四直線L5と第一直線L1とがなす角は、例えば180°以上200°以下である。上記の特定の平面において、位置Gと回転軸線Oとを結ぶ第四直線L6と第一直線L1とがなす角は、例えば330°以上350°以下である。これらの角度は、第一直線L1を起点に時計回り方向に正の値をもたらすように定義される。
【0042】
バルブ40aの回転方向における吸入吐出口20aの端部がバルブ40aの位置Cと向かい合って、吸入通路31が吸入吐出口20aと向かい合わない状態となりうる。このとき、その吸入吐出口20aを含む作動室20の容積を変動させるピストン22の作動室20に接する端面とヘッド26との間の距離は、例えば、ピストン22の往復動のストロークLの約1/4である。このため、バルブ40aによって吸入吐出口20aが閉塞される。吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Cと向かい合った状態から吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Dと向かい合った状態になるようにバルブ40aが回転する間に、作動室20の容積が拡大するようにピストン22が移動する。また、吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Fと向かい合った状態における作動室20の容積は、例えば、吸入吐出口20aがバルブ40aの位置Dと向かい合った状態における作動室20の容積の約4倍である。
【0043】
膨張機1aにおいて、膨張比は、例えば2以上である。膨張比は、吸入通路31が閉じた時点の作動室20の容積に対する、吐出通路32が開いた時点の作動室20の容積の比である。このように、膨張機1aの膨張比は高い。なお、上記の通り、吸入吐出口20aは、作動室20の一部であり、作動室20の容積は、吸入吐出口20aの容積を含む。
【0044】
膨張機1aにおいて、膨張比は、例えば2以上6以下である。
【0045】
図5に示す通り、連通路50の断面積は、吸入通路31の断面積よりも小さい。高圧空間11に供給された作動流体は、例えば、バルブ40aの回転軸線に平行な方向に沿って吸入通路31の入口を通過する。このため、吸入通路31の断面積は、例えば、バルブ40aの回転軸線に垂直な平面における吸入通路31の入口の面積である。連通路50において、作動流体は溝43aが延びる方向に沿って連通路50の入口を通過する。このため、連通路50の断面積は、バルブ40aの回転軸線を含む平面における連通路50の入口の面積である。
【0046】
連通路50の断面積は、例えば、吸入通路31の断面積の10分の1以下である。連通路50の断面積は、吸入通路31の断面積の100分の1以下であってもよい。連通路50の断面積は、例えば、吸入通路31の断面積の10000分の1以上である。
【0047】
[1-2.動作]
以上のように構成された膨張機1aについて、その動作を以下説明する。膨張機1aが停止している状態から膨張機1aを始動するとき、供給管61を通って高圧空間11に作動流体が供給される。例えば、図3に示す状態から膨張機1aを始動させることを想定する。
【0048】
図3において、シリンダ24dに対応する作動室20と吸入通路31とが連通しており、この作動室20は吸入行程にある。このため、この作動室20の圧力は高くなる。シリンダ24eに対応する作動室20は、膨張行程にある。この作動室20は、吸入通路31及び連通路50によって、高圧空間11と連通している。このため、この作動室20には、連通路50を通って高圧の作動流体が流入し、この作動室20の圧力も高くなる。このように、図3において、シリンダ24d及び24eに対応する作動室20における圧力が高くなる。一方、シリンダ24d及び24eに対応するピストン22の下面は低圧空間12に接している。その結果、これらのピストン22には、低圧空間12に向かって下向きの力が作用する。
【0049】
図3に示す通り、シリンダ24fに対応する作動室20は、シリンダ24eに対応する作動室20と同様に、膨張行程にある。しかし、シリンダ24fに対応する作動室20は、高圧空間11には連通していない。この作動室20の圧力は、膨張機1aが停止している状態では、シリンダ24fに対応するピストン22の下面に接する低圧空間12と同様に低い。このため、膨張機1aの始動直後において、シリンダ24fに対応するピストン22には、作動流体の圧力に伴う特定方向への力は作用しない。
【0050】
図3に示す通り、シリンダ24a、24b、及び24cに対応する作動室20は、吐出通路32に連通しており、吐出行程にある。吐出通路32の縦通路32cは、低圧空間12に接している。これらの作動室20の圧力は低圧空間12と同様に低く、シリンダ24a、24b、及び24cに対応するピストン22には、作動流体の圧力に伴う特定方向への力は作用しない。
【0051】
シリンダ24d及び24eに対応するピストン22に作用する下向きの力は、それらのピストン22に対応するシュー28bによって斜板28aに伝わる。これにより、斜板28aが固定されているシャフト70が図3における反時計回りに回転する。膨張機1aが連通路50を備えていないと仮定した場合には、作動流体の圧力により下向きの力が作用するピストン22は、シリンダ24dに対応するピストン22のみとなる。これに対し、膨張機1aでは、連通路50によってシリンダ24eに対応するピストン22にも下向きの力が作用する。加えて、斜板28aによって得られるトルクは、バルブ40aの回転方向に上記の直線L1から離れた位置で大きくなる。シリンダ24dに対応するピストン22の下降に伴い、高圧空間11から吸入通路31を通ってシリンダ24dに対応する作動室20に高温高圧の作動流体が吸入される。一方、シリンダ24a、24b、及び24cに対応するピストン22は上昇するので、シリンダ24a、24b、及び24cに対応する作動室20から吐出通路32を通って、低圧空間12の上部空間12aへ低温低圧の作動流体が吐出される。その後、作動流体は、連通穴12c、下部空間12b、及び排出管62を通って膨張機1aの外部に排出される。
【0052】
シリンダ24eに対応する作動室20には、連通路50を通って高圧の作動流体がわずかに供給されるものの、この作動室20における吸入吐出口20aは、バルブ40aによってほぼ閉塞されている。これら作動室20の容積は拡大する状態にある。このため、膨張機1aが一旦回転し始めると、この作動室20の容積の拡大に伴い、この作動室20において作動流体が膨張し、この作動室20における圧力は徐々に低下する。しかし、これらの作動室20における圧力がピストン22の下面に働く圧力より高くなるようにバルブ40aの開閉期間が調整されている。このため、シリンダ24eに対応するピストン22には下向きの力が作用する。このように、図3に示す状態から膨張機1aを始動させる場合、シリンダ24d及び24eに対応するピストン22に下向きの力が作用し、シャフト70を回転させる駆動力が発生する。シャフト70の回転に伴い、順次、各作動室20に作動流体が吸入され、膨張機1aを作動させるための駆動力が連続的に得られる。シャフト70の回転とともに、発電機80の回転子82が回転することにより、発電機80が発電して電力が得られる。
【0053】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、膨張機1aは、高圧空間11と、複数の作動室20と、低圧空間12と、吸入通路31と、吐出通路32と、バルブ40aと、連通路50とを備える。連通路50は、高圧空間11と、膨張行程にある作動室20とを連通させる。
【0054】
これにより、膨張機1aの始動において、高圧空間11における作動流体が連通路50を通って膨張行程にある作動室20へ流入する。このため、この作動室20の圧力が上昇し、膨張機1aを作動させるために大きなトルクが得られやすい。その結果、膨張機1aにおいて高い膨張比を実現しつつ、膨張機1aを始動させやすい。
【0055】
図6において、実線のグラフは膨張機1aにおいて発生するトルクとクランク角との関係を示している。このトルクは、全てのピストン22によって発生するトルクの合計である。クランク角0°は、特定のピストン22が上死点にある状態に対応している。図6において、破線のグラフは、膨張機1aが連通路50を備えていない場合に膨張機1aにおいて発生するトルクとクランク角との関係を示している。膨張機1aが連通路50を備えていることにより、クランク角によらずに大きなトルクが得られることが理解される。
【0056】
また、本実施の形態のように、膨張機1aにおいて、連通路50の断面積は、吸入通路31の断面積よりも小さくてもよい。これにより、膨張機1aの始動において作動流体が連通路50を通って膨張行程にある作動室20の圧力が高くなり、大きなトルクが得られる。一方、膨張機1aにおいてバルブ40aの回転速度が大きくなると、吸入行程、膨張行程、及び吐出行程を含む1サイクル中に連通路50を通って作動室20へ流入する作動流体の量は減少する。そのため、膨張機1aの始動のしやすさを向上させつつ、定常運転における連通路50から作動室20への作動流体の流入を抑制でき、膨張機1aが高い運転効率を発揮しやすい。
【0057】
また、本実施の形態のように、膨張機1aにおいて、連通路50の断面積は、吸入通路31の断面積の10分の1以下であってもよい。これにより、より確実に、膨張機1aが高い発電効率を発揮しやすい。
【0058】
また、本実施形態のように、膨張機1aにおいて、連通路50は、バルブ40aに形成されていてもよい。これにより、得られるトルクを大きくするのに寄与する膨張行程にある作動室20により確実に作動流体を導くことができ、膨張機1aより確実に始動させやすい。このため、膨張機1aにおいて高い膨張比を実現しやすい。加えて、バルブ40aの加工によって連通路50を容易に形成しやすい。
【0059】
また、本実施の形態のように、膨張機1aはピストン22をさらに備え、バルブ40aは、バルブ40aの回転により吸入通路31の開閉期間及び吐出通路32の開閉期間を調整してもよい。加えて、膨張機1aにおいて、第一直線L1と第二直線L2とがなす角θ1は、150°以下であってもよい。これにより、連通路50によって膨張行程にある作動室20により確実に作動流体を導くことができ、得られるトルクが大きくなりやすい。加えて、高圧空間11から低圧空間12への作動流体の漏れを低減でき、膨張機1aの運転効率を向上できる。
【0060】
図7は、トルクと第一直線L1と第二直線L2とがなす角θ1の大きさとの関係を示す。角θ1の大きさが150°以下の場合、角θ1の増加に伴い得られるトルクの大きさが増加する。しかし、角θ1が150°を超えると、角θ1が増加してもトルクの大きさはほとんど変わらない。一方、角θ1が大きいほど、連通路50における流量が大きくなりやすいと考えられる。このため、角θ1の大きさが150°以下であることが有利であると理解される。
【0061】
また、本実施の形態のように、膨張機1aにおいて、バルブ40aは、バルブ40aの回転により吸入通路31の開閉期間及び吐出通路32の開閉期間を調整してもよい。加えて、バルブ40aは、バルブ40aの回転方向に延びている、連通路50をなす溝43aを有していてもよい。これにより、連通路50の断面積が小さくなりやすく、膨張機1aの定常運転において連通路50における作動流体の流量を少なくできる。このため、高圧空間11から低圧空間12への作動流体の漏れが少なくなり、膨張機1aの運転効率を向上できる。
【0062】
また、本実施の形態のように、膨張機1aにおいて、バルブ40aは、吸入通路31をなす凹部である第一凹部41を有し、溝43aは、第一凹部41からバルブ40aの回転方向に延びていてもよい。これにより、高圧空間11から吸入通路31に導かれた作動流体の一部が溝43aによって形成された連通路50を通って膨張行程にある作動室20に供給される。これにより、連通路50における作動流体の流量を所望の値に調整しやすく、膨張機1aを始動させやすく、かつ、膨張機1aの運転効率を向上させやすい。
【0063】
また、本実施の形態のように、膨張機1aにおいて、吸入通路31が閉じた時点の作動室20の容積に対する、吐出通路32が開いた時点の作動室20の容積の比は、2以上であってもよい。これにより、膨張機1aにおいて高膨張比が実現されやすく、より多くの動力を得ることができ、膨張機1aの運転効率が向上しやすい。加えて、膨張機1aがこのように高い膨張比を有していても、膨張機1aの始動において連通路50によって大きなトルクが得られやすい。
【0064】
(実施の形態2)
以下、図8を用いて、実施の形態2を説明する。
【0065】
[2-1.構成]
図8において、ランキンサイクル装置100は、膨張機1aを備えている。ランキンサイクル装置100は、例えば、蒸発器2、凝縮器3と、ポンプ4、及び内部熱交換器5をさらに備えている。ランキンサイクル装置100において、蒸発器2、膨張機1a、内部熱交換器5、凝縮器3、ポンプ4、内部熱交換器5、及び蒸発器2の順で、これらが配管によって接続され、作動流体が流れる閉じたサイクルが形成されている。
【0066】
蒸発器2は、熱源6で生成された熱エネルギーを吸収する熱交換器である。蒸発器2は、例えばフィンチューブ熱交換器である。蒸発器2において、熱源6から供給された高温蒸気等の高温の熱媒体とランキンサイクル装置100における作動流体とが熱交換する。これにより、ランキンサイクル装置100の作動流体が加熱され、蒸発する。
【0067】
凝縮器3は、例えば、外気と膨張機1aから排出された作動流体とを熱交換させることによって、作動流体を冷却して凝縮させ、外気へ熱を放出する。凝縮器3として、フィンチューブ熱交換器等の公知の熱交換器を使用できる。
【0068】
ポンプ4は、凝縮器3から排出された作動流体を吸い込んで加圧し、加圧された作動流体を、内部熱交換器5を経由させて蒸発器2に向かって供給する。ポンプ4として、例えば、容積型のギヤポンプを用いることができる。
【0069】
内部熱交換器5は、再生熱交換器である。内部熱交換器5において、膨張機1aから排出された作動流体とポンプ4から吐出された作動流体とが熱交換する。内部熱交換器5は、第一流路5aと、第二流路5bとを有する。ポンプ4から吐出された作動流体が第一流路5aを流れる。膨張機1aから排出された作動流体が第二流路5bを流れる。内部熱交換器5として、例えば、プレート式熱交換器を使用できる。
【0070】
ランキンサイクル装置100の作動流体は、有機作動流体であってもよい。有機作動流体の沸点は通常低い。そのため、ランキンサイクル装置100の作動流体として有機作動流体を使用した場合、熱源6から供給された熱媒体の温度が300℃未満の場合であっても、ランキンサイクル装置100において、発電効率が高くなりやすい。
【0071】
[2-2.動作]
ランキンサイクル装置100は、例えば、以下の手順で運転される。まず、ポンプ4を作動させてランキンサイクル装置100の運転が開始する。ランキンサイクル装置100における作動流体の循環量が所定の値に達したら、熱源6から蒸発器2に熱媒体を供給する。ランキンサイクル装置100の作動流体は、蒸発器2において熱媒体から熱を受け取り、過熱状態の気相の作動流体へと変化する。高温かつ気相の作動流体は、膨張機1aに送られる。膨張機1aの機構部25において、作動流体の圧力エネルギーが機械エネルギーに変換され、発電機80が駆動される。これにより、発電機80において電力が生成される。膨張機1aから排出された作動流体は、内部熱交換器5の第二流路5bを通過して凝縮器3に導かれる。作動流体は、凝縮器3において、外気によって冷却され、凝縮する。凝縮した作動流体は、ポンプ4によって加圧され、内部熱交換器5の第一流路5aを通過して再び蒸発器2に送られる。
【0072】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、ランキンサイクル装置100は、実施の形態1に記載の膨張機1aを備えている。
【0073】
これにより、高膨張比の条件で膨張機1aが運転される場合でも、膨張機1aの始動において連通路50によって大きなトルクが得られやすい。
【0074】
(他の実施の形態)
実施の形態1では、連通路50に関し、バルブ40aの外周面45において第一凹部41からバルブ40aの回転方向に溝43aが延びている例を示した。しかし、連通路50は、このような例に限定されない。バルブ40aは、例えば、図9に示すバルブ40bのように変更されてもよい。バルブ40bは、特に説明する部分を除き、バルブ40aと同様に構成されている。バルブ40aの構成要素と同一又は対応するバルブ40bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。バルブ40aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、バルブ40bにも当てはまる。
【0075】
図8に示す通り、バルブ40bは、連通路50をなす溝43bを有する。溝43bは、バルブ40bの回転方向において第一凹部41から離れている。溝43bは、第一溝43m及び第二溝43nを含む。第一溝43mは、バルブ40bの回転方向に延びている。第二溝43nは、高圧空間11に接するバルブ40bの上面46からバルブ40bの回転軸線に平行な方向に延びて第一溝43mとつながっている。
【0076】
これにより、膨張機1aの始動において、溝43bによって形成された連通路50を通って高圧空間11から膨張行程にある作動室20に作動流体が流入する。このため、膨張行程にある作動室20の圧力が高くなり、連通路50によって高圧空間11と連通している膨張行程の作動室20の圧力にも起因してトルクが得られ、膨張機1aを作動させるためのトルクを大きくできる。その結果、膨張機1aにおいて高い膨張比を実現しつつ、膨張機1aを始動させやすい。
【0077】
実施の形態1では、上軸受29a及び下軸受29bとして、滑り軸受を示した。しかし、上軸受29a及び下軸受29bのそれぞれはこれには限定されない。上軸受29a及び下軸受29bのそれぞれは、例えば、ブッシュ等の高耐久性の摺動部材を用いた軸受であってもよい。また、上軸受29a及び下軸受29bのそれぞれは、転がり軸受であってもよい。この場合、滑り軸受に比べ摩擦損失の低減が可能である。
【0078】
実施の形態1では、スラスト軸受28kとして、転動体として鋼球を備えた玉軸受を示した。しかし、スラスト軸受28kはこれに限定されない。スラスト軸受28kは、転動体として円筒状のころを用いたころ軸受及び流体の動圧又は静圧を利用した滑り軸受等の他の形式の軸受であってもよい。
【0079】
実施の形態1では、膨張機1aの一例として、6つの作動室20を備えた例を示した。しかし、膨張機はこの例に限定されない。膨張機は、7つの作動室を備えていてもよいし、6個及び7個以外の複数の作動室を備えていてもよい。
【0080】
実施の形態1では、膨張機1aの一例として、連通路50がバルブ40aに形成された例を示した。しかし、膨張機はこの例に限定されない。連通路50は、例えば、シリンダブロック21a等のバルブ40a以外の部品に形成されていてもよい。
【0081】
実施の形態2では、蒸発器2の一例として、フィンチューブ熱交換器を示した。しかし、蒸発器2は、これに限定されない。例えば、蒸発器2は、プレート式熱交換器及び二重管式熱交換器等の公知の熱交換器であってもよい。
【0082】
実施の形態2では、凝縮器3の一例として、フィンチューブ熱交換器を示した。しかし、凝縮器3はこれに限定されない。凝縮器3は、プレート式熱交換器及び二重管式熱交換器等の熱交換器であってもよい。この場合、凝縮器3、別途設けられた熱媒体回路を流れる水等の熱媒体と作動流体とを熱交換させ作動流体を冷却するように構成されていてもよい。
【0083】
実施の形態2では、ポンプ4の一例として、容積型のギヤポンプを示した。しかし、ポンプ4はこれに限定されない。ポンプ4は、ギヤポンプ以外の容積型のポンプ又はターボ型のポンプであってもよい。容積型のポンプは、ピストンポンプ、ベーンポンプ、又はロータリポンプであってもよい。ターボ型のポンプは、遠心ポンプ、斜流ポンプ、又は軸流ポンプであってもよい。
【0084】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示は、例えば、回転式のバルブを有する膨張機及びランキンサイクル装置に適用可能である。具体的には、電力のみを生成するシステムだけでなく、CHPシステムなどのコジェネレーションシステムなどにも、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1a 膨張機
11 高圧空間
12 低圧空間
20 作動室
22 ピストン
31 吸入通路
32 吐出通路
40a、40b バルブ
41 第一凹部
43a、43b 溝
50 連通路
100 ランキンサイクル装置
L1 第一直線
L2 第二直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9