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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ワーク生産システムの異物処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20240930BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20240930BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240930BHJP
   B23Q 41/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B23Q7/00 E
H02J50/60
H02J50/10
B23Q41/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020206192
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093089
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特許第6749681(JP,B1)
【文献】特開2016-000446(JP,A)
【文献】米国特許第04371075(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039321(US,A1)
【文献】米国特許第04049500(US,A)
【文献】特開2018-008337(JP,A)
【文献】特開2012-104683(JP,A)
【文献】特公昭60-054206(JP,B2)
【文献】米国特許第05927464(US,A)
【文献】米国特許第05503259(US,A)
【文献】米国特許第04966080(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108028127(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1787274(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00-7/18
B23Q 37/00-41/08
H02J 7/00-7/12
H02J 50/00-50/90
B60J 5/00-5/42
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク生産システムで発生する異物を処理するワーク生産システムの異物処理装置であって、生産過程のワークを支持するワーキングパレットと、異なる生産処理工程を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、前記ワーキングパレットを順次移送可能にした複数の標準モジュールと、複数の前記標準モジュールを連結したモジュール群ユニットの始端側と終端側に配することにより、前記ワーキングパレットの移送方向を変換する一対の方向変換モジュールと、前記ワーキングパレットを各標準モジュールに対して順次移送する駆動機構部と、前記ワーキングパレットに配設した受電コイル及び前記ワーキングパレットの移送方向に沿って配設して前記受電コイルに給電可能なレール状に配設した送電コイルを有する給電機能部とを備えて前記ワーク生産システムを構成するとともに、前記ワーキングパレットにおける前記受電コイルの前側となる所定位置に配設し、移送時に、当該受電コイルの前方に存在する異物を移送方向へ移動させる異物押部を有し、この異物押部に当接した異物により、設定した押圧力以上の力が付与されたことを検出する過負荷検出部と、この過負荷検出部の検出時に、所定の異常処理を行う異常処理部とを備える異物処理部を設けたことを特徴とするワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項2】
前記給電機能部は、連結した各標準モジュールに沿って配設し、かつ平行に配した一対のコイルメンバを有する送電コイルと、この一対のコイルメンバ間に位置することにより、前記送電コイルから非接触により給電される受電コイルとを有するワイヤレス給電方式により構成することを特徴とする請求項1記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項3】
前記送電コイルは、各標準モジュールに配したコイルメンバ同士を順次連結することにより1ターンのコイルとして構成することを特徴とする請求項2記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項4】
前記異物処理部は、前記異物押部により移動した異物を途中位置で落下させる落下口部と、この落下口部から落下した異物を受け取る異物受部とを有する異物回収部を備えることを特徴とする請求項1記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項5】
前記異常処理部は、前記ワーク生産システムの稼働を停止する稼働停止処理機能及び/又はアラームを作動させるアラーム作動処理機能を含むことを特徴とする請求項1記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項6】
前記標準モジュールは、前記ワーキングパレットをガイドする第一レールメンバを備え、この第一レールメンバは、この標準モジュールに連結した他の標準モジュールの第一レールメンバに対して、相互間移送を可能に配設することを特徴とする請求項1記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【請求項7】
前記標準モジュールは、前記第一レールメンバに対して離間した位置に、前記ワーキングパレットをガイドする第二レールメンバを備え、この第二レールメンバは、この標準モジュールに連結した他の標準モジュールの第二レールメンバに対して、相互間移送を可能に配設することを特徴とする請求項6記載のワーク生産システムの異物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のワークを生産するワーク生産システムで発生する異物を処理する際に用いて好適なワーク生産システムの異物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ラインの省力化及び自動化を推進するため、生産過程のワークを、生産ラインに沿って移動する移動体により搬送するとともに、移動体に対して非接触方式により給電、即ち、生産ラインに配設した送電コイルから、非接触方式により移動体に配した受電コイルに給電できるようにした給電手段も提案されており、この種の給電手段としては、特許文献1により開示される非接触給電装置が知られている。
【0003】
同文献1により開示される非接触給電装置は、移動体の位置に関係なく常に、少なくとも1個の受電素子は良好な受電状態を確保して大きな交流電力を受け取り、受電する交流電力の脈動を抑制して、常に安定した非接触給電を行えるようにすることを目的としたものであり、具体的には、移動方向に沿い相互に離間して配置された複数の給電素子(給電コイル)と、各給電素子に交流電力を供給する交流電源と、移動体に設けられて非接触で交流電力を受け取る複数の受電素子(受電コイル)と、受電素子が受け取った交流電力を変換して電気負荷に出力する受電回路とを備え、給電素子の移動方向の長さをLTとし、給電素子の相互間の離間距離をDTとし、受電素子の移動方向の長さをLRとし、受電素子の相互間の離間距離をDRとしたとき、DT≦DRの関係、および(2×LR+DR)≦LTの関係が成り立つようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開公報WO2017/046946
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における非接触給電装置を生産ラインに適用した場合、次のような不具合を生じる問題点があった。
【0006】
即ち、非接触給電方式は、通常、生産ラインに沿って配設する送電コイル及び移動体に配した受電コイルを備えるため、受電コイルは、送電コイルに近接した状態で、この送電コイルに沿って移動する。一方、生産ラインでは、ネジ等の多数の部品類を扱うため、部品類が誤ってチャク等から落下する場合もあり、落下した部品類は異物として生産ライン上に存在する。
【0007】
この場合、特に、異物が送電コイルの近傍に存在した場合には、移動体の移動を阻害する要因や給電装置のトラブル要因になるのみならず、生産ラインの故障要因、更には生産の遅延を招くなどの重要な生産阻害要因にもなる。したがって、異物が発生した場合は、速やかに異物を排除するなど、適切な対応処理を行うことが望ましいが、従来の給電装置では、異物に対して適切に対応できる異物処理手段が存在しない実情があり、この課題を解決する観点からの更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したワーク生産システムの異物処理装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、ワーク生産システムHで発生する異物Bを処理するワーク生産システムの異物処理装置1を構成するに際して、生産過程のワークWを支持するワーキングパレット2…と、異なる生産処理工程を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、ワーキングパレット2…を順次移送可能にした複数の標準モジュールMs,Ms…と、複数の標準モジュールMs,Ms…を連結したモジュール群ユニットUmの始端側と終端側に配することにより、ワーキングパレット2…の移送方向を変換する一対の方向変換モジュールMr,Mfと、ワーキングパレット2…を各標準モジュールMs…に対して順次移送する駆動機構部3aと、ワーキングパレット2…に配設した受電コイル4b及びワーキングパレット2…の移送方向に沿って配設して受電コイル4bに給電可能なレール状に配設した送電コイル4aを有する給電機能部4とを備えてワーク生産システムHを構成するとともに、ワーキングパレット2における受電コイル4bの前側となる所定位置に配設し、移送時に、当該受電コイル2の前方に存在する異物Bを移送方向へ移動させる異物押部5pを有し、この異物押部5pに当接した異物Bにより、設定した押圧力以上の力が付与されたことを検出する過負荷検出部7dと、この過負荷検出部7dの検出時に、所定の異常処理を行う異常処理部7とを備える異物処理部5を設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、給電機能部4は、連結した各標準モジュールMs…に沿って配設し、かつ平行に配した一対のコイルメンバ11p,11p…を有する送電コイル4aと、この一対のコイルメンバ11p,11p…間に位置することにより、送電コイル4aから非接触により給電される受電コイル4bとを有するワイヤレス給電方式により構成することできる。この際、送電コイル4aは、各標準モジュールMs…に配したコイルメンバ11p,11p…同士を順次連結することにより1ターンのコイルとして構成することができる。一方、異物処理部5には、異物押部5pにより移動した異物Bを途中位置で落下させる落下口部6cと、この落下口部6cから落下した異物Bを受け取る異物受部6tとを有する異物回収部6を設けることができる。また、異常処理部7には、ワーク生産システムHの稼働を停止する稼働停止処理機能Ss及び/又はアラーム8を作動させるアラーム作動処理機能Saを含ませることができる。他方、標準モジュールMsには、ワーキングパレット2をガイドする第一レールメンバ15を設け、この第一レールメンバ15を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第一レールメンバ15に対して、相互間移送を可能に配設することができるとともに、第一レールメンバ15に対して離間した位置に、ワーキングパレット2をガイドする第二レールメンバ16を設け、この第二レールメンバ16を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るワーク生産システムの異常処理装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) ワーキングパレット2における受電コイル4bの前側となる所定位置に配設し、移送時に、当該受電コイル2の前方に存在する異物Bを移送方向へ移動させる異物押部5pを有する異物処理部5を設けたため、異物Bが送電コイル4aの近傍(受電コイル4bの前方)に存在した場合であっても、異物Bを速やかに排除等の処理を行うことができるため、ワーキングパレット2…の移動を阻害する不具合及び給電系のトラブル、更には生産ラインの故障や生産の遅延を招くなどの不具合を回避又は低減でき、特に、ワーキングパレット2…に対して給電を行う給電系を備えて構成した生産システムの信頼性及び安定性を高めることができる。
【0013】
(2) 異物処理部5に、異物押部5pに当接した異物Bにより、設定した押圧力以上の力が付与されたことを検出する過負荷検出部7dと、この過負荷検出部7dによる検出時に、所定の異常処理を行う異常処理部7を設けたため、異物押部5pに対して無理な応力が作用する前に、所定の異常処理を行うことができる。これにより、無理な応力が作用することに伴う破損や故障を事前に回避することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、給電機能部4を、連結した各標準モジュールMs…に沿って配設し、かつ平行に配した一対のコイルメンバ11p,11p…を有する送電コイル4aと、この一対のコイルメンバ11p,11p…間に位置することにより、送電コイル4aから非接触により給電される受電コイル4bとを有するワイヤレス給電方式により構成すれば、ワーキングパレット2…に対して、非接触の状態で給電可能になるため、ケーブル類の取り廻しを排除し、煩雑性の無いシンプルな給電系を構成できる。しかも、ワーキングパレット2…の位置、更には静動の有無に左右されることなく、連続して給電を行うことができるとともに、複数のワーキングパレット2…に対して、同時に安定した給電を行うことができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、送電コイル4aを、各標準モジュールMs…に配したコイルメンバ11p,11p…同士を順次連結することにより1ターンのコイルとして構成すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付と同時に送電コイル4aも組付けることができるとともに、標準モジュールMs,Ms…の数量に応じて、送電コイル4aの長さも適合させることが可能になり、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な給電機能部4を構築することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、異物処理部5に、異物押部5pにより移動した異物Bを途中位置で落下させる落下口部6cと、この落下口部6cから落下した異物Bを受け取る異物受部6tとを有する異物回収部6を設ければ、特別な排除構成や処理機能を追加することなしに、異物Bに対する排除等の処理を行うことができるため、実施の容易化及び低コスト化に寄与できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、異常処理部7に、ワーク生産システムHの稼働を停止する稼働停止処理機能Ss及び/又はアラーム8を作動させるアラーム作動処理機能Saを含ませれば、稼働停止又は異常報知を同時又は選択的に行うことができるため、破損や故障のより確実な回避と作業者への迅速な異常発生の報知を行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、標準モジュールMsに、ワーキングパレット2をガイドする第一レールメンバ15を設け、この第一レールメンバ15を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第一レールメンバ15に対して、相互間移送を可能に配設すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第一レールメンバ15…が連続する全体の移送レールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な形態として実施できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、標準モジュールMsに、第一レールメンバ15に対して離間した位置に、ワーキングパレット2をガイドする第二レールメンバ16を設け、この第二レールメンバ16を、この標準モジュールMsに連結した他の標準モジュールMsの第二レールメンバ16に対して、相互間移送を可能に配設すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第二レールメンバ16…が連続する全体の戻しレールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な形態として実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係るワーク生産システムの異物処理装置の一部抽出拡大図を含む全体構成図、
図2】同異物処理装置の異物処理部に備える異物回収部の平面視の構成図、
図3】同異物処理装置の異物処理部に備える異物押部及びその周辺を示す正面視の一部断面構成図、
図4】同ワーク生産システムの一部分を省略して原理的に示す右側面視の断面構成図(図6中A-A断面)、
図5】同ワーク生産システムの一部分を原理的に示す平面視の断面構成図、
図6】同ワーク生産システムの一部分を原理的に示す後面側の断面構成図(図5中B-B断面)、
図7】同ワーク生産システムにおける駆動ユニットの左側面視の構成図(図6中C-C断面)、
図8】同ワーク生産システムのワーキングパレット及び第三駆動機構部の平面視の抽出拡大図、
図9】同ワーク生産システムの給電機能部における送電コイルと受電コイルの関係を示す断面図、
図10】同ワーク生産システムにおける給電機能部の構成図、
図11】同ワーク生産システムにおける制御系及び駆動系のシステム構成を示すブロック系統図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る異物処理装置1の理解を容易にするため、この異物処理装置1を用いて好適なワーク生産システムHの基本的な構成について、図4図11を参照して説明する。
【0023】
ワーク生産システムHは、図4に示すように、システム本体を構成する、複数の標準モジュールMs,Ms…,及び一対の方向変換モジュールMr,Mfを備えるとともに、システム本体とは別体となり、システム本体内で移送される複数のワーキングパレット(以下、パレットと略記)2…を備える。したがって、生産過程のワークWは、このパレット2により支持される。なお、実施形態で示すワーク生産システムHでは、生産時におけるワークWの移送方向(順方向)を前方向として説明する。
【0024】
パレット2は、図4図6及び図8に示すように、パレット本体部21を有し、このパレット本体部21に、各種パーツ類Wa,Wb…を保持するチャック機構Ca,Cb…等を備えている。図6に示すように、パレット本体部21の下面21dの中間位置には、後述する、第一レールメンバ15…,第二レールメンバ16…,単レール17…にガイドされて移送されるスライダ部22を有する。また、後述する受電コイル4bを配設し、この受電コイル4bは、図6及び図9に示すように、スライダ部22に対して左側に位置する下面21dから下方へ突出させる。さらに、図4図6及び図8に示すように、パレット本体部21の右端面21qには、この右端面21qから横方向に形成した上下二つの係合孔23a,23bを有する。
【0025】
一方、標準モジュールMsは、標準となる基本構成を備えており、この基本構成をベースとして、使用する生産処理工程に対応する具体的な付属構成を備える。基本構成において、31はフレーム体を示す。このフレーム体31は、図6に示すように、離間して配した左側板31pと右側板31qを備えるとともに、この左側板31pの下端位置と右側板31qの下端位置間を連結する横方向Fhの基礎板31b、この基礎板31bの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した支持板31s、この支持板31sの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した下中間板31d、この下中間板31dの上方に配し、左側板31pと右側板31q間に架設した上中間板31u、をそれぞれ備える。なお、図4に示すように、基礎板31bの下面における四個所には移動用のキャスタ32…を設ける。
【0026】
そして、フレーム体31の前端は、位置決めして他のフレーム体31の後端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成するとともに、フレーム体31の後端は、位置決めして他のフレーム体31の前端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成する。これにより、必要な生産処理工程に対応した数量の標準モジュールMs,Ms…を順次移送方向に連結することができ、連結した複数の標準モジュールMs,Ms…によりモジュール群ユニットUmが構成される。
【0027】
また、図4図6に示すように、上中間板31uの上面における中間位置には、長手方向が前後方向となる第一レールメンバ15を取付け固定する。この第一レールメンバ15は、後述するパレット2…の順方向となる移送方向Fmへガイドする機能を備える。このため、標準モジュールMsのフレーム体31に対して、他の標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際には、他の第一レールメンバ15と同一直線上に連続的に並ぶことによりパレット2…の相互間移送が可能になるように配設する。このような第一レールメンバ15を設ければ、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第一レールメンバ15…が連続する全体の移送レールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な形態として実施できる。
【0028】
さらに、上中間板21uの上面における第一レールメンバ15の左方位置(左側板31p側)には、図9に示すように、一定の間隔により平行に配した一対のコイルメンバ11p,11pを取付ける。なお、11bは、コイルメンバ11pを取付け固定するための基板を示す。このコイルメンバ11p,11pは、標準モジュールMsのフレーム体31に対して他の標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際に、図10(a)に示すように、相隣るコイルメンバ11pと11pの端部同士を、接続部材41により接続可能に構成する。これにより、図10(b)に示すように、各標準モジュールMs,Ms…に配したコイルメンバ11p,11p…同士が接続部材41…により順次連結され、1ターンのコイルによる送電コイル4aが構成されるとともに、この送電コイル4aは、連結した標準モジュールMs,Ms…に沿って平行に配した一対のコイルメンバ11p,11p…が連続するレール状に配設される。この送電コイル4aは、前述したパレット2…に配設した受電コイル4b…と組合わさることにより、送電コイル4aから非接触により受電コイル4b…に送電を行うワイヤレス給電方式による本実施形態における給電機能部4を構成する。
【0029】
このように、コイルメンバ11p…により送電コイル4aを構成すれば、標準モジュールMs,Ms…の組付と同時に送電コイル4aも組付けることができるとともに、標準モジュールMs,Ms…の数量に応じて、送電コイル4aの長さも適合させることが可能になり、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な給電機能部4を構築することができる。また、給電機能部4を、このような送電コイル4a及び受電コイル4b…を有するワイヤレス給電方式により構成すれば、パレット2…に対して、非接触の状態で給電可能になるため、ケーブル類の取り廻しを排除し、煩雑性の無いシンプルな給電系を構成できる。しかも、パレット2…の位置、更には静動の有無に左右されることなく、連続して給電を行うことができるとともに、複数のパレット2…に対して、同時に安定した給電を行うことができる。
【0030】
図10は、給電機能部4の全体構成を示す。1ターンにより構成される送電コイル4aの両端には、ワイヤレス給電回路42を接続する。ワイヤレス給電回路42は、出力部を送電コイル4aの両端に接続したインバータ42i,及びこのインバータ42iの入力部を接続した直流電源部42pを備え、この直流電源部42pの一次側は商用交流電源43に接続する。なお、42tは平滑部を示す。これにより、例示するワイヤレス給電回路42は、直流電源部42pにより商用交流電源43が直流変換され、インバータ42iの入力部に付与される。この結果、インバータ42iにより6.78〔MHz〕帯の高周波電力が生成され、送電コイル4aの両端に付与される。6.78〔MHz〕帯を使用すれば、基板上に送電コイル4aを設置できるとともに、小型軽量化を実現可能となり、しかも、周囲の金属を加熱させない利点がある。
【0031】
また、生産処理時には、送電コイル4aの内側エリアに、常時、各受電コイル4b…が位置するため、送電コイル4aの高周波(電波)は、非接触により、受電コイル4bにより受電され、パレット2…に設けられた図10及び図11に示す受電処理回路47に供給される。受電処理回路47では、DC電源部47pにより直流化処理され、パレット2…において必要となるチャック機構等の駆動系47dに供給されるとともに、検査装置等を含む信号処理系47cに付与される。さらに、受電処理回路47には、子機47ccを搭載し、この子機47ccは、システム本体側に設置された親機67mと近距離無線通信を行うことにより各種データの送受信を行うことができる。なお、例示の場合、親機67mは、後述する方向変換モジュールMrに設置する配電盤67に接続される。
【0032】
一方、下中間板21dの上面における中間位置には、第二レールメンバ16を、上述した第一レールメンバ15と同様に取付け固定する。これにより、第二レールメンバ16は、第一レールメンバ15に対して離間した位置に配設され、パレット2…の逆方向Frへの移送をガイドする機能を備える。このため、フレーム体31に対して他のフレーム体31を結合した際には、他の第二レールメンバ16と同一直線上に連続的に並ぶことによりパレット2…の相互間移送が可能になる。このような第二レールメンバ16を設ければ、標準モジュールMs,Ms…の組付けと同時に、第二レールメンバ16…が連続する全体の戻しレールを構築できるため、標準モジュールMs,Ms…の組合わせによるワーク生産システムHに最適な形態として実施できる。
【0033】
さらに、右側板31qには、図7及び図8に示すように、パレット2を標準モジュールMs内で前後方向へ移動させる第三駆動機構部3cを設ける。例示する第三駆動機構部3cは、一対のプーリ間に無端タイミングベルト51cbを架け渡して構成したコンベア部51c,及び一方のプーリを回転させるモータ51dmを用いた調整回転駆動部51dを備えるとともに、この無端タイミングベルト51cbの下ベルト部の下面における所定位置に固定したロケートピン機構部52を備える。このロケートピン機構部52は、図8に示すように、ロケートピン部52pとこのロケートピン部52pを進退変位させるソレノイドを用いたピン駆動部52dを備える。これにより、ピン駆動部52dを駆動制御し、ロケートピン部52pを突出変位させれば、パレット本体部21の右端面21qに設けた上側の係合孔23aに対して実線で示す位置まで挿入できるとともに、ピン駆動部52dを駆動制御し、ロケートピン部52pを引込変位させれば、係合孔23aから仮想線で示す位置に離脱させることができる。このような第三駆動機構部3cを設ければ、標準モジュールMs内においてパレット2の位置の移動や調整が可能になるため、多様な生産処理工程を構築することができるとともに、生産処理工程の処理精度を高めることができる。
【0034】
そして、支持板31sの上面には、中継基板33を配設するとともに、基礎板31bの上面には、中継バルブ34を配設する。以上、一台の標準モジュールMsについて説明したが、他の標準モジュールMsもこのような共通となる基本構成を備えている。このような標準モジュールMs,Ms…は、パレット2…の移送方向Fmである一方向に順次連結することによりモジュール群ユニットUmとして構成され、各標準モジュールMs,Ms…に対して、パレット2…を順次移送可能となる。
【0035】
他方、方向変換モジュールMr,Mfは、パレット2…の移送方向Fmを変換する機能を備える。例示の場合、方向変換モジュールMr,Mfは、パレット2を縦方向Fvへ移送するエレベータモジュールMvにより構成した。この種の方向変換モジュールMr,Mfは、標準モジュールMsの形態により、横方向Fhへ移送する方式により構成することも可能であるが、エレベータモジュールMvにより構成し、実施形態で示す標準モジュールMs…と組合わせれば、生産システムH全体の横幅方向におけるサイズダウンを図ることができるため、特に、設置スペースが限られている場所に設置する際における最適な形態として実施できる。
【0036】
方向変換モジュールMr,Mfは、一対の方向変換モジュールMr,Mf、即ち、始端側に配する方向変換モジュールMrと終端側に配する方向変換モジュールMfにより構成する。始端側の方向変換モジュールMrは、標準となる基本構成を備えており、61はフレーム体を示す。このフレーム体61は、図5に示すように、離間して配した左側板61pと右側板61qを備えるとともに、この左側板61pの下端位置と右側板61qの下端位置間を連結する横方向Fhの基礎板61b、この基礎板61bの上方に配し、左側板61pと右側板61q間に架設した支持板61s、後側の側面を閉塞する後側板61rをそれぞれ備えて構成する。なお、基礎板61bの下面における四個所には移動用のキャスタ62…を備える。そして、フレーム体61の前端は、位置決めして前述した標準モジュールMsにおけるフレーム体31の後端に、図示を省略した結合具により結合可能に構成する。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、左側板61pには、離間して配した前後一対の始端側昇降機構部63,63を配設するとともに、後側板61rの右側位置には、ガイド機構部65を配設する。そして、方向変換モジュールMrの内部には、前述した標準モジュールMsに備える下中間板31d(又は上中間板31u)よりも稍サイズを小さくした昇降板66を配し、この昇降板66を、昇降機構部63,63により昇降可能に支持するとともに、ガイド機構部65によりガイド可能に支持する。この場合、昇降機構部63,63の昇降駆動には、電磁駆動アクチュエータ又はエア駆動アクチュエータを利用できるとともに、駆動方式は、リニアモータ等による直接駆動方式であってもよいし、モータとベルト伝達機構等を用いた間接駆動方式であってもよい。なお、昇降板66には、昇降機構部63,63及びガイド機構部65の干渉を回避する切欠部を設ける。これにより、昇降板66は、図4に示すように、実線で示す下降位置Xd又は仮想線で示す上昇位置Xuに選択的に昇降移動させることができ、下降位置Xdでは、標準モジュールMsにおける下中間板31dの高さに一致し、上昇位置Xuでは、標準モジュールMsにおける上中間板31uの高さに一致する。
【0038】
さらに、昇降板66の上面における中間位置には、単レール17を標準モジュールMsにおける第一レールメンバ15と同様に取付ける。これにより、方向変換モジュールMrのフレーム体61に対して、標準モジュールMsのフレーム体31を結合した際には、この方向変換モジュールMrに結合した標準モジュールMsの第一レールメンバ15又は第二レールメンバ16に対して相互間移送が可能になる。このように構成すれば、単レール17,17を一方向(昇降方向)へ移動させるのみでパレット2…の方向変換を実現することができるため、部品点数の少ないシンプルな方向変換機構を構築できる。
【0039】
そして、実施形態の場合、支持板61sの上面に、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を含む配電盤67を配設するとともに、基礎板61bの上面に、エアコンプレッサレギュレータ68を配設する。また、方向変換モジュールMrの外面における所定位置には、タッチパネル付ディフプレイを含む操作パネル69を配設する。以上、一方(始端側)の方向変換モジュールMrについて説明したが、他方(終端側)の方向変換モジュールMfも同様の基本構成を備えている。この場合、終端側の方向変換モジュールMfは、図4に示すように、始端側の方向変換モジュールMrに対して、後側板61rの代わりに、前側板61fを設けた点、配電盤67及びエアコンプレッサレギュレータ68の代わりに、中継基板33及び中継バルブ34を配設した点、操作パネル69を設けない点を除いて、始端側の方向変換モジュールMrと同様に構成することができる。なお、64,64は、終端側の方向変換モジュールMfにおける昇降機構部を示す。
【0040】
また、ワーク生産システムHは、図7に示す駆動ユニット3を備える。この駆動ユニット3には、駆動機構部(第一駆動機構部)3a,第二駆動機構部3b及び第三駆動機構部3c…が含まれる。この場合、第三駆動機構部3cは、前述したように、各標準モジュールMs単位で各右側板31q…に配設される。他方、第一駆動機構部3a及び第二駆動機構部3bは、各モジュールMs…,Mr及びMfの全体を通して機能するため、図5図7に示すように、モジュール群ユニットUmに、一対の方向変換モジュールMr,Mfを設置した状態で組付けることができる。
【0041】
第一駆動機構部3aは、パレット2…を各標準モジュールMs,Ms…に対して順次移送する機能を備えるため、図7に示すように、終端側の方向変換モジュールMfにおける右側板61qに設けた従動プーリ53fと始端側の方向変換モジュールMrにおける右側板61qに設けた駆動プーリ53r間に無端タイミングベルト53bを架け渡して構成したコンベア部53,及び駆動プーリ53rを回転させるモータ54mを用いた送り回転駆動部54を備えるとともに、この無端タイミングベルト53bの上ベルト部の上面に固定した複数のロケートピン機構部55…を備えて構成する。この場合、各ロケートピン機構部55…は、使用する標準モジュールMs…及び方向変換モジュールMrに対応した数量だけ用意し、図6及び図7に示すように、各標準モジュールMs…及び始端側の方向変換モジュールMrに停止した各パレット2…における下側の係合孔23b…に対面する位置を選定して固定する。
【0042】
このように構成することにより、パレット2…を次の標準モジュールMs…及び方向変換モジュールMfに移送する際には、各ロケートピン機構部55…を駆動制御し、ロケートピン部55p…(図6参照)を突出変位させれば、各パレット2…における係合孔23b…に挿入できるため、この後、送り回転駆動部54を駆動制御し、無端タイミングベルト53bを、パレット2…同士の相互(ピッチ)間に対応する移送ストロークだけ移動させれば、各パレット2…を次の標準モジュールMs…に移送することができるとともに、最終段の標準モジュールMsにおけるパレット2は、終端側の方向変換モジュールMfにおける上昇位置Xuへ移送することができる。また、始端側の方向変換モジュールMrにおける上昇位置Xuにおけるパレット2は、初段の標準モジュールMsへ移送することができる。そして、一回の移送が終了したなら各ロケートピン機構部55…を駆動制御し、ロケートピン部55p…を引込変位させれば、パレット2…から離脱させることができるため、送り回転駆動部54を逆回転制御し、無端タイミングベルト53bを、移送ストローク分だけ逆方向へ移動させ、元の位置に復帰させる。
【0043】
第二駆動機構部3bは、パレット2…を終端側に配した方向変換モジュールMfから始端側に配した方向変換モジュールMrまで逆移送する機能を備えるため、図7に示すように、終端側の方向変換モジュールMfにおける右側板61qに設けた従動プーリ56fと始端側の方向変換モジュールMrにおける右側板61qに設けた駆動プーリ56r間に無端タイミングベルト56bを架け渡して構成したコンベア部56,及び駆動プーリ56rを回転させるモータ57mを用いた戻り回転駆動部57を備えるとともに、この無端タイミングベルト56bの上ベルト部の上面に固定した単一のロケートピン機構部58を備えて構成する。この場合、ロケートピン機構部58は、終端側の方向変換モジュールMfの下降位置Xdに停止した昇降板66上のパレット2における下側の係合孔23bに対面させて固定する(図6参照)。
【0044】
また、ロケートピン機構部58には、突出位置及び引込位置に変位したロケートピン部58pの位置を保持するラッチングソレノイド等を用いることができる。これにより、方向変換モジュールMfの下降位置Xdにパレット2が位置したなら、ロケートピン機構部58に対して、例えば、接触式の接続端子を介して給電し、ロケートピン部58pを突出変位させて係合孔23bに挿入するとともに、この後、戻り回転駆動部57を駆動制御し、無端タイミングベルト56bを移動させることにより、パレット2を始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdまで移送することができる。この場合、パレット2は、方向変換モジュールMf内の単レール17から第二レールメンバ16…が連続する戻しレールを介して始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdまでの逆方向Frへ戻される。この際、ロケートピン機構部58は、接触端子から離れて無給電状態になるが、ラッチングソレノイドの自己保持機能により、ロケートピン部58pは突出変位した位置に保持される。一方、始端側の方向変換モジュールMrの下降位置Xdにおいては、ロケートピン機構部58に対して、接触式の接続端子を介して給電し、ロケートピン部58pを引込変位させれば、係合孔23bから離脱させることができるため、昇降機構部63,63を駆動制御し、昇降板66を上昇させることにより、パレット2を上昇位置Xuにセットすることができる。
【0045】
以上、主に機械系の構成について説明したが、図11には、ワーク生産システムHにおける制御系及び駆動系の構成をブロック系統で示す。
【0046】
図11において、71はシステムコントローラであり、このシステムコントローラ71にはディスプレイを含む前述した操作パネル69が付属する。システムコントローラ71は、CPU及び内部メモリ71m等を内蔵するコンピュータ機能を備え、内部メモリ71mには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため包括的な制御プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア71mpを有するとともに、各種データ(データベース)類を書込可能なデータエリア71mdが含まれる。
【0047】
また、このシステムコントローラ71には前述した配電盤67を接続するとともに、この配電盤67には各標準モジュールMs…に設置した各中継基板33…を順次接続する。さらに、配電盤67には、始端側の方向変換モジュールMrに配設した回転駆動部54,57を接続するとともに、始端側昇降機構部63,63の駆動アクチュエータを接続する。なお、終端側の方向変換モジュールMfに配設した終端側昇降機構部64,64の駆動アクチュエータは、中継基板33を介して制御される。さらに、始端側の方向変換モジュールMr内に位置するロケートピン機構部(ラッチングソレノイド)58は、配電盤67を介して制御されるとともに、終端側の方向変換モジュールMf内に位置するロケートピン機構部(ラッチングソレノイド)58は、中継基板33…を経由して制御される。なお、方向変換モジュールMr内に配設したエアコンプレッサレギュレータ68は、外部のコンプレッサ(不図示)に接続するとともに、各標準モジュールMs…に設置した各中継バルブ34…を順次接続する。
【0048】
一方、各標準モジュールMs…に設置した中継基板33には、調整回転駆動部51dを接続するとともに、電磁駆動アクチュエータを構成するロケートピン機構部(ソレノイド)52,55を接続する。また、中継バルブ34には、圧縮エアを必要とするエア駆動アクチュエータ35を接続することができる。
【0049】
以上の構成を有する本実施形態に係るワーク生産システムHは、次のように設置(組立)することができる。
【0050】
まず、生産を行うワークWに対し、必要となる異なる複数の生産処理工程を設定し、この生産処理工程に対応する数量の標準モジュールMs…を用意する。そして、各標準モジュールMs…を、図4に示すように、移送方向Fmとなる一方向に順次連結してモジュール群ユニットUmを構成する。
【0051】
この際、図10に示すように、各標準モジュールMs…におけるコイルメンバ11p,11p…同士を接続部材41…により接続することにより、1ターンの送電コイル4aを組立てる。また、図4に示すように、任意の標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ入力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ出力端子を、コネクタケーブル33cにより接続するとともに、任意の標準モジュールMsに備える中継バルブ34の入力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の出力継手を接続管34pにより接続する。
【0052】
次いで、図4に示すように、初段に配した標準モジュールMsに対して始端側の方向変換モジュールMrを連結するとともに、最終段に配した標準モジュールMsに対して終端側の方向変換モジュールMfを連結する。また、始端側の方向変換モジュールMrに備える配電盤67のコネクタ出力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ入力端子をコネクタケーブル33cにより接続するとともに、エアコンプレッサレギュレータ68の出力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の入力継手を接続管34pにより接続する。さらに、終端側の方向変換モジュールMfに備える中継基板33のコネクタ入力端子と相隣る標準モジュールMsに備える中継基板33のコネクタ出力端子をコネクタケーブル33cにより接続するとともに、方向変換モジュールMfに備える中継バルブ34の入力継手と相隣る標準モジュールMsに備える中継バルブ34の出力継手を接続管34pにより接続する。なお、方向変換モジュールMfに備える中継バルブ34の出力継手はキャップ等により閉塞する。
【0053】
一方、必要な長さの無端タイミングベルト53bを用意し、各左側板61q及び61qに取付けられた一対のプーリ53rと53f間に架け渡すとともに、無端タイミングベルト53b上の所定位置にロケートピン機構部55…を固定することにより第一駆動機構部3aを構成する。なお、無端タイミングベルト53bの下ベルト部は、プーリ53r及び53fには掛からないため、この下ベルト部に両端結合部を設けることができる。さらに、必要な長さの無端タイミングベルト56bを用意し、各左側板61q及び61qに取付けられた一対のプーリ56rと56f間に架け渡すとともに、無端タイミングベルト56b上の所定位置にロケートピン機構部58を固定することにより第二駆動機構部3bを構成する。なお、無端タイミングベルト56bの下ベルト部は、プーリ56r及び56fには掛からないため、この下ベルト部に両端結合部を設けることができる。
【0054】
この後、各生産処理工程に対応した生産ロボット等の生産を自動で行うロボットEr,E1,E2…En,Efを用意し、図4図6に示すように、対応する方向変換モジュールMr,各標準モジュールMs…,方向変換モジュールMfに対する左側位置にそれぞれ設置する。このように本実施形態に係るワーク生産システムHは、生産工場等に容易に設置することができる。
【0055】
本実施形態に係るワーク生産システムHは、基本的な構成として、生産過程のワークWを支持するパレット2…と、異なる生産処理工程を実施可能に構成し、かつ一方向に順次連結可能に構成することにより、パレット2…を順次移送可能にした複数の標準モジュールMs,Ms…と、複数の標準モジュールMs…を連結したモジュール群ユニットUmの始端側と終端側に配することにより、パレット2…の移送方向を変換する一対の方向変換モジュールMr,Mfと、パレット2…を各標準モジュールMs…に対して順次移送する駆動機構部3a及びパレット2…を終端側の方向変換モジュールMfから始端側の方向変換モジュールMrに逆移送する第二駆動機構部3bを有する駆動ユニット3と、パレット2…に対して給電可能な給電機能部4とを備えるため、組合わせの形態及び数量を変更することにより、複数の異なる生産処理工程を、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfにより容易に構成できる。この結果、生産できるワークWの範囲を飛躍的に拡大可能となり、汎用性及び拡張性(発展性)を高めることができるとともに、開発コスト及び製品コストの低減化を図ることが可能になり、多品種少量生産に最適なワーク生産システムHを提供できる。しかも、設置スペースの確保が容易になるため、設置に伴う労力と時間を削減できるとともに、全体のシステム構成を柔軟に構築できる。特に、標準化したモジュールMs…,Mr,Mfの組合わせにより、一方向への合理的な生産ラインを構築できるため、他のワークの生産に拡張する場合にも、一部のモジュールMs…の追加,削除,変更により、柔軟かつ容易に対応させることが可能になり、再利用性及び転用性に優れるとともに、大幅なコスト削減に寄与できる。しかも、無駄な資材の発生を回避できるため、資源保護にも貢献できる。
【0056】
次に、このようなワーク生産システムHに用いて好適な本実施形態に係る異物処理装置1の構成について、図1図3を参照して説明する。
【0057】
異物処理装置1は、パレット2の底部に配設した異物処理部5を備える。この異物処理部5は、図2に示すように、パレット2における受電コイル4bの前側となる所定位置、例示の場合、パレット2の前端辺付近に配設し、移送時に、受電コイル4bの前方に存在する異物Bを移送方向へ移動させる異物押部5pを備える。
【0058】
この場合、図1図3に示すように、パレット本体21に支持部材81を固定するとともに、この支持部材81をパレット本体21に形成した開口を通して下面21dから下方へ突出させ、突出した支持部材81の下端部により異物押部5pの後端を支持する。なお、異物押部5pの形状は、特定の形状に限定されるものではなく、前方に存在する異物Bに当接することにより円滑に移動させることができる形状を選定する。
【0059】
また、異物処理部5は、異物押部5pにより移動した異物Bを途中位置で落下させる落下口部6cと、この落下口部6cから落下した異物Bを受け取る異物受部6tとを有する異物回収部6を備える。この場合、落下口部6cは、図1及び図2に示すように、標準モジュールMsにおける上中間板31uの前端辺であって、一対のコイルメンバ11p,11p(送信コイル4a)の下方に切欠状に形成する。一方、異物受部6tは、落下口部6cの下方に、落下口部6cから落下した異物Bを受け取ることができるように、トレイ状(ケース状)に形成することにより、上中間板31uの下面に取付ける。このような異物回収部6を設ければ、特別な排除構成や処理機能を追加することなしに、異物Bに対する排除等の処理を行うことができるため、実施の容易化及び低コスト化に寄与できる。
【0060】
さらに、異物処理部5には、異物押部5pに当接した異物Bにより、予め設定した押圧力以上の力が付与されたことを検出する過負荷検出部7dと、この過負荷検出部7dによる検出時に、所定の異常処理を行う異常処理部7を設ける。このような異常処理部7を設ければ、異物押部5pに対して無理な応力が作用する前に、所定の異常処理を行うことができるため、無理な応力が作用することに伴う破損や故障を事前に回避できる。
【0061】
この場合、過負荷検出部7dを構成するに際しては、図1図3に示すように、異物押部5pの後端面に、後方に突出した軸部5psを設け、かつ支持部材81の前面における下端付近の位置に、当該軸部5psが挿入する軸受孔81hを設けるとともに、この軸受孔81hの内部に小型のリミットスイッチ82を配設した。そして、軸受孔81hに、軸部5psを挿通させるとともに、異物押部5pと支持部材81間に所定のスプリング83を介在させて構成した。この際、スプリング83の弾性係数は、異物押部5pに対する異物Bの当接時に、異物Bにより、予め設定した押圧力以上の力が付与されたなら、異物押部5pが後方へ変位し、軸部5psの後端によりリミットスイッチ82がONするように設定する。
【0062】
また、異常処理部7は、図1に示すように、リミットスイッチ82のON/OFF状態が付与される検出処理部85と、この検出処理部85の検出結果が付与される前述したシステムコントローラ71と、このシステムコントローラ71からの停止指令が付与される停止処理部86と、システムコントローラ71からのアラーム指令が付与されるアラーム8を備える。したがって、システムコントローラ71及び停止処理部86はワーク生産システムHの稼働を停止する稼働停止処理機能Ssとして動作するとともに、システムコントローラ71とアラーム8はアラーム作動処理機能Saとして動作する。このように、異常処理部7に、ワーク生産システムHの稼働を停止する稼働停止処理機能Ss及び/又はアラーム8を作動させるアラーム作動処理機能Saを含ませれば、稼働停止又は異常報知を同時又は選択的に行うことができるため、破損や故障のより確実な回避と作業者への迅速な異常発生の報知を行うことができる。
【0063】
次に、このような構成を有する異物処理装置1の機能(動作)について、図1図3を参照して説明する。
【0064】
ワーク生産システムHの稼働中は、生産過程のワークW…がセットされた各パレット2…において、予め設定した生産処理時間Tp(例えば、5〔秒〕間)にわたり、異なる生産処理が行われる。そして、生産処理時間Tpが経過したなら第一駆動機構部3aの駆動制御により各標準モジュールMsにおけるパレット2…は、次の標準モジュールMs…にそれぞれ移送される。
【0065】
今、ワーク生産システムHの稼働中において、キャッチャロボット等から誤ってネジ等の比較的小さい部品が離脱し、図1図3に示すように、一対のコイルメンバ11p,11pの間に落下することにより異物Bとして存在する場合を想定する。この状態において、パレット2が移送されれば、図1に示すように、異物押部5pの先端が異物Bに当接するため、パレット2の移送とともに、異物Bも前方へ移動する。そして、異物Bが落下口部6cに至れば、落下口部6cから落下するため、異物Bは下方に設けた異物受部6t内に収容される。
【0066】
一方、キャッチャロボット等から部品ケース等の比較的大きい部品が離脱し、一対のコイルメンバ11p,11p間に落下することにより挟まった異物Bとして存在する場合を想定する。この状態において、パレット2が移送され、図1に示すように、異物押部5pの先端が異物Bに当接するが、容易に動かない場合が想定される。この場合、異物押部5pにより、異物押部5pに対して、予め設定した押圧力以上の力が付与される。この結果、異物押部5pは、スプリング83の弾性に抗して、後方へ相対変位し、軸部5psが軸受孔81hに押し込まれることにより、軸部5psの後端がリミットスイッチ82をONにする。この結果、このON状態は、検出処理部85により検出され、この検出結果は、システムコントローラ71に送られる。これにより、システムコントローラ71は、停止指令を停止処理部86に付与するため、停止処理部86により、直ちに、ワーク生産システムHの稼働を停止する制御処理が行われる。
【0067】
また、システムコントローラ71は、停止指令と同時に、アラーム指令をアラーム8に付与してアラーム8を作動させる。具体的には、ランプ等の視覚的アラーム及び/又はブザー等の聴覚的アラームを作動させることができる。これにより、作業者は、異常が発生したことを知ることができるため、異物Bを取り除くなどの異常解消処理を行い、稼働を再開させることができる。
【0068】
このように、本実施形態に係るワーク生産システムの異物処理装置1によれば、基本的な構成として、パレット2における受電コイル4bの前側となる所定位置に配設し、移送時に、当該受電コイル2の前方に存在する異物Bを移送方向へ移動させる異物押部5pを有する異物処理部5を設けたため、異物Bが送電コイル4aの近傍(受電コイル4bの前方)に存在した場合であっても、異物Bを速やかに排除等の処理を行うことができるため、ワーキングパレット2…の移動を阻害する不具合及び給電系のトラブル、更には生産ラインの故障や生産の遅延を招くなどの不具合を回避又は低減でき、特に、ワーキングパレット2…に対して給電を行う給電系を備えて構成した生産システムの信頼性及び安定性を高めることができる。
【0069】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0070】
例えば、異物押部5pは、例示の場合、異物Bに当接させる形状を示したが、その他、チリトリ状に形成し、異物Bを下から掬い、その状態で異物Bを移動させる場合も含む概念である。また、異物回収部6は、標準モジュールMsの一個所に設けた場合を示したが、所定間隔おきの複数個所に設けてもよい。さらに、過負荷検出部7dは、リミットスイッチを用いた場合を例示したが、その他、接触式又は非接触式のセンサ等により検出したり、或いは駆動機構部3cのモータ過電流を検出し、検出信号を閾値により判定するなど、各種検出手段により検出できる。一方、異常処理部7は、検出結果を作業者のモバイル機器等に送信するなど、例示以外の各種処理手段(アラーム手段)を利用できる。他方、複数の異なる生産処理工程は、生産を行うための各種処理工程を適用できるとともに、その工程数も任意である。なお、駆動機構部3a,第二駆動機構部3b及び第三駆動機構部3cの構成は一例として示したものであり、同一の機能を有する各種構成により置換可能である。また、給電機能部4としては、例示したワイヤレス給電方式が望ましいが、ワイヤレス給電以外の給電方式、例えば、ブラシ等を用いた接触方式による給電系を排除するものではない。また、方向変換モジュールMr,Mfは、エレベータモジュールMrv,Mfvにより構成することが望ましいが、水平方向(横方向)へ移動させる場合を排除するものではない。この場合、標準モジュールMsの上中間板31uと下中間板31dは、水平方向(横方向)に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る異物処理装置は、所定のワークを生産することができる各種のワーク生産システムにおける異物を処理する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:異物処理装置,2…:ワーキングパレット,3a:駆動機構部,4:給電機能部,4a:送電コイル,4b:受電コイル,5:異物処理部,5p:異物押部,6:異物回収部,6c:落下口部,6t:異物受部,7:異常処理部,7d:過負荷検出部,8:アラーム,11p…:コイルメンバ,15:第一レールメンバ,16:第二レールメンバ,Sa:アラーム作動処理機能,Ss:稼働停止処理機能,H:ワーク生産システム,B:異物,W:生産過程のワーク,Ms…:標準モジュール,Mr:方向変換モジュール,Mf:方向変換モジュール,Um:モジュール群ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11