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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】モータ、およびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20240930BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240930BHJP
   F04D 11/00 20060101ALI20240930BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
F04D11/00
F04D13/06 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020216598
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102076
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 岳彦
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028909(JP,A)
【文献】特開2017-103913(JP,A)
【文献】特開2020-089128(JP,A)
【文献】特開2015-216065(JP,A)
【文献】特開2007-095629(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/52
F04D 11/00
F04D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の突極がモータ軸線を中心とする周方向に配置されたステータコアと、
前記ステータコアに保持されたインシュレータと、
前記インシュレータを介して前記突極に巻回されたコイルと、
前記インシュレータに保持され、前記コイルから延在する巻線が接続された巻線端子と、
前記巻線端子に接続された基板と、
を有し、
前記巻線端子は、前記基板が接続される基板接続部と、前記インシュレータに保持される複数の脚部と、前記脚部と前記基板接続部との間で径方向に板厚方向を向けた板部と、前記板部と前記基板接続部との間で弾性変形可能な弾性部と、前記板部から突出した部分が前記巻線を内側に保持するように曲がった巻線接続部と、を有し、
前記複数の脚部は、前記巻線接続部に対して前記周方向の一方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第1脚部と、前記巻線接続部に対して前記周方向の他方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第2脚部と、を含み、
前記インシュレータには、前記第1脚部が嵌る第1穴と、前記第2脚部が嵌る第2穴と、が設けられ、
前記第1穴は、前記第1脚部が嵌る圧入穴であり、
前記第2穴は、前記第2脚部が嵌るガイド穴であり、
前記弾性部は、前記板部と前記基板接続部との間で蛇行する蛇行部であり、
前記蛇行部は、前記モータ軸線方向からみたとき、前記第1脚部と重なっていないことを特徴とするモータ。
【請求項2】
複数の突極がモータ軸線を中心とする周方向に配置されたステータコアと、
前記ステータコアに保持されたインシュレータと、
前記インシュレータを介して前記突極に巻回されたコイルと、
前記インシュレータに保持され、前記コイルから延在する巻線が接続された巻線端子と、
前記巻線端子に接続された基板と、
を有し、
前記巻線端子は、前記基板が接続される基板接続部と、前記インシュレータに保持され
る複数の脚部と、前記脚部と前記基板接続部との間で径方向に板厚方向を向けた板部と、前記板部と前記基板接続部との間で弾性変形可能な弾性部と、前記板部から突出した部分が前記巻線を内側に保持するように曲がった巻線接続部と、を有し、
前記弾性部は、前記板部の前記周方向の他方側の端部から前記基板接続部に向けて延在していることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータにおいて、
前記ステータコア、前記インシュレータ、前記コイル、および前記巻線端子の前記脚部から前記巻線接続部までの部分は、樹脂封止部材で覆われることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項に記載のモータにおいて、
前記板部は、前記弾性部側の端部が前記樹脂封止部材から露出していることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項に記載のモータにおいて、
前記複数の脚部は、前記巻線接続部に対して前記周方向の一方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第1脚部と、前記巻線接続部に対して前記周方向の他方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第2脚部と、を含み、
前記インシュレータには、前記第1脚部が嵌る第1穴と、前記第2脚部が嵌る第2穴と、が設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項に記載のモータにおいて、
前記第1穴は、前記第1脚部が嵌る圧入穴であり、
前記第2穴は、前記第2脚部が嵌るガイド穴であることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項に記載のモータにおいて、
前記第1脚部および前記第2脚部はいずれも、断面四角形の角棒状であり、
前記第1穴は、断面円形の丸穴であり、
前記第2穴は、断面四角形の角穴であることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のモータにおいて、
前記第2脚部は、前記他方の脚部より長いことを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項6から8までの何れか一項に記載のモータにおいて、
前記弾性部は、前記板部と前記基板接続部との間で蛇行する蛇行部であり、
前記蛇行部は、前記モータ軸線方向からみたとき、前記第1脚部と重なっていないことを特徴とするモータ。
【請求項10】
請求項に記載のモータにおいて、
前記弾性部は、前記モータ軸線方向からみたとき、周方向で前記板部と重なる範囲内で蛇行していることを特徴とするモータ。
【請求項11】
請求項6から8までの何れか一項に記載のモータにおいて、
前記弾性部は、前記第1脚部より長い長さ寸法で前記基板接続部に向けて直線的に延在するピン状であることを特徴とするモータ。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のモータにおいて、
前記巻線接続部は、ヒュージング加工によって前記巻線に電気的に接続されていることを特徴とするモータ。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載のモータを備えたポンプ装置であって、
前記モータによって回転駆動されるインペラを有することを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルから延在する巻線の端部が巻線端子に接続されたモータ、およびポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の突極がモータ軸線を中心とする周方向に配置されたステータコアと、ステータコアに保持されたインシュレータと、インシュレータを介して突極に巻回されたコイルとを有するモータにおいて、コイルから引き出された巻線の巻き終わりの端部を巻線端子に接続する構造が採用されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータにおいて、巻線端子は、基板が接続されるピン状の基板接続部と、インシュレータに保持される複数の脚部と、脚部と前記基板接続部との間で径方向に向く板部と、板部から突出した部分が巻線を内側に保持するように曲がった巻線接続部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-103913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、基板接続部が直線状に延在するピン状であるため、基板接続部を基板の穴に挿入して基板接続部と基板のランドとをハンダによって接続した際、基板に応力が加わって回路が損傷するおそれがある。また、モータを駆動した際、コイルで発生した熱が巻線端子に伝わって巻線端子が熱膨張した場合、基板が撓んで回路が損傷するおそれがある。さらに、ステータを樹脂封止する際、巻線端子の一部も樹脂封止されるため、樹脂封止の際の熱で巻線端子が熱膨張したとき、基板が撓んで回路が損傷するおそれがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、巻線端子から基板への応力の伝達を抑制することのできるモータ、およびポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、複数の突極がモータ軸線を中心とする周方向に配置されたステータコアと、前記ステータコアに保持されたインシュレータと、前記インシュレータを介して前記突極に巻回されたコイルと、前記インシュレータに保持され、前記コイルから延在する巻線が接続された巻線端子と、前記巻線端子に接続された基板と、を備え、前記巻線端子は、前記基板が接続される基板接続部と、前記インシュレータに保持される複数の脚部と、前記脚部と前記基板接続部との間で径方向に板厚方向を向けた板部と、前記板部と前記基板接続部との間で弾性変形可能な弾性部と、前記板部から突出した部分が前記巻線を内側に保持するように曲がった巻線接続部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、巻線端子の基板接続部と脚部との間に弾性部が設けられているため、応力を弾性部によって吸収することができる。従って、巻線端子から基板への応力の伝達を弾性部によって抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記ステータコア、前記インシュレータ、前記コイル、および前記巻線端子の前記脚部から前記巻線接続部までの部分は、樹脂封止部材で覆われる態様を採用
することができる。かかる態様を採用した場合でも、巻線端子の熱膨張による応力が弾性部によって吸収されるため、基板への応力の伝達を抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記板部は、前記弾性部側の端部が前記樹脂封止部材から露出している態様を採用することができる。かかる態様によれば、弾性部が樹脂封止部材で覆われることを抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記複数の脚部は、前記巻線接続部に対して前記周方向の一方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第1脚部と、前記巻線接続部に対して前記周方向の他方側で前記板部から前記インシュレータに向けて突出した第2脚部と、を含み、前記インシュレータには、前記第1脚部が嵌る第1穴と、前記第2脚部が嵌る第2穴と、が設けられ、前記第1穴は、前記第1脚部が嵌る圧入穴であり、前記第2穴は、前記第2脚部が嵌るガイド穴である態様を採用することができる。かかる態様によれば、2つの脚部のうちの他方の脚部が嵌る第2穴はガイド用であるため、第1脚部および第2脚部の双方を圧入する場合より、インシュレータへのコモン端子の取り付けが容易である。
【0011】
本発明において、前記第1脚部および前記第2脚部はいずれも、断面四角形の角棒状であり、前記第1穴は、断面円形の丸穴であり、前記第2穴は、断面四角形の角穴である態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記第2脚部は、前記他方の脚部より長い態様を採用することができる。かかる態様によれば、ガイド用の第2穴に嵌る第2脚部が長いので、コモン端子をガイドしやすい。このため、インシュレータへのコモン端子の取り付けが容易である。
【0013】
本発明において、前記弾性部は、前記板部と前記基板接続部との間で蛇行する蛇行部であり、前記蛇行部は、前記モータ軸線方向からみたとき、前記第1脚部と重なっていない態様を採用することができる。かかる態様によれば、板部のインシュレータとは反対側に端部を押圧して第1脚部を第1穴に圧入する際、蛇行部が邪魔になりにくい。
【0014】
本発明において、前記弾性部は、前記モータ軸線方向からみたとき、周方向で前記板部と重なる範囲内で蛇行している態様を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記弾性部は、前記第1脚部より長い長さ寸法で前記基板接続部に向けて直線的に延在するピン状である。
【0016】
本発明において、前記弾性部は、前記板部の前記周方向の他方側の端部から前記基板接続部に向けて延在している態様を採用することができる。
【0017】
本発明において、前記巻線接続部は、ヒュージング加工によって前記巻線に電気的に接続されている態様を採用することができる。
【0018】
本発明に係るモータはポンプ装置に用いることができ、この場合、ポンプ装置には、前記モータによって回転駆動されるインペラが設けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、巻線端子の基板接続部と脚部との間に弾性部が設けられているため、応力を弾性部によって吸収することができる。従って、巻線端子から基板への応力の伝達を弾性部によって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したポンプ装置およびモータの一態様を示す斜視図。
図2図1に示すポンプ装置およびモータの縦断面図。
図3図1に示すポンプ装置からカバーを外した状態を示す分解斜視図。
図4図3に示す状態から基板を外した状態を示す分解斜視図。
図5図1に示すモータにおいて、ハウジングとステータとを分離させた状態を示す分解斜視図。
図6図5に示す巻線端子付近を径方向の内側からみた斜視図。
図7図5に示す巻線端子を径方向の内側からみた斜視図。
図8図5に示すコモン端子付近を径方向の内側からみた斜視図。
図9図7に示す巻線端子の変形例1を径方向の内側からみた斜視図。
図10図7に示す巻線端子の変形例2を径方向の内側からみた斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るモータおよびポンプ装置を説明する。以下の説明において、モータ軸線L方向とは、モータ軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、モータ軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、モータ軸線Lを中心とする回転方向を意味する。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1およびモータ10の一態様を示す斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1およびモータ10の縦断面図である。図1および図2において、ポンプ装置1は、吸入口21aおよび吐出口22aを備えたケース2と、ケース2に対してモータ軸線L方向の一方側L1に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたインペラ25とを有しており、インペラ25は、モータ10によってモータ軸線L周りに回転駆動される。モータ10は、円筒状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する丸棒状の支軸5とを備えている。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。本形態のポンプ装置1において、流体は液体であり、ポンプ装置1は、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0023】
ケース2は、ポンプ室20のモータ軸線L方向の他方側L2の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成している。ケース2は、モータ軸線Lに沿って延在する吸入管21と、モータ軸線Lに対して直交する方向に延在する吐出管22とを備えており、吸入管21および吐出管22は各々、端部に吸入口21aおよび吐出口22aを備えている。吸入管21は、モータ軸線Lに対して同心状に設けられている。
【0024】
モータ10において、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に保持されたインシュレータ32、33と、ステータコア31にインシュレータ32、33を介して巻回されたコイル35とを有している。
【0025】
ロータ4は、ステータ3に径方向の内側で対向する位置からモータ軸線Lに沿ってポンプ室20に向けて延在する円筒部40を備えており、円筒部40は、ポンプ室20で開口している。円筒部40の外周面には、ステータ3に径方向の内側で対向するように円筒状の磁石47が保持されている。磁石47は、例えば、ネオジムボンド磁石である。
【0026】
ロータ4において、円筒部40のモータ軸線L方向の他方側L2の端部には、円板状のフランジ部45が形成されており、フランジ部45には、モータ軸線L方向の他方側L2から円板26が連結されている。円板26の中央には中央穴260が形成されている。円板26のフランジ部45と対向する面には、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延在する複数の羽根部261が等角度間隔に形成されており、円板26
は、羽根部261を介してフランジ部45に固定されている。従って、フランジ部45と円板26とによって、ロータ4の円筒部40に接続されたインペラ25が構成される。本形態において、円板26は、径方向の内側より径方向の外側がフランジ部45の側に位置するように傾いている。
【0027】
ロータ4において、円筒部40の径方向の内側には円筒状のラジアル軸受11がカシメ等の方法で保持されており、ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持されている。支軸5のモータ軸線L方向の一方側L1の第1端部51は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持されている。ケース2には、支軸5のポンプ室20側の第2端部52にポンプ室20の側で対向して支軸5のポンプ室20側への可動範囲を制限する受け部280が形成されている。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備えている。支持部27の端部には、支軸5が内側に位置する筒部28が形成されており、筒部28のモータ軸線L方向の他方側L2の底部によって受け部280が構成されている。支軸5の第2端部52には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に配置されている。ここで、第1端部51および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状に形成され、支軸5の第2端部52およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状に形成されている。従って、支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止されている。
【0028】
ハウジング6は、ポンプ室20の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と磁石47との間に介在する第2隔壁部62とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を有している。従って、ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、およびモータ軸線L方向の両側から覆う樹脂封止部材60であり、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene
Sulfide)等によってステータ3をインサート成形した際の樹脂部分である。
【0029】
(モータ10の詳細構成)
図3は、図1に示すポンプ装置1からカバー18を外した状態を示す分解斜視図である。図4は、図3に示す状態から基板19を外した状態を示す分解斜視図である。図5は、図1に示すモータ10において、ハウジング6とステータ3とを分離させた状態を示す分解斜視図である。なお、図3図4、および図5は、図1および図2に対してモータ軸線L方向を上下反転してあり、モータ軸線L方向の一方側L1を図面の上側としてある。
【0030】
図2図3、および図4に示すように、ハウジング6のモータ軸線L方向の一方側L1の端部64には、モータ軸線L方向の一方側L1からカバー18が固定され、カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路等が設けられた基板19が配置されている。
【0031】
基板19は、第1ねじ91を用いた第1固定部97と、第2ねじ92を用いた第2固定部98とによってハウジング6に固定されている。ハウジング6には、底壁63からモータ軸線L方向の一方側L1に向けて突出した第1円柱部67が形成されており、基板19の縁に形成された切り欠き197を介してタッピングねじからなる第1ねじ91を第1円柱部67に止めることによって第1固定部97が構成されている。また、ハウジング6には、モータ軸線Lを中心とする反対側で底壁63からモータ軸線L方向の一方側L1に向けて突出した第2円柱部68が形成されており、基板19の縁に形成された切り欠き198を介してタッピングねじからなる第2ねじ92を第2円柱部68に止めることによって第2固定部98が構成されている。
【0032】
基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通してモータ軸線L方向の一方側L1に突出した金属製の巻線端子71がハンダによって接続された複数の第1接続
部191と、ハウジング6に保持された金属製のコネタク端子75がハンダによって接続された第2接続部192とが設けられている。基板19には、第2接続部192と第1接続部191とを、基板19に実装された駆動回路等を介して電気的に接続する配線等が形成されている。
【0033】
ハウジング6には、筒状のコネクタハウジング69が形成されており、コネクタハウジング69の内側にコネタク端子75の端部が位置する。従って、コネクタハウジング69にコネクタを連結して信号等を供給すると、かかる信号がコネタク端子75および第2接続部192を介して駆動回路に入力される結果、駆動回路で生成された駆動電流が第1接続部191および巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0034】
図2および図5に示すように、ステータ3において、ステータコア31は、円環状に延在する円環部311と、円環部311から径方向の内側へ突出する複数の突極312とを備えている。突極312は、周方向において一定のピッチで配置される。ステータコア31は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。円環部311の外周面には、複数の突極312に対応して、モータ軸線L方向の延在する凹部315が形成されている。本形態において、ステータコア31は、直線状に延在する部材を円環状に曲げた後、円環部311の端部同士を溶接したものである。従って、ステータコア31は、円環部311の周方向の1か所に、周方向に延在する部分同士を繋ぐ溶接部310を備えている。
【0035】
インシュレータ32、33は各々、ステータコア31に対してモータ軸線L方向の両側から重なり、複数の突極312の各々に被さっている。本形態において、インシュレータ32、33は、複数の突極312の各々に対応して分割された複数の分割インシュレータ320、330からなる。複数の分割インシュレータ320、330は各々、ステータコア31の円環部311にモータ軸線L方向から重なる外周側部分321、331と、突極312の径方向内側の端部でモータ軸線L方向に突出した内周側部分322、332と、外周側部分321、331と内周側部分322、332とを繋ぐ筒部形成部分(図示せず)とを備えており、コイル35は、筒部形成部分を介して突極312に巻回されている。
【0036】
モータ10は3相モータである。従って、複数のコイル35には、U相コイルからなる第1相のコイル35(U)、V相コイルからなる第2相のコイル35(V)、およびW相コイルからなる第3相のコイル35(W)が順に配置されている。本形態において、第1相のコイル35(U)、第2相のコイル35(V)、および第3相のコイル35(W)は各々、3つずつ配置されており、コイル35の総数は計9個である。従って、分割インシュレータ320は計9個配置されており、9個の分割インシュレータ320は同一の構成を有している。
【0037】
本形態では、9個の分割インシュレータ330の外周側部分321の外面には、コイル35を巻回する際の巻線350のガイド溝335が形成されており、第1相のコイル35(U)は1本の巻線で構成される。従って、3つの第1相のコイル35(U)は直列に電気的に接続されている。第2相のコイル35(V)および第3相のコイル35(W)も同様である。
【0038】
また、9個の分割インシュレータ320のうち、第1相のコイル35(U)の1つに対応する分割インシュレータ320、第2相のコイル35(V)の1つに対応する分割インシュレータ320、および第3相のコイル35(W)の1つに対応する分割インシュレー
タ320の外周側部分321には巻線端子71が各々、保持されている。3つの巻線端子71の各々には、直列に接続された3つのコイル35を構成する巻線350の一方の端部351が接続され、他方の端部352は、別の分割インシュレータ320の外周側部分321に保持された金属製のコモン端子72に電気的に接続されている。本形態において、他方の端部352は巻き始めの端部であり、一方の端部351は巻き終わりの端部である。
【0039】
巻線端子71は、分割インシュレータ320からモータ軸線L方向の一方側L1に向けて突出しており、巻線端子71の先端部である基板接続部711が、図2図3および図4に示す基板19に接続されている。
【0040】
(巻線端子71の構成)
図6は、図5に示す巻線端子71付近を径方向の内側からみた斜視図である。図7は、図5に示す巻線端子71を径方向の内側からみた斜視図である。なお、図6および図7も、図3等と同様、モータ軸線L方向の一方側L1を上側としてある。
【0041】
図5に示すように、コモン端子72が設けられていない分割インシュレータ320のうち、対応する相が異なる3つの分割インシュレータ320には、コイル35から延在する巻線350の巻き終わり端部351が接続される巻線端子71が保持されている。
【0042】
図6および図7に示すように、巻線端子71は、基板接続部711と、分割インシュレータ320に保持される複数の脚部715と、脚部715と基板接続部711との間で径方向に板厚方向を向けた板部710と、板部710から突出した部分が巻線350を内側に保持するように曲がった巻線接続部718とを有している。巻線接続部718は、板部710の脚部715側の端部710aから突出した部分が上方に曲げられて巻線350を内側に保持している。従って、巻線接続部718は、ヒュージング加工によって巻線350の端部351を保持するとともに、巻線350の端部351と電気的に接続される。ヒュージング加工では、巻線350と巻線接続部718とを電気抵抗を利用して接続する熱カシメ加工である。
【0043】
本形態において、巻線端子71は、板部710と基板接続部711との間で弾性変形可能な弾性部714を有している。ここで、図4に示すように、ステータコア31、インシュレータ32、コイル35、および巻線端子71の脚部715から巻線接続部718までの部分は、樹脂封止部材60で覆われるが、基板接続部711および弾性部714は、樹脂封止部材60の底壁63からモータ軸線L方向の一方側L1に突出し、露出している。り具体的には、板部710の大部分が樹脂封止部材60で覆われるが、板部710の弾性部714側の端部710bは、樹脂封止部材60の底壁63から露出している。このため、基板接続部711および弾性部714は、樹脂封止部材60の底壁63からモータ軸線L方向の一方側L1に突出し、露出している。
【0044】
本形態においては、2本の脚部715のうち、一方の脚部715は第1脚部716であり、他方の脚部715は、第1脚部716に対して周方向の他方側CCWに設けられた第2脚部717である。かかる構成に対応して、分割インシュレータ320には、第1脚部716が嵌る第1穴326と、第1脚部726に対して周方向の他方側CCWで第2脚部717が嵌る第2穴327とが設けられている。
【0045】
本形態において、第1穴326は、第1脚部716が嵌る圧入穴であり、第2穴327は、第2脚部717が嵌るガイド穴である。ここで、2つの脚部715はいずれも、断面四角形の角棒状であり、太さが等しい。但し、第1穴326は断面円形の丸穴であり、第2穴327は断面四角形の角穴である。従って、第2穴327によってガイド穴を構成で
き、第1穴326によって圧入穴を構成することができる。なお、第1穴326は、分割インシュレータ320のモータ軸線L方向の一方側L1の面と径方向の内側の面とを切り欠いた凹部329の底部で開口している。
【0046】
本形態において、弾性部714は、板部710と基板接続部711との間において周方向で折り返すように蛇行する蛇行部712である。ここで、弾性部714は、板部710の周方向の他方側CCWの端部710cから基板接続部711に向けて延在しており、蛇行部712は、モータ軸線L方向からみたとき、圧入に用いる第1脚部716と重なっていない。このため、板部710の分割インシュレータ320とは反対側の端部710aを押圧して第1脚部716を第1穴326に圧入する際、蛇行部712が邪魔になりにくい。また、弾性部714は、モータ軸線L方向からみたとき、周方向において板部710と重なる範囲内で蛇行しており、板部710から周方向に張り出していない。それ故、巻線端子71の周方向の寸法を短くすることができる。
【0047】
このように、本形態では、巻線端子71の基板接続部711と脚部715との間に弾性部714が設けられているため、応力を弾性部714によって吸収することができる。従って、巻線端子71から基板19への応力の伝達を弾性部714によって抑制することができる。例えば、基板接続部711を基板19の穴に挿入して基板接続部711と基板19のランドとをハンダによって接続した際、基板19に応力が加わって回路が損傷することを抑制することができる。また、モータ10を駆動した際、コイル35で発生した熱が巻線端子71に伝わって巻線端子71が熱膨張した場合でも、基板19が撓んで回路が損傷することを抑制することができる。また、ステータ3を樹脂封止する際、巻線端子71の一部も樹脂封止されるため、樹脂封止の際の熱で巻線端子71が熱膨張したときでも、基板19が撓んで回路が損傷することを抑制することができる。
【0048】
(コモン端子72の構成)
図8は、図5に示すコモン端子72付近を径方向の内側からみた斜視図である。なお、図8でも、図3等と同様、モータ軸線L方向の一方側L1を上側としてある。
【0049】
図5に示すように、巻線端子71が設けられていない分割インシュレータ320のうちの1つの分割インシュレータ320(W)には、複数相のコイル35の各々から延在する相数分の巻線350の巻き始めの端部352が接続されるコモン端子72が保持されている。
【0050】
本形態において、コモン端子72は、周方向に延在する板部720と、板部720の周方向の複数個所から突出した部分が各々、巻線350の端部352を内側に保持するように曲がった複数の巻線接続部721と、複数の巻線接続部721のうち、隣り合う巻線接続部721の1つの間につき板部720から分割インシュレータ320に向けて1本突出した脚部725とを備えており、脚部725は分割インシュレータ320に保持されている。脚部725は、複数の巻線接続部721のうち、隣り合う巻線接続部721の間のみに設けられている。従って、脚部725の数が少ないので、板部720は周方向の寸法が短い。それ故、板部720は、周方向に沿って直線的に延在する平板状に形成されている。
【0051】
また、複数の巻線接続部721は、巻線350の端部352を内側に保持するように曲がっており、巻線接続部721は、ヒュージング加工によって巻線350の端部352を保持するとともに、巻線350の端部352と電気的に接続される。
【0052】
本形態においては、相数が3であることから、巻線接続部721は3つであり、脚部725は2本である。2本の脚部725のうち、一方の脚部725は第1脚部726であり
、他方の脚部725は、第1脚部726に対して周方向の他方側CCWに設けられた第2脚部727である。かかる構成に対応して、分割インシュレータ320には、巻線端子71を保持する分割インシュレータ320と同様、第1脚部726が嵌る第1穴326と、第1脚部726に対して周方向の他方側CCWで第2脚部727が嵌る第2穴327とが設けられている。
【0053】
本形態において、第1穴326は、第1脚部726が嵌る圧入穴であり、第2穴327は、第2脚部727が嵌るガイド穴である。ここで、2つの脚部725はいずれも、断面四角形の角棒状であり、太さが等しい。但し、第1穴326は断面円形の丸穴であり、第2穴327は断面四角形の角穴である。従って、第2穴327によってガイド穴を構成でき、第1穴326によって圧入穴を構成することができる。
【0054】
3つの巻線接続部721は、第1巻線接続部721(U)と、第1巻線接続部721(U)に対して周方向の他方側CCWに設けられた第2巻線接続部721(V)と、第1巻線接続部721(U)と第2巻線接続部721(V)との間に設けられた第3巻線接続部721(W)とを含んでいる。第1巻線接続部721(U)には、第1相のコイル35(U)から延在する巻線350の端部352が周方向の一方側CWから到達する。第2巻線接続部721(V)には、第2相のコイル35(V)から延在する巻線350の端部352が周方向の他方側CCWから到達する。第3巻線接続部721(W)には、第3相のコイル35(W)から延在する巻線350の端部352が周方向の一方側CWから到達する。ここで、分割インシュレータ320には、第1巻線接続部721(U)と第3巻線接続部721(W)との間に、径方向の内側から第3巻線接続部721(W)に第3相のコイル35(W)から延在する巻線350の端部352を導くガイド用の凹部329が設けられている。従って、第1相のコイル35(U)から延在する巻線350の端部352、および第3相のコイル35(W)から延在する巻線350の端部352がいずれも、周方向の一方側CWから到達する場合でも、第3相のコイル35(W)から延在する巻線350の端部352については、ガイド用の凹部329を通して第3巻線接続部721(W)に導くことができるので、コモン端子72への接続が容易である。
【0055】
このように本形態のモータ10およびポンプ装置1において、コモン端子72では、隣り合う巻線接続部721の1つの間につき1つの脚部725が設けられている。また、脚部725は、複数の巻線接続部721のうち、隣り合う巻線接続部721の間のみに設けられており、板部720の両端には脚部725が設けられていない。このため、コモン端子72の周方向の寸法が短いので、コモン端子72のコストを低減することができる。また、脚部725の本数が少ないため、インシュレータ32へのコモン端子72の取り付けが容易である。
【0056】
また、コモン端子72の周方向の寸法が短いので、コモン端子72が1つの分割インシュレータ320に保持されている構造を実現することができる。このため、脚部725が嵌る第1穴326および第2穴327の相対的な位置精度が高い。従って、コモン端子72の取り付けが容易である。また、コモン端子72の周方向の寸法が短いので、コモン端子72の板部720は平板状でよく、板部720を湾曲させる工程を必要としない。このため、コモン端子72のコストを低減することができる。
【0057】
また、インシュレータ32において、第1穴326は、第1脚部726が嵌る圧入穴であり、第2穴327は、第2脚部727が嵌るガイド穴である。従って、第2脚部727および第2穴327によってコモン端子72をガイドしながら第1穴326に第1脚部726を圧入することができる。それ故、2本の脚部の双方を圧入する場合より、インシュレータ32へのコモン端子72の取り付けが容易である。
【0058】
(巻線端子71の変形例1)
図9は、図7に示す巻線端子71の変形例1を径方向の内側からみた斜視図である。なお、本形態の基本的な構成は、上記実施形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0059】
図7等を参照して説明した巻線端子71では、第1脚部716と第2脚部717とでは長さが等しかったが、本形態では、図9に示すように、ガイド用の第2脚部717は、圧入用の第1脚部716より長い。従って、第2脚部717および第2穴327によって巻線端子71をガイドしながら第1穴326に第1脚部716を圧入する際、コモン端子72のガイドが容易である。
【0060】
(巻線端子71の変形例2)
図10は、図7に示す巻線端子71の変形例2を径方向の内側からみた斜視図である。なお、本形態の基本的な構成は、上記実施形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0061】
図7等を参照して説明した巻線端子71においては、弾性部714は蛇行部712であったが、本形態では、図10に示すように、弾性部714は、第1脚部716より長い長さ寸法で基板接続部711に向けて直線的に延在するピン状の軸部713である。例えば、弾性部714を構成する軸部713は、第1脚部716より1.2倍から1.5倍の長さを有する。従って、弾性部714は適度な弾性を有する。
【0062】
ここで、弾性部714は、板部710の周方向の他方側CCWの端部710cから基板接続部711に向けて延在しており、弾性部714は、モータ軸線L方向からみたとき、圧入に用いる第1脚部716と重なっていない。このため、板部710の分割インシュレータ320とは反対側の端部710aを押圧して第1脚部716を第1穴326に圧入する際、弾性部714が邪魔になりにくい。
【0063】
[他の実施の形態]
上記実施形態では、ポンプ装置1に用いるモータ10を例示したが、他の機器に搭載されるモータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、6…ハウジング、10…モータ、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、35(U)…第1相のコイル、35(V)…第2相のコイル、35(W)…第3相のコイル、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、66…胴部、67…第1円柱部、68…第2円柱部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、72…コモン端子、75…コネタク端子、97…第1固定部、98…第2固定部、191…第1接続部、192…第2接続部、311…円環部、312…突極、320、330…分割インシュレータ、321、331…外周側部分、322、332…内周側部分、326…第1穴、327…第2穴、350…巻線、710、720…板部、711…基板接続部、712…蛇行部、713…軸部、714…弾性部、715、725…脚部、716、726…第1脚部、717、727…第2脚部、721…巻線接続部、721(U)…第1巻線接続部、721(V)…第2巻線接続部、721(W)…第3巻線接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10