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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
B25J19/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020218960
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104003
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】荒川 洋
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052055(JP,A)
【文献】特開2017-24096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ軸と前記ネジ軸に沿って移動するナット部材とを有するボールネジと、前記ネジ軸を回転させるためのモータと、前記モータの動力を前記ネジ軸に伝達する動力伝達機構と、前記モータの回転を検知するエンコーダと、前記ネジ軸に固定される被検知部材と前記被検知部材を検知するセンサとを有し前記ネジ軸の回転を検知する検知機構と、前記エンコーダの出力信号と前記センサの出力信号とが入力される制御部とを備え、
前記制御部は、前記エンコーダの出力信号が前記制御部に入力されていないにもかかわらず前記センサの出力信号が前記制御部に入力されている場合、および、前記エンコーダの出力信号が前記制御部に入力されているにもかかわらず前記センサの出力信号が前記制御部に入力されていない場合に前記ネジ軸に回転異常が生じていると判断することを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記ネジ軸を停止させるブレーキを備え、
前記制御部は、前記ネジ軸に回転異常が生じていることを検知すると、前記ブレーキを作動させることを特徴とする請求項1記載のロボット。
【請求項3】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記ハンドおよび前記アームを昇降させる昇降機構とを備え、
前記昇降機構は、前記ボールネジと前記モータと前記動力伝達機構と前記エンコーダと前記検知機構と前記ブレーキとを備え、
前記ネジ軸の軸方向は、上下方向と一致しており、
前記ナット部材に前記ハンドおよび前記アームが取り付けられていることを特徴する請求項2記載のロボット。
【請求項4】
2個の前記ブレーキを備え、
前記制御部は、前記ネジ軸に回転異常が生じていることを検知すると、2個の前記ブレーキを作動させるとともに、2個の前記ブレーキの作動開始タイミングをずらすことを特徴とする請求項2または3記載のロボット。
【請求項5】
2個の前記ブレーキを備え、
2個の前記ブレーキは、前記ネジ軸の軸方向で重なっていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のロボット。
【請求項6】
ネジ軸と前記ネジ軸に沿って移動するナット部材とを有するボールネジと、前記ネジ軸を回転させるためのモータと、前記モータの動力を前記ネジ軸に伝達する動力伝達機構と、前記モータの回転を検知するエンコーダと、前記ネジ軸に固定される被検知部材と前記被検知部材を検知するセンサとを有し前記ネジ軸の回転を検知する検知機構とを備えるロボットの制御方法であって、
前記エンコーダの出力信号が前記ロボットの制御部に入力されていないにもかかわらず前記センサの出力信号が前記制御部に入力されている場合、および、前記エンコーダの出力信号が前記制御部に入力されているにもかかわらず前記センサの出力信号が前記制御部に入力されていない場合に前記ネジ軸に回転異常が生じていると判断することを特徴とするロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボット等のロボットに関する。また、本発明は、産業用ロボット等のロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の基板を搬送する水平多関節型の産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、基板が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームを支持する本体部と、本体部を水平方向に移動可能に支持するベースとを備えている。本体部は、アームの基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポートと、アームサポートを昇降可能に支持する支持フレームと、本体部の下端部分を構成するとともにベースに対して水平移動可能な基台と、支持フレームの下端が固定されるとともに基台に対して回動可能な旋回フレームとを備えている。
【0003】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットは、ハンドおよびアームと一緒にアームサポートを昇降させる昇降機構を備えている。昇降機構は、たとえば、ボールネジと、ボールネジのネジ軸を回転させるためのモータと、モータの動力をボールネジに伝達する動力伝達機構とを備えている。モータは、サーボモータである。昇降機構は、モータの回転を検知するエンコーダを備えており、モータは、エンコーダの出力信号に基づいて制御される。動力伝達機構は、たとえば、減速機を備えている。ボールネジのナット部材には、アームサポートが取り付けられている。
【0004】
なお、特許文献1に記載の産業用ロボットは、産業用ロボットの安全性を高めるために、ボールネジのネジ軸を停止させるブレーキを備えている。このブレーキは、たとえば、無励磁作動型の電磁ブレーキであり、ネジ軸を直接、停止させる。特許文献1に記載の産業用ロボットでは、エンコーダの出力信号に基づいてモータの回転異常が検知されるときには、ボールネジのネジ軸に回転異常が生じていると推定されるため、エンコーダの出力信号に基づいてモータの回転異常が検知されると、ブレーキを作動させてボールネジのネジ軸を非常停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-24096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の産業用ロボットの場合、たとえば、万が一、動力伝達機構に異常が生じると、モータは正常に回転しているにもかかわらず、ボールネジのネジ軸が正常に回転していないといった事態が生じうる。また、この産業用ロボットの場合、たとえば、万が一、動力伝達機構に異常が生じてモータとボールネジとの間で動力の伝達が行われなくなると、モータは停止しているにもかかわらず、ボールネジのネジ軸は回転しているといった事態も生じうる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、このような事態が生じたときに、モータの回転を検知するエンコーダの出力信号に基づいて、ボールネジのネジ軸の回転異常を検知することができない。そのため、この産業用ロボットでは、ボールネジのネジ軸が正常に回転していないにもかかわらず、ボールネジのネジ軸を非常停止させることができなくなるといった事態が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、ボールネジと、ボールネジのネジ軸を回転させるためのモータとを備えるロボットにおいて、ボールネジのネジ軸の回転異常をより適切に検知することが可能なロボットを提供することにある。また、本発明の課題は、ボールネジと、ボールネジのネジ軸を回転させるためのモータとを備えるロボットにおいて、ボールネジのネジ軸の回転異常をより適切に検知することが可能となるロボットの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットは、ネジ軸とネジ軸に沿って移動するナット部材とを有するボールネジと、ネジ軸を回転させるためのモータと、モータの動力をネジ軸に伝達する動力伝達機構と、モータの回転を検知するエンコーダと、ネジ軸に固定される被検知部材と被検知部材を検知するセンサとを有しネジ軸の回転を検知する検知機構と、エンコーダの出力信号とセンサの出力信号とが入力される制御部とを備え、制御部は、エンコーダの出力信号が制御部に入力されていないにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されている場合、および、エンコーダの出力信号が制御部に入力されているにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されていない場合にネジ軸に回転異常が生じていると判断することを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するため、本発明のロボットの制御方法は、ネジ軸とネジ軸に沿って移動するナット部材とを有するボールネジと、ネジ軸を回転させるためのモータと、モータの動力をネジ軸に伝達する動力伝達機構と、モータの回転を検知するエンコーダと、ネジ軸に固定される被検知部材と被検知部材を検知するセンサとを有しネジ軸の回転を検知する検知機構とを備えるロボットの制御方法であって、エンコーダの出力信号がロボットの制御部に入力されていないにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されている場合、および、エンコーダの出力信号が制御部に入力されているにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されていない場合にネジ軸に回転異常が生じていると判断することを特徴とする。
【0011】
本発明では、ロボットは、ボールネジのネジ軸に固定される被検知部材と被検知部材を検知するセンサとを有しネジ軸の回転を検知する検知機構を備えている。また、本発明では、エンコーダの出力信号が制御部に入力されていないにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されている場合、および、エンコーダの出力信号が制御部に入力されているにもかかわらずセンサの出力信号が制御部に入力されていない場合にネジ軸に回転異常が生じていると判断している。そのため、本発明では、動力伝達機構に異常が生じて、モータは正常に回転しているにもかかわらず、ネジ軸が停止しているといった事態を検知することが可能になるとともに、モータは停止しているにもかかわらず、ネジ軸が回転しているといった事態を検知することが可能になる。したがって、本発明では、ネジ軸の回転異常をより適切に検知することが可能になる。
【0012】
本発明において、ロボットは、ネジ軸を停止させるブレーキを備え、制御部は、ネジ軸に回転異常が生じていることを検知すると、ブレーキを作動させることが好ましい。このように構成すると、ボールネジのネジ軸が正常に回転していないときに、ネジ軸を非常停止させることが可能になる。したがって、ロボットの安全性を高めることが可能になる。
【0013】
本発明において、ロボットは、たとえば、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、ハンドおよびアームを昇降させる昇降機構とを備え、昇降機構は、ボールネジとモータと動力伝達機構とエンコーダと検知機構とブレーキとを備え、ネジ軸の軸方向は、上下方向と一致しており、ナット部材にハンドおよびアームが取り付けられている。この場合には、ボールネジのネジ軸が正常に回転していないときに、ネジ軸を非常停止させて、ハンドに搭載される搬送対象物、ハンドおよびアームの落下を防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、ロボットは、2個のブレーキを備え、制御部は、ネジ軸に回転異常が生じていることを検知すると、2個のブレーキを作動させるとともに、2個のブレーキの作動開始タイミングをずらすことが好ましい。このように構成すると、2個のブレーキのうちの一方のブレーキが故障しても、他方のブレーキによってネジ軸を非常停止させることが可能になる。また、このように構成すると、2個のブレーキの作動開始タイミングをずらしているため、2個のブレーキによる急激な制動力がネジ軸に作用するのを防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、ロボットは、たとえば、2個のブレーキを備え、2個のブレーキは、ネジ軸の軸方向で重なっている。この場合には、ロボットが2個のブレーキを備えていても、2個のブレーキをコンパクトに配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、ボールネジと、ボールネジのネジ軸を回転させるためのモータとを備えるロボットにおいて、ボールネジのネジ軸の回転異常をより適切に検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかるロボットの平面図である。
図2図1に示すロボットの側面図である。
図3図2に示すハンドおよびアームを昇降させる昇降機構の構成を説明するための図である。
図4】(A)は、図3のE部の拡大図であり、(B)は、(A)のF-F方向から検知機構を示す底面図である。
図5図1に示すロボットの制御部に電気的に接続される昇降機構の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるロボット1の平面図である。図2は、図1に示すロボット1の側面図である。
【0020】
本形態のロボット1は、搬送対象物である液晶ディスプレイのガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送する水平多関節型の産業用ロボットである。ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に回動可能に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備えている。本体部5は、アーム4の基端側を支持するとともに昇降可能なアームサポート7と、アームサポート7を昇降可能に支持する支持フレーム8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台9と、支持フレーム8の下端が固定されるとともに基台9に対して回動可能な旋回フレーム10とを備えている。
【0021】
アーム4は、第1アーム部12と第2アーム部13との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部12の基端側は、アームサポート7に回動可能に連結されている。第1アーム部12の先端側には、第2アーム部13の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部13の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。アーム4は、ハンド3が一定方向を向いた状態で略直線的に移動するように水平方向へ伸縮可能となっている。ロボット1は、アーム4を駆動するアーム駆動機構を備えている。
【0022】
支持フレーム8は、アームサポート7を介してハンド3およびアーム4を昇降可能に保持している。支持フレーム8は、アームサポート7を昇降可能に保持する柱状の第1支持フレーム15と、第1支持フレーム15を昇降可能に保持する柱状の第2支持フレーム16とを備えている。ロボット1は、第1支持フレーム15を上下方向に案内するガイド機構と、アームサポート7を上下方向へ案内するガイド機構とを備えている。また、ロボット1は、第1支持フレーム15に対してアームサポート7を昇降させるとともに第2支持フレーム16に対して第1支持フレーム15を昇降させる昇降機構17(図3参照)を備えている。すなわち、ロボット1は、ハンド3およびアーム4を昇降させる昇降機構17を備えている。昇降機構17の具体的な構成については後述する。
【0023】
旋回フレーム10は、上下方向の厚さが薄い扁平な略直方体状に形成されている。また、旋回フレーム10は、細長い略直方体状に形成されている。旋回フレーム10の先端側の上面には、第2支持フレーム16の下端部が固定されている。旋回フレーム10の基端側は、上下方向を回動の軸方向とする回動が可能となるように基台9に支持されている。旋回フレーム10は、基台9よりも上側に配置されている。ロボット1は、基台9に対して旋回フレーム10を回動させる回動機構を備えている。また、ロボット1は、ベース部材6に対して基台9を水平移動させる水平移動機構と、基台9を水平方向へ案内するガイド機構とを備えている。
【0024】
(昇降機構の構成)
図3は、図2に示すハンド3およびアーム4を昇降させる昇降機構17の構成を説明するための図である。図4(A)は、図3のE部の拡大図であり、図4(B)は、図4(A)のF-F方向から検知機構28を示す底面図である。
【0025】
昇降機構17は、ネジ軸20とネジ軸20に沿って移動するナット部材21とを有するボールネジ22と、ネジ軸20を回転させるためのモータ23と、モータ23の動力をネジ軸20に伝達する動力伝達機構24とを備えている。また、昇降機構17は、ネジ軸20を停止させるブレーキ25、26を備えている。本形態の昇降機構17は、2個のブレーキ25、26を備えている。さらに、昇降機構17は、モータ23の回転を検知するエンコーダ27と、ネジ軸20の回転を検知する検知機構28とを備えている。
【0026】
ネジ軸20は、ネジ軸20の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、ネジ軸20の軸方向は上下方向と一致している。ネジ軸20は、上下方向を回転の軸方向として回転可能となっている。ナット部材21は、ネジ軸20に係合している。ナット部材21は、ネジ軸20に沿って上下方向に移動する。ナット部材21には、アームサポート7または第1支持フレーム15が固定されている。すなわち、ナット部材21には、アームサポート7を介して、または、第1支持フレーム15およびアームサポート7を介して、ハンド3およびアーム4が取り付けられている。
【0027】
モータ23は、サーボモータである。モータ23は、エンコーダ27の出力信号に基づいて制御される。動力伝達機構24は、モータ23の出力軸に固定されるプーリ31と、ネジ軸20の下端側部分に固定されるプーリ32と、プーリ31とプーリ32とに架け渡されるベルト33とを備えている。エンコーダ27は、モータ23の回転軸に固定される被検知部材と、被検知部材を検知するセンサとを備えている。
【0028】
ブレーキ25とブレーキ26とは、同構造かつ同形状の電磁ブレーキである。具体的には、ブレーキ25、26は、無励磁作動型の電磁ブレーキである。ブレーキ25、26は、ネジ軸20に固定される回転板と、回転板を挟んで配置される制動板およびアーマチュアと、アーマチュアを回転板に向かって付勢するバネ部材と、アーマチュアを駆動するためのコイルとを備えており、ネジ軸20を直接、停止させる。2個のブレーキ25、26は、ネジ軸20の軸方向で重なっている。本形態では、ブレーキ25とブレーキ26とが上下方向において対称に配置されている。また、2個のブレーキ25、26は、プーリ32の下側に配置されている。
【0029】
検知機構28は、ネジ軸20に固定される被検知部材35と、被検知部材35を検知するセンサ36とを備えており、ネジ軸20の回転を直接、検知する。センサ36は、たとえば、発光素子と、発光素子に対向配置される受光素子とを備える透過型の光学式センサである。被検知部材35は、薄鋼板を所定形状に折り曲げることで形成されている。被検知部材35は、ネジ軸20の下端面に固定されている。
【0030】
被検知部材35は、ネジ軸20の下端面に固定される被固定部35aと、センサ36の発光素子と受光素子との間を遮る遮光部35bとを備えている。本形態の被検知部材35は、ネジ軸20の軸心に対して180°ピッチで配置される2個の遮光部35bを備えている。なお、被検知部材35が有する遮光部35bの数は3個以上であっても良い。たとえば、被検知部材35は、ネジ軸20の軸心に対して90°ピッチで配置される4個の遮光部35bを備えていても良い。また、遮光部35bは、円板状に形成されていても良い。この場合には、上下方向で遮光部35bを貫通する複数のスリット穴が、遮光部35bの周方向において一定のピッチで形成されている。
【0031】
(ネジ軸の非常停止動作)
図5は、図1に示すロボット1の制御部40に電気的に接続される昇降機構17の構成を示すブロック図である。
【0032】
ロボット1の制御部40には、モータ23およびブレーキ25、26が電気的に接続されている。具体的には、モータ23の駆動用コイルおよびブレーキ25、26のコイルが制御部40に電気的に接続されている。また、制御部40には、エンコーダ27(具体的には、エンコーダ27のセンサ)およびセンサ36が電気的に接続されている。制御部40には、エンコーダ27の出力信号(具体的には、エンコーダ27のセンサの出力信号)とセンサ36の出力信号とが入力される。
【0033】
制御部40は、エンコーダ27の出力信号とセンサ36の出力信号とに基づいて、ネジ軸20に回転異常が生じているのか否かを検知する。具体的には、制御部40は、たとえば、エンコーダ27の出力信号が入力されていないにもかかわらず、センサ36の出力信号が入力されている場合や、エンコーダ27の出力信号が入力されているにもかかわらず、センサ36の出力信号が入力されていない場合に、ネジ軸20に回転異常が生じていると判断する。
【0034】
また、制御部40は、たとえば、エンコーダ27の出力信号に基づいて算出されるネジ軸20の回転速度と、センサ36の出力信号に基づいて算出されるネジ軸20の回転速度とに所定値以上の差異が生じている場合(すなわち、モータ23の回転速度とネジ軸20の回転速度との関係が一定の関係にならず、モータ23の回転速度とネジ軸20の回転速度とが同期していない場合)にも、ネジ軸20に回転異常が生じていると判断する。
【0035】
また、制御部40は、ネジ軸20に回転異常が生じていることを検知すると、2個のブレーキ25、26を作動させて、ネジ軸20を非常停止させる。このときには、制御部40は、2個のブレーキ25、26の作動開始タイミングをずらす。すなわち、制御部40は、ブレーキ25のコイルへの電圧の印加開始タイミングと、ブレーキ26のコイルへの電圧の印加開始タイミングとをずらす。
【0036】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロボット1は、ネジ軸20の回転を検知する検知機構28を備えており、検知機構28は、ネジ軸20に固定される被検知部材35と、被検知部材35を検知するセンサ36とを備えている。また、本形態では、制御部40は、エンコーダ27の出力信号とセンサ36の出力信号とに基づいて、ネジ軸20に回転異常が生じているのか否かを検知している。
【0037】
そのため、本形態では、たとえば、動力伝達機構24に異常が生じて、モータ23は正常に回転しているにもかかわらず、ネジ軸20が正常に回転していないといった事態や、モータ23は停止しているにもかかわらず、ネジ軸20が回転しているといった事態が生じても、エンコーダ27の出力信号とセンサ36の出力信号とに基づいて、ネジ軸20の回転異常を検知することが可能になる。したがって、本形態では、ネジ軸20の回転異常をより適切に検知することが可能になる。
【0038】
本形態では、制御部40は、ネジ軸20に回転異常が生じていることを検知すると、ブレーキ25、26を作動させて、ネジ軸20を非常停止させている。そのため、本形態では、ネジ軸20に回転異常が生じたときの、基板2、ハンド3およびアーム4の落下を防止することが可能になり、その結果、ロボット1の安全性を高めることが可能になる。また、本形態では、昇降機構17が2個のブレーキ25、26を備えているため、たとえば、ブレーキ25が故障しても、ブレーキ26によってネジ軸20を非常停止させることが可能になる。
【0039】
本形態では、制御部40は、2個のブレーキ25、26を作動させる際に、2個のブレーキ25、26の作動開始タイミングをずらしている。そのため、本形態では、2個のブレーキ25、26の急激な制動力がネジ軸20に作用するのを防止することが可能になる。また、本形態では、2個のブレーキ25、26がネジ軸20の軸方向で重なっているため、昇降機構17が2個のブレーキ25、26を備えていても、2個のブレーキ25、26をコンパクトに配置することが可能になる。
【0040】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0041】
上述した形態において、支持フレーム8は、1個の柱状のフレームによって構成されていても良い。この場合には、昇降機構17は、支持フレーム8に対してアームサポート7を昇降させる。また、上述した形態において、ロボット1は、第1支持フレーム15に対してアームサポート7を昇降させる昇降機構と、第2支持フレーム16に対して第1支持フレーム15を昇降させる昇降機構とを個別に備えていても良い。この場合には、2個の昇降機構は、昇降機構17と同様に構成されている。
【0042】
上述した形態において、ネジ軸20に回転異常が生じていることを制御部40が検知したときの、2個のブレーキ25、26の作動開始タイミングは同時であっても良い。また、上述した形態において、昇降機構17が備えるブレーキの数は1個であっても良い。さらに、上述した形態において、動力伝達機構24は、減速機を備えていても良いし、歯車列を備えていても良い。また、動力伝達機構24は、モータ23の出力軸およびネジ軸20に取り付けられてモータ23の出力軸とネジ軸20とを繋ぐカップリングであっても良い。また、上述した形態において、センサ36は、反射型の光学式センサであっても良いし、近接センサ等の光学式以外のセンサであっても良い。
【0043】
上述した形態において、ロボット1は、水平方向へのハンド3の直線的な移動が可能となるようにハンド3を保持するハンド保持部を備えていても良い。この場合には、ロボット1は、ハンド保持部に対してハンド3を水平方向へ直線的に移動させる水平駆動機構を備えている。水平駆動機構は、昇降機構17と同様に、ネジ軸20およびナット部材21を有するボールネジ22と、ネジ軸20を回転させるためのモータ23と、モータ23の動力をネジ軸20に伝達する動力伝達機構24と、モータ23の回転を検知するエンコーダ27と、ネジ軸20の回転を検知する検知機構28とを備えている。ネジ軸20は、ネジ軸20の軸方向と水平方向とが一致するように配置されており、ナット部材21には、ハンド3が取り付けられている。なお、この水平駆動機構は、ブレーキ25、26を備えていても良いし、ブレーキ25、26を備えていなくても良い。
【0044】
上述した形態では、本体部5は、水平方向へ移動可能となっているが、本体部5は、固定されていても良い。また、上述した形態において、アーム4は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。さらに、上述した形態において、ロボット1は、基板2以外の搬送対象物を搬送するロボットであっても良い。また、本発明が適用されるロボットは、産業用ロボット以外のロボットであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 ロボット
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
3 ハンド
4 アーム
17 昇降機構
20 ネジ軸
21 ナット部材
22 ボールネジ
23 モータ
24 動力伝達機構
25、26 ブレーキ
27 エンコーダ
28 検知機構
35 被検知部材
36 センサ
40 制御部
図1
図2
図3
図4
図5