(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】波形測定器及びデータの取得方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20240930BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G01R13/20 M
G01R13/20 N
G01R19/00 A
(21)【出願番号】P 2020219545
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-90273(JP,A)
【文献】特開2011-53054(JP,A)
【文献】特開2002-71730(JP,A)
【文献】特許第7413124(JP,B2)
【文献】中山悦郎;山本千秋,“スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能”,横河技報,横河電機株式会社,2012年09月30日,Vol. 55, No. 1,pp. 9-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/00-13/42
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形測定器であって、
前記波形測定器への第1信号に対応する第1交流信号の入力が停止状態であるか否かを判定する判定回路と、
前記判定回路によって前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの一方を演算タイミングとして検出するように動作し、前記判定回路によって前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する検出器と、
前記演算タイミングによって設定される演算区間における演算値を、前記第1交流信号を用いて算出する演算回路と、を備える、波形測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の波形測定器において、
前記判定回路は、前記第1信号の周期の1倍を超える設定期間内に前記演算タイミングが検出されないと判定した場合、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定する、波形測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の波形測定器において、
前記判定回路は、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定してから検出された前記演算タイミングのうちの2回目以降に検出された前記演算タイミングによって前記第1信号の周期を検出し、検出した前記周期によって前記設定期間を設定する、波形測定器。
【請求項4】
請求項2に記載の波形測定器において、
前記判定回路は、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定した場合、前記第1信号の最新の周期によって前記設定期間を更新する、波形測定器。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の波形測定器において、
前記演算回路は、前記演算値として、交流電圧又は交流電流の実効値を算出する、波形測定器。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の波形測定器において、
前記演算回路は、前記演算値として、前記第1交流信号と第2交流信号と用いて電力値を算出
し、
前記第1交流信号及び前記第2交流信号のうち、一方が交流電圧であり、他方が前記交流電圧と同じ相の交流電流である、波形測定器。
【請求項7】
波形測定器への第1信号に対応する第1交流信号の入力が停止状態であるか否かを判定することと、
前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの一方を演算タイミングとして検出するように動作し、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作することと、
前記演算タイミングによって設定される演算区間における演算値を、前記第1交流信号を用いて算出することと、を含む、データの取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波形測定器及びデータの取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データが入力されると、入力されたデータの演算値をリアルタイムに算出する波形測定器が知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中山 悦郎、山本 千秋、「スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能(英題:Real-time Math Function of DL850 ScopeCorder)」、横河電機株式会社、横河技報、Vol.55 No.1 (2012)、p9-p14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の波形測定器には、改善の余地がある。例えば、機器の起動時のデータは、当該機器の解析に有用である。機器の起動時のデータの演算値を波形測定器によって算出することが望まれている。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、改善された波形測定器及びデータの取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る波形測定器は、前記波形測定器への第1信号に対応する第1交流信号の入力が停止状態であるか否かを判定する判定回路と、前記判定回路によって前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの一方を演算タイミングとして検出するように動作し、前記判定回路によって前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する検出器と、前記演算タイミングによって設定される演算区間における演算値を、前記第1交流信号を用いて算出する演算回路と、を備える。このような構成により、波形測定器に第1交流信号を入力する機器の起動時に、演算タイミングを検出器によって検出することができる。当該機器の起動時に演算タイミングを検出することにより、当該機器の起動時の演算値を算出することができる。よって、本実施形態によれば、改善された波形測定器が提供される。
【0007】
一実施形態に係る波形測定器において、前記判定回路は、前記第1信号の周期の1倍を超える設定期間内に前記演算タイミングが検出されないと判定した場合、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定してもよい。このような設定期間を用いることにより、波形測定器への交流電圧の入力が停止状態であるか否かを効率よく判定することができる。
【0008】
一実施形態に係る波形測定器において、前記判定回路は、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定してから検出された前記演算タイミングのうちの2回目以降に検出された前記演算タイミングによって前記第1信号の周期を検出し、検出した前記周期によって前記設定期間を設定してもよい。2回目以降に検出された演算タイミングによって第1信号の周期を検出することにより、第1信号の周期が精度良く検出されるため、波形測定器への第1交流信号の入力が停止状態であるか否かをより精度良く判定することができる。
【0009】
一実施形態に係る波形測定器において、前記判定回路は、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定した場合、前記第1信号の最新の周期によって前記設定期間を更新してもよい。判定回路は、第1信号の最新の周期によって設定期間を更新することにより、波形測定器への第1交流信号の入力が停止状態であるか否かをより精度良く判定することができる。
【0010】
一実施形態に係る波形測定器において、前記演算回路は、前記演算値として、交流電圧又は交流電流の実効値を算出してもよい。このような構成により、波形測定器に第1交流信号を入力する機器の起動時の電気的特性をより精度良く解析することができる。
【0011】
一実施形態に係る波形測定器において、前記演算回路は、前記演算値として、前記第1交流信号と第2交流信号と用いて電力値を算出してもよい。このような構成により、波形測定器に第1交流信号を入力する機器の起動時の電気的特性をより精度良く解析することができる。
【0012】
幾つかの実施形態に係るデータの取得方法は、波形測定器への第1信号に対応する第1交流信号の入力が停止状態であるか否かを判定することと、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態ではないと判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの一方を演算タイミングとして検出するように動作し、前記波形測定器への前記第1交流信号の入力が停止状態であると判定された場合、前記第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作することと、前記演算タイミングによって設定される演算区間における演算値を、前記第1交流信号を用いて算出することと、を含む。このような構成により、波形測定器に第1交流信号を入力する機器の起動時に、演算タイミングを検出器によって検出することができる。当該機器の起動時に演算タイミングを検出することにより、当該機器の起動時の演算値を算出することができる。よって、本実施形態によれば、改善されたデータの取得方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、改善された波形測定器及びデータの取得方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る波形測定器のブロック図である。
【
図2】
図1に示す表示器に表示される交流電圧及び交流電流の波形の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す波形測定器の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図1に示す波形測定器による演算タイミングの検出方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す波形測定器による演算値の算出方法を示すフローチャートである。
【
図6】比較例に係る波形測定器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には、同じ符号を付す。
【0016】
図1に示すような波形測定器1は、機器の交流信号の測定に用いられる。波形測定器1は、機器の交流信号の波形と、当該交流信号を用いて算出した演算値とを同時表示することができる。以下、波形測定器1は、自動車に搭載される同期モータの交流信号の測定に用いられるものとする。同期モータは、例えば、三相同期モータである。ただし、波形測定器1は、任意の機器の交流信号の測定に用いられてよい。
【0017】
波形測定器1は、以下に説明するように、同期モータの起動時の電力値等の演算値を算出することができる。同期モータの起動時は、例えば、同期モータの電源が投入されたとき、又は同期モータが非駆動状態から駆動状態になるとき等である。
【0018】
波形測定器1には、同期モータから、第1信号及び第2信号が入力される。第1信号は、同期モータの第1交流信号に対応する。第2信号は、同期モータの第2交流信号に対応する。
【0019】
以下、第1交流信号は、U相の交流電圧であるものとする。つまり、第1信号は、U相の交流電圧に対応するものとする。また、第2交流信号は、U相の交流電流であるものとする。つまり、第2信号は、U相の交流電流に対応するものとする。ただし、第1交流信号がU相の交流電流であり、第2交流信号がU相の交流電圧であってもよい。また、第1交流信号及び第2交流信号は、各々、V相又はW相の交流電圧及び交流電流であってもよいし、V相又はW相の交流電流及び交流電圧であってもよい。
【0020】
図1に示すような波形測定器1は、U相、V相及びW相のうちの1相の交流電圧及び交流電流を測定するように構成されている。ただし、波形測定器1は、U相、V相及びW相のうちの2つ以上の相の交流電圧及び交流電流を測定するように構成されていてもよい。
【0021】
図1に示すように、波形測定器1は、アンプ10と、アンプ11と、AD(Analog to Digital)変換器12と、AD変換器13と、メモリコントローラ14と、メモリ15と、検出器16と、判定回路17と、演算回路18と、メモリコントローラ19と、メモリ20と、生成回路21と、表示器22とを備える。波形測定器1は、AD変換器12、AD変換器13及びメモリコントローラ14等にサンプリング信号を出力するタイミング発生器をさらに備えてよい。
【0022】
アンプ10には、第1信号が入力される。アンプ10は、第1信号をAD変換器12の入力電圧範囲に応じて正規化する。例えば、アンプ10は、第1信号の電圧幅がAD変換器12の入力電圧範囲内になるように第1信号の電圧幅を正規化(調整)する。アンプ10は、正規化後の第1信号をAD変換器12に出力する。
【0023】
アンプ11には、第2信号が入力される。アンプ11は、第2信号をAD変換器13の入力電圧範囲に応じて正規化する。例えば、アンプ11は、第2信号の電圧幅がAD変換器13の入力電圧範囲内になるように第2信号の電圧幅を正規化(調整)する。アンプ11は、正規化後の第2信号をAD変換器13に出力する。
【0024】
AD変換器12には、アンプ10から、正規化後の第1信号が入力される。AD変換器12は、サンプリング信号のサンプリング周期に従って、正規化後の第1信号をデジタルデータに変換する。デジタルデータに変換された後の第1信号は、
図2に示すようなデータとなる。第1信号としてのデジタルデータは、AD変換器12によって、サンプリング周期毎に出力される。AD変換器12は、デジタルデータに変換した後の第1信号を、サンプリングタイミングに従って、メモリコントローラ14、検出器16及び演算回路18に出力する。
【0025】
AD変換器13には、アンプ11から、正規化後の第2信号が入力される。AD変換器13は、サンプリング信号のサンプリング周期に従って、正規化後の第2信号をデジタルデータに変換する。デジタルデータに変換させた後の第2信号は、
図2に示すようなデータとなる。第2信号としてのデジタルデータは、AD変換器13によって、サンプリング周期毎に出力される。AD変換器13は、デジタルデータに変換した後の第2信号を、サンプリングタイミングに従って、メモリコントローラ14及び演算回路18に出力する。
【0026】
メモリコントローラ14は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。
【0027】
メモリコントローラ14には、AD変換器12から、デジタルデータに変換された後の第1信号が入力される。メモリコントローラ14は、サンプリング信号のサンプリング周期に従って、第1信号の情報をメモリ15に記憶させる。また、メモリコントローラ14には、AD変換器13から、デジタルデータに変換された後の第2信号が入力される。メモリコントローラ14は、サンプリング信号のサンプリング周期に従って、第2信号の情報をメモリ15に記憶させる。
【0028】
メモリ15は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ又はこれらのうちの少なくとも2種類の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等である。RAMは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等である。
【0029】
メモリ15には、第1信号の情報及び第2信号の情報が記憶される。メモリ15に記憶される第1信号の情報は、表示器22に表示されるU相の交流電圧を示すアナログ波形のデータに相当する。また、メモリ15に記憶される第2信号の情報は、表示器22に表示されるU相の交流電流を示すアナログ波形のデータに相当する。
【0030】
検出器16は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。
【0031】
検出器16には、AD変換器12から、デジタルデータに変換された後の第1信号が入力される。検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出可能である。
【0032】
第1信号の立ち上がりエッジの検出例として、
図2に示すように、検出器16は、第1信号が第1設定値からゼロクロス点を通って第2設定値まで大きくなる場合、第1信号が当該ゼロクロス点を通るタイミングを第1信号の立ち上がりエッジとして検出する。第1設定値は、ゼロクロス点よりも小さい。第2設定値は、ゼロクロス点よりも大きい。セロクロス点は、交流電圧の電圧値が基準電圧値となる点である。基準電圧値は、例えば、0[V]である。第1設定値及び第2設定値は、ノイズ等を考慮して適宜設定されてよい。ただし、第1信号の立ち上がりエッジは、第1信号がゼロクロス点を通るタイミングに限定されない。第1信号の立ち上がりエッジは、第1信号が第1設定値と第2設定値との間で設定される任意の点を通るタイミングであってよい。また、検出器16は、第1信号が基準電圧値から第2設定値まで大きくなる場合、第1信号が当該基準電圧値であるときのタイミングを第1信号の立ち上がりエッジとして検出してもよい。
【0033】
第1信号の立ち下がりエッジの検出例として、
図2に示すように、検出器16は、第1信号が第2設定値からゼロクロス点を通って第1設定値まで小さくなる場合、第1信号が当該ゼロクロス点を通るタイミングを第1信号の立ち下がりエッジとして検出する。ただし、第1信号の立ち下がりエッジは、ゼロクロス点を通るタイミングに限定されない。第2信号の立ち下がりエッジは、第2信号が第1設定値と第2設定値との間で設定される任意の点を通るタイミングであってよい。また、検出器16は、第1信号が基準電圧値から第1設定値まで小さくなる場合、第1信号が当該基準電圧値であるときのタイミングを第1信号の立ち下がりエッジとして検出してもよい。
【0034】
検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも何れかを、演算タイミングとして検出することができる。演算タイミングは、後述するように、演算回路18が演算値を算出するための
図3に示すような演算区間の設定に用いられる。
【0035】
ここで、同期モータが駆動状態であるとき、同期モータから波形測定器1への交流電圧の入力は、停止状態ではない。つまり、
図3に示すように、同期モータが駆動状態であるとき、第1信号は、周期的に変化する。これに対し、同期モータが非駆動状態であるとき、同期モータから波形測定器1への交流電圧の入力は、停止状態になる。つまり、
図3に示すように、同期モータが非駆動状態であるとき、第1信号は、周期的に変化しない。
【0036】
同期モータが駆動状態であるとき、すなわち、同期モータから波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないとき、第1信号は、立ち上がり及び立ち下がりを周期的に繰り返す。第1信号が立ち上がり及び立ち下がりを周期的に繰り返すことにより、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの何れかを演算タイミングとして検出すれば、演算タイミングを周期的に検出することができる。演算タイミングが周期的に検出されることにより、後述の演算回路18は、演算タイミングによって演算区間を周期的に設定し、演算区間における演算値を周期的に算出することができる。
【0037】
検出器16は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定された場合、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの一方を演算タイミングとして検出するように動作する。本実施形態では、検出器16は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定された場合、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出するように動作する。第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの何れを演算タイミングとして検出するかは、例えば、波形測定器1の仕様等に応じて、予め設定される。本実施形態では、判定回路17から検出器16に、判定信号が入力される。判定信号は、判定回路17の判定結果を示す。判定信号は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定されると、ローレベルにされる。検出器16は、判定信号がローレベルであるとき、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出するように動作する。
【0038】
例えば、
図3に示すように、判定信号は、時刻t1から時刻t2までの間及び時刻t3以降、ローレベルにされる。検出器16は、時刻t1から時刻t2までの間及び時刻t3以降、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方として第1信号の立ち上がりエッジを、演算タイミングとして検出するように動作する。
【0039】
同期モータが非駆動状態であるとき、すなわち、同期モータから波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるとき、第1信号は、周期的に変化しない。ここで、同期モータは、例えば同期モータが搭載される自動車の走行状態に応じて、非駆動状態から駆動状態になる。同期モータが非駆動状態から駆動状態になるときのすなわち同期モータの起動時の電力値等の演算値の情報は、同期モータの特性を解析するために有用である。ところで、同期モータが非駆動状態から駆動状態になるとき、同期モータでは、交流電圧及び交流電流の位相が調整される。調整後の交流電圧の位相によって、同期モータが非駆動状態から駆動状態になるとき、交流電圧に対応する第1信号が立ち上がるか又は立ち下がるかが異なる。従って、検出器16が第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出するように動作している場合、同期モータが非駆動状態から駆動状態になった直後は、検出器16が演算タイミングを検出できない場合がある。例えば、検出器16が第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方として第1信号の立ち上がりエッジを演算タイミングとして検出するように動作する場合を考える。この場合、
図3に示す時刻t3では、第1信号が立ち下がる。その結果、検出器16は、時刻t3で、演算タイミングを検出することができない。時刻t3で演算タイミングを検出できないと、後述の演算回路18は、演算区間a6を設定できず、演算区間a6における演算値を算出することができない。
【0040】
そこで、検出器16は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定された場合、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。本実施形態では、上述のように、判定回路17から検出器16に判定信号が入力される。判定信号は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定されると、ハイレベルにされる。検出器16は、判定信号がハイレベルであるとき、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。
【0041】
例えば、
図3に示すように、判定信号は、時刻t2から時刻t3の間、ハイレベルにされる。検出器16は、時刻t2から時刻t3の間、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。このような構成により、検出器16は、時刻t3で、第1信号の立下りエッジを演算タイミングとして検出することができる。
【0042】
ここで、波形測定器1の測定開始時、同期モータの交流電圧の位相を予測することは困難である。つまり、波形測定器1の測定開始時、第1信号が立ち上がるか又は立ち下がるかを予測することは困難である。
【0043】
そこで、検出器16は、波形測定器1の測定開始時、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。本実施形態では、判定信号は、波形測定器1の測定開始時、ハイレベルにされる。上述のように、検出器16は、判定信号がハイレベルであるとき、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。例えば、
図3に示すような時刻t1よりも前の時刻は、波形測定器1の測定開始時である。検出器16は、時刻t1で、第1信号の立ち下がりエッジを演算タイミングとして検出する。
【0044】
検出器16は、検出した演算タイミングの情報を、判定回路17及び演算回路18に出力する。検出器16は、検出した演算タイミングの情報を、メモリコントローラ19に出力してもよい。
【0045】
判定回路17は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。
【0046】
判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるか否かを判定する。この判定処理の一例については、後述する。判定回路17は、判定回路17の判定結果を示す判定信号を、検出器16に出力する。判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定すると、判定信号をハイレベルにする。一方、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定すると、判定信号をローレベルにする。なお、判定回路17は、波形測定器1の測定開始時、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるとみなし、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定してよい。つまり、判定回路17は、波形測定器1の測定開始時、判定信号をハイレベルにしてよい。例えば、
図3に示すような時刻t1よりも前の時刻で、判定信号は、ハイレベルにされる。
【0047】
<判定処理>
判定回路17には、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではない場合すなわち判定信号がローレベルである場合、検出器16から、演算タイミングの情報が入力される。判定回路17は、入力された演算タイミングの情報によって、第1信号の周期T1を検出する。判定回路17は、例えば、演算タイミングが検出器16によって検出されてから、次の演算タイミングが検出器16によって検出されるまでの期間を第1信号の周期T1として検出する。
【0048】
判定回路17は、第1信号の周期T1の1倍を超える期間を設定期間T2として設定する。判定回路17は、周期T1の1倍を超える設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されたか否かを判定する。設定期間T2は、例えば、式:T1×n(n>1)として表される。
【0049】
判定回路17は、設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されたと判定した場合、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定する。判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定した場合、判定信号をローレベルに保持する。
【0050】
一方、判定回路17は、設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されないと判定した場合、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定する。判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定した場合、判定信号をハイレベルにする。例えば、
図3に示すような時刻t2で、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定し、判定信号をハイレベルにする。
【0051】
このような設定期間T2を用いることにより、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるか否かを効率よく判定することができる。
【0052】
判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定した後に検出器16によって演算タイミングが検出された場合、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定する。判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定した後に検出器16によって最初に検出された演算タイミングで、判定信号をローレベルにする。例えば、
図3に示すように、時刻t3で、検出器16によって演算タイミングが検出される。時刻t3で検出される演算タイミングは、時刻t2で判定回路17が波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定した後、最初に検出される演算タイミングである。時刻t3で、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定し、判定信号をローレベルにする。また、時刻t1で、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定し、判定信号をローレベルにする。
【0053】
ここで、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定してから検出された演算タイミングのうちの2回目以降に検出された演算タイミングによって第1信号の周期T1を検出してよい。また、判定回路17は、検出した周期T1によって設定期間T2を設定してよい。例えば、
図3に示すような時刻t2で、判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定する。時刻t4で、時刻t2以降、2回目の演算タイミングが検出器16によって検出される。また、時刻t5で、時刻t2以降、3回目の演算タイミングが検出器16によって検出される。判定回路17は、時刻t4から時刻t5までの期間を第1信号の周期T1として検出し、検出した第1信号の周期T1によって設定期間T2を設定する。
【0054】
このように判定回路17が波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定してから2回目以降に検出された演算タイミングによって第1信号の周期T1を検出することにより、第1信号の周期T1が精度良く検出される。ここで、上述のように、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定された場合、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。また、上述のように、同期モータが非駆動状態から駆動状態になるとき、同期モータでは、交流電圧の位相が調整される。その結果、判定回路17が波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定してから検出される1回目の演算タイミングと2回目の演算タイミングとの間隔が第1信号の周期T1よりも小さくなる場合がある。2回目以降に検出された演算タイミングによって第1信号の周期T1を検出することにより、第1信号の周期T1が精度良く検出されるため、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるか否かをより精度良く判定することができる。
【0055】
判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定した場合、第1信号の最新の周期T1によって設定期間T2を更新してよい。判定回路17は、更新後の設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されたか否かを判定してよい。ここで、同期モータが駆動状態から非駆動状態になるとき、交流電圧の周期が時間の経過とともに長くなる場合がある。判定回路17は、最新の周期T1によって設定期間T2を更新することにより、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるか否かをより精度良く判定することができる。
【0056】
演算回路18は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。
【0057】
演算回路18には、AD変換器12から、第1信号が入力される。演算回路18には、AD変換器13から、第2信号が入力される。演算回路18には、検出器16から、演算タイミングの情報が入力される。
【0058】
演算回路18は、演算区間における演算値を算出する。演算回路18は、演算タイミングによって演算区間を設定する。
【0059】
演算回路18は、例えば、演算タイミングが検出器16によって検出されてから、次の演算タイミングが検出器16によって検出されるまでの区間を演算区間として設定する。例えば、
図3に示すように、演算回路18は、演算区間a1,a2,a3,a4,a6,a7,a8を設定する。
【0060】
演算回路18は、後述のように判定回路17から判定信号が入力される場合、演算タイミングが検出器16によって検出されてから判定信号が最初にハイレベルになるまでの期間を、演算区間として設定してよい。例えば、
図3に示すように、演算回路18は、演算タイミングが検出器16によって検出されてから、判定信号がハイレベルになるまでの期間を、演算区間a5として設定する。
【0061】
複数の演算区間のうちの一部は、例えば、第1信号の1周期分と同じ長さになる。例えば、
図3に示すような演算区間a2~a4,a7,a8は、第1信号の1周期分と同じ長さになる。複数の演算区間のうちの別の一部は、例えば、第1信号の1周期分よりも短くなる。例えば、
図3に示すように、判定信号がハイレベルからローレベルになる時刻t1,t3の直後の演算区間a1,a6は、第1信号の1周期分よりも短くなる。
【0062】
演算回路18は、演算値として、第1信号を用いて交流電圧の実効値を算出してよい。交流電圧の実効値の算出例として、演算回路18には、AD変換器12から、
図2に示すようなサンプリング周期毎の第1信号のデジタルデータが入力される。演算回路18は、サンプリング周期毎に第1信号のデジタルデータの二乗値を算出する。演算回路18は、二乗値を演算区間にわたって累積させた累積値を算出する。演算回路18は、累積値を当該演算区間における第1信号のデジタルデータの数すなわちサンプリング数で除算して平方根を算出することにより、交流電圧の実効値を算出する。
【0063】
演算回路18は、演算値として、第2信号を用いて交流電流の実効値を算出してよい。交流電流の実効値の算出例として、演算回路18には、AD変換器13から、
図2に示すようなサンプリング周期毎の第2信号のデジタルデータが入力される。演算回路18は、サンプリング周期毎に第2信号のデジタルデータの二乗値を算出する。演算回路18は、二乗値を演算区間にわたって累積させた累積値を算出する。演算回路18は、累積値を当該演算区間における第2信号のデジタルデータの数すなわちサンプリング数で除算して平方根を算出することにより、交流電流の実効値を算出する。
【0064】
演算回路18は、演算値として、第1信号と第2信号とを用いて電力値を算出してよい。電力値は、例えば、有効電力値又は皮相電力値等である。
【0065】
有効電力値の算出例として、演算回路18には、AD変換器12及びAD変換器13の各々から、
図2に示すようなサンプリング周期毎の第1信号のデジタルデータ及び第2信号のデジタルデータが入力される。演算回路18は、サンプリング周期毎に第1信号のデジタルデータと第2信号のデジタルデータとを乗算した乗算値を算出する。演算回路18は、乗算値を演算区間にわたって累積させた累積値を算出する。演算回路18は、累積値を当該演算区間における第1信号又は第2信号のデジタルデータの数すなわちサンプリング数で除算することにより、有効電力値を算出する。
【0066】
皮相電力値の算出例として、演算回路18は、上述のように、交流電圧の実効値及び交流電流の実効値を算出する。演算回路18は、交流電圧の実効値と交流電流の実効値とを乗算することにより、皮相電力値を算出する。
【0067】
演算回路18は、算出した演算値の情報をメモリコントローラ19に出力する。
【0068】
メモリコントローラ19は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。
【0069】
メモリコントローラ19には、演算回路18から、演算値の情報が入力される。メモリコントローラ19は、演算値の情報を、メモリ20に記憶させる。メモリコントローラ19には、検出器16から、演算タイミングの情報が入力されてよい。メモリコントローラ19は、演算タイミングの情報が入力された後に入力された演算値の情報を、メモリ20に記憶させてよい。
【0070】
メモリ20は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ又はこれらのうちの少なくとも2種類の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROM等である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAM等である。ROMは、例えば、EEPROM等である。
【0071】
メモリ20には、演算値の情報が記憶される。
【0072】
生成回路21は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサ等である。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。
【0073】
生成回路21は、波形測定器1の波形表示時、メモリ15から、デジタルデータに変換された後の第1信号の情報及び第2信号の情報を、読み出す。また、生成回路21は、波形測定器1の波形表示時、メモリ20から、演算値の情報を読み出す。生成回路21は、第1信号の情報を用い、U相の交流電圧を示すアナログ波形のデータを生成する。生成回路21は、第2信号の情報を用い、U相の交流電流を示すアナログ波形のデータを生成する。生成回路21は、U相の交流電圧を示すアナログ波形のデータと、U相の交流電流を示すアナログ波形のデータと、演算値の情報とによって、波形表示データを生成する。波形表示データは、表示器22に表示させるデータである。
【0074】
表示器22は、少なくとも1つの表示出力用インタフェースを含む。表示出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。
【0075】
表示器22は、生成回路21が生成した波形表示データを表示する。
【0076】
図4は、
図1に示す波形測定器1による演算タイミングの検出方法を示すフローチャートである。波形測定器1は、波形測定器1による測定が開始されると、
図4に示すような処理を開始する。波形測定器1は、波形測定器1による測定が終了すると、
図4に示すような処理を終了してよい。演算タイミングの検出方法は、波形測定器1のプロセッサに実行させる検出プログラムとして実現されてもよい。検出プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0077】
判定回路17は、波形測定器1の測定開始時、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるとみなし、判定信号をハイレベルにする(ステップS10)。判定信号がハイレベルにされると、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する(ステップS11)。ステップS11の処理後、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの何れかを演算タイミングとして検出する(ステップS12)。
【0078】
判定回路17は、ステップS12の処理により演算タイミングが検出器16によって検出されると、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定する(ステップ13)。判定回路17は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定すると、判定信号をローレベルにする(ステップS14)。判定信号がローレベルにされると、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出するように動作する(ステップS15)。
【0079】
ステップS16の処理では、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出する。ステップS16の処理後、再度、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出する(ステップS17)。
【0080】
判定回路17は、ステップS16の処理で検出した演算タイミングから、ステップS17の処理で検出した演算タイミングまでの期間を第1信号の周期T1として検出する(ステップS18)。
【0081】
判定回路17は、周期T1を超える設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されたか否かを判定する(ステップS19)。
【0082】
判定回路17は、設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されたと判定した場合(ステップS19:YES)、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態ではないと判定する(ステップS20)。波形測定器1は、ステップS20の処理を実行した後、ステップS18の処理に戻る。再度のステップS18の処理では、判定回路17は、第1信号の最新の周期T1によって設定期間T2を更新する。
【0083】
一方、判定回路17は、設定期間T2内に演算タイミングが検出器16によって検出されないと判定した場合(ステップS19:NO)、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定する(ステップS21)。波形測定器1は、ステップS21の処理を実行した後、ステップS10の処理に戻る。
【0084】
図5は、
図1に示す波形測定器1による演算値の算出方法を示すフローチャートである。波形測定器1は、
図4に示す処理と並行して
図5に示す処理を実行してよい。演算値の算出方法は、波形測定器1のプロセッサに実行させる算出プログラムとして実現されてもよい。算出プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0085】
演算回路18は、演算区間を設定する(ステップS30)。演算回路18は、例えば、演算タイミングが検出器16によって検出されてから、次の演算タイミングが検出器16によって検出されるまでの区間を演算区間として設定する。
【0086】
演算回路18は、演算区間における演算値を算出する(ステップS31)。演算回路18は、算出した演算値の情報をメモリコントローラ19に出力する。
【0087】
メモリコントローラ19は、演算回路18から入力された演算値の情報を、メモリ20に記憶させる(ステップS32)。
【0088】
以下、本実施形態に係る波形測定器1の効果を比較例と対比しながら説明する。
【0089】
図6は、比較例に係る波形測定器101のブロック図である。波形測定器101は、アンプ10と、アンプ11と、AD変換器12と、AD変換器13と、メモリコントローラ14と、メモリ15と、検出器16と、演算回路18と、メモリコントローラ19と、メモリ20と、生成回路21と、表示器22とを備える。
【0090】
比較例に係る波形測定器101は、本実施形態に係る波形測定器1とは異なり、判定回路17を備えない。波形測定器101では、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち上がりエッジのうちの予め設定された一方を演算タイミングとして検出するように動作する。このような構成により、比較例に係る波形測定器101では、同期モータが非駆動状態から駆動状態になるときの演算タイミングが検出器16によって検出できない場合がある。例えば、検出器16は、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち上がりエッジのうちの予め設定された一方として、第1信号の立ち上がりエッジを検出するように動作するものとする。この場合、検出器16は、
図3に示すような時刻t3で演算タイミングを検出することができない。時刻t3で演算タイミングを検出することができないと、演算区間a6が設定できず、演算区間a6における演算値を算出することができない。
【0091】
これに対し、本実施形態に係る波形測定器1は、波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であるか否かを判定する判定回路17を備える。さらに、本実施形態に係る波形測定器1では、検出器16は、判定回路17によって波形測定器1への交流電圧の入力が停止状態であると判定された場合、第1信号の立ち上がりエッジ及び立ち上がりエッジの両方を演算タイミングとして検出するように動作する。このような構成により、同期モータが非駆動状態から駆動状態になるときすなわち同期モータの起動時に、演算タイミングを検出器16によって検出することができる。同期モータの起動時に演算タイミングを検出することにより、同期モータの起動時の演算値を算出することができる。例えば、検出器16は、
図3に示すような時刻t3で演算タイミングを検出することができる。時刻t3で検出器16が演算タイミングを検出することにより、演算回路18は、演算区間a6を設定することができる。演算回路18は、演算区間a6を設定することにより、演算区間a6における演算値を算出することができる。よって、本実施形態によれば、改善された波形測定器1及びデータの取得方法が提供される。
【0092】
さらに、本実施形態に係る波形測定器1では、演算回路18は、演算値として、同期モータの起動時の交流電圧の実効値、交流電流の実効値及び電力値を算出することができる。このような構成により、同期モータの起動時の電気的特性をより精度良く解析することができる。つまり、同期モータの起動時の過渡状態をより精度良く解析することができる。
【0093】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、波形測定器1の測定対象は、同期モータの交流信号であるものとして説明した。ただし、波形測定器1の測定対象は、同期モータの交流信号に限定されない。波形測定器1の測定対象は、起動時にその交流信号が立ち上がるか又は立ち下がるかを予測することが困難である任意の機器の交流信号であってよい。
【0095】
例えば、判定回路17は、判定信号を、演算回路18及びメモリコントローラ19に出力してもよい。この場合、演算回路18は、判定信号がローレベルであるとき、演算値を算出してよい。また、メモリコントローラ19は、判定信号がローレベルであるときに演算回路18から入力された演算値の情報を、メモリ20に記憶させてよい。
【0096】
例えば、波形測定器1に、判定回路17によって第1交流信号としての交流電圧の波形測定器1への入力が停止状態であると判定された場合に演算回路18の演算結果をゼロにする回路が設けられてもよい。
【0097】
例えば、上記実施形態では、第1交流信号は、交流電圧であるものとして説明した。ただし、第1交流信号は、交流電流であってもよい。この場合、判定回路17は、交流電流に対応する第1信号の周期に基づいて、波形測定器1への交流電流の入力が停止状態であるか否かを判定してよい。また、演算回路18は、当該第1信号を用い、演算区間における演算値として、交流電流の実効値を算出してよい。
【符号の説明】
【0098】
1 波形測定器
10,11 アンプ
12,13 AD変換器
14 メモリコントローラ
15 メモリ
16 検出器
17 判定回路
18 演算回路
19 メモリコントローラ
20 メモリ
21 生成回路
22 表示器