(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】心不全患者の体液過剰を軽減するための直接ナトリウム除去方法、溶液、及び装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20240930BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240930BHJP
A61P 7/08 20060101ALI20240930BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61M1/28
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/36
A61P7/08
A61P9/04
(21)【出願番号】P 2020515302
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2018053587
(87)【国際公開番号】W WO2018215917
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509123932
【氏名又は名称】セクアナ メディカル エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ニール インハバー
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ダーク フェンゲルス
(72)【発明者】
【氏名】イアン クロスビー
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
【審判官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/034452(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0197428(US,A1)
【文献】米国特許第5631025(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0211322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液過剰の心不全患者の治療方法における使用のための無又は低ナトリウム直接ナトリウム除
去注入液であって、該患者が、15 ml/分/1.73 m
2よりも高い推定糸球体濾過率を有し、該方法が:
該
直接ナトリウム除去注入液を該患者の腹腔内に導入するステップであって、該
直接ナトリウム除去注入液が
35 meq/L未満のナトリウム濃度を有する、前記ステップ;
滞留期間中に、ナトリウム及び浸透限外濾過液を誘導して該腹腔内に該
直接ナトリウム除去注入液とともに蓄積させるステップ;及び
血液血清ナトリウム
濃度を
実質的に変化させないように維持したまま、低ナトリウム血症を防止すると共に体液過剰を緩和するために、該
直接ナトリウム除去注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から除去するステップを含み、
該
直接ナトリウム除去注入液が、(i)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のデキストロース、(ii)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のイコデキストリン、若しくは(iii)水溶液100 ml当たり0.5~50グラムの量の>10,00
0の重量平均分子量を有する高分子量グルコースポリマー、又は(iv)それらの任意の組み合わせを含む、前記
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項2】
前記方法が、腎機能によって引き起こされる排尿を介して液体を前記患者から除去するステップをさらに含み、又は
導入される前記
直接ナトリウム除去注入液が、デキストロース若しくはイコデキストリン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項3】
体液過剰の心不全患者の治療方法における使用のための無又は低ナトリウム溶液である直接ナトリウム除
去注入液であって、該患者が、正常からCKD病期4までの腎機能を有し、該方法が:
該
直接ナトリウム除去注入液を該患者の腹腔内に導入するステップであって、該
直接ナトリウム除去注入液が
35 meq/L未満のナトリウム濃度を有する、前記ステップ;
滞留期間中に、ナトリウム及び浸透限外濾過液を誘導して該腹腔内に該
直接ナトリウム除去注入液を用いて蓄積させるステップ;
血液血清ナトリウム
濃度を
実質的に変化させないように維持したまま、前記体液過剰を緩和するために、該
直接ナトリウム除去注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該腹腔から除去するステップ;及び
低ナトリウム血症を防止すると共に血清ナトリウム濃度を回復させるために、排尿により液体を該患者から除去するステップを含み、
該
直接ナトリウム除去注入液が、(i)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のデキストロース、(ii)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のイコデキストリン、若しくは(iii)水溶液100 ml当たり0.5~50グラムの量の>10,00
0の重量平均分子量を有する高分子量グルコースポリマー、又は(iv)それらの任意の組み合わせを含む、前記
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項4】
前記
直接ナトリウム除去注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、
(i) 植え込みポンプを使用して該
直接ナトリウム除去注入液をリザーバから該患者の腹腔内に移送するステップ;
(ii) リザーバから該
直接ナトリウム除去注入液を送達するために重力を利用して該
直接ナトリウム除去注入液を該患者の腹腔内に注入するステップ;又は
(iii) 体外ポンプ、容器、又は重力に基づく供給システムを使用して該
直接ナトリウム除去注入液を送達するステップ、を含む、請求項1又は3記載の
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項5】
前記
直接ナトリウム除去注入液、ナトリウム及び浸透限外濾過液を前記患者の腹腔から除去するステップが、前記滞留期間の終了時に、植え込みポンプを使用して該
直接ナトリウム除去注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から膀胱に移送するステップを含み;
該除去するステップが、該植え込みポンプを所定の時間に作動させて、所定量の
直接ナトリウム除去注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から該膀胱に移送するステップをさらに含み、
該所定の時間が目標量のナトリウムが該
直接ナトリウム除去注入液中に蓄積するのにかかる時間及び体液過剰を緩和するためにナトリウムを体から引き出すのにかかる時間であり;かつ
移送される該
直接ナトリウム除去注入液の該所定量がナトリウム除去を最適化して該患者の健康を維持又は改善し、かつ体液過剰を軽減するように選択される、請求項1又は3記載の
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項6】
前記方法が、1つ又は複数のセンサで前記患者の腹腔内圧を監視するステップをさらに含み;
該方法が、該腹腔内の液体蓄積速度を監視するステップをさらに含み;かつ
該方法が、該腹腔内の該液体蓄積速度の増加又は腹腔内圧の増加を示す医師への警告を生成するステップをさらに含む、請求項1又は3記載の
直接ナトリウム除去注入液。
【請求項7】
過剰なナトリウムを除去することによって心不全を治療するための注入液であって、該注入液が、少なくとも残留腎機能を有する患者の腹腔への注入によって投与され、そして該腹腔から排出され、該注入液が、
35 meq/L以下のナトリウム濃度を有し、かつ
過剰なナトリウムを除去することにより、
血液血清ナトリウム
濃度を
実質的に変化させないように維持したまま、該患者の体液過剰を軽減し、
該注入液が、(i)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のデキストロース、(ii)水溶液100ml当たり0.5~50グラムの量のイコデキストリン、若しくは(iii)水溶液100 ml当たり0.5~50グラムの量の>10,00
0の重量平均分子量を有する高分子量グルコースポリマー、又は(iv)それらの任意の組み合わせを含む、前記注入液。
【請求項8】
(i) 少なくとも2時間の滞留期間中に、限外濾過液の拡散を誘導して、前記腹腔に注入された注入液の量の半分以上の量を該腹腔に導くように選択された浸透圧を有し;又は
(ii) ごく微量のナトリウムを含む、請求項7記載の注入液。
【請求項9】
前記心不全がうっ血性心不全である、請求項7記載の注入液。
【請求項10】
前記残存腎機能を有する患者が、15ml/分/1.73m
2を超える推定糸球体濾過速度を有する患者である、請求項7記載の注入液。
【請求項11】
前記残存腎機能を有する患者が、正常からCKD病期4までの範囲の腎機能を有する患者である、請求項7記載の注入液。
【請求項12】
過剰なナトリウムを除去することにより、排尿を促進して血清ナトリウム濃度を回復させることによって体液過剰を軽減する、請求項7記載の注入液。
【請求項13】
(i) 穿刺によって排液を行うことを可能にするように製剤化され;
(ii) 注入液、過剰なナトリウム、及び限外濾過液を前記患者の膀胱にポンプ輸送することによって排液を可能にするように製剤化され;
(iii) 重力による供給を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化され;
(iv) 体外ポンプ又は容器を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化され;
(v) 植え込みポンプ又は容器を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化され;又は
(vi) 植え込みポンプを使用して、前記患者の腹腔から膀胱にポンプ輸送されるように製剤化される、請求項7記載の注入液。
【請求項14】
前記注入液が、過剰なナトリウムを除去することによる心不全を治療するためのものであり;
該注入液が、少なくとも正常からCKD病期4までの範囲の残存腎機能を有する患者の腹腔への注入によって投与され、そして該腹腔から排出され、該注入液が、
35 meq/L以下のごく微量のナトリウムを含み;
過剰なナトリウムを除去することにより、
血液血清ナトリウム
濃度を
実質的に変化させないように維持したまま、前記患者の体液過剰を軽減する、請求項7記載の注入液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、引用により全容が本明細書に組み込まれる、2017年5月24日に出願された米国仮出願第62/510,652号の優先権の利益を請求するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、患者の腹腔に投与してナトリウムを直接除去し、これにより体から体液を除去して残存腎機能を有する心不全患者の体液過剰を緩和する無又は低ナトリウム注入液(以降、DSR注入液と呼ぶ)の使用に関する。この方法、DSR注入液、及び装置は、ナトリウムの除去により過剰な体液を除去するように機能する。ナトリウムは、(1)限外濾過及び/又は(2)急な濃度勾配での拡散の一方又は両方によって腹腔に移動され、その後、そこから除去される。液体は、(1)浸透圧限外濾過(osmotic ultrafiltration)を誘導して体液を患者の体から腹腔に移動させ、そこから除去すること、及び/又は(2)排尿による腎臓を介した過剰な体液の排出を促進すること、の一方又は両方によって、比較的安定した血清ナトリウム濃度を維持するために体から除去される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
いくつかの形態の心不全のいずれかに罹患している患者は、体組織に追加のナトリウムが蓄積しやすく、その結果、体内の体液が増加する。例えば、うっ血性心不全では、心臓の左側又は右側、又は両方の機能不全により、体が正常な効率で血液を送り出すことができず、ナトリウムの貯留及び肺若しくは肝臓における血液若しくは体液の滞留若しくは貯留をもたらし得る体循環の低下、浮腫、並びに/又は心肥大に至る。
【0004】
疾病対策センター(CDC)は、米国の約570万人が何らかの形の心不全に罹患していると推定している。心不全は、一般に4つの異なる段階に分類され、最も重篤なのは末期心不全である。末期心不全は、医療処置にもかかわらず、患者が安静時に心不全の症状を有する場合に診断され得る。患者は、駆出率の低下を特徴とする収縮期心不全を有することがある。収縮期心不全の患者では、心室の壁が弱く、健康な患者ほどには強く圧迫しない。その結果、収縮期に、減少した量の酸素化血液が循環に吐出され、この状況は死ぬまで下方スパイラルで続く。あるいは、患者は、拡張期心不全を有することがあり、硬くなった又は厚くなった心筋により、罹患した心腔を血液で満たすことが困難になる。末期心不全と診断された患者の1年死亡率は約50%である。
【0005】
慢性腎疾患(「CKD」)とも呼ばれる腎不全は、糸球体濾過率(「GFR」)の推定を可能にする、血液尿素窒素(「BUN」)及びクレアチニンを測定する血液検査によって診断される。GFRは、CKD-EPIクレアチニン式(2009)又はCKD-EPIクレアチニン-シスタチン式(2012)などのいくつか周知の式のいずれかによって計算される腎機能の総合指数であり、患者の血清クレアチニン、年齢、性別、人種を考慮する。例えば、GFRは、以下のようにCKD-EPIクレアチニン式(2009)を用いて計算することができる:
eGFR=141×min(SCr /κ、l)α×max(SCr /κ、l)-1.209×0.993Age×1.018[女性の場合]×1.159[黒人の場合]
式中:
eGFR(推定糸球体濾過率)= mL /分/ 1.73 m2
SCr(標準化血清クレアチニン)= mg / dL
κ=0.7(女性)又は0.9(男性)
α=-0.329(女性)又は-0.411(男性)
min=SCr /κ又は1の最小値を示す
max=SCr /κ又は1の最大値を示す
age=年齢
上記の式は、National Kidney FoundationのWebサイトhttps://www.kidney.org/content/ckd-epi-creatinine-equation-2009で入手可能である。
【0006】
一般に、CKDの重症度の評価は、以下の表と共に算出GFR値に基づいている:
【表1】
【0007】
典型的には、一般的には病期5である腎機能が著しく低下した患者は、もはや腎臓が血液から十分に代謝老廃物を除去できない場合、透析を受けて代謝老廃物を除去する。透析は、体外機械又は腹膜透析のいずれかを用いて達成することができる。最初の選択肢では、患者は血液透析器につながれ、この場合、血液が体から体外機械に送られ、浄化されてから患者の体に戻される。腹膜透析では、浄化液又は透析液が患者の腹部に注入され、代謝廃棄物が、特定の期間、例えば30~45分間をかけて腹部の動脈及び静脈から透析液に移動し、その後透析液は腹部から排出され、廃棄される。典型的には、患者は、それぞれ24時間のこのプロセスを3回から5回繰り返すことができる。
【0008】
低ナトリウム透析液は、CKDを処置するために透析を必要とする末期腎疾患の患者に使用することが知られている。例えば、Shockleyらの米国特許第5,589,197号に、ナトリウム濃度が約35~125 meq / Lである腹膜透析で使用するための透析液が記載されている。この特許で説明されているように、溶液中のナトリウム濃度は、患者の血漿ナトリウム濃度よりも低いレベルまで低下し、これによりナトリウムが循環から腹腔に輸送され得る。残念ながら、そのような低ナトリウム透析液では、血圧の症状の悪化、場合によっては脳浮腫、昏睡、及び死をもたらす潜在的に致命的な合併症である透析不均衡症候群を含む問題が発生した。例えば、Nakaymaの論文「CAPD患者の低ナトリウム濃度透析液の臨床効果(Clinical Effect of Low Na Concentration Dialysate (120 mEq/L) for CAPD Patients)」(PD Conference, San)を参照されたい。例えば、Zepeda-Orozco D及びQuigley R.の論文「透析不均衡症候群(Dialysis disequilibrium syndrome)」(Pediatric Nephrology (Berlin, Germany) 2012;27(12):2205-2211)を参照されたい。
【0009】
低ナトリウム透析液に関する過去の経験から考えて、定期的に透析を受ける末期腎臓病を有する患者は、塩及び水のレベルを最適化する治療に依存している。現在報告されている透析液中のナトリウムの平均濃度は、一般に約132 mMol / Lである。例えば、Hecking M、Kainz A、Horl WH、Herkner H、及びSunder-Plassmann G.の論文「ナトリウム設定値及びナトリウム勾配:血漿ナトリウムの変化及び体重増加に対する影響(Sodium setpoint and sodium gradient: influence on plasma sodium change and weight gain.)」(American Journal of Nephrology 2011;33(1):39-48);Mc Causland FR、Brunelli SM、及びWaikar SS.の論文「維持血液透析における透析液ナトリウム、血清ナトリウム、及び死亡率(Dialysate sodium, serum sodium and mortality in maintenance hemodialysis.)」(Nephrology Dialysis Transplantation 2012;27(4):1613-8)を参照されたい。
【0010】
患者の血中ナトリウムレベルよりも高い透析液ナトリウム濃度での数十年の経験により、そのような透析液が、透析中にナトリウムを除去することなく体液除去を促進し、透析中に正常な血圧及び心機能を維持する可能性を改善することが示されている。しかしながら、ナトリウムレベルが高いと、血液透析を受ける患者は、多くの場合、患者の血液と透析液の間に正のナトリウム勾配を有する透析を受けることになる。例えば、Munoz Mendoza J、Sun S、Chertow G、Moran J、Doss S、及びSchiller B.の論文「維持血液透析における透析液ナトリウム及びナトリウム勾配:ナトリウム制限を無視したアプローチ?(Dialysate sodium and sodium gradient in maintenance hemodialysis: a neglected sodium restriction approach?)」(Nephrology Dialysis Transplantation 2011;26(4):1281-7)を参照されたい。従って、患者は、多くの場合、透析セッションの終わりまでにナトリウムが増加し、その結果、口渇、水分消費、高血圧の増大が生じる。そのため、毎週複数回の血液透析セッションを受けている患者の最終的な結果は、慢性的なナトリウム及び水の過剰である。
【0011】
出願人は、体液過剰を解消することが心不全における重要な臨床目的であり、体液過剰が、呼吸困難を含む重篤な臨床合併症につながる可能性があることを観察した。例えば、Guyton及びHallによる医学生理学のテキスト(Textbook of Medical Physiology)に記載されているように、体が一定の血清浸透圧を維持し、そのナトリウムレベルを維持するように作用するため、体液の効果的な減少を達成するには、体からナトリウムを除去する必要がある。従って、無又は低ナトリウム注入液を使用してナトリウムを除去し、これにより患者から体液を除去し、心不全患者の体液過剰を処置する方法を開発することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、腹腔に投与される無又は低ナトリウムDSR注入液を使用してナトリウムを除去し、これにより患者の体から体液を除去して体液過剰を軽減する、残存腎機能を有する心不全患者の体液過剰を処置する方法に関する。ナトリウムは、(1)限外濾過及び/又は(2)急な濃度勾配での拡散の一方又は両方によって腹腔に移動され、その後、そこから除去される。液体は、(1)浸透圧限外濾過を誘導して体液(浸透限外濾過液(osmotic ulfiltrate))を患者の体から腹腔に移動させ、そこから除去すること、及び/又は(2)排尿による腎臓を介した過剰な体液の排出を促進すること、の一方又は両方によって、比較的安定した血清ナトリウム濃度を維持するために体から除去される。従って、本発明は、体からナトリウムを除去し、これにより低ナトリウム血症を防止すると共に、液体が比較的安定した血清ナトリウム濃度を維持し、体液過剰及び浮腫を軽減する。
【0013】
本発明の原理に従って、心不全に罹患している患者は、腹腔に投与される低ナトリウム又は無ナトリウムDSR注入液を用いて(断続的又は連続的に)処置される。例示的な形態では、D-10デキストロース溶液、すなわち水溶液100 ml当たり10グラムのデキストロースを含み得るDSR注入液は、除去される前に所定の期間、腹腔内に留めることができ、次いで、患者の体から腹腔に移動するナトリウム及び浸透限外濾過液と共に取り出される。提案された直接ナトリウム除去(「DSR」)方法は、従来の腹膜透析のように組織を透析液で浄化して毒素及び蓄積された代謝副産物を除去しようとするのではなく、心不全患者の体液過剰を処置するために特別に設計されているという点で、従来の腹膜透析から根本的に異なっている。
【0014】
本発明の一態様によると、本発明のDSR方法、注入液、及び装置は、一般に15 mL /分/1.73 m2を超えるGFR値を示し、正常からCKD病期4までの腎機能を示すはずである、体液過剰に苦しんでいる心不全患者での使用に適していると予想される。病期5のCKD又はGFR <15 ml /分/ 1.73 m2の患者では、透析に十分な量の無又は低ナトリウムDSR注入液の使用は、危険な又は末期の低ナトリウム血症、及び循環虚脱につながる血漿量の減少をもたらすであろう。逆に、透析を必要とするこれらの患者で低ナトリウム血症を回避するために少量の無又は低ナトリウムDSR注入液を使用すると、老廃物が十分に除去されなくなり、尿毒症を引き起こし得る。言い換えれば、本発明の方法を使用した直接ナトリウム除去に適した患者は、CKD処置目的での透析に通常は適格ではない患者であろう。
【0015】
特に、症候性血圧低下、並びに低ナトリウム血症及び関連する影響に関する懸念のため、末期腎不全を伴う透析に通常は適格であり、かつ病期5のCKD又は15 mL /分/1.73m2以下のGFRを示す患者は、特に、本発明のDSR方法での使用に適格な患者の集団から除外されるべきである。
【0016】
本発明の原理に従って無又は低ナトリウムDSR注入液を使用する提案された方法は、引用により全容が本明細書中に組み込まれている、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2014/0066841号に記載の植え込みポンプシステムで達成することができる。その公開された出願は、携帯型腹膜透析のためのシステムについて説明しており、該システムでは、患者が腹部に透析液を注入し、所定の時間後に所定の間隔で、植え込みポンプが大量の透析液を患者の膀胱に移送し、そこで排尿によって排出することができる。本発明の原理に従って、プロセスは、CKDに対処せずに、又は基本的な対処もせずに行われる。代わりに、このプロセスは、無又は低ナトリウムDSR注入液を用いて、残存腎機能を有する体液過剰に苦しんでいる心不全患者のナトリウムを除去するために行われる。その結果、(i)(残存腎機能の結果としての)排尿及び(ii)浸透限外濾過液の直接除去によって体液が体から除去され、低ナトリウム血症を防止すると共に、血清ナトリウム濃度が回復し、体液過剰及び浮腫が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図面の簡単な説明)
【
図1A】
図1Aは、体液過剰に苦しんでいる残存腎機能を有する心不全患者に本発明の方法を行うための例示的なシステムの斜視図である。
【0018】
【
図1B】
図1Bは、患者に植え込まれた、
図1Aのシステムの選択された構成要素の平面図である。
【0019】
【
図1C】
図1Cは、本発明の方法を行うための例示的なシステムの代替の実施態様の選択された構成要素の平面図である。
【0020】
【0021】
【
図2A】
図2Aは、
図1のシステムに使用するのに適した腹膜カテーテルの例示的な実施態様の側面図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1のシステムに使用するのに適した腹膜カテーテルの例示的な実施態様の詳細な斜視図であり、
図2Aの詳細領域2Bに対応している。
【0022】
【
図3A】
図3Aは、
図1のシステムに使用するのに適した膀胱カテーテルの第1の実施態様の側面図である。
【
図3B】
図3Bは、
図1のシステムに使用するのに適した膀胱カテーテルの第2の実施態様の斜視図である。
【0023】
【
図4】
図4は、植え込み装置の例示的な実施態様の電子部品の模式的な線図である。
【0024】
【
図5A】
図5Aは、ハウジングが輪郭で示されている植え込み装置の斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、ハウジング及び透水性の低い充填剤が除去された植え込み装置の表側の斜視図である。
【0025】
【
図6A】
図6Aは、植え込み装置の駆動アセンブリの組立分解斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、植え込み装置の上部ハウジングの正面図である。
【
図6C】
図6Cは、植え込み装置の上部ハウジングの平面図である。
【
図6D】
図6Dは、植え込み装置の例示的な実施態様のマニホールドの斜視図である。
【0026】
【
図7A】
図7Aは、本発明の方法を実施する際に使用される例示的な充電及び通信システムのハンドピース部分の斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の方法を実施する際に使用される例示的な充電及び通信システムのハンドピース部分の上面図である。
【0027】
【
図8】
図8は、本発明の方法を実施する際に使用される充電及び通信システムの例示的な実施態様の電子部品の模式的な線図である。
【0028】
【
図9】
図9は、本発明の方法を実施する際に使用される監視及び制御システムを実施するソフトウェアの概略図である。
【0029】
【
図10】
図10は、監視及び制御ソフトウェアを実行している医師に表示されるメイン画面の画面表示である。
【0030】
【
図11】
図11は、
図10の「スマート充電器」サブメニューアイテムの選択の画面表示である。
【0031】
【
図12】
図12は、
図10の「ダウンロード」メニューアイテム及び「ログファイル」サブメニューアイテムの選択の画面表示である。
【0032】
【
図13】
図13は、
図10の「ポンプ設定」メニューアイテム及び「液体輸送」サブメニューアイテムの選択の画面表示である。
【0033】
【
図14】
図14は、
図11の「試験」メニューアイテム及び「手動試運転」サブメニューアイテムの選択の画面表示である。
【0034】
【0035】
【
図16】
図16A~
図16Fは、10頭の動物の追跡グループに対する本発明のDSR方法の試験の結果を示すグラフである。
【0036】
【
図17】
図17A~
図17Fは、本発明のDSR方法の連続適用後の動物の第2の群のサブグループの血液量、赤血球数、及び血漿量の変化を示すグラフである。
【0037】
【
図18】
図18は、DSR方法の連続適用後の第2の群の動物のサブグループにおける動物の血清ナトリウムレベルの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明は、左心機能障害又は右心機能障害などの様々な形態の心不全における体液過剰を処置する方法に関する。本発明の原理に従って、体液過剰に苦しんでいる残存腎機能を有する心不全患者は、腹腔に投与される無又は低ナトリウムDSR注入液で処置される。DSR注入液のナトリウム濃度が低いと、ナトリウム及び体液(浸透限外濾過液)が患者の体から腹腔に移動する。DSR注入液は、除去されるまでの所定の期間、取り出されたナトリウム及び浸透限外濾過液と共に、腹腔内に残留又は滞留させることができる。ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液の腹腔からの除去は、Sequana Medical AG, Zurich, Switzerlandが販売するAlfapumpなどの植え込みシステムを用いて行うことができる。
【0039】
本開示で使用されるように、無又は低ナトリウムDSR注入液は、120meq / L未満、より好ましくは35meq / L未満のナトリウム含量を有し、ナトリウム濃度が実質的にゼロの注入液を含む。従って、本発明の体液過剰処置方法は、残存腎機能を有し、従って腎不全ではない心不全患者における本発明の方法の使用を特に企図する。本明細書で使用されるように、残存腎機能は、15ml /分/ 1.73m2を超えるGFR値、又は正常から病期4のCKDまでの腎機能を有する患者に対応する。
【0040】
本発明の原理に従った例示的なDSR注入液製剤は、D-0.5~D-50溶液、すなわち、水溶液100 ml当たり0.5~50グラムのデキストロース;水溶液100 ml当たり0.5~50グラムのイコデキストリンを有するイコデキストリン溶液;水溶液100 ml当たり0.5~50グラムの高分子量グルコースポリマーを有する高分子量グルコースポリマー溶液(重量平均分子量Da>10,000)、及びそれらの組み合わせを含む。水溶液は、少なくとも精製水を含み、さらに、少量のマグネシウム若しくはカルシウム塩、防腐剤、抗菌若しくは抗真菌特性を有する成分などの電解質、又は注入液のpHを調整するための緩衝物質を含んでもよい。イコデキストリン、高分子量グルコースポリマー、又は他の高分子量グルコースポリマー(重量平均分子量、Da>10,000)は、腹膜透析環境で使用される場合は摂取率が低下することが観察され、従ってデキストロースベースのDSR溶液と比較して血清グルコース濃度を低下させることができるため、デキストロースよりも好ましい場合があると予想される。
【0041】
本明細書に記載の無又は低ナトリウムDSR注入液は、結果として致命的となる可能性があるため、体液過剰、特に残存腎機能がほとんどないすべての心不全患者に使用すべきではないと予想される。例えば、15未満のGFR値又は病期5のCKDを有する心不全患者に対する本発明の方法及びDSR注入液の使用は、重度の低ナトリウム血症及び低血圧症をもたらし得ることが予想される。従って、安全上の理由から、心不全に罹患しているだけでなく、腎不全、又は15 ml /分/ 1.73m2以下のGFR又は病期5のCKDを有する患者は、本明細書に記載の処置方法と共に使用することは禁忌である。
【0042】
本発明の方法及びDSR注入液は、従来の腹膜注入及びドレナージ技術を用いて心不全における体液過剰を処置するために使用できると考えられるが、本発明の実施は、本出願の譲受人によって提供される植え込みポンプシステムを使用して特に有利に行うことができると予想される。具体的には、Sequana Medical AG, Zurich, Switzerlandによって提供されるAlfapumpシステムは、腹膜注入動作モードを使用する心不全の処置に十分に適している。本発明の一態様によると、無又は低ナトリウムDSR注入液が腹腔内に導入され、そこでゼロであるか又は低いナトリウム濃度により、ナトリウム及び浸透限外濾過液が患者の体から腹腔に移動する。DSR注入液の注入後の所定の期間に、所定の間隔で、臨床医のプログラムされた指示に従って植え込みポンプを作動させて、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液を所定の流量で患者の膀胱にポンプ輸送することができる。体からのナトリウムの除去は、(i)排尿を介した機能している腎臓による、及び(ii)後に植え込みポンプを介して膀胱に除去される、浸透限外濾過液の腹腔への直接の蓄積による体液の除去につながる。このようにして、適切で安定した血清ナトリウム濃度を維持したまま、ナトリウム及び体液が除去される。さらに、DSRセッション後、体液過剰の結果として体液が腹腔に蓄積し続けることが予想され、そのような体液が定期的に膀胱にポンプ輸送されるように植え込みポンプをプログラムすることができる。腹腔に蓄積する体液にはナトリウムが含まれていると予想されるため、そのような体液の膀胱への除去により、これらの患者における体液過剰がさらに減少することになる。
【0043】
従って、本発明の方法は、心不全患者の体液過剰及び浮腫を制御すると共に、そのような患者が、病院又は他の医療施設への頻繁な訪問から解放されたより通常のライフスタイルを経験することができる方法を提供する。有利なことに、本発明の方法は体液量の減少をもたらすため、患者が、改善された快適性及びライフスタイルを経験することができるだけでなく、慢性腎臓病の進行及び進行性心不全などの併存疾患も未然に防止される。
【0044】
本発明の方法を行うための例示的な植え込みシステムは、腹腔から膀胱へと液体を移動させるように特別に構成された植え込みポンプを含むものとして以下により詳細に説明され、該植え込みポンプは、患者の健康に関連する動作パラメータを監視及び記録するための複数のセンサを備える。外部に設けられる充電及び通信システムは、定期的に充電して植え込み装置と通信し、記録された動作パラメータを該装置からダウンロードする。処置中の医師のコンピュータ上の監視及び制御ソフトウェアは、充電及び通信システムから記録された動作パラメータを受信し、記録された動作パラメータに反映される患者の健康についての該医師の認識に基づいて、該医師が、植え込み装置の動作を変更することができる。任意に、監視及び制御ソフトウェアは、記録された動作パラメータに基づいて、感染、非代償性心不全(heart failure decompensation)、又は他の臨床事象の予測又は検出に関して医師に警告するように構成することができる。植え込み装置は、感染を抑制するように構成された1つ又は複数の紫外線(UV)源も任意に備えることができる。
【0045】
(本発明の方法を実施するための例示的なシステムの概要)
図1Aを参照すると、本発明の方法の実施に使用するための例示的なシステム10の選択された構成要素の概要が示されている。
図1Aでは、システムの構成要素は、相対的にも絶対的にも縮尺通りには示されていない。システム10は、植え込み装置20、外部充電及び通信システム30、ソフトウェアをベースとした監視及び制御システム40、並びに任意にDSR注入液リザーバ45を含む。例示されている実施態様では、監視及び制御システム40は、担当医が使用することができる従来のラップトップコンピュータ、タブレット、又はスマートフォンにインストールされ、これらで実行される。患者の診察中に、植え込み装置20に保存された検査データをダウンロードするため、又は該植え込み装置の動作パラメータを調整するために、充電及び通信システム30を、無線又は有線で監視及び制御システム40に接続することができる。監視及び制御システム40は、充電及び通信システム30から回収されたデータを、医師又は該充電及び通信システム30が後にアクセスする遠隔サーバーにアップロードして保存するように構成することもできる。
【0046】
植込み型装置20は、皮下植え込み用に構成されたハウジング21を有する電気機械ポンプを備える。
図1Cを参照して以下にさらに詳細に説明するように、埋め込み装置20は、不適切な設置及び不注意による分離のリスクを低減するように構成された電動機械歯車ポンプ、並びに第2のポンプコネクタ22及び第1のポンプコネクタ24を備えることができ、かつ不適切な設置のリスクをさらに低減する別個の断面をさらに備えることができる。カテーテル46及び膀胱カテーテル25は、ポンプハウジング21に接続され、いくつかの実施態様では、第1のポンプコネクタ24を使用してポンプハウジング21に接続することができる。腹膜カテーテル23は、ポンプハウジング21に接続され、第2のポンプコネクタ22を使用してポンプハウジング21に接続することができる。DSR注入液が、リザーバ45から患者の腹腔に供給される。腹膜カテーテル23は、ポンプハウジング21に接続されるように構成された第1の(近位)端部及び腹腔内に配置されるように構成された第2の(遠位)端部を有するチューブを備える。膀胱カテーテル25は、ポンプハウジング21に接続されるように構成された第1の(近位)端部及び患者の膀胱壁から挿入されて膀胱内に固定されるように構成された第2の(遠位)端部を有するチューブを備える。好ましい一実施態様では、両方のカテーテルは、医療用シリコーンから形成され、かつ該カテーテルを所定の位置に維持するためにそれらの遠位端部にポリエステルカフ(不図示)を備える。
【0047】
任意であるリザーバ45は、カテーテル46を介して患者の腹腔に無又は低ナトリウムDSR注入液を送達するように構成され、該カテーテル46は、
図2A及び
図2Bを参照して以下にさらに説明する腹膜カテーテルと同様の構造を有し得る。
図1Bを参照して以下にさらに説明する実施態様では、カテーテル46の近位端部は、適切な接続によって外部リザーバ45に取り外し可能に接続するように構成することができ、患者が空になったリザーバを新しいリザーバと容易に交換することができ、カテーテル46の遠位端部は、患者の腹腔内への植え込み用に構成することができ、組織カフ(不図示)が、該カテーテル46が患者の皮膚及び/又は腹膜の壁を横断する位置で組織内植を促進する。カテーテル46の遠位端部は、
図2Bを参照して以下で議論するように、そこに画定された複数の孔又は開口を有し得る。リザーバ45は、重力などの任意の適切な機構によって、又は体外ポンプ(不図示)の動作によってDSR注入液を腹腔に送達することができる。例えば、外部ポンプを使用して、リザーバ45から腹腔へのDSR注入液の流れを促進してもよいし、又は該リザーバを腹腔のレベルよりも上に物理的に持ち上げて、重力により、DSR注入液がカテーテル46を介して腹腔内に引き込まれるようにしてもよい。
【0048】
図1Cの実施態様では、代わりに、リザーバカテーテル46’の遠位端部が、植え込み装置20の第1のポンプコネクタ24に取り付けられ、該植え込み装置20は、DSR注入液をリザーバ45から該リザーバカテーテル46’及び腹膜カテーテル23を介して腹腔にポンプ輸送するように構成することができる。そのような実施態様では、リザーバ45は、外部型でも植え込み型でもよく、植え込み装置20は、液体をリザーバから腹腔にポンプ輸送すると同時に、該リザーバから膀胱への液体の漏れ、及び該膀胱から該腹腔へのポンプ輸送を防止するための1つ又は複数の受動弁又は能動弁をさらに備えることができる。受動弁又は能動弁はまた、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透濾過液を腹腔から膀胱にポンプ輸送すると同時に、このような液体が該腹腔からリザーバにポンプ輸送されるのを防止することができる。別法では、1つ又は複数の受動弁又は能動弁は、リザーバカテーテル46’、腹膜カテーテル23、及び/又は膀胱カテーテル25内に配置してもよい。
【0049】
好ましくは、植え込み装置20は、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液を、目標量のナトリウムが該DSR注入液中に蓄積するのに十分な時間を提供するように選択された量、間隔、及び流量で腹腔から膀胱に移動させるように構成され、結果として、体内のナトリウムの減少が、(i)(排尿を介した)機能している腎臓による、及び(ii)浸透限外濾過液の腹腔から膀胱への直接除去による体液の除去をもたらし、これにより心不全から生じる体液過剰及び浮腫が軽減される。処置アルゴリズムは、様々な調合及び量の無又は低ナトリウムDSR注入液、様々な滞留期間の長さ、様々な膀胱への除去速度で開発することができる。一般に、短いが頻繁な間隔でのポンプ輸送は、カテーテル23及び25の内部ルーメンへの物質の蓄積を抑制し、組織内植のリスクを軽減することが期待される。植え込み装置20の液体回路は、約1~2.5リットル/時間の平均流量を提供するように構成することができるが、必要に応じて遥かに高い流量及び低い流量も可能である。以下に詳細に説明するように、特定の患者に必要な監視及び制御システム40を使用して、DSR注入液を腹腔内に維持できる時間を含め、ポンプ輸送の時間、流量、及び量を医師がプログラムすることができる。
【0050】
植え込み装置20は、腹腔内の圧力が医師によって決められた限界を超えた場合に液体が腹腔から膀胱にポンプ輸送されるように、該腹腔及び該膀胱の一方又は両方の圧力を監視する圧力センサを備えることができる。或いは、又はさらに、圧力センサの出力は、追加の液体を収容するのに十分な空間を膀胱が有すると判断されるまで、液体が膀胱へポンプ輸送されないようにすることができる。患者の快適さのために、植え込み装置10は、夜間、又は該植え込み装置に設けられた加速度計が患者が眠っている(従って、膀胱から排出することができない可能性が高い)ことを示すときにはポンプ輸送しないように任意にプログラムすることができる。植え込み装置20は、好ましくは、ポンプによって尿が膀胱から腹腔に絶対に流れないようにする複数の別個の安全機構を備え、これにより感染を伝播するリスクが低減される。
【0051】
さらに
図1Aを参照すると、好ましい形態の、例示的なシステムの外部充電及び通信システム30は、ベース31及びハンドピース32を備える。この実施態様では、ハンドピース32は、制御装置、無線送受信機、誘導充電回路、バッテリ、充電の質のインジケーター、及びディスプレイを備え、かつ該バッテリを充電するためにベース31に着脱可能に装着される。ベース31は、ハンドピース32が該ベース31に装着されたときに、通常の120 V又は220~240 Vの電力を適切なDC電流に変換して該ハンドピース32を充電するための変換器及び回路を備えることができる。代替の実施態様では、ハンドピース32は、このような回路及び着脱式電源コードを備えることができ、これにより該ハンドピースをコンセントに直接差し込んでバッテリを充電することが可能になる。好ましい一実施態様では、植え込み装置20及びハンドピース32のそれぞれは、メモリに保存された装置識別子を備え、このため、患者に提供されるハンドピース32は、該患者の特定の植え込み装置20でのみ作動するように符号化される。
【0052】
ハンドピース32は、好ましくは、多機能ボタン34、ディスプレイ35、複数の発光ダイオード(LED、不図示)、及び誘導コイル部分36を有するハウジング33を備える。多機能ボタン34により、患者が、限られた数のコマンドを植え込み装置20に発行することができる一方、ディスプレイ35により、所望のコマンドが入力されたかの確認表示が提供され;また該ディスプレイにより、バッテリ状態も表示される。誘導コイル部分36は、エネルギーをハンドピース32から伝達して植え込み装置20のバッテリを充電するために使用される誘導コイルを収容している。LEDは、点灯するとハウジング33の材料を通して視認可能であり、各行に2つのLEDとして3行に配置することができ、かつハンドピース32内に収容された制御回路及び誘導充電回路に接続されている。LEDは、植え込み装置20の再充電中にハンドピース32と該植え込み装置20との間で達成される誘導結合の程度を反映するために点灯するように配置することができる。別法では、LEDを省いて、誘導結合の質を示すアナログ表示をディスプレイ35に示してもよい。
【0053】
ハンドピース32内に収容された制御回路は、誘導充電回路、バッテリ、LED、及び無線送受信機に接続され、かつ植え込み装置20からの情報を保存するためのメモリを備える。ハンドピース32はまた、好ましくは、患者が診療所を訪れたときに該ハンドピースの監視及び制御システム40への接続を可能にするデータポート、例えば、USBポートも備える。別法では、ハンドピース32は、例えば、ブルートゥース又はIEEE802.11無線規格に適合した無線チップを備えることができ、これによりハンドピースと監視及び制御システム40との直接又はインターネットを介した無線通信が可能となる。
【0054】
監視及び制御システム40は、主に医師が使用することを目的としたものであり、かつ従来のコンピュータ、例えば、
図1Aに例示されているラップトップ、又はタブレット若しくはスマートフォン上で実行されるように構成されたソフトウェアを含む。このソフトウェアにより、医師が、充電及び通信システム30並びに植え込み装置20の動作を設定、監視、及び制御することができる。該ソフトウェアは、ポンプの動作、例えば、毎日又はモータ作動毎の液体の目標輸送量、ポンプの作動間隔、並びに腹腔圧、膀胱圧、ポンプ圧、及びバッテリ温度の限界を設定及び制御するためのルーチンを含み得る。システム40はまた、特定の期間(例えば、夜間)は液体を輸送しないように、又は患者が眠っているときはポンプの作動を延期するように、充電及び制御システム30を介して植え込み装置20に命令を出して、該植え込み装置20の動作を制御することができる。システム40は、例えば、即時コマンドを植え込み装置に送信して、ポンプを始動若しくは停止させる、又は該ポンプ又は関連カテーテルの障害物を除去するために該ポンプを逆回転若しくは高出力で作動させるようにさらに構成することができる。システム40のソフトウェアはまた、ポンプ動作に関連したリアルタイムデータ、及び植え込み装置20の動作中に保存されるイベントログをダウンロードするように構成することができる。ダウンロードデータに基づいて、例えば、患者の腹腔内の圧力、呼吸数、及び/又は液体の蓄積の測定値に基づいて、システム40のソフトウェアは、非代償性心不全、並びに/又は流量、量、時間、及び/若しくはポンプ動作の頻度の調整を必要とし得る患者の健康状態の変化の予測又は検出に関して医師に警告するように任意に構成することができる。最後に、システム40は、安全なインターネットチャンネルを通じて患者のハンドピース32から生の動作データ又はフィルタリングされた動作データを遠隔受信するように任意に構成することができる。
【0055】
ここで
図1B~
図1Dを参照して、植え込み装置20及び任意であるDSR注入液リザーバ45の様々な構成をここで説明する。本発明によるシステム10を使用して体液過剰に苦しんでいる心不全患者を処置する方法が、
図1Dを参照して提供される。
【0056】
ここで
図1Bを参照すると、本発明の方法を実施するための植え込み装置20の例示的な使用が描かれている。装置20は、好ましくは、腹膜12によって画定された患者の腹腔11の外側であるが、
図1Aに例示される充電及び通信システム30によって容易に充電及び通信できるように皮膚13の下に皮下植え込みされる。装置20は、適切なコネクタ(不図示)を介して腹膜カテーテル23及び膀胱カテーテル25に接続される。腹膜カテーテル23は、患者の腹腔11内に植え込むように構成され、好ましくは、
図2A及び
図2Bを参照して以下にさらに詳細に説明するような開口53を備える。膀胱カテーテル25は、患者の膀胱13に埋め込まれるように構成され、好ましくは、
図3A及び
図3Bを参照して以下にさらに詳細に説明するように、該膀胱13内にカテーテルの出口端部を固定するためのアンカーを備える。
【0057】
任意であるDSR注入液リザーバ45は、体外に配置され、カテーテル46を介して腹腔に接続される。カテーテル46は、患者がリザーバ45を定期的に容易に交換できるように構成されたコネクタ47を介してリザーバ45に接続される。カテーテル46は、好ましくは、開口53と寸法及び密度が類似してもよい開口53’を備え、該開口53’は、DSR注入液が腹腔11に比較的拡散して流入することを可能にする。任意である外部ポンプ48は、DSR注入液を所望の速度でリザーバ45から腹腔11に流入させるように構成することができる。例えば、リザーバ45は、患者の腰の周りに着用されるベルト(不図示)に配置することができ、かつポンプ48を備える。ポンプ48は、患者の腹腔へのDSR注入液の送達を調整するために植え込み装置20と無線で通信するように構成することができる。
【0058】
代替の一実施態様では、DSR注入液リザーバ45は、重力によりDSR注入液がリザーバ45から所望の速度で腹膜に流れるように、腹腔11のレベルよりも上に配置される。さらに別の実施態様では、ポンプを使用せずに所定の流量を送達するために、加圧容器を、制御弁又は校正流量制限装置と組み合わせて構成することができる。このようにして、DSR注入液の送達は、電子機器又はポンプを必要としない受動的とすることができる。所定量のDSR注入液の送達は、腹腔内の圧力上昇、流量計の使用、又は他の適切な測定システムに基づいて植え込み装置によって認識され得る。
【0059】
上で議論した実施態様では、リザーバ45は、好ましくは、心不全患者の体液過剰を処置又は軽減するために腹腔をDSR注入液で十分に満たすのに適した量、速度、及び頻度でDSR注入液を腹腔11に供給する。
【0060】
別法では、
図1Cに例示されるように、任意であるDSR注入液リザーバ45を、例えばベルト又はハーネスを使用して患者の体外に配置することができ、カテーテル46’及びコネクタ47を介して植え込み装置20に接続することができる。植え込み装置20は、DSR注入液をリザーバ45からカテーテル46’及び23を介して腹腔11にポンプ輸送し、次いで、後にナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液をカテーテル23及び25を介して腹腔11から膀胱13にポンプ輸送するように構成されている。具体的には、植え込み装置20の第1のポンプコネクタ24は、カテーテル25が接続される第1の弁49’、及びカテーテル46’が接続される第2の弁49を備える。植え込み装置20の第2のポンプコネクタ22は、カテーテル23に直接接続される。ポンプ動作中、植え込み装置20は、液体が膀胱から腹腔、又は腹腔からリザーバに不注意によりポンプ輸送されるのを防止するように弁49及び49’を制御する。例えば、液体をリザーバ45から腹腔11にポンプ輸送するために、植え込み装置20は、適切に弁49’を作動させることによってカテーテル25との流体連通を遮断することができ、弁49を適切に作動させることによってカテーテル46’と23との間の流体連通を確立することができ、かつ液体をリザーバ45から該カテーテル46’及び23を介してポンプ輸送するように第1の方向に向きを変えることができる。別法では、リザーバ45は、患者の体内に植え込まれ、リザーバ45を補充できるようにカテーテルを用いて外部環境に接続することができる。
【0061】
DSR注入液が腹腔内に所定の時間滞留した後、植え込み装置20は、弁49を適切に作動させることによってカテーテル46’への連通を遮断し、弁49’を適切に作動させることによってカテーテル25への連通を確立し、そして液体をカテーテル23及び25を介して患者の膀胱13にポンプ輸送するように第2の方向(第1の方向とは反対)に向きを変えることによってそのDSR注入液及び浸透限外濾過液を該膀胱13にポンプ輸送することができる。弁49及び49’の機能は、カテーテル23、25、及び46’に沿って適切に配置され、かつ例えば
図4に例示されている弁制御装置86を介して植え込み装置20によって制御可能に作動される任意の所望の数の弁によって提供することができる。特定の構成では、1つ又は複数の受動弁(植え込み装置20によって制御されない)の使用が適切であり得、例えば、弁49’は、膀胱から装置20への液体の流れを防止する、カテーテル25に沿って配置される受動逆止め弁であり得る。
【0062】
図1A~
図1Cに例示されるような例示的な植え込みシステムを使用する方法を、
図1Dを参照してここで説明する。方法1000は、患者の体の内部又は外部にあるリザーバから腹腔への無又は低ナトリウムDSR注入液を導入することを含む(ステップ1010)。例えば、
図1Bを参照して上記したように、DSR注入液は、外部ポンプ又は重力を使用して導入することができる。或いは、
図1Cを参照して上記したように、DSR注入液は、植え込み装置20、及び該植え込み装置20に連通した1つ又は複数の弁を使用して導入することができる。十分な量のDSR注入液を、患者の腹腔内に導入し、滞留させ、ナトリウムを患者の体から該腹腔に除去し、そして浸透限外濾過液を該腹腔に蓄積させることができ、該腹腔から該浸透限外濾過液が膀胱に除去される。
【0063】
ナトリウムは、患者の体から腹膜を介して腹腔に移動し、該腹腔から膀胱に除去される。これにより、体内のナトリウムレベルが低下し、結果として(i)排尿を介した機能している腎臓による、及び(ii)腹腔に蓄積する浸透限外濾過液の膀胱への除去による体液の除去がもたらされ、血清ナトリウム濃度が回復し、患者の体液の量が減少する(ステップ1020)。ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液は、植え込み装置で腹腔から膀胱にポンプ輸送される(ステップ1030)。そのようなポンプ輸送は、上記のように体液過剰を緩和するために十分な量のナトリウムを体から引き出すのに十分な時間にわたってDSR注入液が腹腔内に存在した後に行うことができる。次いで、患者の腎臓はまた、排尿によって液体を排出することができ、これにより血清ナトリウム濃度が回復する(ステップ1040)。
【0064】
図1Aを参照して上記したような充電及び通信システムを使用して、エネルギーを植え込み装置に無線で伝達することができ、かつ該装置からデータを受信することができる(ステップ1050)。例えば、植え込み装置は、患者の健康及び装置の動作を反映するパラメータを記録することができ、該パラメータを、充電及び通信システムに伝達することができる。次いで、植え込み装置によって記録されたパラメータなどのデータが監視及び制御ソフトウェアに提供され、該監視及び制御ソフトウェアは、充電及び通信システムと通信し、かつ処置中の医師の制御下にある(ステップ1060)。それらのパラメータに基づいて、ソフトウェアを使用して患者の健康状態を評価することができ、医師が、取り出されたナトリウムを含む、DSR注入液及び浸透限外濾過液を膀胱に除去する前に、植え込み装置が該DSR注入液を腹腔に送達する流量、量、継続時間、又は頻度のあらゆる変更を遠隔伝達することができる(ステップ1070)。そのような通信は、充電及び通信システムを介して行うことができる。
【0065】
ここで、本発明の方法を実施するための
図1A~
図1Cの例示的なシステムの選択された構成要素のさらなる詳細を
図2A~
図8を参照して提供する。
【0066】
(腹膜カテーテル及び膀胱カテーテル)
図2A及び
図2Bを参照すると、腹膜カテーテル50は、Medionics International Inc.の腹膜透析カテーテル(モデル番号PSNA-100)又は類似の構造と機能を有するカテーテルであり得る。腹膜カテーテル50は、
図1A~
図1Cの腹膜カテーテル23に対応し、複数の壁貫通孔53を有する入口(遠位)端部52及び出口(近位)端部54を備える医療用シリコーンからなるチューブ51を備えることができる。孔53は、
図2Bに示されているように、約90度だけ円周方向にオフセットして配置することができる。腹膜カテーテル50は、該カテーテルの周囲組織への付着を促進し、これにより該カテーテルを所定の位置に固定するために、孔53から離れた部分にポリエステルカフ(不図示)も備えることもできる。別法では、腹膜カテーテル50の入口端部52は、螺旋構造及び非外傷性先端部を有することができ、孔53が、閉塞のリスクを低減するためにチューブの全長にわたって分布している。
【0067】
入口端部52はまた、近傍の組織壁へのカテーテルの付着を促進し、これにより該カテーテルの入口端部が所定の位置に確実に維持されるようにポリエステルカフを備えることができる。出口端部54はまた、腹膜カテーテルの出口端部を植え込み装置20に固定するためのコネクタを備えることができる。好ましい一実施態様では、腹膜カテーテルの遠位端部は、内植カフまで、通常の16Fのピールアウェイシース(peel-away sheath)を通過できるように構成することができる。さらに、腹膜カテーテルの長さは、体腔の底部に沿って確実に延在するように選択することができ、かつ該腹膜カテーテルは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。
【0068】
図3Aを参照すると、
図1A~
図1Cの膀胱カテーテル25に対応する膀胱カテーテル60の第1の実施態様が示されている。膀胱カテーテル60は、好ましくは、入口(近位)端部62及び螺旋構造64を含む出口(遠位)端部63を有する医療用シリコーンからなるチューブ61、並びにポリエステル内植カフ65を備える。膀胱カテーテル60は、入口端部62から螺旋構造64の先端部の単一出口まで延びた、一般に「ピグテール」設計と呼ばれる単一内部ルーメンを備える。入口端部62は、膀胱カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するためのコネクタを備えてもよいし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有してもよい。一実施態様では、膀胱カテーテル60は、約45 cmの長さL3を有することができ、カフ65が、螺旋構造64から約5~6cmの長さL4の位置に配置されている。膀胱カテーテル60は、螺旋構造64を直線状にしてスタイレットに装着し、該スタイレットを用いて出口端部63及び螺旋構造64を患者の膀胱壁を通過させる低侵襲性技術を用いて植え込むことができる。スタイレットが抜去されると、螺旋構造64が、
図3Aに示されているコイル形状に戻る。膀胱カテーテル60の出口端部63が患者の膀胱内に配置されたら、カテーテルの入口端部62を植え込み装置20に接続できるように、該カテーテルの残りの部分がトンネル技術を用いて植え込まれる。螺旋構造64は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内植カフ65が取り込まれ、これにより膀胱カテーテルが所定の位置に固定される前に、出口端部63が該膀胱から不注意により抜けてしまうリスクを低減することができる。
【0069】
好ましい一実施態様では、膀胱カテーテル60は、従来のピールアウェイシースを通過できるように構成されている。膀胱カテーテル60は、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。好ましい一実施態様では、腹膜カテーテル50及び膀胱カテーテル60は、植え込み装置20への接続中に誤って入れ替わらないように、好ましくは、異なる色であり、異なる外形(例えば、四角及び丸)を有する、又は異なる接続特性を有する。任意に、膀胱カテーテル60は、たとえ膀胱カテーテルが植え込み装置20のポンプコネクタから不注意により抜けたとしても、及び/又は該植え込み装置20のポンプが、DSR注入液をリザーバ45から患者の腹腔内に引き込まれるように作動したとしても、尿が膀胱から腹腔内に絶対に流れないように、該カテーテルの入口端部62と出口端部63との中間に配設された内部ダックビル弁を備えることができる。
【0070】
代替の一実施態様では、腹膜カテーテル及び膀胱カテーテル装置は、体腔間での感染の拡散を抑制するために1つ又はいくつかの抗感染症薬を含むことができる。使用することができる抗感染症薬の例としては、例えば、静菌性物質、殺菌物質、1つ又は複数の抗生物質放出剤(antibiotic dispenser)、抗生物質溶出物質、及び細菌の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。さらに、植え込み装置20は、
図4及び
図5Bを参照して以下にさらに説明するように、存在し得るあらゆる病原体を死滅させ、従って感染の発症を抑制するように、腹膜及び/又は膀胱カテーテル内の液体を照射するように構成されたUVランプを備えることができる。
【0071】
別法では、別個のカテーテルを備えるのではなく、腹膜カテーテル50と膀胱カテーテル60が共通の壁を共用することができ、これは、膀胱と腹腔が共通の壁を共用し、これにより単一デュアルルーメンチューブの挿入が容易になるため便利であり得る。さらに、腹膜カテーテル又は膀胱カテーテルの一方若しくは両方を、その長さの一部若しくは全長に沿って、リボン若しくは編組ワイヤを用いて補強してもよいし、又は一定の長さのワイヤ若しくはリボンを該カテーテルの内部に埋め込む若しくはその表面に一体化させて補強してもよい。編組又はワイヤは、ステンレス鋼などの金属、ニチノールなどの超弾性金属、又は様々な適切なポリマーから製造することができる。そのような補強は、任意であるリザーバ45に接続されたカテーテル46にも使用することができる。
【0072】
図3Bを参照すると、膀胱カテーテルの第2の実施態様が描かれており、同様の構成要素には、同一の参照符号にシングルクォテーションが付されている。膀胱カテーテル60’は、好ましくは、入口端部62’、出口端部63’、及びポリエステル内植カフ65’を有する医療用シリコーンからなるチューブ61’を備える。この実施態様によると、出口端部63’は、マルコー構造(malecot structure)66を備え、該マルコー構造は、カテーテルの出口端部63’が留置後に不注意により抜けてしまうリスクを低減するために、該カテーテルの軸から遠ざかる横方向に拡張する4つの弾性ウイング67を例示的に備える。入口端部62’は、膀胱カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するためのコネクタを備えてもよいし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有してもよい。
【0073】
マルコー構造66は、好ましくは、スタイレットがカテーテルのルーメンを介して挿入されるときにウイング67が実質的に平坦構造に変形するように構成されている。このようにして、膀胱カテーテル60’をスタイレットに装着することができ、低侵襲性技術を用いて、出口端部63’及びマルコー構造66を該スタイレットを使用して患者の膀胱壁を通過させることができる。スタイレットが抜去されると、マルコー構造のウイング67は、
図3Bに示されている拡張形状に戻る。膀胱カテーテル60’の出口端部63’が、患者の膀胱に接続されると、該カテーテルの残りの部分が、該カテーテルの入口端部62’を植え込み装置20に接続できるようにトンネル技術を用いて植え込まれる。マルコー構造66は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内植カフ65’が取り込まれる前に出口端部63’が膀胱から不注意により抜けてしまうリスクを低減することができる。
図3Aの実施態様と同様に、
図3Bの膀胱カテーテルは、従来のピールアウェイシースを通過するように構成することができ、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。
【0074】
(植え込み装置)
ここで
図4を参照すると、本発明の方法の実施に使用するのに適した植え込み装置20の機能ブロックを表現する略図が描かれている。植え込み装置20は、不揮発性メモリ71、例えば、フラッシュメモリ又は電気的消去・書き込み可能読出し専用メモリ、及び揮発性メモリ72にデータバスによって接続された制御回路、例示的にプロセッサ70を備える。プロセッサ70は、電気モータ73、バッテリ74、誘導回路75、無線送受信機76、UVランプ85、並びに湿度センサ77、複数の温度センサ78、加速度計79、複数の圧力センサ80、及び呼吸数センサ81を含む複数のセンサに電気的に接続されている。誘導回路75は、充電及び通信システム30から送信されるエネルギーを受信するためにコイル84に電気的に接続される一方、送受信機76は、アンテナ82に接続され、かつ同様に、以下に説明するように該充電及び通信システム30の送受信機と通信するように構成されている。任意に、誘導回路75はまた、赤外線発光ダイオード83に接続することができる。モータ73は、専用制御装置を備えることができ、該制御装置は、プロセッサ70からのコマンドを理解し、該コマンドに応答して該モータ73を作動させる。任意に、プロセッサ70は、弁制御装置86とさらに通信する。
図4に描かれている構成要素のすべては、
図5Aに示されているように、小型の密封生体適合性ハウジング内に収容されている。
【0075】
プロセッサ70は、モータ73によって生成される信号、センサ77~81、及び送受信機76から受信するコマンドに応答して該モータ73の動作を制御する、不揮発性メモリ71に保存されたファームウェアを実行する。プロセッサ70はまた、送受信機76を介したメッセージの送受信、及びバッテリ74を充電するための誘導回路75の動作を制御する。さらに、プロセッサ70は、モータ73内に配設されたホール効果センサによって生成される信号を受信し、該信号は、以下に説明するように、歯車ポンプの歯車の方向及び回転、従ってポンプ輸送される液体の量及び該液体の粘度を計算するために使用される。プロセッサ70は、好ましくは、低出力モードの動作を有し、かつ内部クロックを備え、これにより、該プロセッサは、定期的に起動して、ポンプ輸送、ポンプチックモード(pump tick mode)、又は通信及び充電機能を制御することができ、かつ/又は起動して、送受信機76が受信したハンドピース32からのコマンドを処理することができる。一実施態様では、プロセッサ70は、Texas Instruments社、Dallas, Tex.から入手可能なMSP430ファミリーの1つであるマイクロ制御装置ユニットを備え、
図4に描かれている不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及び無線送受信機の構成要素を含み得る。さらに、プロセッサ70で実行されるファームウェアは、充電及び通信システム30を介して植え込み装置20に送られるコマンドに直接応答するように構成することができる。プロセッサ70はまた、以下に説明するように、モータ72(及びあらゆる関連するモータ制御装置)の動作及びセンサ77~81を監視し、かつイベントログ及びアラームを含む、植え込み装置の動作を反映するデータを保存するように構成されている。従って、充電及び通信システムが次に植え込み装置に無線接続されるときに、データが該充電及び通信システムに報告される。好ましい一実施態様では、プロセッサ70は、ポンプを作動させる前は最大で1秒に80個のログエントリー、植え込みシステムが活発にポンプ輸送しているときは1秒に約8個のログエントリー、そしてポンプ輸送していないときは1時間に約1個のログエントリーを生成する。
【0076】
不揮発性メモリ71は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ植え込み装置20の一意装置識別子、プロセッサ70で実行されるファームウェア、植え込み装置の動作に関する構成設定値データ、並びに任意である、送受信機76及び/又は誘導回路75及び別個のモータ制御装置(存在する場合)で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ71に保存されるファームウェア及び設定値データは、充電及び通信システム30を介して制御及び監視システム40によって供給される新たな命令を用いて更新することができる。揮発性メモリ72は、プロセッサ70に接続され、該プロセッサ70の動作を支援し、かつ植え込み装置20の動作中に収集されるデータ及びイベントログ情報を保存する。揮発性メモリ72はまた、充電及び通信システム30に送信される情報及び該充電及び通信システムから受信する情報のバッファとしても機能する。
【0077】
送受信機76は、好ましくは、無線周波数送受信機を含み、かつ充電及び通信システム30のハンドピース32内に配設された同様の送受信回路を用いてアンテナ76を介して双方向通信するように構成されている。送受信機76はまた、低出力動作モードを有することができ、これにより定期的に起動して、到着メッセージを受信し、かつ植え込み装置に割り当てられた一意装置識別子を含むメッセージのみに応答する。別法では、送受信機76が、関連する充電及び通信システム30のハンドピース32内の対応する送受信機と通信するだけであるため、該送受信機76は、植え込み装置の誘導回路75が作動しているときにのみデータを送信又は受信するように構成することができる。さらに、送受信機76は、植え込み装置から送信されるメッセージ又は該植え込み装置が受信するメッセージが絶対に傍受又は偽造され得ないように暗号化ルーチンを利用することができる。
【0078】
誘導回路75は、コイル84に接続され、かつ充電及び通信システム30のハンドピース32内の対応する誘導回路によって生成される磁場に曝露されたときに植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路75は、該誘導回路75が作動しているときに赤外線信号を発する任意である赤外線LED 83に接続されている。赤外線信号は、充電及び通信システム30のハンドピース32が受信して、該ハンドピースの植え込み装置に対する位置合わせを支援し、これにより該植え込み装置に対する電磁結合及びエネルギー伝達が改善される。
【0079】
誘導回路75は、バッテリ74を再充電するだけではなく、ポンプの障害物を除去するために「ブースト」モード又はジョグ/振動モードでモータ73にエネルギーを直接供給するように任意に構成することができる。特に、モータ73が、例えば、腹腔内のフィブリン又は他の残屑によって形成される障害物によって停止したことをプロセッサ70が検出すると、アラームがメモリに保存され得る。植え込み装置20が、充電及び通信システム30と次に通信するときに、アラームがハンドピース32に送られ、そして患者に、多機能ボタン34を押して過電圧を誘導回路75からモータ73に一定時間かけてポンプの閉塞を解除する選択肢が与えることができる。別法では、多機能ボタンを押すと、プロセッサ70が一連のコマンドを実行し、これにより、例えば、モータ73が逆方向及び順方向に交互に回転することによって、該モータがジョグ又は振動して閉塞が解除される。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、そのような手順の最中は、誘導回路75を介して供給されるエネルギーでモータを駆動すると有利である。
【0080】
バッテリ74は、好ましくは、人体に植え込まれたときに長く持続する、例えば、最大3年間動作することができるリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含み、これにより植え込み装置20を交換する再手術の必要性が最小限に抑えられる。好ましい一実施態様では、バッテリ74は、3.6 Vの公称電圧を供給し、新品時に150 mAhの静電容量、2年間の使用後に約120 mAhの静電容量を有する。好ましくは、バッテリ74は、ポンプ輸送するときは280 mA;送受信機が充電及び通信システム30と通信するときは25 mA;プロセッサ70及び関連回路は作動しているが、ポンプ輸送も通信もしていないときは8 mA;そして植え込み装置が低出力モードのときは0.3 mAの電流をモータ73に供給するように構成されている。より好ましくは、バッテリ74は、各充電サイクルの間に少なくとも10秒間の450 mAh及び25ミリ秒間の1 Aの最小電流を可能にする容量にするべきである。
【0081】
モータ73は、好ましくは、以下に説明するように、歯車ポンプとして動作する一組の浮動歯車を駆動するスプライン出力軸を有するブラシレス直流モータ又は電子整流モータである。モータ73は、該モータの動作を制御するための、プロセッサ70とは別個の専用モータ制御装置を備えることができる。モータ73は、モータの位置及び回転方向を決定するための複数、好ましくは2つ以上のホール効果センサを備えることができる。プロセッサ70は、植え込み装置20が遭遇し得る高湿度により、たとえホール効果センサのすべて又は一部が故障したとしても、精度は低下するもののモータ73を作動させるプログラミングを備えることができる。
【0082】
好ましい一実施態様では、モータ73は、歯車ポンプを駆動して150 ml/分の公称流量を供給して、3000 RPMで水30 cmの圧力水頭に対して約1 mNmのトルクを加えることができる。この実施態様では、モータは、好ましくは、50~260 ml/分の流量に対応する1000~5000 RPMで歯車を駆動するように選択される。モータは、好ましくは、非固形タンパク質性物質を粉砕するために、500 mA、3 Vで少なくとも3 mNm、より好ましくは6 mNmの停動トルクを有する。上で議論したように、モータはまた、好ましくは、誘導回路75によって直接電力が供給される場合は、例えば、5 Vでのブーストモードの動作を支援する。モータ73はまた、好ましくは、歯車ポンプの障害物を除去するジョグ又は振動処置の一部として逆回転で駆動することができる。
【0083】
プロセッサ70は、自動的かつ定期的に起動してポンプチックモードに入るようにプログラムすることができる。この動作モードでは、歯車ポンプは、プロセッサ70が低出力モードに戻る前に、ホール効果センサによる測定で僅かに、例えば、約120度順方向に回転する。好ましくは、この間隔は、約20分毎であるが、監視及び制御システムを用いて医師が調整することができる。このポンプチックモードは、DSR注入液及び浸透限外濾過液が部分的に凝固して歯車ポンプを閉塞させるのを防止することが期待される。
【0084】
さらに、プロセッサ70はまた、歯車ポンプの障害物を除去するために、バッテリ出力のみで動作しているときにジョグ又は振動モードに入るようにプログラムすることもできる。充電及び通信システム30のハンドピースを用いて植え込み装置を充電するときに利用可能なブーストモードと同様に、ジョグ又は振動モードでは、モータが、歯車を順方向と逆方向との間で迅速に交互して動作して、歯車ポンプ内又は液体流路の他の部分における組織又は残屑のあらゆる蓄積を粉砕する又はほぐす。特に、この動作モードでは、エネルギーが供給された後の一定期間(例えば、1秒)の間にモータが始動しない場合は、運動の方向を短時間逆転させ、次いで再び逆転させて所望の方向にモータを回転させる。(例えば、歯車ポンプが噛んだために)モータがなお回転しない場合は、回転方向を一定期間(例えば、さらに10ミリ秒)、再び逆転させる。それでもモータが順方向に回転できない場合は、該モータの方向の逆転間の時間間隔を短縮して、該モータがより高い出力を発生させることができるようにし、これにより歯車が振動運動する。モータが4秒を超えて順方向に回転しない場合は、ジョグモードの動作が停止されて、アラームがイベントログに書き込まれる。モータが順方向に回転できなかった場合は、プロセッサ70が、次の計画されている液体輸送の前に逆方向チックを導入する。逆方向チックは、チック(例えば、モータ軸の約120度の順方向運動)と同じであるが、逆方向であり、順方向に回転する前にモータを逆方向に強制的に回転させようとするものであり、これによりモータが推進力を得ることができるはずである。
【0085】
センサ77~81は、湿度、温度、加速度、圧力、及び呼吸数を継続的に監視し、対応する信号を、監視及び制御システム40への後の送信のために対応するデータをメモリ71に保存するプロセッサ70に供給する。特に、湿度センサ77は、植え込み装置の構成要素が、予想される動作限界の範囲内で確実に動作するよう、該植え込み装置のハウジング内の湿度を測定するように配置される。湿度センサ77は、好ましくは、20%~100%の範囲内の湿度を高精度で検出して報告することができる。1つ又は複数の温度センサ78をハウジング内に配設して、植え込み装置、特にバッテリ74の温度を、該バッテリが充電中に絶対に過熱しないように監視することができ、別の1つ又は複数の温度センサ78を、入口62に進入する液体に接触するように配設し、従って、例えば、患者の健康状態の評価に使用される該液体の温度を監視することができる。加速度計79を配置して、例えば、患者が眠っているか否かを決定する、又は患者が活動しているか否か及び該患者がいつ活動するかを決定するために、好ましくは少なくとも2つの軸に沿った植え込み装置の加速度を測定して活動期間及び非活動期間を検出する。この情報は、患者が排尿したくないときにはポンプが絶対に作動しないようにプロセッサ70に供給される。
【0086】
植え込み装置20は、好ましくは、プロセッサの作動期間中に継続的に監視される複数の圧力センサ80を備える。
図6Aを参照して以下に説明するように、本発明の植え込み装置は、好ましくは、4つの圧力センサ:腹腔内の圧力を測定するためのセンサ、周囲圧力を測定するためのセンサ、歯車ポンプの出口の圧力を測定するためのセンサ、及び膀胱内の圧力を測定するためのセンサを備える。これらのセンサは、好ましくは、3 Vで50 mW未満の電力消費で450 mBar~1300 mBar(45 kPa~130 kPa)の絶対圧力を測定するように構成されている。好ましくは、ポンプ出口及び膀胱内の圧力を測定するセンサは、尿及び/又は使用したDSR注入液及び/又は浸透限外濾過液の歯車ポンプへの逆流を防止するダックビル弁の前後に配置され、さらに、該ダックビル弁の前後の圧力低下に基づいた流量計算を可能にする。
【0087】
呼吸数モニタ81は、例えば、患者の健康状態の評価に使用される該患者の呼吸数を測定するように構成されている。別法では、患者の呼吸数は、1つ又は複数の圧力センサ80の出力に基づいて、例えば、周囲圧力の変化、又は呼吸の際に腹腔を定期的に圧迫する横隔膜によって引き起こされる該腹腔内の圧力の変化に基づいて測定することができる。
【0088】
患者の健康状態を測定するための任意の所望の数の追加のセンサも、プロセッサ70と動作可能に通信するように設けることができ、メモリ71への保存並びに監視及び制御システム40への送信のために記録可能なパラメータを出力することができ、これを医師が使用して、患者の健康状態を評価することができる。例えば、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液の組成及び/又はナトリウム濃度を監視するように構成された化学センサ又は生化学センサを設けることができる。
【0089】
プロセッサ70は、好ましくは、液体が所定の時間腹腔内に存在した後、所定の頻度で、所定量の液体を腹腔から膀胱にポンプ輸送するようにプログラムされる。そのような量、時間、及び頻度は、好ましくは、ナトリウム除去を最適化して患者の健康を維持又は改善し、かつ体液過剰を軽減するように選択される。量、時間、及び頻度は、患者の症状、患者の活動及び習慣、腹膜の透過性、並びにDSR注入液の浸透特性に基づいて選択することができる。例えば、医師は、患者の健康状態及び習慣についての該医師の認識に基づいて、最初の時間、量、及び頻度でプロセッサ70を最初にプログラムすることができ、後にその最初のプログラミングを調整して、量、時間、及び/又は頻度を、患者の健康状態の変化についての該医師の認識に基づいて、例えば、埋め込み装置20によって測定され、監視及び制御ソフトウェア40を介して該医師に伝えられるパラメータの経時的な変化に基づいて変更することができる。
【0090】
プロセッサ70はまた、センサ77~81を監視し、患者の健康状態の潜在的な低下を示す臨床医に伝えられる警告条件を生成するようにプログラムすることができる。例えば、プロセッサ70は、圧力センサ80を監視して、所定の時間間隔において腹腔内の圧力の上昇があるか否かを判定することができる。そのような圧力の上昇は、腹腔内の液体の蓄積速度の増加の結果であり得、次に非代償性心不全を示す可能性がある。そのような警告により、早急な処置を求めてそのような非代償性心不全を阻止するように患者を導くことになり得る。
【0091】
他の実施態様では、プロセッサ70は、膀胱が満杯にならないように、腹腔内の圧力が第1の所定値を超え、かつ膀胱内の圧力が第2の所定値未満である場合にのみ、液体を腹腔から膀胱にポンプ輸送するようにプログラムすることができる。患者の海抜ゼロ地点から高高度までの移動を考慮するために、周囲圧力測定値を使用して腹膜圧の差圧値を計算することができる。この方法では、より低い大気圧を考慮するために、ポンプが起動する設定圧力を下げることができる。同様に、周囲圧力を使用して、膀胱圧の所定値を調整することができる。この方法では、高高度の場所にいるときは患者がより低い圧力で膀胱に不快を感じ得るため、ポンプ輸送を停止する閾値圧力を下げることができる。
【0092】
さらに、プロセッサ70は、DSR注入液がリザーバから患者の腹腔にポンプ輸送されてから、所定の滞留時間又は患者が設定可能な滞留時間の満了後に、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液を腹腔から該患者の膀胱までポンプ輸送するまでの経過時間を監視するタイマーを含むようにプログラムすることができる。そのようなタイマープログラミングはまた、腹腔内の過剰な圧力などの、センサ77~81によって測定されるパラメータが、指定された滞留時間の期限が切れる前に腹腔の内容物の膀胱への移送をトリガーできるように、オーバーライド機能を備えることができる。
【0093】
任意に、制御装置70は、UVランプ85と動作可能に通信し、該UVランプ85は、液体が腹腔に供給される又は該腹腔から取り出される前と後の両方で、DSR注入液中の病原体を照射して死滅させるように構成されている。UVランプ85は、好ましくは、UV-Cスペクトル範囲(約200~280 nm)、特に約250~265 nmの範囲の光を生成し、この光は、そのスペクトル範囲の光が微生物のDNA中の核酸を破壊するため「殺菌スペクトル」とも呼ばれる。低圧水銀ランプは、約253.7 nmに発光ピークを有し、UVランプ85に適切に使用することができる。別法では、UVランプ85は、AlGaAs又はGaNをベースとしてもよいUV発光ダイオード(LED)であり得る。
【0094】
制御装置70の制御下で、UVランプ85は、植え込み装置を通過するあらゆる液体中に存在し得る病原体を死滅させるのに十分な事前に選択された時間にわたって該液体を照射する。具体的には、装置を通る液体の流量は、病原体のコロニーの成長を阻害するのに十分な線量のUV光で液体を照射するように選択(例えば、事前にプログラム)することができる。例えば、約5,500~7,000μWs / cm
2の253.7 nmのUV光の線量は、大腸菌(E. coli)、プロテウス属(Proteus spp.)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、セラチア属(Serratia spp.)、レプトスピラ属(Leptospirosis spp.)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、及び腸球菌(Enterococci)を含む多くの生物に対して100%の殺傷率を提供するのに十分であることが知られている。クレブシエラ属(Kliebsiella ssp.)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)、シュードモナス属(Psuedomonas spp.)、及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を含む他の生物に対して100%の殺傷率を提供するためには、より高い線量、例えば、約8,500~12,000μWs / cm
2が必要であり得る。しかしながら、コロニーの成長を十分に阻害するための線量は、それよりも低いであろう。例えば、大腸菌では、増殖を阻害するのに僅か3,000μWs / cm
2しか必要としないが、100%の殺傷率を提供するためには6,600μWs / cm
2が必要であろう。制御装置70は、1つ又は複数の標的病原体のコロニーの成長を抑制するのに十分なチューブを通る液体の流量を、UVランプ85の強度、UVランプ85が使用されるハウジングの部分(例えば、
図5Bを参照して以下に説明する上部93)内の反射条件、UVランプに曝露されるチューブの構造、チューブとUVランプとの間の距離、及びUVランプ85から放出されるスペクトルに対する標的病原体の感受性に基づいて設定するように予めプログラムすることができる。
【0095】
さらに
図4を参照すると、いくつかの実施態様では、プロセッサ70は、弁制御装置86とも通信することができ;別法では、弁制御装置86は、プロセッサ70の機能の一部であり得る。弁制御装置86は、リザーバ、腹腔、及び膀胱の間のDSR注入液の流れを制御するために使用できるあらゆる弁の作動を制御する。例えば、
図1Cを参照して上記したように、植え込み装置20は、膀胱への液体のアクセスを遮断し、従って該液体を不注意により該膀胱から腹腔にポンプ輸送することを回避するように弁49及び49’を作動させた状態で、DSR注入液を外部又は内部リザーバから該腹腔にポンプ輸送するように構成することができ;かつ、該リザーバへの該液体のアクセスを遮断し、従って該液体を不注意により該腹腔から該リザーバにポンプ輸送することを回避するように弁49及び49’を作動させた状態で、該液体を該腹腔から該膀胱にポンプ輸送するように構成することができる。弁制御装置86は、そのような方法で、又は特定の弁構成に基づいた他の適切な方法で、弁49及び49’の作動を調整することができる。
【0096】
ここで
図5A及び
図5Bを参照すると、植え込み装置90の例示的な一実施態様のさらなる詳細が示されている。
図5Aでは、ハウジング91は、透明として示されているが、当然、ハウジング91は、不透明な生体適合性プラスチック、ガラス、及び/又は金属合金材料を含むことを理解されたい。
図5Bでは、ハウジング91の下部92が上部ハウジング93から取り外され、植え込み装置内に水分が溜まるのを防止するために使用されるガラスビーズ/エポキシ充填材のない該植え込み装置が示されている。
図5A及び
図5Bでは、モータ94が、
図6を参照して詳細に説明する歯車ポンプハウジング95に接続されている。
図4を参照して上記した電子部品が、回路基板96に配設され、該回路基板は、支持部材97の周りに延在し、かつ該支持部材に固定されている。コイル98(
図4のコイル84に対応する)が、基板のフラップ99に配設され、該コイルは、可撓性ケーブル部101によってフラップ100上の電子部品に接続されている。支持部材97は、上部ハウジング93に固定され、かつバッテリ102(
図4のバッテリ74に対応する)を保持するキャビティを画定している。ハウジング91の下部92は、水分が溜まり得るハウジング内の空間を縮小するために、ハウジング91の上部93と下部92が互いに固定された後にガラスビーズ/エポキシ混合物を注入するためのポート103を備える。
【0097】
ハウジング91はまた、患者に植え込まれると植え込みポンプの動きを制限するように設計された機能構造、例えば、植え込み装置を周囲組織に確実に固定する縫合孔を備えることができる。ハウジング91は、皮下植え込み後の植え込み装置の周囲組織への付着を促進するポリエステル内植パッチをさらに備えることができる。
【0098】
さらに、植え込み装置は、閉塞防止剤、例えば、特に腹腔からの液体のタンパク質性成分を標的とする酵素溶出剤、特に尿のタンパク質性成分及び付着促進成分を標的とする酵素溶出剤、化学溶出表面、タンパク質性成分の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを任意に備えることができる。このような作用物質は、使用される場合は、システムの様々な構成要素の中に入れて一体にする、又は該構成要素の表面にコーティングすることができる。
【0099】
図5Bを参照すると、上部ハウジング93は、UVランプ85を任意に備える。上部ハウジング93内で、液体を誘導するための流路88は、ほぼ直線状に延在してもよいし、或いは、UVランプ86に同時に露出され得る液体の量を増加させるために1つ又は複数の曲線部又は屈曲部を備えてもよく、従って流量の増加が可能となる。例えば、流路88は、UVランプ86に同時に曝露され得る液体の量を増加させるために、近似螺旋、近似正弦波、又は近似「S」曲線部を備えてもよい。上部ハウジング93は、チューブの照射を強化し、かつ潜在的なUV光曝露から患者を保護するために、反射コーティング87、例えばZnOなどの白色コーティング、又は他の拡散反射器若しくはランバート反射器をさらに備えてもよい。
【0100】
ここで
図6A~
図6Dを参照すると、歯車ポンプ及び流路のさらなる詳細が示されている。
図6A~
図6Dでは、同様の構成要素は、
図5A及び
図5Bと同じ参照符号を用いて識別される。
図6Aは、モータ94と、歯車ポンプハウジング95及び上部ハウジング93、並びに植え込み装置内の流路の構成要素との組立を示す組立分解図である。上部ハウジング93は、好ましくは、入口ニップル102、出口ニップル103、圧力センサ104a~104d、マニホールド105、及びねじ106を収容するために開口及び通路を備えるように成形又は機械加工することができる高強度プラスチック又は金属合金材料を含む。ニップル102及び103は、好ましくは、高強度生体適合性金属合金から機械加工され、かつ出口ニップル103は、弾性ダックビル弁108を収容する通路107をさらに備える。出口ニップル103は、圧力センサ104aを収容する側面凹部109をさらに備え、該圧力センサは、患者の膀胱(又は腹腔)内の圧力に対応する、膀胱カテーテルの入口端部の圧力を測定するように配置される。
【0101】
また、ここで
図6B及び
図6Cを参照すると、入口ニップル102は、開口110内に配設され、該開口110は、圧力センサ104bの開口111及びマニホールド105に結合される開口112を備えた上部ハウジング93に通路を形成する。圧力センサ104bは、腹腔内の圧力に対応する、腹膜カテーテルの出口端部の圧力を測定するように配置される。ダックビル弁107を含む出口ニップル103は、側面凹部108が開口114に整合して圧力センサ104aの電気接点へのアクセスを可能にするように上部ハウジング93の開口113内に配設される。開口113は、圧力センサ104cの開口116及びマニホールド105に結合される開口117を備えた通路115を形成する。上部ハウジング93は、好ましくは、圧力センサ104dを収容する開口119を備えた通路を形成する開口118をさらに備える。圧力センサ104dは、周囲圧力を測定し、このセンサの出力を使用して、上記のように差圧を計算する。上部ハウジングは、入口ニップル102に接続される腹膜カテーテル及び出口ニップル103に接続される膀胱カテーテルを保持するためのコネクタ26(
図1Aを参照)を収容するノッチ120をさらに備える。上部ハウジング93は、マニホールド105を収容する凹部121、及び支持部材97(
図5Bを参照)が接続されるペグ122をさらに備える。
【0102】
マニホールド105は、好ましくは、流入路及び流出路を上部ハウジング93を介して歯車ポンプに接続する2つの別個の流路(
図5Bに88として示されている流路のような)を有する成形弾性要素を備える。第1の流路は、入口124及び出口125を備え、第2の流路は、入口126及び出口127を備える。入口124は、腹膜流路の開口112(
図6Cを参照)に接続され、出口127は、膀胱流路の開口117に接続される。マニホールド105は、上部ハウジング93の構造を単純にして、複雑な非線形流路を備えた構成要素を鋳造又は機械加工する必要性をなくすことによって、植え込み装置の製造性を改善するように構成されている。モータ94がハウジング93を介して液体をポンプ輸送するときに液体を十分に照射するように、任意であるUVランプ86及び表面87(
図6A~
図6Dでは不図示)を、ハウジング93内の、マニホールド105に対して適切な位置に配置することができる。
【0103】
モータ94は、そのスプライン軸131が軸受132を通過するように螺合ねじ130を用いて歯車ポンプハウジング95に接続される。本発明の歯車ポンプは、Oリングシール135及びプレート136によって歯車ポンプハウジング95内に封入された互いに噛合する歯車133及び134を備える。歯車ポンプは自給式である。プレート136は、マニホールド105の出口125に結合する開口137及び入口126に結合する開口138を備える。モータ94のスプライン軸131は、歯車133の開口139内に挿入されて該歯車と浮動係合する。
【0104】
(充電及び通信システム)
図7A、
図7B、及び
図8を参照して、充電及び通信システム150(
図1Aのシステム30に対応する)を詳細に説明する。好ましい一実施態様では、充電及び通信システム150は、ハンドピース151及びベース31を備えている(
図1Aを参照)。ベース31は、ハンドピース151を再充電するためのクレードルを備え、好ましくは、該ハンドピース151が該ベースに装着されたときに該ハンドピースを充電するために通常の120/220/240 Vの電力を適切な直流電流に変換するための変換器及び回路を備える。別法では、ハンドピース151は、該ハンドピースのバッテリを充電するための回路、及び着脱式電源コードを備えることができる。この実施態様では、ハンドピース151は、充電のためにコンセントに直接差し込むことができ、電源コードは、該ハンドピースを使用して植え込み装置を再充電するときには取り外される。
【0105】
図8に示されているように、ハンドピース151は、制御装置152を備え、該制御装置は、不揮発性メモリ153(例えば、EEPROM又はフラッシュメモリのいずれか)、揮発性メモリ154、無線送受信機155、誘導回路156、バッテリ157、インジケーター158、及びディスプレイ159に接続されたマイクロ制御装置ユニットのプロセッサとして例示されている。制御装置152、メモリ153及び154、並びに無線送受信機155は、単一マイクロ制御装置ユニット、例えば、Texas Instruments社、Dallas, Tex.から入手可能なMPS430ファミリーのマイクロプロセッサに組み込むことができる。送受信機155は、植え込み装置20に対して情報を送受信するためのアンテナ160に接続されている。バッテリ157は、コネクタ161に接続され、該コネクタは、該バッテリを充電するためにベース31のコネクタに取り外し可能に接続される。ポート162、例えば、USBポート又は同等の無線回路は、ハンドピース151と監視及び制御システムとの間で情報が交換できるように制御装置152に接続されている。誘導回路156は、コイル163に接続されている。入力装置164は、好ましくは、多機能ボタンであり、同様に、患者が限られた数のコマンドを入力できるように制御装置152に接続されている。インジケーター158は、ハンドピースと植え込み装置との間で達成される電荷結合の質を示すために点灯し、従って充電中の該ハンドピース151の該植え込み装置に対する位置合わせの最適化に役立つ複数のLEDを例示的に備える。好ましい一実施態様では、インジケーター158が省かれ、代わりに、コイル163と84との結合から得られる充電の質を示すバー表示がディスプレイ159に示される。
【0106】
好ましい一実施態様では、ハンドピース151は、該ハンドピース151が対応する植え込み装置20とのみ通信するように、該植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存された装置識別子に対応する不揮発性メモリ153に保存された装置識別子を備える。任意に、診療所での使用のために構成可能なハンドピースは、植え込み装置に問い合わせて該装置の一意装置識別子を要求し、次いで、患者のハンドピースを模倣するように監視及び制御システム40の装置識別子を患者の植え込み装置の装置識別子に変更する能力を有し得る。この方法では、患者が診療所を訪れたときに自身のハンドピース151を持参するのを忘れたとしても、医師が植え込み装置の設定を調整することができる。
【0107】
制御装置152は、植え込み装置の通信及び充電を制御する不揮発性メモリ153に保存されたファームウェアを実行する。制御装置152はまた、診療所訪問中に、ポート162を介した監視及び制御システム40への後の再送信のために、植え込み装置からハンドピース151にアップロードされるデータ、例えば、イベントログを転送及び保存するように構成されている。別法では、ハンドピース151は、診療所訪問中に、該診療所内の指定された無線アクセスポイントを認識して、監視及び制御システム40と無線通信するように構成することができる。さらなる別法として、ベース31は、自動的にダイアルして、ハンドピース151に保存された情報、例えば、アラーム情報を安全な接続によって医師のウェブサイトにアップロードするための電話回線を備えることができる。
【0108】
制御装置152は、好ましくは、低出力動作モードを有し、かつ該制御装置が定期的に起動して植え込み装置と通信してデータを記録する又は充電機能を果たすように内部クロックを備える。制御装置152は、好ましくは、植え込み装置の近傍に配置されると起動して通信及び充電機能を実行し、かつ入力装置164を用いて入力されたコマンドを送信するように構成されている。制御装置152は、植え込み装置から受信した情報を評価して、アラームメッセージをディスプレイ159上に作成するためのプログラムをさらに有することができる。制御装置152はまた、入力装置164を用いて入力されたコマンドを植え込み装置に送信し、このようなコマンドの実行中、例えば、障害物を除去するための歯車ポンプのブースト又はジョグ/振動動作中の植え込み装置の動作を監視するためのファームウェアも有することができる。さらに、制御装置152は、植え込み装置の再充電中の誘導回路156の動作、バッテリ74の充電状態の表示、並びにバッテリ157の充電の制御及び充電状態の情報の表示を含む、ハンドピース151の様々な出力動作を制御し、監視する。
【0109】
不揮発性メモリ153は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ関連する植え込み装置の一意装置識別子、制御装置152によって実行されるファームウェア、構成設定値、及び任意である、送受信機155及び/又は誘導回路156で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ153に保存されたファームウェア及び設定値データを、ポート162を介して制御及び監視システム40によって供給される情報を用いて更新することができる。揮発性メモリ154は、制御装置152に接続され、該制御装置の動作を支援し、かつ植え込み装置20からアップロードされるデータ及びイベントログ情報を保存する。
【0110】
さらに、好ましい一実施態様では、不揮発性メモリ153は、監視及び制御システムと通信しなくても、充電及び通信システムによる一部の初期のスタートアップ機能の実行を可能にするプログラミングを保存する。特に、メモリ153は、「自給式モード」の動作において、充電及び通信システムのみを用いて、植え込み中の植え込み装置の試験を可能にするルーチンを含み得る。この場合、医師がポンプを手動で始動することができるボタンを設けることができ、ディスプレイ159を使用して、ポンプ輸送セッションが成功したか否かのフィードバックを提供する。また、充電及び通信システムのディスプレイ159を使用して、医師による植え込み装置、腹膜カテーテル、又は膀胱カテーテルの位置調整を支援するように設計されたエラーメッセージを表示することができる。これらの機能は、好ましくは、植え込み装置の最初の植え込み後に無効にされる。
【0111】
送受信機155は、好ましくは、例えば、Bluetooth又はIEEE802.11無線規格に適合した無線周波数送受信機を含み、かつアンテナ160を介して、植え込み装置内に配設された送受信機回路76と双方向通信するように構成されている。送受信機155はまた、低出力動作モードを有することができ、これにより定期的に起動して、到着メッセージを受信し、かつ関連する植え込み装置に割り当てられた一意装置識別子を含むメッセージのみに応答する。送受信機155は、好ましくは、植え込み装置に送信されるメッセージ又は該植え込み装置から受信されるメッセージが絶対に傍受又は偽造され得ないように暗号化ルーチンを利用する。
【0112】
誘導回路156は、コイル163に接続され、かつ植え込み装置のコイル84に誘導結合されて該植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路156は、インジケーター158、好ましくは、複数のLEDに接続され、該複数のLEDは、コイル163と84との間の電磁結合の程度(従って、充電の質)を示すために点灯し、これによりハンドピース151の植え込み装置に対する位置合わせを支援する。好ましい一実施態様では、誘導コイル84及び163は、315 kHz以下の周波数で動作するときに、35 mmの間隙で良好な結合を確立することができる。植え込み装置が、任意である赤外線LED 83を備える一実施態様では、充電及び通信システム30は、任意である赤外線センサ(不図示)を備えることができ、該赤外線センサは、LED 83によって放射される赤外線光を検出し、かつコイル163と84との間の電磁結合を最適化するためにハンドピース151の位置合わせをさらに支援し、これにより植え込み装置へのエネルギー伝達が改善される。
【0113】
制御装置152はまた、バッテリ74の誘導充電中に、定期的に植え込み装置と通信して、温度センサ78によって作成された温度データを回収してメモリ72に保存するように構成することができる。制御装置152は、バッテリの温度を分析して、所定閾値、例えば、体温よりも2℃未満高い温度よりも低く植え込み装置の温度を維持するために誘導回路163に供給される充電電力を調整するファームウェアを備えることができる。この閾値は、バッテリ、周囲の電子部品、及び機械部品の熱膨張を低減するため、例えば、モータ及び歯車ポンプの構成要素の熱膨張を低減するため、並びにハウジングの下部92と上部93との間のシールに対する熱歪みを低減するために設定することができる。好ましい一実施態様では、誘導コイル163に供給される電力は、植え込み装置内の測定温度に応じた充電間隔で高電力(例えば、120 mA)と低電力(例えば、40 mA)との間で周期をなす。
【0114】
植え込み装置の誘導回路75について上記したように、誘導回路156は、歯車ポンプの障害物を除去するために「ブースト」モード又はジョグモードで、誘導回路75及びバッテリ74を介して植え込み装置のモータ73に追加電力を伝達するように任意に構成することができる。特に、例えば、粘性液体によって形成される閉塞によってモータ73が停止したというアラームが制御装置152に送信されたら、入力装置164を用いて過電圧を誘導回路75からモータ73に所定時間かけて障害物を除去する選択肢を患者に与えることができる。別法では、入力装置164の作動により、制御装置152が、モータ74を逆方向及び順方向に急速に作動させることにより歯車ポンプをジョグ又は振動させて閉塞物を破壊するルーチンを実行するようにプロセッサ70に命令を出すことができる。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、誘導回路156及び75は、このようなモータ動作のための追加エネルギーを、植え込み装置のバッテリ74を消耗させるのではなく、バッテリ157に蓄えられたエネルギーから直接供給するように構成することができる。
【0115】
バッテリ157は、好ましくは、長く持続する、例えば、最大3年間動作することができるリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含む。バッテリ157は、ベース31から取り外され、植え込み装置の充電中に、制御装置152、送受信機155、誘導回路156、及び関連電子機器を作動させるためにハンドピース151に電力を供給する十分な容量を有する。好ましい一実施態様では、バッテリ157は、約2~4時間の間に、植え込み装置のバッテリ74を使い切った状態から満充電する十分な容量を有する。バッテリ157はまた、約2~4時間以内に再充電する能力を有するべきである。液体700 mlを日常の動作で輸送する場合は、バッテリ157及び誘導回路156は、十分な電荷を誘導回路75を介してバッテリ74に転送してバッテリを約30分以内に再充電できるべきであると期待される。バッテリ容量は、好ましくは、充電蓄積アルゴリズム(charge accumulator algorithm)を用いて制御装置152によって管理される。
【0116】
図7A及び
図7Bを再び参照すると、ハンドピース151は、好ましくは、多機能ボタン166(
図8の入力装置164に対応する)及びディスプレイ167(
図8のディスプレイ159に対応する)を有するハウジング165を備える。複数のLED 168が、ハンドピース151の半透明部分の下に配設され、該複数のLEDは、
図8のインジケーター158に対応している。ポート169(
図8のポート162に対応する)により、ハンドピースを監視及び制御システム40に接続することができ、コネクタ170(
図8のコネクタ161に対応する)により、ハンドピースをベース31に接続してバッテリ157を再充電することができる。多機能ボタン166により、患者が、限られた数のコマンドを植え込み装置に入力することができる。ディスプレイ167、好ましくは、OLED又はLCDディスプレイにより、多機能ボタン166を用いて入力された所望のコマンドが受け取られたことを画像で確認することができる。ディスプレイ167はまた、植え込み装置のバッテリ74の充電の状態及び段階、ハンドピース151のバッテリ157の充電の状態及び段階、無線通信の信号強度、充電の質、エラーメッセージ、並びにメンテナンスメッセージも表示することができる。ハウジング165の誘導コイル部分171は、誘導コイル163を収容する。
【0117】
LED 168は、点灯するとハウジング165の材料を通して視認可能であり、好ましくは、各行に2つのLEDとして3行に配置される。充電中に、LEDが点灯して、例えば、誘導回路156からのエネルギー損失によって決定される誘導コイル163と84との間の電磁結合の程度を表示し、患者がこのLEDを使用して、ハンドピース151を植え込み装置に対して正確に配置することができる。従って、例えば、低度の結合を2つのみのLEDの点灯に対応させ、中程度の結合を4つのLEDの点灯とし、好ましい結合の程度を6つすべてのLEDの点灯によって反映させることができる。この情報を用いて、患者は、植え込み装置が位置する領域上にハンドピース151の位置を合わせて、該ハンドピースにとって好ましい位置を得ることができ、結果として最短の再充電時間となる。好ましい一実施態様では、LED 168は、電荷結合の質を示す、ディスプレイ167上のアナログバー表示に置き換えられる。
【0118】
(監視及び制御システム)
ここで、
図9を参照して、
図1Aの監視及び制御システムを実行するソフトウェアを説明する。ソフトウェア180は、
図9に模式的に示されているいくつかの機能ブロックを含み、該機能ブロックは、主ブロック184、イベントログブロック182、データダウンロードブロック183、構成セットアップブロック184、ユーザーインターフェイスブロック185、健康状態監視ブロック191及び感染予測ブロック192を含むアラーム検出ブロック186、センサ校正ブロック187、ファームウェアアップグレードブロック188、装置識別子ブロック189、及び状態情報ブロック190を含む。一実施態様では、このソフトウェアは、C++でコードされ、かつオブジェクト指向形式を利用するが、他のソフトウェア言語及び環境を使用することもできる。一実施態様では、このソフトウェアは、通常はデスクトップ及びラップトップコンピュータで使用される、Microsoft Windows. RTM(Microsoft社、Redmond, Wash.の登録商標)又はユニックスベースのオペレーティングシステム上で動作するように構成されるが、他のオペレーティングシステムも利用することができる。
【0119】
監視及び制御システムのソフトウェア180を実行するコンピュータは、好ましくは、データポート、例えば、USBポート又は同等の無線接続を備え、これにより充電及び通信システムのハンドピース151をポート169を介して接続することができる。別法では、上記のように、コンピュータは、例えば、IEEE802.11規格に適合した無線カードを備えることができ、これによりハンドピース151が、ソフトウェア180を実行するコンピュータと無線通信することができる。さらなる代替として、充電及び通信システムは、自動的にダイアルして、ハンドピース151からのデータ、例えば、アラームデータを担当医がアクセス可能な安全なウェブサイトにアップロードする電話回線を備えることができる。
【0120】
主ブロック184は、好ましくは、医師のコンピュータ、タブレット、又はスマートフォン上で実行される主ソフトウェアルーチンからなり、かつ他の機能ブロックの動作全体を制御する。ハンドピース151に接続されると、主ブロック184により、医師が、該ハンドピース151に保存されたイベントデータ及びアラーム情報を自身のコンピュータ、タブレット、又はスマートフォンにダウンロードすることが可能となり、また、制御及び監視ソフトウェア180が、植え込み装置の動作を直接制御することも可能となる。主ブロックにより、医師は、ファームウェアの更新及び構成データを植え込み装置にアップロードすることも可能である。
【0121】
イベントログブロック182は、充電及び通信システムを介して植え込み装置からダウンロードされた動作データの記録であり、かつ、例えば、ポンプの始動及び停止時間、モータの位置、腹腔及び膀胱の圧力、患者の体温、呼吸数又は体液温度のセンサデータ、ポンプの出口圧力、湿度、ポンプの温度、バッテリの電流、バッテリの電圧、バッテリの状態などを含み得る。イベントログはまた、事象、例えば、ポンプの閉塞、ブーストモード若しくはジョグモードでの動作、アラーム、又は他の異常な状態の発生を含み得る。
【0122】
データダウンロードブロック183は、ハンドピース151が監視及び制御ソフトウェア180を実行するコンピュータに接続された後に、揮発性メモリ154からデータをダウンロードするために該ハンドピースとの通信を制御するルーチンである。データダウンロードブロック183は、自動的に、又はユーザーインターフェイスブロック185を介した医師の誘導で、イベントログに保存されたデータのダウンロードを開始することができる。
【0123】
構成セットアップブロック184は、植え込み装置の動作を制御する不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定するルーチンである。間隔タイミングパラメータは、例えば、プロセッサが起動して無線通信を受信する前又はポンプの動作を制御する前に、該プロセッサをスリープモードにどれくらいの期間維持するかを決定することができる。間隔タイミングパラメータは、例えば、液体を腹腔から膀胱に輸送するポンプ動作の期間、並びに植え込み装置、腹膜カテーテル、及び膀胱カテーテルの閉塞を抑制する定期的チック動作間の間隔を制御することができる。監視及び制御ソフトウェア180から植え込み装置に送信される間隔タイミング設定は、イベントデータがいつ、そしてどの程度の頻度で不揮発性メモリ71に書き込まれるかを決定し、充電及び通信システムのハンドピース151のプロセッサ152によって実行されるファームウェアが使用するタイミングパラメータを設定することもできる。ブロック184はまた、医師が使用して、プロセッサ70及びモータ73の動作の限界値に関する、不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定することができる。これらの値は、腹膜カテーテル及び膀胱カテーテルの最小圧力及び最大圧力、充電中の最大温度差、ポンプが動作できる時間、及びポンプが動作できない時間などを含み得る。
【0124】
ブロック184によって設定される限界値は、ハンドピース151のプロセッサ152の動作を制御するパラメータも設定する。ブロック184はまた、プロセッサ70及びモータ73の動作の制御に関連した、植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定することもできる。これらの値は、輸送する液体の目標とする1日の量、1回のポンプ輸送セッションで輸送される液体の量、モータ速度、及び1回のポンプ輸送セッションの期間を含み得る。ブロック184はまた、ハンドピース151に接続されたときのブーストモードでの動作中、及び植え込み装置がバッテリ74のみで動作するときの振動/ジョグモードでの動作中のモータ73の動作パラメータを指定することができる。このようなパラメータは、順方向と逆方向との間で交互して動作するときのモータの速度及び電圧、モータ軸の回転時間/回転数などを含み得る。
【0125】
ユーザーインターフェイスブロック185は、データダウンロードブロック183を介して監視及び制御システム並びに植え込み装置から回収される情報の表示を制御し、かつ医師による再検討のために直感的に理解しやすい形式で該情報を提示する。
図10~
図14を参照して以下に説明するように、このような情報は、植え込み装置の状態、充電及び制御システムの状態、測定圧力、1回のポンプ輸送セッションで又は1日に輸送される液体の量などを含み得る。ユーザーインターフェイスブロック185はまた、医師が情報を入力して、ブロック184に関して上記した間隔タイミングパラメータ、限界値パラメータ、及びポンプの動作パラメータを設定することができるユーザーインターフェイス画面も作成する。
【0126】
アラーム検出ブロック186は、植え込み装置又は充電及び通信システムから回収されたデータを評価し、かつ医師の注意を向けるために異常な状態をフラグ立てするルーチンを含み得る。例えば、アラーム検出ブロック186は、健康状態監視ブロック191を含むことができ、該健康状態監視ブロック191は、DSR注入液が患者の腹腔に供給される量、時間、及び/又は頻度の変更が正当であり得る患者の健康状態のあらゆる変化を医師に警告するように構成されている。例えば、植え込み装置20によって提供されるデータが腹腔内の液体の蓄積を示す場合、医師は、該液体が患者の腹腔から引き出される量、時間、及び/又は頻度を増加させることができる。或いは、植え込み装置20によって提供されるデータが比較的少量の液体を示す場合、医師は、液体が患者の腹腔から引き出される量、時間、及び/又は頻度を少なくすることができる。
【0127】
アラーム検出ブロック186はまた、或いは、代償不全予測ブロック192を含むことができ、該代償不全予測ブロック192は、例えば、所定閾値を超える患者の腹腔内の液体の蓄積の増加、所定閾値を超える患者の呼吸数の上昇、及び/又は所定閾値を超える腹腔内圧の上昇の1つ又は複数に基づいて非代償性心不全を予測又は検出するように構成されている。そのようなフラグは、ユーザーインターフェイスブロック185によって提示されるインジケーターの状態を変更することによって、又はユーザーインターフェイスブロック185を介して患者の液体の蓄積、呼吸数、若しくは腹腔内圧の上昇についての特定の情報を医師に提示することによって該医師に伝達することができる。
【0128】
センサ校正ブロック187は、例えば、経年変化又は湿度の変化による、植え込み装置に使用されているセンサ70、78~81のドリフトの試験又は測定のルーチンを含み得る。次いで、ブロック187は、センサからの測定データを補正するためのオフセット値を計算して、この情報を、不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置に送信することができる。例えば、圧力センサ104a~104dは、経年変化又は温度変化によるドリフトが起こり得る。従って、ブロック187は、オフセット値を計算することができ、次いで該オフセット値を、このようなドリフトを考慮するために植え込み装置に送信して保存する。
【0129】
ファームウェアアップグレードブロック188は、植え込み装置にインストールされたプロセッサ又はモータ制御装置のファームウェア及び/又は充電及び通信システムのプロセッサのファームウェアのバージョン番号をチェックして、アップグレードされたファームウェアが存在するか否かを確認するルーチンを含み得る。存在する場合は、このルーチンは、医師に知らせることができ、これにより医師は、修正ファームウェアを、不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置にダウンロードする、又は修正ファームウェアを、不揮発性メモリ153に保存するために充電及び通信システムにダウンロードすることが可能となる。
【0130】
装置識別子ブロック189は、不揮発性メモリ71に保存されている植え込み装置の一意識別子、並びに監視及び制御システムが充電及び通信システムを介して植え込み装置に接続されたときにこのデータを読み込むルーチンからなる。上記のように、植え込み装置が装置識別子を使用して、充電及び通信システムから受信した無線通信がその特定の植え込み装置用であるかを確認する。同様に、この情報を充電及び通信システムのハンドピース151が使用して、受信メッセージがそのハンドピースに関連した植え込み装置によって作成されたものであるか否かを決定する。最後に、装置識別子情報を監視及び制御ソフトウェア180が使用して、ハンドピースと植え込み装置が整合したセットを構成するかを確認する。
【0131】
状態情報ブロック190は、ハンドピースを151を介して接続されると、植え込み装置に問い合わせて、植え込み装置及び/又はハンドピース151から現在の状態データを回収するルーチンを含む。このような情報は、例えば、バッテリ状態、植え込み装置及びハンドピースの内部クロックの日付及び時刻、現在使用中のファームウェア及びハードウェアのバージョン管理情報、並びにセンサデータを含み得る。
【0132】
ここで
図10~
図14を参照して、ソフトウェア180のユーザーインターフェイスブロック187によって作成された例示的な画面を、HFを処置するために本発明の方法に従って使用される植え込みシステムについて説明する。
図10は、監視及び制御ソフトウェア180を実行している医師に示される主画面200を示している。主画面200は、
図9のブロック190に対応するルーチンによって植え込み装置及び充電及び通信システムから回収した状態情報を表示する状態領域を有する。より具体的には、状態領域は、充電及び通信システム用の状態領域201(「スマート充電器」と呼ばれる)、及び植え込み装置用の状態領域202(「ALFAポンプ」と呼ばれる)を含む。各状態領域は、チェックマークによって示される、各システムが正常に動作しているか否かを示すアイコン、そのシステムの装置識別子、及び各システムが接続されている又は作動しているか否かを含む。パラメータが、仕様範囲外であるとアラーム検出ブロック186によって評価される場合は、アイコンは、代わりに警告記号を含み得る。メニューバー203は、各メニューアイテムを強調表示することによって医師が移動できる様々な画面を示す。作業スペース領域204は、状態領域の下側に設けられ、かつ選択されるメニューアイテムによって変化する表示を含む。作業スペース領域204の下側には、ナビゲーションパネル205が表示され、該ナビゲーションパネルは、ソフトウェア180のバージョン番号、及び作業スペース領域204の表示をリフレッシュすることができるラジオボタンを含む。
【0133】
図10では、メニューバー203において、メニューアイテム「情報」のサブメニューアイテム「植え込み装置」が強調表示されている。このメニューアイテムの選択では、作業スペース領域204は、植え込み装置についてのバッテリ状態ウィンドウ204a、測定圧力ウィンドウ204b、及びファームウェアバージョン管理ウィンドウ204cを例示的に示している。バッテリ状態ウィンドウ204aは、バッテリ74の充電残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表してもよいし、又はバッテリの残量がほぼないというアラームを示してもよい。ウィンドウ204aの時間成分は、植え込み装置から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。測定圧力ウィンドウ204bは、膀胱圧、腹腔圧、周囲圧力をそれぞれ、センサ104a、104b、及び104d(
図6Aを参照)で測定されたmBar単位で表示する。バージョン管理ウィンドウ204cは、プロセッサ70のファームウェアバージョン、モータ制御装置のバージョン、及び植え込み装置のハードウェアバージョンを示す。患者パラメータウィンドウ204dは、患者の体温、呼吸数、及び腹腔内圧を表示する。植え込み装置が他のタイプのセンサ、例えば体内の液体のレベルを測定するセンサを含む場合、そのようなセンサによって測定されたパラメータもウィンドウ204dに表示できることに留意されたい。
【0134】
アラーム状態ウィンドウ204eは、非代償性心不全の発症の可能性、又は患者の健康状態の改善若しくは悪化などの患者の健康状態の変化を示し得るパラメータのあらゆる変化を表示する(
図9のブロック191及び192)。例えば、例示されているように、アラーム状態ウィンドウ204eは、患者の腹腔内圧が異常に高いことを医師に警告することができ、そのため医師が、代償不全の可能性について患者を経過観察することができる。いくつかの実施態様では、ウィンドウ204b、204d、及び/又は204eに表示される情報に基づいて、医師が、例えば、
図13を参照して以下にさらに説明するインターフェイスを用いて、ポンプの動作パラメータを調整することができる。
【0135】
図11を参照すると、
図10の「スマート充電器」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示206が示されている。
図11は、
図10を参照して上記した充電及び通信システム用の状態領域201、植え込み装置用の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示206は、「スマート充電器」サブメニューアイテムが強調表示されている点で画面表示200とは異なり、作業スペース領域204は、充電及び制御システムについてのバッテリ状態ウィンドウ207a及びバージョン管理ウィンドウ207bを表示している。バッテリ状態ウィンドウ207aは、バッテリ157の充電残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表してもよいし、又はバッテリの残量がほぼないというアラームを示してもよい。ウィンドウ207aの時間成分は、ハンドピース151から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。バージョン管理ウィンドウ207bは、プロセッサ152のファームウェアバージョン、並びに充電及び制御システムのハードウェアバージョンを示す。
【0136】
ここで
図12を参照すると、
図10の「ダウンロード」メニューアイテム及び「ログファイル」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示208が示され、ソフトウェア180のブロック183の機能が実行される。
図12は、すべて上記した、充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示208は、「ログファイル」サブメニューアイテムが強調表示されているという点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、ダウンロード進行ウィンドウ209a及び保存経路ウィンドウ209bを表示している。ウィンドウ209aは、充電及び通信システムを介して植え込み装置からイベントログをダウンロードすることができるディレクトリの経路を含む。ウィンドウ209aはまた、イベントログがダウンロードされるディレクトリ経路を医師が選択できる「ダウンロードホルダを開く」ラジオボタン、及びダウンロードされたデータ量を反映するべく更新されるプログレスバーも含む。ウィンドウ209bは、作動させてイベントログをウィンドウ209aの指定された経路にダウンロードすることができるラジオボタンを含み、かつダウンロード処理を中止する「中止」ラジオボタンも含む。
【0137】
図13は、
図10の「ポンプ設定」メニューアイテム及び「液体輸送」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示210の例示的な一表現であり、ソフトウェア180のブロック184及び190の機能が実行される。
図13は、すべて上記した、充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示210は、「液体輸送」サブメニューアイテムが強調表示されているという点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、セッション量ウィンドウ211a、液体輸送プログラムウィンドウ211b、1日の最小量ウィンドウ211c、圧力ウィンドウ211d、並びにウィンドウ211a、211b、及び211dで入力された値を植え込み装置の不揮発性メモリ71に送信して保存することができるナビゲーションパネル205のラジオボタンを含む。
【0138】
セッション量ウィンドウ211aは、腹腔内に自然に蓄積する液体のポンプ輸送セッション間の時間間隔、ポンプを作動させることができる1日の回数、1日の合計ポンプ作動時間、及び1回のポンプ輸送セッションのセッション量についての現在の設定を表示する。ウィンドウ211aに表示される滞留時間により、医師が、DSR注入液が腹腔内に留まる時間を設定することができる。 ウィンドウ211aに表示される時間間隔により、医師が、ナトリウムを含んだDSR注入液及び浸透限外濾過液を腹腔から取り出して膀胱に向ける頻度を設定することができる(リザーバから腹腔へのDSR注入液も同様に設定することができる)。リザーバから送達されるDSR注入液の量、滞留時間、及び取り出し時間は、システムの動作全体を決定するために構成設定ルーチン(
図9のブロック184)によって使用される。
【0139】
任意に使用できる、ウィンドウ211aに表示される、ポンプを作動できる時間区間は、植え込み装置が液体を膀胱に能動的に輸送することができる時間枠を定義し:これらの時間区間以外では、植え込み装置は、液体を輸送することができないが、上記のポンプチック動作を実施して定期的に歯車回転させ、これにより歯車の停止を防止することができる。認識した患者の健康状態に応じて、医師は、一部の状況では健康の維持が利便性を上回り得るため、ポンプが昼夜を問わず一日中動作できるように時間区間を設定することができる。ウィンドウ211aに表示される1日のポンプ作動時間は、時間区間ボックスで入力される時間区間の総計であるため、読み取り専用形式で示される。最後に、ウィンドウ211aに表示されるセッション量は、1回のポンプ輸送セッションで膀胱に移送される液体の量としてブロック183によって計算される。
【0140】
液体輸送プログラムウィンドウ211bは、ソフトウェア180のブロック184を用いたパラメータセットに基づいて植え込み装置のポンプの動作を制御するプログラムの状態を表示する。ポンプの動作を何らかの理由で停止しなければならない場合は、ウィンドウ211bの「オフ」ボタンをクリックすることによって液体輸送プログラムを停止することができ、これにより、手動でオンに切り替えられるまでポンプはポンプ輸送を停止する。一実施態様では、液体輸送プログラムは、ウィンドウ211bの「オン」ボタンを押圧することによって再びスイッチをオンにすることができる。植え込み装置は、好ましくは、ポンプのスイッチがオフの状態で植え込まれるため、医師又は外科医は、植え込み装置が最初に植え込まれた後に、ウィンドウ211bを使用して液体輸送プログラムを作動させることができる。
【0141】
1日の最小量ウィンドウ211cは、植え込み装置によって膀胱にポンプ輸送される液体の予想量を表示し、該予想量は、構成セットアップルーチンによって、ウィンドウ211aで入力される規定時間区間の長さ及び時間間隔のタイミングに基づいて、セッション量に1日のセッション回数を乗じて計算される。
【0142】
図13の圧力ウィンドウ211dにより、医師が、植え込みポンプの動作を制御するために使用される最大膀胱圧及び最小腹腔圧の値を入力することができる。従って、例えば、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される膀胱圧がウィンドウ211dの指定された値を超えると、モータ73に命令を出して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウィンドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。同様に、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される腹腔圧がウィンドウ211dの指定された値よりも低いと、モータ73に命令を出して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウィンドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。上記の要領で動作するように構成される場合は、植え込み装置は、患者の膀胱の過度の充填により患者に不快感をもたらすことも、腹腔から液体が過度に抜くこともない。
【0143】
ここで
図14を参照すると、
図11の「試験」メニューアイテム及び「手動試運転」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示212の例示的な一表現が示されている。
図14は、すべて上記した、充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示212は、「手動試運転」サブメニューアイテムが強調表示されているという点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204が、手動ポンプサイクルウィンドウ213を含む。手動ポンプサイクルウィンドウ213は、ラジオボタン「試験開始」を含み、該ラジオボタン「試験開始」は、充電及び通信システムを介して植え込み装置にコマンドを送信して、プロセッサ70がポンプを所定時間の間、例えば、数秒間作動させるようにする。プロセッサ70は、モータ73のホール効果センサからの位置データ、及び圧力センサ104c及び104dによる測定圧力データを受信する。プロセッサ70は、セッション量を計算して、その情報を充電及び通信システムを介してソフトウェア10に送り返し、該ソフトウェアが、測定データを目標セッション量と比較して、試験結果、例えば、達成された目標セッション量のパーセンテージ又は合格/不合格のアイコンを提示する。測定セッション量、目標セッション量、及び試験結果は、ウィンドウ213に表示される。
【0144】
本発明の様々な例示的な実施態様を上記したが、当業者には、本発明から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができることは明らかであろう。例えば、システム10は、患者の身体的及び/又は精神的健康を評価するように構成された追加の装置、例えば、体重計、ECG若しくは心拍数センサ、又は患者の血液一滴中のナトリウム及び/若しくは毒素及び/若しくは老廃物、例えば、アンモニア、c反応性タンパク質、血漿レニン、血清ナトリウム、血清クレアチニン、プロトロンビン時間、及び/若しくはビリルビンのレベルを測定する携帯型バイオセンサを含むように変更することができる。血清クレアチニンを測定するセンサに接続する場合、システムは、上記の式を使用して現在のGFR値を計算して保存するように構成することができる。そのように構成されると、システムは、GFRが15を下回ると計算された場合、無又は低ナトリウムDSR注入液の使用を中止するように医師に警告を発することができる。
【0145】
或いは、又はさらに、システム10は、対象の心理学的健康又は電気生理学的活動を測定する心理試験を患者に提示する携帯型又はコンピュータベースの装置を含むように変更することができる。そのような装置は、患者の健康及び植え込み装置20の動作パラメータを調整する潜在的な必要性を評価する際に医師が使用するために結果を監視及び制御システム40に無線で提供するように構成することができる。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を網羅することを意図している。
【0146】
(予備実験結果)
本発明のDSR注入液及び方法の初期試験はブタモデルで行われており、これは、本発明のシステム、方法、及びDSR注入液がヒトでどのように挙動するかについての有効な洞察を提供すると期待される。以下にさらに詳細に説明するように、その初期試験は、予想をはるかに超える極めて上出来で有益な結果をもたらした。
【0147】
5頭のブタの第1群(「プロトコル改善ブタ」)では、1リットルの無ナトリウムDSR注入液の各ブタの腹腔への注入の効果を測定した。DSR注入液は、一般に、精製水及びデキストロース(例えば、水100 ml当たり10グラム)を含み、それらの腹腔内に最大6時間滞留させた。5~25マイクロキュリーのI-131放射標識アルブミンを非吸収性トレーサーとして注入液に混合して、腹部の連続排出を必要とすることなく限外濾過動態を決定した。滞留期間中、腹腔内の液体をサンプリングして、除去された総ナトリウム量及び腹腔内に蓄積した液体のナトリウム濃度を時間の関数として決定し、血液サンプルも採取した。具体的には、DSR注入液の注入後1時間半において、血液サンプル3 mlと液体サンプル2.5 mlを15分ごとに採取して分析した。次の1時間半の期間では、血液と液体のサンプルを30分ごとに採取した。そして最後の3時間で、さらなる血液と液体のサンプルを1時間ごとに採取した。さらに、腹腔に蓄積された、ナトリウムを含んだDSR注入液と浸透限外濾過液とからなる液体の総量を、時間の関数として記録した。
【0148】
図15Aは、第1の群のブタの滞留時間の関数として除去された総ナトリウム量を示し、
図15Bは、腹腔から除去されたサンプル中のナトリウム濃度を時間の関数として示している。
図15Cは、第1の群のブタの腹腔に蓄積された液体の総量を示している。
図15Cに示されているように、驚くべきことに、2時間後、1リットルのDSR注入液の注入により、1リットルの浸透濾過液が腹腔内に蓄積した。
【0149】
第2の群の10頭のブタ(「プロトコルブタ」)では、2時間の滞留期間に、1リットルのDSR注入液を各ブタの腹腔に注入した。滞留期間中、ブタの血清ナトリウム、血清浸透圧、血漿浸透圧、及びグルコースレベルを、30分ごとに6 mlの血液サンプルを採取することによって定期的に測定した。腹腔に蓄積する液体の総オスモル濃度、グルコースオスモル濃度、及び非グルコースオスモル濃度は、前述のサンプルを使用して滞留期間中に定期的に測定した。滞留期間の完了後、腹腔から排出された液体の総量及び除去されたナトリウムの総量を測定した。
【0150】
図16Aは、2時間の滞留後に各プロトコルブタの腹腔から除去した総液体量を示すチャートである。
図16Bは、2時間の滞留後に各プロトコルブタの腹腔から除去したナトリウムの総量を示している。
図16Cは、2時間の滞留期間中のプロトコルブタの腹腔からの液体サンプルの総オスモル濃度、グルコースオスモル濃度、及び非グルコースオスモル濃度の変化を示している。
図16D、
図16E、及び
図16Fは、2時間の滞留期間中のプロトコルブタの血清ナトリウム、血清浸透圧、及び血清グルコースの変化をそれぞれ示している。上記の結果は、本発明のDSR方法及び注入液が、1リットルのDSR注入液の単回投与及び2時間の滞留で、臨床的に意義のある量、例えば4,000 mgのナトリウムを除去するが、血清ナトリウムレベルに対する影響は臨床的に無視できることを実証している。除去される4,000 mgのナトリウムは、一般に、推奨されるナトリウム消費の2日分に等しく、これは、排尿による貯まった液体の除去、及び有意に蓄積した(研究したパラメータでは1リットル)浸透限外濾過液の腹腔からの直接除去をもたらす。そして、
図16D、
図16E、及び
図16Fに示されているように、滞留が2時間のDSR注入液の単回投与は、予期された臨床的に管理可能な血清グルコース濃度の増加のみで、血清ナトリウムレベル及び血清浸透圧が期間中安定したままであったため、非常に安全であると予想される。
【0151】
図17A~
図17Cは、本発明の方法を繰り返し適用する前と適用した後の両方の5頭のプロトコルブタ集団のサブグループにおけるいくつかの血液量マーカーの測定値を示している。
図17Aは、5サイクルのDSR処置後のプロトコルブタの総血液量のほぼ1/2の減少を示している。予想通り、
図17Bは、赤血球の総量に対するDSR方法の影響が事実上ないことを示している。しかしながら、
図17Cは、血漿量に約60%の減少があることを示している。従って、
図17A~
図17Cに示されているように、本発明のDSR方法の反復使用は、血漿量を減少させることによって血液量の有意な減少を達成することが実証されている。これは、本発明のDSR方法の有効性と、異なるレベルの体液過剰を解消するために該DSR方法をどのように使用できるかを実証している。
【0152】
図18は、残存腎機能が低下した患者における本発明のDSR注入液の使用の影響を調査するために行われた、5頭のプロトコルブタの同じサブグループにおける血清ナトリウム濃度への影響を示している。
図18に示されているように、ブタがナトリウム及び体液の減少を回復する機会を有していない本発明の方法の連続的な適用は、血清ナトリウムレベルの重度の低下をもたらす。ブタは、血液量の減少による重度の腎障害のため、事実上無腎であった。
図17A~
図17C及び
図18は、透析に十分な量での重度腎機能障害(すなわち、病期5のCKD又はGFR <15 ml /分/ 1.73m
2)患者における無又は低ナトリウム注入液の使用は、危険な又は末期的な低ナトリウム血症、及び循環虚脱をもたらす血漿量の減少につながるはずであることを示唆している。従って、上記のように、本発明のDSR方法、注入液、及び装置は、15を超えるGFR値又は病期4以下のCKDを現在も有する体液過剰及び心不全の患者を対象とすべきである。
【0153】
本発明の様々な例示的な実施態様を上記したが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び修正が本発明の範囲内で可能であることが明らかであろう。例えば、ポンプシステム1は、様々に命令することができ、さらなる又はより少ない様々なサイズの構成要素及び組成物を含んでもよい。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲に含まれるすべてのそのような変更及び修正を含むものとする
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
体液過剰の心不全患者を処置するために無又は低ナトリウムDSR注入液を使用する方法であって、該患者が、15 ml /分/ 1.73 m2よりも高い推定糸球体濾過率を有し:
無又は低ナトリウムDSR注入液を該患者の腹腔内に導入するステップ;
滞留期間中に、ナトリウム及び浸透限外濾過液を該腹腔内で該DSR注入液を用いて蓄積させるステップ;
低ナトリウム血症を防止すると共に体液過剰を緩和するために、該DSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から除去するステップを含む、前記方法。
(態様2)
腎機能によって引き起こされる排尿を介して液体を前記患者から除去するステップをさらに含む、態様1記載の方法。
(態様3)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記心不全患者の腹腔内に導入するステップが、120 meq / L未満のナトリウム濃度を有するDSR注入液を導入するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様4)
無又は低ナトリウムDSR注入液を導入するステップが、デキストロース又はイコデキストリン、又はそれらの組み合わせを有するDSR注入液を導入するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様5)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、植え込みポンプを使用して該DSR注入液をリザーバから該患者の腹腔内に移送するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様6)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、リザーバから該DSR注入液を送達するために重力を利用して該DSR注入液を該患者の腹腔内に注入するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様7)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、体外ポンプ、加圧容器、又は重力に基づく供給システムを使用して該DSR注入液を送達するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様8)
ナトリウム及び浸透限外濾過液を含むDSR注入液を前記患者の腹腔から除去するステップが、滞留期間の終了時に、植え込みポンプを使用して該DSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から膀胱に移送するステップを含む、態様1記載の方法。
(態様9)
前記植込みポンプを所定の時間に作動させて、所定量のDSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を前記患者の腹腔から前記膀胱に移送するステップをさらに含む、態様8記載の方法。
(態様10)
1つ又は複数のセンサで前記患者の腹腔内圧を監視するステップをさらに含む、態様1記載の方法。
(態様11)
前記腹腔内の液体蓄積速度を監視するステップをさらに含む、態様10記載の方法。
(態様12)
前記腹腔内の前記液体蓄積速度の増加又は腹腔内圧の増加を示す医師への警告を生成するステップをさらに含む、態様11記載の方法。
(態様13)
体液過剰の心不全患者を処置するために無又は低ナトリウム溶液を使用する方法であって、該患者が、正常からCKD病期4までの腎機能を有し;
無又は低ナトリウムのDSR注入液を該患者の腹腔内に導入するステップ;
滞留期間中に、ナトリウム及び浸透限外濾過液を該腹腔内で該DSR注入液を用いて蓄積させるステップ;
前記体液過剰を緩和するために、該DSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該腹腔から除去するステップ;及び
低ナトリウム血症を防止すると共に血清ナトリウム濃度を回復させるために、排尿により液体を患者から除去するステップを含む、前記方法。
(態様14)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、120 meq / L未満のナトリウム濃度を有するDSR注入溶液を導入するステップを含む、態様13記載の方法。
(態様15)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、水溶液100ml当たり5~50gmの範囲の濃度のデキストロース、水溶液100ml当たり5~50gmの範囲のイコデキストリン、又はそれらの組み合わせを含むDSR注入液を導入するステップを含む、態様14記載の方法。
(態様16)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、植え込みポンプを使用して該DSR注入液をリザーバから該患者の腹腔内に移送するステップを含む、態様13記載の方法。
(態様17)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、リザーバから該DSR注入液を送達するために重力を利用して該DSR注入液を該患者の腹腔内に注入するステップを含む、態様13記載の方法。
(態様18)
無又は低ナトリウムDSR注入液を前記患者の腹腔内に導入するステップが、体外ポンプ、加圧容器、又は重力に基づく供給システムを使用して該DSR注入液を送達するステップを含む、態様13記載の方法。
(態様19)
前記DSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を前記患者の腹腔から除去するステップが、滞留期間の終了時に、植え込みポンプを使用して該DSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を該患者の腹腔から膀胱に移送するステップを含む、態様13記載の方法。
(態様20)
前記植込みポンプを所定の時間に作動させて、一定量のDSR注入液、ナトリウム、及び浸透限外濾過液を前記患者の腹腔から前記膀胱に移送するステップをさらに含む、態様19記載の方法。
(態様21)
1つ又は複数のセンサで前記患者の腹腔内圧を監視するステップをさらに含む、態様13記載の方法。
(態様22)
前記腹腔内の液体蓄積速度を監視するステップをさらに含む、態様21記載の方法。
(態様23)
前記腹腔内の前記液体蓄積速度の増加又は腹腔内圧の増加を示す医師への警告を生成するステップをさらに含む、態様23記載の方法。
(態様24)
過剰なナトリウムを除去することによって心不全の処置に使用するための注入液であって、少なくとも残留腎機能を有する患者の腹腔への注入によって投与され、そして該腹腔から排出される、120 meq / L以下のナトリウム濃度を有する、前記注入液。
(態様25)
過剰なナトリウムを除去することにより、安定した血清ナトリウムレベルを維持したまま、前記患者の体液過剰を軽減する、態様24記載の注入液。
(態様26)
少なくとも2時間の滞留期間中に、限外濾過液の拡散を誘導して、前記腹腔に注入された注入液の量の半分以上の量を該腹腔に導くように選択された浸透圧を有する、態様24記載の注入液。
(態様27)
ごく微量のナトリウムを含む、態様24記載の注入液。
(態様28)
うっ血性心不全を処置するために製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様29)
前記残存腎機能を有する患者が、15ml /分/1.73m2を超える推定糸球体濾過速度を有する患者である、態様24記載の注入液。
(態様30)
前記残存腎機能を有する患者が、正常からCKD病期4までの範囲の腎機能を有する患者である、態様24記載の注入液。
(態様31)
過剰なナトリウムを除去することにより、排尿を促進して血清ナトリウム濃度を回復させることによって体液過剰を軽減する、態様24記載の注入液。
(態様32)
穿刺によって排液を行うことを可能にするように製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様33)
注入液、過剰なナトリウム、及び限外濾過液を前記患者の膀胱にポンプ輸送することによって排液を可能にするように製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様34)
重力による供給を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様35)
体外ポンプ又は加圧容器を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様36)
植え込みポンプ又は加圧容器を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化される、態様24記載の注入液。
(態様37)
植え込みポンプを使用して、前記患者の腹腔から膀胱にポンプ輸送されるように製剤化される、態様33記載の注入液。
(態様38)
過剰なナトリウムを除去することによる心不全の処置に使用するための注入液であって、少なくとも正常からCKD病期4までの範囲の残存腎機能を有する患者の腹腔への注入によって投与され、そして該腹腔から排出される、ごく微量のナトリウムを含む、前記注入液。
(態様39)
過剰なナトリウムを除去することにより、安定した血清ナトリウムレベルを維持したまま、前記患者の体液過剰を軽減する、態様38記載の注入液。
(態様40)
少なくとも2時間の滞留期間中に、限外濾過液の拡散を誘導して、前記腹腔に注入された注入液の量の半分以上の量を該腹腔に導くように選択された浸透圧を有する、態様38記載の注入液。
(態様41)
水溶液100 ml当たり5g~50gの範囲の量のデキストロースを含む、態様38記載の注入液。
(態様42)
水溶液100 ml当たり5g~50gの範囲の量のイコデキストリンを含む、態様38記載の注入液。
(態様43)
前記残存腎機能を有する患者が、15ml /分/1.73m2を超える推定糸球体濾過速度を有する患者である、態様38記載の注入液。
(態様44)
過剰なナトリウムを除去することにより、排尿を促進して血清ナトリウム濃度を回復させることによって体液過剰を軽減するように製剤化される、態様38記載の注入液。
(態様45)
抗菌特性、抗真菌特性、又は前記注入液のpHを調整するための緩衝物質をさらに含む、態様38記載の注入液。
(態様46)
重力による供給、体外ポンプ、又は加圧容器を介してリザーバから前記腹腔に注入されるように製剤化される、態様38記載の注入液。
(態様47)
植え込みポンプを使用して、前記患者の腹腔から膀胱にポンプ輸送されるように製剤化される、態様38記載の注入液。