(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】腔内適用による結直腸がんの細菌プロモーターを排除するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/665 20060101AFI20240930BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240930BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61K31/665
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/16
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/12
A61P35/00
A61P35/04
A61P31/04
A61P31/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020539225
(86)(22)【出願日】2019-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019050798
(87)【国際公開番号】W WO2019141622
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】516235554
【氏名又は名称】レポネックス・ファーマシューティカルズ・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラース・オットー・ウッテンタル
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ビョルン
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/196605(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107092(US,A1)
【文献】Jpn. J. Oral Biol.,1985年,Vol. 27,pp. 782-793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フソバクテリウム・ヌクレアタムを含むフソバクテリアを有する結直腸がん腫瘍のコロニー形成及び前記結直腸がん腫瘍と共に存在する細菌バイオフィルムの低減又は排除における使用のための、活性成分としてホスホマイシンを含む組成物であって、前記組成物が、腸管腔内に局所的に投与される、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、活性成分として1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤を更に含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤が、メトロニダゾール、又はカルバペネムを含むリストから選択される、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記カルバペネムが、エルタペネ、又は、メロペネム、又は、イミペネムから選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記活性成分ホスホマイシンが、ホスホマイシントロメタモールの形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記活性成分ホスホマイシンが、ホスホマイシン二ナトリウムの形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記活性成分が、腸管腔内への送達前に水性媒体に溶解される乾燥粉末として、又は、腸管腔内への送達前に水性媒体に溶解される顆粒として製剤化される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記局所投与が、停留浣腸又は大容量浣腸である、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記局所投与が、腫瘍において、又は細菌バイオフィルムにおいて、結腸鏡を用いて行われる、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記乾燥粉末若しくは顆粒、及び/又は溶解のための水性媒体が、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、及びカプリン酸ナトリウムのリストから選択される1種又は複数の追加の物質を含有する、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、ネオアジュバント放射線療
法又は化学療法中に、投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、ネオアジュバント放射線療法、又はベバシズマブを用いる、細胞毒性薬を用いる、若しくはベバシズマブ及び細胞毒性薬を用いる化学療法中に、投与される、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、結直腸がん腫瘍細胞又は腸壁から離れた任意の結直腸がん腫瘍転移からフソバクテリア若しくはその他の生きている微生物を低減又は排除するように、抗生物質の全身投与と組み合せて投与される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フソバクテリア及びその他の感受性ある微生物による結直腸がん(CRC)腫瘍のコロニー形成又は感染、並びにそのような腫瘍又はそれらの発症に関連付けられる細菌バイオフィルムの存在を、排除し又は低減させる、局所適用のためのホスホマイシンを含む組成物を提供する。本発明の目的は、腫瘍成長と、感染に関連付けられる化学療法又は放射線療法に対する耐性とを、低減させることであり、且つバイオフィルムに帰する発がん促進(pro-carcinogenic)作用を低減させることである。本発明は、腫瘍学及び胃腸病学の分野に、並びに結直腸がんの予防及び治療を含むその他の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
「フソバクテリア」という用語は、グラム陰性嫌気性細菌のフソバクテリウム(Fusobacterium)属のメンバーを指し、その種は、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)も含めて口腔内に見られ、歯周病に関与する。フソバクテリアのゲノム配列は、CRC腫瘍で増強されることがわかっており、F.ヌクレアタムに関係するDNA配列が顕著である(Kosticら 2012年)。過剰なF.ヌクレアタムRNAも、そのような腫瘍で検出された(Castellarinら 2012年)。
【0003】
フソバクテリアは、結直腸の表面炭水化物のD-ガラクトース-β(1-3)-N-アセチル-D-ガラクトサミン(Gal-GalNAc)残基に特異的に結合する、それらのFap2レクチンを用いて結直腸腺がん細胞を、及びある特定のその他の腺がんを、標的とする。腫瘍内に入ると、フソバクテリアは、細胞増殖を強化することができ(Rubinsteinら 2013年; Chenら 2017年; Yangら 2017年)、腫瘍に好ましい炎症環境を創出することができ(Kosticら 2013年)、がん細胞を、ナチュラルキラー細胞及び腫瘍浸潤T細胞によって死滅から保護することができる。F.ヌクレアタムは、化学療法に対するCRCの耐性も促進させ(Yuら 2017年)、類似の細胞メカニズムが関与することにより放射線療法に対する耐性も促進させる。CRCにおける高いフソバクテリア存在量は、不十分な疾患の転帰に相関する(Flanaganら 2014年)。同時に、全身投与された広域抗生物質の副作用が回避されるように、フソバクテリアを特異的に標的とする抗菌剤が求められている。
【0004】
F.ヌクレアタム等のフソバクテリアは、CRC腫瘍に関連した、特に上行結腸の腫瘍に関連した、細菌バイオフィルムにも存在する。これらのバイオフィルムでは、大腸菌(Escherichia coli)等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)と一緒に、バクテロイデス(Bacteroides)及びプレボテラ(Prevotella)属の細菌がしばしば最も顕著であるが、クロストリジウム属種(Clostridium spp.)、放線菌、及び様々な推定的に保護性の乳酸桿菌を含む桿菌も、フソバクテリアに加えて見出すことができる。CRC腫瘍に関連したバイオフィルムは、特徴的に厚く連続しており、より深い粘液層を侵襲し、結腸上皮細胞に接触して腫瘍上に及び隣接する正常な上皮上に存在する。バイオフィルムの下に在る組織は、腫瘍抑制因子E-カドヘリンの減少又は変化、炎症促進性及び血管新生サイトカインIL-6及び増殖関連Ki-67タンパク質の発現の増強、並びにStat3活性化を示す。このことは、バイオフィルムの発がん促進作用を指摘する(Dejeaら、2016年)。バイオフィルムに存在する細菌がCRCを開始する可能性がある特定の方法の中には、DNAに対する直接的変異原性作用又は宿主DNA修復の妨害がある。これは、毒素原性バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(ETBF)、スーパーオキシド産生エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及びコリバクチン産生大腸菌の場合に言えることである。バイオフィルム細菌の多くは、上述の細菌株及びF.ヌクレアタムに見られるように、CRCにおいて一般に変異し且つ/又は過発現する、Wnt媒介シグナル伝達経路又はその他の特異的炎症促進経路を、強化することができる。マウスモデルで実証された、ETBFによる腫瘍原性Th17応答の促進によって示されるように、バイオフィルムの局所免疫学的効果もある(Chungら 2018年)。CRCの開始を促進させるこれらのメカニズムも、CRCの進行に同様に関与する傾向がある(Drewesら 2016年)。結腸バイオフィルム及びCRC腫瘍、特に上行結腸の腫瘍は、共生関係に入るように見え、それによって各構成要素が、悪循環のその他の部分の形成及び成長を促進させる可能性がある。この中のある因子は、バイオフィルム及び腫瘍の両方に由来する、N1,N12-ジアセチルスペルミンの生成増大である(Johnsonら 2015年)。本発明者らは、いかなる理論にも拘泥するものではないが、ホスホマイシンの局所投与の技術的効果は、悪循環を破壊し、CRC腫瘍サイズを低減させ、化学療法及び放射線療法に対して感受性を回復するのを助け、腫瘍に対する免疫応答を正規化する傾向にし、それと共に再発腫瘍の開始を低減させる、結腸粘膜からの発がん促進性バイオフィルムの除去に起因すると考える。
【発明の概要】
【0005】
したがって本発明は、フソバクテリア感染又は結直腸腫瘍のコロニー形成を標的とし、CRC関連細菌バイオフィルムを、腫瘍及び/又はバイオフィルムが位置付けられている腸の管腔内に医薬組成物を局所投与することによりこれらの状態を治療するための医薬組成物を提供することによって排除しようとするものであり、前記組成物は本質的に下記を含む。
【0006】
フソバクテリアによる結直腸がん腫瘍及びそのような腫瘍に関連した細菌バイオフィルムの感染又はコロニー形成を低減させ又は排除するための活性成分として抗生物質ホスホマイシンを含み、腸管腔内に局所的に投与される、組成物。
【0007】
活性成分として1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤を更に含む、上記項目に従い使用するための組成物。
【0008】
1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤が、メトロニダゾール又はカルバペネム、例えばエルタペネム又はメロペネム又はイミペネムを含む非限定的なリストから選択される、先の項目に従い使用するための組成物。
【0009】
活性成分ホスホマイシンが、ホスホマイシントロメタモール又はホスホマイシン二ナトリウムの形態である、先の項目に従い使用するための組成物。
【0010】
活性成分が、腸管腔内への送達前に水性媒体に溶解される乾燥粉末又は顆粒(granulate)として製剤化される、先の項目に従い使用するための組成物。
【0011】
乾燥粉末又は顆粒、及び/又は溶解のための水性媒体が、腫瘍及びバイオフィルムへの活性成分の浸透を促進させる1種又は複数の追加の物質を含有し、前記追加の物質が、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、及びカプリン酸ナトリウムのリストから選択される、先の項目による組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の下記の詳細な説明において、本発明の範囲及びその実質的な性能の詳細を、以下に示す。
【0013】
本発明の目的は、フソバクテリアを有する結直腸がん腫瘍のコロニー形成又はフソバクテリアの感染を低減させ又は排除する手段を提供すること、並びにこれらの腫瘍に関連した細菌バイオフィルムを排除することである。この目的は、適切な抗生物質の溶液を、腫瘍及び/又はバイオフィルムの部位への溶液の適用を確実にするレベルで、腸管腔に直接局所投与することによって達成される。フソバクテリアによる腫瘍のコロニー形成は、増大する腫瘍成長、並びに内因性抗腫瘍免疫メカニズム及び外因性抗腫瘍療法の両方に対する耐性に、関連付けられる。これらの効果を発揮するメカニズムのいくつかは、解明されてきた。したがって、これらの腫瘍のフソバクテリアのコロニー形成の排除又は劇的な低減は、これらの有害事象を逆転させ、これらの腫瘍を対象とするその他の抗がん療法の効力を増大させることになることが、提示される。これらの腫瘍に関連付けられる細菌バイオフィルムを排除すること(即ち、腫瘍及び正常な結腸上皮の隣接領域を覆うこと)も、これらの効果を発揮させることになり、それと共に、腫瘍再発及び腫瘍成長を促進させ得るバイオフィルイムの発がん促進作用も除去することになる。
【0014】
腸管腔を介した、例えば内視鏡若しくはカテーテルを介した適用による、又は場合によっては停留浣腸(retention enema)としての、抗生物質の局所投与は、腫瘍及びバイオフィルムの管腔表面で非常に高い抗生物質濃度をもたらすことになる。抗生物質は、腫瘍細胞内に浸透することになり、そこでフソバクテリアが位置付けられ、重なった及び隣接するバイオフィルムに入って殺菌濃度に到達するが、それと同時に、血液中にはごく僅かしか吸収されず、したがって抗生物質の任意の全身性服作用が実質的に低減される。
【0015】
腫瘍内のF.ヌクレアタムDNAの定量的ポリメラーゼ連鎖反応分析は、細菌が腫瘍の表面的管腔部分で濃縮されることを実証する(Yamamuraら 2017年)。高濃度の抗生物質を管腔側面から適用することによる抗菌治療は、広域抗生物質の従来の全身投与に関連した副作用を最小限に抑えるのと同時に、細菌負荷の大部分を排除するのに、特に有効であるべきである。同じ考察が、重なっている及び隣接する細菌バイオフィルムの排除に適用される。
【0016】
本発明の組成物の活性成分
本発明による組成物は本質的に、抗生物質ホスホマイシンを、単独で、又はメトロニダゾール及びカルバペネム、例えばエルタペネム、メロペネム、及びイミペネムを含む非限定的リストから選択され得る1種若しくは複数の追加の抗生物質と組み合せて、含む。
【0017】
ホスホマイシン
ホスホマイシンは、フォスフォマイシン又はフォスフォノマイシンの名称で、ストレプトマイセス・フラジアエ(Streptomyces fradiae)株から1969年に単離され特徴付けられた、広域抗生物質の国際一般名である(Hendlinraら 1969年)。その構造は、(-)(IR, 2S)-1,2-エポキシプロピルホスホン酸であることが決定され(Christensenら 1969年)、組織(IUPAC)名は[(2R,3S)-3-メチルオキシラン-2-イル]ホスホン酸であり、式量は138.1Daであった。ホスホマイシンは殺菌性であり、MurAとしても公知の酵素UDP-N-アセチルグルコサミン-3-エノールピルビルトランスフェラーゼを不活性化することによって細菌細胞壁の生合成を阻害する(Brownら 1995年)。この酵素は、ペプチドグリカン生合成に関与する行程を触媒し、ホスホエノールピルベートをUDP-N-アセチルグルコサミンの3'-ヒドロキシル基にライゲーションしてN-アセチルムラミン酸を形成する。ホスホマイシンは、活性部位のシステイン残基をアルキル化することによってMurAを阻害する、ホスホエノールピルベート類似体である。抗生物質は、グリセロリン酸トランスポーターを介して細菌細胞に進入する。
【0018】
この動作メカニズムが与えられることにより、ホスホマイシンは広範な細菌スペクトルを有し、好気性属、例えばスタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ナイセリア属(Neisseria)、エスケリキア属(Escherichia)、プロテウス属(Proteus)(インドール陰性)、セラチア属(Serratia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ヘモフィルス(Haemophilus)、及びビブリオ(Vibrio)に対して活性になり、インドール陽性プロテウス属(Proteus)種、クレブシエラ属(Klebsiella)、及びエンテロバクター属(Enterobacter)種に対してはそれほど活性ではなくなる。本発明に特に関係するものは、嫌気性のフソバクテリウム属(Fusobacterium)、並びに嫌気性のペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)(ペプトニフィルス属(Peptoniphilus)、フィネゴルジア属(Finegoldia)、及びアナエロコッカス属(Anaerococcus))に対して活性である。しかし、細菌の嫌気性バクテリオイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)群に対しては不活性である。
【0019】
コミュニティ内では、ホスホマイシンに対する細菌耐性の蔓延が低く、ホスホマイシンを導入した後の耐性細菌の蔓延に関する研究は、耐性生物の蔓延の増大が全くないかほんの僅かであることを示している。しかし、抗生物質への長期曝露によって、細菌は、グリセロリン酸トランスポーター経路に欠ける変異体の選択により耐性を生み出すことが可能になる。耐性の代替のメカニズムは、誘発性ヘキソースリン酸トランスポーターの損失、MurAでのCys-Asp変異、又はホスホマイシン不活性化酵素fosA及びfosB(リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の染色体fosXに加えて)をコードするプラスミドの獲得を含む。しかし変異株は、低減された病原性も示す(Karageorgopoulosら 2012年)。このことは、細菌耐性の出現が、in vitroでの長期曝露で見られるがin vivoではかなり少ない頻度である理由を、説明することができる。経口的に又は静脈内から投与されたホスホマイシンの制御された臨床試験における耐性細菌株の出現は、全体として3.0%であり、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)に関しては最大で15%であった。一般に、ホスホマイシンは、多剤耐性生物に対する治療的装備に加えられる価値あるものであることがわかる。
【0020】
ホスホマイシンは、食作用を好み且つ免疫調節物質として働く能力を有することが示されてきた。細胞外液の場合の最大2倍であるがそれらの細胞機能に影響を及ぼさない濃度に達するように、それでもスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に対して殺菌効果をもたらすように、多形核白血球によって蓄積される(Hogerら 1985年)。
【0021】
腸粘膜細胞へのその取込みに関し、Martinezら(2013年)は、15分で30μg/mLに近い細胞内濃度に到達するように、580μg/mLでホスホマイシンカルシウムに曝露されたIPEC-J2細胞へのホスホマイシンの急速取込みを実証した。ホスホマイシンのそのような高濃度には、標準的な全身投与経路で到達するのが難しい。したがって、非常に高い濃度のホスホマイシンが、結直腸がん細胞でフソバクテリアを死滅させるのに必要である。本発明によれば、そのような濃度には、局所投与されたホスホマイシン溶液で到達する。
【0022】
ホスホマイシンは、組織障壁を経て且つ細菌バイオフィルム内に、容易に浸透することが公知であり(Reffert & Smith 2014年)、したがってホスホマイシンの高い殺菌濃度は、結直腸腫瘍を覆う及び隣接する細菌バイオイフィルムへのホスホマイシン溶液の直接適用から得られることになる。ホスホマイシンは、バイオフィルム形成に関わるものも含めた様々な細菌種の上皮細胞への接着を阻害する(Gobernado 2003年)。ホスホマイシンは、バイオフィルムを破壊してその他の抗生物質の透過性を高めることもできる。
【0023】
ホスホマイシンの重要な副作用は、経口投与されたホスホマイシン二ナトリウムからの胃刺激であり、一過性の発疹(症例の0.3%)及び好酸球増加(0.2%)の形態のアレルギーの証拠であり、並びに全身投与されたホスホマイシンからの一時的に上昇する肝酵素(症例の0.3%)である(Gobernado 2003年)。しかし一般に、ホスホマイシンは著しく低い毒性を示し、したがって高用量のホスホマイシン二ナトリウムが全身に与えられた場合、用量規制因子であるのはナトリウム負荷である。
【0024】
ホスホマイシンは、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、マクロライド、及びリンコサミド型の多数の抗生物質と組み合せて使用される場合、記述された感受性ある属からの生物の多数の株に対する殺菌効果においてかなりの相乗作用を示す。初期の研究は、様々な抗生物質の組合せに関して試験をした株の約70~100%に対して相乗効果を示し、その後のより広範な研究は、相乗率36~74%を示した。残りの株は単なる相加効果を示し、阻害効果は、個々の細菌株での1つ又は2つの個々の抗生物質の組合せで見られるだけであった(Gobernado 2003年)。ホスホマイシンが、多くの個々の抗生物質と相乗作用を示し、且つ実際に、アミノグリコシドの腎毒性及び聴器毒性を含めた多くのその他の抗生物質の毒性を止めるという事実は、より長い治療中に強力な殺菌作用をもたらし且つホスホマイシン耐性の任意の発症を補償するために、その他の抗生物質と組み合せたホスホマイシンの使用を優先させる。
【0025】
本発明の範囲内にあるホスホマイシンの主要な形態は、下記の通りである:
i) ホスホマイシン二ナトリウム、式量182.0Da、5%溶液のpH9.0~10.5。この塩は、吸湿性であり、水に高度に溶解し、高いバイオアベイラビリティを示すが、中和されない場合は局所的に刺激を与える。
ii) ホスホマイシンカルシウム一水和物、式量194.1Da、0.4%溶液のpH8.1~9.6。この塩は、水にやや溶け難く、吸湿性ではなく、経口治療のために使用した場合には胃にそれほど刺激を与えず、全身循環への進入に関するバイオアベイラビリティは12%程度に低くなる可能性がある(Bergan 1990年)。
iii) ホスホマイシントロメタモール、式量259.2Da、5%溶液のpH3.5~5.5。この塩は、水に高度に溶解し、経口的に与えられた場合に十分耐性があり、そのバイオアベイラビリティ約40%を示す。
【0026】
「ホスホマイシン」という名称が本明細書で使用される場合、上記主要な形態により具体化されたホスホマイシンの無機又は有機塩を指し、ホスホマイシンの用量は、塩に存在するホスホマイシンの遊離酸形態の量を指す。
【0027】
本発明の組成物に関するホスホマイシンの好ましい形は、封止されたサシェ内に室温で保存されたときに容易に溶解する顆粒状として長期安定性を示すホスホマイシントロメタモールである。しかし、ホスホマイシン二ナトリウムも使用することができ、その顕著な吸湿性により、封止されたバイアル内での保存を必要する。
【0028】
本発明による組成物は、単回用量が400ミリグラムから4グラムの範囲にあるように、ホスホマイシンを含んでいてもよい。
【0029】
メトロニダゾール
B.フラギリス群及びフソバクテリウム属種の細菌を含むいくつかの嫌気性細菌に対して活性なこの半合成抗生物質は、従来技術で周知である。腹部手術後の創傷感染に対する予防のために、全身性ホスホマイシンと組み合せて全身に使用されてきた。メトロニダゾールの細胞内浸透は、急速受動拡散によってなされるようであり、したがって細胞内レベルは、15分以内で細胞外レベルと平衡に近付く(Handら 1987年)。本発明による組成物は、単回用量が100ミリグラムから1グラムの範囲にあるようにメトロニダゾールを含んでいてもよい。
【0030】
カルバペネム
カルバペネムは、抗生物質のベータ-ラクタムのクラスのメンバーであり、ペニシリン及びセファロスポリンのように、ホスホマイシンの場合とは異なるメカニズムにより細菌細胞壁合成を阻害することによって殺菌作用を発揮する。したがって、カルバペネムを含むベータ-ラクタム抗生物質は、両方のタイプの抗生物質がそれに対して活性であるほとんどの細菌種に対して、ホスホマイシンとの相乗殺菌作用を特徴的に示す。しかしカルバペネムは、ほとんどのペニシリン及びセファロスポリンよりも広範なスペクトルの活性を示し、B.フラギリス群、プレボテラ属種、及びフソバクテリウム属種等の嫌気性細菌に対して活性である。したがって、ホスホマイシンに非常に鈍感な嫌気性細菌に対して殺菌作用を発揮させるため、メトロニダゾールの代わりに使用される。カルバペネムの細胞内浸透に関し、マウスマクロファージ細胞系におけるエルタペネムの殺菌細胞内濃度は、15μg/mL程度に低い細胞外濃度で実現され(Tangら 2012年)、ヒトマクロファージにおけるメロペネムの細胞濃度の細胞外濃度に対する比は、0.125から1μg/mLの範囲の細胞外濃度で常に高かった(3~12の範囲)(Cuffiniら 1993年)。本発明による組成物は、エルタペネム、又はメロペネム、又はイミペネムを、単回用量が100ミリグラムから1グラムの範囲にあるように含んでいてもよい。
【0031】
医療適応
記述される組成物を使用するための主な適応症は、結腸若しくは直腸粘膜から生ずる1つ若しくは複数の結直腸腫瘍の存在、及び/又は腺がん、腺腫、若しくはポリープ、若しくは粘膜上皮異形成に関連があるか否かに関わらず結腸若しくは直腸粘膜を覆う細菌バイオフィルムの存在である。適応症は、典型的には結腸鏡検査に関連して診断されることになる。記述される組成物での治療は、典型的には、同じセッション中に内視鏡を通して、又は粘膜病態が観察される腸セクションでの組成物の溶液の管腔内設置による後半の処置で、施すことができる。初期治療に続き、治療する医師の裁量で更なる治療を行なうことができる。
【0032】
治療適応は、発がん促進性バイオフィルム又はドライバー生物の尿、糞便、血液、又は組織マーカーを検出して、提供されてもよい。現時点で、そのようなマーカーは、コリバクチン産生大腸菌、エンテロトキシン産生B.フラギリス、F.ヌクレアタム、及びポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、並びにその他の微生物、特に口内微生物叢からの微生物の存在とすることができる。多くのマーカーは調査中であるが、CRC又は結腸バイオフィルムのいずれかを独立して診断するよう十分に非常に高い診断感度又は特異性についてはまだ示されておらず、したがって現在のところ、結腸鏡検査に向けて対象を選択するスクリーニング機能を有する。将来性ある診断感度及び特異性を持つマーカーの中には、上述のようにCRC関連の細菌バイオフィルムによって増大した量で生成される尿N1,N12-ジアセチルスペルミンがある。
【0033】
腫瘍が腸壁に浸透し又はリンパ節若しくは離れた組織に転移したことがわかっており又は疑われる場合、生きている微生物は結直腸がんの転移に見られるので、治療する医師は、局所抗生物質治療を全身抗生物質治療で補うことを決めてもよい。
【0034】
直腸及びS状結腸に存在する腫瘍及びバイオフィルムは、それらの場所に起因して、停留浣腸として構成された組成物による治療の機会を提供する。ある特定の状況では、組成物を含有する、より大きい容量の浣腸剤を使用して、直腸から更に離れた結腸の領域を治療することができる。
【0035】
記述される組成物の使用は、ネオアジュバント放射線療法又は化学療法中に、例えばベバシズマブ及び/又は細胞毒性薬による療法中に、示されてもよい。
【0036】
製剤
好ましい実施形態では、組成物は、供給された薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体又は希釈剤に溶解させる、乾燥顆粒として供給されたホスホマイシントロメタモールを含む。担体は、単なる水であってもよく、又は、ホスホマイシン溶液の中性pH及び等張性を確実にするための、限定するものではないが緩衝剤及び/又は等張化剤を含む薬学的に許容される補助物質又はアジュバントを含有する水でもよい。別の実施形態では、組成物は、ホスホマイシン二ナトリウム、例えば、キャップ付きガラスバイアルに入れた凍結乾燥粉末として供給される、静脈内注射用に製剤化されたホスホマイシン二ナトリウムを含む。これは薬学的に許容される水性担体又は希釈剤に、同様に溶解する。
【0037】
更なる実施形態では、組成物は、ホスホマイシントロメタモール及び追加の抗生物質、例えばメトロニダゾール、又はカルバペネム、例えばエルタペネム、メロペネム、又はイミペネムを含み、両方の抗生物質は、水性担体に溶解される乾燥粉末又は顆粒として供給されるものである。
【0038】
本発明による製剤から得られる溶液のpH値は、4から8の間、好ましくは6.5から7.5の間、最も好ましくは7から7.5の間のpHを有していてもよい。抗生物質粉末又は顆粒、及び供給される水性希釈剤は、個々に、合わせた抗生物質溶液の中性pH及び等張性を確実にするための緩衝剤及び/又は等張化剤を含有する。それらは、結腸粘膜への制御された送達及び接着に最適な粘度の溶液を実現するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の組成物の活性成分を結合しない1種又は複数の認可された生体適合性増粘剤、又は当技術分野で公知の大量のその他の生体適合性増粘剤を含有していてもよい。
【0039】
水性希釈剤は、腫瘍による活性成分の取込みを促進させるため、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のアジュバントを2質量%まで、及び/又はグリコフロールを1質量%まで含んでいてもよい。類似の機能を発揮するその他のアジュバントを、DMSO若しくはグリコフロールと一緒に又はそれらの代わりに使用してもよく;これらはポリオキシエチレンラウリルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、及びカプリン酸ナトリウムを含むリストから選択されてもよい。これらのアジュバントは、1質量%よりも少ない濃度で存在することになる。
【0040】
一部の実施形態では、本発明による組成物の乾燥調製物は、水性希釈剤中に投与直前に溶解させるため、例えば単回用量単位で事前に包装されてもよく、単回用量バイアルに事前に包装された状態でも供給される。
【0041】
投与
本発明の組成物は、粘膜CRC腫瘍、腺腫の領域、又は粘膜異形成の領域、又は結腸若しくは直腸に位置付けられた細菌バイオフィルムの領域で、腸の管腔への局所投与のために、当技術分野で従来から使用されてきた投与方法によって適用されてもよい。
【0042】
結腸及び直腸から、電解質と共に又は無しでマクロゴール3350又は4000等の適切な濃度のポリエチレングリコールを含有する大容量の液体を飲む又は経口投与する等の結腸鏡検査又は手術のための腸管前処置(bowel preparation)の標準レジメンを用いて糞便物質が清浄化された場合、腫瘍又はバイオフィルムは、直腸又はS状結腸の下部に位置付けられ、組成物の溶液は、停留浣腸として、腫瘍のレベルで腸管腔に与えられる。ある特定の状況では、組成物は、結腸により近い部分の病態の治療のために、より大きい容量の浣腸剤で与えられてもよい。
【0043】
結腸により近い部分に位置付けられた腫瘍及びバイオフィルムの場合、組成物の溶液は、結腸鏡検査中の病態のレベルで投与することができる。
【0044】
例外的な状況において、腸管前処置が実施されなかったときに直腸又はS状腫瘍が治療される場合、組成物の溶液の投与は、最初に下剤を投与することによって腸を空にし、次いで結腸浣腸剤を与えて腸を清浄化した後に、行なうことができる;
【0045】
直腸及び下部S状結腸における腫瘍では、停留浣腸剤の容量が50mLから100mLである。患者は、5分間、それぞれの側で横向き、前向き及び後ろ向きに横たわり、浣腸剤を少なくとも15分間、可能であれば保持するように、指示される。腫瘍が、結腸から更に近い部分に位置付けられた場合、より大きい容量の浣腸剤を与えることができ、又は組成物の溶液を、上述のように結腸鏡検査中に腫瘍領域に注入することができる。
【0046】
投与量
本発明は、個々の症例に関する適切な投与量の、臨床医の選択の規範となるべきであるが、組成物は、本発明の組成物中のホスホマイシンの単位用量が、400ミリグラムから4mgの範囲にあるように製剤化されることが示唆される。これらの組成物中の追加の抗生物質として使用されたときの、メトロニダゾール又はカルバペネムの単位用量は、100ミリグラムから1グラムの範囲にあってもよい。これらの用量は、例えば大容量の浣腸剤が与えられることになる場合、医師の裁量で超えてもよい。
【0047】
典型的な単回用量は、例として、水性希釈剤50mLに溶解したホスホマイシン1グラムからなり、即ち、約2質量/容量%の溶液を構成する。メトロニダゾール又はカルバペネムが追加の抗生物質として必要とされる場合、例えば同じ希釈剤中に250ミリグラムとして添加されてもよく、即ち、約0.5質量/容量%の溶液を構成する。
【0048】
上記単位用量は、投与量及び容量を比例して増加させてもよく、同じ濃度の、ホスホマイシン及び且つ存在する場合には上述の追加の抗生物質を、4グラムのホスホマイシン及び存在する場合には前記追加の抗生物質を1グラムを含有する希釈剤の200mLの最大容量まで、維持する。
【0049】
より大きい容量の溶液が単回用量に必要とされる場合、上述の単回用量を、等張性生理食塩液で希釈することによって調製することができ、このとき、投与されるホスホマイシンの量を4グラム以上に増加させず、又は投与される追加の抗生物質の量を、1グラム以上に増加させない。或いは、抗生物質の投与量は、医師の裁量で、溶液が等張性であることを確実にしなから、任意の1日で、1リットル中にホスホマイシンを最大20gまで増加させることができる。
【0050】
用量は、好ましくは1日に1回投与することができ、治療する医師が、必要であり実行可能であると考える場合には、患者が2回の別々の機会に1日当たり2回の典型的な単回用量を受けるように、1日に2回投与することができ、又は患者が3回の別々の機会に1日当たり3回の典型的な単回用量を受けるように、更に1日に3回投与することができ、例外的に、患者が4回の別々の機会に1日当たり4回の典型的な単回用量を受けるように、1日に4回投与することができ、1日に5回又は1日に6回投与することができる。
【0051】
上記投与レジメンの持続期間は、典型的には短くなり、1日から2日の範囲であるが、治療する医師が、所望の結果を実現するのに必要な治療の延長を考える場合には、投薬レジメンを14日まで延ばすことができ、例えば3日から5日の範囲、例えば4日、又は5から7日の範囲、例えば6日、又は7日から14日の範囲にすることができる。治療を、1又は2日間行い、その後に休止し、次いで1週間又は2週間後に繰り返すこともできる。
【0052】
本発明による組成物は、単回用量が、20mLから200mLの範囲の水性希釈剤の容量中に溶解させた通常は400ミリグラムから4グラムの範囲にあるように、ホスホマイシンを含んでいてもよい。
【0053】
好ましくは、単回用量は、溶液中に全活性成分を約2%から2.5質量/容量%含有していてもよい。好ましくは、単回用量は、等張性溶液中に存在する。
【0054】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、1回又は数回、例えば2回、3回、又は4回投与するためのものであり、その後、治療を休止し、主治医が必要とするときにのみ再開する。
【0055】
治療方法
本発明は、腸内への本発明の組成物の局所投与を使用して、フソバクテリアの感染又はフソバクテリアを有する結直腸がんコロニー形成を低減し又は排除する、並びに結腸細菌バイオフィルムを排除する、方法を提供する。
【0056】
実施形態
1. フソバクテリアの感染、又は、フソバクテリアを有する結直腸がん腫瘍のコロニー形成、及び、そのような感染に関連した細菌バイオフィルムを、低減させ又は排除するための活性成分として、抗生物質ホスホマイシンを含む組成物であって、腸管腔内に局所的に投与される組成物。
【0057】
2. がん細胞のフソバクテリア感染又はコロニー形成によって引き起こされる哺乳類又はヒトにおける結直腸がんの増殖又は転移を、低減させ又は阻害するための活性成分として、ホスホマイシンを含む組成物であって、腸管腔内に局所的に投与される組成物。
【0058】
3. 哺乳類又はヒトにおける結直腸がん細胞を化学療法又は放射線療法に感作させるための活性成分として、ホスホマイシンを含む組成物であって、腸管腔内に局所的に投与される組成物。
【0059】
4. 実施形態1から3による使用のための組成物であって、1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤を活性成分として更に含む、使用のための組成物。
【0060】
5. 1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤が、メトロニダゾール、又はカルバペネム、例えばエルタペネム若しくはメロペネム若しくはイミペネムを含むリストから選択される、実施形態4による使用のための組成物。
【0061】
6. 活性成分ホスホマイシンが、ホスホマイシントロメタモール又はホスホマイシン二ナトリウムの形態である、実施形態4又は5による使用のための組成物。
【0062】
7. 活性成分が、腸管腔内に送達される前に、水性媒体に溶解される乾燥粉末又は顆粒として製剤化される、実施形態4から6による使用のための組成物。
【0063】
8. 前記局所投与が、停留浣腸又は大容量浣腸である、実施形態7による使用のための組成物。
【0064】
9. 前記局所投与が、結腸鏡を介した腫瘍又はバイオフィルムのレベルである、実施形態7又は8による使用のための組成物。
【0065】
10. 乾燥粉末若しくは顆粒、及び/又は溶解のための水性媒体が、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、及びカプリン酸ナトリウムのリストから選択される1種又は複数の物質を含有する、実施形態7による使用のための組成物。
【0066】
11. 組成物が、ネオアジュバント放射線療法又は化学療法中に、例えばベバシズマブ及び/又は細胞毒性薬と共に投与される、先の実施形態のいずれかによる使用のための組成物。
【0067】
12. 組成物が、腫瘍細胞又は腸壁から離れた転移からフソバクテリア又はその他の生きている微生物を低減させ又は排除するように、抗生物質の全身投与と組み合せて投与される、先の実施形態のいずれか1つによる使用のための組成物。
【0068】
13. 結直腸がんの患者におけるフソバクテリウム・ヌクレアタムを含むフソバクテリアの感染又はフソバクテリウム・ヌクレアタムを含むフソバクテリアを有する結直腸がん腫瘍のコロニー形成、及びそのような腫瘍に関連した細菌バイオフィルムを、低減させ又は排除するための方法であって、ホスホマイシンを活性成分として含む組成物を、腸管腔内に局所的に投与することを含む方法。
【0069】
14. がん細胞のフソバクテリウム感染又はコロニー形成によって引き起こされた哺乳類又はヒトにおける結直腸がんの増殖又は転移を阻害する方法であって、ホスホマイシンを含む組成物を、腸管腔内に局所的に投与することを含む方法。
【0070】
15. 哺乳類又はヒトにおける結直腸がん細胞を、化学療法又は放射線療法に感作させる方法であって、ホスホマイシンを含む組成物を、腸管腔内に局所的に投与することを含む方法。
【0071】
16. 組成物が、1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤を活性成分として更に含む、実施形態13から15のいずれかによる方法。
【0072】
17. 1種又は複数の追加の抗菌剤又は抗生物質剤が、メトロニダゾール、又はカルバペネム、例えばエルタペネム若しくはメロペネム若しくはイミペネムを含むリストから選択される、実施形態16による方法。
【0073】
18. 活性成分ホスホマイシンが、ホスホマイシントロメタモール又はホスホマイシン二ナトリウムの形態である、実施形態16又は17による方法。
【0074】
19. 活性成分が、腸管腔内に送達される前に、水性媒体に溶解される乾燥粉末又は顆粒として製剤化される、実施形態13から18による方法。
【0075】
20. 前記局所投与が、停留浣腸又は大容量浣腸としてである、実施形態13から19による方法。
【0076】
21. 前記局所投与が、結腸鏡を介した腫瘍又はバイオフィルムのレベルである、実施形態20による方法。
【0077】
22. 乾燥粉末若しくは顆粒、及び/又は溶解のための水性媒体が、ジメチルスルホキシド、グリコフロール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、タウロコール酸ナトリウム、及びカプリン酸ナトリウムのリストから選択される1種又は複数の追加の物質を含有する、実施形態21による方法。
【0078】
23. 組成物が、ネオアジュバント放射線療法又は化学療法と同時に、例えばベバシズマブ及び/又は細胞毒性薬と共に投与される、先の実施形態のいずれかによる方法。
【0079】
24. 組成物が、腫瘍細胞
又は腸壁から離れた転移からフソバクテリア又はその他の生きている微生
物を低減させ又は排除するように、抗生物質の全身投与と組み合せて投与される、先の実施形態のいずれかによる方法。
[参考文献]