(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを有する医薬組成物およびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/22 20060101AFI20240930BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240930BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240930BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61K31/22
A61K47/44
A61K47/14
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/02
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2020549612
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022478
(87)【国際公開番号】W WO2019178482
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502398171
【氏名又は名称】セレシン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ボイビン,タリン
(72)【発明者】
【氏名】デュボース,デボン・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,サミュエル・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ホステトラー,クリスティ・リン
(72)【発明者】
【氏名】ライオン,デービッド・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】セイザー,クレイグ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,マシュー・ジェイ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-504425(JP,A)
【文献】特表2003-531857(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013617(WO,A1)
【文献】特表2002-544155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00 ~33/44
47/00 ~47/69
39/395
A61P 1/00 ~43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全体の約30重量%~約50重量%のカプリル酸トリグリセリド、ならびに、組成物全体の約20重量%~約70重量%の量で存在する少なくとも1種類のマトリックス形成剤を含む、分散粒子からなる医薬組成物であって、
ここにおいて、当該少なくとも1種類のマトリックス形成剤は、カルナウバロウ、または、カルナウバロウとジベヘン酸グリセリルの組み合わせ、である、
ここにおいて、当該粒子が、約50μm~約350μmの平均直径を有する、
前記医薬組成物。
【請求項2】
マトリックス形成剤が、組成物全体の約40重量%~約70重量%の量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
カプリル酸トリグリセリドが、組成物全体の約40重量%~約50重量%の量で存在し、マトリックス形成剤が、組成物全体の約50重量%~約60重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
溶解促進剤をさらに含む、請求項1-3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
溶解促進剤が、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリエチレングリコール共重合体、デンプン、米デンプン、レシチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシルグリセリド、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
溶解促進剤が、組成物全体の約1重量%~約20重量%の量で存在する、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
溶解促進剤が、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体である、請求項4-6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
流動助剤をさらに含む、請求項1-7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
流動助剤が、アモルファスシリカゲル、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、規則性メソポーラスシリカ、微粉化タルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
流動助剤が、組成物全体の0.1%重量~5重量%の量で存在する、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
流動助剤が微粉化タルクである、請求項8-10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
硬化剤をさらに含む、請求項1-11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
硬化剤が、
カンデリラロウである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
粒子が、約100μm~約300μmの平均直径を有する、
請求項1-13のいずれか一項2に記載の医薬組成物。
【請求項15】
粒子が、10%未満の流動性のCarr指数を示す、
請求項1-14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも40%かつ60%以下が最初の60分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも60%かつ80%以下が120分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも80%が最初の240分内に組成物から放出される、
請求項1-15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも90%が最初の360分内に組成物から放出される、
請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
カプリル酸トリグリセリドの純度が少なくとも95%である、
請求項1-17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法に使用される、
請求項1-18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
認知機能低下を伴う疾患または障害が、アルツハイマー病および加齢に伴う記憶障害から選択される、
請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
方法が、患者が、ApoE4遺伝子型を欠くかどうかを決定するステップをさらに含む、
請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
約0.05g/kg/日~約10g/kg/日の用量で投与される、
請求項19-21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年3月15日に出願された「高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを有する医薬組成物およびそれに関連する方法(PHARMACEUTICAL COMPOSITIONS HAVING HIGH DRUG LOADINGS OF MEDIUM CHAIN TRIGLYCERIDES AND METHODS RELATED THERETO)」と題する米国仮特許出願第62/643,479号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
[0002]本開示は、高い薬物充填量の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む医薬組成物、ならびにそのような組成物の作成方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、5~12個の炭素の鎖長を有する脂肪酸からなる。MCTは広く研究されており、公知の栄養用途および医薬用途を有する。融点を有するMCTは、室温で液体となる。さらに、MCTは比較的小さく、生理学的pHでイオン化可能であり、そのため、水溶液に概ね溶解する。
【0004】
[0004]医薬組成物として使用することを意図するとき、MCTなどの室温で液体として存在する有効成分の組成物を、固形剤形として調製することがより望ましい場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]そのため、特に、医薬用途として十分に高い(本明細書では薬物充填量と呼ばれる)賦形剤レベルに対する有効成分レベルでの、MCTの固形剤形組成物が当技術分野には必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]1つの側面において、本開示は、高い薬物充填量のMCT、例えば、カプリル酸トリグリセリド、および少なくとも1種類のマトリックス形成剤を含む医薬組成物に関する。特定の態様において、マトリックス形成剤は、グリセリド、天然ワックス、またはそれらの組み合わせであってもよい。組成物は、高い薬物充填量のMCTおよびマトリックス形成剤を含む分散粒子を形成してもよい。特定の態様において、粒子は、例えば約50μm~約350μmの平均直径を有する。他の態様において、粒子は、10%未満の流動性のCarr指数を示す。組成物は、溶解促進剤、流動助剤、硬化剤、およびそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0007】
[0007]特定の側面において、MCTは、組成物全体の少なくとも約30重量%、約30重量%~約60重量%等の量で存在するカプリル酸トリグリセリドである。特定の態様において、マトリックス形成剤は、グリセリド、天然ワックス、またはそれらの組み合わせであってもよい。特定の態様において、マトリックス形成剤は、組成物全体の約20重量%~約70重量%、約40重量%~約70重量%等の量で存在する。
【0008】
[0008]他の側面において、グリセリドは、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、および三酢酸グリセリル、ならびにそれらの組み合わせから選択されてもよい。天然ワックスには、例えば、水添ヒマシ油(HCO)、カルナウバロウ、米ぬかワックス等を含む、標準的な天然ワックスおよび硬化油が挙げられ得る。
【0009】
[0009]特定の側面において、溶解促進剤は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリエチレングリコール共重合体、デンプン、米デンプン、レシチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシルグリセリド、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
[0010]さらに他の側面において、流動助剤は、アモルファスシリカゲル(amphorous silica gel)、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、規則性メソポーラスシリカ、微粉化タルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
[0011]さらに他の側面において、硬化剤は、カルナウバロウ、カンデリラロウ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
[0012]さらに他の側面において、医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論(USP-II Sink dissolution post acid exposure 方法ology)を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも40%かつ60%以下が最初の60分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも60%かつ80%以下が120分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも80%が最初の240分内に組成物から放出される。他の態様において、医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも90%が最初の360分内に組成物から放出される。
【0012】
[0013]さらに他の側面において、本開示は、認知機能低下を伴う疾患または障害の治療を必要とする対象における認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法であって、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む方法に関する。特定の態様において、認知機能低下を伴う疾患または障害は、アルツハイマー病および加齢に伴う記憶障害から選択される。
【0013】
[0014]複数の態様が開示されているが、本開示のさらに他の態様が、本開示の具体的な態様を示し、および記載する、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。実現されるとき、本発明は、いずれも本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な側面において変更形態が可能である。したがって、詳細な説明は、本質的に例示的であり、制限するものではないと見なされるべきである。
【0014】
[0015]以下の例は例示的な目的のみで提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】[0016]
図1A~Dは、本開示の態様による例示的な医薬製剤LMP-1、LMP-2、LMP-3、およびLMP-4の粒径および形態を例示する図である。
図1Aは、倍率6×のLMP-1(50/50カプリル酸トリグリセリド/微結晶ワックス)の粒子の画像を示す。
【
図1B】
図1A~Dは、本開示の態様による例示的な医薬製剤LMP-1、LMP-2、LMP-3、およびLMP-4の粒径および形態を例示する図である。
図1Bは、倍率5×のLMP-2(50/50カプリル酸トリグリセリド/ジベヘン酸グリセリル)の粒子の画像を示す。
【
図1C】
図1A~Dは、本開示の態様による例示的な医薬製剤LMP-1、LMP-2、LMP-3、およびLMP-4の粒径および形態を例示する図である。
図1Cは、倍率5×のLMP-3(50/50カプリル酸トリグリセリド/コリフォール(Kolliphor)CSL)の粒子の画像を示す。
【
図1D】
図1A~Dは、本開示の態様による例示的な医薬製剤LMP-1、LMP-2、LMP-3、およびLMP-4の粒径および形態を例示する図である。
図1Dは、倍率5×のLMP-4(50/50カプリル酸トリグリセリド/ジナサン(Dynasan)118)の粒子の画像を示す。
【
図2】[0017]
図2A~Dは、本開示の態様による例示的な製剤LMP-1(
図2A)、LMP-2(
図2B)、LMP-3(
図2C)、およびLMP-4(
図2D)の倍率50×の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を例示する図である。
【
図3】[0018]
図3A~Dは、本開示の態様による例示的な製剤LMP-1(
図3A)、LMP-2(
図3B)、LMP-3(
図3C)、およびLMP-4(
図3D)の倍率200×のSEM画像を例示する図である。
【
図4】[0019]
図4A~Dは、本開示の態様による例示的な製剤LMP-1(
図4A)、LMP-2(
図4B)、LMP-3(
図4C)、およびLMP-4(
図4D)の倍率200×のSEM画像を例示する図である。
【
図5A】[0020]
図5A~Cは、本開示の側面によるカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の示差走査熱量測定(DSC)熱流量を例示する図である。
図5Aは、傾斜率の関数としてのカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の冷却DSC熱流量を示す。
【
図5B】
図5A~Cは、本開示の側面によるカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の示差走査熱量測定(DSC)熱流量を例示する図である。
図5Bは、傾斜率の関数としてのカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の加熱DSC熱流量を表し、融解前の発熱を示す。
【
図5C】
図5A~Cは、本開示の側面によるカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の示差走査熱量測定(DSC)熱流量を例示する図である。
図5Cは、傾斜率の関数としてのカプリル酸トリグリセリドの加熱DSC熱流量を表し、融解の比較を示す。
【
図6】[0021]本開示の態様による例示的な製剤LMP-1、LMP-2、およびLMP-3の融点プロファイルを例示する図である。
【
図7】[0022]
図7A~Cは、本開示の態様による例示的な製剤LMP-1、LMP-2、およびLMP-3対賦形剤(微結晶ワックス、コンプリトール(Compritol)888、またはコリフォールCSL)およびカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)のクロマトグラムを例示する図である。
【
図8】[0023]約37℃、約25℃、および約5℃での0.25%SLS溶液中の例示的な製剤LMP-1、LMP-2、およびLMP-3の溶解目視結果を示す図である。
図8はまた、約37℃、約25℃、および約5℃での0.5%SLS溶液中の本開示の側面による例示的な製剤LMP-1の溶解目視結果も示す。
【
図9】[0024]水溶液、本開示の側面による0.25%SLS溶液、および0.25%SLS溶液中のカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の溶解目視結果を示す図である。
【
図10】[0025]10A~Dは、本開示の側面による倍率50×の例示的な製剤LMP-5(
図10A)、LMP-7(
図10B)、LMP-9(
図10C)、およびLMP-11(
図10D)のSEM画像を例示する図である。
【
図12】[0027]本開示の側面による50%充填LMP-2、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11の例示的な製剤の加熱-冷却DSCスキャンを例示する図である。
【
図13】[0028]本開示の側面による50%充填LMP-2、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11の例示的な製剤の冷却-加熱DSCスキャンを例示する図である。
【
図14】[0029]
図14A~Hは、本開示の側面による賦形剤をオーバーレイした例示的な製剤LMP-2、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11の冷却-加熱および加熱-冷却DSCスキャンを例示する図である。
【
図16】[0031]本開示の側面による例示的な製剤LMP-5、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11のシンク溶解速度を例示する図である。
【
図17A】[0032]
図17A~Cは、本開示の側面による、5℃、25℃、および40℃で1カ月後の例示的な製剤LMP-5(
図17A)およびLMP-11(
図17B)、ならびに本明細書に記載されている1カ月間保存プラス周囲条件で1週間保存後のLMP-5(
図17C)のシンク溶解速度を例示する図である。
【
図17B】
図17A~Cは、本開示の側面による、5℃、25℃、および40℃で1カ月後の例示的な製剤LMP-5(
図17A)およびLMP-11(
図17B)、ならびに本明細書に記載されている1カ月間保存プラス周囲条件で1週間保存後のLMP-5(
図17C)のシンク溶解速度を例示する図である。
【
図17C】
図17A~Cは、本開示の側面による、5℃、25℃、および40℃で1カ月後の例示的な製剤LMP-5(
図17A)およびLMP-11(
図17B)、ならびに本明細書に記載されている1カ月間保存プラス周囲条件で1週間保存後のLMP-5(
図17C)のシンク溶解速度を例示する図である。
【
図18】[0033]
図18A~Hは、本開示の側面による保存前(
図18A~B)および1カ月間保存後(
図18C~H)の例示的な製剤LMP-5のSEM画像を例示する図である。
【
図19】[0034]
図19A~Hは、本開示の側面による保存前(
図19A~B)および1カ月間保存後(
図19C~H)の例示的な製剤LMP-11のSEM画像を例示する図である。
【
図20】[0035]
図20A~Hは、本開示の側面による例示的な製剤LMP BREC1650-155(500×)、-156(500×)、-157(500×)、-158(500×)、-160(500×)、-161(500×)、-162(500×)、-156(100×)、および-161(100×)のSEM画像を例示する図である。
【
図21】[0036]本開示の側面による例示的な製剤LMP BREC1690-155、-156、-160、-161、および-162のシンク溶解速度を例示する図である。
【
図22】[0037]本開示の側面による例示的な製剤LMP-2、LMP-5、LMP BREC1690-155、-156、および-162のシンク溶解速度を比較する図である。
【
図23】[0038]本開示の側面による例示的な製剤LMP-11、LMP BREC1690-160および-161のシンク溶解速度を比較する図である。
【
図24】[0039]本開示の側面による例示的な製剤LMP-5ならびにLMP BREC1690-156、-157、および-162(LMP-156、-157、および-162)のin vitro消化プロファイルを例示する図である。
【
図25】[0040]本開示の側面による、初期、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで2週間後、ならびに25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで1カ月後の例示的な製剤LMP BREC1690-156のin vitro消化プロファイルを例示する図である。
【
図26】[0041]本開示の側面による、初期、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで2週間後、ならびに25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで1カ月後の例示的な製剤LMP BREC1690-162のin vitro消化プロファイルを例示する図である。
【
図27】[0042]
図27A~Hは、本開示の側面による、保存前(
図27A)および2週間保存後(
図27B~D)の例示的な製剤LMP BREC1690-156のSEM画像を例示する図である。
【
図28】[0043]
図28A~Dは、本開示の側面による、保存前(
図28A)および2週間保存後(
図28B~D)の例示的な製剤LMP BREC1690-162のSEM画像を例示する図である。
【
図29】[0044]
図29A~Dは、本開示の側面による、保存前(
図29A)および1カ月間保存後(
図29B~D)の例示的な製剤LMP BREC1690-156のSEM画像を例示する図である。
【
図30】[0045]
図30A~Dは、本開示の側面による、保存前(
図30A)および1カ月間保存後(
図30B~D)の例示的な製剤LMP BREC1690-162のSEM画像を例示する図である。
【
図31】[0046]
図31A~Cは、本開示の側面による、倍率50×(
図31A)、300×(
図31B)、および1500×(
図31C)の50/35/15 MCT/カルナウバロウ/ゲルシール(Gelucire)50/13 LMPのSEM画像を示す図である。
【
図32】[0047]
図32A~Cは、本開示の側面による、倍率50×(
図32A)、300×(
図32B)、および1500×(
図32C)の40/40/20 MCT/カルナウバロウ/ゲルシール50/13 LMPのSEM画像を示す図である。
【
図33】[0048]
図33A~Cは、本開示の側面による、倍率50×(
図33A)、300×(
図33B)、および1500×(
図33C)の50/50 MCT/米ぬかワックスLMPのSEM画像を示す図である。
【
図34】[0049]
図34A~Cは、本開示の側面による、倍率50×(
図34A)、300×(
図34B)、および1500×(
図34C)の50/40/10 MCT/コンプリトール/PVP-17 LMPのSEM画像を示す図である。
【
図35】[0050]
図35A~Cは、本開示の側面による、倍率50×(
図35A)、300×(
図35B)、および1500×(
図35C)の40/48/12 MCT/コンプリトール/PVP-17 LMPのSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0051]背景として、中鎖脂肪酸トリグリセリド(「MCT」)は、より一般的な長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)とは異なる方法で代謝される。特に、LCTと比較した場合、MCTは、容易に消化されて中鎖脂肪酸(MCFA)を放出し、MCFAは門脈吸収率の増加を示し、絶対酸化(obligate oxidation)を受ける。MCTの小さいサイズおよび減少した疎水性は、LCTと比べて消化および吸収の速度を増加させる。MCTは摂取されると、先ず、グリセロール骨格から脂肪酸鎖を切断するリパーゼによって処理される。前十二指腸のいくつかのリパーゼはLCTよりMCTを優先的に加水分解し、放出されたMCFAは、次いで一部が胃粘膜によって直接吸収される。胃で吸収されないMCFAは門脈へ直接吸収され、リポタンパク質にパッケージングされない。血液輸送はリンパ液よりはるかに迅速なため、MCFAはすぐに肝臓に到着する。肝臓でMCFAは、絶対酸化を受ける。
【0017】
[0052]対照的に、通常の食事性脂肪に由来する長鎖脂肪酸(LCFA)は、LCTに再エステル化され、リンパ液への輸送のためにカイロミクロンにパッケージングされる。これは、MCTと比べてLCTの代謝を著しく遅らせる。摂食時、LCFAは、主にマロニル-CoAの阻害効果のために肝臓で酸化をほとんど受けない。条件が脂肪貯蔵に有利に働く場合、マロニル-CoAは脂質生成の中間体として生成される。マロニル-CoAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIをアロステリックに阻害し、これによりミトコンドリアへのLCFA輸送を阻害する。このフィードバック機構が、脂質分解および脂質生成の無益サイクルを防いでいる。
【0018】
[0053]MCFAは、大部分は、LCFAの酸化を制御する調節に対して影響されない。MCFAは、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIを使用することなくミトコンドリアに入り、それ故にMCFAはこの調節段階を迂回し、生物の代謝状態に関係なく酸化される。重要なことには、MCFAは迅速に肝臓に入り、すぐに酸化されるため、大量のケトン体がMCFAから容易に生成される。そのため、大経口用量のMCT(例えば、約20mL~40mL)は、持続的高ケトン血症をもたらすことになる。
【0019】
[0054]本開示は、一般的に、高充填量の少なくとも1つのMCTを含む医薬組成物、ならびにそのような組成物の作成および使用方法に関する。特定の態様において、MCTは、本明細書に記載されるカプリル酸トリグリセリドである。
【0020】
[0055]本開示の特定の側面において、医薬組成物は、使用者の下部消化管で高い薬物充填量のMCTの優先的放出をもたらす。理論に制限されるものではないが、結腸を含む下部消化管でのMCTの優先的放出は、非製剤化MCT油の標準的な投与と比較して胃の不調および関連する有害事象を低減する可能性がある。さらに、MCTのバイオアベイラビリティの改善は、非製剤化MCT油の標準的な投与と比較して、一般にin vivoでのケトン体生成の増加につながる可能性がある。
【0021】
[0056]特定の側面において、本開示の医薬組成物は、高い薬物充填量のMCT、例えば、カプリル酸トリグリセリド、およびマトリックス形成賦形剤を含む医薬組成物である。特定の態様において、マトリックス形成剤は、グリセリド、天然ワックス、またはそれらの組み合わせであってもよい。組成物は、高い薬物充填量のMCTおよびマトリックス形成賦形剤を含む分散粒子を形成してもよい。組成物は、溶解促進剤、流動助剤、硬化剤、およびそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。医薬組成物は、本明細書に記載されている量で成分を含んでもよい。
【0022】
[0057]本開示の医薬組成物は、平均粒径、例えば、直径約50μm~約350μm、約100μm~約300μm等を有する小さな分散粒子を提供する。
[0058]特定の側面において、本開示の医薬組成物は、流動性粉末を形成する分散粒子を提供する。特定の態様において、流動性粉末は、約20%未満、15%未満、10%未満等のCarr指数を示す。
【0023】
[0059]特定の態様において、医薬組成物は、組成物全体の少なくとも約25重量%、組成物全体の少なくとも約30重量%、組成物全体の少なくとも約40重量%、組成物全体の約30重量%~組成物全体の約65重量%、組成物全体の約30重量%~組成物全体の約60重量%、組成物全体の約40重量%~組成物全体の約50重量%、組成物全体の約40重量%~組成物全体の約45重量%等の高い薬物充填量の、カプリル酸トリグリセリドなどの少なくとも1つのMCTを含んでもよい。
【0024】
[0060]本明細書で使用される場合、他に明記されない限り、「重量%」は「組成物全体の重量%」を指す。
[0061]本開示の特定の側面において、MCTは、それぞれの脂肪酸分子が5~12個の炭素の炭素鎖を有する、3個の脂肪酸分子にエステル結合された任意のグリセロール分子を指す。特定の態様において、医薬組成物は、以下の一般式:
【0025】
【0026】
(式中、R1、R2およびR3は、グリセロール骨格にエステル化された、炭素骨格に5~12個の炭素を有する脂肪酸である)によって表されるMCTを含み得る。
[0062]本開示のMCTは、直接エステル化、転位、分画、エステル交換反応等の当技術分野で公知の任意のプロセスにより調製することができる。MCTの供給源には、半合成、合成または天然の任意の適切な供給源が挙げられる。MCTの天然の供給源の例には、ココナッツおよびココナッツ油、パーム核およびパーム核油などの植物供給源、ならびに様々な種(例えば、ヤギ)のいずれかからの乳汁などの動物供給源が挙げられる。例えば、脂質は、ココナッツ油などの植物油の転位により調製することができる。鎖長の長さおよび分布は、供給源油に応じて異なり得る。例えば、1~10%のC6、30~60%のC8、30~60%のC10、1~10%のC10を含有するMCTは、通常、パーム油およびココナッツ油から得られる。
【0027】
[0063]本開示の特定の態様によれば、本開示の医薬組成物は、R1、R2およびR3に約95%を超えるC8を有し、本明細書においてカプリル酸トリグリセリド(「CT」)と呼ばれるMCTを含んでもよい。CTの例示的な供給源には、ミグリオール(登録商標)808またはNEOBEE(登録商標)895が挙げられる。特定の側面において、CTは、ココナッツまたはパーム核油から得ることができ、グリセリン等へのオクタン酸の半合成エステル化により作成される。
【0028】
[0064]他の態様において、医薬組成物は、R1、R2、およびR3が6炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C6:0)であるMCTを含んでもよい。Tri-C6:0 MCTは、いくつかの動物モデル系において極めて迅速に胃腸管に吸収される。高吸収速度は、肝臓の迅速な灌流、および強力なケトン体生成反応をもたらす。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2、およびR3が8炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C8:0)であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2、およびR3が10炭素骨格を含有する脂肪酸(tri-C10:0)であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2、およびR3がC8:0およびC10:0脂肪酸の混合物であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2およびR3がC6:0、C8:0、C10:0、およびC12:0脂肪酸の混合物であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2およびR3の95%超が8炭素長であるMCTを含んでもよい。さらに別の態様において、医薬組成物は、R1、R2、およびR3炭素鎖が6炭素鎖または10炭素鎖であるMCTを含んでもよい。別の態様において、医薬組成物は、R1、R2およびR3の約50%が8炭素長であり、ならびにR1、R2およびR3の約50%が10炭素長であるMCTを含んでもよい。1つの態様において、医薬組成物は、R1、R2およびR3が6、8、10または12炭素鎖長、またはそれらの混合物であるMCTを含んでもよい。
【0029】
[0065]特定の側面において、本開示の医薬組成物は、少なくとも1種類のマトリックス形成剤を含む。特定の態様において、マトリックス形成剤は、グリセリド、天然ワックス、またはそれらの組み合わせであってもよい。マトリックス形成剤は、所望の粒子形成をもたらすのに十分な量で存在し得る。例えば、特定の態様において、マトリックス形成剤は、組成物全体の約20重量%~約70重量%、約40重量%~約70重量%、約50重量%~約60重量%等の量で存在してもよい。
【0030】
[0066]所望の粒子形成をもたらす当技術分野で公知の任意の適切なグリセリドがマトリックス形成剤として使用され得る。例として、グリセリドは、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、および三酢酸グリセリル等であってもよい。特定の態様において、グリセリドは、ジベヘン酸グリセリル、例えば、コンプリトール(登録商標)888である。
【0031】
[0067]所望の粒子形成をもたらす当技術分野で公知の任意の適切な天然ワックスがマトリックス形成剤として使用され得る。例として、天然ワックスは、例えば、水添ヒマシ油(HCO)、カルナウバロウ、米ぬかワックス等を含む標準的な天然ワックスおよび硬化油を含んでもよい。
【0032】
[0068]上記で論じられたように、特定の態様において、医薬組成物は、溶解促進剤、流動助剤、硬化剤、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
[0069]限定されることを意図するものではないが、溶解促進剤は一般に、組成物への透水速度を高めることによって高い薬物充填量のMCTの溶解を促進することができる。所望の粒子形成および溶解特性をもたらす当技術分野で公知の任意の適切な溶解促進剤が使用され得る。例として、溶解促進剤は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリエチレングリコール共重合体、デンプン、米デンプン、レシチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体(PVP-VA)、ポリオキシルグリセリド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。特定の態様において、溶解促進剤は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体である。例示的な溶解促進剤には、POLOXAMER(登録商標)407、GELUCIRE(登録商標)50/13等が挙げられる。任意の適切な量の溶解促進剤が、MCTの所望の溶解を達成するのに使用され得る。特定の態様において、溶解促進剤は、組成物全体の約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約2重量%~約20重量%、約2重量%~約15重量%等の量で存在する。
【0033】
[0070]特定の側面において、本開示の医薬組成物は流動助剤も含む。所望の粒子形成および流動特性をもたらす当技術分野で公知の任意の適切な流動助剤が使用され得る。特定の態様において、流動助剤は、シリカ化合物、例えば、コロイド状二酸化ケイ素(AEROSIL(登録商標)、CAB-O-SIL(登録商標))、アモルファスシリカゲル(SYLOID(登録商標)、SYLYSIA(登録商標))、顆粒状二酸化ケイ素(AEROPERL(登録商標))、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(NEUILIN(登録商標))、ケイ酸カルシウム(FLORITE(登録商標))、および規則性メソポーラスシリケートである。フローエイド(flow aide)は、所望の流動性をもたらす任意の適切な量で組成物に存在してもよい。例えば、特定の態様において、フローエイドは、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、約2.0%~約30重量%、約2.0%~約20重量%等の量で存在してもよい。
【0034】
[0071]特定の側面において、本開示の医薬組成物はフローエイドも含む。特定の態様において、フローエイドは、シリカ化合物、例えば、コロイド状二酸化ケイ素(AEROSIL(登録商標)、CAB-O-SIL(登録商標))、アモルファスシリカゲル(SYLOID(登録商標)、SYLYSIA(登録商標))、顆粒状二酸化ケイ素(AEROPERL(登録商標))、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(NEUILIN(登録商標))、ケイ酸カルシウム(FLORITE(登録商標))、および規則性メソポーラスシリケートである。特定の態様において、流動助剤は、アモルファスシリカゲル、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、規則性メソポーラスシリカ、微粉化タルク、およびそれらの組み合わせであってもよい。特定の態様において、流動助剤は微粉化タルクを含む。流動助剤は、所望の流動性をもたらす任意の適切な量で組成物に存在してもよい。例えば、特定の態様において流動助剤は、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%等の量で存在してもよい。特定の態様において、流動助剤は、約0.1%~5.0%、約0.1wt%~約4.0wt%、約0.1wt%~約3.0wt%等に及ぶ量で存在してもよい。
【0035】
[0072]特定の側面において、本開示の医薬組成物は硬化剤も含む。所望の粒子形成をもたらす当技術分野で公知の任意の適切な硬化剤が使用され得る。特定の態様において、硬化剤は、カルナウバロウ、カンデリラロウ、およびそれらの組み合わせであってもよい。特定の態様において、硬化剤はカルナウバロウである。任意の適切な量の硬化剤が、所望の粒子形成を達成するのに使用され得る。特定の態様において、硬化剤は、組成物全体の約1重量%~約60重量%、約5重量%~約60重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約60重量%等の量で存在する。
【0036】
[0073]特定の態様において、医薬組成物は、高い薬物充填量の、カプリル酸トリグリセリドなどの少なくとも1つのMCT、および少なくとも1種類のマトリックス形成剤を含んでもよい。組成物は、高い薬物充填量のMCTおよびマトリックス形成剤を含む分散粒子を形成してもよい。特定の態様において、マトリックス形成剤は、グリセリド、天然ワックス、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。グリセリドは、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル(glyceral dibehenate)、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、および三酢酸グリセリル、ならびにそれらの組み合わせから選択されてもよい。天然ワックスには、標準的な天然ワックスおよび硬化油が挙げられ得、水添ヒマシ油(HCO)、カルナウバロウ、米ぬかワックス、およびそれらの組み合わせから選択され得る。特定の態様において、粒子は、例えば約50μm~約350μmの平均直径を有する。他の態様において、粒子は、10%未満の流動性のCarr指数を示す。組成物は、溶解促進剤、流動助剤、硬化剤、およびそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0037】
[0074]本開示の医薬組成物を作成する任意の適切な方法が使用され得る。本開示の特定の側面において、再現性、粒径および形態、ならびに収率は、本明細書で例に例示されているように製造プロセスを変更することにより制御できることが見出された。
【0038】
[0075]特定の側面において、本開示は、認知機能低下を伴う疾患または障害の治療を必要とする対象における認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法であって、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む方法に関する。特定の態様において、本開示の医薬組成物は、ケトン食療法の関連以外で投与されてもよい。例えば、本開示の関連では、炭水化物が本明細書に開示された医薬組成物と同時に消費されてもよい。
【0039】
[0076]本開示の特定の側面によれば、認知機能低下を伴う疾患および障害には、加齢に伴う記憶障害(AAMI)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠損癲癇、妖精症、およびラブソン-メンデンホール症候群、冠状動脈バイパス移植片(CABG)認知症、麻酔誘導性記憶喪失、ハンチントン病、および多くの他のものが挙げられる。
【0040】
[0077]別の態様において、患者は、ニューロン代謝低下に起因する疾患に関連した認知機能低下、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠損癲癇、妖精症、およびラブソン-メンデンホール症候群、冠状動脈バイパス移植片(CABG)認知症、麻酔誘導性記憶喪失、ハンチントン病、および多くの他のものと関連した認知機能低下を発症するリスクを有する、またはこのリスクがある。
【0041】
[0078]本明細書で使用される場合、ニューロン代謝低下は、ニューロン代謝の低下につながり得る、全ての可能性のある機構を指す。そのような機構には、ミトコンドリア機能障害、フリーラジカル攻撃、活性酸素種(ROS)の発生、ROS誘導ニューロンアポトーシス、グルコース輸送または解糖不全、膜イオン電位の不均衡、カルシウム流の機能障害等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
[0079]本発明によれば、高い血中ケトンレベルは、グルコース代謝が損なわれている脳細胞にエネルギー源を提供し、認知機能の成績の改善につながるであろう。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」は互換的に使用され、ニューロン代謝低下と関連した、またはニューロン代謝低下から生じる疾患および状態の治療から恩恵を受けることができるヒトを含む任意の哺乳動物を指す。
【0043】
[0080]「有効量」は、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載される化合物、材料、または医薬組成物の量を指す。上述の状態の治療に対する有効性は、少なくとも1種類の神経心理学的検査からの結果の改善によって評価することができる。これらの神経心理学的検査は当技術分野で公知であり、特に、変化の臨床全般印象(CGIC)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、First-Last Names Association Test(FLN)、Telephone Dialing Test(TDT)、Memory Assessment Clinics Self-Rating Scale(MAC-S)、Symbol Digit Coding(SDC)、SDC遅延想起課題(SDC Delayed Recall Task)(DRT)、分割的注意検査(Divided Attention Test)(DAT)、Visual Sequence Comparison(VSC)、DAT Dual Task(DAT Dual)、ミニメンタルステイト試験(MMSE)、および老年期うつ病評価尺度(GDS)が挙げられる。
【0044】
[0081]用語「認知機能」は、以下の、すなわち精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、知覚、直感、注意、および意識の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性を指す。「認知機能強化」または「認知機能改善」は、以下の、すなわち、当技術分野で適切な任意の手段により測定される、精神安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、知覚、直感、注意、および意識の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性の何らかの改善を指す。「認知機能低下」または「認知機能不全」は、脳の特殊、正常、または適正な生理学的活性の何らかの減少を指す。
【0045】
[0082]別の態様において、本発明の方法は、患者の遺伝子型または特定の対立遺伝子の決定をさらに含む。1つの態様において、アポリポタンパク質E遺伝子の患者の対立遺伝子が決定される。ケトン体レベルの上昇がMCTにより誘導されたとき、非E4キャリアは、E4対立遺伝子を有する者より成績が良いことが見出された。また、E4対立遺伝子を有する者は、空腹時ケトン体レベルがより高く、レベルは2時間間隔で上昇し続けた。したがって、E4キャリアは、存在するケトン体を使用する能力を高めるより高いケトンレベルまたは薬剤を必要とする可能性がある。
【0046】
[0083]1つの態様において、本開示の医薬組成物は経口投与される。治療剤の治療的に有効な量は、所望の効果をもたらすのに十分な任意の量または用量であり得、状態の重症度および病期、患者のサイズおよび状態、ならびに当業者に容易にわかる他の要因に部分的に依存する。投与量は、単一用量として、または本明細書の他の部分で論じられているように、例えば、数週間にわたって分割される複数用量として与えることができる。
【0047】
[0084]本開示の医薬組成物は、1つの態様において、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下の発生を治療および/または予防するのに必要とされるレベルまで血中ケトン体を増加させるのに必要とされる投与量で投与される。適当な投与量は、当業者によって決定され得る。
【0048】
[0085]1つの態様において、本開示の医薬組成物の経口投与は高ケトン血症をもたらす。高ケトン血症は、1つの態様において、グルコースの存在下でさえ脳内でエネルギーとして利用されるケトン体をもたらす。さらに、高ケトン血症は、脳血流量のかなりの(39%)増加をもたらす(Hasselbalch,S.G.ら、Changes in cerebral blood flow and carbohydrate metabolism during acute hyperketonemia、Am J Physiol、1996、270:E746~51頁)。高ケトン血症は、正常なヒトにおいて全身性低血糖と関連した認知機能障害を低減することが報告されている(Veneman,T.ら、Effect of hyperketonemia and hyperlacticacidemia on symptoms、cognitive dysfunction,and counterregulatory hormone responses during hypoglycemia in normal humans、Diabetes、1994、43:1311~7頁)。全身性低血糖は、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下で生じるグルコース代謝の局所欠陥とは異なることを留意されたい。
【0049】
[0086]投与は、必要に応じてまたは所望に応じて、例えば、月1回、週1回、毎日、または1日1回超であってもよい。同様に、投与は、1日おき、1週間おき、または1カ月おき、2日おき、2週間おき、または2カ月おき、3日おき、3週間おき、または3カ月おき等であってもよい。投与は、1日に複数回であってもよい。通常の栄養必要量に対する補充として利用される場合、組成物は、患者に直接投与されてもよく、またはさもなければ日常の飼料もしくは食品と接触もしくは混合されてもよい。
【0050】
[0087]本明細書に提供される医薬組成物は、1つの態様において、「延長された(extended)」期間と本明細書で呼ばれることもある、「長期(long term)」消費が意図される。「長期」投与は、本明細書で使用される場合、一般に1カ月を超える期間を指す。2、3、または4カ月より長い期間は、本発明の1つの態様を含む。また、含まれるのは、5、6、7、8、9、または10カ月より長い期間を含む、より延長された期間を含む態様である。11カ月または1年を超える期間も含まれる。1、2、3年またはそれより多い年数に及ぶより長期の使用も本明細書で企図される。「定期的」は、本明細書で使用される場合、少なくとも毎週の組成物の投与または消費を指す。週2回または3回などのより頻繁な投与または消費が含まれる。また、含まれるのは、少なくとも1日1回の消費を含むレジメンである。当業者は、達成されたケトン体または特定のケトン体の血中レベルが、投与頻度の有益な尺度となり得ることを理解するであろう。本明細書に明示的に例示されているかどうかにかかわらず、測定される化合物の血中レベルを許容可能な範囲内に維持できるようにするいずれの頻度も、本明細書において有用と見なされ得る。当業者は、投与頻度が、消費または投与されている組成物の関数となり、いくつかの組成物は、測定される化合物(例えば、ケトン体)の所望の血中レベルを維持するために、より多いまたは少ない頻度の投与を必要とする場合があることを理解するであろう。
【0051】
[0088]投与は、例えば、患者における治療レジメンの一部として、定期的に実施されてもよい。治療レジメンは、患者における認知機能、記憶、および行動を強化するのに有効な量で、本開示の医薬組成物を患者に定期的に摂取させることを含み得る。定期的な摂取は、毎日または毎週、1日1回、または1日に2回、3回、4回、もしくはそれよりも多い回数であってもよい。同様に、定期投与は、1日もしく1週間おき、2日もしくは2週間おき、3日もしくは3週間おき、4日もしくは4週間おき、または5日おきもしくは5週間おきであってもよく、そのようなレジメンでは、投与は1日に複数回であってもよい。定期投与の目標は、本明細書で例示されている本開示の医薬組成物の至適用量を患者に提供することである。
【0052】
[0089]例えば、MCTを含むものなどの本発明の組成物の投与量は、例えば、AD、AAMI等の任意の疾患関連または加齢関連認知低下を有する患者において、ニューロン代謝低下の疾患に苦しむ患者の認知能力を高めるのに有効な量で投与され得る。
【0053】
[0090]1つの態様において、本発明の組成物は、体内のケトン濃度の上昇をもたらし、この態様では、組成物は、高ケトン血症を誘導するのに有効である量で投与される。1つの態様において、高ケトン血症は、脳内でエネルギーとして利用されるケトン体をもたらす。
【0054】
[0091]1つの態様において、組成物は、哺乳動物または患者において少なくとも1種類のケトン体の循環濃度を高める。1つの態様において、循環ケトン体は、D-ベータ-ヒドロキシブチレートである。循環ケトン体の量は、投与後いくつかの時点で測定することができ、1つの態様では、血中のピーク濃度に近いと予測される時点で測定されるが、予測ピーク血中濃度レベル前後で測定することもできる。これらのオフピーク時の測定量は、次いで予測ピーク時の予測レベルを反映するように場合により調整される。1つの態様において予測ピーク時は、約2時間時点である。ピーク循環血中レベルおよびタイミングは、個体の消化速度、当業者に公知の食品、飲料等の同時摂取または前もしくは後摂取を含む、当業者に公知の要因に応じて異なり得る。1つの態様において、D-ベータ-ヒドロキシブチレートの到達ピーク血中レベルは、約0.05ミリモル(mM)~約50mMである。D-ベータ-ヒドロキシブチレートの血中レベルが約0.05~約50mMに上昇しているかどうかを決定する別の方法は、約5mg/dL~約160mg/dLの範囲のD-ベータ-ヒドロキシブチレート尿中排泄の測定値による。他の態様において、ピーク血中レベルは、約0.1~約50mM、約0.1~約20mM、約0.1~約10mM、約0.1~約5mMに上昇し、より好ましくは約0.15~約2mM、約0.15~約0.3mM、および約0.2~約5mMに上昇するが、上記で論じられたように、例えば製剤および宿主に応じて、変動が必然的に生じるであろう。他の態様において、D-ベータ-ヒドロキシブチレートの到達ピーク血中レベルは、少なくとも約0.05mM、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.15mM、少なくとも約0.2mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1mM、少なくとも約1.5mM、少なくとも約2mM、少なくとも約2.5mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、および少なくとも約50mMとなるであろう。
【0055】
[0092]本発明の組成物の化合物、すなわち、ニューロン代謝低下に起因する認知機能の低下の治療または予防に有効な量でケトン体濃度を上昇させることができる化合物の投与の有効量は、当業者に明らかであろう。本明細書で上記に論じられたように、そのような有効量は、開示された血中ケトンレベルに照らして決定することができる。ケトン体濃度を上昇させることができる化合物がMCTである場合、MCT用量は、1つの態様ではMCT約0.05g/kg/日~約10g/kg/日の範囲内である。他の態様において、用量は、MCT約0.25g/kg/日~約5g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、用量は、MCT約0.5g/kg/日~約2g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、用量は、約0.1g/kg/日~約2g/kg/日の範囲内となろう。他の態様において、MCTの用量は、少なくとも約0.05g/kg/日、少なくとも約0.1g/kg/日、少なくとも約0.15g/kg/日、少なくとも約0.2g/kg/日、少なくとも約0.5g/kg/日、少なくとも約1g/kg/日、少なくとも約1.5g/kg/日、少なくとも約2g/kg/日、少なくとも約2.5g/kg/日、少なくとも約3g/kg/日、少なくとも約4g/kg/日、少なくとも約5g/kg/日、少なくとも約10g/kg/日、少なくとも約15g/kg/日、少なくとも約20g/kg/日、少なくとも約30g/kg/日、少なくとも約40g/kg/日、および少なくとも約50g/kg/日である。
【0056】
[0093]好都合な単位投与容器および/または製剤には、特に、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、ハードキャンディー、栄養バー、栄養ドリンク、計量スプレー、クリーム、および座薬が挙げられる。組成物は、ゼラチン、油、および/または他の薬学的活性剤などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることができる。例えば、組成物は、対象化合物とは異なる他の治療剤または予防剤と併用して、有利には組み合わされおよび/または使用されてもよい。多くの場合、対象組成物と併用した投与は、そのような薬剤の有効性を強化する。例えば、化合物は、抗酸化物、グルコース利用の効率性を強化する化合物、およびそれらの混合物と併用して有利には使用することができる。
【0057】
[0094]MCTの日用量は、哺乳動物の体重(BW)1kgあたりのMCTのグラム単位で測定することもできる。MCTの日用量は、約0.01g/kg~約10.0g/kg哺乳動物BWにわたり得る。好ましくは、MCTの日用量は、約0.1g/kg~約5g/kg哺乳動物BWである。より好ましくは、MCTの日用量は、約0.2g/kg~約3g/kg哺乳動物である。さらにより好ましくは、MCTの日用量は、約0.5g/kg~約2g/kg哺乳動物である。
【0058】
[0095]いくつかの態様において、本発明の化合物は、炭水化物と同時投与、または炭水化物と同時配合されてもよい。炭水化物は、1種類を超える炭水化物を含み得る。適当な炭水化物は当技術分野で公知であり、コーンシロップ、テンサイ等の従来の供給源からのグルコース、フルクトース、スクロース等の単糖が挙げられる。同時配合される場合、使用する炭水化物の量は、少なくとも約0.1g、少なくとも約1g、少なくとも約10g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約150g、少なくとも約200g、少なくとも約250g、少なくとも約300g、少なくとも約400gを含み得る。カルニチンの量は、少なくとも約1g、少なくとも約50g、少なくとも約100gであってもよい。組成物は、乾燥重量にして約15%~約40%の炭水化物を含んでもよい。そのような炭水化物の供給源には、コメ、トウモロコシ、モロコシ、アルファルファ、オオムギ、ダイズ、セイヨウアブラナ、カラスムギ、コムギ、またはそれらの混合物などの穀物または穀類が挙げられる。組成物は、場合により、乾燥ホエーおよび他の乳製品または副産物などの炭水化物を含む他の成分も含むことができる。
【実施例】
【0059】
以下の例は例示的な目的のみで提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
実施例1-医薬製剤-LMP-1、LMP-2、LMP-3、LMP-4
[0096]例示的なおよび比較上の医薬製剤は、本明細書に記載され、以下の表1-Aに反映されているように調製した。
【0060】
【0061】
[0097]製剤は、加熱ジャケット融解タンクを備えた噴霧器回転ディスク処理装置(atomizer spinning disk processing unit)を用いて作成した。汎用3.175cm(1.25インチ)径加工ヘッドを装備したSilverson高せん断ミキサーを用いてタンクを撹拌した。噴霧器は、変速モーターによって駆動される10.16cm(4インチ)回転ディスクであった。膨らませた2.4384m(8フィート)径ディスポーザブルバッグに生成物を入れ、回収した。
【0062】
[0098]賦形剤をカプリル酸(ミグリオール808)油と一緒に加熱ジャケット融解タンクに入れ、融解させた。成分がほぼ融解したら、高せん断混合ヘッドを融解物の中に下ろした。ローターを900~1000rpmで約1時間作動させて、融解物内の活性物の均一な分散を可能にした。ミキサーを止め、圧力蓋をタンクの上に置いた。融解物を圧力ヘッドのみによって回転ディスク噴霧器に送達した。この構成により、融解物が回転ディスク噴霧器に送達される速度は融解粘度およびタンクの圧力に左右された。回転ディスク噴霧器はナイロン製であり、融解物がそれを越えて流れるときの温度まで数秒以内に加熱された。回転ディスク噴霧器の端を流れ出る融解物は、収納バッグに打ちあたる前に凝固し、硬くなる小さな球状液滴を形成した。得られた粒径分布は、融解物粘度およびディスクまでの流速に影響されたが、主として回転ディスク噴霧器の回転速度に影響された。
【0063】
[0099]上記した回転ディスク装置で4つの製剤を製造した。表1-Bは、全てのランの製造概要を示す。4つの製剤全てを、10.16cm(4”)ナイロン噴霧器、およびヘッド圧を圧送システムとする加圧タンクを用いる回転ディスク装置で処理した。LMP-1は最も硬い粒子を、LMP-4は最も柔らかい粒子をもたらす。
【0064】
【0065】
[00100]LMP-4を除いて、製剤の完全な特徴付けに十分な材料を回収した。LMP-4に関して、粉末取り扱い性は悪かった。粒子は粘着性で柔らかいように見え、いくつかのケースでは機材および梱包材の表面に残渣油らしきものを残した。
【0066】
実施例2-製剤LMP-1、LMP-2、LMP-3、およびLMP-4の特徴付け
[00101]表1-Aに記載された製剤を、粒径および形態、密度および流量、融解および凝固特性、融点、ならびに力価および純度について特徴付けた。
【0067】
[00102]光学顕微鏡を使用して、粒子の形状および形態を評価した。
図1A(LMP-1)、
図1B(LMP-2)、
図1C(LMP-3)、および
図1D(LMP-4)は画像を示す。全てのロットが、非球状欠陥がほとんどない球状粒子を生成した。一般に、製造された粒子の全てが直径約50~300μmに及んだ。製剤間で粒径の若干のばらつきが観察された。LMP-1はLMP-2より有意に大きかった。粒径はディスクスピードを調整して制御することができる。LMP3および4は凝集するようである。
【0068】
[00103]SEMイメージングを使用して粒径、形状、および形態を評価した。
図2A~2D、
図3A~3D、および
図4A~4D(パネルAのLMP-1、パネルBのLMP-2、パネルCのLMP-3、およびパネルDのLMP-4)は、粒子のSEM画像を示す。全てのロットが、直径50~350μmにわたる直径を有する球状粒子を生成した。サイズおよび形状は光学顕微鏡法と一致している。各LMP製剤の表面形態は、1000倍倍率で
図4A~4Dにはっきりと見てとることができる。
【0069】
[00104]LMP-1粒子-微結晶ワックスマトリックスを含む-は、いくつかの小さな丸い突起を有する比較的滑らかな表面をしている。コンプリトールベースのLMP-2は極めて粗い表面をしているが、コンプリトールの特徴的な表面形態を欠く。コンプリトールは典型的には、六方晶系表面結晶を有する滑らかな表面を示す。形態の違いは、カプリル酸がコンプリトールの結晶構造を変化させていることを示唆している。LMP-4の表面は極めて不規則である。表面は相分離しているように見える。1つの相は大部分が液状油である可能性があり、油っぽい表面および凝集の目視観察を説明している。
【0070】
[00105]選択したLMPの真密度をAccuPyc 1330 Pycnometerを用いて測定した。表2-Aを参照のこと。微結晶ワックスLMP(LMP-1)の真密度は1未満であり、粒子が水に浮く場合、溶解中に問題をもたらす可能性があった。コンプリトール888(ジベヘン酸グリセリル)LMP(LMP-2)は、1よりわずかに大きかった。0.25%SLS/水溶液に懸濁すると、LMP-1は浮き、LMP-2は一部が沈み、AccuPyc真密度データと一致した。
【0071】
【0072】
[00106]融解および凝固特性をさらに理解するために、LMP、賦形剤、および活性カプリル酸(ミグリオール808)油の熱特性を示差走査熱量測定(DSC)によりテストした。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の熱特性を、油の凝固ならびにその後の熱および融解イベントの両方に関する一連の傾斜率を使用して分析した。凝固温度は冷却速度に依存する場合が多いため、10、5、2、1、および0.2℃/分の傾斜率を使用した。
図5Aに示されているように、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の凝固温度は、冷却速度に高度に依存している。10℃/分(DSC機器の最大速度に近い)で冷却した場合、-60.5℃で生じる単一の発熱が観察され、エンタルピーの変化は28.4J/gであった。傾斜率が下がるにつれて凝固開始温度は上がり、凝固プロファイルはより複雑になった。これは形態変化が原因である可能性が高い。
【0073】
[00107]
図5Bおよび5Cに見られるように、加熱サイクル中、固体の形態変化を示す様々な発熱が観察された。全ての傾斜率に対して固体は10~11℃で融解した。これは、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の融点によって、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の融解の前に全ての物理的形態が同じ多形体に変化したことを示すものである。データは、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)を含有するLMPの製造中の冷却速度が、凝固固体の物理的形態に影響を与え得ることを示している。LMP試料およびそのそれぞれの賦形剤を、2つの方法:1)加熱-冷却および、2)冷却-加熱を用いて、TA Q2000 DSCでDSCにより分析した。周囲条件で密閉された30μL PE密封パンおよび蓋を使用した。試料質量範囲は5~15mgであった。加熱-冷却および冷却-加熱方法を表2-Bにリストする。
【0074】
【0075】
加熱-冷却方法の主な目標は、マトリックスの融点およびそれぞれの凝固点を測定することであった。冷却-加熱方法の主な目標は、固体LMPマトリックス中の遊離カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油の何らかの凝固を検出すること(相分離油を示唆する)、およびカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の融点の前に発熱を同定すること(形態変化を示唆する)であった。また、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油および賦形剤の融点をそれぞれの純粋成分に対して比較した。
【0076】
3つのLMP製剤を比較すると、LMP1および2は、融点の低温開始33℃および凝固開始44℃によるLMP-3より望ましい特性を有することが明らかである(表2-Cを参照のこと)。これらの低い温度は、処理を困難にし、LMPをその最終形態で保存および使用することを制限する。最終的に、この洞察により、カプリル酸トリグリセリドを含有するLMPの主要賦形剤成分としての検討からコリフォールCSLの使用は除外される。室温で安定な製剤へ処理するのに、試料マトリックスの融解および凝固の開始が十分に高いことから、LMP1および2は、カプリル酸トリグリセリドを安定な多粒子薬物製剤に製剤化するために、熱的観点から有望である。
【0077】
【0078】
[00108]熱データは、カプリル酸トリグリセリドの大部分が賦形剤材料から相分離されることを示している。完全な混和系が存在しているのであれば、ただ1つの融点が予測されよう。3つのLMPは全て10℃でカプリル酸トリグリセリドの融点と賦形剤のその後の融解を示すことから、これは事実とかけ離れている。3つのLPMは全て50%カプリル酸トリグリセリドであり、融解イベントの最大予測エンタルピーは、約57J/gとなる。カプリル酸トリグリセリド融解のエンタルピーは、LMP-1、2、および3についてそれぞれ、50、50、および61J/gであり(表2-Dおよび2-Eを参照のこと)、カプリル酸トリグリセリドの>85%がLMP中で相分離されることを示唆している。
【0079】
【0080】
[00109]視覚的融点データを、2℃/分で自動融点装置(SRS Optimelt)を用いて回収した。DSCによる広範な熱イベントのため、加熱中にLMPの視覚的評価によって得られる洞察は、熱量測定データだけでは失われる可能性がある製剤間の識別度を高めることができる。
【0081】
[00110]光強度により分析される融解プロファイル(
図6)は、LMP-2が、融解開始点62℃、融解終点75℃を有する3つのLMPのうち最も急な融点プロファイルを有することを示している。この観察は、手袋をはめた指の間に置くと、LMPは融解するように見えたという観察とは対照的である。このデータを踏まえると、いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、LMP-2コンプリトールマトリックスは、高い油含量によって損なわれる可能性があり、指を擦り合わせて圧迫すると物理的に壊れる。LMP-1は、43℃で半透明になり始めるが、材料の収縮は64℃まで観察されない。LMP-3は、40℃の開始点からすぐに融解し始める。融解すると、材料は不透明なままで、140℃まで完全に透明にはならない。これは、賦形剤(コリフォールCSL)からのSLSが、その時点まで融解物に完全に溶解するようにならないことが原因である可能性が高い。
【0082】
[00111]LMP製剤の力価および純度を、HPLC-CADによって分析した。簡単には、試料を:10mgA粉末を20mLシンチレーションバイアルに秤量;10mL LMP希釈液を添加;50/50 ACN/IPA;超音波処理10分;室温(RT)に平衡化;0.2μm 25mmナイロンフィルターにフィットしたBDシリンジに5mLを充填;4mLを廃棄、1/5mLをHPLCバイアルに回収して調製した。クロマトグラフィー条件は、表2-Fに記載されている通りである。
【0083】
【0084】
[00112]0.27%のRRT=1.11にピークがあるLMP-2を除き、RRT=1.32を通じて不純物の有意な変化はなかった。全てのピークRRT=1.36~2.55は、純粋な賦形剤単独からは抽出されなかった賦形剤によるピークの可能性がある。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)が賦形剤の共溶媒として作用し、対照の純粋な成分単独と比べて、マトリックスからの追加の成分の抽出を助けている可能性があると考えられる。
【0085】
[00113]3つの製剤は全て、100%理論値に近いアッセイ値を有し、値は97.2~99.6%ラベルクレーム(LC)にわたる。表2-Gは、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対3つのLMP製剤について表にしたピークデータを含む。
図7A~7Cは、3つのLMP対賦形剤およびカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対照に関する例示的クロマトグラムを示す。クロマトグラムは拡大され、賦形剤によるピークの有意な寄与を示す。さらに、いかなる1つの理論に拘束されるものではないが、RRT 0.31および0.34のピークはC-8ジグリセリドである可能性があり、そのため不純物として含めている。
【0086】
【0087】
実施例3-LMP-1、LMP-2、LMP-3の溶解
[00114]視覚的溶解試験を、LMP製剤1から3で20mlシンチレーションバイアルを用いて小規模に行った。テストは、0.25%ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Laurel Sulfate)(SLS)水溶液を用いて37℃、25℃および5℃で行った。加熱アルミニウムブロックおよび加熱撹拌プレートを試験に使用した。500mg(250mgA、25mgA/mL)の各LMP製剤を、10mL予熱0.25%SLS溶液に添加した。テフロン(登録商標)撹拌子を用いて試料を加熱撹拌プレートで撹拌して20分間温度を維持した。20分後、LMP懸濁液を沈降するままにし、視覚的に評価した。
【0088】
[00115]溶解テストの画像を
図8に示す。LMP-1を含有するバイアルは、20分間撹拌後も透明なままであり、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油が放出されなかったことを示唆している。LMP-2およびLMP-3テストバイアルは両方とも不透明であり、油が放出されたかまたはLMPが融解したことを示唆している。LMP-3テストバイアルの粘度は有意に上昇した。しかし、これは他の製剤では観察されなかった。
【0089】
[00116]同様の結果は、溶解テストを室温および5℃で行った場合に観察された。LMP-1を含有するバイアルは、37℃溶解と比べた場合、温度が低いほど濁っていた。しかし、それらは、LMP-2およびLMP-3よりはるかに濁りが少なかった。LMP-2は、37℃と比べて5℃でより濁るようになったが、室温では濁りは少なかった。LMP-3に関して3つの温度間に差は見られなかった。脂質は室温および5℃では固体であるため、該結果は、濁りが融解によるものではないことを示している。
【0090】
[00117]最後に、LMP-1単独および0.5%SLS/水溶液を用いてテストを繰り返して、追加の界面活性剤が水中油の溶解度を高めて見かけの溶解を助けるかどうかを評価(access)した。結果は、0.25%SLS溶解と類似しており、濁りの欠如、およびこれにより溶解は油/水溶解度によって駆動されないことを示唆している。
【0091】
[00118]カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油がSLS/水溶液にどのように溶解するかを決定するために、油溶解対照テストを行った。2つのSLSストック溶液を、水に0.25%および0.5%SLSで作成した。各SLS溶液10mlを、磁気撹拌子と一緒にシンチレーションバイアルに添加した。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油250mgを各バイアルに添加し、20分間撹拌した。10分後および2日後に画像を撮影した。画像を
図9に示す。油の大部分が、溶液の中に入るのではなく水の上に浮かんでいる。バイアルは、10分の写真ではわずかに濁っているように見え、ある程度の油が水相に乳化されることを示している。おそらく乳化カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)が油相に分離するため、濁りは2日後に減少する。
【0092】
[00119]LMP-1に関して油相は観察されず、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)が放出されなかったことを強く示唆している。油相はLMP-2および3についても見られなかったが、油は脂質担体と一緒に水相に乳化されたか、または画像が撮影された時までには相分離されなかった可能性がある。LMP溶解テストにおける濁りは脂質担体の結果であり、油の結果ではなかった。
【0093】
[00120]LMP1、2、および3を、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油と一緒にUSP II型シンク溶解実験でテストした。製剤500mgAを、pH6.8緩衝液中2.0wt%SLS 900mLを含有する1000mL容器に投与した。試料を30分および17.5時間時点で撮影した。方法パラメータを、表3-Aおよび3-Bにリストする。結果は表3-Cにリストする。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
[00121]対照試料、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)は、用量が選択媒体の3×シンクであったことから、100%放出を達成することが予測された。しかし、遠心分離試料しか30%回収率を達成しなかったことから、これは当てはまらなかった。油は、肉眼で容易に観察されるマクロな液滴に分散されることが観察された。これらの液滴のサイズおよび数は、経時的に変化しないようであった。いかなる1つの理論に拘束されるものではないが、油液滴は媒体中のSLSによって安定化される可能性があり、それはSLSミセルに可溶化されるより速度論的に安定である。油は、大過剰(約80×)対溶解度で投与した。大過剰の油は動的成分を圧倒し、溶解度を溶解度実験のための熱力学的溶解度(thermodynamic solubility)に至らせた可能性がある。
【0098】
[00122]LMP-1は、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の放出が乏しく、検出可能なピークはなかった(LOQ>約0.5%LC)。17.5時間後、3つの単離法は全て、1.6%LC放出をもたらした。LMP-2は、17.5時間後に75~91%LC放出でテストした3つのLMP製剤のうち最も優れた全般的パフォーマンスを示し、望ましいin vivo放出プロファイルの可能性を示した。
【0099】
[00123]初回の溶解試験後、LMPを破砕して表面積を増やすだけでなく、粒子の内部を曝露するために、Spex Freezer/Millを用いてLMP-1の一部を凍結粉砕した。溶解は、インタクトなLMPと比べて約4×増加したが、いかなる1つの理論に拘束されるものではないが、これはひとえに表面積の増加による可能性がある。このデータは、カプリル酸トリグリセリドが微結晶ワックスに分割され、シンク溶解媒体中に放出されず、カプリル酸トリグリセリドを含有するLMP製剤の主成分となることから微結晶ワックスを有効に排除するという仮説を支持するものである。
【0100】
実施例4-流動助剤
[00124]2つの流動助剤を、表1-1Aに上記したLMP-1でスクリーニングして流量の改善を評価した。微粉化タルクおよびコロイド状二酸化ケイ素を、LMP-1の50グラムサブロットと2wt%レベルでそれぞれドライブレンドした。これは、流動助剤を添加し、Turbulaでブレンドし、600μmスクリーンを通して混合物をスクリーニングし、最終Turbulaブレンドで終了して行われた。視覚的に、流量および取り扱い性はコロイド状二酸化ケイ素では変わらなかったが、微粉化タルクでは有意に改善した。その後、残りのロット(表1-Aに上記したLMP-2、LMP-3、LMP-4)の各々を、2wt%タルクとブレンドした。このプロセス中、LMP-4からの材料は、ブレンドステップ中に自己凝集した。これは、柔らかさのレベルが復元不可能でことを示唆している。残りの3つのLMPロットを、流動助剤ありとなしでさらに特徴付けた。
【0101】
[00125]2%タルクを含むLMP-1およびLMP-2の真密度を、実施例2に記載されているように測定した。値は表2-Aにある。
[00126]選択したLMP製剤でかさおよびタップ密度を測定して、2%タルクを流動助剤として添加する前後の流動性を定量化した。かさおよびタップ容量は、粉末の流動性を説明するCarr指数を計算するときに使用した。Carr指数が25より大きい粉末は、典型的には流動性が悪いが、15より下の値は流動性が良い。BSV/TSVテストを、タルク添加(talced)および非添加(untalced)LMP-1およびLMP-2、ならびにタルク添加LMP-3で行った。LMP-4は凝集するためテストしなかった。結果を表3-Aに示す。2%タルクの添加は、LMP-1およびLMP-2の流動性を有意に改善した。Carr指数は、タルクの添加によりLMPランの1および2に関して、それぞれ31から10および18から6に減少した。Carr指数の数を、流動性の視覚的評価により裏付けた。タルク非添加材料は流れが悪かったが、タルクLMPは流れが良かった。BSV/TSVはまたLMP-3タルク添加粒子でも行い、Carr指数値21が得られ、LMP-1またはLMP-2だけでなくLMP-3も流れなかったことを示した。
【0102】
【0103】
実施例5-硬化剤
[00127]硬化剤は、製剤の硬さおよび融解温度を高めて、取り扱い性および物理的安定性を改善することを目的とする。硬化剤は、高度な硬さおよび高い融解温度を有する。硬化剤カルナウバおよびカンデリラロウを調べた。カルナウバロウは約82℃の融解温度を有し、極めて高度な硬さを有する。カンデリラロウは約68℃の融解温度を有し、他のロウを硬化することで知られている。カルナウバおよびカンデリラロウは微結晶ワックスと類似した構造を有するが、鎖長がより短いため、これらを硬化剤として選択した。類似した構造は、LMPの取り扱い性を改善し、しかしLMP-1の不良な溶解性能の悪さを避けることを目的としている。スクリーニングした製剤を表5-Aにリストする。
【0104】
【0105】
[00128]融解スクリーニングを行った。賦形剤およびカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油を100℃で融解させ、十分に混合した。小さな液滴をガラスプレートにはじき落として、冷却速度を観察した。凝固液滴を回収し、指の間で擦り、取り扱い性を手探りで調べた。最後に、小さな秤量ボートを融解物で満たし、固化するまでそのままにした。固化した融解物が油を浸み出させるかどうかについて観察を行った。各製剤を、以下の特性について調査した:賦形剤は相分離しているか;液滴はどれくらい急速に冷えるか;固化融解物は手で触ったときにスメアする(smear)か、または油っぽく感じるか;固化融解物はどれくらい硬いか;および固化融解物は油を「浸み出させる(sweat)」か。製剤を比較するために、LMP-2試料を対照として含めた。
【0106】
[00129]LMPを物理的特性に関して順位付けした。結果を表5-Bに示す。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)充填量の低減は、融解物の取り扱い性を有意に改善した。30%および40%充填製剤は、50%充填量よりはるかに良好であったが、45%充填量はわずかに良好であるにすぎなかった。30%および40%カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)製剤は、指の中で脂っぽくならず、極めて硬かった。30%カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)薬物充填量は最高性能の製剤であったが、40%充填量は3位タイであった。カンデリラロウ製剤は柔らかく、スメアしやすく、前に進まなかった。詳細な融解スクリーニング結果を表5-Cに示す。
【0107】
【0108】
【0109】
[00130]カルナウバロウ製剤は、30および40%カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)/コンプリトール製剤に対する50%薬物充填量で類似の取り扱い性特性を有したが、わずかに柔らかく、わずかに脂っぽかった。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)製剤はより硬く、よりロウ状の質感であった。しかし、カルナウバロウ製剤は油の浸み出しを示さなかったが、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)/コンプリトール製剤は油の浸み出しを示した。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)/コンプリトールは浸み出し、より低い薬物充填量で減少した。油の浸み出しは、カルナウバロウを含有する製剤では見られなかった。いかなる1つの理論に拘束されるものではないが、LMP-2の凝集および流量不足は、粒子間にできる液体ブリッジを形成する表面の油によって引き起こされた可能性がある。
【0110】
[00131]回転ディスク処理温度を定めるために、LMP-5、6、9、および11でテストを行って融解物が濁り始めるまたは固化し始める温度を見出した。製剤を100℃で融解させ、次いで温度を5℃ずつ低下させ、最低15分間維持した。各融解物が曇った温度範囲を以下の表5-Dに示す。
【0111】
【0112】
[00132]LMP-5、6、および9全ては単相で冷却され、65~75℃の曇点温度を有した。可能性がある相分離はLMP-11で見られた。80~85℃で融解物の約半分が固化され、2つの相の色に基づき下半分はカルナウバロウが豊富なように見え、上半分はカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)が豊富であった。融解物を室温に冷却した後、少量を最上部から削り取り、手で触ると脂っぽい感じがし、スメアしやすかった。この相分離は、大きな融解ブロックを作った場合は見られず、相分離はゆっくりであり、回転ディスク装置製造中は生じない可能性があることを示唆している。
【0113】
[00133]融解物スクリーニング結果に基づいて、コンプリトール中の薬物充填量がより低い製剤は溶解性能が良く、取り扱い性が改善される可能性が最も高い。カルナウバロウは、50%活性充填量を維持しながら融解物の物理的特性を改善した。
【0114】
実施例6-医薬製剤-LMP-5、LMP-7、LMP-9、LMP-11
[00134]追加の医薬製剤を、本明細書に記載され、以下の表6-Aに反映されているように調製した。
【0115】
【0116】
[00135]回転ディスク装置構成は、ナイロンディスクを加熱ステンレス鋼ディスクに取り替えたこと以外は実施例1とほぼ同一であった。各ランの開始前にステンレス鋼ディスクを融解温度まで上げ、スケールアップバッチに使用した。各製剤の融解温度は、表5-Dからの曇点より高いおよそ10~15℃であった。賦形剤を融解させ、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)を添加する前に、所望の融解温度に達するまでそのままにした。油を添加し、融解温度に達するまで2500rpmで約10分間高せん断混合した。
【0117】
実施例7-製剤LMP-5、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11の特徴付け
[00136]表6-Aに記載されている製剤を、物理的特性、粒径および形態、密度および流量、融点、ならびに力価および純度について特徴付けた。
【0118】
[00137]物理的特徴付けは、主に視覚的および物理的観察によって行った。コアを回収バッグで観察し、LMPコアの凝集傾向によりどれくらいよく流れるかをランク付けした。コアを触り、指の間で擦ってコアの物理的安定性を決定した。物理的観察の結果を表7-Aにリストする。
【0119】
【0120】
[00138]光学顕微鏡を用いて粒径分布を評価した。LMPをガラススライドで均一な層に拡げ、較正粒径測定ソフトウェアを用いて約200~300粒子を測定した。視野内の粒子ごとに測定して選択バイアスを最小化した。D10、D50、D90およびD4.3統計は、レーザー回析およびふるい分析からの歴史的LMPサイズデータが質量/容量加重平均であるため、質量加重ベースを用いて計算した。分布統計を表7-Bに示す。粒径は予測された範囲内にあり、D50は150~200μmである。スパン-
【0121】
【0122】
-は、およそ0.6~0.9超にわたり、製造規模には典型的である。
【0123】
【0124】
[00139]走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてLMPを撮像して、粒径、形状、および形態を評価した。
図9および
図10は、異なる倍率の代表的な画像を示す。粒径および形状を定性評価した。これは、
図10に最もよく見ることができる。粒径は直径50~350μmにわたり、光学顕微鏡を用いて測定したサイズと一致した。LMPの大部分は、小粒子またはサテライト粒子がほとんどない球状であり、良好な微粒化を示している。
【0125】
[00140]
図11は、表面形態を示す。形態は、LMP-1、2、3、および4と一致する。コンプリトールベースのLMP、製剤LMP-5、LMP-7、およびLMP-9は、いずれの明確なパターンも欠く表面の凹凸が顕著な粗い表面を有する。コンプリトール単独は、典型的には六方晶系表面結晶を有する滑らかな表面を示す。形態は、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)がコンプリトールの結晶構造を変化させることを示している。LMP-2製剤は類似した表面形態を有するが、LMP-5ではLMP-2で見られるより表面の皺が多い。カルナウバロウベースのLMP-11は、完全に異なる形態を有する。皺の寄った表面よりむしろ、LMP-11はしぼんだ泡に近いように見える。形態は、回転ディスク装置よりむしろ噴霧積層コーティングとより一致する。全体的に、LMPの形態は典型的ではない。しかし、形態は、LMP-1、2、3、および4の形態と一致する。
【0126】
[00141]かさおよびタップ密度を測定し、Carr指数を計算して、流動助剤としての2%タルクとドライブレンドしたLMPの流動性を定量化した。結果を表7-Cに示す。4つの製剤のかさ密度は類似しており、0.49~0.55g/cm3の間で異なる。良好な流動性を示す最大Carr指数は10であった。これは、各製剤の良好または極めて良好な流動性の目視観察と一致する(表7-Aを参照のこと。誤り!参照元が見当たらず。)
【0127】
【0128】
[00142]製剤をDSCによって特徴付け、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)、ならびに賦形剤コンプリトール888およびカルナウバロウを含む個々の成分の熱特性と比較した(表2-Cを参照のこと)。LMP試料を、実施例2に記載され、表2-Bに概説されている加熱-冷却および冷却-加熱DSC方法を用いて分析した。表7-Dは、試料ごとに3つの複製物の平均を含む。
【0129】
【0130】
[00143]
図12および
図13は、全てが50%カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)とコンプリトール888および/またはカルナウバロウを含有するLMP-2、7、9、および11のサーモグラムオーバーレイを示す。コンプリトールおよびカルナウバロウの両方を含有するLMP-7および9は、凝固温度および融解温度がより低く、また、最小限の取り扱い性、流量不足、および軽度の凝集も示した。カルナウバロウ含量が最も高いLMP-11は高い凝固温度および融点を示し、扱いが容易であり、流れが良かった。興味深いことに、カルナウバロウを含有しないLMP-2は、それぞれ20%および10%カルナウバロウを含有するLMP-7および9より融点が高い。また、50%カプリル酸トリグリセリドでのLMP-2は、40%カプリル酸トリグリセリドを有するLMP-5より融点がわずかに高い。LMP-2、5、および11(コンプリトール単独か、またはカルナウバロウ単独を含有する製剤)は全て、コンプリトールおよびカルナウバのブレンドを含有するLMP-7および9と比べて良好な取り扱い性および流量を示す。これは、両方の賦形剤を含有する製剤の融点降下が原因である、または関係している可能性がある。
【0131】
[00144]
図14A-Hは、投入する(ingoing)賦形剤(コンプリトール888および/またはカルナウバロウ)とLMP製剤を比較する。データは、4つの製剤全てについて、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の添加により賦形剤の融点が低下することを示している。これは、少なくとも部分的な混和性を示すものである。LMP-7および9は、個々の賦形剤(コンプリトール888およびカルナウバロウ)と一致する特有の熱融解パターンを示し、これらの賦形剤が互いに混和性ではなく、固体状態では相分離する可能性があることを示している。2種類の賦形剤を含有するLMP-7および9の取り扱い性は、1種類の賦形剤を含有するLMP-2、5、および11より悪いことが観察された。これは、マトリックスの融点降下につながる好ましくない混合を示唆するものであろう。
【0132】
[00145]LMP製剤の力価および純度を、実施例2で本明細書に記載されているHPLC-CADによって分析した(表2-Fも参照のこと)。全てのピークRRT=1.36~2.55は、純粋な賦形剤対照からは抽出されなかった賦形剤によるピークである可能性がある。いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)は、賦形剤の共溶媒として作用し、対照の純粋な成分単独と比べて、LMPマトリックスからの追加の成分の抽出を助けている可能性がある。
【0133】
[00146]分析の結果を表7-Eにまとめる。LMPの各々の例示的クロマトグラムを
図14A~14Dに示す。カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)の測定された純度プロファイルは、LMP-1、2、および3の純度分析からわずかに変化している。
【0134】
[00147]投入するカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)中に存在する不純物は全て、それぞれ、0.10%および0.12%の増加を示す、LMP-5のRRT=0.31および0.34を除いて量は変わらないままである。多くのピークは低レベルで存在し、カプリル酸トリグリセリドの分解、またはコンプリトール888もしくはカルナウバロウに存在する微量成分の抽出の差に関係している可能性がある。いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、これらのピークは、賦形剤に関係している可能性がある。全不純物の未確認ピークを含め、LMP-1、2、および3中のカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)と比べた可能性がある不純物の量は、0.83~2.00%である。
【0135】
【0136】
[00148]LMP-5、7、9、および11製剤を、実施例3(表3-A、3-B)に概説され記載された方法を用いてUSPII型シンク溶解実験シンク性能テストでテストした。
図16は、LMP-5、7、および9が、24時間までに100±2%LCまで放出されたことを示している。放出速度は、より多くのカルナウバロウをLMPマトリックスに添加すると溶解が遅くなるという点で予測通りの傾向を示す。これは、カルナウバロウがコンプリトール888より疎水性であるためである。LMP-11は、24時間時点で理想的とは言えない性能および不完全な放出を示す。基本LMP-11製剤への細孔形成剤の添加は、望ましい物理的および取り扱い特性を維持しながら、透水性を高めて溶解性能の向上を可能にし得る。
【0137】
[00149]LMP-5(40/60カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)/コンプリトール)およびLMP-11(50/50カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)/カルナウバ)は、4つの製剤のうち取り扱い性および物理的安定性が最も優れていた。LMP-11流動性は、製造後当初は悪かったが、翌日までに有意に改善した。表面からコアへの油再分布、またはワックスマトリックスへの結晶変化が、該現象を説明し得る。2重量パーセントタルクとのブレンドは、各LMP製剤の流動性を改善した。LMP-7(50/30/20カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)/コンプリトール/カルナウバ)およびLMP-9(50/40/10カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール)/コンプリトール/カルナウバ)は、期待を裏切る取り扱い性および物理的安定性であった。コアは、手で触ると油っぽく、塊状で、スメアしやすく、LMP-9はLMP-7より特にそうであった。
【0138】
実施例8-製剤LMP-5、LMP-7、LMP-9、およびLMP-11の安定性
[00150]LMP-5およびLMP-11の安定性を1、3、および6カ月にわたって調べた。LMP約8グラムをLDPEバッグに充填し、ビニタイで閉じた。密閉または乾燥剤の添加なしで、状態を受け入れる適当なチャンバーに試料を充填した。時点および条件を表8-Aに示す。試料を取り出し、試料採取の前に周囲実験室条件に平衡化するままにした。試料を、分析中および分析後に周囲条件で保存した。
【0139】
【0140】
[00151]LMP-5安定性試料の溶解は、LMP-5が1カ月保存後に物理的変化を受けており、性能の変化をもたらしたことを示している。LMP-5溶解結果を
図17Aに示す。40℃/75%RHで保存したLMP-5は、初期の性能と最も類似していた。5℃で保存したLMP-5は、60分を通して同様の溶解速度を有し、その後、速度および程度が低下し、24時間後は65%LCしか溶解しなかった。25℃/65%RHで1カ月保存後、溶解速度は有意に増加し、約3時間までに完全な放出をもたらした。保存後のLMPの目視観察は、25℃/60%RHおよび40℃75%RHで保存したLMPは、見た目および流量が初期の試料と類似していることを示した。5℃で保存したLMP-5は凝集し、油っぽく見え、流量が極めて不足していた。
【0141】
[00152]LMP-11は、1カ月の安定性保存後、LMP-5とは異なる挙動を示した。LMP-11の結果を
図17Bに示す。25℃/60%RHおよび40℃/75%RH試料は、初期のLMP-11と類似した放出速度および程度を示した。しかし、5℃で保存したLMP-11の試料は、溶解速度がより速かった。いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、カプリル酸トリグリセリドの凝固または結晶化は、カルナウバロウマトリックス全体にわたって細孔を形成し、これにより溶解速度を増加させることができた可能性がある。
【0142】
[00153]LMP-5 1カ月安定性試料を周囲条件で1週間保った後にテストして、安定性試料のいずれかに追加のアニーリングが生じるかをテストした。初期のテストと比較した結果を
図17Cに示す。25℃/60%RHまたは40℃/75%RH試料に関して溶解の差は観察されなかった。これは、いずれのアニーリングも1カ月間保存後に完了しており、周囲条件での保存時に変化しなかったことを示している。5℃試料は、わずかに改善した。いかなる1つの理論に拘束されるものではないが、カプリル酸トリグリセリドの凝固が原因で保存中にコンプリトールマトリックスから漏れ出た油は、粒子表面の遊離油の代わりに移動してLMPマトリックスに戻った可能性がある。
【0143】
[00154]
図18A~Hは、1カ月時点のLMP-5形態のSEM画像を示す図である。5℃は初期と比べて表面のこぶが若干多く、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで1カ月保存したLMP-5の表面は、初期より若干滑らかに見える。
図19A~Hは、初期および1カ月保存後のLMP-11のSEM画像を示す。5℃で保存したLMP-11は、初期と比べて表面がより滑らかであり、25℃/60%RHおよび40°C/75%RHで1カ月保存したLMP-11は、表面がわずかにより粗かった。
【0144】
[00155]初期および1カ月後のLMP-5およびLMP-11の熱分析を表8-Bにまとめる。保存後のLMP-5の熱特性の変化は最小であるが、いくつかの小さな違いが存在する。賦形剤融解は、初期の製剤と比べて安定性試料全てでわずかに高い温度で生じるが、融解および凝固イベントの融解熱は振幅が類似している。いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの小さな違いは、安定性状態の試料が物理的変化を受けた可能性、および油が初期の試料より多くコンプリトールから相分離されるという可能性を指している。
【0145】
[00156]安定性状態のLMP-11の熱シグナルは、初期の試料と極めて類似している。1つの観察可能な違いは、冷却-加熱方法における5°℃試料に関するカプリル酸トリグリセリドの融解であり、他の試料よりはるかに高い振幅である。この増加は、カプリル酸トリグリセリドが5℃でカルナウバロウからの相分離を受けたという溶解データからの仮説を支持している。
【0146】
【0147】
[00157]安定性状態で1カ月間保存後の力価および純度について、LMP-5をテストした。結果を表8-Cに示す。1カ月安定性状態のLMP-5に関して、初期純度データからの有意な変化はなかった。
【0148】
【0149】
[00158]1カ月安定後のLMP-5およびLMP-11製剤に関する主な所見は、5℃での保存は、溶解性能に影響を与える相分離を引き起こす可能性があるということである。
【0150】
実施例9-溶解促進剤
[00159]LMP-5およびLMP-11は取り扱い性および物理的特性が良好であったが、溶解速度は最適でなかった。LMP-5およびLMP-11は、それぞれ3時間内および>24時間でAPIの80%を放出した。溶解速度促進剤を添加して、溶解速度を上げる一方で取り扱い性を維持または改善した。溶解促進剤は、LMPへの透水速度を高めること、および/またはLMP製剤からのAPIの輸送を増加させることによって溶解を加速する、水溶性または親水性の賦形剤である。製造プロセスは、以前に記載されたのと同じアプローチに従った。
【0151】
[00160]7つのLMP製剤を製造した。製造概要および取り扱い性ランキングを表9-Aおよび表9-Bに示す。LMPを2wt%タルクとブレンドし、取り扱い性および流動性に関してランク付けした。指の間でLMP粒子を押して硬さを決定し、どれだけ粒子が持ちこたえるかを見るために秤量ボートを決定した。指の間でLMPを擦り、粒子がどのようにして凝集し、スメアし、および軟化するかを評価してスメアを決定した。
【0152】
[00161]細孔形成剤の添加は、BREC1690-155(40/50/10 AC-1204/コンプリトール/レシチン)およびBREC1690-161(60/30/10 AC-1204/カルナウバロウ/PVP k17)を除いて全ての製剤で、LMP-5と比べて取り扱い性を改善した。P407およびPVP k17ベースのLMPは両方とも、薬物充填量を50%に増加させた場合でさえ優れた物理的特性を示した。薬物充填量を60%に押し上げた場合のみ、取り扱い性は許容できなくなった。融解スクリーニングと一致して、P407製剤流量および物理的特性は、翌日の製造を改善するように思われた。PVP-VA 64粒子は極めて硬かったが、製造中互いにおよび回収コーンにくっつくように思われた。これは、規模拡大時に重大な製造問題につながる可能性がある。この製剤は、この理由のためにあまり望ましくない。レシチン90Gは、よく流れない、または物理的に手で触ったときに持ちこたえない極めて柔らかいLMP粒子をもたらした。
【0153】
【0154】
【0155】
[00162]光学顕微鏡を用いて粒径分布を評価した。LMPをガラススライドで均一な層に拡げ、較正粒径測定ソフトウェアを用いて粒子を測定した。視野内の粒子ごとに測定して選択バイアスを最小化した。D10、D50、D90およびD4.3統計は、レーザー回析およびふるい分析からの歴史的LMPサイズデータが質量/容量加重平均であるため、質量加重ベースを用いて計算した。粒径分布統計を以下の表9-Cに示す。粒径は予測された範囲内にあり、D50は150~250μmである。スパンはおよそ0.4~0.7超にわたり、極めて密であり、均一な粒径分布を示している。
【0156】
【0157】
[00163]Scanning Electron Microscopeを用いて粒子をイメージングして、異なる製剤の粒子形態および表面特性を評価した。全ての製剤の粒子形態は、全ての製剤が球状粒子を有するという点で光学顕微鏡観察と一致した。最も柔らかかった2つの製剤(BREC1690-155、161)は、より柔らかく、脂っぽく、あまり硬くないように見える表面を有した。これらの2つの柔らかい製剤は、LMP-5、7、9、および11の表面構造とは異なる唯一のものであった。代表的な画像を
図20A~Hに示す。
【0158】
[00164]かさおよびタップ密度を測定し、Carr指数を計算して、流動助剤としての2%タルクとドライブレンドしたLMPの流動性を定量化した。結果を以下の表9-Dに示す(10mLシリンダー中の全ての試料に関してn=2)。7つの製剤のかさ密度は類似しており、0.49~0.54g/cm3の間で異なった。最大Carr指数は、良好な流動性を示す10であったが、視覚的に流れが最も悪いLMP製剤(BREC1690-161)は他の製剤と同じCarr指数を有し、よく流れなかった。全ての他の製剤は視覚的に極めてよく流れた。2つのリード製剤、BREC1690-156およびBREC1690-162でフローデックス測定も行った。結果を以下の表9-Dに示す。フローデックスは、材料が自由に流れるオリフィスのサイズを見出すことを目標とする粉末流量測定である。ドロップレバーを備えたシリンダー容器に材料を注ぎ、テスト間の一貫性のために30秒間沈降するままにする。次いでレバーを下ろし(材料に支障を来さない)、次いで材料は穴を通って流れるか、または流れない。テストに合格するためには、材料は同じサイズのオリフィスを連続3回流れなければならない。
【0159】
【0160】
[00165]製剤BREC1690-155、156、160、161、および162を、実施例3(表3-Aおよび3-B)で本明細書に概説された方法を用いてシンク溶解性能テストをテストした。溶解速度は、水溶性成分(PVP 17PF、PVP-VA 64またはポロキサマーP407)の添加により増加した。溶解を製剤BREC1690-155、156、160、161、および162でテストした。結果を
図21に示す。以前のコンプリトールベースのLMP(LMP-2およびLMP-5)と溶解促進剤を含むBREC1690-155、156、および162との比較を
図22に示す。以前のカルナウバロウLMP-11と溶解促進剤を含むカルナウバロウ製剤との比較を
図23に示す。
【0161】
[00166]5つの製剤全てについて、溶解促進剤の添加は、溶解促進剤なしの対照製剤と対比して溶解速度を改善した。カルナウバロウを含有する製剤は大きく改善したが、最高性能のカルナウバロウ製剤は、LMP-5より放出が依然として遅かった。追加の最適化は、カルナウバロウベースの製剤のより速い放出速度をもたらし得るが、溶解促進剤を含むコンプリトールベースの製剤ほど速いものはなさそうである。
【0162】
[00167]LMP-5およびBREC1690-156、-157、および162を、in vitro消化によってテストした。消化媒体組成物を表9-Eに記載する。
【0163】
【0164】
[00168]消化緩衝液を表9-Fに記載する。
【0165】
【0166】
[00169]パンクレアチン懸濁液は、消化緩衝液に0.2g/mLブタパンクレアチン(8× USP規格)の上清を含んだ。溶解方法は、0.6N NaOH滴定薬を37.0±1.0℃およびpH6.5で撹拌しながら使用する。
【0167】
[00170]
図24は、BREC1690-156、157、および165コンプリトールベースの製剤のin vitro消化プロファイルを示す。該プロファイルは、互いおよびカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)油対照試料と極めて類似し、全てがin vitro消化においてLMP-5よりはるかに速かった。BREC1690-156および162の力価を調べた。力価は96.9%LC~98.1%LCにわたっていた。
【0168】
実施例10-BREC1690-156および162の安定性
[00171]BREC1690-156および162の安定性を、2週間および1カ月時点で調べた。BREC1690-156および162をLDPEバッグに添加し、ビニタイで閉じた。以下の保存条件:25℃/60%RH、30℃/65%RH、および40℃/75%RHについては、1パッケージあたり約9グラムを添加し、5℃および-20℃コンティンジェンシー(contingency)保存条件については、1パッケージあたり6.5グラムを添加した。密閉または乾燥剤の添加なしで、状態を受け入れる適当な安定性チャンバーに試料を入れた。試料を取り出し、試験のための試料採取の前に周囲条件に平衡化するままにした。コンティンジェンシー試料を5℃および-20℃で保存し、各時点で評価し、見た目の観察を行った。
【0169】
[00172]安定性状態で2週間保存後、両方の製剤の25℃/60%RHおよび40℃/75%RH条件試料を、in vitro消化性能についてテストした。結果を
図25および
図26に示す。ポロキサマーP407を含有するロットBREC1690-156は、初期消化プロファイルと比べて有意な変化がなく、アニーリング効果がない可能性があることを示している。消化速度および程度もカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対照試料と極めて類似している。PVP 17PFを含有するロットBREC1690-162 LMPは、25℃/60%RH試料についてはほとんど変化がなかったが、40℃/75%RHで保存した試料は、初期/T0試料と比べて速い初期消化速度を示した。消化はP407 LMPより大きく、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対照と類似している。これらのデータに基づくと、P407 LMPは製造後のアニーリングステップを必要としないのに対し、PVP 17PF製剤はアニーリングを必要とし得る可能性がある。
【0170】
[00173]BREC1690-156および162、2週間安定性試料のSEMおよびカメラによる画像を得た(
図27A~D、
図27A~D)。安定性状態のLMPの表面構造の見た目は、初期SEM画像には存在しなかったタルクに起因し得る。BREC1690-156 LMPは安定性状態で変化が最小であったのに対し、BREC1690-162 LMPは表面の粗さが有意に増加した。凝集は安定性試料の多くで観察された。しかし、わずかに脂っぽく凝集したままであった5℃試料を除いて、全ての試料は砕けやすく、穏やかな撹拌後に自由流動粉末に戻った。
【0171】
[00174]安定性状態で1カ月保存後、両方の製剤の25℃/60%RHおよび40℃/75%RH条件試料を、in vitro消化性能についてテストした。結果を
図24および
図25に示す。ポロキサマーP407を含有するロットBREC1690-156 LMPは、初期消化プロファイルと比べて有意な変化がなく、アニーリング効果がない可能性があることを示している。消化速度および程度もカプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対照試料と極めて類似している。PVP 17PFを含有するロットBREC1690-162 LMPは、25℃/60%RH試料についてはほとんど変化がなかったが、40℃/75%RHで保存した試料は、初期/T0と比べて速い初期消化速度を示し、同じ条件で保存した2週間試料とは類似した消化速度を示した。消化はP407 LMPより大きく、カプリル酸トリグリセリド(ミグリオール808)対照と類似している。これらのデータに基づくと、P407 LMPは製造後のアニーリングステップを必要としないのに対し、PVP 17PF製剤は、消化速度が2週間分析から有意には変化しなかったことから、2週間以下のアニーリングを必要とし得る可能性がある。
【0172】
[00175]BREC1690-156および162、1カ月安定性試料のSEMおよびカメラによる画像を得た(
図29A~Dおよび
図30A~D)。BREC1690-156 LMPは安定性状態で変化が最小であったのに対し、BREC1690-162 LMPは表面の粗さが有意に増加した。凝集は安定性試料の多くで観察された。しかし、わずかに脂っぽく凝集したままであった5℃試料を除いて、全ての試料は砕けやすく、穏やかな撹拌後に自由流動粉末に戻った。
【0173】
実施例11-追加のマトリックス形成賦形剤
[00176]追加の医薬製剤を、上記の例に記載された回転ディスク手順に従って調製し、初期融解スクリーニングにより評価した。テスト製剤の実行可能性を50/40/10 MCT/コンプリトール/PVP-17(BREC1690-162)のベースライン試料と比較した。マトリックスおよび賦形剤比が異なる約20種類の固有の製剤を評価した。テスト製剤を柔らかさについて手でテストし、BREC1690-162の物理的特性と比較して測定した。テスト製剤が、BREC1690-162に匹敵する迅速な凝固挙動および物理的堅牢性を有するならば、正の結果が生成される。中間の結果は、MCTの放出が不完全な可能性がある、許容可能な物理的堅牢性を有する製剤であり、負の結果は、手にして柔らかすぎる製剤である。
【0174】
[00177]要するに、融解スクリーニングは、水添ヒマシ油(HCO)単独では所望のマトリックス形成特性をもたらさないが、他のロウおよび賦形剤と組み合わせて使用する場合、良好な結果をもたらすことを示した。米ぬかワックスおよびカルナウバロウは両方とも、単独または併用で良好な特性を示す。
【0175】
[00178]融解スクリーニング実験の結果に基づいて、例示的な製剤は本明細書に記載され、以下の表11-Aに反映されている通りである。
【0176】
【0177】
[00179]上記の製剤は全て、50/40/10 MCT/米ぬかワックス/PVP-17を除いて溶融状態で活性材料との良好な混和性を有する。50/40/10 MCT/米ぬかワックス/PVP-17は、一部のPVPが米ぬかワックス相に懸濁されている、PVP/MCT相および溶融米ぬかワックス相のように見える(相の色に基づき)ものへと迅速に相分離する。純粋な米ぬかワックス中のMCT油の混和性は、連続相を形成するのに撹拌を必要としないという点で優れていた。興味深いことに、HCO/カルナウバロウ系は液体状態では容易に連続相を形成するが、凝固状態では賦形剤の相分離を受けるようである。
【0178】
[00180]ホットメルトの「フリック(flicking)」中の凝固動態は上記の製剤全てにわたって同等であり、液滴の凝固は1~2秒で迅速に凝固するLMPの標的直径とサイズが同等であった。
【0179】
[00181]高い融解温度は、凝固した材料の硬さに大きな役割を果たすことが知られているため、HCO単独の性能不良は意外であった。HCO(USP32-NF27によるTm=85~88℃)は、コンプリトール(USP-NFに規定されていない、PhEur 6.0によるTm=65~77℃)より融解温度が高く、良好なマトリックス形成剤であることが以前に示されており、50/40/10 MCT/コンプリトール/PVP-17製剤では硬さが良い。
【0180】
[00182]理論に制限されるものではないが、これは、コンプリトール/PVP-17系が効果的にMCT油をカプセル化し、硬質粒子を形成できる根底にある機構において、グリセリドマトリックスの脂肪酸鎖長およびグリセリドのエステル化のレベルが役割を果たしていることを示唆すると考えられる。コンプリトールは、ベヘン酸(C22)のモノ-、ジ-、およびトリグリセリドの混合物であるが、HCOは主にヒドロキシステアリン酸(C18)のトリグリセリドである。脂肪酸鎖中のアルコール基の存在もHCO製剤の柔らかさに役割を果たしている可能性がある。コンプリトールも一部のPVP-17を可溶化することができるが、HCOはポリマーを分散できず、まして可溶化することはできないことも注目に値する。これは、PVP-17のコンプリトールへの溶解が、該製剤の観察された物理的安定性をさらに増強し得ることを示唆している。
【0181】
[00183]カルナウバロウ/ゲルシールベースの製剤は、最初は柔らかく、ややしなやかであるが、室温で一晩保存すると著しく硬くなることが観察された。理論に制限されるものではないが、これは、カルナウバロウの長鎖を並べ変え、よりしっかり詰め込めるようにする追加の時間に起因すると考えられる。この変化は、HCO/カルナウバロウ系では注目されなかった。この効果は、ゲルシール50/13の乳化作用によって軽減され得る。以前のカルナウバ-ベースの製剤は、さらにより親水性の溶解促進剤ポロキサマー407を利用した。
【0182】
[00184]両方の米ぬかワックスベースの製剤は、かなりの圧力が材料に適用されると液状油を滲み出させるが、そうでなければ固体状態で油漏れを示さない。やはり限定されることを意図するものではないが、これは、マトリックスと混和性なままであることよりむしろ、マトリックスの凝固時に米ぬかワックマトリックス全体にわたってMCT油が液状油ポケットに分布されることを例示している。
【0183】
実施例12-追加の溶解促進剤
[00185]LMPからのMCT油の放出を調査し、改善するために、溶解促進剤のレベルの増加および代替の親水性溶解促進剤GELUCIRE(登録商標)50/13を評価した。GELUCIRE(登録商標)50/13は、例示的なポリオキシルグリセリドとして選択した。これはポロキサマーより疎水性であるが、水性媒体への溶解を可能にする十分な親水性を維持している。
【0184】
[00186]50%MCT充填量の例示的な製剤を以下の表12-Aに提示する。
【0185】
【0186】
[00187]50/30/20 MCT/カルナウバロウ/P407はさらなる試験には柔らかすぎたが、硬化剤により増強することができた。50/40/10 MCT/微結晶ワックス/P407系は「中間」の結果と思われる。その理由は、該製剤の物理的安定性は許容可能であったが、界面活性剤のこの比較的低い充填量では溶解性能が良さそうに思われないためである。
【0187】
実施例13-追加の製剤最適化
[00188]本明細書に記載された選択製剤を、さらなる調査および融解-噴霧-凝固(Melt-Spray-Congeal)(MSC)プロセスによる製造のために選択した。例示的な製剤を以下の表13-Aに示す。
【0188】
【0189】
[00189]テストした製剤は全て、米ぬかワックス/PVP-17/ゲルシール50_13系を除いて、MSC処理のプロトタイプに十分な硬さまで迅速に凝固および固化した。上記の製剤は全て、もやとして見える微細エマルションを形成することが観察された45/35/10/5 MCT/米ぬかワックス/PVP-17/ゲルシール50_13および40/50/10 MCT/米ぬかワックス/ゲルシール50_13を除いて、溶融状態で活性材料との良好な混和性を有した。
【0190】
[00190]成分を単相に安定化させるために、ゲルシール50_13を50/40/10 MCT/米ぬかワックス/PVP-17に添加したが、PVP-17は硬い凝集物を形成し、分散することができなかた。その観察に基づき試験を懸濁した。このアプローチは、親水性がゲルシール50_13よりPVP-17に近い溶解促進剤ポロキサマー407を用いてさらにテストすることができる。以前の試験は、少量のポロキサマーが融解物へのPVP-17の分散を改善し得ることを示した。
【0191】
[00191]初期試験の結果に従って、6つの製剤を製造した。製造した製剤を以下の表13-Bに示す。
【0192】
【0193】
上記の6つの製剤のプロトタイプ製造の製造概要を以下の表13-Cに示す。
【0194】
【0195】
[00192]全ての製剤について、微粒化を高速カメラによって評価した。リガメンタス(ligamentous)で均一な微粒化の観察により、全ての製剤を該製造条件で処理できることをさらに確認した。
【0196】
[00193]各製剤の粒子形状および表面形態をSEMによって評価し、
図31A~35Cに示す。
図31A~Cは、倍率50×(
図31A)、300×(
図31B)、および1500×(
図31C)の50/35/15 MCT/カルナウバロウ/ゲルシール50/13 LMPのSEM画像を示す図である。
図32A~Cは、倍率50×(
図32A)、300×(
図32B)、および1500×(
図32C)の40/40/20 MCT/カルナウバロウ/ゲルシール50/13 LMPのSEM画像を示す図である。
図33A~Cは、倍率50×(
図33A)、300×(
図33B)、および1500×(
図33C)の50/50 MCT/米ぬかワックスLMPのSEM画像を示す図である。
図34A~Cは、倍率50×(
図34A)、300x(
図34B)、および1500×(
図34C)の50/40/10 MCT/コンプリトール/PVP-17 LMPのSEM画像を示す図である。
図35A~Cは、倍率50×(
図35A)、300×(
図35B)、および1500×(
図35Cの40/48/12 MCT/コンプリトール/PVP-17 LMPのSEM画像を示す図である。
【0197】
[00194]本明細書に引用された全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物および特許出願が参照により組み込まれると具体的におよび個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
[00195]本発明は、例示的な態様を参照して記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得、その要素に対して同等物が代用され得ることが当業者に理解されるであろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を教示に適合させるように多くの変更形態がなされ得る。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の態様に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある全ての態様を含むことが意図される。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
組成物全体の少なくとも約30重量%のカプリル酸トリグリセリド、ならびにグリセリド、天然ワックス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のマトリックス形成剤を含む医薬製剤。
[態様2]
グリセリドが、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル(glyceral dibehenate)、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、および三酢酸グリセリルからなる群から選択される、態様1に記載の医薬組成物。
[態様3]
天然ワックスが、水添ヒマシ油(HCO)、カルナウバロウ、および米ぬかワックスからなる群から選択される、態様1に記載の医薬組成物。
[態様4]
マトリックス形成剤が、ジベヘン酸グリセリル、水添ヒマシ油(HCO)、カルナウバロウ、米ぬかワックス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1に記載の医薬組成物。
[態様5]
カプリル酸トリグリセリドが、組成物全体の約30重量%~約60重量%の量で存在する、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様6]
マトリックス形成剤が、組成物全体の約20重量%~約70重量%の量で存在する、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様7]
カプリル酸トリグリセリドが、組成物全体の約30重量%~約60重量%の量で存在し、マトリックス形成剤が、組成物全体の約40重量%~約70重量%の量で存在する、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様8]
カプリル酸トリグリセリドが、組成物全体の約40重量%~約50重量%の量で存在し、マトリックス形成剤が、組成物全体の約50重量%~約60重量%の量で存在する、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様9]
溶解促進剤をさらに含む、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様10]
溶解促進剤が、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリエチレングリコール共重合体、デンプン、米デンプン、レシチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシルグリセリド、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様9に記載の医薬組成物。
[態様11]
溶解促進剤が、組成物全体の約1重量%~約20重量%の量で存在する、態様9または10に記載の組成物。
[態様12]
溶解促進剤が、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)共重合体である、態様9~11のいずれか一項に記載の組成物。
[態様13]
流動助剤をさらに含む、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様14]
流動助剤が、アモルファスシリカゲル、シリカエーロゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、規則性メソポーラスシリカ、微粉化タルク、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様13に記載の医薬組成物。
[態様15]
流動助剤が、組成物全体の0.1%重量~5重量%の量で存在する、態様13または14に記載の医薬組成物。
[態様16]
流動助剤が微粉化タルクである、態様13~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様17]
硬化剤をさらに含む、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様18]
硬化剤が、カルナウバロウ、カンデリラロウ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様17に記載の医薬組成物。
[態様19]
硬化剤が、組成物全体の1重量%~60重量%の量で存在する、態様17または18に記載の医薬組成物。
[態様20]
硬化剤がカルナウバロウである、態様17~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様21]
カプリル酸トリグリセリドおよびグリセリドを含む分散粒子からなる、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様22]
粒子が、約50μm~約350μmの平均直径を有する、態様21に記載の医薬組成物。
[態様23]
粒子が、約100μm~約300μmの平均直径を有する、態様21または22に記載の医薬組成物。
[態様24]
粒子が、10%未満の流動性のCarr指数を示す、態様21~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様25]
医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも40%かつ60%以下が最初の60分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも60%かつ80%以下が120分内に組成物から放出され、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも80%が最初の240分内に組成物から放出される、先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[態様26]
医薬組成物がUSP-II酸曝露後シンク溶解方法論を使用した溶解試験に供される場合、カプリル酸トリグリセリドの少なくとも90%が最初の360分内に組成物から放出される、態様25に記載の医薬組成物。
[態様27]
カプリル酸トリグリセリドの純度が少なくとも95%である、先行する態様のいずれか一項に記載の組成物。
[態様28]
認知機能低下を伴う疾患または障害の治療を必要とする対象における認知機能低下を伴う疾患または障害を治療する方法であって、前記対象のケトン体濃度を上昇させるのに有効な量で先行する態様のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与して、これにより前記疾患または障害を治療するステップを含む方法。
[態様29]
認知機能低下を伴う疾患または障害が、アルツハイマー病および加齢に伴う記憶障害から選択される、態様28に記載の方法。
[態様30]
患者が、ApoE4遺伝子型を欠くかどうかを決定するステップをさらに含む、態様28または29に記載の方法。
[態様31]
組成物が、約0.05g/kg/日~約10g/kg/日の用量で投与される、請求28~30のいずれか一項に記載の方法。