(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】キメラノッチ受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240930BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240930BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240930BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240930BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240930BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240930BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240930BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61K31/711
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2020555518
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 NL2019050212
(87)【国際公開番号】W WO2019199165
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-11
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510197139
【氏名又は名称】スティヒティング・サンクイン・ブルートフォールズィーニング
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アムセン、デルク
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/039247(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/236825(WO,A1)
【文献】特表2018-506293(JP,A)
【文献】国際公開第2017/123559(WO,A2)
【文献】特表2017-516486(JP,A)
【文献】特表2017-531448(JP,A)
【文献】Klebanoff CA. et al.,Customizing Functionality and Payload Delivery for Receptor-Engineered T Cells,Cell,2016年,167(2),304-306
【文献】Roybal KT. et al.,Precision Tumor Recognition by T Cells With Combinatorial Antigen-Sensing Circuits,Cell,2016年,164(4),770-779
【文献】Roybal KT. et al.,Engineering T Cells with Customized Therapeutic Response Programs Using Synthetic Notch Receptors,Cell,2016年,167(2),419-432, e1-e6
【文献】Kondo T. et al.,Notch-mediated conversion of activated T cells into stem cell memory-like T cells for adoptive immunotherapy,Nature communications,2017年,8:15338,p.1-13
【文献】Mathieu M. et al.,Notch signaling regulates PD-1 expression during CD8(+) T-cell activation,Immunology and cell biology,2013年,91(1),82-88
【文献】Pan T. et al.,Notch Signaling Pathway Was Involved in Regulating Programmed Cell Death 1 Expression during Sepsis-Induced Immunosuppression,Mediators of inflammation,2015年,Vol.2015, ID:539841,p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12N 15/00-90
C07K
C12Q
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチ受容体の細胞内ドメイン、ノッチ受容体の膜貫通ドメイン、ノッチ受容体のヘテロ二量体ドメイン及びノッチ受容体のLin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメインと、異種の細胞外リガンド結合ドメインと、を含み、
前記細胞内ドメインは、ノッチシグナル伝達を開始することができ
、前記ノッチシグナル伝達は、前記異種の細胞外リガンド結合ドメインへのリガンドの結合によって誘導される、キメラ受容体。
【請求項2】
前記異種の細胞外リガンド結合ドメインは、
可溶性リガンドに対して特異的なリガンド結合ドメイン、
ScFv抗体ドメインのような細胞表面抗原に対して特異的なリガンド結合ドメイン、
Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメイン又はそのリガンド結合フラグメント、
表面分子の関与なくキメラ受容体に交差結合可能な抗体に対するエピトープを含む細胞外ドメイン、
ビオチンのような部分を含み、作用因子によってストレプトアビジンのような前記部分に対して複数の結合部位と交差結合し得る細胞外ドメイン、
からなる群から選択される、請求項
1に記載のキメラ受容体。
【請求項3】
前記LNRドメインと前記異種の細胞外リガンド結合ドメインとの間に位置する連結配列をさらに含む、請求項1
又は2に記載のキメラ受容体。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体をコードする配列を含む核酸分子。
【請求項5】
請求項
4に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項6】
請求項
4に記載の核酸分子又は請求項
5に記載のベクターを有する単離された細胞。
【請求項7】
前記細胞は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球若しくは好酸球のような免疫細胞、又は腫瘍由来T細胞若しくは腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のようなT細胞である、請求項
6に記載の細胞。
【請求項8】
前記細胞は、がんを患う患者から単離された自己T細胞である、請求項
6又は
7に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞は、請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体を発現する、請求項
7又は
8に記載の細胞。
【請求項10】
前記細胞は、キメラ抗原受容体をさらに発現する、請求項
9に記載の細胞。
【請求項11】
請求項
4又は
5に記載の核酸分子又はベクターによって形質導入される、遺伝子操作された細胞。
【請求項12】
請求項
4に記載の核酸分子、請求項
5に記載のベクター又は請求項
6から1
1のいずれか一項に記載の細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から1
1のいずれか一項に記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を含む、T細胞の機能及び/又はT細胞生存の改善を必要とする対象でのT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善するための医薬組成物。
【請求項14】
対象でのT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善する方法での使用のための、請求項1から1
1のいずれか一項に記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【請求項15】
T細胞の疲弊を防ぐ又は阻害する、請求項1
3に記載の医薬組成物、又は請求項1
4に記載の使用のためのキメラ受容体、核酸分子、ベクター若しくは細胞。
【請求項16】
請求項1から1
1のいずれか一項に記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を含む、免疫療法を必要とする対象での免疫療法のための医薬組成物。
【請求項17】
治療での使用のための、請求項1から1
1のいずれか一項に記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【請求項18】
前記治療が免疫療法である、請求項1
7に記載の使用のためのキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【請求項19】
前記治療又は免疫療法が抗体ベースの免疫療法をさらに含む、請求項1
7又は1
8に記載の使用のためのキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【請求項20】
前記対象は、がんを患っている、請求項1
3、1
5若しくは1
6に記載の医薬組成物、又は請求項1
4、1
5、1
7、1
8若しくは
19に記載の使用のためのキメラ受容体、核酸分子、ベクター若しくは細胞。
【請求項21】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体を発現するT細胞を含む、抗体ベースの免疫療法の有効性を、がんを患い前記抗体で治療されている対象において高めるための医薬組成物。
【請求項22】
抗体ベースの免疫療法の有効性を、がんを患い前記抗体で治療されている対象において高める方法での使用のための、請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体を発現するT細胞。
【請求項23】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体をコードする核酸配列を含むT細胞を含む、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法での使用のための医薬組成物。
【請求項24】
対象におけるがんの治療方法での使用のための、請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ受容体をコードする核酸配列を含むT細胞。
【請求項25】
細胞に請求項
4又は
5に記載の核酸分子又はベクターをin vitroで与えること、及び
請求項1から
3のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現させること、
を含む、請求項
6から1
1のいずれか一項に記載の細胞の集団を製造する方法。
【請求項26】
前記細胞は、ヒトT細胞である、
請求項2
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治療、特にがん治療の分野、より具体的には養子T細胞免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
in vitroで増幅させた、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又はT細胞の養子導入による腫瘍治療で顕著な成功が達成された。腫瘍で発見され、CD3ζ及びCD28又は4-1BB等の共刺激受容体に結合している、抗原特異的な細胞外ドメイン(抗体の一部)をCARは含む(
図1)。T細胞におけるCARの発現は、腫瘍抗原によるそれらの活性化を引き起こす。特定の血液悪性腫瘍において、90%までの完全寛解がCAR T細胞で得られた。固形がんの治療ではほとんど成功していない。このため、いまだに多くの患者がこのような治療法で治療されていない。大きな障害は、導入されたT細胞の準最適な持続性及び、最大の治療効果のためにすべてを標的にしなければならない複数の抑制性受容体によるT細胞機能の阻害(疲弊として知られる現象)である。理想的には、抗腫瘍T細胞が広い範囲で抑制機序の影響を受けず、十分に長期生存することで、完全な腫瘍根絶を達成できる。
【0003】
ノッチは膜結合リガンドに応答する細胞表面受容体である。それは、ひときわ直接経路を介してシグナル伝達し、細胞内ドメインがγ-セクレターゼによって細胞膜から切断され、核に移行し、転写因子として機能する(
図2)。ノッチはCD4及びCD8 T細胞エフェクターの分化の両方の主な調節因子である。また、固形がんに対して最も有効なT細胞のタイプとして出現するCD4メモリーT細胞に加え、組織レジデントメモリーT細胞の長期間の生存をそれは促進する。さらに、ノッチは、CD8エフェクターT細胞の遺伝子発現プログラムの主な調節因子である。その中で直接の標的遺伝子はIFNγ、グランザイムB及びパーフォリンに加え、転写因子T-bet及びエオメソデルミンをコードするものである。ノッチ経路をT細胞特異的に欠くマウスはモデル腫瘍に拒絶反応を示さない。逆に、腫瘍関連骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)はT細胞におけるノッチ発現を下方制御し、おそらく有効なT細胞が介在する拒絶を腫瘍が回避することを促進する。活性のあるノッチアレルの発現は、CD8 T細胞をMDSCが介在する抑制に対して非感受性にする。
【0004】
最近の研究では(非特許文献1及び2)、ノッチの膜貫通ドメインと細胞外ドメインの小部分とを含むキメラ受容体が形成された。それらは別の表面受容体由来のリガンド結合ドメインに結合する一方で、ノッチの細胞内部分が別のトランス活性化因子(Gal4)に置換されている。これら受容体へのリガンドの結合はγ-セクレターゼが介在するGal4の放出をもたらし、その結果、人為的な応答遺伝子の転写を活性化する。このため、これらの受容体には、ノッチの細胞内エフェクタードメイン及びノッチの細胞外リガンド結合ドメインの両方、及びその結果としてノッチシグナル伝達がもはや存在しない。
【0005】
腫瘍の免疫療法に係る新たな組成物及び方法が本技術分野で必要とされており、それは既存の免疫療法と組み合わせて用いられるか、又は組み合わせずに用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Morsut, L., Roybal, K. T., Xiong, X., Gordley, R. M., Coyle, S. M., Thomson, M., and Lim, W. A. (2016) Engineering Customized Cell Sensing and Response Behaviors Using Synthetic Notch Receptors. Cell 164, 780-791
【文献】Roybal, K. T., Rupp, L. J., Morsut, L., Walker, W. J., McNally, K. A., Park, J. S., and Lim, W. A. (2016) Precision Tumor Recognition by T Cells With Combinatorial Antigen-Sensing Circuits. Cell 164, 770-779
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、全般的には、T細胞の機能を、特には腫瘍免疫療法において改善する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、ノッチ受容体の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインと、異種の細胞外リガンド結合ドメインと、を含むキメラ受容体を提供する。さらに好ましくは、キメラ受容体は、ノッチ受容体のヘテロ二量体ドメイン及びLin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメインを含む。
【0009】
本発明に係るキメラ受容体は、異種の細胞外リガンド結合ドメインがリガンドと結合した場合、ノッチシグナル伝達、好ましくはノッチ1、ノッチ2、ノッチ3及び/又はノッチ4シグナル伝達が可能である。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係るキメラ受容体をコードする配列を含む核酸分子を提供する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る核酸分子を含むベクターを提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る核酸分子を有する単離された細胞を提供する。さらなる態様では、本発明は当該細胞の集団を提供する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係るキメラ受容体を発現する単離された細胞を提供する。さらなる態様では、本発明は当該細胞の集団を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、遺伝子操作されたTリンパ球を提供し、該Tリンパ球は、本発明に係る核酸分子又はベクターによって形質導入される。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る核酸分子、ベクター又は細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、T細胞の機能及び/又はT細胞生存の改善を必要とする対象でのT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善する方法を提供し、該方法は、治療上有効量の本発明に係るキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を対象に投与することを含む。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善する方法での使用のための、本発明に係るキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、免疫療法を必要とする対象での免疫療法を提供し、該方法は、治療上有効量の本発明に係るキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を対象に投与することを含む。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、治療、好ましくは免疫療法での使用のための、本発明に係るキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、がんを患い、抗体で治療される対象における抗体ベースの免疫療法の有効性を高める方法を提供し、該方法は、本発明に係るキメラ受容体を発現する治療上有効量のT細胞を対象に投与することを含む。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、抗体ベースの免疫療法の有効性を、がんを患い抗体で治療されている対象において高める方法での使用のための、本発明に係るキメラ受容体を発現するT細胞を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法を提供し、該方法は、本発明に係るキメラ受容体をコードする核酸配列を含む有効量のT細胞を対象に投与することを含む。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるがんの治療方法での使用のための、本発明に係るキメラ受容体をコードする核酸配列を含むT細胞を提供する。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係る細胞の集団を製造する方法を提供し、該方法は、
細胞、好ましくはヒトT細胞を供給すること、
当該細胞に本発明に係る核酸分子又はベクターを与えること、
本発明に係るキメラ抗原受容体を発現させること、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】キメラ抗原受容体(CAR)の概要。4-1BB又はCD28共抑制受容体のいずれかの細胞内シグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータ鎖に結合した抗体のscFv(単鎖)リガンド結合部分が示されている。
【
図2】ノッチシグナル伝達経路。薄い青色及び赤色でノッチの2つの膜結合リガンドであるJaggedとDeltaが示されている。ノッチ受容体はオレンジ色で描かれている。リガンド結合後、ノッチの細胞内ドメイン(NICD)が膜から切り出され、核に移行し、そこでCSL及びMAMLタンパク質と複合体となって転写活性化因子を形成する。
【
図3】ノッチ欠損は、抗ウイルスCD8 T細胞におけるエフェクター機能の減少を導く。(A)実験のフローチャート。野生型(Notch1
flox/floxNotch2
flox/flox)又はT細胞特異的ノッチ1/2ノックアウトマウス(Notch1
flox/floxNotch2
flox/floxCD4-Cre)をHkX31インフルエンザウイルスに鼻腔内から感染させ、10日後にT細胞(脾臓から示された結果)が単離され、CD8及びD
bNP
366-374 MHCテトラマーへの結合に関して染色された(B)。(C)野生型(黒い棒)又はノッチ1/2KOマウス(無色の棒)におけるD
bNP
366-374-特異的CD8
+ T細胞の個数。D
bNP
366-374-特異的CD8
+ T細胞におけるIFNγ(D)又はグランザイムB産生細胞の割合(E 青色のヒストグラムが野生型;赤色のヒストグラムがN1/2ko)。(F)FACSで分けられたD
bNP
366-374-特異的CD8
+ T細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンの相対的なmRNA発現量。(G)HkX31ウイルスの担持量(H)マウスの体重曲線及び(I)感染マウスの血液におけるインフルエンザ中和抗体の力価。すべてはBacker et al.2014の結果である。
【
図4】有効なメモリー産生におけるノッチに関するCD8 T細胞内因性の要件。まず、野生型又はノッチ1/2ノックアウトマウスをHkX31インフルエンザウイルスに鼻腔内で感染させ、続いて43日後にPR8インフルエンザに再感染させた。(A)再感染後8日の血液におけるD
bNP
366-374MHCテトラマー結合CD8
+ T細胞の割合。(B)脾臓及び肺におけるD
bNP
366-374MHCテトラマー結合CD8
+ T細胞の個数。(C)Rag1欠損マウスがCD45.2
+ WT BM(黒い棒)と混合した、又はCD45.2
+ ノッチ1/2KO BM(無色の棒)と混合したCD45.1
+ WT骨髄(BM)で再構成された。続いて、マウスをAのように感染及び再感染させた。左にCD45.1
+ CD8
+ T細胞の応答、右にCD45.2
+ CD8
+ T細胞の応答が示される。また、CD45.2
+ KO BMのみ(灰色の棒)で再構成された応答も示される。結果は、対応するWT対照に対して正規化された。(D)肺から単離され、NP
366-374ペプチドを用いてin vitro再刺激されたIFNγ、TNFα及びグランザイムB産生CD8 T細胞、及び野生型の脾臓の抗原提示細胞の割合(ここで留意すべきはインフルエンザ特異的T細胞の個数が肺と類似したことである-
図4B参照)。
【
図5】ノッチ欠損は抗ウイルスCD8 T細胞におけるエフェクター機能の低下につながる。(A)野生型又はT細胞特異的ノッチ1/2ノックアウトマウス由来のインフルエンザ特異的エフェクターCD8 T細胞間で異なる発現の(RNAseqで得られた)遺伝子の遺伝子セット濃縮解析。(B)野生型又はノッチ1/2koエフェクターT細胞におけるPD1及びLag3のmRNA発現量。(C)10
4 CD45.2野生型又はノッチ1/2ko OT1 T細胞がCD45.1野生型共通遺伝子マウスに移され、続いて該マウスを、インフルエンザを発現するオボアルブミンNP
366-374ペプチドに感染させた。感染後30日の肺におけるインフルエンザ特異的メモリーCD8 T細胞でのPD1に関する代表的なFACSヒストグラム(左)及びMFI(右)。(D)実験のフローチャート:CD45.2 OT1 T細胞が空ベクター又はレトロウイルスベクターをコードするNICD(ノッチ細胞内ドメイン)で形質導入され、(C)のように感染させたCD45.1野生型マウスに移された。7日後、T細胞が単離され、PD1発現量に関してFACSで解析された(E)。
【
図6】生理学的なノッチ応答はNICDにかなり敏感である。(A)ノッチ応答性HES1-ルシフェラーゼレポーターの活性化が異なる量のmER-NICD1又は構造的NICD1発現の核放出によって誘導された。U2OS細胞がホタルルシフェラーゼを発現するレポータープラスミド、構造的にウミシイタケルシフェラーゼを発現するプラスミド及び空ベクター対照、mER-NICD又はNICD1でそれぞれ形質導入された。タモキシフェン(4-HT)が示された濃度で添加された。ホタルルシフェラーゼ活性が同じ試料のウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化され、空ベクター対照試料の何倍かで示された(平均+SD)。留意されるべきは、MER-NICDが4-HTなしで15.2倍の漏れ誘導(leaky induction)を生じさせることである。(B、C)対照のOP9細胞との共培養の2週間後の胸腺細胞のフローサイトメトリー分析。CD34
+CD1a
-前駆細胞が共培養の前にNICD1、mERNICD1又は空ベクター対照で形質導入された。タモキシフェンが示された濃度で、mER-NICD1及び空ベクター導入培養物に添加された。(B)形質導入された細胞がCD4及びCD8の表面発現に関して解析されT細胞の分化が評価された。(C)形質導入系統の細胞におけるCRTH2の発現によって決定されたILC2分化。
【
図7】抗TA-chノッチ受容体。ノッチのLNR、ヘテロ二量体、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインが隣接した細胞の表面分子、例えば腫瘍抗原(TA)に対する抗体新細胞外ドメインに融合される。腫瘍細胞等の相対する細胞におけるリガンドへの抗体ネオ細胞外ドメインの結合は、TACE及びγ-セクレターゼによる切断を誘導する結果、NICDが核へ移行し、内因性ノッチ標的遺伝子の転写が促進される。抗TA-chノッチ受容体は、表面抗原の活性化なしでは不活性である。
【
図8】ノッチ1受容体のアミノ酸配列。UniProtKB/Swiss-Prot:P46531.4の配列。
【
図9】ノッチは疲弊の顕著な特徴の進行からCD8 T細胞を保護する。(A)OT-1 CD8
+ T細胞が活性化され、IRES-Thy1.1と結合したEV又はNICDを発現するウイルスで形質導入され、5日間置かれた。続いて、細胞がB16-F10黒色腫細胞(オボアルブミンを発現しない)と、一晩共培養され、次に(形質導入された細胞を同定するため)Thy1.1及びグランザイムBについて染色され、フローサイトメトリーで解析された。留意すべきは、Thy1.1-細胞は、解析の対象外であることである。さらに留意すべきは、Thy1.1の発現量が、NICD挿入物の大きさのために、EVとNICDコンストラクトとの間で異なることである。(B)OT-1 T細胞が活性化され、(A)のように形質導入された。形質導入後5日で、細胞がさらに6日間培養され、疲弊を誘導する繰り返しのTCR刺激のために、オボアルブミンを発現する新しいB16-F10黒色腫細胞(B16-Ova)が毎日加えられた。次に、細胞がThy1.1及びPD1について染色され、フローサイトメトリーで解析された。(C)OT-1 CD8
+ T細胞が(B)のように処理され、図に示されたたように、回数の異なるB16-Ovaとの共培養の後に、Thy1.1
+細胞の割合がフローサイトメトリーで解析された。(D)OT-1 CD8
+ T細胞が活性化され、EV又はmER-NICD(NICDのタモキシフェン誘導可能型)を発現するウイルスで形質導入され、タモキシフェンなし、又は0.05mM(+)若しくは0.5mM(++)タモキシフェンありで、(C)に示されたようにB16-Ovaとともに培養された。続いて、Thy1.1
+細胞がIFNg、IL10、グランザイムB及びPD1の発現に関してフローサイトメトリーで解析された。
【
図10】CD19に対するキメラノッチ受容体(CNR)の生成と発現。(A)実験の概要。CNRはヒトCD19に特異的な細胞外ScFvドメインを含む。ヒトIgG1 Fcタンパク質に融合されたヒトCD19タンパク質がCNRの表面発現の検出に使用された。そして、蛍光標識された抗ヒト抗体がhCD19-Ig融合タンパク質の検出に用いられた。PEST=ノッチPESTドメイン;AF647=Alexa Fluor 647。(B)HEK293T細胞にCNR発現コンストラクト又は対照が形質導入され、次に、hCD19-Igなし、又は異なる濃度のhCD19-Igありに続いて蛍光標識された抗ヒト抗体で染色された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、リガンド結合に続くノッチシグナル伝達を機能させるキメラ受容体に関し、受容体はノッチの細胞内エフェクター及び膜貫通ドメインと、異種の細胞外リガンド結合ドメインとの組み合わせから作製される。ノッチシグナル伝達がT細胞におけるPD1(プログラム死タンパク質1)及びLAG3(リンパ球活性遺伝子3)等のT細胞特異的抑制性受容体の発現を抑制することを本発明者は見出した。腫瘍はこのような抑制性分子の上方制御を介して抗腫瘍T細胞応答を抑制することで免疫破壊を回避することが多い。このため、ノッチの治療的活性化は、ヒト患者における腫瘍に対するT細胞応答を増強するための魅力的な標的である。いまのところ、ノッチの治療的使用は2つの問題のために妨げられている。まず、多くの種類の細胞でのノッチの機能及びその全身での活性化は多くの副作用を生じさせるおそれがある。次に、過度のノッチシグナル伝達はがんの原因となり得る。ノッチの細胞内エフェクタードメインを異種の細胞外結合ドメインと組み合わせた場合にノッチシグナル伝達が維持されることを発明者は見出したことで、時間的にも体内での位置的にもノッチシグナル伝達の活性化の制御が可能となるため、それらの欠点が回避できる。これは、本発明のキメラ受容体が最適な異種リガンドに応答するためである。実施例では、ヒトノッチ1タンパク質の5’末端と融合したヒトCD19に対するScFv抗体ドメインからなるキメラノッチ受容体の調製が説明される。
【0027】
よって、本発明は、ノッチ受容体の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインと、異種の細胞外リガンド結合ドメインとを含むキメラ受容体を提供する。さらに好ましくはキメラ受容体は、ノッチ受容体のヘテロ二量体ドメインとLin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメインを含む。
【0028】
ノッチ受容体ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3及びノッチ4、並びにそれらの配列に加え、ノッチ細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、ヘテロ二量体ドメイン、Lin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメイン及びネガティブ調節領域(NRR)等のそれら受容体における異なるドメイン及びそれらの配列は本技術分野で既知である。よって、当業者は本発明に係るキメラ受容体を製造又は使用する場合に、適切なドメインを良好に選択することができる。
【0029】
本明細書で使用された場合、“ノッチ受容体の細胞内ドメイン”は、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3又はノッチ4シグナル伝達、好ましくはノッチ1又はノッチ2シグナル伝達を開始することができる細胞内ドメインを意味する。したがって、本発明に係るキメラ受容体は、ノッチシグナル伝達、好ましくはノッチ1、ノッチ2、ノッチ3及び/又はノッチ4シグナル伝達、より好ましくはノッチ1及び/又はノッチ2シグナル伝達が可能である。異種の細胞外リガンド結合ドメインがリガンドに結合した場合に、ノッチシグナル伝達、好ましくはノッチ1、ノッチ2、ノッチ3及び/又はノッチ4シグナル伝達、より好ましくはノッチ1及び/又はノッチ2シグナル伝達が誘導される。このため、“ノッチシグナル伝達が可能”とは、キメラ受容体の異種の細胞外リガンド結合ドメインがリガンドに結合した場合、ノッチシグナル伝達が誘導されることを意味する。ノッチ細胞内ドメインは当業者によく知られている。好ましくは、それはノッチ細胞内ドメイン(NICD)を含み、これは、完全なままのノッチ受容体、好ましくはノッチ1又はノッチ2の、より好ましくはヒトのノッチ1のNICD、又はNICDのノッチシグナル伝達経路開始部分の、ノッチ細胞外ドメインへのリガンドの結合後にγ-セクレターゼによって切断されるドメインである。当該部分は、ノッチシグナル伝達を開始させることができる。さらに、好ましい実施の形態におけるキメラ受容体は、ノッチ1のC末端トランス活性化ドメイン、RAMドメイン及びアンキリンリピートを含む細胞内ドメイン全体を有する。
【0030】
C末端PEST領域を含むか欠くNICDを使用することができる。この領域の欠失によって、NICDタンパク質がより安定になり、シグナル伝達がより強く、より持続する。よって、特定の好ましい実施の形態では、ノッチ受容体の細胞内ドメインは、
図8に示された配列の1744番目から2424番目のアミノ酸、ノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列、又は当該配列に少なくとも同一性90%の配列を有する。当該配列は好ましくはノッチシグナル伝達を開始することができる。当該配列は
図8に示された上記配列の1744番目から2424番目のアミノ酸に好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。特に好ましい実施の形態では、ノッチ受容体の細胞内ドメインは、
図8に示された配列の1744番目から2424番目のアミノ酸を含み、より好ましくは、それは
図8に示された配列の1744番目から2424番目のアミノ酸からなる。細胞内ドメインは、ノッチ1の示された配列、したがって
図8に示された配列の1744番目から2424番目のアミノ酸を有することが好ましい。
【0031】
他の好ましい実施の形態では、NICD全体が使用され、ノッチ受容体の細胞内ドメインは、
図8に示された配列の1744番目から2555番目のアミノ酸、ノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列、又は当該配列に少なくとも同一性90%の配列を有する。当該配列は好ましくはノッチシグナル伝達を開始することができる。当該配列は
図8に示された上記配列の1744番目から2555番目のアミノ酸に好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。特に好ましい実施の形態では、ノッチ受容体の細胞内ドメインは、
図8に示された配列の1744番目から2555番目のアミノ酸を含み、より好ましくは、それは
図8に示された配列の1744番目から2555番目のアミノ酸からなる。細胞内ドメインは、ノッチ1の示された配列、したがって
図8に示された配列の1744番目から2555番目のアミノ酸を有することが好ましい。
【0032】
本明細書で用いられた場合、“ノッチ受容体の膜貫通ドメイン(TMD)”はノッチ1、ノッチ2、ノッチ3又はノッチ4、好ましくはノッチ1又はノッチ2の膜貫通ドメインを意味する。ノッチ膜貫通ドメインは当業者によく知られている。特に好ましい実施の形態では、ノッチ受容体の膜貫通ドメインは、
図8に示された配列の1736番目から1743番目のアミノ酸若しくはノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列、又は当該配列に少なくとも同一性90%の配列を有する。当該配列は好ましくはγ-セクレターゼによるNICDの切断を開始することができる。当該配列は
図8に示された上記配列の1736番目から1743番目のアミノ酸に好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。特に好ましい実施の形態では、ノッチ受容体の膜貫通ドメインは、
図8に示された配列の1736番目から1743番目のアミノ酸を含み、より好ましくは、それは
図8に示された配列の1736番目から1743番目のアミノ酸からなる。TMDは、ノッチ1の示された配列、したがって
図8に示された配列の1736番目から1743番目のアミノ酸を有することが好ましい。
【0033】
ノッチ受容体のヘテロ二量体ドメインとLin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメインとが受容体のネガティブ調節領域(NRR)を形成する。ノッチLNRドメイン、ヘテロ二量体ドメイン及びNRRは、当業者によく知られている。ヘテロ二量体ドメイン及びLNRリピートは、本発明のキメラ受容体における異種の細胞外リガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。ドメインの順番は、好ましくは異種の細胞外リガンド結合ドメイン-LNRドメイン-ヘテロ二量体ドメイン-膜貫通ドメインである。標準的なノッチシグナル伝達は、ノッチ受容体へのリガンドの結合で開始される。これによって、ADAMメタロプロテアーゼが介在するヘテロ二量体の細胞外フラグメントの切断が起こる。そして、膜に連結されたフラグメントがγ-セクレターゼによって切断され、ノッチの細胞内フラグメント(NICD)が放出される。ヘテロ二量体ドメイン及びLNRドメインは、ノッチ受容体のNRRに位置し、それは、リガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にある。LNRは、リガンド結合がない場合に、受容体の休止した構造での維持に関与し、すなわち、ADAMメタロプロテアーゼによる切断を妨げるか阻害する。好ましい実施の形態では、キメラ受容体は、ノッチ受容体のネガティブ調節領域(NRR)全体を含む。好ましくは、このNRRは、
図8に示された配列の1447番目から1735番目のアミノ酸、ノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列、又は当該配列に少なくとも同一性90%の配列を有する。当該配列は
図8に示された上記配列の1447番目から1735番目のアミノ酸に好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。特に好ましい実施の形態では、このNRRは、
図8に示された配列の1396番目から1735番目のアミノ酸、ノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列、又は当該配列に少なくとも同一性90%の配列を有する。当該配列は
図8に示された上記配列の1447番目から1735番目のアミノ酸に好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の同一性を示す。この配列では、ノッチ配列の細胞外部分がプロリン1396まで拡張されると(
図8参照)、リガンド結合がない状態において、より短いコンストラクトよりも確実に休止した受容体となる。本発明のキメラ受容体は、受容体を細胞膜に向かわせるシグナルペプチドをさらに任意に含む。NRRは、ノッチ1の示された配列、したがって
図8に示された配列の1447番目から1735番目又は1396番目から1735番目のアミノ酸を有することが好ましい。
【0034】
特に好ましい実施の形態では、本発明のキメラ受容体は、ノッチ受容体の細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、ヘテロ二量体ドメイン及びLin-12-ノッチ(LNR)リピートドメインと、異種のリガンド結合ドメインとを、好ましくは示された順番で含む。よって、本発明の好ましいキメラ受容体は、
図8に示された配列の1447番目から2424番目のアミノ酸、又はノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列を含む。さらに特に好ましい実施の形態では、本発明のキメラ受容体は、
図8に示された配列の1447番目から2555番目のアミノ酸、又はノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列を含む。さらに特に好ましい実施の形態では、本発明のキメラ受容体は、
図8に示された配列の1396番目から2424番目のアミノ酸、又はノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列を含む。さらに特に好ましい実施の形態では、本発明のキメラ受容体は、
図8に示された配列の1396番目から2555番目のアミノ酸、又はノッチ1以外のノッチ受容体の対応する配列を含む。キメラ受容体は、ノッチ1の上記配列、したがって
図8に示された配列を含むのが好ましい。
【0035】
本明細書で用いられた場合、用語“異種のリガンド結合ドメイン”は、ノッチ受容体のリガンド結合ドメイン以外のドメイン、すなわち、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3又はノッチ4の細胞外リガンド結合ドメイン以外のドメインを意味する。異種のリガンド結合ドメインは、選択されるリガンドが結合し得る任意のドメインでもよい。特に、リガンド結合ドメインは、任意の細胞表面抗原又は任意の可溶性リガンドの結合パートナーでもよい。異種のリガンド結合ドメインの汎用性によって任意の特定の用途に関して適切なリガンドが選択できる。このように、本発明のキメラ受容体によるノッチシグナル伝達の活性化は、選択した時間、選択した位置/細胞種、又はその両方に誘導され得る。適した細胞外リガンド結合ドメインの好ましい例は、可溶性リガンドに特異的なリガンド結合ドメイン、細胞表面抗原に特異的なリガンド結合ドメイン、及びそれらの組み合わせである。より好ましい例は以下である。
・抗体又は細胞表面抗原に特異的な単鎖可変フラグメント(scFv)等の抗体の抗原結合部位
・抗体又は細胞表面抗原に対する抗体のエピトープ、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメントに特異的な単鎖可変フラグメント(scFv)のよう抗体の抗原結合部位
・Fc受容体の細胞外Fc結合ドメイン又はそのリガンド結合フラグメント
・表面分子の関与なくキメラ受容体に交差結合可能な抗体に対するエピトープを含む細胞外ドメイン
・ビオチンのような部分を含み、作用因子によってストレプトアビジンのような前記部分に対して複数の結合部位と交差結合し得る細胞外ドメイン(当該作用因子の添加で複数のキメラ受容体のクラスターがもたらされる)
【0036】
原則として、表面抗原の次のタイプが本発明に応じて用いられる。
1.腫瘍特異性抗原
2.非腫瘍細胞での発現量と比較して腫瘍細胞での発現量が高い抗原
3.腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の両方で発現しているものの、本発明のキメラ受容体を発現するT細胞の活性化が非腫瘍細胞によって誘導されることで許容できる副作用を生じるCD19及びCD20等の抗原
4.腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の両方で発現しているものの、1種以上の抗原との組み合わせにおいて腫瘍細胞に特異的なT細胞エピトープ等の抗原、及び
5.腫瘍の周囲の細胞で発現するPDL1及びPDL2等の抗原
【0037】
好ましい実施の形態では、細胞表面抗原が腫瘍抗原で、異種の細胞外リガンド結合ドメインが当該腫瘍抗原に特異的な抗体又は抗体の抗原結合部位である。腫瘍抗原の好ましい例は、TAG-72、カルシウム活性化塩素チャンネル2、9D7、Ep-CAM、EphA3、Her2/neu、メソセリン、SAP-1、BAGEファミリー、MC1R、前立腺特異抗原、CML66、TGF-βRII、MUC1、CD5、CD19、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD152(CTLA-4)、CD274(PD-L1)、CD273(PD-L2)、CD340(ErbB-2)、GD2、TPBG、CA-125、MUCl、未熟ラミニン受容体及びErbB-1である。
【0038】
当業者は、本発明に係るキメラ抗原受容体に使用され得る可溶性リガンドとそれらの結合パートナーとを同定することができる。適した可溶性リガンドの例は、キメラノッチ受容体の細胞外ドメインにおけるエピトープに対する抗体又はキメラノッチ受容体のビオチン化された細胞外ドメインとの組み合わせにおけるストレプトアビジン等の分子である。可溶性リガンドに特異的なリガンド結合ドメインと細胞表面抗原に特異的なリガンド結合ドメインとの組み合わせでもよい。この場合、ノッチシグナル伝達は、可溶性リガンドと細胞表面抗原とが両方存在するという条件のみで誘導されるだろう。例えば、細胞外ドメインは、腫瘍の表面抗原に対する別の抗体(“スイッチ”抗体)にそれ自体が組み込まれた、ペプチドネオエピトープに対する、又はビオチンもしくはFITC部分に対する抗体からなってもよい。結果として、スイッチ抗体の標的となる細胞表面抗原に加え、スイッチ抗体自体も存在することを条件として、キメラノッチ受容体の活性化が起こるだけである。この提唱は、参照することで本明細書に組み入れられるMa et al 2016に記載されており、受容体の一時的なコントロール(望む場合のみに有効又は無効にする)とともに量的なコントロール(スイッチ抗体の濃度を増加又は減少させることによる)を可能にする。
【0039】
本発明のキメラ受容体は、膜貫通ドメインと異種の細胞外リガンド結合ドメインとの間に位置する連結配列をさらに任意に含む。当該連結配列は、好ましくは30個までのアミノ酸、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸である。
【0040】
アミノ酸配列又は核酸配列の同一性の割合、又は用語“%配列同一性”は、本明細書では、2つの配列を、必要に応じて最大の%同一性を与えるようにギャップを導入して位置合わせしたときの、参照のアミノ酸配列の残基又は核酸配列の残余と同一であるアミノ酸配列の残基又は核酸配列の残余の全長に対する割合として定義される。位置合わせの方法及びコンピュータプログラムは、本技術分野でよく知られており、例えば“Align 2”である。
【0041】
本明細書で説明されるアミノ酸配列において、アミノ酸は一文字の記号で示される。これらの一文字の記号及び三文字の記号は当業者によく知られており、次の意味がある。A(Ala)はアラニン、C(Cys)はシステイン、D(Asp)はアスパラギン酸、E(Glu)はグルタミン酸、F(Phe)はフェニルアラニン、G(Gly)はグリシン、H(His)はヒスチジン、I(Ile)はイソロイシン、K(Lys)はリシン、L(Leu)はロイシン、M(Met)はメチオニン、N(Asn)はアスパラギン、P(Pro)はプロリン、Q(Gln)はグルタミン、R(Arg)はアルギニン、S(Ser)はセリン、T(Thr)はスレオニン、V(Val)はバリン、W(Trp)はトリプトファン、Y(Tyr)はチロシン。
【0042】
本明細書で用いられる場合、用語“特異的な”及び“特異的に結合する”又は“特異的に結合可能な”は、リガンドとリガンド結合ドメインとの間、例えば、抗体又はその抗原結合部位とその抗原又は可溶性リガンド及びその結合パートナーとの間の非共有結合性の相互作用を意味する。それは、リガンドが選択的に他のドメインよりも上記のリガンド結合ドメインに結合することを示す。
【0043】
本明細書において、“抗体の抗原結合部位”は、抗体として同じ抗原に特異的に結合することができる抗体の部位を意味するが、必ずしも同じ程度でなくてもよい。その部位は、必ずしも抗体それ自身に含まれる必要はなく、単鎖可変フラグメント(ScFv)、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の融合タンパク質のように、ともに抗原に結合可能な抗体の異なるフラグメントを含んでもよい。
【0044】
本明細書で用いられる場合、“細胞表面抗原”は、細胞の細胞外表面に発現する抗原又は分子を意味する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、“腫瘍抗原”は腫瘍の細胞に発現する抗原を意味する。また、腫瘍抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)と言われる。
【0046】
本明細書で用いられる場合、“可溶性リガンド”は、水溶性リガンドを意味し、これに対する結合パートナーが本発明のキメラ受容体の細胞外ドメインとして使用されてもよい。可溶性リガンドは、例えば静脈注射等の注射又は経口で対象に投与されるのが好ましい。
【0047】
また、本発明に係るキメラ受容体をコードする配列を含む核酸分子が提供される。本発明に係る上記核酸分子を含むベクターが提供される。好ましい実施の形態では、ベクターはウイルスベクターであって、例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである。他の好ましい実施の形態では、ベクターはトランスポゾンを含むかトランスポゾンである。上記核酸分子又はベクターは、ベクターが導入された特定の細胞で発現させる、例えばウイルス起源の強いプロモーター等の高い発現量のための手段及びシグナル配列のような他の成分を追加で含んでもよい。好ましい実施の形態では、核酸分子またはベクターは、1種以上の次の成分:EF1aプロモーターまたはMSCVの5’LTR等のT細胞での発現を促進するプロモーター、GMCSFタンパク質由来または細胞膜に向かわせるためのCD8タンパク質由来のC末端シグナルペプチド及びポリアデニル化シグナルを含む。
【0048】
また、本発明に係る核酸分子またはベクターを有する、単離された細胞が提供される。単離された細胞は、好ましくはナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞のような免疫細胞である。核酸分子又はベクターは、レンチウイルス形質導入、レトロウイルス形質導入、DNAエレクトロポレーション又はRNAエレクトロポレーションのような本技術分野で知られた任意の方法で、細胞、好ましくは免疫細胞内に導入されてもよい。核酸分子又はベクターは、一時的に、好ましくは安定的に、のいずれかで細胞に供される。細胞に対する核酸の形質導入又はエレクトロポレーションの方法は、当業者に知られている。
【0049】
一般に、本発明のキメラ受容体は、有利には、T細胞の機能及び/又はT細胞の生存、好ましくは腫瘍に対するT細胞の反応を改善するために使用される。よって、T細胞の機能及び/又はT細胞の生存を、それらを必要とする対象において改善するための方法が提供され、当該方法は、本発明に係る治療上有効量のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞、好ましくはT細胞を対象に投与することを含む。T細胞の機能及び/又はT細胞の生存を改善することは、T細胞疲弊を防ぐ又は阻害することを好ましくは含む。好ましい観点では、対象はがんを患っている。上記の細胞は、好ましくはT細胞、好ましくはがんを患う対象の自己T細胞であって、例えば腫瘍由来T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又は対象の血液から単離されたT細胞である。
【0050】
また、本発明に係るキメラ受容体、核酸分子若しくはベクター、又は本発明に係る核酸分子若しくはベクターを有する、治療に使用するための細胞が提供される。好ましくは、当該治療は、免疫療法、より好ましくは腫瘍免疫療法である。好ましい実施の形態では、当該腫瘍免疫療法は、養子細胞導入、より好ましくは養子T細胞導入を含む。
【0051】
このため、免疫療法を必要とする対象への免疫療法の方法も提供され、該方法は、本発明に係る治療上有効量のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を対象に投与することを含む。好ましい実施の形態では、当該方法は、本発明に係る細胞又は細胞集団の投与を含む。
【0052】
“養子細胞導入”は患者に細胞を導入することを意味する。特に、“養子T細胞導入”は、患者にT細胞を導入することを意味する。細胞は、患者自身から生じたものでもよいし、他の個人由来のものでもよい。養子T細胞導入は、血液から単離された、好ましくは治療される対象又は患者由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)又はT細胞の導入を含むのが好ましい。血液から単離されたT細胞が使用される場合、望ましくは、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)又は腫瘍特異的T細胞受容体をさらに発現する。
【0053】
“TIL”は、治療される患者の腫瘍に又は腫瘍の周囲にある自己T細胞を意味する。T細胞はin vitroで増殖、例えばインターロイキン-2(IL-2)等のサイトカイン及び抗CD3抗体とともに培養され、患者に導入されて戻される。in vivo投与で、TILは腫瘍及び標的の腫瘍細胞に再浸潤する。TIL治療の前に、患者は腫瘍致死を抑制し得る体内のリンパ球を枯渇させるために骨髄非破壊的化学療法を受けても良い。リンパ球の枯渇が完了してから、任意にIL-2と組み合わせたTILが患者に注入される。TILを含む養子T細胞導入を用いた免疫療法の方法は、本技術分野でよく知られている。好ましい実施の形態では、本発明に応じて使用されるTILには、患者から単離された後に本発明に係る核酸分子又はベクターが与えられる。さらに好ましくは、TILが本発明に係るキメラ受容体を発現する。
【0054】
本明細書で用いられる場合、“免疫療法”は疾患又は障害を患う個体を、当該個体における免疫応答を誘導又は増強することで治療することを意味する。腫瘍免疫療法は、腫瘍及び/又は当該腫瘍の細胞に対する個体の免疫応答を誘導又は増強することに関する。本発明に係る免疫療法は、治療又は予防のいずれのためであってもよい。“治療”は、免疫療法の成分が存在する腫瘍を改善又は阻害することで免疫応答を誘導又は阻害することを意味する。“予防”は、免疫療法の成分が防御免疫応答を誘導し、がんの進行から個体を保護することを意味する。
【0055】
また、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法が提供され、該方法は、本発明に係るキメラ受容体をコードする核酸配列を有する有効量のT細胞を対象に投与することを含む。当該T細胞は、好ましくは自己T細胞、例えば対象の血液から単離されるTIL又はT細胞である。
【0056】
本発明に係るキメラ受容体ベース、及び/又は本発明に係るキメラ抗原受容体をコードする又は本発明に係るキメラ抗原受容体を発現する核酸分子が与えられた細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはTIL等の自己T細胞又は血液から単離されたT細胞ベースの治療を用いて治療又は予防される腫瘍は、いかなる型の腫瘍であってもよく、例えば原発腫瘍、二次腫瘍、進行性腫瘍及び転移性である。本発明によって治療又は予防される腫瘍の限定しない例は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、リンパ腫、多発性骨髄腫、好酸球性白血病、有毛細胞白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大細胞型免疫芽球性リンパ腫、形質細胞腫、肺腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、肝腫瘍、脳腫瘍、皮膚腫瘍、骨腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、小腸腫瘍、胃腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃部腫瘍、子宮腫瘍、尿路腫瘍及び膀胱腫瘍、腎腫瘍、腎細胞がん、前立腺腫瘍、胆嚢腫瘍、頭頸部腫瘍、卵巣腫瘍、頸部腫瘍、膠芽細胞腫、黒色腫、軟骨肉腫、線維肉腫、子宮内膜腫瘍、食道腫瘍、眼腫瘍、消化管間質腫瘍、脂肪肉腫、鼻咽頭腫瘍、甲状腺腫瘍、膣腫瘍及び外陰部腫瘍である。
【0057】
本明細書で用いられる場合、“対象”は好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0058】
本明細書における“T細胞”又は“TIL”は、CD4+若しくはCD8+ T細胞又はTILのいずれか、あるいはCD4+若しくはCD8+ T細胞又はTILの組み合わせのいずれかであってよい。好ましい実施の形態では、T細胞又はTILは、CD8+ T細胞又はTILである。
【0059】
また、本発明は、遺伝子操作されたT細胞を提供し、該T細胞は、本発明の核酸分子又はベクターを形質導入される。当該操作されたT細胞は、好ましくは、腫瘍由来T細胞又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。さらに、本発明に係る単離された細胞は、好ましくはT細胞、より好ましくは腫瘍由来T細胞又はTILである。特に好ましい実施の形態では、T細胞はがんを患った患者から単離された自己T細胞、すなわち自己TIL又は血液から単離された自己T細胞である。さらに好ましくは、T細胞は、本発明に係るキメラ抗原受容体を発現する。
【0060】
一態様において、本発明に係るキメラ受容体ベースの治療は、少なくとも1つのさらなる免疫療法の構成要素と組み合わされる。さらなる免疫療法の構成要素は、本技術分野で知られた任意の免疫療法の構成要素でもよい。好ましくは、上記のさらなる免疫療法の構成要素は、細胞免疫療法、抗体療法、サイトカイン療法、ワクチン及び/又は小分子免疫療法、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
好ましい実施の形態では、キメラ受容体を用いた治療は、抗体ベースの免疫療法と組み合わされ、好ましくは、共抑制T細胞分子に対する抗体を用いる治療を含む。共抑制T細胞分子は、免疫チェックポイントともいう。共抑制T細胞分子の好ましい例は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム死1(PD-1)、PD-リガンド1(PD-L1)、PD-L2、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3含有分子3(TIM3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD276、CD272、A2AR、VISTA及びインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)である。よって本発明に係るキメラ受容体又はキメラ受容体を有する細胞と組み合わされる共抑制T細胞分子に対する抗体は、好ましくは、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗SIRPα抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗CD276抗体、抗CD272抗体、抗KIR抗体、抗A2AR抗体、抗VISTA抗体、抗TIGIT抗体及び抗IDO抗体からなる群から選択される。さらなる免疫療法成分として使用される、適した抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ランブロリズマブ、イピリムマブ及びリリルマブである。
【0062】
実施例に示されるように、ノッチシグナル伝達は共抑制T細胞分子の発現を減少させる。よって、がんを患い、かつ上記抗体で治療されている対象における本明細書で規定された抗体ベースの免疫療法の有効性を向上させる方法も提供され、該方法は、本発明に係るキメラ受容体を発現する治療上有効量のT細胞を対象に投与することを含む。上記T細胞は、好ましくは自己T細胞、例えば、対象の血液から単離された自己TIL又はT細胞である。
【0063】
さらに好ましい実施の形態では、キメラ受容体を用いた治療は、キメラ抗原受容体(CAR)又は腫瘍特異的T細胞受容体に関する治療と組み合わされる。好ましくは、キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、本発明に係るキメラ受容体を含む、及び/又は発現する細胞が用いられる。これは、TIL以外のT細胞、例えば血液から単離された自己T細胞が使用された場合に特に好ましい。CARは、細胞外腫瘍結合部分、普通はモノクローナル抗体由来の単鎖可変フラグメント(scFvs)と融合した細胞内T細胞シグナル伝達ドメインからなる抗原を標的とする受容体である。CARは、MHCを介した抗原提示から独立して、特異的に(腫瘍)細胞表面抗原を認識する。CARは、好ましくはCD3ζのシグナル伝達ドメイン及びCD28又は4-1BBのような共抑制受容体と結合した、腫瘍関連抗原に特異的な細胞外ドメイン(抗体の抗原結合部分のような)を含むのが好ましい。当該細胞は、好ましくはT細胞、より好ましくは、治療される対象由来、例えば血液又は腫瘍等由来の自己T細胞である。
【0064】
明確かつ簡単な説明のために、本発明の同じ又は別の態様又は実施の形態の一部として、特徴が本明細書で説明される。本発明の同じ又は別の実施の形態の一部として本明細書で説明される特徴のすべての又は一部の組み合わせを含む実施の形態を本発明の範囲が包含することが業者によって理解される。
【0065】
本発明が以下の、限定しない実施例においてさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
結果
CD8 T細胞応答におけるノッチの役割を調べるために、Backer et al.2014におけるノッチ1遺伝子及びノッチ2遺伝子をT細胞特異的に欠損させたマウス(Notch1/2ko)を、インフルエンザウイルスに感染させた。応答のピークで、インフルエンザ特異的CD8 T細胞が、インフルエンザの免疫優性ペプチドを担持するD
bテトラマーを用いて検出された(
図3a、b)。インフルエンザ特異的CD8 T細胞の応答の大きさは野生型(WT)及びNotch1/2koマウスにおいて類似したが(
図3C及び図示せず)、ノッチ1/2欠損T細胞は、WT CD8 T細胞よりも産生したIFNγ及びグランザイムBが少なかった(
図3d、e、f)。また、Notch1/2koマウスは、インフルエンザウイルスを除去することができず、回復の遅延を示した(
図3g、h)。中和抗体の力価がどちらかといえばノッチ1/2koマウスで上昇した(
図3i)ことは、それらのウイルスを除去できないことがそれらの無効なCD8 T細胞応答に起因することを示唆している。
【0067】
インフルエンザに対するメモリー応答は、評価したすべての解剖学的部位において、ノッチ1/2欠損によってさらにいっそう大きく影響を受けた(
図4a、b)。ノッチ1/2ko CD8 T細胞が混合した骨髄キメラにおいて均一に増幅することができないことによって示されるように(
図4c)、欠陥のあるメモリー活性はノッチのCD8 T細胞に備わっている機能によるものであった。驚くべきことに、肺に見られるノッチ1/2koメモリーCD8 T細胞の個数は正常であるが(
図4b)、それらはほとんどエフェクター分子を産生できなかった(
図4d)。
【0068】
ノッチ1/2ko CD8 T細胞が徹底的に反応しないことは、PD1及びLag3のような抑制性受容体の発現による“疲弊”:完全な応答不能を思い起こさせる(Wherry and Kurachi、2015)。ノッチ1/2ko CD8 エフェクターT細胞の全トランスクリプトーム解析によってこの考えが補強される。ノッチ1/2koとWTエフェクターT細胞との間で異なる発現を示した遺伝子の中で、最も有意に増加した遺伝子セットが、T細胞の疲弊を検討するために用いられる原型的なモデルであるLCNVへの急性感染と慢性感染との比較で得られた(Wherry and Kurachi、2015)。実際、PD1及びLag3両方のmRNA発現量がノッチ1/2ko CD8 エフェクターT細胞で増加した(
図5b)。
【0069】
重要なことに、PD1の発現が(OT1 T細胞受容体が反応する)インフルエンザ-Ovaに感染したWT共通遺伝子レシピエントマウスに導入されたノッチ1/2欠損OT1 T細胞の表面で増加した(
図5c)。T細胞及びB細胞の内因性レパートリーがこれらマウスにおけるインフルエンザウイルスを効率的に除去し、ノッチ1/2ko T細胞での選択的なPD1発現の増加に対する説明としてウイルスの存続を除外した。さらに、ノッチ1/2ko OT1 T細胞に特異的な活性化されたノッチアレル(NICD)の発現がPD1の発現を強く抑制した(
図5e)。これは、CD8 T細胞が本来備えている様式において、ノッチがPD1の発現を抑制することを示している。
【0070】
ノッチの細胞内ドメイン(NICD)の発現は、CD4 T細胞及びCD8 T細胞の両方において、ノッチの活性化を模倣している(Helbig et al.2012;Backer et al.2014;Amsen et al.2007)。ノッチシグナル伝達は極めて敏感で、NICDコンストラクトの過剰発現によって得られる核のNICD分子の個数が、リガンドを介した活性化後に得られる分子の個数を大いに超えることがあり得る。これは胸腺前駆細胞におけるタモキシフェン誘導MER-NICDアレルを用いた実験によって示される。OP9間質細胞上でのCD34
+CD1a
-ヒト胸腺前駆細胞の培養では、NICDが発現した場合に分化をもたらすのみであった(
図6b)。際だって、CD4
+CD8
+二重陽性細胞の分化が、タモキシフェンなしというルシフェラーゼレポーターコンストラクトのかなり弱い転写活性をもたらす条件(
図6a)において、MER-NICDの漏れ活性によって最大となった(
図6b)。さらに、タモキシフェンの添加によるMER-NICDの活性増加は、二重陽性胸腺細胞からCRTH2
+ ILC2細胞への分化の段階的な転換をもたらした(
図6c)。これらの結果は、NICDに対する内因性応答プログラムの優れた感受性を強調する。さらにそれらは、ノッチシグナル伝達の強さが、場合によっては、この受容体に対する生物学的応答に質的に影響を及ぼすことを示す(これらの結果はGentek et al.2013で発表済みである)。
【0071】
材料と方法
マウス。すべてのマウスのバックグラウンドはC57BL/6である。Notch1flox/floxNotch2flox/floxCd4-Creマウスが用いられた(Amsen et al.2014、Amsen et al.2004)。Cre-陰性の同腹の子がすべての実験で使用された。OT-I TCR(003831)を発現する遺伝子組み換えマウスをジャクソン・ラボラトリーズから入手できる。マウスは、大学病院の動物センター(AMC、アムステルダム、オランダ)で特定の病原体がない条件で飼育され、収容された。マウス(雄及び雌の両方)は、実験開始時に8~16週齢であった。感染実験の間、野生型及びノッチ1-2-KOマウスは、ケージのバイアスを避けるために一緒に収容された。無作為化のために意図的ではない方法が用いられた。ウイルス負荷及び血球凝集アッセイの決定を除いて、盲検化に関して形式的な方法は用いず、操作者はマウスの遺伝子型を知らなかった。野生型及びノッチ1-2-KO BMを1:1の比で含む、混合した骨髄(BM)キメラが5~10×106個のドナーBM細胞を、致死的な放射線を浴びたRAG1-欠損マウスに静脈内に注射することで作製された。ドナー起源の野生型及びノッチ1-2-KO細胞は、遺伝子背景が同一のCD45.1/2マーカーで同定された。BMキメラは実験の12週間後に使用された。すべてのマウスが組織及び国の動物実験ガイドラインに従って用いられた。すべての手順が現地の動物倫理委員会によって承認された。
【0072】
マウス試験での培地、試薬及びmAb。培養培地は10%熱不活化FCS(Lonza)、200U/mlペニシリン、200μg/mlストレプトマイシン(Gibco)、GlutaMAX(Gibco)及び50μMβ-メルカプトエタノール(Invitrogen)を加えたイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、Lonza)とした(IMDM)。フローサイトメトリーに使用されたすべての直接結合したモノクローナル抗体は、特に明記しない限り、eBioscience(サンディエゴ、カリフォルニア州)から購入した:抗CD3ε(クローン145-2C11)、抗CD4(クローン GK1.5)、抗CD8α(Ly-2、クローン 53-6.7)、抗CD28(クローン 37.51)、抗CD44(クローン IM7)、抗CD45.1(クローン A20、BD Biosciences)、抗CD45.2(クローン 104)、抗CD127(抗IL7Rα、クローン A7R34)、抗グランザイムB(クローン GB-11、Sanquin PeliCluster)、抗IL-2(クローン JES6-5H4)、抗IFN-γ(クローン XMG1.2)、抗KLRG-1(クローン 2F1)、抗TNFα(クローン MP6-XT22)、及びアイソタイプ対照(cat.#3900S)(Cell Signaling Technology)。
【0073】
インフルエンザ感染。100~200×50%組織培養有効感染量(TCID50)のH3N2インフルエンザAウイルスHKx31(Belz et al.2000)、インフルエンザA/WSN/33、A/WSN/33-OVA(I)(Topham et al.2001)、A/PR/8/34(H1N1)又はLCMV gp33-41エピトープを発現する組み換えA/PR/8/34(Mueller et al.2010)にマウスを鼻腔内感染させた。以前説明されたようにMDCK又はLLC-MK2細胞を感染させることでストック及びウイルス力価が得られた(Van der Sluijs et al.2004)。示された時間間隔で、血液試料が尾静脈から取得されるか、マウスが犠牲にされ器官が採取され、インフルエンザ特異的CD8+ T細胞の個数が決定された。インフルエンザ特異的CD8+ T細胞は、抗CD8(53-6.7)及びインフルエンザ-A-由来ヌクレオカプシドタンパク質(NP)ペプチドNP366-374 ASNENMETM(血液研究のためにSanquin Laboratoryで製造された)を含むH-2DbのPE-又はAPC-結合テトラマーを用いて列挙された。感染マウスの肺におけるA/PR/8/34ウイルス量が、肺mRNAの単離及びA/PR/8/34 M遺伝子に特異的な次のプライマー及びプローブを用いた定量PCRによるウイルスmRNAの検出によって決定された。センスプライマー:5’-CAAAGCGTCTACGCTGCAGTCC-3’;アンチセンスプライマー:5’-TTTGTGTTCACGCTCACCGTGCC-3’;プローブ:5’-AAGACCAATCCTGTCACCTCTGA-3’。
【0074】
ウイルスに対する中和抗体の存在に関して、以前説明されたようにウイルスの4つの赤血球凝集ユニットと七面鳥赤血球を用いた血球凝集阻害(HI)アッセイによって血清が試験された(Palmer et al.1975)。値は、凝集が完全に阻害された血清希釈の最大値を示す。
【0075】
フローサイトメトリー及び細胞分類。細胞内サイトカイン及びグランザイムB染色のために、10μg/mlブレフェルジンA(シグマ)の存在下で4時間、脾臓細胞及び全肺試料が1μg/mlのMHCクラスI限定的インフルエンザ由来ペプチドNP366-374 ASNENMETMで刺激され、サイトカイン放出が防がれた。0.5%BSA及び0.02%NaN3を含むPBS中で、関連のある蛍光色素結合mAbで細胞が30分間、4℃で染色された。細胞内染色のために、細胞が固定され、Cytofix/Cytoperm(BD Biosciences)を用いて透過処理された。データの取得及び解析がFACSCanto(Becton Dickinson)及びFlowJoソフトウェアで行われた。
【0076】
H-2 Db-NPテトラマー-陽性CD8+ T細胞をインフルエンザ感染マウスから単離するために、脾臓の単細胞懸濁液がインフルエンザ特異的テトラマー及び様々なマーカーで染色された。細胞がFACSAria cell sorters(BD Biosciences)を用いて分類された。
【0077】
ヒト胸腺細胞の分析に関して、生細胞及び死細胞は、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD、eBiosciences)又はフィクサブル ライブ/デッド ダイ(Invitrogen)での染色に基づいて区別された。データがLSR Fortessaフローサイトメーター(BD Bioscience)で得られ、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を用いて解析された。単細胞懸濁液が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、フィコエリトリン- シアニン 5(PE-Cy5)、PE-Cy5.5、PE-Cy7、PerCP-Cy5.5、アロフィコシアニン(APC)/Alexa Fluor 647、APC-Cy7、AF700(すべてBD Bioscience、Biolegend又はMACS Miltenyi)、Horizon V500(HV500、BD Bioscience)、Brilliant Violet 421(BV421)、BV711及びBV785(すべてBiolegend)で直接標識された抗体で染色された。次のヒト抗原に特異的な抗体が使用された:CD1a、CD3、CD4、CD7、CD8、CD11c、CD14、CD19、CD25、CD34、CD45、CD56、CD94、CD117、(cKit)、CD123、CD127(IL-7Rα)、CD161、CD294(CRTH2)、CD303(BDCA2)、CD336(Nkp44)、CD278 (ICOS)、TCRαβ、TCRγδ及びFcER1。抗マウスCD90.1(Thy1.1)-FITC、-PE又は-APC-eFluor 780(eBioscience)がMSCV-IRES-Thy1.1レトロウイルスを形質導入された細胞の検出に用いられた。
【0078】
レトロウイルス形質導入及びマウスCD8+ T細胞の養子導入。記載されたように(Amsen et al. 2004)、ウイルスがPlatE細胞で産生された。CD45.2+ OT-I野生型又はOT-I ノッチ1-2-KOマウス由来の全脾臓細胞が1nM OVA257-264ペプチドとインキュベートされ、翌日、細胞がウイルス上清(8μg/ml ポリブレンを含む)で回転感染され(37℃で90分間、700×g)、37℃で5時間維持された。培地が交換され、翌日、生細胞が密度遠心法(Lymphoprep、Axis-shield PoC)で単離され、7.5×102から5×104個の間の細胞が時限インフルエンザ-OVA感染CD45.1+マウスに導入された。ドナーOT-1 T細胞が、CD45.2+CD8+及びThy1.1又はGFP三重陽性細胞として導入後5~10日で検出された。
【0079】
ウイルス産生及びヒト胸腺細胞の形質導入。ウイルス産生では、Phoenix GALVパッケージング細胞がFuGene HD (Promega)を用いて一時的に導入された。ウイルスを含む上清が導入後48時間で収集され、ドライアイス上で即座に凍結され、使用まで-80℃で保管された。形質導入に関しては、翌日、Retronectin(Takara Biomedicals)で被覆されたプレート内で細胞が37℃で6~8時間、ウイルス上清とインキュベートされた。
【0080】
ヒト胸腺細胞実験に使用されたレトロウイルスコンストラクト。ヒトNICD1-IRES-Thy1.1-MSCVコンストラクトは以前記載された(Amsen et al.2004)。mNR-NICD融合を得るため、N末端mERドメインが次のプライマー:GATCAGGAATTCCACACCATGGGAGATCCACGAAATGAA及びGATCAGGATATCCACCTTCCTCTTCTTCTTGGを用いてPCR増幅され、mER-pBSを作製するために、pBluescript(pBS)のEcOR1及びEcORVサイトにクローン化された。転写開始シグナルを欠くヒトNICD1がこれらのプライマー:ATCGGAGGTTCTCGCAAGCGCCGGCGGCAGCAT及びGATCAGAAGCTTGAATTCTTACTTGAAGGCCTCCGGAATGを用いてPCR増幅され、続いて、mER-pBSのEcORV及びHindIIIサイトにクローン化された。次に、BamH1及びCla1を用いて、IRES-Thy1.1-MSCVにmER-NICD1フュージョンインサートがクローン化された。
【0081】
遺伝子発現プロファイリングマウス試験。H-2 Db-NP366-374
+CD8+ T細胞がフローサイトメトリーによってインフルエンザ感染マウスの脾臓から単離された。全RNAが製造者の手順に従ってTRIzol試薬(Invitrogen)で抽出された。ディープ配列解析のために、全RNAがさらにnucleospin RNAIIカラム(Macherey-Nagel)によって精製され、RNAがSuperscript RNA amplification system(Invitrogen)を用いて増幅され、Cy3又はCy5色素(Amersham)のいずれかを用いて、ULS system(Kreatech)で標識された。配列がHiSeq2000 machineの1つのレーンで10サンプルのプーリングによって得られた。サンプルごとに1700~2700万リードが得られた。
【0082】
リードマッピング(TopHat)及び発現の異なる遺伝子の決定(DESeq)はAnders et al. 2013に記載されたように行われた。エキソン-エキソン連結を測ることができるTopHat(バージョン1.4.0)を用いて、リードがマウスの参照ゲノム(ビルドmm9)にマッピングされた。TopHatは、遺伝子モデルの既知セットが与えられた(NCBI ビルド37、バージョン64)。試料ごとのgenecountを得るために、HTSeq-countが用いられた。このツールは、与えられたGene Transfer Format(GTF)ファイルに存在する各遺伝子に関するgenecountを作製する。すべての試料においてゼロカウントの遺伝子が、データセットから除外された。統計解析がRパッケージDESeqを用いて行われた。発現の異なる遺伝子は、SLEC及びMPECの試料の間、並びに野生型及びノックアウトの試料の間で決定された。DESeqは遺伝子のカウントが負の2項分布によってモデル化され得ると仮定する。試料の正規化のために、“サイズ因子”がカウントデータから決定された。1つのプールされた分散値を見積もるために、重複を伴うすべての条件の試料を用いた“プールされた”方法で経験的分散が決定された。続いて、発現値に関する分散-平均関係を決定することでパラメトリック適合が各遺伝子について2つの分散推定値が得られた(経験的推定値及び適合された値)。‘maximum sharingMode’を用いることでより控えめとなるように、我々はそれら2つの値の最大値を選択した。最後に、p値及びFDR補正されたp値が算出された。
【0083】
発現に違いがある遺伝子のセットで顕著に示される生物学的プロセスを強調するため、我々はRNA-seqデータの解析のために開発されたBioconductor package GOseq(Young et al.2010)を使用した。まず、我々はSLEC-MPECとWT-KOとの比較からFDR<0.5のすべての遺伝子を選択した。続いて、顕著に示されるプロセスを決定するためにGO“生物学的プロセス””である遺伝子セットが用いられた。さらに、我々は、注釈付きの遺伝子セットを集めたMolecular Signatures Database(MSigDB;http://www.broadinstitute.org/gsea)からの‘C7’遺伝子セットを用いた。遺伝子セットC7は免疫系における細胞型、状態及び摂動を示す遺伝子セットからなる免疫学の特徴を含む。当該特徴はヒト及びマウス免疫学での公開されたマイクロアレイ試験の手作業での整理によって得られたものである。遺伝子セットがヒト免疫プロジェクトコンソーシアム(HIPC;http://www.immuneprofiling.org)の一部として作成された。C7遺伝子セットをGOseqによって使用可能なフォーマットに変換するために自前のRスクリプトが開発された。
【0084】
統計解析。図は平均と、平均の標準誤差(s.e.m.)を意味する誤差バーとを示す。標準スチューデントt-検定(対ではない、両側)がGraphPadPrismソフトウェアで適用された。3以上の群が比較される場合、ボンフェローニ補正を伴う一元配置分散分析が用いられた。P<0.05が統計的に有意であるとみなされた。
【0085】
ヒト胸腺造血前駆細胞の単離。生後胸腺(PNT)組織標本が心臓切開手術を受けた子から得られた(LUMC、Leiden、オランダ)。ヘルシンキ宣言に従うAMC倫理委員会での承認を得てそれらが使用された。細胞懸濁液がStomacher 80 Biomaster(Seward)を使用した機械的破砕によって調製された。4℃での一晩のインキュベーション後、胸腺細胞がFicoll-Hypaque(Lymphoprep;Nycomed Pharma)密度勾配から単離された。単細胞懸濁液がMACS(Miltenyi Biotec)によってCD34+細胞について濃縮され、蛍光標識された抗体で染色され、続いて、それぞれCD34+CD1a-CD3-CD56-BDCA2-又はCD34+CD1a+CD3-CD56-BDCA2-として、FACS Aria(BD Bioscience)でFACS分類された(本試験ではCD34+CD1a-及びCD34+CD1a+と呼ばれる)。分類された集団の純度は>99%であった。
【0086】
胸腺前駆細胞のin vitro分化。分類された胸腺前駆細胞が5%正常ヒト血清、SCF(20ng/ml)及びIL-7(10ng/ml、両方ともPeproTech)を含むYssel’s培地で一晩培養された。OP9細胞が30Greyの照射によって有糸分裂で不活化され、共培養の開始の1日前に5×103/cm2の密度で播種された。形質導入後、胸腺前駆細胞が事前に播種されていたOP9細胞に添加された。共培養はFCS(20% Fetal Clone I、Hyclone)及びIL-7(5ng/ml)を含むMEMα(Invitrogen)で行われた。場合によって、Flt3l(5ng/ml、PeproTech)が培地に添加された。培養物は3~4日ごとに新たにされた。生来のリンパ系細胞のための分化アッセイは、特に明記されない限り通常は1週間後に解析された。細胞が強制的なピペッティングによって収集され、70mmナイロン製メッシュフィルター(Spectrum Labs)に通された。
【0087】
レポーター遺伝子アッセイ。U2OS細胞がFuGene HD形質導入試薬(Promega)を用いて一時的に形質導入された。細胞にNOTCH応答性プロモーターと、NICD1-MSCV Th1.1、mER-NICD1-MSCV Th1.1又は空ベクター対照のいずれかとが同時導入された。形質導入効率の違いを補正するために、ウミシイタケルシフェラーゼを構造的に発現するpRL-CMV対照ベクターが同時導入された。形質導入は三重に行われた。適用できる場合には、mER-NICD1の核転座を誘導するために、4-ヒドロキシ-タモキシフェン(Sigma)が一晩のインキュベーション後に添加された。形質導入の48時間後に細胞が溶解され、Synergy HT microplate reader(Syntek)においてDual Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性が測定された。以前記載された(Nam et al.2007)、2つの異なるノッチ応答性レポーターコンストラクトが使用された。
【0088】
キメラノッチ受容体(ChNR)システム。キメラノッチ受容体を作製するために、ヘテロ二量体ドメインを除くノッチの細胞外ドメインがノッチのヘテロ二量体ドメインに結合したscFv抗体からなる異種リガンド結合ドメインに置換された。この受容体は、隣接した細胞の表面上のscFv抗体の関連するリガンドに結合することで活性化されるが、この表面抗原が存在しない場合は休止したままである(
図7)。ChNRはレトロウイルスの形質導入又は他の方法を介したCD4 T細胞において発現される。このような改変されたT細胞が患者に養子導入された場合、ノッチはそれらT細胞のみに対して特異的にオンになる。
【0089】
典型的には、ChNRはそれ自身によってT細胞を完全に活性化するのに十分ではない。そのため、追加のT細胞受容体シグナル(又はその模倣)が必要である。例えば、T細胞は、腫瘍反応性に関する選択後の初期の腫瘍(腫瘍浸潤リンパ球-TIL)由来であってもよい。また、ChNRは、腫瘍抗原に対する組み換えT細胞受容体又は従来のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されたT細胞とともに使用されてもよい。
【0090】
この基本的概念の多くの変形が可能である。細胞外ドメインとして、表面抗原を認識する任意の抗体が原理上は使用され、腫瘍細胞の表面に発現する任意の表面抗原が原理上は標的とされる。最後に、可溶性リガンドによって活性化される細胞外ドメインでさえ、選択肢である。例えば、細胞外ドメインは腫瘍上の表面抗原に対する他の抗体(スイッチ抗体)にそれ自身が組み込まれた(Rodgers et al. 2016で記載されたような)ペプチドネオエピトープ、(Ma et al. 2016で記載されたような)ビオチン又はFITC部分に対する抗体からなってもよい。結果として、スイッチ抗体に標的とされる細胞表面抗原に加えて、スイッチ抗体自身も存在する場合に限ってのみ、キメラノッチ受容体が活性化される。この仕組みが受容体の一時的な調節と(望む場合にのみオンとオフとを切り替える)、量的な調節(スイッチ抗体の濃度の増加又は減少)とを可能にする。しかし、すべてのこれら状況において、キメラノッチ受容体からのノッチの細胞内ドメインの開放が中心とする目標に維持される。
【0091】
例示的なキメラノッチ受容体の調製が実施例2で説明される。
(実施例2)
結果
T細胞が慢性的にそのT細胞受容体を介して刺激される場合にT細胞の疲弊が起こる。実施例1の結果は、インフルエンザウイルスへの感染に応答するCD8 T細胞が、ノッチによるこの疲弊プログラムの活性化から保護されることを示す。しかし、インフルエンザ感染は、通常、T細胞の慢性的な刺激を引き起こす。したがって、ノッチの意図的な活性化も、通常は疲弊が誘導される条件下での疲弊を防ぐこともできるのかどうかが我々の疑問であった。この目的のために、我々は、活性化したノッチアレル(NICD)がT細胞に導入されてからT細胞がTCR刺激を繰り返し受けるin vitroシステムを用いた。NICDはレトロウイルス発現システムを用いてOT-1 CD8 T細胞(これはH2-K
bにおけるオボアルブミンタンパク質由来のSIINFEKLペプチドを認識する)において発現された。レトロウイルスコンストラクトのIRES-Thy1.1配列によって、形質導入されたT細胞(Thy1.1
+)及び形質導入されていないT細胞(Thy1.1
-)の識別が可能になる。例えば、細胞溶解エフェクタータンパク質グランザイムBの自発的な産生によって示されたように、CD8
+ OT-1 T細胞におけるNICDの発現がエフェクター機能をかなり強化した(
図9A)。続いて、形質導入されたOT-1細胞がアボアルブミン(B16-Ova)を発現するB16F10黒色腫細胞の毎日の添加によって繰り返し刺激された。これらの条件によって、対照のウイルス(空のベクター-EV)で形質導入されたOT-1 T細胞の表面のチェックポイント分子(及び疲弊の顕著な特徴)であるPD1の顕著な発現がもたらされる(
図9B、左)。しかし、NICDの発現は、ほとんど完全に、PD1の発現を抑制した(
図9B、右)。また、NICDの発現は、OT-1 T細胞に対する競争上の優位性を与えた:NICDで形質導入された集団におけるTH1.1
+細胞の割合が経時的に次第に増加した一方で、細胞が空ベクターで形質導入されていた場合、TH1.1
+集団は安定なままであった(
図9C)。
【0092】
NICDアレルの発現後に得られる活性のあるノッチ分子の濃度は、おそらく非生理学的に高い。さらに、ChNRを用いて当該活性のあるノッチ分子の同様に高い量を達成することは可能ではない。また、CD8 T細胞に対する保護的な効果がさらに弱いノッチ刺激で得られるかどうかを調べるために、我々は、NICDのタモキシフェン誘導可能型を利用した(実施例1でも使用、
図6)。このコンストラクトは、エストロゲンにはもはや反応せず、タモキシフェンのみに応答するように変異したエストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメインにN末端で結合したNICDからなる。この変異ERドメイン(mER)は、熱ショックタンパク質に結合することで、細胞質においてNICD分子を隔離し、これによってそれを不活性な状態に維持する。しかし、タモキシフェンを添加すると、mER-NICD融合タンパク質がそれらの熱ショックタンパク質から分離することで、NICDを活性化する。ルシフェラーゼレポーターアッセイによって示されたように(
図6A)、この融合タンパク質は、NICDそれ自身よりもかなり低いノッチ活性の最大値に到達し、その活性はタモキシフェンの滴定によって量的に調節され得る。最後に、このmER-NICDは、タモキシフェンを欠いてもある程度の“漏れ”ノッチ活性を有し、それはルシフェラーゼレポーターアッセイでほとんど検出できず、さらに胸腺前駆細胞からCD4
+CD8
+胸腺細胞への分化の誘導のようなノッチの生理的機能を生じさせる(
図6B)。このため、CD8 T細胞の疲弊に対する保護のためのシグナル強度の必要条件を調べるために、我々はこのmER-NICDコンストラクトを用いて、さらに、B16-Ova黒色腫細胞での反復的刺激モデルを用いた(A~Cのように)。0.5mM又は0.05mMでさえ、タモキシフェンでのmER-NICDの刺激は、実際にPD1の発現と寛容誘導のサイトカインIL10の産生とを抑制した(
図9D)。また、それはIFNg及びグランザイムBのようなエフェクター分子を産生させた。意外なことに、それらの効果のいくつかはタモキシフェンなしでmER-NICDによって誘導されるかなり低い漏れNICD活性によってでも得られた。したがって、ノッチは、相対的に控えめな程度のノッチの活性であっても、疲弊の顕著な特徴(PD1の発現、エフェクター分子の産生の喪失)の進行からCD8 T細胞を保護できると、我々は結論づけた。
【0093】
キメラノッチ受容体の作製
ヒトCD19に対するScFv抗体ドメインからなるキメラノッチ受容体が作製された(Molecular Immunology 1997;34:1157-1165に記載され、J Immunother.2009 Sep;32(7):689-702におけるCARコンストラクトで使用されたScFv)。このScFvが細胞外ヘテロ二量体ドメインの上流を切り取られたヒトNOTCH1タンパク質の5’末端にフレームで結合された(
図10A)。
【0094】
具体的には、GMCSFリーダー配列(MLLLVTSLLL CELPHPAFLL)が、FMC63-28Z抗CD19 ScFvのIg重鎖可変領域(IPDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGSTSGSGKPGSGEGSTKGEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSAAA)が後に続くIgκ軽鎖可変領域にフレームで結合され、それは(
図8に示された配列の)イソロイシン1427から始まってリシン2555までのヒト全長NOTCH1タンパク質のC末端にフレームで結合されている。
【0095】
別のコンストラクトにおいて、使用されたヒトNOTCH1配列のC末端はプロリン1390で始まる。また、両方のバリアント(Ile1427又はプロリン1390で始まる、
図8の配列参照)は、ヒトNOTCH1のC末端PESTドメインの欠失した状態で作製される(ヒトNOTCH1タンパク質のアラニン2424で終わる、
図8の配列参照)。
【0096】
次に、HEK293T細胞への形質導入後に、融合タンパク質がpHEFTIGレンチウイルス発現ベクターから発現され(“modified pCDH1”としてJ Immunol 2009;183:7645-7655に、“pHEF”としてPNAS August 9,2011 108(32) 13224-13229に記載されている)、細胞表面におけるその存在が組み換えヒトCD19-Igタンパク質で染色されることで立証された(
図10B)。
【0097】
材料と方法
マウス。H2-Kbによって提示されるオボおアルブミンの残基257~264を標的とするように特に設計されたTCRα-V2及びTCRβ-V5遺伝子を挿入して遺伝子組み換えされた雄又は雌のOT-1 TCR遺伝子組み換えマウス(C57BL/6株)が飼育され、オランダがん研究所(NKI、アムステルダム、オランダ)の動物施設で維持された。すべての動物実験は機関のガイドラインを順守し、NKIの動物倫理委員会で承認された手順にしたがって行われた。
【0098】
細胞株及び試薬。B16-F10及びB16-OVA腫瘍細胞株が10%熱不活化ウシ胎仔血清(Bodingo BV)、5%L-グルタミン(Lonza、ベルギー)及び5%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma、10.000Uペニシリン及び10mgストレプトマイシン)を添加したHEPESを含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)で培養された。Platinum-Eco細胞及びHEK293T細胞が10%熱不活化ウシ胎仔血清(Bodingo BV)及び5%L-グルタミン(Lonza、ベルギー)を加えたHEPESを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMDM)で培養された。すべての細胞が37℃、5%CO2でインキュベートされた。
【0099】
細胞精製。単細胞懸濁液がOT-1マウスの脾臓及びリンパ節から採取された。CD8+ T細胞がMagnetic-Activated Cell Sorting(MACS)によって濃縮され、精製された。CD8α+ T cell Isolation Kit、マウス(Miltenyi Biotech)がD8α+ T細胞の陰性選択のために使用された。続いて、細胞が10%熱不活化ウシ胎仔血清(Bodingo BV)、5%L-グルタミン(Lonza、ベルギー)、5%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma、10.000Uペニシリン及び10mgストレプトマイシン)及び50μMβ-メルカプトエタノール(Sigma Aldrich)を添加したIMDMで最長2週間培養された。
【0100】
マウスCD8+ T細胞のレトロウイルス形質導入。製造者の指示に従ってFuGENE(登録商標) HD reagent(Promega)を用いたコンストラクトで、Platinum-Eco細胞に形質導入することでレトロウイルスのストックが作製された。形質導入の1日前に3×106個の細胞が100mmディッシュに播かれた。879μlのプラスミド溶液(OptiMEM(Gibco by Life Technologies)中の0.020μg/μl)に56μlのFuGENE(登録商標) HD reagentが加えられ、続いてRTで10分間インキュベートされた。次に、複合体溶液が細胞に加えられ、一晩、37℃でインキュベートされた。ウイルス上清が収集され、細胞残屑を除去するために0.45μMシリンジフィルタでフィルタ処理された。ウイルス上清がpMSCV-EV及びpMSCV-NICDから調製された。レトロウイルスベクターは、キャップ非依存転写を可能にするIRES配列、及び陽性形質導入選択のために使用されたThy1.1(CD90.1)選択マーカーを含んでいた。OT-1マウスから精製された活性化CD8+ T細胞は、24ウェルプレート(1×106細胞/ウェル)で10μg/ml ポリブレン(Merck)の添加でウイルスに感染させられた。RTにおいて、細胞が90分間、2000RPMで回転され、37℃、5%CO2で4時間、インキュベートされた。
【0101】
HEK293T細胞の形質導入。6ウェルプレートにおいて製造者の指示に従ってFugene HD reagentを用いて、細胞がCNR-pHEFTIG又はpHEFTIG空ベクターで形質導入された。48時間後、発現がフローサイトメトリーで解析された。
【0102】
CD8
+ T細胞活性化及び再刺激。T細胞の十分なin vitro活性化のために、OVA257-264(SIINFEKL)ペプチドをコードする、改変されたAPC細胞株MEC.B7.SigOVA(SAMBcd8+OK)が使用された。CD8
+ T細胞の精製に続き、10
6個のCD8
+ T細胞が24ウェルプレートで105 SAMBOK細胞と、24時間共培養された。次に、細胞が集められ、形質導入された。細胞が再刺激まで±1.5×10
6細胞/mlの細胞密度で維持された。形質導入の5日後、300.00 CD8
+ T細胞が、平底96ウェルプレート50.000 B16-F10/B16-OVAと共培養された(
図5)。24時間毎にT細胞が付着性のB16細胞から除去され、新たなB16細胞に播種された。所望の再刺激の各時点の4時間前に、ブレフェルジンA(1000×、Invitrogen、米国)が添加された。サイトカイン産生及び抑制性受容体の発現がフローサイトメトリーを介して評価された。
【0103】
フローサイトメトリー及び抗体。すべての試料がBD FACSymphony A5(BD Biosciences)で測定された。フローサイトメトリー測定の前に、細胞が細胞外で染色され(4℃、1.5%FCS含有PBSで)、Cytofix/Cytoperm(BD Pharmingen)を用いて固定され、透過処理された。次に、細胞が細胞内で染色された(4℃、1×PermWashで)。ヒトIgG1 Fcタンパク質(R&D Systems)に融合したヒトCD19タンパク質がCNRの表面発現の検出に使用された。次に、蛍光標識された抗ヒト抗体(Invitrogen)がhCD19-Ig融合タンパク質を検出するために使用された。
【0104】
参照
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【0105】
(付記)
(付記1)
ノッチ受容体の細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、ヘテロ二量体ドメイン及びLin-12-ノッチ(LNR)繰り返しドメインと、異種の細胞外リガンド結合ドメインと、を含むキメラ受容体。
【0106】
(付記2)
前記受容体はノッチシグナル伝達が可能である、付記1に記載のキメラ受容体。
【0107】
(付記3)
前記異種の細胞外リガンド結合ドメインは、
可溶性リガンドに対して特異的なリガンド結合ドメイン、
ScFv抗体ドメイン、好ましくは、腫瘍細胞表面抗原に対して特異的なScFv抗体ドメインのような細胞表面抗原に対して特異的なリガンド結合ドメイン、
Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメイン又はそのリガンド結合フラグメント、
表面分子の関与なくキメラ受容体に交差結合可能な抗体に対するエピトープを含む細胞外ドメイン、
ビオチンのような部分を含み、作用因子によってストレプトアビジンのような前記部分に対して複数の結合部位と交差結合し得る細胞外ドメイン、
からなる群から選択される、付記1又は2に記載のキメラ受容体。
【0108】
(付記4)
前記LNRドメインと前記異種の細胞外リガンド結合ドメインとの間に位置する連結配列をさらに含む、付記1から3のいずれか一つに記載のキメラ受容体。
【0109】
(付記5)
付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体をコードする配列を含む核酸分子。
【0110】
(付記6)
付記5に記載の核酸分子を含むベクター。
【0111】
(付記7)
付記5に記載の核酸分子又は付記6に記載のベクターを有する単離された細胞。
【0112】
(付記8)
前記細胞は、腫瘍由来T細胞又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のようなT細胞である、付記7に記載の細胞。
【0113】
(付記9)
前記T細胞は、がんを患う患者から単離された自己T細胞である、付記7又は8に記載の細胞。
【0114】
(付記10)
前記T細胞は、キメラ抗原受容体を発現する、付記8又は9に記載の細胞。
【0115】
(付記11)
付記5又は6に記載の核酸分子又はベクターによって形質導入される、遺伝子操作されたT細胞。
【0116】
(付記12)
付記5に記載の核酸分子、付記6に記載のベクター又は付記7から11のいずれか一つに記載の細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【0117】
(付記13)
治療上有効量の付記1から11のいずれか一つに記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を対象に投与することを含む、T細胞の機能及び/又はT細胞生存の改善を必要とする前記対象でのT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善する方法。
【0118】
(付記14)
対象でのT細胞の機能及び/又はT細胞生存を改善する方法での使用のための、付記1から11のいずれか一つに記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【0119】
(付記15)
前記方法は、T細胞の疲弊を防ぐ又は阻害することを含む、付記13又は14に記載の方法又はキメラ受容体、核酸分子、ベクター若しくは細胞。
【0120】
(付記16)
治療上有効量の付記1から11のいずれか一つに記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞を、免疫療法を必要とする対象に投与することを含む、前記対象での免疫療法。
【0121】
(付記17)
治療、好ましくは免疫療法での使用のための、付記1から11のいずれか一つに記載のキメラ受容体、核酸分子、ベクター又は細胞。
【0122】
(付記18)
前記治療又は免疫療法が抗体ベースの免疫療法をさらに含む、付記16又は17に記載の使用のための方法又はキメラ受容体、核酸分子、ベクター若しくは細胞。
【0123】
(付記19)
前記対象は、がんを患っている、付記13から18のいずれか一つに記載の使用のための方法又はキメラ受容体、核酸分子、ベクター若しくは細胞。
【0124】
(付記20)
抗体ベースの免疫療法の有効性を、がんを患い前記抗体で治療されている対象において高める方法であって、付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体を発現する治療上有効量のT細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【0125】
(付記21)
抗体ベースの免疫療法の有効性を、がんを患い前記抗体で治療されている対象において高める方法での使用のための、付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体を発現するT細胞。
【0126】
(付記22)
付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体をコードする核酸配列を含む有効量のT細胞を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む、前記対象におけるがんの治療方法。
【0127】
(付記23)
対象におけるがんの治療方法での使用のための、付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体をコードする核酸配列を含むT細胞。
【0128】
(付記24)
前記対象からT細胞を単離すること、
前記T細胞に付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ受容体をコードする核酸配列を与えることで前記T細胞を改変すること、
前記改変されたT細胞を前記対象に戻すこと、
を含む、
付記22に記載の方法又は付記23に記載の使用のためのT細胞。
【0129】
(付記25)
細胞、好ましくはヒトT細胞を供給すること、
前記細胞に付記5又は6に記載の核酸分子又はベクターを与えること、及び
付記1から4のいずれか一つに記載のキメラ抗原受容体を発現させること、
を含む、付記7から11のいずれか一つに記載の細胞の集団を製造する方法。
【配列表】