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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】気化器デバイスのヒータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/50 20200101AFI20240930BHJP
【FI】
A24F40/50
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020572482
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019039007
(87)【国際公開番号】W WO2020005956
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】62/689,774
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523071097
【氏名又は名称】ジュール・ラブズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JUUL Labs, Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 F Street NW, Washington DC, 20004, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ アール. フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ジェイ. ハットン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エル. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー ファム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァル ヴァレンタイン
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072705(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0216484(US,A1)
【文献】中国実用新案第203873004(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160251(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02959787(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源回路と、
システム電力入力側と、
気化器加熱素子に電力を供給するために、前記電流源回路および前記システム電力入力側のそれぞれを、前記気化器加熱素子に対する第1の出力端子と選択的に接続するように構成された負荷切替回路と、
前記第1の出力端子においてセンシングされた電流および前記気化器加熱素子両端間の電圧に少なくとも基づき、前記気化器加熱素子の温度を調節するために、前記負荷切替回路の動作を調節する制御ロジックと、
を有するシステムであって、
前記電流源回路、前記システム電力入力側、前記負荷切替回路および前記制御ロジックは、1つの集積回路の少なくとも一部を成している、
システム。
【請求項2】
保護回路をさらに有しており、該保護回路は、気化器デバイスの動作パラメータを予め定められた条件と比較し、前記動作パラメータが前記条件を充足しているという判定に応答して、アラーム信号を出力するように構成されており、
前記集積回路はさらに前記保護回路を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記動作パラメータは、電圧、電流、温度、電流制限および電気的短絡のうちの少なくとも1つを含む、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記予め定められた条件は予め定められた閾値を含み、当該システムは、前記予め定められた閾値を格納する少なくとも1つのレジスタをさらに含む、請求項2または3記載のシステム。
【請求項5】
前記保護回路は、前記気化器デバイスの前記動作パラメータと前記予め定められた閾値とを比較するように構成された比較器回路を含み、該比較器回路は、前記比較を表す信号を出力するように構成されている、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記保護回路は、ヒータタイムアウト、前記気化器デバイス内のサブシステムの温度、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、低電圧誤動作防止(UVLO)、電気的短絡、制限を上回る電流、マルチレベルスロットリング、電圧低下保護、および/またはヒータ停止阻止信号について検出するように構成されている、請求項2から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記保護回路は、ウォッチドッグタイマ回路および/または冗長クロック源を含む、請求項2、3、4および6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ロジックは前記保護回路と接続されており、該制御ロジックは、前記アラーム信号を受信し、少なくとも前記気化器デバイスの動作を変更することによって前記アラーム信号に応答するようにさらに構成されており、該変更は、前記気化器デバイス内の少なくとも1つの回路を電源から分離すること、前記少なくとも1つの回路のクロック速度を変更すること、および/または前記少なくとも1つの回路の電力レール電圧を変更することを含む、請求項2、3、4、6および7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の出力端子、および前記制御ロジックと接続されており、前記第1の出力端子において前記電流をセンシングするように構成された電流モニタと、
前記制御ロジック、および前記気化器加熱素子に対する第2の出力端子と接続されており、前記気化器加熱素子両端の前記電圧をセンシングするように構成された電圧モニタと、
をさらに有する、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項10】
前記システム電力入力側に対応する入力電圧よりも高い出力電圧を、前記負荷切替回路に供給するように構成された集積昇圧型コンバータをさらに有する、請求項1、2または9記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの低ドロップアウトレギュレータ、直流整流器および降圧型コンバータを含む電力管理ユニット回路と、
アナログ/ディジタルコンバータと、
発光ダイオードドライバと、
入/出力回路と
をさらに有する、請求項1、2、9または10記載のシステム。
【請求項12】
気化室およびマウスピースを含む気化器デバイス本体と、
前記電力管理ユニット回路と接続された電源と、
前記電力管理ユニット回路と接続されたコントローラと、
アンテナと、
メモリと、
周囲圧力センサと、
加速度計と
をさらに有する、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
デューティサイクルと吸い込み強度の特性を表す吸い込みプロファイル、および/またはデューティサイクルと蒸気産出の特性を表す蒸気プロファイルに基づき、前記第1の出力端子における信号のデューティサイクルを変更するように構成された回路をさらに有する、請求項1、2、9、10および11のいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つのスイッチを含むマルチプレクサをさらに有しており、該マルチプレクサは、前記負荷切替回路との第1の接続と前記電圧モニタとの第2の接続との間で前記気化器加熱素子を切り替えるように構成されている、請求項9記載のシステム。
【請求項15】
前記負荷切替回路と接続された第1の入力端子と、前記電圧モニタと接続された第2の入力端子と、前記電圧モニタと接続された第3の入力端子と、参照ノードと接続された第4の入力端子と、4つの出力端子とを含むマルチプレクサをさらに有しており、前記4つの出力端子のうちの少なくとも1つが前記気化器加熱素子に対する前記第1の出力端子と接続される、請求項9または14記載のシステム。
【請求項16】
気化器加熱素子に電力を供給するために、電流源回路およびシステム電力入力側のそれぞれを、前記気化器加熱素子と接続するように構成された第1の出力端子と選択的に接続するように構成された負荷切替回路によって、前記電流源回路と前記システム電力入力側との間で切り替えるステップと、
前記気化器加熱素子の温度を調節するために、前記負荷切替回路の動作を制御ロジックにより調節するステップであって、前記負荷切替回路の前記動作は、前記第1の出力端子においてセンシングされた電流および前記気化器加熱素子両端間の電圧に少なくとも基づき調節される、ステップと
を有し、
前記電流源回路、前記システム電力入力側、前記負荷切替回路および前記制御ロジックは、1つの集積回路の少なくとも一部を成している、
方法。
【請求項17】
保護回路により、気化器デバイスの動作パラメータを予め定められた条件と比較するステップであって、前記集積回路はさらに前記保護回路を有している、ステップと、
前記動作パラメータが前記条件を充足しているという判定に応答して、アラーム信号を出力するステップと、
をさらに有する、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記動作パラメータは、電圧、電流、温度、電流制限および電気的短絡のうちの少なくとも1つを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記予め定められた条件は予め定められた閾値を含み、システムは、前記予め定められた閾値を格納する少なくとも1つのレジスタをさらに含む、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記保護回路は、前記気化器デバイスの前記動作パラメータと前記予め定められた閾値とを比較するように構成された比較器回路を含み、該比較器回路は、前記比較を表す信号を出力するように構成されている、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記保護回路は、ヒータタイムアウト、前記気化器デバイス内のサブシステムの温度、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、低電圧誤動作防止(UVLO)、電気的短絡、制限を上回る電流、マルチレベルスロットリング、電圧低下保護、および/またはヒータ停止阻止信号について検出するように構成されている、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記保護回路は、ウォッチドッグタイマ回路および/または冗長クロック源を含む、請求項17、18、19および21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記制御ロジックにより、前記アラーム信号を受信するステップと、
少なくとも前記気化器デバイスの動作を変更することにより前記アラーム信号に応答するステップであって、該変更は、前記気化器デバイス内の少なくとも1つの回路を電源から分離すること、前記少なくとも1つの回路のクロック速度を変更すること、および/または前記少なくとも1つの回路の電力レール電圧を変更することを含む、ステップと
をさらに含む、請求項17、18、19、21および22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
第1の出力端子および前記制御ロジックと接続された電流モニタによって、前記第1の出力端子において電流をセンシングするステップと、
前記制御ロジックおよび前記気化器加熱素子に対する第2の出力端子と接続された電圧モニタによって、前記気化器加熱素子両端の前記電圧をセンシングするステップと
をさらに有する、
請求項16または17記載の方法。
【請求項25】
集積昇圧型コンバータにより、前記負荷切替回路に、前記システム電力入力側に対応する入力電圧よりも高い出力電圧を供給するステップをさらに有する、請求項16、17または24記載の方法。
【請求項26】
前記集積回路は、
少なくとも1つの低ドロップアウトレギュレータ、直流整流器および降圧型コンバータを含む電力管理ユニット回路と、
アナログ/ディジタルコンバータと、
発光ダイオードドライバと、
入/出力回路と、
をさらに有する、請求項16、17、24または25記載の方法。
【請求項27】
前記集積回路は、気化室およびマウスピースを含む気化器デバイス本体内に配置されており、
前記集積回路は、さらに、
前記電力管理ユニット回路と接続された電源と、
前記制御ロジックを含み、前記電力管理ユニット回路と接続されたコントローラと、
アンテナと、
メモリと、
周囲圧力センサと、
加速度計と
をさらに有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
デューティサイクルと吸い込み強度の特性を表す吸い込みプロファイル、および/またはデューティサイクルと蒸気産出の特性を表す蒸気プロファイルに基づき、前記第1の出力端子における信号のデューティサイクルを変更するステップをさらに有する、請求項16、17、24、25および26のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つのスイッチを含むマルチプレクサにより、前記負荷切替回路との第1の接続と前記電圧モニタとの第2の接続との間で前記気化器加熱素子を切り替えるステップをさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記集積回路は、前記負荷切替回路と接続された第1の入力端子と、前記電圧モニタと接続された第2の入力端子と、前記電圧モニタと接続された第3の入力端子と、参照ノードと接続された第4の入力端子と、4つの出力端子とを含むマルチプレクサをさらに有しており、前記4つの出力端子のうちの少なくとも1つが、前記気化器加熱素子と接続するよう構成された前記第1の出力端子と接続される、請求項24または29記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年6月25日出願の米国特許仮出願第62/689,774号の優先権を主張するものであり、この参照をもってそのすべての開示内容が明示的に本明細書に取り込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本明細書で説明する保護対象は、たとえば1つまたは複数の気化可能物質から吸入可能なエアロゾルを生成するための携帯型個人用気化器デバイスなどのような気化器デバイスに関する。
【0003】
背景
電子気化器デバイスまたはe気化器デバイスとも称することができる気化器デバイスを、気化器デバイスのユーザによるエアロゾルの吸入によって、1つまたは複数の有効成分を含む(ときには「蒸気」とも称される)エアロゾルを供給するために、使用することができる。電子ニコチン供給システム(ENDS)は、気化器デバイスの1つの種類であり、これは一般的にはバッテリ給電され、喫煙体験をシミュレートするために使用することができ、ただしその際にタバコまたは他の物質の燃焼を伴わない。気化器デバイスを使用する際、ユーザは、加熱素子によって生成可能であり一般的には蒸気と呼ばれるエアロゾルを吸入し、加熱素子は気化可能物質を気化させ(これは通常は液体または固体を少なくとも部分的に気相に転移させることを指す)、気化可能物質を液体、溶液、固体、ワックス、または特定の気化器デバイスの使用と両立し得る他の任意の形態とすることができる。
【0004】
気化器デバイスにより生成された吸入可能なエアロゾルを受け取るために、ユーザはいくつかの例では、ふかすことによって、ボタンを押すことによって、または他の何らかのアプローチによって、気化器デバイスを起動させることができる。一般的に使用される(および本明細書でも使用される)「ふかす」という用語は、ユーザが以下のように吸入することを指す。すなわちこの吸入によって、気化された気化可能物質と空気との混合により吸入可能なエアロゾルが生成されるように、所定の体積の空気が気化器デバイス内に吸い込まれる。気化器デバイスが気化可能物質から吸入可能なエアロゾルを生成する際に用いられる一般的なアプローチとして挙げられるのは、気化可能物質を(蒸)気相に変換させるために、気化可能物質を(ときには加熱室とも称される)気化室内で加熱することである。気化室とは通常、気化器デバイス内の1つのエリアまたは容積体のことを指し、その内部で熱源が(たとえば伝導、対流および/または放射により)気化可能物質の加熱を引き起こして、気相と凝縮相(たとえば液相および/または固相)との間で何らかの平衡状態にある気化可能物質と空気の混合物を生じさせる。
【0005】
気相の気化可能物質の特定の成分が、気化された後、冷却および/または圧力の変化に起因して凝縮する可能性があり、これにより、ふかすことで気化器デバイス内に吸い込まれた空気の少なくとも一部に浮遊した凝縮層(たとえば液体および/または固体)の粒子を含むエアロゾルが形成される。気化可能物質が準揮発性化合物(たとえば吸入の温度および圧力のもとで比較的低い気化圧力を有するニコチンなどの化合物)を含む場合、吸入可能なエアロゾルは、気相と凝縮層との間で何らかの局所的な平衡状態にある準揮発性化合物を含む可能性がある。
【0006】
概要
1つの態様において、システムは、電流源回路と、システム電力入力側と、これら電流源回路およびシステム電力入力側を、気化器加熱素子と接続するように構成された出力側と接続する負荷切替回路とを含む。電流源回路、システム電力入力側および負荷切替回路は、1つの集積回路の一部を成している。
【0007】
以下の特徴のうちの1つまたは複数を、任意の実行可能な組み合わせにおいて含めることができる。たとえばシステムは保護回路を含むことができ、この保護回路は、気化器デバイスの動作パラメータを予め定められた条件と比較し、動作パラメータが条件を充足しているという判定に応答して、アラーム信号を出力するように構成されている。保護回路は集積回路の一部を成すことができる。動作パラメータは、電圧、電流、温度、電流制限および電気的短絡を含むことができる。予め定められた条件は予め定められた閾値を含むことができ、システムは予め定められた閾値を格納する少なくとも1つのレジスタをさらに含む。保護回路は、気化器デバイスの動作パラメータと予め定められた閾値とを比較するように構成された比較器回路を含むことができ、この比較器回路は、比較を表す信号を出力するように構成されている。ヒータタイムアウト、気化器デバイス内のサブシステムの温度、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、低電圧誤動作防止(UVLO)、電気的短絡、制限を上回る電流、マルチレベルスロットリング、電圧低下保護、および/またはヒータ停止阻止信号について検出するように、保護回路を構成することができる。保護回路は、ウォッチドッグタイマ回路および/または冗長クロック源を含むことができる。
【0008】
システムは、保護回路と接続された制御ロジックを含むことができ、この制御ロジックは、アラーム信号を受信し、このアラーム信号の受信に応答して、気化器デバイスの動作の変更を生じさせるように構成されており、この変更は、気化器デバイス内の少なくとも1つの回路を電源から分離すること、少なくとも1つの回路のクロック速度を変更すること、および/または少なくとも1つの回路の電力レール電圧を変更することを含む。
【0009】
システムは、第1の出力端子と接続された電流モニタと、第2の出力端子と接続された電圧モニタと、これらの電流モニタおよび電圧モニタと接続された制御ロジックとを含むことができ、電流モニタは、気化器加熱素子と接続するように構成されており、電流モニタは、第1の出力端子において電流をセンシングするように構成されており、電圧モニタは、気化器加熱素子と接続するように構成されており、電圧モニタは、気化器加熱素子両端の電圧をセンシングするように構成されており、さらに制御ロジックは、第1の出力端子においてセンシングされた電流、気化器加熱素子両端間でセンシングされた電圧の特性を表すデータを受け取り、受け取ったデータに基づき気化器加熱素子の温度を調節するために、負荷切替回路の動作を調節するように構成されている。
【0010】
システムは、負荷切替回路にいっそう高い電圧を供給するように構成された集積昇圧型コンバータを含むことができる。システムは、少なくとも1つの低ドロップアウトレギュレータ、直流整流器およびスイッチングステップダウン降圧型コンバータを含む電力管理ユニット回路と、アナログ/ディジタルコンバータと、発光ダイオードドライバと、入/出力回路とを含むことができる。
【0011】
システムは、気化室およびマウスピースを含む気化器デバイス本体と、電力管理ユニット回路と接続された電源と、電力管理ユニット回路と接続されたコントローラと、アンテナと、メモリと、周囲圧力センサと、加速度計とを含むことができる。
【0012】
システムは、デューティサイクルおよび吸い込み強度の特性を表す吸い込みプロファイル、および/またはデューティサイクルと蒸気産出の特性を表す蒸気プロファイルに基づき、出力側における信号のデューティサイクルを変更するように構成された回路を含むことができる。システムは、少なくとも1つのスイッチを含むマルチプレクサを含むことができ、このマルチプレクサは、負荷切替回路と電圧モニタとの間で入力側を切り替えるように構成されている。システムは、負荷切替回路と接続された第1の入力端子と、電圧モニタと接続された第2の入力端子と、電圧モニタと接続された第3の入力端子と、参照ノードと接続された第4の入力端子と、4つの出力端子とを含むマルチプレクサを含むことができ、4つの出力端子のうちの少なくとも1つが出力側と接続される。
【0013】
このアプローチに従ったシステムおよび方法について、ならびに有形に具現化された機械可読媒体を有する製品について説明する。この場合、機械可読媒体は、1つまたは複数の機械(たとえば汎用および/または専用のプロセッサまたは回路等を含むことができるコンピュータ、マイクロコントローラなど)が本明細書で説明する動作をもたらすように動作可能である。同様に、プロセッサおよびこのプロセッサと接続されたメモリを含むことができるコンピュータシステムについても説明する。この場合、メモリは、本明細書で説明する動作のうちの1つまたは複数をプロセッサに実施させる1つまたは複数のプログラムを含むことができる。
【0014】
添付の図面および以下の説明には、本明細書で説明する保護対象の1つまたは複数のバリエーションの詳細が記載されている。本明細書で説明する保護対象のその他の特徴および利点は、これらの説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書に組み込まれてその一部を成している添付の図面は、本明細書で開示される保護対象の特定の態様を示しており、その説明と併せて、開示される実施態様に関連する原理のいくつかを説明するのに役立つものである。
図1A】本願保護対象のいくつかの実施態様によるカートリッジと気化器デバイス本体とを有する気化器デバイスの特徴を示す概略図である。
図1B】本願保護対象のいくつかの実施態様による気化器デバイス本体におけるカートリッジレセプタクルから分離されたカートリッジと共に気化器デバイスを示す上面図である。
図1C】本願保護対象のいくつかの実施態様による気化器デバイス本体におけるカートリッジレセプタクルに差し込まれたカートリッジと共に気化器デバイスを示す上面図である。
図1D】本願保護対象のいくつかの実施態様による気化器デバイス本体におけるカートリッジレセプタクルに差し込まれたカートリッジと共に気化器デバイスを示す上面等角投影図である。
図1E】本願保護対象のいくつかの実施態様による気化器デバイス本体と共に使用するのに適したカートリッジのマウスピース端部の側から見た上面等角投影図である。
図1F】本願保護対象のいくつかの実施態様による気化器デバイス本体と共に使用するのに適したカートリッジの反対側の端部から見た上面等角投影図である。
図2A】本願保護対象のいくつかの実施態様による非カートリッジ型気化器デバイス本体の特徴を示す概略図である。
図2B】例示的な非カートリッジ型気化器デバイスを示す側面等角投影図である。
図2C】例示的な非カートリッジ型気化器デバイスを示す底面等角投影図である。
図3】本願保護対象のいくつかの態様による集積型の電力および/またはヒータ制御装置を含むことができる例示的な気化器デバイスのシステムブロック図である。
図4】本願保護対象のいくつかの態様による例示的な集積電力管理ユニットのシステムブロック図である。
図5】本願保護対象のいくつかの実施態様による例示的なヒータ制御装置を示すシステムブロック図である。
図6】例示的な保護機構回路をさらに詳しく示すシステムブロック図である。
図7】本願保護対象のいくつかの実施態様による他の例示的なヒータ制御装置を示すシステムブロック図である。
図8】本願保護対象のいくつかの実施態様による他の例示的なヒータ制御装置を示すシステムブロック図である。
図9】本願保護対象のいくつかの実施態様によるシステムブロック図である。
図10】可変蒸気産出の一例を示す図である。
図11】いくつかの実施態様によるポッド識別子回路を示すブロック図である。
図12】本願保護対象のいくつかの例示的な実施態様による例示的な電力管理ユニットを示す図である。
【0016】
実際に役に立つ場合には、同じ参照符号は同じ構造、特徴または要素を表す。
【0017】
詳細な説明
本願保護対象のいくつかの態様は、気化器デバイスのための集積型の電力管理回路およびヒータ制御回路に関する。本願保護対象によれば、改善されたヒータ性能およびフェイルセーフ機能を含む改善された気化器動作を実現する回路を提供することができ、これによって気化器デバイスが改善される。本願保護対象のいくつかの実施態様は、(たとえば特定用途向け集積回路(ASIC)などのチップ上に)集積回路として実装されたヒータ制御回路を含む、集積電力管理ユニットを含むことができる。本願保護対象のいくつかの態様を特定用途向け集積回路として実装することにより、本願保護対象のいくつかの態様によれば、電力供給管理の改善、所要電力の低減、フレキシブルなヒータ制御装置の提供、性能のばらつきを小さくする個別部品数の低減などが可能になる。他の利点も考えられる。
【0018】
本願保護対象の実施態様による気化器の例として、電子気化器、ENDSなどが挙げられる。上述のようにかかる気化器は一般に、吸入可能な所定の用量の物質を供給するために、気化可能物質を(対流、伝導、放射またはこれらの何らかの組み合わせによって)加熱するハンドヘルドデバイスである。気化器と共に使用される気化可能物質を、いくつかの実施例ではカートリッジ内に設けることができる(カートリッジとは、貯蔵器内または他の容器内に気化可能物質を含む気化器の一部のことを指すことができ、この部分を、空になったときに再充填可能なものとすることができ、あるいは同じまたは異なる種類の追加の気化可能物質を含む新たなカートリッジの方を選択して、廃棄可能なものとすることができる)。いくつかの実施態様において、気化器デバイスを、カートリッジ型気化器デバイス、カートリッジレス型気化器デバイス、またはカートリッジのあるなしにかかわらず使用可能な多目的気化器デバイスとすることができる。たとえば多目的気化器デバイスは加熱室(たとえば炉)を含むことができ、この加熱室は、気化可能物質を加熱室内にじかに収容するように、さらには気化可能物質を保持するための貯蔵器などを有するカートリッジを収容するようにも、構成されている。様々な実施態様において、気化器を、液体の気化可能物質(たとえば有効成分および/または非有効成分が溶液中に懸濁または保持されている担体溶液、あるいは気化可能物質そのものの液体形態)と共に、あるいは固体の気化可能物質と共に、使用するように構成することができる。固体の気化可能物質は、植物ベースの物質または非植物ベースの物質を含むことができ、この物質は、固体の気化可能物質の一部を気化可能物質として放出し(たとえば気化可能物質がユーザによる吸入のために放出された後、この物質の一部が廃棄物として残るようにし)、またはオプションとしてこの物質を、気化可能物質そのものの固体形態とすることができ、この固体物質のすべてを最終的に吸入のために気化させることができるようにする。液体の気化可能物質を、同様に完全に気化可能であるようにすることができ、または液体の気化可能物質は、吸入に適した物質すべてが消費された後に残留する液体物質の一部を含むことができる。
【0019】
本願保護対象に従い本明細書で使用される「気化器デバイス」という用語は通常、パーソナルユースに便利な携帯型自給式デバイスのことを指す。一般にかかるデバイスは、気化器上の1つまたは複数のスイッチ、ボタン、タッチセンサ式デバイス、または(通常、コントロールと称することができる)他のユーザ入力機能などによって制御されるが、ただし最近では、外部コントローラ(たとえばスマートフォン、スマートウォッチ、他のウェアラブル電子デバイス等)と無線通信可能な多くのデバイスを利用できるようになってきた。この文脈において「コントロール」とは通常、様々な動作パラメータのうちの1つまたは複数に作用を及ぼす能力のことを指し、これにはヒータをオン/オフさせること、動作中にヒータが加熱されるときの目標となる最低温度および/または最高温度を調節すること、様々なゲームまたはユーザがデバイス上でアクセス可能な他のインタラクティブな機能、および/または他の動作のいずれか含めることができ、ただしこれらに限定されるものではない。
【0020】
図3は、本願保護対象のいくつかの態様による集積型の電力および/またはヒータ制御装置を含むことができる例示的な気化器デバイス300のシステムブロック図である。例示的な気化器デバイス300は、無線(たとえばBluetooth)をサポートするシステムオンチップ(SOC)を備えたコントローラ305を含み、これは蒸気制御システム310、電力およびバッテリシステム315、ユーザインタフェース320、付加的なセンサ325、アンテナ330、メモリ335、およびコネクタ340と接続されている。例示的な気化器デバイス300はさらに、(リチウムバッテリなどの)電源350と、(たとえば抵抗として電気的にモデリングされる)加熱素子を含むことができるポッドと接続するためのポッドコネクタ345とを含み、このポッドには気化可能物質が含まれている。
【0021】
蒸気制御システム310は、デバイスの気化機能を実現することができ、ポッド抵抗測定回路312と、ポッドヒータスイッチング電界効果トランジスタ(FET)313と、ポッド圧力センサ314とを含む。ポッド抵抗測定回路312およびポッドヒータスイッチングFET313は、ポッドの加熱素子の温度を測定するように動作することができる(これはたとえば、加熱素子へ流れる電流を短期間、断続的に遮断し、この短期間の遮断中に加熱素子の抵抗を測定し、測定された抵抗から熱抵抗係数を用いて温度を取得することによって行われる)。ポッド圧力センサ314は、ふかしの開始および終了または継続のいずれかを検出するために、圧力を監視することができる。
【0022】
電力およびバッテリシステム315は、電源350からデバイスの他のシステムへ電力を供給するように動作する。電力およびバッテリシステム315は、充電器316、バッテリ残量ゲージ317、バッテリ保護装置318、および低ドロップアウト(LDO)レギュレータ319を含むことができる。充電器316は、コントローラ305によって制御可能な充電回路を含むことができ、いくつかの実施態様では誘導充電器および/またはプラグイン充電器を含むことができる。たとえば、汎用シリアルバス(USB)接続を用いて、気化器デバイス300を充電することができ、かつ/またはコンピューティングデバイスとコントローラ305との間で有線接続を介して通信を行うことができる。充電器316は電源350を充電することができる。バッテリ残量ゲージ317は、電圧、電流、推定充電状態、推定容量、サイクル計数、バッテリ認証などのようなバッテリ情報を監視することができる。バッテリ残量ゲージ317は、たとえばユーザインタフェース320を介してバッテリステータスを表示させるためなどに利用する目的で、この情報をコントローラ305へ供給することができる。バッテリ保護装置318は、過充電、過放電、過急速放電などからデバイス300を保護するために、電池(電源350のリチウム電池または他の電池、個別電力蓄積ユニットなど)を回路に投入および回路から外すためのスイッチを含むことができる。LDOレギュレータ319は、気化器デバイス300の残りの部分に電力を供給する目的で、リチウムバッテリ350の出力電圧を調整することができる。
【0023】
ユーザインタフェース320は、(スピーカとも称される)ブザー322、発光ダイオード(LED)ドライバ323およびLED324を含む。ブザー322はユーザに対し、音響および/または触覚フィードバック(たとえば振動)を供給することができ、LEDドライバ323およびLED324は視覚フィードバックを供給することができる。
【0024】
付加的なセンサ325は、周囲圧力センサ327と加速度計328とを含む。加速度計328は、(揺さぶり運動のような)気化器デバイス300の急激な運動の検出を実現することができ、これをコントローラ305によって(たとえば加速度計328からの信号の受信を通して)、気化器システムの一部であるユーザデバイスとの通信を開始するためのユーザ命令であると解釈することができ、このユーザデバイスを、気化器デバイス300の1つまたは複数の動作および/またはパラメータを制御するために使用することができる。付加的にまたは択一的に、(揺さぶり運動のような)気化器デバイス300の急激な運動の検出を、コントローラ305によって、複数の温度セッティングを周期的に繰り返すためのユーザ命令であると解釈することができ、カートリッジ内に保持された気化可能物質は、蒸気制御システム310のアクションによりこれらの温度セッティングまで加熱させられることになる。
【0025】
図4は、本願保護対象のいくつかの態様による例示的な集積電力管理ユニット400のシステムブロック図であり、これによって電力供給管理の改善、所要電力の低減、フレキシブルなヒータ制御装置の提供、性能のばらつきを小さくする個別部品数の低減などが可能になる。例示的な集積電力管理ユニット400は、蒸気制御システム310、電力およびバッテリシステム315、ならびにユーザインタフェース320の機能を実施することができる。例示的な集積電力管理ユニット400は、マイクロコントローラ305とインタフェースを介して接続可能であり、複数のアナログおよび電力のサブシステムをメインボード上およびハイパワーフレックスボード上に集積している。
【0026】
例示的な集積電力管理ユニット400は、ヒータ制御装置405、測定回路410、DC整流器415、充電器420、システム電力レール(図示せず)、LEDドライバ425、ブザードライバ430、およびガスゲージ435のサブシステムを含む。いくつかの実施態様の場合、例示的な集積電力管理ユニット400は、センサ(加速度計、圧力センサ)、およびポッドコネクタ345、アンテナ330、コネクタ340およびメモリ335といった付加的なサポート部品を集積していない。
【0027】
集積電力管理ユニット400は、LDOレギュレータ440、スイッチングステップダウン降圧型コンバータ445(たとえばバック)、および昇圧型コンバータ450を含むことができる。集積電力管理ユニット400は、この電力管理ユニット400により供給されるシステムの電圧および電流を監視するために、アナログ/ディジタルコンバータ(ADC)455を含むことができる。ADC455は、あとでさらに十分に説明するように保護機構を実装する目的で、ダイおよびリモートNTC温度監視システムの温度を監視することができる。
【0028】
集積電力管理ユニット400は、入/出力(IO)デバイスおよびシステム制御装置460を含むことができ、これによってコントローラ305は、集積電力管理ユニット400の動作を変更(たとえば設定)することができる。IOおよびシステム制御装置460は、内部発振器に加え、システムクロックを駆動するための外部発振器用の接続端子も含むことができる。
【0029】
ヒータ制御装置405は、ポッド内に配置された(ポッド負荷とも称される)ポッド加熱素子480を加熱するために集積された熱経路および電流源を提供することができる。図5は、本願保護対象のいくつかの実施態様による例示的なヒータ制御装置405を示すシステムブロック図である。ヒータ制御装置405は、負荷スイッチ505(たとえば図示されているようなスイッチ、ハーフブリッジトポロジなど)を含むことができる熱経路を含むことができ、この負荷スイッチ505は、(out+として表された)駆動線を介したポッド負荷480への電流源510または(VSYS/VBSTとして表された)外部電圧515の印加を制御する。負荷スイッチ505は、タイミング(たとえば背後電力発生のリスクがないこと)を保証するために、非オーバラップ回路を有することができる。負荷スイッチを制御ロジック520により制御することができ、ポッド内に含まれている気化可能物質を加熱する目的でポッドヒータ480を加熱するために負荷スイッチ505を調節するように、制御ロジック520をプログラミングおよび/または設定することができる。制御ロジック520は、1つまたは複数の入力端子525またはピンを含むことができ、これはデバイスコントローラ305から、または気化器デバイス内の他のシステムまたは集積ヒータ制御装置405から、信号を受け取ることができる。同様に電流源510をプログラミング可能とすることができ、制御ロジック520によって制御することができる。あとでさらに十分に説明する保護機構回路530によって、負荷スイッチ505を制御することもできる。
【0030】
いくつかの実施態様において、負荷スイッチ505をハーフブリッジトポロジとして実装することができ、このトポロジにおいて、パルス幅変調周波数を変化させることにより、DCバッテリ電圧が0Vからバッテリ電圧の範囲内で変化する波形となる。ポッドヒータ480を駆動するために、この可変電圧/電力波形を使用することができる。ハーフブリッジの実装によって、オフ時間中、電流が惰性で流れることから、より高いインダクタンス負荷を許容することができる。
【0031】
集積ヒータ制御装置405は、集積電圧モニタ535と電流モニタ540とを含むことができ、これらはデシメーションブロック545を介して制御ロジック520と接続されている。集積電圧モニタ535は、ADC537とアナログフロントエンド539とを含むことができ、ポッド加熱素子480両端の電圧を測定するために、sense+およびsense-接続端子を介してアナログフロントエンド539をポッドと接続することができる。集積電流モニタ540は、ADC542とアナログフロントエンド543とスイッチ544とを含むことができ、駆動線(out+)を流れる電流を測定するために、スイッチ544は駆動線(out+)と接続されている。スイッチ544を、デバイスの動作モードに従い集積電流モニタ540を電流源510または外部電圧515と接続するように、構成することができる。処理および解析のために、電圧モニタ535および電流モニタ540はそれらの個々の測定値を、デシメーションブロック545を介して制御ロジック520へ供給することができる。リアルタイムの同期した電圧センシングおよび電流センシングを提供可能な集積電圧モニタ535および集積電流モニタ540を使用することによって、いっそう迅速な制御ループ応答時間およびいっそう高精度な温度制御を実現することができる。アナログフロントエンド539、543を介した信号のコンディショニングおよびフィルタリングによって、いっそう低ノイズの測定値が供給される。
【0032】
いくつかの実施態様において、保証された性能を実現することができる(たとえば絶対精度、利得分散、群遅延など)。いくつかの実施態様において、コントローラ305に対する連続的なデータポーリング(たとえば8kHz)のために、専用のInter-Integrated Circuit(I2C)ポートを含めることができる。
【0033】
いくつかの実施態様において、集積ヒータ制御装置405は、集積昇圧型コンバータ550を含むことができる。昇圧型コンバータ550は、オプションの電源をヒータ負荷スイッチ505へ供給することができ、これをディスエーブル/バイパスすることができる。昇圧型コンバータ550を含めることによって、種々のポッド抵抗に対しフレキシブルな電力供給範囲を高効率で可能にすることができる。いくつかの実施態様において、昇圧型コンバータ550は、プログラミング可能な出力電圧および電流制限をサポートすることができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、集積ヒータ制御装置405は、4線式センシングを利用するリモート電圧センシングを含むことができ、これによって寄生抵抗およびポッド接触抵抗に起因する損失が補償される。かかるアプローチによって、いっそう高精度の温度制御のために正確で整合性のあるポッドの測定値を供給することができる。いくつかの実施態様において、4つのポッド接続端子のうちの1つまたは複数の間で電圧モニタ535の1つの線を切り替えるために、マルチプレクサ(mux)を含めることができる。たとえばマルチプレクサを、sense+とout+との間で電圧モニタ535の第1の接続端子を切り替えることができるように、実装することができる。
【0035】
集積ヒータ制御装置405は、1つまたは複数の保護機構回路530を含むことができる。図6は、例示的な保護機構回路530をさらに詳しく示すシステムブロック図である。保護機構を、フェイルセーフおよびセーフティ機構回路と称することもできる。保護機構回路530を、システムクロック、制御ロジック520と動作可能に接続することができ、保護機構回路530は設定可能な保護比較器605を含むことができ、この比較器605は、(たとえばレジスタに格納された)予め定められた閾値を気化器デバイスの動作パラメータと比較する。これらの動作パラメータとして、電圧(たとえばポッド入力、ポッド出力、昇圧)、電流(たとえばポッド入力、ポッド出力)、温度(たとえばダイ、負の温度係数の抵抗(NTC))、電流制限(たとえば昇圧、充電器)、および短絡(たとえば出力)を挙げることができる。気化器デバイスの動作中、1つまたは複数のセンサまたはセンシング回路を介して取得可能な動作パラメータを、それらの個々の閾値と比較して、動作パラメータが閾値を上回っているのかまたは下回っているのかを判定することができる。動作パラメータが異常である(たとえば上限閾値を上回っているかまたは下限閾値を下回っている)と判定されたならば、保護機構は制御ロジック520へアラームをシグナリングすることができる。保護機構回路530からアラーム信号を受け取ったことに応答して、制御ロジック520はデバイスの動作を変更することができ、たとえば特定のサブシステムを電源から切り離すことができる(たとえば気化器デバイスの回路または機能を分離する)。たとえば、ポッドの温度が高すぎると判定されて、保護機構回路530がアラームを発したならば、制御ロジック520は、ポッドヒータ480へ電流を供給しないように熱経路(たとえば電流源510、負荷スイッチ505)を分離することができる。
【0036】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、ヒータタイムアウトを含むことができる。保護機構回路530はハードウェアタイマを含むことができ、ファームウェアまたはセンサのハングアップから保護するために、ポッド加熱素子480(たとえばコイル)の連続的な加熱を無効にすることができる。いくつかの実施態様において、タイムアウト期間をプログラミング可能とすることができる(たとえば5s、10s、20s、40sなど)。
【0037】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、過温度保護を含むことができる。保護機構回路530は、温度ベースの保護方式を実装することができ、これは気化器デバイス内の様々な温度センサを利用して、様々なサブシステムのスロットリングおよび/または無効化を行う。これらの温度センサに負の温度係数の抵抗(NTC)を含めることができ、これによってスロットリングおよび保護の機能のための種々のシステムロケーションでの温度監視、充電ベースのスロットリングおよび保護のための専用のバッテリNTC、シリコンの損傷を防止するためのオンダイ温度監視などが可能になる。気化器デバイス内の温度測定値が高すぎると保護機構回路530が判定したならば、制御ロジック520は、熱の発生を低減するように気化器デバイスの動作を変更することができる。熱の発生の低減をたとえば、クロック速度の変更、出力電圧レベル、デバイスおよび/または回路の特定のサブシステムまたは一部分の出力低減などによって、実施することができる。
【0038】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、過電圧/過電流保護(OVP/OCP)および低電圧誤動作防止(UVLO)を含むことができる。(たとえば高速で反応する比較器ベースのトリガを含むことができる保護比較器605により検出されて)電圧および電流が予期される動作範囲外にあるならば、保護機構回路530はサブシステムおよび機能を無効にすることができる。いくつかの実施態様において、OVP/OCPおよびUVLOを、熱経路信号および高電力サブシステムにおいて実装することができる。
【0039】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、短絡保護を含むことができる。電気的な短絡が検出されると(たとえば電流の取り込みが増加している可能性があり、保護比較器605により短絡を検出することができたならば)、保護機構回路530は、種々のサブシステムの出力を無効にすることができる。いくつかの実施態様において、充電器用の出力電力レール、DCDCコンバータ、LEDドライバ、スピーカ(たとえばブザー)増幅器などに対し、短絡保護を実装することができる。いくつかの実施態様において、ポッドヒータ480の出力に対しプログラミング可能な抵抗閾値を用いて、短絡保護を実装することができる。
【0040】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、電流制限を含むことができる。外部デバイス/部品の定格を上回ってしまうのを防止する目的で、保護機構回路530および保護比較器605は、最大電流閾値(たとえば上限)を検出することができる。いくつかの実施態様において、これらの電流制限閾値をプログラミング可能とすることができる。
【0041】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、マルチレベルスロットリングおよび電圧低下保護を含むことができる。保護機構回路530および保護比較器605は、システムの電圧および温度のリアルタイムの監視を実施することができる。制御ロジック520は、アラームがトリガされたと保護機構回路530が判定したことに応答して、システムの状態に応じて気化器デバイスの種々のサブシステムの機能を阻止することができる(たとえば冷間での加熱を無効にする、熱間での充電を無効にするなど)。いくつかの実施態様において、これらの閾値および挙動をプログラミング可能とすることができる。
【0042】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、冗長クロック源を含むことができる。保護機構回路530は、内部RCOおよびオプションとして外部の32kHzXTALを含むことができる。かかる冗長クロック源によって、ヒータタイムアウトセーフティ機能を制御するリアルタイムクロック(RTC)の機能を保証することができ、これによってRTCは、障害の影響をいっそう受けやすい可能性がある外部の部品に左右されなくなる。
【0043】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、ハードウェアウォッチドッグタイマを含むことができる。保護機構回路530は、熱経路の能力を機能したまま維持するのに必要とされる外部クロッキングピン610を含むことができる。かかるハードウェアウォッチドッグタイマは、ファームウェアまたはハードウェア(たとえばセンサ)のラッチアップ(たとえばハングアップ、フリーズなど)から保護することができる。いくつかの実施態様において、クロックレートタイミング閾値をプログラミング可能とすることができる。
【0044】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、ヒータ停止阻止ピン615を含むことができる。保護機構回路530はオープンドレインアーキテクチャを含むことができ、これによって他のサブシステム(たとえばコントローラ305)がヒータを無効にすることができる(たとえばセンサに起因する障害)。いくつかの実施態様において、ヒータを無効にすることは、プログラミング可能な遅延時間を含む。
【0045】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、UVLOピン620を含むことができる。保護機構回路530は、低電圧をシステムに通知するために付加的なUVLO出力ピン620を含むことができ、これによって他の外部のサブシステムが低電圧状態を別個に処理することができる。
【0046】
別の例示的な保護機構(たとえばフェイルセーフ)は、高速なグレースフルシャットダウン挙動を含むことができる。保護機構回路530は、障害状態により引き起こされるシャットダウン挙動、またはファームウェア制御を必要とせずにハードウェアにおいてグレースフルに処理される保護機構を引き起こすことができる。たとえば温度を介してOVP、OCP、短絡が検出されたならば、ヒータおよび/または高出力サブシステムをただちに(たとえば10μs~100μs以内に)、障害状態を判定するためにADCサンプリングに依拠しない手法で、シャットダウンすることができる。いくつかの実施態様において、各サブシステムは、個々のシャットダウン機構および/またはシャットダウン回路を有することができる。たとえばヒータ制御装置405における障害によって、システムの他の部分を無効にせずにヒータブロックを無効にすることができる。
【0047】
いくつかの実施態様において、1つまたは複数のパラメータ、セッティングまたは値を、ワンタイムプログラマブル(OTP)となるように構成することができる。既述の様々なタイムアウトおよびセーフティ機能を、製造時または顧客のOTPを介して、ハードプログラミングすることができる。OTPである所望のセッティングを1回は指定することができ、そのようにした場合にそれ以後は、プログラミングまたは設定しなおすことはできない。OTPによって誤った設定またはユーザのミスを防ぐことができ、コアとなるフェイルセーフ関連の値は(たとえば小売店で変更後の)望ましくない変更の影響を受けにくくなる。
【0048】
いくつかの実施態様において、集積ヒータ制御装置405は、この集積ヒータ制御装置405を動作させるための制御ロジック520と接続された付加的なピンを含むことができる。たとえばこれらのピンは、熱選択ピン625、熱パルス幅変調(PWM)ピン630、ヒータ準備完了ピン635、クロック線(SCL)ピン640、およびデータ線(SDA)ピン645を含むことができる。熱選択ピン625によって、ポッドを駆動するために電流源と負荷スイッチとを選択可能にすることができる。熱PWM630によって、温度制御のためにポッドヒータ480へ供給される電力を、負荷スイッチが変更可能にすることができる。ヒータ準備完了ピン635は、ヒータ制御装置405のためのイネーブルピンを含むことができる。ヒータ停止ピンは、ヒータ制御装置405を無効にするための阻止ピンを含むことができる。SCLピン640およびSDAピン645によって、専用I2Cバスがヒータの電圧および電流のセンシングデータをポーリング可能とすることができる。
【0049】
いくつかの実施態様において、上述のように集積ヒータ制御装置405は、過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、電流制限、ハードウェアタイムアウトなどのような(性能パラメータおよびセーフティパラメータを含む)動作パラメータを設定するためのレジスタを含むことができる。
【0050】
いくつかの実施態様において、集積ヒータ制御装置405によって多くの技術的な利点をもたらすことができる。たとえば集積ヒータ制御装置405は、気化器デバイスにおいて必要とされる外部の個別部品の個数を低減することができ、これによって部品の公差および不整合に起因するデバイス性能の変動を低減することができる。さらに集積ヒータ制御装置405は、スリープからの高速なスタートアップ(たとえば5ms)および高速な測定セトリングタイム(たとえば100μs未満)を含むことができる。
【0051】
再び図4を参照すると、いくつかの実施態様において、集積電力管理ユニット400は保護機構470を含む。保護機構470を、図5を参照しながら説明したように、ヒータ制御装置405内に実装することができ、またはヒータ制御装置405とは別個のロジックブロックとして、電力管理ユニット400内に実装することができる。保護機構は、すべてのブロックに別個に作用を及ぼすことができ、たとえば短絡の検出に基づきシャットダウンするなど、同様に応答することができる。
【0052】
いくつかの実施態様において、集積電力管理ユニット400はポッドID 465を含むことができる。ポッドID 465は、較正データおよびポッド情報を格納することができ、これらをさらに詳しく正確な使用情報(デバイスが使用したことのあるポッド、ニコチン消費ログ、ポッド充填レベル推定値など)を通して得られるベターユーザエクスペリエンスに送り込むことができる。いくつかの実施態様において、PODの識別子は工場でプログラミングされ、偽造を防止する。通信を無線、電力線搬送信号、または信号線インタフェースとすることができる。
【0053】
本願保護対象のいくつかの実施態様によれば、気化器デバイスに対する電気的な改善をもたらすことができる。たとえば本願保護対象のいくつかの実施態様は、機能等価性のために線形の充電器(これはたとえば充電時間および充電効率の点で充電性能について機能等価性を達成することができる)を含むことができ、またはいっそう高速な充電速度およびいっそう低いホットスポットのためにスイッチング充電器を含むことができる。いくつかの実施態様は、xBUS/xBAT/xSYS線上での集積型の電圧および/または電流監視を含むことができ、これをUSBポート、バッテリおよびシステムの電圧および電流の測定とすることができ、ハードウェアにより調節可能な電流制限(ILIM)、充電電流、終端電圧などを含むことができ、電子情報技術産業協会(JEITA)に準拠したものとすることができ、リモートNTC温度監視を含むことができ、さらに集積入力DC整流器を含むことができる。
【0054】
いくつかの実施態様において、LEDドライバは、個別のドライバと比べて高められた性能で6個のLEDを駆動するのに適している。LEDドライバのいくつかの実施態様は、50μA~25mAの範囲内で電流を駆動することができ、CPを必要とせずにPWM調光による11ビットの電流ステップ分解能を含む。いくつかの実施態様において、LEDドライバは、LEDが短絡および/または開放されているとき、LEDが過電圧および過電流であるとき、そのことを検出することができる。いくつかの実施態様において、Bluetooth Low Energy (BLE)の性能が既知のシステムにマッチする可能性があり、またはそれよりも優れている可能性がある。
【0055】
いくつかの実施態様において、スピーカ/ブザードライバは、フルHブリッジトポロジを含むことができ、これによってブザーを前後に動かすことができる。サンプリングレートは、8ビットまたは12ビットの分解能で8kHzまたは16kHzを含むことができる。スピーカ/ブザードライバは、パルス密度変調(PDM)入力、短絡保護、ならびに波形およびサポートするルーピングケイパビリティがロードされた内部RAMを含むことができる。
【0056】
本願保護対象のいくつかの実施態様によれば、いっそう小さい電力消費を実現することができる。たとえば集積SoC/PMUは、すべてのサブシステムにわたり最大電力状態の制御を提供することができる。電力状態を、SoCまたはウェイクソースによって設定可能である。ポッドIDウェイクソースを利用して、ポッドがないときにはデバイスをできるかぎり最小電力状態に維持することができ、これによりポッドが接続されていないときに、デバイスは超小電力(たとえばハイバネーション)モードで動作するようになる。いくつかの実施態様において、ハイバネーションモードは1.1μAの電流を流すことができ、スリープモードは5μAの電流を流すことができ(様々なスリープ/ポッド検出モード、BLEなし)、さらにBLEアドバタイジングモードは1.7mAの電流を流すことができ、いくつかの実施態様ではこれにより約1週間にわたりデバイスを給電することができる。
【0057】
本願保護対象のいくつかの実施態様は、すべての内部電力レールのために内部ADCを含み、それらによって綿密で広範囲にわたるインライン工場テストを実現することができ、さらに使用中、システム全体の監視を実現することができる。セルフテストによって、複雑なテスト装備アセンブリおよびテスト手順の必要性を低減することができる。テスト時間が削減され、1時間あたりの生産数(UPH)が増加する。いくつかの実施態様によって、いっそう僅かなIC、個別部品および受動部品によって、単純化された表面実装アセンブリ(SMA)を実現することができる。
【0058】
本願保護対象のいくつかの実施態様は、単一パッケージのチップスケールパッケージ(CSP)を含むことができ、これによって16個以上の個別部品を置き換えることができ、障害ポイントの個数を減らすことができ、外部の受動品の個数を減らすことができ、さらに0.35mm(または他のサイズの)ピッチで実装することができる。
【0059】
再び図3を参照すると、本願保護対象のいくつかの実施態様は以下のような気化器デバイスを含むことができる。すなわちこの気化器デバイスは、電力およびバッテリシステム315またはユーザインタフェース320を集積回路と置き換えることなく、個別の蒸気制御システム310の代わりに、図4図6を参照しながら説明したヒータ制御装置405のような、またはこれと類似したスタンドアローンのヒータ制御装置を使用する。本願保護対象のいくつかの実施態様は以下のような気化器デバイスを含むことができる。すなわちこの気化器デバイスは、個別の電力およびバッテリシステム315、ユーザインタフェース320および蒸気制御システム310の代わりに、図3図6を参照しながら説明した集積電力管理ユニット400のような、またはこれと類似した集積電力管理ユニットを使用する。他の実施態様およびバリエーションも可能である。
【0060】
図7は、本願保護対象のいくつかの実施態様による他の例示的なヒータ制御装置700を示すシステムブロック図である。図示された実施例は、ポッドの不十分な接触を測定して補償するために実施することができる駆動(out+)とセンシング(sense+、sense-)との切り替えのために、集積出力マルチプレクサ705を含む。マルチプレクサ705は、out+、sense+、sense-および第4の線(たとえばアース)を受け入れることができ、4つの出力(out1+、out2+、out1-およびout2-)を供給することができる。マルチプレクサ705によって、2つの接点において加熱を可能にすることができ、または接点の2つの組み合わせに基づきリモート4端子電圧測定を可能にすることができる。たとえば、マルチプレクサ705がsense+線をout2+と接続していて、out2+線に結び付けられた接点が故障していると判定されたならば、マルチプレクサ705は、動作継続のためにsense+(たとえば電圧モニタ)をout1+線に切り替えることができる。図7に示されている例示的なマルチプレクサ705は、4つのスイッチ(707a、707b、707cおよび707d)を含み、2つのスイッチ(707a、707b)はout+およびsense+を多重化し、2つのスイッチ(707c、707d)はsense-およびアースを多重化する。
【0061】
図8は、本願保護対象のいくつかの実施態様による他の例示的なヒータ制御装置を示すシステムブロック図である。図示されている実施例におけるマルチプレクサ805は、out+およびsense+を多重化する3つのスイッチ(807a、807bおよび807c)と、sense-およびアースを多重化する3つのスイッチ(807d、807e、807f)とを含む。図8に示されている実施例は、接点の両方の組み合わせにおいて電圧測定を可能にすることができる、という点で有利なものとなり得る。
【0062】
いくつかの実施態様において、集積型の出力多重化によって、ポッドに対する不十分な接触抵抗を補償するために、出力線のいずれのペアにおいてもリモート4線式電圧センシングが実施されるようにすることができ、かつ寄生経路抵抗を補償するために局所的な2線式電圧センシングを実現することができる。
【0063】
図9は、本願保護対象のいくつかの実施態様によるシステムブロック図である。図9の実施例の場合、加熱および温度制御ロジック905は、コイルパラメータ910、加熱プロファイル915および吸い込みプロファイル920の使用といった、ユーザプログラミング可能なコイルとシステムのパラメータを含む付加的な機能を含むことができ、かつ/またはこれを実現することができる。例示的なヒータ制御装置によって、集積型の調整可能な閉ループ制御を実現することができる。加熱温度および制御ロジック905は、電圧モニタおよび電流モニタにより取得された測定値を受け取ることができ、抵抗値の計算、温度の変換、適応型PID、およびヒータ駆動を実施して、熱経路における負荷スイッチを制御することができる。
【0064】
加熱および温度制御ロジック905は、コイル抵抗を温度に関連づけるコイルパラメータ910を使用することができる(したがってコイル(たとえばポッド加熱素子480)の温度をじかに測定しなくてもよく、測定された電圧および電流から求めることができる)。加熱および温度制御ロジック905は、コイル温度の特性を経時的に表すことができる加熱プロファイル915を使用することができる。目標温度を達成可能にするために、加熱プロファイル915によって、加熱および温度制御ロジック905がポッドヒータ480(たとえばコイル)を適切に駆動可能とすることができる。加熱および温度制御ロジック905は吸い込みプロファイル920を使用することができ、この吸い込みプロファイル920は、ふかしの吸い込み強度に基づき生成するために、蒸気量(たとえば可変蒸気デューティサイクル)の特性を表すことができる。吸い込みプロファイル920を、動的な、かつ/または可変蒸気産出を実装するために使用することができる。
【0065】
いくつかの実施態様において、加熱および温度制御ロジック905は、ユーザプログラミング可能なコイルパラメータを含むことができる。それらのユーザプログラミング可能なコイルパラメータは、(ルックアップテーブルにおいて数学的関数などとして実装可能である)ポッドの広範囲にわたる正確なコイル温度推定を可能にする目標コイル抵抗(TCR)、気化のための目標調整温度、ならびに障害チェックおよび測定範囲最適化のための最小および最大の予期されるコイル抵抗範囲を含むことができる。
【0066】
いくつかの実施態様において、加熱および温度制御ロジック905は、ユーザプログラミング可能なシステムパラメータを含むことができる。これらのシステムパラメータとして挙げることができるのは、いっそう整合性のある蒸気エクスペリエンスを可能にする加熱プロファイル915、いっそうカスタマイズ性の高いリアリスティックな蒸気エクスペリエンスを可能にする吸い込みプロファイル920、種々の(たとえばすべての)動作条件にわたりハードウェア挙動を制限するための最小および最大のデューティサイクル、いっそう整合性のある加熱プロファイルを提供可能であり、種々の(たとえばすべての)動作条件にわたりシステムを保護可能な最大電力、ならびに閉ループアルゴリズムを調整するためのPID係数である。
【0067】
いくつかの実施態様において、加熱および温度制御ロジックは、ワンタイムプログラマブルのセッティングおよび保護/スロットリング機構を含むことができ、これによって制御ループ挙動に依存することなく安全な動作を保証することができる。閉ループ温度制御ブロックの出力によって、ヒータブロックを適切な駆動レベルに調節することができる。閉ループ温度制御ブロックのための入力を、コイル/システムパラメータおよび専用のコイル電圧および電流のセンシングモニタのために取得することができる。さらに加熱および温度制御ロジックは、固定された吸い込み/蒸気産出レベルを供給するためのオプション、および/または吸い込み強度に基づき可変蒸気産出量を供給可能なレベル依存トリガを提供するためのオプションなど、フレキシブルなトリガソースを含むことができる。
【0068】
図10には、可変蒸気産出の一例が示されている。(吸い込み強度とデューティサイクルとに関連づけ可能な)吸い込みプロファイル1005および(蒸気産出とデューティサイクルとに関連づけ可能な)蒸気プロファイル1010を使用して、可変蒸気産出をもたらすことができる。可変蒸気産出の場合、コイル温度を制御して時間どおりに目標温度を達成するために、ヒータのデューティサイクルを変化させることができる。これには、時間どおりに目標温度を達成することになる加熱時間(たとえばポッドが気化温度にある時間)およびオフ時間(たとえばポッドが気化温度を下回っている時間)を含めることができ、このようにすることで1回のふかしの間に複数のオン期間およびオフ期間を発生させることができる。可変長のオン/オフ期間を設けることによって、産出される蒸気の量を制御することができる。このアプローチを利用することでユーザは、1回のふかし中に生成されることになる特定の蒸気量を指定することができる(たとえばダイアルを下げるまたは上げる)。
【0069】
いくつかの実施態様において、可変蒸気産出によって、いっそうカスタマイズ性の高い、かつ/またはいっそうリアリスティックな蒸気プロファイルをユーザにもたらすことができる。気化温度となるようコイル温度が調整される時間をデューティサイクリングすることにより、可変蒸気を産出させることができる。産出される蒸気の量を、ユーザアプリケーションを介して一定にしておくことができ、または吸い込み強度に基づきリアルタイムに動的に変化させることができる。吸い込みプロファイル(たとえば所与の吸い込み強度に対するデューティサイクル)および蒸気プロファイル(所与のデューティサイクルに対する蒸気産出)を使用して、この可変蒸気プロファイルを生成することができる。可変蒸気デューティサイクルの周波数を、気化において識別可能なギャップが引き起こされないように十分に高くすることができ、かつ気化温度となるよう調整するために十分なサイクルを熱PWMが有するよう十分に低くすることができる。
【0070】
図11は、いくつかの実施態様によるポッド識別子回路1105を示すブロック図である。ポッド1110は、加熱コイル1115とポッド識別子集積回路(PIC)1105とを含むことができる。PICの2つの例示的な実装が、1105aおよび1105bのところに示されている。
【0071】
PIC1105は2ピンのデバイスを含むことができ、1つのピンはアースのためであり、2番目のピンは電力とデータの双方のためである。デバイス側のホストICが同じプロトコルを使用しているかぎり、単線方式を介したPIC1105の電力およびデータを、フレキシブルなものとすることができる。いくつかの実施態様において、PIC1105は、情報を分類するための1kBのOTPと、OTPに対する読み出し/書き込みのための内部ロジックと、単線の電力/データ方式の場合に内部ロジックに適切に給電するための内部電源とを含むことができる。PIC1105のOTPの情報ストレージを、ユーザ定義型のフレキシブルな構造とすることができる。PIC1105のOTPを、ポッド製造ラインにおいてプログラミングされるように設計することができ、プログラミング後に変更/上書きすることはできない。PIC1105のワンタイムプログラミングストレージを、シリアルナンバー、フレーバー、コイル抵抗、および他の様々なポッドパラメータといったポッド固有の情報を格納することを意図したものとすることができる。かかる情報を利用してシステムは、性能(たとえば加熱の整合性)およびポッド認証を介したセキュリティをさらに強化することができる。
【0072】
図12には、いくつかの実施態様による例示的な電力管理ユニット1200が示されている。電力管理ユニット1200は、整流器ブリッジと、専用の過電圧保護(OVP)および過温度保護(OTP)回路とを含むことができる。これに加え電力管理ユニット1200は、電力線搬送通信機能を実現する通信モード管理を含むことができる。電力管理ユニット1200は、USB接続端子と接続するように構成された接点など、外部接続との接続を行い、充電と通信の両方の機能を実現する。電力管理ユニット1200は、充電により引き起こされる過剰な電圧および/または温度から回路の他の部品を保護する役割を果たすことができる。さらに電力線搬送通信機能を実現することによって、電力管理ユニット1200は、必要とされる接点(たとえばピン)の個数を4つ(電力用に2つ、通信用に2つ)から2つに減らすことができる(電力と通信の双方が同じ2つの接点を共有する)。
【0073】
上述のように、本願保護対象のいくつかの態様は、集積型の電力管理およびヒータ制御装置に関する。いくつかの実施態様において、集積電力管理ユニット400を、単一の集積回路または互いに共働する複数の集積回路として形成することができる。以下の説明は、本願保護対象の1つまたは複数の特徴を内部で実装可能な例示的な気化器デバイスに関するものである。本願保護対象によって提供される特徴の説明に対し背景状況を提供するために、これらの例示的な気化器デバイスについて説明する。
【0074】
図1A図2Cには、例示的な気化器デバイス100、200、およびそれらの中に含めることができる本願保護対象の実施態様による特徴が示されている。図1Aには、カートリッジ114を含む気化器デバイス100の概略図が示されており、図1B~1Eには、気化器デバイス本体101とカートリッジ114とを備えた例示的な気化器デバイス100を描いた図が示されている。図1Bおよび図1Cには、カートリッジ114を気化器デバイス本体101と接続する前および後の上面図が示されている。図1Dには、カートリッジ114と結合された気化器デバイス本体101を含む気化器デバイス100の等角投影図が示されており、図1Eには、液体の気化可能物質を保持するカートリッジ114の1つのバリエーションの等角投影図が示されている。通例、気化器デバイスが(カートリッジ114のような)カートリッジを含むならば、カートリッジ114は、気化可能物質を収容するように構成された1つまたは複数の貯蔵器120を含むことができる。任意の適切な気化可能物質をカートリッジ114の貯蔵器120内に収容することができ、これにはニコチンまたは他の有機物質の溶液も含まれるし、1つまたは複数の溶媒なしの(たとえば溶媒中で溶解されない)化学的な合成物、混合物、調合物などを含むことができる組成物も含まれる。
【0075】
上述のように、図1に示されている気化器デバイス100は、気化器デバイス本体101を含む。図1に示されているように、本願保護対象の実施態様による気化器デバイス本体101は、電源103(たとえばオンデマンドでの使用のために電気エネルギーを貯蔵するデバイスまたはシステム)を含むことができ、この電源103をバッテリ、キャパシタ、これらの組み合わせなどとすることができ、再充電可能または再充電不可能なものとすることができる。プロセッサ(たとえばプログラマブルプロセッサ、専用回路など)を含むことができるコントローラ105も、気化器デバイス本体101の一部として含めることができる。気化器デバイス本体101は、電源103、コントローラ105、および/またはかかるデバイスの一部として本明細書で説明した他の部品のいずれかなど、気化器デバイス本体の部品のうちの1つまたは複数を収容するハウジングを含むことができる。気化器デバイス本体101およびカートリッジ114を含む気化器デバイスの様々な実施態様において、カートリッジ114を、気化器デバイス本体101上に、その中に、または部分的にその中に、取り付けることができる。たとえば、気化器デバイス本体101はカートリッジレセプタクル152を含むことができ、その中にカートリッジ114を差し込み式で収容することができる。
【0076】
コントローラ105のプロセッサは、ヒータ118の動作を制御する回路を含むことができ、ヒータ118はオプションとして、カートリッジ114内に、たとえばカートリッジ114の一部である貯蔵器または容器内に収容された気化可能物質を気化させるために、1つまたは複数の加熱素子を含むことができる。様々な実施態様において、ヒータ118を、気化器デバイス本体101内に、または(図1Aに示されているように)カートリッジ114内に、あるいは両方に設けることができる。コントローラ回路は、1つまたは複数のクロック(発振器)、充電回路、I/Oコントローラ、メモリなどを含むことができる。択一的にまたは付加的に、コントローラ回路は、Bluetooth、近距離無線通信(NFC)、Wi-Fi、超音波、ZigBee、RFIDなどを含む、1つまたは複数の無線通信モードのための回路を含むことができる。気化器デバイス本体101はメモリ125を含むこともでき、これをコントローラ105の一部とすることができ、またはさもなければコントローラとデータ通信することができる。メモリ125は、揮発性のメモリまたはデータストレージ(たとえばランダムアクセスメモリ)、および/または不揮発性のメモリまたはデータストレージ(たとえばリードオンリメモリ、フラッシュメモリ、ソリッドステートストレージ、ハードディスクドライブ、その他の磁気ストレージなど)を含むことができる。
【0077】
さらに図1を参照すると、気化器デバイス100は充電器133(およびコントローラ105により制御可能な充電回路)を含むことができ、これはオプションとして誘導充電器および/またはプラグイン充電器を含む。たとえば、汎用シリアルバス(USB)接続を用いて、気化器デバイス100を充電することができ、かつ/またはコンピューティングデバイスとコントローラ105との間で有線接続を介して通信を行うことができる。充電器133は、オンボード電源103を充電することができる。本願保護対象の実施態様による気化器デバイス100は、ボタン、ダイアルなど1つまたは複数の入力部117、センサ137を含むこともでき、このセンサ137は、加速度センサまたは他の運動センサ、圧力センサ(たとえば容量性、半導体ベースなどとすることができる相対的または絶対的な圧力センサ)、流量センサなどを含むことができる。ユーザのハンドリングおよびインタラクションを検出するために、気化器デバイス100によって、もう1つのかかるセンサ137を使用することができる。たとえば、(揺さぶり運動のような)気化器デバイス100の急激な運動の検出を、コントローラ105によって(たとえばセンサ137のうちの1つまたは複数からの信号の受信を通して)、気化器システムの一部であるユーザデバイスとの通信を開始するためのユーザ命令であると解釈することができ、あとでさらに詳しく説明するようにこのユーザデバイスを、気化器デバイス100の1つまたは複数の動作および/またはパラメータを制御するために使用することができる。付加的にまたは択一的に、(揺さぶり運動のような)気化器デバイス100の急激な運動の検出を、コントローラ105によって(たとえばセンサ137のうちの1つまたは複数からの信号の受信を通して)、複数の温度セッティングを周期的に繰り返させるためのユーザ命令として解釈することができ、これらの温度セッティングまで、カートリッジ114内に保持された気化可能物質をヒータ118のアクションにより加熱させる。いくつかのオプションとしてのバリエーションにおいて、複数の温度セッティングを周期的に繰り返す間にコントローラ105により(たとえばセンサ137のうちの1つまたは複数からの信号の受信により)、カートリッジ114の取り外しが検出されると、それにより温度を安定させるように動作させることができる(たとえばその周期が所望の温度であれば、所望の温度をセットするためにユーザはカートリッジ114を取り外すことができる)。次いでユーザにより、カートリッジ114を気化器デバイス本体101と再び係合させることができ、これによって選択された温度セッティングに従いコントローラ105により制御されたヒータと共に気化器デバイス100を使用することができる。複数の温度セッティングを、気化器デバイス本体101上の1つまたは複数のインジケータを介して示すことができる。上述のように、ふかしの開始、終了または継続のいずれかを検出する際に、圧力センサを使用することができる。
【0078】
本願保護対象の実施態様による気化器デバイス100は、1つまたは複数の出力部115を含むこともできる。本明細書で用いられる出力部115とは、光学的な(たとえばLED、ディスプレイなどの)、触覚的な(たとえば振動によるものなどの)、または音による(たとえば圧電によるものなどの)フィードバック部品などのいずれか、あるいはこれらの何らかの組み合わせを指すものとすることができる。
【0079】
カートリッジ114を含む本願保護対象の実施態様による気化器デバイス100は、図1Aに示した気化器デバイス本体の電気接点109、111、113などのような1つまたは複数の電気接点(たとえばピン、プレート、ソケット、係合レセプタクル、または他の接点と電気的に結合するための他の機構など)を、気化器デバイス本体101上またはその内部に含むことができ、カートリッジが気化器デバイス本体101と係合されている場合、気化器デバイス本体101は、カートリッジ114上の相補的なカートリッジ接点119、121、123(たとえばピン、プレート、ソケット、係合レセプタクル、または他の接点と電気的に結合するための他の機構など)と、係合することができる。気化器デバイス本体101上の接点は通常、本明細書では「気化器デバイス本体接点」と称され、カートリッジ114上の接点は通常、本明細書では「カートリッジ接点」と称される。ヒータ118がカートリッジ114内に含まれている本願保護対象の実施態様において、これらの接点を使用して、電源103からヒータ118へエネルギーを供給することができる。たとえば、カートリッジ114を気化器デバイス本体101と結合することにより、カートリッジ接点と気化器デバイス本体接点とがそれぞれ係合させられると、電気回路を形成することができ、これによって気化器デバイス本体101内の電源103からカートリッジ114内のヒータ118への電力の流れを制御することができる。気化器デバイス本体101内のコントローラ105は、ヒータ118がカートリッジ114内に収容された気化可能物質を加熱する際の温度を制御するために、この電力の流れを調整することができる。
【0080】
3つの気化器デバイス本体接点109、111、113と3つのカートリッジ接点119、121、123とが示されている一方、本願保護対象の特定の実施態様は、電気回路を完成させるために各タイプの接点のうち2つの接点だけを使用することができ、この電気回路を使用して、電源103からヒータ118へ電力を供給することができ、さらにオプションとしてヒータ内の加熱素子の温度を測定することができ(これはたとえば、加熱素子へ流れる電流を短期間、断続的に遮断し、この短期間の遮断中に加熱素子の抵抗を測定し、測定された抵抗から熱抵抗係数を用いて温度を取得することによって行われる)、かつ/またはオプションの識別子138とコントローラ105との間でデータを伝送することができる。択一的にまたは付加的に、データの受け渡し、温度測定、(たとえばカートリッジ上に圧力センサが含まれている一方、コントローラ105は気化器デバイス本体101にある場合には)圧力センサ測定のために、付加的な接点(たとえばオプションの接点113および123)を含めることができる。
【0081】
空気流経路(図1Eの150)によって空気をヒータへ向かわせることができ、そこにおいて空気は、貯蔵器120からの気化された気化可能物質と混合されて、カートリッジ114の一部とすることもできるマウスピース144を介してユーザに供給するために吸入可能なエアロゾルが生成される。いくつかの実施例において空気流経路150は、あとでさらに説明するように、カートリッジ114の外面と気化器デバイス本体101上のカートリッジレセプタクルの内面との間を通過することができる。
【0082】
ピン(たとえばポゴピン)、プレートなどを含め、任意の互換性のある電気接点を使用することができる。これに加え、あとで説明するように、本願保護対象のいくつかの実施態様において、気化器デバイス本体101とカートリッジ114との間で単方向または双方向の通信が、1つまたは複数の電気接点を介して提供され、この電気接点は、電源103からヒータ118へのエネルギーを供給するために使用される電気接点を含むことができ、ヒータ118は抵抗式加熱素子と言った加熱素子を含むことができる。カートリッジ114と気化器デバイス本体101とを、たとえばカートリッジ114のハウジングの一部分を気化器デバイス本体101および/または気化器のハウジングと、機械的な接続(たとえばスナップフィットおよび/またはフリクションフィット)によって係合させることにより、取り外し可能に互いに結合することができる。択一的にまたは付加的に、カートリッジ114と気化器デバイス本体101とを、磁気的にまたは他の何らかの結合メカニズムまたは係合メカニズムを介して、結合することができる。2つ以上の接続タイプの組み合わせのように、他の接続タイプも本願保護対象の範囲内である。
【0083】
図1B図1Fには、気化器デバイス本体101とカートリッジ114とを備えた気化器100の1つの実施例が示されている。これら2つが図1Bでは分離された状態で、図1Cでは接続された状態で示されている。図1Dには、結合された気化器デバイス本体101およびカートリッジ114の等角投影図が示されており、図1Eおよび図1Fには、個々のカートリッジ114がそれぞれ異なる2つの視点から示されている。図1B図1Fが組み合わさって、図1Aに大まかに示した特徴の多くを含む例示的なカートリッジ型気化器デバイスが示されている。本明細書で説明した特徴のいくつかまたはすべてを含む他の構成も、本願保護対象の範囲内である。図1Dには、気化器デバイス本体101のカートリッジレセプタクル152内に結合されたカートリッジ114を有する気化器デバイス100が示されている。本願保護対象のいくつかの実施態様において貯蔵器120を、気化可能物質のレベルが窓158から見えるように、全体的にまたは部分的に半透明の材料から形成することができる。カートリッジ114がカートリッジレセプタクル152によって差し込み式で収容されたときに、窓158が見えたまま残るように、カートリッジ114および/または気化器デバイス本体101を構成することができる。たとえば1つの例示的な構成の場合、カートリッジ114がカートリッジレセプタクル152と結合されたときに、マウスピース144の下端と気化器デバイス本体101の上端との間に窓158を配置することができる。
【0084】
図1Eには、ユーザのふかしによって、カートリッジ114の外側からヒータ118を通過して(たとえばヒータ118を含むまたは収容する気化室を通って)、吸入可能なエアロゾルを供給するためにマウスピース144の方へと空気が吸い込まれるようにするための、空気流経路150の1つの実施例が示されている。マウスピースはオプションとして複数の開口部を有することができ、それらの開口部を通して吸入可能なエアロゾルが供給される。たとえばカートリッジレセプタクル152を、気化器デバイス本体101の一方の端部に設けることができ、このようにすることでカートリッジ114の差し込み可能端部154をカートリッジレセプタクル152内に差し込み式で収容することができる。カートリッジの差し込み可能端部154がカートリッジレセプタクル152内に完全に差し込まれると、カートリッジレセプタクル152の内面が、空気流経路150の一部の一方の面を成し、カートリッジの差し込み可能端部154の外面が、空気流経路のその一部の他方の面を成す。
【0085】
図1Eに示されているように、この構成によって、空気はカートリッジの差し込み可能端部154の周辺でカートリッジレセプタクル152内に流れ落ちるようになり、次いで、カートリッジ114の差し込まれた端部(たとえばマウスピース144を含む端部とは反対側の端部)の周辺を通過してから、気化室およびヒータ118に向かってカートリッジ本体内に入るときに、反対方向に戻るように流される。次いで空気流経路150は、カートリッジ114の内部を通って、たとえば1つまたは複数の管または内部ダクトを介して、マウスピース144内に形成された1つまたは複数の出口156へと進む。非円筒型の形状を有するカートリッジ114であれば、マウスピース144も同様に非円筒型とすることができ、2つ以上の出口156をマウスピース内に形成することができ、オプションとしてカートリッジ114の2つの横軸のうち長い方の軸に沿った線に配置することができ、この場合、カートリッジの縦軸は、カートリッジ114が差し込み式で収容されるように、または他の方式で気化器デバイス本体101と結合されるように動かされる方向に沿って配向されており、2つの横軸は互いにかつ縦軸に対し垂直である。
【0086】
図1Fには、本願保護対象によるカートリッジ114に含むことができる付加的な特徴が示されている。たとえばカートリッジ114は2つのカートリッジ接点119、121を含むことができ、これらの接点は、気化器デバイス本体101のカートリッジレセプタクル152内に差し込まれるように構成された差し込み可能端部154上に配置されている。オプションとしてこれらのカートリッジ接点119、121各々を、抵抗式加熱素子の2つの端部のうちの一方と接続された導電性構造体159、161を成す一体金属部品の一部とすることができる。オプションとしてこれら2つの導電性構造体が、加熱室の互いに対向する側を成すことができ、カートリッジ114の外壁への熱の伝導を低減するための遮熱材および/またはヒートシンクとしても動作することができる。図1Fには、カートリッジ114内に中央管162も示されており、この中央管162によって、2つの導電性構造体159、161間に形成された加熱室とマウスピース144との間の空気流経路150の一部が規定される。
【0087】
上述のように、カートリッジ114およびオプションとして気化器デバイス本体101の断面を、オプションとして非円形とすることができ、これには様々な長方形(たとえば気化器デバイス100の縦軸と直交する2つの横軸のうちの一方が他方よりも長い)の断面形状をもたせることが考えられ、そのような断面形状としてほぼ矩形、ほぼ菱形、ほぼ三角形または台形、ほぼ楕円形の形状などが挙げられる。当業者には自明のとおり、この文脈で「ほぼ」を使用することが意図するのは、断面形状の頂点が必ずしも尖っている必要はなく、その代わりにゼロでない曲率半径を有することができ、かかる頂点間の表面が必ずしも完全に平坦でなくてもよく、その代わりに有限の曲率半径を有することができる、ということである。
【0088】
図2A図2Cは、気化器デバイスがカートリッジ型ではない本願保護対象の例示的な実施態様に関するものである。図2Aには、カートリッジを使用せず(とはいえそれでもオプションとしてカートリッジを受け入れ可能である)、ただしその代わりに(または付加的に)、ばらされた葉状の物質または他の何らかの気化可能物質(たとえば固形物、ワックスなど)と共に使用するように構成された気化器デバイス200の概略図が示されている。図2Aの気化器デバイス200を、ばらされた葉状の気化可能物質、ワックスおよび/または他の何らかの液体または固体の気化可能物質などの気化可能物質を、炉220(たとえば気化室)内に収容するように構成することができる。図1A図1Eに示したカートリッジ114を使用する気化器デバイス100内に設けられたものと同様の多くの要素を、カートリッジを使用する必要のない気化器デバイス200の一部として含めることもできる。たとえば、気化器デバイス200は1つのハウジング内に、電力制御回路および/または無線回路107および/またはメモリ125を含むことのできる制御回路105を含むことができる。ハウジング内の電源103(たとえばバッテリ、キャパシタなど)を充電器133によって充電することができる(さらに電源103は図示されていない充電制御回路を含むことができる)。気化器デバイス200は、1つまたは複数の出力部115と、センサ137を備えた1つまたは複数の入力部117とを含むこともでき、これらのセンサ137は、カートリッジ型気化器デバイス100に関して上述の記載で説明したセンサのうちの1つまたは複数を含むことができる。これに加え気化器デバイス200は、気化室を加熱する1つまたは複数のヒータ118を含むことができ、気化室を炉220または他の加熱室とすることができる。たとえばヒータの固有抵抗の温度係数を使用するなどして、ヒータ温度を特定するためにヒータ118の抵抗を使用して、ヒータ118を制御することができる。生成された吸入可能なエアロゾルをユーザに供給するために、かかる気化器デバイス200にマウスピース144を含めることもできる。図2Bには、例示的な気化器デバイス200の側面等角投影図が、気化器デバイス本体201と共に示されている。図2Cの底面等角投影図には、蓋230が気化器デバイス本体201から取り外された状態で示されており、これによって炉/気化室220が露出している。
【0089】
本明細書で説明する保護対象の1つまたは複数の態様または特徴を、ディジタル電子回路、集積回路、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはこれらの組み合わせとして、実現することができる。これらの様々な態様または特徴は、1つまたは複数のコンピュータプログラムでの実装を含むことができ、これらのコンピュータプログラムは、専用または汎用のものとすることができる少なくとも1つのプログラミング可能なプロセッサを含む、プログラミング可能なシステムにおいて実行可能および/または解釈可能であり、このシステムは、データおよび命令をストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイスおよび少なくとも1つの出力デバイスから受信するように、さらにデータおよび命令をそれらへ送信するように、接続されている。
【0090】
プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネント、またはコードと称することもできるこれらのコンピュータプログラムは、プログラミング可能なプロセッサのための機械命令を含み、高水準手続型言語、オブジェクト指向プログラミング言語、関数型プログラミング言語、論理型プログラミング言語で、かつ/またはアセンブリ言語/機械語で、実装することができる。本明細書で用いられる用語「機械可読媒体」とは、たとえば磁気ディスク、光学ディスク、メモリおよびプログラマブルロジックデバイス(PLD)など、任意のコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイスのことを指し、これらは機械命令および/またはデータをプログラミング可能なプロセッサに供給するために使用され、機械可読信号として機械命令を受信する機械可読媒体を含む。用語「機械可読信号」とは、機械命令および/またはデータをプログラミング可能なプロセッサに供給するために使用される任意の信号のことを指す。機械可読媒体は、たとえば非一時的ソリッドステートメモリまたは磁気ハードディスクドライブまたは任意の等価のストレージ媒体であればそうであるように、かかる機械命令を非一時的に格納することができる。機械可読媒体は、択一的にまたは付加的に、たとえばプロセッサのキャッシュまたは1つまたは複数の物理的なプロセッサコアと関連づけられた他のランダムアクセスメモリであればそうであるように、かかる機械命令を一時的な手法で格納することができる。
【0091】
ユーザとのインタラクションを提供するために、本明細書で説明する保護対象の1つまたは複数の態様または特徴を、ユーザに情報を表示するためのディスプレイデバイス、たとえばブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)モニタなど、ならびにユーザがコンピュータに入力を供給可能なキーボードおよびポインティングデバイス、たとえばマウスまたはトラックボールなど、を有するコンピュータにおいて実装することができる。同様にユーザとのインタラクションを提供するために、他の種類のデバイスを使用することができる。たとえばユーザにもたらされるフィードバックを、たとえば視覚的フィードバック、聴覚的フィードバックまたは触覚的フィードバックといった、任意の形態の感覚フィードバックとすることができ、ユーザからの入力を、以下に限定されるものではないが、音響的入力、音声入力、または触覚的入力を含む任意の形態で、受信することができる。考えられる他の入力デバイスとして、以下に限定されるものではないが、タッチスクリーン、またはシングルポイントまたはマルチポイントの抵抗式または容量式のトラックパッドなど、他の接触感応型デバイス、音声認識用のハードウェアおよびソフトウェア、光学スキャナ、光学ポインタ、ディジタルイメージキャプチャデバイス、および関連する解釈用のソフトウェアなどが挙げられる。アナライザとは遠隔にあるコンピュータを、有線または無線のネットワークを介してアナライザにつなげることができ、これによってアナライザとリモートコンピュータとの間でデータ交換(たとえば遠隔のコンピュータにおいてアナライザからデータを受信すること、および較正データ、動作パラメータ、ソフトウェアアップグレードまたはアップデートといった情報を送信することなど)が可能となり、同様にアナライザの遠隔制御、診断などが可能となる。
【0092】
上記の記載および特許請求の範囲において、「のうちの少なくとも1つ」または「のうちの1つまたは複数」といったフレーズに続いて、要素または特徴の連言的なリストが続く場合がある。用語「および/または」が、2つ以上の要素または特徴のリスト中に現れる場合もある。用いられる文脈によって別段に暗黙的または明示的に否定されないかぎりは、かかるフレーズは、列挙された要素または特徴のいずれかを個別に意味すること、あるいは列挙された要素または特徴のいずれかと、列挙された他の要素または特徴のいずれかとの組み合わせを意味することを意図している。たとえば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」、「AおよびBのうちの1つまたは複数」、さらに「Aおよび/またはB」というフレーズは各々、「A単独、B単独、またはAとB合わせて」を意味することを意図している。3つ以上の項目を含むリストについても、同様の解釈を意図している。たとえば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうちの1つまたは複数」、さらに「A、Bおよび/またはC」というフレーズは各々、「A単独、B単独、C単独、AとB合わせて、AとC合わせて、BとC合わせて、またはAとBとC合わせて」を意味することを意図している。これまでの記載および特許請求の範囲における用語「に基づく」の使用は、列挙されていない特徴または要素も許容されるように、「に少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図している。
【0093】
本明細書で説明した保護対象を、システム、装置、方法、および/または所望の構成に応じた製品において具現化することができる。これまでの説明で述べた実施態様は、本明細書で説明した本願保護対象によるすべての実施態様を表したものではない。そうではなくそれらは、説明した保護対象に関連する態様によるいくつかの例であるにすぎない。少数のバリエーションについてこれまで詳しく説明してきたが、それ以外の変形または追加が可能である。特に、さらなる特徴および/またはバリエーションを、本明細書で説明したものに加えて設けることができる。たとえば上述の実施態様は、開示した特徴の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせを対象とすることができ、かつ/または上述のいくつかのさらなる特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせを対象とすることができる。これに加え、添付の図面に示された、かつ/または本明細書で説明したロジックの流れは、所望の結果を達成するために、示された特定の順序または逐次的な順序を必ずしも要求するものではない。以下の特許請求の範囲内には、その他の実施態様が含まれる可能性がある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
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図12