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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸系共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/06 20060101AFI20240930BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20240930BHJP
   C02F 5/10 20230101ALI20240930BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240930BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F216/14
C02F5/10 620D
C02F5/00 620C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021004778
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109463
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】池内 義貴
(72)【発明者】
【氏名】榎田 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】坂本 登
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-108696(JP,A)
【文献】特表2016-535797(JP,A)
【文献】特開2016-064382(JP,A)
【文献】特表2020-520792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C02F 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位と、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位と、エーテル結合含有単量体由来の構造単位とを含む共重合体であって、
該エーテル結合含有単量体由来の構造単位は、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構造単位であり、
全構造単位100質量%に対するスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位の含有割合が30質量%を超える、(メタ)アクリル酸系共重合体。
【化1】
(前記一般式(1)中、R は、水素原子又はメチル基を表す。R は、CH 基、CH CH 基又は直接結合を表す。Xは、水酸基、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。Yは、水酸基、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。但し、X、Yのいずれか一方は、水酸基を表し、他方は、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。)
【化2】
(前記一般式(2)、(3)中、R は、同一又は異なって、炭素数2~4のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-O-R -)の平均付加モル数であって、0~5の数を表す。R 、R 、R は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位が、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸もしくはその塩に由来する構造単位である、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸系共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を含む水処理薬剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を含むスケール防止剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸系共重合体を含むシリカスケール防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系共重合体に関する。より詳しくは、シリカスケールなどのスケールの抑制に用いられる(メタ)アクリル酸系共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地熱発電や、工業用冷却水、海水の淡水処理化等において、炭酸カルシウムやシリカなどのスケールの発生が問題になる。
【0003】
例えば特許文献1に記載の共重合体は、疎水粒子の分散性を向上させ、また、カルシウムイオンへの優れたキレート能を発揮するため、地熱発電装置の配管や装置内部に対して極めて良好なスケール防止能を発揮することが可能となることから、地熱発電装置用スケール防止剤として好適に用いることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-64382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり各種スケール防止剤が提案されているが、シリカスケールの抑制能をさらに向上させる要望があった。
よって、本発明は、シリカスケールの抑制能に優れることから、例えばシリカスケールの抑制剤として好適に使用することが可能な(メタ)アクリル酸系共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位と、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位と、エーテル結合含有単量体由来の構造単位とを含む共重合体であり、全構造単位100質量%に対するスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位の含有割合が30質量%を超える(メタ)アクリル酸系共重合体である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体は、シリカ成分などの良好な抑制能を発現する。よって、本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体は、シリカスケールなどのスケール抑制剤や水処理剤として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
[本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体]
本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位と、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位と、エーテル結合含有単量体の構造単位とを含む共重合体を含み、全構造単位100質量%に対するスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位の含有割合が30質量%を超える。上記共重合体を「本開示の共重合体」とも言う。
【0010】
<(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位>
本開示において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの塩をいう。
上記塩としては、特に制限はないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩などが例示される。
本開示において、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位とは、(メタ)アクリル酸(塩)の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。例えば、アクリル酸、CH=CH(COOH)、であれば、アクリル酸由来の構造単位は、-CH-CH(COOH)-、で表すことができる。(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位は、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)をラジカル重合することにより形成することができる。なお、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位は、(メタ)アクリル酸(塩)の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、(メタ)アクリル酸(塩)が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
本開示の共重合体における、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有量は、本開示の共重合体を構成するすべての単量体に由来する構造単位100質量%に対し、15質量%以上、70質量%未満、好ましくは35質量%以上、70質量%未満、より好ましくは、50質量%、70質量%未満である。なお、上記(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸換算で算出する。(メタ)アクリル酸換算とは、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位が(メタ)アクリル酸塩由来の構造単位である場合でも、(メタ)アクリル酸として質量計算することをいう。上記範囲であることにより、本開示のスケール防止剤のスケール抑制能が向上する傾向にある。
【0011】
<スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位>
本開示において、スルホン酸(塩)基含有単量体とは、少なくとも1つの炭素炭素二重結合と、スルホン酸(塩)基とを含む化合物をいう。上記少なくとも1つの炭素炭素二重結合は、通常はラジカル重合性を有する。
上記塩としては、特に制限はないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩などが例示される。
本開示において、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位とは、スルホン酸(塩)基含有単量体の少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位は、スルホン酸(塩)基含有単量体の少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、スルホン酸(塩)基含有単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
本開示の共重合体における、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位の含有量は、本開示の共重合体を構成するすべての単量体に由来する構造単位100質量%に対し、30質量%を超えて、60質量%以下、好ましくは30質量%を超えて、50質量%以下、より好ましくは、30質量%を超えて、45質量%以下である。なお、上記スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位の含有量は、ナトリウム塩換算で算出する。上記ナトリウム塩換算で算出するとは、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位に含まれるスルホン酸(塩)基が例えば酸型のスルホン酸基である場合でも、スルホン酸基のナトリウム塩であるとして質量計算することをいう。上記範囲であることにより、本開示のスケール防止剤のスケール抑制能が向上する傾向にある。
【0012】
スルホン酸(塩)基含有単量体としては、具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその塩、3-(メタ)アリルオキシ-1-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその塩、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸及びその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。本開示のスケール防止剤のスケール抑制能が向上する傾向にあることから、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその塩であることが好ましく、より好ましくは、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩である。
【0013】
<エーテル結合含有単量体由来の構造単位>
本開示において、エーテル結合含有単量体とは、少なくとも1つの炭素炭素二重結合と、エーテル結合とを含む化合物をいう。ただし、スルホン酸(塩)基含有単量体は、エーテル結合を含む化合物であっても、エーテル結合含有単量体には含めない。上記少なくとも1つの炭素炭素二重結合は、通常はラジカル重合性を有する。
本開示において、エーテル結合含有単量体由来の構造単位とは、エーテル結合含有単量体の少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、エーテル結合含有単量体由来の構造単位は、エーテル結合含有単量の少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、エーテル結合含有単量が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
本開示の共重合体における、エーテル結合含有単量体由来の構造単位の含有量は、本開示の共重合体を構成するすべての単量体に由来する構造単位100質量%に対し、0.5質量%以上、30質量%以下、好ましくは1質量%以上、25質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以上、20質量%以下、最も好ましくは、2質量%以上、15質量%以下である。なお、上記エーテル結合含有単量体由来の構造単位がカルボキシル基(塩)などの酸基を含む場合、その含有量は、酸換算で算出する。酸換算とは、単量体由来の構造単位が酸基の塩を含む場合でも、対応する酸として質量計算することをいう。後述するその他の単量体に由来する構造単位についても、同様に質量計算する。上記範囲であることにより、本開示のスケール防止剤のスケール抑制能が向上する傾向にある。
エーテル結合含有単量体としては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチルメタリルエーテル、ブチルメタリルエーテル、ベンジルメタリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル;エチルイソプレニルエーテル、ブチルイソプレニルエーテル、ベンジルイソプレニルエーテル等のイソプレニルエーテルなどが例示されるが、スケール抑制能が特に向上する傾向にあることから、下記一般式(1)で表される単量体が好ましい。
【0014】
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Xは、水酸基、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。Yは、水酸基、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。但し、X、Yのいずれか一方は、水酸基を表し、他方は、下記一般式(2)で表される基、又は、下記一般式(3)で表される基を表す。)
【0015】
【化2】
(前記一般式(2)、(3)中、Rは、同一又は異なって、炭素数2~4のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-O-R-)の平均付加モル数であって、0~5の数を表す。R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を表す。)
本開示のスケール防止剤のスケール抑制能が向上する傾向にあることから、R、R、Rは、炭素数が1~12であることがより好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~4であることが最も好ましい。なお、上記アルキル基は直鎖状、分岐状であってもよく、環状構造を含んでいてもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルコキシ基、アリール基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、複素環基などが例示される。置換基を有する場合は1つまたは2つ以上であってもよく、置換基を含めたアルキル基が上記炭素数であることが好ましい。
【0016】
<その他の単量体由来の構造単位>
本開示の共重合体は、所望に応じて、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位、およびエーテル結合含有単量体の構造単位以外の単量体に由来する構造単位(その他の単量体に由来する構造単位ともいう)を有していてもよい。
本開示において、その他の単量由来の構造単位とはその他の有単量の少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、その他の単量体由来の構造単位は、その他の単量体の少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、その他の単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
本開示の共重合体における、その他の単量体に由来する構造単位の含有量は、本開示の共重合体を構成するすべての単量体に由来する構造単位100質量%に対し、0質量%以上、15質量%以下、好ましくは0質量%以上、10質量%以下、より好ましくは、0質量%以上、5質量%以下である。
前記その他の単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、及びこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらにアルキレンオキサイドを付加した単量体、アルコキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のジアリルアルキルアミン等のアリルアミン等のアミノ基含有単量体及びこれらの四級化物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。本開示の共重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位、スルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位、およびエーテル結合含有単量体の構造単位をそれぞれ1種または2種以上含み、必要に応じてその他の単量体に由来する構造単位を1種または2種以上含んでも良い。
【0017】
<本開示の共重体の物性等>
本開示の共重合体は、重量平均分子量(Mw)が3000以上、200000以下であることが好ましく、5000以上、150000以下であることがより好ましく、10000以上、100000以下であることがさらに好ましく、10000以上、80000以下が特に好ましい。上記範囲であることにより、スケール抑制能がより向上する傾向にある。
本開示の共重合体は、カルボン酸(塩)基やスルホン酸(塩)基などの酸基を含むが、本開示の共重合体の酸基は一部または全部が中和されていても良い。なお中和率は、例えば通常の酸塩基滴定などにより算出することができる。
本開示の共重合体は、主鎖末端等に水酸基、スルホン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基等の重合開始剤や連鎖移動剤に由来する構造単位を含んでいてもよい。
本開示の共重合体は、主鎖に含有する重合開始剤や連鎖移動剤に由来するスルホン酸(塩)由来の構造単位の含有量が本開示の共重合体100質量%に対し、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、6質量%以下が特に好ましい。
【0018】
[本開示の共重合体の製造方法]
本開示の共重合体の製造方法は、特に制限されないが、通常は(メタ)アクリル酸(塩)、スルホン酸(塩)基含有単量体、およびエーテル結合含有単量体、必要に応じてその他の単量体に由来する構造単位を重合することにより製造することが好ましい。
本開示の共重合体を製造工程において、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、過硫酸塩である過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾ化合物、過酸化物が例示される。本開示の共重合体の製造工程において、重合溶媒や連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、過酸化水素、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素(塩)、メルカプト化合物等が例示される。
【0019】
[本開示の共重合体の用途]
本開示の共重合体は、水系用途において高い性能を発揮でき、地熱発電プロセス、油井やガス井のプロセス、正浸透膜もしくは逆浸透膜を用いた海水淡水化プロセスもしくは廃液濃縮プロセス、ボイラー水循環系、冷却水の循環系などに用いるスケール抑制剤として好ましく適用できる。
本開示の共重合体は、例えばシリカスケールや炭酸カルシウムのスケール抑制剤として好ましく適用できる。シリカスケールのスケール抑制剤として最も好ましく適用できる。
【0020】
[本開示の水処理薬剤]
本開示の水処理薬剤は、本開示の共重合体を含む。本開示の水処理薬剤は、本開示の共重合体を例えば1質量%以上、70質量%以下含むことが好ましい。さらに好ましくは1~50質量%、特に好ましくは1~40%、最も好ましくは1~30質量%、さらに最も好ましくは1~20質量%である。
本開示の水処理薬剤は、本開示の共重合体以外の成分を含んでいても良い。本開示の共重合体以外の成分としては、水などの溶剤;アルカリや酸などのpH調整剤;脱酸素剤;防食剤;キレート剤;アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、およびこれらの塩などのホスホン酸(塩);本開示の共重合体以外のカルボキシ基含有重合体;界面活性剤;消泡剤;ピッチコントロール剤;スライムコントロール剤などが例示される。
本開示の水処理薬剤は、特に制限はないが、例えば各種用水において発生するスケールのスケール抑制剤として好ましく適用できる。
【0021】
[本開示のスケール防止剤]
本開示のスケール防止剤は、本開示の共重合体を含む。本開示のスケール防止剤は、本開示の共重合体を例えば10質量%以上、100質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、20質量%以上、70質量%以下である。
本開示のスケール防止剤は、本開示の共重合体以外の成分を含んでいても良い。本開示の共重合体以外の成分としては、水などの溶剤;アルカリや酸などのpH調整剤;脱酸素剤;防食剤;キレート剤;アミノトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、およびこれらの塩などのホスホン酸(塩);本開示の共重合体以外のカルボキシ基含有重合体;界面活性剤;消泡剤;ピッチコントロール剤;スライムコントロール剤などが例示される。
本開示のスケール防止剤は、特に制限はないが、例えばシリカスケールや炭酸カルシウムのスケール抑制剤として好ましく適用できる。
本開示のスケール防止剤は、特にシリカスケール抑制能にすぐれるため、シリカスケール防止剤として好ましく適用できる。
【0022】
[本開示のスケール防止剤の用途]
本開示のスケール防止剤は、水系用途において高い性能を発揮でき、地熱発電プロセス、油井やガス井のプロセス、正浸透膜もしくは逆浸透膜を用いた海水淡水化プロセスもしくは廃液濃縮プロセス、ボイラー水循環系、冷却水の循環系などに用いるスケール防止剤として好ましく適用できる。本開示のスケール防止剤は、シリカスケールや炭酸カルシウムのスケール防止剤として好ましく適用できる。
【0023】
[本開示のスケール防止方法]
本開示のスケール防止方法は、本開示のスケール防止剤あるいは本開示の共重合体を使用する。本開示のスケール防止方法は、好ましくは、スケール防止の対象となる系に、本開示のスケール防止剤あるいは本開示の共重合体を添加する工程を含む。また、好ましくは、スケール防止の対象となる系中の、本開示の共重合体の存在量が、所定の範囲内となるように制御する工程を含む。スケール防止の対象となる系中の、本開示の共重合体の含有量は、0.1ppm以上、500ppm以下であることが好ましく、1ppm以上、300ppm以下であることがより好ましい。
【実施例
【0024】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:東ソー株式会社製HLC8320
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX Asahipak GF-310-HQ、
GF-710-HQ、GF-1G-7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:American Polymer Standards Corporation製 Polyacrylic acid standard
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム
<シリカスケール抑制率評価試験>
ホウ酸バッファー溶液の作成:ホウ酸7.420g、塩化ナトリウム1.753g、ホウ酸ナトリウム10水和物19.069gに、イオン交換水を加えて合計1000gになるよう調整した。
マグネシウム水溶液の作成:硫酸マグネシウム7水和物8.115gに、イオン交換水を加えて合計1000gとなるよう調整した。
シリカ水溶液の作成:メタケイ酸ナトリウム9水和物2.129gに、イオン交換水を加えて合計150gとなるよう調整した。
1.重合体濃度50ppmで試験する場合
容器に純水73gとホウ酸バッファー溶液2gを投入し撹拌した。さらに撹拌しながら上記シリカ水溶液10g、0.1%に希釈した重合体水溶液5g、マグネシウム水溶液10gをさらに投入した。その後、60℃の温浴につけながら18時間撹拌した。18時間後、0.1μmの目開きのポリエーテルスルホン(PES)製メンブレン(アズワン社製)を用いて吸引ろ過をした。得られたろ液をICP(発光分光分析法)にてSi濃度を測定し、SiO換算した。
シリカスケール抑制率(%)=ろ液中のSiO濃度(ppm)/仕込みのSiO濃度(ppm)
シリカスケール抑制率は以下の基準で判定した。
<シリカスケール抑制率評価基準>
90%以上:〇
50%以上90%未満:△
50%未満:×
2.重合体濃度60ppmで試験する場合
投入する純水の量73gを72gに、0.1%に希釈した重合体水溶液の量5gを6gに変更した以外は、重合体濃度50ppmで試験する場合と同様の手順で評価を行った。
【0025】
<製造例1>
(1)単量体の合成
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、
n-ブチルアルコール370.0gと、ペレット状の水酸化ナトリウム4.27gを仕込
み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AG
E」とも称する。)57.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。この
溶液を1,000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。
ここに、20質量%塩化ナトリウム水溶液200.0gを加え、この水溶液を500ml
の分液ロートへ移し、よく振り混ぜた後、分層するまで静置し、下層を取り除いた。残っ
た上層を300mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。析
出してきた塩を濾過により取り除き、単量体(1)を得た。
(2)重合
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水169.2g及びモール塩0.0168gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)253.5g、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液(以下、「40%HAPS」とも称する。)277.4g、単量体(1)12.8g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)79.1g、及び、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)5.2gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.30g/minで、130分から190分までは0.58g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、本開示の重合体(1)を得た。
【0026】
<製造例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水168.1g及びモール塩0.0168gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA251.8g、40%HAPS275.6g、単量体(1)12.7g、15%NaPS78.6g、及び、35%SBS10.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.29g/minで、130分から190分までは0.58g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、本開示の重合体(2)を得た。
【0027】
<製造例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水167.4g及びモール塩0.0168gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA250.9g、40%HAPS274.6g、単量体(1)13.4g、15%NaPS78.3g、及び、35%SBS12.6gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.29g/minで、130分から190分までは0.58g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、本開示の重合体(3)を得た。
【0028】
<製造例4>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水117.1g、モール塩0.0165g及びパラトルエンスルホン酸(以下、「PTS」とも称する。)13.5gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA218.8g、40%HAPS339.8g、単量体(1)11.7g、及び、15%NaPS94.1gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.35g/minで、130分から200分までは0.69g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、本開示の重合体(4)を得た。
【0029】
<製造例5>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水100.4g、モール塩0.0165gおよびPTS12.7gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA206.7g、40%HAPS321.0g、単量体(1)11.1g、15%NaPS88.9g、及び、35%SBS54.3gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.33g/minで、130分から200分までは0.65g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、本開示の重合体(5)を得た。
【0030】
<比較製造例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水166.7g、モール塩0.0165gおよびPTS13.4gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA240.5g、40%HAPS175.5g、単量体(1)42.4g、15%NaPS97.1g、及び、35%SBS59.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.36g/minで、130分から200分までは0.71g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、比較重合体(1)を得た。
【0031】
<比較製造例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水253.3g、モール塩0.0165gおよびPTS13.3gを仕込み、攪拌しながら87℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、87℃に保持された重合反応系中に、80%AA331.7g、単量体(1)52.2g、15%NaPS119.6g、及び、35%SBS24.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については120分間、35%SBSについては170分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSについては0分から130分までは0.45g/minで、130分から200分までは0.88g/minの滴下速度で投入した。
15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を87℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、比較重合体(2)を得た。
【0032】
<比較製造例3>
バドル翼(SUS316製バドル型回転翼)攪拌機、還流冷却管、4つの滴下装置を備えた内容積1500mlのガラス製セパラブルフラスコに、純水186.4gを仕込み、沸点還流温度まで昇温した。次いで、攪拌下、37%アクリル酸ナトリウム水溶液445.1gと、アクリル酸14.0gとの混合液459.1gと、25%HAPS299.5gと、20%NaPS33.7gと、12.5%過酸化水素水溶液18.3gとを、それぞれ別々に、アクリル酸ナトリウム水溶液とアクリル酸水溶液の混合液は120分、25%HAPSは120分、20%NaPSは140分、12.5%過酸化水素水溶液は120分かけて、等速で滴下した。滴下終了後、30分間にわたって沸点還流温度を維持して重合を終了した。このようにして、比較重合体(3)を得た。

結果を表1に記載した。
【0033】
【表1】
表1中、「組成」は、「アクリル酸(塩)に由来する構造単位/スルホン酸基含有単量体に由来する構造単位/エーテル基含有単量体に由来する構造単位」の質量%を表し、シリカスケール抑制率の50ppmは重合体50ppm濃度での試験結果、60ppmは重合体60ppm濃度での試験結果を表す。
表1の結果から、本開示の(メタ)アクリル酸系共重合体は、シリカ抑制能が良好であることが明らかとなった。