IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240930BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240930BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240930BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L29/78 616K
H01L29/78 618B
H01L29/78 616U
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/78 617U
H01L29/78 617T
H01L29/78 616V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021009377
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113272
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-205402(JP,A)
【文献】特開2020-017558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上方に配置された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に配置された多結晶シリコン半導体と、
前記多結晶シリコン半導体の上に配置された中間絶縁層と、
前記中間絶縁層の上に配置された酸化物半導体と、
前記中間絶縁層及び前記酸化物半導体の上に配置された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上に配置され、前記酸化物半導体の直上に位置するゲート電極と、
前記中間絶縁層及び前記第2絶縁層を貫通する第1コンタクトホールを介して前記多結晶シリコン半導体に接し、且つ、前記第2絶縁層を貫通する第2コンタクトホールを介して前記酸化物半導体に接する第1導電層と、
前記第1コンタクトホールと前記第2コンタクトホールとの間において、前記第1導電層に積層された第2導電層と、を備え、
前記第1導電層は、前記第2コンタクトホールから前記ゲート電極に向かって延出した延出部を有し、
前記第2導電層は、前記延出部には積層されず、
前記第1導電層の膜厚は、前記第2導電層の膜厚より小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電層の膜厚は、前記第1導電層の膜厚の3倍以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電層は、前記第2導電層とは異なる材料によって形成され、
前記第1導電層の密度は、前記第2導電層の密度より小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電層は、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)の少なくとも1つを含み、
前記第2導電層は、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極は、前記第1導電層と同一材料によって形成された第1層と、前記第2導電層と同一材料によって形成された第2層と、を備えた積層体である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記酸化物半導体は、前記ゲート電極の直下の第1領域と、前記延出部の直下の第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域と、を有し、
前記第2領域及び前記第3領域の各々の不純物濃度は、前記第1領域の不純物濃度より高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2導電層は、前記第2コンタクトホールにおいて前記第1導電層に積層されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電層は、前記第1コンタクトホールにおいて前記第1導電層に積層されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記多結晶シリコン半導体に含まれる不純物イオンは、前記酸化物半導体に含まれる不純物イオンとは異種である、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2導電層は、前記第1コンタクトホールにおいて前記第1導電層に積層されず、
前記多結晶シリコン半導体に含まれる不純物イオンは、前記酸化物半導体に含まれる不純物イオンと同種である、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置において、表示領域の画素回路に酸化物半導体を備えたトランジスタが設けられ、且つ、周辺領域の駆動回路にシリコン半導体を備えたトランジスタが設けられる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-183312号公報
【文献】特開2020-129635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トランジスタの性能劣化を抑制することが可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の半導体装置は、
基材と、前記基材の上方に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配置された多結晶シリコン半導体と、前記多結晶シリコン半導体の上に配置された中間絶縁層と、前記中間絶縁層の上に配置された酸化物半導体と、前記中間絶縁層及び前記酸化物半導体の上に配置された第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上に配置され、前記酸化物半導体の直上に位置するゲート電極と、前記中間絶縁層及び前記第2絶縁層を貫通する第1コンタクトホールを介して前記多結晶シリコン半導体に接し、且つ、前記第2絶縁層を貫通する第2コンタクトホールを介して前記酸化物半導体に接する第1導電層と、前記第1コンタクトホールと前記第2コンタクトホールとの間において、前記第1導電層に積層された第2導電層と、を備え、前記第1導電層は、前記第2コンタクトホールから前記ゲート電極に向かって延出した延出部を有し、前記第2導電層は、前記延出部には積層されず、前記第1導電層の膜厚は、前記第2導電層の膜厚より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一構成例を示す断面図である。
図2図2は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。
図3図3は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。
図4図4は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。
図5図5は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、不純物注入後の半導体SC2を示す断面図である。
図7図7は、第1のシミュレーション結果を示す図である。
図8図8は、第2のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係る半導体装置1の他の構成例を示す断面図である。
図10図10は、本実施形態に係る半導体装置1の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0008】
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本実施形態に係る半導体装置1は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、電気泳動表示装置、LED表示装置などの各種表示装置の他、静電容量式センサーや光学式センサーなどの各種センサー、その他の電子機器に適用可能である。
【0010】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一構成例を示す断面図である。
半導体装置1は、基材10と、絶縁層11乃至15と、トランジスタTR1及びTR2と、接続電極CNと、を備えている。例えば、絶縁層11は第1絶縁層に相当し、絶縁層12乃至14は中間絶縁層に相当し、絶縁層15は第2絶縁層に相当する。
【0011】
トランジスタTR1は、半導体(第1半導体)SC1と、ゲート電極GE1と、を備えている。半導体SC1は、例えば多結晶シリコン半導体であるが、その他のシリコン系半導体であってもよい。ゲート電極GE1は、ゲート線と電気的に接続された電極である。
【0012】
トランジスタTR2は、半導体SC2(第2半導体)と、ゲート電極GE2と、を備えている。半導体SC2は、例えば酸化物半導体である。ゲート電極GE2は、ゲート線と電気的に接続された電極である。
【0013】
接続電極CNは、トランジスタTR1とトランジスタTR2とを直接電気的に接続する電極である。接続電極CNは、トランジスタTR1のソース電極及びドレイン電極のいずれか一方として機能する。また、接続電極CNは、トランジスタTR2のソース電極及びドレイン電極のいずれか一方としても機能する。なお、トランジスタTR1において、ゲート電極GE1を挟んで接続電極CNの反対側に接続される電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)の図示を省略する。また、トランジスタTR2において、ゲート電極GE2を挟んで接続電極CNの反対側に接続される電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)の図示を省略する。
【0014】
基材10は、ガラス、樹脂フィルム等の絶縁性の材料によって形成されている。絶縁層11は、基材10の上方に配置されている。
【0015】
半導体SC1は、絶縁層11の上に配置されている。絶縁層12は、絶縁層11の上に配置され、半導体SC1を覆っている。
【0016】
ゲート電極GE1は、半導体SC1の直上に位置し、絶縁層12の上に配置され、絶縁層13によって覆われている。遮光層LSは、トランジスタTR2に対応して設けられ、絶縁層12の上に配置され、絶縁層13によって覆われている。つまり、ゲート電極GE1及び遮光層LSは、同一層に位置し、同一材料によって形成された金属層である。絶縁層14は、絶縁層13の上に配置されている。
【0017】
半導体SC2は、遮光層LSの直上に位置し、絶縁層14の上に配置されている。絶縁層15は、絶縁層14の上に配置され、半導体SC2を覆っている。つまり、図1に示す例では、半導体SC1と半導体SC2との間には、中間絶縁層である絶縁層12乃至14が介在している。中間絶縁層は半導体SC1の上に配置され、半導体SC2は中間絶縁層の上に配置されている。
【0018】
ゲート電極GE2は、半導体SC2の直上に位置し、絶縁層15の上に配置されている。ゲート電極GE2は、例えば遮光層LSと同電位である。接続電極CNは、絶縁層15の上に配置されている。つまり、ゲート電極GE2、及び、接続電極CNは、同一層に位置し、同一材料によって形成された金属層である。
【0019】
接続電極CNは、絶縁層12乃至15を貫通する第1コンタクトホールCH1において半導体SC1と電気的に接続されている。また、接続電極CNは、絶縁層15を貫通する第2コンタクトホールCH2において半導体SC2と電気的に接続されている。
【0020】
このような接続電極CNは、第1導電層L1と、第2導電層L2との積層体として構成されている。第2導電層L2は、第1導電層L1の上に積層されている。第1導電層L1は、第1コンタクトホールCH1を介して半導体SC1に接し、しかも、第2コンタクトホールCH2を介して半導体SC2に接している。また、第1導電層L1は、第1コンタクトホールCH1において半導体SC2と接する位置からゲート電極GE2に向かって延出した延出部EXを有している。
【0021】
第2導電層L2は、第1コンタクトホールCH1と第2コンタクトホールCH2との間において第1導電層L1に積層されている。また、図1に示す例では、第2導電層L2は、さらにトランジスタTR1に延出し、第1コンタクトホールCH1において第1導電層L1に積層されている。但し、第2導電層L2は、第1コンタクトホールCH1において半導体SC1には接していない。第2導電層L2のトランジスタTR1側の端面S1は、第1コンタクトホールCH1に重畳する位置よりもゲート電極GE1の側に位置している。
【0022】
一方で、第2導電層L2は、トランジスタTR2には延出せず、第2コンタクトホールCH2においては第1導電層L1に積層されていない。つまり、第2導電層L2のトランジスタTR2側の端面S2は、第2コンタクトホールCH2に重畳しない。さらには、第2導電層L2は、延出部EXにも積層されていない。
【0023】
ゲート電極GE2は、接続電極CNと同様の積層体として構成されている。すなわち、ゲート電極GE2は、第1導電層L1と同一材料によって形成された第1層L11と、第2導電層L2と同一材料によって形成された第2層L12と、を備え、第2層L12が第1層L11の上に積層されている。
【0024】
絶縁層15の直上において、第1導電層L1の膜厚T1は、第2導電層L2の膜厚T2より小さい(T1<T2)。第2導電層L2の膜厚T2は、第1導電層L1の膜厚T1の3倍以上である。一例では、膜厚T1は30nm程度であり、膜厚T2は100nm程度である。
【0025】
第1導電層L1は、第2導電層L2とは異なる材料によって形成されている。第1導電層L1及び第2導電層L2の各々の材料の選定に際しては、第1導電層L1を形成する材料の密度は、第2導電層L2を形成する材料の密度より小さいことが望ましい。一例では、第1導電層L1を形成する材料は、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)の少なくとも1つを含み、第2導電層L2を形成する材料は、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)の少なくとも1つを含んでいる。
【0026】
但し、第1導電層L1は、酸化物半導体である半導体SC2に接するため、酸化されにくい材料で形成されることが望ましい。例えば、第1導電層L1は、チタン系の単層体、あるいは、チタン系の層の上にアルミニウム系の層が積層された積層体などが好適である。
【0027】
絶縁層11乃至15は、例えば、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)などによって形成された透明な無機絶縁層である。なお、絶縁層11乃至15の各々は、単一の絶縁材料によって形成された単層体であってもよいし、複数の絶縁材料によって形成された積層体であってもよい。
一例では、絶縁層11はシリコン窒化物及びシリコン酸化物の積層体であり、絶縁層12はシリコン酸化物によって形成され、絶縁層13はシリコン窒化物によって形成され、絶縁層14及び15はシリコン酸化物によって形成されている。
【0028】
次に、図1に示したトランジスタTR1及びTR2の製造方法の一例について説明する。
【0029】
図2乃至図5は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。なお、図2乃至図5の断面図においては、基材10の図示を省略している。
【0030】
まず、図2に示すように、絶縁層11、半導体(多結晶シリコン半導体)SC1、絶縁層12、ゲート電極GE1及び遮光層LS、絶縁層13及び14、半導体(酸化物半導体)SC2、絶縁層15を順次形成する。
【0031】
なお、半導体SC2を形成する以前に、ゲート電極GE1をマスクとして半導体SC1に不純物を注入する。このとき、注入される不純物は、例えばnチャネル型の場合にはリン(P)であり、pチャネル型の場合にはホウ素(B)である。
【0032】
絶縁層15を形成した後に、絶縁層12乃至15を半導体SC1まで貫通した第1コンタクトホールCH1、及び、絶縁層15を半導体SC2まで貫通した第2コンタクトホールCH2を形成する。第1コンタクトホールCH1においては半導体SC1の一部が露出し、第2コンタクトホールCH2においては半導体SC2の一部が露出する。
【0033】
続いて、図3に示すように、絶縁層15の上に、金属膜を形成した後、この金属膜をパターニングすることで、接続電極CNの第1導電層L1及びゲート電極GE2の第1層L11を形成する。第1導電層L1は、第1コンタクトホールCH1において半導体SC1に接し、第2コンタクトホールCH2において半導体SC2に接し、さらに、延出部EXを有する。第1層L11は、半導体SC2の直上に位置し、第1導電層L1から離間している。半導体SC2のうち、第1導電層L1と接する領域は、第1導電層L1によって酸素が吸収されるため、低抵抗化される。
【0034】
続いて、図4に示すように、金属膜を形成した後に、この金属膜をパターニングすることで、接続電極CNの第2導電層L2及びゲート電極GE2の第2層L12を形成する。第2導電層L2は、第1コンタクトホールCH1における第1導電層L1に重なり、さらには、第1コンタクトホールCH1と第2コンタクトホールCH2との間における第1導電層L1にも重なる。第2層L12は、第1層L11に重なり、第2導電層L2から離間している。
【0035】
続いて、図5に示すように、ゲート電極GE2をマスクとして半導体SC2にイオン注入を行う。一例では、イオン注入により、不純物としてホウ素(B)を半導体SC2に注入する。なお、ホウ素の代わりに、リン(P)などの他の不純物を半導体SC2に注入してもよい。
【0036】
このようなイオン注入に際しては、比較的密度が高く且つ比較的膜厚が厚い第2導電層L2及び第2層L12は、不純物の注入を阻止する能力が高い。このため、第1層L11及び第2層L12の積層体であるゲート電極GE2の直下の領域にはほとんど不純物が注入されない。
【0037】
一方で、薄い膜厚の第1導電層L1の直下の領域、及び、絶縁層15が露出している領域には、不純物が注入される。特に、第1導電層L1は、比較的低密度の材料によって形成されており、不純物が透過しやすい。このため、延出部EXの直下の領域など、第1導電層L1のみで絶縁層15を覆っている領域には、不純物が注入されやすい。このため、半導体SC2のうち、延出部EXの直下の領域、及び、第1導電層L1とゲート電極GE2との間の領域には不純物が注入され、これらの領域が低抵抗化される。
【0038】
ところで、上記の通り、トランジスタTR1がnチャネル型の場合には、半導体SC1に注入される不純物はリンである。このとき、半導体SC2に、不純物としてホウ素を注入しようとする場合、半導体SC1に含まれる不純物は、半導体SC2に含まれる不純物とは異種となる。このため、半導体SC2に不純物を注入する際には、半導体SC1に当該不純物(ホウ素)が注入されないように保護する必要がある。このため、第1コンタクトホールCH1には、第1導電層L1の上に第2導電層L2が積層されている。
【0039】
また、pチャネル型のトランジスタTR1の半導体SC1が不純物としてホウ素を含み、半導体SC2に、不純物としてリンを注入しようとする場合にも同様に、半導体SC2への不所望な不純物注入を抑制する目的で、第1コンタクトホールCH1には、第1導電層L1の上に第2導電層L2が積層される。
【0040】
但し、半導体SC1に含まれる不純物が半導体SC2に含まれる不純物と同種である場合、第1コンタクトホールCH1の第2導電層L2を省略してもよい。例えば、半導体SC1に含まれる不純物がリンであり、半導体SC2に、不純物としてリンを注入しようとする場合、あるいは、半導体SC1に含まれる不純物がホウ素であり、半導体SC2に、不純物としてホウ素を注入しようとする場合、第1コンタクトホールCH1の第2導電層L2を省略することができる。
【0041】
図6は、不純物注入後の半導体SC2を示す断面図である。
半導体SC2は、領域A1乃至A5を有している。各領域について、以下に具体的に説明する。
【0042】
領域(第1領域)A1は、ゲート電極GE2の直下に位置している。領域(第2領域)A2は、延出部EXの直下に位置している。領域(第3領域)A3は、領域A1と領域A2との間に位置し、領域A1及びA2に繋がっている。領域A4は、領域A1を挟んで、領域A3の反対側に位置している。つまり、領域A1は、領域A3と領域A4との間に位置し、領域A3及びA4に繋がっている。領域A3及び領域A4は、絶縁層15のうち第1導電層L1及び第1層L11から露出した領域に重畳している。領域A5は、第2コンタクトホールCH2において第1導電層L1に接する領域である。
【0043】
領域A2乃至A5の各々の不純物濃度は、領域A1の不純物濃度より高い。なお、領域A2乃至A5の各々の不純物濃度は、ほぼ同等である。例えば、領域A2乃至A5の各々には、不純物としてホウ素(B)が注入されているが、領域A1には、ほとんどホウ素が注入されていない。つまり、領域A1は、半導体SC2のチャネル領域に相当する。本明細書における不純物濃度とは、単位体積当たりの不純物数として表すことができる。なお、酸化物半導体について、不純物濃度が高いということは、単位体積当たりの酸素欠損数が多い、あるいは、単位体積当たりの欠陥数が多いことを意味するものである。
【0044】
また、他の観点では、半導体SC2において、領域A2乃至A5は、領域A1と比較して、低抵抗である。領域A2乃至A4の各々の領域の抵抗値は、ほぼ同等である。領域A5は、第1導電層L1に接しており、領域A2よりもさらに低抵抗である。
【0045】
次に、図6に示した断面図における点線で囲んだ部分P1及びP2における不純物濃度をシミュレーションにより算出した。このシミュレーションでは、不純物濃度として、ホウ素の濃度を算出した。
【0046】
部分P1は、第1導電層L1の延出部EX、絶縁層15、半導体SC2の領域A2、及び、絶縁層14を積層した領域である。
部分P2は、第1導電層L1が存在しない領域であり、絶縁層15、半導体SC2の領域A3、及び、絶縁層14を積層した領域である。
【0047】
図7は、第1のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、イオン注入の際の加速エネルギーを30keVとし、イオンのドーズ量を1*1015ions/cmとする。
【0048】
図の横軸は、絶縁層15と半導体SC2との界面を基準とした深さ(nm)である。深さ方向の位置に関して、グラフの左方向が部分P1及びP2の上方向に相当し、グラフの右方向が部分P1及びP2の下方向に相当する。グラフの上部には、延出部EXの範囲を「EX」と示し、絶縁層15の範囲を「15」と示し、半導体SC2の範囲を「SC2」と示し、絶縁層14の範囲を「14」と示している。
【0049】
延出部EXの膜厚は約30nmであり、絶縁層15の膜厚は約100nmであり、半導体SC2の膜厚は約50nmである。
【0050】
図の縦軸は、不純物であるホウ素の濃度(atoms/cm)である。
【0051】
図中には、部分P1のシミュレーション結果B1と、部分P2のシミュレーション結果B2とを併せて図示している。
【0052】
図7に示す第1のシミュレーション結果によれば、部分P1における半導体SC2(領域A2)の不純物濃度は、部分P2における半導体SC2(領域A3)の不純物濃度に比べて低いものの、延出部EXの直下に位置する領域A2には、領域A2を低抵抗化するのに十分な濃度の不純物を注入できることが確認された。
【0053】
図8は、第2のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、イオン注入の際の加速エネルギーを50keVとし、イオンのドーズ量を1*1015ions/cmとした。図中には、部分P1のシミュレーション結果B1と、部分P2のシミュレーション結果B2とを併せて図示している。
【0054】
図8に示す第2のシミュレーション結果によれば、部分P1における半導体SC2(領域A2)の不純物濃度は、部分P2における半導体SC2(領域A3)の不純物濃度に比べて高い。このような第2のシミュレーション結果においても、領域A2には、低抵抗化に十分な濃度の不純物を注入できることが確認された。また、加速エネルギーを調整することで、半導体SC2の各領域における不純物濃度のバランスを調整できることも確認された。
【0055】
以上説明したように、多結晶シリコン半導体である半導体SC1と酸化物半導体である半導体SC2とを直接電気的に接続する接続電極CNは、薄い膜厚の第1導電層L1と、厚い膜厚の第2導電層L2との積層体として構成されている。但し、第2導電層L2は、第1導電層L1と半導体SC2とが接する第2コンタクトホールCH2よりもゲート電極GE2側の領域には設けられていない。
【0056】
厚い膜厚の接続電極CNを形成した場合には、第2コンタクトホールCH2よりもゲート電極GE2側の延出部EXが庇となり、半導体SC2にイオン注入する際に、延出部EXの直下の領域A2への不純物の注入が阻害されるおそれがある。この場合、領域A2が十分に低抵抗化されず、トランジスタTR2に関して所望の性能を得られない。
【0057】
上記の本実施形態によれば、半導体SC2にイオン注入した際に、半導体SC2のうち、第1導電層L1と半導体SC2との接触位置と、チャネル領域である領域A1との間の領域A2及びA3に不純物が注入され、これらの領域A2及びA3を低抵抗化することができる。したがって、所望の性能を有するトランジスタTR2が提供される。
【0058】
また、第1導電層L1と半導体SC1とが接する第1コンタクトホールCH1には、第2導電層L2が設けられている。このため、半導体SC1に注入される不純物と、半導体SC2に注入される不純物とが異種であったとしても、半導体SC1への異種の不純物注入が抑制される。これにより、半導体SC1と接続電極CNとのコンタクト抵抗の増大が抑制される。したがって、トランジスタTR1の駆動能力の低下を抑制することができる。また、半導体SC1への不所望な不純物注入を抑制するための別途の工程が不要であり、製造コストの増加が抑制される。
【0059】
図9は、本実施形態に係る半導体装置1の他の構成例を示す断面図である。
図9に示す構成例は、図1に示した構成例と比較して、第2導電層L2が相違している。なお、第1導電層L1は、図1に示した構成例と同様に、第1コンタクトホールCH1を介して半導体SC1に接し、しかも、第2コンタクトホールCH2を介して半導体SC2に接している。また、第1導電層L1は、第1コンタクトホールCH1において半導体SC2と接する位置からゲート電極GE2に向かって延出した延出部EXを有している。
【0060】
第2導電層L2は、第1コンタクトホールCH1と第2コンタクトホールCH2との間において第1導電層L1に積層され、第1コンタクトホールCH1において第1導電層L1に積層され、さらには、第2コンタクトホールCH2においては第1導電層L1に積層されている。但し、第2導電層L2は、延出部EXには積層されていない。つまり、第2導電層L2のトランジスタTR2側の端面S2は、第2コンタクトホールCH2に重畳している。
【0061】
このような構成例においては、半導体SC2のうち、第2コンタクトホールCH2に重畳する領域A5への不純物注入が抑制されるものの、領域A5は接続電極CNに接することで、領域A5の酸素が接続電極CNに吸収されるため、領域A5は十分に低抵抗化される。
【0062】
また、このような構成例においても、延出部EXには第2導電層L2が積層されないため、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0063】
図10は、本実施形態に係る半導体装置1の他の構成例を示す断面図である。
図10に示す構成例は、図1に示した構成例と比較して、第2導電層L2が相違している。すなわち、第2導電層L2は、第1コンタクトホールCH1と第2コンタクトホールCH2との間において第1導電層L1に積層されている。
【0064】
一方で、第2導電層L2は、トランジスタTR1には延出せず、第1コンタクトホールCH1においては第1導電層L1に積層されていない。つまり、第2導電層L2のトランジスタTR1側の端面S1は、第1コンタクトホールCH1に重畳しない。また、第2導電層L2は、第2コンタクトホールCH2においては第1導電層L1に積層されず、延出部EXにも積層されていない。
【0065】
このような構成例においては、半導体SC1に含まれる不純物が半導体SC2に含まれる不純物と同種である。このため、半導体SC2に不純物を注入する際に、半導体SC1にも同種の不純物が注入されたとしても、トランジスタTR1の性能劣化を招くことはない。
【0066】
また、このような構成例においても、延出部EXには第2導電層L2が積層されないため、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0067】
本実施形態によれば、トランジスタの性能劣化を抑制することが可能な半導体装置を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態として説明した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0069】
1…半導体装置 11…絶縁層(第1絶縁層) 15…絶縁層(第2絶縁層)
12~14…絶縁層(中間絶縁層)
CH1…第1コンタクトホール CH2…第2コンタクトホール
TR1…トランジスタ GE1…ゲート電極
SC1…半導体(多結晶シリコン半導体)
TR2…トランジスタ GE2…ゲート電極 L11…第1層 L12…第2層
SC2…半導体(酸化物半導体) A1…領域(第1領域、チャネル領域) A2…領域(第2領域) A3…領域(第3領域)
CN…接続電極 L1…第1導電層 EX…延出部
L2…第2導電層 S1、S2…端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10