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  • 特許-燃料電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240930BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240930BHJP
   F16K 7/14 20060101ALN20240930BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/10 101
F16K7/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021012003
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115419
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 正也
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-214995(JP,A)
【文献】特開2005-228492(JP,A)
【文献】特開2003-340273(JP,A)
【文献】特開2006-162089(JP,A)
【文献】特開2019-139935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
F16K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池へ供給する反応ガス又は前記燃料電池から排出される反応ガスが流通する流路の一部を構成するボディと、
少なくとも一部が前記ボディの外面に露出するとともに、少なくとも他の一部が前記ボディに埋設されている電極と、
露出した前記電極の表面から前記ボディの前記外面に跨る範囲を覆う、薄膜状の発熱部材と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記電極は、前記流路の中心軸に対して対向する位置に配置された一対の電極により構成されている、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムであって、
前記発熱部材の表面を覆う絶縁部材をさらに備えている、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出される前記反応ガスから水分を分離する気液分離器と、
前記気液分離器の下流側に配置される排気排水弁と、をさらに備えており、
前記ボディは、前記気液分離器と前記排気排水弁とを接続する流路を構成する、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムであって、
前記気液分離器と前記排気排水弁とを接続する前記流路の中心軸と、前記排気排水弁が配置された流路の中心軸とが同一平面内に位置している、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に燃料電池システムが開示されている。特許文献1のシステムは、燃料電池から排出されるオフガスがから水分を分離するための気液分離器を備えている。そして、気液分離器により分離された水が流通する流路内に、当該流路を加熱するための発熱体が挿入されている。発熱体が発熱することにより、流路内の凍結を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-139935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、流路内に発熱体を挿入するための空間を要するため、流路を配設するために大きな空間を確保する必要がある。本明細書では、流路の体格を小さくすることができるとともに、流路を効率良く加熱することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池へ供給する反応ガスが流通する流路の一部を構成するボディと、少なくとも一部が前記ボディの外面に露出するとともに、少なくとも他の一部が前記ボディに埋設されている電極と、露出した前記電極の表面から前記ボディの前記外面に跨る範囲を覆う、薄膜状の発熱部材と、を備える。
【0006】
上記の燃料電池システムでは、電極を介して発熱部材に通電することにより、ボディの外面を覆う発熱部材を発熱させて流路を加熱する。この電極は、少なくとも一部がボディに埋設されている。さらに、電極を覆う発熱部材が薄膜状に構成されている。このため、流路(すなわち、ボディ)を加熱するための部材を配置する際に省スペース化を図ることができる。したがって、流路の体格が大きくなることが抑制される。
【0007】
前記電極は、前記流路の中心軸に対して対向する位置に配置された一対の電極により構成されていてもよい。このような構成では、流路の中心近傍の発熱部材を効率良く発熱させることができ、熱を効率良く流路に伝えることができる。
【0008】
前記発熱部材の表面を覆う絶縁部材をさらに備えていてもよい。このような構成では、発熱部材が他の部材から絶縁されるため、発熱部材が当該他の部材と短絡してしまうことを抑制することができる。また、発熱部材に外部(すなわち、電極以外)から電力が供給されることを防止することができるため、発熱部材の温度を制御し易い。
【0009】
前記燃料電池システムは、前記燃料電池から排出される燃料オフガスから水分を分離する気液分離器と、前記気液分離器の下流側に配置される排気排水弁と、をさらに備えてもよい。前記ボディは、前記気液分離器と前記排気排水弁とを接続する流路を構成してもよい。
【0010】
上記の構成では、気液分離器と排気排水弁との間の流路を加熱することができる。気液分離器から排気排水弁までの流路では、凍結が生じ易い。したがって、このような構成では、当該流路において凍結が生じてしまった場合に、効率良く解凍することができる。
【0011】
前記気液分離器と前記排気排水弁とを接続する前記流路の中心軸と、前記排気排水弁が配置された流路の中心軸とが同一平面内に位置してもよい。
【0012】
このような構成では、特に凍結が生じ易い各流路の中心軸が同一平面内に位置しているため、電極や発熱部材を簡易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃料電池システムの構成を概略的に示す図。
図2】加熱装置の斜視図。
図3】加熱装置の内部構造を示す側面図。
図4】加熱装置の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)
以下、図面を参照して実施例の燃料電池システム100について説明する。図1に示す燃料電池システム100は、発電を行う燃料電池10と、燃料ガス系30と、酸化ガス系50と、冷却系60と、制御ユニット70と、を備えている。燃料ガス系30は、燃料電池10への燃料ガスの供給及び燃料電池10からの燃料ガスの排出を行う。酸化ガス系50は、燃料電池10への酸化ガスの供給及び燃料電池10からの酸化ガスの排出を行う。冷却系60は、燃料電池10の冷却を行う。制御ユニット70は、燃料電池システム100全体の動作を制御する。燃料電池システム100は、例えば、燃料電池電気自動車等の車両に搭載される。
【0015】
燃料電池10は、例えば、固体高分子形燃料電池であり、複数の燃料電池セル11が積層されたスタック構造を有している。燃料電池10は、燃料ガスとしての水素ガス、及び酸化ガスとしての空気が供給されると、電気化学反応による発電を行う。
【0016】
燃料ガス系30は、燃料ガスタンク31、インジェクタ32、エジェクタ33、気液分離器35、循環ポンプ36、排気排水弁37、加熱装置80、及び流路41、42、43、44を備えている。
【0017】
燃料ガスタンク31に貯蔵された燃料ガスは、燃料ガス供給流路41を介して燃料電池10のアノードに供給される。インジェクタ32は、燃料ガスタンク31から導かれた燃料ガスを下流側に噴射する。エジェクタ33は、インジェクタ32から噴射された燃料ガスに負圧を発生させて、後述する流路43の燃料オフガスを吸い込み、燃料ガスに混合して下流側に吐出する。
【0018】
燃料電池10のアノードからの排ガス(以下、燃料オフガスとも称する。)は、燃料オフガス流路42を介して燃料電池10から導出される。燃料オフガス流路42には、気液分離器35が設けられている。気液分離器35は、燃料オフガスに含まれる水と、発電で消費されなかった燃料ガスとを分離する。気液分離器35には、循環流路43が連結されている。気液分離器35によって分離された燃料ガスは、循環ポンプ36が配設された循環流路43を介して、エジェクタ33に導かれる。
【0019】
また、気液分離器35には、気液分離器35に貯留された水を排出するための排出流路44が接続されており、この排出流路44には、排気排水弁37を有する加熱装置80(後述)が設けられている。排気排水弁37は、通常時には閉じられており、気液分離器35の貯水量に応じて開弁されて、貯水が排出流路44を介して燃料電池システム100の外部に排出される。
【0020】
排気排水弁37は、燃料オフガスを燃料電池システム100の外部に排出する弁としても機能する。排気排水弁37は、通常時には閉じられており、燃料オフガスが燃料電池10に循環する。一方で、排気排水弁37は、燃料オフガスに含まれる窒素ガスや水蒸気などの不純物濃度が所定値よりも高くなったときに開弁される。これにより、燃料オフガスが排出流路44を介して燃料電池システム100の外部に排出される。この結果、窒素ガスや水蒸気などの不純物がアノード側から取り除かれ、アノード側の不純物濃度の上昇が抑制される。
【0021】
酸化ガス系50は、エアポンプ51、及び流路53、54を備えている。エアポンプ51によって大気から吸入された空気は、酸化ガス供給流路53を介して燃料電池10のカソードに酸化ガスとして供給される。カソードからの排ガス(以下、酸化オフガスとも称する。)は、酸化オフガス流路54を介して燃料電池システム100の外部に排出される。
【0022】
冷却系60は、ラジエータ61、循環ポンプ62、及び流路63、64を備えている。流路63、64は、燃料電池10とラジエータ61とに接続されている。流路63、64の内部を流れる冷却水は、循環ポンプ62の圧力によって、燃料電池10とラジエータ61の間を循環する。このため、燃料電池10の電気化学反応に伴って生じる熱は、循環する冷却水によって吸収され、この冷却水によって吸収された熱が、ラジエータ61によって放熱される。これにより、燃料電池10の温度が適切な温度に保たれる。
【0023】
制御ユニット70は、CPUや、ROM、RAM等を備えるコンピュータによって構成されている。制御ユニット70は、車両からの出力要求や各種センサによる検出状態に基づいて、インジェクタ32、エジェクタ33、循環ポンプ36、排気排水弁37、エアポンプ51、循環ポンプ62、加熱装置80等に駆動信号を出力することによって、燃料電池システム1002の運転動作等を制御する。
【0024】
次に、図2図4を参照して、加熱装置80の構成について説明する。加熱装置80は、気液分離器35の下流側の排出流路44に設けられている。図2に示すように、加熱装置80は、ボディ82、電極84、発熱部材86、絶縁部材88、流体導入部102(図3参照)、及び流体導出部104を有している。
【0025】
図3は、加熱装置80の内部構造を模式的に示している。図3の細線が加熱装置80の外観形状を表しており、太線が加熱装置80内部に形成された流路を表している。なお、図3では、ボディ82に設けられた電極84及び発熱部材86の位置を破線により示している。図3に示すように、加熱装置80の内部には、排出流路44a、44c、排気排水弁37、排出流路44bが設けられている。排出流路44aの上流側が気液分離器35に接続されており、排出流路44bの下流側が燃料電池システム100の外部に連通している。すなわち、矢印90に示すように、気液分離器35から流体導入部102を介して加熱装置80に流入した水や燃料オフガスは、排出流路44aを通過した後、排気排水弁37が配置された排出流路44cを介して排出流路44bに導かれ、矢印92に示すように流体導出部104から外部に排出される。なお、本実施例では、排気排水弁37には、ダイヤフラム弁が用いられる。
【0026】
図3及び図4に示すように、排出流路44aの中心軸A1と、排気排水弁37が配置された排出流路44cの中心軸A2とは、同一平面内(すなわち、xz平面内)に位置している。
【0027】
図2図4に示すように、ボディ82には、一対の電極84が設けられている。図2に示すように、電極84は、x方向に沿ってボディ82の外面に露出する第1部分84aと、ボディ82のx方向端部に位置する面から突出する第2部分84bを有している。また、図3及び図4に示すように、第1部分84aと第2部分84bとは、ボディ82の内部に屈曲して埋設された第3部分84cによって接続されている。また、第1部分84aの第3部分84cとは反対側の端部からは、ボディ82の内部に向かって屈曲して埋設された第4部分84dが伸びている。ボディ82と電極84とは、インサート成形によって一体的に形成されている。図4に示すように、一対の電極84は、排出流路44aの中心軸A1に対して対向する位置に配置されている。
【0028】
電極84(詳細には第1部分84a)の表面には、薄膜状の発熱部材86が設けられている。発熱部材86は、電極84の表面からボディ82の外面に跨る範囲を覆っている。具体的には、発熱部材86は、一方の電極84が露出するボディ82の一方の側面から、ボディ82の底面、及び他方の電極84が露出するボディ82の他方の側面に跨る範囲に設けられている。発熱部材86は、主に炭素と、エラストマーやプラスチック等の樹脂との化合物によって構成されている。発熱部材86は、電流を流すことにより、発熱するように構成されている。発熱部材86は、スプレー法や印刷法といった公知の手法により被覆することができる。
【0029】
図4に示すように、発熱部材86の表面には、薄膜状の絶縁部材88が設けられている。絶縁部材88は、発熱部材86の表面の略全域を覆っている。すなわち、絶縁部材88も、発熱部材86と同様に、ボディ82の一方の側面からボディ82の底面、及びボディ82の他方の側面に跨る範囲に設けられている。絶縁部材88は、例えば、液晶ポリマーによって構成されている。なお、図4では、ボディ82の底面(流体導出部104が設けられている面)に設けられた発熱部材86及び絶縁部材88の図示を省略している。
【0030】
続いて、加熱装置80の動作について説明する。本実施例では、電極84の第2部分84bが車両のバッテリ(不図示)に接続されている。すなわち、第2部分84bは、電極84に電流を流すための端子として機能する。この加熱装置80によりボディ82を加熱する際には、制御ユニット70が、バッテリから電極84へ電流を流すことにより、発熱部材86に通電する。これにより、発熱部材86が発熱する。図3及び図4に示すように、発熱部材86は、排出流路44aを包囲するようにボディ82の外面を覆っている。このため、発熱部材86が発熱することによって、ボディ82内部に形成された排出流路44aを加熱することができる。
【0031】
上述したように、本実施例では、電極84を介して発熱部材86に通電することにより、ボディ82の外面を覆う発熱部材86を発熱させて流路を加熱する。この電極84は、少なくとも一部(すなわち、第3部分84c及び第4部分84d)がボディ82に埋設されている。さらに、電極84を覆う発熱部材86が薄膜状に構成されている。このため、ボディ82(すなわち、排出流路44a)を加熱するための部材を配置する際に省スペース化を図ることができる。したがって、流路全体の体格が大きくなることが抑制される。
【0032】
また、本実施例では、2つの電極84は、排出流路44aの中心軸A1に対して対向する位置に配置されている。このため、排出流路44aの中心近傍の発熱部材86が効率良く発熱し、熱を効率良く排出流路44aに伝えることができる。
【0033】
また、本実施例では、発熱部材86の表面の略全域が絶縁部材88によって覆われている。このため、発熱部材86が他の部材から絶縁され、発熱部材86が他の部材と短絡してしまうことを抑制することができる。また、発熱部材86に外部(すなわち、電極84以外)から電力が供給されることを防止することができるため、発熱部材86の温度を容易に制御することができる。
【0034】
また、本実施例では、排出流路44aと排出流路44cの中心軸A1、A2が、同一平面内に位置している。このため、電極84や発熱部材86を簡易に配置することができる。
【0035】
排出流路44aが「反応ガスが流通する流路の一部」の一例である。第1部分84aが「少なくとも一部」の一例であり、第3部分84c及び第4部分84dが「少なくとも他の一部」の一例である。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を記載する。
【0037】
上述した実施例では、気液分離器35と排気排水弁37とを接続する流路(排出流路44a)を加熱して凍結することを抑制したが、加熱対象となる流路はこれに限られない。凍結し得る流路等、加熱すべき流路に加熱装置80を配置すればよく、例えば、酸化オフガス流路54に加熱装置80を配置してもよい。また、本明細書に開示する技術では、気液分離器35やエジェクタ33自体をボディ82として利用してもよい。この場合、気液分離器35やエジェクタ33の本体に、電極84及び発熱部材86を設けてよい。また、加熱装置80は、ボディ82、電極84、及び発熱部材86を少なくとも備えていればよく、排気排水弁37や絶縁部材88を備えていなくてもよい。
【0038】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10:燃料電池、30:燃料ガス系、35:気液分離器、37:排気排水弁、41:燃料ガス供給流路、42:燃料オフガス流路、43:循環流路、44:排出流路、50:酸化ガス系、60:冷却系、70:制御ユニット、80:加熱装置、82:ボディ、84:電極、84a:第1部分、84b:第2部分、84c:第3部分、84d:第4部分、86:発熱部材、88:絶縁部材、100:燃料電池システム
図1
図2
図3
図4