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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20240930BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240930BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G21/18 121
G03G21/16 120
G03G15/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021030499
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131519
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 峻太郎
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-182075(JP,A)
【文献】特開2011-107253(JP,A)
【文献】特開2008-102302(JP,A)
【文献】特開2016-109925(JP,A)
【文献】特開2000-293051(JP,A)
【文献】特開平06-317979(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02463727(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G13/00
13/02
13/14-13/16
13/34-15/00
15/02
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に配置され、画像を担持する像担持体と、
前記装置本体に配置され、前記像担持体に担持されている画像を記録材に転写する転写部材であって、前記像担持体と当接する第1位置と前記像担持体から離間する第2位置とに移動可能な転写部材と、
前記装置本体の前記像担持体の回転軸線方向と直交する第1方向の側部に設けられ、前記装置本体に対して開閉可能な開閉部材と、
前記開閉部材に連動して前記転写部材を移動させる移動機構と、
を有する画像形成装置であって、
前記移動機構は、
前記回転軸線方向における前記転写部材の第1端部の側に設けられた第1移動部材であって、前記転写部材の前記第1端部を前記開閉部材と連動させて移動させるように構成された第1移動部材と、
前記回転軸線方向において前記第1端部とは反対側の前記転写部材の第2端部を前記第1移動部材と連動させて移動させるように構成された第2移動部材と、
を有し、
前記第1移動部材は、前記開閉部材が開かれる動作に連動して前記第1方向に移動することで、前記転写部材の前記第1端部を前記第1位置から前記第2位置に向かって移動させ、
前記第2移動部材は、前記第1移動部材の前記第1方向への移動に連動して前記回転軸線方向に沿った第2方向に移動することで、前記転写部材の前記第2端部を前記第1位置から前記第2位置に向かって移動させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像担持体は、前記装置本体に着脱されるプロセスカートリッジの一部であり、
前記開閉部材を開放することで、前記第1方向の側から見て前記プロセスカートリッジが露出し、前記装置本体に対する前記プロセスカートリッジの着脱が可能となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2方向に見た場合に、前記像担持体及び前記転写部材は、前記記録材が前記第1方向とは反対側に向かって搬送される搬送路に配置され、
前記装置本体の上面部には、前記搬送路を搬送されることで画像を形成された後、前記第1方向に向かって前記装置本体から排出された前記記録材が積載される積載部が設けられ、
前記プロセスカートリッジは、上下方向における前記搬送路と前記積載部との間の空間に装着されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1移動部材は、前記回転軸線方向に関し前記搬送路の外側を経由して前記開閉部材と接続されており、
前記第2移動部材は、前記像担持体及び前記転写部材とで構成される転写ニップ部へ向けて搬送される前記記録材の前記転写部材と対向する側の面を案内する搬送ガイドの下方に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写部材が前記第2位置に位置する状態で前記開閉部材が閉じられる場合、前記開閉部材が閉じられた時点では前記転写部材が前記第2位置に維持され、その後、記録材に対する画像形成の開始までに前記転写部材は前記第2位置から前記第1位置へ移動される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記移動機構を駆動する駆動部を有し、
前記転写部材が前記第2位置に位置する状態で前記開閉部材が閉じられた後、前記駆動部が前記移動機構を駆動して、前記第1移動部材を前記第1方向とは逆方向に移動させ、前記第2移動部材を前記第2方向とは逆方向に移動させることで、前記転写部材が前記第2位置から前記第1位置へ移動する、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写部材が前記第2位置に位置する状態で前記開閉部材が閉じられた後に前記駆動部による前記移動機構の駆動を開始するタイミングは、前記像担持体の駆動が開始されるタイミングより遅い、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1移動部材は、前記第1方向に延びるラック部を有し、
前記駆動部は、前記ラック部と噛み合い、駆動源に回転駆動されるギアを含む、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記開閉部材と前記第1移動部材とを接続するリンク部材と、前記第1移動部材及び前記リンク部材のいずれか一方に設けられた前記第1方向に延びる長穴と、前記第1移動部材及び前記リンク部材の他方に設けられ前記長穴と係合する突起と、を有し、
前記開閉部材が開かれる場合、前記突起が前記長穴の端部と当接することで前記第1移動部材が前記第1方向に移動し、
前記転写部材が前記第2位置に位置する状態で前記開閉部材が閉じられる場合、前記突起が前記長穴の内側を移動することで、前記第1移動部材が前記転写部材の前記第2位置に対応する位置に留まったまま前記リンク部材が前記第1方向とは反対側へ移動する、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写部材が前記第2位置に位置する状態で前記開閉部材が閉じられる場合、前記転写部材は、前記開閉部材の閉じ動作に伴って、前記移動機構によって前記第2位置から前記第1位置へ移動される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1方向及び前記第2方向と交差する方向であって前記像担持体の回転軸線から前記転写部材の回転軸線に向かう方向を第3方向として、
前記移動機構は、前記第1移動部材の前記第1方向への動きを前記転写部材の前記第1端部の前記第3方向への動きに変換する第1カム部と、前記第1移動部材の前記第1方向への動きを前記第2移動部材の前記第2方向への動きに変換する第2カム部と、前記第2移動部材の前記第2方向への動きを前記転写部材の前記第2端部の前記第3方向への動きに変換する第3カム部と、を含み、
前記第1カム部、前記第2カム部及び前記第3カム部は、いずれも直動カムである、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、複合機、レーザービームプリンタ等の電子写真式画像形成装置では、感光ドラム等の感光体に形成したトナー像を、転写ローラ等の転写部材によって記録材に転写する。感光体やその周囲に配置される電子写真プロセス用の部材(例えば現像装置や帯電装置)は、画像形成装置の装置本体に対して一体として着脱可能なプロセスカートリッジとして構成される。ユーザは、プロセスカートリッジの着脱を行うことで、プロセスカートリッジの交換や紙詰まり除去等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0003】
ところで、プロセスカートリッジの着脱を行う場合に転写部材が感光体に当接していると、感光体が転写部材から力を受けて着脱時の操作性が低下する可能性がある。特許文献1には、プリンタ本体に対して開閉可能な前カバーと、プリンタ本体に対する前カバーの係止を解除する開閉レバーとを設け、開閉レバーの操作によって開閉レバーの一部がプリンタ本体内で転写ローラを感光ドラムから離間させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-66963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献では開閉レバーが直接に転写ローラの軸を押圧する構成となっていた。しかし、配置上の制約により前カバーと転写ローラとが遠く離れている場合等に上記文献の開閉レバーを軸方向における転写ローラの両側に配置すると、軸方向の両側に開閉レバーの移動空間を確保することになり、画像形成装置の大型化につながる。そこで、開閉部材に連動して転写部材を移動させる機構を省スペースで配置することが求められていた。
【0006】
本発明は、省スペースな構成で開閉部材と転写部材の連動を可能とする画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、装置本体と、前記装置本体に配置され、画像を担持する像担持体と、前記装置本体に配置され、前記像担持体に担持されている画像を記録材に転写する転写部材であって、前記像担持体と当接する第1位置と前記像担持体から離間する第2位置とに移動可能な転写部材と、前記装置本体の前記像担持体の回転軸線方向と直交する第1方向の側部に設けられ、前記装置本体に対して開閉可能な開閉部材と、前記開閉部材に連動して前記転写部材を移動させる移動機構と、を有する画像形成装置であって、前記移動機構は、前記回転軸線方向における前記転写部材の第1端部の側に設けられた第1移動部材であって、前記転写部材の前記第1端部を前記開閉部材と連動させて移動させるように構成された第1移動部材と、前記回転軸線方向において前記第1端部とは反対側の前記転写部材の第2端部を前記第1移動部材と連動させて移動させるように構成された第2移動部材と、を有し、前記第1移動部材は、前記開閉部材が開かれる動作に連動して前記第1方向に移動することで、前記転写部材の前記第1端部を前記第1位置から前記第2位置に向かって移動させ、前記第2移動部材は、前記第1移動部材の前記第1方向への移動に連動して前記回転軸線方向に沿った第2方向に移動することで、前記転写部材の前記第2端部を前記第1位置から前記第2位置に向かって移動させる、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、省スペースな構成で開閉部材と転写部材の連動を可能とする画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施例1に係る転写ローラの斜視図。
図3】実施例1に係る転写ローラ及び感光ドラムの断面図。
図4】実施例1に係る離間機構(第1状態)の概略図。
図5】実施例1に係る離間機構(第2状態)の概略図。
図6】実施例1に係る第1軸受及び離間レバーの周辺を示す図。
図7】実施例1に係る第1軸受及び離間レバーの周辺を示す図。
図8】実施例1に係る離間ロッドの一部を示す斜視図。
図9】実施例1に係る離間レバー及び離間ロッドの一部を示す図(a、b)。
図10】実施例1に係る第2軸受及び離間ロッドの一部を示す図(a、b)。
図11】実施例2に係る離間機構(第1状態)の概略図。
図12】実施例2に係る離間機構(第2状態)の概略図。
図13】実施例2に係る離間機構(第3状態)の概略図。
図14】実施例2に係る離間機構(第1状態)の一部を示す図。
図15】実施例2に係る離間機構(第2状態)の一部を示す図。
図16】実施例2に係る離間機構(第3状態)の一部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
以下の説明及び図面において、画像形成装置が水平面に設置された場合の鉛直方向(重力方向)をZ方向又は上下方向とし、画像形成装置の像担持体(電子写真感光体)の回転軸線方向をY方向とし、Y方向及びZ方向に交差する方向をX方向とする。X、Y、Z方向は、好ましくは互いに直交する方向である。また、画像形成装置において着脱可能な部材の構造、形状、配置等については、特に断らない限り、画像形成装置に組み込まれた状態を基準にしてX、Y、Z方向を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
(画像形成装置)
図1は、実施例1に係る画像形成装置1の断面構成を示す概略図である。本実施例の画像形成装置1は、ネットワークを介して接続された外部機器から受信した画像情報及び画像形成の実行指示に基づいて、電子写真プロセスによって記録材Sに画像を形成する電子写真プリンタである。記録材Sとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
【0013】
画像形成装置1は、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラム8)を備えている。感光ドラム8は、OPC(有機光半導体)、アモルファスセレン、アモルファスシリコン等の感光材料が、アルミニウムやニッケル等で形成されたシリンダ状のドラム基体上に設けられて構成されたものである。感光ドラム8は、画像形成装置1の装置本体1Aによって支持され、Y方向に延びる回転軸線を中忍にして回転可能であり、駆動源によって所定のスピードで回転駆動される。感光ドラム8の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電部材80、現像部材81、転写部材である転写ローラ9が配置されている。感光ドラム8の上方には露光手段であるスキャナユニット7が配置されている。
【0014】
感光ドラム8、帯電部材80及び現像部材81は、装置本体1Aに対して一体的に着脱可能なプロセスカートリッジ6を構成している。X方向におけるプロセスカートリッジ6の一方側の側部には、装置本体1Aに対して開閉可能な開閉部材としてのドア部材13が設けられている。ドア部材13を開放することで、プロセスカートリッジ6をX方向の一方側から装置本体1Aに対して着脱可能となる。
【0015】
なお、装置本体1Aとは、画像形成装置1の内、プロセスカートリッジ6及びドア部材13を除いた部分を指し、例えば画像形成装置1の枠体を構成する板金を含む。画像形成装置1においてドア部材13が設けられているX方向の一方側は、画像形成装置1の前方側であり、その反対側を画像形成装置1は後方側である。
【0016】
画像形成装置1は、他にも、記録材Sの主搬送路1Pに沿って順に、給送カセット2、給送ローラ3、搬送ローラ対4、レジストレーションローラ対(以下、レジローラ対5とする)、定着装置10、排出ローラ対11、排出トレイ12を備えている。主搬送路1Pは、画像形成装置1内において画像形成時に記録材Sが搬送される搬送路(搬送空間)であり、記録材Sが収容される給送カセット2から、排出ローラ対11に至る搬送路(搬送空間)を指す。
【0017】
給送カセット2はプロセスカートリッジ6の下方に配置される。レジローラ対5、感光ドラム8及び転写ローラ9、並びに定着装置10は、主搬送路1Pの内、Z方向におけるプロセスカートリッジ6と給送カセット2の間で略X方向に延びる部分に沿って配置される。画像形成された記録材Sが積載される積載部としての排出トレイ12は、装置本体1Aの上面部に設けられ、プロセスカートリッジ6及びスキャナユニット7の上方に位置する。
【0018】
給送カセット2は、積載された状態の記録材Sを収納する。給送ローラ3、搬送ローラ対4、レジローラ対5、定着装置10、排出ローラ対11は、画像形成装置1内部において記録材Sを搬送する搬送系を構成する。また、定着装置10は、転写ローラ9によって記録材Sに転写された画像の定着を行う定着手段でもある。
【0019】
なお、本実施例の画像形成装置1は、感光ドラム8の回転軸線方向であるY方向に見た場合に、記録材Sの主搬送路1Pが略S字状の曲線を描く搬送パス構成を採用している。つまり、Y方向に見た場合に、記録材Sは給送カセット2から水平方向(X方向)の一方側に送り出され、給送カセット2の上方の主搬送路1Pで水平方向(X方向)の他方側に搬送されながら画像の転写及び定着を受ける。そして、記録材Sは、排出ローラ対11によって水平方向(X方向)の一方側に排出されることで、装置本体1Aの上面部に設けられた排出トレイ12に積載される。
【0020】
プロセスカートリッジ6は、装置本体1Aの内、Z方向における主搬送路1Pと排出トレイ12との間(特に、主搬送路1Pとスキャナユニット7の間)の装着空間に装着される。ドア部材13をX方向の一方側に開くことで、上記装着空間は画像形成装置1の外部空間に対してX方向の一方側に向かって開放され、X方向の一方側から見てプロセスカートリッジ6が露出する。この状態で、ユーザはX方向の一方側からプロセスカートリッジ6にアクセスして着脱操作を行うことが可能である。
【0021】
(画像形成動作)
画像形成装置1による画像形成動作について説明する。まず、感光ドラム8が回転駆動され、感光ドラム8の表面が帯電部材80によって所定の極性、所定の電位に一様に帯電させられる。感光ドラム8の帯電した表面に対し、スキャナユニット7は外部機器から受信した画像情報に基づいて露光処理を行い、露光部分の電荷が除去されて感光ドラム8表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像部材81によってトナーを含む現像剤を用いて現像され、トナー像として可視化される。感光ドラム8に担持されたトナー像は、転写ローラ9によって記録材Sに転写される。転写ローラ9は感光ドラム8に向かって付勢され、転写ローラ9と感光ドラム8との間には転写ニップ部N1が形成されている。つまり、転写ローラ9は、像担持体との間に転写ニップ部N1を形成し、転写ニップ部N1において感光ドラム8から記録材Sに画像を転写する転写動作を行う。
【0022】
記録材Sは、給送カセット2から給送ローラ3によって1枚ずつ給送され、搬送ローラ対4を介してレジローラ対5に搬送される。レジローラ対5は記録材Sの斜行補正をした後、プロセスカートリッジ6によるトナー像の作成に同期したタイミングで記録材Sを転写ニップ部N1に搬送する。
【0023】
転写ニップ部N1を通過することでトナー像を転写された記録材Sは、定着装置10によってトナー像の定着処理を受ける。定着装置10は、例えば記録材Sを挟持して加圧する定着ローラ及び加圧ローラと、定着ローラを介してトナー像を加熱するハロゲンランプ又は誘導加熱機構とを有する熱定着方式である。定着ローラ及び加圧ローラのニップ部を通過する間にトナー像は加熱及び加圧されて軟化し、その後冷えて固着することで、記録材Sに定着した画像が得られる。定着装置10を通過した記録材Sは、排出ローラ対11によって装置本体1Aから排出され、排出トレイ12に積載される。
【0024】
なお、記録材Sの両面に画像を形成する場合、転写ニップ部N1及び定着装置10を通過することで第1面に画像形成された記録材Sは、排出ローラ対11によってスイッチバックされ、主搬送路1Pの下方の再搬送路1Rに送り込まれる。そして、レジローラ対5に到達した記録材Sは、再び転写ニップ部N1及び定着装置10を通過することで第2面に画像形成された後、排出ローラ対11によって排出される。
【0025】
(転写ローラの離間機構)
次に、転写ローラ9を感光ドラム8に対して当接及び離間させる離間機構90について説明する。図2は、転写ローラ9の斜視図である。図3は、感光ドラム8及び転写ローラ9をX方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【0026】
図2及び図3に示すように、転写ローラ9は、Y方向に延びる軸部9bと、軸部9bに支持される円柱状のローラ本体9aと、を有する。Y方向における軸部9bの一方側の端部(第1端部9b1とする)は、第1軸受21によって回転可能に支持され、他方側の端部(第2端部9b2とする)は、第2軸受22によって回転可能に支持されている。第1軸受21及び第2軸受22は、それぞれ装置本体1Aの軸受支持部によりZ方向に移動可能に支持されている。
【0027】
第1軸受21及び第2軸受22は、転写ニップ部N1を加圧するための加圧手段(付勢部材)としてのバネ31,バネ32によって、それぞれ転写ローラ9の回転軸線が感光ドラム8の回転軸線に近付く方向に付勢されている。後述する当接位置に転写ローラ9が位置決めされた状態では、バネ31,32の付勢力によりローラ本体9aの外周面が感光ドラム8に所定の加圧力で圧接する。また、第1軸受21及び第2軸受22は、それぞれボス形状21a,22aを有している。
【0028】
図4及び図5は、本実施例に係る移動機構である離間機構90を示す概略図である。図4は、ドア部材13が閉位置にあり、かつ、転写ローラ9が当接状態にある状態(以下、離間機構90の第1状態とする。)を示している。図5は、ドア部材13が開位置にあり、かつ、転写ローラ9が離間状態にある状態(以下、離間機構90の第2状態とする。)を示している。転写ローラ9の当接状態とは、転写ローラ9が感光ドラム8に所定の加圧力で圧接した状態であり、転写ローラ9の離間状態とは、転写ローラ9が感光ドラム8から離間した状態である。言い換えれば、図4は、転写ローラ9が感光ドラム8と当接する第1位置(当接位置とも言える)にある画像形成装置1の状態を示し、図5は、転写ローラ9が感光ドラム8から離間した第2位置(離間位置とも言える)にある画像形成装置1の状態を示している。
【0029】
離間機構90は、上述した通り、ドア部材13の開き動作に伴って転写ローラ9を当接位置から離間位置へと移動させるように構成される。また、本実施例の離間機構90は、ドア部材13の閉じ動作に伴って転写ローラ9を離間位置から当接位置へと移動させる。
【0030】
図4に示すように、離間機構90は、第1移動部材(第1離間部材)としての離間レバー41と、第2移動部材(第2離間部材)としての離間ロッド42と、リンクユニット43と、を含む。また、転写ローラ9の第1軸受21及び第2軸受22に設けられた突起であるボス形状21a,22a(図2)も、離間機構90の一部として機能する。離間レバー41は、リンクユニット43を介してドア部材13と接続されると共に、転写ローラ9の第1軸受21と接続されている。離間ロッド42は、離間レバー41と接続されると共に、転写ローラ9の第2軸受22と接続されている。
【0031】
離間機構90の内、離間レバー41及びリンクユニット43は、画像形成装置1においてプロセスカートリッジ6や主搬送路1Pが配置される空間に対してY方向の片側に配置されている。具体的には、離間レバー41及びリンクユニット43は、例えばY方向における感光ドラム8の画像形成領域(スキャナユニット7が静電潜像を形成可能な最大の主走査方向領域)に対してY方向の外側かつ一方側に位置する。つまり、離間レバー41は、記録材Sの主搬送路1Pに対してY方向の外側を経由してドア部材13と接続されている。また、離間レバー41及びリンクユニット43の少なくとも一部は、Y方向に見て、レジローラ対5や、転写ニップ部N1を経由する記録材Sの主搬送路1Pを形成する搬送ガイドg1(図1)と重なる位置にある。また、離間ロッド42は、主搬送路1Pの下方かつ給送カセット2の上方(特に、再搬送路1Rより上方)の空間に配置されている。つまり、離間ロッド42は、転写ニップ部N1へ向けて搬送される記録材Sの下面を案内する搬送ガイドg1の下方に配置されている。
【0032】
ドア部材13は、下端部に設けられた回転軸13a(図1も参照)を装置本体1Aの軸受部に回転可能に保持され、回転軸13aを通るY方向の回転軸線を中心にして回動することで装置本体1Aに対して開閉可能に設けられている。ドア部材13の外面13bは、画像形成装置1のX方向における一方側の側面を構成する外装である。図1及び図4に示すように、ドア部材13の外面13bが略垂直となる位置を、ドア部材13の閉位置とする。図5に示すように、ドア部材13が閉位置からX方向の一方側に向かって回動された位置をドア部材13の開位置とする。本実施例では、ドア部材13は、閉位置から開位置まで略90度回動可能に構成される。
【0033】
離間レバー41は、装置本体1Aに支持され、転写ローラ9の回転軸線方向であるY方向と直交するD1方向及びD2方向に平行移動(スライド移動)することが可能である。D1方向は、X方向に沿った方向であって、ドア部材13が閉位置から開位置に向かって移動する方向に沿った方向である。D2方向は、X方向に沿った方向であって、ドア部材13が開位置から閉位置に向かって移動する方向に沿った方向である。D1方向は本実施例の第1方向であり、D2方向はD1方向の逆方向である。
【0034】
離間ロッド42は、装置本体1Aに支持され、転写ローラ9の回転軸線方向であるY方向に細長く延びた部材であり、Y方向に沿ったD3方向及びD4方向に平行移動(スライド移動)することが可能である。D3方向は、Y方向に沿った方向であって第1軸受21から第2軸受22に向かう方向である。D4方向は、Y方向に沿った方向であって第2軸受22から第1軸受21に向かう方向である。D3方向は本実施例の第2方向であり、D4方向はD3方向の逆方向である。
【0035】
リンクユニット43は、ドア部材13と離間レバー41とを接続し、ドア部材13の開き動作に連動して離間レバー41をD1方向に移動させ、ドア部材13の閉じ動作に連動して離間レバー41をD2方向に移動させるように構成される。本実施例のリンクユニット43は、第1リンク43a、第2リンク43b、第3リンク43cの3つの部材を含む。第1リンク43aは、ドア部材13に取り付けられ、第2リンク43bと回動可能に連結されている。第2リンク43bは、第1リンク43aとの連結部に対してD2方向側にボスb1を有し、突起部であるボスb1が第3リンク43cの長穴c1と嵌合することで第3リンク43cと連結されている。第3リンク43cは、D1方向側の端部に長穴c1を有し、D2方向側の端部において離間レバー41と連結されている。
【0036】
ドア部材13が閉位置(図4)から開位置(図5)に移動するとき、第1リンク43aはドア部材13と共に回動し、第2リンク43bは第1リンク43aに引っ張られてD1方向に移動する。第2リンク43bのボスb1が第3リンク32aの長穴c1のD1方向側の端部と係合することで、第3リンク43cもD1方向に移動する。そして、第3リンク43cのD1方向への移動によって離間レバー41がD1方向に移動する。
【0037】
ドア部材13が開位置(図5)から閉位置(図4)に移動するとき、第1リンク43aはドア部材13と共に回動し、第2リンク43bは第1リンク43aに押し戻されてD2方向に移動する。ここで、第2リンク43bのボスb1は第3リンク43cの長穴c1の内側D2方向に移動するため、第3リンク43cは第2リンク43bからD2方向の力を受けない。第3リンク43cは、D1方向側の端部を第1リンク43a又はドア部材13によってD2方向に押圧されることで、ドア部材13の閉じ動作に連動してD2方向に移動する。なお、第3リンク43cをD2方向に付勢するバネ等の付勢部材を配置して、ドア部材13の閉じ動作に連動して付勢部材の付勢力によって第3リンク43cがD2方向に移動するようにしてもよい。
【0038】
このようにドア部材13の開閉動作に伴って離間レバー41がD1方向又はD2方向に移動することで、以下で説明するように転写ローラ9の離間動作又は当接動作が行われる。
【0039】
(第1軸受の移動)
次に、ドア部材13の開閉動作に連動した転写ローラ9の第1軸受21の移動について、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7は、第1軸受21及び離間レバー41の周辺をY方向に見た様子を表し、図6は転写ローラ9が当接位置にある状態、図7は転写ローラ9が離間位置にある状態に対応する。
【0040】
図6及び図7に示すように、離間レバー41は、斜面部41a及びロック部41bと、リンクユニット43の端部と接続された接続部であるボス41cと、を有する。斜面部41a及びロック部41bは、第1軸受21のボス形状21aに対して上方側から当接可能である。斜面部41aは、Y方向に見て、D1方向に向かって上方に傾斜した傾斜面である。つまり、斜面部41aは、ドア部材13の開き動作に連動した離間レバー41の移動方向における上流側(D2方向)に向かって、転写ローラ9の回転軸線が感光ドラム8の回転軸線から遠ざかる方向(第3方向)に傾斜している。離間レバー41の斜面部41aと第1軸受21のボス形状21aは、ドア部材13の開放に伴う離間レバー41のD1方向の動きを、転写ローラ9を感光ドラム8から離間させる方向である下方向の動きに変換する直動カムである第1カム部として機能する。
【0041】
ロック部41bは、斜面部41aのD2方向側の端部(つまり、斜面部41aの下端部)からD2方向に略一定の高さで延びる面である。ロック部41bの高さは、第1軸受21が転写ローラ9の離間位置に対応する位置にある場合のボス形状21aの上面の高さに相当する。斜面部41aのD1方向側の端部は、転写ローラ9の当接位置に対応するボス形状21aの上面より高い位置まで延びている。なお、第1軸受21のD1方向及びD2方向への移動は規制されている。
【0042】
上述したようにドア部材13が閉位置にあるときは離間レバー41が移動範囲内におけるD2方向側の位置に位置する。この場合、図6に示すように、離間レバー41の斜面部41aが第1軸受21のボス形状21aから上方に離間している状態で、上述したバネ31の付勢力により転写ローラ9が感光ドラム8に圧接する。
【0043】
ドア部材13が開放されると、ドア部材13に連動して離間レバー41がD1方向に移動する。その際、離間レバー41は斜面部41aによって第1軸受21のボス形状21aを押し下げながら移動し、第1軸受21を下方側、つまり転写ローラ9を感光ドラム8から離間させる方向に移動させる。そして、離間レバー41がドア部材13の開位置に対応する位置に到達するまでに、ロック部41bの下側にボス形状21aが潜り込み、第1軸受21は転写ローラ9の離間位置に対応する位置で保持される。つまり、第1移動部材としての離間レバー41は、ドア部材13が開かれる動作に伴ってD1方向(第1方向)に移動することで、転写ローラ9の第1端部9b1を当接位置から離間位置へ移動させる。
【0044】
一方、ドア部材13が閉じられるときは、ドア部材13に連動して離間レバー41がD2方向に移動する。その際、ロック部41bがボス形状21aから離脱した後、ボス形状21aが斜面部41aに接触し続けながら第1軸受21が徐々に上方に移動する。そして、転写ローラ9が感光ドラム8に当接すると、第1軸受21の移動が停止する。第1軸受21は、バネ31の付勢力により、転写ローラ9の当接位置に対応する位置に保持される。
【0045】
このように、離間レバー41は、リンクユニット43を介してドア部材13から力を受けて転写ローラ9の回転軸線に直交するX方向に移動するように構成されている。そして、離間レバー41は、ドア部材13の開閉動作に連動して、転写ローラ9の一方の端部に設けられた第1軸受21を、転写ローラ9の離間位置に対応する位置と当接位置に対応する位置とに移動させる。
【0046】
(第2軸受の移動)
次に、ドア部材13の開閉動作に連動した転写ローラ9の第2軸受22の移動について、図8図10を用いて説明する。図8は、離間ロッド42のD3方向側(離間レバー41側)の一部を示す斜視図である。図9(a、b)は離間レバー41及び離間ロッド42を上方から見た様子を表し、図9(a)は転写ローラ9が当接位置にある状態、図9(b)は転写ローラ9が離間位置にある状態に対応する。図10(a、b)は離間ロッド42及び第2軸受22をX方向におけるドア部材13の側から見た様子を表し、図10(a)は転写ローラ9が当接位置にある状態、図10(b)は転写ローラ9が離間位置にある状態に対応する。
【0047】
図8に示すように、離間ロッド42はD4方向側の端部に係合部42aを有しており、係合部42aは図9(a)に示す離間レバー41の溝部41dに係合している。上方から見た場合、溝部41dは、D1方向に向かってD4方向側に傾斜している。言い換えると、溝部41dは、ドア部材13が開かれる時の離間レバー41の移動方向に向かって離間ロッド42のスライド方向の一方側に向かって傾斜している。なお、離間ロッド42のD1方向及びD2方向への移動は規制されている。離間レバー41の溝部41dと離間ロッド42の係合部42aは、離間レバー41のD1方向及びD2方向の動きを離間ロッド42のD3方向及びD4方向の動きに変換する直動カムである第2カム部として機能する。
【0048】
図10(a)に示すように、離間ロッド42は、斜面部42b及びロック部42cを有する。X方向に見た場合に、斜面部42bは、D3方向に向かって上方側に傾斜した傾斜面である。つまり、斜面部42bは、ドア部材13の開き動作に連動した離間ロッド42の移動方向における上流側(D4方向)に向かって、転写ローラ9が感光ドラム8から遠ざかる側に傾斜している。離間ロッド42の斜面部42bと第2軸受22のボス形状22aは、ドア部材13の開放に伴う離間ロッド42のD3方向の動きを、転写ローラ9を感光ドラム8から離間させる方向である下方向の動きに変換する直動カムである第3カム部として機能する。
【0049】
ロック部42cの高さは、転写ローラ9の離間位置に対応する。ロック部42cは、斜面部42bのD4方向側の端部(つまり、斜面部42bの下端部)からD4方向に略一定の高さで延びる面である。斜面部42bのD3方向側の端部は、転写ローラ9の当接位置に対応するボス形状22aの上面より高い位置まで延びている。なお、第2軸受22のD3方向及びD4方向への移動は規制されている。
【0050】
上述したようにドア部材13が閉位置にあるときは離間レバー41が移動範囲内におけるD2方向側の位置に位置する。この場合、図9(a)に示すように、離間ロッド42は移動範囲内におけるD4方向側の位置に位置する。そして、図10(a)に示すように、離間ロッド42の斜面部42bが第2軸受22のボス形状22aから上方に離間している状態で、上述したバネ32の付勢力により転写ローラ9が感光ドラム8に圧接する。
【0051】
ドア部材13が開放されると、図9(b)に示すようにドア部材13に連動して離間レバー41がD1方向に移動する。その際、離間レバー41の溝部41dに沿って係合部42aが案内され、離間ロッド42がD3方向に移動する(図9(a)から図9(b))。離間ロッド42は斜面部42bによって第2軸受22のボス形状22aを押し下げながら移動し、第2軸受22を下方側、つまり転写ローラ9を感光ドラム8から離間させる方向に移動させる。そして、離間ロッド42がドア部材13の開位置に対応する位置に到達するまでに、ロック部42cの下側にボス形状22aが潜り込み、第2軸受22は転写ローラ9の離間位置に対応する位置で保持される。つまり、第2移動部材としての離間ロッド42は、ドア部材13が開かれる場合に、離間レバー41のD1方向(第1方向)への移動に伴ってD3方向(第2方向)に移動することで、転写ローラ9の第2端部9b2を当接位置から離間位置へ移動させる。
【0052】
一方、ドア部材13が閉じられるときは、ドア部材13に連動して離間レバー41がD2方向に移動する。その際、離間レバー41の溝部41dに沿って係合部42aが案内され、離間ロッド42がD4方向に移動する(図9(b)から図9(a))。そして、ロック部42cがボス形状22aから離脱した後、ボス形状22aが斜面部42bに接触し続けながら第2軸受22が徐々に上方に移動する。そして、転写ローラ9が感光ドラム8に当接すると、第2軸受22の移動が停止する。第2軸受22は、バネ32の付勢力により、転写ローラ9の当接位置に対応する位置に保持される。
【0053】
このように、離間ロッド42は転写ローラ9の回転軸線と略平行な方向に移動することで、ドア部材13が開放される時の操作力の一部が、離間ロッド42を介して、Y方向においてリンクユニット43及び離間レバー41とは反対側に伝達される。これにより、離間レバー41によって移動される第1軸受21とは反対側の第2軸受22を、ドア部材13の操作力を利用して移動させ、第1軸受21及び第2軸受22を協調させながら転写ローラ9が感光ドラム8から離間させることができる。
【0054】
また、Y方向に長く延びる部材である離間ロッド42がY方向に沿った方向に移動することで上記の操作力を伝達する構成としたため、離間ロッド42にねじれ力や曲げ力が作用しにくい。従って、離間ロッド42にねじれ力や曲げ力が作用することを前提として例えば強度の高い金属材料を用いたり、断面積を大きしたりする必要が少なくなり、低コスト化と省スペース化を図りつつ離間ロッド42に求められる強度を確保することができる。
【0055】
なお、離間ロッド42のロック部42cの高さは、転写ローラ9の回転軸線の高さを基準として、離間レバー41のロック部41bの高さと対応するように定められている。つまり、離間レバー41及び離間ロッド42のロック部41b,42cが第1軸受21及び第2軸受22のボス形状21a,22aと当接している状態では、転写ローラ9の回転軸線が感光ドラム8の回転軸線と平行となる。
【0056】
また、離間レバー41及び離間ロッド42の斜面部41a,42aの傾斜角度は、ドア部材13の開閉に連動する第1軸受21及び第2軸受22のZ方向の移動速度が等しくなるように設定すると好適である。これにより、ドア部材13の開き動作に連動して、転写ローラ9は感光ドラム8に対して平行な姿勢を保ったまま感光ドラム8から離間する。例えば、離間レバー41の溝部41dのX方向に対する傾斜角度が45度の場合、ドア部材13の開き動作に伴う離間レバー41のD1方向の移動速度と離間ロッド42のD2方向の移動速度の比は1対1になる。この場合、水平面に対する斜面部41a,42aの傾斜角度を等しく設定しておけば、第1軸受21及び第2軸受22は同じ速度で下方に移動する。
【0057】
(本実施例のまとめ)
以上説明した通り、本実施例では、ドア部材13の開き動作に伴って離間レバー41がD1方向に移動し、離間レバー41のD1方向の移動に伴って離間ロッド42がD3方向に移動することで、転写ローラ9が感光ドラム8から離間する。これにより、ドア部材13の開き動作をした後、転写ローラ9を離間させるための特別な操作を行うことなく、プロセスカートリッジ6の着脱を行うことができ、ユーザビリティ向上に貢献する。そして、本実施例では、転写ローラ9の一端部をドア部材13に接続された離間レバー41によって移動させ、転写ローラ9の他端部を離間レバー41に接続された離間ロッド42によって移動させている。このため、ドア部材13の開き動作に伴って転写ローラ9の両端部を移動させる離間機構90を、省スペースな構成で実現することができる。
【0058】
また、装置本体1A内において、離間レバー41及びリンクユニット43のY方向における反対側の空間は、離間機構90以外の部材を配置する空間として有効活用できる。例えば、装置本体1A内のY方向について離間レバー41及びリンクユニット43とは反対側の空間に、感光ドラム8やレジローラ対5等を駆動するためのモータや駆動伝達機構を配置することができる。
【0059】
なお、本実施例では、リンクユニット43が3つの部材(43a、43b、43c)からなる構成としているが、ドア部材13の開閉動作に連動して離間レバー41をD1方向又はD2方向に移動させるリンクユニットであれば例えば1部材で構成してもよい。また、離間レバー41をX方向に延長してドア部材13と直接に接続してもよい。
【実施例2】
【0060】
次に、図11図16を用いて実施例2に係る画像形成装置について説明する。以下、実施例1と実質的に同一の構成及び作用を有する要素には実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図11及び図12は、本実施例に係る移動機構である離間機構90を示す概略図である。図11は、転写ローラ9が第1位置(当接位置)に位置する当接状態を示している。図12は、転写ローラ9が第2位置(離間位置)に位置する離間状態を示している。
【0062】
実施例1では、ドア部材13の開き動作に連動して転写ローラ9が移動するだけでなく、ドア部材13の閉じ動作にも連動して転写ローラ9が移動する構成を説明した。これに対して本実施例では、転写ローラ9が離間位置に位置する状態でドア部材13が閉じられた時に転写ローラ9が離間位置を維持し、その後、駆動源の駆動力によって転写ローラ9が離間位置から当接位置へ移動される。
【0063】
図11に示すように、本実施例のリンクユニット43を構成するリンク部材の1つである第3リンク43dは、離間レバー41との係合部として、D1方向に延びた長丸形状の長穴c2を有している。離間レバー41のボス41cは、長穴c2に嵌合している。
【0064】
また、離間レバー41の下側にはドア部材13が閉じられた後に離間機構90を駆動する駆動部としての駆動ギア44が配置されている。離間レバー41にはD1方向に延びるラック部41e(図14)が設けられ、駆動ギア44はこのラック部41eと噛み合っている。駆動ギア44は、装置本体1Aに設けられたモータ51によって駆動され、離間レバー41をD2方向に移動させることができる。
【0065】
(転写ローラの離間動作)
図14図16を用いて、ドア部材13の開き動作に伴って転写ローラ9が当接位置から離間位置へ移動する動作について説明する。図14図16は、離間レバー41及び駆動ギア44の周辺をY方向に見た図である。図14は、ドア部材13が閉位置にあり、かつ、転写ローラ9が当接位置に位置する状態を表す。図15は、ドア部材13が開位置にある状態を表す。図16は、転写ローラ9が離間位置に位置する状態でドア部材13が閉じられた直後の様子を表す。
【0066】
実施例1と同様に、ドア部材13が開かれると、リンクユニット43によってドア部材13の開き動作に連動して離間レバー41がD1方向へ移動する(図11図12)。ただし、本実施例では離間レバー41の長穴c2がリンクユニット43の第3リンク43dのボス41cと係合している(図14)。そのため、長穴c2のD2方向側の端部がボス41cに当接することで、離間レバー41のD1方向の移動が開始する。
【0067】
図15に示すように、ドア部材13が開位置に移動するまでの間に、離間レバー41の斜面部41aが第1軸受21のボス形状21aを押し下げ、ロック部41bによって第1軸受21を位置決めする。この間に、離間レバー41のラック部41eが駆動ギア44と噛み合う。また、離間レバー41のD1方向の移動に伴って、離間ロッド42はD3方向へ移動し、斜面部42bが第2軸受22のボス形状22aを押し下げ、ロック部42cによって第2軸受22を位置決めする(図10(a)から図10(b))。これにより、ドア部材13が開位置にある状態では、転写ローラ9の離間位置に位置決めされる。
【0068】
ドア部材13が閉じられると、ドア部材13が開かれると、リンクユニット43の第3リンク43dはドア部材13の閉じ動作に連動してD2方向へ移動する(図13)。しかし、ドア部材13が閉位置に到達した時点では、離間レバー41のボス41cは第3リンク43dの長穴c2のいずれの端部とも係合しておらず、離間レバー41はドア部材13を閉じる前と同じ位置を維持している。従って、この時点では、第1軸受21及び第2軸受22のいずれもドア部材13を閉じる前の位置から移動しておらず、転写ローラ9は離間位置に維持されている。
【0069】
つまり、本実施例の離間機構90は、ドア部材13の開閉動作の内、開き動作においてのみ、リンクユニット43を介して離間レバー41がドア部材13に連動してD1方向に移動するように構成されている。
【0070】
(転写ローラの当接動作)
次に転写ローラ9を離間位置から当接位置へ移動させる動作について説明する。図16に示すように転写ローラ9が離間位置にある状態でドア部材13が閉じられた後に、駆動ギア44は図中反時計回り方向に回転駆動される。すると、離間レバー41は駆動ギア44に駆動されてD2方向に移動する。このとき、離間レバー41のボス41cは第3リンク43dの長穴c2の内側をD2方向に移動する。
【0071】
離間レバー41のD2方向の移動により、ロック部41bが第1軸受21のボス形状21aから離脱し、第1軸受21はバネ31の付勢力によって上方に移動する。また、離間レバー41のD2方向の移動に伴って、実施例1と同様に離間ロッド42がD4方向に移動してロック部42cが第2軸受22のボス形状22aから離脱し、第2軸受22はバネ32の付勢力によって上方に移動する(図10(b)からず10(a))。これにより、転写ローラ9は離間位置から当接位置への移動が完了する。また、転写ローラ9が当接位置へ移動した後に離間レバー41のラック部41eが駆動ギア44から離脱することで、駆動ギア44から離間レバー41への駆動伝達が自動的に遮断されるように、ラック部41eの長さ及び位置が設定されている。
【0072】
このように、本実施例では、ドア部材13を閉じた時点では転写ローラ9が離間位置に位置決めされる。このため、出荷時には転写ローラ9を離間状態としておき、感光ドラム8と転写ローラ9が長時間に亘って圧接状態に置かれることのデメリット(例えば、転写ローラ9の変形や、転写ローラ9の成分の感光ドラム8への付着)を低減することができる。
【0073】
また、本実施例では、駆動ギア44の駆動を制御することで、転写ローラ9と感光ドラム8の当接タイミングを任意に決定することができる。画像形成装置1は、モータ51を制御する制御部50を有する(図14図16)。制御部50は、画像形成装置1の制御プログラムを格納した記憶部と、記憶部から制御プログラムを読み出して実行するプロセッサと、を有する。また、制御部50は、ドア部材13の開閉状態に応じて検知信号が切換わる開閉センサ52と電気的に接続されると共に、ネットワークを介して外部機器と相互に通信可能に接続される。
【0074】
転写ローラ9と感光ドラム8の当接タイミングを制御するには、例えばモータ51と駆動ギア44の間にクラッチを介在させ、制御部50がクラッチを作動させることでモータ51から駆動ギア44への駆動伝達を連結及び連結解除することを可能とする。クラッチとしては、制御部50の指令信号に基づいて作動する電磁クラッチや、制御部50の指令信号に基づいて作動するソレノイドに駆動される噛み合いクラッチを使用することができる。
【0075】
制御部50は、開閉センサ52の検知信号に基づき、ドア部材13が閉じられた状態で外部機器から画像形成の実行指示を受信した場合に、プロセスカートリッジ6の駆動開始等を指示して画像形成動作を開始する。この場合に、制御部50がプロセスカートリッジ6の駆動開始に遅れて駆動ギア44の駆動を開始するように設定できる。
【0076】
例えば、ユーザがドア部材13を開けてプロセスカートリッジ6の交換を行い、ドア部材13を閉じた後に、外部機器から画像形成装置1に対して画像形成の実行指示を投入したとする。この場合、制御部50は、開閉センサ52の検知信号に基づいてドア部材13が閉じられたことを検知した時点ではモータ51に駆動ギア44を駆動させず、転写ローラ9を離間位置に留めておく。その後、画像形成の実行指示が投入されると、制御部50は転写ローラ9の離間状態を維持したままでプロセスカートリッジ6を駆動する。その後、プロセスカートリッジ6の姿勢が安定してからクラッチを接続してモータ51に駆動ギア44を駆動させ、転写ローラ9を感光ドラム8に当接させる。これにより、プロセスカートリッジ6が本来の装着位置からずれている状態で転写ローラ9が感光ドラム8に圧接することでプロセスカートリッジ6が不完全装着状態となる可能性をより確実に回避することができる。なお、モータは、プロセスカートリッジ6の感光ドラム8等を駆動する駆動源を兼ねていてもよい。
【0077】
(その他の実施形態)
実施例1,2では、離間レバー41や離間ロッド42が転写ローラ9を保持する第1軸受21及び第2軸受22を押し下げることで転写ローラ9を離間位置へ移動させている。これに代えて、離間レバー41又は離間ロッド42が直接に転写ローラ9のローラ軸を押圧することで転写ローラ9を離間位置へ移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…画像形成装置/1A…装置本体/6…プロセスカートリッジ/8…像担持体(感光ドラム)/9…転写部材(転写ローラ)/13…開閉部材(ドア部材)/41…第1移動部材(離間レバー)/42…第2移動部材(離間ロッド)/44…駆動部(駆動ギア)/90…移動機構(離間機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16