(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240930BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240930BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20240930BHJP
B65H 29/22 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G15/00 460
G03G21/00 370
B65H29/58 B
B65H29/22
(21)【出願番号】P 2021032091
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045179(JP,A)
【文献】特開2017-052595(JP,A)
【文献】特開2013-190817(JP,A)
【文献】特開2000-321827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
B65H 29/58
B65H 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、シートを第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向にシートを反転搬送する反転ローラ対と、
第1回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第1方向に搬送させ、第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第2方向に搬送させる反転モータと、
第1の長さのシートを搬送する第1搬送モードと、前記第1の長さよりも短い第2の長さのシートを搬送する第2搬送モードと、を有し、前記反転モータ
の回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1搬送モードにおいて、
シートの先端が前記反転ローラ対に到達する前に、前記反転モータを回転停止状態から前記第1回転方向に所定速度へ加速させ、その後、前記シートの先端が前記反転ローラ対に到達し、かつ、前記シートの後端が前記画像形成部を通過した後に、前記第1回転方向に回転する前記反転モータを前記所定速度から前記所定速度よりも速い第1速度へ加速させ、
前記第2搬送モードにおいて、
シートの先端が前記反転ローラ対に到達する前に、前記反転モータを回転停止状態から前記第1回転方向に前記第1速度よりも遅い第2速度へ加速させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定速度は、前記画像形成部によって画像が形成されている最中のシートの搬送速度に対応するプロセス速度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
シート搬送方向における前記画像形成部と前記反転ローラ対との間の距離は、前記第1の長さよりも短く、前記第2の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記反転ローラ対は、前記第1搬送モードにおいて、シートの先端が前記反転ローラ対に到達したときに前記所定速度で駆動し、前記第2搬送モードにおいて、シートの先端が前記反転ローラ対に到達したときに前記第
2速度で駆動している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1
搬送モード及び前記第2
搬送モードは、前記画像形成部によって画像が形成された第1面を、前記反転ローラ対によるスイッチバックによって上面側から下面側に入れ替えて排出されるシートに対して実行される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1搬送モードにおいて、シートを
反転させるために一度停止した前記反転モータを前記第2回転方向に第1排出速度へ加速さ
せ、前記第2搬送モードにおいて、シートを
反転させるために一度停止した前記反転モータを前記第2回転方向に前記第1排出速度よりも遅い第2排出速度へ加速させ
る、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、シートに転写されたトナー像を定着ニップ部においてシートに定着させる定着部を含み、
前記制御部は、
前記第1搬送モードにおいて、シートの後端が前記定着ニップ部を抜けた後に、
前記反転モータを前記所定速度から前記第1速度に加速させる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成部は、
トナー像が定着されたシー
トを冷却させる冷却部を含み、
前記制御部は、シートの後端が前記冷却部を抜けた後に、
前記反転モータを前記所定速度から前記第1速度に加速させる、
ことを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、シートを第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向にシートを反転搬送する反転ローラ対と、
第1回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第1方向に搬送させ、第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第2方向に搬送させる反転モータと、
第1の長さ
かつ第1の坪量を有するシートを搬送する第1搬送モードと、前記第1の長さよりも短い第2の長さ
かつ前記第1の坪量を有するシートを搬送する第2搬送モードと、を有し、前記反転モータ
の回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1搬送モードにおいて、
前記反転ローラ対にシートの先端が到達したときに前記反転モータが前記第1回転方向に第1速度で回転するように前記反転モータを制御し、
前記第2搬送モードにおいて、前記反転ローラ対にシートの先端が到達したときに前記反転モータが前記第1回転方向に前記第1速度よりも遅い第2速度で回転するように前記反転モータを制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、画像形成後のシートをスイッチバックすることで表裏面を反転させ、シートを排出させる構成が知られている。スイッチバックは、シートを第1方向に搬送した後に一度停止させ、その後シートを第1方向とは反対の第2方向に搬送する搬送動作である。このようなスイッチバックにおいては、第2方向に搬送される先行シートに対して、第1方向に搬送される後続シートが衝突すると、先行シート及び後続シートにダメージが発生する虞があるため好ましくない。特に、連続印刷時の紙間を短縮化して生産性を向上しようとすると、シート同士の衝突が発生しやすくなる。
【0003】
従来、反転排紙ローラによってシートをスイッチバックさせる画像形成装置が提案されている。反転排紙ローラは、正転時に所定のタイミングでプロセス速度よりも速い目標速度に増速する。また、反転排紙ローラは、一時停止して逆転すると、前述の目標速度と同じ速度まで増速し、シートの後端が反転排紙ローラのニップ部を通過するまで駆動する。このように、シートを反転排紙ローラによって目標速度まで増速することで、シート同士の衝突の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の反転排紙ローラは、モータの正逆転によって駆動されるが、モータは、正転と逆転とが切換わる際に、モータの動作不良が起こらないように、モータを駆動停止させる所定の停止時間を確保する必要がある。しかしながら、特許文献1のように反転排紙ローラを目標速度まで増速させる構成では、モータを増減速させるための加速時間及び減速時間が余分にかかり、停止時間の確保が難しくなってくる。
【0006】
また、近年では、様々な長さのシートに画像形成可能かつ生産性の高い画像形成装置が望まれている。シート同士の衝突を回避するための条件や、停止時間の確保の条件は、シートの長さによって異なる。
【0007】
そこで、本発明は、シートの長さに依らず、シートへのダメージを抑制しつつ停止時間を確保し、高生産性を実現可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像形成装置において、シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、シートを第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向にシートを反転搬送する反転ローラ対と、第1回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第1方向に搬送させ、第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第2方向に搬送させる反転モータと、第1の長さのシートを搬送する第1搬送モードと、前記第1の長さよりも短い第2の長さのシートを搬送する第2搬送モードと、を有し、前記反転モータの回転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1搬送モードにおいて、シートの先端が前記反転ローラ対に到達する前に、前記反転モータを回転停止状態から前記第1回転方向に所定速度へ加速させ、その後、前記シートの先端が前記反転ローラ対に到達し、かつ、前記シートの後端が前記画像形成部を通過した後に、前記第1回転方向に回転する前記反転モータを前記所定速度から前記所定速度よりも速い第1速度へ加速させ、前記第2搬送モードにおいて、シートの先端が前記反転ローラ対に到達する前に、前記反転モータを回転停止状態から前記第1回転方向に前記第1速度よりも遅い第2速度へ加速させる、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、画像形成装置において、シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像が形成されたシートをスイッチバックするために、シートを第1方向に搬送した後に前記第1方向とは反対の第2方向にシートを反転搬送する反転ローラ対と、第1回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第1方向に搬送させ、第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転することで前記反転ローラ対によってシートを前記第2方向に搬送させる反転モータと、第1の長さかつ第1の坪量を有するシートを搬送する第1搬送モードと、前記第1の長さよりも短い第2の長さかつ前記第1の坪量を有するシートを搬送する第2搬送モードと、を有し、前記反転モータの回転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1搬送モードにおいて、前記反転ローラ対にシートの先端が到達したときに前記反転モータが前記第1回転方向に第1速度で回転するように前記反転モータを制御し、前記第2搬送モードにおいて、前記反転ローラ対にシートの先端が到達したときに前記反転モータが前記第1回転方向に前記第1速度よりも遅い第2速度で回転するように前記反転モータを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、シートの長さに依らず、シートへのダメージを抑制しつつ停止時間を確保し、高生産性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
【
図2】分岐搬送ユニット及び反転搬送ユニットを示す模式図。
【
図4】(a)は第1駆動線図を示すグラフ、(b)は第2駆動線図を示すグラフ。
【
図5】(a)は第1駆動線図において正転時に反転モータが駆動している時間を示すグラフ、(b)は第2駆動線図において正転時に反転モータが駆動している時間を示すグラフ。
【
図6】第1駆動線図において逆転時に反転モータが駆動している時間を示すグラフ。
【
図8】シート搬送制御を示すフローチャートの続き。
【
図11】第2の実施の形態に係る第1搬送制御を示すフローチャート。
【
図12】第2の実施の形態に係る第2搬送制御を示すフローチャート。
【
図13】第3の実施の形態に係るプリンタを示す全体略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
〔全体構成〕
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。画像形成装置としてのプリンタ1は、電子写真方式かつ中間転写タンデム方式のフルカラーレーザビームプリンタである。中間転写タンデム方式は直接転写方式のようにシ-トを転写ドラムや転写ベルト上に保持する必要がないため、超厚紙やコート紙等の多種多様な転写材に対応できる。また、中間転写タンデム方式は、複数の画像形成部における並列処理およびフルカラー画像の一括転写という特長から高生産性の実現に適している。
【0013】
プリンタ1は、
図1に示すように、給送ユニット10と、引き抜きユニット20と、搬送ユニット30,40と、画像形成ユニット50と、定着器58と、分岐搬送ユニット60と、を有している。更に、プリンタ1は、反転搬送ユニット70と、反転引込ユニット80と、両面搬送ユニット90と、を有している。
【0014】
画像形成ユニット50は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4つのプロセスカートリッジ51Y,51M,51C,51Bkと、露光装置52Y,52M,52C,52Bkと、を備えている。なお、4つのプロセスカートリッジ51Y,51M,51C,51Bkは、形成する画像の色が異なること以外は同じ構成である。このため、プロセスカートリッジ51Yの構成及び画像形成プロセスのみを説明し、プロセスカートリッジ51M,51C,51Bkの説明は省略する。
【0015】
プロセスカートリッジ51Yは、感光ドラム52と、不図示の帯電ローラと、現像器53と、クリーナ54と、を有している。感光ドラム52は、アルミシリンダの外周に有機光導電層を塗布して構成され、不図示の駆動モータによって回転する。また、画像形成ユニット50には、駆動ローラ42によって矢印B方向に回転する中間転写ベルト501が設けられ、中間転写ベルト501は、テンションローラ502、駆動ローラ503及び2次転写内ローラ504に巻き掛けられている。中間転写ベルト501の内側には、1次転写ローラ55Y、55M、55C、55Bkが設けられており、中間転写ベルト501の外側には、2次転写内ローラ504に対向して2次転写外ローラ56が設けられている。
【0016】
定着器58は、シートを挟持して搬送する定着部としての定着ニップ部58aを有している。給送ユニット10は、シートSを積載しつつ昇降するリフト板11と、リフト板11に積載されたシートSを給送する給送部12と、を有している。本実施の形態では、給送部12は、エアによってシートを吸引して、1枚ずつに分離しつつ搬送するエア搬送方式を採用しているが、これに限定されない。例えば、給送部12は、ピックアップローラ等によってシートを搬送するローラ搬送方式や、静電気力によってシートを吸着して搬送する静電吸着方式等を採用してもよい。
【0017】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号が露光装置52Yに入力されると、露光装置52Yから、画像信号に対応したレーザ光がプロセスカートリッジ51Yの感光ドラム52上に照射される。
【0018】
このとき感光ドラム52は、帯電ローラにより表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、露光装置52Yからミラーを介してレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。感光ドラム52に形成された静電潜像は、現像器53により現像され、感光ドラム52上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。
【0019】
同様にして、プロセスカートリッジ51M,51C,51Bkの各感光ドラムにも露光装置52M,52C,52Bkからレーザ光が照射され、各感光ドラムにマゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のトナー像が形成される。各感光ドラム上に形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ55Y、55M、55C、55Bkにより中間転写ベルト501に転写される。そして、フルカラーのトナー像は、駆動ローラ503によって回転する中間転写ベルト501により2次転写内ローラ504及び2次転写外ローラ56によって形成される2次転写ニップT2まで搬送される。感光ドラム52に残ったトナーは、クリーナ54によって回収される。なお、各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト501上に1次転写された上流のトナー像に重ね合わせるタイミングで行われる。
【0020】
この画像形成プロセスに並行して、給送ユニット10からシートSが給送され、引き抜きユニット20及び搬送ユニット30,40によってシートSはレジストレーションローラ対7に搬送される。シートSは、レジストレーションユニット40により斜行が補正され、所定の搬送タイミングで2次転写ニップT2に搬送される。シートSの第1面(表面)には、2次転写外ローラ56に印加された2次転写バイアスによって、中間転写ベルト501上のフルカラーのトナー像が転写される。中間転写ベルト501上に残存した残存トナーは、ベルトクリーナ2によって回収される。
【0021】
トナー像が転写されたシートSは、定着前搬送部57によって定着器58に搬送される。そして、シートSは、定着器58の定着ニップ部58aに案内され、所定の熱及び圧力が付与されてトナーが溶融固着(定着)される。定着器58を通過したシートSは、分岐搬送ユニット60によって、排出トレイ500に搬送されるか反転搬送ユニット70に搬送されるかの経路選択が行われる。なお、反転搬送ユニット70にシートSが搬送された後、2次転写ニップT2で画像が形成された第1面が下側となるようにシートSを反転させ、排出トレイ500にシートSを搬送する、いわゆるフェイスダウン搬送を実行することもできる。
【0022】
シートSの片面のみに画像を形成する場合には、シートSは分岐搬送ユニット60から排出トレイ500に搬送される。シートSの両面に画像形成する場合には、シートSは分岐搬送ユニット60によって反転搬送ユニット70に搬送され、反転引込ユニット80まで引き込まれる。そして、シートSは、反転搬送ユニット70及び反転引込ユニット80によってスイッチバックされる。スイッチバックされたシートSは、反転搬送ユニット70から両面搬送ユニット90に搬送され、引き抜きユニット20に案内される。この後、シートSは、2次転写ニップT2において第2面(裏面)に画像が形成され、排出トレイ500に排出される。
【0023】
[分岐搬送ユニット及び反転搬送ユニットの構成]
次に、分岐搬送ユニット60及び反転搬送ユニット70の構成について説明する。分岐搬送ユニット60は、
図2に示すように、定着器58によって搬送されたシートSを案内する入口搬送路61と、入口搬送路61から直線的に続くストレート搬送路63と、を有している。また、分岐搬送ユニット60は、ストレート搬送路63から直線的に続く反転合流路68と、入口搬送路61のシート搬送方向における下流端から、ストレート搬送路63と異なる方向に分岐する反転前搬送路64と、を有している。また、分岐搬送ユニット60は、反転前搬送路64から下方に延びる反転搬送路71と、反転搬送路71と反転合流路68とを接続する反転後搬送路66と、を有している。
【0024】
ストレート搬送路63と反転前搬送路64との分岐部分には、第1切換部材62が設けられ、第1切換部材62は、入口搬送路61を通過するシートSをストレート搬送路63に案内する位置と、反転前搬送路64に案内する位置と、に切換え可能である。第1切換部材62は、切換モータ238によって駆動される。
【0025】
反転前搬送路64と反転後搬送路66との分岐部分には、第2切換部材65が設けられ、第2切換部材65は、反転搬送路71を通過するシートSを反転後搬送路66に案内するように付勢部材65aによって位置決めされた状態で付勢されている。シートSが入口搬送路61から反転前搬送路64に搬送された場合には、シートSは、付勢部材65aの付勢力に抗して、第2切換部材65を押圧しつつ反転搬送路71に進む。
【0026】
入口搬送路61には、第1引込モータ231によって駆動する第1引込ローラ対201と、シート搬送方向において第1引込ローラ対201の下流に配置される第1検知部221と、が設けられている。反転前搬送路64には、第2引込モータ232によって駆動する第2引込ローラ対202及び第3引込ローラ対203と、シート搬送方向において第2引込ローラ対202と第3引込ローラ対203との間に配置される第2検知部222と、が設けられている。
【0027】
反転搬送路71には、正逆回転可能かつシートSをスイッチバック可能な反転ローラ対72が設けられ、反転ローラ対72は、反転モータ234によって駆動される。反転後搬送路66には、シートSを反転合流路68に向けて搬送する搬送ローラ対205,206が設けられており、これら搬送ローラ対205,206は、搬送モータ235によって駆動される。また、反転後搬送路66には、シート搬送方向において搬送ローラ対205,206の間に配置される第3検知部223が設けられている。反転合流路68には、排出モータ237によって駆動される排出ローラ対207が設けられている。第1検知部221、第2検知部222及び第3検知部223は、各検知位置においてシートを検知する。
【0028】
[制御ブロック]
図3は、プリンタ1の制御ブロックを示すブロック図である。
図3に示すように、プリンタ1は、制御部600を有しており、制御部600は、CPU601と、RAM602と、ROM603と、を有している。CPU601は、ROM603から各種のプログラムを読み出し、これらのプログラムを実行する。RAM602は、CPU601の作業領域として使用される。制御部600は、I/O604を介して、外部のPCや他の機器に接続可能である。
【0029】
CPU601は、操作パネル等を有する操作部412に接続されており、操作部412によって、ユーザは各種設定の変更やプリントジョブ等の指令を出すことができる。CPU601は、A/D変換部610を介して、第1検知部221、第2検知部222及び第3検知部223に接続されている。また、CPU601は、ドライバ620を介して、第1引込モータ231、第2引込モータ232、切換モータ238、反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237に接続されている。
【0030】
[反転モータの制御]
次に、シートSをスイッチバックさせる反転ローラ対72の動作を司る反転モータ234の制御について説明する。CPU601は、反転ローラ対72によってスイッチバック動作を行うために、まず反転モータ234を正転、すなわち第1回転方向に回転させる。これにより、
図2に示すように、シートSが反転ローラ対72によって第1方向D1に搬送される。そして、CPU601は、一度反転ローラ対72を停止させるために、反転モータ234を停止させる。その後、CPU601は、反転モータ234を逆転、すなわち第1回転方向とは反対の第2回転方向にさせ、反転ローラ対72によって第1方向D1とは反対の第2方向D2にシートSを反転搬送する。
【0031】
このように、反転モータ234は、正転と逆転とが切換わる際に、反転モータ234の動作不良が起こらないように、反転モータ234を駆動停止させる所定の停止時間を確保する必要がある。この停止時間をある程度確保しておかなければ、反転モータ234の動作に不具合が生じ、反転モータ234の動作不良がおこってしまう。加えて、反転モータ234の速度の切り替え、及び、立ち上げ、停止動作には、必ず加速時間、減速時間が必要であり、これらの時間の確保を行わなければ、停止時間と同様に、反転モータ234の動作不良に陥ってしまう。
【0032】
更に、スイッチバック動作時の先行シート及び後続シートの衝突を回避するため、先行シートは可能な限りスイッチバックを早く完了することが望ましい。そのため、なるべく早くシートSの速度を増速させて、スイッチバックを早く終える制御が実施される。しかしながら、画像形成部としての画像形成ユニット50は、画像品位の観点で高速搬送することが難しいため、反転モータ234が増速するタイミングは、シートSの後端が画像形成ユニット50を抜けた直後のタイミングである。
【0033】
本実施の形態のプリンタ1は、長さの異なる様々なサイズのシートに対して画像形成することができる。このため、長さの長いシートほど、先端がシート搬送方向下流に位置している状態で、反転モータ234の増速が開始される。例えば、第1の長さのシート(以下、長尺シートとする)は、先端が第1位置に位置する状態で増速開始される。第1の長さよりも短い第2の長さのシート(以下、短尺シートとする)は、先端がシート搬送方向において第1位置よりも上流の第2位置に位置する状態で増速開始される。このように、シートSの先端を基準に考えると、シートSの増速ポイントは、シートサイズによって異なる。
【0034】
また、本実施の形態の画像形成ユニット50は、定着器58を含み、定着器58の定着ニップ部58aをシートSの後端が抜けた後に、反転モータ234をプロセス速度Vpから増速させることができる。所定速度としてのプロセス速度Vpは、2次転写ニップT2におけるシートSの搬送速度、すなわち画像形成ユニット50によって画像が形成されている最中のシートの搬送速度に対応する速度である。なお、本実施の形態では、シートSの後端が定着ニップ部58aを抜けて距離Cだけ進んだ位置で、反転モータ234が増速されるように設定されている。距離Cは、シートの長さばらつき、シート検知センサ(不図示)での検知バラツキを考慮したものであり、シートSの後端が確実に定着ニップ部58aを抜けるためのマージンである。
【0035】
本実施の形態では、画像形成ユニット50、すなわち定着ニップ部58aと反転ローラ対72のニップとの間の距離は、プリンタ1が仕様上搬送可能なシートの最大長さよりも短くなっている。より詳しくは、定着ニップ部58aと反転ローラ対72のニップとの間の距離は、上記長尺シートの長さ(第1の長さ)よりも短く、上記短尺シートの長さ(第2の長さ)よりも長い。
【0036】
このため、長尺シートが搬送される場合には、反転ローラ対72がシートを受け取る際に、このシートはまだ定着ニップ部58aに挟持されている状態である。よって、長尺シートを受け取る際の反転モータ234の速度Vf1は、プロセス速度Vpと等しい(Vf1=Vp)。そして、反転モータ234は、長尺シートの後端が定着ニップ部58aを抜けて距離Cだけ搬送された後、プロセス速度Vpから第1目標速度Va1へ増速される(Vf1=Vp<Va1)。
【0037】
一方で、短尺シートが搬送される場合には、反転ローラ対72がシートを受け取る際に、このシートは既に定着ニップ部58aを抜けた状態である。よって、短尺シートを受け取る際の反転モータ234の速度Vf2は、プロセス速度Vpよりも速い第2目標速度Va2とすることができる(Vf2=Va2>Vp)。
【0038】
なお、以下では、説明の簡便化のために、反転モータ234の速度の表記と、その時のシートの搬送速度の表記を同じにする。例えば、反転モータ234が第1目標速度Va1で駆動しているときのシートの搬送速度は、第1目標速度Va1であるとする。すなわち、各モータの速度は、各モータによって駆動されるローラの周速であるとする。
【0039】
本実施の形態では、長尺シートを搬送するための反転モータ234の駆動線図を
図4(a)に示す第1駆動線図とし、短尺シートを搬送するための反転モータ234の駆動線図を
図4(b)に示す第2駆動線図とする。
図4(a)に示すように、長尺シートを搬送する場合、反転モータ234は、シートを受け取るためにプロセス速度Vp(=Vf1)まで増速され、プロセス速度Vpが所定時間維持される。そして、反転モータ234は、長尺シートの後端が定着ニップ部58aを抜けて距離Cだけ搬送された後、第1目標速度Va1まで増速され、第1目標速度Va1が所定時間維持される。
【0040】
その後、長尺シートの後端が第2切換部材65を抜けたタイミングで反転モータ234を反転できるように、反転モータ234は減速される。そして、反転モータ234は、所定の停止時間Trだけ停止した後、逆転駆動され、第1排出速度Vr1まで増速される。反転モータ234は、後端が反転ローラ対72を抜けたところで駆動停止される。
【0041】
図4(b)に示すように、短尺シートを搬送する場合、反転モータ234は、シートを受け取るために第2目標速度Va2(>Vp)まで増速される。反転ローラ対72がシートを受け取った後、反転モータ234は、第2目標速度Va2で所定時間維持される。
【0042】
その後、短尺シートの後端が第2切換部材65を抜けたタイミングで反転モータ234を反転できるように、反転モータ234は減速される。そして、反転モータ234は、所定の停止時間Trだけ停止した後、逆転駆動され、第2排出速度Vr2まで増速される。反転モータ234は、後端が反転ローラ対72を抜けたところで駆動停止される。
【0043】
[駆動線図の成立性]
次に、各駆動線図の成立性の観点から、第1目標速度Va1、第2目標速度Va2、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2をどのような値に設定するのが好ましいのか考える。
【0044】
プリンタ1の生産性が決定されると、シート1枚をスイッチバックさせるのに反転モータ234が掛けることのできる時間Tpが決定される。この時間Tpは、1枚のシートをスイッチバックさせるのに反転モータ234が駆動している時間Tk(停止時間Trを含む)と、次のシートのために反転モータ234を休ませる休止時間Tsと、を含む。休止時間Tsを確保するためには、時間Tkは可能な限り短い方が好ましい。
【0045】
以下では、長尺シートにおける時間Tkを時間Tk1、短尺シートにおける時間Tkを時間Tk2とする。また、
図5(a)(b)に示すように、時間Tk1,Tk2を分解・単純化して、時間Tk1,Tk2を以下の(1)(2)の式に示す。なお、単純化のため、低速(Vp)から高速(Va1)へ移行する加速時間は低速搬送時間へ、排出時の加速時間は排出時間に含める。
Tk1=(加速時間)+(低速搬送時間)+(高速搬送時間)+(回転方向切換時間)+(排出時間)+(減速時間)
=(Vp/a)+(L1/Vp)+(L2/Va1)+(Tr)+(L3/Vr1)+(Vr1/d) ・・・・(1)
Tk2=(加速時間)+(高速搬送時間)+(回転方向切換時間)+(排出時間)+(減速時間)
=(Va2/a)+(L2/Va2)+(Tr)+(L3/Vr2)+(Vr2/d) ・・・・(2)
Vp:プロセス速度
a:加速度
d:原則度
L1:低速で搬送する距離
L2:高速で搬送する距離
L3:排出時の搬送距離
Va1:第1目標速度
Va2:第2目標速度
Vr1:第1排出速度
Vr2:第2排出速度
Tr:停止時間
【0046】
ここで加速度a、減速度d及び停止時間Trは、反転モータ234の性能上ある一定の値に決定される定数、L1~L3はシート長さが決定されると決まる定数、プロセス速度Vpは画像形成条件で一律に決まる定数であるため、変数としては、扱われない。すなわち、変更可能なパラメータとしては、第1目標速度Va1、第2目標速度Va2、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2があげられる。
【0047】
まず、時間Tk1について、第1目標速度Va1に着目し、かつ第1排出速度Vr1を一定として考える。すると、時間Tk1は、第1目標速度Va1に対して、反比例する項(L2/Va1)を有し、その他の項は定数としてみなすことができる。すると、横軸をVa1、縦軸をTk1として、反比例する項(L2/Va1)を
図5(a)のようにあらわすことができる。すなわち、時間Tk1は、第1目標速度Va1を増加させるほど小さくなる。
【0048】
次に、時間Tk2について、第2目標速度Va2に着目し、かつ第2排出速度Vr2を一定として考える。すると、時間Tk2は、第2目標速度Va2に対して、比例する項(Va2/a)と、反比例する項(L2/Va2)と、を有し、その他の項は定数としてみなすことができる。すると、横軸をVa2、縦軸をTk2として、(Va2/a)+(L2/Va2)を
図5(b)のようにあらわすことができる。すなわち、時間Tk2は、第2目標速度Va2を増加させていくと、段々と小さくなり、Va2=g2の時に、値f2で極小となる。そして、時間Tk2は、第2目標速度Va2を値g2よりも更に増加させると、段々と大きくなる。
【0049】
従って、長尺シートを搬送する際の時間Tk1は、第1目標速度Va1を増加させるほど小さくなるが、短尺シートを搬送する際の時間Tk2は、第2目標速度Va2を増加させすぎると大きくなってしまう。このため、本実施の形態では、第1目標速度Va1を、第2目標速度Va2よりも小さく設定している(Va1>Va2)。
【0050】
これにより、時間Tk1が短くなり、長尺シートを搬送する際の生産性を向上することができる。また、長尺シートは、先述したように短尺シートよりも増速ポイントがシート搬送方向における下流となっているが、第1目標速度Va1は第2目標速度Va2よりも速いので、シート同士の衝突を抑制することができる。このため、シートへのダメージを低減できる。
【0051】
第1目標速度Va1を高い値に設定すると第1目標速度Va1まで増速する時間及び第1目標速度Va1から減速するための時間が多く必要となってしまうが、長尺シートを反転ローラ対72が受け取るときには、反転モータ234はプロセス速度Vpである。このため、第1目標速度Va1を高い値に設定することによる停止時間Tr及び休止時間Tsへの影響が少なく、停止時間Tr及び休止時間Tsを十分に確保することができ、反転モータ234の動作不良を低減できる。
【0052】
一方で、短尺シートを反転ローラ対72が受け取るときには、反転モータ234は、プロセス速度Vpよりも速い第2目標速度Va2まで増速されている。このため、短尺シートを搬送する場合には、第2目標速度Va2を第1目標速度Va1のように高い値に設定すると、停止時間Tr及び休止時間Tsへの影響が出てきてしまう。そこで、第2目標速度Va2を第1目標速度Va1よりも遅くすることで、停止時間Tr及び休止時間Tsを十分に確保することができ、反転モータ234の動作不良を低減できる。また、反転ローラ対72は、反転モータ234がプロセス速度Vpよりも速い第2目標速度Va2で駆動された状態で短尺シートを受け取るので、生産性を向上できる。
【0053】
次に、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2を一定として考える。この時、時間Tk1は、第1排出速度Vr1に対して、反比例する項(L3/Vr1)と、比例する項(Vr1/d)と、を有し、その他の項は定数としてみなすことができる。同様に、時間Tk2は、第2排出速度Vr2に対して、反比例する項(L3/Vr2)と、比例する項(Vr2/d)と、を有し、その他の項は定数としてみなすことができる。
【0054】
すると、横軸をVa1、縦軸をTk1として、(L3/Vr1)+(Vr1/d)を
図6のようにあらわすことができる。すなわち、時間Tk1は、第1排出速度Vr1を増加させていくと、段々と小さくなり、Vr1=g3の時に、時間f3で極小となる。そして、時間Tk1は、第1排出速度Vr1を値g3よりも更に増加させると、段々と大きくなる。なお、(L3/Vr2)+(Vr2/d)についても、
図6に示す(L3/Vr1)+(Vr1/d)と同様であり、時間Tk2も時間Tk1と同様の傾向を有する。
【0055】
従って、時間Tk1,Tk2は、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2のそれぞれを大きくしすぎると、大きくなってしまう。一方で、シート同士の衝突に関しては、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2を大きくする方が有利である。
【0056】
短尺シートよりも長尺シートの方が、増速ポイントが遅い点、並びに反転搬送路71を搬送される距離が長い点から、シートが長いほどシート同士の衝突は起こりやすくなる傾向がある。このため、特に長尺シートを搬送する場合においては、第1駆動線図が成立する範囲内、すなわち停止時間Tr及び休止時間Tsを確保できる範囲であれば、第1排出速度Vr1を早くすることでシート同士の衝突を抑制できる。そこで、本実施の形態では、第1排出速度Vr1を、第2排出速度Vr2よりも速くなるように設定している。
【0057】
[シート搬送制御]
次に、プリントジョブに係るシート搬送制御について
図7乃至
図10のフローチャートを用いて説明する。
図7に示すように、ユーザは、操作部412の操作により、シートの坪量、サイズ、動作モード(フェイスアップ印刷、フェイスダウン印刷、両面印刷等)、印刷枚数(K枚)等を入力し、印刷ジョブを開始させる(ステップS1)。なお、ステップS1における操作は、プリンタ1に接続された外部のPCやスマートフォン等から行ってもよい。
【0058】
印刷ジョブが開始されると、給送部12によってN枚目のシートの給送が行われる(ステップS2)。なお、印刷ジョブの最初のシートの場合には、N=1枚目のシートの給送が行われる。次に、制御部600は、画像形成ユニット50によってシートの1面目に画像を形成する(ステップS3)。そして、制御部600は、第1引込モータ231及び第2引込モータ232をプロセス速度Vpで駆動させ、第1引込ローラ対201、第2引込ローラ対202及び第2引込ローラ対203を回転させる(ステップS4)。
【0059】
次に、制御部600は、搬送されるシートが第1検知部221をONしたか否か、すなわち、シートの先端が第1検知部221に到達したか否かを判断する(ステップS5)。第1検知部221がONとなった場合(ステップS5:Yes)、制御部600は、搬送されているシートが1面目の画像形成に係る搬送中か否か、すなわち、シートが反転されていないか否かを判断する(ステップS6)。
【0060】
1面目の画像形成に係る搬送中であると判断された場合(ステップS6:Yes)、制御部600は、この印刷ジョブがフェイスアップ印刷に設定されているか否かを判断する(ステップS7)。フェイスアップ印刷に設定されている場合(ステップS7:Yes)、若しくはステップS6において1面目の画像形成に係る搬送中ではないと判断された場合(ステップS6:No)、ステップS11に進む。制御部600は、ステップS11において、第1切換部材62をストレート搬送路63側に駆動する(ステップS11)。
【0061】
そして、シートは、ストレート搬送路63から反転合流路68に受け渡され、排出ローラ対207によって排出トレイ500に排出される(ステップS12)。次に、制御部600は、排出されたシート(すなわちN枚目のシート)がジョブの最後のシートであるK枚目のシートか否かを判断する(ステップS13)。K枚目のシートであると判断された場合(ステップS13:Yes)、ジョブを終了する。K枚目のシートではないと判断された場合(ステップS13:No)、制御部600は、Nに1をインクリメントし(ステップS14)、ステップS2に戻る。
【0062】
ステップS7においてフェイスアップ印刷に設定されていない場合(ステップS7:No)、制御部600は、第1切換部材62を反転前搬送路64側へ駆動する(ステップS8)。次に、制御部600は、搬送されるシートが第2検知部222をONしたか否か、すなわち、シートの先端が第2検知部222に到達したか否かを判断する(ステップS9)。第2検知部222がONとなった場合(ステップS9:Yes)、制御部600は、この印刷ジョブがフェイスダウン印刷に設定されているか否かを判断する(ステップS10)。フェイスダウン印刷においては、画像形成ユニット50によって画像が形成された第1面を、反転ローラ対72によるスイッチバックによって上面側から下面側に入れ替えて排出される。
【0063】
フェイスダウン印刷に設定されていない場合(ステップS10:No)、制御部600は、シートを両面搬送ユニット90へ搬送し(ステップS15)、ステップS3に戻る。すなわち、シートは、第2面に画像が形成され、上述したステップS3~S6,S11~S12を経て排出トレイ500に排出される。
【0064】
ステップS10においてフェイスダウン印刷に設定されている場合(ステップS10:Yes)、
図8に示すように、制御部600は、シートの長さが所定の長さLより大きいか否かを判断する(ステップS16)。そして、シートの長さが所定長さL以上の場合(ステップS16:Yes)、制御部600は、第1搬送モードとしての第1搬送制御を実行する(ステップS20)。また、シートの長さが所定長さL未満の場合(ステップS16:No)、制御部600は、第2搬送モードとしての第2搬送制御を実行する(ステップS40)。言い換えれば、所定長さL以上のシートを長尺シート、所定長さL未満のシートを短尺シートとした場合、長尺シートが搬送される場合には第1搬送制御が実行され、短尺シートが搬送される場合には第2搬送制御が実行される。これら第1搬送制御及び第2搬送制御については、後述する。
【0065】
第1搬送制御又は第2搬送制御が完了してシートが排出トレイ500に排出されると、制御部600は、排出されたシート(すなわちN枚目のシート)がジョブの最後のシートであるK枚目のシートか否かを判断する(ステップS17)。K枚目のシートであると判断された場合(ステップS17:Yes)、ジョブを終了する。K枚目のシートではないと判断された場合(ステップS17:No)、制御部600は、Nに1をインクリメントし(ステップS18)、ステップS2に戻る。
[第1搬送制御]
【0066】
次に、第1搬送制御について、
図9のフローチャートに沿って説明する。第1搬送制御は、上述したように、フェイスダウン印刷において、分岐搬送ユニット60及び反転搬送ユニット70での、長尺シートに対する搬送制御である。
【0067】
図9に示すように、第1搬送制御が開始されると、制御部600は、反転モータ234をプロセス速度Vpで駆動する(ステップS21)。そして、制御部600は、シートを増速開始するタイミングまでのディレイ時間をカウントし、ディレイ時間が経過後、第1引込モータ231、第2引込モータ232及び反転モータ234を第1目標速度Va1まで加速させる(ステップS22,S23)。なお、ディレイ時間が経過したタイミングは、シートの後端が定着ニップ部58aを抜けて距離Cだけ搬送された後、すなわちシートの後端が画像形成ユニット50を抜けた後のタイミングである。なお、距離Cは、任意に設定して良い。ステップS22,S23は、第1加速制御を構成する。
【0068】
長尺シートが搬送される第1搬送制御において、反転ローラ対72がシートを受け取る際に、このシートはまだ定着ニップ部58aに挟持されている状態である。よって、長尺シートの先端が反転ローラ対72に到達した時の反転モータ234の速度Vf1は、プロセス速度Vpと等しい。
【0069】
次に、制御部600は、シートの後端が第3引込ローラ対203を抜けたか否かを判断する(ステップS24)。シートの後端が第3引込ローラ対203を抜けたと判断された場合(ステップS23:Yes)、制御部600は、第1引込モータ231及び第2引込モータ232をプロセス速度Vpに戻す。第1引込モータ231及び第2引込モータ232をプロセス速度Vpに戻すのは、次のシートの搬送に備えるためである。
【0070】
なお、制御部600は、シートの後端が第1引込ローラ対201を抜けたら第1引込モータ231をプロセス速度Vpに戻し、その後、シートの後端が第3引込ローラ対203を抜けたら第2引込モータ232をプロセス速度Vpに戻してもよい。
【0071】
次に、制御部600は、シートの後端が第2切換部材65を抜けたか否かを判断する(ステップS26)。シートの後端が第2切換部材65を抜けたと判断されると(ステップS26:Yes)、制御部600は、反転モータ234を停止させる(ステップS27)。そして、制御部600は、停止時間Trをカウントし、停止時間Trが経過後、反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237を第1排出速度Vr1で逆転方向(第2回転方向)に駆動する(ステップS28,S29)。反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237の逆転方向(第2回転方向)への駆動により、シートは、反転後搬送路66を排出ローラ対207へ向けて搬送される。
【0072】
なお、ステップS27~S29は、シートをスイッチバックさせるために一度停止した反転モータ234を第2回転方向に第1排出速度Vr1へ加速させる第1排出制御を構成する。
【0073】
次に、制御部600は、シートの後端が反転ローラ対72を抜けたか否かを判断する(ステップS30)。シートの後端が反転ローラ対72を抜けたと判断されると(ステップS30:Yes)、制御部600は、反転モータ234を停止させる(ステップS31)。そして、制御部600は、シートの後端が搬送ローラ対206を抜けたか否かを判断する(ステップS32)。シートの後端が搬送ローラ対206を抜けたと判断されると(ステップS32:Yes)、制御部600は、搬送モータ235を停止させる(ステップS33)。
【0074】
その後、制御部600は、シートの後端が排出ローラ対207を抜けたか否かを判断する(ステップS34)。シートの後端が排出ローラ対207を抜けたと判断されると(ステップS34:Yes)、シートが排出トレイ500に排出されたとみなして、制御部600は、排出モータ237を停止させる(ステップS35)。以上により、第1搬送制御が終了する。
【0075】
[第2搬送制御]
次に、第2搬送制御について、
図10のフローチャートに沿って説明する。第2搬送制御は、上述したように、フェイスダウン印刷において、分岐搬送ユニット60及び反転搬送ユニット70での、短尺シートに対する搬送制御である。
【0076】
図10に示すように、第2搬送制御が開始されると、制御部600は、シートを増速開始するタイミングまでのディレイ時間をカウントする(ステップS41)。制御部600は、ディレイ時間が経過後、第1引込モータ231及び第2引込モータ232を第2目標速度Va2まで加速させる(ステップS42)。また、制御部600は、反転モータ234を第2目標速度Va2で駆動させる(ステップS43)。なお、ディレイ時間が経過したタイミングは、シートの後端が定着ニップ部58aを抜けて距離Cだけ搬送された後、すなわちシートの後端が画像形成ユニット50を抜けた後のタイミングである。ステップS41,S43は、第2加速制御を構成する。
【0077】
短尺シートが搬送される第2搬送制御において、反転ローラ対72がシートを受け取る際に、このシートの後端は既に定着ニップ部58aを通過している。よって、短尺シートの先端が反転ローラ対72に到達した時の反転モータ234の速度Vf2を、プロセス速度Vpよりも速い第2目標速度Va2とすることができる。
【0078】
なお、距離Cは、任意に設定して良く、第1引込モータ231及び第2引込モータ232を第2目標速度Va2へ加速開始させてから所定時間経過後、反転モータ234を第2目標速度Va2へ加速させてもよい。
【0079】
以下、ステップS44~S48は、
図9で説明した第1搬送制御のステップS24~S28と同様なので、説明を省略する。そして、ステップS48において停止時間Trが経過後、制御部600は、反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237を第2排出速度Vr2で逆転方向(第2回転方向)に駆動する(ステップS49)。反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237の逆転方向への駆動により、シートは、反転後搬送路66を排出ローラ対207へ向けて搬送される。
【0080】
なお、ステップS47~S49は、シートをスイッチバックさせるために一度停止した反転モータ234を第2回転方向に第2排出速度Vr2へ加速させる第2排出制御を構成する。ステップS50~S55についても、
図10で説明した第1搬送制御のステップS30~S35と同様なので、説明を省略する。
【0081】
なお、上述したプリントジョブに係るシート搬送制御については、プリンタ1内で同時に搬送されるシートが1枚の場合を例に説明したが、これに限定されない。すなわち、プリンタ1内に複数のシートが同時に搬送されるように、所定の紙間を空けて連続してシートを給送してもよい。その場合、ステップS13からステップS14へのルート並びにステップS17からステップS18へのルートが削除され、続けてシートが給送されるような処理に修正される。
【0082】
以上のように、本実施の形態では、フェイスダウン印刷する際に、長尺シートに対しては第1搬送制御を実行し、短尺シートに対しては第2搬送制御を実行するように構成した。これは、高生産性のためにシートのスイッチバック前後において反転モータ234を加減速する構成において、シートの長さによって、シートの先端基準での増速ポイントの位置や、スイッチバック時のシート同士の衝突のしやすさが異なるためである。
【0083】
そこで、本実施の形態では、第1搬送制御の第1目標速度Va1及び第1排出速度Vr1を、第2搬送制御の第2目標速度Va2及び第2排出速度Vr2よりもそれぞれ早くなるように設定している。これにより、シートの長さに依らず、シートへのダメージを抑制しつつ反転モータの停止時間を確保し、高生産性を実現できる
【0084】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態のシートの排出速度を、シートの長さに依らず一定としたものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0085】
第1の実施の形態において説明したように、逆転時に反転モータ234が駆動している時間については、反比例する項(例えばL3/Vr1)と、比例する項(例えばVr1/d)と、を有しているため、駆動線図の成立性に関してある適切な速度が存在する。このため、本実施の形態では、シート排出時の反転モータ234の速度を、シートの長さに依らず第3排出速度Vr3としている。第3排出速度Vr3は、
図6に示す値g3と同じであり、この時、逆転時に反転モータ234が駆動している時間は、時間f3で極小となる。
【0086】
図11は、第2の形態における第1搬送制御を示すフローチャートであり、
図12は、第2の形態における第2搬送制御を示すフローチャートである。
図11は、ステップS69以外は、
図9で説明したフローチャートと同じであり、
図12は、ステップS89以外は、
図10で説明したフローチャートと同じである。そして、ステップS69,S89において、制御部600は、反転モータ234、搬送モータ235及び排出モータ237を第3排出速度Vr3で逆転方向(第2回転方向)に駆動する(ステップS69,S89)。
【0087】
以上のように、本実施の形態では、シートの長さに拘わらず、反転モータ234の逆転時の駆動速度を、第3排出速度Vr3に設定した。これにより、停止時間Tr及び休止時間Tsを確保しつつ、高生産性を実現できる。
【0088】
<第3の実施の形態>
次いで、本発明の第3の実施の形態について説明するが、第3の実施の形態は、第1の実施の形態の画像形成部が、冷却部300を含む構成としたものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0089】
近年、生産性の向上に伴い、定着部において熱及び圧力によってトナー像をシートに定着した後、トナー像が冷却される前に搬送ローラ対によってトナー像が挟持されることがある。すると、トナー像に搬送ローラ対のニップの跡が付き、成果物品位の観点から好ましくない。
【0090】
そこで、本実施の形態の画像形成装置としてのプリンタ103は、
図13に示すように、冷却部300を含む画像形成ユニット50Cを有している。冷却部300は、シートを搬送する上ベルト301及び下ベルト302を有しており、2次転写ニップT2によってシートに転写され定着器58によって定着されたトナー像は、上ベルト301に接触する。上ベルト301の内周面は、不図示のヒートシンクによって冷却されるように構成されており、シート上のトナー像は、上ベルト301と接触することで効率的に冷却される。なお、冷却部300は、ヒートシンクのフィンへファンによって送風するように構成されてもよい。また、冷却部300は、上ベルト301を省いて、下ベルト302によって搬送されるシートの上面を、ファンによって起こされた風で冷却してもよい。
【0091】
搬送されるシートは、冷却部300による冷却性能の観点から、シートの後端が冷却部300を通過するまでは増速しない方が好ましい。このため、本実施の形態では、第1引込モータ231、第2引込モータ232及び反転モータ234は、シートの後端が冷却部300を通過して距離Cだけ搬送された後に第1目標速度Va1又は第2目標速度Va2に増速される(
図9及び
図10参照)。本実施の形態でのシートの搬送制御は、第1の実施の形態(
図7~
図10参照)又は第2の実施の形態(
図11~
図12参照)と同様であるため説明を省略する。
【0092】
以上のように、本実施の形態では、画像形成部としての画像形成ユニット50Cが冷却部300を有しているので、効率的にシート上のトナー像を冷却することができ、成果物品位を向上することができる。
【0093】
<その他の実施形態>
なお、第1の実施の形態において、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2と、第1目標速度Va1及び第1目標速度Va2と、の関係については触れなかったが、例えば以下のように設定してもよい。すなわち、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2を、それぞれ第1目標速度Va1及び第1目標速度Va2と等しくしてもよい。これにより、反転モータ234は、第1目標速度Va1及び第1排出速度Vr1が最高駆動速度となり、反転モータ234の性能を有効に利用することができる。また、第1排出速度Vr1及び第2排出速度Vr2と、第1目標速度Va1及び第1目標速度Va2と、をそれぞれ異ならせてもよいことはもちろんである。
【0094】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタ1,103を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。
【0095】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,103:画像形成装置(プリンタ)/50,50C:画像形成部(画像形成ユニット)/58a:定着部(定着ニップ部)/72:反転ローラ対/234:駆動源(反転モータ)/300:冷却部/600:制御部/D1:第1方向/D2:第2方向/Va1:第1目標速度/Va2:第2目標速度/Vp:所定速度/Vr1:第1排出速度/Vr2:第2排出速度