(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】アルミガラスクロステープ及びダクト
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20240930BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20240930BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240930BHJP
B32B 17/02 20060101ALI20240930BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240930BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240930BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20240930BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240930BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C09J7/29
B32B15/20
B32B15/04 B
B32B17/02
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/28
C09J201/00
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2021039940
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-086616(JP,A)
【文献】特開2014-009318(JP,A)
【文献】米国特許第05162150(US,A)
【文献】特表2003-506521(JP,A)
【文献】特開2011-046840(JP,A)
【文献】特表2015-508442(JP,A)
【文献】特開2001-115113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔と、ガラスクロスと、を含むアルミガラスクロス基材と、
粘着剤層と、
を含むアルミガラスクロステープであって、
温度23℃、相対湿度50%における前記アルミガラスクロステープの引張強度が、前記アルミガラスクロステープの長手方向において50~160N/cmであり、前記アルミガラスクロステープの幅手方向において300~400N/cmである、アルミガラスクロステープ。
【請求項2】
前記アルミニウム箔と、前記ガラスクロスとがウレタン系接着剤で接着されている、請求項1に記載のアルミガラスクロステープ。
【請求項3】
前記ウレタン系接着剤の付与量が5~15g/m
2である、請求項2に記載のアルミガラスクロステープ。
【請求項4】
前記ガラスクロスが、前記アルミガラスクロステープの長手方向に沿って配置された第一のガラス繊維束と、前記アルミガラスクロステープの幅手方向に沿って配置された第二のガラス繊維束とが織り込まれて形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアルミガラスクロステープ。
【請求項5】
前記第一のガラス繊維束を構成する第一のガラスフィラメントの直径が4~7μmであり、前記第二のガラス繊維束を構成する第二のガラスフィラメントの直径が7~10μmである、請求項4に記載のアルミガラスクロステープ。
【請求項6】
ダクトシール用のアルミガラスクロステープである、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルミガラスクロステープ。
【請求項7】
請求項6に記載のアルミガラスクロステープが巻き付けられたダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミガラスクロステープ及びダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム箔とガラスクロスとを貼り合わせたアルミガラスクロス基材上に、粘着剤層を積層させて得られるアルミガラスクロステープは、断熱部材の結束、ダクト補修などに広く使われている。しかし、一般的にガラスクロスは、強度は高いが手切れ性が低い、又は手切れ性がない。そのため、アルミガラスクロステープは、その使用時に切断のためにハサミ等を用いる必要があり、作業性が低い。
【0003】
特許文献1及び2には、手切れ性を向上させる観点から、アルミニウム箔と、手切れ性が良好なポリエステルフィルム又は綿布とを貼り合わせた基材上に、粘着剤層を積層させて得られるテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-53208号公報
【文献】特開2010-53206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に開示されたテープは手切れ性が良好であるものの、200℃付近において基材の耐熱性が低い。また、ポリエステルフィルムや綿布はガラスクロスと比較して引張強度が低いため、重量物を結束した際に基材が破断する場合がある。そのため、アルミガラスクロス基材を含むアルミガラスクロステープに良好な手切れ性を付与することが望まれている。
【0006】
本発明は、手切れ性が良好なアルミガラスクロステープ、及び該アルミガラスクロステープが巻き付けられたダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の実施形態を含む。
【0008】
[1]アルミニウム箔と、ガラスクロスと、を含むアルミガラスクロス基材と、
粘着剤層と、
を含むアルミガラスクロステープであって、
温度23℃、相対湿度50%における前記アルミガラスクロステープの引張強度が、前記アルミガラスクロステープの長手方向において50~160N/cmであり、前記アルミガラスクロステープの幅手方向において300~400N/cmである、アルミガラスクロステープ。
【0009】
[2]前記アルミニウム箔と、前記ガラスクロスとがウレタン系接着剤で接着されている、[1]に記載のアルミガラスクロステープ。
【0010】
[3]前記ウレタン系接着剤の付与量が5~15g/m2である、[2]に記載のアルミガラスクロステープ。
【0011】
[4]前記ガラスクロスが、前記アルミガラスクロステープの長手方向に沿って配置された第一のガラス繊維束と、前記アルミガラスクロステープの幅手方向に沿って配置された第二のガラス繊維束とが織り込まれて形成されている、[1]から[3]のいずれかに記載のアルミガラスクロステープ。
【0012】
[5]前記第一のガラス繊維束を構成する第一のガラスフィラメントの直径が4~7μmであり、前記第二のガラス繊維束を構成する第二のガラスフィラメントの直径が7~10μmである、[4]に記載のアルミガラスクロステープ。
【0013】
[6]ダクトシール用のアルミガラスクロステープである、[1]から[5]のいずれかに記載のアルミガラスクロステープ。
【0014】
[7][6]に記載のアルミガラスクロステープが巻き付けられたダクト。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、手切れ性が良好なアルミガラスクロステープ、及び該アルミガラスクロステープが巻き付けられたダクトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[アルミガラスクロステープ]
本実施形態に係るアルミガラスクロステープは、アルミニウム箔及びガラスクロスを含むアルミガラスクロス基材と、粘着剤層と、を含む。ここで、温度23℃、相対湿度50%における前記アルミガラスクロステープの引張強度は、前記アルミガラスクロステープの長手方向において50~160N/cmであり、かつ、前記アルミガラスクロステープの幅手方向において300~400N/cmである。
【0017】
本実施形態に係るアルミガラスクロステープは、アルミガラスクロステープの長手方向(MD方向)の引張強度が前記範囲内であり、かつ、幅手方向(TD方向)の引張強度が前記範囲内であることにより、良好な手切れ性を付与することができる。手切れ性の指標には、切断に要する力の程度を示す「切れやすさ」と、切断時にアルミガラスクロステープの幅手方向に対してどの程度略平行に近く切断できるか、また切断面からのガラス繊維の糸の露出がないかを示す「断面形状」とが挙げられる。本実施形態に係るアルミガラスクロステープでは、アルミガラスクロステープの長手方向の引張強度が前記範囲内であることにより、手で長手方向のガラス繊維に対して垂直に力をかけた際に良好に破断するため、「切れやすさ」が良好になると推測される。また、本実施形態に係るアルミガラスクロステープでは、アルミガラスクロステープの長手方向及び幅手方向の引張強度がそれぞれ前記範囲内であることにより、長手方向のガラス繊維の強度に対して、幅手方向のガラス繊維の強度が高いために、手で荷重をかけた際に幅手方向のガラス繊維の破断は起こらずに、長手方向のガラス繊維が優先的に破断する。したがって、「断面形状」が良好になると推測される。また、幅手方向のガラス繊維の強度が高すぎると、幅手方向に対して垂直な方向の応力が集中し切れやすくなり、手で荷重をかけた際に、長手方向のガラス繊維が複数の列で同時に破断し断面形状が悪化すると推測される。したがって、本実施形態に係るアルミガラスクロステープは「切れやすさ」と「断面形状」の両方が良好となり、結果として良好な手切れ性を実現できると推測される。
【0018】
(アルミニウム箔)
本実施形態に係るアルミニウム箔は特に限定されないが、アルミニウム箔の厚さは、曲面追随性の観点から、5~50μmが好ましく、15~25μmがより好ましい。
【0019】
(ガラスクロス)
本実施形態に係るガラスクロスは、シート状のガラス繊維織布であることができる。例えば、ガラスクロスは、アルミガラスクロステープの長手方向に沿って配置された第一のガラス繊維束と、アルミガラスクロステープの幅手方向に沿って配置された第二のガラス繊維束とが織り込まれて形成されていることができる。すなわち、第一のガラス繊維束と第二のガラス繊維束とは、平面上において直行する方向に織り込まれていることができる。これらのガラス繊維束はガラスヤーンともいうこともできる。また、各ガラス繊維束を構成するガラス繊維をガラスフィラメントという。
【0020】
ガラスフィラメントの種類は特に限定されない。例えば、アルカリ含有率2.0質量%以下のガラス、耐アルカリ性ガラス、耐酸性アルカリ石灰含有ガラス、高強度、高弾性率ガラス、SiO2(53質量%)、Al2O3(15質量%)、CaO(21質量%)、MgO(2質量%)、B2O3(8質量%)、Na2O+K2O(0.3質量%)からなるEガラス、SiO2(64質量%)、Al2O3(25質量%)、MgO(10質量%)、Na2O+K2O(0.3質量%)からなるSガラス、等で構成されるガラスフィラメントを用いることができる。これらのガラスフィラメントは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ガラスフィラメントの直径は、破断しにくく、かつ、しなやかなアルミガラスクロス基材を形成できる観点から3~10μmであることが好ましく、5~9μmであることがより好ましい。また、ガラス繊維束を構成するガラスフィラメントの本数は、50~1500本であることが好ましく、100~1200本がより好ましい。ガラスクロスを構成する長手方向の第一のガラス繊維束、及び幅手方向の第二のガラス繊維束の打ち込み密度は、10~100本/インチが好ましく、20~70本/インチがより好ましい。前記打ち込み密度が10本/インチ以上であることにより、ガラス繊維間の間隔を狭くでき、アルミガラスクロス基材のしなやかさを維持できる。また、前記打ち込み密度が100本/インチ以下であることにより、ガラス繊維の破断時に隣接するガラス繊維の更なる破断を抑制することができる。ガラスクロスの織り方については特に限定されないが、例えば平織り、ななこ織り、朱子織、綾織りなどを用いることができる。ガラスクロスの厚さは、例えば0.12~0.17mmであることができる。
【0022】
本実施形態では、例えば、第一のガラス繊維束、第二のガラス繊維束を構成するガラスフィラメントの直径及び/又は本数を変化させることで、本実施形態に係るアルミガラスクロステープの長手方向及び幅手方向の引張強度を本実施形態の範囲内に調整することができる。前記長手方向及び幅手方向の引張強度を本実施形態の範囲内に調整しやすい観点から、第一のガラス繊維束を構成する第一のガラスフィラメントの直径(d1)は4~7μm、第二のガラス繊維束を構成する第二のガラスフィラメントの直径(d2)は7~10μmであることが好ましい。また、第二のガラスフィラメントの直径(d2)に対する第一のガラスフィラメントの直径(d1)の比(d1/d2)は、0.2~0.9であることが好ましく、0.5~0.8であることがより好ましい。また、第一のガラス繊維束を構成する第一のガラスフィラメントの本数(n1)は100~300本、第二のガラス繊維束を構成する第二のガラスフィラメントの本数(n2)は500~1000本であることが好ましい。また、第二のガラスフィラメントの本数(n2)に対する第一のガラスフィラメントの本数(n1)の比(n1/n2)は、0.05~0.6であることが好ましく、0.1~0.3であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態に係るガラスクロスは、接着剤の濡れ性の観点から、表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理剤としては特に限定されないが、シランカップリング剤を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
(アルミガラスクロス基材)
本実施形態に係るアルミガラスクロス基材は、前記アルミニウム箔と、前記ガラスクロスとを含む。該アルミガラスクロス基材は、アルミニウム箔及びガラスクロスを少なくとも含めばよく、例えば粘着剤層とアルミガラスクロス基材との接着性を改善するためのアンカー層等の他の層をさらに含んでもよい。
【0025】
アルミガラスクロス基材は、例えばアルミニウム箔と、ガラスクロスとを接着剤で接着することで形成することができる。接着剤としては、例えばアクリル接着剤、ポリエステル接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミガラスクロステープの手切れ性がより良好となる観点から、接着剤としてはウレタン系接着剤が好ましい。
【0026】
アルミガラスクロス基材は、例えばアルミニウム箔の一方の面上に前記接着剤をバーコーター等により塗布し、ガラスクロスの一方の面と貼り合わせることで形成することができる。前記接着剤がウレタン系接着剤である場合、ウレタン系接着剤の付与量は、アルミガラスクロステープの手切れ性がより良好となる観点から、5~15g/m2であることが好ましく、7~12g/m2であることがより好ましい。アルミガラスクロス基材の厚みは特に限定されないが、例えば0.12~0.17mmであることができる。
【0027】
(粘着剤層)
本実施形態に係る粘着剤層は、前記アルミガラスクロス基材のガラスクロス表面上に設けることができる。粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されないが、例えば天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミガラスクロステープは耐熱用途に使用されることが多く、耐熱性が高い観点から、粘着剤としてはシリコーン系粘着剤が好ましい。また、粘着剤の剤形としては特に限定されないが、例えば溶剤型、エマルション型、無溶剤型、ホットメルト型等が挙げられる。
【0028】
粘着剤層は、例えばアルミガラスクロス基材のガラスクロス表面上に粘着剤を塗工することで形成することができる。粘着剤の付与量は特に限定されないが、30~120g/m2が好ましく、40~100g/m2がより好ましい。該付与量が30g/m2以上であることにより、十分なタックが得られる。また、該付与量が120g/m2以下であることにより、アルミガラスクロステープ側面におけるべたつきを抑制することができる。
【0029】
(アルミガラスクロステープの物性等)
温度23℃、相対湿度50%における、本実施形態に係るアルミガラスクロステープの引張強度は、アルミガラスクロステープの長手方向において50~160N/cmであり、かつ、アルミガラスクロステープの幅手方向において300~400N/cmである。長手方向の引張強度が前記範囲内であることにより、特に「切れやすさ」が良好になる。また、長手方向及び幅手方向の引張強度がそれぞれ前記範囲内であることにより、特に「断面形状」が良好になる。長手方向の引張強度は、60~155N/cmであることが好ましく、70~150N/cmであることがより好ましく、80~140N/cmであることがさらに好ましい。幅手方向の引張強度は、310~390N/cmであることが好ましく、320~380N/cmであることがより好ましく、330~370N/cmであることがさらに好ましい。幅手方向の引張強度(t2)に対する長手方向の引張強度(t1)の比(t1/t2)は、0.15~0.60であることが好ましく、0.17~0.50であることがより好ましく、0.20~0.45であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、アルミガラスクロステープの引張強度は以下の方法により測定する。アルミガラスクロステープをJIS K 6251に規定される3号ダンベルの形状に打ち抜き、温度23℃、相対湿度50%の条件にて長手方向及び幅手方向の引張強度を、テンシロン万能試験機RTF-1350を用いて測定する。測定時の初期チャック間距離は40mm、試験速度は5mm/分とする。
【0031】
アルミガラスクロステープの厚みは特に限定されないが、例えば0.12~0.17mmであることができる。
【0032】
(用途)
本実施形態に係るアルミガラスクロステープは手切れ性が良好であり、作業性が高いため、ダクトシール用のアルミガラスクロステープとして好適である。また、例えば断熱部材の結束用、ワイヤーハーネスの結束用、ヒーター部の養生用等のアルミガラスクロステープとして用いることもできる。
【0033】
[ダクト]
本実施形態に係るダクトは、本実施形態に係るアルミガラスクロステープが巻き付けられている。例えば、ダクト配管の継ぎ目において、本実施形態に係るアルミガラスクロステープが巻き付けられている。該アルミガラスクロステープは強度及び耐熱性が高く、また巻き付けの際に手切れ性が良好であるため作業性が高い。本実施形態に係るダクトは、例えば、排煙ダクト等に設けられる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、アルミガラスクロステープの引張強度、粘着力、保持力、プローブタック、及び手切れ性(切れやすさ、断面形状)の評価は以下の方法により行った。
【0035】
[引張強度]
作製したアルミガラスクロステープをJIS K 6251に規定される3号ダンベルの形状に打ち抜き、温度23℃、相対湿度50%の条件にて長手方向及び幅手方向の引張強度を、テンシロン万能試験機RTF-1350を用いて測定した。測定時の初期チャック間距離は40mm、試験速度は5mm/分とした。
【0036】
[粘着力]
作製したアルミガラスクロステープの粘着力を、JIS Z 0237に従って温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、テンシロン万能試験機RTF-1350を用いて測定した。
【0037】
[保持力]
作製したアルミガラスクロステープを幅25mm、長さ100mmに切断後、25mmの長さで重さ1kgのステンレス板(SUS304)と貼り合わせた。貼り合わせたアルミガラスクロステープを、40℃のオーブン中に垂直方向に吊るし、ステンレス板が落下するまでの時間を測定し、保持力とした。
【0038】
[プローブタック]
作製したアルミガラスクロステープのプローブタックを、ASTM D 2979に従って、温度23℃、相対湿度50%の条件下、テスター産業株式会社製TE-6001プローブタックテスターを用いて測定した。
【0039】
[手切れ性]
作製したアルミガラスクロステープを幅19mm、長さ100mmに加工した。次に、加工したアルミガラスクロステープ(試験片)を水平な台上に置き、アルミガラスクロステープの中央部を片方の手の親指で押さえ、他方の手で押さえた部分のアルミガラスクロステープを幅手方向に指でひねり、切断時の切れやすさ及び断面形状を評価した。なお、評価は5つの試験片に対して行い、以下の指標にて評価した。
(切れやすさ)
A:いずれの試験片も、容易に切断することができた。
B:いずれの試験片も、切断に力を要した。
C:いずれの試験片も、切断することはできなかった。
(断面形状)
A:いずれの試験片も、アルミガラスクロステープの幅手方向に切断された。
B:一部の試験片は、アルミガラスクロステープの幅手方向に切断されなかった。
C:いずれの試験片も、アルミガラスクロステープの幅手方向に切断されず、かつ、切断面よりガラス繊維の糸が露出していた。
【0040】
[実施例1]
(アルミガラスクロス基材の作製)
表1に示されるガラス繊維束A1~A3、B1~B5、C1~C2及びD1を準備した。表1において、例えばガラス繊維束A1は、Eガラスで構成され、直径5μmのガラスフィラメントを100本収束したガラス繊維束であることを示す。本実施例では、長手方向に配置される第一のガラス繊維束としてガラス繊維束A1、幅手方向に配置される第二のガラス繊維束としてガラス繊維束B3を用いた。第一のガラス繊維束としてのガラス繊維束A1を打ち込み密度が60本/インチとなるように、また第二のガラス繊維束としてのガラス繊維束B3を打ち込み密度が25本/インチとなるように、それぞれ等間隔に配置し、これらを平織りすることでガラスクロスを作製した。次に、厚み20μmのアルミニウム箔上に、ウレタン系接着剤(商品名:「エバーグリップ1330」、東亜合成株式会社製)を9g/m2との塗布量となるようバーコーターで塗工し、これを前記ガラスクロスと貼り合わせることで、アルミガラスクロス基材を作製した。
【0041】
(アルミガラスクロステープの作製)
シリコーン系接着剤(商品名:「XR37-B6722」、モメンティブジャパン株式会社製)180質量部に対して、硬化剤として有機過酸化物(商品名:「ナイパーBMT-K40」、日本油脂株式会社製)を5質量部加え、室温にて5分間攪拌し粘着剤を調製した。得られた粘着剤を、コンマコーターを用いてフッ素系剥離紙(商品名:「SS4A」、ニッパ社製)上に乾燥後塗布量が60g/m2となるように塗工し、90℃で2分間乾燥した。乾燥した粘着剤を、前記アルミガラスクロス基材のガラスクロス側の表面上に転写した。さらに100℃にて3時間エージング後、剥離紙を剥がしながら幅50mmにスリットして、30m巻のアルミガラスクロステープを作製した。
【0042】
得られたアルミガラスクロステープについて、前述した方法にて引張強度、粘着力、保持力、プローブタック、及び手切れ性(切れやすさ、断面形状)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
[実施例2~6、比較例1~6]
第一のガラス繊維束、第二のガラス繊維束、及びアルミニウム箔とガラスクロスとの接着剤として、表2及び表3に示されるものを用いた以外は、実施例1と同様にアルミガラスクロステープを作製し、評価を行った。結果を表2及び表3に示す。なお、アクリル系接着剤としては、トーヨーケム株式会社製のEA-G34/CAT-EP8を使用した。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
表2及び表3に示されるように、本実施形態に係るアルミガラスクロステープである実施例1~6のアルミガラスクロステープは、切れやすさ、断面形状が共に良好であり、手切れ性が良好であった。また、実施例2と3の比較より、アルミニウム箔とガラスクロスの接着剤としてウレタン系接着剤を用いることで、手切れ性(断面形状)がより良好となることが分かった。一方、長手方向又は幅手方向の引張強度が本実施形態の範囲外である比較例1~6のアルミガラスクロステープは、切れやすさ及び/又は断面形状が不良であり、手切れ性が不良であった。なお、粘着性能(粘着力、保持力及びプローブタック)については、アルミガラスクロス基材の種類によらず、いずれも良好であった。