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  • 特許-変速機構及び流体制御弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】変速機構及び流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/53 20060101AFI20240930BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240930BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F16K31/53
F16K31/04 A
F02D9/02 351P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021043661
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143240
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】實方 雄平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】井出 祐策
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩樹
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173132(JP,A)
【文献】特開2013-104392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/53
F16K 31/04
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に互いに平行に配置された入力軸から出力軸に回転駆動力を伝達する変速機構であって、
前記支持部材に固定され、前記入力軸及び前記出力軸と平行に配置された中間軸と、
前記入力軸に固定された入力ギヤと、
前記出力軸に固定された出力ギヤと、
前記中間軸に回転可能に配置された中間ギヤと、を備え、
前記中間ギヤは、前記入力ギヤと噛み合う第1中間ギヤと、前記出力ギヤと噛み合う第2中間ギヤとを有し、前記第1中間ギヤと前記第2中間ギヤとは前記中間軸の軸線方向において互いに異なる位置に位置し、
前記中間ギヤの軸方向端部、及び前記支持部材における前記中間ギヤの前記軸方向端部の対向面の、いずれか一方に前記中間軸の軸心を中心とした半球状の凹部が形成され、他方に前記中間軸の軸心を中心として半球状に形成され前記凹部に挿入されて配置される凸部が形成されていることを特徴とする変速機構。
【請求項2】
前記凹部は、前記中間ギヤの下方側の軸方向端部に備えられ、上方側に凹んで形成され、
前記凸部に前記凹部が載置されて、前記中間軸が前記支持部材に支持されることを特徴とする請求項1に記載の変速機構。
【請求項3】
前記凹部の曲率は、前記凸部の曲率より小さいことを特徴とする請求項2に記載の変速機構。
【請求項4】
前記入力軸は、モータの駆動軸であり、
前記出力軸は、弁体を駆動するバルブシャフトであり、
前記支持部材は、前記モータ及び前記バルブシャフトを支持するケースに備えられ、
前記変速機構は、前記モータの駆動軸の回転を減速し駆動トルクを増加して前記バルブシャフトに伝達する減速機構である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の変速機構を備えたことを特徴とする流体制御弁。
【請求項5】
前記流体制御弁は、内燃機関の吸気流量を制御するスロットルバルブであることを特徴とする請求項4に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機構、及び変速機構を備えた流体制御弁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関の吸気量を制御するスロットルバルブにおいて、近年では電動スロットルバルブが多く採用されている。電動スロットルバルブの多くは、ボディ内に電動モータ、減速機構、スロットルバルブが内蔵されている。
【0003】
特許文献1には、電動スロットルバルブの一例が開示されている。特許文献1に開示された電動スロットルバルブは、ボディ内に、弁体を駆動するスロットルシャフトと電動モータの駆動軸(モータ出力軸)とが平行に配置され、モータ出力軸とスロットルシャフトとの間に減速機構が配置されている。減速機構は、モータ出力軸に固定されたモータギヤ、ボディに固定されモータ出力軸及びスロットルシャフトと平行に配置された中間シャフト、中間シャフトに回転可能に支持された中間ギヤ、バルブシャフトに固定されたスロットルギヤ(バルブギヤ)により構成されている。中間ギヤには、モータギヤにかみ合う第1中間ギヤと、スロットルギヤと噛み合う第2中間ギヤが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6419344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の電動スロットルバルブでは、中間ギヤにおいて第1中間ギヤと第2中間ギヤとが軸方向(特許文献1の図1、2の紙面上における上下方向)において互いに異なる位置にオフセットして配置されている。
したがって、駆動時に中間ギヤには、モータギヤから受けるラジアル力と、スロットルギヤから受けるラジアル力と、が軸方向に異なる位置で互いに反対方向に力を受けて傾いてしまう。
【0006】
このように中間ギヤが傾くと、中間ギヤの軸方向端部における外周端部が、ボディの対向する部位、即ち中間シャフトの支持部に接触する可能性があり、中間ギヤの回転に対してフリクションを与えてしまい、減速機構及びモータの寿命を低下させる可能性があるといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中間ギヤの傾きにより、中間ギヤが支持部材に接触した際のフリクションを低下させる変速機構及び当該変速機構を備えた流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の変速機構は、支持部材に互いに平行に配置された入力軸から出力軸に回転駆動力を伝達する変速機構であって、前記支持部材に固定され、前記入力軸及び前記出力軸と平行に配置された中間軸と、前記入力軸に固定された入力ギヤと、前記出力軸に固定された出力ギヤと、前記中間軸に回転可能に配置された中間ギヤと、を備え、前記中間ギヤは、前記入力ギヤと噛み合う第1中間ギヤと、前記出力ギヤと噛み合う第2中間ギヤとを有し、前記第1中間ギヤと前記第2中間ギヤとは前記中間軸の軸線方向において互いに異なる位置に位置し、前記中間ギヤの軸方向端部、及び前記支持部材における前記中間ギヤの前記軸方向端部の対向面の、いずれか一方に前記中間軸の軸心を中心とした半球状の凹部が形成され、他方に前記中間軸の軸心を中心として半球状に形成され前記凹部に挿入されて配置される凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記凹部は、前記中間ギヤの下方側の軸方向端部に備えられ、上方側に凹んで形成され、前記凸部に前記凹部が載置されて、前記中間軸が前記支持部材に支持されるとよい。
【0010】
また、好ましくは、前記凹部の曲率は、前記凸部の曲率より小さいとよい。
【0011】
また、本発明の流体制御弁は、前記入力軸は、モータの駆動軸であり、前記出力軸は、弁体を駆動するバルブシャフトであり、前記支持部材は、前記モータ及び前記バルブシャフトを支持するケースに備えられ、前記モータの駆動軸の回転を減速し駆動トルクを増加して前記バルブシャフトに伝達する減速機構である変速機構を備えることを特徴とする。
【0012】
また、好ましくは、前記流体制御弁は、内燃機関の吸気流量を制御するスロットルバルブであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の減速機構及び流体制御弁によれば、中間ギヤが中間軸に対して回転可能に配置されるとともに、半球状の凹部に半球状の凸部が挿入されて、中間ギヤが支持される構成であるので、入力軸の回転により中間ギヤが回転した際に中間ギヤが例え中間軸に対して傾いたとしても、凸部と凹部とが滑らかに摺動し、凹部と凸部とのフリクションを低減させることができる。また、この減速機構を介してモータの駆動力をバルブシャフトに伝達することで、応答性の優れたかつ高寿命化した流体制御弁にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の電動スロットルバルブの側面図である。
図2】カバーを外した電動スロットルバルブの上面図である。
図3】電動スロットルバルブの上部の縦断面図である。
図4】電動スロットルバルブの中間シャフト付近の拡大縦断面図である。
図5】モータ駆動時において中間ギヤが受ける力の方向の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の電動スロットルバルブ10(流体制御弁)の側面図である。図2は、カバー11を外した電動スロットルバルブ10の上面図である。図3は、電動スロットルバルブ10の上部の縦断面図である。図4は、電動スロットルバルブ10の中間シャフト36付近の拡大断面図である。
なお、図3は、電動スロットルバルブ10の上部を縦方向に切断した、詳しくは後述するモータシャフト13(入力軸)、バルブシャフト35(出力軸)及び中間シャフト36(中間軸)の夫々の軸線を含む平面で切断した断面図である。また、以下に説明する本実施形態の電動スロットルバルブ10では、モータシャフト13が上下方向に延び、後述する減速機構20が上方に位置するように配置される。
【0017】
本発明の一実施形態である電動スロットルバルブ10は、例えば自動車に搭載された内燃機関の吸気流量を制御する流体制御弁である。
【0018】
図1~3に示すように、電動スロットルバルブ10は、吸気通路15(流体通路)が形成されたバルブボディ16(ケース)と、吸気通路15を開閉して流路断面積を調整するバルブ17(弁体)と、バルブ17を駆動する電動モータ12を備えている。
【0019】
バルブボディ16は、電動モータ12を内蔵する収容空間19が形成されたアッパボディ21と、吸気通路15が形成されるとともにバルブ17が備えられたロアボディ22を有し、アッパボディ21とロアボディ22とをボルト23によって互いに固定して構成されている。
【0020】
アッパボディ21の上部には収容空間19に面して開口部25が設けられており、当該開口部25はカバー11によって覆われている。
【0021】
また、カバー11には電動モータ12への電力供給用配線と、図示しない回転角度センサ等に接続する配線を外部に接続するためのコネクタ30が備えられている。コネクタ30は、電動モータ12の上方に配置されている。
【0022】
図3に示すように、アッパボディ21とカバー11との間の収容空間19には、減速機構20(減速機構)及び電動モータ12が収容されている。
【0023】
電動モータ12の駆動軸であるモータシャフト13とバルブ17を駆動するバルブシャフト35は上下方向に延び、互いに平行に配置されている。モータシャフト13及びバルブシャフト35の上端部は、アッパボディ21の開口部25から臨むように配置されている。言い換えると、アッパボディ21の開口部25は、モータシャフト13の上端部の延長方向に向けて開口している。
【0024】
モータシャフト13とバルブシャフト35との間には、アッパボディ21及びカバー11に固定されるとともにモータシャフト13及びバルブシャフト35と平行に上下方向に延びる中間シャフト36が備えられている。
【0025】
減速機構20は、モータシャフト13の上端部に固定されたモータギヤ37(入力ギヤ)、中間シャフト36、中間シャフト36に回転可能に支持された中間ギヤ38、バルブシャフト35の上端部に固定されたバルブギヤ39(出力ギヤ)により構成されている。
【0026】
中間ギヤ38は、モータギヤ37と噛み合う第1中間ギヤ41と、バルブギヤ39と噛み合う第2中間ギヤ42と、を有し、第1中間ギヤ41と第2中間ギヤ42とは上下方向に並んで、即ち中間シャフト36の軸方向に連なって一体的に構成されている。
【0027】
減速機構20は、電動モータ12による回転駆動力をモータシャフト13から、モータギヤ37、第1中間ギヤ41、第2中間ギヤ42、バルブギヤ39を介してバルブシャフト35に減速しつつ伝達して回転駆動し、バルブ17を開閉作動させる。
【0028】
なお、アッパボディ21内には図示しないリターンスプリングが備えられている。リターンスプリングは、アッパボディ21に対しバルブシャフト35を回転させて、バルブ17を例えば所定の中間開度状態になるように付勢する。したがって、電動スロットルバルブ10は、電動モータ12の作動停止時にはバルブ17が所定の中間開度状態となり、電動モータ12を作動させることでバルブ17を所定の中間開度から開閉作動させる。
【0029】
中間ギヤ38のうち、第1中間ギヤ41が電動モータ12側に近づけて配置され、第2中間ギヤ42がカバー11側に配置されている。したがって、モータギヤ37は第1中間ギヤ41と軸方向上下位置を合わせて電動モータ12に近い位置に配置され、バルブギヤ39は第2中間ギヤ42と軸方向上下位置を合わせてバルブ17から遠い位置に配置されている。
【0030】
図4に示すように、中間ギヤ38の軸心には、中間シャフト36が挿入される穴部40が備えられている。更に、中間ギヤ38の下方側の軸方向端部には、中間シャフト36の軸心を中心として上方に向かって略半球状に凹んだ凹部55が形成されている。凹部55は、穴部40の下端部が下方に向かって径方向外方に広がるように形成されている。
【0031】
一方、アッパボディ21には、上方に向かって突出した円柱状の支持部56(支持部材)が設けられている。支持部56の上端部には、中間シャフト36の下端部が挿入されて固定されている。また、支持部56の上端部には、中間シャフト36の軸心を中心として上方に向かって略半球状に突出した凸部57が設けられている。凸部57は中間シャフト36の外周位置から径方向外方に向かって下方に滑らかに傾斜している。そして、中間ギヤ38は、凹部55が支持部56の凸部57の上方側に載置するような状態で配置されている。
【0032】
また、凹部55の曲率は、対向する凸部57の曲率よりわずかに小さく、即ち凸部57よりも凹部55が緩やかなカーブになっている。したがって、中間ギヤ38は、凹部55と凸部57とが略円形帯状に面接触、少なくとも円形状に線接触するように支持されている。
【0033】
図5は、モータ駆動時において中間ギヤ38が受ける力の方向の説明図である。
【0034】
以上のような構成により、本実施形態の電動スロットルバルブ10における減速機構20では、電動モータ12を駆動しモータシャフト13を回転させることで、中間ギヤ38に対してはモータギヤ37から回転力を受けるとともに、バルブギヤ39から回転力の反力を受ける。このとき、図5に示すように、中間ギヤ38が受けるラジアル力(径方向の力)F1、F2は、中間シャフト36の軸方向において互いに異なる位置で軸心に向かって互いに反対方向に作用する。詳しくは、モータギヤと中間ギヤ38との噛み合い位置と、バルブギヤ39と中間ギヤ38との噛み合い位置とは、中間ギヤ38の凹部55と支持部56の凸部57との接触面を基準として、中間シャフト36の軸方向の距離(図5の紙面上での上下高さ)が異なり、中間ギヤ38に対して互いに反対方向にラジアル力F1,F2が作用するので、これらのラジアル力F1、F2によって中間ギヤ38の回転時に、中間ギヤ38が中間シャフト36の軸線を通る平面上で僅かに傾く。
【0035】
本実施形態では、対向する中間ギヤ38の下面とアッパボディ21の支持部56の上面とが半球状に形成された凹部55と凸部57によって円形帯状に面接触しているので、中間ギヤ38が例え傾いたとしても凹部55と凸部57とが滑らかに摺動し、中間ギヤ38の回転時における凹部55と凸部57とのフリクション(摩擦力)を低減させる。したがって、電動モータ12の回転駆動時において減速機構20でのフリクションを低減するので、電動スロットルバルブ10におけるバルブ17の開閉駆動の応答性を向上させることができるとともに、電動モータ12及び減速機構20の高寿命化を図ることができる。
【0036】
また、中間ギヤ38の下面が上方に凹んだ凹部55となっており、支持部56が上方に突出した凸部57になっており、凸部57の上面が径方向外方に向かって下方に傾斜している。したがって、凹部55と凸部57との間に異物等が入り込んだとしても、凸部57の上面から径方向外方に滑り落ちて、凹部55と凸部57との間から容易に排出される。これにより、凹部55と凸部57との間に異物等が堆積することを抑制して、凹部55と凸部57とにおける摺動性能を維持することができる。
【0037】
更に、凸部57の曲率に対して凹部55の曲率が小さく形成されているので、凹部55と凸部57との間の隙間の寸法が径方向外方に向けて大きくなる。これにより、凹部55と凸部57との間に入り込んだ異物等が径方向外方に更に排出し易くすることができる。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、中間ギヤ38に凹部55を設け、支持部56に凸部57を設けているが、中間ギヤ38の下面に下方に突出する凸部57を設け、支持部56に上方に向けて凹んだ凹部55を設けてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、中間ギヤ38において第1中間ギヤ41の上側に第2中間ギヤ42が配置されているが、第2中間ギヤ42の上側に第1中間ギヤ41が配置されている減速機構に本発明を適用してもよい。
【0041】
また、上記実施形態のように中間シャフト36が上下方向に延びるように配置される変速機構だけでなく、例えば中間シャフト36が横方向に延びるように配置される変速機構に本発明を適用してもよい。
【0042】
また、上記実施形態の電動スロットルバルブ10は、内燃機関の吸気量を制御する電動スロットルバルブであるが、その他の流体制御弁であってもよく、また流体制御弁以外の他の用途に使用した減速機構に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 電動スロットルバルブ(流体制御弁)
12 電動モータ
13 モータシャフト(入力軸)
16 バルブボディ
17 バルブ(弁体)
20 減速機構(変速機)
21 アッパボディ
35 バルブシャフト(出力軸)
36 中間シャフト(中間軸)
37 モータギヤ(入力ギヤ)
38 中間ギヤ
39 バルブギヤ(出力ギヤ)
41 第1中間ギヤ
42 第2中間ギヤ
55 凹部
56 支持部
57 凸部
図1
図2
図3
図4
図5