(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20240930BHJP
H01R 12/73 20110101ALI20240930BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R12/73
(21)【出願番号】P 2021047088
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105338
【氏名又は名称】ケル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 優貴
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174034(JP,A)
【文献】特開2015-035352(JP,A)
【文献】特開2015-228341(JP,A)
【文献】特開2015-176861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタと嵌合接続される電気コネクタであって、
固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能に設けられる可動ハウジングと、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングに跨がって取り付けられる複数のコンタクトと、を備え、
前記複数のコンタクトはそれぞれ、前記固定ハウジングに保持される固定保持部と、前記可動ハウジングに保持され、前記相手コネクタの端子部と当接する可動端子部と、前記固定保持部および前記可動端子部を繋ぐ中間部とを有して構成され、
前記可動ハウジングに前記相手コネクタが嵌合接続されるように構成されており、この嵌合接続方向を上下方向としたときに、
前記中間部は、
前記固定保持部の上端に繋がって横方向内方に延びる第1弾性部と、
前記第1弾性部の内端に繋がって上方に延びる第1幅広部と、
前記第1幅広部の上端に繋がって横方向外方に延びる第2弾性部と、
前記第2弾性部の外端に繋がって上方に延びる第2幅広部と、
前記第2幅広部の上端に繋がって横方向内方に延びる第3弾性部と、を備え、
前記第3弾性部の内端が前記可動端子部の下端と繋がり、
前記第1弾性部と前記第1幅広部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第1幅広部と前記第2弾性部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第2弾性部と前記第2幅広部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第2幅広部と前記第3弾性部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、
前記第1および前記第2幅広部の上下方向の長さが前記第1~前記第3弾性部の横方向の長さより大きく、
前記第1および前記第2幅広部は
前記第1~前記第3弾性部より幅広にしてインピーダンス特性を確保するとともに、上下方向の長さを
前記第1~前記第3弾性部より大きくすることにより左右方向の弾性変形を許容して前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの横方向の相対移動を可能とし、
前記第1~前記第3弾性部の少なくともいずれかは前記第1および前記第2幅広部より幅を狭くすることにより弾性変形を許容して前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの上下方向の相対移動を可能とする構成であることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトはそれぞれ、導電材料製の板材を折り曲げ成形することにより、前記固定保持部、前記中間部および前記可動端子部を一体に繋げて成形されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記複数のコンタクトが、前記上下方向およびこれに直交する前後方向を含む面内において前後に対称となる対となって対向配置されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記前後に対称となる対となって対向配置された前記複数のコンタクトが、左右方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記可動ハウジングが上部に前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部の下側に下方に開口した可動ハウジング内部空間が形成されており、
前記固定ハウジングが、前記可動ハウジング内部空間と対向する上方に開口した固定ハウジング内部空間を有し、
互いに対向する前記可動ハウジング内部空間および前記固定ハウジング内部空間により形成された配置空間内に前記中間部が配置されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記相手コネクタと嵌合接続されたときに、前記可動端子部が前記相手コネクタの端子部と当接して保持する上下方向の保持力が、前記第1~前記第3弾性部の弾性変形力より大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングタイプの電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
雌雄嵌合タイプの電気コネクタ(以下、単にコネクタとも称する)において、嵌合時の位置ずれを吸収できるようにフローティングタイプのコネクタが用いられることがある。例えば、基板上に設けられて基板間の電気接続に用いられるコネクタにおいて、基板の取付位置のずれによりコネクタ嵌合位置ずれが生じることがあり、このような位置ずれを吸収できるように、雌雄コネクタの一方もしくは両方をフローティングタイプとすることが知られている。フローティング方向としては、コネクタの嵌合のための挿抜方向すなわち嵌合方向(Z方向)と、嵌合方向に直角な平面における直交する2方向(X方向およびY方向)がある。X方向およびY方向のフローティングを許容する構成のコネクタも多いがさらにZ方向のフローティングも許容する構成のコネクタが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されているフローティングコネクタは、基板に固定される固定ハウジングと、可動ハウジングと、両ハウジングに跨がって取り付けられて可動ハウジングをフローティング支持する複数のコンタクトを有して構成されている。これら複数のコンタクトは前後方向(Y方向)に対称となってこれと直交する左右方向(X方向)に並んで配置され、各コンタクトは、特許文献1の
図5および
図6に示されるように、固定ハウジングに保持されて基板に固定される接続部と、可動ハウジングに保持されて相手コネクタと電気接続される端子部と、接続部と端子部の間に位置する中間部とから構成される。この中間部は、接続部に繋がって前後方向(Y方向)内方に延びる第1弾性部と、端子部に繋がって外方に延びる第2弾性部と、両弾性部を繋いで斜めに傾斜して延びる幅広部とから構成され、全体として側方視においてZ文字形状となっている。第1弾性部および第2弾性部の弾性変形により挿抜方向(Z方向、上下方向)のフローティングを許容するとともに、前後方向(Y方向)のフローティングを許容し、中間部全体のX方向の弾性変形により左右(X方向)のフローティングも許容できるようになっている。
【0005】
幅広部は幅寸法を広くしており、バネ性(弾性)は小さくフローティングには余り寄与しないが、幅を広くすることにより、コンタクトを介する信号の伝送特性、特に、インピーダンス整合特性を良くしている。この幅広部は、接続部に繋がって内方に延びる第1弾性部の内端から上方に且つ外方に傾斜して延び、幅広部の上端から第2弾性部が内方に延びており、幅広部を斜め外方に傾斜させることにより、コネクタの前後方向(Y方向)の寸法を抑えてコンパクト化を達成している。
【0006】
このように、特許文献1のコネクタでは、フローティング特性と信号伝送特性の両方を改善し、コネクタをコンパクトに構成しているが、コンタクトを側方視においてZ文字形状とすることにより以下のような問題が生じる。このコンタクトを模式的に
図11に示しており、この問題について
図11を参照して説明する。前後(Y方向)に対称な一対のコンタクト80a、80bが左右(X方向)に並んで複数対配置されており、一対のコンタ
クトは、
図11(A)に示すように、接続部81a、81bと、第1弾性部82a、82bと、幅広部83a、83bと、第2弾性部84a、84bと、端子部85a、85bとから構成される。
【0007】
この状態から可動ハウジングが右(矢印Y1方向)にフローティング移動されると、
図11(B)に示すように、可動ハウジングに保持されたコンタクトの端子部85a、85bも一緒にY1方向にフローティング移動される。このとき、コンタクト80a、80bは破線で示すように変形し、右側のコンタクトの端子部85aは矢印Y2で示すように右下方に移動し、左側のコンタクトの端子部85bは矢印Y3で示すように右上方に移動する。これにより、可動ハウジングは右方向に斜め移動するだけではなく、可動ハウジングが回転移動される動きが加わる。その結果、コンタクトの接続部における基板とのマウント部(サーフェスマウント部)に偏った反力が作用し、サーフェスマウント部のハンダ接合部の強度が影響を受けるという問題がある。
【0008】
また、幅広部が斜めに傾いているため、第1および第2弾性部とのなす角αは鋭角となり、ここを直角に曲げる場合に比べて曲げ角度管理が難しくなりがちで、製造コストが増加するという問題がある。特に、コネクタ全体の高さ(Z方向寸法)を代えた複数種のコネクタを求められることがあるが、このような場合には、幅広部の高さ寸法を変える必要があり、これに応じて上記なす角αが変化するため、この角度αを代えたコンタクトを製造する必要があり、コネクタ種類ごとの曲げ角度の管理が煩雑化し、製造コストが増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題を防止でき、コンパクトな構成でフローティング機能を有し、且つ、コンタクトを介する信号の伝送特性、特に、インピーダンス整合特性を良好に保つことができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的達成のため、本発明おいては、相手コネクタと嵌合接続される電気コネクタを、固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能に設けられる可動ハウジングと、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングに跨がって取り付けられる複数のコンタクトと、を備えて構成している。前記複数のコンタクトはそれぞれ、前記固定ハウジングに保持される固定保持部と、前記可動ハウジングに保持され、前記相手コネクタの端子部と当接する可動端子部と、前記固定保持部および前記可動端子部を繋ぐ中間部とを有して構成される。前記可動ハウジングに前記相手コネクタが嵌合接続されるように構成されており、この嵌合接続方向を上下方向としたときに、前記中間部は、前記固定保持部の上端に繋がって横方向(実施形態の前後方向)内方に延びる第1弾性部と、前記第1弾性部の内端に繋がって上方に延びる第1幅広部と、前記第1幅広部の上端に繋がって横方向外方に延びる第2弾性部と、前記第2弾性部の外端に繋がって上方に延びる第2幅広部と、前記第2幅広部の上端に繋がって横方向内方に延びる第3弾性部と、を備え、前記第3弾性部の内端が前記可動端子部の下端と繋がる。そして、前記第1弾性部と前記第1幅広部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第1幅広部と前記第2弾性部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第2弾性部と前記第2幅広部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第2幅広部と前記第3弾性部との折り曲げ角度がほぼ直角であり、前記第1および前記第2幅広部の上下方向の長さが前記第1~前記第3弾性部の横方向の長さより大きく、前記第1および前記第2幅広部は前記第1~前記第3弾性部より幅広にしてインピーダンス特性を確保するとともに、上下方向の長さを前記第1~前記第3弾性部より大きくすることにより左右方向の弾性変形を許容して前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの横方向の相対移動を可能とし、前記第1~前記第3弾性部の少なくともいずれかは前記第1および前記第2幅広部より幅を狭くすることにより弾性変形を許容して前記固定ハウジングに対する前記可動ハウジングの上下方向の相対移動を可能とする構成である。
【0012】
上記コネクタにおいて、好ましくは、前記コンタクトはそれぞれ、導電材料製の板材を折り曲げ成形することにより、前記固定保持部、前記中間部および前記可動端子部を一体
に繋げて成形される。
【0014】
また、上記コネクタにおいて、好ましくは、前記複数のコンタクトが、前記上下方向およびこれに直交する前後方向を含む面内において前後に対称となる対となって対向配置されている。
【0015】
また、上記コネクタにおいて、好ましくは、前記前後に対称となる対となって対向配置された前記複数のコンタクトが、左右方向に並んで配置されている。
【0016】
また、上記コネクタにおいて、好ましくは、前記可動ハウジングが上部に前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部の下側に下方に開口した可動ハウジング内部空間が形成されており、前記固定ハウジングが、前記可動ハウジング内部空間と対向する上方に開口した固定ハウジング内部空間を有し、互いに対向する前記可動ハウジング内部空間および前記固定ハウジング内部空間により形成された配置空間内に前記中間部が配置される。
【0017】
また、上記コネクタにおいて、好ましくは、前記相手コネクタと嵌合接続されたときに、前記可動端子部が前記相手コネクタの端子部と当接して保持する上下方向の保持力が、前記第1~前記第3弾性部の弾性変形力より大きい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固定ハウジングおよび前記可動ハウジングに跨がって取り付けられる複数のコンタクトの第1~第3弾性部の少なくともいずれかの弾性変形により、Z方向のフローティングを設定することができる。また、中間部は空中に浮いた状態であるため、第1および第2幅広部を幅が広い形状とすることにより、ハウジングに固定された幅狭の部分とのインピーダンス整合特性を良好に保つことができる。さらに、第1弾性部は固定保持部の上端に繋がって横方向内方に延び、第2弾性部は第1幅広部の上端に繋がって横方向外方に延び、第3弾性部は第2幅広部の上端に繋がって横方向内方に延びる構成であるので、第1~第3弾性部を上下に重なるように配置でき、コネクタの横方向寸法を抑えてコネクタをコンパクトに構成することができる。
【0019】
本発明のコネクタにおいて、コンタクトをそれぞれ、導電材料製の板材を折り曲げ成形することにより、固定保持部、中間部および可動端子部を一体に繋げて成形しても良く、これによりコンタクトを簡単に一体成形することができる。
【0020】
本発明のコネクタにおいて、第1弾性部と第1幅広部との折り曲げ角度、第1幅広部と第2弾性部との折り曲げ角度、第2弾性部と第2幅広部との折り曲げ角度、および第2幅広部と第3弾性部との折り曲げ角度をほぼ直角にするのが好ましく、これにより、前後方向(Y方向)のフローティングをスムーズに行わせることができ、コンタクトの曲げ成形を簡単に行うことができる。
【0021】
本発明のコネクタにおいて、相手コネクタと嵌合接続されたときに、可動端子部が相手コネクタの端子部と当接して保持する上下方向の保持力が、第1~第3弾性部の弾性変形力より大きくなるように構成するのが好ましい。このようにすると、相手コネクタとの間に嵌合方向の移動(振動)が生じたときに、この移動を第1~第3弾性部の弾性変形によ
り吸収することができ、可動端子部と相手コネクタの端子部との当接部の滑り移動を防止することができ、この部分の摩耗、フレッティングコロージョンの発生などを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図5】上記コネクタを構成する前側コンタクトの正面図および左右側面図である。
【
図6】上記コネクタおよび相手コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である。
【
図7】上記コネクタおよび相手コネクタが嵌合した状態を示す斜視図である。
【
図9】上記コネクタおよび相手コネクタが嵌合した状態を示す前後方向断面図である。
【
図10】上記コネクタを構成するコンタクトの前後フローティング変形時の挙動を示す説明図である。
【
図11】従来のコネクタにおけるコンタクトの前後フローティング変形時の挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。説明の都合上、
図1および
図2において矢印で示すように、前後、左右および上下方向を、前(F)、後(
B)、右(R)、左(L)、上(U)、下(D)として規定して説明する。なお、前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とも称する。但し、これら方向は説明の都合上で規定するだけのものである。本発明の実施形態に係るコネクタ1を
図1~
図5に示しており、このコネクタ1は
図6、
図7および
図9に示すように相手コネクタ70と嵌合接続される。また、
図9に示すように、コネクタ1は第1基板CB1に取り付けられ
、相手コネクタ70は第2基板CB2に取り付けられ、基板同士がコネクタ1および相手コネクタ7を嵌合接続させることにより両基板CB1およびCB2が電気接続される。
【0024】
コネクタ1は、絶縁材料製の固定ハウジング10と、絶縁材料製の可動ハウジング20と、両ハウジングに跨がって取り付けられる導電材料製の多数のコンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)と、固定ハウジング10に取り付けられる左右一対の導電材料製の固定金具40とを備える。固定ハウジング10は、前および後壁11a、11bと、右および左連結部12a、12bにより、上下に貫通する固定側空間16を有した矩形枠状に形成されている。前後壁11a、11bの内面には、コンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)の接続部圧入部31Fa、31Baを圧入させて保持するために用いられる上下に延びる多数の圧入溝15a、15bが形成されている。
【0025】
可動ハウジング20は、前および後壁21a、21bと、右および左壁22a、22bにより、上下が開口した矩形箱状に形成されている。内部には仕切壁24が形成されており、内部空間が仕切壁24より上側に位置する可動側上空間26aと、下側に位置する可動側下空間26bとに仕切られている。可動側上空間26aの内部には、仕切壁24の上面から上方に突出して左右に延びる突出部25が形成されている。この突出部25の前面および後面には、コンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)の端子接触部37Fb、37Bbを受容保持するための上下に延びる多数の保持溝25a、25bが形成されている。端子圧入部37Fa、37Baを圧入させて保持する圧入孔25c、25dが、これら保持溝25a、25bの下部に繋がって仕切壁24を上下に貫
通して形成されている。さらに、
図4に示すように、右および左壁22a、22bの下部に一体に繋がって右および左係止脚部27、28が設けられている。右係止脚部27は、右(R)方向に突出する右係止片27aと、下方に突出する下部突起27bを有する。左係止脚部28は、左(L)方向に突出する左係止片28aと、下方に突出する下部突起28bを有する。
【0026】
コンタクト30は、前後に対称に配置された一対の前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bが、
図2に示すように、左右に並んで配置されている。前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bは左右に対称となって配置されているが、同一形状である。そこで、前側コンタクト30Fを例にして
図5に示している。前側コンタクト30Fは、固定ハウジング10の圧入溝15aに圧入されて固定ハウジング10に取り付けられる接続圧入部31Faおよび第1基板CB1にサーフェスマウントされるマウント部31Fbから構成される固定保持部31Fと、可動ハウジング20の保持溝25aに受容される端子接触部37Fbおよび圧入孔25cに圧入されて可動ハウジング20に取り付けられる端子圧入部37Faから構成される可動端子部37Fと、固定保持部31Fおよび可動端子部37Fを繋いで構成される中間部30Fmから構成される。中間部30Fmは、固定保持部31F(接続圧入部31Fa)の上端に繋がって前後内方(後方)に延びる第1弾性部32Fと、第1弾性部32Fの内端から直角に折れ曲がって上方に延びる第1幅広部33Fと、第1幅広部33Fの上端から直角に折れ曲がって前後方向外方(前方)に延びる第2弾性部34Fと、第2弾性部34Fの外端から直角に折れ曲がって上方に延びる第2幅広部35Fと、第2幅広部35Fの上端から直角に折れ曲がって前後方向内方(後方)に延びる第3弾性部36Fとを備え、第3弾性部36Fの内端が直角に折れ曲がって可動端子部37Fの下端と繋がる。
【0027】
コンタクト30Fは、導電材料製の板材を折り曲げ成形することにより、固定保持部31F、中間部30Fmおよび可動端子部37Fを一体に繋げて成形している。この実施形態に係るコンタクト30Fにおいては、第1弾性部32Fおよび第2弾性部34Fの幅を狭くして弾性変形しやすくし、残りの部分、すなわち、第1幅広部33F、第2幅広部35Fおよび第3弾性部36Fの幅を広くしており、インピーダンス特性を良好に整合させるようにしている。なお、第3弾性部36Fを幅狭として、弾性変形の許容量を大きくするようにしても良い。代わりに、第1弾性部32Fおよび第2弾性部34Fのいずれかの幅を広くしても良く、弾性変形の許容量とインピーダンス特性の要求とに応じてどの弾性部をどの程度補足するか決められる。固定保持部31Fおよび可動端子部37Fもある程度幅広である。
【0028】
右および左固定金具40は同一形状であり、導電材料板材を所定形状に切断して折り曲げ成形して作っている。固定金具40は、本体部45の下端に繋がって左右方向内側に折り曲げられた前後一対のマウント部43、43と、本体部45の前後側端に繋がって左右方向内側に折り曲げられた前後一対の固定部42、42と、本体部45の上端に繋がって左右方向内側に折り曲げられた規制部41を有する。固定部42、42を、固定ハウジング10の左右側面に形成された係合孔(図示では表示されていない)に圧入して
図1、
図4および
図6に示すように、固定金具40を固定ハウジング10の左右側部に固定できるようになっている。
【0029】
コネクタ1は、前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bの接続圧入部31Fa、31Baを固定ハウジング10の圧入溝15a、15bに圧入するとともに、端子圧入部37Fa、37Baを可動ハウジング20の圧入孔25c、25dに圧入して作られる。これにより、
図3に示すように、固定ハウジング10と可動ハウジング20がコンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)により連結される。このとき、コンタクト30の中間部30Fm、30Bmの弾性変形により、固定ハウジング1
0に対して可動ハウジング20が上下、前後および左右に移動可能となってフローティング状態で連結される。特に、第1弾性部32F、32Bおよび第2弾性部34F、34Bが幅狭で弾性変形しやすいため、この部分の弾性変形によりフローティングを可能となっている。なお、第3弾性部36F、36Bも幅狭として弾性変形を容易とすれば、さらにフローティングを大きくすることかできる。
【0030】
この状態で、前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bの中間部30Fm、30Bmは、固定ハウジング10内の固定側空間16および可動ハウジング20内の可動側下空間26b内に位置する。このように中間部中間部30Fm、30Bmは空気空間内に露出して位置するが、空気露出する部分はある程度幅広としてインピーダンス特性の整合を図ることが求められる。このため、第1幅広部33F、33Bおよび第2幅広部35F、35Bを幅広とし、さらに第3弾性部36F、36Bも幅広としてインピーダンス整合を図っている。
【0031】
そして、一対の固定金具40が、
図4に示されるように、固定ハウジング10の左右端部に取り付けられる。この取付は、上述のように、固定部42、42を、固定ハウジング10の左右側面に形成された係合孔(図示では表示されていない)に圧入して行われる。このようにして組み立てられたコネクタ1においては、
図4に示すように、可動ハウジング20の右および左係止脚部27、28の下部突起27bおよび28bの下面が、固定ハウジング10の右および左連結部12a、12bの上面と若干の隙間を有して対向している。これにより固定ハウジング10に対して可動ハウジング20がこの隙間に対応する分の下方へのフローティング移動を可能とするが、それ以上の下方移動を規制している。また、右および左係止脚部27、28の右および左係止片27a、28aの上面が、右および左固定金具40の規制部41の下面と若干の隙間を有して対向している。これにより固定ハウジング10に対して可動ハウジング20がこの隙間に対応する分の上方へのフローティング移動を可能とするが、それ以上の上方移動を規制している。
【0032】
以上のように組み立てられて作られたコネクタ1は、
図3および
図4に示すように、固定金具40のマウント部43およびコンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)のマウント部31Fb、31Bbを第1基板CB1の所定表面位置にハンダ接合してサーフェスマウントされる。
【0033】
コネクタ1は上述したように相手コネクタ70と嵌合接続されるが、この相手コネクタ70について
図8を参照して説明する。相手コネクタ70は、絶縁材料製の相手ハウジング71を有し、この相手ハウジング71内に前後に対象となった一対の前後コンタクト80F、80Bを左右に並んで保持して構成される。これら前後コンタクト80F、80Bは、導電材料製の板材を所定形状に折り曲げ形成して作られており、第2基板CB2にサーフェスマウントされる相手マウント部81F、81Bと、相手ハウジング71に保持される相手保持部82F、82Bと、コネクタ1と嵌合接続されたときにコンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)の端子接触部37Fb、37Bbと当接して電気接続される相手接触部83F、83Bとから構成される。相手コネクタ70は、相手マウント部81F、81Bを第2基板CB2の所定表面位置にハンダ接合して
図8に示すようにサーフェスマウントされる。
【0034】
以上のようにして第1基板CB1に取り付けられたコネクタ1を、第2基板CB2に取り付けられた相手コネクタ70と嵌合接続した状態を
図9に示している。この状態では、コネクタ1のコンタクト30(前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30B)の端子接触部37Fb、37Bbが、相手コネクタ70の相手接触部83F、83Bと当接して電気接続される。なお、前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bの端子接触部37Fb、37Bの配置位置(左右方向の配列ピッチ)が相手コンタクト80の相手接
触部83F、83Bの配置位置(左右方向の配列ピッチ)と等しく設定されている。
【0035】
このようにコネクタ1と相手コネクタ70が嵌合接続した状態において、上述したように、コンタクト30の中間部30Fm、30Bmの弾性変形により、固定ハウジング10に対して可動ハウジング20が上下、前後および左右に移動で、フローティング状態となる。このとき、端子接触部37Fb、37Bbと相手コネクタ70の相手接触部83F、83Bとの当接による上下方向の保持力は、コンタクト30の中間部30Fm、30Bmの弾性変形より大きくなるように設定されている。これにより、例えば、第1基板CB1に対して第2基板CB2が相対移動(振動移動)したときに、この相対移動(振動移動)を中間部30Fm、30Bmの弾性変形より吸収することができ、端子接触部37Fb、37Bbと相手接触部83F、83Bとの当接部の滑り移動を防止することができ、この部分の摩耗、フレッティングコロージョンの発生などを効果的に防止できる。
【0036】
このようにフローティング状態となった可動ハウジング20が固定ハウジング10に対して前後方向に移動されたときに、前側コンタクト30Fおよび後側コンタクト30Bの変形挙動例を
図10に示している。
図10(A)は静止状態を模式的に示し、
図10(B)は可動ハウジング20が前方向に移動したときの変形状態を模式的に示している。なお、この変形は説明容易化のため誇張して示しており、現実にはずっと小さな変形である。
図10(B)に示すように、中間部30Fm、30Bmを構成する弾性部および幅広部を直角に折り曲げているので、可動ハウジング20は前後に平行移動し、
図11で示した従来のコネクタにおけるような回転移動は生じにくい。
【符号の説明】
【0037】
1 コネクタ 10 固定ハウジング
20 可動ハウジング 30 コンタクト
40 固定金具 70 相手コネクタ