IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図1
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図2
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図3
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図4
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図5
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図6
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図7
  • 特許-二酸化炭素の固定化装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定化装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240930BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240930BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20240930BHJP
   C01B 32/50 20170101ALN20240930BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/83
C01B32/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021047987
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146817
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-197810(JP,A)
【文献】特開2007-040615(JP,A)
【文献】特開2009-269784(JP,A)
【文献】特開2009-090198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00 - 53/96
B09B 3/00 - 5/00
C01B 32/50
B28C 1/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス及び水蒸気を接触させて、前記セメント質硬化体上で炭酸化反応を生ぜしめ、当該セメント質硬化体に二酸化炭素を固定化するための反応部と、
前記反応部に前記セメント質硬化体を供給するセメント質硬化体供給部と、
前記反応部に前記二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給部と、
前記反応部に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
を備え
前記セメント質硬化体供給部と、前記二酸化炭素含有ガス供給部及び前記水蒸気供給部とは、前記反応部に対して、互いに対向するように配設されていることを特徴とする、二酸化炭素の固定化装置。
【請求項2】
前記水蒸気供給部は、前記水蒸気を発生させるボイラーと、前記水蒸気を加熱するためのスチームヒータとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素の固定化装置。
【請求項3】
セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス及び水蒸気を接触させて、前記セメント質硬化体上で炭酸化反応を生ぜしめ、当該セメント質硬化体に二酸化炭素を固定化するための反応部と、
前記反応部に前記セメント質硬化体を供給するセメント質硬化体供給部と、
前記反応部に前記二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給部と、
前記反応部に水又は氷を供給する水供給部又は氷供給部と、を備え、
前記セメント質硬化体供給部と、前記二酸化炭素含有ガス供給部及び前記水供給部又は前記氷供給部とは、前記反応部に対して、互いに対向するように配設され、
前記反応部は75℃以上の温度に保持され、前記水蒸気は前記水又は前記氷が前記反応部に供給されることにより生成されることを特徴とする、二酸化炭素の固定化装置。
【請求項4】
前記反応部はロータリーキルンを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化装置。
【請求項5】
前記ロータリーキルンは、前記セメント質硬化体を転動させるためのリフター部材を有することを特徴とする、請求項4に記載の二酸化炭素の固定化装置。
【請求項6】
前記リフター部材は、前記ロータリーキルンの内壁面に固定された複数のプレートから構成されることを特徴とする、請求項5に記載の二酸化炭素の固定化装置。
【請求項7】
前記リフター部材は、前記ロータリーキルンの内壁面に固定された複数のピンから構成されることを特徴とする、請求項5に記載の二酸化炭素の固定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有ガス(例えば、工場の排ガス)中の二酸化炭素を固定化するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスに含まれている二酸化炭素を固定化して、大気中への二酸化炭素の排出量を削減するための種々の技術が、知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の装置においては、散水により水分供給を行って廃コンクリートを破砕した材料を湿潤状態とすることで、炭酸化反応を促進させている。しかし、水分供給に偏りが生じて炭酸化反応が均一に進行しないという問題があった。また、廃コンクリートの温度の調整が困難であり、炭酸化反応に適切な温度を保持できず、安定して炭酸化反応が進行しないという問題があった。
【0004】
特許文献2に記載の装置では、廃コンクリートの微粉砕の工程あるいは反応管内での反応工程において、水浴できる機構を設け、廃コンクリートを水に浸漬させることで、炭酸化反応を促進させている。しかし、廃コンクリートの細孔を水が塞ぐことで、二酸化炭素が廃コンクリート内部まで侵入できず、その結果、炭酸化反応が十分に進行しないという問題があった。
【0005】
また、廃コンクリートは、反応管内の上部と下部とで廃コンクリートと二酸化炭素の接触や水分の分布にばらつきが生じたり、二酸化炭素及び水分と廃コンクリートとの反応管内での滞留時間に差が生じたりするため、炭酸化反応が均一に進まないという問題があった。
【0006】
さらに、廃コンクリートを水に浸漬させても、廃コンクリートの大きさ、セメント、骨材など割合と存在状態(例えば、表面にセメント分が多い場合や表面は骨材などで内部にセメント分が多いなど)により、吸水性や保水性も異なるため、加熱雰囲気において炭酸化反応が均一に進まないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-90198号公報
【文献】US2015/0210594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス及び水蒸気を接触させて、前記セメント質硬化体上で炭酸化反応を生ぜしめ、当該セメント質硬化体に二酸化炭素を固定化するための反応部と、前記反応部に前記セメント質硬化体を供給するセメント質硬化体供給部と、前記反応部に前記二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給部と、前記反応部に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、備え、前記セメント質硬化体供給部と、前記二酸化炭素含有ガス供給部及び前記水蒸気供給部とは、前記反応部に対して、互いに対向するように配設されていることを特徴とする、二酸化炭素の固定化装置(第1の二酸化炭素の固定化装置)に関する。
【0010】
また、本発明は、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス及び水蒸気を接触させて、前記セメント質硬化体上で炭酸化反応を生ぜしめ、当該セメント質硬化体に二酸化炭素を固定化するための反応部と、前記反応部に前記セメント質硬化体を供給するセメント質硬化体供給部と、前記反応部に前記二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給部と、前記反応部に水又は氷を供給する水供給部又は氷供給部と、を備え、前記セメント質硬化体供給部と、前記二酸化炭素含有ガス供給部及び前記水供給部又は前記氷供給部とは、前記反応部に対して、互いに対向するように配設され、前記反応部は75℃以上の温度に保持され、前記水蒸気は前記水又は前記氷が前記反応部に供給されることにより生成されることを特徴とする、二酸化炭素の固定化装置(第2の二酸化炭素の固定化装置)に関する。
【0011】
本発明の第1の二酸化炭素の固定化装置及び第2の二酸化炭素の固定化装置によれば、セメント質硬化体上での炭酸化反応に際し、従来の水に代えて水蒸気を利用するようにしている。したがって、セメント質硬化体に水分を均一に供給することができるため、上記炭酸化反応を均一かつ効率的に行うことができる。
【0012】
なお、第1の二酸化炭素の固定化装置の場合は、例えばボイラーやスチームヒータを用いて反応部内に直接水蒸気を供給する。一方、第2の二酸化炭素の固定化装置の場合は、貯水槽・供給装置や製氷機・供給装置を用いて、反応部に水又は氷を供給し、反応部内で当該水又は氷を水蒸気化し、この水蒸気を用いるようにしている。いずれの場合も、上述のように、セメント質硬化体に水分を均一に供給することができるため、上記炭酸化反応を均一かつ効率的に行うことができるものである。
【0013】
なお、本発明において、前記セメント質硬化体供給部と、前記二酸化炭素含有ガス供給部及び前記水蒸気供給部とは、前記反応部に対して、互いに対向するように配設される。これにより、セメント質硬化体と二酸化炭素含有ガス及び水蒸気とが向流するので、これらの接触割合が増大する。したがって、セメント質硬化体上での二酸化炭素含有ガスと水蒸気との炭酸化反応が向上するので、セメント質硬化体に固定される二酸化炭素の割合(量)が増大する。結果として、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態におけるロータリーキルンの断面図である。
図3】第1実施形態におけるロータリーキルンの断面図である。
図4】第1実施形態におけるロータリーキルンの断面図である。
図5】本発明の第2実施形態における二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。
図6】水の状態図であり、実施形態における水の状態変化を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態における二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。
図8】本発明の第4実施形態における二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の詳細及びその他の特徴について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置1は、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス及び水蒸気を接触させて、セメント質硬化体上で炭酸化反応を生ぜしめ、当該セメント質硬化体に二酸化炭素を固定化するための反応部10と、反応部10にセメント質硬化体を供給するセメント質硬化体供給部20と、反応部10に対してセメント質硬化体供給部20と反対側に、反応部10に二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給部30と、反応部10に対してセメント質硬化体供給部20と反対側に、反応部に水蒸気を供給する水蒸気供給部40とを備えている。
【0019】
二酸化炭素含有ガス供給部30及び水蒸気供給部40をセメント質硬化体供給部20と同じ側に設けることもできるが、この場合は、以下に説明するように、反応部10内において、セメント質硬化体に接触する二酸化炭素含有ガス及び水蒸気の割合が減少し、当該セメント質硬化体上での炭酸化反応の効率が減少する。
【0020】
反応部10は例えばSUSからなるロータリーキルン11から構成されており、その内壁面は図示しない耐火材で覆われている。また、ロータリーキルン11は、加熱領域Aから構成され、加熱領域の上下にはヒータ12が配設されている。
【0021】
加熱領域Aは、1つ又は2つ以上から構成することができ、それぞれの加熱領域の上下にはヒータを配設することができる。加熱領域を2つ以上にすると、それぞれの加熱領域で異なる温度を設定することができ温度制御が容易となる。
【0022】
なお、ロータリーキルン11内には、以下に説明するように内部に導入されたセメント質硬化体を入口11Aから出口11Bまで所定の時間かけて搬送し、当該セメント質硬化体を均一に加熱して、炭酸化反応を均一に生ぜしめるべく、図示しない送り羽根、スクリュー、邪魔板、堰等の搬送・移動手段が適宜に配設されている。
【0023】
ロータリーキルン11内には、図2Aに側断面図、図2Bに縦断面図で示すように、互いに対向し、長さ方向に沿って配設された4つのプレートからなるリフター部材15を配設することができる。また、図3Aに側断面図、図3Bに縦断面図で示すように、三つ又に分岐し、長さ方向に沿って配設されたプレートからなるリフター部材16を配設することができる。さらに、図4Aに側断面図、図4Bに縦断面図で示すように、縦断面上が互いに対向し、長さ方向に沿って配設したピンからなるリフター部材17を配設することができる。
【0024】
これらのようにリフター部材15,16,17を配設することにより、ロータリーキルン11内に導入したセメント質硬化体を、当該ロータリーキルン11の回転に合わせて転動させることができ、後に説明するように、反応部であるロータリーキルン11内に供給した二酸化炭素及び水蒸気との接触面積及び時間を増大させることができる。結果として、セメント質硬化体上に炭酸化反応をより均一に行うことができるとともに、当該反応効率を向上させることができる。
【0025】
但し、上述したリフター部材15等は任意であって省略することができる。また、反応部10に関しても、ロータリーキルン11の代わりにトンネルキルン等を用いることができる。しかしながら、このような場合、セメント質硬化体の転動に炭酸化反応の均一化及び効率化を図ることが困難となる。
【0026】
セメント質硬化体供給部20は、例えばサークルフィーダー、テーブルフィーダー、スクリューフィーダー等のセメント質硬化体の定量供給が可能なセメント質硬化体供給機21と、供給されたセメント質硬化体を搬送するためのベルトコンベア22と、セメント質硬化体を反応部10であるロータリーキルン11内に供給するホッパー23とを備えている。
【0027】
なお、セメント質硬化体供給機21の上部には、セメント質硬化体を供給機21からベルトコンベア22に移動させる際に発生する埃や塵を集塵するための集塵機24が配設され、セメント質硬化体をベルトコンベア22からホッパー23に移動させる際に発生する埃や塵を集塵するための集塵機25が配設されている。
【0028】
セメント質硬化体は、セメント及び水を含む組成物が硬化してなるものを意味し、例えば、コンクリートからなる硬化体、モルタルからなる硬化体、セメントペーストからなる硬化体等を意味する。
【0029】
また、本明細書中、「セメント質硬化体」の語は、完全に硬化した硬化体の他、半硬化の硬化体(換言すると、硬化が進行中のもの)を包含するものとする。
【0030】
セメント質硬化体としては、廃棄物の利用促進の観点から、再生使用されるセメント硬化体が好ましく用いられる。再生使用されるセメント質硬化体の例としては、再生骨材や、コンクリート(廃コンクリート)若しくはモルタルからなる建材の廃材や、セメントペースト硬化体の廃材や、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジ(完全に硬化したもの、または、脱水処理後の半硬化状態のスラッジ)等が挙げられる。
【0031】
セメント質硬化体からなる粉粒状体は、二酸化炭素含有ガスとの接触面積を大きくして、固定化される二酸化炭素の量を増大させるために、100mm以下、好ましくは80mm以下、より好ましくは50mm以下の粒度を有する。ここで、粒度とは、粉粒状体における最大寸法(例えば、断面が楕円の形状である場合、長軸の寸法)をいう。
【0032】
二酸化炭素含有ガス供給部30は、二酸化炭素貯留・供給装置31と、この二酸化炭素貯留・供給装置31の下流側に配設された、例えば流量計及び調整弁からなる流量制御装置32と、二酸化炭素貯留・供給装置31から供給された二酸化炭素含有ガスを反応部10であるロータリーキルン11内に供給する1あるいは複数の供給管33とを備えている。
【0033】
供給管33は二重管ノズルとすることができる。これによって、供給管33において、二酸化炭素含有ガスと水蒸気との熱交換が可能となる。
【0034】
なお、本実施形態で使用する二酸化炭素含有ガスは、セメント工場の排ガスや、石炭火力発電所の排ガス等が挙げられる。また、工場の排ガスとしては、工場の排ガスから分離及び回収してなる高純度化したガスを用いることもできる。
【0035】
二酸化炭素含有ガス中の炭酸ガスの割合は、体積分率の値として、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である。該割合が5%以上であると、固定化される二酸化炭素の量が大きくなり、大気中への二酸化炭素の排出量の削減の効果が大きくなることから、好ましい。
【0036】
水蒸気供給部40は、水を加熱して水蒸気を発生させるボイラー41と、当該ボイラー41で発生させた水蒸気を加熱するスチームヒータ42と、スチームヒータ42の下流側に設けられた、例えば流量計及び調整弁からなる流量制御装置43と、水蒸気を反応部10であるロータリーキルン11内に供給する1あるいは複数の供給管44とを備えている。
【0037】
なお、スチームヒータ42は、ボイラー41で発生した水蒸気を流量制御装置43及び供給管44で結露しないような温度にまで加熱する必要がある。具体的な温度は、上記供給部40の大きさや構造等に依存する。
【0038】
供給管44は二重管ノズルとすることができる。これによって、供給管44において、二酸化炭素含有ガスと水蒸気との熱交換が可能となる。
【0039】
次に、図1に示す二酸化炭素の固定化装置1を用いた固定化方法について説明する。
最初に、反応部10であるロータリーキルン11内を稼働させ、内部の温度を、ヒータ12で、例えば75~175℃、好ましくは76~150℃、より好ましくは77~130℃に加熱する。因みに、当該温度が75~175℃の範囲外であると、固定化される二酸化炭素の量が小さくなる。
【0040】
次いで、セメント質硬化体供給部20からセメント質硬化体を反応部10であるロータリーキルン11内に供給する。すると、セメント質硬化体は、ロータリーキルン11内のセメント質硬化体を入口11Aから出口11Bまで所定の時間かけて移動するとともに、リフター部材15,16,17によってロータリーキルン11内を転動する。
【0041】
このとき、ロータリーキルン11に対して、セメント質硬化体供給部20の反対側に配設した二酸化炭素含有ガス供給部30から二酸化炭素含有ガスを供給するとともに、水蒸気供給部40から水蒸気を供給する。すると、ロータリーキルン11内部では、炭酸化反応に水蒸気を用いていること、及びセメント質硬化体と二酸化炭素含有ガス及び水蒸気とを向流させていることによって、これら接触の均一化及び接触割合が増大する。さらに、上述したセメント質硬化体の転動によっても二酸化炭素含有ガス及び水蒸気との接触割合が増大する。
【0042】
したがって、セメント質硬化体上での二酸化炭素含有ガスと水蒸気との炭酸化反応が均一化するとともに向上するので、セメント質硬化体に固定される二酸化炭素の割合(量)が増大する。結果として、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することが可能となる。
【0043】
なお、炭酸化反応が終了したセメント質硬化体は、反応部10であるロータリーキルン11内の出口11B側に配設した回収装置50で回収する。回収装置50には、図示しない篩を設けて、回収したセメント質硬化体を分級することもできる。
【0044】
なお、回収装置50は必須の装置ではなく、当該装置を設けることなく、ロータリーキルン11をバッチ式で使用し、反応に供したセメント質硬化体をロータリーキルン11から直接回収することもできる。
【0045】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。なお、図1に示す固定化装置と類似又は同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0046】
図5に示す二酸化炭素の固定化装置1は、第1実施形態の図1に示す水蒸気供給部を構成するボイラー41及びスチームヒータ42の代わりに水供給部50である貯水槽・供給装置51が設けられている点で、図1に示す二酸化炭素の固定化装置1と相違する。
【0047】
本実施形態の二酸化炭素の固定化装置では、反応部であるロータリーキルン11の内部温度を75℃以上の温度に保持している。したがって、第1の実施形態のように、ロータリーキルン11内に予め水蒸気を供給しなくとも、直接水を供給することにより、当該水がロータリーキルン11内で直ちに蒸気となり(図6参照)、結果的に当該ロータリーキルン11内に水蒸気を供給したのと同じ状態となる。
【0048】
結果として、ロータリーキルン11内部では、炭酸化反応に水蒸気を用いていること、及びセメント質硬化体と二酸化炭素含有ガス及び水蒸気とを向流させていることにより、これら接触の均一化及び接触割合が増大する。さらに、上述したセメント質硬化体の転動によっても二酸化炭素含有ガス及び水蒸気との接触割合が増大する。
【0049】
したがって、セメント質硬化体上での二酸化炭素含有ガスと水蒸気との炭酸化反応が均一化するとともに向上するので、セメント質硬化体に固定される二酸化炭素の割合(量)が増大する。結果として、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態における水には、図6から明らかなように、超臨界水も含むものであって、この場合は、図6から明らかなように、沸点以上の温度で圧力を臨界圧より低下させることにより、水蒸気とすることができる。
【0051】
その他の特徴及び作用効果については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0052】
(第3実施形態)
図7は、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。なお、図1に示す固定化装置と類似又は同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0053】
図7に示す二酸化炭素の固定化装置1は、第1実施形態の図1に示す水蒸気供給部を構成するボイラー41及びスチームヒータ42の代わりに氷供給部60である製氷機・供給装置61が設けられている点で、図1に示す二酸化炭素の固定化装置1と相違する。
【0054】
本実施形態の二酸化炭素の固定化装置では、反応部であるロータリーキルン11の内部温度を75℃以上の温度に保持している。したがって、第1の実施形態のように、ロータリーキルン11内に予め水蒸気を供給しなくとも、氷を供給することにより、当該氷がロータリーキルン11内で直ちに蒸気となり(図6参照)、結果的に当該ロータリーキルン11内に水蒸気を供給したのと同じ状態となる。
【0055】
結果として、ロータリーキルン11内部では、炭酸化反応に水蒸気を用いていること、及びセメント質硬化体と二酸化炭素含有ガス及び水蒸気とを向流させていることにより、これら接触の均一化及び接触割合が増大する。さらに、上述したセメント質硬化体の転動によっても二酸化炭素含有ガス及び水蒸気との接触割合が増大する。
【0056】
したがって、セメント質硬化体上での二酸化炭素含有ガスと水蒸気との炭酸化反応が均一化するとともに向上するので、セメント質硬化体に固定される二酸化炭素の割合(量)が増大する。結果として、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することが可能となる。
【0057】
その他の特徴及び作用効果については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
(第4実施形態)
図8は、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置の概略構成図である。なお、図1に示す固定化装置と類似又は同一の構成要素については同じ参照符号を用いている。
【0059】
図8に示すように、本実施形態の二酸化炭素の固定化装置1は、反応部10を箱型加熱炉71から構成し、その前段であってホッパー23の後段にセメント質硬化体供給容器81を配設している点で、図1に示す二酸化炭素の固定化装置1と相違する。
【0060】
箱型加熱炉71の内壁面は図示しない耐火材で覆われており、その内部には図示しないヒータが配設されている。
【0061】
セメント質硬化体供給用容器81は、セメント質硬化体が二酸化炭素及び水蒸気と接触するようにかごや網などのように穴があいている容器である。穴の径は、容器内のセメント質硬化体より小さければよい。
【0062】
次に、図8に示す二酸化炭素の固定化装置1を用いた固定化方法について説明する。
最初に、反応部10である箱型加熱炉71を稼働させ、内部の温度を、図示しないヒータで、例えば75~175℃、好ましくは76~150℃、より好ましくは77~130℃に加熱する。因みに、当該温度が75~175℃の範囲外であると、固定化される二酸化炭素の量が小さくなる。
【0063】
次いで、セメント質硬化体供給用容器81からセメント質硬化体を反応部10である箱型加熱炉71内に供給する。すると、セメント質硬化体は、箱型加熱炉71内の撹拌機72の攪拌翼73によって箱型加熱炉71内を転動する。
【0064】
このとき、箱型加熱炉71に対して、セメント質硬化体供給部20の反対側に配設した二酸化炭素含有ガス供給部30から二酸化炭素含有ガスを供給するとともに、水蒸気供給部40から水蒸気を供給する。すると、箱型加熱炉71内部では、炭酸化反応に水蒸気を用いていること、及びセメント質硬化体と二酸化炭素含有ガス及び水蒸気とを充填させていることによって、これら接触の均一化及び接触割合が増大する。さらに、上述したセメント質硬化体の転動によっても二酸化炭素含有ガス及び水蒸気との接触割合が増大する。
【0065】
したがって、セメント質硬化体上での二酸化炭素含有ガスと水蒸気との炭酸化反応が均一化するとともに向上するので、セメント質硬化体に固定される二酸化炭素の割合(量)が増大する。結果として、廃コンクリート等のセメント質硬化体に対して、二酸化炭素を効率的に固定化することが可能な装置を提供することが可能となる。
【0066】
その他の特徴及び作用効果については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
例えば、本実施形態では、図8に示すように、第4実施形態において、箱型加熱炉71内に水蒸気を供給する場合について説明したが、箱型加熱炉71内の温度を例えば75℃以上の温度に保持することにより、第2実施形態及び第3実施形態に示すように、箱型加熱炉71に直接水や氷を供給し、箱型加熱炉71内に水蒸気を生成するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 二酸化炭素の固定化装置
10 反応部
11 ロータリーキルン
12 ヒータ
15,16,17 リフター部材
20 セメント質硬化体供給部
21 セメント質硬化体供給機
22 ベルトコンベア
23 ホッパー
24,25 集塵機
30 二酸化炭素含有ガス供給部
31 二酸化炭素貯留・供給装置
32 流量制御装置
33 供給管
40 水蒸気供給部
41 ボイラー
42 スチームヒータ
43 流量制御装置
44 供給管
50 水供給部
51 貯水槽・供給装置
60 氷供給部
61 製氷機・供給装置
71 箱型加熱炉
72 撹拌機
73 攪拌翼
81 セメント質硬化体供給用容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8