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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】通信装置、プログラム、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
H04M1/00 V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021055129
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152376
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】深貝 直史
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-085532(JP,A)
【文献】特開2018-071190(JP,A)
【文献】特開2020-031351(JP,A)
【文献】特開2016-172472(JP,A)
【文献】特表2013-518468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部と、
前記第1の通信部および前記第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御部と、
を備える、通信装置であって、
前記第2の通信部は、当該通信装置と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、
前記制御部は、前記第1の通信部が検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる、
通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の通信部に、前記推定モードと前記検査モードとで異なる定数を用いて暗号化された無線信号を送信させる、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記検査用コマンドは、前記検査装置による当該通信装置の認証に用いられる情報の要求を兼ね、
前記制御部は、前記第1の通信部に、前記検査用コマンドへの応答として、前記検査装置による当該通信装置の認証に用いられる情報が含まれる検査用コマンド応答を送信させる、
請求項1または請求項2のうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の通信部が前記推定モードでの動作を指示する推定用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部を前記推定モードで動作させる、
請求項1から請求項3までのうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の通信部が前記推定用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に前記位置関係の推定に用いられる無線信号を送信させる、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記位置関係の推定は、当該通信装置と他の通信装置との間の距離を推定する測距を含む、
請求項1から請求項5までのうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第2の通信規格は、超広帯域無線通信を含む、
請求項1から請求項6までのうちいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
コンピュータに、
第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部、および前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御機能、
を実現させ、
前記第2の通信部は、前記第2の通信部と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、
前記制御機能に、前記第1の通信部が検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる制御を実行させる、
プログラム。
【請求項9】
通信装置と検査装置とを備え、
前記通信装置は、
第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部と、
前記第1の通信部および前記第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御部と、
を備え、
前記第2の通信部は、前記通信装置と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、
前記制御部は、前記第1の通信部が前記検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、プログラム、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で送受信した無線信号に基づく動作制御を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、車載器と携帯機との間で送受信された無線信号を用いて両装置間の距離を推定する測距を行い、当該測距の結果に応じた車両制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-71190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような無線信号を送受する装置は、推定用の無線信号を送受信する推定モードとは別途に検査用の無線信号を送受信する検査モードを有する場合もある。このような場合、推定モードおよび検査モード間の遷移を適切に制御することが重要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、通信装置の検査モードへの遷移をより堅牢に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部と、前記第1の通信部および前記第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御部と、を備え、前記第2の通信部は、当該通信装置と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、前記制御部は、前記第1の通信部が検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる、通信装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部、および前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御機能、を実現させ、前記第2の通信部は、前記第2の通信部と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、前記制御機能に、前記第1の通信部が検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる制御を実行させる、プログラムが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、通信装置と検査装置とを備え、前記通信装置は、第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第1の通信部と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する第2の通信部と、前記第1の通信部および前記第2の通信部による無線通信の送受信を制御する制御部と、を備え、前記第2の通信部は、前記通信装置と他の通信装置との位置関係の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、前記第2の通信部の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有し、前記制御部は、前記第1の通信部が前記検査装置から前記検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、前記第2の通信部に認証要求を送信させ、前記検査装置が前記認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて前記検査装置の真正性が認められる場合、前記第2の通信部を前記検査モードへ遷移させる、システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、通信装置の検査モードへの遷移をより堅牢に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る通信装置10の第2の通信部120が推定モードで動作する場合の流れの一例を示すシーケンス図である。
図3】同実施形態に係る検査モードへの遷移制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.実施形態>
<<1.1.システム構成例>>
まず、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例について述べる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、通信装置10および検査装置20を備えてもよい。
【0015】
(通信装置10)
本実施形態に係る通信装置10は、他の通信装置10または検査装置20との間において無線通信を行う。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る通信装置10は、第1の通信部110、第2の通信部120、および制御部130を備えてもよい。
【0017】
(第1の通信部110)
本実施形態に係る第1の通信部110は、他の通信装置10または検査装置20との間において第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する。
【0018】
上記第1の無線通信規格には、例えば、LF(Low Frequency)帯の信号、およびUHF(Ultra-High
Frequency)帯の信号が使用されてもよい。
【0019】
第1の通信部110は、第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信するためのアンテナ素子を備える。
【0020】
(第2の通信部120)
本実施形態に係る第2の通信部120は、他の通信装置10または検査装置20との間において、第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する。
【0021】
本実施形態に係る第2の通信部120は、通信装置10と他の通信装置10との位置関係(より正確には、当該第2の通信部120と他の通信装置10に備えられる他の第2の通信部120との位置関係)の推定に用いられる無線信号を送受信する推定モードと、第2の通信部120による無線信号の送受信等の検査に用いられる無線信号を送受信する検査モードとを有する。
【0022】
また、本実施形態に係る第2の通信部120は、制御部130による制御に従い、推定モードと検査モードとで異なる定数を用いて暗号化した無線信号を送信してもよい。
【0023】
上記第2の通信規格の一例としては、超広帯域(UWB:Ultra-Wide Band)無線通信が挙げられる。
【0024】
第2の通信部120は、第2の無線通信規格に準拠した無線信号を送受信するためのアンテナ素子を備える。
【0025】
(制御部130)
本実施形態に係る制御部130は、第1の通信部110および第2の通信部120による無線信号の送受信を制御する。
【0026】
例えば、本実施形態に係る制御部130は、第1の通信部110が他の通信装置10から推定モードでの動作を指示する推定用コマンドを受信した場合、第2の通信部120を推定モードで動作させてもよい。
【0027】
この場合、本実施形態に係る制御部130は、第2の通信部120に上述の位置関係の推定に用いられる無線信号を送信させてもよい。
【0028】
ここで、本実施形態に係る位置関係の推定には、例えば、通信装置10と他の通信装置10との間の距離(より正確には、第2の通信部120と他の通信装置10に備えられる他の第2の通信部120との間の距離)を推定する測距が含まれてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る制御部130は、第2の通信部120の推定モードから検査モードへの遷移を制御する。
【0030】
例えば、本実施形態に係る制御部130は、第1の通信部110が検査装置20から検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを受信した場合、第2の通信部120に認証要求を送信させる。
【0031】
上記認証要求は、検査装置20の認証に用いられる情報、より詳細には検査装置20の真正性の判定に用いられる情報を要求する信号であってよい。
【0032】
上記検査装置20の真正性の判定に用いられる情報には、例えば、検査装置20に割り当てられた識別子、パスワード、認証要求に含まれる乱数等を用いて算出されたハッシュ値などが含まれる。
【0033】
ここで、検査装置20が認証要求への応答として送信する認証応答に基づいて検査装置20の真正性が認められる場合、制御部130は、第2の通信部120を検査モードへ遷移させてもよい。
【0034】
上記のような制御によれば、検査装置20の真正性を確かめたうえで第2の通信部120を検査モードへと遷移させることができ、より堅牢なモード制御を実現することが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る制御部130が有する機能は、各種のプロセッサにより実現される。本実施形態に係る制御部130が有する機能の詳細については別途説明する。
【0036】
(検査装置20)
本実施形態に係る検査装置20は、通信装置10の第2の通信部120による無線信号の送受信等に係る検査を行うための装置である。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置20は、第1の通信部210、第2の通信部220、および制御部230を備えてもよい。
【0038】
(第1の通信部210)
本実施形態に係る第1の通信部210は、通信装置10との間において第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信する。
【0039】
このために、第1の通信部210は、第1の通信規格に準拠した無線信号を送受信するためのアンテナ素子を備える。
【0040】
一例として、本実施形態に係る第1の通信部210は、制御部230による制御に従い、通信装置10の第2の通信部120の検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを送信する。
【0041】
(第2の通信部220)
本実施形態に係る第2の通信部220は、通信装置10との間において第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信する。
【0042】
このために、第2の通信部220は、第2の通信規格に準拠した無線信号を送受信するためのアンテナ素子を備える。
【0043】
一例として、本実施形態に係る第2の通信部220は、制御部230による制御に従い、通信装置10から受信した認証要求への応答として、検査装置20の真正性の判定に用いられる情報が含まれる認証応答を送信する。
【0044】
検査装置20の真正性の判定に用いられる情報には、例えば、検査装置20に割り当てられた識別子、パスワード、認証要求に含まれる乱数等を用いて算出されたハッシュ値などが挙げられる。
【0045】
また、第2の通信部220は、上記認証応答を、予め規定された検査モード用の定数を用いて暗号化してもよい。
【0046】
(制御部230)
本実施形態に係る制御部230は、第1の通信部210および第2の通信部220による無線信号の送受信を制御する。
【0047】
本実施形態に係る制御部230が有する機能は、各種のプロセッサにより実現される。本実施形態に係る制御部230が有する機能の詳細については別途説明する。
【0048】
以上、本実施形態に係るシステム1の構成例について述べた。なお、図1を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係るシステム1の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係るシステム1の構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0049】
<<1.2.詳細>>
次に、本実施形態に係るシステム1の動作について詳細に説明する。
【0050】
まず、本実施形態に係る通信装置10の第2の通信部120が推定モードで動作する場合の流れについて述べる。
【0051】
図2は、本実施形態に係る通信装置10の第2の通信部120が推定モードで動作する場合の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0052】
なお、図2には、位置関係の推定が通信装置10aと通信装置10bとの間の距離を推定する測距である場合が例示される。
【0053】
このため、以下においては、本実施形態に係る推定モードを測距モードと称する場合がある。
【0054】
また、図2には、通信装置10bが第1の通信規格に準拠した無線信号を用いた通信装置10aの認証、および第2の通信規格に準拠した無線信号を用いた測距の結果に基づいてなんらかの制御を実行する場合が例示される。
【0055】
図2に示す一例の場合、まず、通信装置10bの第1の通信部110bが、起動を指示する信号であるウェイクアップ信号を送信する(S102)。
【0056】
次に、ステップS102においてウェイクアップ信号を受信した通信装置10aの第1の通信部110aが、当該ウェイクアップ信号への応答として、起動することを示すACK(Acknowledgement)信号を送信する(S104)。
【0057】
次に、通信装置10bの制御部130bは、ステップS104において第1の通信部110bがACK信号を受信したことに基づいて、測距モードでの動作を指示する測距用コマンドを第1の通信部110bに送信させる(S106)。
【0058】
なお、本実施形態に係る測距用コマンドは、通信装置10aの認証に用いられる情報、より詳細には通信装置10aの真正性の判定に用いられる情報を要求する信号を兼ねてもよい。
【0059】
ステップS106において測距用コマンドを受信した通信装置10aの第1の通信部110aは、制御部130aによる制御に従い、第2の通信部120aを測距モードで動作させることを示す測距用コマンド応答を送信する(S108)。
【0060】
本実施形態に係る測距用コマンド応答には、通信装置10aの真正性の判定に用いられる情報が含まれてもよい。
【0061】
上記通信装置10aの真正性の判定に用いられる情報には、例えば、通信装置10aに割り当てられた識別子、パスワード、測距用コマンドに含まれる乱数等を用いて算出されたハッシュ値などが含まれる。
【0062】
次に、ステップS108において測距用コマンド応答を受信した通信装置10bの第1の通信部110bは、制御部130bによる制御に従い、当該測距用コマンドに含まれる情報に基づいて通信装置10aの認証を行う(S110)。
【0063】
ステップS110において通信装置10aの真正性が認められた場合、通信装置10bの制御部130bは、第2の通信部120bを受信待機状態に遷移させる。
【0064】
一方、通信装置10aの制御部130aは、第2の通信部120aを測距モードで動作させ、第2の通信部120aに第1の測距用信号を送信させる(S112)。
【0065】
ステップS112において第1の測距用信号を受信した通信装置10bの第2の通信部120bは、当該第1の測距用信号への応答として第2の測距用信号を送信する(S114)。
【0066】
次に、ステップS114において第2の測距用信号を受信した通信装置10aの第2の通信部120aは、第1の測距用信号および第2の測距用信号を用いて第2の通信部120aと第2の通信部120bとの間の距離の推定値である測距値を算出する(S116)。
【0067】
第2の通信部120aは、第1の測距用信号を送信した時刻から第2の測距用信号を受信する時刻までの時間ΔT1と、第2の通信部120bが第1の測距用信号を受信した時刻から第2の測距用信号を送信するまでの時間ΔT2とに基づいて、測距値を算出することが可能である。
【0068】
より具体的には、第2の通信部120aは、時間ΔT1から時間ΔT2を差し引くことにより第1の測距用信号および第2の測距用信号の伝搬に要した時間(すなわち往復の通信に要した時間)を算出することができ、また当該時間を2で割ることにより、第1の測距用信号または第2の測距用信号のいずれかの伝搬に要した時間(すなわち片道の通信に要した時間)を算出することができる。
【0069】
さらには、第2の通信部120aは、(時間ΔT1-時間ΔT2)/2の値に信号の速度を掛けることで、測距値を算出することが可能である。
【0070】
第2の通信部120aは、上記のように算出した測距値を第2の通信部120bに対して送信する(S118)。
【0071】
通信装置10bの制御部130bは、ステップS118において第2の通信部120bが受信した測距値に基づいて何らかの制御を実行する。
【0072】
以上、本実施形態に係る通信装置10の第2の通信部120が推定モードで動作する場合の流れについて一例を挙げて説明した。
【0073】
なお、図2を用いた上記の説明では、第1の測距用信号を通信装置10aの第2の通信部120aが送信し、第2の測距用信号を通信装置10bの第2の通信部120bが送信する場合の例について述べた。
【0074】
一方、第1の測距用信号は通信装置10bの第2の通信部120bにより送信され、第2の測距用信号は通信装置10aの第2の通信部120aにより送信されてもよい。
【0075】
また、測距値の算出も同様に、通信装置10aの第2の通信部120aまたは通信装置10bの第2の通信部120bのいずれかにより実行されればよい。
【0076】
測距値の算出は、上述の時間ΔT1および時間ΔT2に関する情報を送受信することにより、第2の通信部120aと第2の通信部120bのいずれでも実行可能である。
【0077】
さらには、第1の測距用信号および第2の測距用信号の送受信、測距値の算出は複数回実行されてもよい。
【0078】
本実施形態に係る測距の流れは柔軟に変形可能である。
【0079】
続いて、本実施形態に係る検査モードへの遷移の制御について詳細に説明する。
【0080】
通信装置10の第2の通信部120が推定モードと検査モードとの2つの異なる動作モードを有する場合、モード間の遷移制御を適切に行うことが求められる。
【0081】
適切ではないタイミングで第2の通信部120が推定モードから検査モードへと遷移した場合、様々な不利益が生じる。
【0082】
例えば、適切ではないタイミングで検査モードへの遷移が行われた場合、位置関係の推定を実行することができず、システムが正常に動作しない可能性が生じる。
【0083】
また、例えば、検査モードでは、検査に用いられる種々の無線信号の送受信が行われることから、推定モードと比較して無線信号を受信するための受信待機状態が長期化することが想定される。
【0084】
このことから、適切ではないタイミングで検査モードへの遷移が行われた場合、不必要に消費電力が増大し、特に通信装置10がモバイル機器であり電池駆動する場合においては、電池寿命を減らす要因ともなり得る。
【0085】
また、例えば、悪意のある第三者により検査モードへの遷移を指示する信号が送信され、当該信号に基づいて検査モードへと遷移した場合、第2の通信部120が用いるデータの書き換えなどが行われてしまう可能性も捨てきれない。
【0086】
本実施形態に係る通信装置10は、適切なタイミングでのみ第2の通信部120を検査モードへと遷移させ、上記のような各種の可能性を排除するものである。
【0087】
このために、本実施形態に係る通信装置10は、検査用コマンドを送信する検査装置20の認証を実行し、当該検査装置20の真正性が認められる場合にのみ第2の通信部120を検査モードへ遷移させることを特徴の一つとする。
【0088】
上記のような特徴によれば、検査モードへの遷移をより堅牢に制御することが可能となる。
【0089】
図3は、本実施形態に係る検査モードへの遷移制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0090】
図3に示す一例の場合、まず、検査装置20の第1の通信部210が、起動を指示する信号であるウェイクアップ信号を送信する(S202)。
【0091】
次に、ステップS202においてウェイクアップ信号を受信した通信装置10の第1の通信部110が、当該ウェイクアップ信号への応答として、起動することを示すACK信号を送信する(S204)。
【0092】
次に、検査装置20の第1の通信部210は、ステップS204において第1の通信部210がACK信号を受信したことに基づいて、検査モードへの遷移を指示する検査用コマンドを第1の通信部210に送信させる(S206)。
【0093】
なお、本実施形態に係る検査用コマンドは、通信装置10の認証に用いられる情報、より詳細には通信装置10の真正性の判定に用いられる情報を要求する信号を兼ねてもよい。
【0094】
ステップS206において検査用コマンドを受信した通信装置10の第1の通信部110は、制御部130による制御に従い、第2の通信部120を検査モードへ遷移させることを示す検査用コマンド応答を送信する(S208)。
【0095】
本実施形態に係る検査用コマンド応答には、通信装置10の真正性の判定に用いられる情報が含まれてもよい。
【0096】
上記通信装置10の真正性の判定に用いられる情報には、例えば、通信装置10に割り当てられた識別子、パスワード、測距用コマンドに含まれる乱数等を用いて算出されたハッシュ値などが含まれる。
【0097】
次に、ステップS208において検査用コマンド応答を受信した検査装置20の第1の通信部210は、制御部230による制御に従い、当該検査用コマンドに含まれる情報に基づいて通信装置10の認証を行う(S210)。
【0098】
ステップS210において通信装置10の真正性が認められた場合、検査装置20の制御部230は、第2の通信部220を受信待機状態に遷移させる。
【0099】
一方、通信装置10の制御部130は、第2の通信部120に、検査装置20の真正性の判定に用いられる情報を要求する認証要求を送信させる(S212)。
【0100】
この際、制御部130は、第2の通信部120に、推定モードとは異なる定数を用いて暗号化された認証要求を送信さてもよい。
【0101】
このように、推定モードと検査モードとで異なる定数を用いた暗号化を行うことで、検査装置20の真正性をより厳密に判定することが可能となる。
【0102】
ステップS212において認証要求を受信した検査装置20の第2の通信部220は、当該認証要求への応答として検査装置20の真正性の判定に用いられる情報が含まれる認証応答を送信する(S214)。
【0103】
次に、ステップS214において認証応答を受信した通信装置10の第1の通信部110は、制御部130による制御に従い、当該認証応答に含まれる情報に基づいて検査装置20の認証を行う(S216)。
【0104】
ステップS216において検査装置20の真正性が認められた場合、制御部130は、第2の通信部120を検査モードへと遷移させる(S218)。
【0105】
以降、通信装置10の第2の通信部120と検査装置20の第2の通信部220との間において、予め規定された、あるいはステップS206において送受信された検査用コマンドにより規定される検査に応じた無線信号の送受信が行われる。
【0106】
以上説明したように、検査用コマンドを送信する検査装置20の認証を実行し、当該検査装置20の真正性が認められる場合にのみ第2の通信部120を検査モードへ遷移させることを特徴の一つとする。
【0107】
上記のような特徴によれば、検査モードへの遷移をより堅牢に制御することが可能となる。
【0108】
<2.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0109】
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1:システム、10:通信装置、110:第1の通信部、120:第2の通信部、130:制御部、20:検査装置、210:第1の通信部、220:第2の通信部、230:制御部
図1
図2
図3