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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
G01N27/16 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021072955
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167262
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】釆女 泰久
(72)【発明者】
【氏名】小澤 尚史
(72)【発明者】
【氏名】笹原 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】宮城 敦子
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168463(JP,A)
【文献】特開平09-072872(JP,A)
【文献】特開2020-076690(JP,A)
【文献】特開2016-031292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンガス又はイソブタンガスである第1ガスを検出するための第1センサ、及び、一酸化炭素ガス又は水素ガスである第2ガスを検出するための第2センサを有するセンサ素子と、
前記センサ素子が搭載される基台と共に前記センサ素子の外周を覆い、一部に開口部が形成されたケーシングと、
前記ケーシングの前記開口部と前記センサ素子との間に設けられたフィルタと、を備え、
前記フィルタは、金ナノ粒子と、前記金ナノ粒子を担持した担体とを有し、
前記担体は、比表面積が100m/g以上であって、担持された金が第2ガスに対して活性を示さない物質で構成されている
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記フィルタは、金ナノ粒子と前記金ナノ粒子を担持した前記担体とを備えた第1フィルタよりも前記開口部側に設けられ、活性炭、活性白土、メソ多孔シリカ、アルミナ及びゼオライトの少なくとも1つを含む第2フィルタを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記センサ素子は、間欠的に加熱される際の加熱時間中における第1時刻の信号を第1ガスの濃度信号として出力し、前記加熱時間中における第2時刻の信号を第2ガスの濃度信号として出力する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知対象ガスに対して感度を有するセンサ素子と、センサ素子の被毒物質を除去するフィルタとを備えたガスセンサが知られている。このようなガスセンサのフィルタには、シリコーンガスや硫黄系ガスを吸着する目的で活性炭材料が用いられている。また、活性炭材料は高温高湿条件において充分な吸着能力を有しないことから、これを補う目的で白金系触媒と活性炭とを併用したフィルタについても提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、白金触媒は雑ガスであるエタノールから酢酸を生成してセンサ素子に悪影響を及ぼすことから、酢酸を中和する目的で炭酸カルシウムを用いたフィルタについても提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-135270号公報
【文献】特開2020-076690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2に記載のフィルタは、メタンガス又はイソブタンを検出するセンサ素子に適用する場合にはこれらガスを通過させると共にシリコーンガスや硫黄系ガスを吸着することから、充分な性能を有する。しかし、特許文献2に記載のフィルタは白金が一酸化炭素や水素を強く吸着してしまう。このため、メタンガス等のみならず一酸化炭素又は水素についても検出したい場合には、充分な性能を有しているとは言い難い。
【0006】
さらに、特許文献2に記載のフィルタは白金を有することから、エタノールから生成される酢酸への対策として炭酸カルシウムを必要としてしまい、構成の複雑化を招いてしまう。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、より簡素な構成で、メタンガス等のみならず一酸化炭素又は水素を検出するに好適なフィルタを有するガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスセンサは、メタンガス又はイソブタンガスである第1ガスを検出するための第1センサ、及び、一酸化炭素ガス又は水素ガスである第2ガスを検出するための第2センサを有するセンサ素子と、前記センサ素子が搭載される基台と共に前記センサ素子の外周を覆い、一部に開口部が形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記開口部と前記センサ素子との間に設けられたフィルタと、を備え、前記フィルタは、金ナノ粒子と、前記金ナノ粒子を担持した担体とを有し、前記担体は、比表面積が100m/g以上であって、担持された金が第2ガスに対して活性を示さない物質で構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルタは、金ナノ粒子を有するため、金ナノ粒子によって被毒物質であるシリコーンガスや硫黄系ガスを吸着することができる。さらに、担体については担持された金が一酸化炭素ガスや水素ガスに対して活性を示さない物質で構成されているため、金ナノ粒子が一酸化炭素ガスや水素ガスを吸着させることがなく通過させることとなり、これらをセンサ素子にて検出することができる。また、白金を用いる必要がないことから炭酸カルシウム等も必要が無く、構成の複雑化が抑制されている。従って、より簡素な構成で、メタンガス等のみならず一酸化炭素又は水素を検出するに好適なフィルタを有するガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るガスセンサを含むガス検出装置の概略構成を示す構成図である。
図2】本実施形態に係るセンサ素子の出力の一例を示すグラフである。
図3図1に示したガスセンサの断面図である。
図4図3に示した第1フィルタの詳細を示す模式図である。
図5】本実施形態に係るガスセンサが二酸化硫黄ガス(硫黄系ガス)に曝されたときのメタンに対する感度と感度劣化率を示すグラフである。
図6】本実施形態に係るガスセンサがシロキサン(シリコーンガス)に曝されたときのメタンに対する感度と感度劣化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るガスセンサ10を含むガス検出装置1の概略構成を示す構成図である。図1に示すように、ガス検出装置1は、ガスセンサ10と、MCU(MicroControlUnit)20とを備えている。
【0013】
ガスセンサ10は、センサ素子11を含むセンサ回路12を備えている。センサ素子11は、検出対象ガスが触媒にて燃焼することにより出力が変化するものである。燃焼量は検出対象ガスの濃度によって変化するため、センサ素子11は検出対象ガスの濃度に応じた信号を出力するものとして機能する。本実施形態においてセンサ素子11は、メタンガス又はイソブタンガスである第1ガスを検出するための第1センサ11aと、一酸化炭素ガス又は水素ガスである第2ガスを検出する第2センサ11bとを備えている。
【0014】
第1センサ11a及び第2センサ11bは、ビーズ状の担体にコイルが埋め込まれ触媒が担体に担持されたビーズタイプのもの、基板上にヒーターがパターニングされ触媒が担持されたマイクロセンサタイプのもの等が該当する。以下、本実施形態ではマイクロセンサタイプのものを想定して説明するが、第1センサ11a及び第2センサ11bはマイクロセンサタイプのものに限られるわけではない。
【0015】
第1センサ11aは、第1のヒーター111aと、第1の担体112aと、第1の触媒113aとを備えている。第1のヒーター111aは基板上に形成された白金(Pt)等のパターンによって構成されている。第1の担体112aは、第1のヒーター111aを覆うものである。第1の担体112aの材料としては、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)等が挙げられる。
【0016】
第1の触媒113aは、第1の担体112aに担持された触媒であり、検出対象の第1ガスが化学吸着又は物理吸着する特性を示す触媒である。本実施形態において第1の触媒113aは白金である。
【0017】
第2センサ11bは、第2のヒーター111bと、第2の担体112bと、第2の触媒113bとを備えている。第2のヒーター111bは基板上に形成された白金等のパターンによって構成されている。第2の担体112bは、第2のヒーター111bを覆うものである。第2の担体112bの材料としては、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0018】
第2の触媒113bは、第2の担体112bに担持された触媒であり、検出対象の第2ガスが接触燃焼特性を示す触媒である。本実施形態では、第2の触媒113bは、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、又は、金(Au)である。
【0019】
センサ回路12は、第1センサ11a、第2センサ11b及び2つの固定抵抗R1,R2を有してブリッジ回路を構成している。詳細に説明すると、第1センサ11a(第1のヒーター111aのコイル)の一端は接続点Aにつながっている。接続点AはVH端子に接続されている。VH端子は電源に接続されると共に、後述するヒーター駆動回路21に接続され、ヒーター駆動回路21によって電源と接続点Aが導通されたり遮断されたりする。
【0020】
第1センサ11aの他端は第2センサ11b(第2のヒーター111bのコイル)の一端に接続されている。第2センサ11bの他端は、接続点Bにつながっている。接続点Bはグランド接続されている。
【0021】
接続点Aは、第1固定抵抗R1の一端に接続されている。第1固定抵抗R1の他端は第2固定抵抗R2の一端に接続され、第2固定抵抗R2の他端は接続点Bにつながっている。また、第1固定抵抗R1と第2固定抵抗R2との間には、可変抵抗R3が介装されている。
【0022】
MCU20は、ヒーター駆動回路21と、出力検出部22と、濃度判断部23とを備えている。ヒーター駆動回路21は、接続点Aと電源とを導通させたり遮断させたりするものである。特に、ヒーター駆動回路21は、接続点Aと電源とについて導通状態と遮断状態とを繰り返すことにより、第1及び第2センサ11a,11b(センサ素子11)を間欠的に加熱(駆動)することとなる。
【0023】
出力検出部22は、センサ素子11の出力を検出するものである。出力検出部22は、第1端子22aが第1センサ11aと第2センサ11bとの間に接続され、第2端子22bが可変抵抗R3に接続されている。出力検出部22は、このように接続される端子22a,22bの電位差を出力として検出することとなる。
【0024】
図2は、本実施形態に係るセンサ素子11の出力の一例を示すグラフである。なお、図2においては第1ガスがメタンガスであり、第2ガスが一酸化炭素ガスである例を説明する。また、図2においては、時刻0から時刻100msecにおいてセンサ素子11が加熱されているものとし、時刻0より前、及び、時刻100msecよりも後の期間においてはセンサ素子11が加熱されていないものとする。
【0025】
図2に示すように、第2ガスである一酸化炭素ガスはセンサ素子11が加熱されると比較的直後に燃焼して時刻t2(第2時刻)で高い感度を示す。ここで、第2センサ11bは、ヒーター駆動回路21により加熱されていない期間(時刻0より前)において一酸化炭素ガスを吸着する。このため、第2センサ11bが加熱されると、吸着した一酸化炭素ガスが一気に燃焼することとなり、加熱開始直後の時刻t2において高い感度を示す。センサ素子11は、この時刻t2の信号を第1ガスの濃度信号として出力することとなる。
【0026】
一方、第1センサ11aは、ヒーター駆動回路21により加熱されていない期間においてメタンガスを吸着しない。このため、第1センサ11aは、ヒーター駆動回路21による加熱開始直後において特段高い感度を示すわけではなく、例えば加熱さえてからある程度の時間が経過した時刻t1(第1時刻)において高い感度を示す。センサ素子11は、この時刻t1の信号を第2ガスの濃度信号として出力することとなる。
【0027】
再度図1を参照する。濃度判断部23は、センサ素子11から濃度信号それぞれ、すなわち出力検出部22により検出されたセンサ出力それぞれに基づいて、第1及び第2ガスの濃度を判断するものである。上記したようにセンサ素子11から出力される濃度信号は、第1ガスの濃度及び第2ガスの濃度を反映したものとなる。よって、濃度判断部23は、出力検出部22により検出されたセンサ出力に基づいて、第1及び第2ガスの濃度を判断する。
【0028】
さらに、MCU20は、濃度判断部23により判断された濃度が異常濃度であるかを判断する異常判断部や、異常判断部により異常濃度であると判断した場合に音声や表示により警報を行う警報部を備えていてもよい。
【0029】
図3は、図1に示したガスセンサ10の断面図である。図3に示したガスセンサ10は、上記した構成に加えて、基台13と、ケーシング14と、フィルタ15とを備えている。
【0030】
基台13は、センサ素子11を搭載する板状部材である。ケーシング14は、基台13と共にセンサ素子11の外周を覆うものであって、基台13と対向する天板(一部)14aに開口部14bが形成されたものである。開口部14bは、1又は複数の通気孔を有して構成されている。また、ケーシング14は、開口部14cが形成された指示板14dを有しており、天板14aと指示板14dとでフィルタ15を挟み込んでフィルタ15を保持する。
【0031】
フィルタ15は、ケーシング14の開口部14bとセンサ素子11との間に設けられ、センサ素子11の被毒対象となるシリコーンガス及び硫黄系ガスの双方を吸着するものである。このフィルタ15は、第1~第3フィルタ15a~15cを有している。
【0032】
図4は、図3に示した第1フィルタ15aの詳細を示す模式図である。第1フィルタ15aは、金ナノ粒子15a1と、金ナノ粒子15a1を担持した担体15a2とを有して構成されている。さらに、担体15a2は、比表面積が100m/g以上であって、担持された金が一酸化炭素ガスや水素ガスに対して活性を示さない物質(20℃以上25℃以下の常温で活性を示さない物質)によって構成されている。具体的に担体15a2は、酸化アルミニウム、シリカ(SiO)、及び、カーボン(C)等によって構成されている。
【0033】
ここで、金は、シリコーンガス及び硫黄系ガスの双方を吸着する。しかも、担体15a2は比表面積が100m/g以上であることから金ナノ粒子15a1が担持される面積を広くすることとなる。よって、本実施形態に係る第1フィルタ15aは、シリコーンガス及び硫黄系ガスの双方を好適に吸着させることができる。
【0034】
また、担体15a2は金が一酸化炭素ガスや水素ガスに対して活性を示さない物質によって構成されている。このため、第1フィルタ15aは、金ナノ粒子15a1が第1ガスを吸着しないようにすることができ、第1ガスを通過させることができる。
【0035】
第2及び第3フィルタ15b,15cは、第1フィルタ15aに積層されて設けられた活性炭のフィルタ部材である(図3参照)。これら第2及び第3フィルタ15b,15cは、活性炭によって構成されている。このうち第2フィルタ15bは、第1フィルタ15aよりも開口部14b側に設けられている。第3フィルタ15cは、第1フィルタ15aよりもセンサ素子11側に設けられている。
【0036】
ここで、第1フィルタ15aの金ナノ粒子15aについては、シリコーンガスや硫黄系ガスを吸着したまま保持し易い傾向にある。このため、第1フィルタ15aについては長期使用によって被毒物質の吸着機能の低下を招きやすくなってしまう。
【0037】
しかし、本実施形態においては第1フィルタ15aよりも開口部14b側に活性炭にて構成される第2フィルタ15bが設けられていることから、(特に高温高湿でない環境下において)開口部14bから侵入したシリコーンガスや硫黄系ガスを第2フィルタ15bにより吸着させることができる。よって、第2フィルタ15bによって第1フィルタ15aの吸着機能低下を抑制することができる。しかも、第2フィルタ15bの素材である活性炭は、金に比べると一度吸着したシリコーンガスや硫黄系ガスを時間経過に伴い放出する傾向があり、吸着機能を回復するものとなっている。よって、第2フィルタ15bが吸着したシリコーンガス等を時間経過に伴って再度開口部14bから放出することから、抑制効果を長期に亘って発揮させることも可能である。
【0038】
なお、本実施形態に係るフィルタ15は第3フィルタ15cについても備えている。このため、第1フィルタ15aのシリコーンガス等の吸着機能が低下してしまい、且つ、第2フィルタ15bについてもシリコーンガス等の吸着後に放出があまり行われていない段階においては、第3フィルタ15cによってシリコーンガス等を吸着することができる。
【0039】
図5は、本実施形態に係るガスセンサ10が二酸化硫黄ガス(硫黄系ガス)に曝されたときのメタンに対する感度と感度劣化率を示すグラフであり、図6は、本実施形態に係るガスセンサ10がシロキサン(シリコーンガス)に曝されたときのメタンに対する感度と感度劣化率を示すグラフである。なお、図5及び図6においては双方共に高温高湿環境(40℃,85%RH)とし、担体15a2であるシリカに対して1wt%の金ナノ粒子15a1を担持したものを第1フィルタ15aとして用いた。さらに、図5及び図6においては、第1フィルタ15aに代えて比較対象のフィルタを用いたときの感度と感度変化率についても示した。比較対象のフィルタは、アルミナ(Al)に対して15wt%の白金を担持したものとした。
【0040】
特に、図5及び図6については双方共に高温高湿環境であることから、第2及び第3フィルタ15b,15cについてはシリコーンガス等の吸着機能を充分には発揮していない環境下であるといえる。
【0041】
図5に示すように、本実施形態に係るガスセンサ10を1000ppmの二酸化硫黄ガスに曝した場合、経過日数が0日から22日迄の期間の全てにおいて3000ppmのメタンガスに対して約6~7mVの信号が出力されている。一方、比較対象のフィルタを備えるガスセンサに対して1000ppmの二酸化硫黄ガスに曝した場合も同様に、経過日数が0日から22日迄の期間の全てにおいて3000ppmのメタンガスに対して6~7mVの信号が出力されている。
【0042】
また、経過日数が0日から22日迄の期間における感度の劣化率に関しても、本実施形態と比較対象のフィルタとの双方で-20%を下回ることがなく、同様の劣化率を示している。
【0043】
よって、本実施形態に係るガスセンサ10は、二酸化硫黄ガス(硫黄系ガス)に対して、比較対象のフィルタ(特許文献1,2と同様のフィルタ)と同等の吸着性能を示しているといえる。
【0044】
また、図6に示すように、本実施形態に係るガスセンサ10をD4が6.5ppmでD5が1.3ppmのシロキサンガスに曝した場合、経過日数が0日から39日迄の期間の全てにおいて3000ppmのメタンガスに対して約6~7mVの信号が出力されている。一方、比較対象のフィルタを備えるガスセンサに対してD4が6.5ppmでD5が1.3ppmのシロキサンガスに曝した場合、経過日数が0日から39日迄の期間の全てにおいて3000ppmのメタンガスに対して約6~8mVの信号が出力されている。
【0045】
本実施形態と比較対象のフィルタとで経過日数が0日から39日迄の期間における感度の劣化率を比較すると、本実施形態では-20%を下回ることがないのに対して、比較対象のフィルタでは-20%を下回る期間も存在している。
【0046】
よって、本実施形態に係るガスセンサ10は、シロキサンガス(シリコーンガス)に対して、比較対象のフィルタ(特許文献1,2と同様のフィルタ)よりも優れた吸着性能を示しているといえる。
【0047】
よって、本実施形態に係るガスセンサ10のフィルタ15(特に第1フィルタ15a)は比較対象のフィルタよりも優れた吸着性能を有し、且つ、上記したように一酸化炭素ガスや水素ガスである第2ガスを吸着しないことから、メタンやイソブタンである第1ガスのみならず第2ガスについても検出したい場合に有用であることがわかった。
【0048】
このようにして、本実施形態に係るガスセンサ10によれば、第1フィルタ15aは、金ナノ粒子15a1を有するため、金ナノ粒子15a1によって被毒物質であるシリコーンガスや硫黄系ガスを吸着することができる。さらに、担体15a2については担持された金が一酸化炭素ガスや水素ガスに対して活性を示さない物質で構成されているため、金ナノ粒子15a1が一酸化炭素ガスや水素ガスを吸着させることがなく通過させることとなり、これらガスをセンサ素子11にて検出することができる。また、白金を用いる必要がないことから炭酸カルシウム等も必要が無く、構成の複雑化が抑制されている。従って、より簡素な構成で、メタンガス等のみならず一酸化炭素又は水素を検出するに好適なフィルタ15aを有するガスセンサ10を提供することができる。
【0049】
また、第1フィルタ15aよりも開口部14b側に設けられ活性炭を含む第2フィルタ15bを有するため、シリコーンガスや硫黄系ガスについては、金ナノ粒子15a1に吸着するのに先立って、まず活性炭に吸着する。特に、金ナノ粒子15a1はシリコーンガスや硫黄系ガスを吸着したまま長時間捕捉状態となるが、活性炭については一度吸着したシリコーンガスや硫黄系ガスを時間経過に伴って放出していく傾向があり、開口部14bを通じでシリコーンガスや硫黄系ガスを放出することができる。結果として、第1フィルタ15aの長寿命化に寄与することができる。
【0050】
また、センサ素子11が加熱時間中の時刻t1の信号を第1ガスの濃度信号として出力し、時刻t2の信号を第2ガスの濃度信号として出力するものであるため、1つのセンサ素子11によって2種類のガスに対して感度を有することとなり、ガスセンサ10の小型化等に寄与することができる。
【0051】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0052】
上記実施形態においてフィルタ15は第1~第3フィルタ15a~15cによって構成されているが、これに限らず、第1フィルタ15aのみによって構成されていてもよいし、第1ガス及び第2ガスを吸着しなければ他のフィルタが追加されていてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態に係るセンサ素子11は、第1センサ11aと第2センサ11bとの双方を有したブリッジ回路を含んで単一のセンサとして構成されているが、特にこれに限らず、ブリッジ回路にて構成されていなくともよいし、更には第1センサ11aと参照素子とを含む第1ブリッジ回路と、第2センサ11bと参照素子とを含む第2ブリッジ回路との2つのブリッジ回路を有していてもよい(第1センサ11aと第2センサ11bとは別々のセンサであってもよい)。
【0054】
また、上記実施形態において第2及び第3フィルタ15b,15cは活性炭のフィルタであるが、特にこれに限らず、活性白土、メソ多孔シリカ、アルミナ及びゼオライトの少なくとも1つによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :ガス検出装置
10 :ガスセンサ
11 :センサ素子
11a :第1センサ
11b :第2センサ
12 :センサ回路
13 :基台
14 :ケーシング
14a :天板
14b :開口部
14c :開口部
14d :指示板
15 :フィルタ
15a :第1フィルタ
15a1 :金ナノ粒子
15a2 :担体
15b :第2フィルタ
15c :第3フィルタ
20 :MCU
21 :ヒーター駆動回路
22 :出力検出部
22a :第1端子
22b :第2端子
23 :濃度判断部
111a :第1のヒーター
111b :第2のヒーター
112a :第1の担体
112b :第2の担体
113a :第1の触媒
113b :第2の触媒
A :接続点
B :接続点
R1 :第1固定抵抗
R2 :第2固定抵抗
R3 :可変抵抗
t1 :時刻(第1時刻)
t2 :時刻(第2時刻)
図1
図2
図3
図4
図5
図6