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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リールシート
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20240930BHJP
   A01K 87/06 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A01K87/08 B
A01K87/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021075639
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169919
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-05-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】牛之濱 幸佑
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-204115(JP,A)
【文献】特開2020-120593(JP,A)
【文献】特開2005-204618(JP,A)
【文献】特開2007-202407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0040463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/08
A01K 87/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール脚が載置されるリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向一端側に設けられ、前記リール脚載置部に載置された魚釣用リールのリール脚の一端側を保持する固定フードとを備えたシート本体を有し、前記リール脚載置部の軸方向他端側に、軸方向に移動可能で前記リール脚の他端側を保持可能にする移動フードを配設したリールシートにおいて、
前記シート本体のリール脚載置部と反対側には、1つのトリガーが突出形成されており、
前記トリガーは、リール脚載置部に固定される魚釣用リールのリール脚の中間位置に対して±20mmの範囲に形成されており、その頂部の高さは、前記シート本体の反対側で最も低い位置から18mm以下に形成されており、
前記シート本体は、前記トリガーの前方側及び後方側の軸心に沿った断面形状が、それぞれ凹状に窪んだ湾曲面を備えており、
前記トリガーの前後の湾曲面は、前の湾曲面の曲率が後の湾曲面の曲率よりも大きく
前記トリガーの前側の湾曲面の曲率半径Rは13mm以上であり、前記トリガーの後側の湾曲面の曲率半径Rは14mm以上であることを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記トリガーの頂部に対して、前記前後の湾曲面の各最も低い位置までの軸方向長さは、10mm~30mmであることを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記シート本体のリール脚載置部と反対側の軸方向長さは、80mm以下に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリールシート。
【請求項4】
前記シート本体は、リール脚載置部と反対側の軸方向に対する左右の表面形状が対称に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項5】
上記した請求項1から4のいずれか1項に記載のリールシートを固着したことを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーロッドや船竿等、各種の釣竿に取り付けられ、魚釣用リールを装着、固定するのに用いられるリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールを使用する釣竿には、魚釣用リールを装着するためのリールシートが元竿杆に固定されており、このようなリールシートとして、元竿杆の外周面に固定される筒状のリールシートが知られている。一般的に筒状のリールシートは、その内部に元竿杆を貫通させることから、元竿杆によって強度を確保することができ、軽量の材料を用いたり、薄肉厚化する等、軽量化を図ることが可能となる。
【0003】
上記したリールシートに魚釣用リール(両軸受型リール)を装着してキャスティングする場合、その操作性が安定するように、リールシートの本体のリール脚載置部の反対側にトリガーを一体形成することが知られている。例えば、特許文献1,2には、リールシートの竿尻側の固定フードの後方側に、大きい後方トリガーを形成すると共に、それよりも前方に小さい前方トリガーを形成した構成が開示されている。また、特許文献3には、リールシートの竿先側に設けられた移動フードにトリガーを一体形成した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-271864号
【文献】特開平09-172915号
【文献】特開2020-18189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したリールシートに両軸受型リールを装着して魚釣り操作をする場合、リール本体を深く握持、保持してハンドルの巻き取り操作やキャスティング操作をしたり、リール本体の後方側を握持、保持して反ハンドル側の側板上、或いは、スプール上に親指を載置する(サミング操作する)等、状況に応じてトリガーに薬指又は中指又は人差し指を掛けることが行なわれている。このため、トリガーに掛ける指に応じて、リール本体及びリールシートの握持、保持状態は様々な形態となる。
【0006】
上記した特許文献1,2に開示されたリールシートは、固定フードの後方側に大きいトリガーが形成され、その前方に小トリガーが形成された構成であり、複数個のトリガーを配設していることから、握持、保持状態を変更する際の操作性が悪い。すなわち、後方側のトリガーが大き過ぎるため、中指を掛けた状態から薬指を掛けようとしたり、薬指を掛けた状態から中指を掛けようとすると、大きいトリガーや小さいトリガーが邪魔になってしまい、握持、保持の変更を咄嗟に行い難く、安定した保持がし難いとともに、指当たりも悪くなって、握った際に力を入れ難いという問題がある。また、特許文献3に開示されたリールシートは、大きいトリガーを前方の移動フードに一体形成していることから、リール本体の後方側を握り込む場合の握持、保持性が劣ってしまう。
【0007】
さらに、最近では、小型の電動リールをリールシートに装着して、両軸受型リールと同様な魚釣り操作を行なうこともあり、例えば、リール本体を深く握持、保持した状態から、モータ出力を変更するように親指の位置をずらす操作等、握持、保持状態を変更する操作を行なうこともある。この場合、電動リールは、通常の両軸受型リールよりも重量が重いため、握持、保持状態が安定しないと、モーメントの影響を受け易く、疲労度が大きくなってしまい、結果的に操作性が悪くなってしまう。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚釣り操作性が良好で、魚釣用リールと共に釣竿を安定して握持、保持することが可能なリールシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係るリールシートは、魚釣用リールのリール脚が載置されるリール脚載置部と、リール脚載置部の軸方向一端側に設けられ、前記リール脚載置部に載置された魚釣用リールのリール脚の一端側を保持する固定フードとを備えたシート本体を有しており、前記リール脚載置部の軸方向他端側に、軸方向に移動可能で前記リール脚の他端側を保持可能にする移動フードを配設した構成において、前記シート本体のリール脚載置部と反対側には、1つのトリガーが突出形成されており、前記トリガーは、リール脚載置部に固定される魚釣用リールのリール脚の中間位置に対して±20mmの範囲に形成されており、その頂部の高さは、前記シート本体の反対側で最も低い位置から18mm以下に形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記したリールシートのシート本体は、リール脚載置部と反対側に1つのトリガーを突出形成した構成であるため、2つ以上のトリガーを形成した構成と比較すると、実釣時に握持、保持状態を変更しても指の動きを邪魔することはなく、魚釣り操作性の向上が図れる。また、その1つのトリガーの高さは、18mm以下と低い(指を掛ける場合、その指の幅と略同一以下になる)ことから、中指で掛けている状態から人差し指に掛ける状態、或いは、人差し指で掛けている状態から中指に掛ける状態に容易に変更することができる。また、トリガーは、装着された魚釣用リールのリール脚の中間位置に対して±20mmの範囲に形成したことから、リール本体を深く握り込む(中指をトリガーに掛ける)ことができると共に、リール本体の後方側を握り込んだ状態(人差し指をトリガーに掛ける)では、中指、薬指、小指が開くことはなく、シート本体をしっかりと握り込むことができ、握持、保持性、及び、魚釣り操作性の向上が図れるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリールシートによれば、魚釣り操作性が良好で、魚釣用リールと共に釣竿を安定して握持、保持することが可能なリールシートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るリールシートの一実施形態を示す側面図。
図2図1に示すリールシートを示す平面図。
図3図1に示すリールシートの裏面図。
図4】(a)は図1に示すリールシートの軸方向に沿った断面図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図、(c)は図(a)のA-A線に沿った断面図であり、トリガーの変形例を示す図。
図5図1に示すリールシートに魚釣用リール(電動リール)を装着した状態を示す側面図。
図6】(a)は人差し指をトリガーに掛けた状態において、シート本体及びリール本体の各指の握持、保持状態を側面側から見た図、(b)は、後方側から見た図。
図7】(a)は中指をトリガーに掛けた状態において、シート本体及びリール本体の各指の握持、保持状態を側面側から見た図、(b)は、後方側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るリールシートの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1から図5は、本発明に係るリールシートの一実施形態を示す図であり、図1は側面図、図2図1に示すリールシートの平面図、図3図1に示すリールシートの裏面図、図4(a)は図1に示すリールシートの軸方向に沿った断面図、図4(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図、そして、図5図1に示すリールシートに魚釣用リール(電動リール)を装着した状態を示す側面図である。
【0014】
以下の説明において、軸方向(前後方向)、上下方向、左右方向(幅方向)は、図1及び図2で示した方向を意味する。また、前方は釣竿の穂先側、後方は竿尻側を意味し、上方は両軸受型リールを装着した際、リールシート(元竿杆)の軸心Xに対してリール側、下方はその反対側を意味する。
【0015】
本実施形態のリールシート1を構成するシート本体1Aは、釣竿(図では、釣竿を構成する元竿杆100のみが示されている)の外周面に対して接着固定されるように軸方向に亘って貫通孔1Bが形成された円筒形状に形成されている。この場合、リールシート1が接着固定される釣竿は、振出式、継合式、1本竿等、その構成については限定されることはない。また、リールシート1は、各種の魚釣用リール(本発明では両軸受型リール)を装着することができ、特に、本実施形態では、両軸受型リールの内、電動リール200を装着、固定しても、魚釣り操作性の向上が図れる構成例が示されている。すなわち、電動リール200は、モータ等を搭載しているため、通常の両軸受型リールよりも重量が重くなる傾向となり、リールシート1に装着した際、モーメントが大きくなって操作性が低下し易いが、以下のようにシート本体1Aを構成することで、握持、保持性の向上が図れるようにしている。装着される電動リールの大きさについては、好ましくは、左右方向の幅が200mm以下、軸方向の長さが120mm以下、高さが100mm以下であれば良い。
【0016】
本実施形態に係るリールシート1のシート本体1Aは、電動リール200のリール脚201が載置されるリール脚載置部3と、リール脚載置部3の軸方向一端側(竿尻側)に設けられ、リール脚載置部3に載置された電動リール200のリール脚201の一端側を保持する固定フード5とを備えている。そして、リール脚載置部3の軸方向他端側(穂先側)には、軸方向に移動可能でリール脚201の他端側を保持する移動フード7が配設されている。すなわち、リール脚載置部3にリール脚201を載置して、その後端側を固定フード5の嵌合穴5aに嵌入した状態で、前端側を軸方向に移動する移動フード7の嵌合穴7aで締め付けることによって、電動リール200は、リールシート1に装着、固定されるようになっている。
【0017】
前記シート本体1Aの固定フード5は、シート本体1Aと一体形成された後方筒部5Aに設けられている。後方筒部5Aは軸方向に一定の長さを備えており、この後方筒部5Aには、握持、保持されるグリップ部材(後方グリップ)51が隣接して固定されるようになっている。この後方グリップ51は、例えば、シート本体1Aの後方側に突出する元竿杆100に取着されても良いし、後方筒部5Aに小径の円筒筒部を後方に向けて突出形成し、この部分に取着されても良い。後方グリップ51は、後方筒部5Aの後端縁(境界線)5bに隣接して後方筒部5Bの表面と面一状になるように構成されており、本実施形態の後端縁(境界線)5bは、下方から上方に向けて竿尻側に傾斜するように形成されている。
【0018】
前記シート本体1Aの後方筒部5Aは、電動リール200のリール本体200Aとともに握持、保持された際、前記後方グリップ51との境界領域である後端縁5bに指が接触しないように形成しておくことが好ましい。すなわち、後述するトリガー20に人差し指を掛けても、その小指が後端縁5bにかからないように後方筒部5Aの軸方向長さを確保することで、図1に示すR1の領域に指(小指の腹部)を当接させることができ、これにより、シート本体1Aを強く握り込んでも違和感を生じさせないようにすることが可能となる。
【0019】
前記シート本体1Aのリール脚載置部3の前方側には、雄螺子部9aが形成された略円筒形状の円筒部9が形成されており、この部分に、シート本体1Aとは別体で前記軸方向に移動される移動フード7が配設されている。前記雄螺子部9aには、回転操作部材(ナット部材)11が螺合されており、この回転操作部材11の竿尻側には、公知の係合構造によって、前記移動フード7が回転操作部材11と共に軸方向に移動可能で、連れ回りしないように係合している。すなわち、回転操作部材11を回転操作すると、前記移動フード7は軸方向に沿って前後動され、前記リール脚載置部3に載置されたリール脚201は、各フード5,7間で締め付け固定され、又は、締め付け固定状態が解除される。
【0020】
前記回転操作部材11には、その前方にグリップ部材(前方グリップ)52が固定されており、前記回転操作される回転操作部材11の表面と面一状になるように配設されている。この前方グリップ52については、回転操作部材11と一体化されていても良いし、設けない構成であっても良い。
【0021】
前記シート本体1Aのリール脚載置部3と反対側には、1つのトリガー20が突出形成されている。前記トリガー20が形成される部分(ここではトリガー20の頂部20aの位置Pとする)は、リール脚載置部3にリール脚201を載置、固定した際のリール脚の中間位置P1に対して、軸方向に±20mm(前方側を+、後方側を-)の範囲となっており、取り付けられる電動リール200のリール本体200Aの中央付近となるように形成されている。すなわち、リール脚201の中間位置P1は、取り付けられるリールの大きさに関係なく、リール本体200Aの略中央付近に位置することから、トリガー20は、リール本体200Aを深く握り込んだ場合、中指を掛け易い位置となり、かつ、リール本体200Aの後方側を握り込んだ場合、人差し指を掛け易い位置となっている。このように、リール脚201をリール脚載置部3に載置、固定した際のリール脚の中間位置P1に対して、トリガー20を軸方向に±20mmの範囲に形成しておけば、リール本体の大きさに関係なく、上記したような握持、保持状態を得ることが可能となる。
【0022】
上記したトリガー20は、高く形成すると、掛ける指を変える際、引っ掛かって邪魔になることから、低く形成されると共に、指を掛けても軸方向にずれない程度に形成されている。具体的に、頂部20aの高さは、前記シート本体1Aの反対側で最も低い位置から18mm以下となるように形成されている。また、本実施形態では、トリガー20の前方側、及び、後方側の表面は、引っ掛けた指の当たりが強くならないように、軸線Xに沿った断面形状が、湾曲面22,24となるように構成されており、最も低い位置は、トリガー20の前方側の湾曲面22の位置P2とされている。このため、その位置P2における高さH1が18mm以下となるように形成されている。なお、トリガー20の後方側の湾曲面24は、後述するように、曲率が湾曲面22よりも小さく形成することが好ましく、その最も低い位置P3からの高さH2については、0~17mmとなるように形成されている。
【0023】
このように、トリガー20の高さH1(H2)を18mm以下にすることで、指を掛ける場合、その指の幅と略同一以下になることから、中指と人差し指とで指を掛け変える際に引っ掛かることなく、スムーズに握り替えすることができる。なお、高さH1については、あまり低く形成すると指が引っ掛かり難くなって(後方に抜け易くなる)、握持、保持性が低下することから、指の幅の半分程度以上の高さに形成することが好ましい。具体的には、トリガー20の前方側の高さH1は、6mm以上確保することが好ましい。
【0024】
また、トリガー20の前方側及び後方側の軸心に沿った断面形状は、上記したように、それぞれ湾曲面22,24で形成することが好ましいが、このような構成では、前方の湾曲面22の曲率が後方の湾曲面24の曲率よりも大きく形成しておくことが好ましい。これは、湾曲面22は、主にトリガー20に指を掛けた際、その指が軸方向に移動し難くなっていることが好ましく、湾曲面24は、シート本体1Aを指(薬指、小指、更には、中指)の腹部で握り込み易くなっていることが好ましいことによる。このため、湾曲面22は凹状に窪み、湾曲面は凹状の窪みが浅くなっていれば、引っ掛けた指がずれることなく、握り込んだ指の握持、保持性を高めることができる。
【0025】
具体的に、トリガー20の前側の湾曲面22の曲率半径Rは13mm以上であり、トリガー20の後側の湾曲面24の曲率半径Rは14mm以上となっていることが好ましい。なお、各湾曲面22,24については、部分的に平坦部を含む等、複合面で構成されていても良いが、その場合、各湾曲面22,24を対比して、相対的に湾曲面22の曲率が湾曲面24よりも大きく(窪みが大きく)形成されていれば良い。
【0026】
上記したトリガー20は、急激に高さが高くなると、指が当て付いた際に痛くなることがあるため、最下点からトリガー20の頂部20aに至る領域はなだらかな傾斜状になっていることが好ましい。このため、トリガー20の頂部20aに対して、前後の湾曲面22,24の各最も低い位置P2,P3までの軸方向長さL1,L2については、10mm~30mmに形成することで、急傾斜させることなく当たりを和らげることが可能となる。この場合、一般的な人の指の太さのサイズは、人差し指で18.4~19.4mm程度、中指で17.7~20.00mm程度、薬指で17.0~18.7mm程度、小指で16.0~17.4mm程度である。このため、下限値は、トリガー20に人差し指のみを掛けることを考慮すると、L1(L2)は、指の半分程度の8mm以上であれば好ましく、10mm以上であればより好ましい。また、上限値については、トリガー20の後方で、中指、薬指、小指が掛けられても十分に握持ができるように、40mm以下であれば好ましく、30mm以下であればより好ましい。
【0027】
また、本実施形態のリールシート1は、上記したように、左右方向の幅が200mm以下、軸方向の長さが120mm以下、高さが100mm以下の電動リール200を装着することを考慮しているが、このような大きさの電動リールを装着する場合、シート本体1Aのリール脚載置部3と反対側の軸方向長さLは、80mm以下に形成することが好ましい。この場合、軸方向長さLは、シート本体1Aの下面の前端縁P4と後端縁P5との間の軸方向長さで定義され、本実施形態では、前端縁P4とトリガー20の頂部20aの位置Pまでの長さは29.1mm、後端縁P5とトリガー20の頂部20aの位置Pまでの長さは28.0mmとなっている。このトリガー20の軸方向位置は、上記したように、リール脚載置部3にリール脚201を固定すると、リール脚201の中央位置と略一致することから、トリガー20の形成位置は、シート本体1Aのリール脚載置部3と反対側の軸方向長さLの中間位置に対して±20mmの範囲であっても良い。
【0028】
前記トリガー20の軸方向と直交する方向の断面形状については、トリガー20の高さが上記した高さH1,H2の範囲内であれば、特に限定されることはない。例えば、図4(b)に示すように、全体として円弧状に湾曲形成されていても良いし、図4(c)に示すように、元竿杆100が固着される開口径が小さければ、左右両側が対向する平坦面で形成されていても良い。また、トリガー20の断面形状は、軸方向の後端側に移行するにつれて、次第に拡径させたり、縮径させるような構成であっても良い。
【0029】
また、前記シート本体1Aは、図3に示すように、リール脚載置部3と反対側の軸方向に対する左右の表面形状が対称に形成されていることが好ましい。
このように握持、保持される部分を左右対称形状に形成することで、装着される電動リール200のハンドルが、右ハンドル、左ハンドルに関係なく、同様な感覚で握持、保持させることができる。
【0030】
前記シート本体1A、及び、移動フード7や回転操作部材11は、軽量化が図れるように、硬質樹脂材又は繊維強化樹脂材によって一体形成することが好ましい。例えば、ナイロン、ABS等の硬質の合成樹脂材、或いは、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化繊維を混入したプラスチック複合材(FRP)によって一体形成することで、強度を維持しながら効果的に軽量化を図ることが可能となる。或いは、アルミ等の軽量な金属材によって形成しても良い。
【0031】
また、前記グリップ部材51,52については、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、及び、軽量化が図れるような軟質材料、例えば、天然コルク、ウレタン、EVA、熱可塑性エラストマー、ゴム等で構成したり、これらの材料を被着することで形成することが可能である。
【0032】
次に、上記した構成のリールシート1に、電動リール200を装着した際の握持、保持態様について図6及び図7を参照して説明する。
【0033】
図6に示す握持、保持状態は、主に、サミング操作したり、モータの出力調整部材205を操作する等の操作に適しており、人差し指T2をトリガー20に掛けて、シート本体1A及びリール本体200Aの後方側を握持、保持した状態を示している。上記したように、1つのトリガー20を、シート本体1Aの略中間位置に形成したことで、リール本体200Aの後方側を握り込んだ状態で人差し指T2をトリガー20に掛けることができ、この状態で中指T3、薬指T4、小指T5は開くことはなく、各指の腹部でシート本体をしっかりと握り込むことができる。また、各指が相互に開かないことから、親指T1の付け根T1´を側板に密着させて抑えることができ、リール本体200Aが重くても元竿杆100を中心として回転方向に動き難くなる。さらに、従来のように、複数のトリガーを形成していないため、トリガー20の後方側をしっかりと握り込むことができ、この状態で、親指T1をリール本体200Aの側板上に載置して、上記したようなサミング操作やモータの出力調整操作が容易に行なえるようになり、握持、保持性、及び、魚釣り操作性の向上が図れる。
【0034】
図7に示す握持、保持状態は、主に、キャスティング操作したり、シャクリ操作する等の操作に適しており、中指T3をトリガー20に掛けて、シート本体1A及びリール本体200Aの後方側を握持、保持した状態を示す図である。人差し指T1は、図示されていないが、リール本体200Aの反ハンドル側の側板の前端に当て付けられた状態となっている。上記したように、1つのトリガー20を、シート本体1Aの略中間位置に形成したことで、リール本体200Aを深く握り込んだ状態(掌で握り込む)で中指T3をトリガー20に掛けることができ、この状態で薬指T4、小指T5は開くことはなく、シート本体1Aをしっかりと薬指と小指の腹部で握り込むことができる(握り込んだ際に力を入れやすい)。また、各指が開かないことから、親指T1の付け根T1´を側板に密着させて抑えることができ、リール本体が重くても元竿杆100を中心として回転方向に動き難くなる。さらに、従来のように、複数のトリガーを形成していないため、トリガー20の後方側をしっかりと握り込みながらリール本体を掌で握り込むように保持することができ、握持、保持性、及び、魚釣り操作性の向上が図れる。
【0035】
そして、上記したトリガー20は、リール脚載置部と反対側に1つ突出形成した構成であることから、2つ以上のトリガーを形成した構成と比較すると、実釣時に握持、保持状態を上記の握持態様となるように変更しても邪魔になることはなく、魚釣り操作性の向上が図れる。また、その1つのトリガーの高さは、18mm以下と低い(指を掛ける場合、その指の幅と略同一以下になる)ことから、中指で掛けている状態から人差し指に掛ける状態、或いは、人差し指で掛けている状態から中指に掛ける状態に容易に変更することができる。さらに、一日を通して同じ握り方をするよりも、容易に握り方を変更できれば、手にかかる力を分散することができ、疲労度も軽減することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることは無く種々変形することが可能である。
【0037】
上記した構成において、シート本体1Aに形成されるトリガー20の前後方向に形成される湾曲面22,24についての表面形状は任意であり、部分的に平坦面にしたり、部分的に窪ませたり、部分的に膨出させたり、これらを組み合わせた複合面で形成する等、適宜変形することが可能である。また、移動フード7の構成(軸方向への移動方法、位置止め構造など)については、種々変形することができ、移動フードを軸方向に移動させる手段は上記した回転操作部材11による方法に限定されることはない。また、移動フード7は、竿尻側に配設される構成であっても良い。
【0038】
前記シート本体1Aは、図に示した形状に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、シート本体の両側面に、掌と馴染みやすいように、部分的に湾曲面や傾斜面等によって膨出部や凹部(湾曲部)を形成したり、更には、部分的に、肉抜き、切欠部、開口を形成する等、適宜変形することが可能である。このような肉抜き、切欠き、凹凸等については、グリップ性に影響を与えない部分に形成しておくことが好ましく、シート本体1Aの肉厚についても限定されることはない。
【0039】
さらに、本発明のリールシート1及び釣竿は、電動リールに限定されることはなく、様々なタイプの両軸受型リールを装着する者であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 リールシート
1A シート本体
3 リール脚載置部
5 固定フード
7 移動フード
11 回転操作部材
20 トリガー
22,24 湾曲面
51,52 グリップ部材
200 電動リール
201 リール脚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7