(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】スラリー組成物、電極、電極の製造方法、二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1391 20100101AFI20240930BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240930BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240930BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240930BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/131
H01M4/485
H01M4/62 Z
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021076434
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】草間 知枝
(72)【発明者】
【氏名】吉間 一臣
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158396(JP,A)
【文献】特開2021-048005(JP,A)
【文献】特開2016-219414(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047843(WO,A1)
【文献】特開2015-084322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1391
H01M 4/131
H01M 4/485
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料と、水を含む溶媒とを含むスラリー組成物であり、前記スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にあ
り、
前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にあり、
前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にある、スラリー組成物。
【請求項2】
B型粘度計による25℃、100rpmでの粘度が1.5Pa・s以上5Pa・s以下の範囲である、請求項
1に記載のスラリー組成物。
【請求項3】
リチウムイオン伝導性無機固体粒子をさらに含む、請求項1
または請求項2に記載のスラリー組成物。
【請求項4】
前記ニオブチタン含有複合酸化物粒子は、Li
xTi
1-yM1
yNb
2-zM2
zO
7+δ(M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つで、M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3)で表されるか、Li
xTi
1-yM3
y+zNb
2-zO
7-δ(M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つで、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である)で表される、請求項1~
3のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
【請求項5】
前記導電剤は、繊維状炭素材料および粒状炭素材料のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のスラリー組成物を、集電体に塗布する工程と、
前記集電体に塗布された前記スラリー組成物を乾燥させることにより前記集電体に活物質含有層を形成する工程と、
前記活物質含有層にプレスを施す工程と
を含む、電極の製造方法。
【請求項7】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料とを含む活物質含有層と、前記活物質含有層が形成される集電体とを含む電極であって、
前記活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にあ
り、
前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にあり、
前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にある、電極。
【請求項8】
前記ニオブチタン含有複合酸化物粒子は、Li
x
Ti
1-y
M1
y
Nb
2-z
M2
z
O
7+δ
(M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つで、M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3)で表されるか、Li
x
Ti
1-y
M3
y+z
Nb
2-z
O
7-δ
(M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つで、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である)で表される、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
正極と、
負極として請求項
7または8に記載の電極と、
非水電解質と
を含む、二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を一つまたは二以上含む、電池パック。
【請求項11】
通電用の外部端子と、
保護回路とをさらに含む請求項10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記二次電池を二以上具備し、前記二以上の二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、請求項10または11に記載の電池パック。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項14】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、請求項13に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、スラリー組成物、電極、電極の製造方法、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブチタン酸化物を負極活物質として含む電極を二次電池に用いることが検討されている。この電極は、例えば、ニオブチタン酸化物粒子、導電剤及び結着剤を含むスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、プレス処理を施すことにより作製される。スラリー調製時の分散強度が不十分であると、原料成分の凝集により抵抗上昇あるいは容量低下が生じる。これを避けるため、スラリー調製時の分散強度を大きくすると、ニオブチタン酸化物粒子の欠け、粒子表面の結晶性の低下、カーボンブラックの切断などの導電剤の破損
が生じる。その結果、電極の抵抗上昇、電池の容量低下が生じる。
【0003】
ニオブチタン酸化物粒子を含むスラリーの分散状態の適正化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-48671号公報
【文献】特開2019-40890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、長寿命で入出力性能に優れる電極を実現することが可能なスラリー組成物、長寿命で入出力性能に優れる電極及びその製造方法、長寿命で入出力性能に優れる二次電池、該二次電池を含む電池パック、並びに、該電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料と、水を含む溶媒とを含むスラリー組成物が提供される。スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲である。また、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある。累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にある。累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にある。
【0007】
他の実施形態によれば、スラリー組成物を、集電体に塗布する工程と、
集電体に塗布されたスラリー組成物を乾燥させることにより集電体に活物質含有層を形成する工程と、
活物質含有層にプレスを施す工程と
を含む、電極の製造方法が提供される。
【0008】
他の実施形態によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料とを含む活物質含有層と、活物質含有層が形成される集電体とを含む電極が提供される。活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある。累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にある。累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にある。
【0009】
他の実施形態によれば、正極と、
負極として、実施形態の電極と、
非水電解質と
を含む、二次電池が提供される。
【0010】
他の実施形態によれば、実施形態の二次電池を含む電池パックが提供される。
【0011】
他の実施形態によれば、実施形態の電池パックを含む車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例と比較例のスラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布を示す図。
【
図4】実施形態の二次電池を端子延出方向と垂直な方向に切断した断面図。
【
図7】
図6の電池パックの電気回路を示すブロック図。
【
図8】実施形態の二次電池が搭載された車両の例を示す模式図。
【
図9】実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料と、水を含む溶媒とを含むスラリー組成物が提供される。スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある。上記スラリー組成物の粒度分布は、ピーク位置が微細粒寄りのユニモーダル分布である。上記粒度分布は、少なくともニオブチタン含有複合酸化物粒子と導電剤の粒径を反映しており、より詳細には、ニオブチタン含有複合酸化物の一次粒子あるいは二次粒子、導電剤、ニオブチタン含有複合酸化物と導電剤を含む凝集体などの粒径を反映している。
【0014】
累積頻度分布のピーク位置を0.8μm以上3μm以下の範囲に規定するのは、以下の理由によるものである。ピーク位置が3μmを超えている場合、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が生じており、スラリー組成物の分散性が低い。したがって、電極の活物質含有層中でニオブチタン含有複合酸化物粒子間の導電パスが不足する、バインダーなどの樹脂材料が偏在するなどが生じるため、電極の抵抗が上昇して二次電池の寿命性能が低下する。ピーク位置が0.8μm未満では、ニオブチタン含有複合酸化物粒子の割れ・欠け、導電剤の分断・破損といった各成分へのダメージが生じている。そのため、電極の抵抗が上昇して二次電池の寿命性能が低下する。ピーク位置のより好ましい範囲は、0.9μm以上2μm以下である。
【0015】
累積頻度分布における粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率を20%以上35%以下の範囲に規定するのは、以下の理由による。比率が35%を超えている場合、スラリー組成物中の微細粒子が多くて分散過剰な状態であり、また各成分へのダメージが生じている。一方、比率が20%未満の場合、スラリー組成物中の微細粒子が少なく、スラリー組成物の分散性が不足してニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が多く生じている。
【0016】
スラリー組成物が上記累積頻度分布を満足することにより、スラリー組成物において各成分が適切に分散され、かつニオブチタン含有複合酸化物粒子の欠け及び結晶性の低下が少なく、導電剤の分断といった材料のダメージが低減されている。よって、上記スラリー組成物によれば、電子抵抗及びイオン伝導抵抗が低い電極と、長寿命と高入出力性能を両立した二次電池の提供が可能となる。
【0017】
スラリー組成物は、累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にあることが望ましい。これにより、スラリー組成物中の微細粒子の割合の適正化、原料成分へのダメージの低減、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集の抑制がより達成され、電極及び二次電池の寿命性能と入出力性能をさらに向上することができる。
【0018】
また、スラリー組成物は、累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にあることが望ましい。これにより、スラリー組成物中の微細粒子の割合の適正化、原料成分へのダメージの低減、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集の抑制がより達成され、電極及び二次電池の寿命性能と入出力性能をさらに向上することができる。
【0019】
スラリー組成物は、B型粘度計による25℃、100rpmでの粘度が1.5Pa・s以上5Pa・s以下の範囲であることが望ましい。粘度が低いと、スラリー組成物において、粒子の沈降が生じる恐れがある。また、電極製造の乾燥工程で乾燥ムラが生じやすいため、活物質含有層においてバインダーなどの樹脂材料が偏在する。これは、電池の抵抗上昇と寿命低下の要因となり得る。一方、粘度が高いと、スラリー組成物を集電体に塗工することが困難になったり、塗布装置の配管につまりが生じる恐れがある。
【0020】
スラリー組成物に含まれる各成分について、説明する。
【0021】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子の形態は、限定されるものではなく、単独の一次粒子、一次粒子が凝集した二次粒子、一次粒子と二次粒子の混合であり得る。
【0022】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子の平均粒径は、0.5μm以上3μm以下の範囲であり得る。
【0023】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子の結晶構造は、例えば、直方晶(orthorhombic)、単斜晶であり得る。
【0024】
直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0025】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0026】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0027】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子は、表面の少なくとも一部が導電材料で被覆されていても良い。導電材料の例に、炭素コート、電子導電性無機材料コートが含まれる。
【0028】
ニオブチタン含有複合酸化物粒子は、活物質として機能する。スラリー組成物には、ニオブチタン含有複合酸化物以外の活物質が含まれていても良い。他の活物質の例に、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物が挙げられる。活物質中のニオブチタン含有複合酸化物粒子の含有量は50質量%以上100質量%以下にすることができる。
【0029】
スラリー組成物中の活物質の含有量は、68質量%以上96質量%以下の範囲にすることができる。
【0030】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、ニオブチタン複合酸化物のような活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、繊維状炭素材料、粒状炭素材料が含まれる。繊維状炭素材料として、例えば、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、カーボンナノチューブが挙げられる。一方、粒状炭素材料として、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、薄片もしくは鱗片形状の黒鉛などが挙げられる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0031】
スラリー組成物中の導電剤の含有量は、活物質100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲にすることができる。
【0032】
樹脂材料は、結着剤、粘度調整剤、分散剤、あるいはこれらのうち二つ以上の組み合わせであり得る。
【0033】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0034】
粘度調整剤は、スラリー組成物に粘性を付与するためのものである。粘度調整剤の例には、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、CMCの塩、が含まれる。これらの1つを粘度調整剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて粘度調整剤として用いてもよい。
【0035】
分散剤は導電剤の分散性を向上するためのものである。分散剤の例には、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral:PVB)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Dodecylbenzenesulfonic acid sodium salt)、ドデシルスルホン酸ナトリウム(Dodecylsulfonic acid sodium salt)、セルロースナノファイバーなどが含まれる。これらの1つを分散剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて分散剤として用いてもよい。
【0036】
スラリー組成物中の樹脂材料の含有量は、活物質100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の範囲にすることができる。
【0037】
水を含む溶媒として、例えば水を使用することが可能である。
【0038】
スラリー組成物は、リチウムイオン伝導性無機固体粒子をさらに含有し得る。リチウムイオン伝導性無機固体電解質としては、例えば、リチウムイオン伝導性の酸化物系固体電解質、又はリチウムイオン伝導性の硫化物系固体電解質を挙げることができる。リチウムイオン伝導性の酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質を用いることができる。NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質としては、例えば、一般式Li1+xM2(P1-yM’yO4)3(M及びM’は、Ti,Ge,Sr,Zr,Sn,Si及びAlより成る群から選ばれる一種または二種以上、xは0≦x≦0.5,yは0≦y≦0.2)で表される固体電解質、Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12(0<x≦2、0≦y<3)で表される固体電解質などが挙げられる。NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質としては、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5))、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5)、及び、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5)等が、挙げられる。LATPは元素の一部をGe,Sr,Zr,Sn及びSiより成る群から選ばれる一種または二種以上の元素で置換してもよく、一部がアモルファス化していてもよい。
【0039】
リチウムイオン伝導性の酸化物系固体電解質としては、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、又は、ガーネット型構造のLLZ(Li7La3Zr2O12)を用いてもよい。
【0040】
スラリー組成物中のリチウムイオン伝導性無機固体粒子の含有量は、活物質100質量部に対して0質量部以上20質量部以下の範囲にすることができる。
【0041】
スラリー組成物は、例えば、活物質、導電剤及び樹脂材料を溶媒と共に攪拌することにより調製される。目的の累積頻度分布は、例えば、原料を添加する順番、組成物の固形分比率、攪拌速度、攪拌時間などを調整することにより得ることが可能である。ニオブチタン含有複合酸化物粒子とリチウムイオン伝導性無機固体粒子は、導電性が低い。そのため、導電剤に繊維状炭素材料を使用する場合、繊維状炭素材料を分散させた水溶媒に、ニオブチタン含有複合酸化物粒子と粘度調整剤を添加し、これらを攪拌する第1の攪拌により、ニオブチタン含有複合酸化物粒子の表面を繊維状炭素材料で覆うことができる。そのため、ニオブチタン含有複合酸化物粒子間の導電パスに繊維状炭素材料を使用することが可能となる。リチウムイオン伝導性無機固体粒子を用いる場合には、繊維状炭素材料を分散させた水溶媒にニオブチタン含有複合酸化物粒子とリチウムイオン伝導性無機固体粒子と粘度調整剤とを添加し、これらを攪拌する第2の攪拌によって、ニオブチタン含有複合酸化物粒子間、リチウムイオン伝導性無機固体粒子間、これら粒子間の導電パスに繊維状炭素材料を使用することが可能となる。第1の攪拌または第2の攪拌後、得られた混合物に結着剤と必要に応じて粒状炭素材料を添加してさらに攪拌する第3の攪拌を行っても良い。なお、攪拌工程において、混練を行っても良い。
【0042】
また、上述のような導電剤を二段階に分けて添加する方法に限らず、例えば、活物質、導電剤及び樹脂材料を溶媒の存在下かつ固形分比率が高い状態で混練した後、溶媒の追加により固形分比率が低い状態にして攪拌することによりスラリー組成物を調製しても良い。
【0043】
スラリー組成物の固形分比率が高い状態でスラリー組成物を攪拌または混練することにより、原料の凝集体を効率良く分散させることが可能となる。また、スラリー組成物の固形分比率が低い状態でスラリー組成物を攪拌または混練することにより、原料に与えるダメージをより少なくすることができる。
【0044】
原料の凝集の抑制と、原料へのダメージの抑制とを両立させるには、固形分比率に加え、スラリー組成物を攪拌する攪拌装置(例えば自転・公転ミキサ)の回転数と攪拌時間も考慮する必要がある。
【0045】
原料の配合割合、原料の添加順序、固形分比率、攪拌装置の回転数と攪拌時間などを総合的に考慮することにより、目的の累積頻度分布が得られる。
スラリー組成物の粒度分布はレーザー回折散乱法により測定される。粒度分布測定装置の例としては、マイクロトラック社製のMicrotracMT3000及びMicrotracMT3000IIを挙げることができる。スラリーを測定可能濃度まで装置に投入し、超音波を30Wで60秒間照射した後、測定を実施する。超音波照射を施すことで、スラリーが水溶媒に分散し導電剤粒子と活物質粒子との凝集を解くことができる。
スラリー組成物のB型粘度計による粘度は以下の方法で測定される。B型粘度計の例としては、東機産業社製のTVB-10形粘度計を挙げることができる。規定寸法の容器にスラリー組成物を入れ、H6ロータを規定深さまで浸漬するよう設置する。スラリー組成物の温度を25℃に保ち、適切な方法で粘度計を温度校正した状態で、ロータの回転数を5rpmから100rpmまで徐々に上げて粘度測定を行う。
【0046】
以上説明した第1の実施形態のスラリー組成物によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子と導電剤と樹脂材料と水とを含み、スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にあるため、長寿命と高入出力性能を両立した電極及び二次電池の実現が可能である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。集電体の活物質含有層が形成される面は、集電体の厚さ方向と交差する面(例えば主面)であることが望ましい。活物質含有層は、ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料とを含む。活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある。活物質含有層の粒度分布は、ピーク位置が微細粒寄りのユニモーダル分布である。
【0047】
累積頻度分布のピーク位置を0.8μm以上3μm以下の範囲に規定するのは、以下の理由によるものである。ピーク位置が3μmを超えている場合、活物質含有層において、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が生じている。したがって、電極の活物質含有層中でニオブチタン含有複合酸化物粒子間の導電パスが不足する、バインダーなどの樹脂材料が偏在するなどにより電極の抵抗が上昇して二次電池の寿命性能が低下する。ピーク位置が0.8μm未満では、ニオブチタン含有複合酸化物粒子の割れ・欠け、導電剤の分断・破損といった各成分へのダメージが生じている。そのため、電極の抵抗が上昇して二次電池の寿命性能が低下する。ピーク位置のより好ましい範囲は、0.9μm以上2μm以下である。
【0048】
累積頻度分布における粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率を20%以上35%以下の範囲に規定するのは、以下の理由による。比率が35%を超えている場合、活物質含有層中の微細粒子が多く、つまり分散過剰となって各成分へのダメージが生じている。一方、比率が20%未満の場合、活物質含有層中の微細粒子が少なく、活物質含有層においてニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が多く生じている。
【0049】
活物質含有層が上記累積頻度分布を満足することにより、活物質含有層において各成分が適切に分散され、かつニオブチタン含有複合酸化物粒子の欠け及び結晶性の低下が少なく、導電剤の分断といった材料のダメージが低減されている。よって、電極の電子抵抗及びイオン伝導抵抗を低くすることができるため、長寿命と高入出力性能を両立した二次電池の提供が可能となる。
【0050】
活物質含有層は、累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にあることが望ましい。これにより、活物質含有層中の微細粒子の割合の適正化、原料成分へのダメージの低減、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集の抑制がより達成され、電極及び二次電池の寿命性能と入出力性能をさらに向上することができる。
【0051】
また、活物質含有層は、累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にあることが望ましい。これにより、活物質含有層中の微細粒子の割合の適正化、原料成分へのダメージの低減、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集の抑制がより達成され、電極及び二次電池の寿命性能と入出力性能をさらに向上することができる。
【0052】
活物質含有層に含まれる各成分には、第1の実施形態で説明したのと同様なものを挙げることができる。
【0053】
活物質含有層中の活物質の含有量は、68質量%以上96質量%以下の範囲にすることができる。
活物質含有層中の導電剤の含有量は、活物質100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲にすることができる。
【0054】
活物質含有層中の樹脂材料の含有量は、活物質100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の範囲にすることができる。
【0055】
活物質含有層中のリチウムイオン伝導性無機固体粒子の含有量は、活物質100質量部に対して0質量部以上20質量部以下の範囲にすることができる。
【0056】
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。集電体の一例は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金である。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0057】
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
【0058】
電極は、例えば次の方法により作製することができる。第1の実施形態のスラリー組成物を、集電体の片面又は両面に塗布する。塗布機は、例えばスリットコータであり得る。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。電極を所定の形状又は寸法にするため、必要に応じて裁断を行っても良い。裁断は、例えば、乾燥後、プレス後、あるいは乾燥後とプレス後の両工程で行うことができる。
【0059】
活物質含有層の粒度分布はレーザー回折散乱法により測定される。粒度分布測定装置の例としては、マイクロトラック社製のMicrotracMT3000及びMicrotracMT3000IIを挙げることができる。スパチュラ等を用いて集電体から削り取った活物質含有層を測定可能濃度まで装置に投入し、超音波を30Wで60秒間照射した後、測定を実施する。超音波照射を施すことで、活物質含有層が水溶媒に分散し導電剤粒子と活物質粒子との凝集を解くことができる。
【0060】
電池から電極を取り出す方法を以下に記載する。アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極群を取り出す。電極群を洗浄して真空乾燥により電極群中の非水電解質を除去しても良い。電極群から電極を取り出し、上記粒度分布測定を実施する。
【0061】
以上説明した第2の実施形態の電極によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子と導電剤と樹脂材料とを含む活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布が、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にあるため、長寿命と高入出力性能を両立することが可能である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、正極と、負極と、非水電解質とを含む二次電池が提供される。正極及び負極のうち少なくとも一方の電極に、第2の実施形態の電極が使用され得る。
【0062】
以下、負極に第2の実施形態の電極を用いた二次電池の例を説明する。実施形態の二次電池は、正極、負極及び非水電解質を備え、これら以外に、セパレータと外装部材を備えていても良い。以下、各構成について説明する。
1)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0063】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0064】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0065】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0066】
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、出力性能の改善に寄与する。
【0067】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0068】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0069】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0070】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0071】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0072】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0073】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0074】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0075】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0076】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0077】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0078】
正極は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
2)非水電解質
非水電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下であることが好ましい。
【0079】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0080】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0081】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0082】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0083】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0084】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0085】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
3)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0086】
4)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0087】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0088】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0089】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0090】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0091】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0092】
実施形態の二次電池の例を
図2~
図5を参照して説明する。
【0093】
図2及び
図3に、金属製容器を用いた二次電池の一例を示す。
【0094】
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、例えば、正極3及び負極4がこれらの間にセパレータ5を介在させつつ、これらの短辺方向に平行な軸を中心にして偏平型の渦巻き状に捲回されることにより形成される。
図3に示すように、電極の積層方向と交差する電極群1の端面に位置する正極3の端部の複数個所それぞれに帯状の正極リード6が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極4の端部の複数個所それぞれに帯状の負極リード7が電気的に接続されている。この複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極集電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極集電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極集電タブ9と接続されている。負極リード7と負極集電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極集電タブ8及び負極集電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極集電タブ8及び負極集電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
【0095】
図4及び
図5に、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池の一例を示す。
【0096】
図4及び
図5に示すように、扁平状の捲回電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装部材12内に収納されている。扁平状の捲回電極群1は、外側から負極4、セパレータ15、正極3、セパレータ15の順で積層した積層物を短辺方向に平行な軸を中心にして渦巻状に捲回し、この積層物をプレス成型することにより形成される。最外層の負極4は、
図5に示すように負極集電体4aの内面側の片面に負極活物質を含む負極層(負極活物質含有層)4bを形成した構成を有し、その他の負極4は、負極集電体4aの両面に負極層4bを形成して構成されている。正極3は、正極集電体3aの両面に正極層(正極活物質含有層)3bを形成して構成されている。
【0097】
捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子13は最外層の負極4の負極集電体4aに接続され、正極端子14は内側の正極3の正極集電体3aに接続されている。これらの負極端子13および正極端子14は、袋状外装部材12の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材12の開口部をヒートシールすることにより捲回電極群1を密封している。ヒートシールする際、負極端子13および正極端子14は、この開口部にて袋状外装部材12により挟まれる。
【0098】
以上説明した第3の実施形態の二次電池は、第2の実施形態の電極を負極として含むため、寿命性能と入出力性能を改善することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る電池パックは、第3の実施形態に係る二次電池(単電池)を1個又は複数個具備することができる。複数の二次電池は、電気的に直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続され、組電池を構成することもできる。実施形態に係る電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
【0099】
実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することもできる。
【0100】
また、実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、二次電池からの電流を外部に出力するため、及び二次電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車等の車両の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0101】
図6及び
図7に、電池パック50の一例を示す。この電池パック50は、
図6に示した構造を有する扁平型電池を複数含む。
図6は電池パック50の分解斜視図であり、
図7は
図6の電池パック50の電気回路を示すブロック図である。
【0102】
複数の単電池51は、外部に延出した負極端子13及び正極端子14が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ52で締結することにより組電池53を構成している。これらの単電池51は、
図7に示すように電気的に直列に接続されている。
【0103】
プリント配線基板54は、負極端子13および正極端子14が延出する単電池51側面と対向して配置されている。プリント配線基板54には、
図7に示すようにサーミスタ(Thermistor)55、保護回路(Protective circuit)56および通電用の外部端子としての外部機器への通電用の外部端子57が搭載されている。なお、プリント配線基板54が組電池53と対向する面には、組電池53の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0104】
正極側リード58は、組電池53の最下層に位置する正極端子14に接続され、その先端はプリント配線基板54の正極側コネクタ59に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード60は、組電池53の最上層に位置する負極端子13に接続され、その先端はプリント配線基板54の負極側コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ59,61は、プリント配線基板54に形成された配線62,63を通して保護回路56に接続されている。
【0105】
サーミスタ55は、単電池51の温度を検出し、その検出信号は保護回路56に送信される。保護回路56は、所定の条件で保護回路56と通電用の外部端子としての外部機器への通電用端子57との間のプラス側配線64aおよびマイナス側配線64bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ55の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池51もしくは単電池51全体について行われる。個々の単電池51を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。
図6および
図7の場合、単電池51それぞれに電圧検出のための配線65を接続し、これら配線65を通して検出信号が保護回路56に送信される。
【0106】
正極端子14および負極端子13が突出する側面を除く組電池53の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート66がそれぞれ配置されている。
【0107】
組電池53は、各保護シート66およびプリント配線基板54と共に収納容器67内に収納される。すなわち、収納容器67の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート66が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板54が配置される。組電池53は、保護シート66およびプリント配線基板54で囲まれた空間内に位置する。蓋68は、収納容器67の上面に取り付けられている。
【0108】
なお、組電池53の固定には粘着テープ52に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0109】
図6、
図7では単電池51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。あるいは、直列接続と並列接続を組合せてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列または並列に接続することもできる。
【0110】
また、
図6及び
図7に示した電池パックは組電池を一つ備えているが、実施形態に係る電池パックは複数の組電池を備えるものでもよい。複数の組電池は、直列接続、並列接続、又は直列接続と並列接続の組合せにより、電気的に接続される。
【0111】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。実施形態に係る電池パックは、大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に好適に用いられる。具体的には、デジタルカメラの電源として、または、例えば二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、あるいは鉄道用車両(例えば電車)などの車両用電池、または定置用電池として用いられる。特に、車両に搭載される車載用電池として好適に用いられる。
【0112】
以上説明した第4の実施形態の電池パックは、実施形態の二次電池を備えるため、優れた寿命性能と入出力性能を実現することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態の車両は、実施形態の二次電池を1又は2以上含むか、あるいは実施形態の電池パックを含む。
【0113】
第5実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものであると良い。また、車両は、車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含んでいても良い。
【0114】
図8に、実施形態に係る一例の電池パックを具備した自動車の一例を示す。
【0115】
図8に示す自動車71は、車体前方のエンジンルーム内に、実施形態に係る一例の電池パック72を搭載している。自動車における電池パックの搭載位置は、エンジンルームに限られない。例えば、電池パックは、自動車の車体後方又は座席の下に搭載することもできる。
【0116】
図9は、実施形態に係る車両の一例の構成を概略的に示した図である。
図9に示した車両300は、電気自動車である。
【0117】
図9に示す車両300は、車両用電源301と、車両用電源301の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit、電気制御装置)380と、外部端子370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
【0118】
車両300は、車両用電源301を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。しかしながら、
図9では、車両300への二次電池の搭載箇所は概略的に示している。
【0119】
車両用電源301は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
【0120】
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パックと交換することができる。
【0121】
組電池314a~314cのそれぞれは、直列に接続された複数の二次電池を備えている。各二次電池は、実施形態に係る二次電池である。組電池314a~314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。
【0122】
電池管理装置311は、車両用電源301の保全に関する情報を集めるために、車両用電源301に含まれる組電池314a~314cの二次電池の電圧、温度などの情報を組電池監視装置313a~313cとの間で通信を行い収集する。
【0123】
電池管理装置311と組電池監視装置313a~313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0124】
組電池監視装置313a~313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a~314cを構成する個々の二次電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての二次電池の温度を測定しなくてもよい。
【0125】
車両用電源301は、正極端子と負極端子との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば
図9に示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a~314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含む。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオンおよびオフされるリレー回路(図示せず)を備える。
【0126】
インバータ340は、入力した直流電圧をモータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340は、後述する電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧が制御される。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。
【0127】
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転し、その回転を例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達する。
【0128】
また、図示はしていないが、車両300は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源301に入力される。
【0129】
車両用電源301の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
【0130】
車両用電源301の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
【0131】
外部端子370は、後述する電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0132】
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置311を他の装置と協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間で、通信線により、車両用電源301の残容量等の車両用電源301の保全に関するデータ転送が行われる。
【0133】
実施形態の車両によれば、実施形態に係る二次電池を含む電池パックを含み、該電池パック(例えば312a、312b及び312cの電池パック)は、寿命性能と入出力性能とに優れているため、充放電性能に優れ、且つ信頼性の高い車両が得られる。さらに、それぞれの電池パックは安価で安全性が高いため、車両のコストを抑え、且つ安全性を高めることができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
(スラリー組成物の作製)
炭素繊維を純水に分散させて、炭素繊維分散液を調製した。炭素繊維としては、カーボンナノチューブを用いた。炭素繊維分散液と、活物質と、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子と粘度調整剤とを混合して、THINKY社製自転公転ミキサー(あわとり練太郎)を用いてこの混合物を撹拌して第1スラリーを調製した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表2に示す。活物質としては、平均粒径が約1μmであるニオブチタン複合酸化物(Nb2TiO7)の粒子を用いた。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。リチウムイオン伝導性の無機固体粒子としては、平均粒径が0.5μmであり、リチウムイオン伝導度が1×10-4S/cmであるNASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質粒子(Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12(0<x≦2、0≦y<3))を用いた。
第1スラリーに、粒状炭素と結着剤とを混合し、自転公転ミキサーを用いてこの混合物を撹拌して第2スラリーを調製した。この際、第2スラリーの固形分比率は60質量%とした。撹拌の際には、撹拌速度を1500rpmとし、撹拌時間を2分とした。粒状炭素としては、平均粒径が0.2μmのアセチレンブラック(AB)を用いた。結着剤としては、スチレンブタジエンゴムを用いた。第2スラリーにおいて、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、3質量部、3質量部、2質量部、及び3質量部であった。
【0135】
第2スラリーに純水を混合して固形分比率を49質量%とし、自転公転ミキサーを用いてさらに攪拌を加え第3スラリーを調製した。第3スラリーの撹拌の際には、撹拌速度を1000rpmとし、撹拌時間を1分とした。
【0136】
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を
図1に示す。
図1の横軸は、粒径(μm)についての対数目盛(log)であり、縦軸は粒径(μm)の体積基準での累積頻度の比率(%)を示す。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表1に示す。
【0137】
また、スラリー組成物のB型粘度計による25℃、100rpmでの粘度を前述の方法で測定し、その結果を表1に示す。
(負極の作製)
上記スラリー組成物を集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることで活物質含有層を形成した。集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いた。これを真空下130℃で12時間乾燥したのち、集電体と活物質含有層とをロールプレス機にて圧延して、負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0138】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成したところ、
図1と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
(実施例2-11及び比較例1-4)
第1スラリー、第2スラリー及び第3スラリーそれぞれの固形分比率、攪拌速度及び攪拌時間を表2に示す値に設定すること以外は、実施例1と同様にしてスラリー組成物を調製した。製造されたスラリー組成物を用いて実施例1と同様にして電極を製造した。実施例及び比較例のスラリー組成物と電極の累積頻度分布における、ピーク位置、小粒径側から粒径1μmまでの累積頻度の比率、小粒径側から粒径2μmまでの累積頻度の比率、小粒径側から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表1に示す。また、表1には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。なお、比較例2のスラリー組成物の累積頻度分布を
図1に併記する。
(入出力性能評価)
3極式ガラスセルを作製し、入出力性能を評価した。電極の大きさは一辺が2cmの正方形状とした。対極及び参照極には、リチウム金属を用いた。非水電解質としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を溶解させたものを用いた。混合溶媒におけるエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比は、1:2とした。LiPF
6の濃度は1mol/Lとした。非水電解質の量は25mLとした。
先ず、作製した3極式ガラスセルを、25℃の環境下で、1Cの電流密度で充電状態SOC(State of Charge)が100%となるまで充電した。その後、0.2Cの電流密度で、SOCが0%になるまで放電して、放電容量W1を測定した。次に、3極式ガラスセルを、1Cの電流密度でSOCが100%になるまで再び充電した。その後、5Cの電流密度で、SOCが0%になるまで放電して、放電容量W2を測定した。放電容量W2を放電容量W1で除することにより、容量比W2/W1を算出した。容量比W2/W1を表3に示す。
<サイクル性能評価>
3極式ガラスセルを用いて、サイクル性能を評価した。25℃の環境下で、1Cの電流密度で、SOCが100%に達するまで電池を充電した。その後、1Cの電流密度で、SOCが0%になるまで放電して、放電容量を測定した。この充放電を1サイクルとして、1回目の放電容量に対する放電容量維持率が80%となるまで繰り返し充放電を行った。この充放電サイクル数を表3に示す。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
表1-表3から明らかな通り、実施例1-11によると、比較例1-4に比して、容量比W2/W1で示される入出力性能とサイクル寿命性能が優れている。
図1は、実施例1のスラリー組成物の累積頻度分布と、比較例2のスラリー組成物の累積頻度分布を比較したものである。
図1から明らかな通り、実施例1のスラリー組成物は、粒子群全体の体積に占める微細粒子の体積の割合が、比較例2よりも多い。
【0143】
比較例1は、累積頻度分布のピーク位置が0.8μm未満である。これは、第1スラリー及び第2スラリーそれぞれの攪拌速度が大きく、かつ攪拌時間も長いため、ニオブチタン含有複合酸化物粒子の割れあるいは欠け、導電剤の分断または破損といったダメージが生じたことによる。
【0144】
比較例2は、累積頻度分布のピーク位置が3μmを超えている。これは、第2スラリーを固形分比率が低い状態で攪拌したため、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が生じたためである。
【0145】
比較例3は、粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%未満である。これは、第1スラリーの攪拌時間が短いため、ニオブチタン含有複合酸化物粒子または導電剤の凝集が生じたためである。
【0146】
比較例4は、粒径1μmまでの累積頻度の比率が35%を超えている。これは、第2スラリーの攪拌速度が大きく、かつ攪拌時間が長いため、ニオブチタン含有複合酸化物粒子の割れあるいは欠け、導電剤の分断または破損といったダメージが生じたことによる。
(実施例12)
(スラリー組成物の作製)
実施例1で説明したのと同様な炭素繊維を純水に分散させて、炭素繊維分散液を調製した。炭素繊維分散液と、活物質と、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子と粘度調整剤とを混合して、THINKY社製自転公転ミキサー(あわとり練太郎)を用いてこの混合物を撹拌して第1スラリーを調製した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。活物質、粘度調整剤、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子としては、実施例1で説明したのと同様なものを用いた。
第1スラリーに、粒状炭素と結着剤とを混合し、自転公転ミキサーを用いてこの混合物を撹拌して第2スラリーを調製した。第2スラリーの固形分比率、撹拌速度、撹拌時間を表5に示す。粒状炭素として平均粒径が3μmの鱗片状黒鉛を用いた。結着剤としては、実施例1で説明したのと同様なものを用いた。第2スラリーにおいて、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤及び結着剤の量は、それぞれ、5質量部、3質量部、3質量部、2質量部、及び4質量部であった。
【0147】
第2スラリーに純水を混合して固形分比率を表5に示す値とし、自転公転ミキサーを用いてさらに攪拌を加えて第3スラリーを調製した。撹拌速度と撹拌時間を表5に示す。
【0148】
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0149】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0150】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0151】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例13)
活物質として、平均粒径が約2μmであるニオブチタン含有複合酸化物(TiNb1.9Mo0.075Mg0.025O7)の粒子を用いた。この活物質を用いると共に、第1スラリー、第2スラリー及び第3スラリーそれぞれの固形分比率、撹拌速度、撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は、実施例1で説明したのと同様にしてスラリー組成物を調製した。スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0152】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0153】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0154】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例14)
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンを用いた。この結着剤を用いると共に、第1スラリー、第2スラリー及び第3スラリーそれぞれの固形分比率、撹拌速度、撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は、実施例1で説明したのと同様にしてスラリー組成物を調製した。スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0155】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0156】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0157】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例15)
(スラリー組成物の作製)
炭素繊維を純水に分散させて、炭素繊維分散液を調製した。炭素繊維としては気相成長カーボン繊維(VGCF)を用いた。炭素繊維分散液と、活物質と、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子と粘度調整剤とを混合して、THINKY社製自転公転ミキサー(あわとり練太郎)を用いてこの混合物を撹拌して第1スラリーを調製した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。活物質、粘度調整剤、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子としては、実施例1で説明したのと同様なものを用いた。
第1スラリーに、粒状炭素と結着剤とを混合し、自転公転ミキサーを用いてこの混合物を撹拌して第2スラリーを調製した。第2スラリーの固形分比率、撹拌速度、撹拌時間を表5に示す。粒状炭素、結着剤としては、実施例1で説明したのと同様なものを用いた。第2スラリーにおいて、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、2質量部、3質量部、3質量部、及び3質量部であった。
【0158】
第2スラリーに純水を混合して固形分比率を表5に示す値とし、自転公転ミキサーを用いてさらに攪拌を加えて第3スラリーを調製した。撹拌速度と撹拌時間を表5に示す。
【0159】
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0160】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0161】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0162】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例16)
分散剤としてPVPを用いること以外は、実施例1で説明したのと同様な原料を用いて第1スラリーを調整した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤、分散剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、2質量部、3質量部、3質量部、1質量部及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0163】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0164】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0165】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例17)
分散剤としてPVBを用いること以外は、実施例1で説明したのと同様な原料を用いて第1スラリーを調整した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤、分散剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、2質量部、3質量部、3質量部、1質量部及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0166】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0167】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0168】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例18)
分散剤としてセルロースナノファイバーを用いること以外は、実施例1で説明したのと同様な原料を用いて第1スラリーを調整した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤、分散剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、2質量部、3質量部、3質量部、1質量部及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0169】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0170】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0171】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例19)
分散剤1および分散剤2として、それぞれPVPおよびセルロースナノファイバーを用いて第1スラリーを調整したこと以外は実施例1と同様の方法でスラリーを調整した。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤、分散剤1、分散剤2及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、3質量部、3質量部、2質量部、1質量部、1質量部及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0172】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0173】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0174】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例20)
リチウムイオン伝導性の無機固体粒子を用いずに第1スラリーを調整したこと以外は実施例1と同様の方法でスラリーを調整した。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤及び結着剤の量は、それぞれ、3質量部、3質量部、2質量部、及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0175】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0176】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0177】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例21)
粒状炭素1および粒状炭素2として、平均粒径が0.2μmのアセチレンブラック(AB)及び平均粒径が4μmの鱗片状炭素を用いたこと以外は実施例1と同様の方法でスラリーを調整した。第2スラリーと第3スラリーの調製は、固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す値に設定すること以外は実施例1と同様にして行った。得られたスラリー組成物において、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素1、粒状炭素2、粘度調整剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、3質量部、3質量部、3質量部、2質量部、及び3質量部であった。
スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0178】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0179】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0180】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
(実施例22)
炭素繊維と、活物質と、リチウムイオン伝導性の無機固体粒子と、粒状炭素と、分散剤と、粘度調整剤と、結着剤と水とを混合して、THINKY社製自転公転ミキサー(あわとり練太郎)を用いてこの混合物を撹拌して第1スラリーを調製した。第1スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。活物質としては、平均粒径が約1μmであるニオブチタン複合酸化物(Nb2TiO7)の粒子を用いた。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。リチウムイオン伝導性の無機固体粒子としては、平均粒径が0.5μmであり、リチウムイオン伝導度が1×10-4S/cmであるNASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質粒子(Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12(0<x≦2、0≦y<3))を用いた。分散剤としては、PVPを用いた。粒状炭素としては、平均粒径が0.2μmのアセチレンブラック(AB)を用いた。結着剤としては、スチレンブタジエンゴムを用いた。第1スラリーにおいて、100質量部の活物質に対する無機固体粒子、炭素繊維、粒状炭素、粘度調整剤、分散剤及び結着剤の量は、それぞれ、4質量部、3質量部、3質量部、2質量部、1質量部及び3質量部であった。
【0181】
第1スラリーに純水を混合し、自転公転ミキサーを用いてさらに攪拌を加え第2スラリーを調製した。第2スラリーの固形分比率、撹拌速度(回転数)及び撹拌時間を表5に示す。スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布から粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を作成した。累積頻度分布における、ピーク位置、粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率を表4に示す。また、表4には、スラリー組成物のB型粘度を併記する。
【0182】
(負極の作製)
上記スラリー組成物を用いて実施例1で説明したのと同様な方法により負極を得た。プレス後の活物質含有層の密度は、2.5g/cm3だった。
【0183】
負極の活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布を前述の方法で測定し、得られた粒度分布に基づく粒径(μm)の体積基準での累積頻度分布を求めたところ、スラリー組成物の場合と同様なプロファイルの累積頻度分布を得た。
【0184】
得られた実施例の負極を用い、入出力性能とサイクル性能を実施例1と同様にして測定し、その結果を表6に示す。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
表4から表6までの結果に示す通り、活物質、導電剤又は結着剤の種類を変更する等によりスラリーの組成を変更した場合や、原料を添加する順序を変更した場合などにも所定の累積頻度分布を満たすことにより、入出力性能とサイクル性能に優れた電極及び二次電池を実現できることがわかる。
【0189】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例のスラリー組成物によれば、ニオブチタン含有複合酸化物粒子と導電剤と樹脂材料と水とを含み、スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ小粒径側から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にあるため、長寿命と高入出力性能を両立した電極及び二次電池の提供が可能である。
【0190】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料と、水を含む溶媒とを含むスラリー組成物であり、前記スラリー組成物のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある、スラリー組成物。
[2] 前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径2μmまでの累積頻度の比率が50%以上70%以下の範囲にある、[1]に記載のスラリー組成物。
[3] 前記累積頻度分布において、粒径の小さい方から粒径5μmまでの累積頻度の比率が80%以上95%以下の範囲にある、[1]または[2]に記載のスラリー組成物。
[4] B型粘度計による25℃、100rpmでの粘度が1.5Pa・s以上5Pa・s以下の範囲である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
[5] リチウムイオン伝導性無機固体粒子をさらに含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
[6] 前記ニオブチタン含有複合酸化物粒子は、Li
x
Ti
1-y
M1
y
Nb
2-z
M2
z
O
7+δ
(M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つで、M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3)で表されるか、Li
x
Ti
1-y
M3
y+z
Nb
2-z
O
7-δ
(M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つで、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である)で表される、[1]~[5]のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか1項に記載のスラリー組成物を、集電体に塗布する工程と、 前記集電体に塗布された前記スラリー組成物を乾燥させることにより前記集電体に活物質含有層を形成する工程と、
前記活物質含有層にプレスを施す工程と
を含む、電極の製造方法。
[8] ニオブチタン含有複合酸化物粒子を含む活物質と、導電剤と、樹脂材料とを含む活物質含有層と、前記活物質含有層が形成される集電体とを含む電極であって、
前記活物質含有層のレーザー回折散乱法による粒度分布に基づく粒径の体積基準での累積頻度分布は、ピーク位置が0.8μm以上3μm以下の範囲で、かつ粒径の小さい方から粒径1μmまでの累積頻度の比率が20%以上35%以下の範囲にある、電極。
[9] 正極と、
負極として[8]に記載の電極と、
非水電解質と
を含む、二次電池。
[10] [9]に記載の二次電池を一つまたは二以上含む、電池パック。
[11] 通電用の外部端子と、
保護回路とをさらに含む[10]に記載の電池パック。
[12] 前記二次電池を二以上具備し、前記二以上の二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、[10]または[11]に記載の電池パック。
[13] [10]~[12]のいずれか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
[14] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、[13]に記載の車両。
【符号の説明】
【0191】
1…電極群、2…容器(外装部材)、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…正極リード、7…負極リード、8…正極集電タブ、9…負極集電タブ、10…封口板、11…絶縁部材、12…外装部材、13…負極端子、14…正極端子、50…電池パック、51…単位セル、53…組電池、54…プリント配線基板、55…サーミスタ、56…保護回路、57…通電用の外部端子、71…自動車、72…電池パック、300…車両、301…車両用電源、310…通信バス、311…電池管理装置、312a~c…電池パック、313a~c…組電池監視装置、314a~c…組電池、316…正極端子、317負極端子、340…インバータ、345…駆動モータ、370…外部端子、380…車両ECU、L1、L2…接続ライン、W…駆動輪。