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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】道路情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240930BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240930BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240930BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240930BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20240930BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/16 A
G08G1/09 F
G16Y10/40
G16Y40/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021174747
(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公開番号】P2023064453
(43)【公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市野川 順平
(72)【発明者】
【氏名】岩間 大輝
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313519(JP,A)
【文献】特開2016-062157(JP,A)
【文献】特開2020-013537(JP,A)
【文献】特開2019-185111(JP,A)
【文献】特開2012-051441(JP,A)
【文献】特開2015-210572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線逸脱抑制機能を備えた車両から送信される、前記車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理が実行された時点及び前記車線逸脱抑制処理が実行された地点を示す車線逸脱抑制情報を、受信して取得する車線逸脱抑制情報取得部と、
前記車両から送信される、前記車両に備えられたセンサ類により検出された前記車両の挙動を示す車両挙動情報を、受信して取得する車両挙動情報取得部と、
前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、前記車線逸脱抑制機能による警報が出力された際の前記車両の自車線からの逸脱度合を認識する車線逸脱度合認識部と、
前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間における、前記車両が走行中の道路の幅方向の前記車両の挙動である道路幅方向挙動に基づいて、前記車線逸脱抑制処理が実行された地点に存在する道路幅方向の障害物を認識し、前記車線逸脱度合認識部により認識された前記逸脱度合に基づいて、前記道路幅方向の前記障害物のサイズを推定する障害物認識部と、
を備える道路情報処理システム。
【請求項2】
前記障害物認識部は、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間のうちの前記車線逸脱抑制処理が開始された時点から所定時間内における前記道路幅方向挙動に基づいて、前記障害物を認識する
請求項に記載の道路情報処理システム。
【請求項3】
前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から認識される前記車両が自車線に復帰する挙動の有無、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点に基づいて、前記障害物が存在するか否かを判定する
請求項1又は請求項2に記載の道路情報処理システム。
【請求項4】
前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識されなかった場合、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点までの前記車線逸脱抑制処理の開始からの経過時間が所定時間以上である場合に、前記障害物が存在すると判定する
請求項に記載の道路情報処理システム。
【請求項5】
前記障害物認識部は、前記障害物を認識した地点が店舗周辺である場合、前記障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定する
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の道路情報処理システム。
【請求項6】
前記障害物認識部は、複数の前記車両についての前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、同一地点に存在する前記障害物が複数回継続して認識される時間に基づいて、前記障害物の種別を推定する
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の道路情報処理システム。
【請求項7】
前記障害物認識部は、前記障害物を認識した時点が土日である場合は、前記障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定し、前記障害物を認識した時点が夜間である場合は、前記障害物の種別が道路工事であると推定する
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の道路情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面異常に遭遇した車両がとるであろうと想定される特定挙動に基づく異常条件が満たされているか否かを、車両から取得した車両の挙動情報に基づいて判定することにより、路面の状態を推定する路面状態推定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、駐車中の車両の周辺の画像に基づいて、駐車中の車両の右側面から道路の右側境界までの距離を算出することにより、無余地駐車であることを認識して、車両の運転者に無余地駐車であることを報知する無余地駐車抑止装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-13537号公報
【文献】特許第6172020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置は、路面の状態を推定するものであるため、無余地駐車を行っている車両等の路上の障害物の情報を取得することができない、という不都合がある。また、上記特許文献2の装置は、装置が搭載された車両の無余地駐車の認識と運転者に対する注意喚起を行うものである。そのため、得られる情報が特定車両の無余地駐車という極めて限定的なものとなり、広範囲のエリアを対象として、無余地駐車車両等の道路上の障害物の情報を取得することができない、という不都合がある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、広範囲のエリアにおける道路上の障害物の情報を取得することができる道路情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、車線逸脱抑制機能を備えた車両から送信される、前記車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理が実行された時点及び前記車線逸脱抑制処理が実行された地点を示す車線逸脱抑制情報を、受信して取得する車線逸脱抑制情報取得部と、前記車両から送信される、前記車両に備えられたセンサ類により検出された前記車両の挙動を示す車両挙動情報を、受信して取得する車両挙動情報取得部と、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、前記車線逸脱抑制機能による警報が出力された際の前記車両の自車線からの逸脱度合を認識する車線逸脱度合認識部と、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間における、前記車両が走行中の道路の幅方向の前記車両の挙動である道路幅方向挙動に基づいて、前記車線逸脱抑制処理が実行された地点に存在する道路幅方向の障害物を認識し、前記車線逸脱度合認識部により認識された前記逸脱度合に基づいて、前記道路幅方向の前記障害物のサイズを推定する障害物認識部と、を備える道路情報処理システムが挙げられる。
【0007】
上記道路情報処理システムにおいて、前記障害物認識部は、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間のうちの前記車線逸脱抑制処理が開始された時点から所定時間内における前記道路幅方向挙動に基づいて、前記障害物を認識する構成としてもよい。
【0008】
上記道路情報処理システムにおいて、前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から認識される前記車両が自車線に復帰する挙動の有無、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点に基づいて、前記障害物が存在するか否かを判定する構成としてもよい。
【0009】
上記道路情報処理システムにおいて、前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識されなかった場合、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点までの前記車線逸脱抑制処理の開始からの経過時間が所定時間以上である場合に、前記障害物が存在すると判定する構成としてもよい。
【0011】
上記道路情報システムにおいて、前記障害物認識部は、前記障害物を認識した地点が店舗周辺である場合、前記障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定する構成としてもよい。
【0012】
上記道路情報処理システムにおいて、前記障害物認識部は、複数の前記車両についての前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、同一地点に存在する前記障害物が複数回継続して認識される時間に基づいて、前記障害物の種別を推定する構成としてもよい。
【0013】
上記道路情報処理システムにおいて、前記障害物認識部は、前記障害物を認識した時点が土日である場合は、前記障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定し、前記障害物を認識した時点が夜間である場合は、前記障害物の種別が道路工事であると推定する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記道路情報処理システムによれば、広範囲のエリアにおける道路上の障害物の情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、道路情報処理システムの構成図である。
図2図2は、道路上の障害物の情報を取得する処理のフローチャートである。
図3図3は、自車線からの逸脱度合に基づいて、障害物のサイズを推定する処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.道路情報処理システムの構成]
図1を参照して、本実施形態の道路情報処理システム1の構成について説明する。道路情報処理システム1は、プロセッサ10、メモリ20、通信部30等を備えたコンピュータシステムである。
【0017】
道路情報処理システム1は、通信部30により、通信ネットワーク100を介して、道路管理サーバー110、及びエリアAr内の道路を走行する車両50との間で通信を行う。エリアArは、道路情報処理システム1との通信が可能なエリアである。車両50は、前方を撮影するカメラ51、車両50の挙動を検出するためのセンサ類52、車両50の運転者に対する警報を出力する警報装置53、及び車両50の作動を制御するECU(Electronic Control Unit)55を備えている。
【0018】
ECU55は、カメラ51による車両50の前方の撮影画像から道路の区分線92,93,94を認識して、車両50が自車線90から対向車線91に逸脱することを監視し、逸脱抑制処理を実行する車線逸脱抑制機能を備えている。ECU55は、車両50が自車線90から逸脱したことを検知したときに、車線逸脱抑制処理として、警報装置53から警報を出力して運転者に注意を促す処理を実行する。警報装置53は、ディスプレイ、スピーカー等であり、警報として、ディスプレイへの警報表示、スピーカーからの注意喚起音等を出力する。
【0019】
ECU55は、車線逸脱抑制機能により警報を出力したときに、警報を出力した際の状況を示す車線逸脱抑制情報dviを道路情報処理システムに送信する。車線逸脱抑制情報dviには、警報を出力した時点(期間)、警報を出力した地点等の情報が含まれる。
【0020】
車両50の挙動を検出するためのセンサ類52には、車両50の現在位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ(角速度センサ)、操舵角センサ等が含まれる。ECU55は、車線逸脱抑制機能により警報を出力した際にセンサ類52により検出された車両50の挙動状況を示す車両挙動情報bhiを、道路情報処理システム1に送信する。
【0021】
道路情報処理システム1のプロセッサ10は、メモリ20に保存された制御用プログラムを読み込んで実行することにより、車線逸脱抑制情報取得部11、車両挙動情報取得部12、車線逸脱度合認識部13、及び障害物認識部14として機能する。
【0022】
車線逸脱抑制情報取得部11は、車両50から送信される車線逸脱抑制情報dviを、通信部30により受信して取得する。車両挙動情報取得部12は、車両50から送信される車両挙動情報bhiを、通信部30により受信して取得する。車線逸脱度合認識部13は、車線逸脱抑制情報dvi及び車両挙動情報bhiに基づいて、車線逸脱抑制機能による警報が出力された際の車両50の自車線90からの逸脱度合を認識する。
【0023】
障害物認識部14は、車線逸脱抑制情報dviと車両挙動情報bhiに基づいて、車両50において車線逸脱抑制機能による警報が出力された際の車両50の挙動を認識することにより、路上に存在する障害物を認識する。障害物は、例えば、駐車車両、工事箇所等である。図1では、自車線90の右側(対向車線側)に通行可能な余地を残さずに駐車している無余地駐車車両60を例示している。
【0024】
近年、車両50と同様の車線逸脱抑制機能を備えた車両が普及しており、道路情報処理システム1には、エリアAr内の道路を走行するこれらの車両から、車線逸脱抑制情報dvi及び車線挙動情報bhiが送信される。道路情報処理システム1は、これらの車両から送信される車線逸脱抑制情報dvi及び車線挙動情報bhiに基づいて、広範囲のエリアAr内の道路上に存在する障害物を認識することができる。
【0025】
[2.障害物の情報取得処理]
図2に示したフローチャートに従って、図1に示した状況で、道路情報処理システム1により実行される路上の障害物の情報取得処理について説明する。道路情報処理システム1は、車両50が走行している道路に存在する障害物を認識する。
【0026】
図2のステップS1で、車線逸脱抑制情報取得部11は、モニタ対象である車両50(以下、対象車両50と称する)から送信される車線逸脱抑制情報dviを、通信部30により受信して取得する。続くステップS2で、車両挙動情報取得部12は、対象車両50から送信される車両挙動情報bhiを、通信部30により受信して取得する。
【0027】
続くステップS3で、障害物認識部14は、車線逸脱抑制情報dviから、対象車両50において車線逸脱抑制機能により警報が出力された期間を認識する。次のステップS4で、障害物認識部14は、車両挙動情報bhiから、車線逸脱抑制機能による警報が出力された期間における、対象車両50の道路幅の方向Dr(図1参照)の挙動(道路幅方向挙動)を認識する。障害物認識部14は、車両挙動情報bhiに含まれる対象車両50のセンサ類52による角速度、加速度,操舵角等の検出情報に基づいて、道路幅方向挙動を認識する。
【0028】
次のステップS5で、障害物認識部14は、道路幅方向挙動から、対象車両50が自車線90に復帰する挙動が認識されるか否かを判断する。そして、障害物認識部14は、自車線90に復帰する挙動が認識されたときはステップS20に処理を進め、自車線90に復帰する挙動が認識されなかったときにはステップS6に処理を進める。
【0029】
ステップS20で、障害物認識部14は、車線逸脱抑制機能による警報の出力が開始された時点から、対象車両50が自車線90に復帰する挙動が生じた時点までの経過時間が、所定時間以上であるか否かを判断する。そして、障害物認識部14は、経過時間が所定時間以上であるときはステップS6に処理を進め、経過時間が所定時間未満であるときにはステップS21に処理を進める。ステップS21で、障害物認識部14は、路上の障害物なしと判定して、ステップS11に処理を進める。
【0030】
ステップS6で、障害物認識部14は、路上の障害物ありと判定する。次のステップS7で、車線逸脱度合認識部13は、車両挙動情報bhiから認識した道路幅挙動を参照して、対象車両50が自車線90から逸脱した度合を認識する。図3は、対象車両50の自車線90に、小型の無余地駐車車両61と大型の無余地駐車車両62が、障害物として存在している状況を例示している。
【0031】
図3に示したように、対象車両50が自車線90から逸脱する度合(ここでは逸脱量)は、小型の無余地駐車車両61を回避して走行する際の逸脱量d1よりも、大型の無余地駐車車両62を回避して走行する際の逸脱量d2の方が多くなる。また、地図データ22から認識される自車線90の幅Wが広いほど、対象車両50が自車線90から逸脱する度合が少なくなる。そこで、続くステップS8で、障害物認識部14は、車線逸脱度合認識部13により認識された対象車両50の自車線90からの逸脱度合が大きいほど、また、自車線90の幅Wが広いほど、障害物のサイズが大きいと推定する。
【0032】
なお、自車線90のWと対象車両50の自車線90からの逸脱量d1,d2を、カメラ51(図1参照)の撮影画像から認識してもよい。この場合は、例えば、車両挙動情報bhiに、車線逸脱抑制機能による警報が出力された際のカメラ51の撮影画像を含めて、車両50から道路情報処理システムに送信する。
【0033】
続くステップS9で、障害物認識部14は、以下の種別推定条件により、障害物の種別を推定する。
(推定条件1)障害物認識部14は、車線逸脱抑制機能により警報が出力された地点の属性(地図データ22から認識される)に基づいて、障害物の種別を推定する。例えば、車線逸脱抑制機能により警報が出力された地点の属性が店舗周辺である場合、障害物認識部14は、障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定する。
【0034】
(推定条件2)障害物認識部14は、複数の車両から送信された車線逸脱抑制情報dvi及び車両挙動情報bhiに基づいて、同一地点に存在する障害物が複数回継続して認識される時間に基づいて、障害物の種別を推定する。例えば、同一地点に存在する障害物が複数回継続して認識される時間が、短時間閾値(例えば1時間)以下であった場合、障害物認識部14は、障害物の種別は路肩の駐車車両であると推定する。また、同一地点に存在する障害物が複数回継続して認識される時間が、長時間閾値(例えば数時間)以上であった場合、障害物認識部14は、障害物の種別は、道路工事であると推定する。
【0035】
(推定条件3)障害物認識部14は、障害物を認識した時点(車線逸脱抑制機能による警報が出力された時点)に基づいて障害物の種別を推定する。例えば、障害物を認識した時点が土日であれば、障害物の種別が路肩の駐車車両であると推定する。また、障害物を認識した時点が夜間である場合、障害物認識部14は、障害物の種別が道路工事であると推定する。
【0036】
次のステップS10で、障害物認識部14は、認識した障害物の情報を、通信部30により道路管理サーバー110に送信する。障害物の情報には、障害物を認識した時点、障害物が存在する地点、障害物のサイズ、障害物の種別等が含まれる。さらに、障害物認識部14が、障害物の認識状況(認識頻度、継続して認識される期間の長さ等)に基づいて、無余地駐車車両が多発している地点を通行注意地点として判定し、通行注意地点の情報を、障害物の情報に含めて道路管理サーバー110に送信するようにしてもよい。
【0037】
無余地駐車車両が多発する原因として、駐車車両以外に、店舗の駐車場への入場待ちのために停車している車両も考えられる。この場合も、通行車両は、道路の区画線を越えないと進行することができず、区画線をはみ出して自車線から逸脱する必要がある地点であることから、障害物認識部14は、通行注意地点として判定する。
【0038】
また、見通しのよいカーブにおいては、障害物の回避する目的とは無関係に、運転者による意図的な操作による自車線からの逸脱が生じ易いと想定される。そこで、道路の曲率が大きい区間においては、通行注意地点の判定閾値を予め高く設定し、これにより、このような区間において、障害物認識部14が、実際には障害物が存在しないにもかかわらず、逸脱の頻繁な発生により障害物が存在すると誤って認識することを抑制してもよい。
【0039】
道路管理サーバー110は、障害物の情報に基づいて、例えば、無余地駐車車両が多発している地点の道路を改善が必要な道路と定義して、今後の道路整備に活用する。また、道路管理サーバー110により、無余地駐車車両が多発している通行注意地点に向かう可能性がある車両に、通行注意地点の情報を送信するようにしてもよい。さらに、運転者の要望に応じて、通行注意地点を回避するルートを案内する情報を送信してもよい。
【0040】
[3.他の実施形態]
上記実施形態では、道路情報処理システム1を、通信ネットワーク100に接続されたコンピュータシステムにより構成した例を説明した。他の実施形態として、道路情報処理システムを、車両50に搭載されたECU55により構成してもよい。この場合は、車両50で認識された障害物の情報を、車両50から、通信ネットワーク100を介して道路管理サーバー110に送信する態様となる。
【0041】
上記実施形態では、車線逸脱度合認識部13を備えて、図2のステップS7~S8の処理によって障害物のサイズを推定したが、車線逸脱度合認識部13を省略した構成としてもよい。
【0042】
上記実施形態では、図2のステップS9の処理により、障害物の種別を推定したが、障害物の推定については省略した構成としてもよい。
【0043】
上記実施形態では、車両50が備えた車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理として、警報装置53から警報を出力する処理を例示した。車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理には、警報の出力の他に、車両50のステアリングの操舵角を、車両50が自車線90に戻る方向に制御する処理、車両50のステアリングを振動させて、運転に注意を促す処理等が含まれる。
【0044】
上記実施形態において、障害物認識部14が、車両挙動情報bhiに含まれる操舵角センサの検出情報に基づいて操舵角速度を算出することにより、以下の処理を行うようにしてもよい。操舵角速度は、操舵角センサにより検出される操舵角の単位時間あたりの変化量である。
処理1…操舵角速度の大きさに基づいて障害物の有無を認識する。すなわち、操舵角速度が所定速度よりも大きいときには、障害物を回避するための操作ではないと判断して、障害物有無の判定対象から除外してもよい。
処理2…操舵角速度の大きさに基づいて障害物の種類を判定する。すなわち、操舵角速度が所定速度よりも大きいときには、急な飛び出しのような予見しづらく瞬間的に発生した障害物があったものと推定してもよい。また、操舵角速度が所定速度よりも小さいときには、駐車車両や工事区間のような離れたところから目視できるような固定的な障害物があったものと推定してもよい。
【0045】
なお、図1は、本願発明の理解を容易にするために、道路情報処理システム1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、道路情報処理システム1の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図2に示したフローチャートによる各構成要素の処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0046】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
(構成1)車線逸脱抑制機能を備えた車両において、前記車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理が実行された時点及び前記車線逸脱抑制処理が実行された地点を示す車線逸脱抑制情報を取得する車線逸脱抑制情報取得部と、前記車両の挙動を示す車両挙動情報を取得する車両挙動情報取得部と、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、前記車線逸脱抑制処理が実行された地点に存在する障害物を認識する障害物認識部と、を備える道路情報処理システム。
構成1の道路情報処理システムによれば、任意の道路を走行する車両の車線逸脱抑制情報と車両挙動情報とに基づいて、広範囲のエリアにおける道路上の障害物の情報を取得することができる。
【0047】
(構成2)前記障害物認識部は、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間における、前記車両が走行中の道路の幅方向の前記車両の挙動である道路幅方向挙動に基づいて、前記障害物を認識する構成1に記載の道路情報処理システム。
構成2の道路情報処理システムによれば、車両が自車線から逸脱して、車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理が実行されている期間における、自車線からの逸脱及び自車線への復帰の方向である道路幅方向の車両の挙動に基づいて、道路上の障害物を認識することができる。
【0048】
(構成3)前記障害物認識部は、前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報から認識した、前記車線逸脱抑制処理が実行された期間のうちの前記車線逸脱抑制処理が開始された時点から所定時間内における前記道路幅方向挙動に基づいて、前記障害物を認識する構成2に記載の道路情報処理システム。
構成3の道路情報処理システムによれば、車両が自車線から逸脱して、車線逸脱抑制機能による車線逸脱抑制処理が開始された時点から所定時間内の車両の道路幅方向の挙動により、車両の自車線への迅速な復帰を妨げる障害物の存在を推定することができる。
【0049】
(構成4)前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から認識される前記車両が自車線に復帰する挙動の有無、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点に基づいて、前記障害物が存在するか否かを判定する構成2又は構成3に記載の道路情報処理システム。
構成4の道路情報処理システムによれば、車両が自車線に復帰する挙動の有無、又は車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点により、車両が自車線に復帰することを妨げる障害物が存在するか否かを推定することができる。
【0050】
(構成5)前記障害物認識部は、前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識されなかった場合、又は前記道路幅方向挙動から前記車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点までの前記車線逸脱抑制処理の開始からの経過時間が所定時間以上である場合に、前記障害物が存在すると判定する構成4に記載の道路情報処理システム。
構成5の道路情報処理システムによれば、車両が自車線に復帰する挙動が認識されなかった場合、又は車両が自車線に復帰する挙動が認識された時点までの車線逸脱抑制処理の開始からの経過時間が所定時間以上である場合に、車両が自車線に復帰することを妨げる障害物が存在すると推定することができる。
【0051】
(構成6)前記車両が自車線から逸脱した度合を認識する車線逸脱度合認識部を備え、前記障害物認識部は、前記車線逸脱抑制処理が実行された際に車線逸脱度合認識部により認識された前記車両が自車線から逸脱した度合に基づいて、前記障害物のサイズを推定する構成1から構成5のうちいずれか一つの構成に記載の道路情報処理システム。
構成6の道路情報処理システムによれば、路上の障害物のサイズが大きいほど、車両が自車線から逸脱する度合が大きくなると推定される。そのため、車線逸脱抑制処理が実行された際の車両の自車線からの逸脱の度合に基づいて、障害物のサイズを推定することができる。
【0052】
(構成7)前記障害物認識部は、前記障害物を認識した地点の属性に基づいて、前記障害物の種別を推定する構成1から構成6のうちいずれか一つの構成に記載の道路情報処理システム。
構成7の道路情報処理システムによれば、例えば、障害物が認識された地点が店舗の周辺である場合に、障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定することができる。
【0053】
(構成8)記障害物認識部は、複数の前記車両についての前記車線逸脱抑制情報及び前記車両挙動情報に基づいて、同一地点に存在する前記障害物が複数回継続して認識される時間に基づいて、前記障害物の種別を推定する構成1から構成7のうちいずれか一つの構成に記載の道路情報処理システム。
構成8の道路情報処理システムによれば、例えば、同一地点に存在する障害物が複数回認識される時間が短時間である場合は、障害物の種別が路肩に駐車した車両であると推定することができ、また、長時間である場合は、障害物の種別が道路工事であると推定することができる。
【0054】
(構成9)前記障害物認識部は、前記障害物を認識した時点に基づいて、前記障害物の種別を推定する構成1から構成8のうちいずれか一つの構成に記載の道路情報処理システム。
構成9の道路情報処理システムによれば、例えば、障害物が認識された時点が土日である場合は、障害物の種別が路肩に駐車している車両であると推定することができ、また、障害物が認識された時点が夜間である場合は、障害物の種別が道路工事であると推定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…道路情報処理システム、10…プロセッサ、11…車線逸脱抑制情報取得部、12…車両挙動情報取得部、13…車線逸脱度合認識部、14…障害物認識部、20…メモリ、21…制御用プログラム、22…地図データ、50…車両(自車両)、51…カメラ、52…スピーカー、53…センサ類、55…ECU、60,61,62…駐車車両、90…自車線、92…対向車線、91,92,93…道路の区分線。
図1
図2
図3