(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240930BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240930BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240930BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240930BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240930BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240930BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240930BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240930BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240930BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240930BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240930BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240930BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240930BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20240930BHJP
C07K 14/555 20060101ALN20240930BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K19/00
C07K14/705
C12Q1/04
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K35/12
A61K47/68
A61K47/60
A61K47/55
A61K47/54
A61K47/62
A61P43/00 121
A61K31/704
A61K31/513
A61K31/282
A61K31/337
C12N15/13
C07K14/55
C07K14/555
(21)【出願番号】P 2021528872
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2019126495
(87)【国際公開番号】W WO2020135201
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】201811617535.8
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519006104
【氏名又は名称】四川科倫博泰生物医薬股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN KELUN-BIOTECH BIOPHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.666, Xinhua Avenue (Section 2), Hai Xia Industrial Park, Wenjiang District, Chengdu, Sichuan 611138, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521218456
【氏名又は名称】クラス・ファーマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲海▼▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 俗俊
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 春霞
(72)【発明者】
【氏名】李 虹
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 登念
(72)【発明者】
【氏名】▲龍▼ ▲虎▼
(72)【発明者】
【氏名】王 成
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】薛 ▲トン▼▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 晶翼
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500059(JP,A)
【文献】国際公開第2018/006882(WO,A1)
【文献】特表2015-522543(JP,A)
【文献】国際公開第2018/054484(WO,A1)
【文献】特表2018-513146(JP,A)
【文献】特表2016-517447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN18.2に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、該抗体又はその抗原結合断片は、以下の相補性決定領域(CDRs
);
(a)SEQ ID NO:1で示される重鎖可変領域(VH)に含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:2で示される軽鎖可変領域(VL)に含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(b)SEQ ID NO:3、39又は40で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:4又は41で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(c)SEQ ID NO:44で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び、SEQ ID NO:45で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(d)SEQ ID NO:46で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:47で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(e)SEQ ID NO:48で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:49で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(f)SEQ ID NO:50で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:51で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、又は、
(g)SEQ ID NO:52で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、
及び、SEQ ID NO:53で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3
、
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(1)CDRがIMGT番号付けスキームにより定義された下記の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、
(a)配列がSEQ ID NO:5であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:6であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:7であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:8であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:9であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:10であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(b)配列がSEQ ID NO:11であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:12又は110であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:13であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:14であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:15であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:16であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(c)配列がSEQ ID NO:81であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:82であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:83であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:96であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:97であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(d)配列がSEQ ID NO:81であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:84であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:85であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:96であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:97であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(e)配列がSEQ ID NO:86であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:87であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:88であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:98であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:99であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(f)配列がSEQ ID NO:89であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:90であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:91であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:98であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:99であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(g)配列がSEQ ID NO:92であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:93であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:94であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:100であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:101であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、あるいは、
(2)CDRがAbM番号付けスキームにより定義された下記の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、
(a)配列がSEQ ID NO:17であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:18であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:19であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:20であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:21であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:22であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(b)配列がSEQ ID NO:23であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:24又は111であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:25であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:26であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:27であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:28であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(c)配列がSEQ ID NO:58であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:62であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:67であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:74であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:78であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(d)配列がSEQ ID NO:58であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:63であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:68であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO: 74であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:78であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(e)配列がSEQ ID NO:59であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:64であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:69であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、 配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO: 75であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:79であるCDR-L3と、の 3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(f)配列がSEQ ID NO:60であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:65であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:70であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:76であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:79であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、又は、
(g)配列がSEQ ID NO:61であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:66であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:71であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、
及び、配列がSEQ ID NO:73であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:77であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:80であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)
、
を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(a)SEQ ID NOs:1、29、30、31、32のいずれか1つで示されるVH配列
及びSEQ ID NOs:2、33、34、35、36、37、38のいずれか1つで示されるVL配列、
(b)SEQ ID NOs:3、39、40のいずれか1つで示されるVH配列
及びSEQ ID NOs:4、41のいずれか1つで示されるVL配列、
(c)SEQ ID NO:44で示されるVH配列
及びSEQ ID NO:45で示されるVL配列、
(d)SEQ ID NO:46で示されるVH配列
及びSEQ ID NO:47で示されるVL配列、
(e)SEQ ID NO:48で示されるVH配列
及びSEQ ID NO:49で示されるVL配列、
(f)SEQ ID NO:50で示されるVH配列
及びSEQ ID NO:51で示されるVL配列、
(g)SEQ ID NO:52で示されるVH配列
及びSEQ ID NO:53で示されるVL配列、のいずれか1組から選択される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含
むか、
或いは、前記重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)について、(a)~(g)のいずれか1組と比較して、重鎖可変領域(VH)は、少なくとも
70%の配列同一性を有し、及び/又は軽鎖可変領域(VL)は、少なくとも
70%の配列同一性を有する、
請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
(a)SEQ ID NO:1で示される配列のVH及びSEQ ID NO:2で示される配列のVL、
(b)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:33で示される配列のVL、
(c)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:34で示される配列のVL、
(d)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:35で示される配列のVL、
(e)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:36で示される配列のVL、
(f)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:37で示される配列のVL、
(g)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:38で示される配列のVL、
(h)SEQ ID NO:30で示される配列のVH及びSEQ ID NO:33で示される配列のVL、
(i)SEQ ID NO:31で示される配列のVH及びSEQ ID NO:33で示される配列のVL、
(j)SEQ ID NO:32で示される配列のVH及びSEQ ID NO:33で示される配列のVL、
(k)SEQ ID NO:3で示される配列のVH及びSEQ ID NO:4で示される配列のVL、
(l)SEQ ID NO:39で示される配列のVH及びSEQ ID NO:41で示される配列のVL、
(m)SEQ ID NO:40で示される配列のVH及びSEQ ID NO:41で示される配列のVL、
(n)SEQ ID NO:44で示される配列のVH及びSEQ ID NO:45で示される配列のVL、
(o)SEQ ID NO:46で示される配列のVH及びSEQ ID NO:47で示される配列のVL、
(p)SEQ ID NO:48で示される配列のVH及びSEQ ID NO:49で示される配列のVL、
(q)SEQ ID NO:50で示される配列のVH及びSEQ ID NO:51で示される配列のVL、
(r)SEQ ID NO:52で示される配列のVH及びSEQ ID NO:53で示される配列のVL、のいずれか1組から選択される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含
むか、
或いは、前記重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)について、(a)~(r)のいずれか1組と比較して、重鎖可変領域(VH)は、少なくとも7
0%の配列同一性を有し、及び軽鎖可変領域(VL)は、少なくとも
70%の配列同一性を有
する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
マウス由来抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)又は
その変異体と、
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)又は
その変異体と、
をさらに含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体は、下記の(a)~(r)のいずれか1組から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片;
(a)SEQ ID NO:1で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:2で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(b)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(c)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:34で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(d)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:35で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(e)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:36で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(f)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:37で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(g)SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:38で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(h)SEQ ID NO:30で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(i)SEQ ID NO:31で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(j)SEQ ID NO:32で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(k)SEQ ID NO:3で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:4で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(l)SEQ ID NO:39で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:41で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(m)SEQ ID NO:40で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:41で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(n)SEQ ID NO:44で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:45で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(o)SEQ ID NO:46で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:47で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(p)SEQ ID NO:48で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:49で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、
(q)SEQ ID NO:50で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:51で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、又は
(r)SEQ ID NO:52で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:53で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片であって、
該
抗体又はその抗原結合断片は、
(a)
下記から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;
(i)SEQ ID NO:102で示される配列、又は
(ii)SEQ ID NO:102で示される配列と少なくとも80%
の配列同一性を有する配列、及び
下記から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(iii)SEQ ID NO:103で示される配列、又は
(iv)SEQ ID NO:103で示される配列と少なくとも80%
の配列同一性を有する配列、
を含むか、
あるいは、
(b)
下記
から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖;
(i)SEQ ID NO:106で示される配列、又は
(ii)SEQ ID NO:106で示される配列と少なくとも80%
の配列同一性を有する配列、及び
下記から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖;
(iii)SEQ ID NO:107で示される配列、又は
(iv)SEQ ID NO:107で示される配列と少なくとも80%
の配列同一性を有する配列、を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
ScFv、Fab、Fab’、(Fab’)
2、Fv断片、ジスルフィド結合で連結されたFv(dsFv)、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体及び多重特異性抗体から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
標識が付されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
100nM未満のK
DでCLDN18.2に結合し、及び/又は
500nM未満のEC50でCLDN18.2に結合する、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、その重鎖
及び軽鎖、又はその重鎖可変領域
及び軽鎖可変領域をコードする、単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【請求項13】
抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子、
及び、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、
抗体重鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、
(a)SEQ ID NO:54又は56で示されるヌクレオチド配列、又は
(b)(a)に記載のヌクレオチド配列と
同一の配列、又は
(c)(a)に記載のヌクレオチド配列と3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択され、
及び、
抗体軽鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、
(d)SEQ ID NO:55又は57で示されるヌクレオチド配列、又は
(e)(d)に記載のヌクレオチド配列と
同一の配列、又は
(f)(d)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択される、
請求項12に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【請求項14】
抗体重鎖をコードする核酸分子、
及び、抗体軽鎖をコードする核酸分子を含み、
抗体重鎖をコードする前記核酸分子は、
(a)SEQ ID NO:104又は108で示されるヌクレオチド配列、又は
(b)(a)に記載のヌクレオチド配列と
同一の配列、又は
(c)(a)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択され、
及び、
抗体軽鎖をコードする前記核酸分子は、
(d)SEQ ID NO:105又は109で示されるヌクレオチド配列、又は
(e)(d)に記載のヌクレオチド配列と
同一の配列、又は
(f)(d)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択される、
請求項12又は13に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセットを含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項16】
請求項12~14のいずれか1項に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセット、又は、請求項15に記載のベクターまたはベクターのセット、
を含む、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片の作製方法であって、
前記抗体又はその抗原結合断片の発現を許容する条件下で、請求項16に記載の宿主細胞を培養し、
宿主細胞の培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む、作製方法。
【請求項18】
抗体又はその抗原結合断片及びカップリング部分を含
むコンジュゲートであって、
ここで、前記抗体は、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片であり、前記カップリング部分は、検出可能な標識、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質、酵素、ポリエチレングリコール(PEG)、核種、核酸、小分子毒素活性ポリペプチド、タンパク質、受容体、配位子、
及び、腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死を促進する他の活性物質
から選択される、コンジュゲート。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、膜貫通ドメインと、一つ又は複数の細胞内T細胞シグナルドメインとを含む、キメラ抗原受容体。
【請求項20】
第1の抗体又はその断片と、他の抗体又はその断片又は抗体類似体と、を含む多重特異性抗体であって、
ここで、第1の抗体又はその断片は、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片であり、そして、
各抗体又はその断片又は抗体類似体は、元の結合特異性を保持される、
多重特異性抗体。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項15に記載のベクターまたはベクターのセット、又は、請求項16に記載の宿主細胞、又は、請求項18に記載のコンジュゲート、又は、請求項19に記載のキメラ抗原受容体、又は、請求項20に記載の多重特異性抗体と、
薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む、
医薬組成物。
【請求項22】
前記抗体又はその抗原結合断片は、被験者において、
(a)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、
(b)腫瘍細胞の増殖を阻害し、
(c)T細胞の浸潤を誘発し及び/又は増加させ、
(d)免疫反応を誘発及び/又は増強し、
(e)補体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(f)抗体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(g)NK細胞活性を増加させ、
(h)CLDN18.2の発現及び活性化を阻害し、
(i)CLDN18.2媒介による信号伝達を阻害し、又は
(j)(a)~(i)の任意の組み合わせ、
に用いられる、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3、VISTA、CTLA-4、OX40、BTLA、4-1BB、CD96、CD27、CD28、CD40、LAIR1、CD160、2B4、TGF-R、KIR、ICOS、GITR、CD3、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、SLAMF7、NKp80、B7-H3及びそれらの任意の組み合わせから選択される受容体又は配位子に特異的に結合する第2の抗体、又は、前記第2の抗体をコードする核酸をさらに含む、請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項15に記載のベクターまたはベクターのセット、又は、請求項16に記載の宿主細胞、又は、請求項18に記載のコンジュゲート、又は、請求項19に記載のキメラ抗原受容体、又は、請求項20に記載の多重特異性抗体、又は、請求項21~23のいずれか1項に記載の医薬組成物
、を含み、
そして、使用説明書
を含んでいてもよい、診断用又は治療用キット。
【請求項25】
腫瘍の予防及び/又は治療及び/又は補助的治療用の薬物の製造における、
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項15に記載のベクターまたはベクターのセット、又は請求項16に記載の宿主細胞、又は請求項18に記載のコンジュゲート、又は請求項19に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項20に記載の多重特異性抗体、又は請求項21~23のいずれか1項に記載の医薬組成物
の使用。
【請求項26】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項15に記載のベクターまたはベクターのセット、又は、請求項16に記載の宿主細胞、又は、請求項18に記載のコンジュゲート、又は、請求項19に記載のキメラ抗原受容体、又は、請求項20に記載の多重特異性抗体、又は、請求項21~23のいずれか1項に記載の医薬組成物の、薬物の製造における使用であって、
前記薬物は、
(a)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、
(b)腫瘍細胞の増殖を阻害し、
(c)体外又は被験者体内で免疫細胞活性を向上させ、
(d)被験者体内で免疫応答を増強し、
(e)被験者体内で腫瘍を治療し、
(f)T細胞の浸潤を誘発し及び/又は増加させ、
(g)免疫反応を誘発及び/又は増強し、
(h)補体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(i)抗体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(j)NK細胞活性を増加させ、
(k)CLDN18.2の発現及び活性化を阻害し、
(l)CLDN18.2媒介による信号伝達を阻害し、又は
(m)(a)~(l)の任意の組み合わせ、
に用いられる、使用。
【請求項27】
前記腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍及び癌の転移性、難治性又は再発性病巣
である、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
被験者において腫瘍を予防及び/又は治療し、及び/又は腫瘍の進行を遅延させ、及び/又は腫瘍の再発を低減又は阻害するための、請求項21~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記被験者に、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、DNA療法、RNA療法、ナノ療法、ウィルス療法、補助療法及びその任意の組み合わせから選択される第2の療法を施すことをさらに含み、
前記第2の療法は、請求項28に記載の医薬組成物と別々に又は組み合わせて適用されて
もよく、前記第2の療法は、請求項28に記載の医薬組成物と同時又は順次に適用されて
もよい、
請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍及び癌の転移性、難治性又は再発性病巣
である、請求項28又は29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
試料と請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片とを、前記抗体又はその抗原結合断片とCLDN18.2による複合体の形成を許容する条件下で接触させ、そして
、前記抗体又はその抗原結合断片とCLDN18.2との複合体の形成を検出することを含む、試料中のCLDN18.2の存在又はそのレベルを検出する方法。
【請求項32】
胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、肺癌から選択される腫瘍又は腫瘍の転移を診断又は鑑別する診断用キットの製造における、
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合断片、請求項18に記載のコンジュゲート、または、請求項20に記載の多重特異性抗体の使用。
【請求項33】
SEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)と、SEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む、請求項6に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項34】
抗腫瘍活性を有する別の薬学的活性剤を更に含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項35】
別の薬学的活性剤が、インターフェロン、インターロイキン-2又は化学療法薬である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
別の薬学的活性剤が、エピルビシン、オキサリプラチン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、
エピルビシン(Epirubicin)+オキサリプラチン(Oxaliplatin)+5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)の組み合わせ、FOLFOX4、FOLFOX6、mFOLFOX6(オキサリプラチン、フォリン酸及び5-フルオロウラシルを含む)から選択される1種以上である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLが、ヒト又はマウス由来の免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
前記腫瘍又は癌が、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、腎癌、肺癌、肝癌、胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、生殖細胞癌、骨癌、皮膚癌、胸腺癌、胆管癌、胆嚢癌、黒色腫、中皮腫、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、神経膠芽腫又は白血病から選択される、請求項27に記載の使用、または、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記腫瘍が、CLDN18.2陽性である、請求項27に記載の使用、または、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記腫瘍がHER2陰性である、請求項39に記載の使用または医薬組成物。
【請求項41】
前記抗体又はその抗原結合断片が、SEQ ID NO:40で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び、SEQ ID NO:41で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
(1)CDRがIMGT番号付けスキームにより定義された下記の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)であって、
配列がSEQ ID NO:11であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:110であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:13であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び、
配列がSEQ ID NO:14であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:15であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:16であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、を含むか、
又は、
(2)CDRがAbM番号付けスキームにより定義された下記の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)であって、
配列がSEQ ID NO:23であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:111であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:25であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び、
配列がSEQ ID NO:26であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:27であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:28であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、を含む、
請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項43】
SEQ ID NO:40で示される配列のVH及びSEQ ID NO:41で示される配列のVL、を含む、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項44】
前記抗体が、
(m)SEQ ID NO:40で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖と、SEQ ID NO:41で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖、を含む、請求項7に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項45】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
SEQ ID NO:106で示されるアミノ酸配列を含む重鎖、及び
SEQ ID NO:107で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖、
を含む、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項46】
抗体重鎖をコードする核酸分子及び抗体軽鎖をコードする核酸分子を含む、請求項14に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセットであって、
ここで、抗体重鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:108で示されるヌクレオチド配列を有し、そして、
抗体軽鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:109で示されるヌクレオチド配列を有する、単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用モノクローナル抗体の分野に属し、より具体的には、本発明は、CLDN18.2に対する抗体に関し、さらに疾患治療における前記抗体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
Claudin 18.2(CLDN18.2)は密着結合タンパク質Claudinタンパク質ファミリーのメンバーである。密着結合タンパク質は、細胞間の密着結合を媒介するタンパク質であり、異なるClaudinタンパク亜型は、異なる組織に発現し、異なる癌に関するものである。Claudin 1は、大腸癌で高発現し、Claudin 7は、肝癌の再発に関する。正常組織におけるClaudin 18.2の発現は、胃粘膜細胞のみに限定され、他の正常組織に発現しない。また、Claudin 18.2は、70%の原発性胃腺癌及びその転移腫瘍に発現し、他のいくつかの癌、例えば膵臓癌(50%)、食道癌(30%)及び非小細胞肺癌(25%)にも発現し、そのうち、胃癌、膵臓癌は予後が悪く、死亡率が高く、現在では薬物の需要が非常に大きい。
【0003】
Claudin 18.2タンパク質は、4つの膜貫通領域、2つの細胞外ループ及び1つの細胞内ループを含み、そのN末端及びC末端は、細胞質基質内にある。2つの細胞外ループにより、理想的な抗体標的物となる。Claudin 18.2タンパク質配列は、種間にまたがって高度に保存されている。その相同ファミリータンパク質Claudin 18.1は、肺組織で特異的に発現し、Claudin 18.2の配列と非常に似ており、細胞外ループD1には、8つのアミノ酸のみに違いがあり、抗体認識エピトープが決定される。Claudin 18.2とClaudin 18.1は高い類似性があるため、Claudin 18.2特異的抗体薬物の開発はより困難である。
【0004】
アステラス社のZolbetuximab(IMAB362)は、ヒトマウスキメラIgG1型抗体であり、Claudin 18.2を標的とする。それは、腫瘍細胞表面のClaudin 18.2に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)機能を活性化する。それはさらに腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞の増殖を阻害することができる。
【0005】
しかしながら、関連薬物は市販されていない。そのため、より高い特異性、より低い毒性や副作用を有し、より優れた臨床薬効を有する抗標的Claudin 18.2抗体の開発は、緊急に必要である。これは癌患者により多くの投薬選択を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願において、発明者らは、まず、CLDN18.1に結合することなくCLDN18.2を特異的に認識/結合することができる、優れた性質を有するマウス由来抗体を開発した。その上で、発明者らは、創造的な労力により、該マウス由来抗体を鋭意研究して改造し、該マウス由来抗体のキメラ抗体及びヒト化抗体を開発した。本発明のヒト化抗体は、極めて高いヒト化レベルを有するだけでなく、マウス由来抗体及びヒトマウスキメラ抗体(キメラ抗体がマウス由来抗体と全く同じ重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する)と実質的に同一の(又はさらに優れた)生物学的機能を有する。
【0007】
したがって、本発明の抗体(特にヒト化抗体)は、特に有利であり、親マウス由来抗体の機能及び性質を維持するだけでなく、例えば、CLDN18.2に高い親和性及び特異性で結合するため、腫瘍を予防及び治療する可能性を有し、本発明のヒト化抗体は、極めて高いヒト化レベルを有するため、免疫原性反応を誘発することなくヒト被験者に安全に投与することができる。したがって、本発明の抗体は、重大な臨床的価値を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の抗体
一態様では、本発明は、CLDN18.2に特異的に結合できる抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO: 1で示される重鎖可変領域(VH)に含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO: 2で示される軽鎖可変領域(VL)に含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(b)SEQ ID NO: 3で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO:4で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(c)SEQ ID NO: 44で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO:45で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(d)SEQ ID NO: 46で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO: 47で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(e)SEQ ID NO: 48で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO: 49で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(f)SEQ ID NO: 50で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO: 51で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、
又は、
(g)SEQ ID NO: 52で示されるVHに含まれるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3、及び/又は、SEQ ID NO: 53で示されるVLに含まれるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3、という相補性決定領域(CDRs)、
あるいは、
(h)(a)~(g)のいずれかに記載の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域と比較して、少なくとも1つのCDRが、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)である変異を有し、好ましくは、前記置換は、保存的置換である重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)、
を含み、
いくつかの好ましい実施形態では、前記CDRは、Kabat、IMGT、Chothia又はAbM番号付けスキームにより定義され、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLには、ヒト又はマウス由来の免疫グロブリンのフレームワーク領域(FRs)が含まれ、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、ヒトCLDN18.2に結合する。
【0010】
いくつかの実施形態に係るCLDN18.2に特異的に結合できる抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CDRがIMGT番号付けスキームにより定義された下記のような重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0012】
(a)配列がSEQ ID NO:5であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:6であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:7であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:8であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:9であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:10であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(b)配列がSEQ ID NO:11であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:12であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:13であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:14であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:15であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:16であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(c)配列がSEQ ID NO:81であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:82であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:83であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:96であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:97であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(d)配列がSEQ ID NO:81であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:84であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:85であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:96であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:97であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(e)配列がSEQ ID NO:86であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:87であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:88であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:98であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:99であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(f)配列がSEQ ID NO:89であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:90であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:91であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:98であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:99であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(g)配列がSEQ ID NO:92であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:93であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:94であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:95であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:100であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:101であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CDRがAbM番号付けスキームにより定義された下記のような重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0014】
(a)配列がSEQ ID NO:17であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:18であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:19であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:20であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:21であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:22であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(b)配列がSEQ ID NO:23であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:24であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:25であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:26であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:27であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:28であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(c)配列がSEQ ID NO:58であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:62であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:67であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:74であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:78であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(d)配列がSEQ ID NO:58であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:63であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:68であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:74であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:78であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(e)配列がSEQ ID NO:59であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:64であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:69であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:75であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:79であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(f)配列がSEQ ID NO:60であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:65であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:70であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:72であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:76であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:79であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)、
又は、
(g)配列がSEQ ID NO:61であるCDR-H1と、配列がSEQ ID NO:66であるCDR-H2と、配列がSEQ ID NO:71であるCDR-H3と、の3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は、配列がSEQ ID NO:73であるCDR-L1と、配列がSEQ ID NO:77であるCDR-L2と、配列がSEQ ID NO:80であるCDR-L3と、の3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、上述したIMGT、Chothia、kabat又はAbMにより定義された(a)~(g)のいずれかに記載の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域と比較して、少なくとも1つのCDRが、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)である変異を有する重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは、前記置換は、保存的置換である。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片のVHは、マウス免疫グロブリン由来の重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含み、及び/又は前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、マウス免疫グロブリン由来の軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含む。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、マウス由来である。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片のVHは、ヒト免疫グロブリン由来の重鎖可変領域(VH)フレームワーク領域(FR)を含み、及び/又は前記抗体又はその抗原結合断片のVLは、ヒト免疫グロブリン由来の軽鎖可変領域(VL)フレームワーク領域(FR)を含む。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化のものである。このような実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域FR及び/又は軽鎖可変領域FRは、一つ又は複数の非ヒト由来(例えばマウス由来)のアミノ酸残基を含んでよく、例えば、前記重鎖フレームワーク領域FR及び/又は軽鎖フレームワーク領域FRは、対応するマウス由来アミノ酸残基を有する一つ又は複数のアミノ酸の復帰変異を含んでよい。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖フレームワーク領域又は、それが由来する生殖細胞系列抗体遺伝子配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの重鎖フレームワーク領域の変異体、及び/又は、
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖フレームワーク領域又は、それが由来する生殖細胞系列抗体遺伝子の配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの軽鎖フレームワーク領域の変異体、
を含む。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片のヒト化レベルは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(i)SEQ ID NOs:1、29、30、31、32のいずれか1つで示される配列、
(ii)SEQ ID NOs:1、29、30、31、32のいずれか1つで示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NOs:1、29、30、31、32のいずれか1つで示される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(a)重鎖可変領域(VH)、
及び/又は
(iv)SEQ ID NOs:2、33、34、35、36、37、38のいずれか1つで示される配列、
(v)SEQ ID NOs:2、33、34、35、36、37、38のいずれか1つで示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NOs:2、33、34、35、36、37、38のいずれか1つで示される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(b)軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(i)SEQ ID NOs:3、39、40のいずれか1つで示される配列、
(ii)SEQ ID NOs:3、39、40のいずれか1つで示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NOs:3、39、40のいずれか1つで示される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(a)重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(iv)SEQ ID NOs:4、41のいずれか1つで示される配列、
(v)SEQ ID NOs:4、41のいずれか1つで示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NOs:4、41のいずれか1つで示される配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(b)軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NOs:1、29、30、31、32のいずれか1つで示されるVH配列及び/又はSEQ ID NOs:2、33、34、35、36、37、38のいずれか1つで示されるVL配列という重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NOs:3、39、40のいずれか1つで示されるVH配列及び/又はSEQ ID NOs:4、41のいずれか1つで示されるVL配列という重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:44で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:45で示されるVL配列という重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:44で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:45で示されるVL配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:44で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:45で示されるVL配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。好ましい実施形態では、前記置換は保存的置換である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:46で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:47で示されるVL配列を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:46で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:47で示されるVL配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:46で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:47で示されるVL配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。好ましい実施形態では、前記置換は保存的置換である。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:48で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:49で示されるVL配列を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:48で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:49で示されるVL配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:48で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:49で示されるVL配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。好ましい実施形態では、前記置換は保存的置換である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:50で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:51で示されるVL配列を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:50で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:51で示されるVL配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:50で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:51で示されるVL配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。好ましい実施形態では、前記置換は保存的置換である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:52で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:53で示されるVL配列を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:52で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:53で示されるVL配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLは、SEQ ID NO:52で示されるVH配列及び/又はSEQ ID NO:53で示されるVL配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。好ましい実施形態では、前記置換は保存的置換である。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:1で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:2で示される配列を有するVL、
(b)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:33で示される配列を有するVL、
(c)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:34で示される配列を有するVL、
(d)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:35で示される配列を有するVL、又は
(e)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:36で示される配列を有するVL、
(f)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:37で示される配列を有するVL、
(g)SEQ ID NO:29で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:38で示される配列を有するVL、
(h)SEQ ID NO:30で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:33で示される配列を有するVL、
(i)SEQ ID NO:31で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:33で示される配列を有するVL、
(j)SEQ ID NO:32で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:33で示される配列を有するVL、
(k)SEQ ID NO:3で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:4で示される配列を有するVL、
(l)SEQ ID NO:39で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:41で示される配列を有するVL、
(m)SEQ ID NO:40で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:41で示される配列を有するVL、
(n)SEQ ID NO:44で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:45で示される配列を有するVL、
(o)SEQ ID NO:46で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:47で示される配列を有するVL、
(p)SEQ ID NO:48で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:49で示される配列を有するVL、
(q)SEQ ID NO:50で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:51で示される配列を有するVL、又は
(r)SEQ ID NO:52で示される配列を有するVH及びSEQ ID NO:53で示される配列を有するVL、
を含む。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、前記重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)について、(a)~(r)のいずれか1組と比較して、重鎖可変領域(VH)は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有し、及び/又は軽鎖可変領域(VL)は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、前記重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)について、(a)~(r)のいずれか1組と比較して、重鎖可変領域(VH)は、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し、及び/又は軽鎖可変領域(VL)は、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し、好ましくは、前記置換は、保存的置換である。
【0042】
以上のいずれかの態様では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、哺乳動物(例えば、マウス又はヒト)免疫グロブリン由来の定常領域配列又はその変異体を更に含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、ヒト又はマウス免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、一つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、多くとも20個、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有するヒト又はマウス免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)の変異体を含み、及び/又は、いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片の軽鎖は、ヒト又はマウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、一つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、多くとも20個、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有するヒト又はマウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)の変異体を含む。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)の変異体を含み、及び/又は、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)の変異体を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、マウス免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するマウス免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)の変異体を含み、及び/又は、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、マウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)、又は、それが由来する野生型配列と比較して、多くとも20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、多くとも15個、多くとも10個又は多くとも5個のアミノ酸の保存的置換、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有するマウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)の変異体を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、定常領域を変化させて、例えば変異させて、抗CLDN18.2抗体分子の性質(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能又は補体機能のうちの1つ以上の特性を変化させる)を修飾する。抗体定常領域内の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基に置換することにより、機能を変化させることができ、例えば、エフェクター配位子(FcR又は補体C1q)に対する抗体の親和性を変化させて、エフェクター機能を変化(例えば強化)させることができる。抗体のFc領域は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えばADCC、食作用、CDCなどを媒介する。いくつかの場合、これらのエフェクター機能は、治療用抗体に必要である。
【0046】
いくつかの実施形態では、抗CLDN18.2抗体分子は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD及びIgEの重鎖定常領域から選択され、具体的にはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖定常領域から選択され、より具体的にはIgG1又はIgG4(例えばヒトIgG1又はIgG4)の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(Fc)を有する。いくつかの実施形態では、抗CLDN18.2抗体分子は、例えば、κ又はλの軽鎖定常領域から選択され、好ましくはκ軽鎖定常領域(例えばヒトκ軽鎖)である軽鎖定常領域を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(1)ヒトIgG1重鎖定常領域又は
(2)ヒトIgG4重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を含む。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(i)SEQ ID NO: 42で示される配列、
(ii)SEQ ID NO: 42で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO: 42で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(a)重鎖定常領域(CH)、
及び/又は
(iv)SEQ ID NO: 43で示される配列、
(v)SEQ ID NO: 43で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO: 43で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(b)軽鎖定常領域(CL)、
を含む。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態では、(ii)又は(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:1で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:2で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:34で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:35で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:36で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:37で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:29で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:38で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:30で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:31で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:32で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:33で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0061】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:3で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:4で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:39で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:41で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:40で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:41で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:44で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:45で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:46で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:47で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:48で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:49で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:50で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:51で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、SEQ ID NO:52で示される配列のVH及びSEQ ID NO:42で示される重鎖定常領域(CH)を含む重鎖とSEQ ID NO:53で示される配列のVL及びSEQ ID NO:43で示される軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖を含む。
【0069】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(i)SEQ ID NO:102で示される配列、
(ii)SEQ ID NO:102で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO:102で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(a)重鎖、
及び
(iv)SEQ ID NO:103で示される配列、
(v)SEQ ID NO:103で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO:103で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(b)軽鎖、
を含む。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、(ii)又は(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0071】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(i)SEQ ID NO:106で示される配列、
(ii)SEQ ID NO:106で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(iii)SEQ ID NO:106で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(a)重鎖、
及び
(iv)SEQ ID NO:107で示される配列、
(v)SEQ ID NO:107で示される配列と比較して、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(vi)SEQ ID NO:107で示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する配列、から選択されるアミノ酸配列を含む(b)軽鎖、
を含む。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態では、(ii)又は(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0073】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
SEQ ID NO:102で示される配列を有する重鎖及びSEQ ID NO:103で示される配列を有する軽鎖という(1)、又は
SEQ ID NO:106で示される配列を有する重鎖及びSEQ ID NO:107で示される配列を有する軽鎖という(2)を含む。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ScFv、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv断片、ジスルフィド結合で連結されたFv(dsFv)、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体及び多重特異性抗体から選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体分子又はその抗原結合断片は、
例えばバイオレイヤー干渉法(BLI)(例えばForteBio Octet(登録商標))により測定される、約100nM未満、例えば約10nM、1nM、0.1nM以下のKDでCLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)に結合する性質(a)と、
例えばEC50はフローサイトメトリー法又は細胞競合ELISA法により測定される、約500nM未満、例えば約100nM、10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM以下のEC50でCLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)に結合する性質(b)と、
前記抗体又はその抗原結合断片がCLDN18.1(例えばヒトCLDN18.1)に結合しない性質(c)と、のうちの少なくとも1種を示すことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、ADCC活性を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、CDC活性を有する。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、ADCC及びCDC活性を有する。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、増強されたADCC及び/又はCDC活性を有する。
【0080】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、
(a)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、
(b)腫瘍細胞の増殖を阻害し、
(c)体外又は被験者(例えばヒト)体内で免疫細胞活性を向上させ、
(d)被験者(例えばヒト)体内で免疫応答を増強し、
(e)被験者(例えばヒト)体内で腫瘍を治療し、
(f)T細胞の浸潤を誘発し及び/又は増加させ、
(g)免疫反応を誘発及び/又は増強し、
(h)補体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(i)抗体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(j)NK細胞活性を増加させ、
(k)CLDN18.2の発現及び活性化を阻害し、又は
(l)CLDN18.2媒介による信号伝達を阻害するという生物学的機能のうちの少なくとも1つを備える。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、上記生物学的機能の任意の組み合わせを備える。
【0082】
誘導される抗体
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、他の分子(例えば別のポリペプチド又はタンパク質)に連結されるように、誘導化されてよい。通常、抗体又はその抗原結合断片の誘導化(例えば、標識)は、CLDN18.2(特にヒトCLDN18.2)への結合に悪影響を及ぼさない。したがって、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、このような誘導化の形態を含むことも意図される。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合断片を一つ又は複数の他の分子基、例えば別の抗体(例えば、二重特異性抗体を形成する)、検出試薬、薬用試薬に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有連結又は他の方式により)機能的に結合し、及び/又は抗体又は抗原結合断片が他の分子に結合するタンパク質又はポリペプチド(例えば、アビジン又はポリヒスチジンタグ)を媒介することができる。
【0083】
1種類の誘導化抗体(例えば二重特異性抗体)は、2つ又は複数の抗体(同一のタイプ又は異なるタイプに属する)を交差連結することにより産生される。二重特異性抗体の取得方法は、本分野において公知であり、その実例は、化学架橋法、細胞工学法(ハイブリドーマ法)又は遺伝子工学法などを含むが、これらに限定されない。
【0084】
別の種類の誘導化抗体は標識された抗体である。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合断片を検出可能な標識に連結してよい。本発明に記載の検出可能な標識は、蛍光、スペクトル、光化学、生化学、免疫学、電気学、光学又は化学的手段により検出できる任意の物質であってよい。このような標識は、本分野でよく知られているものであり、その実例は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット又はシアニン染料誘導体(例えばCy7、Alexa 750))、アクリジニウムエステル系化合物、磁気ビーズ(例えばDynabeads(登録商標))、測温標識物、例えば、金コロイド又は色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ、及び上記標識物で修飾されたアビジン(例えばストレプトアビジン)に結合するビオチンなどを含むが、これらに限定されない。該標識物の使用を教示する特許は、米国特許3817837、3850752、3939350、3996345、4277437、4275149及び4366241(全てが引用により本明細書に組み込まれる)を含むが、これらに限定されない。前記のような検出可能な標識は、本分野において既知の方法で検出することができる。例えば、写真フィルム又はシンチレーション検出器を用いて放射性標識を検出することができ、光検出器を用いて蛍光標識物を検出して、放射される光を検出することができる。酵素標識物は、一般に、酵素に基質を供給し、そして基質への酵素の作用により生成された反応産物を検出することにより検出され、また、測温標識物は、簡単で可視化着色標識物によって検出される。いくつかの実施形態では、このような標識は、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法など)に適用することができる。いくつかの実施形態では、異なる長さのリンカー(linker)によって前記のような検出可能な標識を本発明の抗体又はその抗原結合断片に連結して、潜在的な立体障害を低減することができる。
【0085】
また、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、さらに化学基、例えばポリエチレングリコール(PEG)、メチル基又はエチル基、又はグリコシル基で誘導されてよい。これらの基は、抗体の生物学的特性を改善し、例えば、血清半減期を増加させることができる。
【0086】
抗体の1つの誘導体として、本発明に係るコンジュゲートは、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片及びカップリング部分を含み、前記カップリング部分は、検出可能な標識、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、有色物質、酵素、ポリエチレングリコール(PEG)、核種、核酸、小分子毒素から選択され、活性ポリペプチド、タンパク質、受容体、配位子に結合し、腫瘍細胞の成長を阻害し、腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死を促進する他の活性物質を有する。
【0087】
抗体の1つの誘導体として、本発明に係るキメラ抗原受容体は、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)と、膜貫通ドメインと、一つ又は複数の細胞内T細胞シグナルドメインとを含む。本発明は、前記キメラ抗原受容体を含むか又は発現する宿主細胞、例えば、免疫細胞(例えばTリンパ球、NK細胞)を同時に提供する。
【0088】
抗体の1つ誘導体として、本発明に係る多重特異性抗体は、第1の抗体又はその断片と他の抗体又はその断片又は抗体類似体とによってカップリングして形成され、各抗体又はその断片又は抗体類似体は、元の結合特異性を保持し、前記第1の抗体又はその断片は、本発明の抗体又はその抗原結合断片であり、好ましくは、前記多重特異性抗体は二重特異性抗体又は三重特異性抗体又は四重特異性抗体である。
【0089】
抗体の作製
本発明の抗体は、本分野で既知の様々な方法で作製することができ、例えば、遺伝子工学組み換え技術により得られる。例えば、化学的合成又はPCR増幅により、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子をコードするDNA分子を取得する。得られたDNA分子を発現ベクター内に挿入した後、宿主細胞をトランスフェクトする。その後に、トランスフェクトされた宿主細胞を特定条件下で培養し、そして本発明の抗体を発現させる。
【0090】
本発明の抗原結合断片は、完全な抗体分子を加水分解することにより取得されてよい(Morimotoら、J. Biochem. Biophys. Methods 24:107-117(1992)及びBrennanら、Science 229:81(1985)を参照)。また、これら抗原結合断片は、組み換え宿主細胞から直接的に産生されてもよい(Hudson、Curr. Opin. Immunol. 11: 548-557 (1999)、Littleら、Immunol. Today、21: 364-370(2000)を参照)。例えば、Fab’断片を宿主細胞から直接的に取得してよく、Fab’断片を化学的にカップリングしてF(ab’)2断片に形成してよい(Carterら、Bio/Technology、10: 163-167)(1992)を参照)。また、Fv、Fab又はF(ab’)2断片も、組み換え宿主細胞の培養液から直接的に単離して取得されてよい。当業者は、これらの抗原結合断片を作製する他の技術を完全に知ることができる。
【0091】
したがって、別の態様では、本発明に係る単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、又はその重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含む。本分野のコドン縮重によれば、いくつかの実施形態では、前記ヌクレオチド配列は、コドン縮重に従って置換できるものである。いくつかの実施形態では、前記ヌクレオチド配列は、コドンが最適化されるものである。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態では、前記単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をそれぞれコードする第1及び第2の核酸、又は本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域及び重鎖定常領域をコードする第1の核酸並びに軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域をコードする第2の核酸、又は本発明の抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする第1及び第2の核酸を含み、該抗体は、1E9.2、19H11.6、16A9.11、9C8.1、6B9.22、19G10.14、2C6.9、1E9.2hz11、1E9.2hz12、1E9.2hz13、1E9.2hz14、1E9.2hz15、1E9.2hz17、1E9.2hz21、1E9.2hz31、1E9.2hz41、2C6.9.2hz11、2C6.9.2hz21、又は前記第1及び第2核酸と実質的に同一の配列のうちのいずれか1種から選択される。例えば、前記単離された核酸分子は、配列表中のSEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:104、SEQ ID NO:105、SEQ ID NO:108、SEQ ID NO:109で示されるヌクレオチド配列又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと比較して少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列、又は配列表に示される配列と3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列)を含んでよい。
【0093】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に係る単離された核酸分子は、抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子、及び/又は、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、抗体重鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、(a)SEQ ID NO:54で示されるヌクレオチド配列、又は(b)(a)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(a)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(c)(a)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択され、抗体軽鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、(d)SEQ ID NO:55で示されるヌクレオチド配列、又は(e)(d)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(d)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(f)(d)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列から選択される。
【0094】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に係る単離された核酸分子は、抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子、及び/又は、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含み、抗体重鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、(a)SEQ ID NO:56で示されるヌクレオチド配列、又は(b)(a)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(a)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(c)(a)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択され、抗体軽鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、(d)SEQ ID NO:57で示されるヌクレオチド配列、又は(e)(d)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(d)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(f)(d)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列から選択される。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態では、抗体重鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:54で示されるヌクレオチド配列を有し、そして抗体軽鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:55で示されるヌクレオチド配列を有する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:54で示される、抗体重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び/又はSEQ ID NO:55で示される、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態では、抗体重鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:56で示されるヌクレオチド配列を有し、そして抗体軽鎖可変領域をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:57で示されるヌクレオチド配列を有する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:56で示される、抗体重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び/又はSEQ ID NO:57で示される、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に係る単離された核酸分子は、抗体重鎖をコードする核酸分子、及び/又は、抗体軽鎖をコードする核酸分子を含み、抗体重鎖をコードする前記核酸分子は、(a) SEQ ID NO:104又は108で示されるヌクレオチド配列、又は(b)(a)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(a)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(c)(a)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択され、及び/又は抗体軽鎖をコードする前記核酸分子は、(d) SEQ ID NO:105又は109で示されるヌクレオチド配列、又は(e) (d)に記載のヌクレオチド配列と実質的に同一の配列(例えば、(d)に記載のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも約85%、90%、95%、99%以上の配列同一性を有する配列、又は1個以上のヌクレオチドで置換された配列)、又は(f)(d)に記載のヌクレオチド配列とは、3、6、15、30又は45個を超えないヌクレオチドにおいて異なる配列、から選択される。
【0098】
いくつかの好ましい実施形態では、抗体重鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:104で示されるヌクレオチド配列を有し、及び/又は抗体軽鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:105で示されるヌクレオチド配列を有し、
いくつかの好ましい実施形態では、抗体重鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:108で示されるヌクレオチド配列を有し、及び/又は抗体軽鎖をコードする前記核酸分子は、SEQ ID NO:109で示されるヌクレオチド配列を有する。
【0099】
本発明の別の態様では、本発明に係るベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)は、本発明の単離された核酸分子を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、レンチウィルスなどである。いくつかの好ましい実施形態では、前記ベクターは、被験者(例えば、哺乳動物、例えばヒト)体内で本発明の抗体又はその抗原結合断片を発現することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CLDN18.2に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメイン(例えばScFv)と、膜貫通ドメインと、一つ又は複数の細胞内T細胞シグナルドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)を構築することができる。このような実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むキメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞、及び免疫細胞(例えばTリンパ球、NK細胞)に用いられてよい。
【0102】
本発明の別の態様では、本発明に係る宿主細胞は、本発明の単離された核酸分子又は本発明のベクターを含む。宿主細胞は、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞)又は原核細胞(例えば大腸菌)であってよい。適切な真核細胞は、NS0細胞、Vero細胞、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞及びMDCKII細胞を含むが、これらに限定されない。適切な昆虫細胞は、Sf9細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えばCHO(例えば、CHO-K1、CHO-S、CHO DXB11、CHO DG 44)である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)であってよい。このような実施形態では、前記宿主細胞に含まれる単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞に含まれる単離された核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。
【0104】
本発明の別の態様に係る本発明の抗体又はその抗原結合断片の作製方法は、前記抗体又はその抗原結合断片の発現を許容する条件下で、本発明の宿主細胞を培養し、そして培養された宿主細胞の培養物から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することを含む。
【0105】
治療方法及び医薬組成物
本発明の別の態様に開示される医薬組成物は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体、並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。
【0106】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。
【0107】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明のベクター又はその宿主細胞、及び薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。このような実施形態では、前記ベクターに含まれる単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含み、前記宿主細胞は、上述したような単離された核酸分子又はベクターを含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記単離された核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、T細胞である。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、さらに別の薬学的活性剤を含んでよい。いくつかの好ましい実施形態では、前記別の薬学的活性剤は、免疫関連疾患を治療するための薬物である。いくつかの好ましい実施形態では、前記別の薬学的活性剤は、抗腫瘍活性を有する薬物である。いくつかの好ましい実施形態では、前記別の薬学的活性剤は、インターフェロン、インターロイキン-2又は化学療法薬である。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態では、前記医薬組成物において、本発明の抗体又はその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、単離された成分又は同一の組成物の成分として提供される。したがって、本発明の抗体又はその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、同時に、分けるか又は連続的に投与されてよい。
【0110】
いくつかの好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、さらに別の薬学的活性剤を含んでよい。前記別の薬学的活性剤は、エピルビシン、オキサリプラチン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、エピルビシン(Epirubicin)+オキサリプラチン(Oxaliplatin)+5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)の組み合わせ、FOLFOX4、FOLFOX6、mFOLFOX6(オキサリプラチン、フォリン酸及び5-フルオロウラシルを含む)から選択される1種以上である。
【0111】
別の態様では、本発明の医薬組成物における抗体又はその抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体は、被験者において、
(a)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、
(b)腫瘍細胞の増殖を阻害し、
(c)T細胞の浸潤を誘発し及び/又は増加させ、
(d)免疫反応を誘発及び/又は増強し、
(e)補体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(f)抗体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(g)NK細胞活性を増加させ、
(h)CLDN18.2の発現及び活性化を阻害し、
(i)CLDN18.2媒介による信号伝達を阻害し、又は
(j)(a)~(i)の任意の組み合わせに用いられる。
【0112】
別の態様では、本発明の医薬組成物は、 PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3、VISTA、CTLA-4、OX40、BTLA、4-1BB、CD96、CD27、CD28、CD40、LAIR1、CD160、2B4、TGF-R、KIR、ICOS、GITR、CD3、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、SLAMF7、NKp80、B7-H3及びそれらの任意の組み合わせから選択される受容体又は配位子に特異的に結合する第2の抗体、又は、前記第2の抗体をコードする核酸をさらに含む。
【0113】
本発明の別の態様に係る本発明の抗体又はその抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体の薬物の製造における用途において、前記薬物は、
(a)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、
(b)腫瘍細胞の増殖を阻害し、
(c)体外又は被験者(例えばヒト)体内で免疫細胞活性を向上させ、(d)被験者(例えばヒト)体内で免疫応答を増強し、
(e)被験者(例えばヒト)体内で腫瘍を治療し、
(f)T細胞の浸潤を誘発し及び/又は増加させ、
(g)免疫反応を誘発及び/又は増強し、
(h)補体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(i)抗体依存性細胞傷害活性を誘発し及び/又は増加させ、
(j)NK細胞活性を増加させ、
(k)CLDN18.2の発現及び活性化を阻害し、
(l)CLDN18.2媒介による信号伝達を阻害し、又は
(m)(a)~(l)の任意の組み合わせに用いられる。
【0114】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のベクター又は宿主細胞が薬物の製造に用いられる場合、前記ベクターに含まれる単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含み、前記宿主細胞は、上述したような単離された核酸分子又はベクターを含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記単離された核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、T細胞である。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である。
【0115】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のベクター又は宿主細胞が薬物の製造に用いられる場合、前記薬物は、被験者(例えばヒト)体内で腫瘍を治療する。
【0116】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体に係る腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫)及び癌の転移性、難治性又は再発性病巣から選択され、例えば、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、腎癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、肝癌、胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、生殖細胞癌、骨癌、皮膚癌、胸腺癌、胆管癌、胆嚢癌、黒色腫、中皮腫、リンパ腫、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、肉腫、神経膠芽腫、白血病を含むが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)から選択される。
【0118】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、胃癌又は食道胃接合部(GEJ)腺癌、例えば、局所的に後期に切除できないか又は転移した胃癌又は食道胃接合部(GEJ)腺癌から選択される。
【0119】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、CLDN18.2陽性であり、さらに、前記腫瘍はHER2陰性である。
【0120】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、HER2陰性である。
【0121】
別の態様では、本発明は、被験者において腫瘍を予防及び/又は治療する方法を提供する。別の態様では、本発明は、被験者において腫瘍の進行を遅延させる方法を提供する。別の態様では、本発明は、被験者において腫瘍の再発を低減又は阻害す方法を提供する。上述した方法は、必要がある被験者に有効量の本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体、医薬組成物を投与することを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明に係る被験者において腫瘍を予防及び/又は治療する方法は、必要がある被験者に有効量の本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体、並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤ことと、別の薬学的活性剤と分けるか、組み合わせるか、同時に又は連続的に投与することとを含む。
【0123】
いくつかの好ましい実施形態では、前記別の薬学的活性剤は、エピルビシン、オキサリプラチン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、エピルビシン(Epirubicin)+オキサリプラチン(Oxaliplatin)+5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)の組み合わせ、FOLFOX4、FOLFOX6、mFOLFOX6(オキサリプラチン、フォリン酸及び5-フルオロウラシルを含む)から選択される1種以上である。
【0124】
本発明の宿主細胞が上述した方法に用いられる場合、前記宿主細胞は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体を発現する。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞に含まれる単離された核酸分子は、本発明の抗体又はその抗原結合断片(例えばScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記単離された核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合断片(例えばScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、T細胞である。いくつかの好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)である。
【0125】
別の態様では、上述した方法は、前記被験者に、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、DNA療法、RNA療法、ナノ療法、ウィルス療法、補助療法及びその任意の組み合わせから選択される第2の療法を施すことをさらに含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記第2の療法は、上述した方法と分けるか又は組み合わせて適用されてよく、前記第2の療法は、上述した方法と別々に又は組み合わせて、同時又は順次に適用されてよく、
いくつかの好ましい実施形態では、前記化学療法は、エピルビシン、オキサリプラチン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、エピルビシン(Epirubicin)+オキサリプラチン(Oxaliplatin)+5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)の組み合わせ、FOLFOX4、FOLFOX6、mFOLFOX6(オキサリプラチン、フォリン酸及び5-フルオロウラシルを含む)から選択される1種以上である。
【0127】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又は抗原結合断片、ベクター、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体又はその修飾した免疫細胞、又は多重特異性抗体に係る腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫)及び癌の転移性、難治性又は再発性病巣から選択され、例えば、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、結腸直腸癌、腎癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、肝癌、胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、生殖細胞癌、骨癌、皮膚癌、胸腺癌、胆管癌、胆嚢癌、黒色腫、中皮腫、リンパ腫、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、肉腫、神経膠芽腫、白血病を含むが、これらに限定されない。
【0128】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、胃癌、食道胃接合部(GEJ)腺癌、食道癌、胃腸癌、膵臓癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌)から選択される。
【0129】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、胃癌又は食道胃接合部(GEJ)腺癌、例えば、局所的に後期に切除できないか又は転移した胃癌又は食道胃接合部(GEJ)腺癌から選択される。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、CLDN18.2陽性であり、さらに、前記腫瘍はHER2陰性である。
【0131】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に係る腫瘍は、HER2陰性である。
【0132】
別の態様では、上述した方法は、前記被験者に、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、DNA療法、RNA療法、ナノ療法、ウィルス療法、補助療法及びその任意の組み合わせから選択される第2の療法を施すことをさらに含む。
【0133】
本発明の抗体又はその抗原結合断片、本発明の医薬組成物は、医療分野において既知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、溶液、ゲル剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ、坐剤、注射剤(注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む)、吸入剤、スプレー剤などに調製することができる。好ましい剤形は、所望の投与形態及び治療用途に依存する。本発明の医薬組成物は、無菌であり、かつ生産及び貯蔵条件下で安定するべきである。好ましい剤形は、注射剤である。このような注射剤は、無菌注射溶液であってよい。例えば、適当な溶媒に必要な投与量の本発明の組み換えタンパク質を配合し、そして任意に他の所望の成分(pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張化剤、防腐剤、希釈剤又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない)を同時に配合した後、濾過して除菌する方法により、無菌注射液を調製してよい。また、貯蔵及び使用を容易にするために、無菌注射溶液を(例えば、真空乾燥又は凍結乾燥により)無菌凍結乾燥粉剤に製造してよい。このような無菌凍結乾燥粉末剤は、使用前に適切な担体、例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水に分散させてよい。
【0134】
また、投与を容易にするために、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、単位投与量で医薬組成物中に存在してよい。
【0135】
本発明の抗体又はその抗原結合断片、医薬組成物は、本分野において既知の任意の適切な方法で投与されてよく、経口、口腔、舌下、眼球、局所、非経口、直腸、葉鞘内、槽内、鼠蹊部、膀胱内、局所的(例えば、粉剤、膏薬又は滴下剤)、又は鼻腔経由を含むが、これらに限定されない。しかしながら、多くの治療用途では、好ましい投与経路/形態は、非経口投与(例えば静脈注射、皮下注射、腹膜内注射、筋肉内注射)である。当業者に理解されるように、投与経路及び/又は形態は、所望の目的に応じて変化する。1つの好ましい実施態様では、本発明の抗体又はその抗原結合断片、医薬組成物は、静脈注入又は注射により投与される。
【0136】
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体又はその抗原結合断片を含んでよい。「予防有効量」とは、疾患の発生を予防、阻止又は遅延させるのに十分な量である。「治療有効量」とは、疾患に罹患している患者の疾患及びその合併症を治癒するか又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量である。本発明の抗体又はその抗原結合断片の治療有効量は、治療対象の疾患の重篤度、患者自身の免疫系の全体状態、患者の一般的な状況、例えば年齢、体重及び性別、薬物の投与形態、及び同時に投与される他の治療などに応じて変化してよい。
【0137】
本発明では、最適な目的の反応(例えば、治療又は予防反応)を得るために、投与計画を調整してよい。例えば、一回投与してもよいし、一定期間内に複数回投与してもよいし、又は治療状況の緊急度に応じて投与量を比例的に減少させたり、増加させたりしてもよい。
【0138】
本発明の組み換えタンパク質の治療又は予防有効量の典型的な非限界範囲は、0.02~100mg/kg、例えば0.1~100mg/kg、0.1~50mg/kg又は1~50mg/kgである。なお、投与量は、治療すべき症状の種類及び重篤性に応じて変化してよい。また、当業者に理解されるように、いずれかの特定の患者にとって、患者のニーズに応じて医師の専門的な評価に応じて特定の投与計画を経時的に調整すべきであり、本明細書に用いられる投与量の範囲は、あくまで例示的なものにすぎず、本発明の医薬組成物の使用又は範囲を限定するものではない。
【0139】
本発明において、前記被験者は、哺乳動物、例えばヒトであってよい。
【0140】
検出方法及びキット
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CLDN18.2に特異的に結合することにより、CLDN18.2の試料中の存在又はそのレベルを検出することができる。
【0141】
したがって、別の態様では、本発明に係るキットは、本発明の抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片には、検出可能な標識が付されている。1つの好ましい実施形態では、前記キットは、本発明の抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する第2の抗体をさらに含む。好ましくは、前記第2の抗体は、検出可能な標識をさらに含む。
【0142】
本発明において、前記検出可能な標識は、蛍光、スペクトル、光化学、生化学、免疫学、電気学、光学又は化学的手段により検出できる任意の物質であってよい。特に好ましくは、このような標識は、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法など)に適用することができる。このような標識は、本分野でよく知られているものであり、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット又はシアニン染料誘導体(例えばCy7、Alexa 750))、アクリジニウムエステル系化合物、磁気ビーズ(例えばDynabeads(登録商標))、測温標識物、例えば、金コロイド又は色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ、及び上記標識物で修飾されたアビジン(例えばストレプトアビジン)に結合するビオチンなどを含むが、これらに限定されない。該標識物の使用を教示する特許は、米国特許3817837、3850752、3939350、3996345、4277437、4275149及び4366241(全てが引用により本明細書に組み込まれる)を含むが、これらに限定されない。本発明が網羅する標識物は、本分野において既知の方法で検出することができる。例えば、写真フィルム又はシンチレーション検出器を用いて放射性標識を検出することができ、光検出器を用いて蛍光標識物を検出して、放射される光を検出することができる。酵素標識物は、一般に、酵素に基質を供給し、そして基質への酵素の作用により生成された反応産物を検出することにより検出され、また、測温標識物は、簡単で可視化着色標識物によって検出される。いくつかの実施形態では、異なる長さのリンカーによって前記のような検出可能な標識を本発明の組み換えタンパク質に連結して、潜在的な立体障害を低減することができる。
【0143】
別の態様では、本発明に係る、試料中のCLDN18.2の存在又はそのレベルを検出する方法は、本発明の抗体又はその抗原結合断片を用いるステップを含む。1つの好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片には、さらに検出可能な標識が付されている。別の好ましい実施形態では、前記方法は、検出可能な標識が付された試薬を用いて本発明の抗体又はその抗原結合断片を検出することをさらに含む。前記方法は、診断目的又は非診断目的(例えば、前記試料は患者からの試料ではなく細胞試料である)のために用いられてよい。
【0144】
別の態様では、本発明に係る試料中のCLDN18.2の存在又はそのレベルを検出する方法は、前記抗体又はその抗原結合断片とCLDN18.2とで複合体を形成して、前記試料を本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片に接触させ、そして前記複合体の形成を検出することを含む。
【0145】
別の態様では、キットの製造における本発明の抗体又はその抗原結合断片の用途において、前記キットは、試料中のCLDN18.2の存在又はそのレベルを検出する。別の態様では、本発明に係る診断用又は治療用キットは、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片、担体、宿主細胞、コンジュゲート、キメラ抗原受容体、又は多重特異性抗体、並びに使用説明書を含む。
【0146】
Claudin 18.2が正常組織中で低発現又は発現せず、いくつかの癌中で発現又は高発現することを鑑みれば、試料中のCLDN18.2の存在又はそのレベルを検出することにより腫瘍及び腫瘍転移を診断することができ、例えば、肺組織中にCLDN18.2を検出すると、肺組織に癌化が発生していると実質的に判断することができ、病理形態学などの他のいくつかの指標を参照して、癌が胃癌転移であるか又は非小細胞肺癌であるかを判断して癌の亜型を判断することができる。したがって、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート、多重特異性抗体、又はキットは、腫瘍及び腫瘍転移を診断することができる。したがって、別の態様では、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート、多重特異性抗体、又はキットの腫瘍及び腫瘍の転移を診断する用途である。
【0147】
本発明の抗体は、CLDN18.2との結合親和性が高く、極めて強い特異性を有する。したがって、本発明の抗体は、腫瘍を予防及び/又は治療するポテンシャルを有する。本発明のヒト化抗体は、親マウス由来抗体の機能及び性質を保持する。そして、本発明のヒト化抗体は、高いヒト化レベルを有するため、免疫原性反応をもたらさずにヒト被験者に安全に投与することができる。したがって、本発明の抗体(特にヒト化抗体)は、重大な臨床的価値を有する。
【0148】
【0149】
本発明において、特に明示しない限り、本明細書において使用される科学用語及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書において使用される細胞培養、生化学、核酸化学、免疫学実験室などの操作ステップは、いずれも対応する分野で広く使用される一般的なステップである。また、本発明をよりよく理解するために、以下、関連する用語の定義及び解釈を提供する。
【0150】
本明細書において使用されるように、用語「抗体」とは、典型的には二対のポリペプチド鎖(各対のポリペプチド鎖が一本の軽鎖(LC)及び一本の重鎖(HC)を有する)からなる免疫グロブリン分子である。抗体軽鎖は、κ(kappa)及びλ(lambda)軽鎖に分類できる。重鎖は、μ、δ、γ、α又はεに分類でき、そして抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに定義する。軽鎖及び重鎖内には、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域を介して連結され、重鎖には約3個以上のアミノ酸の「D」領域も含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH 3)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成される。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLで構成される。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接関与しないが、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)と古典的補体系の第1の成分(C1q)との結合を含む、免疫グロブリンと宿主組織又は因子との結合を媒介することができることなどの様々なエフェクター機能を示す。VH及びVL領域は、高い変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分化され、それらの間には比較的に保存的で、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が点在している。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序でアミノ基末端からカルボキシル基末端まで配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、それぞれ抗原結合部位を形成する。アミノ酸の各領域又はドメインでの割り当ては、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda、Md. (1987 and 1991))、又はChothia&Lesk(1987)J. Mol. Biol. 196:901-917、Chothiaら(1989)Nature 342:878-883、又はAbM、Martinの関連研究(Martin ACR、Cheetham JC、Rees AR(1989)Modelling antibody hypervariable loops: A combined algorithm. Proc Natl Acad Sci USA 86:9268-9272)の定義に従うことができる。
【0151】
ここで、特に断りのない限り、用語「抗体」に言及する場合、完全な抗体のみならず、抗体の抗原結合断片も含むものとする。
【0152】
本明細書において使用される用語「相補性決定領域」又は「CDR」とは、抗体の可変領域における抗原結合を担うアミノ酸残基を意味する。これらのアミノ酸残基の正確な境界は、本分野において既知の様々な番号付けスキームによって定義することができ、例えば、Kabat番号付けスキーム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5 th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991)、Chothia番号付けスキーム(Chothia & Lesk(1987)J. Mol. Biol. 196:901-917、Chothiaら(1989)Nature 342:878-883)、IMGT番号付けスキーム(Lefrancら、Dev.Comparat. Immunol. 27:55-77、2003)、又はMartinの関連研究(Martin ACR、Cheetham JC、Rees AR(1989)Modelling antibody hypervariable loops: A combined algorithm. Proc Natl Acad Sci USA 86:9268-9272)に従うことができ、この定義方法は、Kabat及びChothia両者の一部の定義を整合し、最も早くてOxford Molecular抗体モデリングソフトウェア(Martin A C R. Protein sequence and structure analysis of antibody variable domains¥//Antibody engineering. Springer、Berlin、Heidelberg、2010: 33-51)における定義に適用される。所定の抗体に対して、当業者であれば、各番号付けスキームによって定義されたCDRを容易に同定することができる。また、異なる番号付けスキーム間の対応関係は、当業者にとってよく知られているものである(例えば、Lefrancら、Dev.Comparat. Immunol. 27:55-77、2003を参照できる)。
【0153】
本発明において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、本分野において既知の様々な番号付けスキームに基づいて決定できる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、好ましくはKabat、Chothia、IMGT又はAbM番号付けスキームにより決定される。
【0154】
本明細書において使用される用語「フレームワーク領域」又は「FR」残基とは、抗体の可変領域における、上記のように定義されたCDR残基以外のアミノ酸残基を意味する。
【0155】
「生殖細胞系列抗体遺伝子」は、非リンパ球でコードされた免疫グロブリン配列であり、特異的な免疫グロブリンを発現する遺伝学的再配列及び成熟をもたらす成熟過程を経ることがない。本発明の様々な実施形態が提供する一つの利点は、生殖細胞系列抗体遺伝子が成熟抗体遺伝子よりも動物種個体の特徴的な重要なアミノ酸配列構造を多く残すという認識に由来する。したがって、治療のために該種に適用される場合、該種によって外因性物質として認識される可能性がより低い。
【0156】
用語「抗体」は、特定の抗体産生方法によって制限されない。例えば、組み換え抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が挙げられる。抗体は、異なるアイソタイプ抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4亜型)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体であってもよい。
【0157】
本明細書において使用される用語抗体の「抗原結合断片」とは、抗体の断片のポリペプチド、例えば全長抗体の断片のポリペプチドを意味し、全長抗体が結合した同一の抗原に特異的に結合する能力を保持し、及び/又は、抗原に対する特異的な結合を全長抗体と競合し、「抗原結合部分」とも呼ばれる。一般に、Fundamental Immunology,Ch. 7(Paul、W.、ed.、第2版,Raven Press、N.Y. (1989))を参照し、その全文が参照により本明細書に組み込まれ、全ての目的に用いられる。組み換えDNA技術又は完全な抗体の酵素的又は化学的破断により抗体の抗原結合断片を生成することができる。抗原結合断片の実例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えばscFv)、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)、直鎖状抗体(linear antibody)、ナノ抗体(技術がDomantisに由来する)、ドメイン抗体(技術がAblynxに由来する)、及びその自体に特異性抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含むが、これらに限定されない。工学的に改造された抗体変異体は、Holligerら、2005、Nat Biotechnol、23: 1126-1136に要約される。
【0158】
本明細書において使用される用語「全長抗体」とは、二本の「全長重鎖」又は「重鎖」及び二本の「全長軽鎖」又は「軽鎖」からなる抗体を意味する。ここで、「全長重鎖」又は「重鎖」とは、N端からC端までの方向において、重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域CH1ドメイン、ヒンジ領域(HR)、重鎖定常領域CH2ドメイン、重鎖定常領域CH3ドメインからなり、そして前記全長抗体がIgEアイソタイプである場合、任意に重鎖定常領域CH 4ドメインを含むポリペプチド鎖を意味する。好ましくは、「全長重鎖」とは、N端からCまでの方向において、VH、CH1、HR、CH2及びCH3からなるポリペプチド鎖である。「全長軽鎖」又は「軽鎖」とは、N端からC端までの方向において、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなるポリペプチド鎖である。二対の全長抗体鎖は、CLとCH1との間のジスルフィド結合と、二本の全長重鎖のHRの間のジスルフィド結合により連結される。本発明の全長抗体は、単一種、例えばヒトに由来してもよいし、キメラ抗体又はヒト化抗体であってもよい。本発明の全長抗体は、それぞれVHとVL対で形成された二つの抗原結合部位を含み、これら二つの抗原結合部位は、同一の抗原を特異的に認識/結合する。
【0159】
本明細書において使用される用語「Fd断片」とは、VH及びCH1ドメインからなる抗体断片を意味し、用語「dAb断片」とは、VHドメインからなる抗体断片(Wardら、Nature 341:544 546(1989))を意味し、用語「Fab断片」とは、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる抗体断片を意味し、用語「F(ab’)2断片」とは、ヒンジ領域上のジスルフィド架橋により連結された二つのFab断片を含む抗体断片を意味し、用語「Fab’断片」とは、F(ab’)2断片中の二つの重鎖断片のジスルフィド結合を復元連結した後に得られる断片を意味し、一本の完全な軽鎖及び重鎖のFd断片(VH及びCH1ドメインからなる)からなる。
【0160】
本明細書において使用される用語「Fv断片」とは、抗体の単腕のVL及びVHドメインからなる抗体断片を意味する。Fv断片は、通常、完全な抗原結合部位を形成できる最小抗体断片と考えられる。一般に、六つのCDRは、抗体の抗原結合特異性を付与すると考えられる。しかしながら、一つの可変領域(例えば、三つの抗原特異的CDRのみを含むFd断片)であっても、その親和性が完全な結合部位より低い可能性があるにもかかわらず、抗原を認識し、かつ結合することができる。
【0161】
本明細書において使用される用語「Fc断片」とは、抗体の第1の重鎖の第2、第3の定常領域及び第2の重鎖の第2、第3の定常領域をジスルフィド結合を介して結合して形成された抗体断片を意味する。抗体のFc断片は、様々な異なる機能を有するが、抗原の結合に関与しない。
【0162】
本明細書において使用される用語「scFv」とは、VL及びVHドメインを含む単一のポリペプチド鎖を意味し、前記VL及びVHはリンカー(linker)によって接続される(例えば、Birdら、Science 242:423-426(1988)、Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988)、及びPluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、Roseburg、Moore編、Springer-Verlag,ニューヨーク、第269-315頁(1994)を参照)。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有してよい。適切な従来技術のリンカーは、繰り返すGGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーを用いてもよいが、その変異体を用いてもよい(Holligerら(1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。本発明に用いることができる他のリンカーは、Alfthanら(1995)、Protein Eng. 8:725-731、Choiら(2001)、Eur. J. Immunol. 31: 94-106、Huら(1996)、Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanovら(1999)、J. Mol. Biol. 293:41-56及びRooversら(2001)、Cancer Immunol.に記載されている。いくつかの場合、scFvのVHとVLとの間にジスルフィド結合が存在してよい。本明細書において使用される用語「di-scFv」とは、二つのscFvによって連結して形成された抗体断片を意味する。
【0163】
本明細書において使用される用語「ダイアボディ(diabody)」とは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現するが、同じ鎖の二つのドメインの間でのペアリングが許容されないように短すぎる連結体を使用することで、ドメインと別の鎖の相補性ドメインとをペアリングし、かつ二つの抗原結合部位を生成するものを意味する(例えば、Holliger P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)、及びPoljak R. J.ら、Structure 2:1121-1123(1994)を参照)。
【0164】
上記各抗体断片は、いずれも全長抗体が結合した同一の抗原に特異的に結合する能力を保持し、及び/又は抗原に対する特異的結合を全長抗体と競合する。
【0165】
本明細書において使用される「二重特異性抗体」とは、第1の抗体(断片)及び第2の抗体(断片)又は抗体ミメティックからカップリングアームにより形成されたコンジュゲートであり、カップリング方式は、化学反応、遺伝子融合、タンパク質融合、ポリペプチド融合及び酵素反応を含むが、これらに限定されない。 「多重特異性抗体」としては、例えば、三重特異性抗体及び四重特異性抗体が挙げられ、前者は、三種の異なる抗原結合特異性を有する抗体であり、後者は、四種の異なる抗原結合特異性を有する抗体である。
【0166】
本明細書において使用される「抗体ミメティック(antibody mimetics)」とは、抗体と同様に抗原に特異的に結合するが、抗体構造がないものを意味する。これらは、通常、人工ペプチド又はタンパク質であり、モル質量が約3~20kDaである。例えば、アンキリン反復タンパク質(DARPin)及びfynomerである。設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)は、IgG抗体、scFv-Fc抗体断片を連結するか又は結合し、例えばCN104341529 Aを参照する。抗IL-17 aのfynomerは抗IL-6R抗体に結合し、例えばWO2015141862 A1を参照する。
【0167】
本明細書において使用される「キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor、CAR)」とは、細胞内シグナル伝達ドメインに融合した腫瘍抗原結合ドメインを意味し、T細胞を活性化することができる。一般的に、CARの細胞外結合ドメインは、マウス又はヒト化又はヒトのモノクローナル抗体に由来する。
【0168】
本明細書において使用される「免疫グロブリン」又は「Ig」とは、抗体として作用する一種類のタンパク質を意味する。B細胞によって発現される抗体は、キメラ抗原受容体又は抗原受容体と呼ばれることがある。このようなタンパク質に含まれる五つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgEであり、IgGは最も一般的な循環抗体である。これは凝集、補体固定及び他の抗体反応において最も有効な免疫グロブリンであり、細菌やウイルスを防御する上で重要である。
【0169】
本明細書において、抗体を取得する技術としては、当業者に既知の一般的な技術(例えば、組み換えDNA技術又は酵素的又は化学的破断法)を用いて、所定の抗体(例えば、本発明に係る抗体)から抗体の抗原結合断片(例えば、上記抗体断片)を取得すると共に、完全な抗体に用いる方式と同様な方式で抗体の抗原結合断片に特異的にスクリーニングする。
【0170】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」、「単クローン抗体」及び「mAb」は、同一の意味を有し、かつ互換して使用してよく、それらとは、相同性が高い一群の抗体分子のうちの一つの抗体又は抗体の一つの断片、すなわち、自発的に出現する可能性のある自然な変異を除き、完全に同一の抗体分子を意味する。単クローン抗体は、抗原上の単一のエピトープに対して高い特異性を有する。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体に対するものであり、通常、少なくとも2種以上の異なる抗体を含み、これらの異なる抗体は、通常、抗原上の異なるエピトープを認識する。また、修飾語「モノクローナル」は、該抗体の特徴が相同性が高い抗体群から得られることのみを示しており、いずれの特定の方法で前記抗体を作製する必要があると理解することができない。
【0171】
本発明のモノクローナル抗体は、様々な技術、例えばハイブリドーマ技術(例えば、Kohlerら、 Nature、256:495、1975を参照)、組み換えDNA技術(例えば、米国特許第4816567を参照)、又はファージ抗体ライブラリ技術(例えば、Clacksonら、 Nature352:624-628、1991、又はMarksら、 J.Mol.Biol.222:581-597、1991を参照)で作製できる。
【0172】
例えば、以下のようにモノクローナル抗体を作製することができる。まず、免疫原(必要時にアジュバントを加える)をマウス又はその他の適切な宿主動物を免疫注射する。免疫原又はアジュバントの注射形態は、通常、皮下多点注射又は腹腔注入である。免疫原を血清アルブミン又は大豆トリパンクレアチン阻害剤などの既知のタンパク質に予めカップリングして、宿主体内での抗原の免疫原性を増強することができる。アジュバントは、フロイントアジュバント又はMPL-TDMなどであってよい。動物は、免疫を受けた後に体内で免疫原に特異的に結合する抗体を分泌するリンパ球を産生する。また、リンパ球は、体外免疫により取得してよい。目的のリンパ球を収集し、PEGなどのように適切な融合剤を併用して、それを骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を取得する(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、pp.59-103、Academic Press、1996)。上記のように作製されたハイブリドーマ細胞を適切な培養液中に接種して成長させてよく、培養液中には、融合していない、母体骨髄腫細胞の成長を阻害することができる1種以上の物質が含まれることが好ましい。例えば、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)に乏しい母体骨髄腫細胞に対しては、培養液にヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミン(HAT培地)などの物質を加えることにより、HGPRT-欠陥細胞の成長を阻害することができる。好ましい骨髄腫細胞は、融合率が高く、抗体分泌能力が安定で、HAT培養液に敏感であるなどの特徴を有するはずである。好ましくは、骨髄腫細胞は、マウス由来骨髄腫、例えば、MOP-21又はMC-11マウス腫瘍誘導株(THE Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.、 USA)、及びSP-2/0又はX63-Ag8-653細胞株(American Type Culture Collection、Rockville、Md. USA)である。また、他の研究報告によれば、ヒト骨髄腫及びヒトマウス異種骨髄腫細胞株を利用してヒト単クローン抗体を作製する(Kozbor、J. Immunol.、133: 3001(1984)、Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.51-63、Marcel Dekker、Inc.、New York、1987)。ハイブリドーマ細胞を成長させる培養液は、特異抗原に対する単クローン抗体の発生を検出するために用いられる。ハイブリドーマ細胞から産生される単クローン抗体の結合特異性を測定する方法は、例えば、放射免疫試験(RIA)、酵素結合免疫吸着試験(ELISA)などの免疫沈降又は体外結合試験などを含む。例えば、MunsonらがAnal.Biochem. 107: 220(1980)において記載したScatchard分析法で単クローン抗体の親和性を測定することができる。ハイブリドーマが産生する抗体の特異性、親和性及び反応性を決定した後、(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、pp.59-103、Academic Press、1996)に記載の標準的な有限希釈法で目的細胞株をサブクローニングすることができる。適切な培養液は、DMEM又はRPMI-1640などであってよい。また、ハイブリドーマ細胞は、腹水腫瘍の形で動物体内に成長できる。プロテインAアガロースゲル、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製方法を用いて、サブクローニングされた細胞から分泌される単クローン抗体を細胞培養液、腹水又は血清から単離することができる。
【0173】
また、遺伝子工学組み換え技術によりモノクローナル抗体を取得することもできる。単クローン抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子に特異的に結合する核酸プライマーを用いてPCR増幅を行うことにより、ハイブリドーマ細胞から、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子をコードするDNA分子を単離して得ることができる。得られたDNA分子を発現ベクター内に挿入した後、宿主細胞(例えば、E. coli細胞、COS細胞、CHO細胞、又はその他の免疫グロブリンを産生しない骨髄腫細胞)をトランスフェクトし、そして適切な条件下で培養して、組み換え発現の目的とする抗体を取得することができる。
【0174】
抗体は、公知の技術により、例えば、プロテインA又はプロテインGのアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができる。その後又はこれに代えて、特異性抗原(該抗体が認識する標的分子)又はその抗原エピトープをコラム上に固定し、そして免疫アフィニティークロマトグラフィー法により免疫特異性抗体を精製することができる。免疫グロブリンの精製について、例えばD.Wilkinson(The Scientist、published by The Scientist、Inc.、Philadelphia Pa.、Vol.14、No.8(Apr.17、2000)、pp.25-28)を参照することができる。
【0175】
本明細書において使用される用語「マウス由来抗体」とは、免疫接種されたマウス由来のB細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、次いで無限に増殖できると共に抗体を分泌することができるマウスハイブリドーマ融合細胞をスクリーニングし、さらにスクリーニング、抗体作製及び抗体精製を行うことで得られるものを意味する。又は抗原がマウス体に侵入した後にB細胞が分化増殖して形質細胞を形成し、形質細胞は抗体を分泌産生することができる。特異的抗原の刺激により抗体を産生し、抗原の産生について、抗原が人体に侵入した後に様々な免疫細胞の相互作用を引き起こして、リンパ球中のB細胞が分化増殖して形質細胞を形成し、形質細胞は分泌抗体を産生することができる。
【0176】
本明細書において使用される用語「キメラ抗体(Chimeric antibody)」とは、軽鎖又は/及び重鎖の一部が一つの抗体(ある特定の種に由来するか又は特定の抗体類又は亜種に属してよい)に由来し、そして軽鎖又は/及び重鎖の他の一部が別の抗体(同一又は異なる種に由来するか又は同一又は異なる抗体類又は亜種に属してよい)に由来するが、いずれにしても、目的とする抗原に対する結合活性を維持するものを意味する(U.S.P4816567 to Cabillyら、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851 6855(1984))。例えば、用語「キメラ抗体」は、重鎖及び軽鎖可変領域が第1の抗体(例えばマウス由来抗体)に由来し、重鎖及び軽鎖可変領域が第2の抗体(例えばヒト抗体)に由来する抗体(例えば、ヒトマウスキメラ抗体)を含んでよい。
【0177】
本明細書において使用される用語「ヒト化抗体」とは、遺伝子工学的に改造された非ヒト由来抗体であり、そのアミノ酸配列が修飾されてヒト由来抗体の配列との相同性を向上させる。通常、ヒト化抗体の全部又は一部CDR領域は、非ヒト由来抗体(ドナー抗体)に由来し、全部又は一部の非CDR領域(例えば、可変領域FR及び/又は定常領域)は、ヒト由来免疫グロブリン(レシピエント抗体)に由来する。ヒト化抗体は、通常、ドナー抗体の所望の性質を維持し、こられの性質は、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞の活性を向上させる能力、免疫応答を増強する能力などを含むが、こられに限定されない。ドナー抗体は、所望の性質(例えば、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞の活性を向上させる能力及び/又は免疫応答を増強する能力)を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類動物(例えば、カニクイザル)抗体であってよい。
【0178】
ヒト化抗体は、非人由来ドナー抗体(例えば、マウス由来抗体)の所望の性質を維持すると共に、ヒト被験者における非ヒト由来ドナー抗体(例えば、マウス由来抗体)の免疫原性を効果的に低下させることができるため、特に有利である。しかしながら、ドナー抗体のCDRとレシピエント抗体のFRとの間にマッチング問題があるため、ヒト化抗体の所望の性質(例えば、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を向上させる能力及び/又は免疫応答を増強する能力)は、通常、非ヒト由来ドナー抗体(例えば、マウス由来抗体)よりも低い。
【0179】
したがって、当業者の研究者は、抗体のヒト化に鋭意研究し、いくつかの成果を取得したが(例えば、Jonesら、Nature、321:522 525(1986)、Reichmannら、Nature、332:323 329(1988)、Presta、Curr. Op.Struct. Biol.、2:593 596(1992)、及びClark、Immunol. Today 21: 397 402(2000)を参照)、あるドナー抗体をどのように十分にヒト化することにより、産生されたヒト化抗体が可能な限り高いヒト化レベルを有すると共にドナー抗体の所望の性質を可能な限り維持することができるかについて、従来技術は詳細なアドバイスを提供していない。当業者であれば、具体的なドナー抗体に対して模索、検討及び改造し、多大な労力を必要とする限り、高いヒト化レベル(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のヒト化レベル)を有すると共に具体的なドナー抗体の所望の性質を維持するヒト化抗体を取得することができる。
【0180】
本発明において、ヒト化抗体にできるだけドナー抗体の性質(例えば、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を向上させる能力及び/又は免疫応答を増強する能力を含む)を維持させるために、本発明のヒト化抗体におけるフレームワーク領域(FR)は、ヒト由来レシピエント抗体のアミノ酸残基を含むと共に、それに対応する非ヒト由来本発明のアミノ酸残基も含んでよい。
【0181】
本発明のキメラ抗体又はヒト化抗体は、上記作製されたマウスモノクローナル抗体の配列に従って作製されてよい。重鎖及び軽鎖をコードするDNAは、目的とするマウスのハイブリドーマから入手し、そして非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように、標準的な分子生物学的技術を用いて工程的に改造されてよい。
【0182】
キメラ抗体の作製には、本分野において既知の方法を用いて、マウス免疫グロブリン可変領域をヒト免疫グロブリン定常領域に連結してよい(例えば、Cabillyらの米国特許第4816567を参照)。例えば、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域をコードする別のDNA分子に操作可能に連結して、全長重鎖遺伝子を取得することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、本分野において既知のものであり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅により取得されてよい。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であってよいが、通常、IgG1又はIgG4定常領域であることが好ましい。例えば、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に操作可能に連結して、全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)を取得する。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本分野において既知のものであり(例えば、Kabat、E.A.ら (1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR増幅により取得されてよい。軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であってよいが、通常、κ定常領域であることが好ましい。
【0183】
ヒト化抗体の作製には、本分野において既知の方法を用いて、マウスCDR領域をヒト由来フレーム配列に挿入してよい(Winterの米国特許第5225539号、Queenらの米国特許第5530101号、第5585089号、第5693762号及び第6180370号、並びにLo、Benny、K.C.、editor、in sibody Engineering: Methods and Protocols、volume 248、Humana Press、New Jersey、2004を参照)。或いは、免疫後に内在性免疫グロブリンを産生することなく、かつ完全なヒト抗体ライブラリーを産生することができるトランスジェニック動物を利用してよい。例えば、キメラ・生殖系列変異マウスにおいて抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合の欠失が内在性抗体の産生を完全に阻害し、その後にヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列を前記生殖系列変異マウスに転移させることにより、該マウスが抗原刺激を受ける際にヒト抗体を産生することが報告されている(例えば、Jako bovitsら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551、Jako bovitsら、1993、Nature 362:255-258、Bruggermannら、1993、Year in Immunology 7:33、及びDuchosalら、1992,Nature 355:258を参照)。上記トランスジェニック動物の実例は、無転位のヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(miniloci)以外、内在μ及びκ鎖の遺伝子座を失活させるための標的変異も含むHHubマウス(Medarex、Inc.)(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856-859を参照)、又はヒト重鎖遺伝子導入及びヒト軽鎖染色体導入を搭載している「KMマウスTM」(特許出願WO02/43478を参照)を含むが、これらに限定されない。他の抗体ヒト化改造の方法は、ファージ提示技術(Hoogenboomら1991、J.Mol.Biol.227:381、Marksら、J.Mol.Biol.1991、222:581-597、Vaughanら、1996、Nature Biotech 14:309)を含む。
【0184】
本明細書において使用される用語「ヒト化レベル」とは、ヒト化抗体における非ヒト由来アミノ酸残基の数を評価する指標である。ヒト化抗体のヒト化レベルから、例えば、IMGTサイトのDomain GapAlignにより可変領域配列とヒトVドメインの相同性を予測することができる。
【0185】
本明細書において使用される用語「同種抗体」とは、抗体の変異体を意味し、それに含まれる重鎖及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸配列は、本明細書に係る抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列と同種であり、かつ前記変異体は、本発明の抗CLDN18.2抗体の所望の機能特性を維持している。
【0186】
比較のための配列照合方法は、本分野においてよく知られている。様々なプログラム及び照合アルゴリズムは、Smith TF及びWalman MS,Adv.Appl.Math.、2:482、1981、Higgins DG及びSharp PM、CABIOS 5:151、1989に記載されている。Altschul SFら、Nature Genet.、6:119、1994には、配列照合方法及び相同性計算の詳細な考え方が提供されている。
【0187】
本明細書において使用される用語「特異的結合」とは、抗体とその抗原との反応のような、両分子間の非ランダムな結合反応を意味する。特異的結合の相互作用の強度又は親和性は、該相互作用の平衡解離定数(KD)又は半数有効濃度(EC50)で表してよい。
【0188】
両分子間の特異的結合の性質は、本分野において公知の方法を用いて測定されてよい。一つの方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度の測定に関する。 「結合速度定数」(ka又はkon)及び「解離速度定数」(kdis又はkoff)は、いずれも濃度、及び会合と解離の実際速度により算出されてよい(Malmqvist M、Nature、1993、361:186-187を参照)。kdis/konの比は、解離定数KDと等しい(Daviesら、Annual Rev Biochem、1990、59:439-473を参照)。任意の有効な方法でKD、kon及びkdisの値を測定することができる。いくつかの実施形態では、生体発光干渉測定法(例えばForte Bio Octet法)で解離定数を測定してよい。この他に、表面プラズモン共鳴技術(例えばBiacore)又はKinexaで解離定数を測定してもよい。
【0189】
本明細書において使用される用語「ベクター(vector)」とは、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸運搬工具を意味する。挿入されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質をベクターにより発現させることができる場合、該ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、伝達又はトランスフェクトにより宿主細胞に導入されることにより、搭載された遺伝子エレメントを宿主細胞において発現させることができる。ベクターは、当業者にとって公知のものであるが、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来の人工染色体(PAC)のような人工染色体、λファージ又はM13ファージのようなファージ、並びに動物ウイルスなどを含むが、これらに限定されない。ベクターとして用いることができる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウィルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40など)などを含むが、これらに限定されない。一種のベクターは、発現を制御する、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント及びレポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない様々なエレメントを含んでよい。また、ベクターは、複製開始部位をさらに含んでよい。
【0190】
発現及びクローニングベクターは、一つ又は複数の選択された宿主細胞にベクターに複製させることができる核酸配列を含む。通常、クローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターに宿主染色体DNAから独立して複製させることができるものであり、そして複製開始点又は自律複製配列を含む。本明細書において使用される用語「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に効果的に連結する発現調節配列を含む、組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを意味する。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用エレメント(cis-acting elements)を含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞又は体外発現システムによって提供されてよい。発現ベクターには、本分野において既知のもの、例えば、コスミド、(例えば、リポソームに露出するか又は含まれる)プラスミド、及びウイルス(例えば、レンチウィルス、逆転写ウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)が含まれる。
【0191】
本明細書において使用される用語「宿主細胞」とは、ベクターを導入するための細胞を意味し、大腸菌又は枯草菌などの原核細胞、酵母細胞又は麹菌などの真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞又はSf9などの昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞又はヒト細胞などの動物細胞などを含むが、これらに限定されない。本明細書において、宿主細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)を構築する免疫細胞、例えばTリンパ球、NK細胞などをさらに含む。
【0192】
本明細書において使用される用語「同一性」とは、二つのポリペプチド又は二つの核酸の配列のマッチング状況を意味する。比較される二つの配列のある位置がいずれも同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットで占められている(例えば、二つのDNA分子のそれぞれのある位置がいずれもアデニンで占められるか又は二つのポリペプチドのそれぞれのある位置がいずれもリジンで占められる)場合、各分子は該位置で同一である。二つの配列の「パーセント同一性」は、比較される位置の数/この二つの配列で共有されるマッチング位置の数×100の関数である。例えば、二つの配列の10箇所に6つがマッチングすれば、これら二つの配列は60%の同一性を有する。例えば、DNA配列CTGACTとCAGGTTとは50%の同一性(計6箇所で3つの位置がマッチングする)を有する。通常、二つの配列を照合して最大同一性が生じる場合に比較する。このような照合は、例えばAlignプログラム(DNAstar、Inc.)のようなコンピュータプログラムにより便宜的に行うことができるNeedlemanら(1970)J. Mol. Biol. 48:443-453の方法を用いることにより実現できる。ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. Meyers及びW. Miller(Comput. Appl Biosci.、4:11-17(1988))のアルゴリズムを用い、PAM 120重み残基表(weight residue table)、12のギャップ長さペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いて、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定してよい。また、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.com上で入手できる)に組み込まれたGAPプログラムにおけるNeedleman及びWunsch(J MoI Biol. 48:444-453(1970))アルゴリズムを用い、Blossum 62行列又はPAM 250行列及び16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重み(gap weight)及び1、2、3、4、5又は6の長さ重みを用いて、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定してよい。
【0193】
本明細書において使用される用語「保存的置換」とは、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの所望の性質に悪影響を及ぼさないか又は変化させないアミノ酸置換を意味し、アミノ酸を保存的に置換することにより得られる抗体の変異体は、その由来する配列の生物学的活性を維持し、例えばCLDN18.2に特異的に結合する。例えば、本分野において既知の標準技術、例えば、部位特異的変異導入法及びPCR媒介による変異導入法により保存的置換を導入することができる。アミノ酸の保存的置換は、アミノ酸残基の代わりに類似の側鎖を有するアミノ酸残基を置換すること、例えば、対応するアミノ酸残基と物理学的又は機能的に類似する(例えば、類似の大きさ、形状、電荷、共有結合又は水素結合を形成する能力などを含む化学的性質を有する)残基で置換することを含む。本分野においては、類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーが定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、同じ側鎖のファミリーに由来する別のアミノ酸残基で対応するアミノ酸残基を置換することが好ましい。アミノ酸の保存的置換の同定方法は、本分野において知られているものである(例えば、Brummellら、Biochem. 32:1180-1187(1993)、Kobayashiら、Protein Eng. 12(10):879-884(1999)、及び参照により本明細書に組み込まれる、Burksら、Proc. Natl Acad. Set USA 94:412-417(1997)を参照)。
【0194】
本発明に係る20個の一般的なアミノ酸の記述は、常法に従う。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Immunology-A Synthesis (2nd Edition、E. S. Golub and D. R. Gren、Eds.、Sinauer Associates、Sunderland、Mass. (1991))を参照する。本発明において、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」とは、同じ意味を有し、かつ、互換して使用されてよい。本発明において、アミノ酸は、通常、本分野において公知の1文字及び3文字の略で表される。例えば、アラニンは、A又はAlaで表されてよい。
【0195】
ここで、「薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤」とは、薬理学的及び/又は生理学的に被験者及び活性成分と適合する担体及び/又は賦形剤を意味し、本分野において公知のものであり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR、19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company、1995を参照)、そしてpH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧を維持する試薬、吸収を遅延させる試薬、防腐剤を含むが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤は、リン酸塩緩衝液を含むが、これらに限定されない。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されず、例えば、Tween-80である。イオン強度増強剤は、塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。防腐剤は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗細菌試薬及び抗真菌試薬などを含むが、これらに限定されない。浸透圧を維持する試薬は、糖、NaCl及びその類似体を含むが、これらに限定されない。吸収を遅延させる試薬は、モノステアリン酸塩、ゼラチンを含むが、これらに限定されない。希釈剤は、水、水性緩衝液(例えば緩衝生理食塩水)、アルコール及び多価アルコール(例えばグリセリン)などを含むが、これらに限定されない。防腐剤は、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗細菌試薬及び抗真菌試薬などを含むが、これらに限定されない。安定剤は、当業者が通常理解できる意味を有し、薬物における活性成分の所望の活性を安定化させることができ、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、澱粉、ショ糖、乳糖、デキストラン又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエー、アルブミン又はカゼイン)又はその劣化物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)などを含むが、これらに限定されない。
【0196】
本明細書において使用される「治療」とは、個人又は処理細胞に起因する疾患を変化させようとする過程での臨床的介入を意味し、予防してよもよいし、臨床病理上で介在してもよい。治療効果は、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、何らかの疾患による直接的又は間接的な病理結果の減少、転移の防止、疾患の進行速度の低下、病状の改善又は緩和、予後の緩和又は改善などを含むが、これらに限定されない。
【0197】
本明細書において使用される用語「予防」とは、疾患又は病症又は症状(例えば、腫瘍、感染又は自己免疫性疾患など)の被験者体内での発生を阻止又は遅延させるために実施する方法を意味する。本明細書において使用される用語「治療」とは、有益又は所望の臨床結果を得るために実施する方法を意味する。本発明の目的のために、有益又は所望の臨床結果は、検出可能であっても検出不能であってもよい、症状の軽減、疾患の範囲の絞り込み、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患の進行の遅延又は緩和、疾患の状態の改善又は軽減、及び症状の緩和(一部又は全部を問わない)を含むが、これらに限定されない。また、「治療」とは、所望の生存期間よりも(治療を受けていなければ)、生存期間を長くすることをさらに意味してよい。
【0198】
本明細書において使用される用語「被験者」とは、哺乳動物、例えば、霊長類哺乳動物、例えばヒトを意味する。いくつかの実施形態では、前記被験者(例えばヒト)は、腫瘍、感染症又は自己免疫性疾患に罹患しているか又は前記疾患に罹患しているリスクを有している。
【0199】
本明細書において使用される用語「有効量」とは、所望の効果を得るか又は少なくとも部分的に得るのに十分な量を意味する。例えば、疾患(例えば、腫瘍、感染症又は自己免疫性疾患)の予防有効量とは、疾患(例えば、腫瘍、感染症又は自己免疫性疾患)の発生を予防、阻止又は遅延させるのに十分な量を意味し、疾患の治療有効量とは、疾患に罹患している患者の疾患とその合併症を治癒するか又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量を意味する。このような有効量の測定は、当業者の能力の範囲内である。例えば、治療用途に有効な量は、治療対象の疾患の重篤度、患者自身の免疫系の全体状態、年齢、体重及び性別などの患者の一般的な状況、薬物の投与形態、並びに同時に投与される他の治療などに依存する。
【0200】
本明細書において使用される用語「免疫細胞」とは、造血の起源となり、かつ免疫応答で機能する細胞を意味し、例えば、B細胞及びT細胞などのリンパ球、ナチュラルキラー細胞、並び単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球及び顆粒球などの骨髄系細胞である。
【0201】
本明細書において使用される用語「免疫応答」とは、免疫細胞(例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞又は顆粒球)及び免疫細胞又は肝臓で産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)による作用を意味し、該作用は、侵襲病原体、病原体に感染した細胞又は組織、癌細胞、又は自己免疫又は病理炎症がある場合の正常ヒトの細胞又は組織を選択的に損害、破壊するか又はそれらを人体から除去する。本発明において、用語「抗原特異的T細胞応答」とは、T細胞から生じられる免疫応答を意味し、該応答は、該T細胞に特異的な抗原が該T細胞に対する刺激を与える際に生じる。T細胞が抗原に特異的に刺激される際に生じる反応の実例は、T細胞の増殖及びサイトカイン(例えばIL-2)の産生を含むが、それらに限定されない。
【0202】
本明細書において使用される用語「エフェクター機能(effector function)」とは、抗体Fc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を意味し、そしてそれは、抗体アイソタイプに応じて変化する。抗体エフェクター機能の例としては、Fc受容体結合親和性、抗体依存性細胞媒介型細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション、B細胞の活性化、サイトカインの分泌、抗体及び抗原-抗体複合体の半減期/クリアランス率などを含むが、これらに限定されない。抗体のエフェクター機能を変化させる方法は、本分野において既知のものであり、例えば、Fc領域に変異を導入することにより達成される。
【0203】
本明細書において使用される用語「抗体依存性細胞媒介型細胞傷害(ADCC)」とは、Igが細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球又はマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)と結合して、これらの細胞傷害エフェクター細胞を抗原が付着した標的細胞に特異的に結合させた後、細胞毒素を分泌することにより標的細胞を死滅させるという細胞傷害形態を意味する。抗体のADCC活性の検出方法は、本分野において既知のものであり、例えば、被検抗体とFc受容体(例えばCD16a)との結合活性を測定することにより評価してよい。
【0204】
本明細書において使用される用語「補体依存性細胞傷害(CDC)」とは、補体成分C1qを抗体Fcに結合させることにより、補体カスケードを活性化させるという細胞傷害形態を意味する。抗体のCDC活性の検出方法は、本分野において既知のものであり、例えば、被検抗体とFc受容体(例えばC1q)との結合活性を測定することにより評価してよい。
【0205】
用語「癌」及び「腫瘍」は、交換して使用されてよく、体内の異常細胞が制御されずに成長することを特徴とする大分類の疾患を意味する。制御されない細胞分裂により、悪性腫瘍又は近傍組織に侵入した細胞の形成をもたらし、そしてリンパ系又は血流によって身体の先端部位に転移する可能性がある。癌は、良性又は悪性癌及び休眠腫瘍又はマイクロ転移を含む。癌は、血液学的悪性腫瘍も含む。
【0206】
用語「血液学的悪性腫瘍」とは、リンパ腫、白血病、骨髄腫又はリンパ悪性腫瘍、並びに脾臓及びリンパ節腫瘍などを含む。例示的なリンパ腫は、B細胞リンパ腫及びT細胞リンパ腫を含む。 B細胞リンパ腫は、例えば、ホジキンリンパ腫を含む。T細胞リンパ腫は、例えば、皮膚T細胞リンパ腫を含む。血液学的悪性腫瘍は、白血病、例えば、続発性白血病又は急性リンパ性白血病を含む。血液悪性腫瘍は、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)及び他の血液学及び/又はB細胞又はT細胞に関する癌をさらに含む。
【0207】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される」とは、分子本体、分子断片又は組成物が適切に動物又はヒトに投与される場合、不利な、アレルギー又は他の不具合を起こさないことを意味する。薬学的に許容される担体又はその成分のいくつかの物質の具体例としては、糖類(例えば乳糖)、澱粉、セルロース及びその誘導体、植物油、ゼラチン、多価アルコール(例えばプロピレングリコール)、アルギン酸などを含む。
【0208】
本明細書において、組み合わせ療法は、本発明において網羅される抗CLDN18.2抗体又はその抗原結合断片と、一種以上の他の第2の療法の活性治療剤(例えば化学治療剤)又は他の予防又は治療モード(例えば、放射線療法)とを組み合わせて使用することを含む。
【0209】
第2の療法の例示的な抗癌剤は、化学治療剤(例えば、有糸分裂阻害剤)、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタードNitrogen Mustard)、代謝抵抗物質(例えば、葉酸類似体)、天然物(例えば、ビンカアルカロイドVinca Alkaloid)、様々な試薬(例えば、白金配位錯体)、ホルモン及びアンタゴニスト(例えば、副腎皮質系ステロイド)、免疫調整剤(例えば、ブロピリミン、Bropirimine、Upjohn)などを含んでよい。その他の抗癌治療は、癌細胞に特異的に標的化する他の抗体を含む。
【0210】
このような組み合わせ療法では、様々な活性剤が異なる相補的な作用機構を有することが多く、組み合わせ療法は、相乗的な効果を及ぼすことができる。組み合わせ療法は、免疫反応(例えば、増強又は活性化反応)に影響を及ぼす治療剤及び腫瘍/癌細胞に影響を及ぼす(例えば、阻害するか又は死滅させる)治療剤を含む。組み合わせ療法は、薬剤耐性癌細胞が発生する可能性を低減することができる。組み合わせ療法は、試薬のうちの一種以上の試薬の投与量を減少させて、試薬のうちの一種以上の試薬に関連する不具合を低減又は解消することができる。このような組み合わせ療法は、潜在的な疾患、病症又は病状に対して相乗的な治療又は予防作用を有することができる。
【0211】
本明細書において、「組み合わせ」は、単独投与で別々に配合する(例えば、キットで提供できる)というような分けて投与できる療法、及び単一の配合物(すなわち、「併用配合物」)ごとに投与できる療法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗CLDN18.2抗体又はその抗原結合断片は、順次に投与されてよい。他の実施形態では、抗CLDN18.2抗体又はその抗原結合断片は、同時に投与されてもよい。本発明の抗CLDN18.2抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも一種の他の(活性)薬剤と共に任意に組み合わせて使用されてよい。
【0212】
本明細書において、Claudin 18.2陽性は、専門臨床病理医によって免疫組織化及び染色強度評価を行うことにより得られる。HER2陰性は、IHC 1+、又はIHC 2+/FISH陰性を含み、IHC 0~1+及びIHC 1+~2+の範囲をさらに含む。
【0213】
以下、図面及び実施例を参照して本願の実施形態を詳細に説明するが、当業者であれば理解できるように、以下の図面及び実施例は、本発明を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。図面及び好ましい実施形態の以下の詳細な説明に基づいて、本発明の様々な目的及び利点は、当業者にとって実施可能になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【
図1A】HEK 293T-Claudin 18.2モノクローナル安定細胞株のフローサイトメトリー法による検出
【
図1B】L929-Claudin 18.2モノクローナル安定細胞株のフローサイトメトリー法による検出
【
図1C】KATOIII-Claudin 18.2モノクローナル安定細胞株のフローサイトメトリー法による検出
【
図1D】NCI-N87-Claudin 18.2モノクローナル安定細胞株のフローサイトメトリー法による検出
【
図1E】HEK293T-Claudin 18.1モノクローナル安定細胞株のWestern blot検出
【
図2A】抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体とBa/F3-Claudin18.2の細胞親和性の検出
【
図2B】抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体とBa/F3-Claudin18.1の細胞親和性の検出
【
図2C】2C6.9-hz21、IMAB362抗体親和性の検出(フローサイトメトリー法)
【
図3A】1E9.2-hz11、IMAB362抗体ELISA親和性の検出(L929-Claudin 18.2細胞)
【
図3B】2C6.9-hz21、IMAB362抗体親和性の検出(L929-Claudin 18.2細胞)
【
図3C】1E9.2-hz11、2C6.9-hz11、2C6.9-hz21抗体親和性の検出(L929-Claudin 18.2細胞)
【
図3D】NUGC-4細胞上での1E9.2-hz11、IMAB362抗体の陽性率の検出
【
図3E】1E9.2-hz11、IMAB362抗体親和性の検出(NUGC4細胞)
【
図3F】フローサイトメトリー法による1E9.2-hz11抗体の特異性の検出
【
図3G】フローサイトメトリー法による2C6.9-hz21抗体の特異性の検出
【
図4A】HEK293-Claudin 18.2細胞に対する1E9.2-hz11、IMAB362のCDC殺傷活性の測定
【
図4B】HEK293-Claudin 18.2細胞に対する2C6.9-hz21、IMAB362のCDC殺傷活性の測定
【
図5A】1E9.2-hz11、IMAB362抗体のADCC活性の検出(HEK293T-Claudin 18.2細胞)
【
図5B】1E9.2-hz11、IMAB362抗体のADCC活性の検出(KATOIII-Claudin 18.2細胞)
【
図5C】1E9.2-hz11、IMAB362抗体のADCC活性の検出(L929-Claudin 18.2細胞)
【
図5D】1E9.2-hz11、IMAB362抗体のADCC活性の検出(NUGC4細胞)
【
図5E】2C6.9-hz21、IMAB362抗体のADCC活性の検出(HEK293T-Claudin 18.2細胞)
【
図6A】1E9.2-hz11の腫瘍阻害効果の検出
【
図6B】2C6.9-hz21の腫瘍阻害効果の検出
【
図6C】腫瘍阻害実験過程での2C6.9-hz21の体重変化の監視
【発明を実施するための形態】
【0215】
配列情報
本発明に係る配列の情報は、以下の表に説明されている。
【表B-1】
【表B-2】
【表B-3】
【表B-4】
【表B-5】
【0216】
現在、例を挙げて説明することを意図する本発明(本発明の限定しない)の実施例を参照して本発明を説明する。
【0217】
明記しない限り、本発明において使用される分子生物学的実験方法及び免疫検出法は、基本的には、J. Sambrookらの分子クローニング:ラボハンドブック、第2版、冷泉港実験室出版社、1989年、及びF. M. Ausubelらの簡明分子生物学的実験ガイド,第3版,John Wiley&Sons、Inc.、1995に記載の方法を参照して行われる。当業者であれば知っているように、実施例は、例として本発明を説明し、そして本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0218】
実施例1、ヒトClaudin 18.2及びヒトClaudin 18.1過剰発現細胞株の構築及び同定
1.1 ヒトClaudin 18.2及びヒトClaudin 18.1過剰発現細胞株の構築
ヒトClaudin 18.2抗体の特異性及び機能を検証するために、ヒトClaudin 18.2の完全なコーディング配列(遺伝子番号がNM_001002026.2であり、南京ジェンスクリプトバイオテクノロジー株式会社より合成される)及びヒトClaudin 18.1の完全なコーディング配列(遺伝子番号がNM_016369.3であり、南京ジェンスクリプトバイオテクノロジー株式会社より合成される)をレンチウィルスベクターpLVX-IRES-puroにクローニングし、そして文献(Mohammadi Z etl.、Mol Biotechnol. 2015 Sep、57(9):793-800)に記載のレンチウィルスパッケージングシステムによりウイルスを作製し、ウイルスを得た後に、HEK293T、L929、KATOIII及びNCI-N87細胞にそれぞれ感染させ、ピューロマイシンスクリーニング及びモノクローン選抜により、モノクローナルHEK293T-Claudin 18.1、HEK293T-Claudin 18.2、L929-Claudin 18.2、KATOIII-Claudin 18.2、NCI-N87-Claudin 18.2安定細胞株を得る。ヒトClaudin 18.2、ヒトClaudin 18.1のプラスミドを、4D-Nucleofector Xトランスフェクトキット(Lonza、Cat# V4XC-3012)でBaF/3細胞(DSMZ、Cat#ACC 300)をトランスフェクトし、48時間トランスフェクトした後に1.25mg/mLのhygromycin(Thermo Fisher Sci. Cat# 10687010)を添加してスクリーニングしてモノクローンを得て、12日間スクリーニングした後に選別してモノクローナルBaF/3-Claud18.1及びBaF/3-Claud18.2細胞株を得る。
【0219】
1.2 ヒトClaudin 18.2及びヒトClaudin 18.1過剰発現細胞株の検出
HEK 293T-Sludin 18.1をWestern Blotで同定し(検出抗体がProteintech、66167-1-Igである)、他の細胞株をフローサイトメータ(フローサイトメータがBeckman、CytoFlexであり、検出抗体がIMAB362であり、配列が特許CN101312989Bに由来する)で同定する。
図1A~1Dに示すように、フローサイトメトリー法による結果は、HEK293T-Claudin 18.2、L929-Claudin 18.2、KATOIII-Claudin 18.2及びNCI-N87-Claudin 18.2に関していずれも陽性率の高く(100%に近い)、均一性の高いモノクローナル細胞株を得ることを順次示し、それらをその後の実験に用いることができる。Western Blot結果(
図1E)は、三株のHEK293T-Claudin 18.1安定細胞株がヒトClaudin 18.1を過剰発現し、そのうち、HEK293T-Claudin 18.1-1C2モノクローンの発現量が高いことを示し、それを次の実験に用いることができる。
【0220】
実施例2、抗ヒトClaudin18.2マウス由来モノクローナル抗体の作製
DNA免疫と細胞免疫の方法を用いて野生型マウスを免疫して抗ヒトClaudin18.2マウス由来モノクローナル抗体を得る。各Balb/cマウスに対して尾静脈注射形態でヒトClaudin18.2完全コーディング配列を含む100μgのプラスミドを注射し、四回目及び六回目免疫した後に、フローサイトメトリー法による分析により血清学的力価を検出する。力価の高いマウスを選択し、BaF/3-Claudin18.2過剰発現細胞株で融合前の3~5日に追加免疫する。標準的な融合手順を用いて、マウス脾臓細胞とSp2/0(ATCC、Cat#CRL-1581)マウス骨髄腫細胞株とをPEG融合方法で融合し、その後にHATで加圧スクリーニングし、10~14日後にフローサイトメトリー法によるスクリーニングを行う。
【0221】
フローサイトメータ(Sartorius社から購入され、型番がiQue Screener Plusである)により6000個のハイブリドーマクローン上清をスクリーニングし、HEK293T-Claudin18.2細胞株を認識可能な43個の陽性ハイブリドーマクローンを得て、サブクローニングを行う。HEK293T-Claudin18.2及びHEK293T-Claudin18.1細胞株を選択し、さらにフローサイトメータによりスクリーニングしてヒトClaudin18.2のみに結合してヒトClaudin18.1に結合しない14個の陽性クローンを得る。最後に有限希釈法によりサブクローニング選別を行い、モノクローンを得る。
【0222】
ヒト胃癌細胞株NUGC4(日本JCRB細胞バンクから購入され、カタログ番号がJCRB0834である)は、Claudin18.2タンパク質を内在的に発現し、検出抗体と内在性Claudin18.2の結合の検出及び機能検出方法の開発に広く用いられている。NUGC4細胞を用いて候補クローンを検出したところ、最終的に候補クローンとして7つのサブクローンを選択し、それらの番号は、それぞれ、1E9.2、2C6.9、6B9.22、9C8.1、16A9.11、19G10.14及び19H11.6である。
【0223】
実施例3、抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体の親和性の検出
フローサイトメトリー法で候補分子とClaudin18.2の親和性を検出する。ハイブリドーマモノクローン1E9.2、2C6.9、6B9.22、9C8.1、16A9.11、19G10.14及び19H11.6を無血清で培養し、100mLの上清を得て、その後にprotein A(MabSelect SuRe、GE)により精製してマウス由来抗体を得る。Ba/F3-Claudin18.1及びBa/F3-Claudin18.2細胞と、異なる濃度勾配の精製されたマウス由来抗体とを氷上で30分間インキュベートした後に、マウスIgGを陰性対照(Thermo Fisher、Cat:31903)としてフロー緩衝液(PBS+2%FBS)で二回洗浄し、さらにヤギ抗マウス蛍光二次抗体(Jackson Immuno Research,Cat: 115-605-071)を用いて氷上で30分間インキュベートし、最後にフローサイトメータ上で検出する。
【0224】
検出結果を
図2A~2Bに示し、7個の抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体がいずれもヒトClaudin18.2を特異的に認識することができ、ヒトClaudin18.1に結合しない。また、表1に示されるように、7個の抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体及びBa/F3-Claudin18.2細胞は、いずれも高い親和性を示し、EC50が3~20nMの間である。
【0225】
【0226】
実施例4、抗Claudin18.2マウス由来単クローン抗体亜型の同定及び可変領域の増幅
候補ハイブリドーマクローンの抗体亜型を検出するために、Pierce Rapid Isotypingキット(Thermo Fisher Sci. Cat#26179)を用いて、7個の候補クローンの抗体亜型を同定する。同定結果は、全ての候補分子の重鎖の重鎖がいずれもIgG1亜型であり、軽鎖がいずれもKappa亜型であることを示している。
【0227】
ハイブリドーマ細胞を8000個程度に培養し、細胞を解裂させ、そしてcDNA逆転写キット(Thermo Fisher Sci. Cat#18080-200)を用いて第1の鎖cDNAを合成する。プライマーを用いて、cDNAからPCR方法でVH及びVK(VL Kappa)遺伝子を増幅し、PCR産物をDNA精製キット(Qiagen、Cat#28104)で精製し、そしてTOPOベクター(Thermo Fisher Sci. Cat#K457540)に連結する。各連結反応において概ね12個のクローンを選択して配列決定する。配列をVector NTI 11.5(Thermo Fisher Sci.)及びSequencer 5.4.6(Genecodes)で分析する。抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体の可変領域配列及びCDR配列を得て、以下の表2に示す。
【0228】
【0229】
実施例5、抗Claudin18.2キメラ抗体の親和性の検出
1E9.2、2C6.9、6B9.22、9C8.1、16A9.11、19G10.14及び19H 11.6の軽鎖可変領域アミノ酸配列をそれぞれ軽鎖κ定常領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:43)にそれぞれ連結し、重鎖可変領域アミノ酸配列をそれぞれIgG1重鎖定常領域アミノ酸配列(SEQ ID NO:42)に連結し、キメラ抗体を構築する。コドン最適化によりcDNAを合成してプラスミドpcDNA3.4に連結する(南京ジェンスクリプトバイオテクノロジー株式会社に依頼する)。各キメラ抗体の重鎖及び軽鎖に対応するpcDNA3.4をExpi293F細胞(Thermo社から購入される)に同時にトランスフェクトし、上清をprotein A(MabSelect SuRe、GE)で精製し、精製されたキメラ抗体をそれぞれ1E9.2-hz 00、2C6.9-hz00、6B9.22-hz00、9C8.1-hz00、16A9.11-hz00、19G10.14-hz00及び19H11.6-hz00と命名する。
【0230】
抗ヒトClaudin18.2キメラ抗体とBa/F3-Claundin18.2細胞の親和性を検出する。具体的には、60000個のBa/F3-Claundin18.2細胞を10μlの緩衝液中に入れ、段階希釈した抗ヒトClaudin18.2キメラ抗体と対照抗体IMAB362とを氷上で30分インキュベートし、フロー緩衝液(PBS+2%FBS)で二回洗浄し、さらにヒツジ抗ヒト蛍光二次抗体(Thermo Fisher Sci.、Cat: A-21445)を用いて氷上で30分間インキュベートし、最後にフローサイトメータ上で検出する。
【0231】
結果を表3に示し、1E9.2-hz00、16A9.11-hz00及び19H11.6-hz00の親和性EC50は、陽性対照抗体IMAB362より低く、これは上記抗ヒトClaudin18.2キメラ抗体がIMAB362と比べてより強い親和力を有することを示している。しかしながら、1E9.2-hz00、6B9.22-hz00、9C8.1-hz00、16A9.11-hz00及び19H11.6-hz00抗体の最大平均蛍光強度がいずれも陽性対照抗体IMAB362より強く、本発明の抗体の飽和状態で抗原を結合する数がIMAB362より高いことを示し、本発明の抗体のより強い抗原結合能を示している。
【0232】
【0233】
実施例6、抗ヒトClaudin18.2マウス由来抗体のヒト化
CDR移植抗体ヒト化改造方法を用いてマウス由来抗体1E9.2、2C6.9のヒト化改造を行う。つまり、ヒト化改造は、マウス由来モノクローナル抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列抗体のアミノ酸配列と比較して、相同性が高く、物理化学的性質に優れた配列を見出して、ヒト生殖細胞系列フレーム配列とするステップと、HLA-DR親和性を分析考察し、親和性の低いヒト生殖細胞系列フレーム配列を選出するステップと、マウス由来抗体の六つのCDRを選定された重鎖及び軽鎖フレーム配列にそれぞれ移植するステップとに関与する。
【0234】
具体的には、マウス由来抗体1E9.2、2C6.9.2の重鎖及び軽鎖のCDR領域を対応するヒト化テンプレートのFRフレームにそれぞれ移植する。1E9.2の重鎖ヒト化テンプレートは、ヒト生殖細胞系列遺伝子配列IGHV3-21*04(IMGT登録番号HM855688を参照)、軽鎖ヒト化テンプレートは、ヒト生殖細胞系列遺伝子配列IGKV4-1*01(IMGT登録番号Z00023を参照)及びIGKV6-21*02(IMGT登録番号KM455568を参照)である。2C6.9.2の重鎖、軽鎖ヒト化テンプレートは、それぞれ、ヒト生殖細胞系列遺伝子配列IGHV4-59*01(IMGT登録番号AB019438を参照)及びIGKV4-1*01(IMGT登録番号Z00023を参照)である。
【0235】
さらにコンピュータシミュレーション技術を用いて、分子ドッキングにより可変領域及びその周辺のフレームアミノ酸配列を分析し、その空間立体結合方式を考察する。静電気力、ファンデルワールス力、親疎水性及びエントロピー値を計算することにより、該マウス由来抗体のアミノ酸配列のうち、Claudin18.2と作用して空間フレームをメンテナンスできるのに重要なアミノ酸を分析し、そして移植された抗体にこれらのマウス由来のアミノ酸を維持させる。すなわち、上記ヒト化テンプレートのFR領域のアミノ酸残基に対して一連の復帰変異を行うことにより、ヒト化抗体にマウス由来抗体の抗原結合能をできるだけ維持させる。
【0236】
以上の方法により、マウス由来抗体1E9.2のCDRをベースとして、9株のヒト化抗体を共に構築し、それぞれ1E9.2hz11、1E9.2hz12、1E9.2hz13、1E9.2hz14、1E9.2hz15、1E9.2hz17、1E9.2hz21、1E9.2hz31、1E9.2hz41と命名し、また、マウス由来抗体2C6.9.2のCDRをベースにとして、2株のヒト化抗体を構築し、2C6.9.2hz11、2C6.9.2hz21と命名する。各抗体の重鎖定常領域は、いずれもヒト野生型IgG1重鎖定常領域(SEQ ID NO:42)であり、抗体の軽鎖定常領域はヒト野生型IgG1軽鎖定常領域(SEQ ID NO:43)である。
【0237】
上記抗ヒト化抗体の可変領域及び定常領域のアミノ酸配列は表4に示される。
【0238】
【0239】
実施例7、抗ヒトClaudin18.2ヒト化候補抗体の親和性及びADCC細胞の活性の検出
抗ヒトClaudin 18.2ヒト化候補抗体を評価するため、実施例6における候補ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖をコドン最適化によりcDNAに合成してプラスミドpcDNA3.4に連結する(南京ジェンスクリプトバイオテクノロジー株式会社に依頼する)。各キメラ抗体の重鎖及び軽鎖に対応するpcDNA3.4をExpi293F細胞(Thermo社から購入される)に同時にトランスフェクトし、上清をprotein A(MabSelect SuRe、GE)で精製する。ヒトClaudin 18.2を発現するBa/F3-Claudin 18.2細胞を用いてヒト化抗体とClaudin18.2との結合を同定する。まず、Ba/F3-Claudin 18.2細胞(60000 in 10μlの緩衝液)と精製されたヒト化抗体とを氷上で合計30分間インキュベートし、緩衝液(PBS+2%FBS)で2回洗浄し、次にAlexa647(1:500で希釈される)がカップリングされたヒツジ抗ヒトIgGFc抗体を加え、氷上で30min放置し、IntelliCytで検出する。
【0240】
ヒトClaudin 18.2を過剰発現するBa/F3-Claudin 18.2に対する測定結果を表5に示し、最大平均蛍光強度は、全ての1E9.2キメラ抗体、ヒト化抗体及び対照抗体IMAB362がいずれもClaudin18.2に結合することができることを示し、キメラ抗体及びヒト化候補抗体の最大蛍光信号値がいずれも対照抗体IMAB362より強いことは、候補抗体の飽和状態で抗原を結合する数がIMAB362より高く、すなわち、本発明の抗体が抗原とより強い結合能力を備えていることを示している。
【0241】
【0242】
或いは、HEK293T-Claudin 18.2細胞を用いて2C6.9-hz21と細胞膜上でのヒトClaudin 18.2との親和性を検出する。具体的には、HEK293T-Claudin18.2細胞を消化し、遠心再懸濁し、PBSで二回洗浄し、PBS(1%BSAを含む)で細胞を再懸濁し、300000個の細胞/ウェルで細胞を96ウェルV底板に播種し、孔ウェル50μl体積とし、20個のウェルに播種し、各ウェルに50μLの2C6.9-hz21及びIMAB362抗体をそれぞれ加え、最終濃度について1000nM開始し、3倍段階希釈し、合計11個の濃度点とし、Human IgGを陰性対照とし、均一に混合し、4℃で1時間遮光反応させ、PBSで3回洗浄し、FITCで標識された抗ヒトFc二次抗体(ブランドがBioLegendであり、カタログ番号が409322である)を加え、4℃で0.5時間遮光インキュベートし、PBSで3回洗浄し、フローサイトメータ(フローサイトメータのブランドがBeckmanであり、型番がCytoflex)上で検出する。
【0243】
実験結果を
図2C及び表6に示し、フローサイトメトリー法による検出によれば、2C6.9-hz21とHEK293T-Claudin 18.2との結合親和性EC50値はIMAB362より小さく、最大蛍光信号値がIMAB362より大きく、これは2C6.9-hz21と細胞膜上でのClaudin 18.2との親和性がIMAB362より優れていることを示している。
【0244】
【0245】
ADCC細胞活性を検出する。10000個のBa/F3-Claudin 18.2細胞を40μlのNK-92成長培地にに入れ、10μlのPBS中で抗体濃度を段階希釈し、さらに50000個のNK-92MI_mCD16細胞を含む50μlのNK-92成長培地を加え、37℃で合計6時間インキュベートし、その後に33.3μlのCytoTox-Glo(Promega、G9290)検出試薬を加え、プレートリーダーで数値を読み取る。表7に示すように、1E9.2キメラ抗体及び全ての1E9.2ヒト化抗体のBa/F3-Claudin 18.2細胞に対するADCC殺傷活性EC50及び最大殺傷率がいずれもIMAB362より強く、1E9.2キメラ抗体及びヒト化抗体がより強いADCC活性を有することを示している。
【0246】
【0247】
実施例8、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の親和性及び特異性の測定
ヒトClaudin 18.2は、4回膜貫通する膜タンパク質であり、構造が複雑であり、細胞ELISA法を用いて検出することで、Claudin 18.2抗原分子の完全な配置が保証されている。実施例1で構築されたL929-Claudin 18.2安定細胞株を検出する。具体的には、接着成長するL929-Claudin 18.2細胞株を2mMのEDTAで消化し、2×105個の細胞/mLに再懸濁し、ウェル当たり100μLで96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩培養し、2日目に培地を除去し、PBSで一回洗浄し、各ウェルに100μLの4%ホルムアルデヒドを加えて室温で30分間固定し、ホルムアルデヒドを除去し、PBSで二回洗浄し、100μLのPBS(2%BSAを含む)を加えて37℃で2時間ブロッキングし、ブロッキング液を除去し、被検抗体をPBS(2%BSAを含む)で希釈し、1μM開始し、4倍希釈し、11個の濃度点とし、100μL/ウェルとし、37℃で2時間インキュベートし、250μLのPBSTで5回洗浄し、毎回2分間静置し、PBS(2%BSAを含む)で西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識された抗ヒトIgG二次抗体(HRP-anti-Human IgG、Jackson ImmunoResearch,109-035-003)を希釈し、1:10000で希釈し、100μL/ウェルとし、37℃で1時間インキュベートし、250μLのPBSTで6回洗浄し、毎回2分間静置し、100μLのTMB発色液(Thermo、34029)を対応するウェルに加え、37℃で20分間発色させ、50μLの2mol/LのH2SO4を加えて終了させ、マイクロプレートリーダー(MD、SpectraMax M2)で450nmで数値を読み取り、結果をGraphpad Prismに導入してカーブフィッティングを行う。
【0248】
複数回の実験結果を
図3A、3B、3C及び表8、表9及び表10に示し、これはヒト化抗体1E9.2-hz11及び2C6.9-hz21とヒトClaudin18.2との親和性がIMAB362より明らかに優れていることを示している。
【0249】
【0250】
候補抗体と内在性発現型ヒトClaudin 18.2細胞株との親和性を検出するために、まず、フローサイトメトリー法による分析により内在性発現型ヒトClaudin 18.2細胞株NUGC-4細胞(日本JCRB細胞バンクから購入され、カタログ番号がJCRB0834である)上でのヒトClaudin 18.2の発現状況を検出し、結果を
図3Dに示し、Human IgG1が陰性対照であり、1E9.2-hz11でNUGC-4細胞Claudin 18.2を検出したところの発現陽性率が約80%であり、IMAB362が約20%であり、これは1E9.2-hz11がIMAB362に比べてより多くの内在性ヒトClaudin 18.2を認識することができることを示している。続いて、細胞ELISA法により候補抗体とNUGC-4細胞との親和性を測定し、実験ステップが上述したとおりである。実験結果を
図3E及び表11に示し、EC50値及び最大信号値(OD450)から明らかなように、1E9.2-hz11はより優れる親和性及び結合能力を有する。
【0251】
【0252】
本発明において、さらに、フローサイトメトリー法により候補抗体の特異性を検出する。具体的には、HEK293T、HEK293T-ヒトClaudin 18.1、HEK293T-ヒトClaudin18.2細胞を消化し、遠心再懸濁し、PBSで二回洗浄し、PBS(1%BSAを含む)で細胞を再懸濁し、各種の細胞の300000個の細胞を最終濃度1000nMの候補抗体に加え、均一に混合し、4℃で1時間遮光反応させ、PBSで3回洗浄し、FITCで標識された抗ヒトFc二次抗体(ブランドがBioLegendであり、カタログ番号が409322である)を加え、4℃で0.5時間遮光インキュベートし、PBSで3回洗浄し、フローサイトメータ(フローサイトメータのブランドがBeckmanであり、型番がCytoflexである)で検出する。
【0253】
実験結果を
図3F及び3Gに示し、1E9.2-hz11及び2C6.9-hz21はいずれもヒトClaudin 18.2に特異的に結合することができ、ヒトClaudin 18.1を結合しない。
【0254】
実施例9、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)の検出
1E9.2-hz11は、IgG1亜型であり、補体の古典的経路を効果的に活性化し、補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)機能を発揮することができる。抗体1E9.2-hz11のCDC効果を測定するために、本発明において、補体含量が豊富なモルモット血清(鄭州百基から購入され、カタログ番号がS0001である)を材料として実験を行う。具体的には、HEK293T-Claudin 18.2細胞を遠心分離した後に細胞密度を調整し、5×104/ウェルでプレートに播種して一晩過ごし、二日目にDMEM+20%モルモット血清培地を調製し、この培地で1E9.2-hz11及びIMAB362抗体を希釈し、20μg/mL開始し、2倍希釈し、10個の濃度点とし、HEK293T-Claudin 18.2細胞を培養した元の培地を除去し、直前のステップで希釈された抗体を対応するウェルに加え、100μL/ウェルとし、完全に殺傷された陽性対照群を設定し、すなわち10μl/ウェルで解裂緩衝液を加え、37℃で、5%のCO2インキュベーター内に3時間静置培養した後、CCK8(Rhinogen、QDY-003-D)を加え、20μl/ウェルとし、2時間反応させ、マイクロプレートリーダー(MD、SpectraMax M2)で450nmで数値を読み取り、結果をGraphpad Prismに導入してカーブフィッティングを行う。
【0255】
実験結果を
図4Aに示し、1E9.2-hz11のCDC活性は対照抗体IMAB362より明らかに優れ、その3.5倍であり、1E9.2-hz11最大殺傷率は82%程度であり、IMAB362の場合、70%程度である。
【0256】
抗体2C6.9-hz21のCDC検出方法は、抗体1E9.2-hz11の検出方法に類似し、モルモット血清含有培地を加えた後、37℃で、5%のCO2のインキュベーター内に3時間静置培養し、その後にCellTiter-Glo Luminescent(CTG、Promegaから購入され、カタログ番号がG7573である)染色液で染色し、50μl/ウェルとし、30秒間均一に混合し、室温で1分間放置した後にマイクロプレートリーダー(MD、SpectraMax M2)で蛍光信号値を測定し、結果をGraphpad Prismに導入してカーブフィッティングを行う。
【0257】
実験結果を
図4B及び表12に示し、2C6.9-hz21のCDC活性は対照抗体IMAB362より優れる。
【0258】
【0259】
実施例10、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の測定
1E9.2-hz11は、IgG1亜型であり、強い抗体依存性細胞媒介型細胞傷害(ADCC、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)活性を有する。1E9.2-hz11のADCC活性を測定するために、本発明において、NK細胞殺傷方法を用いて検出する。具体的には、HEK293T-Claudin 18.2、L929-Claudin 18.2、KATOIII-Claudin 18.2、NUGC-4細胞を遠心分離した後に細胞密度を調整し、1×104個の細胞/ウェルでプレートに播種して一晩過ごし、二日目にプレート中の培地を除去し、NK92MI-CD16a細胞(華博バイオ)を遠心分離し、空きMEMA培地で再懸濁し、細胞密度を1×106/mLに調整し、50μl/ウェルで対応するウェルに加え、空きMEMA培地で1E9.2-hz11及びIMAB362抗体を希釈し、HEK293T-Claudin18.2、L929-Claudin18.2、KATOIII-Claudin18.2という三種の細胞を希釈し、40μg/ml開始し、5倍希釈し、10個の濃度点とし、NUGC-4細胞について2mg/mLから5倍希釈し、11個の濃度点とし、希釈された抗体を50μL/ウェルで対応するウェルに加え、37℃で、5%のCO2の細胞インキュベーター内に5.5時間静置培養した後、陽性対照ウェル中にlysis bufferを加え、さらに0.5時間静置した後に、乳酸脱水素酵素(LDH)検出試薬(東仁化学、CK12)を50μl/ウェルで加え、10分間ごとにマイクロプレートリーダー(MD、SpectraMax M2)で490nmで数値を読み取り、結果をGraphpad Prismに導入してカーブフィッティングを行う。
【0260】
実験結果を
図5A~5D及び表13に示し、抗体1E9.2-hz11のHEK293T-Claudin 18.2、KATOIII-Claudin 18.2、NUGC-4上でのADCC細胞殺傷活性はいずれもIMAB362より優れる。
【0261】
【0262】
抗体2C6.9-hz21もIgG1亜型であり、そのADCC活性を検出する方法は、抗体1E9.2-hz11のADCC活性の検出方法と同様であり、用いた細胞はHEK293T-Claudin 18.2細胞である。実験結果を
図5E及び表14に示し、抗体2C6.9-hz21のHEK293T-Claudin 18.2上でのADCC細胞殺傷活性はいずれもIMAB362より優れる。
【0263】
【0264】
実施例11、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体のマウス体内での薬物動態学(PK)の測定
1E9.2-hz11及びIMAB362のマウス体内での薬物動態学(PK)の特徴を検出するために、SCIDマウス(チャールス・リバー)を用い、静脈により10mg/kgの1E9.2-hz11抗体又はIMAB362抗体を注射し、2匹/組とする。注射した後の8時間、1日、3日、8日、15日後に採血し、細胞ELISA法を用いて抗体のマウス体内での血漿中濃度を検出する。具体的な検出ステップについて実施例8を参照する。数値の読み取りが完了した後、Graphpad Prismソフトで1E9.2-hz11及びIMAB362データに基づいて検量線をプロットし、さらにマウスの血清の読み取り値に基づいてフィッティングカーブをプロットし、両者のマウス体内での薬物動態学特徴を計算する。
【0265】
実験結果を表15に示し、1E9.2-hz11のマウス体内での半減期は42.5時間であり、IMAB362のマウス体内での半減期は35.77時間であり、1E9.2-hz11はIMAB362より優れる。
【0266】
【0267】
実施例12、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の体内での薬効実験
Balb/c Nudeマウス皮下ヒト胃癌細胞株NCI-N87-Claudin18.2細胞(NCI-N87細胞が改造された後にヒトClaudin18.2を高発現する)移植腫瘍モデルに対する抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の抗腫瘍作用により体内薬効を示す。具体的には、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体を尾静脈注射によりNCI-N87-Claudin18.2が皮下移植された担癌マウスモデルに投与し、腫瘍体積及び動物体重の変化を定期的に測定し、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の担癌マウスに対する薬効(腫瘍阻害効果)を計算する。
【0268】
具体的には、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培養液を用いて、37℃、5%のCO2の条件下で、NCI-N87-Claudin18.2細胞を培養する。指数成長期細胞を収集し、PBSで適切な濃度に再懸濁し、5×106/匹の細胞量(0.1mlのPBSに懸濁したもの)で、メスBalb/c Nudeマウス(バイオサイトジェン江蘇バイオテクノロジー株式会社、生産免許番号がSCXK(蘇)2016-0004である)に皮下接種し、皮下移植腫瘍モデルを作成し、接種当日をP0に記録する。試験において、ヒト免疫グロブリン(陰性対照、成都蓉生薬業有限会社、Human IgGと略称される)静脈注射群、エピルビシン(Epirubicin)+オキサリプラチン(Oxaliplatin)+5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)の化薬組成(EOF化薬と略称される)群、及び1E9.2-hz11とEOF化薬併用群という3つの群を設定する。P4、11、18、25日に腹腔内にEOF化薬を投与し、Epirubicinを1.25mg/kgで、Oxaliplatinを3.25mg/kgで、5-fluorouracilを56.25mg/kgで(週1回で、計4週)投与し、1E9.2-hz11化薬併用群について、EOF投与に加え、P5、8、12、15、19、22、26、29日に尾静脈により1E9.2-hz11抗体(10mg/kgで、毎週2回,計4週)を投与し、投与後にマウス腫瘍体積及び体重を観察して定期的に測定する。
【0269】
腫瘍の直径をノギスで測定し、そして以下の計算式:V=0.5a×b2で腫瘍体積を計算し、式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長径及び短径を表す。毎日、動物の死亡状況を観察記録する。
【0270】
腫瘍成長阻害率TGI(%)を以下の式により計算して、抗体の腫瘍阻害効果に用いる。
【0271】
TGI(%)=[1-(VT終了-VT開始)/(VC終了-VC開始)]*100%
式中、VT終了は、処理群の実験終了時の腫瘍体積平均値である。
【0272】
VT開始は、処理群の投与開始時の腫瘍体積平均値である。
【0273】
VC終了は、陰性対照群の実験終了時の腫瘍体積平均値である。
【0274】
VC開始は、陰性対照群の投与開始時の腫瘍体積平均値である。
【0275】
相対腫瘍増殖率T/C(%)を以下の式で計算し、抗体の腫瘍阻害効果の評価に用いる。
【0276】
T/C(%)=(Tt/T0)/(Ct/C0)×100%
式中、T0は、初期(すなわちP0)のときの処理群の平均腫瘍体積である。
【0277】
Ttは、測定毎の処理群の平均腫瘍体積である。
【0278】
C0は、初期(すなわちP0)のときの陰性対照群の平均腫瘍体積である。
【0279】
Ctは、測定毎の陰性対照群の平均腫瘍体積である。
【0280】
具体的な結果を表16及び
図6Aに示す。実験結果から分かるように、EOF化薬群は、NCI-N87-Claudin18.2胃癌移植腫瘍モデルの腫瘍成長に一定の阻害作用があり、1E9.2-hz11抗体(10 mg/kg)とEOF化薬とを併用した後、さらに腫瘍阻害率が向上し、薬効が顕著である。
【0281】
【0282】
同様の方法でNCI-N87-Claudin18.2細胞マウス皮下移植腫瘍モデルを作成する。腫瘍の平均体積が約110mm3である場合、腫瘍の大きさに応じてランダムに群分けし、それぞれ、抗ニワトリリゾチームヒトIgG1同型対照抗体(陰性対照、四川科倫博泰生物医薬股フン有限公司、IgG1 WTと略称される)群、射出用パクリタキセル(アルブミン結合型、湖南科倫)単独投与群、及び2C6.9-hz21抗体と注射用パクリタキセル併用群に分ける。全ての試料を尾静脈注射し、週2回、計3週間投与する。投与後にマウスの腫瘍体積及び体重を観察して定期的に測定し、データ分析方法は上述したとおりである。
【0283】
具体的な結果を表17及び
図6Bに示す。注射用パクリタキセル単独投与群(10mg/kg)の場合、抗腫瘍薬効が明らかであるが、2C6.9-hz21抗体と注射用パクリタキセルを併用して、腫瘍阻害率をさらに向上させることができ、薬効が顕著である。全てのマウスは、観察期間内に死亡又は明らかに体重が低下しておらず(
図6Cに示す)、明らかな薬物毒性を示さず、治療中にマウスは2C6.9-hz21抗体に対する耐性が良好である。
【0284】
【0285】
以上より、1E9.2-hz11及び2C6.9-hz21などのヒト化抗体は、化学療法薬(例えば、EOF又はパクリタキセル)と併用され、いずれも腫瘍成長を効果的に阻害することができる。
【0286】
本発明を実施するための形態について詳細に説明したが、当業者であれば、既に開示されている全ての教示に基づいて、細部を様々に修正し、変更することができ、かつそれらの変更はいずれも本発明の保護範囲にあることが理解される。本発明の全ての範囲は、添付の請求項及びその均等物により規定される。
【配列表】