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特許7562533化粧品用途に改善された感覚効果を有する、水中油型エマルションを提供することができる、水中油型乳化剤及び選択された粒径のシクロデキストリンからなる乳化組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】化粧品用途に改善された感覚効果を有する、水中油型エマルションを提供することができる、水中油型乳化剤及び選択された粒径のシクロデキストリンからなる乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240930BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240930BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240930BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240930BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/60
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530261
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 FR2019052930
(87)【国際公開番号】W WO2020115437
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】1872345
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マンティンク、レオン
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-522191(JP,A)
【文献】特表2021-507915(JP,A)
【文献】特開2000-095637(JP,A)
【文献】特開昭58-058139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0000685(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105832568(CN,A)
【文献】国際公開第2018/105747(WO,A1)
【文献】特開2015-224223(JP,A)
【文献】特開2011-006641(JP,A)
【文献】特開2010-143903(JP,A)
【文献】特開2014-122192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/00- 9/72
A61Q 1/00-90/00
C08B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)固体粒子の形態の少なくとも1つのβ-シクロデキストリンであって、前記粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μmである体積平均径d(4.3)を有する、β-シクロデキストリンと、
b)C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である、乳化剤と、を含み、
前記乳化剤/前記β-シクロデキストリン比(重量/重量)が0.01:1~1:1である、水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記β-シクロデキストリン粒子の、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒径分布における、d(10)径、d(50)径及びd(90)径は、
a)前記d(10)径が、5.0μm以下、及び/又は
b)前記d(50)径が、15.0μm以下、及び/又は
c)前記d(90)径が、30.0μm以下である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記固体β-シクロデキストリン粒子が、100%以下の変動係数を有する、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒径分布を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記乳化剤が、8~20の親水性-親油性バランス(HLB)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
前記組成物の全乳化系の平均HLBが、8以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
a)40%~95%の、固体粒子の形態の少なくとも1つのβ-シクロデキストリンであって、前記粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μmの体積平均径d(4.3)を有する、β-シクロデキストリンと、
b)5%~40%の、C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である、乳化剤と、
c)0%~40%の少なくとも1つのポリオールと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
水中油型ピッカリングエマルションであって、
固体粒子の形態の少なくとも1つのβ-シクロデキストリンであって、前記粒子は、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μmの体積平均径d(4.3)を有する、β-シクロデキストリンと、
C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である、乳化剤と、
を0.01:1~1:1の乳化剤/β-シクロデキストリン比で含有することを特徴とする、水中油型乳化組成物。
【請求項8】
水相中に分散した脂肪相の形態で提示され、前記分散した脂肪相が、30μm未満の平均径を有する液滴の形態で提供されることを特徴とする、請求項7に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
25℃で3000mPa.s超の粘度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項10】
水中油型ピッカリングエマルションの製造方法であって、
a)固体粒子の形態の少なくとも1つのβ-シクロデキストリンであって、前記粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μmである体積平均径d(4.3)を有する、β-シクロデキストリンと、
C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である、乳化剤と、
を0.01:1~1:1の乳化剤/β-シクロデキストリン比で含む乳化組成物を、水相中に分散させる工程と、
b)工程a)で得られた混合物に脂肪相を、前記組成物の総重量に対して10~65重量%の量で、撹拌下で添加して、30μm未満の数平均径を有する液滴の形態で、水相中に前記脂肪相を分散させる工程と、を含む、方法。
【請求項11】
より柔らかく滑らかな感触を水中油型エマルションに提供し、ピリングを低減又は排除するための、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μmである体積平均径d(4.3)を有する固体粒子の形態のβ-シクロデキストリンと、C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である、乳化剤と、を0.01:1~1:1の乳化剤/β-シクロデキストリン比で使用する、化粧品用の水中油型エマルションでの併用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の乳化組成物に関するものであり、すぐに使用でき、低温時に直接使用することができ、化粧品の分野で特に使用される。この組成物は、固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子は、レーザー式粒度測定で測定されたときに20μm以下である体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリンと、天然由来の少なくとも1つの乳化剤と、を含む。本発明による乳化組成物は、化粧品組成物として、又はエマルションを製造及び安定化するためのプレミックスとして使用することができる。この乳化組成物は、特に、さまざまなテクスチャを有しており、皮膚と適合性のある、非常に微細な液体水中油型(O/W)エマルションの製造を容易にする。得られる組成物は、エマルション中に脂肪相が多く含まれている場合であっても、柔らかく滑らかな感触を有し、ピリングなく容易に広がる。
【0002】
エマルションは、液体中に、不混和性である別の液体(又は液体の状態にされた物質)を微細液滴として含む分散体である。エマルションは巨視的には均質な外観を有するが、顕微鏡下では不均質に見える。液滴状の液体は、分散(又は不連続)相と呼ばれ、他方の液体は分散させる(又は連続)相と呼ばれる。一般的な用語では、エマルションは、2つの相(単純エマルションの場合):親水性(水性)相及び親油性(油)相からなる。水中油型エマルションは、直接的にエマルションと呼ばれる。
【0003】
エマルションは、化粧品の分野で広く使用されている。化粧製品として、これらのエマルションは、有効性及び安全性並びに心地よい感覚特性を要求する消費者のニーズを満たす必要がある。これらの要求を満たすために、エマルションの配合は、時代の流れとともに更により機能性又は感覚性の高い合成成分、概して石油化学物質に由来する合成成分を組み入れるようになり、複雑さを増している。
【0004】
エマルションの形態のほとんどの化粧品組成物、典型的には単純エマルションは、界面活性剤によって安定化されることが知られている。例として、欧州特許第0685227号は、水性連続相と、紫外線をフィルタすることができる保護系と、界面活性剤と、有機溶媒(低級ポリオール及びアルコール)と、少なくとも1つのポリマー、又はより具体的には架橋コポリマー(アルキルアクリレート、酢酸ビニル)と、を含む日焼け止め化粧品組成物の非常に複雑な系を提案している。次に、仏国特許第2858777号は、少なくとも1つの脂肪生成物(脂肪酸エステル、ワックス、バター、天然油-植物、動物、海洋植物及び海洋動物、合成又は鉱物由来のもの、水素添加油及びこれらの混合物)と、少なくとも1つの界面活性剤(エトキシル化ポリグリセロール脂肪酸エステル、アルコールエトキシレート)と、少なくとも1つの補助界面活性剤と、水とを含有する水中油型エマルションについて記載する。
【0005】
しかしながら、ヒト又は動物での使用を目的とした製品における界面活性剤の使用は、製品が局所的なもの又は経口的なもののいずれであろうが問題となり得る。実際に、界面活性剤は、細胞膜を損傷させ得る。したがって、界面活性剤の潜在的に有害な影響を低減するために、特に化粧品の分野で努力がなされている。
【0006】
更に、化粧製品は、現在、消費者の間に広がる新たな期待に対処する必要がある。すなわち、天然由来であること、及び更により厳しくは、組成物の天然性である。実際に、消費者は現在、天然又は天然由来の成分から本質的になり、化学修飾又は合成若しくは石油化学によるグラフトが最小限である化粧製品を求めている。
【0007】
また、本発明の目的の1つは、「コールド」プロセスによる場合でも、水相中への分散及びその後の油又は脂肪生成物の添加によって、安定なエマルションの形成を可能にする組成物を提供することである。このような組成物は、非生分解性石油系界面活性剤、特にグリコール誘導体及びエトキシル化誘導体の使用を回避することができる。本発明に係る組成物はまた、ピッカリング(Pickering)タイプのエマルションを製造することも可能である。この種のエマルションは、界面活性剤を欠いており、コロイド状微粒子、概ねシリカによって安定化され、これは連続相と分散相との界面に配置される。本発明の文脈において、これらのコロイド粒子は、少なくとも1つのシクロデキストリンと少なくとも1つの脂肪分子との間の包接複合体からなる有機粒子であることは明らかである。これらの粒子は、皮膚及び毛髪と非常に有利に適合し、細胞膜を損傷しない。
【0008】
従来技術は、シクロデキストリンを含有している化粧品用途の乳化組成物の製造では、低温時に容易にかつ直接的にエマルションを得ることができず、これまでは石油系界面活性剤を使用する必要があったことを示していることから、本発明による結果は極めて優れている。これは、特に、水、脂肪性物質、修飾多糖類、及びシクロデキストリンを含有する水中油型(O/W)エマルションについて説明している欧州特許第2091502(B1)号に記載されており、このO/Wエマルションの本質的な特徴は、5000g/mol未満の分子量及び2重量%未満の量の界面活性剤を含有することである。非常に微細で非常に安定なエマルションを得ることができ、及び石油系界面活性剤を使用せずにそれを行うことができる、シクロデキストリンを含有する乳化系を製造することは知られておらず、明白なものではない。
【0009】
更に、消費者にとっての化粧製品の主な魅力は、有益な効果が観察され得るよりもずっと前の、その感覚特性にある。したがって、化粧製品が満たす必要がある課題は、塗布前又は塗布中に、可能な限り最も心地よい感覚を提供し、かつ有益な化粧品効果を与えることである。しかしながら、石油化学物質に由来する機能性又は感覚性成分の除外、天然由来の成分によるそれらの置き換え、又は天然若しくは天然由来の新たな成分の導入は、特に、それらの外観、製品が吸収される方法、それらの塗布、又はそれらが皮膚若しくは毛髪及び爪に塗布された後のそれらの特性に関して、多かれ少なかれ、化粧製品の感覚特性を低下させる可能性がある。したがって、天然性の基準を満たす組成物は、塗布するときに、広げるのが困難であるか、塊になりやすいか、又はべたつく、脆い、又は十分に滑りにくいと感じる可能性がある。これらの不十分な又は損なわれた感覚認知は、化粧製品の品質又はイメージに有害である。
【0010】
出願人によって出願された以前の出願、仏国特許第1853362号は、まだ公開されていないが、シクロデキストリンと、8以上のHLBを有する天然由来の乳化剤と、を含む乳化組成物に関する。使用されるβ-シクロデキストリンは、Roquette Freresより「Beaute by Roquette(登録商標)CD 102」という商品名で販売されているβ-シクロデキストリンであり、体積平均径は95μmに等しい。しかしながら、この出願で実施される組成物によって得られる感覚特性は、完全に満足のいくものではない。
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、化粧品用途のために、特に、滑らかさの効果、広がりやすさ、手触りの柔らかさ、塗布時のきしみ感、組成物の浸透及びピリングに関して、仏国特許第1853362号の乳化組成物と比較して改善された感覚特性を提供する、改善された乳化組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、100%天然由来の組成物を提供することである。化粧品組成物などの日常的な用途で製品を配合するために使用される成分が天然由来であることは、現在、環境を守るため及び保護するためだけでなく、消費者の健康に関しても大きな問題となっている。これに関して、本発明による組成物は、合成界面活性剤、特に石油系界面活性剤、特にエトキシル化界面活性剤を置き換えることを可能にする。これらの界面活性剤は、生分解性が低いことによる環境上の理由、及び毒性があり可燃性のポリエトキシル化界面活性剤の製造に広く使用されているエチレンオキシドの危険な性質による安全上の理由により、今日では置き換えが求められている。
【0013】
本発明の別の目的は、特に全ての成分を単一のタンク又は反応器(いわゆる「1ポット」処方)に入れることによって、最小限のエネルギーの導入での、配合者による非常に簡単な実施を可能にする、すぐに使用できる組成物を提供することである。その実施に関して、本発明の目的である乳化組成物は、室温であっても、「コールドプロセス」に従って有利に使用することができる。「コールドプロセス」は、乳化組成物が、45℃未満、好ましくは35℃未満、更には室温の水温度で水に分散させることによって直接実施できることを意味すると理解される。
【0014】
本発明の別の目的は、広範囲の化粧品用途のための組成物を提供することであり、本発明による組成物は、想定される最終製品の観点から、ローション、クリーム、ゲル、乳液などを含むさまざまな製品に使用することができる多用途なものである。更に、当該組成物は、有利には、皮膚に対して非刺激性及び非アレルギー性である。また、pH又は電解質の存在に依存しないという利点を有する。換言すれば、その乳化能力は、環境のpHや、一価、二価、又は三価の塩の存在の影響を受けない。一般に、化粧品用途、特に局所用の製品は、pH変動を受けるか、又はpHの変動にさらされる可能性が高いため、この基準は更に重要である(例えば、皮膚のpHはわずかに酸性であり、pH4~6の間で変化する)。したがって、乳化組成物を、pHに関して使用が特に限定されないものとすることは、化粧品組成物に関し主要な技術的利点である。
【0015】
解決されるべき複雑な技術的問題を構成するこれらの目的の全ては、本発明の解決する主な課題によって最終的に達成される。本発明は、特に化粧品用途の乳化組成物からなり、
a)固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリンと、
b)水中油型(O/W)乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、8以上、好ましくは9以上の親水性-親油性バランスを有する、乳化剤と、を含む液体水中油型(O/W)エマルションを得ることが可能である。
【0016】
HLBの計算は、親水性部分の分子量及び検討中の分子の分子量を考慮するものであり、以下の式に従って得ることができる。
【0017】
【数1】
【0018】
シクロデキストリン
本発明による組成物は、固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンを組み入れ、当該粒子は、レーザー式粒度測定で測定されたときに20μm以下、好ましくは12μm以下、最も好ましくは8μm以下である体積平均径d(4.3)を有する。
【0019】
本出願において、用語「シクロデキストリン」は、当業者に公知である、炭素1~4の間の共有結合によって連結された6~12個のグルコース単位を含む天然及び非置換のシクロデキストリン、特にそれぞれ6個、7個、及び8個のグルコース単位を含むα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリンのいずれか1つを示し、これを含む。
【0020】
この用語はまた、「シクロデキストリン誘導体」、すなわち、少なくともOH-ヒドロキシル基の一部がOR基に変換された分子を含み、Rは概ねアルキル基を示す。この観点から、シクロデキストリン誘導体には、特にメチル化及びエチル化シクロデキストリンが含まれるが、ヒドロキシプロピル化及びヒドロキシエチル化シクロデキストリンなどのヒドロキシアルキル基で置換されたものも含まれる。
【0021】
本発明による好ましいシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンである。好ましい実施形態によれば、本発明による組成物で使用されるシクロデキストリンは、β-シクロデキストリンであり、好ましくは「天然」のものであり、すなわち、そのヒドロキシル基は化学的に置換されていない。
【0022】
シクロデキストリンは、特に、結晶性粉末、疑似結晶性粉末、又は非晶質粉末の形態で提供され得る。
【0023】
本発明の文脈において、シクロデキストリンは、レーザー式粒度測定で測定されたときに20μm以下、好ましくは12μm以下、最も好ましくは8μm以下である、体積平均径とも呼ばれる体積平均径d(4,3)を特徴とする固体粒子の形態で存在する。好ましい実施形態によれば、シクロデキストリンの固体粒子の体積平均径は、2μm~20μm、好ましくは3μm~12μm、最も好ましくは4μm~8μmである。
【0024】
固体シクロデキストリン粒子は、規則的又は不規則な任意の幾何学的形状を有することができ、十分に個別化されているシクロデキストリン結晶、又は結晶ブリッジ(crystal bridges)によって一緒に連結されたシクロデキストリン結晶の凝集体であり得る。好ましくは、固体シクロデキストリン粒子は、規則的な幾何学的形状を有する。
【0025】
一般にd(4.3)で表される体積平均径は、例えば、MasterSizer(登録商標)シリーズのレーザー式粒度分布測定装置、例えば、Malvern Instruments(登録商標)社からの「Mastersizer 2000(商標)」、「Mastersizer 3000(商標)」、「Mastersizer 3000E(商標)」、又は堀場製作所からのレーザー式粒度分布測定装置「Particula LA960」を使用する、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒度分布に基づいて、ISO標準9276-2:2014に従って計算される。レーザー回折によるこれらの測定方法は、ISO標準13320:2009のガイドラインに従って、湿式プロセス又は乾式プロセスで実施できる。湿式プロセスを使用する場合は、測定流体として2-プロパノールを使用することが推奨される。
【0026】
好ましくは、固体シクロデキストリン粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒径分布を有し、その代表径d(10)径、d(50)径及びd(90)径は、
a)d(10)径については、0.8~5.0μm、好ましくは1.0~2.5μmであり、
b)d(50)径については、5~15.0μm、好ましくは7~10.0μmであり、
c)d(90)径については、15~30.0μm、好ましくは20~25.0μmである。
【0027】
ISO標準13320:2009にx10、x50、及びx90の表記で定義されている、特徴的なd(10)径、d(50)径、及びd(90)径は、体積累積粒径分布の10%、50%、及び90%にそれぞれ対応する粒子径である。
【0028】
好ましい実施形態によれば、固体シクロデキストリン粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒径分布を有し、特徴的なd(10)径、d(50)径及びd(90)径は、
a)d(10)径については、5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b)d(50)径については、15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c)d(90)径については、30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下である。
【0029】
更により好ましくは、固体シクロデキストリン粒子は、100%以下、好ましくは90%以下、最も好ましくは73%以下の変動係数を有する、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される体積粒径分布を有する。標準ISO13320:2009で定義されているように、粒度分布の変動係数は、粒度分布の標準偏差を体積平均径d(4.3)で割ったものであり、体積平均径とも呼ばれる。
【0030】
したがって、この好ましい実施形態によれば、シクロデキストリンは、固体粒子の形態で提供され、その体積粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定されたときに以下の特徴:
a)2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)と、
b)100%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは73%以下の変動係数と、を有する。
【0031】
選択されたこの特定のサイズのおかげで、シクロデキストリン粒子は、特に柔軟性の感覚を高めることによって、触覚の感覚認知の改善に寄与する。更に、この使用は、塗布時のきしみ感の明らかな低減、及びピリングの低減、更には皮膚の性質によってはこのピリングの消失を可能にする。
【0032】
天然由来の水中油型乳化剤
本出願において、「天然由来の」水中油型乳化剤という用語は、再生可能資源から得られる任意の乳化剤を指し、特に、植物、微生物、又は藻類から抽出又は分泌され、物理的、化学的、又は酵素的修飾後に、水中油型エマルションを得ることができる。
【0033】
乳化組成物には、0.01:1~1:1、好ましくは0.05:1~0.5:1、より好ましくは0.10:1~0.35:1、更には0.15:1~0.30:1の水中油型乳化剤/シクロデキストリン比(重量/重量)で、8以上、好ましくは9以上の親水性-親油性バランス(HLB)を有する天然由来の水中油型乳化剤が提供されることが好ましい。
【0034】
天然由来のこのO/W乳化剤は、8~20、好ましくは9~16、更には11~14の親水性-親油性バランス(HLB)を有することが好ましい。また、水和した自然環境において自然に生分解される製品から選択することもできる。
【0035】
特に、当該組成物の全乳化系の平均HLBは、8以上、好ましくは9以上である。組成物の全乳化系の平均HLBは、各乳化剤のHLBの加重平均を取り、存在する乳化剤の総重量に対するその質量分率により存在する各乳化剤のHLBを重み付けすることによって計算される。
【0036】
この天然由来のO/W乳化剤は、上記のHLB条件を満たす限り、以下の製品から選択することが好ましい:アルキルポリグルコシド;少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物;非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステル、特に、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、ソルビタン、アンヒドロヘキシトール、例えば、特に、イソソルビド、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スクロース、グルコース、ポリデキストロース非エトキシル化脂肪酸エステル、水素添加グルコースシロップの非エトキシル化脂肪酸エステル、デキストリン非エトキシル化脂肪酸エステル、及び加水分解デンプンの非エトキシル化脂肪酸エステル。
【0037】
天然由来のO/W乳化剤は、好ましくは、水和した自然環境において自然に生分解性であるように選択される。特に、それは、脂肪酸から、又は油若しくは油混合物からのエステル交換によって得られる非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステルであり得る。使用される脂肪酸は、8~22個の炭素原子、好ましくは10~18個の炭素原子、特に12~18個の炭素原子を含む。これらの酸は、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和であり得、1つ以上の側方ヒドロキシル官能基を有する。油は、飽和又は不飽和で、室温で液体から固体までであり得、任意で、好ましくは1~145の間、特に5~105のヨウ素価を有するヒドロキシル官能基を有する。
【0038】
天然由来のO/W乳化剤は、特にポリグリセロールエステルから選択することができ、好ましくは、2~12のグリセロール単位、好ましくは3~10のグリセロール単位を含むポリグリセロールと、1~15、特に5~10のヨウ素価を有する少なくとも1つの部分水素添加又は非水素添加植物油との反応から生じるエステルから選択することができる。これは、特に、ポリグリセロールのオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ジイソステアリン酸、及びカプリル酸のエステル、特に以下の製品であり得る。HLBが約8であるポリグリセリル-5ジオレエート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)G 5 DOなど)、好ましくはHLBが約9であるポリグリセリル-2カプレート(HYDRIORからのHYDRIOL(登録商標)PGC.2など)、好ましくはHLBが約9であるポリグリセリル-3ステアレート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)PSなど)、好ましくはHLBが約9であるポリグリセリル-2ラウレート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)G2Lなど)、好ましくはHLBが約10であるポリグリセリル-3パルミテート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)PPなど)、好ましくはHLBが約11であるポリグリセリル-10ジイソステアレート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)G10 DIなど)、好ましくはHLBが約11.5であるポリグリセリル-6カプリレート、好ましくはHLBが約13であるポリグリセリル-5ラウレート(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)G5Lなど)、好ましくはHLBが約14であるポリグリセリル-3カプレート(HYDRIORからのHYDRIOL(登録商標)PGC.3など)、好ましくはHLBが約14であるポリグリセリル-4カプレート(MassoからのMASSOCARE PG4 Cなど)、好ましくはHLBが約14.8であるポリグリセリル-10モノラウレート、好ましくはHLBが約15であるポリグリセリル-6カプリレート(Dr.Straetmans GmbH/EvonikからのDermofeel(登録商標)G 6 CYなど)、好ましくはHLBが約16であるポリグリセリル-10ラウレート(Dr.Straetmans GmbH/EvonikからのDermofeel(登録商標)G 10 Lなど)。
【0039】
天然由来のO/W乳化剤は、好ましくは、アルキルポリグリコシドとも呼ばれ、頭字語APGで示されるアルキルポリグルコシドから選択される。これらの乳化剤は、本質的に周知の非イオン性界面活性剤である。仏国特許第2 948 285号は、それらを構造の観点から提示し、それらを調製する方法を説明する。これらは、以下の一般式(I)で表すことができる:R1-O-(R2-O)p-(S)n[式中、
Sは還元糖であり、5~6個の炭素原子を含み得る、
R1は、好ましくは約8~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル及び/若しくはアルケニル基、又はアルキルフェニル基、好ましくは、直鎖又は分岐鎖アルキル基が約8~24個の炭素原子を含むアルキルフェニル基を表し、
R2は、2~4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
nは、1~15の範囲の値を表し、
pは、0~10の範囲の値を表す]。
【0040】
還元糖は、式(I)において、アノマー炭素とアセタール基の酸素との間に確立されたグリコシド結合を構造に有さない糖誘導体に関し、これは、参考図書:「Biochemistry」,Daniel Voet/Judith G.Voet,p.250,John Wyley & Sons,1990で定義されているとおりである。オリゴマー構造(S)nは、光学異性体、幾何異性体、又は位置異性体など、任意の形態の異性体として提供でき、異性体の混合物を表すこともできる。
【0041】
本発明の1つの特定の態様によれば、式(I)の化合物の定義において、Sは、グルコース、デキストロース、スクロース、フルクトース、イドース、グロース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、ラクトース、セロビオース、マンノース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、デキストラン、又はタロースから選択される還元糖、より具体的には、グルコース、キシロース、又はアラビノースから選択される還元糖を表す。
【0042】
本発明によるアルキルポリグルコシドの第1の好ましい代替物は、C12~C20アルキルグルコシドであり、これは、式(I)の化合物である[式中、
R1は、より具体的には、約12~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル及び/又はアルケニル基を表し、
R2は、2~4個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
pは、0~3の範囲の値であり、好ましくはゼロに等しく、
Sは、グルコース、フルクトース、又はガラクトースを表し、より好ましくはグルコースである]。
【0043】
本発明によるアルキルポリグルコシドの第2の好ましい代替物は、第1の好ましい代替物のC12~C20アルキルグルコシドである[式中、
R1は、より具体的には、約12~20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を表し、
pは、ゼロに等しく、
Sは、グルコースを表す]。
【0044】
式(I)のアルキルポリグルコシドは、特に以下の名前で市販されている。BASF社から市販されているPlantacare(登録商標)810 UP(R1はC8~C10/INCI:カプリリル/カプリルグルコシド)、Plantacare(登録商標)818 UP(R1はC8~C16/INCI:ヤシ油アルキルグルコシド)、Plantacare(登録商標)2000 UP(R1はC8~C16/INCI:デシルグルコシド)、及びPlantacare(登録商標)1200 UP(R1はC12~C16/INCI:ラウリルグルコシド);FCI Technology社から市販されているMacanol(登録商標)810(R1はC8~C10)、Macanol(登録商標)1200(R1はC12~C14)、Macanol(登録商標)816(R1は、C8、C10、C12、C14、C16の混合物);Neochem社から市販されているNeocare MF 0718(R1はC8~C10/INCI:カプリリル/カプリルグルコシド)、Neocare MF 0012(R1はC12~C14/INCI:ラウリルグルコシド)、Neocare MF 0002(R1はC8~C16/INCI:デシルグルコシド)、Neocare MF 818(R1はC8~C16/INCI:ヤシ油アルキルグルコシド);Evonik Healthcare社から市販されているTego Care CG 90(R1はC14~C16/INCI:セテアリルグルコシド)。
【0045】
天然由来のO/W乳化剤は、好ましくは、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールからなる混合物である。これらの混合物において、アルキルポリグルコシドは、前述の本発明に有用な全てのアルキルポリグルコシドから選択することができる。アルキルポリグルコシドと混合するのに有用な脂肪族アルコールには、8~24個の範囲の炭素原子の総数を有する直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールが含まれる。
【0046】
本発明に有用であり市販されているアルキルポリグルコシドと脂肪族アルコールとの混合物は、SEPPIC社によって販売されているものである。Montanov(商標)14(INCI:ミリスチルアルコール&ミリスチルグルコシド)、Montanov(商標)202(INCI:アラキジルアルコール及びベヘニルアルコール及びアラキジルグルコシド)、Montanov(商標)68(INCI:セテアリルアルコール&セテアリルグルコシド)、Montanov(商標)82(INCI:セテアリルアルコール及びヤシ油アルキルグルコシド)、Montanov(商標)S(INCI:ヤシ油アルキルグルコシド&ココナッツアルコール)、Montanov(商標)L(INCI:C14~22アルコール&C12~20アルキルグルコシド)。
【0047】
アルキルポリグルコシドと脂肪族アルコールとの好ましい混合物は、C14~C22脂肪族アルコールとC12~C20アルキルポリグルコシドとの混合物である「Montanov(商標)L」(INCI:C14~22アルコール&C12~20アルキルグルコシド)の名前でSEPPICによって販売されているものである。
【0048】
本発明による乳化組成物の好ましい代替実施例はまた、天然由来のO/W乳化剤を含み、この天然由来のO/W乳化剤は、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールからなる混合物であり、好ましくは、少なくとも1つのC12~C20アルキルポリグルコシド及び8~24個の範囲の炭素原子の総数を有する少なくとも1つの直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールからなる混合物であり、最も好ましくは、C14~C22脂肪族アルコール及びC12~C20アルキルグルコシドの混合物である。
【0049】
天然由来のO/W乳化剤は、同様に、特にオクテニルコハク酸ナトリウムエステルの形態で、デキストリン又は加水分解デンプン脂肪酸エステルから選択することができる。それは、例えば、CLEARGUM(登録商標)の名前で出願人によって販売される製品、特に製品CLEARGUM(登録商標)CO 01及びCLEARGUM(登録商標)CO 03であり得る。
【0050】
シクロデキストリンの粒子径を選択する効果
Roquette Freresが販売しているβ-シクロデキストリン「Beaute by Roquette(登録商標)CD 102」のように、体積平均径が90μm以上のシクロデキストリンを含む乳化組成物と比較して、本発明による乳化組成物は、広がりやすく、より滑らかで、より柔らかな感触、はるかに低いきしみ、ケラチン性物質へのより速い浸透性を有し、ピリングをほとんど又は全くもたらさないエマルションを得ることが可能である。任意に、本発明による乳化組成物はまた、使用される比率に応じて、特定のテクスチャ又はフレッシュ感などの興味深い感覚効果を得ることが可能である。
【0051】
当該乳化組成物の興味深い特性は、使用される2つの化合物の組み合わせが、エマルションの安定性及び感覚特性の両方の点で良好な相乗効果を有することによる結果である。これらの化合物を組み合わせる比率に関係なく、非常に満足のいく結果が得られるが、非常に正確な比率で組み合わせると、特に説得力のある結果が得られる。
【0052】
特に、本発明による乳化組成物の異なる成分のそれぞれは、乳化に進む前に、最終エマルションの異なる相に組み込むことができる。あるいは、本発明による本組成物のさまざまな化合物を一緒に混合してプレミックスを構成する。当該プレミックスは、プレミックスが使用されるエマルションの任意の相に添加することができる。本発明は、有利には、これらの2つの実施形態が同じ化合物を有することを可能にし、これにより、柔軟性及び使いやすさを向上させることができる。
【0053】
本発明による乳化組成物は、特に、完全に天然由来であり、「コールド」プロセスで使用することができる(すなわち、室温で使用する)という利点を有する。本発明による組成物は、特に化粧品用途のためのものであり、この点に関して、環境におけるpH又は塩分のわずかな変化に影響を受けやすいものではなく、刺激性ではなく、特に皮膚にアレルギーを引き起こしにくい。更に、本発明による組成物は、任意の種類のエマルション、特にピッカリングタイプのエマルションを製造するために使用することができ、したがって、クリーム、乳液、セラム、ローションなどの幅広い用途に適している。
【0054】

【0055】
乳化組成物は、いわゆる「組み合わされた又は結合された」形態及び/又はいわゆる「自由」形態で水を含むことができる。組み合わされた又は結合された水は、シクロデキストリン及び/又はポリオール粉末の結晶構造に含まれる水分子、並びに物理的水和平衡によってこれらの粉末の表面上に吸着された水分子からなる。自由水は、シクロデキストリン及び/又はポリオール粉末間を自由に循環できる水分子からなる。この自由水は、特に、シクロデキストリン及び/又はポリオール粉末を懸濁液中に配置することができる。
【0056】
一実施形態によれば、乳化組成物は、当該乳化組成物の総重量に対して、1重量%~25重量%の組み合わされた又は結合された水の含有量を含む。好ましくは、組み合わされた又は結合された水の含有量は、2%~15%、最も好ましくは3%~10%である。
【0057】
一実施形態によれば、乳化組成物は、当該乳化組成物の総重量に対して、50重量%以下の自由水の含有量を含み得る。好ましくは、この自由水の含有量は、40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。
【0058】
ポリオール
一実施形態によれば、乳化組成物は、同様に少なくとも1つのポリオールを含む。
本出願で言及されるポリオールは、公知の全てのポリオールであり、特に、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、グリセロール、グリセロールであり、好ましいポリオールはソルビトールである。好ましくは、このポリオールは結晶化されるか、あるいは粉末の形態である。
【0059】
したがって、特に、本発明は、特に化粧品用途であり、以下を含む、又は好ましくは以下からなる液体水中油型(O/W)エマルションを得ることができる乳化組成物に関する。
1)組成物の総重量に対して、40重量%~95重量%の固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリン、
2)組成物の総重量に対して、5重量%~40重量%の、水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、HLBが8以上であり、より好ましくは、HLBが9以上であるアルキルポリグルコシドを有する、乳化剤、
及び3)組成物の総重量に対して、0重量%~40重量%の少なくとも1つのポリオール。
【0060】
好ましくは、本発明によるこの乳化組成物は、以下を含むか、又は好ましくは以下からなる。
1)組成物の総重量に対して、45重量%~85重量%の固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径平均粒径d(4.3)を有する、シクロデキストリン、
2)組成物の総重量に対して、5重量%~30重量%の、水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、HLBが8以上であり、より好ましくは、HLBが9以上であるアルキルポリグルコシドを有する、乳化剤、
及び3)組成物の総重量に対して、10重量%~40重量%の少なくとも1つのポリオール。
【0061】
最も好ましくは、本発明によるこの組成物は、以下を含むか、又は好ましくは以下からなる。
1)組成物の総重量に対して、40重量%~80重量%の固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリン、
2)組成物の総重量に対して、10重量%~20重量%の、水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、HLBが8以上であり、より好ましくは、HLBが9以上であるアルキルポリグルコシドを有する、乳化剤、
及び3)組成物の総重量に対して、10重量%~30重量%の少なくとも1つのポリオール。
【0062】
乳化組成物の前述の3つの好ましい実施形態では、天然由来の水中油型乳化剤は、以下から選択されることが好ましい:少なくとも1つのアルキルポリグルコシド;又は少なくとも1つのアルキルポリグルコシドと少なくとも1つの脂肪族アルコールとの少なくとも1つの混合物;又は少なくとも1つの非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステル。より好ましくは、乳化剤は、少なくとも1つのアルキルポリグルコシドと少なくとも1つの脂肪族アルコールとの混合物から選択される。
【0063】
乳化組成物を実施するエマルション、好ましくはピッカリングタイプエマルション
【0064】
本発明による乳化組成物は、エマルション、好ましくはピッカリングタイプのエマルションを製造することを可能にし、このエマルションは、皮膚又は毛髪と適合性のある有機粒子によって有利に安定化することができる。いわゆる「ピッカリング」エマルションは、界面活性剤を、脂肪生成物と組み合わされた固体微粒子からなる乳化系で置き換えることによって得られる。
【0065】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、天然由来の非常に少量の水中油型乳化剤の存在は、シクロデキストリンと分散脂肪相に存在するある特定の分子との間の包接複合体のin situ形成を大幅に促進する。この複合体はコロイド状又は固体粒子の形態であり、油と水との界面に配置される。これらの粒子は、皮膚又は毛髪と非常に身体的及び感覚的に適合し、細胞膜を損傷しない。
【0066】
シクロデキストリンと、8以上、好ましくは9以上の親水性-親油性バランスを有する天然由来の少量の水中油型乳化剤との組み合わせは、液滴のサイズが30μm未満又は10μm未満の非常に安定したエマルションを得ることができる。
【0067】
本発明による乳化組成物は、カルシウム又はアルミニウム塩の形態のシリカ及びオクテニルコハク酸デンプンなどのピッカリングエマルションを形成又は安定化することができる他の製品を更に含むことができる。
【0068】
したがって、本発明の別の目的は、特に化粧品用途のエマルション、好ましくは水中油型(O/W)ピッカリングタイプのエマルションに関し、当該エマルションは、固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに20μm以下、より好ましくは2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリンと、
天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、8以上、好ましくは9以上のHLBを有する、乳化剤と、を0.01:1~1:1、好ましくは0.15:1~0.30:1の乳化剤/シクロデキストリン比(重量/重量)で含むことを特徴とする。天然由来の当該乳化剤は、好ましくは、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシドと少なくとも1つの脂肪族アルコールとの混合物、及び非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステルから選択される。
【0069】
本発明による乳化組成物を使用するエマルション、特にピッカリングエマルションは、更に水からなる水相を含む。
【0070】
「水に富む」と分類される一実施形態によれば、エマルションにおける含水量は、エマルションの総重量に対して、50重量%~95重量%、好ましくは60重量%~92重量%、最も好ましくは65重量%~90重量%である。この実施形態によるエマルションは、すぐに使用できるので、使用者が追加の水を加えずとも使用することができる。
【0071】
「水が少ない」と分類される一実施形態によれば、エマルションにおける含水量は、エマルションの総重量に対して、2重量%~50重量%、好ましくは5重量%~35重量%、最も好ましくは10重量%~40重量%である。この実施形態によるエマルションは、エマルションにおける水の量を低減させることによって、フラスコ、ボトル、又はジャーなどの容器の総容量を低減させるという利点を有する。したがって、これにより、輸送コスト及びそのような輸送によって放出される排気ガスの量が削減される。ユーザは、この実施形態のエマルションを確実に正しく使用するために、使用時に水を加える必要がある場合もある。
【0072】
本発明による乳化組成物を実施するエマルション、特にピッカリングO/Wエマルションは、例えば、植物油などの室温(25℃)で液体であり得る脂肪相、又はワックスの場合のように固体であり得る脂肪相を含み得る。この液体脂肪相は、鉱物、動物、植物、又は合成に由来するものであり得、炭化水素油又は任意にシリコーン油からなる。炭化水素油は、炭素原子及び水素原子、並びに任意で酸素及び窒素原子から本質的に形成される、又はこれらからなる油を意味すると理解され、これらは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン、及び/又はアミド基を含み得る。
【0073】
好ましくは、本発明による乳化組成物を実施するエマルションは、1つ以上の油、好ましくは少なくとも1つの不揮発性液体油を含むことができる。不揮発性液体油とは、室温、大気圧で少なくとも1時間は皮膚上に残留しやすい油を意味すると理解される。
【0074】
液体脂肪相は、皮膚に皮膚軟化効果を提供する1つ以上の不揮発性油を有利に含む。これらとしては、脂肪酸エステル、例えば、イソノン酸セテアリル、イソノン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、イソノン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸又は乳酸2-オクチルドデシル、コハク酸2-ジエチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリアセチン、トリカプリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリントリイソステアレート、酢酸トコフェロール、高級脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、又はイソステアリン酸、高級脂肪族アルコール、例えば、オレイルアルコール、植物油、例えば、アボカド油、カメリア油、ヘーゼルナッツ油、椿油、カシューナッツ油、アルガン油、大豆油、グレープシード油、ゴマ油、「マルス」油、小麦胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、落花生油、オリーブ油、及びこれらの混合物、シアバターやカメリアバターなどの植物性バターを挙げることができる。
【0075】
これらの油は、灯油、スクアラン油、ワセリン、ジメチルシロキサン、及びこれらの混合物などの炭化水素化又はシリコーン化タイプの油であり得る。
【0076】
液体脂肪相はまた、任意に揮発性油を含み得る。揮発性油とは、室温及び大気圧で1時間以内に皮膚から蒸発し得る油を意味すると理解される。揮発性油は、例えば、脂っぽい感触を低減するために、例えば、シリコーン油又は短鎖脂肪酸トリグリセリドから選択することができる。
【0077】
好ましくは、本発明による乳化組成物を実施するエマルションタイプの組成物、特にO/Wピッカリングエマルションは、再生可能な素材由来の油、特に植物由来の油又はバターのみを含み、好ましくは精製されたもののみを含む。これらの油及びバターは、これらにより高い白色度及び容易に調整可能な粘度を有する非常に安定なエマルションを得ることができるという意味で、本発明の乳化組成物に使用される乳化系に完全に適している。本発明による乳化組成物は、有利には、非常に高い油含有量を有する水中油型エマルションを調製することができる。このタイプの油分が豊富なO/Wエマルションは、通常、従来の乳化剤を使用して長期間安定した形態で入手することは困難である。本発明による乳化組成物を導入するO/Wエマルションの油含有量は、エマルションの総重量に対して、好ましくは10~65重量%、好ましくは20~55重量%のオーダーである。例えば、ヒマワリ油及びパルミチン酸イソプロピルなどの植物油又は植物由来の油は、特に安定したエマルションを得ることができ、クリーミング又は相分離を引き起こさない。
【0078】
本発明による乳化組成物を実施するエマルションはまた、特に水相の増粘剤としてのレオロジー剤、又はゲル化剤若しくは懸濁剤、例えば、アラビアガム、こんにゃくガム、グアーガム、又はそれらの誘導体のような植物に由来するガム;アルギン酸塩又はカラギーナンなどの藻類から抽出されたガム;キサンタン、マンナン、スクレログルカン、又はそれらの誘導体などの微生物発酵に由来するガム;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース;デンプン及びその誘導体、例えば、加工デンプン、特にアセチル化、カルボキシメチル化、オクテニルコハク酸塩、又はヒドロキシプロピル化デンプン;合成ポリマー、例えば、ポリアクリル酸又はカルボマーを含むことができる。
【0079】
好ましくは、本発明による乳化組成物を実施するエマルションは、植物又は発酵からの天然多糖から選択され、任意に改質されたレオロジー剤を含む。キサンタン及びその誘導体は、特に、エマルションの総重量に対して1重量%未満の含有量で使用された場合であっても、非常に微細な液滴径を有する水中油型エマルションを得ることができる。
【0080】
本発明による乳化組成物を実施するエマルションは、好ましくは、水相中に分散した脂肪相の形態であり、当該分散した脂肪相は、30μm以下、好ましくは10μm以下の平均径を有する液滴の形態である。
【0081】
液滴径が小さいと、エマルションの凝集速度が低下し、相分離速度が低下するため、エマルションの安定性が向上する。平均液滴径は、多数のパラメーターに依存し、したがって、制御されるべきであり、乳化組成物の配合に固有ではない特性である。
【0082】
平均液滴径は、LEICA DMLS光学顕微鏡を使用して10倍の倍率で測定し、続いて少なくとも約10個の液滴の数平均をカウントし、計算することができる。
【0083】
本発明による乳化組成物を実施するエマルションはまた、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、及びそれらの混合物から選択される防腐剤を含んでもよい。
【0084】
本発明による乳化組成物を実施するエマルションは、好ましくは、25℃で3000mPa.s超、好ましくは25℃で5000mPa.s超の粘度を有する。粘度は、生成物のサンプルと接触して毎分20回転の速度で回転するBrookfield DV-II+Pro粘度計で測定する。この回転運動に対する生成物の抵抗は1分間記録され、一般にmPa.sと示される「ミリパスカル秒」に変換される。各サンプルについて粘度を3回測定し、3回の値の算術平均をとる。
【0085】
本発明による乳化組成物の感覚特性を評価するために、感覚記述子及び対応する5段階の感覚評価プロトコルを使用する。これらの5段階は、扱う生成物の適用についての異なる段階:外観、取り扱い、塗布、1分後の広がり、2分後の広がりに対応する。これらの5段階の間に、本発明によるエマルションと、本出願人によって提出された仏国特許第1853362号によるエマルションとを比較するために、いくつかの感覚記述子が10名の評価者からなるパネルによって評価される。本発明によるエマルションは、流動性、滑らかさ、展延性、油っぽさ、柔らかさ、きしみ感、浸透性、及びピリングという感覚特性において、仏国特許第1853362号によるエマルションとは異なる。本発明によるエマルションは、より流動性の低いテクスチャを提供するが、それでも広がりやすく、より速く浸透し、より脂っぽい感触を有するが、それでもより滑らかで、柔らかく、きしみが少ない。また、肌によってはピリングが少なく、ピリングがないこともある。
【0086】
更に、本発明による乳化組成物は、高レベルの分散脂肪相を有するにも関わらず、テクスチャを創出可能であり、かつ冷涼で、シルキーな、べたつかない感触を有する、非常に安定かつ非常に微細な水中油型O/Wエマルションの容易な製造を可能にする。したがって、皮膚に対する良好な皮膚軟化効果、並びに表皮の上層に対する良好な保湿効果を有するエマルションを得ることが可能である。
【0087】
この乳化組成物は、特に、エマルション中に高レベルの脂肪相を有するにも関わらず、さまざまなテクスチャを備えており、皮膚との適合性が高く、更にドライで、フレッシュで、シルキーな触感を有する、非常に微細なO/Wエマルションの容易な製造を可能にする。
【0088】
乳化組成物を導入する液体エマルションの製造方法
本発明の別の目的は、液体水中油型エマルション、好ましくは特に化粧品用途のピッカリングエマルションの製造方法からなり、
a)固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子は、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリンと、水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、8以上のHLB、より好ましくは9以上のHLBを有する、乳化剤と、を0.01:1~1:1、好ましくは0.15:1~0.30:1の乳化剤/シクロデキストリン比で含む乳化組成物を、水相中に分散させる工程と、
b)工程a)で得られた混合物に脂肪相を、組成物の総重量に対して10~65重量%の量で、撹拌下で添加して、30μm未満、好ましくは10μm以下の数平均径を有する液滴の形態の水相中に、脂肪相を分散させる工程と、を含む。
【0089】
変形例によれば、液体水中油型エマルション、好ましくは特に化粧品用途のピッカリングタイプエマルションを製造するための本発明による方法は、
a)固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンであって、当該粒子が、レーザー式粒度測定で測定されたときに2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する、シクロデキストリンと、
水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、8以上のHLB、より好ましくは9以上のHLBを有する、乳化剤と、を0.01:1~1:1、好ましくは0.15:1~0.30:1の乳化剤/シクロデキストリン比で含む乳化組成物を、脂肪相中に分散させる工程であって、脂肪相は、エマルションの最終重量に対して、好ましくは10~65重量%、好ましくは20~55重量%を表す、分散させる工程と、
b)工程a)で得られた混合物を水相に、撹拌下で添加して、30μm未満、好ましくは10μm以下の平均径を有する液滴の形態で、水相中に脂肪相を分散させる工程と、を含む。
【0090】
上記に記載されている水中油型エマルション、好ましくはピッカリングエマルションの製造方法の2つの変形において、天然由来の乳化剤が、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド;少なくとも1つのアルキルポリグルコシドと少なくとも1つの脂肪族アルコールとの少なくとも1つの混合物;及び少なくとも1つの非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステルから選択され、より好ましくは、少なくとも1つのアルキルポリグルコシドと少なくとも1つの脂肪族アルコールとの混合物から選択される、本発明による乳化組成物を使用することが好ましい。
【0091】
使用
最後に、本発明の目的はまた、より柔らかく滑らかな感触を当該エマルションに提供し、ピリングを低減又は排除するための、
レーザー式粒度測定で測定されたときに20μm以下、より好ましくは2~20μm、好ましくは3~12μm、より好ましくは4~8μmである体積平均径d(4.3)を有する固体粒子の形態の少なくとも1つのシクロデキストリンと、
水中油型乳化剤から選択される天然由来の少なくとも1つの乳化剤であって、8以上、最も好ましくは9以上の親水性-親油性バランスを有し、当該組成物の乳化系全体のHLBもまた8以上であり、好ましくは9以上である、乳化剤と、を
化粧品用エマルションにおいて使用することである。
【実施例
【0092】
本発明は、以下に記載される実施形態の非限定的な例の助けを借りてよりよく理解されるであろう。
【0093】
実施例1:エマルション
出願人によって「Beaute by Roquette(登録商標)CD102」の名前で販売されており、その体積平均径が94.83μmであるβ-シクロデキストリンを含有する乳化組成物で調製された「参照」エマルションを、体積平均径d(4.3)が12μm未満になるように事前に乾式粉砕したこの同じβ-シクロデキストリンを使用して得られたもの(こうして得られたβ-シクロデキストリンは、「超微細」と見なされる)である本発明によるエマルションと比較する。これら2つのβ-シクロデキストリンの粒度分布特性を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
上記の表2の2つのエマルションは、次の手順に従って調製される。
最初に、ゲル化剤を、解こう用のパドルにより1000rpmで撹拌しながら水に分散させる。水温は、ゲル化剤がキサンタンガムの場合は40℃、ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロースの場合は70℃に設定される。
【0097】
次いで、β-シクロデキストリンをグリセリンで湿らせ、β-シクロデキストリン/グリセリン混合物を、1000rpmで撹拌しながら水/ゲル化剤混合物に添加して、水相を得る。
β-シクロデキストリンの量は、組成物の5重量%に設定される。
【0098】
別に、SEPPIC社のMONTANOV Lアルキルポリグルコシド(INCI:セテアリルアルコール及びセテアリルグルコース)をヒマワリ油又はパルミチン酸イソプロピルに磁気撹拌しながら40℃で添加して、油相を得る。
【0099】
次いで、油相を、1500rpmで15分間撹拌しながら40℃で水相中で乳化する。
防腐剤(ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸ベースの混合物)を添加する。
【0100】
それぞれのエマルションについて、物理化学的特性、すなわち粘度及び平均液滴径が測定され、感覚特性、すなわち滑りやすさ、展延性、油っぽさ、柔らかさ、きしみ感、浸透性、滑らかさ、及びピリングが測定される。
【0101】
粘度は、Brookfield DV-II+Pro粘度計を使用して測定される。固定サイズの可動部品(デバイスの取扱説明書に従って粘度レベルに従って使用されるSP2からSP7の可動部品)は、製品サンプルと接触させて20rpmの速度で回転させる。この回転運動に対する製品の抵抗が1分間記録され、「ミリパスカル秒」に変換される。各サンプルについて、粘度を3回測定し、3回の値の算術平均をとる。以下の範囲に従って、測定される粘度に適したスピンドルを選択する:選択されるスピンドルは:粘度が5000mPa.s以下の場合はSP3スピンドル、粘度が5000mPa.s~7000mPa.sの場合はSP4、粘度が7000mPa.s以上の場合はSP5。
【0102】
液滴の平均径は、代表的な数の液滴、典型的には少なくとも10個の液滴について、倍率10倍の光学顕微鏡で測定される液滴径を算術平均することによって求められる。使用した顕微鏡は、LEICA DMLSである。
【0103】
感覚特性は、化粧製品のテクスチャを分析する専門家である10名のパネルによって評価される。
【0104】
製品を広げるときに、2つの記述子が評価される。試験の対象となる製品50~100μLを手に乗せた後、ランプ下で10回広げて評価する。
滑らかさについての記述子は、2~5回目のターンの間に評価される。指は、皮膚の上をよく滑る。この製品は、皮膚上でパウダリーな物質として知覚される。
広がりは、50~100μLの製品を手に乗せた後、ランプ下で10回広げて試験することによって評価される。手の上での5~10ターン目までの動きに抵抗が少ないときに広がりが最も大きくなる。
【0105】
次の記述子は、10ターンが完了した後に評価される。
以下の2つの記述子について、試験は、ランプの下で、50~100μLの製品を皮膚上に広げてから1分後に実行される。
柔らかさについての記述子は、皮膚の上を滑らせることによって評価され、乾燥した滑りやすい感覚が感じられる。
きしみ感は、親指と人差し指をこすり合わせることで評価される。抵抗を感じ、きしむ音がする。
【0106】
以下の2つの記述子についての試験は、ランプの下で、50~100μLの製品を皮膚上に広げてから2分後に実施する。
製品の浸透性についての記述子は、皮膚の上を滑らせることによって評価される。次いで、評価パネルが、除去された製品の残存量を評価する。
ピリングは、皮膚に対して機械的な摩擦動作を行うことによって評価されるものであり、製品はこの動作により塊を形成する。
【0107】
2つのエマルションの粘度はほぼ等しく、約12,000mPa.sであり、液滴径は10μm未満である。
【0108】
表3は、本発明による乳化組成物で調製されたエマルションで得られた感覚認知を、参照乳化組成物で調製されたエマルションで得られた感覚認知と比較して提示する。
【0109】
本発明によるエマルションにおいて改善された感覚特性の試験項目は、滑らかさ、広がり、脂っぽさ、柔らかさ、きしみ感、浸透性、ピリングである。
【0110】
【表3】