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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】挿入装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20240930BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021542693
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030088
(87)【国際公開番号】W WO2021039334
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019157203
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 毅
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/218236(WO,A1)
【文献】特表2019-507613(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162383(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/120920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具を生体内に挿入する挿入装置であって、
前記医療器具の少なくとも一部が接着され、前記接着された医療器具と共に生体内に挿入される針部と、
前記針部の挿入方向において、前記針部に対して相対的に移動可能な移動部と、を備え、
前記移動部は、前記針部に対して前記挿入方向に相対的に移動することにより、前記医療器具と前記針部との接着領域を切断し、前記医療器具と前記針部とを分離させ
前記針部は、前記医療器具を収容可能な医療器具収容空間を内部に区画している、挿入装置。
【請求項2】
前記針部は、前記医療器具収容空間を区画する側壁部を備え、
前記医療器具は、前記側壁部の内面に接着されている、
請求項に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記医療器具収容空間内に位置し、前記医療器具を収容可能な前記挿入方向に沿って延在する溝空間を有している、請求項又はに記載の挿入装置。
【請求項4】
医療器具を生体内に挿入する挿入装置であって、
前記医療器具の少なくとも一部が接着され、前記接着された医療器具と共に生体内に挿入される針部と、
前記針部の挿入方向において、前記針部に対して相対的に移動可能な移動部と、を備え、
前記移動部は、前記針部に対して前記挿入方向に相対的に移動することにより、前記医療器具と前記針部との接着領域を切断し、前記医療器具と前記針部とを分離させ、
前記針部は、壁部により前記挿入方向に沿って延在する管形状に形成されており、
前記壁部は、前記移動部を収容可能な移動部収容空間を内部に有する
入装置。
【請求項5】
前記壁部は、外周面の一部に、前記医療器具において前記針部に接着されていない箇所の少なくとも一部を載置する載置面を有する、請求項に記載の挿入装置。
【請求項6】
前記針部及び前記移動部の前記針部の長手方向以外の相対的な移動を規制する規制機構を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者等の被測定者の生体内にセンサ等の医療器具を埋め込む場合がある。一例として、被測定者の生体内にセンサを埋め込み、被測定者の血液中又は体液中のアナライト(例えば、グルコース、pH、コレステロール、たんぱく質等)をモニタリングする。この場合、被測定者の皮膚を貫通してセンサを迅速かつ容易に生体内に埋め込むために挿入装置が使用される(特許文献1参照)。特許文献1に記載の挿入装置では、針部と共にセンサを生体内に挿入し、センサを留置して針部のみを生体外に抜去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-507613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、センサを生体内に埋め込むために、例えば粘着剤を用いて挿入部材と医療器具とを接着している。この状態で、挿入部材ごと医療器具を生体内に挿入し、その後、挿入部材を生体外に抜去することにより接着部を破壊して、医療器具を生体内に留置させることができる。しかしながら、この方法によれば、医療器具を生体内の所望の位置に留置できるか否かが、接着性能に依存する。例えば接着が弱すぎると、医療器具を所望の位置に配置させる前に医療器具が挿入部材から外れ、医療器具を生体内の所望の位置に留置できなくなる。反対に、接着が強すぎると、医療器具が挿入部材から剥がれにくくなり、この場合も、医療器具を生体内の所望の位置に留置できなくなる。
【0005】
本開示は、医療器具を生体内の所望の深さに留置しやすい挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての挿入装置は、医療器具を生体内に挿入する挿入装置であって、前記医療器具の少なくとも一部が接着され、前記接着された医療器具と共に生体内に挿入される針部と、前記針部の挿入方向において、前記針部に対して相対的に移動可能な移動部と、を備え、前記移動部は、前記針部に対して前記挿入方向に相対的に移動することにより、前記医療器具と前記針部との接着領域を切断し、前記医療器具と前記針部とを分離させる。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記針部は、前記医療器具を収容可能な医療器具収容空間を内部に区画している。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記針部は、前記医療器具収容空間を区画する側壁部を備え、前記医療器具は、前記側壁部の内面に接着されている。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記移動部は、前記医療器具収容空間内に位置し、前記医療器具を収容可能な前記挿入方向に沿って延在する溝空間を有している。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記針部は、壁部により前記挿入方向に沿って延在する管形状に形成されており、前記壁部は、前記移動部を収容可能な移動部収容空間を内部に有する。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記壁部は、外周面の一部に、前記医療器具において前記針部に接着されていない箇所の少なくとも一部を載置する載置面を有する。
【0012】
本開示の1つの実施形態として、前記針部及び前記移動部の前記針部の長手方向以外の相対的な移動を規制する規制機構を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、医療器具を生体内の所望の深さに留置しやすい挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態としての挿入装置を示す図であり、針部が待機位置にある状態を示す図である。
図2図1に示す挿入装置の針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態を示す図である。
図3図1に示す挿入装置の針部が挿入位置にある状態を示す図である。
図4図1に示す挿入装置の針部が挿入位置から生体外へと抜去された状態を示す図である。
図5図1に示す状態の挿入装置における、第1実施形態に係る、針部、移動部、及び、医療器具を示す斜視図である。
図6図5に示す針部、移動部、及び、センサを先端側から見た図である。
図7A図5のI-I断面図であり、図1に示す挿入装置の針部が待機位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図7B図7Aと同じ断面視で、針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図7C図7Aと同じ断面視で、針部が挿入位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図7D図7Aと同じ断面視で、針部が挿入位置で医療器具を留置した後にハウジング内に戻る途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図8】本開示の第2実施形態としての挿入装置における、針部材の針部、移動部材の移動部、及び、医療器具を示す斜視図である。
図9図8のII-II断面図であり、針部、移動部、及び、医療器具の、長手方向と直交する断面図である。
図10A図8のIII-III断面図であり、図1に示す挿入装置の針部が待機位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図10B図10Aと同じ断面視で、針部が待機位置から挿入位置に移動する途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図10C図10Aと同じ断面視で、針部が挿入位置にある状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図10D図10Aと同じ断面視で、針部が挿入位置で医療器具を留置した後にハウジング内に戻る途中の状態での、針部、移動部及び医療器具を示す図である。
図11図7AのIV-IV断面図である。
図12図10AのV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。
【0016】
(第1実施形態)
図1図4は、本開示に係る挿入装置の第1実施形態としての挿入装置1を示す図である。また、詳細は後述するが、図1図4それぞれは、挿入装置1を用いて生体内に医療器具100を挿入及び留置する際の、挿入装置1の動作の概要を示している。図1図4に示す挿入装置1は、医療器具100としてのセンサ100aを生体内に挿入することができる。以下、本実施形態では、医療器具100としてのセンサ100aを生体内に挿入する挿入装置1を例示説明するが、挿入装置1により生体内に挿入される医療器具100はセンサ100aに限られない。したがって、センサ以外のカニューレ等の管部材を挿入する挿入装置であってもよい。
【0017】
図1図4に示すように、挿入装置1は、針部材2と、移動部材3と、ハウジング4と、付勢部材5と、制御装置6と、医療器具100としてのセンサ100aと、を備える。図1図4に示すように、本実施形態の針部材2は、針部11と、保持部12と、を備える。本実施形態の移動部材3は、移動部21と、本体部22と、を備える。
【0018】
まず、図1図4を参照して、本実施形態の挿入装置1の使用方法について説明する。本実施形態の挿入装置1は、上述したようにセンサ100aを生体内に挿入・留置するために用いることができる。挿入装置1は、図1に示す状態で生体表面BS上に配置される。すなわち、図1は、針部材2の針部11、及び、センサ100aが、生体内に挿入される前の状態を示している。その後、医療従事者等の操作者が挿入装置1を操作することにより、針部材2の針部11、及び、センサ100aが、生体内に挿入される(図2図3参照)。図2は、挿入装置1により、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入している途中の状態を示す図である。図3は、針部11及びセンサ100aが、挿入装置1により挿入可能な生体内の最も深い位置まで到達している状態を示す図である。次に、図4に示すように、センサ100aを生体内に残した状態で、針部材2の針部11が生体外に抜去される。このようにすることで、挿入装置1により、センサ100aを生体内に挿入及び留置することができる。以下、説明の便宜上、針部11がハウジング4内に収容されている図1の針部11の位置を「針部11の待機位置」と記載する。また、説明の便宜上、針部11がハウジング4から最も突出する図3の針部11の位置を「針部11の挿入位置」と記載する。
【0019】
生体内に留置されるセンサ100aは、被計測物質(アナライト)を検出し、検出結果の情報を例えば制御装置6に送信する。制御装置6は、センサ100aと有線接続されるとともに、センサ100aと共に生体表面BS上に留置される。制御装置6は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。図1図4に示す本実施形態のセンサ100aは、検出結果の情報を制御装置6に送信する。センサ100aを制御装置6とともに使用することで、被計測物質の濃度に応じて信号を検出できる。検出信号は、制御装置6によって信号処理されて、被測定者のスマートフォンや専用端末へ送信される。被測定者や使用者は、スマートフォンや専用端末の画面に表示される被測定物質の測定結果を経時的に確認することができる。センサ100aが被測定者に装着されている期間は、例えば数時間、数日、1週間、1カ月など、医師等の判断で適宜決定される。被計測物質は特に限定されないが、センサ100aの検出部の選択によって、血液中または間質液中のグルコース、酸素、pH、乳酸等を測定することができる。なお、制御装置6は、センサ100aの挿入完了後に、別体として設けたトランスミッタ(図示しない)に接続されてもよい。この場合、制御装置6ではなくトランスミッタがメモリや電池等を有する構成としてもよい。また、トランスミッタはセンサ100aよりも長期間使用する構成でもよい。
【0020】
以下、挿入装置1の各部材・各部位の詳細を説明する。
【0021】
図5は、図1に示す状態の挿入装置1における、針部材2の針部11、移動部材3の移動部21、及び、センサ100aを示す斜視図である。
【0022】
以下、本明細書では、針部材2の針部11の生体内に挿入される側の端を「針部11の先端」と記載する。また、針部材2の針部11の先端と反対側の端を「針部11の基端」と記載する。更に、針部材2の針部11の長手方向Aのうち基端から先端に向かう方向を「挿入方向A1」又は「先端側」と記載する。更に、針部材2の針部11の長手方向Aのうち先端から基端に向かう方向を「抜去方向A2」又は「基端側」と記載する。針部11の径方向Bとは、針部11の長手方向Aと直交する平面において、針部11を中心とした針部11周りの円を定義した場合の当該円の径方向を意味する。針部材2の針部11の中心軸から、外側に向かう方向を「径方向Bの外側」と記載する。針部材2の針部11周りの円を定義した場合の当該円の円周から針部11の中心軸に向かう方向を「径方向Bの内側」と記載する。なお、「針部材2の針部11周りの円」は、第3側板部15cが円弧状に形成されている場合、針部11の断面における第3側板部15cの内周面と略一致する。第3側板部15cが円弧状に形成されていない場合、針部材2の針部11周りの円の中心は、針部11の長手方向Aと直交する断面において、後述の第3側板部15cの両端部(第3側板部15cが第1側板部15a及び第2側板部15bとそれぞれ接続されている端部)から等しい距離となる位置に存在する。
【0023】
図6は、図5に示す針部11、移動部21、及び、センサ100aを先端側から見た図である。図7Aは、図5のI-I断面図であり、図1に示す挿入装置1の針部11が待機位置にある状態での、針部11、移動部21及び医療器具100を示す図である。
【0024】
図5図7Aに示すように、針部11は、医療器具100を収容可能な医療器具収容空間13を内部に区画している。針部11は、医療器具収容空間13に収容される医療器具100と共に生体内に挿入される。
【0025】
図5及び図6に示すように、本実施形態の針部11は、医療器具収容空間13を区画する側壁部15を備える。
【0026】
本実施形態の側壁部15は、対向して配置されている第1側板部15a及び第2側板部15bと、これら第1側板部15a及び第2側板部15bそれぞれの一方側の端部に連続する第3側板部15cと、を備える。第1側板部15a、第2側板部15b及び第3側板部15cにより、医療器具収容空間13が区画されている。
【0027】
側壁部15は長手方向Aに延在している。本実施形態では、第1側板部15a及び第2側板部15bは、それぞれ長手方向Aに延在する長尺な平板により構成されている。また、本実施形態では、第3側板部15cは、第1側板部15a及び第2側板部15bとともに、長手方向Aに延在する。第3側板部15cは、長手方向Aに直交する断面視において、円弧状の板により構成されている。本実施形態の側壁部15は、第1側板部15a、第2側板部15b及び第3側板部15cにより、U字形溝を形成している。但し、側壁部15の長手方向Aと直交する横断面外形は、本実施形態のようなU字形溝形状に限定されず、例えば矩形状、C字形状等の横断面外形を有していてもよい。その場合、第3側板部15cは平板状、半円状又は略半円弧状等の適宜の形状に形成されている。また、第1側板部15a及び第2側板部15bも、断面視において円弧状に形成されてもよい。本実施形態では、センサ100aが、ベースプレート72上に設けられた制御装置6と有線接続されている。このため、側壁部15の断面外形がU字形状に形成されていることにより、センサ100aを、U字形状の開口(針部スリット20a)側において、医療器具収容空間13から外部に引き出すことができる。例えば、センサ100aを有するベースプレート72上に、別体のトランスミッタ(図示しない)を取り付ける構成とする場合、制御装置6をトランスミッタ内に収容し、かつ、トランスミッタの任意の位置に、センサ100aとの接点部を設ける構成とすることができる。
【0028】
図5及び図7Aに示すように、側壁部15の先端部は、刃先19aおよび刃面19bを有する。側壁部15の先端部において、先端には刃先19aが形成されている。本実施形態の側壁部15では、第3側板部15cの先端が刃先19aを構成する。より具体的には、本実施形態の側壁部15では、長手方向Aに対して傾斜する斜面により構成される刃面19bが形成されている。刃面19bは、刃先19aに向かうにつれて先細りとなるように形成されている。図5及び図7Aに示す例では、刃面19bは、針部11を第1側壁部15a側から見た場合の側面視において、傾斜するように形成されている。斜面の形状は、平面でも曲面でもよい。側壁部15の刃先19aは、この構成に限られない。側壁部15は、例えば、先端が長手方向Aに対して傾斜する1以上の刃面19bを備える構成であってもよく、針部11の中心軸に対して非対称な刃面であってもよい。
【0029】
本実施形態において、側壁部15の第1側板部15a及び第2側板部15bの外面同士の対向幅は、例えば、0.2mm~0.6mmとすることができる。側壁部15のうち生体内に挿入される長さは、例えば、1mm~10mm、好ましくは3~6mmとすることができる。また、第1側板部15a、第2側板部15b及び第3側板部15cの厚さは、例えば、0.02mm~0.15mmの範囲から設定される。
【0030】
図5及び図7Aに示すように、センサ100aの検出部100bは、センサ100aの先端100eの近傍に設けられる。検出部100bを保護するため、検出部100bは、先端100eよりもやや基端側に設けられることが好ましい。
【0031】
医療器具100は、その少なくとも一部が針部11に固定されている。本実施形態では、医療器具100としてのセンサ100aの少なくとも一部が側壁部15に接着固定される。具体的には、図5図7Aに示されているように、センサ100aは、その一部が第3側板部15cに接着固定されている。
【0032】
本実施形態では、センサ100aの検出部100bよりも基端側の部分が、側壁部15の第3側板部15cに接着固定されている。センサ100aと第3側板部15cとが接着固定されている領域は、図7Aにおいて、接着領域Dとして示されている。接着領域Dは、センサ100aの側面のうち、側壁部15に接触する面の少なくとも一部であり、側壁部15に固定された領域をいう。センサ100aの表面のうち、接着領域Dに対応する位置には接着剤が塗布される。センサ100aと、第3側板部15cとが接着固定されることにより、センサ100aは、針部11内に安定して保持される。これにより、センサ100aは、針部11とともに生体内の所望の深さに挿入することができる。ここで用いる接着剤の種類としては、生体適合性を有するものであればよく、接着剤の量はセンサ100aと針部11とを生体内に挿入するために必要な接着強度を保つことが可能な量であればよい。
【0033】
針部11の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。針部11の材料としては、塑性加工により製造できるものを選択する。塑性加工の例としては、所定の内径を有する引き抜き管の切削加工や、金属平板をプレス加工により製造できる。好ましくは、プレス加工を適用できるもの針部11の材料として選択する。
【0034】
保持部12は、針部11の基端部を保持している。本実施形態の保持部12は、本体部51と、係止爪部52と、を備える。本体部51は、長手方向Aに貫通する保持開口51aを備える。針部11の基端部は、保持開口51aに内挿されている状態で、本体部51に固定されている。係止爪部52は、本体部51から抜去方向A2に向かって突出している。係止爪部52は、針部11の径方向Bにおいて、針部11の外側に位置している。また、本実施形態の針部材2では、針部11の径方向B外側で、針部11の周囲を囲むように複数の係止爪部52が設けられている。係止爪部52は、本体部51から突設されている延在部53と、この延在部53の抜去方向A2の端部に設けられた係合凸部54と、を備える。延在部53は、本体部51と連続する位置を支点として、長手方向Aと直交する方向に弾性変形可能である。より具体的には、本実施形態の延在部53は、本体部51と連続する位置を支点として、針部11の径方向Bに弾性変形可能である。係合凸部54は、延在部53の端部から、長手方向Aと直交する方向に突出している。係合凸部54の抜去方向A2に位置する上面54aは、挿入方向A1に向かうにつれて径方向Bの内側に延在するように、長手方向Aに対して傾斜している。この係合凸部54の上面54aは、移動部材3の後述する本体部22と係合することで径方向Bの外側に押圧される。この詳細は後述する。
【0035】
保持部12の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0036】
上述したように、本実施形態の移動部材3は、移動部21と、本体部22と、を備える。
【0037】
移動部21は、針部11の挿入方向A1において、医療器具収容空間13内を針部11に対して相対的に移動可能である。また、移動部21は、針部11に対して挿入方向A1に移動することにより、医療器具100と針部11との接着領域Dを切断する。具体的には、移動部21の先端21eが、接着領域Dの基端部側から接触することで、接着領域Dにおいて、医療器具100と針部11とを分離する。これにより、医療器具100と針部11との接着状態が解除されるため、針部11に対する医療器具100の固定が解除される。具体的には、本実施形態の移動部21は、針部11に対して挿入方向A1に移動する。移動部21の先端を構成する刃先21eが、接着領域Dの基端に接触する。この状態から、移動部21が、更に挿入方向A1に移動することで、接着領域Dの基端から先端に向かって、医療器具100と針部11とが剥離される。これにより、医療器具100は、針部11に対する固定が解除される。このとき、医療器具100と針部11との間に移動部21が入りこむ。
【0038】
図5及び図6に示すように、本実施形態の移動部21は、医療器具収容空間13において、針部11の側壁部15の内周面に沿って、長手方向Aに延在する部材として構成されている。具体的には、移動部21は、針部11の長手方向Aに沿って延在し、第1溝壁部21aと、第2溝壁部21bと、第3溝壁部21cとを備える。第1溝壁部21aと第2溝壁部21bとは対向して配置されている。第3溝壁部21cは、第1溝壁部21a及び第2溝壁部21bそれぞれの一方側の端部に連続している。第1溝壁部21a、第2溝壁部21b及び第3溝壁部21cにより、溝空間23が区画されている。移動部21は、溝空間23に医療器具100を保持可能となっている。第1溝壁部21a及び第2溝壁部21bは、平板により構成されており、第3溝壁部21cは、円弧上の板により構成されている。
【0039】
移動部21では、第3溝壁部21cの先端が、鋭利な刃先21eとなるように長手方向Aに対して傾斜する斜面により構成される刃面21fが形成されている。ただし、移動部21の刃先21eの構成は本実施形態の構成に限られない。移動部21が針部11に対して挿入方向A1に移動する際に、刃先21eが、接着領域Dに接触し、さらに接着領域Dを剥離しながら先端側に向かって進むことができればよい。これにより医療器具100と針部11とが剥離されればよい。
【0040】
なお、第1溝壁部21a、第2溝壁部21b及び第3溝壁部21cの形状は、上述した形状に限られない。第1溝壁部21a、第2溝壁部21b及び第3溝壁部21cは、移動部21が接着領域Dを分離することが可能な形状に形成されていればよい。また、第1溝壁部21a、第2溝壁部21b及び第3溝壁部21cは、移動部21が全体として側壁部15に沿った形状となるように構成されることが好ましい。
【0041】
移動部21も、側壁部15と同様に、移動部21から移動部21の外方に向かって、医療器具100としてのセンサ100aの基端部を引き出し可能な開口(移動部スリット20b)を有する。センサ100aが制御装置6と無線接続される場合には、移動部21を、開口を有さない管状に形成してもよい。
【0042】
移動部21の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。移動部21は、塑性加工により製造できる。移動部21は、例えば、所定の内径を有する引き抜き管の切削加工や、金属平板をプレス加工により製造できる。
【0043】
本体部22は、移動部21の抜去方向A2の端部を保持している。本実施形態の本体部22は、ハウジング4内で、長手方向Aに移動可能に取り付けられている。本実施形態の本体部22は、その抜去方向A2の上面がハウジング4から外部に露出している。そのため、挿入装置1の操作者は、ハウジング4から露出する本体部22を挿入方向A1に押圧することで、本体部22を挿入方向A1に移動させることができる。これにより、本体部22に取り付けられている移動部21も、針部11の医療器具収容空間13内を挿入方向A1に移動することができる。つまり、本体部22は、挿入装置1の操作部を兼ねる。
【0044】
本体部22は、針部材2の保持部12の係止爪部52を針部11の径方向Bの外側に押圧する係合部61を備える。また、本体部22は、係合部61の抜去方向A2に隣接する位置に、係止爪部52の係合凸部54が嵌合可能な係合凹部62を区画している。係合凹部62は、係合部61よりも径方向Bの内側に窪んでいる。図1図4に示すように、係合部61は、例えば、円盤部により構成される。また、図1図4に示すように、係合凹部62は、例えば、係合部61としての円盤部の抜去方向A2に隣接し、円盤部の外縁よりも径方向Bの内側に向かって窪む環状溝により構成される。但し、係合部61及び係合凹部62の構成は、本実施形態で示す形状・位置に限られない。
【0045】
図1図3に示すように、本実施形態の挿入装置1は、本体部22を挿入方向A1に押し込むことにより、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入することができる。その際に、本体部22の係合部61は、係止爪部52の係合凸部54の抜去方向A2に位置する上面54aと係合し、係合凸部54を径方向Bの外側に押圧する。これにより、図2に示すように、係止爪部52の延在部53は、径方向Bの外側に弾性変形する。つまり、針部11の径方向Bの外側の周囲に位置する複数の係止爪部52は、径方向Bの外側に離間するように弾性変形する。そのため、図3に示すように、本体部22の係合部61は、係合凸部54の上面54aと摺動しながら係合凸部54を挿入方向A1に乗り越えることができる。
【0046】
図3に示すように、本体部22の係合部61が、針部材2の係合凸部54を乗り越えると、この係合凸部54は、本体部22の係合凹部62に嵌合する。これにより、移動部材3の本体部22と、針部材2の保持部12と、が長手方向Aにおいて干渉する。つまり、針部材2及び移動部材3は、長手方向Aにおいて一体となって移動可能となる。具体的には、移動部材3を抜去方向A2に移動させると、移動部材3の本体部22の係合凹部62の挿入方向A1の内面が、針部材2の保持部12の係合凸部54の挿入方向A1の外面と当接する。これにより、針部材2及び移動部材3を一体化させ、両者を共に抜去方向A2に移動させることができる。そのため、図4に示すように、針部11を生体外に抜去する際は、針部11と共に、針部11内の移動部21を生体外に抜去することができる。
【0047】
本体部22の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0048】
ハウジング4は、針部材2、移動部材3、付勢部材5、制御装置6、及び、後述するセンサ100a、を覆う外装部材である。図1図4に示すように、本実施形態のハウジング4は、針部11が待機位置(図1参照)にある状態で、針部材2、移動部材3、付勢部材5、制御装置6、及び、後述するセンサ100aの径方向Bの周囲を覆う筒状部材71と、この筒状部材71の挿入方向A1の端面を覆うベースプレート72と、を備える。ベースプレート72は、筒状部材71に対して脱着可能である。
【0049】
ベースプレート72のうち挿入方向A1側の面は、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に生体表面BSに当接させる当接面72aを構成する。ベースプレート72には、長手方向Aに貫通する貫通孔74が形成されている。待機位置(図1参照)にある針部11が挿入位置(図3参照)に移動する際に、針部11は貫通孔74を通じて当接面72aから挿入方向A1に突出する。当接面72aには、生体表面BSに留置するための貼付部を備える。
【0050】
ハウジング4の構成は特に限定されない。本実施形態では、針部材2及び移動部材3がハウジング4に対して長手方向Aに移動可能に取り付けられているが、ハウジング4とは別の部材に移動可能に取り付けられていてもよい。
【0051】
更に、本実施形態の挿入装置1ではハウジング4を備えるが、ハウジング4を備えない構成であってもよい。但し、本実施形態のハウジング4のように、挿入装置1は、医療従事者や患者等が誤って針部11に触れることを抑制するため、待機位置にある針部11の径方向Bの外側の周囲を少なくとも覆う部材を備えることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態のハウジング4は、筒状部材71及びベースプレート72が脱着可能な構成であるが、この構成に限られず、両者が一体で形成されていてもよい。但し、両者を脱着可能とすることで、生体表面BS上に留置される部分の大きさを小さくし易く、被測定者の負担を軽減できる。
【0053】
ハウジング4の材料としては、例えば樹脂材料が挙げられる。この樹脂材料としては、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチレンメタクリレート、ポリオキシエチレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の射出成形で用いられる熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0054】
本実施形態の付勢部材5は、長手方向Aにおいて弾性変形可能である。本実施形態の付勢部材5は、長手方向Aに弾性変形するコイルバネである。付勢部材5としてのコイルバネは、針部材2の保持部12と、ハウジング4のベースプレート72と、の間に配置されている。したがって、本実施形態の付勢部材5としてのコイルバネは、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動することで圧縮変形する。また、針部11が挿入位置(図3参照)にある状態で付勢部材5としてのコイルバネの復元力を解放することで、針部11を挿入位置(図3参照)から抜去方向A2に移動させることができる。
【0055】
したがって、本実施形態の挿入装置1では、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に、上述の針部材2及び移動部材3を、付勢部材5としてのコイルバネの復元力に抗して挿入方向A1に移動させる。これにより、図2図3に示すように、針部材2及び移動部材3が挿入方向A1に移動し、針部11及びセンサ100aが生体内に挿入される。そして、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入した後に、針部材2及び移動部材3に付加されていた挿入方向A1の押圧力を解除することで、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部材2及び移動部材3が抜去方向A2に移動する。これにより、センサ100aを生体内に残した状態で針部11を生体外に抜去することができる。本実施形態では、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば図1と同じ待機位置)に戻る(図4参照)。
【0056】
上述したように、本実施形態の付勢部材5はコイルバネにより構成されているが、例えば他の弾性部材を用いてもよく、コイルバネに限られない。また、挿入装置1は付勢部材5を備えない構成であってもよい。
【0057】
制御装置6は、センサ100aと動作可能に接続されている。そのため、制御装置6は、生体内に留置されるセンサ100aから、センサ100aの検出情報を受信することができる。また、上述したように、制御装置6は、センサ100aから受信した検出信号を解析し、解析結果を必要に応じて表示装置等の外部装置に送信する。制御装置6は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。なお、制御装置6を、ベースプレート72上ではなく、ベースプレート72と組み合わせ可能な別体のトランスミッタ側に有してもよい。この場合、図1図4における制御装置6の位置に、制御装置6の代わりにトランスミッタとの接点部が設けられる。
【0058】
図1図4に示すように、本実施形態の制御装置6は、針部11及びセンサ100aを生体内に挿入する際に、針部11及びセンサ100aと共に挿入方向A1に移動する。より具体的には、本実施形態の制御装置6は、針部11が待機位置(図1参照)にある状態で、針部材2に保持されている。針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する際に、制御装置6は針部材2と共に挿入方向A1に移動する。針部11が挿入位置(図3参照)に到達すると、制御装置6は、ハウジング4のベースプレート72と係合し、針部材2に保持された状態が解除される。制御装置6とベースプレート72との係合手段は、接着や機械的係合など、任意の手段を採用できる。これにより、制御装置6は、ベースプレート72上に保持される状態となる。そのため、針部11が生体外に抜去される際、すなわち、針部11が挿入位置から待機位置に戻る際に、針部材2は抜去方向A2に移動するが、制御装置6は、抜去方向A2に移動せず、ハウジング4のベースプレート72上に残される。
【0059】
本実施形態のセンサ100aは、針部11の医療器具収容空間13に収容される細径の線状部材である。センサ100aとしては、被計測物質の量または濃度に応じた電気的信号を検出する部材を用いることができる。センサ100aは、医療器具収容空間13内で、針部11の長手方向Aに沿って延在している。
【0060】
センサ100aは、例えば、横断面形状が円形のワイヤ電極としてよい。ワイヤ電極は、針部11の医療器具収容空間13に収容される。ワイヤ電極の外径は、例えば0.02mm~0.2mmとすることができる。医療器具収容空間13には、例えば、作用電極及び参照電極の2本のワイヤ電極が収容されてよい。作用電極は、導電性表面を有する芯材をベースに構成され、芯材の外壁上に被計測物質を検出するよう構成された検出部100bと、芯材の外壁上が絶縁性の素材でコーティングされた保護部と、を備える構成としてよい。検出部100bにより、被計測物質に対する電気的特性の変化を検出することができる。検出部100bは、芯材表面にディッピング、電解重合、スパッタリング等の薄膜形成手段を用いて形成される。作用電極の表面には被計測物質と特異的に反応する試薬が塗布される。被計測物質がグルコースの場合、グルコースオキシダーゼやフェニルボロン酸化合物が含まれる試薬を用いる。参照電極は、上述の作用電極に対する参照電極として使用される。作用電極の周囲に参照電極や対極をコイル状に巻き付けて1本のワイヤ電極としてもよい。あるいは、医療器具収容空間13内に3本のワイヤ電極を配置してもよい。その3本のワイヤ電極それぞれにより、作用電極、参照電極及び対極を構成してもよい。また、参照電極または対極として、針部11自体を利用してもよい。作用電極の検出部100bによって検出された被計測物質の情報は、制御装置6に送信される。
【0061】
次に、挿入装置1を用いてセンサ100aを生体内に挿入及び留置する際の針部11、移動部21及びセンサ100aの動作の詳細について説明する。図7Aは、図5のI-I断面図であり、針部11が待機位置(図1参照)にある状態での、針部11、移動部21及び医療器具100としてのセンサ100aを示す図である。図7Bは、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図7Cは、針部11が挿入位置(図3参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図7Dは、針部11が挿入位置(図3参照)でセンサ100aを留置した後にハウジング4内に戻る途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図7B図7Dは、いずれも、図7Aと同じ断面視の図である。
【0062】
図7Aに示すように、針部11が待機位置(図1参照)にある状態では、医療器具100としてのセンサ100aは、その一部が側壁部15と接着固定されている。具体的には、センサ100aと側壁部15とは、検出部100bよりも基端側に位置する接着領域Dにおいて接着固定されている。これにより、センサ100aが細径であっても、センサ100aの検出部100bが、針部11のU字形状の針部スリット20aから飛び出すことなく保持される。
【0063】
図1図3に示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動する。更に、図1図3に示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3の長手方向Aの相対的な位置関係も変動する。つまり、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動し、かつ、移動部材3が針部材2に対して挿入方向A1に近づくように相対的にも移動する。そのため、図7Bに示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、移動部材3の移動部21は、針部材2の針部11に対して、挿入方向A1に移動する。このとき、移動部21の刃先21eが接着領域Dの基端側に接触することで、接着領域Dの基端側において、接着領域を切断する。さらに、移動部21の刃先21eが挿入方向A1に移動することで、接着領域Dがその基端側からその先端側に向かって切断される。これにより、センサ100aは側壁部15から分離される。このように、図7Bは、センサ100aと側壁部15との接着状態が、移動部21により破壊されて、センサ100aが側壁部15から分離された状態を示している。
【0064】
センサ100aと側壁部15との接着が切断された後、移動部材3は、針部材2に対して更に挿入方向A1に近づくように相対的に移動し、挿入位置(図3参照)において、図7Cに示すような位置関係となる。
【0065】
そして、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば図1と同じ待機位置)に戻っていくと、図7Dに示すように、センサ100aが生体内に留置されたまま、針部11が移動部21と共に生体外に抜去される。
【0066】
本実施形態の挿入装置1では、医療器具100が生体内の所定の深さに達した状態で、医療器具100と側壁部15との接着状態が解除される。そのため、医療器具100を生体内の所定の深さに留置させやすくなる。
【0067】
(第2実施形態)
図8は、上述した挿入装置1とは別の第2実施形態としての挿入装置における、針部材2の針部11、移動部材3の移動部21、及び、センサ100aを示す斜視図である。第2実施形態に係る構成について、第1実施形態と同様の点については適宜説明を省略しながら、説明する。例えば、第2実施形態において、医療器具100としてのセンサ100aの構成は第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明については省略する。
【0068】
本実施形態の挿入装置の概略構成は、第1実施形態の挿入装置1と同様である。従って、本実施形態の挿入装置を第1実施形態の挿入装置1と区別しない場合は単に「挿入装置1」と記載し、図1図7を適宜参照する。第2実施形態では、針部11の形状が、第1実施形態と異なる。図9は、図8に示す針部11、移動部21、及び、医療器具100の、長手方向Aと直交するII-II断面図である。図10Aは、図8のIII-III断面図であり、図1に示す挿入装置1の針部11が待機位置にある状態での、針部11、移動部21及び医療器具100を示す図である。
【0069】
本実施形態において、針部11は、壁部16により、長手方向Aに沿って延在する管形状に形成されている。針部11の先端側には、医療器具100が離脱可能な幅を有する開口部(スリット)24が設けられている。本実施形態では、壁部16は、外周面の一部に医療器具100の一部を載置する載置面を有する。具体的には、本実施形態では、図9に示すように、長手方向Aと直交する断面視において、壁部16の外周面が概略三日月形状に構成されており、壁部16において窪んだ面が載置面17を構成している。
【0070】
本実施形態では、図8に示すように、針部11の先端側には、載置面17が設けられていない。図10Aに示すように、載置面17が設けられていない先端側において、センサ100aの一部が、針部11に固定されている。具体的には、載置面17が設けられていない先端側の壁部16の内周面において、センサ100aの一部が固定されている。センサ100aの一部は、例えば接着剤により接着固定されている。本実施形態では、センサ100aの検出部100bよりも基端側の部分が、壁部16の内周面に接着固定されている。センサ100aと壁部16の内周面とが接着固定されている領域は、図10Aにおいて、接着領域Dとして示されている。
【0071】
載置面17には、センサ100aにおいて、針部11に接着されていない箇所の少なくとも一部が載置される。本実施形態では、センサ100aの接着領域Dよりも基端側の部分が、載置面17に載置される。針部11が載置面17を有することによりセンサ100aは、安定して針部11に載置されやすくなる。針部11は、接着領域Dにおいて接着固定され、載置面17に載置されたセンサ100aと共に生体内に挿入される。
【0072】
壁部16は、管形状の針部11の内部に、移動部21を収容する移動部収容空間18を区画している。移動部21は、移動部収容空間18において摺動可能となっている。移動部収容空間18は、長手方向Aに沿って延在する。本実施形態では、図9に示すように、移動部収容空間18は、長手方向Aと直交する断面視において、概略三日月形状に構成されている。具体的には、壁部16は略一様な厚さで形成されており、移動部収容空間18は、壁部16の外周面と同様の形状に構成されている。
【0073】
図8及び図10Aに示すように、壁部16の先端には、刃面16bにより刃先16aが形成されている。本実施形態の壁部16では、壁部16のうち載置面17を形成する箇所に対向する箇所(図9及び図10Aにおける下側の箇所。以下、「下壁部」と記載する。)の先端に刃先が形成されている。本実施形態の壁部16は、先端面が長手方向Aに対して傾斜する1の刃面を備える構成であるが、刃先形状は特に限定されない。
【0074】
本実施形態では、センサ100aの検出部100bよりも基端側の部分が、壁部16に接着固定されている。これにより、センサ100aは、針部11と共に生体内に挿入される。そのため、センサ100aを生体内の所望の深さに挿入することができる。
【0075】
針部11の材料としては、第1実施形態と同様に、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。また、第1実施形態と同様に、針部11の基端側は、保持部12により保持されている。針部11は、プレス加工により製造できる。
【0076】
移動部21は、針部11の挿入方向A1において、医療器具収容空間13内を針部11に対して相対的に移動可能である。また、移動部21は、針部11に対して挿入方向A1に移動することにより、医療器具100と針部11との接着領域Dを切断する。具体的には、移動部21の先端が接着領域Dの基端側に接触することで、接着領域Dの基端側において、接着を破壊する。さらに、移動部21の刃先21eが挿入方向A1に移動することで、接着領域Dの基端側から先端側に向かって、医療器具100を側壁部15から剥離する。これにより、医療器具100と針部11との接着状態が解除され、医療器具100が針部11から分離される。本実施形態の移動部21は、針部11に対して挿入方向A1に移動して、移動部21の先端を構成する刃先21eが、接着領域Dに接触する。この状態から、移動部21が更に挿入方向A1に移動すると、接着領域Dが挿入方向A1に向かって切断され、医療器具100が針部11から剥離される。
【0077】
図8及び図10Aに示すように、本実施形態の移動部21は、移動部収容空間18において、長手方向Aに沿って延在する部材として構成されている。具体的には、本実施形態では、図9に示すように、断面が移動部収容空間18の形状に合わせて、湾曲した板形状に構成されている。
【0078】
移動部21の先端には刃先21eが形成されている。より具体的には、本実施形態の移動部21は、長手方向Aに対して傾斜する1の刃面を備える構成であるが、刃先形状は特に限定されない。移動部21が針部11に対して挿入方向A1に移動すると、刃先21eが接着領域Dに接触し、さらに、移動部21が、医療器具100(センサ100a)と、針部11との間に侵入することで、接着領域Dを破壊する。これによりセンサ100aと針部11とが剥離される。
【0079】
移動部21の材料としては、第1実施形態と同様に、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、マグネシウム合金等の金属材料を用いることができる。また、第1実施形態と同様に、移動部21の抜去方向A2の端部は、本体部22により保持されている。移動部21は、塑性加工により製造できる。例えば、所定の内径を有する引き抜き管の切削加工や、金属平板をプレス加工により製造できる。
【0080】
次に、本実施形態における、挿入装置1を用いて医療器具100としてのセンサ100aを生体内に挿入及び留置する際の針部11、移動部21及びセンサ100aの動作の詳細について説明する。図10Aは、図8のIII-III断面図であり、針部11が待機位置(図1参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図10Bは、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図10Cは、針部11が挿入位置(図3参照)にある状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図10Dは、針部11が挿入位置(図3参照)でセンサ100aを留置した後にハウジング4内に戻る途中の状態での、針部11、移動部21及びセンサ100aを示す図である。図10B図10Dは、いずれも、図10Aと同じ断面視の図である。
【0081】
図10Aに示すように、針部11が待機位置にある状態では、医療器具100としてのセンサ100aは、その一部が壁部16の内周面と接着固定されている。具体的には、センサ100aと壁部16とは、検出部100bよりも基端側の接着領域Dにおいて接着固定されている。接着剤や接着固定方法は、第1実施形態と同様である。
【0082】
図1図3に示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動する。更に、図1図3に示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3の長手方向Aの相対的な位置関係も変動する。つまり、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、針部材2及び移動部材3はいずれも挿入方向A1に移動し、かつ、移動部材3が針部材2に対して挿入方向A1に近づくように相対的にも移動する。そのため、図10Bに示すように、針部11が待機位置(図1参照)から挿入位置(図3参照)に移動する途中で、移動部材3の移動部21は、針部材2の針部11に対して、挿入方向A1に移動する。このとき、移動部21の刃先21eが接着領域Dに接触し、センサ100aと壁部16との接着が、移動部21の刃先21eにより解除される。図10Bは、センサ100aと壁部16との接着が、移動部21により解除された状態を示している。
【0083】
センサ100aと壁部16との接着が解除された後、移動部材3は、針部材2に対して更に挿入方向A1に近づくように相対的に移動し、挿入位置(図3参照)において、図10Cに示すような位置関係となる。
【0084】
そして、付勢部材5としてのコイルバネの復元力により、針部11は挿入位置(図3参照)から再びハウジング4内に収容される位置(例えば図1と同じ待機位置)に戻っていくと、図10Dに示すように、センサ100aが生体内に留置されたまま、針部11が移動部21と共に生体外に抜去される。
【0085】
以上のように、本実施形態の挿入装置1では、医療器具100が生体内の所定の深さに達した状態で、医療器具100と側壁部15との接着状態が解除される。そのため、医療器具100を生体内の所定の深さに留置させやすくなる。
【0086】
上述した第1実施形態及び第2実施形態に係る挿入装置1は、更なる他の構成を備えていてもよい。例えば、第1実施形態及び第2実施形態に係る挿入装置1は、針部11及び移動部21の長手方向A以外の相対的な移動を規制する規制機構を備えていてもよい。ここで、規制機構について説明する。
【0087】
図11は、図7AのIV-IV断面図である。図11に示すように、第1実施形態に係る挿入装置1に規制機構を適用する場合、例えば、針部11の内面に、医療器具収容空間13に向かって突出するリブ44が設けられる。より具体的には、針部11の側壁部15における第3側板部15cの内面に、医療器具収容空間13に向かって突出し、長手方向Aに延在するリブ44が形成される。移動部21の外面には、長手方向Aに延在する受け溝25が形成されている。より具体的には、移動部21の第3溝壁部21cの外面に、長手方向Aに延在する受け溝25が形成されている。リブ44は、移動部21における受け溝25と嵌合し、受け溝25と共に規制機構80を構成する。リブ44は針部11の長手方向Aの少なくとも一部に設ければよい。
【0088】
図12は、図10AのV-V断面図である。図12に示すように、第2実施形態に係る挿入装置1に規制機構を適用する場合、例えば、針部11を構成する壁部16の内周面に、移動部収容空間18に向かって突出するリブ44が設けられる。具体的には、壁部16の下壁部の内周面側に、移動部収容空間18に向かって突出し、長手方向Aに延在するリブ44が形成される。移動部21は、壁部16の下壁部と接触する底面側に、長手方向Aに延在する受け溝25を有する。リブ44は、移動部21における受け溝25と嵌合し、受け溝25と共に規制機構80を構成する。リブ44は針部11の長手方向Aの少なくとも一部に設ければよい。
【0089】
なお、規制機構80は、ここで示した例に限られず、針部11及び移動部21の長手方向A以外の相対的な移動を規制する構成であれば、具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0090】
本開示に係る挿入装置は、上述した実施形態に示す具体的な構成・工程に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は挿入装置に関する。
【符号の説明】
【0092】
1:挿入装置
2:針部材
3:移動部材
4:ハウジング
5:付勢部材
6:制御装置
11:針部
12:保持部
13:医療器具収容空間
15:側壁部
15a:第1側板部
15b:第2側板部
15c:第3側板部
16:壁部
17:載置面
18:移動部収容空間
16a、19a、21e:刃先
19b、21f:刃面
20a:針部スリット
20b:移動部スリット
21:移動部
21a:第1溝壁部
21b:第2溝壁部
21c:第3溝壁部
22:本体部
23:溝空間
24:開口部
25:受け溝
44:リブ
51:本体部
51a:保持開口
52:係止爪部
53:延在部
54:係合凸部
54a:上面
61:係合部
62:係合凹部
71:筒状部材
72:ベースプレート
72a:当接面
74:貫通孔
80:規制機構
100:医療器具
100a:センサ
100b:検出部
100e:端部
A:針部の長手方向
A1:挿入方向
A2:抜去方向
B:針部の径方向
BS:生体表面
D:接着領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12