(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ミオシン15プロモーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240930BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240930BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240930BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
A61K48/00
A61K38/17
A61P43/00 105
A61P25/02
A61P27/16
(21)【出願番号】P 2021546388
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020017292
(87)【国際公開番号】W WO2020163761
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520299511
【氏名又は名称】デシベル セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECIBEL THERAPEUTICS,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エリス、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ、アダム
(72)【発明者】
【氏名】シュワンダー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ホイットン、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】サビン、レア
(72)【発明者】
【氏名】キラツォス、クリストス
(72)【発明者】
【氏名】ドラモンド サミュエルソン、メーガン
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511806(JP,A)
【文献】国際公開第2017/100791(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055908(US,A1)
【文献】特表2018-536420(JP,A)
【文献】LIANG Yong et al.,Genomics,1999年12月01日,Vol. 61, Issue 3,pp. 243-258,DOI: 10.1006/geno.1999.5976
【文献】CABERLOTTO, Elisa et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011年04月05日,Vol. 108, No. 14,pp. 5825-5830,DOI: 10.1073/pnas.1017114108
【文献】REHMAN, Atteeq U. et al.,Human Mutation,2016年10月,Vol. 37, Issue 10,pp. 991-1003,DOI: 10.1002/humu.23042
【文献】BOEDA, Batiste et al.,Human Molecular Genetics,2001年07月15日,Vol. 10, No. 15,pp. 1581-1589,DOI: 10.1093/hmg/10.15.1581
【文献】MA, Deng-Bin et al.,Molecular Medical Reports,2014年01月17日,Vol. 9, Issue 4,pp. 1185-1190,DOI: 10.3892/mmr.2014.1953
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
A61K 35/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号15、配列番号16、配列番号32、配列番号33、または配列番号34の配列に対して少なくとも
95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号15、配列番号16、配列番号32、配列番号33、または配列番号34の配列を有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号17またはそ
の部分に対して少なくとも
95%の配列同一性を有する第1の領域
であって、配列番号17の前記部分が配列番号19の配列を含む、第1の領域と、
前記第1の領域が作動可能に連結された
、配列番号18またはそ
の部分に対して少なくとも
95%の配列同一性を有する第2の領域
であって、配列番号18の前記部分が、配列番号20の配列、配列番号21の配列、または配列番号20および21の両方の配列を含む、第2の領域と
を含み
、
前記第1の領域
が、前記第2の領域に直接融合しているか、または、1~400個のヌクレオチドを含むリンカーを
介して前記第2の領域に接合している、ポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号25または配列番号26の配列を有する、請求項
3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸ベクター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、導入遺伝子に作動可能に連結されている、請求項
5に記載の核酸ベクター。
【請求項7】
前記導入遺伝子が、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項
6に記載の核酸ベクター。
【請求項8】
前記治療用タンパク質が、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NTF3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPからなる群から選択される、請求項
7に記載の核酸ベクター。
【請求項9】
哺乳動物有毛細胞における治療用タンパク質の発現を増加させる方法に使用するための
組成物であって、請求項
7または
8に記載の核酸ベクターを含む
、組成物。
【請求項10】
難聴を有するか、または発症するリスクがある対象の治療に使用するための
組成物であって、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
【請求項11】
前庭機能障害を有するか、または発症するリスクがある対象の治療に使用するための
組成物であって、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
【請求項12】
有毛細胞再生の促進を必要とする対象においてそれを行う方法に使用するための
組成物であって、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
【請求項13】
耳鳴りを有する対象の治療に使用するための
組成物であって、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。該ASCIIコピーは、2020年2月7日に作成され、51471-002WO4_Sequence_Listing_2.7.20_ST25という名前で26,901バイトのサイズである。
【0002】
本明細書に記載されるのは、ミオシン15(Myo15)プロモーターの領域、ならびにそれらを含むベクターを含有するポリヌクレオチドであり、これを使用して、有毛細胞(例えば、内有毛細胞及び外有毛細胞などの蝸牛有毛細胞、及び/または前庭有毛細胞)における導入遺伝子の発現を促進することができる。また、本発明のポリヌクレオチド及びベクターを使用して、難聴及び/または前庭機能障害の治療のために、有毛細胞における導入遺伝子の発現を達成する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
難聴は、学齢期の子供の15%近く及び65歳までの3人に1人に影響を及ぼすと推定される主要な公衆衛生上の問題である。難聴の最も一般的なタイプは、感音性難聴であり、これは、蝸牛有毛細胞などの内耳の細胞、または内耳から脳に突出する神経経路の欠損によって引き起こされる難聴の一種である。感音性難聴は、多くの場合、後天性であり、音響外傷、疾患または感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、及び加齢を含む、様々な原因を有する。内耳の発達及び機能に関与する遺伝子における変異など、感音性難聴の遺伝的原因もある。常染色体劣性、常染色体優性、及びX連鎖性パターンで遺伝する変異を含む、90を超えるそのような遺伝子における変異が同定されている。
【0004】
遺伝子変異、疾患または感染症、耳毒性薬物、頭部外傷、及び加齢などの、蝸牛有毛細胞の発達、生存、または完全性を妨げる因子は、同様に前庭有毛細胞に影響を及ぼす可能性があり、したがって、回転性めまい、めまい、及び平衡異常を含む前庭機能障害にも関与する。実際、有毛細胞の発達または機能を妨げる変異を有する患者は、難聴及び前庭機能障害の両方、またはいずれかの障害のみを呈し得る。
【0005】
近年、難聴を治療するための努力は、可能な解決策として遺伝子療法にますます焦点を当てているが、難聴及び前庭機能障害に頻繁に関与する有毛細胞を特異的に標的とするアプローチはほとんど残っていない。感音性難聴または前庭機能障害の治療のための有毛細胞を標的とする新しい治療法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、特定の細胞型において、有毛細胞の機能または生存を促進または改善する遺伝子などの、目的の遺伝子の発現を促進するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載される組成物及び方法は、内耳の有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び前庭有毛細胞)における導入遺伝子の転写を刺激するポリヌクレオチドに関する。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、治療用導入遺伝子に作動可能に連結されてよく、難聴(例えば、感音性難聴)及び/または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、めまい、もしくは平衡異常)を治療または予防するために患者に投与されてよい。
【0007】
第1の態様では、本発明は、配列番号1、または配列番号3及び/または配列番号4の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号2、または配列番号8及び/または配列番号9の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、任意に、第1の領域と第2の領域との間に1~100個のヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、もしくは20~100個のヌクレオチド)を含むリンカーを含有する、ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13の配列を含むか、またはそれからなる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号15の配列を含むか、またはそれからなる。
【0012】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16の配列を含むか、またはそれからなる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号30の配列を含むか、またはそれからなる。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号31の配列を含むか、またはそれからなる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号36の配列を含むか、またはそれからなる。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37の配列を含むか、またはそれからなる。
【0017】
別の態様では、本発明は、配列番号2、または配列番号8及び/または配列番号9の配列を含むその機能部分または誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号1、または配列番号3及び/または配列番号4の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、任意に、第1の領域と第2の領域との間に1~100個のヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、もしくは20~100個のヌクレオチド)を含むリンカーを含有する、ポリヌクレオチドを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号14の配列を含むか、またはそれからなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号35の配列を含むか、またはそれからなる。
【0022】
別の態様では、本発明は、配列番号1、または配列番号3及び/または配列番号4の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、領域は、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる。
【0024】
別の態様では、本発明は、配列番号2、または配列番号8及び/または配列番号9の配列を含むその機能部分もしくは誘導体、に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、領域は、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる。
【0026】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号3の配列を含有する。
【0027】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号4の配列を含有する。
【0028】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含有する。
【0029】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号5の配列を含有する。
【0030】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号6の配列を含有する。
【0031】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号7の配列を含有する。
【0032】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の機能部分は、配列番号27の配列を含有する。
【0033】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号8の配列を含有する。
【0034】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号9の配列を含有する。
【0035】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含有する。
【0036】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号28の配列を含有する。
【0037】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号29の配列を含有する。
【0038】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号10の配列を含有する。
【0039】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号11の配列を含有する。
【0040】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号12の配列を含有する。
【0041】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能部分は、配列番号32の配列を含有する。
【0042】
別の態様では、本発明は、配列番号17、または配列番号19の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号18、または配列番号20及び/または配列番号21の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、任意に、第1の領域と第2の領域との間に1~400個のヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、1~100、1~125、1~150、1~175、1~200、1~225、1~250、1~275、1~300、1~325、1~350、1~375、1~400、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、20~100、30~100、40~100、50~100、50~150、50~200、50~250、50~300、50~350、50~400、100~150、100~200、100~250、100~300、100~350、100~400、150~200、150~250、150~300、150~350、150~400、200~250、200~300、200~350、200~400、250~300、250~350、250~400、300~400、もしくは350~400個のヌクレオチド)を含むリンカーを含有する、ポリヌクレオチドを提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号25の配列を含むか、またはそれからなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号26の配列を含むか、またはそれからなる。
【0047】
別の態様では、本発明は、配列番号18、または配列番号20及び/または配列番号21の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域と、それに結合する(例えば、作動可能に連結する)配列番号17、または配列番号19の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含み、任意に、第1の領域と第2の領域との間に1~400個のヌクレオチド(例えば、1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、1~35、1~40、1~45、1~50、1~60、1~70、1~80、1~90、1~100、1~125、1~150、1~175、1~200、1~225、1~250、1~275、1~300、1~325、1~350、1~375、1~400、10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、20~30、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、20~100、30~100、40~100、50~100、50~150、50~200、50~250、50~300、50~350、50~400、100~150、100~200、100~250、100~300、100~350、100~400、150~200、150~250、150~300、150~350、150~400、200~250、200~300、200~350、200~400、250~300、250~350、250~400、300~400、もしくは350~400個のヌクレオチド)を含むリンカーを含有する、ポリヌクレオチドを提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる。
【0050】
別の態様では、本発明は、配列番号17、または配列番号19の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、領域は、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる。
【0052】
別の態様では、本発明は、配列番号18、または配列番号20及び/または配列番号21の配列を含むその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、領域は、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる。
【0054】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号17の機能部分は、配列番号19の配列を含有する。
【0055】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号20の配列を含有する。
【0056】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号21の配列を含有する。
【0057】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号20の配列及び配列番号21の配列を含有する。
【0058】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号22の配列を含有する。
【0059】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号23の配列を含有する。
【0060】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号18の機能部分は、配列番号24の配列を含有する。
【0061】
別の態様では、本発明は、配列番号27~35のうちのいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号32の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号33の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号34の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28の配列を含むか、またはそれからなる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号32の配列を含むか、またはそれからなる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号33の配列を含むか、またはそれからなる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号34の配列を含むか、またはそれからなる。
【0070】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、導入遺伝子に作動可能に連結され、有毛細胞に導入されるときに、導入遺伝子発現を誘導する。
【0071】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有する核酸ベクターを提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、導入遺伝子に作動可能に連結されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳動物有毛細胞における核酸配列からの治療用タンパク質の有毛細胞特異的発現を指示することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0076】
いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。
【0077】
いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。
【0078】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0079】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NTF3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPを含む群から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、プラスミド、コスミド、人工染色体、またはウイルスベクターである。
【0081】
いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである。
【0082】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。
【0083】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含む群から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV1である。
【0085】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV9である。
【0086】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV6である。
【0087】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、Anc80である。
【0088】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、Anc80L65である。
【0089】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、DJ/9である。
【0090】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、7m8である。
【0091】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV2である。
【0092】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV2quad(Y-F)である。
【0093】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、PHP.Bである。
【0094】
いくつかの実施形態では、AAVベクターの血清型は、AAV8である。
【0095】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸ベクターを含有する組成物を提供する。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0097】
別の態様では、本発明は、哺乳動物有毛細胞を本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物と接触させることによって、哺乳動物有毛細胞における治療用タンパク質の発現を増加させる方法を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質の発現は、有毛細胞において特異的に増加する。
【0099】
いくつかの実施形態では、哺乳動物有毛細胞は、ヒト有毛細胞である。
【0100】
いくつかの実施形態では、哺乳動物有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0101】
いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。
【0102】
いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。
【0103】
いくつかの実施形態では、哺乳動物有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0104】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質の発現は、有毛細胞ではない内耳細胞において実質的に増加しない。
【0105】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、難聴(例えば、感音性難聴)を有するか、または発症するリスクがある対象を治療する方法を提供する。
【0106】
いくつかの実施形態では、難聴は、遺伝性難聴である。
【0107】
いくつかの実施形態では、遺伝性難聴は、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である。
【0108】
いくつかの実施形態では、難聴は、後天性難聴である。
【0109】
いくつかの実施形態では、後天性難聴は、騒音誘発性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連難聴、頭部外傷関連難聴、または耳毒性薬物誘発性難聴である。
【0110】
いくつかの実施形態では、後天性難聴は、加齢性難聴である。
【0111】
いくつかの実施形態では、難聴は、騒音誘発性難聴である。
【0112】
いくつかの実施形態では、難聴は、耳毒性薬物誘発性難聴である。
【0113】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、前庭機能障害を有するか、または発症するリスクがある対象を治療する方法を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態では、前庭機能障害は、回転性めまい、めまい、または平衡異常(例えば、平衡障害)である。
【0115】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、有毛細胞再生の促進を必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0117】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0118】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、耳毒性薬物誘発性有毛細胞損傷または死を予防または低減する方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態では、耳毒性薬物は、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤)、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩(例えば、特に高用量のアスピリン)、及びキニーネを含む群から選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0121】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0122】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、耳鳴りを有する対象を治療する方法を提供する。
【0123】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、難聴、前庭機能障害、または耳鳴りは、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)の喪失と関連付けられる。
【0124】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、有毛細胞の損傷または死の予防または低減を必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0126】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0127】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を対象に投与することによって、有毛細胞の生存を増加させることを必要とする対象においてそれを行う方法を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0129】
いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0130】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。
【0131】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。
【0132】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。
【0133】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、哺乳動物有毛細胞は、前庭有毛細胞である。
【0134】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の聴力を評価する(例えば、聴力検査、聴覚脳幹応答(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、または耳音響放射などの標準試験を使用して聴力を評価する)ステップをさらに含む。
【0135】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与した後の対象の聴力を評価する(例えば、聴力検査、ABR、ECOG、または耳音響放射などの標準試験を使用して聴力を評価する)ステップをさらに含む。
【0136】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の前庭機能を評価する(例えば、電気眼振図(ENG)もしくはビデオ眼振図(VNG)、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、または専門的な臨床平衡試験などの標準試験を使用して前庭機能を評価する)ステップをさらに含む。
【0137】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、核酸ベクターまたは組成物を投与する前に対象の前庭機能を評価する(例えば、ENGもしくはVNG、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、VEMP、または専門的な臨床平衡試験などの標準試験を使用して前庭機能を評価する)ステップをさらに含む。
【0138】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターまたは組成物は、局所的に投与される(例えば、前庭窓、蝸牛窓、または水平半規管などを通じて、内耳に、例えば、外リンパまたは内リンパに投与される)。
【0139】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターまたは組成物は、難聴を予防もしくは低減する、前庭機能障害を予防もしくは低減する、耳鳴りを予防もしくは低減する、難聴の発症を遅延させる、前庭機能障害の発症を遅延させる、難聴の進行を遅くする、前庭機能障害の進行を遅くする、聴力を改善する、前庭機能を改善する、有毛細胞の機能を改善する、有毛細胞の損傷を予防もしくは低減する、有毛細胞の死を予防もしくは低減する、または有毛細胞数を増加させるのに十分な量で投与される。
【0140】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0141】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸ベクターまたは本発明の組成物を含有するキットを提供する。
【0142】
定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載されている値の10%を上回るか、または下回る値を指す。
【0143】
本明細書で使用される場合、「投与」は、任意の有効な経路によって、対象に治療剤(例えば、導入遺伝子に作動可能に連結されたミオシン15(Myo15)プロモーターを含有する核酸ベクター)を提供するか、または与えることを指す。例示的な投与経路は、本明細書で以下に記載される。
【0144】
本明細書で使用される場合、「細胞型」という用語は、遺伝子発現データに基づいて統計的に分離可能である表現型を共有する細胞群を指す。例えば、共通の細胞型の細胞は、類似した遺伝子活性化パターン及び抗原提示プロファイルなどの類似した構造特性及び/または機能特性を共有し得る。共通の細胞型の細胞は、共通の組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、もしくは筋肉組織)から単離されるもの、及び/または生物における共通の器官、組織系、血管、または他の構造及び/または領域から単離されるものを含み得る。
【0145】
本明細書で使用される場合、「蝸牛有毛細胞」という用語は、音を感知することに関与する内耳内の特殊化した細胞の群を指す。蝸牛有毛細胞には、内有毛細胞及び外有毛細胞の2種類がある。蝸牛有毛細胞の損傷及び蝸牛有毛細胞の機能を妨げる遺伝子変異は、難聴及び聴覚喪失に関与する。
【0146】
本明細書で使用される場合、「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」という用語は、1つ以上のアミノ酸を、極性、静電荷、及び立体体積などの類似の物理化学的特性を示す1つ以上の異なるアミノ酸に置換することを指す。これらの特性は、以下の表1において20個の天然に存在するアミノ酸の各々について要約されている。
【表1】
【0147】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーは、(i)G、A、V、L及びI、(ii)D及びE、(iii)C、S及びT、(iv)H、K及びR、(v)N及びQ、ならびに(vi)F、Y及びWを含むことが理解される。したがって、保存的変異または置換は、1つのアミノ酸を同じアミノ酸ファミリーのメンバーに置換するものである(例えば、SerをThrにまたはLysをArgに置換)。
【0148】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載される組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「有効量」、「治療有効量」、及び「十分な量」という用語は、哺乳動物、例えばヒトを含むそれを必要とする対象に投与されると、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって、「有効量」またはその同義語は、それが適用される文脈に依存する。例えば、感音性難聴または前庭機能障害を治療する文脈において、組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの投与なしに得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの量である。そのような量に対応する本明細書に記載される所与の組成物の量は、所与の薬剤、薬学的製剤、投与経路、疾患または障害の種類、治療されている対象または宿主の識別(例えば、年齢、性別、体重)などの様々な要因に応じて変化するが、それでも当業者によって日常的に決定され得る。また、本明細書で使用される場合、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「治療有効量」は、対照と比較して、対象において有益なまたは所望の結果をもたらす量である。活性成分の組み合わせが投与される場合、有効量の組み合わせは、個別に投与された場合に有効であった各成分の量を含んでも含んでいなくてもよいことに留意されたい。本明細書で定義されるように、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの治療有効量は、当業者によって、当該技術分野で既知の通常の方法によって容易に決定され得る。投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。
【0149】
本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の位置(例えば、器官、組織、またはヒト細胞などの細胞、例えば、ヒト有毛細胞)に天然に見出される分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補助因子)を説明する。
【0150】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNAテンプレートの(例えば、転写による)産生、(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる)、(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0151】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の位置(例えば、器官、組織、またはヒト細胞などの細胞、例えば、ヒト有毛細胞)に天然に見出されない分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補助因子)を説明する。外因性物質には、外来源から生物にまたはそこから抽出された培養物質に提供されるものが含まれる。
【0152】
本明細書で使用される場合、「有毛細胞特異的発現」という用語は、内耳の他の細胞型(例えば、らせん神経節ニューロン、グリア、もしくは他の内耳細胞型)と比較して、主に有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)内でのRNA転写物またはポリペプチドの産生を指す。導入遺伝子の有毛細胞特異的発現は、任意の標準技法(例えば、定量的RT PCR、免疫組織化学、ウエスタンブロット分析、またはプロモーターに作動可能に連結されたレポーター(例えば、GFP)の蛍光の測定)を使用して、内耳の様々な細胞型の間(例えば、有毛細胞と非有毛細胞)の導入遺伝子発現(例えば、RNAまたはタンパク質発現)を比較することによって確認することができる。有毛細胞特異的プロモーターは、以下の内耳細胞型のうちの少なくとも3つ(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)と比較して、有毛細胞において、少なくとも50%超(例えば、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%超またはそれ以上)である、それが作動可能に連結されている導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質発現)を誘発する:境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンセン細胞、クラウジウス細胞、内側溝細胞、外側溝細胞、らせん状突出細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の辺縁細胞、らせん神経節ニューロン、シュワン細胞。
【0153】
本明細書で使用される場合、「増加する」及び「減少する」という用語は、それぞれ、基準に対するメトリックの機能、発現、または活性の量の増加または減少をもたらす調節を指す。例えば、本明細書に記載される方法で組成物を投与した後、本明細書に記載されるメトリック(例えば、導入遺伝子発現)のマーカーの量は、投与前のマーカーの量と比べて、対象において、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは98%、またはそれ以上増加または減少し得る。一般に、メトリックは、投与が列挙された効果を有した時点、例えば、治療レジメンが開始された後少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月後に投与後に測定される。
【0154】
本明細書で使用される場合、「イントロン」という用語は、そのヌクレオチド配列が対応するタンパク質のアミノ酸配列に翻訳されない、遺伝子のコード領域内の領域を指す。イントロンという用語はまた、遺伝子から転写されたRNAの対応する領域を指す。イントロンは、pre-mRNAに転写されるが、プロセシング中に除去され、成熟mRNAには含まれない。
【0155】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、ポリヌクレオチドの2つの異なる領域を接続する一連のヌクレオチドを指す。リンカーは、それが接続するポリヌクレオチドの2つの領域の機能を妨げない。
【0156】
本明細書で使用される場合、「局所的」または「局所投与」は、全身効果ではなく、局所効果を意図した身体の特定の部位での投与を意味する。局所投与の例は、上皮、吸入、関節内、くも膜下腔内、膣内、硝子体内、子宮内、病変部内投与、リンパ節投与、腫瘍内投与、内耳への投与、及び対象の粘膜への投与であり、投与は、全身効果ではなく局所効果を有することが意図される。
【0157】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、第2の分子に接合され得る第1の分子を指し、この分子は、第1の分子が第2の分子の機能に影響を及ぼすように配置されている。「作動可能に連結された」という用語は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが、他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼされる機能を媒介し得る可能性を可能にする、2つ以上の構成要素(例えば、プロモーター及び別の配列エレメント)の並置を含む。2つの分子は、単一の連続した分子の一部である場合もそうでない場合もあり、隣接している場合もそうでない場合もある。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、プロモーターは、転写可能なポリヌクレオチド分子に作動可能に連結される。
【0158】
さらなる実施形態では、転写調節エレメントの2つの部分は、一方の部分の転写活性化機能が他方の部分の存在によって悪影響を受けないように接合される場合、互いに作動可能に連結される。2つの転写調節エレメントは、リンカー核酸(例えば、介在する非コード核酸)を介して互いに作動可能に連結されてもよく、または介在するヌクレオチドが存在しない状態で互いに作動可能に連結されてもよい。
【0159】
本明細書で使用される場合、「プラスミド」という用語は、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る染色体外の環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドは、ベクターの一種であり、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ある特定のプラスミドは、それらが導入された宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌プラスミド及びエピソーム哺乳動物プラスミド)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。ある特定のプラスミドは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。
【0160】
本明細書で使用される場合、本明細書で同義的に使用される「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオシドのポリマー形態を指す。典型的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって接合されたDNAまたはRNA中に天然に見出されるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)から構成される。この用語は、天然に存在する核酸に見出されるか否かに関わらず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格等を含有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む分子を包含し、そのような分子は、ある特定の用途に好ましい場合がある。本出願がポリヌクレオチドを指す場合、DNA、RNAの両方、及び各場合において、一本鎖形態及び二本鎖形態の両方(ならびに各一本鎖分子の相補鎖)が提供されることが理解される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料自体、及び/または特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指すことができる。本明細書に提示されるポリヌクレオチド配列は、別途示されない限り、5’から3’の方向に提示される。
【0161】
本明細書で使用される場合、核酸の「相補性」または「相補的」という用語は、核酸の一方の鎖におけるヌクレオチド配列が、その核酸塩基基の配向に起因して、対向する核酸鎖上の別の配列と水素結合を形成することを意味する。DNA中の相補的塩基は、典型的には、AとT及びCとGである。RNA中では、典型的には、CとG及びUとAである。相補性は、完璧であり得るか、または実質的/十分であり得る。2つの核酸間の完璧な相補性は、2つの核酸が、二本鎖内の全ての塩基が、ワトソン・クリック対合によって相補的塩基に結合した二本鎖を形成することができることを意味する。「実質的な」または「十分な」相補性とは、1つの鎖における配列が、対向する鎖における配列に対して完全に及び/または完璧に相補的ではないが、ハイブリダイゼーション条件(例えば、塩濃度及び温度)の設定において安定なハイブリッド複合体を形成するために、2つの鎖上の塩基間で十分な結合が生じることを意味する。そのような条件は、ハイブリダイゼーションされた鎖のTm(融解温度)を予測するための配列及び標準的な数学的計算を使用することによって、またはルーチン方法を使用することによるTmの経験的決定によって予測することができる。Tmは、2つの核酸鎖の間に形成されるハイブリダイゼーション複合体の集団が50%変性される温度を含む(すなわち、二本鎖核酸分子の集団が、一本鎖に半分解離されるようになる)。Tmを下回る温度では、ハイブリダイゼーション複合体の形成が好ましいが、Tmを上回る温度では、ハイブリダイゼーション複合体中の鎖の融解または分離が好ましい。Tmは、例えば、Tm=81.5+0.41(%G+C)を使用することによって、1M NaCl水溶液中に既知のG+C含有量を有する核酸について推定され得るが、他の既知のTm計算は、核酸構造特性を考慮に入れる。
【0162】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼによって結合されるDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは、導入遺伝子の転写を駆動する。
【0163】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関しての「配列同一性パーセント(%)」は、最大配列同一性パーセントを達成するように配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列における核酸またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの一般に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の能力の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。例示として、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する配列同一性パーセント(あるいは、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対してある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aとして表現することができる)は、以下のように計算され、
100×(分数X/Y)
式中、Xは、A及びBのそのプログラムのアラインメントにおける配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一の一致としてスコア付けられたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bにおける核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、A対Bの配列同一性パーセントは、B対Aの配列同一性パーセントに等しくないことが理解されるであろう。
【0164】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、対応する全長野生型核酸、ペプチド、もしくはタンパク質と比較して、1つ以上の変異及び/または化学修飾を含む核酸、ペプチド、もしくはタンパク質、またはそのバリアントもしくは類似体を指す。核酸を伴う化学修飾の非限定的な例としては、例えば、塩基部分、糖部分、リン酸部分、リン酸-糖骨格、またはそれらの組み合わせに対する修飾が挙げられる。
【0165】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、対象に影響を及ぼしているか、または及ぼし得る特定の疾患または病態を予防、治療、または制御するために、哺乳動物などの対象、例えばヒトに投与される治療剤、任意に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/または担体と組み合わせて含有する混合物を指す。
【0166】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、妥当な利益/リスク比に見合った過度の毒性、刺激、アレルギー応答及び他の問題の合併症を伴うことなく、哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象の組織との接触に好適である化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。好ましくは、「薬学的に許容される」という用語は、連邦または州政府の規制機関によって承認されるか、または米国薬局方または哺乳動物、より具体的にはヒトで使用するための他の一般に認められた薬局方に記載されることを意味する。
【0167】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象から単離された標本(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛試料、及び細胞)を指す。
【0168】
本明細書で使用される場合、「転写調節エレメント」という用語は、目的の遺伝子の転写を少なくとも部分的に制御する核酸を指す。転写調節エレメントには、プロモーター、エンハンサー、及び遺伝子転写を制御する、または制御するのに役立つ他の核酸(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれ得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Lorence,Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Humana Press,New York,NY,2012)に記載されている。
【0169】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、原核生物または真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多種多様な技法のうちのいずれか、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、ヌクレオフェクション、圧搾穿孔、ソノポレーション、光学的トランスフェクション、マグネトフェクション、インパレフェクション(impalefection)等を指す。
【0170】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)、獣医動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ等)及び疾患の実験動物モデル(例えば、マウス、ラット)を指す。本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、難聴(例えば、感音性難聴)または前庭機能障害(例えば、めまい、回転性めまい、または平衡異常)と診断された対象、またはこれらの病態を発症するリスクがある対象であり得る。診断は、当該技術分野で知られている任意の方法または技法によって行われ得る。当業者は、本開示に従って治療される対象が、標準試験に供されたか、または検査なしに、疾患もしくは病態と関連付けられた1つ以上の危険因子の存在に起因して1つの危険因子として同定された可能性があることを理解するであろう。
【0171】
本明細書で使用される場合、「形質導入(transduction)」及び「形質導入する(transduce)」という用語は、ベクター構築物またはその一部を細胞に導入する方法を指す。ベクター構築物が、例えば、AAVベクターなどのウイルスベクターに含有される場合、形質導入は、細胞のウイルス感染、ならびにその後のベクター構築物またはその一部の細胞ゲノムへの移行及び組み込みを指す。
【0172】
本明細書で使用される場合、状態、障害、または病態の「治療(treatment)」及び「治療(treating)」は、以下を含み得る:(1)状態、障害、もしくは病態に罹患し得る、またはその素因があり得るが、まだ状態、障害、もしくは病態の臨床的または亜臨床的症状を経験または示していない対象において発症する状態、障害、もしくは病態の少なくとも1つの臨床的または亜臨床的症状の発生率及び/または出現可能性を予防、遅延、または低減すること、あるいは(2)状態、障害、もしくは病態を阻害すること、すなわち、疾患もしくはその再発、またはその少なくとも1つの臨床的もしくは亜臨床的症状の発症を阻止、低減、もしくは遅延すること、あるいは(3)疾患を軽減すること、すなわち、状態、障害、もしくは病態、またはその臨床的もしくは亜臨床的症状のうちの少なくとも1つの退行を引き起こすこと。治療される対象に対する利益は、患者または医師にとって統計的に有意であるか、または少なくとも知覚可能である。
【0173】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、または人工染色体などのDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または任意の他の好適なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)を含む。外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するための種々のベクターが開発されている。そのような発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley&Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載される組成物及び方法との使用に好適な発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、ならびに例えば、タンパク質の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳動物細胞のゲノムへの組み込みに使用される追加の配列エレメントを含有する。本明細書に記載される導入遺伝子の発現に使用され得るある特定のベクターは、遺伝子転写を指示するプロモーター及びエンハンサー領域などの調節配列を含有するベクターを含む。導入遺伝子の発現のための他の有用なベクターは、導入遺伝子の翻訳速度を高めるか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核輸出を改善するポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列エレメントは、例えば、発現ベクター上で担持される遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域ならびにポリアデニル化シグナル部位を含む。本明細書に記載される組成物及び方法との使用に好適な発現ベクターは、そのようなベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有してもよい。好適なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノルセオスリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0174】
本明細書で使用される場合、「前庭有毛細胞」という用語は、動きの感知に関与し、平衡感覚及び空間識に寄与する内耳内の特殊化した細胞の群を指す。前庭有毛細胞は、内耳の半規管及び耳石に位置している。前庭有毛細胞の損傷及び前庭有毛細胞の機能を妨げる遺伝子変異は、回転性めまい及び平衡異常障害などの前庭機能障害に関与する。
【0175】
本明細書で使用される場合、「野生型」という用語は、所与の生物における特定の遺伝子の最も高い頻度を有する遺伝子型を指す。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【
図1】サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下でGFPを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(A)またはマウスMyo15プロモーターの制御下でGFPを発現するAAVベクター(配列番号13、B)のいずれかで形質導入されたマウス蝸牛の一連の蛍光画像。AAV-Myo15-GFPウイルスを後部半規管を介して6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに注入した。手術から回復したマウスを安楽死させ、10日後に10%の正常な緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%のEDTAで3日間脱石灰化した。脱石灰化した側頭骨から蝸牛を切り離し、共焦点イメージングのためにスライドに載置した。ユビキタスプロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは、内有毛細胞、外有毛細胞、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型においてGFP発現を誘導した(A)。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、内有毛細胞及び外有毛細胞においてのみ発現を誘導した(B)。
【
図2】マウスMyo15プロモーター(配列番号13、
図2)の制御下で、GFPを発現するAAVベクターで形質導入されたマウス前庭系の領域(卵形嚢、球形嚢、後稜(PC)、前稜(AC)、及び水平稜(HC))の蛍光画像。AAV-Myo15-GFPウイルスを後部半規管を介して6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに注入した。手術から回復したマウスを安楽死させ、10日後に10%の正常な緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%のEDTAで3日間脱石灰化した。前庭器官を脱石灰化した側頭骨から切り離し、イメージングのためにスライドに載置した。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、前庭有毛細胞においてのみ発現を誘導した(
図2)。
【
図3】マウスMyo15 1kbプロモーター(配列番号15、A)またはMyo15ミニイントロンプロモーター(配列番号16、B)の制御下にある、GFPを発現するAAV2/9ウイルスベクターで形質導入されたマウス蝸牛の一連の蛍光画像。A~Bに示されるように、マウスMyo15 1kb(配列番号15)及びマウスMyo15ミニイントロン(配列番号16)の両方のプロモーターは、有毛細胞において特異的にGFPの発現を誘導した。
【
図4A】マウス及びヒトMyo15プロモーターの特異性を示すマウス蝸牛の一連の画像。0.6kbのヒトMyo15プロモーター(配列番号26、
図4A)、1.2kbのヒトMyo15プロモーター(配列番号25、
図4B)、または1kbのマウスMyo15プロモーター(配列番号15、
図4C)(スケールバー=100μm)のいずれかの制御下で、GFPをコードするAAV1ベクターを含む培養物中で、新生仔マウスの蝸牛外植片を処理した。抗GFP抗体で検出した場合のGFPシグナルを示す。別の実験では、AAV1-1.2kbのヒトMyo15-GFPまたはAAV1-1kbのマウスMyo15-GFPを、蝸牛窓注射によって成体マウスの蝸牛に送達した。全マウント画像(
図4D~4E)または切片(
図4F~4G)は、抗GFP抗体で検出されるように、蝸牛の頂端、中間、及び基部における有毛細胞特異的シグナルを示す。
図4Fの矢印は、GFP標識された蝸牛有毛細胞を指す。
図4F及び4Gに示されるように、1.2kbのヒトMyo15プロモーター及び1kbのマウスMyo15プロモーターの両方での発現は、主に内有毛細胞に制限された。
【
図5A】Myo15プロモーターが、GFPの発現を、非ヒト霊長類の蝸牛内の有毛細胞に制限することを示す、非ヒト霊長類蝸牛の一連の蛍光画像。
図5Aは、蝸牛窓膜を通してAAV1-CMV-GFPの局所注射を受けた非ヒト霊長類からの蝸牛の共焦点画像である。注射の28日後に組織を採取した。天然GFP蛍光が示される。GFP発現は、器官全体にわたる広範囲の細胞型において検出された。
図5Bは、AAV1-Myo15(配列番号13)-GFPを注射し、
図5Aの蝸牛と同じ方法で処理した、非ヒト霊長類からの蝸牛の共焦点画像である。GFP発現は、有毛細胞に制限された。
図5Cは、
図5Bに示されるボックス領域における有毛細胞の拡大図である。
【
図6】1.6kbのMyo15プロモーター(配列番号13)が、ユビキタスCMVプロモーターと比較して、Tmc1ノックアウト(KO)マウスにおけるAAVマウスTMC1ベクターの生物学的有効性を高めたことを示すグラフ。Tmc1 KOマウスを出生後2日目(P2)に注射し、聴覚脳幹応答(ABR)を指示された年齢で評価した。ABR閾値を、ナイーブホモ接合(白抜きの円を伴う薄灰色の線)及びヘテロ接合(黒色の円を通る暗灰色の線)Tmc1 KOマウス、ならびにAAV-CMVマウスTMC1(CMV_mTmc1;白抜きの円を伴う暗灰色の線)またはAAV-Myo15(配列番号13)マウスTMC1(PdBx_mTmc1;P23、薄灰色の円を通る薄灰色の線;P28、塗りつぶした円を伴う暗灰色の線)を注射したホモ接合Tmc1 KOマウスの刺激頻度の関数としてプロットした。AAV-CMVマウスTMC1と比較して、AAV-Myo15マウスTMC1を注射したホモ接合型Tmc1 KOマウスでは、ABR閾値の復元が大幅に改善された。
【
図7A】1.2kbのヒトミオシン15プロモーター(配列番号25)の制御下で、GFPを発現するAAV1ベクターで処置したカニクイザルの内耳の一連の蛍光画像。両側(n=1匹の動物)注射を使用して、30μLのAAV1-1.2kbミオシン15-GFP(1.06×10
13ゲノムコピー/mLでのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の蝸牛窓に投与した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。GFP発現を使用して、ミオシン15プロモーター活性を監視した(
図7A、代表的な耳のうちの1つを示す)。カニクイザルの内耳のAAV1-1.2kbミオシン15-GFP形質導入は、基部において高周波で、及び頂端において低周波で、蝸牛の基部-頂端軸全体にわたるGFP発現をもたらした(
図7A、kHzでの周波数)。2.8kHzでの高倍率画像は、GFP発現が内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)内で観察されたことを示した(
図7B、上パネル)。Myo7Aの免疫組織化学を使用して、有毛細胞を可視化し、核をDAPIで染色した(
図7B、中央及び下パネル)。
【
図8A】0.6kbのヒトミオシン15プロモーター(配列番号26)の制御下で、GFPを発現するAAV1ベクターで処置したカニクイザルの内耳の一連の蛍光画像。両側(n=1匹の動物)注射を使用して、30μLのAAV1-0.6kbミオシン15-GFP(1.22×10
13ゲノムコピー/mLでのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の蝸牛窓に投与した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。GFP発現を使用して、ミオシン15プロモーター活性を監視した(
図8A、代表的な耳のうちの1つを示す)。カニクイザルの内耳のAAV1-0.6kbミオシン15-GFP形質導入は、基部において高周波で、及び頂端において低周波で、蝸牛の基部-頂端軸全体にわたるGFP発現をもたらした(
図8A、kHzでの周波数)。2.8kHzでの高倍率画像は、GFP発現が内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)内で観察されたことを示した(
図8B、上パネル)。Myo7Aの免疫組織化学を使用して、有毛細胞を可視化し、核をDAPIで染色した(
図8B、中央及び下パネル)。
【
図9】定量的PCR(qPCR)を使用した有毛細胞特異的発現を有する3つの異なるマウスMyo15(mMyo15)プロモーターからのGFP発現の定量化を示す棒グラフ。転写レベルを、有毛細胞特異的遺伝子Myo7aに対して正規化した。mMyo15 1.6kb(配列番号13)、1kb(配列番号15)、及び0.5kb(配列番号16)のプロモーターからのGFPレポーターの発現レベルは、互いに同等であり、堅牢であった。
【
図10】切断されたキメラCMV-ニワトリβアクチン(smCBA)プロモーター、1.6kb mMyo15プロモーター(配列番号13)、1kb mMyo15プロモーター(配列番号15)、0.5kb mMyo15プロモーター(配列番号16)、1.2kb hMyo15プロモーター(配列番号25)、及び0.6kb hMyo15プロモーター(配列番号26)を含む、様々な異なるプロモーターによって駆動されるミオシン7a(Myo7a)陽性有毛細胞におけるGFP蛍光の定量的画像解析の結果を示すグラフ。細胞あたりのGFPタンパク質の発現レベルは、Myo15プロモーター間の発現の差異を示し、mMyo15 1kbプロモーターは、細胞あたりのGFPタンパク質の最も高いレベルをもたらす。
【
図11A】配列番号16及び27~35のMyo15プロモーターバリアントを含有するウイルスベクターに感染した新生仔蝸牛外植片培養物の一連の全マウント蛍光画像。配列番号27のプロモーター配列(Myo15 A)は、
図11B(配列番号27)、11E(配列番号30)、11F(配列番号31)、及び11G(配列番号32)に示されるよう
に、一般的なプロモーター活性または有毛細胞特異性には十分ではなく、また必要でもなかった。配列番号27のプロモーター配列は、
図11A(配列番号16)及び11H(配列番号33)に示されるように、スプライスアクセプター部位と対合したときに発現レベルを増加させるスプライスドナー部位を提供し、したがって、イントロンをプロモーター配列に導入した。配列番号28のプロモーター配列(Myo15 B)は単独で、
図11C(配列番号28)に示されるように、一般的なプロモーター活性を付与するコアプロモーターであることが見出されたが、
図11C(配列番号29)及び11G(配列番号32)に示されるように、配列番号29のプロモーター配列(Myo15 C)の不在下で、有毛細胞特異的GFP発現を駆動しなかった。配列番号29のプロモーター配列(Myo15 C)は、
図11G(配列番号32)に示されるように、コアプロモーター(配列番号28)の
活性を内有毛細胞及び外有毛細胞
に制限するエンハンサーであることが見出されたが、
図11D(配列番号29)に示されるように、コアプロモーターの不在下での一般的なプロモーター活性には十分ではなかった。配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のプロモーター配列を様々な組み合わせに並べ替えても、依然として
図11H(配列番号33)及び11I(配列番号34)に示されるような有毛細胞特異的プロモーター活性をもたらしたが、
図11J(配列番号35)に示されるように全ての再配置が許容されたわけではなかった。
【
図12】qPCRによって測定された、有毛細胞特異的発現を有するプロモーターバリアントからのGFP発現の定量化を示す棒グラフ。転写レベルを、有毛細胞特異的遺伝子Myo7aに対して正規化した。Myo15 0.5kb(配列番号16)、Myo15 B-C(配列番号32)、及びMyo15 B-A-C(配列番号33)プロモーターからのGFPレポーターの発現レベルは、互いに同等であり、堅牢であった。Myo15 C-A-Bプロモーター(配列番号34)は、スプライスドナー部位及びアクセプター部位の位置を再配置することによって生成され、転写物の3’末端と転写物の5’末端または中央に位置するGFPプローブで検出されるより高い発現レベルによって証明されるように、GFP cDNAの中央への暗号的スプライシングをもたらした。
【
図13A】Myo7a陽性有毛細胞におけるGFP発現レベルの定量的画像解析を示す一連のグラフ。細胞あたりのGFPタンパク質の発現レベルは、0.5kbのmMyo15プロモーター(Myo15 A-B-Cプロモーターとも称される;配列番号16)、Myo15 A-Bプロモーター(配列番号30)、Myo15 A-Cプロモーター(配列番号31)、Myo15 B-Cプロモーター(配列番号32)、Myo15 Aプロモーター(配列番号27)、Myo15 Bプロモーター(配列番号28)、Myo15 Cプロモーター(配列番号29)、Myo15 B-A-Cプロモーター(配列番号33)、Myo15 C-A-Bプロモーター(配列番号34)、及びMyo15 B-C-Aプロモーター(配列番号35)を含む、Myo15プロモーター(
図13A~13B)の間で発現の差異を示した。Myo15 A-B-Cプロモーター(配列番号16)は、細胞あたりのGFPの発現が最も高かった(
図13A)。蛍光のバックグラウンドレベルを、組織の自己蛍光に基づいてデータセットごとに決定した(
図13Aについては2000単位未満、
図13Bについては6000単位未満)。
【発明を実施するための形態】
【0177】
本明細書に記載されるのは、導入遺伝子の発現を有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において特異的に誘導するための組成物及び方法である。本発明は、蝸牛有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるミオシン15(Myo15)プロモーターの領域を含有するポリヌクレオチドを特徴とする。本発明はまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、これらのプロモーターを含有する核酸ベクターを特徴とする。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、有毛細胞タンパク質を蝸牛有毛細胞及び前庭有毛細胞において特異的にコードするポリヌクレオチドを発現させることができ、したがって、本明細書に記載される組成物は、難聴または前庭機能障害などの有毛細胞の機能障害によって引き起こされる障害を治療するために対象(哺乳動物対象など、例えば、ヒト)に投与することができる。
【0178】
有毛細胞
有毛細胞は、内耳に存在する聴覚系及び前庭系の感覚細胞である。蝸牛有毛細胞は、聴覚系の感覚細胞であり、音を感知する役割を担う内有毛細胞、及び低レベルの音を増幅すると考えられる外有毛細胞の2つの主要な細胞タイプで構成されている。前庭有毛細胞は、内耳の半規管及び耳石器官に位置し、平衡感覚及び空間識に寄与する運動感覚に関与する。有毛細胞は、細胞の頂端面から突出し、有毛細胞束を形成する不動毛に因んで名付けられている。不動毛の偏向(例えば、蝸牛有毛細胞における音波によるもの、または前庭有毛細胞における回転もしくは線形加速によるもの)は、機械的にゲーティングされたイオンチャネルの開口をもたらし、これにより、有毛細胞が神経を活性化するために神経伝達物質を放出することを可能にし、それによって機械的な音または運動シグナルを脳に伝達することができる電気シグナルに変換する。蝸牛有毛細胞は正常な聴覚に不可欠であり、蝸牛有毛細胞の損傷及び蝸牛有毛細胞の機能を妨げる遺伝子変異は、難聴及び聴覚喪失に関与する。前庭有毛細胞の損傷及び前庭有毛細胞の機能を妨げる遺伝子変異は、平衡感覚の喪失及び回転性めまい(例えば、めまい)などの前庭機能障害に関与する。遺伝子療法は、難聴及び前庭機能障害を治療するための魅力的な治療的アプローチとして最近出現しているが、この分野では、有毛細胞に対する遺伝子療法で使用される核酸ベクターを特異的に標的とするための方法が欠如している。
【0179】
ミオシン15
Myo15は、不動毛の発達を調節する非伝統的なアクチン系分子モーターである。Myo15における変異を有するマウスは、短い不動毛、深刻な難聴及び前庭機能障害を有することが見出され、ヒトオルソログ、Myo15Aにおける変異は、非症候群性常染色体劣性難聴、DFNB3を引き起こす。Myo15は、不動毛に局在することが観察されており、不動毛の発達及び維持に不可欠である。局在化のパターンは、Myo15が有毛細胞において特異的に発現され得ることを示す。しかしながら、Myo15プロモーターは以前に単離されておらず、特徴付けられていない。発明者らは、プロモーターの調節エレメントを構成し得るオルソロガスなゲノム配列において進化的に保存されたブロックを同定し、それらが翻訳開始部位の上流に7200を超える塩基対(bp)に位置することを見出した。このゲノム領域は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと併せて使用するには大きすぎて、4.7kbの最大パッケージング容量を有する遺伝子療法のための目的の導入遺伝子を送達することができない。
【0180】
本発明は、部分的には、Myo15翻訳開始部位の上流の領域の発見に基づいており、これを使用して、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において特異的に導入遺伝子の発現を促進することができる。したがって、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、難聴(例えば、感音性難聴)及び/または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、めまい、もしくは平衡感覚の喪失)を有するか、または発症するリスクがある対象を治療するために、有毛細胞において目的の遺伝子(例えば、有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、もしくは維持に関与する遺伝子、または難聴もしくは前庭機能障害を有する対象において破壊される、例えば変異することが知られている遺伝子)を発現させることができる。
【0181】
マウスミオシン15プロモーター
本明細書に記載される組成物及び方法のポリヌクレオチドは、有毛細胞内で特異的に導入遺伝子を発現することができるマウスMyo15遺伝子座の領域からの核酸配列、または有毛細胞内で特異的に導入遺伝子を発現することができるマウスMyo15遺伝子座の領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列などのそのバリアントを含む。これらの領域は、マウスMyo15翻訳開始部位の直前の核酸配列、及びマウスMyo15翻訳開始部位から5kbにわたって位置する上流調節エレメントを含む。本明細書に記載される組成物及び方法のポリヌクレオチドは、任意に、有毛細胞内で特異的に導入遺伝子を発現することができるマウスMyo15遺伝子座の領域を作動可能に連結するリンカーを含み得るか、またはマウスMyo15遺伝子座の領域は、介在するリンカーなしで直接連結され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、マウスMyo15の翻訳開始部位の直前の核酸配列(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-1~-1157の核酸、この配列は配列番号2に示される)またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域に接合された(例えば、作動可能に連結された)、Myo15遺伝子の第1の非コードエクソンを含有する領域(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-6755~-7209の核酸、この配列は配列番号1に示される)またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域(上流調節エレメント)を含有する。配列番号1の機能部分は、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-7166~-7091の核酸配列(配列番号3に示される)及び/またはマウスMyo15翻訳開始部位に関して-7077~-6983の核酸配列(配列番号4に示される)を有し得る。第1の領域は、配列番号5に示されるように、介在核酸がない配列番号4の核酸配列に融合した配列番号3の核酸配列を含有し得るか、または第1の領域は、配列番号6に示されるように、介在核酸がない配列番号3の核酸配列に融合した配列番号4の核酸配列を含有し得る。あるいは、第1の領域は、内在性介在核酸配列(例えば、第1の領域は、配列番号7及び配列番号27に示されるように、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-7166~-6983の核酸配列を有し得るか、もしくは含み得る)または核酸リンカーによって接合された、配列番号3及び配列番号4の配列を含有し得る。
【0183】
第1の領域が配列番号3及び配列番号4の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号3が配列番号4に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号4が配列番号3に接合され得る(例えば、先行する))。配列番号2の機能部分は、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-590~-509の核酸配列(配列番号8に示される)及び/またはマウスMyo15翻訳開始部位に関して-266~-161の核酸配列(配列番号9に示される)を有し得る。いくつかの実施形態では、配列番号8を含有する配列は、配列番号28の配列を有する。いくつかの実施形態では、配列番号9を含有する配列は、配列番号29の配列を有する。第2の領域は、配列番号10に示されるように、介在核酸がない配列番号9の核酸配列に融合した配列番号8の核酸配列を含有し得るか、または第2の領域は、配列番号11に示されるように、介在核酸がない配列番号8の核酸配列に融合した配列番号9の核酸配列を含有し得る。第2の領域は、配列番号32に示されるように、介在核酸がない配列番号29の核酸配列に融合した配列番号28の核酸配列を含有し得るか、または第2の領域は、介在核酸がない配列番号28の核酸配列に融合した配列番号29の核酸配列を含有し得る。あるいは、第2の領域は、内在性介在核酸配列(例えば、第2の領域は、配列番号12に示されるように、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-590~-161の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって接合された、配列番号8及び配列番号9の配列を含有し得る。
【0184】
第2の領域が配列番号8及び配列番号9の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号8が配列番号9に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号9が配列番号8に接合され得る(例えば、先行する))。
【0185】
ポリヌクレオチドの第1の領域及び第2の領域は、直接接合され得るか、または核酸リンカーによって接合され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、配列番号2の配列または介在核酸のないその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12、28、29、及び32のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に融合した配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)を含有し得る。例えば、配列番号2への配列番号1の直接融合により生じるポリヌクレオチドの核酸配列は、配列番号13に示される。あるいは、リンカーを使用して、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)を配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12、28、29、及び32のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に接合することができる。配列番号1及び配列番号2の両方の機能部分を含有する例示的なポリヌクレオチドは、配列番号15、16、30、及び31に提供される。
【0186】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドで使用するための核酸リンカーの長さは、約5kb以下(例えば、約5kb、4.5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、900bp、800bp、700bp、600bp、500bp、450bp、400bp、350bp、300bp、250bp、200bp、150bp、100bp、90bp、80bp、70bp、60bp、50bp、40bp、30bp、25bp、20bp、15bp、10bp、5bp、4bp、3bp、2bp、またはそれ以下)であり得る。本明細書に記載されるポリヌクレオチドにおいて使用され得る核酸リンカーは、本発明のポリヌクレオチドが有毛細胞において導入遺伝子発現を誘導する能力を妨げない。
【0187】
いくつかの実施形態では、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)は、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12、28、29、及び32のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に接合され(例えば、作動可能に連結され)、いくつかの実施形態では、領域の順序が逆になる(例えば、配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12、28、29、及び32のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)は、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)に接合される(例えば、作動可能に連結される)。例えば、配列番号1への配列番号2の直接融合により生じるポリヌクレオチドの核酸配列は、配列番号14に示される。配列番号2の機能部分または誘導体が配列番号1の機能部分または誘導体に先行するポリヌクレオチドの例は、配列番号35に提供される。順序に関わらず、配列番号1の配列またはその機能部分もしくは誘導体、及び配列番号2の配列またはその機能部分もしくは誘導体は、上述のように、直接融合または核酸リンカーによって接合され得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、Myo15遺伝子の第1の非コードエクソン(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-6755~-7209の核酸、この配列は、配列番号1に示される)またはその機能部分もしくは誘導体を含有する領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含有する。配列番号1の機能部分は、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-7166~-7091の核酸配列(配列番号3に示される)及び/またはMyo15翻訳開始部位に関して-7077~-6983の核酸配列(配列番号4に示される)を有し得る。ポリヌクレオチドは、配列番号5に示されるように、介在核酸がない配列番号4の核酸配列に融合した配列番号3の核酸配列を含有し得るか、またはポリヌクレオチドは、配列番号6に示されるように、介在核酸がない配列番号3の核酸配列に融合した配列番号4の核酸配列を含有し得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、内在性介在核酸配列(例えば、第1の領域は、配列番号7及び配列番号27に示されるように、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-7166~-6983の核酸配列を有し得るか、もしくは含み得る)または核酸リンカーによって接合された、配列番号3及び配列番号4の配列を含有し得る。
【0189】
配列番号3及び配列番号4の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号3が配列番号4に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号4が配列番号3に接合され得る(例えば、先行する))。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、マウスMyo15翻訳開始部位のすぐ上流の核酸配列(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-1~-1157の核酸、この配列は、配列番号2に示される)またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含有する。配列番号2の機能部分は、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-590~-509の核酸配列(配列番号8に示される)及び/またはマウスMyo15翻訳開始部位に関して-266~-161の核酸配列(配列番号9に示される)を有し得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、配列番号8を含有する配列は、配列番号28の配列を有する。
【0192】
いくつかの実施形態では、配列番号9を含有する配列は、配列番号29の配列を有する。ポリヌクレオチドは、配列番号10に示されるように、介在核酸がない配列番号9の核酸配列に融合した配列番号8の核酸配列を含有し得るか、またはポリヌクレオチドは、配列番号11に示されるように、介在核酸がない配列番号8の核酸配列に融合した配列番号9の核酸配列を含有し得る。ポリヌクレオチドは、配列番号32に示されるように、介在核酸がない配列番号29の核酸配列に融合した配列番号28の核酸配列を含有し得るか、または第2の領域は、介在核酸がない配列番号28の核酸配列に融合した配列番号29の核酸配列を含有し得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、内在性介在核酸配列(例えば、第2の領域は、配列番号12に示されるように、マウスMyo15翻訳開始部位に関して-590~-161の核酸配列を有し得る)または核酸リンカーによって接合された、配列番号8及び配列番号9の配列を含有し得る。
【0193】
配列番号8及び配列番号9の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号8が配列番号9に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号9が配列番号8に接合され得る(例えば、先行する))。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、マウスMyo15の翻訳開始部位のすぐ上流の核酸配列(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-1~-1157の核酸、この配列は配列番号2に示される)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域の一部または誘導体といずれかの側で隣接した、Myo15遺伝子(マウスMyo15翻訳開始部位に関して-6755~-7209の核酸、この配列は配列番号1に示される)の第1の非コードエクソンを含有する領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する領域の部分または誘導体を含有する。例えば、配列番号2の機能部分または誘導体、例えば、配列番号8または28は、配列番号1の部分、例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つに直接融合または核酸リンカーによって接合されてよく、これは、配列番号2の異なる機能部分、例えば、配列番号9または29に直接融合または核酸リンカーによって接合される。
【0195】
他の実施形態では、配列番号2の機能部分または誘導体、例えば、配列番号9または29は、配列番号1の部分、例えば、配列番号3~7及び27のうちのいずれか1つに直接融合または核酸リンカーによって接合されてよく、これは、配列番号2の異なる機能部分、例えば、配列番号8または28に直接融合または核酸リンカーによって接合される。例えば、配列番号28、27、及び29の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを融合させて、配列番号33の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを産生することができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、配列番号29、27、及び28の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを融合させて、配列番号34の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを産生することができる。
【0197】
ヒトミオシン15プロモーター
本明細書に記載される組成物及び方法のポリヌクレオチドはまた、有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるマウスMyo15遺伝子座の領域からの核酸配列、または有毛細胞内で特異的に導入遺伝子を発現することができるヒトMyo15遺伝子座の領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列などのそのバリアントを含み得る。本明細書に記載される組成物及び方法のポリヌクレオチドは、任意に、有毛細胞において特異的に導入遺伝子を発現することができるヒトMyo15遺伝子座の領域を作動可能に連結するリンカーを含み得るか、またはヒトMyo15遺伝子座の領域は、介在するリンカーなしで直接接合され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、配列番号17に示される配列またはその機能部分または誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、それが結合された(例えば、作動可能に連結された)配列番号18に示される配列またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有する。配列番号17の機能部分は、配列番号19に示される配列を有し得る。配列番号18の機能部分は、配列番号20に示される配列及び/または配列番号21に示される配列を有し得る。第2の領域は、配列番号22に示されるように、介在核酸がない配列番号21の核酸配列に融合した配列番号20の核酸配列を含有し得るか、または第2の領域は、配列番号23に示されるように、介在核酸がない配列番号20の核酸配列に融合した配列番号21の核酸配列を含有し得る。あるいは、第2の領域は、内在性介在核酸配列(配列番号24に示されるような)または核酸リンカーによって接合された、配列番号20及び配列番号21の配列を含有し得る。
【0199】
第2の領域が配列番号20及び配列番号21の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号20が配列番号21に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号21が配列番号20に接合され得る(例えば、先行する))。
【0200】
ポリヌクレオチドの第1の領域及び第2の領域は、直接接合され得るか、または核酸リンカーによって接合され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、配列番号18の配列または介在核酸のないその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号20~24のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号20及び/または21)に融合された、配列番号17の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号19)を含有し得る。あるいは、リンカーを使用して、配列番号17の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号19)を配列番号18の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号20~24のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号20及び/または21)に接合することができる。配列番号17及び配列番号18の両方の機能部分を含有する例示的なポリヌクレオチドは、配列番号25及び26に提供される。
【0201】
いくつかの実施形態では、配列番号17の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号19)は、配列番号18の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号20~24のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号20及び21)に接合され(例えば、作動可能に連結され)、いくつかの実施形態では、領域の順序が逆になる(例えば、配列番号18の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号20~24のうちのいずれか1つ、例えば、配列番号20及び/または21)は、配列番号17の配列またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号19)に接合される(例えば、作動可能に連結される)。順序に関わらず、配列番号17の配列またはその機能部分もしくは誘導体、及び配列番号18の配列またはその機能部分もしくは誘導体は、上述のように、直接融合または核酸リンカーによって接合され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、配列番号17に示される配列またはその機能部分もしくは誘導体を含有する領域に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含有する。配列番号17の機能部分は、配列番号19に示される核酸配列を有し得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、配列番号18に示される配列またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含有する。配列番号18の機能部分は、配列番号20に示される配列及び/または配列番号21に示される配列を有し得る。ポリヌクレオチドは、配列番号22に示されるように、介在核酸がない配列番号21の核酸配列に融合した配列番号20の核酸配列を含有し得るか、またはポリヌクレオチドは、配列番号23に示されるように、介在核酸がない配列番号20の核酸配列に融合した配列番号21の核酸配列を含有し得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、内在性介在核酸配列(配列番号24に示されるような)または核酸リンカーによって接合された、配列番号20及び配列番号21の配列を含有し得る。
【0204】
配列番号20及び配列番号21の両方を含有するポリヌクレオチドにおいて、2つの配列は、任意の順序で含まれ得る(例えば、配列番号20が配列番号21に接合され得る(例えば、先行する)、または配列番号21が配列番号20に接合され得る(例えば、先行する))。
【0205】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドで使用するための核酸リンカーの長さは、約5kb以下(例えば、約5kb、4.5kb、4kb、3.5kb、3kb、2.5kb、2kb、1.5kb、1kb、900bp、800bp、700bp、600bp、500bp、450bp、400bp、350bp、300bp、250bp、200bp、150bp、100bp、90bp、80bp、70bp、60bp、50bp、40bp、30bp、25bp、20bp、15bp、10bp、5bp、4bp、3bp、2bp、またはそれ以下)であり得る。本明細書に記載されるポリヌクレオチドにおいて使用され得る核酸リンカーは、本発明のポリヌクレオチドが有毛細胞において導入遺伝子発現を誘導する能力を妨げない。
【0206】
前述の核酸配列を以下の表2に要約する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【0207】
本明細書に記載される組成物及び方法と併せて有用なさらなるポリヌクレオチドとしては、表2に示される核酸配列、ならびに表2に示される核酸配列の機能部分または誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸分子を含む。
【0208】
前述のポリヌクレオチドは、核酸ベクターに含まれ得、導入遺伝子に作動可能に連結されて、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において特異的に導入遺伝子を発現する。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、有毛細胞機能、有毛細胞発達、有毛細胞運命の特定、有毛細胞再生、有毛細胞生存、もしくは有毛細胞維持に関与するタンパク質をコードするか、あるいは導入遺伝子は、難聴、聴覚喪失、オーディトリーニューロパチー、耳鳴り、または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、めまい、もしくは平衡感覚の喪失)を有する対象において変異していることが見出された遺伝子の野生型バージョンである。本明細書に記載される方法によれば、対象は、難聴及び/または前庭機能障害の治療のための治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された前述のポリヌクレオチドのうちの1つ以上(例えば、表2に列挙されるポリヌクレオチドのうちの1つ以上)を含有する組成物を投与され得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、アクチンγ1(ACTG1)、ファスシンアクチン-バンドリングタンパク質2、レチナール(FSCN2)、ラジキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、タペリン(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(XIRP2)、Atonal BHLH転写因子1(ATOH1)、成長因子非依存型1転写リプレッサー(GFI1)、コリン作動性受容体ニコチンα9サブユニット(CHRNA9)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(KNCN)、ペイバキン(Pejvakin)(DFNB59)、オトフェルリン(OTOF)、MKRN2逆鎖(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通チャネル様1(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(GRXCR1)、タンパク質チロシンホスファターゼ、受容体型Q(PTPRQ)、後期角膜エンベロープ6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼホモロジードメイン含有タンパク質1(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPase血漿膜Ca2+輸送2(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、カルシウム電位依存性チャネル補助サブユニットα2δ4(CACNA2D4)、カルシウム結合タンパク質2(CABP2)、上皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、ステレオシリン(STRC)、溶質担体ファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、ジンクフィンガーCCHC型含有タンパク質12(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通及びO-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワークコンポーネントハーモニン(Harmonin)(USH1C)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、ジストロテリン(DYTN)、キエリン/コルジン様タンパク質(KCP)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、カリウム電位依存性チャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、ニューロトロフィン3(NTF3)、クラリン1(CLRN1)、クラリン2(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、溶質担体ファミリー17メンバー8(SLC17A8)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientらせんループらせん1(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ3(PERK)、セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、及び結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0210】
哺乳動物細胞における外因性核酸の発現
MYO7A、POU4F3、SLC17A8、及びTMC1などの種々の遺伝子における変異は、感音性難聴に関連付けられており、MYO7Aにおける変異などのこれらの変異のうちのいくつかは、前庭機能障害とも関連付けられている。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、目的のタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結されたMyo15プロモーターを含有する核酸ベクター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域を接合するリンカーを含有するポリヌクレオチド)を投与することによって、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)において特異的に、目的の遺伝子(例えば、難聴及び/または前庭機能障害に関与する遺伝子、あるいは有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、または維持に関与する遺伝子の野生型形態)によってコードされるタンパク質の発現を誘導または増加させることができる。哺乳動物細胞へのタンパク質の送達、及び哺乳動物細胞におけるタンパク質をコードする遺伝子の安定した発現のための幅広い方法が確立されている。
【0211】
本明細書に記載される組成物に関連して発現され得るタンパク質は(例えば、タンパク質をコードする導入遺伝子が、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されている場合)、健康な有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞、例えば、有毛細胞の発達、機能、再生、細胞運命の特定、生存、もしくは維持において役割を果たすタンパク質、または感音性難聴もしくは前庭機能障害を有する対象において不足しているタンパク質)または他の目的の治療用タンパク質において発現されるタンパク質である。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して有毛細胞中で発現させることができるタンパク質としては、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NTF3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPが挙げられる。
【0212】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
哺乳動物細胞において目的のタンパク質の治療的に有効な細胞内濃度を達成するために使用され得る1つのプラットフォームは、目的のタンパク質をコードする遺伝子の安定した発現によるものである(例えば、哺乳動物細胞の核もしくはミトコンドリアゲノムへの組み込みによるもの、または哺乳動物細胞の核におけるエピソームコンカテマー形成によるもの)。遺伝子は、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
【0213】
哺乳動物細胞に外因性遺伝子を導入するために、遺伝子をベクターに組み込むことができる。ベクターは、形質転換、トランスフェクション、形質導入、直接取込み、入射粒子衝撃、及びリポソーム中のベクターのカプセル化を含む様々な方法によって細胞に導入することができる。細胞をトランスフェクションまたは形質転換する好適な方法の例としては、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、感染、リポフェクション、及び直接取込みが挙げられる。そのような方法は、例えば、Green,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition(Cold Spring Harbor University Press,New York 2014)、及びAusubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons,New York 2015)においてより詳細に記載されており、これらの各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0214】
目的のタンパク質はまた、目的のタンパク質をコードする遺伝子を含有するベクターを細胞膜リン脂質に標的化することによって、哺乳動物細胞に導入することもできる。例えば、ベクターは、ベクター分子を、全ての細胞膜リン脂質に対する親和性を有するウイルスタンパク質であるVSV-Gタンパク質に連結することによって、細胞膜の細胞外表面上のリン脂質を標的とすることができる。そのような構築物は、当業者に周知の方法を使用して産生することができる。
【0215】
哺乳動物RNAポリメラーゼによる目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの認識及び結合は、遺伝子発現に重要である。したがって、RNAポリメラーゼを動員し、転写開始部位における転写複合体の組立てを促進する転写因子に対して高い親和性を示すポリヌクレオチド内の配列エレメントを含んでもよい。そのような配列エレメントには、例えば、哺乳動物プロモーターが含まれ、その配列は、特定の転写開始因子、及び最終的にはRNAポリメラーゼによって認識され、結合され得る。哺乳動物プロモーターの例は、Smith,et al.,Mol.Sys.Biol.,3:73,オンライン公開に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるプロモーターは、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチドである。
【0216】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが哺乳動物細胞の核DNAに組み込まれると、このポリヌクレオチドの転写を当該技術分野で既知の方法によって誘導することができる。例えば、哺乳動物細胞を、転写因子及び/またはRNAポリメラーゼの哺乳動物プロモーターへの結合を調節し、したがって遺伝子発現を調節する薬剤などの外部化学試薬に曝露することによって、発現を誘導することができる。化学試薬は、例えば、プロモーターに結合したリプレッサータンパク質を除去することによって、哺乳動物プロモーターへのRNAポリメラーゼ及び/または転写因子の結合を促進する役割を果たすことができる。あるいは、化学試薬は、プロモーターの下流に位置する遺伝子の転写速度が化学試薬の存在下で増加するように、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子に対する哺乳動物プロモーターの親和性を向上させる役割を果たすことができる。上記の機序によるポリヌクレオチド転写を強化する化学試薬の例としては、テトラサイクリン及びドキシサイクリンが挙げられる。これらの試薬は市販されており(Life Technologies,Carlsbad,CA)、確立されたプロトコルに従って遺伝子発現を促進するために哺乳動物細胞に投与することができる。
【0217】
本明細書に記載される組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドに含まれ得る他のDNA配列エレメントには、エンハンサー配列が含まれる。エンハンサーは、DNAが、転写開始部位における転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に好適な三次元配向を採用するように、目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドの立体構造変化を誘導する別のクラスの調節エレメントを表す。したがって、本明細書に記載される組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドは、目的のタンパク質をコードするものを含み、さらに哺乳動物エンハンサー配列を含む。現在、多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子から知られており、例としては、哺乳動物グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリンをコードする遺伝子からのエンハンサーが挙げられる。本明細書に記載される組成物及び方法で使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝物質に由来するものも含まれる。例としては、複製起点の後期側(bp100~270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物遺伝子転写の活性化を誘導するさらなるエンハンサー配列としては、CMVエンハンサー及びRSVエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターに、例えば、この遺伝子に対する5’または3’の位置でスプライシングされ得る。好ましい配向において、エンハンサーは、プロモーターの5’側に位置付けられ、次いで、プロモーターは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して5’に位置する。
【0218】
本明細書に記載されるMyo15プロモーターを含有する核酸ベクターは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含んでよい。WPREは、転写物の核輸出を促進することによって、及び/または初期転写物のポリアデニル化の効率を高め、したがって細胞内のmRNAの総量を増加させることによって、転写レベルで作用する。ベクターへのWPREの添加は、インビトロ及びインビボの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現のレベルの実質的な改善をもたらし得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMyo15プロモーターを含有する核酸ベクターには、例えば、細胞及び組織(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞などの有毛細胞)において、Myo15プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の発現を検証するのに有用であり得るレポーター配列が含まれる。導入遺伝子に提供され得るレポーター配列には、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野で周知の他のものをコードするDNA配列が含まれる。Myo15プロモーターなどの、発現を駆動する調節エレメントと関連付けられる場合、レポーター配列は、酵素、放射線、比色、蛍光、または他の分光学的アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む、従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを有するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。トランス遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを有するベクターは、ルミノメーターで色または光生成によって視覚的に測定することができる。
【0220】
標的細胞への外因性核酸の送達のための方法
導入遺伝子、例えば、本明細書に記載されるMyo15プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子を標的細胞(例えば、哺乳動物細胞)に導入するために使用することができる技法は、当該技術分野において周知である。例えば、エレクトロポレーションを使用して、目的の細胞に静電位を印加することにより、哺乳動物細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過させることができる。このようにして外部電場を受けるヒト細胞などの哺乳動物細胞は、その後、外因性核酸の取込みを受ける素因となる。哺乳動物細胞のエレクトロポレーションは、例えば、Chu et al.,Nucleic Acids Research 15:1311(1987)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。真核生物細胞の核への外因性ポリヌクレオチドの取込みを刺激するために、同様の技法であるNucleofection(商標)は、印加された電場を利用する。Nucleofection(商標)及びこの技法を実施するのに有用なプロトコルは、例えば、Distler et al.,Experimental Dermatology 14:315(2005)、ならびにUS2010/0317114に記載されており、各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
標的細胞のトランスフェクションに有用な追加の技法としては、圧搾-穿孔法が挙げられる。この技法は、印加された応力に応答して形成される膜孔を介した外因性DNAの取込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘導する。この技術は、ヒト標的細胞などの細胞内への核酸の送達にベクターが必要とされないという点で有利である。圧搾-穿孔は、例えば、Sharei et al.,Journal of Visualized Experiments 81:e50980(2013)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0222】
リポフェクションは、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技法を表す。この方法は、リポソームに核酸を装填することを伴い、リポソームは、多くの場合、リポソームの外側に向かって、第四級アミンまたはプロトン化アミンなどのカチオン性官能基を提示する。これは、細胞膜のアニオン性に起因するリポソームと細胞との間の静電相互作用を促進し、最終的には、例えば、リポソームと細胞膜との直接融合によって、または複合体のエンドサイトーシスによって、外因性核酸の取込みにつながる。リポフェクションは、例えば、米国特許第7,442,386号において詳細に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。細胞膜とのイオン相互作用を利用して外来核酸の取込みを誘発する同様の技法としては、細胞をカチオン性ポリマー-核酸複合体と接触させることが挙げられる。細胞膜との相互作用に有利な正電荷を付与するようにポリヌクレオチドと会合する例示的なカチオン性分子には、活性化デンドリマー(例えば、Dennig,Topics in Current Chemistry 228:227(2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、ポリエチレンイミン、及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランが含まれ、これらのトランスフェクション剤としての使用は、例えば、Gulick et al.,Current Protocols in Molecular Biology 40:I:9.2:9.2.1(1997)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。この方法論は、核酸の取込みを指示するために印加された磁場を利用するため、磁気ビーズは、穏やかで効率的な方法で標的細胞をトランスフェクションするために使用することができる別のツールである。この技術は、例えば、US2010/0227406において詳細に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0223】
標的細胞による外因性核酸の取込みを誘導するための別の有用なツールは、レーザーフェクションであり、光トランスフェクションとも呼ばれ、細胞を穏やかに透過させ、ポリヌクレオチドが細胞膜に侵入することを可能にするために、細胞を特定の波長の電磁放射線に曝露することを含む技法である。この技法の生物活性は、エレクトロポレーションに類似しており、場合によっては、エレクトロポレーションよりも優れていることが見出される。
【0224】
インパレフェクションは、遺伝物質を標的細胞に送達するために使用することができる別の技法である。これは、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びナノワイヤーなどのナノ物質の使用に依存する。針のようなナノ構造は、基材の表面に対して垂直に合成される。遺伝子を含有するDNAは、細胞内送達を意図しており、ナノ構造表面に結合している。次いで、これらの針のアレイを備えたチップを、細胞または組織に押し付ける。ナノ構造によって突き刺された細胞は、送達された遺伝子(複数可)を発現することができる。この技法の例は、Shalek et al.PNAS 107:1870(2010)において記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0225】
マグネトフェクションを使用して、核酸を標的細胞に送達することもできる。マグネトフェクションの原理は、核酸をカチオン性磁性ナノ粒子と会合させることである。磁性ナノ粒子は、完全に生分解可能な酸化鉄でできており、用途に応じて変化する特定のカチオン性固有分子でコーティングされている。それらの遺伝子ベクター(DNA、siRNA、ウイルスベクター等)との会合は、塩誘導性コロイド凝集及び静電相互作用によって達成される。次いで、磁石によって生成された外部磁場の影響によって、磁性粒子を標的細胞に集中させる。この技法は、Scherer et al.,Gene Therapy 9:102(2002)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0226】
標的細胞による外因性核酸の取込みを誘導するための別の有用なツールは、ソノポレーションであり、細胞形質膜の透過性を修正して細胞を透過させ、ポリヌクレオチドが細胞膜に浸透することを可能にするための音(典型的には超音波周波数)の使用を伴う技法である。この技法は、例えば、Rhodes et al.,Methods in Cell Biology 82:309(2007)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0227】
マイクロベシクルは、本明細書に記載される方法に従って標的細胞のゲノムを修飾するために使用することができる別の潜在的なビヒクルを表す。例えば、例えば、ヌクレアーゼなどのゲノム修飾タンパク質との糖タンパク質VSV-Gの同時過剰発現によって誘導されたマイクロベシクルを使用して、遺伝子または調節配列などの目的のポリヌクレオチドの共有結合的組み込みのために細胞のゲノムを調製するように、その後に内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を触媒する細胞にタンパク質を効率的に送達することができる。真核細胞の遺伝子組換えのための、ゲシクル(Gesicles)とも称されるそのようなベシクルの使用は、例えば、Quinn et al.,Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein[要約]において、 Methylation changes in early embryonic genes in cancer[要約]において、Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy;2015 May 13,Abstract No.122において詳細に記載されている。
【0228】
標的細胞への外因性核酸の送達のためのベクター
高い転写速度及び翻訳速度を達成することに加えて、哺乳動物細胞における外因性遺伝子の安定した発現は、遺伝子を含むポリヌクレオチドを哺乳動物細胞の核ゲノムに組み込むことによって達成することができる。哺乳動物細胞の核DNAへの外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達及び組み込みのための種々のベクターが開発されている。発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley&Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載される組成物及び方法で使用するための発現ベクターは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたMyo15プロモーター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチド)、ならびに例えばこれらの薬剤の発現及び/または哺乳動物細胞のゲノムへのこれらのポリヌクレオチド配列の組み込みに使用される追加の配列エレメントを含有する。目的のタンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたMyo15プロモーターを含有することができるベクターとしては、プラスミド(例えば、細胞内で自律的に複製することができる環状DNA分子)、コスミド(例えば、pWEもしくはsCosベクター)、人工染色体(例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来の人工染色体(PAC))、及びウイルスベクターが挙げられる。目的のタンパク質の発現に使用することができるある特定のベクターとしては、遺伝子転写を指示するエンハンサー領域などの調節配列を含有するプラスミドが挙げられる。目的のタンパク質の発現のための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高めるか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核輸出を改善するポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列エレメントには、例えば、発現ベクター上に担持される遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)、ならびにポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載される組成物及び方法との使用に好適な発現ベクターは、そのようなベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有してもよい。好適なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノルセオスリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0229】
核酸送達のためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、目的の遺伝子を標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)のゲノムに効率的に送達するために使用することができるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含有されるポリヌクレオチドが、一般化または特殊化した形質導入によって哺乳動物細胞の核ゲノムに典型的に組み込まれるため、遺伝子送達に特に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然ウイルス複製サイクルの一部として生じ、遺伝子組み込みを誘導するために、追加のタンパク質または試薬を必要としない。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、レトロウイルスファミリーウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、はしか及びセンダイ)などの陰性鎖RNAウイルス、ピコルナウイルス及びαウイルスなどの陽性鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン・バールウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニア、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ヒト泡状ウイルス、及び肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、鳥類白血病-肉腫、鳥類C型ウイルス、哺乳動物C型ウイルス、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、αレトロウイルス、γレトロウイルス、スプマウイルスが挙げられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology,Third Edition(Lippincott-Raven,Philadelphia,1996))。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、鳥類白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内因性ウイルス、ギボン猿白血病ウイルス、メイソン・ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その開示は、遺伝子療法に使用するためのウイルスベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0230】
核酸送達のためのAAVベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法のポリヌクレオチドは、それらの細胞内への導入を促進するために、rAAVベクター及び/またはビリオンに組み込まれる。本明細書に記載される組成物及び方法に有用なrAAVベクターは、(1)本明細書に記載されるMyo15プロモーター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチド)、(2)発現する異種配列、ならびに(3)異種遺伝子の安定性及び発現を促進するウイル配列を含む、組換え核酸構築物である。ウイルス配列は、ビリオンへのDNAの複製及びパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含んでよい。
【0231】
典型的な用途において、導入遺伝子は、有毛細胞発達、有毛細胞機能、有毛細胞再生、有毛細胞運命の特定、有毛細胞生存、もしくは有毛細胞維持を促進し得る治療用タンパク質、または難聴、聴覚喪失、または前庭機能障害(例えば、めまい、回転性めまい、もしくは平衡異常)と関連付けられた変異を有する対象における聴力もしくは前庭機能を改善するために有用であり得る、遺伝性難聴もしくは前庭機能障害の形態を有する対象において変異する有毛細胞タンパク質の野生型形態をコードする。そのようなrAAVベクターは、マーカーまたはレポーター遺伝子を含有してもよい。有用なrAAVベクターは、AAV WT遺伝子のうちの1つ以上が全体的または部分的に欠失しているが、機能的な隣接するITR配列を保持する。AAV ITRは、特定の用途に好適な任意の血清型のものであり得る。本明細書に記載される方法及び組成物における使用のために、ITRは、AAV2 ITRであり得る。rAAVベクターを使用するための方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279(2000)、及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24(2000)に記載されており、これらの各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
本明細書に記載されるポリヌクレオチド及びベクター(例えば、目的のタンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたMyo15プロモーター)は、ポリヌクレオチドまたはベクターの細胞内への導入を促進するために、rAAVビリオンに組み込むことができる。AAVのカプシドタンパク質は、ビリオンの外部非核酸部分を構成し、AAV cap遺伝子によってコードされる。cap遺伝子は、ビリオンの組立てに必要な3つのウイルスコートタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードする。rAAVビリオンの構築は、例えば、US5,173,414、US5,139,941、US5,863,541、US5,869,305、US6,057,152、及びUS6,376,237、ならびにRabinowitz et al.,J.Virol.76:791(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423(2003)に記載されており、これらの各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0233】
本明細書に記載される組成物及び方法と併せて有用なrAAVビリオンは、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含む様々なAAV血清型に由来するものを含む。有毛細胞を標的化するために、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、及びPHP.Bが特に有用であり得る。網膜の形質導入のために進化した血清型はまた、本明細書に記載される方法及び組成物において使用されてもよい。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao et al.,Mol.Ther.2:619(2000)、Davidson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3428(2000)、Xiao et al.,J.Virol.72:2224(1998)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Halbert et al.,J.Virol.75:6615(2001)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されており、これらの各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0234】
偽型rAAVベクターもまた、本明細書に記載される組成物及び方法と併せて有用である。偽型ベクターとしては、所与の血清型以外の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8等)に由来するカプシド遺伝子を用いて偽型化された所与の血清型(例えば、AAV9)のAAVベクターが挙げられる。偽型rAAVビリオンの構築及び使用を伴う技法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Duan et al.,J.Virol.75:7662(2001)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Zolotukhin et al.,Methods,28:158(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されている。
【0235】
ビリオンカプシド内に変異を有するAAVビリオンを使用して、非変異カプシドビリオンよりも効果的に特定の細胞型に感染し得る。例えば、好適なAAV変異体は、AAVを特定の細胞型に標的化する促進のためのリガンド挿入変異を有し得る。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体を含むAAVカプシド変異体の構築及び特徴付けは、Wu et al.,J.Virol.74:8635(2000)に記載されている。本明細書に記載される方法で使用され得る他のrAAVビリオンとしては、ウイルスの分子交配によって、ならびにエクソンシャッフリングによって生成されるそれらのカプシドハイブリッドが挙げられる。例えば、Soong et al.,Nat.Genet.,25:436(2000)及びKolman and Stemmer,Nat.Biotechnol.19:423(2001)を参照されたい。
【0236】
薬学的組成物
本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチド)は、導入遺伝子(例えば、目的のタンパク質をコードする導入遺伝子)に作動可能に連結されてもよく、感音性難聴及び/または前庭機能障害を患うヒト患者などの患者に投与するためのビヒクルに組み込まれてもよい。治療用導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含有する、ウイルスベクターなどのベクターを含有する薬学的組成物は、当該技術分野で既知の方法を使用して調製することができる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を使用して(Remington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013)、参照により本明細書に組み込まれる)、所望の形態、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。
【0237】
治療用導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチド)を含有する核酸ベクター(例えば、ウイルスベクター)の混合物は、1つ以上の賦形剤、担体、または希釈剤と好適に混合した水中で調製されてもよい。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、ならびに油中で調製することもできる。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止するために保存剤を含有し得る。注射可能な使用に好適な薬学的形態は、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末(US5,466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0238】
いずれの場合においても、製剤は無菌であってもよく、容易な通針性が存在する程度に流動性であってもよい。製剤は、製造及び保管条件下で安定していてもよく、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保護されていてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の阻止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の種々の抗菌剤及び抗真菌剤によってもたらすことができる。
【0239】
多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
【0240】
例えば、本明細書に記載される薬学的組成物を含有する溶液は、必要に応じて、好適に緩衝され得、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされ得る。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に好適である。
【0241】
これに関連して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして、当業者に既知であろう。例えば、1つの投与量を1mLの等張NaCl溶液中に溶解し、1000mLの皮下分解液に添加するか、または提案された注入部位に注射することができる。治療されている対象の状態に応じて、いくらかの投与量変動が生じるのは必然であろう。内耳への局所投与のために、組成物は、合成外リンパ液を含有するように製剤化され得る。例示的な合成外リンパ液には、20~200mMのNaCl、1~5mMのKCl、0.1~10mMのCaCl2、1~10mMのグルコース、及び2~50mMのHEPEが含まれ、pHは約6~9であり、浸透圧は約300mOsm/kgである。投与担当者は、いずれにしても、個々の対象に適切な用量を決定することになる。さらに、ヒト投与のために、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準によって要求される、無菌性、発熱性、一般的な安全性、及び純度の基準を満たし得る。
【0242】
治療方法
本明細書に記載される組成物は、内耳への局所投与(例えば、前庭窓、蝸牛窓、もしくは半規管(例えば、水平管)を通じた外リンパもしくは内リンパへの投与、例えば、蝸牛有毛細胞もしくは前庭有毛細胞への投与)、静脈内、非経口、皮膚内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口投与などの様々な経路によって、感音性難聴及び/または前庭機能障害を有する対象に投与され得る。任意の所与の場合における投与のための最も好適な経路は、投与されている特定の組成物、患者、薬学的製剤方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療されている疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄速度に依存する。組成物は、1回、または1回を超えて(例えば、1年に1回、1年に2回、1年に3回、2ヶ月に1回、または1ヶ月に1回)投与されてもよい。
【0243】
本明細書に記載されるように治療され得る対象は、感音性難聴及び/または前庭機能障害を有するか、または発症するリスクがある対象(例えば、難聴、前庭機能障害、または両方を有するか、または発症するリスクがある対象)である。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、蝸牛有毛細胞に損傷(例えば、音響外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、もしくは加齢に関連する損傷)を有するか、または発症するリスクがある対象、前庭有毛細胞に損傷(例えば、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、もしくは加齢に関連する損傷)を有するか、または発症するリスクがある対象、感音性難聴、聴覚喪失、もしくはオーディトリーニューロパチーを発症するか、または発症するリスクがある対象、前庭機能障害(例えば、めまい、回転性めまい、もしくは平衡異常)を有するか、または発症するリスクがある対象、耳鳴り(例えば、耳鳴りのみ、または感音性難聴もしくは前庭機能障害と関連付けられ耳鳴り)を有する対象、難聴及び/または前庭機能障害と関連付けられた遺伝子変異を有する対象、あるいは遺伝性難聴、聴覚喪失、オーディトリーニューロパチー、耳鳴り、または前庭機能障害の家族歴を有する対象を治療することができる。
【0244】
いくつかの実施形態では、対象は、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞もしくは前庭有毛細胞)の喪失と関連付けられるか、またはそれに起因する難聴及び/または前庭機能障害を有する。本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される組成物による治療または投与の前に、難聴または前庭機能障害と関連付けられることが知られている遺伝子における変異について、対象をスクリーニングするステップを含み得る。対象は、当業者に既知の標準的な方法(例えば、遺伝子検査)を使用して、遺伝子変異についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載される方法はまた、本明細書に記載される組成物による治療または投与の前に、対象における聴覚及び/または前庭機能を評価するステップを含み得る。聴力検査、聴覚脳幹応答(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射などの標準試験を使用して、聴力を評価することができる。前庭機能は、眼球運動試験(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ眼振図(VNG))、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、及び例えば、Mancini and Horak,Eur J Phys Rehabil Med,46:239(2010)に記載されているものなどの専門的な臨床平衡試験などの標準試験を使用して評価され得る。本明細書に記載される組成物及び方法はまた、難聴及び/または前庭機能障害を発症するリスクがある患者、例えば、難聴または前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴または前庭機能障害)の家族歴を有する患者、難聴または前庭機能障害と関連付けられる遺伝子変異を有するが、まだ聴力障害または前庭機能障害を示していない患者、あるいは後天性難聴(例えば、疾患もしくは感染、頭部外傷、耳毒性薬物、もしくは加齢)または前庭機能障害(例えば、音響外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、耳毒性薬物、もしくは加齢)の危険因子に曝露される患者に予防的処置として投与されてもよい。
【0245】
本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、対象における有毛細胞の再生(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞の再生)を促進または誘導することができる。有毛細胞の再生を促進または誘導する組成物から利益を得ることができる対象には、有毛細胞の喪失(例えば、外傷(例えば、音響外傷もしくは頭部外傷)、疾患または感染症、耳毒性薬物、または加齢に関連する有毛細胞の喪失)の結果として難聴または前庭機能障害に苦しむ対象、及び有毛細胞の異常(例えば、正常な有毛細胞と比較して正しく機能しない有毛細胞)、有毛細胞の損傷(例えば、外傷(例えば、音響外傷もしくは頭部外傷)、疾患または感染症、耳毒性薬物、または加齢に関連する有毛細胞の損傷)、あるいは遺伝子変異または先天性異常に起因する減少した有毛細胞数を有する対象が含まれる。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、有毛細胞の生存を促進または増加させる(例えば、損傷した毛細胞の生存を増加させる、損傷した毛細胞の修復を促進する、または有毛細胞の喪失(例えば、年齢による有毛細胞の喪失、大きな騒音への曝露、疾患もしくは感染症、頭部外傷もしくは耳毒性薬物)のリスクがある対象における有毛細胞を保存する)こともできる。
【0246】
本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、耳毒性薬物で治療されている、または現在耳毒性薬物で治療を受けているか、もしくはまもなく耳毒性薬物で治療を開始する対象における耳毒性薬物誘発性有毛細胞損傷または死(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞の損傷または死)を予防または低減することもできる。耳毒性薬物は、内耳の細胞に対して毒性であり、感音性難聴、前庭機能障害(例えば、回転性めまい、めまい、もしくは平衡異常)、耳鳴り、またはこれらの症状の組み合わせを引き起こす可能性がある。耳毒性であることが見出されている薬物としては、アミノグリコシド抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、ビオマイシン、抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤)、ループ利尿薬(例えば、エタクリン酸及びフロセミド)、サリチル酸塩(例えば、特に高用量でのアスピリン)、ならびにキニーネが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、音響外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、または加齢と関連付けられる有毛細胞の損傷または死を予防または低減する。
【0247】
本明細書に記載される対象の治療のために、Myo15プロモーター(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有する、ポリヌクレオチド)に作動可能に連結された導入遺伝子は、健康な有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞、例えば、有毛細胞の発達、機能、細胞運命の特定、再生、生存、もしくは維持において役割を果たすタンパク質)または別の目的の治療用タンパク質において発現されるタンパク質をコードする導入遺伝子であり得る。導入遺伝子は、対象の難聴または前庭機能障害の原因(例えば、対象の難聴もしくは前庭機能障害が特定の遺伝子変異と関連付けられる場合、導入遺伝子は、対象において変異する遺伝子の野生型であり得るか、または対象が有毛細胞の喪失と関連付けられる難聴を有する場合、導入遺伝子は、有毛細胞の再生を促進するタンパク質をコードすることができる)、対象の難聴または前庭機能障害の重症度、対象の有毛細胞の健康、対象の年齢、対象の難聴または前庭機能障害の家族歴、あるいは他の因子に基づいて選択することができる。本明細書に記載される対象の治療のためにMyo15プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子によって発現され得るタンパク質としては、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NTF3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPが挙げられる。
【0248】
治療は、様々な単位用量で本明細書に記載されるMyo15プロモーターを含有する核酸ベクター(例えば、AAVウイルスベクター)を含有する組成物の投与を含み得る。各単位用量は通常、所定量の治療用組成物を含有する。投与される量、ならびに特定の投与経路及び製剤は、当業者の技術の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与する必要はないが、所定の期間にわたる継続的な注入を含み得る。注入速度を制御するために注射器ポンプを使用して投与を実施して、内耳(例えば、蝸牛)への損傷を最小限に抑えることができる。核酸ベクターがAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sベクター)である場合、ウイルスベクターは、1μL~200μL(例えば、1、2、3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μL)の量中、例えば、約1×1010ベクターゲノム(VG)~1×1015VG(例えば、1×1010VG、2×1010VG、3×1010VG、4×1010VG、5×1010VG、6×1010VG、7×1010VG、8×1010VG、9×1010VG、1×1011VG、2×1011VG、3×1011VG、4×1011VG、5×1011VG、6×1011VG、7×1011VG、8×1011VG、9×1011VG、1×1012VG、2×1012VG、3×1012VG、4×1012VG、5×1012VG、6×1012VG、7×1012VG、8×1012VG、9×1012VG、1×1013VG、2×1013VG、3×1013VG、4×1013VG、5×1013VG、6×1013VG、7×1013VG、8×1013VG、9×1013VG、1×1014VG、2×1014VG、3×1014VG、4×1014VG、5×1014VG、6×1014VG、7×1014VG、8×1014VG、9×1014VG、1×1015VG)の用量で患者に投与され得る。
【0249】
本明細書に記載される組成物は、聴力を改善する、前庭機能を改善する(例えば、平衡感覚を改善する、またはめまいもしくは回転性めまいを低減する)、耳鳴りを低減する、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現を増加させる、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の機能を増加させる、有毛細胞の損傷を予防または低減する、有毛細胞死(例えば、耳毒性薬物誘発性有毛細胞死、加齢関連有毛細胞死、もしくは騒音(例えば、音響外傷)関連有毛細胞死)を予防または低減する、有毛細胞の発達を促進または増加させる、有毛細胞数を増加させる(例えば、有毛細胞の再生を促進または誘発する)、有毛細胞の生存を増加または促進する、あるいは有毛細胞機能を改善するのに十分な量で投与される。聴力は、標準的な聴力試験(例えば、聴力測定法、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射)を使用して評価されてもよく、治療前に得られた聴力測定と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、またはそれ以上)改善されてもよい。前庭機能は、平衡及び回転性めまいについての標準試験(例えば、眼球運動試験(例えば、ENGまたはVNG)、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、VEMP、及び専門的な臨床平衡試験)を使用して評価され得、治療前に得られた測定と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、またはそれ以上)改善され得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、組成物は、発話を理解する対象の能力を改善するのに十分な量で投与される。本明細書に記載される組成物はまた、感音性難聴及び/または前庭機能障害の発症または進行を遅くする、または予防するのに十分な量で(例えば、難聴または前庭機能障害と関連付けられる遺伝子変異を有する対象、難聴または前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴または前庭機能障害)の家族歴を有する対象、または難聴もしくは前庭機能障害と関連付けられるリスク因子(例えば、耳毒性薬物、頭部外傷、音響外傷、もしくは感染症)に曝露されたが、難聴もしくは前庭機能障害(例えば、回転性めまい、めまい、もしくは平衡異常)を示していない対象において、あるいは軽度~中等度の難聴または前庭機能障害を示す対象において)投与されてもよい。対象に投与される核酸ベクターにおけるMyo15プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現は、免疫組織化学、ウエスタンブロット分析、定量的リアルタイムPCR、またはタンパク質もしくはmRNAを検出するための当該技術分野で既知の他の方法を使用して評価され得、本明細書に記載される組成物の投与前の発現と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、またはそれ以上)増加され得る。対象に投与される核酸ベクターによってコードされる治療用タンパク質の有毛細胞数、有毛細胞機能、または機能は、聴力試験または前庭機能の試験に基づいて間接的に評価され得、本明細書に記載される組成物の投与前の治療用タンパク質の有毛細胞数、有毛細胞機能、または機能と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、またはそれ以上)増加され得る。有毛細胞の損傷または死は、未治療の対象で典型的に観察される有毛細胞の損傷及び死と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%、またはそれ以上)低減され得る。これらの効果は、例えば、本明細書に記載される組成物の投与後1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間、またはそれ以上の間に生じ得る。患者は、治療に使用される用量及び投与経路に応じて、組成物の投与後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上評価され得る。評価の結果に応じて、患者は追加の治療を受け得る。
【0251】
キット
本明細書に記載される組成物は、感音性難聴または前庭機能障害の治療に使用するためのキットで提供することができる。組成物は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、ポリヌクレオチド)、そのようなポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター、ならびに目的のタンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結された本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター(例えば、難聴及び/または前庭機能障害を治療するために有毛細胞で発現され得るタンパク質)を含み得る。核酸ベクターは、AAVウイルスカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)中にパッケージングされ得る。キットは、医師などのキットの使用者に、本明細書に記載される方法を実施するように指示する添付文書をさらに含むことができる。キットは、任意に、組成物を投与するための注射器または他のデバイスを含み得る。
【実施例】
【0252】
以下の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法がどのように使用、作製、及び評価され得るかの説明を当業者に提供するために提示され、本発明の純粋な例となることを意図し、本発明者が彼らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図していない。
【0253】
実施例1:マウスMyo15プロモーターの生成
脊椎動物Myo15プロモーターにおける進化的保存領域を、UCSCゲノムブラウザー(genome.ucsc.edu)を使用して初めて同定した。Myo15翻訳開始部位のすぐ上流の領域(-1~-1157、配列番号1)、及びMyo15遺伝子の非コードエクソン1を含有する上流の領域(-6755~-7209、配列番号2)を合成し、デノボ遺伝子合成によって単一のDNA断片として一緒に接合した(配列番号13)。切断されたMyo15プロモーターの総サイズは、ゲノム領域全体で1611bp対7000bp超である。
【0254】
マウス蝸牛におけるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと比べて、屈性(細胞型標的化)及びMyo15プロモーターによる導入遺伝子発現の程度及び持続時間を評価する実験は、Myo15プロモーターをもたらしたが、CMVプロモーターはもたらさず、蝸牛有毛細胞における選択的発現をもたらした。AAV構築物を、Aequorea coerulescens緑色蛍光タンパク質(AcGFP)のMyo15駆動発現を用いて作製し、CMVを用いたマッチした標準AAV構築物に対する遺伝子発現の進行を分析した。ウイルスが新生仔マウスにおいて、成体マウスにおいて、及びエクスビボで蝸牛外植片においてマウス蝸牛に送達された実験において、導入遺伝子発現を評価した。
【0255】
導入遺伝子発現を評価するために、AAV-Myo15-GFPウイルスを後部半規管を介して6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに注入した。手術から回復したマウスを安楽死させ、10日後に10%の正常な緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%のEDTAで3日間脱石灰化した。蝸牛または前庭系を脱石灰化した側頭骨から切り離し、イメージングのためにスライドに載置した。ユビキタスプロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは、内有毛細胞、外有毛細胞、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型においてGFP発現を誘導した(
図1A)。有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-Myo15-GFPは、内有毛細胞及び外有毛細胞においてのみ発現を誘導した(
図1B)。
【0256】
前庭系において、AAV-Myo15-GFPは、前庭の有毛細胞においてのみ発現を誘導した(
図2)。
【0257】
実施例2:最小限のMyo15プロモーターの生成
一連のプロモーターを生成し、蛍光レポーター(例えば、GFP、AcGFP、またはルシフェラーゼ)の上流に配置する。生成されるプロモーターには以下が含まれる。
1)配列番号2に融合した配列番号3、
2)配列番号2に融合した配列番号4、
3)配列番号2に融合した配列番号3及び配列番号4(例えば、配列番号5、6、または7)の融合体、
4)配列番号9に融合した配列番号8(例えば、配列番号10、11、または12)、
5)配列番号8及び配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12)に融合した配列番号1、
6)配列番号8及び配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12)に融合した配列番号3、
7)配列番号8及び配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12)に融合した配列番号4、
8)配列番号8及び配列番号9の融合体(例えば、配列番号10、11、または12)に融合した配列番号3及び配列番号4の融合体(例えば、配列番号5、6、または7)、
9)配列番号3及び配列番号4の融合体(例えば、配列番号5、6、または7)、
11)配列番号1、
12)配列番号2、
13)配列番号17、
14)配列番号18、
15)配列番号18に融合した配列番号17、
16)配列番号17に融合した配列番号18、
17)配列番号18に融合した配列番号19、
18)配列番号21に融合した配列番号20(例えば、配列番号22、23、または24)、
19)配列番号20及び配列番号21の融合体(例えば、配列番号22、23、または24)に融合した配列番号17、ならびに
20)配列番号20及び配列番号21の融合体(例えば、配列番号22、23、または24)に融合した配列番号19。プロモーター構築物は、有毛細胞(例えば、AAV1、AAV2、AAV6、AAV9、Anc80、またはAnc80L65)を形質導入することができるAAV血清型にパッケージングされる。
【0258】
ウイルスプロモーター構築物を使用して、器官型の蝸牛外植片に感染させる。ウイルスとの48時間のインキュベーション後、外植片をイメージングし、レポーターの蛍光強度を使用して解析して、有毛細胞特異的発現を測定する。
【0259】
実施例3:感音性難聴を有する対象へのMyo15プロモーターを含有する核酸ベクターを含有する組成物の投与
本明細書に開示される方法に従って、当業者は、聴力を改善または回復させるように、感音性難聴を有するヒト患者などの患者を治療することができる。この目的のために、当業者は、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号3~7のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号3及び4)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第1の領域、及び/または配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体(例えば、配列番号8~12のうちのいずれか1つ以上、例えば、配列番号8及び9)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性)を有する第2の領域を含有し、任意に第1の領域と第2の領域との間にリンカーを含有する、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含有する、AAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)を含有する組成物を、ヒト患者に投与することができる。例えば、治療用タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたポリヌクレオチドは、配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号36、または配列番号37であり得る。AAVベクターを含有する組成物は、感音性難聴を治療するために、例えば、内耳への局所投与(例えば、外リンパへの注射)によって患者に投与されてもよい。
【0260】
組成物を患者に投与した後、当業者は、様々な方法によって、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現、及び治療に応答した患者の改善を監視することができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、聴力測定法、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射などの標準試験を実施することによって、患者の聴力を監視することができる。患者が、組成物の投与後の試験のうちの1つ以上において、組成物の投与前の聴力試験結果と比較して聴力の改善を示すという所見は、患者が治療に好ましく反応していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定し、投与することができる。
【0261】
実施例4:配列番号1及び配列番号2の一部を含有するマウスMyo15プロモーター配列は、有毛細胞における導入遺伝子発現を誘導する。
P0野生型CD1マウスから新生仔の蝸牛外植片を確立した。簡潔には、新生仔マウスを、IACUC承認プロトコルに従って安楽死させた。頭部から内耳を取り出し、顕微解剖を使用して注意深く蝸牛を取り出した。蝸牛軸をコイルの中心から取り出し、感覚上皮を露出させることで蝸牛管の頂部を取り除いた。15%のマトリゲルでコーティングされたMat-tekディッシュ上に、蝸牛管の内腔側を上向きにして、蝸牛外植片を置いた。10%FBS及び10ug/mLのシプロフラキシンを含むDMEMからなる蝸牛外植片培養培地を培養物に直接添加した。Myo15 1kb(配列番号15)プロモーターまたはMyo15ミニイントロン(配列番号16)プロモーター(AAV2/9-Myo15 1kb-GFPまたはAAV2/9-Myo15ミニイントロン-GFP)を含有するウイルスを、1E+10ゲノムコピー/mLの濃度で培養培地に添加した。培養物を、ウイルスを含有する培地中、5%CO
2の標準培養条件下、37℃で48時間インキュベートした。次いで、培養物を4%PFA中で固定し、0.01%TritonX100で透過させ、抗体染色の前に10%の正常なロバ血清でブロックした。使用される抗体:ウサギ抗Myo6(Proteus)、ロバ抗ウサギAlexa 568(Thermo Fisher)。
図3A~3Bに示されるように、Myo15 1kb(配列番号15)及びMyo15ミニイントロン(配列番号16)の両方のプロモーターは、有毛細胞において特異的にGFPの発現を誘導した。
【0262】
実施例5:Myo15プロモーター配列は、マウス蝸牛内の有毛細胞において導入遺伝子の発現を誘導する。
P0野生型B6.CAST-Cdh23A1+/Kjnマウスから新生仔の蝸牛外植片を確立した。簡潔には、新生仔マウスを、IACUC承認プロトコルに従って安楽死させた。頭部から内耳を取り出し、顕微解剖を使用して注意深く蝸牛を取り出した。蝸牛軸をコイルの中心から取り出し、感覚上皮を露出させることで蝸牛管の頂部を取り除いた。調製された3Dラットテールコラーゲンマトリックス上に、蝸牛管の内腔側を上向きにして、蝸牛外植片を置いた。7%FBS及び1U/μLのペニシリンGを含むDMEMからなる蝸牛外植片培養培地を培養物に直接添加した。マウスMyo15 1kb(配列番号15)プロモーター、ヒトMyo15 0.6kb(配列番号26)、またはヒトMyo15 1.2kb(配列番号25)プロモーター(AAV1-Myo15 1kb-GFP、AAV1-Myo15 0.6kb-GFP、またはAAV1-Myo15 1.2kb-GFP)を含有するウイルスを、1E+11vg/培養物の濃度で培養培地に添加した。培養物を、ウイルスを含有する培地中、5%CO
2の標準培養条件下、37℃で72時間インキュベートした。次いで、培養物を4%PFA中で固定し、0.01%TritonX100で透過させ、抗GFP抗体染色の前に10%の正常なロバ血清でブロックした。抗GFP抗体で検出した場合のGFPシグナルを示す(
図4A~4C)。別の実験では、AAV1-1.2kbのヒトMyo15-GFPまたはAAV1-1kbのマウスMyo15-GFPを、蝸牛窓注射によって成体マウスの蝸牛に2.65E+12vg/mLの用量で送達した。全マウント画像(
図4D~4E)または切片(
図4F~4G)は、抗GFP抗体で検出されるように、蝸牛の頂端、中間、及び基部における有毛細胞特異的シグナルを示す。
図4Fの矢印は、GFP標識された蝸牛有毛細胞を指す。
図4F及び4Gに示されるように、1.2kbのヒトMyo15プロモーター及び1kbのマウスMyo15プロモーターの両方での発現は、主に内有毛細胞に制限された。
【0263】
実施例6:マウスMyo15プロモーター配列は、インビボで非ヒト霊長類の蝸牛において導入遺伝子発現を誘導する。
マウスMyo15プロモーターの特異性を、非ヒト霊長類において試験した。30マイクロリットルのAAV1-CMV-GFPまたはAAV1-Myo15(配列番号13)-GFPを、15μL/分で蝸牛窓膜を通して蝸牛に注射した。動物を、AAV注射の4週間後に犠牲にし、蝸牛を採取し、表面調製として処理して、抗体増強なしで導入遺伝子発現を調べた。AAV1は高い感染性を有していた。ユビキタスCMVプロモーターの下で、GFPは、アカゲザル蝸牛の側壁における有毛細胞、支持細胞、及び線維細胞で発現された(
図5A)。対照的に、1.6kbのマウスMyo15プロモーター(配列番号13)は、GFP導入遺伝子の発現を、カニクイザル蝸牛における有毛細胞に制限した(
図5B~5C)。
【0264】
実施例7:マウスMyo15プロモーターは、ユビキタスプロモーターと比較して、Tmc1ノックアウトマウスにおけるAAVマウスTmc1の生物学的有効性を向上させる。
Tmc1ノックアウト(KO)マウスをイソフルランで麻酔し、毛をクリップし、ポピドンヨードを皮膚に適用した。左耳の下、頬の筋肉の上から耳の後ろにかけて切開した。皮膚を分離し、筋肉をほぐし、きれいにして後溝を露出させた。ドリルビットを使用して管に小さな穴を開け、微細な綿の先端で骨を乾燥させた。ポリアミド/ポリエチレンチューブを穴に挿入し、骨接着剤で密封した。ハミルトン注射器を備えたマイクロポンプを使用して、1μLのベクター(AAV-CMV1マウスTMC1またはAAV-Myo15(配列番号13)マウスTMC1)と0.05μLのトリパンブルーとを、100nL/分の速度でIL空間に送達した。1μLを送達した後、5分間経過させて流体を蝸牛の頂端に到達させ、逆流及び漏出を防いだ。チューブを曲げ、骨の近くで切断した。筋肉を元の位置に引き戻し、皮膚を接着した。マウスに0.01ccのメロキシカムを与えた後、加熱ランプ下で回復させた。術後5日間、痛みまたは感染の兆候について動物をチェックした。術後21~28日の動物をケタミン及びキシラジンで麻酔し、聴覚脳幹応答(ABR)を測定した。
図6に示されるように、AAV-CMVマウスTMC1と比較して、AAV-Myo15マウスTMC1を注射したホモ接合型Tmc1 KOマウスでは、ABR閾値の復元が大幅に改善された。
【0265】
実施例8:ヒトMyo15プロモーター配列は、インビボで非ヒト霊長類の蝸牛において導入遺伝子発現を誘導する。
1.2kbのヒトミオシン15プロモーター(配列番号25)または0.6kbのヒトミオシン15プロモーター(配列番号26)の制御下で、EGFP導入遺伝子を担持するAAV1ベクターを含有する組成物を、蝸牛窓膜を介した注射によって、カニクイザルの内耳に両側に送達した。AAV1-1.2kbミオシン15-GFP(1.06×10
13ゲノムコピー/mLにおけるウイルス力価)またはAAV1-0.6kbミオシン15-GFP(1.22×10
13ゲノムコピー/mLにおけるウイルス力価)の注射(30μL)を、15μL/分の注入速度で実施した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。GFP発現を使用して、ミオシン15プロモーター活性を監視した(
図7A及び8A、代表的な耳の1つを示す)。カニクイザルの内耳のAAV1-1.2kbミオシン15-GFP形質導入は、基部において高周波で、及び頂端において低周波で、蝸牛の基部-頂端軸全体にわたるGFP発現をもたらした(
図7A、kHzでの周波数)。2.8kHzでの高倍率画像は、GFP発現が内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)内で観察されたことを示した(
図7B、上パネル)。同様に、カニクイザルの内耳のAAV1-0.6kbミオシン15-GFP形質導入は、基部において高周波で、及び頂端において低周波で、蝸牛の基部-頂端軸全体にわたるGFP発現をもたらした(
図8A、kHzでの周波数)。2.8kHzでの高倍率画像は、GFP発現がIHC及びOHC内で観察されたことを示した(
図8B、上パネル)。ミオシン7A(Myo7A)の免疫組織化学を使用して、有毛細胞を可視化し、核をDAPIで染色した(
図7B及び
図8B、中央及び下パネル)。
【0266】
実施例9:Myo15プロモーターバリアントは、マウス蝸牛外植片において導入遺伝子の発現を誘導する。
新生仔の蝸牛外植片培養物及びウイルス形質導入
P0野生型B6.CAST-Cdh23Ah1+/Kjnマウスから新生仔の蝸牛外植片を確立した。簡潔に述べると、新生仔マウスを、動物実験委員会が承認したプロトコルに従って安楽死させた。頭部から内耳を取り出し、顕微解剖を使用して注意深く蝸牛を取り出した。蝸牛軸をコイルの中心から取り出し、感覚上皮を露出させることで蝸牛管の頂部を取り除いた。調製された3Dラットテールコラーゲンマトリックス上に、蝸牛管の内腔側を上向きにして、蝸牛外植片を置いた。7%FBS及び1U/μLのペニシリンGを含むDMEMからなる蝸牛外植片培養培地を培養物に直接添加した。マウスMyo15 1kb(配列番号15)プロモーター、ヒトMyo15 0.6kb(配列番号26)、ヒトMyo15 1.2kb(配列番号25)プロモーター、マウスMyo15 0.5kbプロモーター(配列番号16)、マウスMyo15 Aプロモーター(配列番号27)、マウスMyo15 Bプロモーター(配列番号28)、マウスMyo15 Cプロモーター(配列番号29)、マウスMyo15 A-Bプロモーター(配列番号30)、マウスMyo15 A-Cプロモーター(配列番号31)、マウスMyo15 B-Cプロモーター(配列番号32)、マウスMyo15 B-A-Cプロモーター(配列番号33)、マウスMyo15 C-A-Bプロモーター(配列番号34)、またはマウスMyo15 B-C-Aプロモーター(配列番号35、AAV1-Myo15 1kb-GFP、AAV1-Myo15 0.6kb-GFP、AAV1-Myo15 1.2kb-GFP、AAV1-Myo15 0.5kb-GFP、AAV1-Myo15 A-GFP、AAV1-Myo15 B-GFP)を含有するウイルスを、1×1011vg/培養物の濃度で培養培地に添加した。培養物を、ウイルスを含有する培地中、5%CO2の標準培養条件下、37℃で72時間インキュベートした。
【0267】
GFP定量化
ウイルス含有培地中で72時間培養した後、培養物を4%PFA中で固定し、0.01%TritonX100で透過させ、抗Myo7a及び/または抗GFP抗体の前に10%の正常なロバ血清でブロックした。試料間の均一な設定(レーザー強度及びゲイン)を使用した共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 810)を使用して、試料をイメージングした。ImageJを使用して、細胞あたりのGFP強度値を定量化した。
【0268】
mRNA定量化
ウイルス含有培地中で72時間培養した後、培養物をドライアイス上で瞬間凍結させ、PicoPure RNA単離キット(Arcturusカタログ番号0204)を使用してRNAを抽出した。GFP及びMyo7A mRNAを、全てのcDNA合成及びRT-PCR反応について、Quantinova Probe RT-PCRキット(Qiagenカタログ番号208354)を使用して、qPCRにより定量化した。GFP発現レベルをMyo7a発現に対して正規化した。
【0269】
結果
定量的PCR(qPCR)を使用した有毛細胞特異的発現を有するマウスMyo15プロモーターからのGFP発現の定量化は、mMyo15 1.6kb、1kb、及び0.5kbプロモーターからのGFP導入遺伝子の発現レベルが堅牢であり、GFP発現の程度で互いに同等であることを示した(
図9)。様々なマウスまたはヒトMyo15プロモーターによって駆動されたGFP発現の比較は、Myo7a陽性有毛細胞におけるGFP発現の差異を示し、mMyo15 1kbプロモーターは、細胞あたり最高レベルのGFP発現をもたらした(
図10)。
【0270】
表2に記載されるMyo15プロモーターバリアントのサブセットに感染した新生仔蝸牛外植片培養物の全マウント画像の分析は、配列番号27のプロモーター配列(Myo15 A)が、
図11B(配列番号27)、11E(配列番号30)、11F(配列番号31)、及び11G(配列番号32)に示されるように、一般的なプロモーター活性または有毛細胞特異性に十分ではなく、また必要でもないことを示した。配列番号27のプロモーター配列は、
図11A(配列番号16)及び11H(配列番号33)に示されるように、スプライスアクセプター部位と対合したときに発現レベルを増加させるスプライスドナー部位を提供し、したがって、イントロンをプロモーター配列に導入する。配列番号28のプロモーター配列(Myo15 B)単独は、
図11C(配列番号28)に示されるように、一般的なプロモーター活性を付与するコアプロモーターであることが見出されたが、
図11C(配列番号29)及び11G(配列番号32)に示されるように、配列番号29のプロモーター配列(Myo15 C)の不在下で、有毛細胞特異的GFP発現を駆動しなかった。配列番号29のプロモーター配列(Myo15 C)は、
図11G(配列番号32)に示されるように、コアプロモーター(配列番号28)の
活性を内有毛細胞及び外有毛細胞
に制限するエンハンサーであることが見出されたが、
図11D(配列番号29)に示されるように、コアプロモーターの不在下での一般的なプロモーター活性には十分ではなかった。配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のプロモーター配列を様々な組み合わせに並べ替えても、依然として
図11H(配列番号33)及び11I(配列番号34)に示されるような有毛細胞特異的プロモーター活性をもたらしたが、
図11J(配列番号35)に示されるように全ての再配置が許容されたわけではなかった。これらのデータを以下の表3に要約する。
【表3】
【0271】
Myo15プロモーター活性をさらに評価して、Myo15 0.5kb(配列番号16)、Myo15 B-C(配列番号32)、及びMyo15 B-A-C(配列番号33)を含む、有毛細胞特異性を示すMyo15プロモーターバリアントの発現強度を決定した。Myo15 0.5kb、Myo15 B-C、及びMyo15 B-A-CプロモーターからのGFPレポーターの発現レベルは、堅牢であり、互いに同等であった。Myo15 C-A-Bプロモーターは、スプライスドナー部位及びアクセプター部位の位置を再配置することによって生成され、転写物の3’末端と転写物の5’末端に位置するGFPプローブで検出されるより高い発現レベルによって証明されるように、GFP cDNAの中央への暗号的スプライシングをもたらした(
図12)。
【0272】
Myo7a陽性有毛細胞においてGFP発現レベルの定量的画像解析を実施して、0.5kbのmMyo15プロモーター(Myo15 A-B-Cプロモーターとも称される;配列番号16)、Myo15 A-Bプロモーター(配列番号30)、Myo15 A-Cプロモーター(配列番号31)、Myo15 B-Cプロモーター(配列番号32)、Myo15 Aプロモーター(配列番号27)、Myo15 Bプロモーター(配列番号28)、Myo15 Cプロモーター(配列番号29)、Myo15 B-A-Cプロモーター(配列番号33)、Myo15 C-A-Bプロモーター(配列番号34)、及びMyo15 B-C-Aプロモーター(配列番号35)を含む、様々なMyo15プロモーターの有毛細胞あたりのGFPの発現レベルを評価した。Myo15 A-B-Cプロモーター(配列番号16)は、細胞あたりのGFPの発現が最も高かった(
図13A)。蛍光のバックグラウンドレベルを、組織の自己蛍光に基づいてデータセットごとに決定した(
図13Aについては2000単位未満、
図13Bについては6000単位未満)。
【0273】
他の実施形態
記載される発明の様々な修正及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者に明白となるであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、当業者には明白である本発明を実施するための記載されたモードの様々な修正は、本発明の範囲内であることが意図される。他の実施形態は、特許請求の範囲にある。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、任意に前記第1の領域と前記第2の領域との間に1~100個のヌクレオチドを含むリンカーを含む、ポリヌクレオチド。
[項目2]
前記第1の領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目3]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目4]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目5]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目6]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目7]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目8]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目9]
前記配列番号1の前記機能部分が、配列番号27の配列を含む、項目5に記載のポリヌクレオチド。
[項目10]
前記第2の領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目11]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目12]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目13]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目14]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目13に記載のポリヌクレオチド。
[項目15]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目13に記載のポリヌクレオチド。
[項目16]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目13に記載のポリヌクレオチド。
[項目17]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号28の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目18]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号29の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目19]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号28の配列及び配列番号29の配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目20]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号32の配列を含む、項目19に記載のポリヌクレオチド。
[項目21]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号13の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目22]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号15の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目23]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号16の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目24]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号36の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目25]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号37の配列を含むか、またはそれからなる、項目1に記載のポリヌクレオチド。
[項目26]
配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された、配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、任意に前記第1の領域と前記第2の領域との間に1~100個のヌクレオチドを含むリンカーを含む、ポリヌクレオチド。
[項目27]
前記第1の領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目28]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目29]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目30]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目31]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目30に記載のポリヌクレオチド。
[項目32]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目30に記載のポリヌクレオチド。
[項目33]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目30に記載のポリヌクレオチド。
[項目34]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号28の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目35]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号29の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目36]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号28の配列及び配列番号29の配列を含む、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目37]
前記配列番号2の前記機能部分が、配列番号32の配列を含む、項目36に記載のポリヌクレオチド。
[項目38]
前記第2の領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目26~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目39]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目26~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目40]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目26~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目41]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目26~37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目42]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目43]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目44]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目45]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号27の配列を含む、項目41に記載のポリヌクレオチド。
[項目46]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号14の配列を含むか、またはそれからなる、項目26に記載のポリヌクレオチド。
[項目47]
配列番号3及び/または配列番号4の配列を含む、配列番号1またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目48]
前記第1の領域が、配列番号1の配列を含むか、またはそれからなる、項目47に記載のポリヌクレオチド。
[項目49]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列を含む、項目47に記載のポリヌクレオチド。
[項目50]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号4の配列を含む、項目47に記載のポリヌクレオチド。
[項目51]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む、項目47に記載のポリヌクレオチド。
[項目52]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号5の配列を含む、項目51に記載のポリヌクレオチド。
[項目53]
前記配列番号1の前記機能部分が、配列番号6の配列を含む、項目51に記載のポリヌクレオチド。
[項目54]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号7の配列を含む、項目51に記載のポリヌクレオチド。
[項目55]
前記配列番号1の機能部分が、配列番号27の配列を含む、項目51に記載のポリヌクレオチド。
[項目56]
配列番号8及び/または配列番号9の配列を含む、配列番号2またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目57]
前記第1の領域が、配列番号2の配列を含むか、またはそれからなる、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目58]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目59]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号9の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目60]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号8の配列及び配列番号9の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目61]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号10の配列を含む、項目60に記載のポリヌクレオチド。
[項目62]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号11の配列を含む、項目60に記載のポリヌクレオチド。
[項目63]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号12の配列を含む、項目60に記載のポリヌクレオチド。
[項目64]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号28の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目65]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号29の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目66]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号28の配列及び配列番号29の配列を含む、項目56に記載のポリヌクレオチド。
[項目67]
前記配列番号2の機能部分が、配列番号32の配列を含む、項目66に記載のポリヌクレオチド。
[項目68]
配列番号19の配列を含む、配列番号17またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された配列番号20及び/または配列番号21の配列を含む、配列番号18またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、任意に前記第1の領域と前記第2の領域との間に1~400個のヌクレオチドを含むリンカーを含む、ポリヌクレオチド。
[項目69]
前記第1の領域が、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる、項目68に記載のポリヌクレオチド。
[項目70]
前記配列番号17の機能部分が、配列番号19の配列を含む、項目68に記載のポリヌクレオチド。
[項目71]
前記第2の領域が、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる、項目68~70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目72]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号20の配列を含む、項目68~70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目73]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号21の配列を含む、項目68~70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目74]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号20の配列及び配列番号21の配列を含む、項目68~70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目75]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号22の配列を含む、項目74に記載のポリヌクレオチド。
[項目76]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号23の配列を含む、項目74に記載のポリヌクレオチド。
[項目77]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号24の配列を含む、項目74に記載のポリヌクレオチド。
[項目78]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号25の配列を含むか、またはそれからなる、項目68に記載のポリヌクレオチド。
[項目79]
前記ポリヌクレオチドが、配列番号26の配列を含むか、またはそれからなる、項目68に記載のポリヌクレオチド。
[項目80]
配列番号20及び/または配列番号21の配列を含む、配列番号18またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第1の領域と、それに作動可能に連結された配列番号19の配列を含む、配列番号17またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する第2の領域を含み、任意に前記第1の領域と前記第2の領域との間に1~400個のヌクレオチドを含むリンカーを含む、ポリヌクレオチド。
[項目81]
前記第1の領域が、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる、項目80に記載のポリヌクレオチド。
[項目82]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号20の配列を含む、項目80に記載のポリヌクレオチド。
[項目83]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号21の配列を含む、項目80に記載のポリヌクレオチド。
[項目84]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号20の配列及び配列番号21の配列を含む、項目80に記載のポリヌクレオチド。
[項目85]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号22の配列を含む、項目84に記載のポリヌクレオチド。
[項目86]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号23の配列を含む、項目84に記載のポリヌクレオチド。
[項目87]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号24の配列を含む、項目84に記載のポリヌクレオチド。
[項目88]
前記第2の領域が、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる、項目80~87のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目89]
前記配列番号17の機能部分が、配列番号19の配列を含む、項目80~87のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目90]
配列番号19の配列を含む、配列番号17またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目91]
前記領域が、配列番号17の配列を含むか、またはそれからなる、項目90に記載のポリヌクレオチド。
[項目92]
前記配列番号17の機能部分が、配列番号19の配列を含む、項目90に記載のポリヌクレオチド。
[項目93]
配列番号20及び/または配列番号21を含む、配列番号18またはその機能部分もしくは誘導体に対して少なくとも85%の配列同一性を有する領域を含む、ポリヌクレオチド。
[項目94]
前記領域が、配列番号18の配列を含むか、またはそれからなる、項目93に記載のポリヌクレオチド。
[項目95]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号20の配列を含む、項目93に記載のポリヌクレオチド。
[項目96]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号21の配列を含む、項目93に記載のポリヌクレオチド。
[項目97]
前記配列番号18の前記機能部分が、配列番号20の配列及び配列番号21の配列を含む、項目93に記載のポリヌクレオチド。
[項目98]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号22の配列を含む、項目97に記載のポリヌクレオチド。
[項目99]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号23の配列を含む、項目97に記載のポリヌクレオチド。
[項目100]
前記配列番号18の機能部分が、配列番号24の配列を含む、項目97に記載のポリヌクレオチド。
[項目101]
配列番号28の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、ポリヌクレオチド。
[項目102]
配列番号32の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、ポリヌクレオチド。
[項目103]
配列番号33の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、ポリヌクレオチド。
[項目104]
配列番号34の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、ポリヌクレオチド。
[項目105]
前記ポリヌクレオチドが、導入遺伝子に作動可能に連結され、有毛細胞に導入されるときに、導入遺伝子発現を誘導する、項目1~104のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
[項目106]
項目1~105のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸ベクター。
[項目107]
前記ポリヌクレオチドが、導入遺伝子に作動可能に連結されている、項目106に記載の核酸ベクター。
[項目108]
前記導入遺伝子が、治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む、項目107に記載の核酸ベクター。
[項目109]
前記ポリヌクレオチドが、哺乳動物有毛細胞中の核酸配列から前記治療用タンパク質の有毛細胞特異的発現を指示することができる、項目108に記載の核酸ベクター。
[項目110]
前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、項目109に記載の核酸ベクター。
[項目111]
前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞及び/または外有毛細胞である、項目110に記載の核酸ベクター。
[項目112]
前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、項目109に記載の核酸ベクター。
[項目113]
前記治療用タンパク質が、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、OTOF、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、CABP2、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、STRC、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、ELFN1、TTC24、DYTN、KCP、CCER2、LRTM2、KCNA10、NTF3、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、SLC17A8、GRXCR2、BDNF、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、及びBIPからなる群から選択される、項目106~112のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
[項目114]
前記核酸ベクターが、プラスミド、コスミド、人工染色体、またはウイルスベクターである、項目106~113のいずれか1項に記載の核酸ベクター。
[項目115]
前記核酸ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、項目114に記載の核酸ベクター。
[項目116]
前記ウイルスベクターが、AAVベクターである、項目115に記載の核酸ベクター。
[項目117]
前記AAVの血清型が、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sからなる群から選択される、項目116に記載の核酸ベクター。
[項目118]
項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターを含む、組成物。
[項目119]
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目118に記載の組成物。
[項目120]
哺乳動物有毛細胞における治療用タンパク質の発現を増加させる方法であって、前記哺乳動物有毛細胞を、項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
[項目121]
前記治療用タンパク質の発現が、有毛細胞において特異的に増加する、項目120に記載の方法。
[項目122]
前記哺乳動物有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、項目120または121に記載の方法。
[項目123]
前記哺乳動物有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、項目120~122のいずれか1項に記載の方法。
[項目124]
前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、項目123に記載の方法。
[項目125]
前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、項目123に記載の方法。
[項目126]
前記哺乳動物有毛細胞が、前庭有毛細胞である、項目120~122のいずれか1項に記載の方法。
[項目127]
前記治療用タンパク質の発現が、有毛細胞ではない内耳細胞において実質的に増加しない、項目120~126のいずれか1項に記載の方法。
[項目128]
難聴を有するか、または発症するリスクがある対象を治療する方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目129]
前記難聴が、遺伝性難聴である、項目128に記載の方法。
[項目130]
前記遺伝性難聴が、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である、項目129に記載の方法。
[項目131]
前記難聴が、後天性難聴である、項目128に記載の方法。
[項目132]
前記後天性難聴が、騒音誘発性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連難聴、頭部外傷関連難聴、または耳毒性薬物誘発性難聴である、項目131に記載の方法。
[項目133]
前庭機能障害を有するか、または発症するリスクがある対象を治療する方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目134]
前記前庭機能障害が、回転性めまい、めまい、または平衡異常である、項目133に記載の方法。
[項目135]
有毛細胞再生の促進を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目136]
前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、項目135に記載の方法。
[項目137]
前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、項目135に記載の方法。
[項目138]
耳毒性薬物誘発性有毛細胞損傷または死を予防または低減する方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目139]
前記耳毒性薬物が、アミノグリコシド、抗腫瘍薬、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩、及びキニーネからなる群から選択される、項目132または138に記載の方法。
[項目140]
耳鳴りを有する対象を治療する方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目141]
有毛細胞の損傷または死の予防または低減を必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目142]
有毛細胞の生存を増加させることを必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量の項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[項目143]
前記方法が、前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、項目128~132、135、136、及び138~142のいずれか1項に記載の方法。
[項目144]
前記方法が、前記核酸ベクターまたは組成物を投与した後に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、項目128~132、135、136、及び138~143のいずれか1項に記載の方法。
[項目145]
前記方法が、前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の前庭機能を評価することをさらに含む、項目133~135、137~139、141、及び142のいずれか1項に記載の方法。
[項目146]
前記方法が、前記核酸ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の前庭機能を評価することをさらに含む、項目133~135、137~139、141、142、及び145のいずれか1項に記載の方法。
[項目147]
前記核酸ベクターまたは組成物が、局所投与される、項目128~146のいずれか1項に記載の方法。
[項目148]
前記核酸ベクターまたは組成物が、難聴を予防もしくは低減する、前庭機能障害を予防もしくは低減する、耳鳴りを予防もしくは低減する、難聴の発症を遅延させる、前庭機能障害の発症を遅延させる、難聴の進行を遅くする、前庭機能障害の進行を遅くする、聴力を改善する、前庭機能を改善する、有毛細胞の機能を改善する、有毛細胞の損傷を予防もしくは低減する、有毛細胞の死を予防もしくは低減する、または有毛細胞数を増加させるのに十分な量で投与される、項目128~147のいずれか1項に記載の方法。
[項目149]
前記対象が、ヒトである、項目128~148のいずれか1項に記載の方法。
[項目150]
項目106~117のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは項目118もしくは119に記載の組成物を含む、キット。
【配列表】