(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電気的作動および電気的バックアップを備えた、車両用のブレーキバイワイヤブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20240930BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
(21)【出願番号】P 2021559183
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 IB2020053181
(87)【国際公開番号】W WO2020202084
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】102019000005254
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】マッツォレーニ,サムエレ
(72)【発明者】
【氏名】ベッローニ,アンドレア
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車輪と第2の車輪を備えた車両のための車両用ブレーキシステムであって、前記
車両用ブレーキシステムは、
第1のブレーキグループ(8)、第2のブレーキグループ(12)および第3のブレーキグループ(16)であって、
前記第1のブレーキグループ(8)と前記第2のブレーキグループ(12)は前記第1の車輪に関連付けられ、前記第3のブレーキグループ(16)は前記第2の車輪に関連付けられ、前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)はそれぞれ、ロータ(20)、前記ロータ(20)に関連するブレーキ装置(24)、および前記ブレーキ装置(24)のそれぞれ電気
機械式または電気
油圧式アクチュエータ(28)を含むものと、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)のための
第1の制御ユニット(32)および第2の制御ユニット(36)を備えており、
前記第1の制御ユニット(32)は、前記第1のブレーキグループ(8)の前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)用のパイロット装置(40)によって前記第1のブレーキグループ(8)に動作可能に接続され、
前記第2の制御ユニット(36)は、前記第2のブレーキグループ(12)の前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)用のパイロット装置(40)によって前記第2のブレーキグループ(12)に動作可能に接続され、前記第3のブレーキグループ(16)の電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)用のパイロット装置(40)によって前記第3のブレーキグループ(16)に接続され、
前記第1の制御ユニット(32)は、第1の電源(44)に接続されて前記第1の電源によって電力が供給され、
前記第2の制御ユニット(36)は、第2の電源(48)に接続されて前記第2の電源から電力が供給され、
前記第1の電源(44)と前記第2の電源(48)は互いに独立して電気的に絶縁され、
前記第1の制御ユニット(32)と前記第2の制御ユニット(36)はそれぞれ、対応するパイロットシステム(40)を介して、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)のそれぞれの誤動作の場合の標準ブレーキ戦略と、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)の一つ又は複数の電気的故障が検出された場合の故障ブレーキ戦略とを実行するようにプログラムされている、車両用ブレーキシステム。
【請求項2】
前記第1の制御ユニット(32)はまた、前記第3のブレーキグループ(16)の前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)用のパイロット装置(40)によって前記第3のブレーキグループ(16)に動作可能に接続される、請求項1の車両用ブレーキシステム。
【請求項3】
前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)は、前記第3のブレーキグループ(16)を操縦する6相電気モータ(52)を含み、
前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)は、前記6相電気モータ(52)に動作可能に接続されたパイロット装置(40)に接続されている、請求項2の車両用ブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1の制御ユニット(32)は、
3つのパイロット装置(40)のそれぞれによって、前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)、および前記第3のブレーキグループ(16)に動作可能に接続され、
前記第2の制御ユニット(36)は、前記
3つのパイロット装置(40)のそれぞれによって、前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)、および前記第3のブレーキグループ(16)に動作可能に接続され、
前記3つのパイロット装置(40)は互いに独立している、
請求項1の車両用ブレーキシステム。
【請求項5】
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)はそれぞれ、対をなす前記パイロット装置(40)に接続された6相電気モータ(52)によって操縦され、
前記対をなす
前記パイロット装置(40)のそれぞれは、前記制御ユニット(32、36)によって制御される、請求項4の車両用ブレーキシステム。
【請求項6】
前記車両用ブレーキシステム(4)は、ユーザによるブレーキ動作の要求のための
第1の手動作動装置(60)および第2の手動作動装置(64)を含み、
前記
第1の手動作動装置(60)および前記第2の手動作動装置(64)は、
第1の作動センサ(68)と第2の作動センサ(72)が設けられ、
前記第1の作動センサ(68)が前記第1の制御ユニット(32)に接続され、
前記第2の作動センサ(72)が前記第2の制御ユニット(36)に接続されている、請求項1~5のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項7】
前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)はそれぞれ、第1の動力源(44)および第2の動力源(48)に接続され、
前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)の1つに障害が発生した場合に、前記
第1の動力源(44)および前記第2の動力源(48)のそれぞれによって交互に電力を供給できる、請求項1~6のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項8】
追加の制御ユニット(56)または前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)それぞれの電源を管理するようにプログラムされた専用の電気回路が設けられた、請求項7の車両用ブレーキ
システム。
【請求項9】
前記パイロット装置(40)はそれぞれ、標準的なブレーキ戦略に対応する第1のスイッチ位置から、故障ブレーキ戦略に対応する第2のスイッチ位置に切り替わるようにプログラムされている、請求項1~8のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項10】
前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)は、互いに動作可能に接続され、
前記第1の制御ユニット(32)は前記第2の制御ユニット(36)によって実施される標準または故障の動作タイプを知り、
前記第2の制御ユニット(36)は前記第1の制御ユニット(32)によって実施される標準または故障の動作タイプを知る、請求項1~9のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項11】
前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)はそれぞれ、
前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)および/または
前記ブレーキ装置(24)の動作状態を監視するのに適した動作センサ(76)を備え、対応する
前記第1の制御ユニット(32)又は前記第2の制御ユニット(36)に標準または故障動作の表示を送信する、請求項1~10のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項12】
前記
第1の制御ユニット(32)又は前記第2の制御ユニット(36)は、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)のうちの1つのブレーキグループに障害が発生した場合に、残りのブレーキグループの作動が保証および調整されるようにプログラムされている、請求項1~11のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項13】
前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)は、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)のうちの1つのブレーキグループに障害が発生した場合に、残りのブレーキ
グループの作動が保証されるようにプログラムされ、
前記
車両用ブレーキシステム(4)は、
車両のパイロット装置の作動を
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)の作動と調整するように、
前記車両のパイロット装置に動作可能に接続されている、請求項1~12のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項14】
前記第1の制御ユニット(32)及び前記第2の制御ユニット(36)は、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)のうちの1つのブレーキグループに障害が発生した場合に、残りのブレーキグループ
の作動が保証および調整されるようにプログラムされ、
前記
車両用ブレーキシステム(4)は、車両の追加のブレーキ作用を得るために、
前記第1のブレーキグループ(8)、前記第2のブレーキグループ(12)および前記第3のブレーキグループ(16)に動作可能に接続された発電手段に動作可能に接続されている、請求項1~13のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項15】
前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)はそれぞれ、2つの動作センサ(76)を備えており、
前記2つの動作センサ(76)はそれぞれ、
前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ(28)および/または
前記ブレーキ装置(24)の動作状態を監視し、標準または故障動作の表示を前記前記
第1の制御ユニット(32)および前記第2の制御ユニット(36)のそれぞれに送信するのに適している、請求項9~12のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項16】
前記車両用ブレーキシステム(4)は、車両ダイナミクスを管理し、その誘導および独立したブレーキ動作を実行することができる車両の制御ユニットによって管理される、請求項1~15のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【請求項17】
前記第1の車輪が前輪ホイールで前記第2の車輪が後輪ホイール、または、前記第1の車輪が前記後輪のホイールで前記第2の車輪が前記前輪ホイールである、請求項1~16のいずれかの車両用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的作動および電気的バックアップの両方を備えた、車両用のブレーキバイワイヤブレーキシステムに関する。
【0002】
本発明は、車両用のワイヤーブレーキシステムによるブレーキの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
既知のブレーキバイワイヤシステムでは、ブレーキ装置の作動は、ドライバーの直接の動作によっては行われず、通常はレバーまたはペダルに作用するブレーキ動作に対するユーザの要求は、ディスクブレーキキャリパなどのブレーキ装置に作用する電気機械的手段によって駆動に変換される。
【0004】
車両のステアリングシステムがブレーキのタイミングおよび量を決定し、その結果、ブレーキ装置に接続された前記電気機械的手段を作動させる自律ブレーキシステムも知られている。
【0005】
明らかに安全上の理由から、ブレーキシステムは、少なくとも1つのブレーキ装置および/または関連するアクチュエータが電気的に故障した場合に実施されるバックアップ戦略を提供しなければならない。
【0006】
これに関して、例えば、電気的故障の場合に、ブレーキ作用が、機械的に、従来通りに、すなわち、ブレーキ装置を使用して直接ブレーキ操作を要求するユーザによって操作されるレバーまたはペダルを流体的に接続することによって発揮される、ブレーキバイワイヤブレーキシステムが知られている。
【0007】
しかしながら、これらのシステムには、電気システムが常に標準的な動作条件下で動作されること、および油圧システムが電気的故障の場合に動作されることの両方を必要とするという欠点がある。油圧システムの存在は、コスト、質量、高吸湿性油圧作動油の管理、油圧作動油シールの管理と保守などの増加を伴う。
【0008】
さらに、油圧バックアップソリューションは、自動運転車には適用できず、油圧バックアップの場合に最大のブレーキ効率を常に保証するとは限らない。
【0009】
ブレーキシステムの油圧部分なしで機能し、電気的障害が発生した場合に、システムのブレーキ能力の部分的な回復及びそれによる最適ではないがブレーキ自体のパフォーマンスを確実にするためのバックアップ戦略を導入する完全電気ソリューションもある。ただし、これらのソリューションは最適ではなく、障害が発生した場合、常に最適なブレーキが保証されるとは限らない。
【発明の概要】
【0010】
したがって、先行技術を参照して言及された欠点および制限を解決する必要性がますます感じられる。
【0011】
この要求は、請求項1に記載の車両用ブレーキシステムによって満たされている。
特に、この必要性は、以下を含む車両用ブレーキシステムによって満たされる。
車両の複数の車輪をそれぞれ制動することを目的とする第1のブレーキグループ、第2のブレーキグループ、および第3のブレーキグループであって、各ブレーキグループは、ロータ、前記ロータに関連するブレーキ装置、各ブレーキ装置の電気油圧式または電気機械式アクチュエータを含むものと、
前記ブレーキグループ用の第1および第2の制御ユニットとを備えており、
前記第1の制御ユニットは、前記第1のブレーキグループの前記電気機械式または前記電気油圧式のアクチュエータ用のパイロット装置によって前記第1のブレーキグループに動作可能に接続され、
第2の制御ユニットは、前記第2のブレーキグループの前記電気機械式または前記電気油圧式のアクチュエータ用のパイロット装置によって第2のブレーキグループに動作可能に接続され、前記第3のブレーキグループの前記電気機械式または前記電気機械式のパイロット装置によって第3のブレーキグループに接続され、
前記第1の制御ユニットは、第1の電源に接続されて電力が供給され、
第2の制御ユニットは、第2の電源に接続されて電力が供給され、
前記第1および第2の電源は、互いに独立して電気的に絶縁され、
各コントロールユニットは、対応するパイロット装置を介して、各ブレーキグループの誤動作の場合の標準ブレーキ戦略と、1つまたは複数のブレーキグループの電気的障害を検出した場合の障害ブレーキ戦略を実行するようにプログラムされている。
【0012】
一実施形態によれば、第1の制御ユニットは、第3のブレーキグループの電気機械式または電気油圧式アクチュエータ用のパイロット装置によって、第3のブレーキグループにも動作可能に接続されている。
【0013】
一実施形態によれば、電気機械式アクチュエータは、前記第3のブレーキグループを操縦する6相電気モータを含み、第1および第2の制御ユニットは、前記6相電気モータに動作可能に接続され、それを作動させることができる操縦装置を含む。
【0014】
一実施形態によれば、第1の制御ユニットは、3つのそれぞれのパイロット装置によって第1のブレーキグループ、第2のブレーキグループ、および第3のブレーキグループに動作可能に接続され、第2の制御ユニットは、第1の制御ユニット、第2のブレーキグループ、および第3のブレーキグループに対して、3つの相対的なパイロット装置によって、動作可能に接続される。前記パイロット装置は互いに独立している。
【0015】
一実施形態によれば、各ブレーキグループは、操縦装置の対に接続された6相電気モータによって操縦され、前記対の各操縦装置は、相対制御ユニットによって制御される。
【0016】
一実施形態によれば、システムは、ユーザによるブレーキ動作の要求のための第1および第2の手動作動装置を含み、両方の手動作動装置は2つの作動センサを備え、第1の作動センサは第1の制御ユニットに接続され、第2の作動センサは第2の制御ユニットに接続されている。
【0017】
一実施形態によれば、各制御ユニットは、前記第1および第2の電源に接続され、その結果、それらのうちの1つに障害が発生した場合に、前記電源のそれぞれによって交互に電力を供給できる。
【0018】
一実施形態によれば、各制御ユニットの電源を管理するようにプログラムされた追加の制御ユニットが提供される。
【0019】
一実施形態によれば、各パイロット装置は、標準的なブレーキ戦略に対応する第1のスイッチ位置から、故障ブレーキ戦略に対応する第2のスイッチ位置に切り替わるようにプログラムされる。
【0020】
一実施形態によれば、第1および第2の制御ユニットは、互いに動作可能に接続され、その結果、それぞれが、他の制御ユニットによって実施される動作のタイプ(標準または障害)を知る。
【0021】
一実施形態によれば、各電気機械式アクチュエータは、それぞれの電気機械式または電気油圧式アクチュエータおよび/またはそれぞれのブレーキ装置の動作状態を監視し、対応する制御ユニットに標準操作または故障操作の指示を送信する。
【0022】
一実施形態によれば、制御ユニットは、ブレーキグループの故障の場合に、残りのブレーキグループの作動が確実にされ、調整されるようにプログラムされる。
【0023】
一実施形態によれば、制御ユニットは、一方のブレーキグループに障害が発生した場合に残りのブレーキユニットの作動が保証され、パイロット装置の作動を作動ブレーキユニットの作動と調整するために、ブレーキシステムが車両のパイロット装置に動作可能に接続されるようにプログラムされる。
【0024】
一実施形態によれば、制御ユニットは、ブレーキグループに障害が発生した場合に、残りのブレーキグループの動作が保証および調整されるようにプログラムされ、ブレーキシステムは、車両の追加のブレーキ作用を得るために、ブレーキグループに操作可能に接続された発電手段に動作可能に操作可能に接続される。
【0025】
一実施形態によれば、各電気機械式または各電気油圧式アクチュエータは、2つの動作センサを備えており、それぞれが、それぞれの電気機械式アクチュエータおよび/またはそれぞれのブレーキ装置の動作状態を監視し、標準動作または故障動作の表示を両方のコントロールユニットに送信するのに適している。
【0026】
一実施形態によれば、システムは、車両ダイナミクスを管理し、その誘導および独立したブレーキ動作を実行することができる車両の制御ユニットによって管理される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は、その好ましい非限定的な実施形態の以下の説明からより明確になるであろう。
【0028】
【
図1】
図1は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【
図2】
図2は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【
図3】
図3は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【
図4】
図4は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【
図5】
図5は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【
図6】
図6は、本発明によるブレーキシステムの可能な実施形態の概略図を表す。
【発明の詳細な説明】
【0029】
以下に説明する実施形態に共通の要素または要素の一部は、同じ参照符号で参照される。
【0030】
上記の図を参照すると、参照符号4は、全体として、車両用ブレーキシステムを示す。
【0031】
以上の図を参照すると、参照符号4は、全体として、車両用ブレーキシステムを示す。
【0032】
本発明の目的のために、車両とは、少なくとも2つの車輪を備えた自動車を意味する。
【0033】
特に、車両ブレーキシステム4は、少なくとも第1のブレーキグループ8、第2のブレーキグループ12、および第3のブレーキグループ16を備える。
【0034】
前記第1、第2および第3のブレーキグループ8、12および16はそれぞれ、三輪車の場合、ブレーキングのために、別個のホイール(図示せず)に関連付けることができる。
【0035】
二輪車の場合、2つのブレーキグループを同じ車輪(例えば、オートバイの前輪)に関連付け、一つのブレーキグループを他の車輪(例えば、後輪)に関連付けることが可能である。
【0036】
本発明の目的のために、前記ブレーキグループは、例えば、車両自体の前車軸および後車軸など、車両の異なる車軸に配置された車輪に関連付けることができる。二輪車の場合、2つのブレーキグループを同じ車軸に取り付ける必要がある。
【0037】
各ブレーキグループ8、12、16は、ブレーキをかけるホイールと一体的に回転するロータ20と、前記ロータ20および対応するホイールをブレーキするように構成されたブレーキ装置24とを備える。
【0038】
ロータのタイプは、使用するブレーキ装置のタイプによって異なる。
【0039】
例えば、ドラムブレーキタイプのブレーキ装置の場合、ロータはベルを含み、ディスクブレーキを備えたブレーキ装置24の場合、ロータ20は既知の通りブレーキディスクを含む。
【0040】
各ブレーキグループ8、12、16は、各ブレーキ装置24の電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28をさらに備える。
【0041】
電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28は、ブレーキ装置24を有効および無効にするように構成された電気モータを含み得る。例えば、前記電気機械式アクチュエータ手段28は、ウォームスクリュー機構によって、ディスクブレーキキャリパのパッドに作用する少なくとも1つのピストンのプッシャーに接続された電気モータを含み得る。
【0042】
電気油圧式アクチュエータの場合、流体を加圧する機械的手段の使用を提供することが可能であり、これは前記ブレーキ装置24を遠隔で作動させる。
【0043】
有利には、ブレーキシステム4は、前記ブレーキグループ8、12、16のための第1および第2の制御ユニット32、36を備える。
【0044】
一実施形態(
図1~2)によれば、第1の制御ユニット32は、第1のブレーキグループ8の前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28用のパイロット装置40によって第1のブレーキグループ8に動作可能に接続される。
【0045】
さらに、第2の制御ユニット36は、第2のブレーキグループ12の前記電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28のパイロット装置40によって第2のブレーキグループ12に動作可能に接続され、第3のブレーキグループ16の電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28用のパイロット装置40によって第3のブレーキグループ16に接続される。
【0046】
このように、制御ユニットは1つのブレーキグループ(例えば、第1のブレーキグループ)のみを制御し、他の制御ユニットは2つのブレーキグループ(例えば、第2および第3)を制御する。
【0047】
好ましくは、様々なブレーキグループ8、12、16のパイロット装置40は、電気的および機械的に独立しており、互いに分離している。
【0048】
第1の制御ユニット32は、第1の電源44に接続されて電力を供給され、第2の制御ユニット36は、第2の電源48に接続されて電力を供給される。
【0049】
有利には、前記第1および第2の電源44、48は独立しており、互いに電気的に絶縁されている。
【0050】
電源は、通常、鉛蓄電池、リチウムイオン電池などである。
【0051】
前記電源44、48の個々の電源は、前記電源44、48のうちの1つの電気的故障の場合、少なくとも1つのブレーキグループ8、12、16の正しい動作を保証する。
【0052】
好ましくは、各制御ユニット32、36は、前記第1および第2の電源44、48に接続され、その結果、それらの1つに障害が発生した場合に、前記電源44、48のそれぞれによって交互に電力を供給できる。このように、電源の故障は、それぞれのパイロット装置40および電気機械式および/または電気油圧式アクチュエータ28の制御ユニット32、36の動作に影響を及ぼさない。
【0053】
例えば、追加の制御ユニット56または各制御ユニット32、36の電源を管理するようにプログラムされた専用の電子回路が提供される。
【0054】
特に、各制御ユニット32、36は、対応するパイロットシステム40を介して、各ブレーキグループ8、12、16の誤動作の場合の標準ブレーキ戦略、およびそれが1つまたは複数のブレーキグループ8、12、16の電気的故障を検出した場合の故障ブレーキ戦略を実施するようにプログラムされる。
【0055】
標準動作とは、ユーザまたは車両の自動運転システム(提供されている場合)によって要求されたブレーキ動作を実行できるブレーキシステムに異常がない通常の動作状態を意味する。
【0056】
電気的故障状態とは、ブレーキグループ8、12、16、例えば、動力源44、48、パイロット装置40、電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28の動作を部分的または完全に妨げる誤動作を意味する。
【0057】
さらに、「故障」は、機械的構成要素(ブレーキ装置24および/または電気機械的または電気油圧式アクチュエータ28)および電気的/電子的構成要素の両方に対する問題を含み得るが、ブレーキシステム4の動作に関するデータの読み取る、制御ユニット32、36を管理するソフトウェアの問題も含み得る。
【0058】
各パイロット装置40は、標準的なブレーキ戦略に対応する第1のスイッチ位置から、故障ブレーキ戦略に対応する第2のスイッチ位置に切り替わるようにプログラムされている。
【0059】
好ましくは、第1および第2の制御ユニット32、36は、他方の制御ユニット32、36によって実施される動作のタイプ(標準または障害)をそれぞれが知るように、互いに動作可能に接続されている。
【0060】
このように、各制御ユニットは、ブレーキシステム4全体の動作に関する情報を有するように、他のユニットおよびそれに接続されたそれぞれの装置の動作を可能にする。
【0061】
好ましくは、制御ユニット32、36は、ブレーキグループの故障の場合に、残りのブレーキグループの作動が確実にされ、調整されるようにプログラムされる。
【0062】
一実施形態によれば、制御ユニット32、36は、1つのブレーキグループの故障の場合に残りのブレーキユニットの作動が保証され、ブレーキシステム4が作動可能に車両(図示せず)のパイロット装置に接続されるようにプログラムされ、パイロット装置の作動を作動ブレーキユニットの作動と調整する。このようにして、車両安定性制御の完全な管理を得ることが可能です。
【0063】
さらなる可能な実施形態によれば、制御ユニット32、36は、ブレーキグループに障害が発生した場合に、残りのブレーキグループの動作が保証および調整され、ブレーキシステムが、ブレーキグループに操作可能に接続された発電手段に操作可能に接続されて、車両の追加のブレーキ作用を得るように、プログラムされる。
【0064】
言い換えれば、回生ブレーキにより、各車輪に適用されるブレーキグループの誤動作を補償することができるさらなるブレーキ効果を得ることが可能である。
【0065】
ブレーキシステム4はまた、車両の動力特性を管理し、その誘導および独立したブレーキ動作を実行することができる車両の制御ユニットによって管理され得る。
【0066】
図1~2の実施形態では、ブレーキシステムは、電気的故障の場合にブレーキグループ8、12、16の動作を常に保証する。
【0067】
可能な実施形態(
図3~4)によれば、第1の制御ユニット32は、第3のブレーキグループ16の電気機械式または電気油圧式のアクチュエータ28のための電気用のパイロット装置40によって、第1のブレーキグループ8だけでなく第3のブレーキグループ16にも動作可能に接続される。
【0068】
例えば、この実施形態(
図3~4)では、電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28は、前記第3のブレーキグループ16を操縦する6相電気モータ52を含み、第1および第2の制御ユニット32、36は、前記6相電気モータ52に動作可能に接続されたパイロット装置40に接続されている。
【0069】
図3~4のブレーキシステムは、電気的障害が発生した場合に、2つのブレーキグループ8、12、16の動作を保証する。
【0070】
さらなる実施形態(
図5~6)によれば、第1の制御ユニット32は、3つのそれぞれのパイロット装置40によって、第1のブレーキグループ8、第2のブレーキグループ12、および第3のブレーキグループ16に動作可能に接続される。第2の制御ユニット36は、3つのそれぞれのパイロット装置40によって第1のブレーキグループ8、第2のブレーキグループ12、および第3のブレーキグループ16に動作可能に接続され、前記パイロット装置40は互いに独立している。
【0071】
この実施形態では、各ブレーキグループ8、12、16は、パイロット装置40の対に接続された6相電気モータ52によって操縦され、前記対の各パイロット装置40は、相対制御ユニット32、36によって制御される。
【0072】
図5~6のブレーキシステムは、電気的障害が発生した場合に、3つのブレーキグループ8、12、16すべての動作を保証します。
【0073】
本発明によるブレーキシステム4は、通常、ユーザによるブレーキ動作の要求のための第1および第2の手動作動装置60、64を備える。
【0074】
好ましくは、両方の手動作動装置60、64は、2つの作動センサ68、72を備え、第1の作動センサ68は、第1の制御ユニット32に接続され、第2の作動センサ72は、第2の制御ユニット36に接続される。したがって、コントロールユニットに障害が発生した場合に、2つの独立したブレーキコントロールがある車両(たとえばオートバイ)では、もう一方が両方のコントロールを介して受信した両方の要求に従ってブレーキをかけ続けることができる。
【0075】
一実施形態によれば、各電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28は、電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28および/または相対的な制動装置24の動作状態を監視し、対応する制御ユニット32、36に標準または故障動作の表示を送信するのに適した動作センサ76を備えている。
【0076】
さらなる実施形態によれば、各電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28は、2つの動作センサ76を備えており、それぞれが、電気機械式または電気油圧式アクチュエータ28および/またはブレーキ装置24の動作状態を監視するのに適しており、標準または故障動作の表示を両方の制御ユニット32、36に送信する。
【0077】
本発明によるブレーキシステム4の装置の様々な電気的、電気機械的構成要素間の動作接続は、例えば、CANタイプの電気ラインおよび/またはデータ伝送ライン33によって行われ得ることに留意されたい。このように、故障状態を検出したコントロールユニットは、故障戦略を実行することによって車両のブレーキを管理することができる。
【0078】
前述のことから理解できるように、本発明による車両用ブレーキシステムは、従来技術の欠点を克服する。
【0079】
実際、ブレーキシステムは、油圧バックアップの一部を完全に排除することを可能にし、一般に、故障の場合でも信頼性または安全性を失うことなく、従来のブレーキシステムに典型的なオペレーターの手動介入を必要とするバックアップを排除する。
【0080】
システムのバックアップ部分を排除することで、システム全体の質量、油圧ライン、およびそれらに関連するすべてのシーリングの問題を減らすことができる。さらに、吸湿性が強いため、ブレーキ流体を定期的に交換する必要が無い。
【0081】
さらに、本発明のシステムは、自動運転またはいずれにせよ補助駆動の全電気自動車に統合するのに非常に役立ち、ブレーキ動作は、車両の運転と制御を担う制御ユニットによって自律的に制御することができる。
【0082】
さらに、本発明のシステムはまた、ユーザが手動でブレーキ動作を要求する非自律運転ソリューションにも適している。
【0083】
さらに、ブレーキシステムは、電気的障害が発生した場合でもブレーキの安全性を保証する。
実際、システムは、
電気的障害が発生した場合でも、少なくとも1つのブレーキグループの動作を保証すること、
ブレーキシステム内の故障のタイプと位置を正確に特定すること、
ブレーキ戦略をシステムの実際の動作条件に適合させること、
すべての動作条件で車両の安定性を維持すること、が可能である。
【0084】
電気的故障の場合のブレーキグループの動作に関して、本発明は、特に、異なる動作安全装置を備えた3つの実施形態を提供する。
図1-2の実施形態では、電気的障害が発生した場合に1つのブレーキグループを操作できる。
図3-4の実施形態では、電気的障害が発生した場合に2つのブレーキグループを操作できる。
【0085】
図5-6の実施形態は、電気的故障の場合に、3つのブレーキグループすべての動作を可能にする。
【0086】
さらに、見られるように、車両操舵制御システムに作用することによって、または回生ブレーキ装置に作用することによって、車輪群の誤動作を補償することが可能である。
【0087】
前者の場合、例えば、ヨーイング現象を修正するために車両チェックが実行され、後者の場合、その速度を低下させるために追加のブレーキ作用が得られる。明らかに、2つのアクションは互いに組み合わせることができる。
【0088】
したがって、本発明のシステムは、従来の油圧ブレーキシステムと同じレベルの信頼性および安全性を有し、油圧バックアップの欠点がなく、オペレータによる手動バックアップの必要がなく、それがまたできるという、自動運転車で使用される利点を有する。
【0089】
偶発的および特定の要件を満たすために、当業者は、上記の車両用ブレーキシステムにいくつかの修正および変形を行うことができ、これらはすべて、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にある。