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特許7562566液晶に基づくスイッチング素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】液晶に基づくスイッチング素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240930BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20240930BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20240930BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20240930BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20240930BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20240930BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240930BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G02F1/13 505
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/54 B
C09K19/38
G02F1/13 101
G02F1/13 500
G02F1/1337
G02F1/1334
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021568091
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020063106
(87)【国際公開番号】W WO2020229434
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】19174718.7
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルール ファン ラーク
(72)【発明者】
【氏名】パウル フェルビュント
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/001817(WO,A1)
【文献】特表2018-538555(JP,A)
【文献】特表2017-513975(JP,A)
【文献】特表2013-545129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
C09K 19/12
C09K 19/30
C09K 19/34
C09K 19/54
C09K 19/38
G02F 1/1337
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能でかつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子の製造方法であって、
(i)1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物、および1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体を、それぞれが電極を備えた2つの対向する透過基材の間に介在する層として供給する工程であって、
前記液晶媒体は、70℃以上の透明点を有し、かつ
前記1種以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全含有量を基準として4重量%以下の量で前記媒体に含まれる、工程および
(ii)前記1種以上の重合性メソゲン化合物を、前記層内の直流電界の存在下で重合する工程
を含む、方法。
【請求項2】
印加された直流電界が、前記液晶媒体を含む前記層内にホメオトロピック配向を誘導し、ここで、前記層は、4μm~40μmの範囲の厚さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)に記載の重合を、光重合により行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の液晶媒体が、1種以上の光開始剤をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の重合性メソゲン化合物のうちの1種以上が、1つ、または2つ以上のアクリレート基および/またはメタクリレート基を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)に記載の重合を、0.1mW/cm~100mW/cmの範囲の強度を有する光を用いて1分~240分の時間にわたって行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)の後に、直流電界の存在下で熱処理を行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記電極が、基材上に支持され、前記液晶媒体に面した透明な導電層として配置されており、前記透明な導電層は、それぞれ、2つの透明な誘電体層の間に埋め込まれており、任意で前記液晶媒体と直接接触している配列層がさらに設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の液晶媒体が、媒体の全含有量を基準として、少なくとも15重量%の式I
【化1】
の1種以上のメソゲン化合物を含み、
ここで、
およびRは、互いに独立して、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルから選択される基を表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、
11は、
【化2】
を表し、
nは、0または1を表し、かつ
21、A31およびA41は、互いに独立して、
【化3】
を表し、
ここで、Lは、各場合に、同一または異なって、F、ClおよびBrから選択されるハロゲンである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記液晶媒体が、式IIおよび式III
【化4】
の化合物の群から選択される1種以上のメソゲン化合物をさらに含み、
ここで、
、R、RおよびRは、互いに独立して、F、CF、OCF、CN、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルから選択される基を表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、そして
、L、L、LおよびLは、互いに独立して、HまたはFを表す、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記液晶媒体が、正の誘電異方性Δεを示し、かつ20℃および589nmで測定した0.13以上の光学異方性Δnを示し、
前記液晶媒体に含まれる前記1種以上のキラル化合物が、5μm-1以上のらせん誘起力の絶対値を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能であり、かつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子であって、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施することによって得られるか、またはそれぞれ得ることが可能な、スイッチング素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能でかつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子の製造方法であって、1種以上の重合性メソゲン化合物を、1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物および1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体を含む層に供給し、層内の直流(DC)電界の存在下で重合させる、方法に関する。本発明はさらに、本方法を実施することによって得られたまたはそれぞれ得ることが可能なスイッチング素子、およびウィンドウにおけるスイッチング素子の使用に関する。
【0002】
光シャッターなどの光強度変調器は、液晶(LC)に基づくものであり得る。原理的には、このような光シャッターは、光の散乱または光の吸収に依存し得る。光の散乱を用いるLCに基づく光シャッターとしては、いわゆるポリマー分散型液晶(PDLC)、ポリマーネットワーク型液晶(PNLC)およびコレステリック液晶(CLC)デバイスが挙げられる。これらの散乱型デバイスは、光学的透明または透過状態と、半透明または不透明状態との間でスイッチングされ得る。
【0003】
LCに基づく光シャッターまたは変調器は、例えば、建築物、自動車、航空および船舶の用途に、切り替え可能なウィンドウで使用され得る。散乱モードで動作するデバイスは、特にプライバシーウィンドウとして使用され得る。このようにして、必要に応じて、デバイス、特にウィンドウ素子を、表示接触可能な透明状態から、視覚的バリアを与える散乱状態にスイッチングすることにより、プライバシーモードを提供することができる。
【0004】
光の散乱または拡散は、直射日光の照射から生じるぎらぎらまたは眩しさを低減することにも有用であり得る。
【0005】
状態間のスイッチングは、例えば、熱的に制御され得る。しかしながら、多くの場合、電気的なスイッチングを用いることは、適切であり、かつ有利でさえあり得る。デバイスが、非散乱状態、すなわち光学的透明状態から散乱状態にスイッチングされると、光の透過率が変化して半透明の外観が生じ、この外観は、曇り、濁り、拡散、霞または不透明と認識されることもあり得る。
【0006】
D. -K. Yangらの“Cholesteric liquid crystal/polymer dispersion for haze-free light shutters”, Applied Physics Letters, 60 (1992年) 3102~3104頁には、ポリマーを低濃度でコレステリック液晶に分散させること、およびこの材料の、不透明な光散乱状態と透過状態との間でスイッチングされ得る光変調器での使用が記載されている。
【0007】
国際公開第00/60407号には、散乱および透過の動作モードを有する電気光学グレージング構造が記載されている。
【0008】
国際公開第2009/151716号には、双安定二周波ポリマー安定化コレステリック液晶材料に基づく切り替え可能な液晶ウィンドウが記載されており、該液晶材料は、第1の周波数を有する電圧パルスの印加時に光学的透明状態から光散乱状態に切り替わり、第2の周波数を有する電圧パルスの印加時に光散乱状態から透過状態に切り替わる。
【0009】
国際公開第2016/173693号には、スイッチング状態の少なくとも1つにおいて前方散乱特性を有し、かつ透過状態から半透明状態または不透明状態へのスイッチングを容易にする、スイッチング素子で使用するための液晶媒体を含むスイッチング層が記載されている。
【0010】
当該技術分野では、好ましい性能を有し、適度に低電圧かつ低エネルギー消費で適切に動作し得、かつ適切な信頼性および安定性(例えば、電気的破壊および光の安定性に対して)を有し得る、プライバシーウィンドウでの使用に特に適した切り替え可能な素子が必要とされている。また、このような切り替え可能なデバイスを製造するための適切な方法も当該技術分野で必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の課題は、光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的に切り替え可能であり、改善された光学的および電気光学的性能を有し、プライバシーウィンドウでの使用に特に適したスイッチング素子を製造するための、容易で効率的かつ強力な方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、本方法を実施することによって得られ、かつスイッチングデバイス、特に散乱モードを有する切り替え可能なウィンドウ素子において特に有用な、改良されたスイッチング素子を提供することである。本発明のさらなる課題は、以下の詳細な説明から当業者には直ちに明らかになる。
【0012】
本発明の課題は、独立請求項で規定された主題によって解決され、一方、好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項に記載され、以下でさらに説明される。
【0013】
本発明は特に、主要な態様、好ましい実施形態、および特定の特徴を含む以下の項目を提供し、これらはそれぞれ単独で、さらに組み合わせて、上記の課題の解決に貢献し、最終的にさらなる利点を提供する。
【0014】
本発明の第1の態様は、光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能でかつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子の製造方法であって、
(i)1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物、および1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体を、それぞれが電極を備えた2つの対向する透過基材の間に介在する層として供給する工程であって、
該液晶媒体は、70℃以上の透明点を有し、かつ
該1種以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全含有量を基準として4重量%以下の量で該媒体に含まれる、工程および
(ii)1種以上の重合性メソゲン化合物を、層内に印加されたDC(直流)電界の存在下で重合する工程
を含む方法を提供する。
【0015】
本明細書において、直流(DC)電界とは、少なくとも考慮されている所定の期間において、電界がその極性を変化させないことを意味する。これは、直流(DC)電界とは、周波数が0Hzの一定または静的な電界放出を指すことを意味する。しかしながら、電界の大きさが時間とともに変化する場合または電界の極性がかなりの時間後に、例えば数分後に逆転する場合に生じ得る、実質的に一定の電界および実質的に0Hzでの電界放出も、本発明の意味に含まれると理解される。
【0016】
通常、0V超から220Vまでの範囲の直流電圧を印加することができ、その上限は、絶縁破壊が回避されるように選択されている。
【0017】
本方法によれば、印加された直流電界が、液晶媒体を含む層にホメオトロピック配向を誘導することが好ましい。これは、媒体がホメオトロピック配向を示し、さらに直流電界が印加されている間に、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合が起こることを意味する。
【0018】
本発明では、スイッチング素子は、散乱状態だけでなく、光学的透明状態においても、好ましい性能および外観を有することが望ましいことが認識された。散乱状態では、最終的に得られるスイッチング層では、好ましい散乱効率ひいては適切なプライバシーモードを確保するために、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはその重合からそれぞれ得ることができる1種以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、1種以上のキラル化合物とが使用されている。さらに、散乱状態では、こうして均質で色のない外観(colour-neutral appearance)が達成され得る。
【0019】
しかしながら、好ましい透明状態、すなわち有利に均質で低ヘイズでかつ光学的透過状態を提供することがさらに望ましい。この点に関して、キラル化合物およびポリマー成分の使用は、光学的に透明または低ヘイズの状態で、例えば白い霧のような外観として目立つ残留ヘイズにつながることがあり、ほとんどの場合、特にスイッチング素子がウィンドウに使用される場合には望ましくないことが認識された。
【0020】
驚くべきことに、重合中に直流電界を印加すると、顕著な改善が得られることがわかった。特に、残留ヘイズが顕著に低減された、あるいはヘイズが全く見られない光学的透明状態が得られる。さらに、本方法による直流電界の使用により、重合中の媒体を含む層における不要な変化、特に電圧の不要な低下を最小化または回避することができ、異なる基材サイズや異なる基材形状(例えば、三角形、長方形または多角形)を容易に使用できることがわかった。したがって、この方法は、例えば、基材の全領域にわたって重合中に信頼性の高い予測可能な有効電圧の設定を改善することによって、得られる製品に関しても、方法自体に関しても利益をもたらす。さらに、驚くべきことに、本発明による方法を使用することで、例えば、タッチや機械的な負荷による圧力に対して、圧力感度が有利に低減され得ることがわかった。このことは、欠陥、特にいわゆるムラ欠陥を回避または最小化するのに有益に寄与し得る。
【0021】
本方法を用いることで、例えば、電気的破壊や光安定性に対して良好な信頼性、耐久性および安定性、特にUV光安定性を示すスイッチング素子を製造することができる。これは、媒体が重合中に直流電界に曝されることを考えると驚くべきことである。なぜなら、特に、原理的に、直流電圧を誘電体材料に印加することは、イオン化や電気分解による電気化学的劣化、不要な不純物、特に荷電不純物の生成、イオンの永久分離や局所的に不均一な蓄積が生じ得るという点で、有害である可能性があるからである。これにより、信頼性の低下や電圧保持率(VHR)が低下し、デバイスの性能や寿命が低下する可能性がある。
【0022】
そのため、比較可能な方法では、電界を重合中に印加する場合、これまでは、交流(AC)電界の使用のみが考慮されていた(ACとは、極性の変化、特に周期的な変化を指す)。
【0023】
典型的なAC周波数は、20Hz以上、例えば50Hzや60Hz、さらに数kHzまでの高い周波数を有する。しかしながら、本明細書では、AC周波数は、1Hzに近い範囲または1Hzより少し低い周波数、例えば0.2Hzも指す。
【0024】
驚くべきことに、本発明では、直流電圧が、本方法に記載のように使用され得ることが判明し、このことはさらに、本明細書の上記および下記のような有益な効果および特性をもたらす。特に、本明細書に記載の重合および重合安定化は、散乱状態での散乱性能および効率に利益をもたらし、さらに、透過状態で好ましい透明性を達成することができる。
【0025】
驚くべきことに、本発明によるDC重合を用いて製造したスイッチング素子の電圧保持率(VHR)が、AC重合を代わりに用いた場合に比べて低下しないことがわかった。このことは、DC重合を用いているにもかかわらず、不要な電荷の発生や材料の劣化を有利に回避または最小化することができ、したがって、スイッチング電圧やスイッチング性能、さらには信頼性や寿命に関して、さらなる製品の利益を適切に得ることができることを意味する。
【0026】
本発明の別の態様は、光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能であり、かつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子であって、本発明による方法を実施することによって得られるか、またはそれからそれぞれ得ることが可能な、スイッチング素子に関する。
【0027】
本発明によれば、自動車ならびに電車、飛行機および船などの他の輸送用途、ならびに建築用途の切り替え可能なウィンドウに使用され得る有利なスイッチング素子が提供される。このスイッチング素子は、所望の際にプライバシーモードを提供する上で特に有用かつ効率的であり、すなわち、表示接触状態と、視覚的バリアを与えるプライベートな状態との間で切り替え可能である。このデバイスは、電圧をかけることにより簡単にこれらの状態間で切り替えることができる。さらに、スイッチングは、高速で、特に数秒、さらには1秒以下のオーダーであり得る。
【0028】
ウィンドウの構成要素として使用する場合、素子は、最小限のスペースで設置することができ、例えば、従来のオーニングやブラインドと比較して大きな利点があり得る。
【0029】
本発明によるスイッチング素子、特にウィンドウ素子は、光の通り道、特に太陽光の通り道だけでなく、ランプや照明器具のような人工光源からの光の通り道を調整または調節するのに有用である。
【0030】
本発明によるスイッチング素子、特にウィンドウ素子は、外部ファサードのウィンドウだけでなく、室内においても、例えば部屋間の壁の仕切りに、また、部屋や空間の個々のコンパートメントを分離するための素子にも有利に使用され得る。この場合、ウィンドウ素子を透明から散乱に切り替えることで得られるプライバシーは、部屋の異なる部分の間に視覚的な障壁を作り出すことができる。建物のウィンドウ以外にも、本発明のデバイスは、自動車、商用車、電車、飛行機、船などにも使用され得る。
【0031】
特に、本発明によるスイッチング素子は、光学的透明状態において、有利に低減された残留ヘイズを示すか、あるいはさらに認識可能な残留ヘイズを全く示さず、このことは素子がウィンドウの一部を形成する場合に特に好ましい。
【0032】
そこで、本発明の別の態様では、
- 1種以上のメソゲン化合物と1種以上のキラル化合物とを含む液晶媒体であって、70℃以上の透明点を有する液晶媒体と、
- 1種以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られた、またはそれからそれぞれ得ることが可能な1つ以上のポリマー構造体を含むポリマー成分と
を含む材料を含有するスイッチング層を備える、光学的透明状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的に切り替え可能なスイッチング素子であって、ポリマー成分は、材料全体の含有量を基準として、4重量%以下の量で材料中に含有されており、好ましくはASTM D 1003に準拠して測定された、光学的透明状態のスイッチング素子は、6%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは3.5%未満、特に2.5%未満のヘイズを有する、スイッチング素子が提供される。
【0033】
好ましくは、液晶媒体は、散乱状態で0.55μm以上のピッチを示す。
【0034】
驚くべきことに、上記および下記のような液晶媒体およびポリマー成分を含む材料を含む素子にスイッチング層を含めることにより、改良されたスイッチング素子、特にウィンドウ素子が得られることがわかった。特に、少なくとも1種の重合性メソゲン化合物の重合から得られるポリマー構造を含む比較的少量のポリマー成分と組み合わせて目下定義されているような、高い透明点、および好ましくは長いピッチを有するコレステリックまたはキラルネマチック媒体を提供することにより、驚くべきことに、良好な透明状態、すなわち有利に均質で低ヘイズの光学的透過状態、ならびに均質で色のない外観とともに向上した散乱効率を有する散乱状態を有するデバイスを得ることができる。
【0035】
特に、コレステリック媒体、好ましくは長いピッチのコレステリック媒体と、本明細書に記載されるポリマー成分の存在との組み合わせによって、適度に広い角度の散乱分布を有する予想外に強い散乱が生じ得る。このことは、すでに素子内にスイッチング層が1つだけ設けられることによって、適切なプライバシーモードが得られるという点で有益である。加えて、スイッチング層の厚さは、比較的薄くてもよく、特に実質的に40μm未満でもよく、これにより、動作電圧や電力消費が低減するだけでなく、材料の使用量も削減される。
【0036】
したがって、本発明によれば、有利な低ヘイズの透明状態と、望ましくない色効果が有利に回避または最小化される、十分に均一な散乱を伴う有利な不透明状態との双方を有する、プライバシー用途のためのスイッチング素子を得ることができる。
【0037】
本発明によるスイッチング素子は、好ましくは、電磁放射、好ましくは光、特に太陽光だけでなく、人工光源からの光の通過を調整するための装置において使用される。
【0038】
スイッチング層中の材料が、好ましくは比較的長いピッチおよび有利に高い透明点を有するキラルネマチックまたはコレステリック液晶媒体を、目下定義されているようなポリマー成分と組み合わせて含有する場合、特にいわゆるポリマー安定化コレステリック組織(PSCT)が提供される場合には、例えば散乱効率または散乱効果の均一性および外観に関して、特定の利点が得られることも目下認識されている。
【0039】
この点に関して、本方法に従って、改善された特性を有する、特に適度に高い透明点を有し、かつ好ましくは適度に長いピッチを有する液晶媒体が提供される。この媒体は、スイッチング素子のスイッチング層において変調材料を製造するのに特に有用である。このことは、良好な安定性、例えば電気的破壊に対する安定性、および有利に低い動作電圧または低いエネルギー消費を有し、かつ十分に効率的かつ十分に均一な散乱を示し得るスイッチング素子を得ることに有利に寄与し得る。加えて、媒体は、有利に高い電圧保持比(VHR)および良好な光安定性、良好な低温安定性および保存に適した安定性とともに、適度に高い光学異方性などのさらなる利点を提供し得る。
【0040】
本発明によれば、液晶媒体および本明細書に記載される変調材料は、スイッチング層に配置かつ使用される。したがって、スイッチング層は、媒体または材料を含む、好ましくはそれらからなる。スイッチング層は、2つの基材の間に配置されており、例えば、電気的に切り替え可能であり、かつ光学的透過状態および散乱状態で動作可能なスイッチング素子をもたらす。好ましくは、電極は、各基材の内表面上にまたはその上部に導電層として配置されている。
【0041】
本発明の別の態様では、本発明によるスイッチング素子を含むウィンドウが提供される。
【0042】
したがって本発明を限定することなく、以下では、本発明を、態様、実施形態および特定の特徴の詳細な説明によって説明し、特定の実施形態をより詳細に説明する。
【0043】
本明細書における「液晶」(LC)という用語は、好ましくは、いくつかの温度範囲で液晶中間相を有する材料または媒体(サーモトロピックLC)に関する。それらはメソゲン化合物を含む。
【0044】
「メソゲン化合物」および「液晶化合物」という用語は、1つ以上のカラミチック(棒状または板状/鞘状)または円盤状(ディスク状)のメソゲン基、すなわち、液晶相または中間相の挙動を誘発する能力を有する基を含む化合物を意味する。
【0045】
LC化合物または材料およびメソゲン基を含むメソゲン化合物または材料は、それ自体が必ずしも液晶相を示す必要はない。また、それらが、他の化合物との混合物においてのみ液晶相挙動を示すことも可能である。これには、低分子量の非反応性液晶化合物、反応性または重合性の液晶化合物、および液晶ポリマーが含まれる。
【0046】
カラミチックメソゲン化合物は、通常、互いに直接または連結基を介して結合した1つ以上の芳香族または非芳香族の環状基からなるメソゲンコアを含み、任意に該メソゲンコアの末端に結合した末端基を含み、かつ任意に該メソゲンコアの長辺側に結合した1つ以上の側鎖基を含み、その際、これらの末端基および側鎖基は、通常、例えば、カルビル基もしくはヒドロカルビル基、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ等の極性基、または重合性基から選択される。
【0047】
簡潔にするために、「液晶」または「液晶性」の材料または媒体という用語は、液晶材料または媒体およびメソゲン材料または媒体の双方に用いられ、その逆もまた同様である。また、「メソゲン」という用語は、材料のメソゲン基に用いられる。
【0048】
「非メソゲン化合物または材料」という用語は、上記で定義されるメソゲン基を含まない化合物または材料を意味する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、1つ以上の異なる種類の繰り返し単位(分子の最小の構成単位)の骨格を包含し、かつ一般的に知られている用語「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」などを含む分子を意味すると理解される。さらに、ポリマーという用語には、ポリマー自体に加えて、開始剤、触媒、およびそのようなポリマーの合成に付随する他の要素からの残留物が含まれることが理解されており、その際、このような残留物は、共有結合していないものとして理解されるであろう。さらに、このような残留物および他の要素は、通常は重合後の精製プロセス中に除去されるが、典型的にはポリマーと混合または共混合されて、概して、容器間または溶媒もしくは分散媒間で移動する際にポリマーと一緒に残る。
【0050】
「重合」という用語は、複数の重合性基またはこのような重合性基を含むポリマー前駆体(重合性化合物)を互いに結合させることによってポリマーを形成するための化学的方法を意味する。
【0051】
1つの重合性基を有する重合性化合物は、「単反応性」化合物とも呼ばれ、2つの重合性基を有する化合物は「二反応性」化合物と呼ばれ、2つより多くの重合性基を有する化合物は「多反応性」化合物と呼ばれる。重合性基を有さない化合物は、「非反応性」または「非重合性」化合物とも呼ばれる。
【0052】
「フィルム」および「層」という用語は、多かれ少なかれ顕著な機械的安定性を有する剛性または可撓性の、自己支持または自立性フィルムもしくは層、ならびに支持基材上の、または2つの基材間のコーティングもしくは層を含む。
【0053】
一般に「キラル」という用語は、鏡像画像において重ね合わせることが不可能な物体を表すために使用される。対照的に、「アキラル」(非キラル)物体は、その鏡像と同一の物体である。本発明による媒体は、キラリティーを示す。これは、コレステリック液晶、キラルネマチック液晶としても知られている液晶を提供することによって達成され得る。キラルネマチックおよびコレステリックという用語は、特に明記されない限り、本明細書では同義的に使用される。
【0054】
本明細書では、
【化1】
は、トランス-1,4-シクロヘキシレンを表す。
【0055】
本明細書では、特に明記されない限り、すべての濃度は、重量パーセントで示されており、それぞれの完全な混合物に関するものである。
【0056】
すべての温度は摂氏度(摂氏、℃)で示され、すべての温度差は摂氏度で示されている。すべての物理特性および物理化学的または電気光学的パラメータは、特に明記しない限り、20℃の温度について測定され、示されている。
【0057】
光の透過および散乱は、好ましくは、380nm~780nmのスペクトル範囲における電磁放射の透過および散乱を指す。
【0058】
切り替えは、好ましくは、一方の状態が非散乱であり、人間の目には実質的に透過または透明に見え、他方の状態が散乱であるか、または拡散透過を有し、人間の目には半透明または不透明に見える、二値状態の切り替えを指す。
【0059】
しかしながら、本発明によるスイッチング層が、さらなるスイッチング状態、特に中間状態を有することも可能である。
【0060】
したがって、本発明によれば、完全にプライベートな状態と、外部や近隣の空間を見ることができる状態とを、好ましくかつ有利に切り替えることができる。
【0061】
本発明による光学的透過状態では、スイッチング素子は、好ましくは、ASTM D 1003に準拠して測定された、10%未満、より好ましくは7%未満、さらにより好ましくは5%未満、さらにより好ましくは3.5%未満、特に2.5%未満のヘイズを有する。
【0062】
本発明による散乱状態では、スイッチング素子は、好ましくは、ASTM D 1003に準拠して測定されたヘイズが、75%超、より好ましくは85%超、さらにより好ましくは90%超である。散乱状態で、本発明によるスイッチング素子が、ASTM D 1003に準拠して測定されたヘイズが95%以上であることが特に好ましい。
【0063】
ヘイズの測定には、BYK-Gardner製のヘイズメーターが使用され得る。分光光度計、特に分光光度計およびウルブリヒト球を使用することも可能である。
【0064】
本発明によるスイッチングは、好ましくは電気的スイッチングを意味する。電気的スイッチングは、典型的には、基材、例えばガラス基材またはプラスチック基材に電極を設けることによって達成することができる。一実施形態では、基材上に導電層が設けられており、導電層は、透明な導電性材料、例えば、透明な導電性酸化物、好ましくは酸化インジウムスズ(ITO)またはSnO:F、特にITO、または導電性ポリマー、または薄い透明な金属および/または金属酸化物層、例えば、銀を含むかまたはこれらから形成されている。導電層には好ましくは電気接続が設けられている。電圧は、好ましくはバッテリー、充電式バッテリー、スーパーキャパシタまたは外部電流源によって供給され、より好ましくは外部電流源によって供給される。
【0065】
一実施形態では、基材上には、例えばポリイミド(PI)で作られた配向層が設けられている。特に好適なのは、基材上に導電層と配向層とが一緒に設けられていることである。この場合、配向層または配列層は、配向層がLC媒体に接触するように導電層の上に設けられている。配向層、好ましくはポリイミド層は、特にその界面で、液晶媒体の分子のホモジニアス配向またはプレーナー配向または代替的にホメオトロピック配向を提供するように配置され得る。特定の実施形態では、いわゆるツイステッドネマチック(TN)形状で使用されるような90°の方向差を有する両方の基材上にラビングされたポリイミドが使用されている。
【0066】
特定の実施形態では、プレチルト角、例えばTN形状については0°~20°の範囲のプレチルト角または垂直配向(VA)形状については80°~90°の範囲のプレチルト角を有する配列層が使用されている。
【0067】
代替的かつ別の好ましい実施形態によれば、配向層のない基材が使用されている。驚くべきことに、追加の層として配向層、例えばポリイミド層を設けることを有益にも避けることができ、その一方で、効果的かつ効率的なスイッチング挙動を依然として実現できることがわかった。
【0068】
また、基材上にパッシベーション層またはバリア層を設けることができるだけでなく、配向層に加えて、例えば酸化ケイ素または窒化ケイ素を含み、好ましくは酸化ケイ素または窒化ケイ素からなるパッシベーション層を設けることもできる。パッシベーション層および配向層の双方が基材上に設けられている場合、それらは、配向層が最上となるように、すなわちLC媒体に接触するように配置されている。
【0069】
好ましい実施形態では、電極は、基材上に支持され、液晶媒体に面した透明な導電層として配置されており、好ましくは、これらの透明な導電層は、2つの透明な誘電体層の間にそれぞれ埋め込まれており、任意で液晶媒体と直接接触している配列層がさらに設けられている。
【0070】
本発明による方法は、光学的透過状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的に切り替え可能であり、かつスイッチング層を含む、スイッチング素子、特にウィンドウ素子を提供する。この方法の実施により得ることができるスイッチング層は、1種以上のメソゲン化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体と、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるまたはそれぞれ得ることができる1つ以上のポリマー構造を含むポリマー成分とを含む材料を含有する。
【0071】
本発明によれば、ポリマー成分は、材料の全含有量を基準として、4重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下の量で材料中に含有される。好ましい実施形態では、ポリマー成分は、材料の全含有量を基準として0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で材料中に含有される。
【0072】
ポリマー成分は、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるか、またはそれぞれ得ることができる1つ以上のポリマー構造を含む。ポリマー成分は、1種以上の重合性メソゲン化合物のみを重合して得られること、すなわち、ポリマー成分は、前駆体として1種以上の重合性メソゲン化合物のみに基づくか、または1種以上の重合性メソゲン化合物のみにそれぞれ由来する1つ以上のポリマー構造からなることが好ましい。
【0073】
本方法に従って、ポリマー成分は、好ましくはその場で、特にスイッチング層中で、1種、2種または3種の重合性メソゲン化合物、さらにより好ましくは1種または2種の重合性メソゲン化合物を重合させることによって製造される。
【0074】
本発明による重合性メソゲン化合物は、メソゲン基および1つ以上の重合性基、すなわち重合に適した官能基を含む。これらの化合物は、反応性メソゲン(RM)またはメソゲン性モノマーとしても知られている。RMは、単反応性および/または二反応性または多反応性であり得る。
【0075】
本発明により使用される重合性化合物は、反応性メソゲンのみを含み、すなわちすべての反応性モノマーがメソゲンであることが好ましいが、代替的な実施形態では、1種以上のRMを1種以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて使用することも可能である。
【0076】
重合性化合物およびメソゲン化合物は、得られたポリマー成分の屈折率と、変調材料中のLC媒体とのマッチングの観点で選択することができ、このことは、透明状態の改善に有利に寄与し得る。
【0077】
本発明によれば、液晶媒体、特に本方法において使用され、かつスイッチング素子に設けられるような液晶媒体は、70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらにより好ましくは90℃以上、さらにより好ましくは98℃以上、さらに一層より好ましくは102℃以上、特に115℃以上の透明点を有する。媒体が、90℃~160℃、より好ましくは100℃~150℃の範囲の透明点を有することが好ましい。
【0078】
すべての物理特性および物理化学的または電気光学的パラメータは、概して公知の方法によって、特に“Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals”, Status Nov. 1997, Merck KGaA, 独国に従って測定される。
【0079】
透明点、特にキラルネマチック相またはコレステリック相と等方相との間の相転移温度は、一般的に知られている方法によって、例えばメトラー炉、偏光顕微鏡下のホットステージ、または示差走査熱量測定(DSC)分析を用いて、測定かつ決定され得る。本発明によれば、透明点は、好ましくはメトラー炉を使用して決定される。
【0080】
液晶媒体、特に、前記方法において使用されかつスイッチング素子のスイッチング層に設けられるような液晶媒体は、好ましくは散乱状態で0.55μm以上のピッチを示す。
【0081】
本発明で提供されるコレステリックまたはキラルネマチック媒体は、好ましくは、比較的長いピッチ、特に好ましくは780nm超のブラッグ型反射を与えるピッチを有する。この場合、プレーナーテクスチャも可視光スペクトルにわたって良好な透過率を与えることができる。
【0082】
本明細書において、ピッチとは、コレステリックヘリックスのピッチpを意味し、ここで、ピッチpは、CLCの配向軸(ダイレクタ)が2π回転する距離である。好ましい実施形態では、媒体は、0.75μm以上、さらにより好ましくは1.00μm以上、特に1.50μm以上のピッチを示す。
【0083】
好ましくは、1種以上のキラルドーパントの濃度は、得られるキラルピッチが0.55μm~10μmの範囲になるように設定される。
【0084】
本発明によれば、ピッチは、特に20℃での選択的反射最大λmaxの波長のNIR分光測定から決定される。ピッチpは、式λmax=n(λmaxpを用いて、λmaxの測定値から求められ、ここでn(λmax)は、λmaxでの屈折率である。
【0085】
特に20℃でのらせん誘起力HTPを測定し、かつ求められたピッチを確認するために、当該技術分野で公知のウェッジセル法を使用することも可能である。
【0086】
驚くべきことに、本発明によるスイッチング素子は、散乱状態に切り替えて動作させることができ、これにより、特に大きなウィンドウに望まれるような大きな領域にわたって、目に対して均質な外観で、効率的かつ十分に強い散乱、特に拡散透過率が得られる。この均一な外観は、有利には、色のない外観を含んでおり、このことは、望ましくない色効果またはそれぞれ色のアーチファクトを最小化できるか、さらに回避できることを意味する。
【0087】
コレステリック材料を含む層では、固有のキラル周期性に起因して色効果が生じ得ること、例えば、材料に直接、非拡散性の光を照射した場合、異なる角度で異なる色が透過され得ることが認識されていた。このような場合、透過光はオフアクシスで観察すると色づき、ウィンドウ素子およびウィンドウはオフアクシスで観察すると色づいて見えることがあり、観察される色は、観察角度に依存する。この効果により、虹のような外観に似たものが生じ得る。さらに、多くの用途では、このような色効果は望ましくないことが認識されていた。
【0088】
本発明によるスイッチング層に設けられる材料は、例えば、材料領域、特に境界、欠陥またはランダム構造からの散乱により、所望のヘイズで十分な散乱をもたらし得るが、周期構造によって引き起こされる入射光の回折は、関連する長さのスケールで周期性を十分に乱すか混乱させることにより、特にポリマー成分を導入することにより、実質的に抑制または回避することができ、驚くべきことに、この点で少量しか含まれていない場合でも効果的であり得ると考えられている。
【0089】
さらに、本発明による方法を使用することにより、さらに有利には、残留ヘイズが著しく低減されるかヘイズが視認されることすら全くない光学的透明状態を有するスイッチング素子を得ることが可能である。
【0090】
本発明によるスイッチング素子は、光を通過させる。これは、ウィンドウ、ガラスユニット(断熱ガラスユニットを含む)、ファサード要素、間仕切壁、分割壁等に有利に使用されかつそれらに含まれ、また、そこで必要に応じて切り替え可能なプライバシーモードを与え、代替的または追加的に防眩制御もできる要素として使用され得る。
【0091】
切り替え可能な散乱セルまたはデバイスとしてのスイッチング素子は、外部空間から内部空間への、例えば住宅、オフィスビルもしくは商業目的で使用される建物などの建物の内部への、または車両の内部への光の通過を調節または調整するために使用され得る。また、ウィンドウ素子は、特に、異なる機能領域や部屋を区切る構造要素において、内部空間から別の内部空間への光の通過を調節または調整するために使用することもでき、少なくとも一方の空間では、他方の空間からの直接の視線を一時的に、すなわち、一定の期間だけでなく、他の期間も遮断するプライバシーモードが望ましい。
【0092】
本発明の一態様では、好ましくは内部用途のための、本発明によるスイッチング素子を含むウィンドウが提供される。スイッチング素子は、例えば積層または接着、好ましくは窓ガラスまたはガラスユニットへの積層により、ウィンドウ内に適切に組み込まれ得る。
【0093】
スイッチング素子およびスイッチング素子を含むウィンドウ全体は、好ましくは光源を全く含まない。したがって、ウィンドウを通って透過されるあらゆる光は、太陽のような外部光源または家庭用照明装置から誘導される。
【0094】
スイッチング素子は、好ましくは0.1mより大きい、より好ましくは0.5mより大きい、さらにより好ましくは1mより大きい、さらに一層好ましくは3mより大きいサイズを有する。一実施形態では、スイッチング素子は、0.25m~15mの範囲、より好ましくは0.5m~10mの範囲の面積を有する。
【0095】
スイッチング素子、特にウィンドウ素子は、異なる形状、例えば正方形、長方形、三角形または多角形を有し得る。
【0096】
好ましくは、スイッチング素子およびウィンドウは、偏光子を含まない。
【0097】
本発明によれば、電極によって印加される電界を用いて、スイッチング層およびウィンドウ素子の状態が制御される。電極は、好ましくは、コーティングの形で基材上に配置された透過性電極である。コーティングは、通常、基材側またはスイッチング層に面する表面に適用される。
【0098】
好ましくは、電極は、隣接するようにパターニングおよび/または構造化されていない。したがって、電界を印加することで、切り替え可能な領域全体がアドレス指定されると同時に切り替えられる。代替的な実施形態では、電極は、個別にアドレス指定可能な領域を形成するようにパターニングすることができ、この領域は、電界の印加によって他の領域から独立して切り替えることができる。この場合、電極は、好ましくは2~10個の、独立してアドレス指定可能な領域が存在するようにパターニングされている。
【0099】
本明細書に記載される通り、液晶媒体は、本方法で使用されており、得られたスイッチング層およびウィンドウ素子、特に散乱型スイッチング素子およびデバイスに設けられている。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明によって使用されるLC媒体は、正の誘電異方性を有する。この場合、好ましいのは、3~45の範囲、より好ましくは5~30の範囲の誘電異方性Δεを有する液晶混合物である。
【0101】
Δεは、誘電異方性を表し、ここでΔε=ε||-ε⊥である。誘電異方性Δεは、20℃および1kHzで測定される。
【0102】
しかしながら、代替的な実施形態では、負の誘電異方性を有するLC媒体を提供することも可能である。この場合、-6~-3の範囲の誘電異方性Δεを有する液晶混合物が好ましい。
【0103】
本発明により使用される媒体が、媒体の全含量を基準として、少なくとも15重量%の1種以上の式I
【化2】
のメソゲン化合物を含有することが特に好ましく、
ここで、
およびRは、互いに独立して、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルから選択される基を表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、
11は、
【化3】
を表し、
nは、0または1を表し、かつ
21、A31およびA41は、互いに独立して、
【化4】
を表し、
ここで、Lは、各場合に、同一または異なって、F、ClおよびBrから選択されるハロゲンである。
【0104】
有利には本発明による媒体は、複屈折としても知られている適度に高い光学異方性Δnを有し得る。本明細書に記載の媒体および本発明によるスイッチング層およびウィンドウ素子で使用される媒体は、好ましくは、20℃および589nmで測定した光学異方性Δnが、0.13以上、より好ましくは0.16以上、さらにより好ましくは0.20以上である。
【0105】
上記および下記で、Δnは、光学異方性を表し、ここで、Δn=n-nであり、光学異方性Δnは、20℃および589.3nmの波長で測定される。
【0106】
適度に高い光学的異方性に加えて、本発明による媒体は、良好な光安定性および適度に高い透明点と組み合わせて、有利に高い電圧保持比(VHR)を有利に示し得る。
【0107】
反応性メソゲンを特に指定された低量で使用すること、および好ましくは、低濃度での使用を可能にし得る高いHTPを有するキラルドーパントを使用することは、有利には高い透明点を維持することに貢献し得る。
【0108】
媒体は、コレステリックまたはキラルネマチック媒体である。コレステリック液晶(CLC)は、通常、例えば、初期状態において特定の波長の光を反射するプレーナー構造を有し、電気的な交流電圧パルスを印加することでフォーカルコニックの光散乱構造に、またはその逆に切り替えられ得る媒体を含んでいる。より強い電圧、特により強い電圧パルスを印加すると、CLC媒体は、ホメオトロピックの透過状態に切り替わることができ、この状態から、電圧の急速なスイッチオフ後にプレーナー状態に、または低速スイッチオフ後にフォーカルコニック状態に緩和される。
【0109】
プレーナーテクスチャでは、反射光がコレステリックヘリックスと同じ硬度を有する場合にブラッグ反射が生じる。
【0110】
フォーカルコニック状態では、ヘリカル軸はランダムに配置されており、テクスチャは、ドメイン境界における屈折率の不連続な空間的変化のために光散乱を示す。
【0111】
プレーナー形状およびフォーカルコニック形状の双方は、典型的には、外部電界が存在しない場合に安定である。プレーナー状態とフォーカルコニック状態との間の電界駆動テクスチャ遷移の効果は、CLCディスプレイの動作の基礎となり、その際、CLCのテクスチャがプレーナーからフォーカルコニックのテクスチャに切り替わると、ブラッグ反射は消え、CLCは、ヘリカル軸がランダムに分散することによって入射光を散乱させる。
【0112】
しかしながら、状態間の切り替えは、典型的には、正の誘電異方性(Δε>0)を有するLC分子と垂直電界との間の誘電的結合によってコレステリックヘリックスが完全に巻き出されるホメオトロピック状態によってのみ達成される。
【0113】
本発明による実施形態では、スイッチング層の散乱状態は、上記のフォーカルコニック状態であり得る。
【0114】
代替的には、好ましい実施形態によれば、本発明では、散乱状態が、ポリドメイン構造により形成される。好ましくは、このポリドメイン構造は、十分に強い散乱を生じさせ得るが、同時にブラッグ型の反射挙動は、依然として観察可能であり、少なくともある程度まで観察可能である。ポリドメインを含む、好ましくはポリドメインからなるこの相において、らせん軸の配向は、典型的にはドメインごとに異なり、典型的にはドメイン境界が生じる。この点に関して、ポリマー成分は、ドメインが形成されるかそれぞれ維持されるように材料の順序を十分に乱すか混乱させると考えられる。しかしながら、巨視的に見ると、この相は均質に見え、特に人間の目には均質に不透明またはかすんで見え、かつ層領域全体にわたって目に見える欠陥がない。
【0115】
ポリドメイン構造は、例えば、プレーナー配向またはホメオトロピック配向された従来の配向層を使用して得られ、有利にはポリドメイン状態への切り替えは、比較的低い電圧で達成され得る。しかしながら、ポリドメイン構造は、配向層が存在しない場合にも得られる。
【0116】
さらに、変調材料およびスイッチング層にポリマー成分が存在することは、散乱性能に有利に影響し、これを安定化させ得る。
【0117】
好ましい実施形態では、非散乱状態または透明状態は、上記のホメオトロピック状態によって形成され得る。この透明状態を使用することは、例えば大きな面積を有する素子が使用される場合に好適であり得る。この点に関して、現在得られる有利に高いVHRは、自己放電挙動に対してこの状態にある素子を安定化させ、したがって、大幅により低いリフレッシュレートおよび/または低い電力消費でさえも状態を維持させることを可能にするのに有用であり得る。
【0118】
代替的には、非散乱状態または透明状態は、上記のプレーナーテクスチャによって形成され得る。
【0119】
キラルネマチックまたはコレステリック媒体を使用することは、比較的安定した状態、さらには双安定性において有益であり、媒体を含む装置のエネルギー消費がより少なくなるように提供され得る。特に、それぞれの状態は、電界がスイッチオフされた後も、少なくともかなりの時間保持され、より少ない頻度でのアドレス指定や電圧のリフレッシュが可能になり得る。
【0120】
好ましい実施形態では、スイッチング素子は、交流電圧V1を印加することによって光学的透過状態に切り替え可能であり、交流電圧V2を印加することによって散乱状態に切り替え可能であり、ここで、V1>V2である。
【0121】
一実施形態では、15V~100V、より好ましくは20V~80V、特に25V~50Vの範囲の電圧を印加することにより、スイッチング素子において得られたスイッチング層の切り替えられた透明状態、特にホメオトロピック配向を有する状態が維持され、一方で切り替えられたプライバシー状態または散乱状態は、少なくともしばらくの間、0Vでも安定であり得る。
【0122】
好ましくは、本発明によるスイッチング素子は、デュアル周波数アドレス指定を使用せず、これは、要求される電子機器を簡素化し得る。
【0123】
上記のように、媒体は、好ましくは780nm超の波長の選択反射を示す。したがって、媒体は、好ましくは、近赤外(NIR)スペクトル領域で反射する。
【0124】
キラルドーパントおよびその濃度は、媒体のコレステリックピッチが適切に設定または調整されるように供給され得る。CLC媒体は、例えば、ネマチックLC媒体に高いツイスト力を有するキラルドーパントをドーピングすることによって調製され得る。次いで、誘導コレステリックヘリックスのピッチpは、式(1):
p=(HTP c)-1 (1)
に従って、キラルドーパントの濃度cおよびらせん誘起力HTPによって与えられる。
【0125】
例えば、個々のドーパントのHTPの温度依存性を補償するために、したがって、ヘリックスピッチおよびCLC媒体の反射波長の温度依存性を小さくするために、2つ以上のドーパントを使用することも可能である。全体のHTP(HTPtotal)については、近似式(2):
HTPtotal=Σ HTP (2)
[式中、cは、各個々のドーパントの濃度であり、HTPは、各個々のドーパントのらせん誘起力である]が成り立つ。
【0126】
液晶媒体は、1種以上のキラルドーパントを含む。キラルドーパントは、好ましくはHTPの絶対値が高く、概して比較的低濃度でメソゲンベースの混合物に添加することができ、かつアキラル成分への溶解性も良好である。2種以上のキラル化合物が使用される場合、それらは、同じまたは逆の回転方向および同じまたは逆のツイストの温度依存性を有し得る。
【0127】
好ましくは、本発明による1種以上のキラル化合物は、好ましくはMerck KGaA社製の市販の液晶混合物MLC-6828において、5μm-1以上、より好ましくは10μm-1以上、さらにより好ましくは15μm-1以上のらせん誘起力の絶対値を有する。特に好ましいのは、好ましくはMerck KGaA社製の市販の液晶混合物MLC-6828において、20μm-1以上、より好ましくは40μm-1以上、さらにより好ましくは60μm-1以上、最も好ましくは80μm-1以上~260μm-1以下の範囲のらせん誘起力(HTP)の絶対値を有するキラル化合物である。
【0128】
好ましくは、1種以上のキラル化合物は、液晶媒体中に、媒体の全含有量を基準として2重量%以下、より好ましくは1重量%以下の量で含まれる。
【0129】
本発明の好ましい実施形態では、キラル成分は、すべてが同じ符号のHTPを有する2種以上のキラル化合物からなる。個々の化合物のHTPの温度依存性は、高くても低くてもよい。媒体のピッチの温度依存性は、HTPの温度依存性が異なる化合物を対応する比で混合することにより補償され得る。
【0130】
適切なキラルドーパントは、当該技術分野において公知であり、そのいくつかは市販されており、例えば、ノナン酸コレステリル、R/S-811、R/S-1011、R/S-2011、R/S-3011、R/S-4011、R/S-5011、特にR-5011、B(OC)2CH-C-3またはCB15(すべてMerck KGaA、ダルムシュタット、独国)である。
【0131】
特に適切なキラルドーパントは、1個以上のキラル残基と1個以上のメソゲン基とを含む化合物、またはキラル残基を有するメソゲン基を形成する1個以上の芳香族基もしくは脂環式基を含む化合物である。
【0132】
適切なキラル残基は、例えば、キラル分岐鎖状の炭化水素残基、キラルエタンジオール、ビナフトールまたはジオキソランであり、さらに糖誘導体、糖アルコール、糖酸、乳酸、キラル置換グリコール、ステロイド誘導体、テルペン誘導体、アミノ酸またはいくつかの、好ましくは1~5個のアミノ酸の配列からなる群から選択される一価または多価のキラル残基である。
【0133】
好ましいキラル残基は、糖誘導体、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アラビノースおよびデキストロース;糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールまたはそのアンヒドロ誘導体、特にジアンヒドロヘキシトール、例えば、ジアンヒドロソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビド、イソソルビド)、ジアンヒドロマンニトール(イソソルビトール)またはジアンヒドロイジトール(イソイジトール);糖酸、例えば、グルコン酸、グロン酸およびケトグロン酸;キラル置換グリコール残基、例えば、1つ以上のCH基がアルキルまたはアルコキシにより置換されたモノエチレンもしくはオリゴエチレンまたはプロピレングリコール;アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、フェニルグリシンもしくはフェニルアラニン、またはこれらの2種~5種のアミノ酸の配列;ステロイド誘導体、例えば、コレステリルまたはコール酸残基;テルペン誘導体、例えば、メンチル、ネオメンチル、カンフェニル、ピネイル(pineyl)、テルピネイル、イソロンギフォリル、フェンチル(fenchyl)、カレイル(carreyl)、ミルテニル、ノピル、ゲラニル(geraniyl)、リナロイル、ネリル、シトロネリルまたはジヒドロシトロネリルである。
【0134】
適切なキラル残基およびメソゲンキラル化合物は、例えば、独国特許第3425503号明細書、独国特許第3534777号明細書、独国特許第3534778号明細書、独国特許第3534779号明細書および独国特許第3534780号明細書、独国特許第4342280号明細書、欧州特許第01038941号明細書および独国特許第19541820号明細書に記載されている。
【0135】
本発明により使用される好ましいキラル化合物は、以下の化合物群から選択される。
【0136】
一実施形態では、以下の式A-I~A-III:
【化5】
[式中、
a11およびRa12は、互いに独立して、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、かつRa11は、1~9個の炭素原子を有するメチルまたはアルコキシであり、好ましくは双方ともアルキル、好ましくはn-アルキルであり、
a21およびRa22は、互いに独立して、1~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するオキサアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシであり、好ましくは双方ともアルキル、好ましくはn-アルキルであり、
a31およびRa32は、互いに独立して、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、かつRa11は、代替的に1~9個の炭素原子を有するメチルまたはアルコキシであり、好ましくは双方ともアルキル、好ましくはn-アルキルである]の化合物からなる群から選択されるドーパントが好ましい。
【0137】
特に好ましいのは、以下の式:
【化6】
の化合物からなる群から選択されるキラルドーパントである。
【0138】
さらに好ましいドーパントは、以下の式A-IV
【化7】
のイソソルビド、イソマンニトールまたはイソイジトールの誘導体であり、
ここで、基
【化8】
は、
【化9】
好ましくはジアンヒドロソルビトールであり、
また、キラルエタンジオール、例えば、ジフェニルエタンジオール(ヒドロベンゾイン)、特に、以下の式A-V
【化10】
のメソゲンヒドロベンゾイン誘導体(示されていないが、(R,S)、(S,R)、(R,R)および(S,S)エナンチオマーを含む)であり、
ここで、基
【化11】
は、それぞれ、互いに独立して、Lによって一置換、二置換、または三置換され得る1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、
Lは、H、F、Cl、CN、または任意にハロゲン化された1~7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、またはアルコキシカルボニルオキシであり、
cは、0または1であり、
は、-COO-、-OCO-、-CHCH-または単結合であり、かつ
は、1~12個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシである。
【0139】
式A-IVの化合物は、国際公開第98/00428号に記載されている。式A-Vの化合物は、英国特許出願公開第2,328,207号明細書に記載されている。
【0140】
別の実施形態では、特に好ましいキラルドーパントは、国際公開第02/94805号に記載のキラルビナフチル誘導体、国際公開第02/34739号に記載のキラルビナフトールアセタール誘導体、国際公開第02/06265号に記載のキラルTADDOL誘導体、および国際公開第02/06196号および国際公開第02/06195号に記載の少なくとも1つのフッ素化された架橋基および末端または中心キラル基を有するキラルドーパントである。
【0141】
特に好ましいのは、式A-VI
【化12】
のキラル化合物であり、
ここで、
、X、YおよびYは、それぞれ互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、1~25個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、該アルキルは、F、Cl、Br、IまたはCNによって一置換または多置換されていてよく、さらに、1個以上の非隣接CH基は、それぞれ互いに独立して、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように-O-、-S-、-NH-、NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、重合性基、またはハロゲン、好ましくはFによって、もしくは重合性基によって任意に一置換または多置換されていてもよい20個までの炭素原子を有するシクロアルキルもしくはアリールであり、
およびxは、それぞれ互いに独立して、0、1または2であり、
およびyは、それぞれ互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
およびBは、それぞれ互いに独立して、芳香族または部分的もしくは完全に飽和した脂肪族6員環であり、ここで、1個以上のCH基は、N原子によって置き換えられていてもよく、かつ1個以上の非隣接CH基は、Oおよび/またはSによって置き換えられていてもよく、
およびWは、それぞれ互いに独立して、-Z-A-(Z-A-Rであり、2つのうちの一方は、代替的にRまたはAであるが、双方は同時にHではないか、または
【化13】
は、
【化14】
であり、
およびUは、それぞれ互いに独立して、CH、O、S、COまたはCSであり、
およびVは、それぞれ互いに独立して、(CHであり、ここで、1~4個の非隣接CH基は、Oおよび/またはSによって置き換えられていてよく、VおよびVのうちの一方は単結合であり、
【化15】
が、
【化16】
である場合は双方とも単結合であり、
およびZは、それぞれ互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR-、-NR-CO-、-O-CH-、-CH-O-、-S-CH-、-CH-S-、-CF-O-、-O-CF-、-CF-S-、-S-CF-、-CH-CH-、-CF-CH-、-CH-CF-、-CF-CF-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-C≡C-、これらの基のうちの2つの組み合わせであり、ここで2つのOおよび/またはSおよび/またはN原子は、互いに直接結合されており、好ましくは-CH=CH-COO-、または-COO-CH=CH-、または単結合であり、
、AおよびAは、それぞれ互いに独立して、1,4-フェニレンであり、ここで1個または2個の非隣接CH基は、N、1,4-シクロヘキシレンによって置き換えられていてもよく、ここで1個または2個の非隣接CH基は、Oおよび/またはSによって置き換えられていてもよく、1,3-ジオキソラン-4,5-ジイル、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり、ここでこれらの基はそれぞれLによって一置換または多置換されていてもよく、さらにAは単結合であり、
Lは、ハロゲン原子、好ましくはF、CN、NO、1~7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシであり、ここで1個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよく、
mは、それぞれの場合、独立して、0、1、2または3であり、かつ
RおよびRは、それぞれ互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、それぞれ1個または3~25個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、これらは任意にF、Cl、Br、IまたはCNによって一置換または多置換されていてもよく、ここで1個以上の非隣接CH基は、-O-、-S-、-NH-、NR、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-によって置換されていてもよく、ここで2個のOおよび/またはS原子は互いに直接結合していないか、または重合性基である。
【0142】
特に好ましいのは、式A-VI-1
【化17】
のキラルビナフチル誘導体であり、特に、以下の式A-VI-1a~A-VI-1c:
【化18】
から選択されるものであり、
ここでBおよびZは、式A-IVについて定義された通りであり、かつZは、より好ましくは-OCO-または単結合であり、
は、式A-IVについて定義された通りであるか、Hまたは1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、
bは、0、1または2である。
【0143】
特に好ましいのはさらに、式A-VI-2
【化19】
のキラルビナフチル誘導体であり、特に、以下の式A-VI-2a~A-VI-2f:
【化20-1】
【化20-2】
[式中、Rは、式A-VIについて定義された通りであり、Xは、H、F、Cl、CNまたはR、好ましくはFである]から選択されるものである。
【0144】
特に好ましい実施形態では、本発明によるキラル媒体は、以下の表Fに示される式R-5011およびS-5011の1種以上の化合物を含む。一実施形態では、媒体は、R-5011を含む。別の実施形態では、媒体は、S-5011を含む。
【0145】
本発明によるLC媒体は、高い信頼性および高い電気抵抗率を好ましくかつ有利に示す。本発明によるLC媒体は、高い電圧保持比(VHR)も好ましくかつ有利に示す(S. Matsumotoら, Liquid Crystals 5, 1320 (1989); K. Niwaら, Proc. SID Conference, San Francisco, June 1984, P. 304 (1984); T. Jacob and U. Finkenzeller in “Merck Liquid Crystals - Physical Properties of Liquid Crystals”, 1997を参照のこと)。本発明によるLC媒体のVHRは、好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%、さらにより好ましくは≧95%、特に好ましくは≧98%である。特に記載がない限り、VHRの測定は、T. Jacob, U. Finkenzeller in “Merck Liquid Crystals - Physical Properties of Liquid Crystals”, 1997に記載のように行われる。
【0146】
本発明によれば、本方法では、液晶媒体の全含量を基準として4重量%以下の量で1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体が提供される。
【0147】
好ましくは、1種以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全含有量を基準として、3重量%以下の量で、さらにより好ましくは2重量%以下の量で、特に好ましくは1.25重量%以下の量で媒体中に含まれる。
【0148】
好ましくは、1種以上の重合性メソゲン化合物のうちの1種以上は、1個、2個またはそれ以上のアクリレート基および/またはメタクリレート基を含む。
【0149】
本発明による方法で使用される媒体では、好ましくは1種以上の重合性、硬化性または硬化型の化合物、好ましくは1種以上の光硬化性モノマーが供給され、これらは変調材料およびスイッチング層のポリマー成分の前駆体として有利に作用し得る。
【0150】
使用される反応性メソゲン(RM)またはメソゲン性モノマーは、メソゲン基および1個以上の重合性基、すなわち重合に適した官能基を含む。
【0151】
特に好ましい実施形態では、使用される重合性化合物は、反応性メソゲンのみを含み、すなわちすべての反応性モノマーはメソゲンである。代替的には、RMは、1種以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて提供され得る。RMは、単反応性および/または二反応性または多反応性であり得る。
【0152】
本発明の好ましい実施形態では、1種以上の重合性メソゲン化合物のうちの1種以上は、式M
Ma-AM1-(ZM1-AM2m1-RMb
の化合物から選択され、
ここで、個々の残基は、以下のように定義される:
MaおよびRMbは、それぞれ独立して、P、P-Sp-、H、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、SFまたは1~25個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルであり、ここで1個以上の非隣接CH基は、それぞれ独立して、酸素原子および/または硫黄原子が互いに直接結合しないように-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R00)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-によって置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子は、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP-Sp-によって置き換えられていてもよく、ここで、好ましくはRMaおよびRMb残基のうちの少なくとも1つは、PまたはP-Sp-基であるか、PまたはP-Sp-基を含み、
好ましくは
MaおよびRMbは、それぞれ独立して、P、P-Sp-、H、ハロゲン、SF、NO、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、ここで好ましくは、RMaおよびRMb残基のうちの少なくとも1つは、PまたはP-Sp-基であるか、PまたはP-Sp-基を含み、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサ基または単結合であり、
M1およびAM2は、それぞれ独立して、好ましくは4~25個の環原子、好ましくは炭素原子を有する、芳香族、複素芳香族、脂環式または複素環式の基であって、縮合環も含むまたは含んでよく、かつ任意にLによって一置換または多置換され得る基であり、
Lは、P、P-Sp-、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)N(R、-C(=O)Y、-C(=O)R、-N(R、任意に置換されるシリル、6~20個の炭素原子を有する任意に置換されるアリール、または1~25個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または2~25個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニルであり、ここで、1個以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-によって、好ましくはP、P-Sp-、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基によって置き換えられていてもよく、
は、ハロゲン、好ましくはFであり、
M1は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-OCO-、-O-CO-O-、-OCH-、-CHO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-(CHn1-、-CFCH-、-CHCF-、-(CFn1-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=CH-、-COO-、-OCO-CH=CH-、CR00または単結合であり、
およびR00は、それぞれ独立して、Hまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
は、P、P-Sp-、H、ハロゲン、1~25個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル(1個以上の非隣接CH基は、酸素原子および/または硫黄原子が互いに直接結合しないように-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-によって置き換えられていてよく、かつ1個以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-によって置き換えられていてよい)、6~40個の炭素原子を有する任意に置換されるアリールもしくはアリールオキシ基、または2~40個の炭素原子を有する任意に置換されるヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシ基であり、
m1は、0、1、2、3または4であり、かつ
n1は、1、2、3または4であり、
ここで、少なくとも1個の置換基、好ましくは1個、2個または3個の置換基、より好ましくは1個または2個のRMa、RMbの群からの置換基および存在する置換基Lは、PまたはP-Sp-基であるか、少なくとも1個のPまたはP-Sp-基を含む。
【0153】
特に好ましいのは、RmaおよびRmbのうちの一方または双方がPまたはP-Sp-である式Mの化合物である。
【0154】
本発明による液晶媒体に使用するための適切かつ好ましいRMは、例えば、以下の式:
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【化21-4】
【化21-5】
から選択され、
ここで、個々の残基は、以下のように定義されている:
~Pは、それぞれ独立して重合性基であり、好ましくはPについて上記および下記で規定された定義のうちの1つを有し、より好ましくはアクリレート基、メタクリレート基、フルオロアクリレート基、オキセタン基、ビニルオキシ基またはエポキシ基であり、
Sp~Spは、それぞれ独立して、単結合またはスペーサ基であり、好ましくは上記および下記に示されたSpの定義のうちの1つを有し、より好ましくは-(CHp1-、-(CHp1-O-、-(CHp1-CO-O-または-(CHp1-O-CO-O-であり、ここでp1は1~12の整数であり、後者の基における隣接する環への結合は、酸素原子を介するものであり、P-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-残基のうちの1つがRaaであってもよく、
aaは、H、F、Cl、CNまたは1~25個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルであり、ここで1個以上の非隣接CH基は、酸素原子および/または硫黄原子が互いに直接結合しないようにC(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-によって置き換えられていてもよく、かつ1個以上の水素原子は、F、Cl、CNまたはP-Sp-によって置き換えられていてもよく、より好ましくは1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状の、任意に一置換または多置換された、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、またはアルキルカルボニルオキシであり(ここで、アルケニルおよびアルキニル残基は、少なくとも2個の炭素原子を有し、分岐鎖状の残基は、少なくとも3個の炭素原子を有する)、
およびR00は、それぞれの場合において同一または異なり、それぞれ独立して、Hまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、H、F、CHまたはCFであり、
は、-O-、-CO-、-C(R)-または-CFCF-であり、
およびZは、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-または-(CH-であり、ここでnは、2、3または4であり、
Lは、それぞれの場合において同一または異なり、かつ上記の式Mで示される意味を有し、好ましくはF、Cl、CN、または1~12個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状の、任意に一フッ素化または多フッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシであり、好ましくはFであり、
L’およびL’’は、それぞれ独立して、H、FまたはClであり、
~Xは、互いに独立して、-CO-O-、-O-CO-または単結合であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2であり、かつ
xは、0または1である。
【0155】
適切な重合性化合物は、例えば表Gに列挙されている。特に好ましい反応性メソゲンは、実施例1および実施例5にそれぞれ示されるような式RM-A、RM-BおよびRM-Cの化合物である。
【0156】
重合性化合物は、少なくとも1つの重合性基を有する。重合性基は、好ましくは、CH=CW-COO-、
【化22】
、CH=CW-(O)k1-、CH-CH=CH-O-、(CH=CH)CH-OCO-、(CH=CH-CHCH-OCO-、(CH=CH)CH-O-、(CH=CH-CHN-、HO-CW-、HS-CW-、HWN-、HO-CW-NH-、CH=CW-CO-NH-、CH=CH-(COO)k1-Phe-(O)k2-、Phe-CH=CH-、HOOC-、OCN-から選択され、ここでWは、H、Cl、CN、フェニルまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特にH、ClまたはCHであり、WおよびWは、互いに独立して、Hまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特にH、メチル、エチルまたはn-プロピルであり、Pheは、1,4-フェニレンであり、kおよびkは、互いに独立して0または1である。重合性基または反応性基は、好ましくは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、フルオロアクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基、特に好ましくはアクリレート基またはメタクリレート基から選択される。
【0157】
一実施形態では、非メソゲン性モノマーは、1種以上のRMに加えて、媒体中に含まれる。好ましくは、1種以上の重合性化合物、すなわち非メソゲン性モノマーまたはRMのいずれかまたは双方は、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレートおよび酢酸ビニルから選択され、ここで組成物は、より好ましくは1種以上の二反応性および/または三反応性の重合性化合物をさらに含み、該重合性化合物は、好ましくはジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレートおよびトリメタクリレートから選択される。
【0158】
好ましい実施形態では、本発明による媒体は、1種以上の非メソゲン性モノアクリレート、特に好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-ブチルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートから選択される1種以上の化合物を含む。
【0159】
追加的または代替的に、本発明による媒体は、好ましくは1種以上の非メソゲン性モノメタクリレートを含み、特に好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチル-ヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび1-アダマンチルメタクリレートから選択される1種以上の化合物を含む。
【0160】
少なくとも1種の架橋剤、すなわち2個以上の重合性基を有する重合性化合物を、媒体に添加することが特に好ましく、ここで好ましくは二反応性または多反応性RMが使用される。
【0161】
この点に関して、二反応性化合物および多反応性化合物は、それ自体のポリマーネットワークを形成するために、および/または実質的に単反応性化合物の重合から形成されるポリマー鎖を架橋するために役立ち得る。
【0162】
代替的または追加的に、当該技術分野で公知の従来の架橋剤が使用され得る。二反応性または多反応性のアクリレートおよび/またはメタクリレートをさらに提供することが特に好ましい。特に好ましい化合物は、エチレンジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ブチレンジアクリレート、ペンチレンジアクリレート、ヘキシレンジアクリレート、グリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンジメタクリレート、またエチレングリコールジメタクリレートとして知られるもの、プロピレンジメタクリレート、ブチレンジメタクリレート、ペンチレンジメタクリレート、ヘキシレンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される。
【0163】
単反応性モノマーと二反応性または多反応性モノマーとの比は、形成されるポリマー成分の特性に影響を与えるように有利に設定および調整することができる。
【0164】
適切かつ従来使用されている熱開始剤または光開始剤、例えば、アゾ化合物またはルペロックス型開始剤などの有機過酸化物は、反応を促進するために媒体に添加され得る。さらに、重合のための適切な条件、開始剤の適切な種類および量は、当該技術分野で公知であり、文献に記載されている。重合開始剤が媒体に含まれる場合、光開始剤を使用することが好ましい。
【0165】
例えば、UV光を用いて重合する場合、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成するためにUV照射下で分解する光開始剤が使用され得る。アクリレート基またはメタクリレート基を重合するために、好ましくはラジカル光開始剤が使用される。ビニル基、エポキシド基またはオキセタン基を重合するために、好ましくはカチオン性光開始剤が使用される。また、加熱時に分解してフリーラジカルまたはイオンを生成し、重合を開始する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル光開始剤は、例えば、市販のIrgacure(登録商標)、例えば、Irgacure651(BASFから入手可能、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを含む)、またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy AG、バーゼル、スイス)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI6974(Union Carbide)である。さらなる有用な光開始剤としては、α-アミノケトン、例えば、Irgacure 907、クマリン、ホスフィンオキシド、例えば、Irgacure 2100、アシルホスフィン、例えば、Irgacure 819が挙げられる。
【0166】
特定の実施形態では、添加された重合開始剤、好ましくは光開始剤は、好ましくは1種以上のメソゲン性重合開始剤、好ましくは1種以上のメソゲン性光開始剤、すなわち、重合を開始することができ、かつそれ自体が異方性およびメソゲン性を有する1種以上の反応性化合物を含み、好ましくはそれらからなる。
【0167】
しかしながら、特に好ましい実施形態によれば、重合開始剤は使用されず、特に光開始剤は使用されない。特定の場合に、これによってVHRが改善され、スイッチング層でイオンを生成する傾向が低減され得る。したがって、本方法において、直流電圧が重合中に印加されることを考慮すると、このことは、開始剤を媒体に添加しない場合に特に有益であり、かつ好ましい。
【0168】
良好なVHRを維持しかつ達成するために、好ましくは、重合の反応生成物中の不純物が、最小限に維持されるか、または実質的に回避される。特に、残留反応種および帯電汚染物質は、適切にかつ好ましくは最小限に維持される。例えばUV重合を行う場合、好ましい実施形態では、可視スペクトルに近づきつつある比較的長い波長を有する光が使用され、好ましくは340nm~380nm、さらにより好ましくは360nm~380nmの範囲のUV光が有利に使用される。このようにして、LC媒体の成分の望ましくない光分解または分解は、回避され得るか、少なくとも最小限にされ得る。光開始剤が使用される場合、照射波長および光開始剤が、適切に一致または調整され得る。
【0169】
いくつかの実施形態では好ましい、光開始剤を使用しない代替手段の場合、重合性化合物の少なくとも一部が光反応を起こし、それ自体で重合反応を開始することができ、さらにLC媒体の非反応性成分の劣化または分解が回避され得るか、少なくとも最小限にされ得るように、波長範囲が設定され得る。所望の波長範囲の取得および設定は、当該技術分野で公知の従来の方法によって、例えば、光学フィルタ、特にエッジフィルタを使用することによって達成され得る。
【0170】
光重合のためには、UV光を使用することが好ましい。可視光、特に紫色または青色の光と一緒にUV光を使用することも可能である。例えば、340nm~420nm、好ましくは360nm~405nmのスペクトル範囲の光が使用され得る。別の実施形態では、例えばレーザ光源からの可視光を使用して、特に380nm~415nmの範囲の可視光のみを使用することも可能である。
【0171】
驚くべきことに、本発明による方法は、上記および下記の1種以上の重合性メソゲン化合物を液晶媒体に供給することによって、その場でポリマー構造を製造するのに有利に使用できることがわかった。
【0172】
媒体中の重合性化合物は、重合後に安定な系が得られるように選択することができ、これは例えば熱加熱工程などのさらなる処理工程において安定であり得、その際、良好なVHRが維持され得る。
【0173】
さらに、本発明によれば、安定性に有利に影響を与え、望ましくない劣化を最小限にし得る、比較的少量の重合性メソゲン化合物のみが使用される。
【0174】
本発明によれば、媒体は、ポリマー成分、特にポリマーネットワークを含む変調材料の製造に使用されており、該ポリマー成分は、上記および下記の重合性化合物を重合させることによって得られるか、またはそれぞれそれから得ることができる。
【0175】
ポリマー成分の供給は、LC媒体の1つ以上の状態または相の安定化に有用であり得る。
【0176】
好ましくは、製造されたデバイスのスイッチング層において、ポリマー成分は、媒体の全含有量を基準として0.1重量%~4重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で媒体に含有されている。
【0177】
ポリマー成分は、得られる材料の有利な特性に寄与し得る。例えば、ポリマー成分は、著しくより安定な散乱状態、特にポリドメイン状態に寄与し、この散乱状態は、電圧のリフレッシュまたは再印加なしに、より長期間、特に数日間にわたって維持され得る。
【0178】
さらに、本発明によるCLC媒体を含有する材料に供給されるポリマー成分は、例えば均一性および視野角依存性に関して、散乱効率および外観に有利に影響を与え得る。これにより、斜め視角下で生じ得る色効果を著しく低減することができる。
【0179】
本発明による方法を実施することにより、特に、印加された直流電界の存在下で重合を行うことにより、さらに、著しく改善された低ヘイズの透明状態を得ることが可能である。
【0180】
好ましい実施形態では、変調材料は、液晶媒体およびポリマー成分を含み、該ポリマー成分は、反応性メソゲンの重合によって得られるポリマーネットワークを含み、該反応性メソゲンは、好ましくはアクリレート基、特に好ましくはモノアクリレート基、ジアクリレート基またはトリアクリレート基、ビニルエーテル基およびエポキシド基から選択される少なくとも1つの基を含む。本明細書で使用されるアクリレート基を含む化合物は、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、およびかかるモノマーの混合物を含む。
【0181】
重合は、従来の方法を用いて実施され得る。重合は、1つ以上の工程で実施され得る。特に、重合性化合物の重合は、好ましくは、熱または活性エネルギー線への曝露によって達成され、ここで、活性エネルギー線への曝露は、例えば、UV光、可視光またはIR光などの光による照射、X線またはガンマ線による照射、またはイオンもしくは電子などの高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましい実施形態では、フリーラジカル重合が実施される。
【0182】
重合は、適切な温度で実施され得る。一実施形態では、重合は、メソゲン混合物の透明点未満の温度で行われる。しかしながら、別の実施形態では、透明点で、または透明点を上回る温度で重合を実施することも可能である。
【0183】
好ましい実施形態では、重合は、光重合、好ましくはUV光を使用して実施される。
【0184】
この場合、層として供給された液晶媒体、特に重合性化合物は、光照射、すなわち光、好ましくはUV光に曝される。この層の材料の光重合には、好ましくは30秒~300分、より好ましくは1分~240分の露光時間が用いられ、好ましくは0.01mW/cm~100mW/cm、より好ましくは0.1mW/cm~100mW/cm、さらにより好ましくは0.5mW/cm~75mW/cmの照射強度が用いられる。特定の実施形態では、光重合のための好ましい時間帯、特に好ましいUV露光時間は、1分~120分の範囲、より好ましくは5分~60分、特に10分~30分の範囲であり、ここで、UV光強度は、好ましくは1mW/cm~50mW/cmの範囲である。
【0185】
光重合は、室温で実施されてもよいが、代替的な実施形態では、光重合は、高められた温度で行うことが好ましい。
【0186】
したがって、一実施形態では、周囲室温よりも高い温度にするために、光重合の前に予熱工程が実施される。この場合、透明点より低い温度に設定して維持することが好ましい。しかしながら、このようにして、ネマチック相またはそれぞれのキラルネマチック相を有する媒体を用いて、より高い温度で重合を行うことができる。
【0187】
化学線の供給源としては、例えば単一のUVランプまたは一組のUVランプが使用され得る。高出力のランプを使用する場合、硬化時間が短縮され得る。光照射のためのもう1つの可能な供給源は、例えばUVレーザ、可視レーザまたはIRレーザなどのレーザである。
【0188】
一実施形態では、重合は、キラル液晶ホスト混合物に、好ましくは二反応性化合物および任意に適切な光開始剤を含む1種以上の重合性化合物を添加し、かつ該重合性化合物をUV照射に曝して重合させることによって行われる。
【0189】
本発明による方法では、液晶媒体は、特に電気光学セル内に層を形成する、2つの対向する透明な基材の間に層として介在し、重合は、直流電界の存在下で行われる。これにより、セルおよび媒体、特にキラル液晶ホスト混合物を所定の状態に維持することができる。特に、媒体がホメオトロピックな状態にある場合に、重合、好ましくはUV光を用いた重合を行うことは、このようにして達成され得る。
【0190】
典型的には、0V強から220Vまでの範囲の直流電圧が印加されてもよく、その際、上限は、電気的破壊が回避されるように選択される。重合は、30V~150V、より好ましくは60V~120Vの範囲の直流電圧を用いて行うことが好ましい。
【0191】
本方法において供給され、かつスイッチング素子において使用される液晶媒体は、1種以上の多色性色素、特に1種以上の二色性色素、および/または他の慣用の適切な添加剤などの追加の化合物を、好ましくは0.01重量%~25重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%の量で含有し得る。
【0192】
多色性色素は、好ましくは二色性色素であり、例えば、アゾ色素、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン化合物、テトラジン、ピロメテン色素、マロノニトリル色素、リレン、特にペリレンおよびテリレン、チアジアゾール色素、チエノチアジアゾール色素、ベンゾチアジアゾール、ピロメテンおよびジケトピロロピロールから選択され得る。特に好ましいのは、特に国際公開第2014/187529号に記載のアゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾール、特に国際公開第2015/090497号に記載のジケトピロロピロール、および特に国際公開第2014/090373号に記載のリレンである。
【0193】
しかしながら、好ましくは、スイッチング層は、透明状態でより高い透過率をもたらし、かつ未着色またはそれぞれ白色の外観を与え得る色素を含まない。
【0194】
スイッチング素子、より好ましくは本発明によるスイッチング素子を含むウィンドウは、1つのスイッチング層のみを含むことが特に好ましい。
【0195】
しかしながら、別の実施形態では、2つ以上のスイッチング層、特に2つのスイッチング層をウィンドウ素子に設けることも可能であり、例えば、2つの層が双方とも切り替え可能な散乱モードを与えるか、または1つの層が切り替え可能な散乱を与え、別の層が切り替え可能な光の調光または減衰を与える。
【0196】
特定の実施形態では、本発明によるスイッチング層は、光の通過を制御しかつ調節するためにウィンドウ素子内にゲスト-ホストLC媒体を含む別のスイッチング層と組み合わされる。それぞれのスイッチング層は、例えば1つ以上の介在する基材またはシート、ガラス板またはパネルを使用することによって適切に分離することができ、任意にガラス板は、真空またはガスで満たされた空間によってさらに分離することができる。
【0197】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の液晶媒体は、媒体の全含有量を基準として、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、さらにより好ましくは少なくとも30重量%、特に少なくとも35重量%の量で上記および下記の1種以上の式Iの化合物を含む。
【0198】
一実施形態では、1種以上の式Iの化合物は、媒体の全含有量を基準として、15重量%~75重量%、より好ましくは20重量%~65重量%、さらにより好ましくは20重量%~55重量%、特に25重量%~50重量%の範囲の量で媒体中に含まれる。
【0199】
したがって、本発明による媒体は、好ましくは、少なくとも1種の式Iの化合物を含む。しかしながら、多くの場合、2種、3種またはそれ以上の式Iの化合物が媒体中に含まれていることが有益かつ好ましい。
【0200】
好ましくは、式Iに定義された基A11は、
【化23】
を表す。
【0201】
別の実施形態では、式Iに定義されたnは、0を表す。
【0202】
好ましい実施形態では、1種以上の式Iの化合物は、式Ia、IbおよびIc
【化24】
の化合物から選択され、より好ましくは式IaおよびIbの化合物から選択され、
ここで、
およびRは、互いに独立して、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルから選択される基を表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはF、CF、OCF、1~9個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルもしくはアルコキシ、または2~9個の炭素原子を有するアルケニルから選択される基を表し、
Lは、各場合に、同一または異なって、HまたはF、ClおよびBr、好ましくはFおよびClから選択されるハロゲンであり、より好ましくは各場合に、同一または異なって、HまたはFである。
【0203】
式Iの化合物のフェニレン環が置換されている場合、置換基がFであり、さらに末端基RおよびRがClを含まないことが特に好ましい。
【0204】
好ましい実施形態では、媒体中に含まれるCl含有化合物の量は、媒体の全含有量を基準として、好ましくは55重量%以下に制限され、より好ましくは40重量%以下に制限され、さらにより好ましくは25重量%以下に制限される。特に好ましい実施形態では、液晶媒体は、Cl含有化合物を含有しない。
【0205】
したがって、上記および下記の式Iの化合物からなるLC媒体の成分中のCl含有化合物の量を、媒体中に含まれる式Iの化合物の全含有量を基準として、好ましくは55重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらにより好ましくは25重量%以下に制限することも好ましい。特に好ましい実施形態では、1種以上の式Iの化合物は、Clを含まない化合物から選択される。
【0206】
さらに、式Iによる環A21、A31およびA41のうちの少なくとも1つが、少なくとも1個のF置換基を有することが特に好ましい。さらに、式Iによる環A21、A31およびA41が一緒になって、少なくとも2個のF置換基を有することが特に好ましい。
【0207】
本発明による媒体では、CNを含む化合物の使用は、好ましくは75重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは25重量%以下、特に15重量%以下に好ましくかつ有利に制限されており、特に好ましい実施形態では完全に回避されている。
【0208】
1種以上の式Iの化合物に加えて、本発明による液晶媒体は、好ましくは1種以上のさらなるメソゲン化合物を含む。これらの追加の化合物も、媒体の有利な特性、例えば良好なVHRおよび有利な安定性に寄与するか、またはこれらを維持するという観点から添加されることが好ましい。
【0209】
一実施形態では、本発明による液晶媒体は、式II
【化25】
の1種以上の化合物をさらに含み、
ここで、
およびRは、互いに独立して、F、CF、OCF、CN、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルから選択される基を表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはF、CF、OCF、CN、1~9個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~9個の炭素原子を有するアルケニルから選択される基を表し、
そして
、L、およびLは、互いに独立して、HまたはFを表す。
【0210】
さらなる実施形態では、本発明による液晶媒体は、式III
【化26】
[式中、RおよびRは、Rとして定義され、かつLおよびLは、上記の式IIの場合にLとして定義される]の1種以上の化合物をさらに含む。
【0211】
したがって、媒体が、媒体の全含有量を基準として、少なくとも15重量%の1種以上の式Iのメソゲン化合物、任意に1種以上の光開始剤、ならびに式IIおよび式IIIの化合物の群から選択される1種以上のメソゲン化合物を含有することが好ましい。
【0212】
媒体が、上記で示した1種以上の式Iの化合物、1種以上の式IIの化合物および1種以上の式IIIの化合物を含むことが特に好ましい。
【0213】
好ましくは、本発明による液晶媒体は、式IV
【化27】
の1種以上の化合物をさらに含み、
ここで、
は、1~15個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキルもしくはアルコキシ、または2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニルを表し、該アルキル、アルコキシおよびアルケニルは、非置換、CNもしくはCFによって一置換、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されており、ここで、1個以上のCH基は、それぞれの場合に互いに独立して、酸素原子が互いに直接連結しないように-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-によって置き換えられていてもよく、
iは、0、1または2であり、
およびLは、互いに独立して、HまたはFであり、かつ
は、F、CF、OCFまたはCNを表す。
【0214】
式IIの化合物は、好ましくは、媒体中で、1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の全濃度で使用される。
【0215】
式IIIの化合物は、好ましくは、媒体中で、1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の全濃度で使用される。
【0216】
式IVの化合物は、好ましくは、媒体中で、1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の全濃度で使用される。
【0217】
媒体が、上記および下記の1種以上の式Iの化合物、1種以上の式IIの化合物、1種以上の式IIIの化合物および1種以上の式IVの化合物を含むことが特に好ましい。
【0218】
特に好ましい実施形態では、1種以上の式Iの化合物のうちの1種以上が、式I-1およびI-2
【化28】
[式中、
およびRは、上記の式Iaについて定義された通りであり、かつ
Lは、各場合に、同一または異なって、HまたはFである]の化合物から選択されることが特に好ましい。
【0219】
任意に、本発明による媒体は、物理的特性を調整するためにさらなる液晶化合物を含み得る。かかる化合物は、その分野で公知である。これらの任意にさらに含まれる本発明による媒体中の液晶化合物の濃度は、好ましくは0重量%~30重量%、より好ましくは0.1重量%~20重量%、最も好ましくは1重量%~15重量%である。
【0220】
好ましくは、本発明による媒体は、
- PGP-n-m、PGP-n-mV、PGU-n-F、PGIGI-n-F、GGP-n-F、GGP-n-Cl、特にGGP-5-Cl、CPGP-n-m、CPGP-n-OT、CPGU-n-OT、DPGU-n-Fおよび/または
- CPP-n-m、CPG-n-F、CGU-n-F、BCH.n.F.F.F.、特にBCH.7.F.F.F.、および/または
- CP-n-m、CP-n-N、および/または
- 式R-5011またはS-5011の化合物、および/または
- 1種以上の反応性重合性化合物、および/または
- 1種以上の重合開始剤
のうちの1種以上の化合物を含み、
ここで、それぞれの略語または頭字語の意味および構造は、以下の表で説明かつ例示されている。
【0221】
上記および下記の媒体が、BCH-7F.F.FおよびCPU-5-Fとして指定される1種以上の化合物ならびに表Dに示すPCH-nとして指定される化合物を含み、特にPCH-3、PCH-5、PCH-7、PCH-8およびPCH-9から選択される化合物を含むことが特に好ましい。
【0222】
本発明による液晶媒体は、通常の濃度でさらに添加剤を含有し得る。これらのさらなる成分の全濃度は、全混合物を基準として、0%~10%、好ましくは0.1%~6%の範囲にある。使用される個々の化合物の濃度は、それぞれ、好ましくは0.01%~3%の範囲にある。これらおよび同様の添加剤の濃度は、本明細書では、液晶成分および液晶媒体の化合物の濃度の値および範囲について考慮されない。このことは、ホスト混合物の成分である化合物それぞれの濃度が指定されている場合にはカウントされない、混合物で任意に使用される二色性色素の濃度についても同様である。それぞれの添加剤の濃度は、常に最終的なドープ混合物に対して示されている。
【0223】
本明細書では、特に明記しない限り、すべての濃度は重量パーセントで示される。
【0224】
本発明による液晶媒体は、いくつかの化合物、好ましくは3~30種、より好ましくは4~20種、最も好ましくは4~16種の化合物からなる。これらの化合物は、従来の方法で混合される。原則的に、より少ない量で使用された化合物の必要量が、より多い量で使用された化合物に溶解される。より高い濃度で使用される化合物の透明点よりも温度が高い場合、溶解プロセスの完了を観察することは特に容易である。しかしながら、他の従来の方法により、例えば、化合物の相同または共晶混合物であり得るいわゆるプレミックスを使用するか、または成分がすぐに使用できる混合物そのものである、いわゆるマルチボトル系を使用して、媒体を調製することも可能である。
【0225】
上記および下記のメソゲン化合物またはその混合物の多くは、市販されている。これらの化合物は、公知のものであるか、または文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的な論文)に記載されているような、それ自体公知の方法によって、公知でかつ上記反応に適した反応条件下で正確に調製することができる。本明細書では詳細に言及されていないが、それ自体公知の別の方法もここで使用することができる。本発明による媒体は、それ自体従来の手法で調製される。一般に、成分は、好ましくは高められた温度で相互に溶解される。適切な添加剤または物質を添加して、液晶相の誘電異方性、粘度および/または配向を変更することができる。
【0226】
媒体は、安定剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、連鎖移動剤、例えばチオエーテルおよび/または可塑剤などの慣用の添加剤をさらに含み得る。
【0227】
安定剤は、例えば熱応力またはUV放射に起因する劣化または酸化に対して変調材料をさらに安定化するために有用であり得る。
【0228】
本発明による用語「アルキル」は、好ましくは、1~7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状のアルキル、特に直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2~5個の炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0229】
アルコキシは、直鎖状または分岐鎖状であってよく、好ましくは直鎖状であり、1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を有し、したがって、好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシまたはヘプトキシである。
【0230】
本発明による用語「アルケニル」は、好ましくは、2~7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状のアルケニル基、特に直鎖状の基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニル、C~C-4E-アルケニル、C~C-5E-アルケニルおよびC-6E-アルケニル、特にC~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニルおよびC~C-4E-アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニルおよび6-ヘプテニルである。5個までの炭素原子を有する基が、概して好ましい。
【0231】
フッ素化アルキルまたはアルコキシは、好ましくは、CF、OCF、CFH、OCFH、CFH、OCFH、C、OC、CFHCF、CFHCFH、CFHCF、CHCF、CHCFH、CHCFH、CFCFH、CFCFH、OCFHCF、OCFHCFH、OCFHCFH、OCHCF、OCHCFH、OCHCFH、OCFCFH、OCFCFH、CまたはOCを含み、特にCF、OCF、CFH、OCFH、C、OC、CFHCF、CFHCFH、CFHCFH、CFCFH、CFCFH、OCFHCF、OCFHCFH、OCFHCFH、OCFCFH、OCFCFH、CまたはOCを含み、特に好ましくはOCFまたはOCFHを含む。フルオロアルキルは、好ましい実施形態では、末端フッ素を有する直鎖状の基、すなわち、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシルおよび7-フルオロヘプチルを包含する。しかしながら、他のフッ素の位置は排除されない。
【0232】
オキサアルキルは、好ましくは、式C2n+1-O-(CH(式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~6である)の直鎖状の基を包含する。好ましくは、n=1であり、かつmは1~6である。
【0233】
オキサアルキルは、好ましくは、直鎖状の2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-(=エトキシメチル)または3-オキサブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-または4-オキサペンチル、2-、3-、4-または5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-または6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-または7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-オキサノニル、または2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-オキサデシルである。
【0234】
ハロゲンは、好ましくはFまたはCl、特にFである。
【0235】
上述の基のうちの1つが、1つのCH基が-CH=CH-で置き換えられたアルキル基である場合、これは直鎖状または分岐鎖状であり得る。該基は、好ましくは直鎖状であり、かつ2~10個の炭素原子を有する。
【0236】
したがって、該基は、特にビニル、プロパ-1-またはプロパ-2-エニル、ブタ-1-、-2-またはブタ-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-またはペンタ-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-またはヘキサ-5-エニル、ヘプタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-またはヘプタ-6-エニル、オクタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-またはオクタ-7-エニル、ノナ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-またはノナ-8-エニル、デカ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-、-8-またはデカ-9-エニルである。
【0237】
上述の基のうちの1つが、1つのCH基が-O-で置き換えられ、さらに1つが-CO-で置き換えられたアルキル基である場合、これらは好ましくは隣接している。これらには、アシルオキシ基-CO-O-またはオキシカルボニル基-O-CO-が含まれる。これらは、好ましくは直鎖状であり、かつ2~6個の炭素原子を有する。
【0238】
したがって、それらは、特にアセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシ-エチル、2-ブチリルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニル-メチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピルまたは4-(メトキシ-カルボニル)ブチルである。
【0239】
上述の基のうちの1つが、1つのCH基が非置換または置換の-CH=CH-で置き換えられ、隣接するCH基がCO、CO-OまたはO-COで置き換えられたアルキル基である場合、これは直鎖状または分岐鎖状であり得る。該基は、好ましくは直鎖状であり、かつ4~13個の炭素原子を有する。したがって、該基は、特にアクリロイルオキシメチル、2-アクリロイルオキシエチル、3-アクリロイルオキシプロピル、4-アクリロイルオキシブチル、5-アクリロイルオキシペンチル、6-アクリロイルオキシヘキシル、7-アクリロイルオキシヘプチル、8-アクリロイルオキシオクチル、9-アクリロイルオキシノニル、10-アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2-メタクリロイルオキシエチル、3-メタクリロイルオキシプロピル、4-メタクリロイルオキシブチル、5-メタクリロイルオキシペンチル、6-メタクリロイルオキシヘキシル、7-メタクリロイルオキシヘプチル、8-メタクリロイルオキシオクチルまたは9-メタクリロイルオキシノニルである。
【0240】
上述の基のうちの1つが、CNまたはCFにより一置換されたアルキル基またはアルケニル基である場合、この基は、好ましくは直鎖状である。CNまたはCFによる置換は、任意の位置にある。
【0241】
上述の基のうちの1つが、少なくともハロゲンにより一置換されたアルキル基またはアルケニル基である場合、この基は、好ましくは直鎖状であり、ハロゲンは、好ましくはFまたはCl、より好ましくはFである。多置換の場合、ハロゲンは、好ましくはFである。得られる基は、過フッ素化基も含む。一置換の場合、フルオロまたはクロロ置換基は、任意の所望の位置にあり得るが、好ましくはω-位にある。
【0242】
分岐鎖状の基を有する化合物は、いくつかの従来の液晶基材への溶解性が良好であるため、時として重要になり得る。しかしながら、それらが光学活性である場合にはキラルドーパントとして特に適している。
【0243】
このタイプの分岐鎖状の基は、概して1本以下の鎖状の枝を含む。好ましい分岐鎖状の基は、イソプロピル、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、イソブチル(=2-メチルプロピル)、2-メチルブチル、イソペンチル(=3-メチルブチル)、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、イソプロポキシ、2-メチルプロポキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-エチルヘキソキシ、1-メチルヘキソキシまたは1-メチルヘプトキシである。
【0244】
上述の基のうちの1つが、2つ以上のCH基が-O-および/または-CO-O-で置き換えられたアルキル基である場合、これは直鎖状または分岐鎖状であり得る。該基は、好ましくは分岐鎖状であり、かつ3~12個の炭素原子を有する。したがって、該基は、特にビスカルボキシメチル、2,2-ビスカルボキシエチル、3,3-ビスカルボキシプロピル、4,4-ビスカルボキシブチル、5,5-ビスカルボキシペンチル、6,6-ビスカルボキシヘキシル、7,7-ビスカルボキシヘプチル、8,8-ビスカルボキシオクチル、9,9-ビスカルボキシノニル、10,10-ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス-(メトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5-ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6-ビス(メトキシカルボニル)-ヘキシル、7,7-ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8-ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス-(エトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5-ビス(エトキシカルボニル)-ペンチルである。
【0245】
本発明による方法では、液晶媒体が層として設けられ、製造されたスイッチング素子内で、該媒体は、得られたスイッチング層内に含まれる。
【0246】
本方法で設けられる層、および本発明によるスイッチング素子で使用されるスイッチング層は、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは2μm~50μm、さらにより好ましくは4μm~40μm、特に10μm~25μmの範囲の厚さを有する。
【0247】
スイッチング層の厚さを適正に維持するために、スイッチング層のセルギャップ内にスペーサを入れてもよい。典型的には、スペーサは、セルギャップの範囲内の直径を有する球形である。例えば、ポリマーまたはガラスで作られた所定の直径を有する球形の非導電性スペーサが使用され得る。いくつかの実施形態では、粘着性スペーサ、すなわち、表面により良好に接着するためのある種の固有の接着特性を有するスペーサを設けることが有用であり得る。また、黒色のスペーサを使用して、例えば望ましくない光漏れを回避または最小限にすることも有用であり得る。黒色で粘着性のあるスペーサを使用することが特に有益であり得る。代替的に、セル厚は、例えばカラムスペーサを使用することによって、他の適切な手段によって設定または維持されてもよい。カラムスペーサは、区画を与えるように形成することもでき、したがって、任意に自由切断可能な構造を可能にする。
【0248】
また、2つ以上の層を組み合わせて、例えば、基材または適切なシート、ガラス板もしくはパネルによって層が分離されているウィンドウ素子に設けることも可能である。
【0249】
本発明によれば、スイッチング素子、特にスイッチング層を含むウィンドウ素子が提供され、ここで、スイッチング層は、2つの基材、特に2つの透明基材の間に配置されている。
【0250】
基材は、ガラスまたはポリマー、特にガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(環状オレフィンポリマー)またはTAC(トリアセチルセルロース)を含み、好ましくはそれらからなり得る。
【0251】
特に好ましい実施形態では、ガラス基材が使用される。
【0252】
スイッチング素子は、特に、スイッチング層を光学的透過状態または透明状態と散乱状態との間で電気的にスイッチングすることによって、光の通過に影響を与え得る。
【0253】
最後に組み立てられたスイッチングデバイスまたはスイッチング素子を組み込むことができるウィンドウは、好ましくは、UV光を遮断する1つ以上の層を含む。特に、スイッチングデバイスまたはそれぞれのウィンドウは、好ましくは、350nm未満の波長、好ましくは360nm未満まで及ぶ波長、特に好ましくはさらに380nm未満まで及ぶ波長を有する光の通過を許容しない、または極めて少ない割合でしか許容しない1つ以上の層を含む。
【0254】
スイッチング素子、特にウィンドウ素子は、例えばプライバシーまたは防眩を与えるためのいくつかのウィンドウ用途において有用であり得る。ウィンドウ素子は、例えば、切り替え可能なガラスユニットとして配置され得る。好ましくは、スイッチング素子は、絶縁ガラスユニットに組み込まれ得る。
【0255】
有利には、スイッチング素子は、本明細書に記載された容易で効率的な方法によって製造され得る。
【0256】
この製造方法では、1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体は、それぞれ電極を備えた2つの対向する透明基材の間の層として設けられている。これに関して、例えば、真空充填または1滴充填が使用され得る。
【0257】
好ましくは、電極は、各基材の内表面上に導電層として配置され、より好ましくは、該導電層は、それぞれパッシベーション層上に配置され、さらにより好ましくは、パッシベーション層間に配置され、任意に、液晶媒体と直接接触している配列層がさらに設けられている。
【0258】
その後、1種以上の重合性メソゲン化合物が重合され、ここで該重合は、層内に印加された電界の存在下で行われ、この電界は、直流電圧を用いて生成される。
【0259】
重合が、光重合によって、好ましくはUV光を用いて行われることが好ましい。
【0260】
重合の間に、媒体の配向、好ましくはホメオトロピック配向を誘導するために直流電界が印加される。電界は、少なくとも一時的に印加され、好ましくは大部分の時間印加され、特に重合が行われている全時間にわたって印加される。
【0261】
直流電圧の印加は、重合中に所定の配向を設定するのに有用であり、スイッチング層およびスイッチング素子の製品特性に有利に影響を与え得る。例えば、直流電界によって重合中にホメオトロピック配向を誘導することで、均質な低ヘイズの透明状態の達成に寄与することができ、さらに散乱状態では均質で適度に強いヘイズを得ることができる。
【0262】
光重合中の温度を、例えば20℃~100℃の範囲、好ましくは透明点より低い範囲で制御することが可能である。
【0263】
好ましい実施形態では、反応性メソゲンは、自己開始性であり、別の実施形態では、光開始剤が重合を誘発するために使用される。
【0264】
スイッチング層中の材料の光重合には、好ましくは0.01mW/cm~100mW/cm、より好ましくは0.1mW/cm~50mW/cm、さらにより好ましくは1mW/cm~50mW/cm、特に2mW/cm~20mW/cmの範囲の照射強度を使用して、好ましくは30秒~240分、より好ましくは1分~120分の露光時間が用いられる。
【0265】
重合の際には、いくつかのパラメータ、例えば、照射線量、印加された直流電圧の大きさおよびそれぞれの電界強度、ならびに媒体中のキラルドーパントの量を適切に設定または変更することができる。
【0266】
重合、特に光重合工程に続いて、さらなる処理が行われてもよい。好ましくは、重合工程の後、好ましくは電界の存在下、より好ましくは直流電界の存在下で熱処理が行われる。
【0267】
原則的に、その後の熱処理は、電界の存在下でも不在下でも行われ得る。しかしながら、熱処理中にも電界、特に直流電界が印加される場合、特に優れた低ヘイズの透明状態を達成することに関して、生成物のさらなる改善が得られることがわかった。
【0268】
熱処理、すなわち、先の重合工程に対して高められた温度に曝すことは、さらなる硬化またはさらなる転化率または重合の完了につながり得る。このことは、生成物の性能および安定性の点で、特に生成物において残留する未反応モノマーの量が最小限にされるという点で有益であり得る。
【0269】
重合後の任意の熱処理工程は、好ましくは、5分~240分、より好ましくは10分~120分、特に20分~60分の範囲の時間にわたり実施される。熱処理は、好ましくは85℃~200℃、より好ましくは110℃~190℃、特に140℃~180℃の範囲の温度を使用する。
【0270】
特に好ましい実施形態では、直流電界が印加され、実質的に全プロセス時間にわたって、特に、重合前の任意の予熱、重合、および重合後の任意の熱処理工程にまたがる全プロセス時間にわたって維持される。
【0271】
また、使用される基材に、前処理工程、例えば表面処理方法、例えばUVオゾン処理またはプラズマ処理を施すことも可能であり、この前処理工程によって、より大きな領域にわたる配列および濡れ挙動を改善することができ、また、均質性の向上ならびに透明状態での不要なヘイズの有利な低減に寄与し得る。
【0272】
本明細書に記載の方法は、デバイスにおいて1つのスイッチング層しか使用されない場合であっても、有利な耐久性、色中立性、低ヘイズの透明状態、すなわち優れた透明状態、および良好なプライバシーを与える散乱状態を有するスイッチング素子を製造するのに有利に有用である。
【0273】
本発明および特に以下の実施例において、メソゲン化合物の構造は、頭字語とも呼ばれる略語によって示される。これらの頭字語において、化学式は、下記の表A~Cを使用して以下の通り省略される。すべての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n-1、C2m-1およびC2l-1は、それぞれn個、m個およびl個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1-E-アルケニルを表す。表Aは、化合物のコア構造の環要素に使用されているコードを列記し、表Bは、連結基を示す。表Cは、左側または右側の末端基のコードの意味を示す。頭字語は、任意の連結基を有する環要素のコードに続いて、第1のハイフンおよび左側の末端基のコード、ならびに第2のハイフンおよび右端の末端基のコードで構成されている。表Dは、それらのそれぞれの略語と一緒に化合物の構造を例示する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
式中、nおよびmは、それぞれ、整数を表し、かつ3つの点「...」は、この表の他の略語のためのプレースホルダーである。
【0274】
以下の表は、例示的な構造を、それらのそれぞれの略語と一緒に示す。これらは、略語の規則の意味を例示するために示されている。それらはさらに好ましく使用され得る化合物を表す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【表4-11】
【表4-12】
【表4-13】
【表4-14】
【表4-15】
【表4-16】
【表4-17】
【表4-18】
【表4-19】
式中、n、mおよびlは、好ましくは、互いに独立して、1~9、より好ましくは1~7を表す。
【0275】
以下の表は、本発明による媒体中で安定剤として使用され得る例示的な化合物を示す。
【0276】
表E
表Eは、本発明によるLC媒体に添加され得る可能な安定剤を示し、ここで、nは、1~12の整数、好ましくは1、2、3、4、5、6、7または8を表し、末端メチル基は、示されていない。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【0277】
LC媒体は、好ましくは、0~10重量%、特に1ppm~5重量%、特に好ましくは1ppm~1重量%の安定剤を含む。
【0278】
下記の表Fは、本発明によるメソゲン性媒体において好ましくはキラルドーパントとして使用され得る例示的な化合物を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0279】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Fに示される化合物から選択される1種以上の化合物を含む。
【0280】
本発明によるメソゲン性媒体は、好ましくは、上記の表D~Fに示される化合物から選択される2種以上、好ましくは4種以上の化合物を含む。
【0281】
一実施形態では、本発明によるLC媒体は、好ましくは、表Dに示される3種以上、より好ましくは5種以上の化合物を含む。
【0282】
表G
表Gは、本発明によるLC媒体において、好ましくは反応性メソゲン化合物として使用され得る例示的な化合物を照合する。好ましくは、重合のために開始剤または2種以上の開始剤の混合物が添加される。開始剤または開始剤の混合物は、好ましくは、混合物を基準として0.001重量%~2重量%の量で添加される。適切な開始剤は、例えば、Irgacure(登録商標)651(BASF製)である。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【表7-17】
【表7-18】
【0283】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Gからの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0284】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、表Dの化合物の群から選択される4種以上、より好ましくは6種以上、さらにより好ましくは7種以上、特に好ましくは8種以上の化合物、好ましくは表Dの式の群から選択される3種以上の異なる式の化合物を含む。媒体は、表Eの式の群から選択される1種、2種以上の化合物をさらに含むことが特に好ましい。さらにより好ましくは、媒体は、表Gの式の群から選択される1種、2種以上の化合物をさらに含む。
【0285】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、決して本発明の範囲を限定するものとはみなされるべきではない。これらの実施例および変形またはそれらの他の等価物は、本開示に照らして当業者には明らかになるであろう。
【0286】
しかしながら、以下に示す物理的特性および組成は、どのような特性が得られるか、また、どのような範囲でそれらを変更できるかを示している。特に、好ましくは得ることができる様々な特性の組み合わせは、このように十分に規定されている。
【0287】
実施例
液晶混合物および複合系は、以下に示す組成および特性で実現される。それらの特性および光学性能を調べる。
【0288】
参照例1
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-1を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表8】
【0289】
参照例2
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-2を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表9】
【0290】
参照例3
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-3を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表10】
【0291】
参照例4
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-4を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表11】
【0292】
参照例5
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-5を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表12】
【0293】
参照例6
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-6を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表13】
【0294】
参照例7
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-7を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表14】
【0295】
参照例8
以下の表に示す組成および特性を有する液晶ベース混合物B-8を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性決定する。
【表15】
【0296】
実施例1
上記の参照例1に記載の98.78%の混合物B-1を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能な0.44%のキラルドーパントR-5011、0.75%の式RM-A
【化29】
の化合物および0.03%の式A-1
【化30】
の化合物と混合することによりコレステリック混合物C-1を調製する。
【0297】
混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(405mm×400mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0298】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0299】
続いて、直流電圧(70V)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を60分間照射することにより重合を行う。
【0300】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、電圧を印加しない。
【0301】
得られたセルのヘイズを、BYK-Gardner製のヘイズガードiを用いて測定する。
【0302】
得られたセルは、ヘイズが4.2%の透明状態と、ヘイズが95.8%のプライバシー(散乱)状態とを有する。
【0303】
該セルは、有利に均質な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0304】
比較例1
コレステリック混合物C-1を、上記の実施例1に記載されるように調製する。混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(405mm×400mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0305】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0306】
続いて、角波電圧(70V(ピークツーピーク)、20Hz)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を30分間照射することにより重合を行う。
【0307】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、電圧を印加しない。
【0308】
得られたセルのヘイズを、BYK-Gardner製のヘイズガードiを用いて測定する。
【0309】
得られたセルは、ヘイズが8.9%の透明状態と、ヘイズが96.9%のプライバシー(散乱)状態とを有する。
【0310】
このセルは、透明状態で比較的大きな残留ヘイズを示し、白濁した外観として識別可能である。
【0311】
実施例2
コレステリック混合物C-1を、上記の実施例1に記載されるように調製する。混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0312】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0313】
続いて、直流電圧(70V)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を30分間照射することにより重合を行う。
【0314】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、直流電圧(70V)を印加する。
【0315】
得られたセルのヘイズを、BYK-Gardner製のヘイズガードiを用いて測定する。
【0316】
得られたセルは、ヘイズが2.2%の透明状態と、ヘイズが95.8%のプライバシー(散乱)状態とを有する。
【0317】
該セルは有利に均質な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0318】
比較例2
コレステリック混合物C-1を、上記の実施例1に記載されるように調製する。混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(405mm×400mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0319】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0320】
続いて、角波電圧(70V、20Hz)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を30分間照射することにより重合を行う。
【0321】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、角波電圧(70V、20Hz)を印加する。
【0322】
得られたセルのヘイズを、BYK-Gardner製のヘイズガードiを用いて測定する。
【0323】
得られたセルは、ヘイズが6.2%の透明状態と、ヘイズが96.0%のプライバシー(散乱)状態とを有する。
【0324】
このセルは、透明状態で比較的大きな残留ヘイズを示し、白濁した外観として識別可能である。
【0325】
実施例3
上記の参照例1に記載の98.89%の混合物B-1を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能な0.33%のキラルドーパントR-5011、上記の実施例1に示された0.75%の式RM-Aの化合物、および上記の実施例1に示された0.03%の式A-1の化合物と混合することによりコレステリック混合物C-2を調製する。
【0326】
混合物C-2を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(三角形、辺の長さ1200mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0327】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0328】
続いて、直流電圧(70V)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を60分間照射することにより重合を行う。
【0329】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、電圧を印加しない。
【0330】
セルは均一なプライバシー状態および透明状態を示し、透明状態では望ましくない残留ヘイズは認められない。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0331】
比較例3
コレステリック混合物C-1を、上記の実施例1に記載されるように調製する。混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(405mm×400mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0332】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0333】
続いて、角波電圧(70V、0.2Hz)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を30分間照射することにより重合を行う。
【0334】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、電圧を印加しない。
【0335】
得られたセルは、透明状態とプライバシー状態との双方で不均一な外観を示す。
【0336】
比較例4
コレステリック混合物C-1を、上記の実施例1に記載されるように調製する。混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1254、TN-ラビング)を備えたガラス基材(405mm×400mm)を有する電気光学セルに充填し、セルギャップは25μmである。
【0337】
セルを40℃で15分間予熱する。
【0338】
続いて、角波電圧(70V、動的周波数:0.1Hzで開始し、5分間で40Hzまで上昇し、その後再び開始する非線形対数形状)を印加している間に、40℃でセルにUV光(遮断フィルタ付きのPhilips iSOLde CLEO Performance 80 W、4mW/cmの光強度)を30分間照射することにより重合を行う。
【0339】
光重合後、セルを150℃で30分間熱処理し、電圧を印加しない。
【0340】
得られたセルは、透明状態とプライバシー状態との双方で不均一な外観を示す。
【0341】
実施例4
上記の参照例2に記載の98.89%の混合物B-2を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能な0.33%のキラルドーパントR-5011、上記の実施例1に示された0.75%の式RM-Aの化合物、および上記の実施例1に示された0.03%の式A-1の化合物と混合することによりコレステリック混合物C-3を調製する。
【0342】
この混合物C-3を、実施例1に従って処理し、電気光学セルを得る。
【0343】
該セルは、有利に均質な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0344】
実施例5
上記の参照例1に記載の98.64%の混合物B-1を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能な0.42%のキラルドーパントR-5011、0.45%の式RM-B
【化31】
の化合物、0.45%の式RM-C
【化32】
の化合物、およびCiba(スイス)から入手可能な0.04%の光開始剤Irgacure(登録商標)651(以下ではIRG-651と略す)
【化33】
と混合することによりコレステリック混合物C-4を調製する。
【0345】
この混合物C-4を、実施例1に従って処理し、電気光学セルを得る。
【0346】
該セルは、有利に均質な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0347】
実施例6
上記の参照例3に記載の混合物B-3を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能なキラルドーパントS-1011と、2μmのピッチが得られるように混合し、この99.25%の混合物を、上記の実施例1に示した0.75%の式RM-Aの化合物とさらに混合して混合物C-5を得ることによりコレステリック混合物C-5を調製する。
【0348】
混合物C-5を、さらに実施例1に記載のように処理する。
【0349】
該セルは、有利な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0350】
実施例7
参照例4に記載の混合物B-4を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能なキラルドーパントR-5011、上記の実施例5に示した0.63%の式RM-Bの化合物、上記の実施例5に示した0.63%の式RM-Cの化合物、および0.04%のIRG-651と混合することによりコレステリック混合物C-6を調製する。
【0351】
混合物C-6を、さらに実施例1に記載のように処理する。
【0352】
該セルは、有利な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0353】
実施例8~11
コレステロール混合物C-7、C-8、C-9およびC-10を、上記の実施例1のC-1について記載したように調製し、ここで、B-1の代わりに、それぞれ、参照例5、6、7および8に記載の混合物B-5、B-6、B-7およびB-8を用いる。
【0354】
混合物C-7、C-8、C-9およびC-10を、さらに実施例2に記載のように処理する。
【0355】
該セルは、有利な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。
【0356】
実施例12
参照例2に記載の98.60%の混合物B-2を、Merck KGaA(ダルムシュタット、独国)から入手可能な0.65%のキラルドーパントR-5011、および上記の実施例1に示した0.75%の式RM-Aの化合物と混合することによりコレステリック混合物C-11を調製する。
【0357】
この混合物C-11を、実施例1に従って処理し、電気光学セルを得る。
【0358】
該セルは、有利に均質な透明状態および散乱状態を示し、有利なスイッチング性能および電気光学性能を示す。さらに、該セルは、有利に低い圧力感度を示す。