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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】受光装置および測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4863 20200101AFI20240930BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240930BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20240930BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S7/497
G01S17/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021569824
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048115
(87)【国際公開番号】W WO2021140912
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020003075
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】馬原 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 治
(72)【発明者】
【氏名】松川 朋広
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 康大
(72)【発明者】
【氏名】天川 慶太郎
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117970(JP,A)
【文献】特開2014-081254(JP,A)
【文献】特開2019-184297(JP,A)
【文献】国際公開第2007/004606(WO,A1)
【文献】特開2019-041201(JP,A)
【文献】特開2008-218911(JP,A)
【文献】特開2008-053784(JP,A)
【文献】中国実用新案第205566723(CN,U)
【文献】特開2018-179732(JP,A)
【文献】特表2008-542706(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106382993(CN,A)
【文献】特開2020-143959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
H01L 31/10
H01L 31/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバランシェフォトダイオードである受光素子を含む複数の受光回路と、
前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路と、
前記受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、
フォトンとの反応で前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源回路が供給する前記電源電位を制御するように構成された制御回路と
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づいてエラー判定するように構成されたエラー検出器と、
を備え
前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力される前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位と、少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記リチャージ電流または前記負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを含むパラメータとのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されている、
受光装置。
【請求項2】
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数が第1しきい値未満となるように前記受光回路の前記リチャージ電流を調整するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項3】
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項4】
前記エラー検出器は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項5】
アバランシェフォトダイオードである受光素子を含む複数の受光回路と、
前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路と、
前記受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、
フォトンとの反応で前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源回路が供給する前記電源電位を制御するように構成された制御回路と、
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づきエラー判定をし、前記エラー判定をされた前記信号の波形を補正するように構成されたエラー補正回路と、
備え、
前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力された前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位と、少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記リチャージ電流または前記負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを含むパラメータとのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されている、
受光装置。
【請求項6】
前記エラー補正回路は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項7】
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路の前記パッシブリチャージにおけるリチャージ電流を調整するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項8】
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
請求項に記載の受光装置。
【請求項9】
発光素子と、
アバランシェフォトダイオードである受光素子を含む複数の受光回路と、
前記複数の受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、
前記発光素子が発光していない期間に、フォトンとの反応で複数の前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源電位を制御するように構成された制御回路とを備え
前記制御回路は、前記信号に基づいて少なくともいずれかの前記受光回路においてアクティブリチャージ用のパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
測距装置。
【請求項10】
それぞれの前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに複数備え、
前記制御回路は、前記信号に基づいて複数の前記負荷回路の抵抗値または前記リチャージ電流の少なくともいずれかを制御するように構成されている、
請求項に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受光装置、測距装置および受光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車載、モバイルなど複数の分野において、発光素子からの照射光が物体で反射し、受光素子に戻ってくるまでの飛行時間(ToF)に基づき、物体までの距離を測定する技術の応用が進められている。受光素子として、アバランシェフォトダイオード(APD)が知られている。ガイガーモードのAPDでは、端子間に降伏電圧以上の電圧が印加され、単一フォトンの入射でアバランシェ現象が発生する。単一フォトンをアバランシェ現象で増倍させるAPDは、シングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)とよばれる。
【0003】
SPADでは、端子間の電圧を降伏電圧まで下げることによって、アバランシェ現象を止めることができる。端子間の電圧を下げ、アバランシェ現象を止めることは、クエンチとよばれる。そして、SPADの端子間の電圧を降伏電圧以上のバイアス電圧にリチャージさせると、再びフォトンの検出を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-091377号公報
【文献】特開2014-081254号公報
【文献】特開2018-179732号公報
【文献】特表2008-542706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ToFによる距離の測定を開始する前に、フォトンの検出ができないデッドタイムを短くする設定を行うことが望ましい。
【0006】
そこで、本開示は、デッドタイムを最小化することが可能な受光装置、受光回路および測距装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に一態様による受光装置は、受光素子を含む受光回路と、前記受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、フォトンとの反応で前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源回路が供給する前記電源電位を制御するように構成された制御回路とを備える受光装置。
【0008】
前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに備え、前記制御回路は、前記信号に基づいて前記負荷回路の前記リチャージ電流または前記負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを含むパラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0009】
複数の前記受光回路を備え、前記制御回路は、複数の前記受光回路が出力する前記信号に基づき、前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0010】
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づいてエラー判定するように構成されたエラー検出器をさらに備え、前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力された前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0011】
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、 前記制御回路は、前記エラー判定数が第1しきい値未満となるように前記受光回路の前記リチャージ電流を調整するように構成されていてもよい。
【0012】
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されていてもよい。
【0013】
前記エラー検出器は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されていてもよい。
【0014】
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づきエラー判定をし、前記エラー判定をされた前記信号の波形を補正するように構成されたエラー補正回路をさらに備えていてもよい。
【0015】
前記エラー補正回路は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されていてもよい。
【0016】
前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力された前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0017】
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、前記制御回路は、前記エラー判定数が第1しきい値未満となるように前記受光回路の前記リチャージ電流を調整するように構成されていてもよい。
【0018】
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されていてもよい。
【0019】
前記受光素子は、アバランシェフォトダイオードであってもよい。
【0020】
本開示の一態様による測距装置は、発光素子と、受光素子を含む複数の受光回路と、前記複数の受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、前記発光素子が発光していない期間に、フォトンとの反応で複数の前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源電位を制御するように構成された制御回路とを備えていてもよい。
【0021】
それぞれの前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに複数備え、前記制御回路は、前記信号に基づいて複数の前記負荷回路の抵抗値または前記リチャージ電流の少なくともいずれかを制御するように構成されていてもよい。
【0022】
前記制御回路は、前記信号に基づいて少なくともいずれかの前記受光回路においてアクティブリチャージ用のパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されていてもよい。
【0023】
本開示の一態様による受光回路は、受光素子と、電流源と、基準電位に接続された第1接点側または前記受光素子に接続された第2接点側のいずれかをオンにすることが可能なスイッチと、前記基準電位と前記電流源との間に流れる第1電流をミラーした第2電流を出力側より供給するように構成されたカレントミラー回路と、第1信号電極が前記基準電位に接続され、第2信号電極が前記受光素子および前記カレントミラー回路の前記出力側に接続され、制御電極が前記スイッチに接続されているトランジスタとを備えていてもよい。
【0024】
前記スイッチおよび前記トランジスタを複数備え、前記スイッチの切り替えに応じて前記受光素子に前記第1電流をN倍(Nは正の整数)した第3電流を前記受光素子に供給するように構成されていてもよい。
【0025】
前記受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路をさらに備えていてもよい。
【0026】
本開示の一態様による受光回路は、受光素子と、基準電位と前記受光素子との間に並列に接続された複数の抵抗器と、それぞれが前記抵抗器と直列に接続されている複数のスイッチと、前記受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路とを備え、前記スイッチの切り替えに応じ、前記受光素子に供給される電流が調整されるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】受光装置の例を示したブロック図。
図2】受光装置を用いた測距の例を模式的に示した図。
図3】パッシブリチャージを行う受光回路の例を示した回路図。
図4図4の受光回路における電圧波形の例を示したグラフ。
図5】アクティブリチャージを行う受光回路の例を示した回路図。
図6図5の受光回路における電圧波形の例を示したグラフ。
図7】パルス生成器の構成の例を示した回路図。
図8】本開示による受光装置の例を概略的に示した図。
図9】エラー検出器によるエラー判定の例を示したグラフ。
図10】本開示による受光装置または測距装置における処理の例を示したフローチャート。
図11】受光装置または測距装置における設定とエラー判定数の例を示したテーブル。
図12】抵抗値を調整可能な負荷回路の例を示した回路図。
図13】電流値を調整可能な負荷回路の例を示した回路図。
図14】負荷回路の設定を決定する処理の例を示したフローチャート。
図15】電源回路の設定を決定する処理の例を示したフローチャート。
図16】電源電位とエラー判定数の例を示したテーブル。
図17】変形例2による測距装置の例を示したブロック図。
図18図17の測距装置における電圧波形の補正処理の例を示すグラフ。
図19図17の測距装置における電圧波形の補正処理の例を示すグラフ。
図20】変形例3による測距装置の例を示したブロック図。
図21】変形例4による受光装置の例を示したブロック図。
図22】変形例5による回路の例を示した回路図。
図23】変形例6による回路の例を示した回路図。
図24】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図25】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
図1のブロック図は、受光装置の例を示している。また、図2は、受光装置を用いた測距の例を模式的に示している。図1の受光装置200は、通信回路210と、制御回路220と、SPADコントローラ221と、SPADアレイ240と、回路ブロック241と、処理回路230と、転送回路211と、PLL250と、クロック生成器251と、電流源252と、温度センサ253と、トリガ回路254と、電源回路256とを備えている。処理回路230は、内部の構成要素として、ヒストグラム生成器232と、距離計算部233とを備えている。また、受光装置200は、端子T_OUTを介して図2の発光素子255に接続されている。
【0030】
通信回路210および転送回路211は、外部の回路との通信を行う。制御回路220は、受光装置200の各構成要素を制御する。SPADアレイ240は、図2の検出部1に相当する。SPADアレイ240には、例えば、複数のSPADおよびそれぞれのSPADに対応する受光回路が実装されている。SPADアレイは、複数のシングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)を含む。受光回路は、SPADがフォトンと反応したときに、パルスを後段の回路に出力するように構成されている。また、受光回路は、SPADのクエンチと、リチャージを行う回路とを含んでいる。SPADコントローラ221は、受光回路を制御する。SPADコントローラ221は、例えば、受光回路におけるスイッチの切り替え、電流値の制御、パルスの生成タイミングの制御を行う。
【0031】
回路ブロック241は、例えば、それぞれの受光回路の後段に接続されたサンプラを含んでいる。サンプラは、バッファともよばれ、受光回路から入力された信号をデジタル化する。また、回路ブロック241は、エラー検出器およびエラー補正回路を含んでいてもよい。エラー検出器およびエラー補正回路の詳細については、後述する。トリガ回路254は、発光素子255の発光タイミングを制御する。
【0032】
ヒストグラム生成器232は、デジタル化されたそれぞれの受光回路の出力信号の電圧レベルをサンプリングし、ヒストグラムを生成する。ヒストグラム生成器232は、複数回にわたって、サンプリング動作を繰り返し、ヒストグラムを生成してもよい。複数回にわたってサンプリング動作を行うことにより、発光素子から照射した光の反射光rlとその他の光を識別することが可能となる。ヒストグラム生成器232は、ヒストグラムの生成時に、複数回にわたる計測結果の平均などの演算を行ってもよい。距離計算部233は、トリガ回路254から転送された光の照射時刻t0に関する情報およびヒストグラムのピーク時刻t1に基づき、受光装置200と、物体との間の距離を計算する。例えば、光速度をcとすると、受光装置200と物体OBJまでの距離をL=c/2(t1-t0)の式によって求めることができる。このうち、t1-t0は、飛行時間に相当する。転送回路211を使って、計算された距離を含む情報を外部の回路に転送してもよい。受光装置200のように、物体との間の距離を計算する機能を備えた装置を測距装置とよぶ。
【0033】
電源回路256は、SPADアレイ240内の画素として実装されている受光回路に電源電位Vddを供給する回路である。SPADアレイ240内の受光回路として、上述の各回路図で説明した回路を使うことができる。すなわち、電源回路256は、後述する回路図における電源電位Vddの信号線と電気的に接続されている。また、電源回路256は、制御用の信号線を介してSPADコントローラ221に接続される。SPADコントローラ221は、電源回路256に、制御信号を送信することによって、電源電位Vddの値を変更することができる。
【0034】
電源回路256は、SPADコントローラ221以外の構成要素によって制御されてもよい。例えば、受光回路におけるリチャージ方法を決定する制御回路220が直接電源回路256を制御してもよい。
【0035】
例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路によって、ヒストグラム生成器232、距離計算部233を含む処理回路230の構成要素を実装することができる。ただし、処理回路230の機能は、CPU(中央処理装置)と、CPU上で実行されるプログラムによって実装されていてもよい。この場合、処理回路230は、プログラムおよびプログラムの実行に必要なデータを保存するメモリまたはストレージを含んでいてもよい。
【0036】
なお、図1の受光装置200は、受光装置の構成の一例にしかすぎない。したがって、本開示による受光装置の構成は、受光装置200とは異なっていてもよい。受光装置は、受光装置200のすべての構成要素を備えていなくてもよい。例えば、受光装置では、PLL250、クロック生成器251、電流源252、温度センサ253、トリガ回路254、通信回路210のうち、少なくともいずれかが省略されていてもよい。また、その他の構成要素の追加がされていてもよいし、その他の構成要素が省略されていてもよい。
【0037】
図3の回路図は、フォトン検出に使われる受光回路の一例を示している。また、図4のグラフは、受光回路における電圧波形の例を示している。図3の受光回路13は、フォトダイオードPDと、トランジスタTR0と、インバータINVとを備えている。トランジスタTR0は、PMOSトランジスタである。フォトダイオードPDとして、例えば、SPADを使うことができる。トランジスタTR0のソースは、電源電位Vddに接続されている。トランジスタTR0のドレインは、フォトダイオードPDのカソードに接続されている。フォトダイオードPDのアノードには、電圧Vanが印加されている。電圧Vanによって、フォトダイオードPDの端子間には、降伏電圧以上の逆電圧が印加される。インバータINVの入力側は、トランジスタTR0のドレインおよびフォトダイオードPDのカソードに接続されている。また、インバータINVの出力側には、バッファなど後段の回路が接続される。
【0038】
トランジスタTR0は、受光回路13の負荷素子90の一例である。ただし、負荷素子の構成は、これとは異なっていてもよい。例えば、負荷素子として、抵抗器を使ってもよいし、トランジスタと抵抗器を組み合わせたものを使ってもよい。また、負荷素子の位置に複数の素子を含む負荷回路を接続してもよい。
【0039】
フォトダイオードPDにフォトンが入射し、アバランシェ増倍によってフォトダイオードPDの端子間を流れる電流が増えると、負荷素子90における電圧降下に応じ、カソード電位Vcaが低下する。フォトダイオードPDの端子間電圧が降伏電圧まで下がると、アバランシェ現象は停止し、フォトダイオードPDの端子間を流れる電流が減少する。これにより、フォトダイオードPDの端子間の電圧は、降伏電圧以上の値となり、再びフォトンの検出を行うことが可能となる(グラフ60のVca)。一方、インバータINVは、カソード電位Vcaがしきい値thi以下である期間に、HIGH(正極性)のパルスを出力する(グラフ60のVp)。受光回路13は、フォトンの検出時にパルスを出力するため、後段の回路においてフォトンカウント、ヒストグラムの生成、飛行時間の計算など各種の処理を行うことができる。
【0040】
なお、グラフ60に示したような動作を行う回路は、パッシブリチャージ回路とよばれる。上述の受光回路13は、パッシブリチャージ回路の一例である。パッシブリチャージ回路として、受光回路13とは異なる構成の回路を使ってもよい。例えば、極性が反転した回路を使ってもよい。また、受光回路13にその他の素子が追加された回路を使ってもよい。パッシブリチャージ回路を使うと、消費電力を抑えることが可能である。
【0041】
フォトダイオードPDがフォトンと反応してから、アバランシェ現象を停止(クエンチ)させて、再度フォトダイオードPDの端子間の電圧を降伏電圧以上にリチャージするまでの期間、フォトダイオードPDは、フォトンの検出を行うことができない。この期間は、デッドタイムとよばれる。負荷素子90より供給される電流が不足すると、グラフ60に示した電圧Vcaが上昇するまでの時間tupが長くなり、デッドタイムが長くなってしまう。受光素子(例えば、フォトダイオードPD)の端子の電圧レベルをリセットするために負荷素子または負荷回路より供給される電流は、リチャージ電流とよばれる。受光回路としてパッシブリチャージ回路が使われる場合、測距などの処理を開始する前にデッドタイムが最小となるように受光回路のリチャージ電流の設定を行うことが好ましい。例えば、測距装置の工場出荷時、初回起動時または初期化操作時に実行されるキャリブレーション処理において、SPADアレイ240内の受光回路(画素)におけるリチャージ電流を決め、デッドタイムを最小化し、測距性能を高めることができる。
【0042】
なお、パッシブリチャージ回路では、リチャージ電流を大きくしすぎると、フォトダイオードPDの端子間電圧が降伏電圧まで下がらなくなるため、クエンチを行うことができなくなってしまう(グラフ61のVca)。このとき、インバータINVの出力電圧が張り付いてしまうため、フォトンを検出するのが困難となる。このため、測距性能を高めるためには、受光素子に過大なリチャージ電流を供給せず出力電圧のデッドロックが発生する確率を抑えることが望ましい。
【0043】
図5の回路図は、本開示による回路の例を示している。図5の受光回路10は、フォトダイオードPDと、スイッチSW1と、トランジスタTR0と、トランジスタTR1と、スイッチSW2と、トランジスタTR2と、スイッチSW3と、インバータINVと、パルス生成器PGとを備えている。トランジスタTR0、トランジスタTR1、トランジスタTR2は、いずれもPMOSトランジスタである。フォトダイオードPDとして、例えば、SPADを使うことができる。
【0044】
スイッチSW1、スイッチSW2およびスイッチSW3は、例えば、MOSトランジスタによって実装される。例えば、それぞれのMOSトランジスタのゲートをSPADコントローラ221に接続することができる。この場合、SPADコントローラ221は、個々のMOSトランジスタのゲートに印加する電圧を制御することによって、スイッチをオン/オフする。なお、トランジスタTR0のゲートをSPADコントローラ221に接続してもよい。この場合、SPADコントローラ221は、トランジスタTR0のゲートに印加する電圧を制御し、トランジスタTR0のソース/ドレイン間の抵抗値を調整することができる。なお、SPADコントローラ221の代わりに、制御回路220が上述の制御を行ってもよい。
【0045】
トランジスタTR0のソースは、電源電位Vddに接続されている。スイッチSW1は、トランジスタTR0のドレインと、フォトダイオードPDのカソードとの間に接続されている。フォトダイオードPDのアノードには、電圧Vanが印加されている。フォトダイオードPDの端子間に、降伏電圧以上の逆電圧が印加されるよう、電圧Vanの値を決めることができる。インバータINVの入力端子は、信号線Linを介してフォトダイオードPDのカソードおよびスイッチSW1に接続されている。
【0046】
トランジスタTR1のソースおよびトランジスタTR2のソースは、いずれも電源電位Vddに接続されている。トランジスタTR1のドレインと、信号線Linとの間には、スイッチSW2が接続されている。一方、トランジスタTR2のドレインと、信号線Linとの間には、スイッチSW3が接続されている。インバータINVの出力端子は、信号線Loutを介して、トランジスタTR2のゲートおよびパルス生成器PGの入力端子に接続されている。パルス生成器PGの出力端子は、トランジスタTR1のゲートに接続されている。
【0047】
受光回路10では、スイッチ設定に応じてフォトダイオードPDのリチャージ方法を切り替えることができる。スイッチSW1をOFFにし、スイッチSW2およびスイッチSW3をONにすると、受光回路10にアクティブリチャージを行わせることができる。図5に示した受光回路10では、アクティブリチャージを行うスイッチ設定となっている。また、スイッチSW1をONにし、スイッチSW2およびスイッチSW3をOFFにすると、受光回路10にパッシブリチャージを行わせることができる。この場合、受光回路10は、図3の受光回路13(パッシブリチャージ回路)と同様の動作をする。さらに、スイッチSW1およびスイッチSW2をONにすると、受光回路10にアクティブリチャージとアクティブリチャージの両方を行わせることができる。この場合、スイッチSW3は、ONであってもよいし、OFFであってもよい。
【0048】
図6のグラフは、受光回路10における電圧波形の例を示している。図6のグラフ63は、受光回路10でアクティブリチャージを行った場合における電圧波形に相当している。なお、グラフ63のVgは、トランジスタTR1のゲート電圧を示している。いずれのグラフにおいても、横軸は時刻を示している。
【0049】
受光回路10にアクティブリチャージを行わせるとき(スイッチ設定st1のとき)の動作について説明する。フォトダイオードPDにフォトンが入射し、アバランシェ増倍によってフォトダイオードPDの端子間を流れる電流が増えると、トランジスタTR1およびトランジスタTR2のソース/ドレイン間における電圧降下に応じ、カソード電位Vcaが低下する。フォトダイオードPDの端子間電圧が降伏電圧まで下がると、アバランシェ現象が停止(クエンチ)する点は、パッシブリチャージが行われる場合と同様である。
【0050】
インバータINVは、信号線Linの電圧がしきい値thi以下である期間に、HIGH(正極性)のパルスを出力する(グラフ64のVp)。当該パルスに基づき、後段の計測回路30は、各種の処理を実行することができる。信号線Linの電圧は、LOWになるため、インバータINVの出力側にある信号線Loutの電圧は、HIGHになる。パルス生成器PGは、HIGHの信号が入力されると、時間遅れtdをもって、LOW(負極性)のパルスを出力する。したがって、トランジスタTR1のゲートにLOWの電圧が印加され、トランジスタTR1のソース/ドレイン間がオンになる。グラフ64のVgでは、期間trにわたって、LOWのパルスが出力されている。これにより、カソード電位Vcaは、電源電位Vddによって引き上げられ、再びフォトダイオードPDによるフォトンの検出が可能となる。
【0051】
リチャージによって信号線Linの電圧がHIGHになると、インバータINVの出力側の信号線Loutの電圧は、LOWになる。このとき、トランジスタTR2のゲートには、LOWの電圧が印加され、トランジスタTR2のソース/ドレイン間は、オンとなる。このように、トランジスタTR2は、トランジスタTR1の状態をラッチする。トランジスタTR2によって、貫通電流の発生を抑制し、カソード電位Vcaが不定となるのを防止できる。
【0052】
なお、スイッチSW2およびスイッチSW3だけでなく、スイッチSW1もONになっている場合(スイッチ設定st3)、さらにトランジスタTR0のソース/ドレイン間における電圧降下がフォトダイオードPDのクエンチに寄与する。クエンチによって、フォトダイオードPDの端子間を流れる電流が減少すると、フォトダイオードPDの端子間の電圧が上昇する点は、図3の受光回路13と同様である。
【0053】
図6のグラフ63に示したように、アクティブリチャージを行い、フォトダイオードPDのデッドタイムを短くするためには、時間遅れtdの値を調整する必要がある。ここで、時間遅れtdとは、フォトダイオードPDのカソード電位Vcaがしきい値thi以下となってから、パルス生成器PGからLOWのパルスが出力されるまでの時差のことをいうものとする。図6のグラフ64は、時間遅れtdを短く設定しすぎた場合における電圧波形を示している。時間遅れtdを短く設定しすぎると、パルス生成器PGからリセット用のパルスを出力しても、再びカソード電位Vcaが低下する場合がある。カソード電位Vcaは、しきい値thiを下回り、パルス生成器PGは、短期間で複数のパルスを生成する。このため、カソード電位Vcaでハンチングが発生し、受光回路10を使ったフォトン検出ができなくなってしまう。測距性能を高めるためには、受光回路におけるアクティブリチャージ用パルスが生成される時間遅れtdの値を充分に確保し、電圧のハンチングを防止することが望ましい。
【0054】
受光回路としてアクティブリチャージ回路が使われる場合、測距などの処理を開始する前にデッドタイムが最小となるように受光回路のアクティブリチャージ用パルスが生成される時間遅れtdの設定を行うことが好ましい。例えば、測距装置の工場出荷時、初回起動時または初期化操作時に実行されるキャリブレーション処理において、SPADアレイ240内の受光回路(画素)においてアクティブリチャージ用パルスが生成される時間遅れtdを決め、デッドタイムを最小化し、測距性能を高めることができる。
【0055】
受光回路10のうち、トランジスタTR1と、トランジスタTR2と、スイッチSW2と、スイッチSW3と、パルス生成器PGとを含む部分は、アクティブリチャージ回路91に相当している。また、受光回路10のうち、トランジスタTR0(負荷素子90)と、スイッチSW1を含む部分は、パッシブリチャージ回路に相当している。受光回路10は、パッシブリチャージ回路と、アクティブリチャージ回路とを含む受光回路の一例である。
【0056】
なお、受光回路10(図5)とは異なる構成の回路を使ってもよい。例えば、受光回路10に素子を追加した回路を使ってもよい。また、受光回路10の極性を反転させた回路を使ってもよい。極性を反転させた回路を使う場合、PMOSトランジスタは、NMOSトランジスタに置き換わる。また、受光回路10の極性を反転させると、フォトダイオードPDのカソードに正のバイアス電圧が印加される。したがって、上述の説明におけるフォトダイオードPDのカソード電位は、アノード電位に置き換わる。なお、受光回路10に限らず、本明細書で説明するその他の回路についても、極性を反転させた構成を採用することが可能である。
【0057】
図7の回路図は、パルス生成器の構成の例を示している。図7のパルス生成器PGは、フリップフロップFPと、インバータINV2とを備えている。フリップフロップFPは、Dフリップフロップである。信号線Loutは、フリップフロップF1のD端子に接続されている。信号線dctrは、フリップフロップF1のクロック端子に接続されている。フリップフロップF1のQ端子と、トランジスタTR1のゲートとの間には、インバータINV2が接続されている。
【0058】
図7のパルス生成器PGでは、信号線dctrに供給するクロック信号を制御することによって、信号線Loutの電圧がHIGHレベルになってから、電圧VgをLOWレベルに変化させるまでの時間遅れtdを変えることができる。例えば、クロック信号におけるパルスの間隔を大きくすると、時間遅れtdを大きくすることができる。また、クロック信号におけるパルスの間隔を小さくすると、時間遅れtdを小さくすることができる。図7のパルス生成器PGを使えば、外部から供給されるクロック信号によって、時間遅れを制御することが容易となる。例えば、SPADコントローラ221またはクロック生成器251が信号線dctrにクロック信号を供給することができる。
【0059】
なお、図7の回路は、パルス生成器PGの一例にしかすぎない。したがって、これとは異なる構成のパルス生成器を使ってもよい。例えば、インバータチェインによってパルス生成器を実装してもよい。また、遅延器と論理演算素子を組み合わせることによってパルス生成器を実装してもよい。すなわち、入力電圧のレベルが変化してから、時間遅れをもって、トランジスタTR1のゲートにパルスを出力できれば、どのような回路構成のパルス生成器を使ってもよい。
【0060】
図8は、本開示による受光装置の例を概略的に示している。図8の受光装置101は、複数の受光回路11と、複数のサンプラ20と、複数のエラー検出器21と、計測回路30と、制御回路40とを備えている。受光回路11は、SPADおよび受光回路を含んでいる。計測回路30は、内部の構成要素として、ヒストグラム生成器31を含んでいる。
【0061】
複数の受光回路11は、例えば、受光装置200(図1)のSPADアレイ240に相当する。複数のサンプラ20および複数のエラー検出器21は、例えば、回路ブロック241に配置される。計測回路30は、例えば、処理回路230に相当する。制御回路40は、例えば、制御回路220およびSPADコントローラ221に相当する。
【0062】
それぞれの受光回路11は、信号線l_rdを介して後段のサンプラ20に接続されている。サンプラは、バッファともよばれ、受光回路から入力された信号をデジタル化する。それぞれのサンプラ20の出力側には、エラー検出器21に接続されている。そして、それぞれのエラー検出器21の後段には、計測回路30が接続されている。計測回路30は、制御回路40に接続されている。制御回路40は、信号線l_ctを介してそれぞれの受光回路11に接続されている。なお、図8では、複数の信号線l_ctが示されているが、制御用の信号線の本数については、問わない。例えば、制御回路40は、1本の信号線で複数の受光回路11を制御してもよい。なお、受光回路11の構成については、問わない。例えば、受光回路11として上述の図3および図5に示した受光回路を使うことができる。受光回路11は、リチャージ回路であってもよいし、アクティブリチャージ回路であってもよい。また、複数の受光回路11内に異なる構成の回路が混在していてもよい。
【0063】
SPADがフォトンと反応すると、受光回路11は信号線l_rdに電圧信号を出力する。エラー検出器21は、受光回路11から出力された電圧信号に基づき、エラー検出を行うように構成されている。また、サンプラ20は、受光回路11から出力された電圧信号をデジタル化する。ヒストグラム生成器31は、それぞれのサンプラから入力された信号に含まれるパルスに基づいてヒストグラムを生成する。
【0064】
なお、図8に示した受光装置の構成は、一例にしかすぎない。例えば、エラー検出器21を、受光回路11と、サンプラ20との間に接続してもよい。また、サンプラ20の機能およびエラー検出器21の機能が統合された回路を、それぞれの受光回路11と、計測回路30の入力端子との間に接続してもよい。また、それぞれの信号線l_rdごとにエラー検出器21を用意せず、複数の信号線l_rdを共通のエラー検出器に接続してもよい。この場合、ひとつのエラー検出器が複数の信号線l_rdのエラー判定を行う必要があるが、必要な回路面積を削減することが可能になる。また、エラー検出器21に相当する機能を、計測回路30側に実装してもよい。この場合、計測回路30は、エラー検出器21の機能を兼ね備えているといえる。
【0065】
図9のグラフは、エラー検出器21によるエラー検出の例を示している。エラー検出器21は、例えば、以下で説明する方法によってエラー判定を行うことが可能である。図9のグラフ65~67は、フォトダイオードPDのカソード電位Vcaおよび受光回路11(インバータINV)の出力電圧Vpの波形を示している。いずれのグラフにおいても、横軸は、時刻を示している。
【0066】
グラフ65では、カソード電位VcaがインバータINVのしきい値より高い電圧に上がる前に、フォトダイオードPDがフォトンと再反応しており、インバータINVが出力するパルス幅が大きくなりすぎている場合を示している。例えば、エラー検出器21は、受光回路11から出力された電圧信号におけるパルスの立ち上がりを検出する。そして、エラー検出器21は、パルス幅を監視する。エラー検出器21は、パルス幅がしきい値t_hを超えた場合に、エラー判定をする。例えば、エラー検出器21は、周期t_sで信号の電圧をサンプリングし、サンプリングされた電圧が連続してn_h回HIGHとなったら、エラー判定をすることができる。この場合、t_h=t_s×n_hの関係が満たされるよう、t_sおよびn_hの値を設定することができる。ただし、これとは異なる方法によって、エラー判定をしてもよい。
【0067】
グラフ66では、受光回路11におけるリチャージ電流が大きすぎるため、フォトダイオードPDの端子間電圧が降伏電圧まで下がらず、クエンチができなくなっている。このため、受光回路11の出力電圧が張り付いてしまう。例えば、エラー検出器21は、受光回路11から出力された電圧信号におけるパルスの立ち上がりを検出する。そして、エラー検出器21は、受光回路11の出力電圧がHIGHとなっている期間を計測する。エラー検出器21は、受光回路11の出力電圧がHIGHとなっている期間がしきい値t_hを超えたら、エラー判定をする。グラフ66の例では、グラフ65のケースと同様の方法によって、エラー判定をすることができる。
【0068】
グラフ67では、フォトンとの反応後のフォトダイオードPDに残留電荷が発生している。このため、受光回路11によって、クエンチおよびリチャージの動作が行われていても、フォトダイオードPDでフォトンとの再反応が起こる。フォトンとの再反応により、カソード電位Vcaは、ハンチングする。例えば、エラー検出器21は、受光回路11の電圧信号におけるパルスの立ち下がり後に、受光回路11の出力電圧がLOWとなっている期間がしきい値t_lより短い場合に、エラー判定をする。例えば、エラー検出器21は、周期t_sで信号の電圧をサンプリングし、サンプリングされた電圧が連続してLOWとなった回数がn_l回より少ない場合にエラー判定をする。この場合、t_l=t_s×n_lの関係が満たされるよう、t_sおよびn_lの値を設定することができる。また、これとは異なる方法によって、エラー判定をしてもよい。
【0069】
ここでは、受光回路11が、フォトンの検出時にHIGHレベル(正極性)のパルスを出力する場合におけるエラー判定を説明した。エラー検出器21は、受光回路11がLOWレベル(負極性)のパルスを出力する場合にも、エラー判定を行うことができる。その場合、エラー検出器21は、上述の説明におけるHIGHをLOWに、LOWをHIGHに、パルスの立ち下がりをパルスの立ち上がりに、パルスの立ち上がりをパルスの立ち下がりに、それぞれ置き換えた動作を行えばよい。
【0070】
エラー検出器21は、エラー判定を行った場合、エラー信号を計測回路30に出力する。例えば、フォトンの検出時にパルスが伝達される信号線とは別個の信号線を使って、エラー信号を伝達してもよい。また、フォトンの検出時にパルスが伝達される信号線に重畳してエラー信号を送信してもよい。エラー検出器21は、検出したエラーの種類を示すエラーコードを含むエラー信号を出力してもよい。エラーコードは、例えば、(1)過少なリチャージ電流、(2)過大なリチャージ電流、(3)短すぎる時間遅れtd、(4)長すぎる時間遅れtdを示す情報を含んでいてもよい。また、エラー信号は、上述のエラー波形の種類を特定する情報または検出された波形に関する情報を含んでいてもよい。
【0071】
次に、SPADアレイ240内の複数の画素(受光回路)から出力される電圧信号に基づくエラー判定によってデッドタイムが最小となる設定を探索する処理の例について説明する。
【0072】
図10のフローチャートは、本開示による受光装置または測距装置における処理の例を示している。以下では、図10のフローチャートを参照しながら、処理を説明する。
【0073】
はじめに、SPADアレイ240が起動される(ステップS101)。そして、計測回路30は、SPADアレイ240内の複数の受光回路におけるエラーをカウントする(ステップS102)。ステップS102におけるエラーの判定および検出は、例えば、上述のエラー検出器21または計測回路30によって行われる。エラー検出器21がエラーを検出する場合、後段の計測回路30は、エラー信号によってSPADアレイ240内におけるエラー判定数の情報を得ることができる。ここで、計測回路30は、エラーコードごとにエラー判定数をカウントしてもよい。
【0074】
例えば、SPADアレイ240内のエラー判定数、エラーコードごとのエラー判定数の少なくともいずれかを含む情報をエラー情報とよぶものとする。計測回路30で得られたエラー情報は、制御回路40(制御回路220)に転送される。発光素子を有する測距装置が使われている場合、ステップS102の実行期間中に発光素子の発光を停止し、発光素子からの影響を除去することができる。
【0075】
制御回路40は、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かを判定する(ステップS103)。例えば、制御回路40は、SPADアレイ240内のエラー判定数がしきい値未満であるか否かを判定してもよい。また、制御回路40は、エラーコード別のエラー判定数をしきい値と比較し、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かを判定してもよい。これにより、次に行う調整内容を特定することができる。
【0076】
ステップS103での判定の結果に応じて、実行される処理が分岐する。制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲内であると判定した場合(ステップS103のYES)、調整処理は、完了する(ステップS105)。ステップS205の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0077】
制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲外であると判定した場合(ステップS103のNO)、制御回路40は、リチャージ電流および/またはパルス生成器PGでパルスが生成される時間遅れの少なくともいずれかを変更する(ステップS104)。ステップS103の判定が否定的となる場合の例としては、エラー判定数がしきい値より多い場合または特定のエラーコードのエラー判定数がしきい値より多い場合が挙げられる。ステップS104における調整内容は、SPADアレイ240内の受光回路の種類による。例えば、受光回路がパッシブリチャージ回路である場合、リチャージ電流を調整する。また、受光回路がパッシブリチャージ回路である場合、パルス生成器PGでパルスが生成される時間遅れtdを調整する。SPADコントローラ221がSPADアレイ240内のそれぞれの受光回路の設定変更を行うことができる。この場合、制御回路40は、SPADコントローラ221に設定の変更対象となる画素(受光回路)のアドレスと、設定内容とを通知してもよい。
【0078】
例えば、リチャージ電流の大きさが不足していると判定される場合、制御回路40は、受光回路におけるリチャージ電流をより大きく調整することができる。この場合、制御回路40は、負荷素子または負荷回路における抵抗値をより小さく調整してもよい。また、リチャージ電流が過大であると判定される場合、制御回路40は、受光回路におけるリチャージ電流をより小さく調整することができる。この場合、制御回路40は、負荷素子または負荷回路における抵抗値をより小さく調整してもよい。
【0079】
また、パルス生成器PGでパルスが生成される時間遅れtdが短すぎると判定される場合、制御回路40は、時間遅れtdをより長く調整することができる。パルス生成器PGでパルスが生成される時間遅れtdが長すぎると判定される場合、制御回路40は、時間遅れtdをより短く調整することができる。
【0080】
ステップS104の処理が完了したら、ステップS102およびステップS103の処理が再び実行される。すなわち、再び複数の受光回路におけるエラーがカウントされ、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かが判定される。エラーのカウントが基準の範囲内となったら(ステップS103のYES)、調整処理は、完了する(ステップS105)。ステップS105の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0081】
上述の図10の処理の実行タイミングは、装置のキャリブレーション時に限定されない。したがって、装置のキャリブレーション時以外のタイミングに、図10の処理を実行してもよい。例えば、装置の動作開始後に、図10の処理を実行してもよい。
【0082】
図11のテーブルT1は、SPADアレイ240内の受光回路においてそれぞれの値のリチャージ電流を使ったときにおけるエラー判定数を示している。例えば、計測回路30または制御回路40は、異なるリチャージ電流を使ってエラー判定数を計測し、テーブルT1を生成する。図11を参照すると、リチャージ電流を抑えた場合にエラー判定数が少なくなっている。例えば、制御回路40は、エラー判定数のしきい値thに基づいてリチャージ電流の調整を行ってもよい。この場合、制御回路40は、リチャージ電流ic1を使ったときのエラー判定数ec1をしきい値thと比較する。ec1>thである場合、制御回路40は、リチャージ電流をic2(ic1≠ic2)に変更する。制御回路40は、エラーコードの情報に基づいてic1より大きいic2を使うのか、あるいはic1より小さいic2を使うのかを決めることができる。そして、制御回路40によってエラー判定数がしきい値より少ないと判定されたら、そのときのリチャージ電流を使って測距を行うことができる。
【0083】
例えば、調整処理でテーブルT1のデータが得られた場合、しきい値thとしてエラー判定数3を使うことができる。ただし、しきい値は、これとは異なっていてもよい。なお、図11のテーブルに含まれる電流値は例にしかすぎず、受光回路で使われるリチャージ電流の値を限定することを意図したものではない。
【0084】
なお、異なるリチャージ電流を使ってエラー判定数の計測を行う場合、受光回路で設定可能なリチャージ電流の最大値imaxからエラー判定数の計測を開始してもよいし、受光回路で設定可能なリチャージ電流の最小値iminからエラー判定数の計測を開始してもよい。また、imaxとiminとの間にある値のリチャージ電流よりエラー判定数の計測を開始してもよい。すなわち、調整処理の開始時におけるリチャージ電流については、限定しない。
【0085】
制御回路40は、エラー判定数がしきい値thより少なくなった後に調整処理を継続してもよい。例えば、デッドタイムの短縮のため、可能な限り大きいリチャージ電流を使うことが望まれる場合、より大きいリチャージ電流を使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。リチャージ電流の変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より大きいリチャージ電流を使って測距を行うことができる。また、消費電力の抑制のため、可能な限り小さいリチャージ電流を使うことが望まれる場合、より小さいリチャージ電流を使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。リチャージ電流の変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より小さいリチャージ電流を使って測距を行うことができる。
【0086】
図11のテーブルT2は、SPADアレイ240内の受光回路においてそれぞれの値のリチャージ電流を使ったときにおけるエラー判定数を示している。例えば、計測回路30または制御回路40は、異なる時間遅れtdを使ってエラー判定数を計測し、テーブルT2を生成する。図11を参照すると、パルス生成器PGがより短い時間遅れtdでパルスを生成した場合にエラー判定数が少なくなっている。例えば、制御回路40は、エラー判定数のしきい値thに基づいて時間遅れtdの調整を行ってもよい。この場合、制御回路40は、時間遅れtdを使ったときのエラー判定数ed1をしきい値thと比較する。ed1>thである場合、制御回路40は、時間遅れをtd(td≠td)に変更する。制御回路40は、エラーコードの情報に基づいてtdより大きいtdを使うのか、あるいはtdより小さいtdを使うのかを決めることができる。そして、制御回路40によってエラー判定数がしきい値より少ないと判定されたら、そのときの時間遅れでアクティブリチャージ用パルスを生成して測距を行うことができる。
【0087】
例えば、調整処理でテーブルT2のデータが得られた場合、しきい値thとしてエラー判定数3を使うことができる。ただし、しきい値は、これとは異なっていてもよい。なお、図11のテーブルに含まれる時間遅れの値は例にしかすぎず、パルスが生成される時間遅れの値を限定することを意図したものではない。
【0088】
なお、異なるリチャージ電流を使ってエラー判定数の計測を行う場合、パルス生成器PGに設定可能な時間遅れの最小値tdminからエラー判定数の計測を開始してもよいし、パルス生成器PGに設定可能な時間遅れの最小値tdmaxからエラー判定数の計測を開始してもよい。また、tdminとtdmaxとの間にある値の時間遅れの値よりエラー判定数の計測を開始してもよい。すなわち、調整処理の開始時における時間遅れについては、限定しない。
【0089】
制御回路40は、エラー判定数がしきい値thより少なくなった後に調整処理を継続してもよい。例えば、デッドタイムの短縮のため、可能な限り短い時間遅れを使うことが望まれる場合、より短い時間遅れを使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。短い時間遅れの変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より短い時間遅れを使って測距を行うことができる。また、消費電力の抑制のため、可能な限り長い時間遅れを使うことが望まれる場合、より長い時間遅れを使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。時間遅れの変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より長い時間遅れを使って測距を行うことができる。
【0090】
次に、本開示による受光装置、測距装置および受光回路で使用することが可能な負荷回路の例について説明する。
【0091】
図3および図5では、リチャージ電流を制御する負荷素子90としてトランジスタTR0が使われている受光回路の例を示した。ただし、リチャージ電流をより高い精度で制御するために、負荷素子90の代わりに複数の素子を含む負荷回路を使ってもよい。以下では、抵抗値またはリチャージ電流の制御が可能な負荷回路の例について説明する。
【0092】
図12の回路図は、抵抗値を調整可能な負荷回路の例を示している。図12には、受光回路に接続された負荷回路90Aが示されている。負荷回路90Aは、スイッチSW1を介して、フォトダイオードPDのカソードおよび信号線Linに接続されている。例えば、図3および図5の回路図におけるトランジスタTR0を負荷回路90Aに置き換えることが可能である。スイッチSW1は、パッシブリチャージのイネーブル/ディスエーブルを切り替えるためのスイッチである。受光回路でパッシブリチャージのディスエーブルを行わない場合、スイッチSW1を省略し、負荷回路90Aを直接フォトダイオードPDのカソードおよび信号線Linに接続してもよい。
【0093】
負荷回路90Aは、直列に接続された抵抗器とスイッチのペアを複数有する。抵抗器R1は、ペアとなるスイッチs1と直列に接続されている。また、抵抗器R2は、ペアとなるスイッチs2と直列に接続されている。抵抗器R3は、ペアとなるスイッチs3と直列に接続されている。同様に、抵抗器R4は、ペアとなるスイッチs4と直列に接続されている。図12の負荷回路90Aは、抵抗器とスイッチのペアを4つ含んでいる。ただし、負荷回路が有する抵抗器とスイッチのペアの数は、これとは異なっていてもよい。例えば、抵抗器とスイッチのペアの数が2以上の任意の整数である、負荷回路を使うことができる。また、抵抗器とスイッチのペアは、互いに並列に接続されている。それぞれのペアのフォトダイオードPDと反対側にある端点には、電源電位Vddが印加される。
【0094】
負荷回路90A内のスイッチs1~s4は、SPADアレイ240を制御する回路によって切り替えられるものとする。例えば、スイッチs1~s4は、制御回路40、制御回路220、SPADコントローラ221、外部処理回路300の少なくともいずれかの回路によってオン/オフされる。スイッチs1~s4は、例えば、MOSトランジスタによって実装される。ただし、スイッチs1~s4の実装方法については、問わない。
【0095】
負荷回路90Aでは、オンにするスイッチの数に応じて抵抗値の調整を行うことが可能である。オンにするスイッチの数を増やすと、並列に接続された抵抗器の数が増えるため、負荷回路90Aの抵抗値が低下する。例えば、抵抗器R1~R4の抵抗値が等しいと仮定する。この場合、2つのスイッチをオンにすると、1つのスイッチがオンになっている場合と比べ、負荷回路90Aの抵抗値が1/2になる。同様に、3つのスイッチをオンにすると、1つのスイッチがオンになっている場合と比べ、負荷回路90Aの抵抗値が1/3になる。さらに、4つのスイッチをオンにすると、1つのスイッチがオンになっている場合と比べ、負荷回路90Aの抵抗値が1/4になる。
【0096】
なお、負荷回路の複数の抵抗器の抵抗値は、必ず等しくなくてもよい。したがって、負荷回路は、抵抗値の異なる抵抗器を含んでいてもよい。
【0097】
同じ電源電位Vddを使う場合、負荷回路90Aの抵抗値を大きくすると、リチャージ電流が小さくなる。また、負荷回路90Aの抵抗値を小さくすると、リチャージ電流を大きくすることができる。このように、本開示による受光装置、受光回路および測距装置では、負荷回路90A内でオンにするスイッチの数を変えることによって、リチャージ電流を調整してもよい。負荷回路90Aを使うと、高い精度でリチャージ電流を調整することが可能になる。
【0098】
図12の例で示したように、本開示による受光回路は、受光素子と、基準電位と受光素子との間に並列に接続された複数の抵抗器と、それぞれが抵抗器と直列に接続されている複数のスイッチと、受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路とを備えていてもよい。本開示による受光回路は、スイッチの切り替えに応じ、受光素子に供給される電流が調整されるように構成されていてもよい。上述の電源電位Vddは、基準電位の一例である。上述のフォトダイオードPDは、受光素子の一例である。読み出し回路は、例えば、図3および図5に示した回路のうち、トランジスタTR0、スイッチSW1およびフォトダイオードPDを除いた部分に相当する。
【0099】
図13の回路図は、電流値を調整可能な負荷回路の例を示している。図13には、受光回路に接続された負荷回路90Bが示されている。負荷回路90Bは、スイッチSW1を介して、フォトダイオードPDのカソードおよび信号線Linに接続されている。例えば、図3および図5の回路図におけるトランジスタTR0を負荷回路90Bに置き換えることが可能である。スイッチSW1は、パッシブリチャージのイネーブル/ディスエーブルを切り替えるためのスイッチである。受光回路でパッシブリチャージのディスエーブルを行わない場合には、スイッチSW1を省略し、負荷回路90Bを直接フォトダイオードPDのカソードおよび信号線Linに接続してもよい。以下では、スイッチSW1がオンであると仮定して、負荷回路90Bを説明する。
【0100】
負荷回路90Bは、電流源CSと、トランジスタtr0と、トランジスタtr1と、トランジスタtr3と、トランジスタtr4と、スイッチse2と、スイッチse3と、スイッチse4とを備えている。電流源CSとして、電流源トランジスタを使うことができる。電流源トランジスタとして、MOSトランジスタを使うことができる。ただし、電流源CSの実装方法については、問わない。電流源CSは、定電流源であってもよい。トランジスタtr0~tr4は、PMOSトランジスタである。スイッチse2~se4は、電気的な接続先を接点c0と接点c1との間で切り替えることが可能なスイッチである。
【0101】
トランジスタtr0~tr4のソースは、いずれも電源電位Vddに接続されている。また、トランジスタtr2~tr4のドレインは、スイッチSW1を介してフォトダイオードPDおよび信号線Linに接続されている。トランジスタtr0とトランジスタtr1は、電源電位Vddと、電流源CSとの間の電流icsをミラーするカレントミラー回路を形成している。このため、トランジスタtr0のゲートとドレインが短絡されている。また、トランジスタtr0のゲートは、信号線Lcを介してトランジスタtr1のゲートに接続されている。
【0102】
トランジスタtr2のゲートには、スイッチse2が接続されている。また、トランジスタtr3のゲートには、スイッチse3が接続されている。さらに、トランジスタtr4のゲートには、スイッチse4が接続されている。スイッチse2~se4の接点c0は、いずれも電源電位Vddに接続されている。また、スイッチse2~se4の接点c1は、いずれも信号線Lcと接続されている。
【0103】
負荷回路90B内のスイッチse2~se4は、SPADアレイ240を制御する回路によって切り替え可能であるものとする。例えば、スイッチse2~se4は、制御回路40、制御回路220、SPADコントローラ221または外部処理回路300の少なくともいずれかの回路によって切り替えられる。
【0104】
図13の負荷回路90Bは、トランジスタと、当該トランジスタのゲートに接続されたスイッチのペアを3つ含んでいる。ただし、トランジスタとスイッチのペアの数は、これとは異なっていてもよい。例えば、負荷回路は、トランジスタとスイッチのペアを、1以上の任意の数で含んでいてもよい。図13の回路に、トランジスタとスイッチのペアを追加する場合、追加のトランジスタとスイッチの配線は、既存のトランジスタとスイッチの配線方法にしたがう。スイッチを追加する場合、接点c0が電源電位Vddに接続され、接点c1が信号線Lcに接続される。また、トランジスタを追加する場合、ゲートがスイッチに接続され、ソースが電源電位Vddに接続され、ドレインが他のトランジスタのドレインに接続される。
【0105】
負荷回路90Bでは、接点c1側をオンにしたスイッチの数に応じて、電流値を調整することが可能である。例えば、接点c1側をオンにしたスイッチの数が0である場合、受光回路には、電流源CSの電流icsに等しいリチャージ電流が供給される。接点c1側をオンにしたスイッチが1つである場合、受光回路には、電流源CSの電流の2倍(2×ics)のリチャージ電流が供給される。また、接点c1側をオンにしたスイッチが2つである場合、受光回路には、電流源CSの電流の3倍(3×ics)のリチャージ電流が供給される。さらに、接点c2側をオンにしたスイッチが3つである場合、受光回路には、電流源CSの電流の4倍(4×ics)のリチャージ電流が供給される。このように、本開示による受光装置、受光回路および測距装置では、負荷回路90B内で接点c1側をオンにするスイッチの数を変えることによって、リチャージ電流を調整してもよい。負荷回路90Bを使うと、高い精度でリチャージ電流を調整することが可能になる。
【0106】
なお、上述の受光回路の極性を反転させた回路を使ってフォトン検出を行う場合、負荷回路90Bの極性を反転させてもよい。図13のPMOSトランジスタをNMOSトランジスタに置き換えることにより、負荷回路90Bの極性を反転させることが可能である。
【0107】
図13の例で示したように、本開示による受光回路は、受光素子と、電流源と、スイッチと、カレントミラー回路と、トランジスタとを備えていてもよい。スイッチは、基準電位に接続された第1接点側または受光素子に接続された第2接点側のいずれかをオンにすることが可能である。カレントミラー回路は、基準電位と電流源との間に流れる第1電流をミラーした第2電流を出力側より供給するように構成されている。トランジスタは、第1信号電極が基準電位に接続され、第2信号電極が受光素子およびカレントミラー回路の出力側に接続され、制御電極がスイッチに接続されている。
【0108】
ここで、第1接点は、例えば、上述のスイッチse2~se4における接点c0に相当する。第2接点は、例えば、上述のスイッチse2~se4における接点c1に相当する。カレントミラー回路は、例えば、上述のトランジスタtr0とトランジスタtr1によって形成されたカレントミラー回路である。カレントミラー回路の出力側は、例えば、トランジスタtr1のドレインに相当する。第1信号電極は、例えば、MOSトランジスタのソースである。第2信号電極は、例えば、MOSトランジスタのドレインである。ただし、第1信号電極と第2信号電極とMOSトランジスタの電極との対応関係は、反転していてもよい。制御電極は、例えば、MOSトランジスタのゲートである。
【0109】
また、図13の例で示したように、本開示による受光回路は、スイッチおよびトランジスタを複数備えていてもよい。本開示による受光回路は、スイッチの切り替えに応じて受光素子に第1電流をN倍(Nは正の整数)した第3電流を受光素子に供給するように構成されていてもよい。また、本開示による受光回路は、受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路をさらに備えていてもよい。
【0110】
SPADのリチャージ方法の制御時に、受光回路で使われる電源電位Vddを変更してもよい。電源電位Vddを変更することにより、パッシブリチャージ時におけるリチャージ電流を調整することができる。SPADアレイ内の画素に共通の電源電位が供給されている場合、短時間でSPADアレイ内の全画素のリチャージ電流の設定を変更することができる。ただし、SPADアレイ内の画素に共通の電源電位が供給されない構成の受光装置および測距装置を使ってもよい。例えば、複数の電源回路を使って、SPADアレイ内の画素に電源電位を供給してもよい。
【0111】
本開示による受光装置および測距装置では、電源電位Vddの値を調整可能な電源回路と、上述の負荷回路90Aまたは90Bを組み合わせて使ってもよい。複数の構成要素を組み合わせて使い、受光回路で幅広い範囲のリチャージ電流値を設定することが可能となる。
【0112】
負荷回路の設定および電源回路の設定を最適化することによって、受光装置または測距装置におけるデッドタイムを最小化させることが可能である。以下では、負荷回路の設定および電源回路の設定を決定する処理の例を説明する。
【0113】
図14のフローチャートは、負荷回路の設定を決定する処理の例を示している。以下では、図14のフローチャートを参照しながら、処理を説明する。
【0114】
はじめに、SPADアレイ240が起動される(ステップS201)。そして、計測回路30は、SPADアレイ240内の複数の受光回路におけるエラーをカウントする(ステップS202)。ステップS202におけるエラーの判定および検出は、例えば、上述のエラー検出器21または計測回路30によって行われる。エラー検出器21がエラーを検出する場合、後段の計測回路30は、エラー信号によってSPADアレイ240内におけるエラー判定数の情報を得ることができる。ここで、計測回路30は、エラーの種類を特定するエラーコードごとにエラー判定数をカウントしてもよい。
【0115】
例えば、SPADアレイ240内のエラー判定数またはエラーコードごとのエラー判定数の少なくともいずれかを含む情報をエラー情報とよぶものとする。計測回路30で得られたエラー情報は、制御回路40(制御回路220)に転送される。発光素子を有する測距装置が使われている場合、ステップS202の実行期間中に発光素子の発光を停止することができる。これにより、発光素子による影響を排除することができる。
【0116】
制御回路40は、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かを判定する(ステップS203)。例えば、制御回路40は、SPADアレイ240内のエラー判定数がしきい値未満であるか否かを判定してもよい。また、制御回路40は、エラーコード別のエラー判定数をしきい値と比較し、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かを判定してもよい。例えば、制御回路40は、ステップS203でエラー判定数およびエラーコードに基づき、リチャージ電流が過少なのか、あるいはリチャージ電流が過大なのかを推定することができる。
【0117】
ステップS203での判定の結果に応じて、実行される処理が分岐する。制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲内であると判定した場合(ステップS203のYES)、調整処理は、完了する(ステップS205)。ステップS205の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0118】
制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲外であると判定した場合(ステップS203のNO)、制御回路40は、リチャージ電流または負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを変更する(ステップS204)。ステップS203の判定が否定的となる場合の例としては、エラー判定数がしきい値より多い場合、特定のエラーコードのエラー判定数がしきい値より多い場合が挙げられる。上述のように、SPADコントローラ221がSPADアレイ240内のそれぞれの受光回路の設定変更を行ってもよい。この場合、制御回路40は、SPADコントローラ221に設定の変更対象となる画素(受光回路)のアドレスと、設定内容とを通知してもよい。
【0119】
例えば、リチャージ電流の大きさが不足していると判定される場合、制御回路40は、受光回路におけるリチャージ電流をより大きく変更することができる。この場合、制御回路40は、負荷回路における抵抗値をより小さく変更してもよい。負荷回路として、例えば、図12の負荷回路90Aまたは図13の負荷回路90Bを使うことができる。また、SPADアレイ240内の受光回路において、図4のグラフ62に示した現象が検出され、リチャージ電流が大きすぎると判定される場合、制御回路40は、受光回路におけるリチャージ電流をより小さく変更することができる。この場合、制御回路40は、負荷回路における抵抗値をより大きく変更してもよい。
【0120】
ステップS204の処理が完了したら、ステップS202およびステップS203の処理が再び実行される。すなわち、再び複数の受光回路におけるエラーがカウントされ、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かが判定される。エラーのカウントが基準の範囲内となったら(ステップS203のYES)、キャリブレーション処理は、完了する(ステップS205)。ステップS205の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0121】
上述の図14の処理の実行タイミングは、装置のキャリブレーション時に限定されない。したがって、装置のキャリブレーション時以外のタイミングに、図14の処理を実行してもよい。例えば、装置の動作開始後に、図12の負荷回路90Aにおける抵抗値を調整してもよい。
【0122】
図15のフローチャートは、電源回路の設定を決定する処理の例を示している。以下では、図15のフローチャートを参照しながら、処理を説明する。
【0123】
はじめに、SPADアレイ240が起動される(ステップS211)。そして、計測回路30は、SPADアレイ240内の複数の受光回路におけるエラーをカウントする(ステップS212)。ステップS212におけるエラーの判定および検出は、例えば、上述のエラー検出器21または計測回路30によって実行される。エラー検出器21がエラーを検出する場合、後段の計測回路30は、エラー信号によってSPADアレイ240内におけるエラー情報を得ることができる。
【0124】
計測回路30で得られたエラー情報は、制御回路40(制御回路220)に転送される。発光素子を有する測距装置が使われている場合、ステップS202では発光素子の発光を止めることができる。これにより、発光素子の影響を排除することができる。
【0125】
制御回路40は、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かを判定する(ステップS213)エラー情報に基づく判定が行われるのであれば、ステップS213における詳細な判定方法については、問わない。
【0126】
ステップS213での判定の結果に応じて、実行される処理が分岐する。制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲内であると判定した場合(ステップS213のYES)、調整処理は、完了する(ステップS215)。ステップS215の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0127】
制御回路40がエラーのカウントが基準の範囲外であると判定した場合(ステップS213のNO)、制御回路40は、電源回路を制御し、SPADアレイ240の電源電圧を変更する(ステップS214)。ステップS213の判定が否定的となる場合の例としては、エラー判定数がしきい値より多い場合、特定のエラーコードのエラー判定数がしきい値より多い場合が挙げられる。制御回路40に代わって、SPADコントローラ221または外部処理回路300が電源回路の設定変更を行ってもよい。また、複数の電源回路がSPADアレイ240に接続されている場合、ステップS214で少なくともいずれかの電源回路の設定変更を行ってもよい。
【0128】
例えば、リチャージ電流の大きさが不足していると判定される場合、制御回路40は、電源回路を制御し、SPADアレイ240内で使われる電源電位Vddをより高く変更することができる。これにより、それぞれの受光回路におけるリチャージ電流を増やすことができる。また、SPADアレイ240内の受光回路において、図4のグラフ62に示した現象が検出され、リチャージ電流が過大であると判定される場合、制御回路40は、電源回路を制御し、SPADアレイ240内で使われる電源電位Vddをより低く変更することができる。これにより、SPADアレイ240内の受光回路におけるリチャージ電流を減らすことができる。
【0129】
ステップS204の処理が完了したら、ステップS202およびステップS203の処理が再び実行される。すなわち、再び複数の受光回路におけるエラーがカウントされ、エラーのカウントが基準の範囲内であるか否かが判定される。エラーのカウントが基準の範囲内となったら(ステップS203のYES)、調整処理は、完了する(ステップS205)。ステップS205の後、測距装置は、発光素子から光を物体OBJに照射し、測距処理を開始してもよい。
【0130】
上述の図15の処理の実行タイミングは、装置のキャリブレーション時に限定されない。したがって、装置のキャリブレーション時以外のタイミングに、図15の処理を実行してもよい。例えば、装置の動作開始後に、電源回路が供給する電源電位Vddの値を調整してもよい。
【0131】
図16のテーブルT3は、SPADアレイ240で複数の値の電源電位Vddを使ったときにおけるエラー判定数を示している。例えば、計測回路30または制御回路40は、異なる電源電位Vddを使ってエラー判定数を計測し、テーブルT3を生成する。図16を参照すると、より高い電源電位Vddが設定されたときにエラー判定数が少なくなっている。例えば、制御回路40は、エラー判定数のしきい値thに基づいて電源電位Vddの調整を行ってもよい。この場合、制御回路40は、電源電位Vddを使ったときのエラー判定数ed1をしきい値thと比較する。ed1>thである場合、制御回路40は、電源電位をVdd(Vdd≠Vdd)に変更する。制御回路40は、エラーコードの情報に基づいてVddより高いVddを使うのか、あるいはVddより低いVddを使うのかを決めることができる。そして、制御回路40によってエラー判定数がしきい値より少ないと判定されたら、そのときの電源電位を使って測距を行うことができる。
【0132】
例えば、調整処理でテーブルT3のデータが得られた場合、しきい値thとしてエラー判定数3を使うことができる。ただし、しきい値は、これとは異なっていてもよい。なお、図16のテーブルに含まれる電源電位の値は例にしかすぎず、受光回路で使用されるリ電源電位の値を限定することを意図したものではない。
【0133】
なお、複数の電源電位を使ってエラー判定数の計測を行う場合、受光回路で使用可能な最も高い電源電位Vddmaxからエラー判定数の計測を開始してもよいし、受光回路で使用可能な最も低い電源電位Vddminからエラー判定数の計測を開始してもよい。また、VddmaxとVddminとの間にある値の電源電位よりエラー判定数の計測を開始してもよい。すなわち、調整処理の開始時における電源電位については、限定しない。
【0134】
制御回路40は、エラー判定数がしきい値thより少なくなった後に調整処理を継続してもよい。例えば、デッドタイムの短縮のため、可能な限り大きいリチャージ電流を使うことが望まれる場合、より高い電源電位を使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。電源電位の変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より高い電源電位を使って測距を行うことができる。また、消費電力の抑制のため、可能な限り低い電源電位を使うことが望まれる場合、より低い電源電位を使ってエラー判定数をカウントし、当該エラー判定数をしきい値thと比較することができる。電源電位の変更後においてもエラー判定数がしきい値thより少ない場合、より低い電源電位を使って測距を行うことができる。
【0135】
本開示による受光装置は、受光素子を含む受光回路と、受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、フォトンとの反応で受光回路が出力する信号に基づいて電源回路が供給する電源電位を制御するように構成された制御回路とを備えていてもよい。
【0136】
上述のように、本開示による受光装置は、受光回路に接続され、受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに備えていてもよい。この場合、制御回路は、フォトンとの反応で受光回路が出力する信号に基づいて負荷回路のリチャージ電流または負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを含むパラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0137】
また、本開示による受光装置は、複数の受光回路を備えていてもよい。この場合、制御回路は、複数の受光回路が出力する信号に基づき、電源回路の電源電位または少なくともいずれかの受光回路に接続された負荷回路のパラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0138】
また、本開示による受光装置は、受光回路が出力する信号の波形に基づいてエラー判定するように構成されたエラー検出器をさらに備えていてもよい。エラー検出器として、上述のエラー検出器21または計測回路30を使うことができる。この場合、制御回路は、複数の受光回路から出力された信号におけるエラー判定数に基づいて電源回路の電源電位または少なくともいずれかの受光回路に接続された負荷回路のパラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0139】
また、本開示による受光装置では、少なくともいずれかの受光回路がパッシブリチャージを行うように構成されていてもよい。この場合、制御回路は、エラー判定数が第1しきい値未満となるように受光回路のリチャージ電流を調整するように構成されている。
【0140】
さらに、本開示による受光装置では、少なくともいずれかの受光回路がアクティブリチャージを行うように構成されていてもよい。この場合、制御回路は、エラー判定数に基づいて受光回路でアクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている。
【0141】
エラー検出器は、パルス幅が第2しきい値を超える信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されていてもよい。また、本開示による受光装置では、受光素子としてアバランシェフォトダイオードを使ってもよい。
【0142】
次に、受光回路から出力信号がエラー判定された場合に、当該信号を補正する機能を備えた受光装置の例について説明する。
【0143】
図17のブロック図は、変形例2による測距装置の例を示している。図17の受光装置102では、サンプラ20と、計測回路30のそれぞれの入力端子との間に、エラー補正回路22が接続されている。エラー補正回路22は、サンプラ20から出力された電圧信号のうち、エラー状態と判定された電圧信号を補正するように構成されている。エラー補正回路22は、エラー検出器21に、エラー判定された電圧信号を、エラー状態でない電圧信号に変換する機能を追加したものに相当する。エラー補正回路22は、例えば、サンプラ20とともに回路ブロック241に配置されている。エラー検出器21がエラー補正回路22に代わっている点を除けば、受光装置102の構成および機能は、上述の受光装置101と同様である。
【0144】
図17に示した受光装置の構成は、一例にしかすぎない。例えば、エラー補正回路22を、受光回路11と、サンプラ20との間に接続してもよい。また、サンプラ20の機能およびエラー補正回路22の機能が統合された回路を、それぞれの受光回路11と、計測回路30の入力端子との間に接続してもよい。また、それぞれの信号線l_rdごとにエラー補正回路22を用意せず、複数の信号線l_rdを共通のエラー補正回路に接続してもよい。この場合、ひとつのエラー補正回路が複数の信号線l_rdのエラー判定と信号の補正を行う必要があるが、必要な回路面積を削減することが可能になる。なお、エラー判定された電圧信号を、エラー状態でない電圧信号に変換する機能は、計測回路30の入力段に実装されていてもよい。この場合、計測回路30は、エラー検出器21から受信したエラー信号に基づいて、受光回路11から出力された電圧信号の補正を行うことができる。すなわち、計測回路30がエラー補正回路22を含む構成を採用することも可能である。
【0145】
なお、受光回路11の構成については、問わない。例えば、受光回路11として上述の図3および図5に示した受光回路を使うことができる。受光回路11は、リチャージ回路であってもよいし、アクティブリチャージ回路であってもよい。また、複数の受光回路11内に異なる構成の回路が混在していてもよい。
【0146】
図18および図19のグラフは、図17の受光装置102における電圧波形の補正処理の例を示している。いずれのグラフにおいても、横軸は、時刻を示している。
【0147】
図18のグラフ73は、エラー補正回路22の入力電圧Vai、エラー補正回路22の出力電圧Vaoおよびエラー信号Vesの波形を示している。グラフ73は、受光回路11でパッシブリチャージが行われているが、リチャージにかかる時間が長くなりすぎている。このため、グラフ73では、受光回路11から出力されるパルス幅が大きくなりすぎている。例えば、エラー補正回路22は、受光回路11から出力された電圧信号におけるパルスの立ち上がりを検出する。そして、エラー補正回路22は、パルス幅を監視する。エラー補正回路22は、エラー判定の行われるまで、入力された信号をそのまま出力する。エラー補正回路22は、パルス幅がしきい値t_hを超えた場合、エラー判定をする。エラー補正回路22は、パルスの検出中にエラー判定を行ったら、当該パルスのうち、しきい値t_hを超える部分をマスキングする。
【0148】
グラフ73の例において、エラー補正回路22は、パルスの立ち上がりから期間t_hの部分でHIGHの電圧を出力している。そして、エラー補正回路22は、パルス幅がt_hを超えた後に相当する期間t_m1の部分でLOWの電圧を出力する。このように、エラー補正回路22は、受光回路11がしきい値t_hを超えるパルス幅のパルスを出力した場合であっても、パルス幅がしきい値t_hに等しいパルスに補正することができる。なお、グラフ73の例では、パルスがマスキングされている期間t_m1に、エラー信号Vesの電圧がHIGHになっている。これにより、後段の計測回路30に、エラー判定が行われた旨を通知することが可能となる。なお、エラー補正回路22は、計測回路30にエラーコードを通知してもよい。
【0149】
エラー補正回路22は、周期t_sで入力電圧Vaiをサンプリングし、サンプリングされた電圧が連続してn_h回HIGHレベルであった場合に、エラー判定を行うことができる。ここで、t_h=t_s×n_hの関係が満たされるように、t_sおよびn_hの値を設定することができる。例えば、t_s=1ナノ秒、n_h=10、t_h=10ナノ秒に設定することが可能である。ただし、これとは異なる方法によって、エラー判定を行ってもよい。
【0150】
図19のグラフ74は、エラー補正回路22の入力電圧Vai、エラー補正回路22の出力電圧Vaoおよびエラー信号Vesの波形を示している。グラフ74の例では、受光回路11でアクティブリチャージが行われている。グラフ74の例では、グラフ64またはグラフ67に例示した現象によって受光回路11の出力電圧(すなわち、エラー補正回路22の入力電圧Vai)がハンチングしている。エラー補正回路22は、エラー判定の行われるまで、入力された信号をそのまま出力する。例えば、エラー補正回路22は、入力電圧Vaiにおけるパルスの立ち下がり後に、入力電圧Vaiがしきい値t_lより短い期間LOWとなっている場合、エラー判定をする。エラー補正回路22は、エラー判定をしたら、HIGHのエラー信号Vesを出力してもよい。また、エラー補正回路22は、エラーコードを計測回路30に通知してもよい。エラー補正回路22は、エラー判定後に所定の期間t_m2、パルスをマスキングする。
【0151】
グラフ74の例において、エラー補正回路22は、エラー判定後の期間t_m2において、LOWレベルの電圧を出力している。この期間t_m2をマスキング期間とよぶものとする。エラー判定後、マスキング期間t_m2を経過すると、エラー補正回路22は、再び、入力された信号をそのまま出力する。例えば、グラフ74では、マスキング期間t_m2の経過後、エラー補正回路22は、再びパルスを出力している。マスキング期間t_m2として、例えば、しきい値t_lより大きい値を設定することができる。
【0152】
また、エラー補正回路22は、入力電圧Vaiにおけるエラー判定の状況に応じて、マスキング期間t_m2を調整してもよい。例えば、グラフ74の入力電圧Vaiでは、初回のパルスの到来後、しきい値t_lより短い間隔で3つのパルスが到来している。このため、エラー補正回路22は、白い矢印で示されたタイミングで、続けて3回エラー判定をすることになる。ただし、エラー補正回路22は、最後にエラー判定がされてから、期間t_r、エラー判定がされない場合に、エラー状態を解除することができる。エラー状態が解除されたら、エラー補正回路22は、再び入力されたパルスをそのまま出力する。グラフ74の例のように、エラー補正回路22は、エラー状態を解除したとき、エラー信号VesをLOWにしてもよい。なお、エラー補正回路22は、期間t_m2の間、連続的にHIGHのエラー信号Vesを出力する代わりに、エラー判定がされるたびに、不連続なHIGHのエラー信号Vesを出力してもよい。
【0153】
例えば、エラー補正回路22は、周期t_sで信号の電圧をサンプリングし、サンプリングされた電圧が連続してLOWとなった回数がn_l回より少ない場合にエラー判定を行うことができる。t_l=t_s×n_lの関係が満たされるよう、t_sおよびn_lの値を設定することができる。ただし、エラー補正回路22は、これとは異なる方法によって、エラー判定を行ってもよい。
【0154】
ここでは、受光回路11が、フォトンの検出時にHIGHレベル(正極性)のパルスを出力する場合におけるエラー判定およびエラー補正について説明した。ただし、エラー補正回路22は、受光回路11がLOWレベル(負極性)のパルスを出力する場合にも、エラー判定を行うことが可能である。その場合、エラー補正回路22は、上述の説明におけるHIGHをLOWに、LOWをHIGHに、パルスの立ち下がりをパルスの立ち上がりに、パルスの立ち上がりをパルスの立ち下がりに、それぞれ置き換えた動作を行えばよい。
【0155】
エラー補正回路22を備えた受光装置102を使った場合でも、上述のフローチャートまたはテーブルを使った、受光回路、パルス生成器または電源回路の調整処理を実行することが可能である。
【0156】
このように、本開示による受光装置は、受光回路が出力する信号の波形に基づきエラー判定をし、エラー判定をされた信号の波形を補正するように構成されたエラー補正回路をさらに備えていてもよい。エラー補正回路として、例えば、上述のエラー補正回路22または計測回路30を使うことができる。この場合、エラー補正回路は、パルス幅が第2しきい値を超える信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されていてもよい。受光装置がエラー補正回路を備える場合、制御回路は、複数の受光回路から出力された信号におけるエラー判定数に基づいて電源回路の電源電位または少なくともいずれかの受光回路に接続された負荷回路のパラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されていてもよい。
【0157】
図20のブロック図は、変形例3による測距装置の例を示している。図20には、受光装置202と、外部処理回路300が示されている。受光装置202は、受光装置200(図1)の構成要素うち、制御回路220と電源回路256を省略したものに相当する。受光装置202の処理回路230は、転送回路211および端子S_OUTを介して、外部処理回路300に接続されている。また、受光装置202のSPADコントローラ221は、端子S_INおよび通信回路210を介して、外部処理回路300に接続されている。図20のように、SPADアレイ240に電源電位Vddを供給する回路として、外部の電源回路257を使ってもよい。電源回路257は、端子PWRを介して、測距装置204内のSPADアレイ240に接続されている。また、電源回路257は、制御用の信号線を介して外部処理回路300に接続されている。外部処理回路300は、電源回路257に制御信号を送信することによって、電源電位Vddの値を変更する。
【0158】
外部処理回路300は、例えば、ASICまたは、FPGAなどのハードウェア回路である。ただし、外部処理回路300は、CPU(中央処理装置)と、ストレージを備えるコンピュータであってもよい。この場合、外部処理回路300は、ストレージに保存されたプログラムをCPU上で実行することによって、各種の機能を提供する。
【0159】
外部処理回路300は、図1の制御回路220(図8および図17の制御回路40)に相当する機能を実行する。すなわち、受光装置202とは、別個の外部処理回路300がそれぞれの受光回路11の設定および電源回路の設定を行ってもよい。なお、外部処理回路300と、受光装置202との間の通信は、有線で行われてもよいし、無線によって行われてもよい。
【0160】
図21のブロック図は、変形例4による受光装置の例を示している。本開示による受光装置は、図1および図20に示した装置のように、発光素子および距離計算部を備えた測距装置であってもよい。ただし、本開示による受光装置は、必ず測距機能を備えていなくてもよい。例えば、図21の受光装置201のように、距離計算部233およびトリガ回路254が省略された装置を使ってもよい。受光装置201は、SPADアレイ240によるフォトンの検出と、ヒストグラムの生成を行うことができる。受光装置201を他の装置に接続し、距離計算部、トリガ回路、発光素子に相当する機能を追加してもよい。また、受光装置201を、SPADアレイ240の設定と電源電位を決める装置として使うことができる。この場合、他の測距装置は、受光装置201が決定したSPADアレイ240の設定と電源電位に基づいて測距を行うことができる。
【0161】
以下では、SPADアレイ240内の画素として使用可能なその他の受光回路の例について説明する。
【0162】
図22の回路図は、変形例5による回路の例を示している。図22の受光回路12は、受光回路10のトランジスタTR2およびスイッチSW3を省略した回路に相当する。すなわち、受光回路12では、受光回路10のうち、トランジスタTR1の状態をラッチする部分が省略されている。受光回路12では、SW1をONに、SW2をOFFに設定すると、パッシブリチャージが行われる。また、受光回路12では、SW1をOFFに、SW2をONに設定すると、アクティブリチャージが行われる。なお、受光回路12では、SW1とSW2の両方をONに設定すると、パッシブリチャージと、アクティブリチャージの両方が行われる。なお、受光回路12の動作は、トランジスタTR1の状態をラッチする動作がなくなる点を除けば、上述の受光回路10と同様となる。
【0163】
図23の回路図は、変形例6による回路の例を示している。図23の受光回路14は、受光回路10の負荷素子90(トランジスタTR0)を省略した回路に相当する。すなわち、受光回路14は、アクティブリチャージ専用の回路である。受光回路14の動作は、受光回路10において、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がON、スイッチSW3がONに設定されている場合(テーブル70のスイッチ設定st1)と同様となる。
【0164】
本開示による測距装置は、発光素子と、複数の受光回路と、複数の受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、発光素子が発光していない期間に、フォトンとの反応で複数の受光回路が出力する信号に基づいて電源電位を制御するように構成された制御回路とを備えていてもよい。また、本開示による測距装置は、それぞれの受光回路に接続され、受光回路内の受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに複数備えていてもよい。この場合、制御回路は、信号に基づいて複数の負荷回路の抵抗値またはリチャージ電流の少なくともいずれかを制御するように構成されていてもよい。
【0165】
また、本開示による測距装置の制御回路は、信号に基づいて少なくともいずれかの受光回路においてアクティブリチャージ用のパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されていてもよい。
【0166】
本開示による受光装置、測距装置および受光回路を使うと、デッドタイムを最小化する設定を行ってから測距を開始するができる。このため、高い精度でフォトン検出または測距を行うことが可能となる。本開示による受光装置、測距装置および受光回路では、複数の方式の少なくともいずれかを選択してリチャージ電流を調整してもよい。例えば、複数の受光回路におけるエラー判定数に応じて、電源回路が複数の受光回路に供給する電源電位を調整してもよい。SPADアレイ内に共通の電源電位が供給されている場合、短時間でSPADアレイ全体のリチャージ電流を変更することができる。
【0167】
また、SPADアレイは、受光回路に抵抗値が調整可能な負荷回路または電流値が調整可能な負荷回路が接続された画素を含んでいてもよい。これにより、個別の画素の単位で、リチャージ電流の値をより高い精度で調整することができる。例えば、SPADアレイ内の領域ごとに、リチャージ電流を調整することが容易となる。これにより、高い品質の距離画像を得ることができるようになる。本開示による受光装置、受光回路および測距装置を使うと、消費電力を抑制しつつ、測距性能を高めることができる。
【0168】
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0169】
図24は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0170】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図24に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0171】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0172】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0173】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0174】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0175】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0176】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0177】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0178】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0179】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図24の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0180】
図25は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0181】
図25では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0182】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0183】
なお、図25には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0184】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0185】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0186】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが動作パラメータ以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0187】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0188】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、撮像部12031に適用され得る。例えば、撮像部12031に、図1の受光装置200および図2の発光素子255を実装することができる。また、撮像部12031に、受光装置200~202の少なくともいずれかを実装してもよい。撮像部12031に、本開示に係る技術を適用することにより、より高い精度で測距を行うことができる。これにより、車両12100の安全性を高めることが可能となる。
【0189】
なお、本技術は、以下のような構成をとることができる。
(1)
受光素子を含む受光回路と、
前記受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、
フォトンとの反応で前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源回路が供給する前記電源電位を制御するように構成された制御回路と
を備える受光装置。
(2)
前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記信号に基づいて前記負荷回路の前記リチャージ電流または前記負荷回路の抵抗値の少なくともいずれかを含むパラメータを変更するように構成されている、
(1)に記載の受光装置。
(3)
複数の前記受光回路を備え、
前記制御回路は、複数の前記受光回路が出力する前記信号に基づき、前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されている、
(2)に記載の受光装置。
(4)
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づいてエラー判定するように構成されたエラー検出器をさらに備え、
前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力された前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されている、
(3)に記載の受光装置。
(5)
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数が第1しきい値未満となるように前記受光回路の前記リチャージ電流を調整するように構成されている、
(4)に記載の受光装置。
(6)
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
(4)または(5)に記載の受光装置。
(7)
前記エラー検出器は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されている、
(4)ないし(6)のいずれか一項に記載の受光装置。
(8)
前記受光回路が出力する前記信号の波形に基づきエラー判定をし、前記エラー判定をされた前記信号の波形を補正するように構成されたエラー補正回路をさらに備える、
(3)ないし(7)のいずれか一項に記載の受光装置。
(9)
前記エラー補正回路は、パルス幅が第2しきい値を超える前記信号またはパルスどうしの間隔が第3しきい値未満である前記信号の少なくともいずれかをエラー判定するように構成されている、
(8)に記載の受光装置。
(10)
前記制御回路は、複数の前記受光回路から出力された前記信号におけるエラー判定数に基づいて前記電源回路の前記電源電位または少なくともいずれかの前記受光回路に接続された前記負荷回路の前記パラメータのうち、少なくともいずれかを変更するように構成されている、
(8)に記載の受光装置。
(11)
少なくともいずれかの前記受光回路は、パッシブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数が第1しきい値未満となるように前記受光回路の前記リチャージ電流を調整するように構成されている、
(10)に記載の受光装置。
(12)
少なくともいずれかの前記受光回路は、アクティブリチャージを行うように構成されており、
前記制御回路は、前記エラー判定数に基づいて前記受光回路で前記アクティブリチャージのためにパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
(10)または(11)に記載の受光装置。
(13)
前記受光素子は、アバランシェフォトダイオードである、
(1)ないし(12)のいずれか一項に記載の受光装置。
(14)
発光素子と、
受光素子を含む複数の受光回路と、
前記複数の受光回路に電源電位を供給するように構成された電源回路と、
前記発光素子が発光していない期間に、フォトンとの反応で複数の前記受光回路が出力する信号に基づいて前記電源電位を制御するように構成された制御回路とを備える、
測距装置。
(15)
それぞれの前記受光回路に接続され、前記受光素子にリチャージ電流を供給する負荷回路をさらに複数備え、
前記制御回路は、前記信号に基づいて複数の前記負荷回路の抵抗値または前記リチャージ電流の少なくともいずれかを制御するように構成されている、
(14)に記載の測距装置。
(16)
前記制御回路は、前記信号に基づいて少なくともいずれかの前記受光回路においてアクティブリチャージ用のパルスが生成される時間遅れを調整するように構成されている、
(14)または(15)に記載の測距装置。
(17)
受光素子と、
電流源と、
基準電位に接続された第1接点側または前記受光素子に接続された第2接点側のいずれかをオンにすることが可能なスイッチと、
前記基準電位と前記電流源との間に流れる第1電流をミラーした第2電流を出力側より供給するように構成されたカレントミラー回路と、
第1信号電極が前記基準電位に接続され、第2信号電極が前記受光素子および前記カレントミラー回路の前記出力側に接続され、制御電極が前記スイッチに接続されているトランジスタと
を備えた受光回路。
(18)
前記スイッチおよび前記トランジスタを複数備え、
前記スイッチの切り替えに応じて前記受光素子に前記第1電流をN倍(Nは正の整数)した第3電流を前記受光素子に供給するように構成されている、
(17)に記載の受光回路。
(19)
前記受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路をさらに備える、
(17)または(18)に記載の受光回路。
(20)
受光素子と、
基準電位と前記受光素子との間に並列に接続された複数の抵抗器と、
それぞれが前記抵抗器と直列に接続されている複数のスイッチと、
前記受光素子のフォトンとの反応時にパルスを生成するように構成された読み出し回路とを備え、
前記スイッチの切り替えに応じ、前記受光素子に供給される電流が調整されるように構成されている、
受光回路。
【0190】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0191】
OBJ 物体
1 検出部
10、12、13、 受光回路
11 受光回路
20 サンプラ
21 エラー検出器
22 エラー補正回路
30 計測回路
40 制御回路
50、51、52、53、54、55、56 画素
75、76 遮光部
80、81 開口面
90 負荷素子
91、91、92 アクティブリチャージ回路
100、101、102 受光装置
200 測距装置
255 発光素子
256 電源回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25