(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ロック可能な手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 90/50 20160101AFI20240930BHJP
A61B 17/15 20060101ALI20240930BHJP
A61B 17/14 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61B90/50
A61B17/15
A61B17/14
(21)【出願番号】P 2021571047
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2020065049
(87)【国際公開番号】W WO2020240006
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521466507
【氏名又は名称】ガニュメート ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブルンヴァン,ブレイズ
(72)【発明者】
【氏名】ムーラン,シリル
(72)【発明者】
【氏名】カーエン,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ロダス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ボニン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】エイト シ セルミ,タリック
(72)【発明者】
【氏名】デクロエズ,マリオン
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05403319(US,A)
【文献】特表2002-519093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
A61B 17/15
A61B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術台上に配置された患者の解剖学的構造(A)を機械加工するための手術システム(10)であって、前記解剖学的構造(A)は、前記手術システム(10)に関して定義された座標の解剖学的参照システムの一部であり、前記手術システム(10)は、
- 手術台に固定されるように構成されるベースユニット(18)と、
- オペレータによって手動で変位されるように構成される機械加工ツール(16)と、
- 前記ベースユニット(18)によって支えられるロック可能ユニット(20)であって、前記ロック可能ユニット(20)は、
○ 前記解剖学的構造(A)に対する少なくとも1つの計算されたロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)に従って手動で配置されるように構成される少なくとも2つの連結された手動変位可能要素(23、24、26、28)であって、前記ロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)は解剖学的参照システム内で定義される、手動変位可能要素(23、24、26、28)と、
○ 前記機械加工ツール(16)の支持及びガイドを目的とする拘束デバイス(30)と、
を含む、ロック可能ユニット(20)と、
- 前記ベースユニット(18)によって支えられる把持要素(22)であって、前記把持要素は前記解剖学的構造(A)を固定するように設計されている、把持要素(22)と、
- 前記解剖学的参照システム内の前記ロック可能ユニット(20)のリアルタイム構成をリアルタイムで追跡するように構成される少なくとも1つのセンサを含むセンサユニット(32)と、
- 前記ロック可能ユニット(20)の少なくとも1つのロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)の記録を格納する制御ユニット(12)と、
を備え、
前記ロック可能ユニット(20)の少なくとも2つの要素(23、24、26、28)は、ロッ
ク手段
(50、52、54、56)と協働するように構成される少なくとも1つの自由度で互いに連結され、前記ロッ
ク手段
(50、52、54、56)は、前記ロック可能ユニット(20)のリアルタイム構成が前記制御ユニット(12)内に記録された少なくとも1つのロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)に対応するときに前記機械加工ツール(16)を決定された機械加工面(P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6)内に拘束する所定の位置に前記拘束デバイス(30)をロックするべく、前記制御ユニット(12)によって作動されるように構成される、手術システム(10)。
【請求項2】
前記制御ユニット(12)は、
前記ロック手段(50、52、54、56)を段階的に作動させるように構成される、請求項1に記載の手術システム(10)。
【請求項3】
前記ロック可能ユニット(20)の各変位可能要素(23、24、26、28)は、前記ロック可能ユニット(20)のロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)内の所定の位置を有し、前記ロック手段(50、52、54、56)の
固さは、各変位可能要素(23、24、26、28)がその所定の位置から離れる距離に反比例する、請求項1又は2のどちらか一項に記載の手術システム(10)。
【請求項4】
前記ロック手段(50、52、54、56)は、前記制御ユニット(12)内に記録された所定の順序に従って1つずつ作動される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の手術システム(10)。
【請求項5】
前記制御ユニット(12)は少なくとも2つのロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)を含み、前記少なくとも2つのロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)は所与の時系列の順序に従って前記制御ユニット(12)内に記録され、前記制御ユニット(12)は、前記時系列の順序に従う各ロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)に従って前記ロック手段(50、52、54、56)を作動させるように構成される、請求項4に記載の手術システム(10)。
【請求項6】
前記ロック可能ユニット(20)の各ロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)は、固有の機械加工面(P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6)に対応し、各ロック構成(L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6)は、前記機械加工ツール(16)を前記対応する固有の機械加工面(P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6)内に拘束する、請求項5に記載の手術システム(10)。
【請求項7】
前記拘束デバイス(30)は平面機構である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術システム(10)。
【請求項8】
前記拘束デバイス(30)は切断ガイドである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術システム(10)。
【請求項9】
前記把持要素(22)は少なくとも2つの部分(22a、22b)を含み、第1の部分(22a)は前記解剖学的構造(A)の大腿骨(F)にしっかりと固定されるように構成され、第2の部分(22b)は前記ベースユニット(18)によって支えられ、前記第1の部分(22a)は前記第2の部分(22b)
に取り付け及び取り外しされるように構成される
第1の可動部分である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術システム(10)。
【請求項10】
前記把持要素(22)は第3の部分(22c)を含み、前記第3の部分(22c)も、前記解剖学的構造(A)の脛骨(T)にしっかりと固定されるように構成され、前記第3の部分(22c)は前記第2の部分(22b)
に取り付け及び取り外しされるように構成される
第2の可動部分である、請求項9に記載の手術システム(10)。
【請求項11】
前記解剖学的構造(A)は第1の骨(F)及び第2の骨(T)を含み、前記把持要素(22)の第1の部分(22a)は、前記第1の骨(F)に固定されるように構成され、前記把持要素(22)の第3の部分(22c)は、前記第2の骨(T)に固定されるように構成される、請求項10に記載の手術システム(10)。
【請求項12】
前記把持要素(22)の第2の部分(22b)は、前記第1の部分(22a)又は前記第3の部分(22c)のいずれかに接続される、請求項
10に記載の手術システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術ロボットの分野に関する。特に、本発明は、外科手術中の機械加工ツールの位置決め制御の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
骨切り用の機械加工ツールの機械的ガイドの第1の系統の方策が最新技術から公知である。特許FR3033691は、測定のために作製された大腿骨切断ガイド及び脛骨切断ガイドを備える、十字靱帯を温存せずに膝プロテーゼを確立するべく骨切りを準備するためのデバイスを説明している。前記デバイスは、計画ソフトウェアに送信される患者の関節のスキャンデータに基づいている。各ガイドは、遠位大腿骨端及び近位脛骨I骨端上の、2つの実質的に直交する平面内の支持手段と、ドリルガイドを通すための構成と、少なくとも1つの切断ブレードを有する。この方策によれば、切断面は、大腿骨及び脛骨参照システムにおいてデジタル方式で決定される。次いで、これらの切断面によって2つのガイドの構成が決まり、これらは機械加工する骨にしっかりと取り付けられた後に使用される。ツールを効果的にガイドできるようにするために骨にガイドをねじ込む必要がある。この方策は、骨とガイドを機械的に結合する必要があるため非常に侵襲的であり、手術ごとに特定のガイドを製造する必要がある。このような方策はまた、外科医が様々な切断を行うためにいくつかの連続する位置で骨とガイドを機械的に結合するのに多くの時間を費やすことにつながる。
【0003】
米国特許第6,554,837号は、骨に取り付けられるベースを備えた位置決めデバイスを説明している。この位置決めデバイスは、コンピュータ制御のモータによって駆動される。欧州特許EP1444957では、デバイスの位置は、ナビゲーションシステムによって決定される。追跡システムが、ナビゲーションシステムと組み合わせて用いられ、インプラントの適正な位置決め及び方向づけを可能にする。前述の位置決めデバイスの主な欠点は、最初に骨に取り付けられなければならないアンカー要素又はベースコンポーネントに基づいていることである。前記デバイスはまた、少なくとも1から最大6までの自由度でベースに対する切断ガイドの角度及び/又は位置を調整するために、切断ガイドをベースに接続する相当な量の位置決め要素を備える。したがって、これらのタイプのデバイスは、一般に、骨の近傍でかなりのスペースを占め、患者にとって侵襲的である。さらに、アンカー又はベースコンポーネントは最初に骨に取り付けられるため、このような位置決めデバイスは不必要な損傷を引き起こす又はさらには骨折を生じることがある。さらに、このような位置決めデバイスの設置は、ガイドごとに非常に正確に繰返し行われなければならないため、普通は時間がかかる。
【0004】
別の系統の方策は、骨とガイドの両方に付けられるマーカを使用することである。その場合、据置きのセンサによって判定されたこれらのマーカの位置及び向きから、骨に対するガイドの位置がリアルタイムで追跡される。欧州特許EP1669033は、骨切りガイドを位置決めするためのこのようなデバイスの使用例を説明している。しかしながら、デバイスの効果的な位置を特定するには、デバイスに関連付けられたマーカの位置及び向きの絶え間ない取得を必要とする。これは特に、医師は据置きのセンサからマーカまでの必要な「視線」を遮らないように絶えず自分の動きに気を付けていなければならないため、非常に時間とエネルギーを消費する。
【0005】
特許EP1635715B1は、骨頭の高さで骨部分を切断するように適合された骨切り用のガイドデバイスであって、前記骨頭の高さで骨にねじ込むことを意図されたシートを備えるデバイスと、2つの垂直軸OX、OYの周りの前記シートに対する第1の回転軸の傾斜を調整するための手段と、一端が第1の回転軸に従って前記シート上でピボット式に組み立てられているアームと、ツールを支持することを意図されたガイドと、を備えるデバイスの別の方策を説明している。このガイドは、第2の回転軸に従ってアーム上でピボット式に組み立てられる。
【0006】
このようなシステムの主な欠点は、ロボットの重量に耐えて、ロボットによって支えられる切断ブロックに挿入された鋸による鋸引き中にかかる力を補償するために、骨に大きいピンを埋め込む必要があるため、大腿骨へのシートの取り付けは非常に侵襲的なことである。相当な重量に耐え、相当な力に反作用するために用いられる大きいピンは、骨折を生じる可能性がある。また、重量と労力によって骨の中でピンが動くことがあり、システムの精度に大きな影響を与えることがある。さらに、すべての目標平面を実現するためには、回転軸を非常に正確に調整しなければならない。しかしながら、この調整は手動で行われ、ナビゲーションシステムによって提供される視覚的フィードバックを通じてガイドされるため、難しく、誤差又は不正確さが生じやすくなる。切断面がオペレータ又は鋸によってかかる力により鋸引き中に僅かに動く場合、オペレータがこれを感知してその調整を手動で修正することは非常に難しい。そのうえ、外科的制約、解剖学的制約、又は誤使用のためにピンが適正な場所に配置されていない場合、ロボットはすべての切断を実際に実現できるように切断ブロックを配置することができず、骨の中で僅かに異なる位置にあるピンの位置を直す必要があり、これは難しい作業である。さらに、このシステムは、シートを大腿骨に取り付けた状態で脛骨の切断を行うことができず、したがって、脛骨の切断を行うために別の特定のデバイスが必要であり、これはさらなる時間、ピン、システム、及び労力を要する。
【0007】
骨要素の参照システムは、普通は、侵襲的で近似的な様態で決定される。髄管は、信頼できる参照システムを提供するために従来技術の方策で時々用いられるが、これらの方策は、髄管へのロッドの非常に侵襲的な挿入を必要とする。他の参照システムが理論的に知られているが、一般に、切開の、したがって、露出領域の大きさが最小限の患者には利用することができない。最後に、整形外科用途では、複雑な表面上の高精度の機械加工が必要とされる。膝プロテーゼの設置のための切断面の数分の1ミリの誤差又は傾斜度が、不安定性、重度の残存痛、歩行困難、及び/又はプロテーゼ修正手術につながることがある。
【0008】
上で概説されているように、手術のワークフローにスムーズに統合することができ、したがって、標準的な手術技術となる、より侵襲性が低く、より小型で、外科医に優しいデバイスが必要とされている。本開示は、後述の新しい設計を通じて既存の手術ロボットの上述の制限に対処する。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の欠点を改善するために、最も注目すべきは、より侵襲性が低く、より小型で、より直感的な方策を提供するために、本発明は、手術台上に配置された患者の解剖学的構造を機械加工するための手術システムであって、前記解剖学的構造は手術システムの解剖学的参照システムの一部であり、前記手術システム(10)は、
- 手術台に固定されることを目的とするベースユニットと、
- オペレータによって手動で変位されることを目的とする機械加工ツールと、
- ベースユニットによって支えられるロック可能ユニットであって、前記ロック可能ユニットは、
○ 解剖学的構造に対する少なくとも1つの計算されたロック構成に従って手動で配置されることを目的とする少なくとも2つの連結された手動変位可能要素であって、前記ロック構成は解剖学的参照システム内で定義される、手動変位可能要素と、
○ 機械加工ツールの支持及びガイドを目的とする拘束デバイスと、
を含む、ロック可能ユニットと、
- ベースユニットによって支えられる把持要素であって、前記把持要素は、解剖学的構造をロック可能ユニットに固定するように設計されており、ベースユニットによって支えられる把持要素と、
- 解剖学的参照システム内のロック可能ユニットのリアルタイム構成をリアルタイムで追跡することを目的とする少なくとも1つのセンサを含むセンサユニットと、
- ロック可能ユニットの少なくとも1つのロック構成の記録を格納する制御ユニットと、
を備え、
ロック可能ユニットの少なくとも2つの要素は、ロック可能手段と協働することを目的とする少なくとも1つの自由度で互いに連結され、前記ロック可能手段は、ロック可能ユニットのリアルタイム構成が制御ユニット内に記録された少なくとも1つのロック構成に対応するときに機械加工ツールを決定された機械加工平面内に拘束する決定された位置に拘束デバイスをロックするべく制御ユニットによって作動されるように構成される、システムに関する。
【0010】
ロック可能ユニットの動きを拘束すること、したがって、外科用機械加工ツールを手動で誘導される軌道内に拘束することは、手技の精度及び安全性を向上させる。手動で動かされるシステムは電動又は自動ではなく、これにより、
- アクチュエータは一体化と制御がより複雑で、同様のトルク抵抗のためにかさばるので、ツールがはるかにスリムになり、制御がより簡単になる
- ロック手段は、普通はアクチュエータよりも安価なので、デバイスがより手頃となる
- ロック手段としての軌道の精度の向上は、アクチュエータに比べてトランスミッションもギアもないことを意味する、直接駆動と同等である。
【0011】
単独で又は技術的に実行可能な任意の組み合わせでなされる代替的な実施形態によれば、システムはまた、以下の特徴のうちのいくつかを有する:
- 制御ユニットは、各ロック手段を段階的に作動させるように構成される
- ロック可能ユニットの各変位可能要素は、ロック可能ユニットのロック構成内の決定された位置を有し、各ロック手段の作動は各変位可能要素がその決定された位置から離れる距離に反比例する
- ロック手段は、制御ユニット内に記録された所定の順序に従って1つずつ作動される
- 制御ユニットは少なくとも2つのロック構成を含み、前記少なくとも2つのロック構成は所与の時系列の順序に従って制御ユニット内に記録され、制御ユニットは時系列の順序に従う各ロック構成に従ってロック手段を作動させるように構成される
- ロック可能ユニットの各ロック構成は、固有の機械加工平面に対応し、各ロック構成は機械加工ツールを前記対応する固有の機械加工平面内に拘束する
- 拘束デバイスは平面機構である
- 拘束デバイスは切断ガイドである
- 把持要素は少なくとも2つの部分を含み、第1の部分は解剖学的構造の大腿骨にしっかりと固定されるように構成され、第2の部分はベースユニットによって支えられ、前記第1の部分は第2の部分に少なくとも2回取り付け及び取り外しされることを目的とする可動部分である
- 把持要素は第3の部分を含み、前記第3の部分はまた、解剖学的構造の脛骨にしっかりと固定されるように構成され、前記第3の部分は第2の部分に少なくとも2回取り付け及び取り外しされることを目的とする別の可動部分である
- 解剖学的構造は第1の骨及び第2の骨を含み、把持要素の第1の部分は、第1の骨に固定されるように構成され、把持要素の第3の部分は、第2の骨に固定されるように構成される
- 把持要素の第2の部分は第1の部分又は第3の部分のいずれかに接続される。
【0012】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する:
「機械加工」は、材料を除去するための切断又は他の方法の機械的プロセスを指す。機械加工の目的は、事前定義されたモデルに従って生のオリジナルの状態から最終的な状態に移行するために、仕上げる要素のすべての表面の寸法、精度、幾何学的形状、及び表面状態を変更することである。
【0013】
「ポーズ推定」は、機械加工する解剖学的構造に対するデバイスの位置及び向きの推定を指す。この決定は、画像又は点群を取得した後にデジタル処理を行うこと、又は把持要素のベースの事前の幾何学的形状と機械加工する要素の表面の形態を知ることによって行われる。
【0014】
「参照位置」は、機械加工する要素の参照システムでの機械加工ツールの位置及び向きを指し、そこからこのツールの機械加工ヘッドが移動することになる。言い換えれば、ツールは、参照位置として既知の位置及び向きに配置され、機械加工ヘッドを動かすことによるその後の機械加工のためにこの位置に保持される。
【0015】
以下の詳細な説明は、図面と併せて読むとよりよく理解される。説明の目的で、手術システムが好ましい実施形態で示されている。しかしながら、用途は、示される正確な配置、構造、特徴、実施形態、及び態様に限定されないことを理解されたい。図面は正確な縮尺率ではなく、特許請求の範囲を描写されている実施形態に限定することを意図していない。したがって、添付の特許請求の範囲に記載されている特徴の後に参照符号がついている場合、このような符号は、請求項の了解度を高める目的でのみ含まれ、請求項の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0016】
本発明の特徴及び利点は、システムの実施形態の以下の説明から明らかとなり、この説明は、単なる例として添付図を参照してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】本発明に係る、機械加工される解剖学的構造と、6つの独立した機械加工面の概略図である。
【
図1b】機械加工された後の解剖学的構造の略図である。
【
図1c】インプラントが取り付けられた後の解剖学的構造の略図である。
【
図2a】オペレータによって使用される手術システム全体の第1の実施形態の概略的な斜視図である。
【
図2b】オペレータによって使用される手術システム全体の第1の実施形態の概略的な側面図である。
【
図2c】使用中の手術システム全体の第1の実施形態の上方からの概略図である。
【
図3】オペレータによって使用される手術システム全体の第2の実施形態の概略的な斜視図である。
【
図4】オペレータによって使用される手術システム全体の第3の実施形態の概略的な斜視図である。
【
図5a】オペレータによって使用される手術システム全体の第4の実施形態の概略的な斜視図である。
【
図5b】オペレータによって使用される手術システム全体の第4の実施形態の概略的な側面図である。
【
図6a】第1の把持位置にある手術システムの把持デバイスの概略的な斜視詳細図である。
【
図6b】第2の把持位置にある手術システムの把持デバイスの概略的な斜視詳細図である。
【
図7】本発明に係る手術システムによって導かれる外科的介入全体のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な実施形態を説明及び図示しているが、詳細な説明はそれに限定されると解釈されるべきではない。請求項によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は実施形態に様々な修正を加えることができるであろう。
【0019】
図1に示すように、解剖学的構造Aは膝関節であり、定期的に手術が必要なことで従来からよく知られている。それ自体が公知であるように、膝関節は、大腿骨F、脛骨T、及び膝蓋骨(膝蓋骨は説明するまでもないのでこの説明からは除外する)の、3つの骨を含む。したがって、本明細書で説明する例は、整形外科手術の分野に関し、より詳細には、大腿骨及び脛骨の膝インプラントIを埋め込むための大腿骨F及び脛骨Tの準備に関する(
図3参照)。
【0020】
この準備は、一連のよく知られているステップを含み、各ステップは、所与の所定の機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6(
図1参照)に従って骨F、Tのうちの1つを機械加工する。これらの機械加工ステップはそれ自体がよく知られており、普通は、オペレータ(外科医)によって採用された方策に応じて同じ順序で行われる。
図1では、各機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6に、一般に認められている時系列の順序で番号が付けられている。これらの機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6は、従来から、術前の手術計画によって決定される。術前の手術計画は、1つの所与のタイプのインプラント(サイズ、設計、ブランドなど)での1つの所与の手術で1人の所与の患者にのみ有効である。各患者(及び各手術)は個別の手術計画を得る。したがって、機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6は手術ごとに僅かに異なる。術前の手術計画の通常の第1のステップは、三次元骨F、Tモデルの確立である。このような三次元骨F、Tモデルを得る1つの方法は、コンピュータ断層撮影、X線、MRI、蛍光透視法、超音波、又は他のイメージング手段などの医用イメージングを用いることである。X線又はスキャナ又はさらにはMRIでの取得物は、通常、正面(冠状又は前後とも呼ばれる)ビュー、膝を完全に伸ばした状態及び/又は20°~30°曲げた状態での側面(又はプロファイル)ビュー、大腿骨頭から足首関節までの下肢を含むロングレッグビュー、及び最後にスカイラインビューとも呼ばれる30°曲げた状態での膝蓋骨のビューで、普通は全荷重で取り込まれる。これらの取得物から、手術中に機械加工される骨F、Tのデジタルモデルを構築することが可能である。次いで、三次元骨F、Tモデルの分析に基づいて、膝インプラントIの特定のセットが選択される。
【0021】
本発明は、後述する手術システム10による骨F、Tの正確で安全な機械加工を可能にすることを目的としている。
【0022】
確立された後に、骨F、Tモデルは、前記手術システム10の制御ユニット12のメモリに格納される。
【0023】
手術システム10は、3Dイメージングセンサ14を含み、その位置は手術システム10内で既知である。より正確には、3Dイメージングセンサ14は、ロック可能ユニット20の既知の幾何学的位置に配置される。この3Dイメージングセンサ14は、オペレータが、制御ユニット12のメモリに格納された骨F、Tモデルと協働して、新規の操作ごとに解剖学的参照システムをリセットすることを可能にする。所与の患者の骨F、Tモデルが決定され、制御ユニット12のメモリ内に格納されると、手術システム10を手術に使用することができる。患者が適正に配置され、解剖学的構造Aが見られるようになり、手術システムが患者に対して適正に定位置に配置されると、解剖学的構造Aの取得物が取り込まれる。この取得物は3Dイメージングセンサ14で取り込まれる。制御ユニット12は、取り込まれた取得物を分析し、これを骨F、Tモデルとマージする。これにより、制御ユニット12は、3Dイメージングセンサ14に対する、したがって、手術システム10に対する解剖学的構造Aの位置を特定することができる。これにより、制御ユニット12は、解剖学的参照システムを定義し、この解剖学的参照システム内のこの特定の手術のための正確な機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6を設定することができる。
【0024】
機械加工ステップ後に、インプラントIのフィッティング及び取り付けを容易にするために、骨F、Tは、エッジが鋭いきれいな端を呈する(
図2及び
図3参照)。
【0025】
機械加工する骨F、Tの自由面(
図2参照)は限られており、したがって、機械加工ツール16を骨F、Tと接触させることができる領域はごくわずかである。この接触は、骨F、Tに対する機械加工ツール16の正確な相対位置を確保する一方で、骨F、Tも周囲の軟組織も損傷しないように、可能な限り最小侵襲でなければならない。
【0026】
手術システム10は
図4で見られる。見てわかるように、前記手術システム10は、手術台上に配置された患者の解剖学的構造A(この場合、膝)の機械加工を目的としている。患者は、普通は麻酔され、特定のよく知られている固定手段によって手術台上に維持される。加えて、患肢全体が手術システム10に固定される。
【0027】
手術システム10は、
- 手術台への固定を目的とするベースユニット18と、
- オペレータが手動で変位させることを目的とする機械加工ツール16と、
- ロック可能ユニット20と、
- 解剖学的構造Aを固定するように設計されている把持要素22と、
を備える。
【0028】
制御ユニット12は、例えばコンピュータとすることができる。この制御ユニット12は、メモリ、リアルタイムコンピューティングプロセッサ、電源、パワーコンバータ、ヒューズ、アクチュエータ、及びロック手段ドライバを備える。制御ユニット12はさらに、制御ユニット12とオペレータとの相互作用を可能にする、オペレータインターフェース13を備える。
【0029】
このオペレータインターフェース13は、
- 解剖学的構造Aに対する機械加工ツール16の位置などのリアルタイム情報を表示する
- オペレータが最良のインプラント及びその位置を選択するのを支援するために、計画されたインプラントの位置及び術前の手術計画を表示する、
- 30の機械加工目標位置を手動で設定する、
ことを可能にする。
【0030】
図2a~
図5bで見てわかるように、ロック可能ユニット20及び把持要素22は、ベースユニット18によって支えられる。ベースユニット18は患者に対して静止している。ベースユニット18は、例えば、床に固定された又は患者を固定する手術台に取り付けられたベースを備える。
【0031】
いくつかの実施形態(図示せず)では、ベースユニット18は、患肢を固定する電動作動ユニットである。この作動ユニットは、患者の膝の電動での屈伸運動を可能にすることを目的としている。この作動ユニットは、オペレータが患肢を動かし、手術ステップに従って手術野を露出することを可能にする。
【0032】
図6a及び
図6bで見てわかるように、把持要素22は3つの部分を含み、第1の部分22aは解剖学的構造Aにしっかりと固定されるように構成され、第2の部分22bはベースユニット18によって支えられ、第3の部分22cも解剖学的構造Aにしっかりと固定されるように構成される。第1及び第2の部分22a、22cは、それぞれ第2の部分22bに少なくとも2回取り付け及び取り外しされることを目的とする2つの可動部分である。より正確には、把持要素22部分の第1及び第3の部分22a、22cのそれぞれは、1つの骨F、Tにねじ込むことを目的とするベースプレートであり、各ベースプレートは、解剖学的構造Aの1つの異なる骨F、Tにねじ込まれる。把持要素22の第2の部分22bは、第1の部分22a又は第3の部分22cのいずれかに接続される。接続は、オペレータがどの骨F、Tを固定したいかによる。
図4に示すように、第2の部分はロッド22bである。したがって、オペレータが機械加工ツール16を使用している間、把持要素22は、解剖学的構造Aに対するロック可能ユニット20の位置を維持する。特に、把持要素22は、機械加工中の大腿骨Fを固定し、且つ、機械加工中の脛骨Tを固定する。把持要素22は、解剖学的構造Aが機械加工されている間、機械加工される骨F、Tを患者の肉の中で動かないように維持することを可能にする。第2の部分22bと第1又は第3の部分22a、22cとの接続及び接続解除は、クイックリリースシステムによって可能となる。
【0033】
図2a~
図2cで見てわかるように、ロック可能ユニット20は、オペレータの手Hによって手動で動かすことを目的とする少なくとも2つの連結された手動変位可能要素23、24、26、28を備える。手動変位可能要素23、24、26、28は、オペレータが動かす必要がある。オペレータによって動かされなければ、前記手動変位可能要素23、24、26、28は動かないままである。オペレータによって動かされるとき、手動変位可能要素23、24、26、28は、解剖学的構造Aに対する少なくとも1つの計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6に従って配置することができる。構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6は、制御ユニット12によって計算される。したがって、ロック可能ユニット20の各手動変位可能要素23、24、26、28は、ロック可能ユニット20の計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6内の決定された位置を有する。
【0034】
既に述べたように、様々な機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6が、術前の手術計画中にコンピュータにより決定される。したがって、機械加工ツール16の対応する理想相対位置もコンピュータにより決定される。したがって、各機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6は、解剖学的参照システムでの機械加工ツール16の目標位置を表し、各機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6は、ロック可能ユニット20の特定の計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6に対応する。各平面P1、P2、P3、P4、P5、P6は、解剖学的参照システムでの機械加工ツール16の目標位置を表し、各平面P1、P2、P3、P4、P5、P6は、特定の計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6に対応する。
【0035】
ロック可能ユニット20はさらに、機械加工ツール16の支持及びガイドを目的とする拘束デバイス30を備える。拘束デバイス30は、その面内でオペレータがツール16を動かすことができる、機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6を設定する。本発明に関して、拘束デバイス30は、任意の種類のツール16、例えば、鋸、ドリル、又はバードリルを支える又はガイドすることができる。
図2a~
図5bの例では、支えられる機械加工ツール16は、オシレーティングソーである。この拘束デバイス30は、関節式接続部31によってロック可能ユニット20に連結される。この関節式接続部31は、クイックファスナとすることができる。
【0036】
【0037】
剛体の相対運動に応じて、機構は平面機構と空間機構に分けられることが当業者にはよく知られている。平面機構では、剛体のすべての相対運動は1つの平面又は平行な平面内にある。同一平面又は平行な平面内にない相対運動が存在する場合、その機構は空間機構と呼ばれる。言い換えれば、平面機構は本質的に二次元であり、空間機構は三次元である。
【0038】
図2a、
図2c、
図4、及び
図5aに例示されている平面機構は、オペレータの手Hで作動させる必要がある受動機構である。平面機構は、機械加工ツール16を決定された向きにブロックすることによって機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6を定義する。ブロックされると、機械加工ツール16は、機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6内で3つの自由度に従ってのみ動くことができる。平面機構は、制御ユニット12に連結されたエンコーダを含み得る。これにより、制御ユニット12は平面機構の構成を正確に知ることができる。制御ユニット12は、触覚信号、視覚信号、又は音声信号によって、オペレータが機械加工ツール16を操作するのを支援し得る。
【0039】
図3に例示されている別の実施形態では、拘束デバイス30は、機械加工ツール16の能動的な細長い部分、例えばブレードを挿入することができる切断ガイドを形成するスリット又はスリーブ30aを備えるガイド要素である。このスリット又はスリーブ30aは、機械加工ツール16を方向付け、所定の機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6内に拘束する。別の実施形態(図示せず)では、拘束デバイス30は追跡することができる。機械加工ツール16は、拘束デバイス30に取り外し可能又は取り外し不可能な様態で固定することができる。拘束デバイス30は、関節式接続部31によってロック可能ユニット20に連結される。既に述べたように、この関節式接続部31はクイックファスナとすることができる。手術システム10のロック可能ユニット20は、6つのロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6を備える。制御ユニット12のメモリは、ロック可能ユニット20の各計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6の記録を格納する。要するに、ロック可能ユニット20は、機械加工ツール16が解剖学的構造Aを機械加工できるように、拘束デバイス30を解剖学的構造Aに対して相対的に位置決めすることを目的としている。ロック可能ユニット20の各計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6は、固有の機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6に対応する。各ロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6は、機械加工ツール16を前記対応する固有の機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6内に拘束する。
【0040】
ロック可能ユニット20の計算された各ロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6は、3Dイメージングセンサ14によって(再)設定された解剖学的参照システム内で定義される。しかしながら、把持要素22が解剖学的構造Aに固定されるたびに、3Dイメージングセンサ14は、解剖学的構造が依然として定位置にあることを検証するために、解剖学的構造Aの新たな取得物を作る。解剖学的構造Aが動いていた場合、制御ユニット12は、解剖学的構造Aの位置に機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6を合わせるために残りのロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6を再計算する。
【0041】
図2a~
図5bで見てわかるように、ロック可能ユニット20の手動変位可能要素23、24、26、28は、少なくとも1つの自由度で互いに連結される。
図2a、
図2b、
図2c、
図3、及び
図4に示されている実施形態では、数えられる4つの手動変位可能要素23、24、26、28が存在する。
図5a及び
図5bによって例示される実施形態では、数えられる3つの手動変位可能要素24、26、28が存在する。
図2a、
図2b、
図2c、
図3、
図5a、及び
図5bに例示されている実施形態では、手動変位可能要素23、24、26、28はすべて、関節式接続部34、36、38によって互いに連結される。
図4に例示されている実施形態では、第2及び第3の手動変位可能要素24、26は、滑動接続によって互いに連結され、他の手動変位可能要素23、24、26、28は、関節式接続部36、38によって互いに連結される。各実施形態において、手動変位可能要素23、24、26、28と接続自由度(関節式接続部34、36、38又は滑動接続)の組み合わせが、平面連結機構を形成する。3つ(
図5a、
図5b参照)又は4つ(
図2a、
図2b、
図2c、
図3、
図4参照)の手動変位可能要素23、24、26、28はすべて同じ方向に向けられ、この向きは、手動で動かされている間は変化せず、前記手動変位可能要素23、24、26、28は、手術台の縁に実質的に平行、したがって、患肢に平行な平面内のままである。
【0042】
前述のように、異なる自由度(滑動接続又は関節式接続部34、36、38)は、オペレータが、手動変位可能要素23、24、26、28を変位させ、ロック可能ユニット20をオペレータが必要とする所定の機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6に対応する計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6にすることを可能にする。
【0043】
拘束デバイス30の関節式接続部31の回転軸は、ロック可能ユニット20の滑動接続又は関節式接続部34、36、38の回転軸に感知可能に垂直に延びる。
【0044】
手術システム10はさらに、センサユニット32を備える。センサユニット32は、解剖学的参照システム内のロック可能ユニット20のリアルタイム構成をリアルタイムで追跡することを目的とする少なくとも1つのセンサ40、42、44、46を含む。センサユニット32は、制御ユニット12に接続されており、大腿骨F又は脛骨Tに対するロック可能ユニット20の構成を推定することを目的としている。図面に示されている実施形態では、センサユニット32はいくつかの機械式センサ40、42、44、46を備え、これらは、滑動接続又は関節式接続部31、34、36、38内にマウントされ、制御ユニット12が各手動変位可能要素23、24、26、28の位置を追跡することを可能にする。関節式接続部31、34、36、38の検出された角位置又は手動変位可能要素23、24、26、28の相対位置が、制御ユニット12のメモリに格納された計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6に対応するとき、制御ユニット12は信号を出力する。この信号は、計算されたロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6の到達についてオペレータに知らせる音声信号、視覚信号、又は振動信号とすることができる。この信号に基づいて、オペレータは、関節式接続部31、34、36、38の手動ロックを行い、ロック可能ユニット20をロックすることができる。しかしながら、
図2a、
図2b、
図2cに例示されている好ましい実施形態では、制御信号によって発せられる信号は電気信号である。この電気信号は、ロック手段50、52、54、56によって滑動接続又は関節式接続部31、34、36、38と直接通信する。
【0045】
各滑動接続又は関節式接続部31、34、36、38は、ロック手段50、52、54、56と協働する。この実施形態では、これらのロック手段50、52、54、56は、ロックジョイント又はブレーキである。各ロック手段50、52、54、56は、制御ユニット12に接続され、制御ユニット12によって作動されるように構成される。この作動は、ロック可能ユニット20のリアルタイム構成が制御ユニット12のメモリ内に記録された所定の計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6のうちの1つに対応することを制御ユニット12がセンサユニット32を通じて感知するときに行われる。
【0046】
この作動は、滑動接続又は関節式接続部31、34、36、38をロックする、したがって、機械加工ツール16を所定の対応する機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6のうちの1つ内に拘束する所定の位置に拘束デバイス30をロックする。このようにして、ロック可能デバイス20の正しいロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6に到達するときにオペレータに通知され、手動変位可能要素23、24、26、28をさらに動かそうとする必要はないことが通知される。次いで、オペレータは、対応する機械加工面P1、P2、P3、P4、P5、P6に従って骨F、Tの機械加工を開始できることを知る。一実施形態では、緊急の場合、ロック手段は依然として手動でロック可能である。制御ユニット12によって発せられる信号は、2つの信号、すなわち、オペレータに向けられた視覚又は音声又は振動信号と、ロック手段50、52、54、56に向けられた電気信号とすることができる。したがって、オペレータは、計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6にいつ到達しそうかについての情報を得る。この目的のために、信号は、ロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6との不一致に応じて変化する周波数及び/又は変調及び/又は強度を有し得る。信号は、触覚信号、音信号、又は視覚信号であり得る。
【0047】
一実施形態では、制御ユニット12は各ロック可能手段を段階的に作動させ、各ロック手段50、52、54、56の作動は、各手動変位可能要素23、24、26、28がロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6内の所定の位置から離れる距離に反比例する。これにより、オペレータは、ロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6にもうすぐ到達することを感じ取ることができ、ロック可能ユニット20の移動を確実なものにすることができる。ロックの別の態様に関して、制御ユニット12は、制御ユニット12のメモリ内に記録された順序に従ってロック手段50、52、54、56を1つずつ作動させることができる。作動される第1のロック手段50、52、54、56は、ベースユニット18に最も近い関節式接続部34と協働するロック手段50、52、54、56である。この第1の関節式接続部34がロックされると、制御ユニットは、ベースユニット18に2番目に最も近い関節式接続部36を作動させる。作動される最後の関節式接続部は、拘束デバイス30をロック可能ユニット20に接続する接続部31である。さらに、制御ユニット12は、少なくとも2つのロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6の記録を格納している。本発明では、制御ユニット12は、6つの異なるロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6の記録を格納している。これらの計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6は、所与の時系列の順序に従って制御ユニット12内に記録される。この時系列の順序は、術前段階でオペレータによって決定される。制御ユニット12は、この時系列の順序に従う各計算されたロック構成L1、L2、L3、L4、L5、L6に従ってロック手段50、52、54、56を作動させるように構成される。
【0048】
図7は、人工膝関節全置換術を行うために手術システム10を使用して解剖学的構造Aを機械加工することを意図する外科的介入全体のフローチャートである:
- 最初に、ステップ100で、手術システム10が設置され、ベースユニット18が患者に対して静止する様態で固定される、例えば、手術台上に及び/又は手術中に患肢を維持する患肢ポジショナ上にクランプされる。
- ステップ101で、オペレータが、大腿骨Fの機械加工を行わない領域に把持要素22を固定する。把持要素22の第1の部分22aは、大腿骨Fにねじ込むことによって固定することができる。また、把持機構又は化学物質を通じて固定してもよい。
- ステップ102で、露出された患者の大腿骨Fと把持要素22が3Dイメージングセンサによって取得される。
- ステップ103で、大腿骨Fの位置が特定され、制御ユニット12のメモリ内に格納された術前計画データに登録される。術前の手術計画は、仮想参照から実際の手術シーンに置き換えられる。制御ユニット12は、術前モデルに基づいて機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6の位置を計算し、ユーザインターフェース13を通じてこれを外科医の検証に回す。
- ステップ104で、制御ユニット12は、各機械加工面P
1、P
2、P
3、P
4、P
5、P
6に対応するロック構成L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6をそれぞれ計算する。
- ステップ105で、オペレータが、ロック可能ユニット20を第1のロック構成L
1に向けて手動で動かす。動かしている間に、触覚信号又はその他の信号がフィードバックを提供し、第1の関節式接続部34が第1のロック構成L
1内の決定された位置に近づくと、ロックユニット20が徐々に固くなり、オペレータの動きを強制的に遅くする。第1の関節式接続部がロック構成L
1内の計算された位置に到達すると、ロック可能ユニット20がロックし、第1の関節式接続部が完全に固くなる。オペレータは他の関節式接続部についても同じ手順に従う。
- ステップ106において、拘束デバイス30、この場合は平面機構が、第1の機械加工面P
1と位置合わせされる。制御ユニット12は、機械加工ツール16の信号又は技術的解放によって機械加工を開始できることをオペレータに示す。
- ステップ107において、オペレータは、機械加工ツール16を拘束デバイス30によって許容される自由度内で動かすことによって機械加工を行う。
- ステップ108(検証ステップ)において、術前の手術計画に対する機械加工の精度を検証するために、ステップ102と同じ手順に従って患者の大腿骨Fが再び取得される。計画を更新すること、すなわち、ステップ104に戻ることによって、較正を行うことができる。
- ステップ105~108は、大腿骨Fで計画された機械加工が完了するまで行われる。
- ステップ102~108は、脛骨Tで計画された機械加工のために脛骨Tで再び行われる。
【0049】
本発明の手術システム10は、どの動きも手動でなされ、ロックだけが自動的になされるので、どのオペレータも完全に安全に操作することができることに注目されたい。したがって、オペレータが手技を完全に制御することになる。さらに、切開の前に定義されたモデルに基づく解剖学的参照システムを使用することにより、手術時間が短縮され、前記手術の侵襲性が低減される。感染、麻酔後遺症、及び止血帯に関連する後遺症のリスクは手術時間と正相関するため、手術時間の短縮は重要なことである。