(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂組成物、およびその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240930BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240930BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240930BHJP
C08L 1/12 20060101ALI20240930BHJP
C08K 7/08 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/10
C08L1/02
C08L1/12
C08K7/08
(21)【出願番号】P 2022015040
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】高山 哲生
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-207100(JP,A)
【文献】国際公開第2022/014686(WO,A1)
【文献】特開2017-210595(JP,A)
【文献】特開2011-144278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合体、
繊維状塩基性硫酸マグネシウム、および
前記繊維状塩基性硫酸マグネシウムの配合量の0.01~1.00倍のセルロースナノファイバー
を含有するポリオレフィン樹脂組成物
(脂肪酸金属塩または脂肪酸を含むものを除く)。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーは、繊維径1~500nm、比表面積50~200m
2/gである請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記繊維状塩基性硫酸マグネシウムは、平均繊維長2~100μm、平均繊維径0.1~2.0μmである請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記オレフィン重合体は、ポリプロピレンである請求項1~3のいずれか1項記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーは、アセチル化により疎水化処理されている請求項1~4のいずれか1項記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載のポリオレフィン樹脂組成物の成形物である成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物、およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースファイバーは、軽量、高弾性率、かつ高強度であるため、樹脂の補強材として注目されている。平均繊維径が3nm~50μmのセルロースファイバーを、熱可塑性樹脂中に分散させた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂組成物を用いることによって、機械的物性が高い成形体を製造可能であることが記載されている。
【0003】
また、繊維径が2~10μm、繊維長が200~1000μm、アスペクト比が約100~200のセルロールナノファイバーを配合した複合樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この複合樹脂組成物を用いて成形した樹脂成形体は、高い弾性率および耐衝撃性を備えることが記載されている。
【0004】
さらに、繊維径分布におけるD90の繊維径が5μm以上であり、D10の繊維径が500nm以下のセルロース繊維フィラーを含有する溶融混練物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この溶融混練物を用いることによって、機械的強度および外観性に優れた複合樹脂成型体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-143016号公報
【文献】特開2019-85529号公報
【文献】特許第6545145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物からなる成形体は、曲げに対する変形のし難さ、衝撃に対する割れ難さの両立が求められる。さらに、こうした成形体は、表面硬さに優れて傷付き難いことが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が高く、しかも表面硬さに優れた成形体が得られるポリオレフィン樹脂組成物、ならびに、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が高く、しかも表面硬さに優れた成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、オレフィン重合体、繊維状塩基性硫酸マグネシウム、および、前記繊維状塩基性硫酸マグネシウムの配合量の0.01~1.00倍のセルロースナノファイバーを含有する。
【0009】
本発明に係る成形体は、前述のポリオレフィン樹脂組成物の成形物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が高く、しかも表面硬さに優れた成形体が得られるポリオレフィン樹脂組成物、ならびに、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が高く、しかも表面硬さに優れた成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は鋭意研究により、繊維状塩基性硫酸マグネシウムおよびオレフィン重合体を含有するポリオレフィン樹脂組成物に、所定量のセルロースナノファイバーを配合することによって、表面硬さを損なうことなく、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度を高めた成形体が得られることを見出した。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
<オレフィン重合体>
オレフィン重合体としては、エチレン重合体、プロピレン重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などを挙げることができ、特にプロピレン重合体(ポリプロピレン)が好ましい。プロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体やプロピレン共重合体を用いることができる。耐衝撃性が高い点で、プロピレンブロック共重合体がプロピレン重合体として、より望ましい。
【0013】
オレフィン重合体は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。オレフィン重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常3~300g/10分の範囲であり、好ましくは6~100g/10分の範囲である。
【0014】
樹脂組成物を作製するためには、オレフィン重合体の配合量は、ポリオレフィン樹脂組成物全体を100質量部とした場合、20~99質量部の範囲であることが好ましく、30~90質量部の範囲がより好ましい。
【0015】
<繊維状塩基性硫酸マグネシウム>
繊維状塩基性硫酸マグネシウムは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質と硫酸マグネシウムとを原料として、水熱合成により得ることができる。なお、塩基性硫酸マグネシウムは、MgSO4・5Mg(OH)2・3H2Oで表され、得られる成形体のFM(曲げ弾性率)や衝撃強度等の物理特性を向上させるためのフィラーとして作用する。
【0016】
繊維状塩基性硫酸マグネシウムは、平均繊維長が一般に2~100μm、好ましくは5~50μmの範囲であり、平均繊維径が一般に0.1~2.0μm、好ましくは0.1~1.0μmの範囲である。繊維状塩基性硫酸マグネシウムは、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が一般に2以上、好ましくは3~1000、より好ましくは3~100、特に好ましくは5~50の範囲である。
なお、繊維状塩基性硫酸マグネシウムの平均繊維長および平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による拡大画像から画像解析により測定した繊維長および繊維径のそれぞれの個数平均値から算出することができる。本明細書中には、塩基性硫酸マグネシウムとして繊維状を例示しているが、繊維状以外に例えば扇状やその他の形状であってもよい。
【0017】
繊維状塩基性硫酸マグネシウムの配合量は、ポリオレフィン樹脂組成物全体を100質量部とした場合、1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましい。
【0018】
<セルロースナノファイバー>
セルロースナノファイバーは、ファイバー状のセルロースであり、繊維状塩基性硫酸マグネシウムとともにオレフィン重合体に加えることで、成形体に優れた強度を付与する。セルロースナノファイバーとしては、特に限定されず、市販のものや、公知の製造方法により製造したものを用いることができる。
【0019】
セルロースナノファイバーの繊維径は、1~500nmであることが好ましく、10~100nmであることが好ましい。繊維径が1nm以上であれば、製造コストがかからない。一方、繊維径が500nm以下であれば、アスペクト比が低下しにくく、その結果、安価で十分な補強効果が得られる。セルロースナノファイバーの繊維径は、例えば、0.001重量%セルロース繊維水分散液をマイカ基板上に1滴落とし、乾燥させたものをサンプルとして用いて測定することができる。
【0020】
セルロースナノファイバーの比表面積は、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。セルロースナノファイバーの比表面積は、例えば、BET法により求めることができる。
【0021】
ポリプロピレン等の疎水性が非常に高いオレフィン重合体中でも均一に分散するよう、セルロースナノファイバーは、表面が疎水化処理されていることが好ましい。例えば、溶媒と酢酸とを含む溶媒中でセルロースと無水酢酸とを反応させてアセチル化することにより、疎水化処理を施すことができる。
【0022】
セルロースナノファイバーの平均重合度は、600~30000であることが好ましく、600~5000であることがより好ましく、800~5000であることがさらに好ましい。平均重合度が600以上であれば、十分な補強効果が得られる。一方、平均重合度が30000以下であれば、混練時に粘性が高くならず、オレフィン重合体と混練しにくいといった問題点が生じにくい。
【0023】
セルロースナノファイバーのアスペクト比は、20~10000であることが好ましく、20~2000であることがより好ましい。アスペクト比が20以上であれば、十分な補強効果が得られる。一方、アスペクト比が10000以下であれば、成形性が良好な樹脂組成物となる。また、アスペクト比が上記範囲内であれば、セルロースナノファイバーは、分子同士の絡まりや網目構造が強固となり、成形体の強度がより向上する。
なお、本発明において「アスペクト比」とは、セルロースナノファイバーにおける平均繊維長と平均直径の比(平均繊維長/繊維径)を意味する。
【0024】
セルロースナノファイバーの繊維径および平均繊維長は、走査電子顕微鏡(SEM)による測定に基づいて求めることができる。例えば、セルロースナノファイバーが分散した分散液を基板上にキャストして、SEMで観察する。得られた1枚の画像当たり20本以上の繊維について、直径と長さの値を読み取る。これを、少なくとも3枚の重複しない領域の画像について行い、最低30本の繊維の直径と長さの情報を得る。得られた繊維の直径のデータから繊維径を算出し、長さのデータから平均繊維長を算出することができる。数平均繊維長と繊維径との比から、アスペクト比を算出することができる。
【0025】
セルロースナノファイバーは、水酸基が修飾(水酸基の水素原子が修飾基で置換)されていることが好ましい。水酸基が修飾されたセルロースナノファイバーは、未修飾のセルロースナノファイバーに比べて、セルロースナノファイバー表面に存在する水酸基が減少しているため、セルロースナノファイバー間の水素結合による強い密着が抑制されている。そのため樹脂組成物中でのセルロースナノファイバーの分散の均一性が向上し、より優れた補強効果を発揮する。
加えて、上述のセルロースナノファイバーの水酸基修飾による分散性の相乗効果により、繊維状塩基性硫酸マグネシウムも樹脂組成物中における分散性が向上する。このため、本発明の樹脂組成物は、繊維状塩基性硫酸マグネシウムの分散性向上のために従来用いられていたステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩または脂肪酸を添加しなくても、分散性を高めることができる。
【0026】
セルロースナノファイバーの修飾率、つまりセルロースナノファイバー中の全体の水酸基(修飾されている水酸基と修飾されていない水酸基との合計)のうち、修飾されている水酸基の割合は、0.01~50%であることが好ましく、10~20%であることがより好ましい。修飾率は、元素分析により得られた炭素、水素、酸素の元素割合から算出できる。
【0027】
セルロースナノファイバーの水酸基は、セルロースナノファイバーに修飾剤を反応させることにより修飾することができる。修飾剤としては、水酸基と反応し得るものであればよく、これまで提案されている修飾剤のなかから適宜選択できる。簡便で効率がよい点から、修飾剤としては、エーテル化剤またはエステル化剤が好ましい。
【0028】
エーテル化剤としては、例えば、アルキルエーテル化剤、シリルエーテル化剤、芳香環含有エーテル化剤などが挙げられる。
アルキルエーテル化剤としては、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化アルキル;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸ジアルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸ジアルキル;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドなどが好ましい。
【0029】
シリルエーテル化剤としては、n-ブトキシトリメチルシラン、tert-ブトキシトリメチルシラン、sec-ブトキシトリメチルシラン、イソブトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、オクチルジメチルエトキシシラン又はシクロヘキシルオキシトリメチルシラン等のアルコキシシラン;ブトキシポリジメチルシロキサン等のアルコキシシロキサン;ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン等のジシラザン;トリメチルシリルクロライド、ジフェニルブチルクロライド等のシリルハライド;tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート等のシリルトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
シリルエーテル化剤としては、上記の中でも、ケイ素原子に結合したアルキル基を有するアルキルシリルエーテル化剤が好ましい。
芳香環含有エーテル化剤としては、例えばベンジルブロマイドなどが挙げられる。
【0030】
エステル化剤としては、例えば、ヘテロ原子を含んでも良いカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
エステル化剤としては、アルキルエステル化剤が好ましく、酢酸、無水酢酸、無水酪酸がより好ましい。
【0031】
修飾剤としては、上記の中でも、分散性の向上効果に優れることから、アルキルエーテル化剤、アルキルシリルエーテル化剤、アルキルエステル化剤が好ましい。アルキルエーテル化剤によれば、修飾基としてアルキル基が導入される。シリルエーテル化剤によれば、修飾基としてシリル基が導入される。アルキルエステル化剤によれば、修飾基としてアルキルカルボニル基が導入される。
【0032】
セルロースナノファイバーの配合量は、ポリオレフィン樹脂組成物全体を100質量部とした場合、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。ただし、セルロースナノファイバーの配合量は、繊維状塩基性硫酸マグネシウムの配合量の0.01~1.00倍に規定される。繊維状塩基性マグネシウムに対してセルロースナノファイバーが少なすぎる場合には、力学物性の相乗効果が得られず、一方、繊維状塩基性マグネシウムに対してセルロースナノファイバーが多すぎる場合には、樹脂組成物中でフィラーの分散が困難となり力学物性の不良を起こす。セルロースナノファイバーの配合量は、繊維状塩基性硫酸マグネシウムの配合量の0.001~5.0倍が好ましく、0.01~1.00倍がより好ましい。
【0033】
さらに、本発明のポリオレフィン樹脂組成物には、非繊維状充填材が含有されていてもよい。非繊維状充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、および黒鉛等が挙げられる。
【0034】
またさらに、本発明のポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤などを挙げることができる。
【0035】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、各成分を混合し、次いで溶融混練することにより製造することができる。具体的には、まず、オレフィン重合体、繊維状塩基性硫酸マグネシウム、およびセルロースナノファイバーを所定の配合量で混合する。例えば、ポリオレフィン重合体が50~99質量部、塩基性硫酸マグネシウムが1~50質量部、セルロースナノファイバーが0.01~10質量部である。ただし、セルロースナノファイバーの配合量は、繊維状塩基性硫酸マグネシウムの0.01~1.00倍の範囲内とする。混合には、タンブラー、ブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いることができる。
【0036】
得られた混合物を、二軸押出混練機等を用いて180~250℃で溶融混練することによって、本発明のポリオレフィン樹脂組成物が得られる。
【0037】
<成形体>
本発明の成形体は、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造することができる。成形には、例えば圧延成形機(カレンダー成形機など)、真空成形機、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機、プレス成形機などの成形機を用いることができる。
【0038】
上述したとおり本発明のポリオレフィン樹脂組成物には、繊維状塩基性硫酸マグネシウムに加えてセルロースナノファイバーが所定の配合量で含有されているので、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が高く、しかも表面硬さに優れた成形体を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の具体例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
【0040】
用いる原料を以下にまとめる。
<原料>
プロピレン重合体(A):プロピレンホモポリマー、プライムポリプロ、J-700GP、(株)プライムポリマー製
繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B):モスハイジA-1、宇部マテリアルズ(株)製、平均長径15μm、平均短径0.5μm
セルロースナノファイバー(C):セルロースナノファイバー含有ポリプロピレンマスターバッチ、PP-CNFC-40、モリマシーナリー(株)製、セルロースナノファイバー40%含有
タルク(D):平均粒子径5μm
ステアリン酸マグネシウム(E):試薬
【0041】
<実施例1>
樹脂組成物の組成がポリプロピレン(А):繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B):セルロースナノファイバー(C)が94:5:1となるように、ポリプロピレン(A)92.5質量部、塩基性硫酸マグネシウム(B)5質量部、セルロースナノファイバーマスターバッチ(C)2.5質量部を混合した。得られた混合物を、二軸溶融混練押出機(L/D=25、(株)井元製作所製)を用いて200℃で溶融混練して、実施例1の樹脂組成物を得た。
【0042】
<実施例2>
プロピレン重合体(A)の配合量を87.5質量部に変更し、繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)の配合量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物を得た。
【0043】
<実施例3>
プロピレン重合体(A)の配合量を82.5質量部に変更し、繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)の配合量を15質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の樹脂組成物を得た。
【0044】
<比較例1>
繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)を配合せず、プロピレン重合体(A)の配合量を97.5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の樹脂組成物を得た。
【0045】
<比較例2>
繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)を同量のタルク(D)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の樹脂組成物を得た。
【0046】
<比較例3>
繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)を同量のタルク(D)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例3の樹脂組成物を得た。
【0047】
<比較例4>
繊維状塩基性硫酸マグネシウム(B)を同量のタルク(D)に変更した以外は実施例3と同様にして、比較例4の樹脂組成物を得た。
【0048】
<比較例5>
セルロースナノファイバー(C)を配合せず、プロピレン重合体(A)の配合量を95質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5の樹脂組成物を得た。
【0049】
<比較例6>
セルロースナノファイバー(C)を配合せず、プロピレン重合体(A)の配合量を90質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例6の樹脂組成物を得た。
【0050】
<比較例7>
セルロースナノファイバー(C)を配合せず、プロピレン重合体(A)の配合量を85質量部に変更した以外は実施例3と同様にして、比較例7の樹脂組成物を得た。
【0051】
<比較例8>
プロピレン重合体(A)を単独で溶融混練して、比較例8の樹脂組成物を得た。
【0052】
<比較例9>
ステアリン酸マグネシウムを0.15質量部配合した以外は実施例1と同様にして、比較例9の樹脂組成物を得た。
【0053】
<比較例10>
ステアリン酸マグネシウムを0.30質量部配合した以外は実施例2と同様にして、比較例10の樹脂組成物を得た。
【0054】
<比較例11>
ステアリン酸マグネシウムを0.45質量部配合した以外は実施例3と同様にして、比較例11の樹脂組成物を得た。
【0055】
<試験片の作製>
電動射出成形機(新興セルビック(株)製、C,Mobile0813)を用いて、各樹脂組成物を所定の寸法に成形して、それぞれの評価用の試験片を得た。力学物性評価用とビッカース硬さ試験用の試験片は、短冊型(長さ50mm、幅5mm、厚さ2mm)とした。
【0056】
<物性の評価>
物性評価用の短冊型試験片を用いて、以下の手法により、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、および表面硬さを測定した。
<曲げ弾性率>
万能力学試験機((株)イマダ製)を用いて3点曲げ試験を行い、得られた荷重たわみ曲線からJISK7171に準拠した方法により曲げ弾性率を評価した。支点間距離は40mm、負荷速度は10mm/minとし、測定温度は23℃とした。
<シャルピー衝撃強度>
シャルピー衝撃試験機((株)マイズ試験機製)を用いて、JIS K7111に準拠する方法でノッチ付き衝撃強度を評価した。ハンマーは2.75Jとし、測定温度は23℃とした。
<表面硬さ>
マイクロビッカース硬度計((株)ミツトヨ製)を用いてJIS Z2244に準拠して試験を行い、ビッカース硬度を算出した。測定条件は荷重1kgf、負荷時間15秒とした。
【0057】
実施例および比較例の成形体の評価結果を、樹脂組成物の組成とともに下記表にまとめる。
【0058】
【0059】
実施例1~3と比較例1,8との比較から、繊維状塩基性硫酸マグネシウムに加えて所定量のセルロースナノファイバーが配合されることによって、得られる成形体の曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度が向上することがわかる。しかも成形体の表面硬さは何ら損なわれない。
【0060】
実施例の樹脂組成物における繊維状塩基性硫酸マグネシウムをタルクに変更した場合には、表面硬さを高めることができず、シャルピー衝撃強度も低下する(比較例2~4)。
実施例の樹脂組成物におけるセルロースナノファイバーを省いた場合には、シャルピー衝撃強度および表面硬さが低下する(比較例5~7)。
実施例の樹脂組成物にステアリン酸マグネシウムを配合した場合には、シャルピー衝撃強度が低下する(比較例9~11)。