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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】密閉型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240930BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240930BHJP
   H01G 13/04 20060101ALI20240930BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01G13/04
H01G11/84
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022056413
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148416
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄三
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0058315(KR,A)
【文献】特開2015-232159(JP,A)
【文献】特開2022-024244(JP,A)
【文献】特開平03-085725(JP,A)
【文献】特開2018-006261(JP,A)
【文献】特開2016-014509(JP,A)
【文献】特開平07-226228(JP,A)
【文献】特開2011-192390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 6/02
H01G 11/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内部に電極体が収容された電池組立体が載置された載置台を乾燥炉に搬入する搬入工程と、
前記乾燥炉内で前記電池組立体を昇温し、前記ケース内部の水分を除去する乾燥工程と、
前記電池組立体を冷却する冷却工程と、
を包含し、
前記乾燥炉は、
前記載置台を囲む周壁と、
前記周壁の少なくとも一部に取り付けられたヒーターと、
を備えており、
前記載置台上に保温用部材が載置されており、
前記保温用部材は、前記載置台と近接する前記周壁のうち、前記ヒーターが取り付けられていない周壁と対向するように、前記載置台の周縁部に載置されていることを特徴する、密閉型電池の製造方法。
【請求項2】
前記保温用部材として、金属製のブロック体、あるいはセラミック製のブロック体が用いられることを特徴とする、請求項1に記載の密閉型電池の製造方法。
【請求項3】
前記金属製のブロック体は、ステンレス鋼あるいはアルミニウムを含む、請求項に記載の密閉型電池の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程において、前記保温用部材が設置されていない方向から送風することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の密閉型電池の製造方法。
【請求項5】
前記搬入工程において、複数の載置台を高さ方向に積み重ねた状態で前記乾燥炉に搬入し、
前記複数の載置台の間で、平面視における前記保温用部材の配置位置が略同一であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の密閉型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの密閉型電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。これらの密閉型電池は、例えば、電極体をケース内に収容した電池組立体を構築し、当該電池組立体の内部に電解液を注液した後に、ケースを密閉することによって製造される。
【0003】
ここで、製造後の密閉型電池のケース内部(特に電極体内部)に多くの水分が含まれていると、充電時にガスが発生して電池性能が低下する原因となる。このため、密閉型電池の製造では、電解液注液前の電池組立体に対して、ケース内の水分を除去する乾燥工程が実施される。この種の乾燥工程に関する技術の一例として、特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-81758号公報
【文献】特開2018-98012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の乾燥工程において電池組立体のケース内部を確実に乾燥させるには、非常に長い乾燥時間を設定する必要があった。このため、乾燥工程は、密閉型電池の製造効率を低下させる要因の一つと考えられており、当該乾燥工程の時間を短縮しても電池組立体を適切に乾燥できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、本発明によって以下の構成の密閉型電池の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)が提供される。
【0007】
ここに開示される製造方法は、ケース内部に電極体が収容された電池組立体が載置された載置台を乾燥炉に搬入する搬入工程と、乾燥炉内で電池組立体を昇温し、ケース内部の水分を除去する乾燥工程と、電池組立体を冷却する冷却工程と、を包含する。そして、ここに開示される製造方法は、載置台上に保温用部材が載置されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成の製造方法では、載置台上に、電池組立体と保温用部材とが載置される。この状態で載置台を乾燥炉に搬入して乾燥工程を実施すると、電池組立体の近傍に配置された保温用部材に乾燥炉からの熱が保持されるため、電池組立体を効率良く加熱することができる。これによって、乾燥工程の時間を短縮しても電池組立体を適切に乾燥することができる。
【0009】
ここに開示される密閉型電池の製造方法の好ましい一態様において、乾燥炉は、載置台を囲む周壁と、周壁の少なくとも一部に取り付けられたヒーターと、を備えており、保温用部材は、載置台と近接する周壁のうち、ヒーターが取り付けられていない周壁と対向するように、載置台の周縁部に載置される。かかる構成によると、保温用部材が、乾燥炉からの熱を保持することで、ヒーターの取り付けられていない箇所の近傍における温度低下を抑制する。従って、乾燥工程における温度分布が均一になり、より効率よく電池組立体を乾燥することができる。
【0010】
ここに開示される密閉型電池の製造方法の好ましい一態様において、保温用部材として、金属製のブロック体、あるいはセラミック製のブロック体が用いられる。かかる構成によると、電池組立体をより効率よく加熱することができる。
【0011】
ここに開示される密閉型電池の製造方法の好ましい一態様において、金属製のブロック体は、ステンレス鋼あるいはアルミニウムを含む。
【0012】
ここに開示される密閉型電池の製造方法の好ましい一態様において、冷却工程において、保温用部材が設置されていない方向から送風する。かかる構成により、乾燥工程後の冷却工程において、効率良く電池組立体の冷却が可能となる。従って、電池組立体の製造効率の更なる向上が可能となる。
【0013】
ここに開示される密閉型電池の製造方法の好ましい一態様において、搬入工程において、複数の載置台を高さ方向に積み重ねた状態で乾燥炉に搬入し、複数の載置台の間で、平面視における保温用部材の配置位置が略同一である。これにより、複数の載置台に載置された多数の電池組立体の各々を効率良く乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2】一実施形態に係る製造方法における載置台(支柱を図示せず)を模式的に示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る製造方法における載置台を乾燥炉内に収容した際の状態を示す横断面図である。
図4】一実施形態に係る製造方法における載置台を乾燥炉内に収容した際の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示される技術の一実施形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0016】
なお、本明細書における「密閉型電池」とは、ケース内部に電極体と電解液が収容された電池セルのことをいう。かかる密閉型電池は、一次電池および二次電池に限定されず、従来公知の種々の電池セルを広く適用できる。また、ここでの「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、いわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。かかる二次電池の一例として、電荷担体としてリチウムイオンを利用するリチウムイオン二次電池が挙げられる。また、本明細書における「電池組立体」とは、密閉型電池の製造工程において、電解液の注液を行う前の形態にまで組み立てられた構造体(すなわち、電解液が注液される前の電池)のことをいう。
【0017】
1.密閉型電池の製造方法
以下、ここで開示される密閉型電池の製造方法の好適な一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る製造方法の各工程を示すフローチャートである。図2は、本実施形態に係る製造方法における載置台を模式的に示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る製造方法における載置台を乾燥炉内に収容した際の状態を示す横断面図である。図4は、本実施形態に係る製造方法における載置台を乾燥炉内に収容した際の状態を示す縦断面図である。なお、図2図4中の符号xは幅方向を示し、符号yは奥行方向を示し、符号zは高さ方向を示す。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型電池の製造方法は、搬入工程S101と、乾燥工程S102と、冷却工程S103とを包含する。以下、各工程について説明する。
【0019】
(1)搬入工程S101
搬入工程S101では、図3に示すように、電池組立体20が載置された載置台10を乾燥炉100に搬入する。以下、本実施形態で用いられる各部材について説明する。
【0020】
電池組立体20は、上述した通り、密閉型電池の製造工程において、電解液の注液を行う前の形態にまで組み立てられた構造体である。詳細な図示は省略するが、この電池組立体20は、電池ケース内部に電極体が収容された構成を有する。例えば、図2に示す電池組立体20には、略直方体形状の電池ケースが用いられる。そして、この電池ケースの内部には、正極と負極を備えた電極体が収容される。また、電池ケースの一面(例えば上面)には、電解液が注液される注液口が形成される。すなわち、電池組立体20は、注液口を介して、電池ケースの内部と外部が連通した構成を有する。なお、電池組立体20は、載置台10に載置することができ、乾燥炉100に収容することができればよく、具体的な素材や構造は特に限定されない。例えば、電池組立体の外形は、図2に示すような略直方体形状に限定されず、円筒形などであってもよい。
【0021】
次に、載置台10は、電池組立体20を載置させる部材である。載置台10の構造も特に限定されず、電池組立体又は密閉型電池の搬送・保管などに使用され得る従来公知の載置台を使用することができる。一例として、載置台10は、図2に示すように、基材12と、電池保持部14と、保温用部材保持部16とを備えていることが好ましい。具体的には、基材12は、平面視において略矩形の板状の部材である。この基材12の上面に、電池組立体20や、後述する保温用部材30が載置される。次に、電池保持部14は、基材12上に載置された電池組立体20を保持する。これによって、搬送中などに電池組立体20の配置位置がずれることを抑制できる。なお、図2に示す電池保持部14は、基材12の上面に形成された矩形の凹みである。この電池保持部14に電池組立体20を嵌め込むことによって、電池組立体20を保持できる。しかし、電池保持部の構成は、これに限定されず、電池組立体20を挟持して保持する部材などであってもよい。次に、保温用部材保持部16は、基材12上に載置された保温用部材30を保持する部材である。これによって、保温用部材30の配置位置がずれることを抑制できる。なお、上記電池保持部14と同様に、保温用部材保持部16の構造も限定されない。保温用部材保持部は、図2に示すような保温用部材30を嵌め込む凹みでもよいし、保温用部材を挟持して保持する部材でもよい。
【0022】
ここで、本実施形態では、載置台10上に保温用部材30が載置される。詳しくは後述するが、これによって、乾燥工程の時間を短縮しても電池組立体20を適切に乾燥することができる。
【0023】
なお、保温用部材30としては、金属製のブロック体、セラミック製のブロック体などが好ましく使用される。このような無機材料を含むブロック体は、乾燥炉100からの熱によって容易に昇温するため、載置台10上の電池組立体20をより効率良く加熱することができる。また、ブロック体に含まれる金属材料の一例として、ステンレス鋼、アルミニウムなどが挙げられる。これらの金属材料を含む保温用部材30は、比較的に安価であるため好ましい。
【0024】
また、保温用部材30の形状や寸法は、載置台10や電池組立体20の形状や寸法に応じて適宜変更することができ、ここに開示される技術を限定する要素ではない。例えば、図2に示す保温用部材30は、奥行方向yに沿って延びる略直方体形状の部材である。かかる保温用部材30の奥行方向yにおける寸法は、載置台10上に配置された電池組立体20を、側面視において覆うことができるような寸法に設定されることが好ましい。例えば、図2では奥行方向yにおいて2個の電池組立体20が配列される。この場合、保温用部材30の奥行方向yにおける寸法は、この2個の電池組立体20の奥行方向yにおける合計寸法よりも長いことが好ましい。これによって、各々の電池組立体20をより効率良く加熱することができる。また、保温用部材30の高さ(高さ方向zにおける寸法)は、電池組立体20の高さと同等以上であることが好ましい。これによって、各々の電池組立体20をより効率良く加熱することができる。
【0025】
次に、乾燥炉100は、載置台10を収容し、当該載置台10上の電池組立体20を乾燥させることができればよく、従来公知の乾燥炉を特に制限なく使用することができる。例えば、図3、4に示す乾燥炉100は、載置台10を囲む周壁110と、周壁110の少なくとも一部に取り付けられたヒーター120とを備える。具体的には、図4に示すように、乾燥炉100は、載置台10が配置される床板130を備えている。床板130の材質は、載置台10を支持できる強度があればよく、特に限定されない。そして、乾燥炉100の周壁110は、床板130の周縁部から高さ方向zの上方に向かって立ち上がるように構成される。そして、周壁110の上端には、乾燥炉100の天井をなす天井部150が取り付けられる。さらに、周壁110の少なくとも一部には、載置台10を搬入・搬出するための開口部110aが形成される。図3及び図4に示す乾燥炉100では、幅方向xにおける両側の周壁110に一対の開口部110aが形成される。この一対の開口部110aの一方は載置台10を搬入する搬入路となり、他方は載置台10を搬出する搬出路となる。また、周壁110の開口部110aには、開閉可能なシャッター140が設けられる。このシャッター140は、載置台10を搬入・搬出する際に開放され、乾燥処理を実施する際に閉鎖される。また、図3及び図4に示す乾燥炉100では、シャッター140が取り付けられていない周壁110と、天井部150とに、ヒーター120が設置される。なお、図示は省略するが、本実施形態における乾燥炉100では、天井部150にファンが取り付けられる。このファンは、後述の乾燥工程において、乾燥炉100内における熱循環を促進させる役割をもつ。
【0026】
なお、乾燥炉100に対して載置台10を搬入・搬出する手段は、特に限定されない。例えば、載置台10を自動で搬入・搬出する手段として、ベルトコンベアによる搬送、押し出し機構、ロボットアームなどが挙げられる。但し、載置台10は、上述したような機器を使用せずに、手動で搬入・搬出を行ってもよい。
【0027】
(2)乾燥工程S102
本工程では、乾燥炉100内で電池組立体20を昇温し、ケース内部の水分を除去する。詳述すれば、まず、乾燥炉100内に載置台10を収容し、シャッター140を閉鎖して乾燥炉100内を密閉する。この状態でヒーター120を稼働させることによって電池組立体20が昇温される。これによって、電池組立体20のケース内に付着した水分が除去される。ここで、本実施形態に係る製造方法では、載置台10上に保温用部材30が載置される。この状態で乾燥炉100内の温度を昇温させると、ヒーター120からの熱が保温用部材30に保持される。これによって、当該保温用部材30に近接した電池組立体20を効率良く加熱できるため、乾燥工程の時間を短縮しても電池組立体20を適切に乾燥することができる。
【0028】
なお、本工程における乾燥条件は、電池組立体20のサイズ、載置台10上の電池組立体20の数量などの要因に応じて適宜調節することができ、ここに開示される技術を限定するものではない。例えば、乾燥温度の一例として、110℃~140℃が好ましい。かかる乾燥温度によると、電池組立体20に使用される樹脂部材の劣化を防ぎつつ、好適に水分を除去することができる。
【0029】
また、本工程では、乾燥炉100内を所定の温度まで昇温させた後に、当該乾燥炉100の内部を減圧してもよい。これによって、乾燥温度を低く設定しても、ケース内の水分を適切に除去できるため、樹脂部材の劣化をより好適に防止できる。また、乾燥炉100内を減圧することによって、乾燥工程の時間をさらに短縮できるという効果も生じる。一例として、減圧処理を行う場合の乾燥炉内の圧力は1kPa以下が好ましく、500Pa以下がより好ましい。
【0030】
また、上述の通り、本実施形態に係る製造方法によると、乾燥工程S102の時間を短縮しても電池組立体20を適切に乾燥することができる。ここに開示される技術を限定することを意図するものではないが、本実施形態によると、従来の技術で1.5時間~2時間に設定する必要があった乾燥時間を1時間~1.5時間に短縮したとしても電池組立体20を適切に乾燥することができる。
【0031】
(3)冷却工程S103
本工程では、乾燥後の電池組立体20を冷却する。かかる電池組立体20を冷却する手段は、特に限定されない。例えば、乾燥炉100から載置台10を取り出し、室温にて電池組立体20を自然放冷する方法が挙げられる。また、載置台10を収容したままで乾燥炉100の内部の温度を低下させて電池組立体20を冷却してもよい。また、冷却手段の他の例として、送風、温度制御恒温槽、氷冷等による冷却が挙げられる。これらの中でも送風による冷却が好ましい。このときの送風は、保温用部材30が設置されていない方向(図2中の奥行方向y)に沿って実施することが好ましい。これによって、電池組立体20を効率良く冷却することができる。
【0032】
以上、本実施形態に係る製造方法について説明した。上述した通り、本実施形態に係る製造方法では、載置台10上に保温用部材30が載置されているため、乾燥工程の時間を短縮しても電池組立体20を適切に乾燥することができる。
【0033】
また、上述した冷却工程S103の後は、電池組立体20の内部に電解液を注液する注液工程と、電池組立体20の注液口を封止する密閉工程などが実施され得る。これによって、ケース内部に電極体と電解液が収容された密閉型電池が製造される。そして、本実施形態に係る製造方法によると、電解液を注液する前に電池組立体20の内部の水分が充分に除去されているため、密閉型電池の性能低下を適切に防止できる。
【0034】
2.保温用部材の配置
次に、乾燥工程S102を実施する際の保温用部材30の載置位置について説明する。この保温用部材30の載置位置は、乾燥炉100の構造や電池組立体20の載置位置などを考慮した上で、電池組立体20を効率良く加熱するという観点で適宜調節することが好ましい。
【0035】
例えば、保温用部材30は、載置台10と近接する乾燥炉100の周壁110のうち、ヒーター120が取り付けられていない周壁110と対向するように、載置台10の周縁部に載置されることが好ましい。具体的には、図3及び図4に示すような乾燥炉100では、開口部110aを有する周壁110にシャッター140が取り付けられる。このシャッター140などの可動部を有する部位では、動作スペースの観点からヒーターを設置することが難しい。また、設備コストの低減などの観点から、乾燥炉の周壁の一部にヒーターを取り付けないこともあり得る。このような乾燥炉100では、ヒーター120の近傍が高温になり、ヒーター120が取り付けられていない周壁110(図3及び図4ではシャッター140)の近傍が低温になる。このような温度分布のムラが乾燥炉100内に生じると、低温領域に配置された電池組立体20が乾燥されにくくなる。この場合、低温領域に配置された電池組立体20を基準に乾燥時間を設定する必要があるため、乾燥時間が長くなる原因になり得る。これに対して、図3及び図4に示すように、ヒーター120が取り付けられていない周壁110と対向するように保温用部材30を設置すると、保温用部材30が熱を保持することで、ヒーター120の取り付けられていない周壁110の近傍における温度低下を抑制することができる。これによって、乾燥炉100内の温度分布を均一化し、より効率よく電池組立体20を乾燥することができる。
【0036】
また、図4に示すように、載置台10は、高さ方向zにおいて複数個積み重ねた状態で乾燥炉100に搬入されることがある。具体的には、図4に示すように、略矩形の板状の載置台10を使用する場合、当該載置台10の四隅の各々に高さ方向zの上方に向かって立ち上がるように支柱11を配置し、その支柱11の上に別の載置台10を配置してもよい。これによって、同時に乾燥できる電池組立体20の個数を増やすことができるため、乾燥処理の効率をさらに向上させることができる。また、このような載置台10の多段積みを実施する場合には、複数の載置台10の間で、平面視における保温用部材30の配置位置を略同一にすることが好ましい。これによって、各々の載置台10において平面上の温度分布のむらを抑制できるため、多数の電池組立体20を効率良く乾燥させることができる。なお、支柱11の形状や材質は、特に限定されず、乾燥工程の温度環境及び多段積みに耐えうるものであれば特に制限はない。例えば、支柱11の材質は、保温用部材30と同じものであってもよい。これによって、支柱11が保温用部材の機能を奏するため、電池組立体20をより好適に乾燥させることができる。
【0037】
以上、ここで開示される製造方法の一実施形態を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10 載置台
11 支柱
12 基材
14 電池保持部
16 保温用部材保持部
20 電池組立体
30 保温用部材
100 乾燥炉
110 周壁
110a 開口部
120 ヒーター
130 床板
140 シャッター
150 天井部
S101 搬入工程
S102 乾燥工程
S103 冷却工程
図1
図2
図3
図4