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特許7562599パーソナルケア処方においてシリコーン流体の代わりに用いられる天然シリコーン代替物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】パーソナルケア処方においてシリコーン流体の代わりに用いられる天然シリコーン代替物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20240930BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240930BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240930BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240930BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240930BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240930BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20240930BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q15/00
A61Q1/04
A61Q5/12
C08L67/00
C08K5/11
C08G63/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022084691
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2019015590の分割
【原出願日】2012-11-14
(65)【公開番号】P2022117999
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】61/559,266
(32)【優先日】2011-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511299355
【氏名又は名称】イノレックス インベストメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】バーゴ, ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ウィン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バーチ, キンバリー
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-107947(JP,A)
【文献】米国特許第05100697(US,A)
【文献】特開2004-262783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0288478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G63/00- 64/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルケア処方に使用される、粘度を調整可能な組成物であって、
高分子量エステル1種以上と非高分子量エステル1種以上との混合物を含み、
前記高分子量エステルは、(i)炭素数3~10の飽和直鎖第1のジカルボン酸1種以上と、(ii)炭素数3~10の飽和直鎖の単官能カルボン酸1種以上と、(iii)グリセリンとのエステル化反応生成物であり、
前記非高分子量エステルは、(i)炭素数3~10の飽和直鎖の第2のジカルボン酸1種以上と(ii)炭素数3~10の飽和直鎖の単官能アルコール1種以上とのエステル化反応生成物であり、
前記組成物は、シリコーンを含有せず、かつ
前記組成物は、25℃で10cSt~350cStの粘度を有する
組成物。
【請求項2】
前記高分子量エステル及び前記非高分子量エステルのうち1種以上は天然物である、
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のジカルボン酸の1種以上は、セバシン酸である、
請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記官能カルボン酸の1種以上は、オクタン酸である、
請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記単官能アルコールの1種以上は、1-ヘプタノールである、
請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記第2のジカルボン酸の1種以上は、コハク酸である、
請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子量エステルの1種以上は、オクタン酸、グリセリン、及び、セバシン酸の反応生成物である、
請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記高分子量エステルの1種以上は、組成物中、2重量%~52.5重量%の濃度で存在する、
請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記非高分子量エステルの1種以上は、コハク酸ジヘプチルである、
請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記非高分子量エステルの1種以上は、組成物中、47.5重量%~98重量%の濃度で存在する、
請求項9記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~4、7、8、10のいずれかに記載の組成物と、さらにパーソナルケア成分の1種以上とを含む、シリコーンを含有しないパーソナルケア処方物。
【請求項12】
前記パーソナルケア成分の1種以上は、フレーバー剤、乳白剤、着色剤、ワックス、乳化剤、油脂、保存料、UV吸収化合物、洗剤、発泡剤、pH調整剤、保湿剤、湿潤剤、皮膚用若しくは毛髪用コンディショナー、及び、溶剤から選択される、
請求項11記載のパーソナルケア処方物。
【請求項13】
前記パーソナルケア成分の1種以上は、パラベン、鉱油、オリーブ油、パラフィン、PEG、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、オキシノール、ワセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、オレス硫酸ナトリウム、セテアレス硫酸ナトリウム、DMDMヒダントイン、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、トリエタノールアミン、コカミドジエタノールアミン、ラウリミドジエタノールアミン、リノレアミドジエタノールアミン、オレアミドジエタノールアミン、オキシベンゾン、精油、メトキシけい皮酸オクチル、二酸化チタン、及び、酸化亜鉛から選択される、
請求項11記載のパーソナルケア処方物。
【請求項14】
前記組成物は、処方物全体の5重量%~80重量%の量で存在する、
請求項11記載のパーソナルケア処方物。
【請求項15】
前記組成物は、処方物全体の10重量%~70重量%の量で存在する、
請求項11記載のパーソナルケア処方物。
【請求項16】
前記組成物は、処方物全体の3重量%の量で存在する、
請求項11記載のパーソナルケア処方物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月14日に出願された米国仮特許出願番号61/559,266について米国法典第35編第119条(e)の利益を主張する。この仮特許出願の開示全体を本明細書に参照により引用する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン流体はトイレタリー用、化粧品用及びパーソナルケア用の各処方において広く使用されている。最もよく使用されているのは、ジメチコンシクロメチコン及びフェニルトリメチコン(以下、全てのシリコーン物質をまとめて「シリコーン」と称する)である。スキンケア処方に配合した場合、シリコーン流体は、処方物の滑り性の改善、粘性の減少、皮膚軟化性の付与、及び、他の「触り心地」特性の改質等の様々な利点を与える。コンディショナー等のヘアケア処方に配合した場合には、ウェットコーミング力が低減され、毛髪のつやが増す。
【0003】
シリコーン流体は、油っぽさやべたつきをもたらすことなく上記利点を付与し、多くの人が、「さらっとした」肌触りと感じる状態にする傾向があることから特に有用であると考えられてきた。この属性は、クリーム、ローション、制汗剤、ひげそり用剤及びメーキャップ化粧料等のトイレタリー用、化粧品用及び他のパーソナルケア用の各処方において大変望ましい。他の利点として、シリコーンは優れた分散剤及び延展剤であり、一般的に色は無色透明で匂いは少なく、化学攻撃及び酸化攻撃に耐性を有する。これらの属性によって、パーソナルケア用途に特に適したものとなっている。しかしながら、パーソナルケア処方にシリコーンを使用する場合には欠点も伴う。
【0004】
関連技術の説明
例えば、肌にシリコーン流体を使用する場合の安全性については懸念があった。シリコーン及びシリコーン分解物が、シリコーン乳房インプラントを使用する女性及び/又は他の疾患を有する個体における自己免疫系不全の発生につながる可能性があることを考慮して、上記物質は、近年、アメリカ食品医薬品局(FDA)によってより厳しい監視下に置かれることとなった。明確な因果関係は確認されていないものの、多くの化粧品処方者は、処方からシリコーン成分を減らしたり、取り除いたりしようと行動している。シリコーンを使用しないことのマイナス面は、言うまでもなく、肌触りの良さや処方上の利点が失われることである。
【0005】
また、シリコーンは、環境に害を及ぼす可能性もあるとされている。例えば、カナダ環境省から、ジメチコンは環境有害物質であって、生物蓄積性を示すことが疑われることを示した文献が発行されている。
【0006】
したがって、シリコーンのような処方時の利点をもたらすが、現実の健康上及び環境上のリスク又はそのような認識は与えない代替の非シリコーン流体を見いだすことが当該分野で求められている。
【0007】
産業界はこのニーズに応えるため努力を行ってきた。例えば、特許文献1には、低粘度シリコーン流体の代替物として使用できる低粘度エステルが記載されている。特許文献2には、揮発性の四量体及び五量体シクロメチコンの代替物として有用な、特定の合成エステルと揮発性炭化水素とのブレンド物が記載されている。特許文献3には、揮発性の四量体及び五量体シクロメチコンの代替物として有用な炭化水素流体のブレンド物が記載されている。特許文献4には、メタロセン触媒を使用して製造されたポリオレフィンとエチレンアクリル酸共重合体とを含有する水性分散体、カチオン性ポリマー、及び、化粧品として許容される1種以上の界面活性剤、皮膚軟化剤又は化粧品有効成分を含むが、15シリコーンを0.09重量%未満しか含有せず、好ましくはシリコーンを実質的に含有しないパーソナルケア組成物が記載されている。
【0008】
人々は、化石燃料由来成分の使用に伴う人体や環境への潜在的な悪影響をより意識するようになっているため、パーソナルケア産業では、実質的に全てのタイプや形態の化粧品処方物において使用するための「天然(natural)」成分を探すことを急速に進めてきた。この成長は、メディアが、化石燃料由来成分の使用に伴い人体や環境に悪影響が及ぼされるかもしれない、という考えを普及させることで促進された。実質的に全てのタイプや形態の化粧品において使用するための「天然」成分を見いだそうとする試みがパーソナルケア産業により急速に進められてきた。特に、販売用資料では使用されているものの、このような文脈における「天然(natural)」という用語は未だはっきりと定義されていない。より簡潔で一貫した意味をこの用語にもたせようと産業貿易機構の努力が続いている。
【0009】
「天然」について産業界で容認される一般的な定義が定められるまでにはしばらくかかるかもしれないが、一般的な認識では、再生可能及び/又は持続可能な供給源又は他の非化石燃料源に由来する物質が天然であると考えられている。石油化学製品は化石燃料に由来し、天然とは考えられていない。石油化学製品の派生物はいずれも天然とは考えられていない。同様に、シリコーンは、石油化学製品に由来するためそれ自体は天然として分類されない。したがって、パーソナルケア処方中でシリコーンの代わりに使用でき、シリコーンの有利な最終特性を消費者に与える天然シリコーン代替物が当該分野で求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2005/0260150号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0241200号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0123398号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0064685号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、パーソナルケア処方に使用されるシリコーン代替物であって、高分子量エステル1種以上と非高分子量エステル1種以上との混合物を含むシリコーン代替物が開示される。上記高分子量エステルは、(i)第1のジカルボン酸1種以上と、(ii)第1の単官能アルコール又は単官能カルボン酸のうち1種以上と、(iii)グリセリン又はその誘導体とのエステル化反応生成物であり、上記非高分子量エステルは、(i)第2のジカルボン酸1種以上と(ii)第2の単官能アルコール1種以上とのエステル化反応生成物であり、上記代替物はシリコーンを実質的に含有しない。
【0012】
また、シリコーンを実質的に含有しないパーソナルケア処方物であって、上述した高分子量エステル1種以上と、上述した非高分子量エステルとの混合物から実質的になるシリコーン代替物を含むパーソナルケア処方物も開示される。関連する方法も開示される。
【0013】
上述の発明の概要は、添付の図面と共に読めばよりよく理解できるであろう。本発明の態様を説明するために、本発明におけるデータ及び実施形態を図面に示すが、本発明は示された構成や手段に厳密には限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の非高分子量エステルの一例であるコハク酸ジヘプチルの赤外線スペクトルを示す。
図2】本発明の高分子量エステルの一例であるGSC4型の赤外線スペクトルを示す。
図3】従来のシリコーン物質と比較したシリコーン代替物の延展率をグラフで示す。
図4-1】同等な肌触り特性のパネル評価においてヒト試験対象に与えた各種の試料処方物及び比較試料処方物の反応物質の量を示す表である。
図4-2】同等な肌触り特性のパネル評価においてヒト試験対象に与えた各種の試料物及び比較試料処方物の反応物質の量を示す表である。
図5】試料処方物及び比較試料処方物を評価する際にパネルが使用する調査票の写しである。
図6】パネル評価の結果をグラフで示す(図6A~6Eを含む)。
図7A】シリコーン代替物と従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図7B】シリコーン代替物と従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図7C】シリコーン代替物と従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図7D】シリコーン代替物と従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図7E】シリコーン代替物と従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図7F】シリコーン代替物及び従来のシリコーン含有処方物のべたつき(粘性)が同等であることを実証したデータの写真記録である。
図8】顔料粉砕物(pigment grind)の評価結果を示す。
図9】シリコーン代替物を塗布した毛髪のつや(光沢)の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示される本発明は、シリコーンを実質的に含有しないが、ほぼ同等な触覚的特性及び/又は最終使用特性を有するパーソナルケア処方物(以下に限定されないが、シャンプー、洗浄剤、コンディショナー、化粧品及びローション等)に使用されるシリコーン代替物を包含する。具体的には、本出願人らは、驚くべきことに、複数の特定の天然(すなわち非石油化学製品由来)エステル流体を混合することによって、シリコーン流体によりパーソナルケア処方物に通常付与される特定の望ましい特性、例えば延展率(のび)、肌触り、低べたつき性、顔料分散性及び毛髪のつや等が実現できることを見出した。本発明のシリコーン代替物を使用することで、天然成分を含有し、シリコーンは実質的に含有しないが、従来のシリコーン含有処方と同等な又は類似の美的特性、触覚的特性及び/又は肌触りを有するものとしてヒトのエンドユーザーにより認識されるパーソナルケア処方物(皮膚用及び毛髪用製品等)を処方することができる。
【0016】
「シリコーンを実質的に含有しない」とは、出発化合物としてシリコーン基を含むものを全く含有させないでパーソナルケア処方物が処方されていることを意味する。例えば、本発明の処方物は15シリコーンを0.09重量%未満、好ましくは08重量%以下しか含有しない。
【0017】
本発明には、パーソナルケア処方に使用される天然シリコーン代替物であって、高分子量エステル1種以上と非高分子量エステル1種以上との混合物であるシリコーン代替物が含まれる。酸、アルコール及び/又はエステルについて述べる際に、本明細書中で「天然(natural)」という用語を使用する場合、その語は上記エステルを調製するために使用する酸、エステル又はアルコールの構造中に含まれる全ての原子が、再生可能及び/又は持続可能な供給源から得られたものであることを意味する。「再生可能及び持続可能」とは、炭素が石油化学的供給源から得られたものではないことを意味する。石油化学的炭素源ではない炭素源の例として、工場、農業又は林業由来の廃棄物系バイオマスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明で特に有用なのは、天然の酸及びアルコールのエステル化により得られる非高分子量エステル及び高分子量エステルの混合物又はブレンド物である。本明細書中において、「エステル化」という用語は、カルボン酸基及び/又はカルボン酸エステル基とヒドロキシル基との縮合反応を述べるために使用している。「エステル化反応生成物」は、この事象の結果として得られる生成物である。本発明に含まれるシリコーン代替物は、エステル化反応により形成される高分子量エステル及び非高分子量エステルのブレンド物である。
【0019】
シリコーン代替物流体中に含有されるエステルはそれぞれ、ジカルボン酸1種以上をエステル化することにより得られる。本発明の実施に際して、高分子量エステルは、第1のジカルボン酸1種以上と、第1の単官能アルコール又は単官能カルボン酸のうち1種以上と、グリセリン及び/又はその誘導体とのエステル化反応生成物である。特定のシリコーン代替物中の高分子量エステルは、同一の第1のジカルボン酸、第1の単官能アルコール又は単官能カルボン酸、及び、グリセリン又はグリセリン誘導体から形成されていてもよい。あるいは、ブレンド物/シリコーン代替物中に含有される「高分子量エステル」自体が種々の高分子量エステルのブレンド物又は混合物となるように、複数の第1のジカルボン酸、第1の単官能アルコール及び/又は単官能カルボン酸、並びに、グリセリン又はグリセリン誘導体の混合物、すなわち上記各物質を組み合わせたものから調製されていてもよい。
【0020】
シリコーン代替物の非高分子量エステルは、第2のジカルボン酸1種以上と第2の単官能アルコール1種以上との反応生成物である。高分子量エステルと同様に、特定のシリコーン代替物中の非高分子量エステルは、同一の第2のジカルボン酸及び第2の単官能アルコールから形成されていてもよい。あるいは、ブレンド物/シリコーン代替物中に含有される「非高分子量エステル」自体が種々の非高分子量エステルのブレンド物又は混合物となるように、複数の第2のジカルボン酸及び第2の単官能アルコールの混合物、すなわち上記各物質を組み合わせたものから調製されていてもよい。
【0021】
高分子量エステル及び非高分子量エステルのそれぞれについて、好適なジカルボン酸及び/又は単官能アルコールは、独立して中鎖長又は短鎖長の炭素鎖を含んでいてもよい(ただし、高分子量エステル及び非高分子量エステルは、同一の炭素数を有する出発物質から調製する必要はない)。「短」鎖長とは、化合物の炭素数が約1~約6であることを意味する。「中」鎖長とは、化合物の炭素数が約7~約12であることを意味する。
【0022】
ある実施形態では、上記ジカルボン酸及び/又は単官能アルコールは、独立して、炭素数約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14又は約15の炭素鎖を含んでいてもよい。他の実施形態では、上記ジカルボン酸及び/又は単官能アルコールは、独立して、炭素数約10~約25の炭素鎖及び/又は炭素数約1~約10の炭素鎖を含んでいてもよい。本発明の上記実施形態ではいずれも、上記ジカルボン酸及び/又は単官能アルコールの1種以上はそれぞれ独立して、独立して直鎖状及び/又は分枝状の炭素鎖を有していてもよく、かつ/または、独立して飽和及び/又は不飽和及び/又は官能基含有若しくは非含有の炭素を有していてもよい。ある実施形態では、炭素鎖に含まれる炭素の少なくとも1つが飽和しており、残りは不飽和である。
【0023】
特に有用な酸及び/又はアルコールは、炭素数約3~約10の飽和直鎖を含むものであってもよい。
【0024】
エステル化反応に使用するために、当該分野で公知の又は開発されたジカルボン酸であればどのようなものでも独立して選択でき、例えば、1,4-ブタン二酸(コハク酸)、1,5-ペンタン二酸(グルタル酸)、1,6-ヘキサン二酸(アジピン酸)、9-ノナン二酸(アゼライン酸)、及び、1,10-デカン二酸等が挙げられるが、これらに限定されない。ある状況ではセバシン酸が好ましい。
【0025】
エステル化反応に使用するために、当該分野で公知の又は開発された単官能ジカルボン酸であればどのようなものでも独立して選択でき、例えば、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、及び、ドデカン酸(ラウリン酸)等が挙げられるが、これらに限定されない。ある状況ではカプリル酸及びカプリン酸が好ましい。
【0026】
グリセリン又はグリセリン誘導体は、上記高分子量エステルを調製するのに使用される。グリセリン誘導体として、グリセロール自体の縮合によって分子量がより大きいグリセロールエーテル誘導体を形成することで得られるもの(ポリグリコール等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
当該分野で公知の又は開発された単官能アルコールであればどのようなものでも使用することができ、例えば、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、及び、1-デカノール等が挙げられるが、これらに限定されない。ある条件では1-ヘプタノールが好ましい。
【0028】
いずれの場合でも、上記酸、アルコール及び/又は多価アルコール(グリセリン又はその誘導体)は上述した通り天然であるのが好ましい。
【0029】
本発明に含まれるシリコーン代替物を構成するエステルを天然の反応物質から形成する際には、単官能アルコール1種以上及び/又は単官能カルボン酸1種以上で、ジカルボン酸1種以上をエステル化する。上記エステルは、当該分野で公知の任意のエステル化法で形成できる。例えば、第1の反応では、単官能アルコール1種以上とジカルボン酸1種以上とのエステル化により得られる非高分子量エステルを調製する。第2の反応では、ジカルボン酸1種以上と、単官能カルボン酸1種以上と、グリセロール及び/又はポリグリセロールとから得られる高分子量エステルを調製する。
【0030】
次に、シリコーン代替物を調製するために、置き換えようとするシリコーン流体(シクロメチコン及び/又はジメチコン流体等)に相当する性能特性が代替物によってパーソナルケア処方物に付与されるように、特定の比率で非高分子量エステルと高分子量エステルをブレンドする。「性能特性」とは、シリコーン流体によってパーソナルケア処方物に付与される最終特性であって、消費者及び/又は製品処方者が経験する望ましい最終特性、例えば延展率(のび)、肌触り及び他の触覚的特性(滑り性又は抵抗、油っぽさ、使用後の残留感、皮膚内への吸収率、毛髪の光沢/つや、軽い感じ対重たい感じ)、粘性(べたつき)及び顔料分散能等を意味する。
【0031】
上記高分子量エステル及び非高分子量エステルは、性能特性が達成又は保持される限り、所望の比率でシリコーン代替物中に含有されていてもよい。特定のブレンド物が、(最終パーソナルケア処方物により決定される)シリコーン代替物として充分な所望の性能特性を確実に示すようにするために行う評価は、日常的に行われる試験に過ぎず、充分に通常の処方者の技能(スキル)の範囲内である。ある場合には、非高分子量エステルに対する高分子量エステルの重量比は約1:約1~約1:約50(すなわち略1:略1から略1:略50)であってもよい。
【0032】
ある状況では、処方の便宜上、シリコーン代替物中の非高分子量ポリマーに対する高分子量ポリマーの比率は、シリコーン代替物が特定の粘度を有するように調整した特定の比率にすることが望ましい(そのようにすれば、自身の処方における特定の粘度のシリコーンの代わりにシリコーン代替物を代用しようとしているパーソナルケア製品の処方者が、その処方者の処方を別の方法で変更しなくてもよいこととなり、シリコーン代替物の便宜の向上が図れる)。そのような状況では、最終製品(シリコーン代替物)の粘度を測定し、目標の粘度に達するのに必要な比率に調整することで上記特定の比率を決定できる。例えば、約1~約1000cSt、約10~約500cSt、約20~約350cSt、約50~約200cSt、及び/又は、約70~約100cStの粘度を有するシリコーン代替物が望ましい。ある状況では、パーソナルケア処方者が取り扱い易いように、非高分子量エステルに対する高分子量エステルの比率が、約10、約20、約50、約100、約200及び/又は約350(全てcSt)の粘度をもたらす特定の比率となるシリコーン代替物を調製することが望ましい。
【0033】
また、本発明には、天然であり、シリコーンを実質的に含有しないパーソナルケア処方物も含まれる。上記パーソナルケア処方物は、本発明のシリコーン代替物と、さらに(シリコーンではない)成分1種以上とを含む。薬理作用を有する薬剤等、毛髪、皮膚又は爪に塗布できる成分であればどのようなものが含有されていてもよい。上記成分の例として、界面活性剤、フレーバー剤、香料、乳白剤、着色剤、ワックス、乳化剤、油脂、保存料、UV吸収化合物、洗剤、発泡剤、安定剤、pH調整剤、発泡剤、保湿剤、水、アルコール、尿素、化粧品有効成分、顔料、湿潤剤、皮膚用若しくは毛髪用コンディショナー、及び、溶剤等が挙げられるが、これらに限定されない。他に、アセトン、水、アルコール、パラベン、鉱油、植物油、オリーブ油、パラフィン、PEG、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、オキシノール、ワセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、オレス硫酸ナトリウム、セテアレス硫酸ナトリウム、DMDMヒダントイン、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、トリエタノールアミン、コカミドジエタノールアミン、ラウリミドジエタノールアミン、リノレアミドジエタノールアミン、オレアミドジエタノールアミン、オキシベンゾン、精油、皮膚軟化剤、メトキシけい皮酸オクチル、二酸化チタン、及び、酸化亜鉛等も挙げられる。
【0034】
パーソナルケア処方物は、当該分野で公知の任意の方法で調製できるが、必然的に、どのような種類のパーソナルケア処方物を調製するか(例えば、脇下用制汗剤処方物か、あるいは皮膚用洗浄剤処方物か)によってその方法は異なることとなろう。パーソナルケア処方物自体は、固体、半固体、液体、ゲル、エアロゾル化された又はエアロゾル化が可能な物質、フィルム、ペースト、クリーム、ローション、乳液、懸濁液及び/又は粉体の形態をとることができる。
【0035】
シリコーン代替物は、どのような量でパーソナルケア処方物中に含有されていてもよく、その量は、どのような種類のパーソナルケア処方物を調製するかなど、各種要因によって異なることとなろう。多くの状況では、シリコーン代替物は、組成物全体の約1重量%~約95重量%、約5重量%~約80重量%、約10重量%~約70重量%、約15重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量、又は、約30重量%~約40重量%の量でパーソナルケア処方物中に含有されているのが好ましい。シリコーン代替物は、組成物全体の約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%の量で含有されているのが好ましい場合もある。
【0036】
本明細書中に開示される本発明に含まれるシリコーン代替物及びパーソナルケア処方物はいずれも、対応する従来のシリコーン含有物と比較して類似の又は同等な最終特性を示す。特に、本発明のシリコーンブレンド物又は本発明のパーソナルケア処方物の延展値(「本発明の延展値」)と対応の従来のシリコーン又は従来のシリコーン含有パーソナルケア処方物の延展値(「従来の延展値」)との差は、従来の総延展値の約10%未満、約5%未満、約1%未満である。また、シリコーン代替物の肌触り、粘性(べたつき)及び顔料分散能は、対応する従来のシリコーン含有物と類似しているか、又は、統計的に同等である。
【実施例
【0037】
実施例1:本発明の代表的な非高分子量エステルの調製
【0038】
1-ヘプタノールとコハク酸との反応生成物(「コハク酸ジヘプチル」)を調製した。攪拌機、加熱マントル、窒素ガススパージ、蒸気カラム及び全縮器を備えた5L容4ツ口フラスコに、n-ヘプタノール2813グラム(24.25グラムモル)を加えた。コハク酸938グラム(7.94グラムモル)を添加した。これに、触媒としてエタンスルホン酸(70%水溶液)7.5グラムを添加した。
【0039】
混合液を約150℃まで加熱し、ゆっくりと減圧した。この工程が終了した時点で、反応物の酸価を測定したところ0.90mg KOG/gであった。その後、混合液を約90℃まで冷却し、炭酸ナトリウム溶液を添加して残った酸を中和した。
【0040】
次に、エステルのバッチ蒸留を行った後、スチームストリッピングを行った。ストリッピング後のエステルを活性炭で処理し、濾過して実質的に無臭無色の流体を得た。
【0041】
分析したエステルの特性を下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図1は、上述したように調製した非高分子量エステルの赤外線スペクトルを示す。
【0044】
実施例2:本発明の代表的な高分子量エステルの調製
【0045】
デカン二酸(「セバシン酸」、5ひまし油由来)と1,2,3-プロパントリオール(「グリセロール」、ココヤシ油由来)とオクタン酸(「カプリル酸」、ココヤシ油由来)との各種反応生成物を調製した。それぞれの反応生成物の反応物質の量を下記表2-1に示す。
【0046】
攪拌機、加熱マントル、窒素ガススパージ、蒸気カラム及び全縮器を備えた4ツ口フラスコ内でエステル化/ポリエステル化を行った。いずれの場合にも、反応物質を容器に投入し、約215℃まで加熱した。
【0047】
その後、減圧して反応物の水を追い出し、酸価をモニタリングして反応の進行度合いを追った。反応が充分に完了(酸価:5mg KOH/g以下)したら、反応器の内容物を約180℃まで冷却し、スチームストリッピングを高真空(15)下で約4時間行った。スチームストリッピングを止め、反応生成物を冷却し、容器中へ排出した。得られた特性を表2-2に示す。
【0048】
図2は、高分子量エステルの一例であるGSC4型の赤外線スペクトルを示す。
【0049】
【表2-1】
【0050】
【表2-2】
【0051】
実施例3:本発明の代表的なシリコーン代替物の調製
【0052】
透明で均質な溶液が得られるまでメカニカルスターラーを使用して好適な大きさのガラス製ビーカー内で混合することによって、実施例1及び2のエステルをブレンドして合計約1000グラムの試験ブレンド物とした。6種の試験ブレンド物(N10、N20、N50、N100、N200、N350)を、25℃で測定したおおよその粘度がそれぞれ10cSt、20cSt、50cSt、100cSt、200cSt、350cStとなるように調製した。
【0053】
本発明の代表的なシリコーン代替物の特性を表3-1に示す。
【0054】
【表3-1】
【0055】
実施例4:シリコーン代替物の延展率の評価
【0056】
パーソナルケア処方に通常使用される各種ジメチコンの延展率と比較して、本発明に含まれるシリコーン代替物の延展率の評価を行った。当該分野で理解されるように、延展性の割合又は延展値は、皮膚に処方物を塗布した際の皮膚上での流動能を表すものであり、最終パーソナルケア処方物の属性を決定する際の重要な測定値とみなされる。
【0057】
実施例3で調製した本発明のシリコーン代替物の6種の試料(S1~S6)とジメチコン流体の6種の比較試料(CS1~CS6)を評価したが、下記表に示されるようにそれぞれ粘度が異なっている。
【0058】
試料ブレンドID 比較試料
S1 N10 CS1 ジメチコン 10cst
S2 N20 CS2 ジメチコン 20cst
S3 N50 CS 3 ジメチコン 50cst
S4 N100 CS4 ジメチコン 100cst
S5 N200 CS5 ジメチコン 200cst
S6 N350 CS6 ジメチコン 350cst
【0059】
実施例3に記載の方法で試料S1~S6(ブレンドIDS N10、N20、N50、N100、N200、N350)を調製した。各試料S1~S6及びCS1~CS6を以下のように取り扱った。ペトリ皿に1枚の濾紙を敷いた。ピペッターを使用して、濾紙のほぼ中心に50Lの試料を塗布した。1分、3分及び5分がそれぞれ経過した後、濾紙上に試料の外周線を引いた。形成された各円の直径を測定した。各時間間隔において1試料につき測定を2回行った。測定値を以下に示す。プロットした測定値を図3に粘度により示す。
【0060】
【表4】
【0061】
実施例5:本発明の混合物とシリコーン流体との肌触り特性の比較
【0062】
図4の表に示された反応物質の量を使用して以下のように試料を調製した。A相で示した量の水を78~80℃まで加熱した。プロペラ型撹拌機を使用して、残りのA相成分を一緒に混ぜ合わせてスラリーとした後、加熱した水に混合した。「B」相成分を混ぜ合わせ、80℃まで加熱し、混合を続けながら「A」相に添加した。混合物全体を60℃まで放冷した。各バッチに「C」相を添加し、混合物全体を室温まで冷却した。
【0063】
ガラスジャーに各処方物を4オンスずつ詰めた。0.10~0.20gのローションを前腕の内側に塗布するよう試験参加者に指示した(1処方物につき、15人のそれぞれの腕に塗布した)。次に、参加者に調査票を全て記入するよう依頼した。その調査票を本明細書に図5として添付する。調査票から得られたデータを図6(6A~6D)にプロットした。
【0064】
この試験の結果から、シリコーン代替物が各種ジメチコン対応物と類似した性能を示すことがわかる。
【0065】
以下に示すように、20重量%のLexorez200(トリメチルペンタンジオール/アジピン酸/グリセリンクロスポリマーの特許ブレンド、Inolex Chemical Company(アメリカ合衆国ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)製)と80重量%の各試料S1~S6とを混ぜ合わせて6種の試料ブレンド物(S1~S6)を得た。
【0066】
【表5】
【0067】
Lexorez200は、25℃での粘度が約25,000cPの粘性ポリエステルである。実施例7と同様にして試料S1~S6を調製した。使い捨てホールピペットを使用して、ペトリ皿の左側に0.20gのLexorez200を塗布し、ペトリ皿の右側にS1~S6のいずれかを0.20g塗布した。各試料を手で拡げて直径2センチメートルの円状に被覆した。各円状試料上に標準的なコットンボール(美容用品店で購入)を置いた。コットンボールを試料に押し付けた後、上方に動かして引き離した。各円状試料に残ったコットン繊維量を目視で評価し、写真的手段で記録した。
【0068】
得られた写真を図7に示す。いずれの場合にも、本発明のシリコーン代替物は、シリコーンに付随の特性である粘性の減少又は低粘性(さらっとした肌触り)を示す。
【0069】
実施例7:顔料粉砕物(pigment grind)の評価
【0070】
顔料粉砕物の粘度及び外観を評価することによって、シリコーン代替物が顔料分散剤として作用する能力を評価した。カラー化粧品では高濃度かつ低粘度の顔料分散物が使用されるため、この能力は重要である。
【0071】
下記表に示すように各成分を混ぜ合わせて9種の試験処方物を調製した。
【0072】
【表6】
【0073】
LexFeel700は、Inolex Chemical Company(アメリカ合衆国ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)製のペンタエリスリチル/ヘプタノアート/カプリラート/カプラートのブレンドである。実施例3と同様にしてブレンド物N10、N20、N50、N100、N200、N350を調製した。粉じん雲の状態で顔料が失われることがないように、顔料が湿潤するまで、選択した試験ジメチコン/シリコーン代替物と赤色レーキ顔料とをゆっくり混合した。顔料が完全に分散するまで混合し続けた。スピンドルT-D Helipathスタンドを使用したBrookfield粘度計によって、各試験ブレンド物A~Iの粘度を測定した。結果を図8に示す。
【0074】
データによれば、一連のシリコーン代替物はシリコーンブレンド物に匹敵するものであり、満足できる顔料分散剤が得られやすい。シリコーン代替物ブレンド物は混合し易く、最終粘度も低かった。
【0075】
実施例8:つやの評価
【0076】
シリコーン代替物がつやを付与する能力を、各ジメチコン対応物と比較することにより、特にヒトの毛髪上で評価した。それぞれシリコーンの1種であるジメチコン及びシクロメチコンは両方とも、ヘアスタイリング製品につや機能を加えるために日常的に使用されているが、多くの場合、毛髪に蓄積され、さらに環境に流出してしまうと分解されない。下記表に示すように、試験処方物A~Lをそれぞれ各成分を混合して調製した。
【0077】
【表7】
【0078】
実施例3と同様にしてブレンド物N10、N20、N50、N100、N200及びN350を調製した。
【0079】
人毛(ヴァージンヘア)を切断して13房の8cm片とした。各房を洗髪し、脱イオン水で1分間すすいだ。各房に試験処方物A~Lのうち1つを噴霧し、1房については未処理のままにした。各房を28cm円筒の周りに巻き付け、空気乾燥した。つやを評価するため、電源ランプ式作業灯から1メートル離れた平らな表面に円筒を置いた。他の全ての光源を排除した。房を付けた円筒を電源ランプ式作業灯で照らした。毛髪の写真を撮り、つやの帯域幅を測定した。集めたデータを図9にグラフで示す。それらのデータによれば、シリコーン代替物は、各ジメチコン対応物と類似したつやを毛髪に与え、高光沢の仕上がりにできるため、各ジメチコン対応物に匹敵するものであると結論付けることができる。
【0080】
実施例9:天然皮膚保湿ローション
【0081】
本発明のシリコーン代替物を使用して天然皮膚保湿ローションを調製する。その処方に使用した成分を下記表に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
A相の成分を混合し、80℃まで加熱する。C相の成分を互いに事前混合し、その後、加熱したA相の混合物に添加し、プロペラ型撹拌機で混合する。A/C混合物を80℃まで加熱する。B相の成分を事前混合する。A/C混合物が80℃になったら、A/C混合物を、事前に混合しておいたB相の混合物に添加し、プロペラ型撹拌機で混合する。処方物全体が均一に混ざるまで混合し続ける。混合を続けながら処方物を室温まで冷却する。
【0084】
評価において、このローションは、25℃のpHが5.82、25℃のBrookfield粘度が39,000cpsであって、ジメチコンを含有するローションと類似した、さらっとした肌触りと顔料分散能の両方を有すると判断される。
【0085】
実施例10:制汗剤スティック
【0086】
本発明の代替物を使用して制汗剤スティック処方物を調製する。調製に使用した成分を以下に示す。
【0087】
【表9】
【0088】
プロペラ型撹拌機で適度に撹拌してA相の成分を混合し、80℃まで加熱する。次に、温度を保ちながらB相の各成分を別々にA相の混合物に添加する。プロペラ型撹拌機で穏やかに撹拌しながら混合を行う。最終混合物を室温まで冷却する。
【0089】
得られた制汗剤製品はシリコーンを含有していないが、シクロメチコン含有処方物のさらっとした肌触り及び滑らかな使用感を示す。
【0090】
実施例11:天然リップステイン
【0091】
本発明の代替物を使用して天然リップステイン処方物を調製する。調製に使用した成分を以下に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
A相の成分を混ぜ合わせ、プロペラ型撹拌機で混合しながら約80~85℃に加熱する。B相顔料を粉砕した後、A相に添加する。均一に見えるようになるまで混合物を混合する。熱から外し、C相の成分を添加する。最終混合物を冷却し、容器に詰める。
【0094】
評価において、この処方物は、25℃のpHが5.25、Brookfield粘度が82,000cpsであることが確認される。また、このリップステイン処方物は、ジメチコン含有処方物のような延展性及び肌触り特性を示すことが分かる。
【0095】
実施例12:シリコーン非含有天然毛髪用コンディショナー
【0096】
本発明の代替物を使用してシリコーン非含有天然毛髪用コンディショナーを調製する。調製に使用した成分を以下に示す。
【0097】
【表11】
【0098】
コンディショナーを調製するために、A相の成分を混ぜ合わせ、プロペラ型撹拌機で混合しながら75℃まで加熱する。それとは別に、A相の成分を混ぜ合わせ、さらにプロペラ型撹拌機で混合しながら75℃まで加熱する。熱から外し、B相をA相に添加する。混合物が35℃まで冷却されたら、C相の成分を添加する。混合しながら処方物全体を室温まで冷却する。
【0099】
処方物の評価から、この処方物は、25℃のpHが3.85、25℃のBrookfield粘度が35,000cpsであることが確認される。また、このコンディショナーは、シリコーン含有処方物に匹敵する触り心地及びつやを毛髪に与える。
【0100】
その広範な発明概念から逸脱することなく、上記実施形態に変更を加えることができることは当業者に認識されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の改変形態を含むことを意図したものであると理解される。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9