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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】PD-1に対するヒト抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240930BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240930BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240930BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20240930BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240930BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/16
C07K16/28
C12P21/08
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123661
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2020091219の分割
【原出願日】2015-01-23
(65)【公開番号】P2022160558
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/014,181
(32)【優先日】2014-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/930,576
(32)【優先日】2014-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・パパドポーロス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ギャヴィン・サーストン
(72)【発明者】
【氏名】エラ・イオッフェ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・ブローヴァ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-340714(JP,A)
【文献】Cancer Med.,2013年,vol.2, no.5,pp.662-673
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K16/00-15/46
C12N15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド分子のセットであって、
(i)ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域(HCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む、第1の単離されたポリヌクレオチド分子であって、該HCVRは、3つの重鎖相補性決定領域(CDRs)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む配列番号162と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、それぞれ、配列番号164、166、および168のアミノ酸配列を含む、該第1の単離されたポリヌクレオチド分子;および
(ii)ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域(LCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2の単離されたポリヌクレオチド分子であって、該LCVRは、3つの軽鎖CDRs(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む配列番号170と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ、配列番号172、174、および176のアミノ酸配列を含む、該第2の単離されたポリヌクレオチド分子
を含む、上記単離されたポリヌクレオチド分子のセット。
【請求項2】
ヒトプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを発現するベクターのセットであって、
(i)請求項1に記載の第1のポリヌクレオチド分子を含む第1のベクター;および
(ii)請求項1に記載の第2のポリヌクレオチド分子を含む第2のベクター
を含む、上記ベクターのセット。
【請求項3】
請求項2に記載のベクターのセットを発現する単離された宿主細胞。
【請求項4】
抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該抗体または抗原結合フラグメントの産生が可能となる条件下で、請求項3に記載の宿主細胞を増殖させること、およびそのようにして産生される該抗体または抗原結合フラグメントを回収することを含む、上記方法。
【請求項5】
宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗体またはその抗原結合フラグメントを、許容し得る担体を含む医薬組成物として製剤化することをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の方法によって得られる、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
ヒトプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子のセットであって、
(i)ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む、第1の単離された核酸分子であって、HCVRは、配列番号163のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR1(HCDR1)、配列番号165のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR2(HCDR2)、および配列番号167のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR3(HCDR3)を含む、上記第1の単離された核酸分子、および
(ii)ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域(LCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む、第2の単離された核酸分子であって、LCVRは、配列番号171のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号173のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR2(LCDR2)、および配列番号175のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、上記第2の単離された核酸分子を含む、
上記単離された核酸分子のセット。
【請求項9】
HCDR1は配列番号164のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号166のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号168のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項10】
HCVRは配列番号162のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項11】
第1の核酸分子は、配列番号161と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項12】
第1の核酸分子は、配列番号161のヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項13】
LCDR1は配列番号172のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号174のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号176のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項14】
LCVRは配列番号170のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項15】
第2の核酸分子は、配列番号169と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項16】
第2の核酸分子は、配列番号169のヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の単離された核酸分子のセット。
【請求項17】
(a)ヒトプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、HCVRは、配列番号163のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR1(HCDR1)、配列番号165のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR2(HCDR2)、および配列番号167のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR3(HCDR3)を含む核酸分子;および
(b)ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域(LCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、LCVRは、配列番号171のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号173のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR2(LCDR2)、および配列番号175のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR3(LCDR3)を含む核酸分子、
を含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項19】
哺乳類細胞または原核細胞である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはエシェリキア・コリ(E.coli)である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項21】
抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法は、該抗体またはその抗原結合フラグメントの産生が可能となる条件下で、請求項18に記載の宿主細胞を増殖させることを含み、該宿主細胞は、請求項17に記載のHCVRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子および請求項17に記載のLCVRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の両方を含む、上記方法。
【請求項22】
抗体またはその抗原結合フラグメントを、許容し得る担体を含む医薬組成物として製剤化することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1の核酸分子および第2の核酸分子を含む組成物であって、
第1の核酸分子は、ヒトプログラム細胞死1(PD-1)タンパク質に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、HCVRは、配列番号163のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR1(HCDR1)、配列番号165のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR2(HCDR2)、および配列番号167のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖CDR3(HCDR3)を含み、
第2の核酸分子は、ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域(LCVR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、LCVRは、配列番号171のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号173のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR2(LCDR2)、および配列番号175のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、上記組成物。
【請求項24】
HCVRは配列番号162のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号170のアミノ
酸配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節受容体プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合するヒト抗体およびヒト抗体の抗原結合フラグメントならびにその抗体を用いる治療および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム細胞死1(PD-1)(CD279とも呼ばれる)は、活性化されたT細胞およびB細胞、ナチュラルキラー細胞、ならびに単球上で発現される288個のアミノ酸のタンパク質受容体である。PD-1は、T細胞共阻害受容体のCD28/CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原)/ICOS(誘導性共刺激分子)ファミリーのメンバーである(非特許文献1)。PD-1の主要な機能は、免疫応答を減弱させることである(非特許文献2)。PD-1は、2つのリガンド、PD-リガンド1(PD-L1)およびPD-L2を有する。PD-L1(CD274、B7H1)は、CD4およびCD8T細胞、マクロファージ系列細胞、抹消組織、ならびに腫瘍細胞、ウイルス性に感染した細胞、および自己免疫組織細胞のようなリンパ組織上および非リンパ組織上の両方で広く発現する。PD-L2(CD273、B7-DC)は発現がPD-L1よりも制限されており、活性化された樹状細胞およびマクロファージ上で発現される(非特許文献3)。PD-L1は、メラノーマ、グリオーマ、非小細胞肺がん、頭部および頸部の扁平上皮癌、白血病、膵臓がん、腎細胞癌、ならびに肝細胞癌を含む、大抵のヒトがんにおいて発現され、ほぼ全てのがんタイプにおいて誘導性である(非特許文献4)。PD-1がそのリガンドに結合すると、がん、ウイルス感染症、および自己免疫疾患のような疾患において、T細胞増殖およびサイトカイン分泌が低減され、体液性および細胞性免疫応答が損なわれる。免疫抑制を逆転させるためのPD-1結合の遮断は、自己免疫、ウイルスおよび腫瘍免疫療法において研究されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。
【0003】
T細胞共刺激および共阻害分子(共シグナル伝達分子とまとめて命名される)は、T細胞活性化、サブセット分化、エフェクター機能および生存の制御において重大な役割を果たす(非特許文献1)。T細胞受容体による抗原提示細胞上の同族ペプチド-MHC複合体の認識後、共シグナル伝達受容体は、免疫シナプスにおいてT細胞受容体と共存し、ここで、TCRシグナル伝達と協力して、T細胞活性化および機能を促進するか、または阻害する(非特許文献8)。最終免疫応答は、共刺激シグナルと共阻害シグナルの間のバランス(「免疫チェックポイント」)により制御される(非特許文献9)。PD-1は、抹消T細胞寛容の仲介および自己免疫の回避において1つのかかる「免疫チェックポイント」として機能する。PD-1は、PD-L1またはPD-L2に結合し、T細胞活性化を阻害する。T細胞活性化を阻害するPD1の能力は、免疫応答を逃れるために慢性ウイルス感染症および腫瘍により利用される。慢性ウイルス感染症において、PD-1はウイルス特異的T細胞上で高度に発現され、これらのT細胞は「疲弊」し、エフェクター機能および増殖能が喪失する(非特許文献10)。PD-L1は広範囲の腫瘍上で発現され、動物モデルにおける研究は、腫瘍上のPD-L1が、T細胞活性化および腫瘍細胞の溶解を阻害し、腫瘍特異的T細胞の死の増大を導くことを示した。PD-1:PD-L1システムはまた、誘導されたT制御性(Treg)細胞発生において、およびTreg機能の維持において重要な役割を果たす(非特許文献11)。
【0004】
PD-1は、自己免疫、腫瘍免疫、および感染免疫において重要な役割を果たすので、免疫療法の理想的な標的である。モノクローナル抗体を含む、アンタゴニストでのPD-1の遮断は、がんおよび慢性ウイルス感染症の処置において研究されている(非特許文献12)。
【0005】
PD-1に対するモノクローナル抗体は、当該技術分野で公知であり、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5において、ならびに特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11および特許文献12において記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8008449号
【文献】米国特許第8168757号
【文献】米国特許出願公開第20110008369号
【文献】米国特許出願公開第20130017199号
【文献】米国特許出願公開第20130022595号
【文献】WO2006121168
【文献】WO20091154335
【文献】WO2012145493
【文献】WO2013014668
【文献】WO2009101611
【文献】EP2262837
【文献】EP2504028
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chenら2013年、Nat.Rev.Immunol.13:227~242頁
【文献】Riley2009年、Immunol.Rev.229:114~125頁
【文献】Dongら1999年、Nature Med.
【文献】ZouおよびChen2008年、Nat.Rev.Immunol.8:467~77頁
【文献】Ribas2012年、NEJM366:2517~2519頁
【文献】Watanabeら2012年、Clin.Dev.Immunol.2012巻、論文ID:269756
【文献】Wangら2013年、J.Viral Hep.20:27~39頁
【文献】Fliesら2011年、Yale J.Biol.Med.84:409~421頁
【文献】Pardoll2012年、Nature12:252~264頁
【文献】Freeman2008年、PNAS105:10275~10276頁
【文献】Franciscoら2010年、Immunol.Rev.236:219~242頁
【文献】Sheridan2012年、Nature Biotechnology30:729~730頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、PD-1に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。本発明の抗体は、とりわけ、PD-1を発現するT細胞を標的化するのに、およびPD-1活性を調節するのに有用である。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、PD-1活性を阻害もしくは中和するのに、および/または例えば、T細胞により仲介される殺傷が
有益であるか、もしくは望ましい状況下で、T細胞活性化を刺激するのに有用である。代わりの実施形態において、抗体は、PD-1結合および/または活性を増強し、T細胞活性化を阻害するために用いられる。本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、例えば、免疫応答を調節するため、および/または腫瘍細胞、自己免疫組織細胞、もしくはウイルス性に感染した細胞のような特定の細胞タイプに抗体を標的化するための多特異性抗原結合分子の部分として含まれる。抗体は、がん、ウイルス感染症、および自己免疫疾患のような疾患または障害の処置において有用である。
【0009】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であるか、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)、もしくはscFvフラグメント)のみを含み、機能性に影響するように、例えば、残りのエフェクター機能を除去するように修飾される(Reddyら、2000年、J.Immunol.164:1925~1933頁)。ある種の実施形態において、抗体は二重特異性である。
【0010】
第1の態様において、本発明は、PD-1に特異的に結合する、単離された組み換えモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、抗体は完全にヒトである。本発明の典型的な抗PD-1抗体を、本明細書における表1~3に挙げる。表1に、典型的な抗PD-1抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列識別名を記載する。表2に、典型的な抗PD-1抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別名を記載する。表3に、典型的な抗PD-1抗体の重鎖および軽鎖配列のアミノ酸配列識別名を記載する。
【0011】
本発明は、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0013】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかと対形成される表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、HCVRとLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態によると、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/202、218/202、226/202、234/202、242/202、250/202、258/202、266/202、274/202、282/202、290/202、298/186、306/186、および314/186からなる群より選択される。ある種の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号130/138(例えば、H2M7795N)、162/170(例えば、H2M7798N)、234/202(例えば、H4xH9048P)、または314/186(例えば、H4xH9008P)の1つから選択される。
【0014】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR1アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR2アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0017】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR1アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0018】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR2アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0019】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0020】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対形成される表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含む、HCDR3とLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態によると、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかに含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号136/144(例えば、H2M7795N)、168/176(例えば、H2M7798N)、240/208(例えば、H4xH9048P)、および320/192(例えば、H4xH9008P)からなる群より選択される。
【0021】
本発明は、表3に挙げられるHCアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
本発明はまた、表3に挙げられるLCアミノ酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0023】
本発明はまた、表3に挙げられるLCアミノ酸配列のいずれかと対形成される表3に挙げられるHCアミノ酸配列のいずれかを含む、HCとLCアミノ酸配列対(HC/LC)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態によると、本発明は、表3に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかに含有されるHC/LCアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、HC/LCアミノ酸配列対は、配列番号330/331、332/333、334/335、および336/337からなる群より選択される。
【0024】
本発明はまた、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかに含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態において、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号132-134-136-140-142-144(例えば、H2M7795N);164-166-168-172-174-176(例えば、H2M7798N);236-238-240-204-206-208(例えば、H4xH9048P);および316-318-320-188-190-192(例えば、H4xH9008P)からなる群より選択される。
【0025】
関連する実施形態において、本発明は、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかにより定義される、HCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、本発明は、配列番号130/138(例えば、H2M7795N);162/170(例えば、H2M7798N);234/202(例えば、H4xH9048P);および314/186(例えば、H4xH9008P)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定する方法および技術は、当該技術分野において周知であり、これを用いて、本明細書において開示される特定されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定することができる。CDRの境界を同定するために用いられる典型的な慣例は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義を含む。一般的な用語において、Kabat定義は配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造上のループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatとChothiaのアプローチの間で妥協したものである。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological
Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268~9272(1989年)を参照。公的データベースも、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0026】
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗PD-1抗体を含む。ある実施形態において、不所望なグリコシル化部位を取り除くための修飾が有用であるか、またはフコース部分を欠く抗体は、オリゴ糖鎖上に提示して、例えば、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)機能が増大される(Shieldら(2002年)JBC277:26733頁を参照)。他の適用において、ガラクトシル化という修飾は、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために成される。
【0027】
本発明はまた、PD-1への特異的結合について、HCVRのCDRおよびLCVRの
CDRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する抗体ならびにその抗原結合フラグメントも提供し、ここで、HCVRおよびLCVRそれぞれは、表1に挙げられるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
本発明はまた、PD-L1またはPD-L2へのPD-1結合を遮断する単離された抗体およびその抗原結合フラグメントも提供する。ある実施形態において、PD-L1へのPD-1結合を遮断する抗体またはその抗原結合フラグメントは、PD-L1と同一のPD-1上のエピトープに結合するか、もしくはPD-L1と異なるPD-1上のエピトープに結合する。
【0029】
代わりの実施形態において、本発明は、PD-L1へのPD-1結合を刺激する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、本発明は、PD-1に結合する、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体またはその抗原結合フラグメントは、PD-L1へのPD-1結合を増強する。ある実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2、98、および250からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVRのCDR、ならびに配列番号10、106、および202からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRのCDRを含む。ある実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10(例えば、H1M7789N)、98/106(例えば、H2M7791N)、および250/202(例えば、H4H9068P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0030】
本発明はまた、ヒトまたは他の種由来のPD-1に特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントも提供する。ある種の実施形態において、抗体は、ヒトPD-1に、および/またはカニクイザルPD-1に結合する。
【0031】
本発明はまた、PD-1への結合について、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合フラグメントと交差競合する抗体ならびにその抗原結合フラグメントも提供し、ここで、HCVRおよびLCVRそれぞれは、表1に挙げられるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0032】
1つの実施形態において、本発明は、次の特徴のうちの1つまたはそれ以上を有する、単離された抗体または抗原結合フラグメントを提供する:(a)PD-L1またはPD-L2へのPD-1の結合を遮断する;(b)ヒトPD-1および/またはカニクイザルPD-1に特異的に結合する;(c)PD-1により誘導されるT細胞下方制御を遮断し、T細胞シグナル伝達をレスキューする;(d)腫瘍成長を抑制し、大腸がんを有する対象において生存を増大させる;(e)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を阻害する;ならびに(f)MLRアッセイにおいてIL-2および/またはインターフェロン-ガンマ分泌を増大する。
【0033】
ある実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、アゴニスト方法においてPD-1に特異的に結合する、すなわち、PD-1結合および/もしくは活性を増強するか、または刺激し;他の実施形態において、抗体は、アンタゴニスト方法においてPD-1に特異的に結合する、すなわち、PD-1をそのリガンドへの結合から遮断する。
【0034】
ある種の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、PD-1への第1の結合特異性、および第2の標的エピトープについての第2の結合特異性を含む、二重特異性である。第2の標的エピトープは、PD-1上または異なるタンパク質上の別のエピトープである。ある種の実施形態において、標的エピトープは、異なるT細胞、B細胞、腫瘍細胞、自己免疫組織細胞、またはウイルス性に感染した細胞を含む異なる細胞
上にある。
【0035】
第2の態様において、本発明は、抗PD-1抗体またはその部分をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0036】
本発明はまた、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0037】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0038】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0039】
本発明はまた、表1に挙げられるHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0040】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR1核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0041】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR2核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0042】
本発明はまた、表1に挙げられるLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し;ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるLCDR3核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子も提供し、ここで、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、ここで、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかにより定義される通りである。
【0044】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子も提供し、ここで、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、ここで、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に挙げられる典型的な抗PD-1抗体のいずれかにより定義される通りである。
【0045】
本発明はまた、HCVRおよびLCVR両方をコードする核酸分子も提供し、ここで、HCVRは、表1に挙げられるHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、ここで、LCVRは、表1に挙げられるLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。ある種の実施形態において、核酸分子は、表2に挙げられるHCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列、および表2に挙げられるLCVR核酸配列のいずれか、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明のこの態様によるある種の実施形態において、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、ここで、HCVRおよびLCVRはいずれも、表1に挙げられる同一の抗PD-1抗体に由来する。
【0046】
本発明は、表3に挙げられる重鎖アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供する。本発明はまた、表3に挙げられる軽鎖アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。
【0047】
本発明はまた、重鎖(HC)および軽鎖(LC)両方をコードする核酸分子も提供し、ここで、HCは、表3に挙げられるHCアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、ここで、LCは、表3に挙げられるLCアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0048】
関連する態様において、本発明は、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現する能力を有する組み換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載のHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組み換え発現ベクターを含む。本発明はまた、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖を含むポリペプチドを発現する能力がある組み換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表3に記載の重鎖または軽鎖配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組み換え発現ベクターを含む。かかるベクターが導入される宿主細胞、ならびに抗体もしくは抗体フラグメントの産生が可能となる条件下で宿主細胞を培養すること、ならびに産生される抗体および抗体フラグメントを回収することにより、抗体またはその部分を産生する方法もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0049】
第3の態様において、本発明は、PD-1に特異的に結合する第1の抗原結合特異性、ならびに腫瘍細胞特異的細胞、自己免疫組織特異的抗原、感染した細胞特異的抗原、T細胞共阻害分子、T細胞受容体、Fc受容体、PD-L1、およびPD-1からなる群より選択される抗原に特異的に結合する第2の抗原結合特異性を含む多特異性抗原結合分子、およびその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、第1の抗原結合特異性は、表1におけるHCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRに
由来する3つのCDR、および表1におけるLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRに由来する3つのCDRを含む。1つの実施形態において、第1の抗原結合特異性は、PD-L1の細胞外ドメインを含む。第2の抗原結合特異性は、PD-1と同一の細胞上、または同一の組織タイプもしくは異なる組織タイプの異なる細胞上の抗原を標的とする。例えば、多特異性抗原結合分子はT細胞に結合し、ここで、第1の抗原結合特異性は、PD-1に特異的に結合し、第2の抗原結合特異性は、T細胞上のT細胞受容体に結合する。あるいは、別の実施形態において、第1の抗原結合特異性は、T細胞上のPD-1に特異的に結合し、第2の抗原結合特異性は、B細胞、またはマクロファージ、または抗原提示細胞上の抗原/受容体に標的化される。ある種の実施形態において、第2の抗原結合特異性は、自己免疫組織に関連する(associated with)抗原に対するもの
である。1つの実施形態において、第1の抗原結合特異性は、PD-L1の細胞外ドメインを含み、第2の抗原結合特異性は、PD-1上の別のエピトープに結合する。ある種の実施形態において、第1の抗原結合特異性は、より低い親和性で、例えば、10-7Mより大きい、10-6Mより大きい、10-5Mより大きい、または10-4Mより大きいKでPD-1に結合する。
【0050】
第4の態様において、本発明は、PD-1に特異的に結合する組み換えヒト抗体またはそのフラグメント、および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗PD-1抗体および第2の治療剤の併用である、組成物を特徴付ける。1つの実施形態において、第2の治療剤は、抗PD-1抗体と有利に併用される任意の剤である。抗PD-1抗体と有利に併用される典型的な剤は、PD-1に結合し、および/もしくはPD-1シグナル伝達を調節する他の剤(他の抗体またはその抗原結合フラグメントなどを含む)、ならびに/またはPD-1を直接的に結合しないが、それにもかかわらず、免疫細胞活性化を調節する剤を含むが、これらに限定されない。本発明の抗PD-1抗体を含む、さらなる併用療法および同時製剤は、本明細書において他の場所で開示される。
【0051】
第5の態様において、本発明は、治療上有効量の本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において免疫応答を調節する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、対象に、有効量の、PD-1に結合し、PD-L1へのPD-1結合を遮断する本発明の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む、対象において免疫応答を増強する方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、対象においてT細胞刺激を刺激するか、または増強する方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の遮断抗体またはその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、対象においてT制御性(Treg)細胞を阻害する方法を提供する。ある種の実施形態において、それを必要とする対象は、がんもしくはウイルス感染症のような疾患または障害に罹患する。代わりの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の活性化抗体もしくはそのフラグメントを、それを必要とする対象に投与することを含む、対象においてT細胞活性化を阻害するか、または抑制する方法を提供する。1つの実施形態において、対象は、自己免疫疾患または障害に罹患する。
【0052】
第6の態様において、本発明は、本発明の抗PD-1抗体もしくは抗体の抗原結合部分を用いた、対象においてがん、自己免疫疾患、もしくはウイルス感染症のような疾患または障害を処置する治療方法を提供し、ここで、治療方法は、治療上有効量の本発明の抗体もしくは抗体のフラグメントを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。処置される障害は、PD-1活性もしくはシグナル伝達の刺激もしくは阻害により、好転されるか、改善されるか、阻害されるか、もしくは予防される任意の疾患または状態である。ある種の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、第2の治療剤との併用でそれを必要とする対象に投与される。第2の治療剤は、別の
T細胞共阻害分子に対する抗体、腫瘍細胞抗原に対する抗体、T細胞受容体に対する抗体、Fc受容体に対する抗体、ウイルス性に感染した細胞上のエピトープに対する抗体、自己免疫組織抗原に対する抗体、PD-L1に対する抗体、細胞毒性剤、抗がん薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、放射線療法、免疫抑制剤、および当該技術分野において公知の任意の他の薬物または療法からなる群より選択される。ある種の実施形態において、第2の治療剤は、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントに関連する何らかの副作用が生じるようなら、かかる潜在的副作用に対抗するか、または低減するのを助ける剤である。
【0053】
ある種の実施形態において、本発明は、腫瘍成長を抑制する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、がん患者の生存を増強する方法を提供する。がんの例は、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、頭部および頸部の扁平上皮癌、腎細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、前立腺がん、ならびに大腸がんを含む原発性ならびに/または再発性がんを含むが、これらに限定されない。方法は、治療上有効量の本発明の抗PD-1抗体を含む医薬組成物を、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ベバシズマブ)、アンジオポエチン2(Ang2)阻害剤(例えば、ネスバクマブのような抗Ang2抗体)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)阻害剤(例えば、イピリムマブ)、化学療法剤、および放射線療法からなる群より選択される第2の治療剤との併用で投与することを含む。がんの処置において用いるための本発明の抗PD-1抗体との併用で用いられるさらなる療法/治療剤のさらなる例は、本明細書において他の場所で記載される。
【0054】
抗体またはそのフラグメントは、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内投与される。抗体またはそのフラグメントは、対象の体重1kg当たり約0.1mg~体重1kg当たり約100mgの用量で投与される。
【0055】
本発明はまた、PD-1結合および/もしくはシグナル伝達の遮断もしくは増強から恩恵を受ける疾患もしくは障害を処置するための医薬の製造における本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントの使用も含む。
【0056】
他の実施形態は、次の詳細な説明の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1-1】本明細書における実施例8において記載されるルシフェラーゼベースのPD-1バイオアッセイの模式図である。パネルA:不活性なジャーカット細胞;パネルB:ジャーカット細胞は、CD3×CD20二重特異性抗体を通じたT細胞受容体(TCR)クラスター形成により活性化される;パネルC:PD-1活性化は、活性化ジャーカット細胞において応答を減弱する;パネルD:遮断PD-1は、活性化ジャーカット細胞において応答をレスキューする。
図1-2】図1-1の続き
図2】0日において結腸-26腫瘍細胞を移植され、3、6、10、13、および19日における注射により、示した分子の組み合わせで処置されたマウスについての腫瘍成長および生存結果を説明する図である(「早期処置腫瘍モデル」)。グラフは、移植後種々の時間点において、異なる実験群についての腫瘍体積(mm)を示す。X軸に沿った上向きの矢印は、処置注射のタイミングを示す。本明細書において他の場所で記載される通り、「mIgG2a」はIgG2アイソタイプ対照であり;「Fc」はヒトFc対照であり;「VEGF Trap」はアフリベルセプトであり;「抗PD-1」は、抗マウスPD-1クローンRPMI-14であり;「抗PD-L1」は抗PD-L1モノクローナル抗体である。
図3】0日において結腸-26腫瘍細胞を移植され、3、6、10、13、および19日における注射により、示した分子の組み合わせで処置されたマウスについての腫瘍成長および生存結果を説明する図である(「早期処置腫瘍モデル」)。グラフは、移植の28日後において、それぞれの実験群における個々のマウス腫瘍体積(mm)を示す。本明細書において他の場所で記載される通り、「mIgG2a」はIgG2アイソタイプ対照であり;「Fc」はヒトFc対照であり;「VEGF Trap」はアフリベルセプトであり;「抗PD-1」は抗マウスPD-1クローンRPMI-14であり;「抗PD-L1」は抗PD-L1モノクローナル抗体である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本方法が記載される前に、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に制限されず、方法および条件自体が変動することは理解されるべきである。本明細書において用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであることも理解されるべきであり、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ制限されるので、制限であることは意図されない。
【0059】
別段定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または均等な任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において用いられるが、好ましい方法および材料がここで記載される。本明細書において述べられる全ての刊行物は、全体として参照によって本明細書に組み入れられる。
【0060】
用語「PD-1」は、CD279としても公知の、プログラム細胞死1タンパク質、T細胞共阻害分子を指す。全長PD-1のアミノ酸配列は、GenBankにおいて受託番号NP_005009.2として提供され、本明細書において配列番号327としても言及される。用語「PD-1」はまた、配列番号321、322、323、または324のアミノ酸配列を有するPD-1のタンパク質変異体も含む。用語「PD-1」は、組み換えPD-1またはそのフラグメントを含む。用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、もしくはROR1のようなシグナル配列に結合したPD-1またはそのフラグメントも包含する。例えば、用語は、C93S変更を有する全長PD-1のアミノ酸残基25~170に結合した、C末端におけるマウスFc(mIgG2a)もしくはヒトFc(hIgG1)を含む、配列番号323または324により例示される配列を含む。配列番号321により例示されるタンパク質変異体は、全長PD-1のアミノ酸残基25~170に結合した、C末端におけるヒスチジンタグを含む。非ヒト種由来であると特定されない限り、用語「PD-1」はヒトPD-1を意味する。
【0061】
PD-1は、T細胞共阻害分子のCD28/CTLA-4/ICOSファミリーのメンバーである。PD-1は、IgV様の細胞外N末端ドメイン、膜貫通型ドメイン、ならびに免疫受容体チロシンベースの阻害性(ITIM)モチーフ、および免疫受容体チロシンベースのスイッチ(ITSM)モチーフを含有する細胞内ドメインを有する288個のアミノ酸のタンパク質である(Chattopadhyayら2009年、Immunol.Rev.)。PD-1受容体は、2つのリガンド、PD-リガンド-1(PD-L1)およびPD-L2を有する。
【0062】
用語「PD-L1」は、CD274およびB7H1としても公知の、PD-1受容体のリガンドを指す。全長PD-L1のアミノ酸配列は、GenBankにおいて受託番号NP_054862.1として提供され、本明細書において配列番号328としても言及される。用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、もしくはROR1のようなシグナル配列に結合したPD-L1またはそのフラグメントも包含する。例えば、用語は、全長PD-L1のアミノ酸残基19~239に結合した、C末端におけるマ
ウスFc(mIgG2a)もしくはヒトFc(hIgG1)を含む、配列番号325または326により例示される配列を含む。PD-L1は、細胞外IgV様ドメイン、膜貫通型ドメイン、およびおよそ30個のアミノ酸の高度に保存された細胞内ドメインを有する290個のアミノ酸のタンパク質である。PD-L1は、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞)のような多くの細胞上、ならびに造血細胞および非造血細胞(例えば、血管内皮細胞、膵島、および免疫特権の部位)上で構成的に発現される。PD-L1はまた、広範囲の腫瘍、ウイルス性に感染した細胞、および自己免疫組織上でも発現され、免疫抑制環境の成分である(Ribas2012年、NEJM366:2517~2519頁)。
【0063】
本明細書において用いられる用語「T細胞共阻害分子」は、T細胞活性化もしくは抑制を介して免疫応答を調節するリガンドおよび/または受容体を指す。T細胞共シグナル伝達分子としても公知の、用語「T細胞共阻害分子」は、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3、CD223としても公知)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CD-28、2B4、LY108、T細胞免疫グロブリンおよびムチン3(TIM3)、免疫グロブリンおよびITIM(TIGIT;VSIG9としても公知)を有するT細胞免疫受容体、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1;CD305としても公知)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS;CD278としても公知)、T細胞活性化のVドメインIg抑制分子(VISTA)、ならびにCD160を含むが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書において用いられる用語「Fc受容体」は、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好塩基球、好中球、および肥満細胞を含む免疫細胞上で見られる表面受容体タンパク質を指し、抗体のFc領域に対する結合特異性を有する。用語「Fc受容体」は、Fcγ受容体[例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、およびFcγRIIIB(CD16b)]、Fcα受容体(例えば、FcαRIまたはCD89)、ならびにFcε受容体[例えば、FcεRI、およびFcεRII(CD23)]を含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書において用いられる用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互結合された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、ならびにその多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合フラグメントを指すことが意図される。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「V」)、ならびに重鎖定常領域(ドメインC1、C2、およびC3を含む)を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「V」)、および軽鎖定常領域(C)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存される領域が散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、高頻度可変性の領域にさらに細分される。それぞれのVならびにVは、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された、3つのCDRおよび4つのFRを含む。本発明のある種の実施形態において、抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であるか、または天然または人工的に修飾される。アミノ酸連続配列は、2つまたはそれ以上のCDRの隣り合った解析に基づき定義される。
【0066】
1つもしくはそれ以上のCDR残基の置換、または1つもしくはそれ以上のCDRの除外も可能である。1つまたは2つのCDRを省いても結合する抗体が、科学文献において記載されている。Padlanら(1995年FASEB J.9:133~139頁)は、公開された結晶構造に基づき、抗体とその抗原の間の接触領域を解析し、CDR残基の約5分の1~3分の1のみが抗原と実際に接触すると結論付けた。Padlanはまた
、1つまたは2つのCDRが、抗原と接触したアミノ酸を有していない、多くの抗体を見出した(Vajdosら2002年J Mol Biol320:415~428頁も参照)。
【0067】
抗原と接触しないCDR残基は、従前の研究(例えば、CDRH2における残基H60~H65はしばしば必要とされない)において、ChothiaCDRの外側にあるKabatCDRの領域から、分子モデリングにより、および/または実験的に同定される。CDRまたはその残基が除外されるなら、それは、別のヒト抗体配列または共通のかかる配列における対応する位置を占めるアミノ酸で通常置換される。置換するためのCDRおよびアミノ酸内の置換のための位置はまた、実験的に選択される。実験的置換は、保存的または非保存的置換である。
【0068】
本明細書において開示される完全ヒト抗PD-1モノクローナル抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠損を含む。かかる変異は、本明細書において開示されるアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することにより、容易に確かめられる。本発明は、本明細書において開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合フラグメントを含み、ここで、1つもしくはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1個またはそれ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基に、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基に、または対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換に変異される(かかる配列変更は、本明細書において「生殖系列変異」としてまとめて言及される)。当業者は、本明細書において開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つもしくはそれ以上の個々の生殖系列変異またはその組み合わせを含む、多数の抗体および抗原結合フラグメントを容易に作り出す。ある種の実施形態において、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークならびに/またはCDR残基の全てを変異させて、抗体が由来する元の生殖系列配列において見出される残基に戻す。他の実施形態において、ある種の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内、もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内で見出される変異した残基、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内で見出される変異した残基のみを変異させて、元の本来の生殖系列配列に戻す。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基の1つまたはそれ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列と異なる、生殖系列配列)の対応する残基に変異される。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2つもしくはそれ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有し、例えば、ここで、ある種の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異され、一方、元の生殖系列配列と異なるある種の他の残基は、維持されるか、もしくは異なる生殖系列配列の対応する残基に変異される。一旦得られると、1つまたはそれ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗原結合フラグメントは、結合特異性の好転、結合親和性の増大、アンタゴニストもしくはアゴニスト生物学的特性の好転または増強(場合によっては)、免疫原性の低減などのような1つまたはそれ以上の所望の特性について容易に試験される。この一般的な方法において得られる抗体および抗原結合フラグメントは、本発明に包含される。
【0069】
本発明はまた、1つもしくはそれ以上の保存的置換を有する、本明細書において開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む完全ヒト抗PD-1モノクローナル抗体も含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書において開示されるHCVR、LCVR、および/もしくはCDRアミノ酸配列のいずれかに関連する10もしくはそれ以下、8つもしくはそれ以下、6つもしくはそれ以下、4つもしくはそれ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVR、ならびに/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PD-1抗体を含む。
【0070】
本明細書において用いられる用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR、特に、CDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的変異誘発、またはインビボでの体細胞変異により導入される変異)を含む。しかしながら、本明細書において用いられる用語「ヒト抗体」は、別の哺乳類種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトFR配列に移植されている、mAbを含むことは意図されない。用語は、非ヒト哺乳類において、または非ヒト哺乳類の細胞において組み換え的に産生される抗体を含む。用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生じた抗体を含むことは意図されない。
【0071】
本明細書において用いられる用語「組換え体」は、例えば、DNAスプライシングおよび遺伝子導入発現を含む、組み換えDNA技術として当該技術分野において公知の技術もしくは方法により、作製されるか、発現されるか、単離されるか、もしくは得られる、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを指す。用語は、非ヒト哺乳類(遺伝子導入非ヒト哺乳類、例えば、遺伝子導入マウスを含む)、もしくは細胞(例えば、CHO細胞)発現系において発現されるか、または組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体を指す。
【0072】
本明細書において用いられる用語「多特異性抗原結合分子」は、二重特異性、三重特異性、または多特異性抗原結合分子、およびその抗原結合フラグメントを指す。多特異性抗原結合分子は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または1つより多くの標的ポリペプチドのエピトープに特異的な抗原結合ドメインを含有する。多特異性抗原結合分子は、単一の多機能ポリペプチドであるか、または互いに共有結合または非共有結合する、2つもしくはそれ以上のポリペプチドの多量体複合体である。用語「多特異性抗原結合分子」は、別の機能分子、例えば、別のペプチドもしくはタンパク質に結合されるか、または共発現される、本発明の抗体を含む。例えば、抗体またはそのフラグメントは、第2の結合特異性を有する二重特異性もしくは多特異性抗原結合分子を作り出すためのタンパク質もしくはそのフラグメントのような、1つまたはそれ以上の他の分子実体に、(例えば、化学的架橋結合、遺伝子融合、非共有結合的会合、もしくはその他により)機能的に結合される。本発明によると、用語「多特異性抗原結合分子」はまた、二重特異性、三重特異性、または多特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも含む。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、別の抗体またはその抗原結合フラグメントに機能的に結合されて、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体が作り出される。本発明の二重特異性および多特異性抗体は、本明細書において他の場所で記載される。
【0073】
用語「特異的に結合する」、または「に特異的に結合する」などは、抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、生理的条件下で比較的安定である抗原との複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-8Mまたはそれ以下の平衡解離定数により特徴付けられる(例えば、Kが小さいほど、より強固な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。本明細書において記載される通り、抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)により同定され、PD-1に特異的に結合する。さらに、PD-1における1つのドメイン、および1つもしくはそれ以上のさらなる抗原に結合する多特異性抗体、またはPD-1の2つの異なる領域に結合する二重特異性抗体は、それにもかかわらず、本明細書において用いられる「特異的に結合する」抗体とみなされる。
【0074】
用語「高い親和性」抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)ま
たは溶液親和性ELISAにより測定される、少なくとも10-7M;好ましくは、10-8M;より好ましくは、10-9M、なおより好ましくは、10-10M、なおより好ましくは、10-11MのKとして表される、PD-1に対する結合親和性を有するそのmAbを指す。
【0075】
用語「スローオフレート」、「Koff」、または「kd」は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)により決定される、1×10-3-1もしくはそれ以下、好ましくは、1×10-4-1もしくはそれ以下の速度定数でPD-1から解離する抗体を意味する。
【0076】
本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、任意の天然に生じる、酵素的に得られる、合成された、または遺伝子操作された、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合フラグメント」、または「抗体フラグメント」は、PD-1に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上のフラグメントを指す。
【0077】
特定の実施形態において、本発明の抗体または抗体フラグメントは、リガンド、もしくは抗生物質、第2の抗PD-1抗体、もしくは腫瘍特異的抗原、自己免疫組織抗原、ウイルス性に感染した細胞抗原、Fc受容体、T細胞受容体、もしくはT細胞共阻害分子、もしくは免疫毒素のような別の抗原に対する抗体のような治療部分(「免疫複合体」)、もしくはがん、自己免疫疾患、もしくは慢性ウイルス感染症を含む疾患もしくは状態を処置するのに有用な任意の他の治療部分のような部分に結合される。
【0078】
本明細書において用いられる「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体(Ab)が実質的にない抗体(例えば、PD-1に特異的に結合する、単離された抗体またはそのフラグメントは、PD-1以外の抗原に特異的に結合するAbが実質的にない)を指すことが意図される。
【0079】
本明細書において用いられる「遮断抗体」もしくは「中和抗体」(または「PD-1活性を中和する抗体」もしくは「アンタゴニスト抗体」)は、PD-1への結合が、PD-1の少なくとも1つの生物学的活性の阻害をもたらす抗体を指すことが意図される。例えば、本発明の抗体は、PD-L1へのPD-1結合を防ぐか、または遮断する。
【0080】
本明細書において用いられる「活性化抗体」もしくは「増強抗体」(または「アゴニスト抗体」)は、PD-1への結合が、PD-1の少なくとも1つの生物学的活性の増大または刺激をもたらす抗体を指すことが意図される。例えば、本発明の抗体は、PD-L1へのPD-1結合を増大する。
【0081】
本明細書において用いられる用語「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、N.J.)を用いた、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出による、リアルタイムの生体分子相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。
【0082】
本明細書において用いられる用語「K」は、特定の抗体と抗原の相互作用の平衡解離定数を指すことが意図される。
【0083】
用語「エピトープ」は、パラトープとしても公知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する、抗原決定因子を指す。単一の抗原は、1つより多くのエピ
トープを有する。従って、異なる抗体は、抗原上の異なる範囲に結合し、異なる生物学的作用を有する。用語「エピトープ」はまた、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。それはまた、抗体により結合される抗原の領域も指す。エピトープは、構造的または機能的として定義される。機能的エピトープは、一般に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接的に関与するその残基を有する。エピトープはまた立体構造でもあり、すなわち、非直線状のアミノ酸を含む。ある種の実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、リン酸基、またはスルホニル基のような分子の化学的に活性な表面基である決定因子を含み、ある種の実施形態において、特異的な3次元の構造的特徴、および/または特異的な変更特徴を有する。
【0084】
核酸もしくはそのフラグメントに言及している場合、用語「実質的な同一性」または「実質的に同一の」は、適切なヌクレオチド挿入または欠損を伴うかたちで別の核酸(もしくはその相補鎖)と最適に整列されると、以下で考察される通り、FASTA、BLAST、またはGAPのような、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムにより測定される、少なくとも約90%、より好ましくは、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド塩基のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対する実質的な同一性を有する核酸分子は、ある種の例において、参照核酸分子によりコードされるポリペプチドと同一または実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0085】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似の」は、2つのペプチド配列が、例えば、デフォルトギャップウェイトを用いたプログラムGAPまたはBESTFITにより、最適に整列されると、少なくとも90%の配列同一性、なおより好ましくは、少なくとも95%、98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、残基位置は、同一でなく、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なる場合において、類似性の割合または程度は、置換の保存的性質を補正するよう上方調節される。この調節を成す手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994年)Methods Mol.Biol.24:307~331頁を参照(参照によって本明細書に組み入れられる)。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例は、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン、およびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン、およびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸塩、およびグルタミン酸塩、ならびに7)硫黄含有側鎖:システイン、およびメチオニンを含む。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnetら(1992年)Science256:1443~45頁(参照によって本明細書に組み入れられる)において開示されるPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「中程度の保存的」置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有する任意の変化である。
【0086】
ポリペプチドについての配列類似性は、配列解析ソフトウェアを用いて典型的に測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠損、および他の修飾に割り当てられる類似性の測定を用いて、類似の配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、生物の異なる種由来の相同な諸ポリペプチドの間、または野
生型タンパク質とその変異タンパク質の間のような、密接に関連するポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定するためのデフォルトパラメーターで用いられるGAPおよびBESTFITのようなプログラムを含む。例えば、GCG Version 6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、デフォルトまたは推奨パラメーターを用いたFASTA;GCG Version 6.1におけるプログラムを用いても比較される。FASTA(例えば、FASTA2、およびFASTA3)は、クエリーと検索配列の間の最適オーバーラップの領域の整列化およびパーセント配列同一性をもたらす(上記、Pearson(2000年))。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する上での別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを用いた、コンピュータープログラムBLAST、特に、BLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215:403~410頁、および(1997年)Nucleic Acids Res.25:3389~3402頁を参照(それぞれが、参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0087】
語句「治療上有効量」によって、投与されるものに所望の作用を作り出す量が意味される。抽出量は、処置の目的に依存し、公知の技術(例えば、Lloyd(1999年)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照)を用いて当業者により解明可能だろう。
【0088】
本明細書において用いられる用語「対象」は、慢性ウイルス感染症、がん、または自己免疫疾患のような疾患または障害の改善、予防、および/または処置の必要な動物、好ましくは、哺乳類を指す。
【0089】
本明細書において用いられる「抗がん薬」は、細胞毒素、ならびに代謝拮抗物質、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、有糸分裂阻害剤、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’-(DDD))、バイオ医薬品(biologic)(例えば、抗体、およびインターフェロン)、ならびに放射性剤を含むが、これらに限定されない、がんを処置するのに有用な任意の剤を意味する。本明細書において用いられる「細胞毒素または細胞毒性剤」はまた、化学療法剤も指し、細胞に有害である任意の剤も意味する。例は、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾラミド、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンビラスチン、コイチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにその類似体または相同体を含む。
【0090】
本明細書において用いられる用語「抗ウイルス薬」は、宿主対象においてウイルス感染症を処置、予防、もしくは改善するために用いられる任意の薬物または療法を指す。用語「抗ウイルス薬」は、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、鎮痛剤、およびコルチコステロイドを含むが、これらに限定されない。本発明の文脈において、ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含むが、これらに限定されないウイルスにより引き起こされる長期または慢性感染症を含む。
【0091】
本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、PD-1に特異的に結合し、PD-1のPD-L1との相互作用を調節する。抗PD-1抗体は、PD-1に高い親和性または低
い親和性で結合してもよい。ある種の実施形態において、本発明の抗体は遮断抗体であり、ここで、抗体は、PD-1に結合し、PD-1のPD-L1との相互作用を遮断する。ある実施形態において、本発明の遮断抗体は、PD-1のPD-L1への結合を遮断し、および/またはT細胞活性化を刺激するか、もしくは増強する。ある実施形態において、遮断抗体は、免疫応答を刺激もしくは増強するのに、および/またはがん、もしくは慢性ウイルス感染症に罹患している対象を処置するのに有用である。抗体は、それを必要とする対象に投与されると、対象において、HIV、LCMV、またはHBVのようなウイルスによる慢性感染症を低減する。それらを用いて、対象において腫瘍細胞の成長が阻害される。それらは、単独で、またはがん、もしくはウイルス感染症を処置するための当該技術分野において公知の他の治療部分もしくは様式を用いた補助療法として用いられる。
【0092】
他の実施形態において、本発明の抗体は活性化抗体であり、ここで、抗体は、PD-1に結合し、PD-1とPD-L1の相互作用を増強する。ある実施形態において、活性化抗体は、PD-1のPD-L1への結合を増強し、および/またはT細胞活性化を阻害するか、もしくは抑制する。本発明の活性化抗体は、対象における免疫応答を阻害するのに、および/または自己免疫疾患を処置するのに有用である。
【0093】
ある種の実施形態において、抗PD-1抗体は多特異性抗原結合分子であり、ここで、それらは、PD-1に対する第1の結合特異性、ならびに別のT細胞共阻害分子、自己免疫組織抗原、T細胞受容体、Fc受容体、T細胞受容体、PD-L1、およびPD-1の異なるエピトープからなる群より選択される抗原に対する第2の結合特異性を含む。
【0094】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は、全長PD-1[GenBank受託番号NP_005009.2(配列番号327)を参照]のような一次免疫原、またはPD-1の組み換え形態もしくは修飾されたヒトPD-1フラグメント(配列番号321、323、もしくは324)、または修飾されたカニクイザルPD-1フラグメント(配列番号322)で免疫され、続いて、二次免疫原、またはPD-1の免疫原として活性なフラグメントで免疫されたマウスから得られる。
【0095】
免疫原は、PD-1の生物学的に活性および/もしくは免疫原性フラグメント、またはその活性フラグメントをコードするDNAである。フラグメントは、PD-1のN末端またはC末端のドメインに由来する。本発明のある種の実施形態において、免疫原は、C93S変更を有する配列番号327のアミノ酸残基25~170の範囲にあるPD-1のフラグメントである。
【0096】
ペプチドは、タグ付けのため、もしくはKLHのような担体分子への結合の目的のためのある種の残基の付加または置換を含むよう修飾される。例えば、免疫のためのKLHへの結合のためのペプチドを調製するために、例えば、ペプチドのN末端もしくはC末端いずれかにシステインが付加されるか、またはリンカー配列が付加される。
【0097】
全長ヒトPD-1の全長アミノ酸配列は、配列番号327として示される。
【0098】
ある種の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体は、上で示された領域のフラグメント、または本明細書において記載される領域のNもしくはC末端いずれか、もしくは両方から約5~約20個のアミノ酸残基だけ、指定された領域を越えて伸びているペプチドを用いて調製される。ある種の実施形態において、上で示された領域またはそのフラグメントの任意の組み合わせは、PD-1特異的抗体の調製において用いられる。ある種の実施形態において、PD-1の上で示された領域、またはそのフラグメントの任意の1つまたはそれ以上は、単一特異性、二重特異性、または多特異性抗体を調製するため用いられる。
【0099】
本発明のある種の抗PD-1抗体は、PD-1に結合し、インビトロまたはインビボアッセイにより決定される、PD-1の活性を中和する。PD-1に結合し、PD-1の活性を中和する本発明の抗体の能力は、本明細書において記載される、結合アッセイ、もしくは活性アッセイを含む、当業者に公知の任意の標準的方法を用いて測定される。
【0100】
結合活性を測定するための非限定的な典型的インビトロアッセイは、本明細書における実施例において説明される。実施例3において、ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1についてのヒト抗PD-1抗体の結合親和性ならびに運動定数は、表面プラズモン共鳴において決定され、測定は、Biacore4000またはT200装置にて行われた。実施例4および5において、遮断アッセイを用いて、インビトロでPD-1のPD-L1-結合能を遮断する抗PD-1抗体の能力が決定された。実施例6において、遮断アッセイを用いて、抗PD-1抗体間の交差競合が決定された。実施例7は、抗体のPD-1を過剰発現する細胞への結合を記載する。実施例8において、ルシフェラーゼアッセイを用いて、T細胞におけるPD-1/PD-L1シグナル伝達と拮抗する抗PD-1抗体の能力が決定された。
【0101】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は、インビトロで、およびがんを有する対象、もしくはLCMVのようなウイルスに感染した対象においてT細胞活性化を増強するか、または刺激することができる。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、対象において免疫応答を増強し、腫瘍成長を阻害するために、第2のT細胞共阻害分子に対する抗体のような第2の治療剤と併用して用いられる。
【0102】
PD-1に特異的な抗体は、さらなる標識もしくは部分を含有しないか、またはそれらは、N末端またはC末端標識もしくは部分を含有する。1つの実施形態において、標識または部分はビオチンである。結合アッセイにおいて、(もしあれば)標識の位置は、ペプチドが結合される表面に関連してペプチドの方向が決定される。例えば、表面がアビジンでコートされるなら、N末端のビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面の遠位であるように、方向付けられる。1つの実施形態において、標識は、放射性核種、蛍光色素、またはMRIで検出可能な標識である。ある種の実施形態において、かかる標識された抗体は、画像化アッセイを含む診断アッセイにおいて用いられる。
【0103】
抗体の抗原結合フラグメント
別段具体的に示されない限り、本明細書において用いられる用語「抗体」は、2つの免疫グロブリン重鎖、および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「完全抗体分子」)、ならびにその抗原結合フラグメントを包含することは理解されるだろう。本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、任意の天然に生じる、酵素的に得られる、合成された、または遺伝子操作された、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。本明細書において用いられる用語、抗体の「抗原結合フラグメント」、または「抗体フラグメント」は、PD-1に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上のフラグメントを指す。抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、CDRを含有するフラグメント、または単離されたCDRを含む。ある種の実施形態において、用語「抗原結合フラグメント」は、多特異性抗原結合分子のポリペプチドフラグメントを指す。かかる実施形態において、用語「抗原結合フラグメント」は、例えば、PD-1に特異的に結合するPD-L1の細胞外ドメインを含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質消化、または抗体可変および(場合により)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組み換え遺伝子操作技術のような任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から得ることができる。かかるDNAは公知であり、および/または例えば、市販の供
給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、もしくは合成される。DNAは、配列決定され、化学的に、または分子生物学技術を用いることにより操作されて、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインが適切な配置に配置されるか、またはコドンが導入されるか、システイン残基が作製されるか、アミノ酸が修飾されるか、付加されるか、もしくは欠損される。
【0104】
抗原結合フラグメントの非限定的な例は:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)1本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補決定領域(CDR))、または限定されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメインが欠損した抗体、キメラ抗体、CDRが移植された抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ(例えば、1価のナノボディ、2価のナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子もまた、本明細書において用いられる、表現「抗原結合フラグメント」に包含される。
【0105】
抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの可変ドメインを典型的に含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であり、少なくとも1つのCDRを一般的に含み、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接されるか、もしくはインフレームである。Vドメインと繋がったVドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VおよびVドメインは、任意の適切な配置で相対的に位置する。例えば、可変領域は、二量体であり、V-V、V-V、またはV-V二量体を含有する。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VまたはVドメインを含有する。
【0106】
ある種の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有する。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内で見出される可変および定常ドメインの非限定的な典型的配置は:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cを含む。上で挙げられる典型的な配置のいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意の配置において、可変ならびに定常ドメインは、互いに直接的に結合されるか、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域により結合されるか、のいずれかである。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個もしくはそれ以上)のアミノ酸からなり、単一のポリペプチド分子における隣接する可変および/または定常ドメイン間の可動性または半可動性の結合をもたらす。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、(例えば、ジスルフィド結合による)互いにおよび/もしくは1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと非共有結合的に会合した、上で挙げられた可変ならびに定常ドメイン配置のいずれかのホモ-二量体またはヘテロ-二量体(もしくは他の多量体)を含む。
【0107】
全抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単特異性または多特異性(例えば、二重特異性)である。抗体の多特異性抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの異なる可変ドメインを典型的には含み、ここで、それぞれの可変ドメインは、別々の抗原、または同一抗原上の異なるエピトープに特異的に結合する能力がある。本明細書において開示さ
れる典型的な二重特異性抗体フォーマットを含む、任意の多特異性抗体フォーマットは、当該技術分野において利用可能な慣例的技術を用いて、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの文脈において使用するために適合される。
【0108】
ヒト抗体の調製
遺伝子導入マウスにおいてヒト抗体を作製する方法は、当該分野で公知である。任意のかかる公知の方法を、本発明の文脈において用いて、PD-1に特異的に結合するヒト抗体が作られる。
【0109】
次のいずれか1つを含む免疫原を用いて、PD-1に対する抗体を作製する。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、全長の天然PD-1(GenBank受託番号NP_005009.2を参照)(配列番号327)、または組み換えPD-1ペプチドで免疫されたマウスから得られる。あるいは、PD-1またはそのフラグメントは、標準的生化学技術を用いて作り出され、修飾され(配列番号321~324)、免疫原として用いられる。
【0110】
ある種の実施形態において、免疫原は、PD-1のN末端またはC末端由来のペプチドである。1つの実施形態において、免疫原は、PD-1の細胞外ドメインまたはIgV様ドメインである。本発明のある種の実施形態において、免疫原は、C93S変更を有する配列番号327のおよそアミノ酸残基25~170の範囲にあるPD-1のフラグメントである。
【0111】
ある実施形態において、免疫原は、エシェリキア・コリ(E.coli)において、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような任意の他の真核生物もしくは哺乳類細胞において発現された組み換えPD-1ペプチドである。
【0112】
ある種の実施形態において、PD-1に特異的に結合する抗体は、上で示された領域のフラグメント、または本明細書において記載される領域のNもしくはC末端いずれか、もしくは両方から約5~約20個のアミノ酸残基だけ、指定された領域を越えて伸びているペプチドを用いて、調製される。ある種の実施形態において、上で示された領域、またはそのフラグメントの任意の組み合わせは、PD-1特異的抗体の調製において用いられる。
【0113】
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標))、またはモノクローナル抗体を作製する任意の他の公知の方法を用いて、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、PD-1に対する高親和性キメラ抗体が、まず単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが、抗原刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域部位に作動可能に結合したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有する遺伝子導入マウスの作製に関与する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に結合される。次に、DNAは、完全ヒト抗体を発現する能力がある細胞において発現される。
【0114】
生物学的等価物
本発明の抗PD-1抗体および抗体フラグメントは、記載される抗体のものと異なるが、PD-1に結合する能力を保持する、アミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。かかる変異体抗体および抗体フラグメントは、親配列と比較された場合、アミノ酸の1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載される抗体のものと実質的に等価物である生物学的活性を示す。同様に、本発明のDNA配列をコードする抗体は、開示さ
れる配列と比較された場合、ヌクレオチドの1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗体または抗体フラグメントに実質的な生物学的等価物である抗体または抗体フラグメントをコードする配列を含む。
【0115】
2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば、吸収の速度および程度が、類似の実験条件下で同一のモル用量、単回用量もしくは複数回用量いずれかで投与される場合、有意な相違を示さない医薬等価物もしくは医薬代替物であるなら、生物学的等価物とみなされる。ある抗体は、その吸収の程度において等価物であるが、その吸収の速度において等価物でないなら、等価物または医薬代替物とみなされ、かかる吸収の速度における相違が意図的であり、標識において反映され、例えば、慢性的使用の際の有効な身体薬物濃度の到達に必須ではなく、研究される特定の薬物製品にとって医薬的に有意でないとみなされるので、生物学的等価物であると依然みなされる。
【0116】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質の安全性、純度、または有効性において臨床上有意義な相違はないなら、2つの抗原結合タンパク質は生物学的等価物である。
【0117】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、患者が、切り替えることなく継続される療法と比較して、免疫原性における臨床上有意な変化、もしくは損なわれた効能を含む副作用のリスクの増大を予期せずに、参照産物と生物学的産物の間で1回またはそれ以上切り替えられるなら、生物学的等価物である。
【0118】
1つの実施形態において、2つの抗原結合タンパク質は、それら両方が、使用の条件もしくは複数の条件についての作用の通常のメカニズムまたは複数のメカニズムにより、かかるメカニズムが公知である限り、作用するなら、生物学的等価物である。
【0119】
生物学的等価物は、インビボおよび/またはインビトロの方法により実証される。生物学的等価物の測定は、例えば、(a)抗体もしくはその代謝産物の濃度が、血液、血漿、血清、もしくは他の生物学的体液において時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験;(b)ヒトインビボバイオアベイラビリティデータと相関し、それを十分に予測するインビトロ試験;(c)抗体(もしくはその標的)の適切な急性薬理作用が、時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験;および(d)抗体の安全性、効能(efficacy)、もしくはバイオアベイラビリティもしくは生物学的均等性を確立する、十分に制御された臨床試験、を含む。
【0120】
本発明の抗体の生物学的等価物は、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を成すこと、または生物学的活性のため必要とされない末端もしくは内部残基もしくは配列を欠損させることにより、構築される。例えば、生物学的活性に必須でないシステイン残基は、欠損されるか、または他のアミノ酸で置換されて、再生の際に不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成が防止される。他の文脈において、生物学的等価物抗体は、アミノ酸変更を含む抗体変異体を含み、抗体のグリコシル化特徴、例えば、グリコシル化を除去するか、または取り除く変異を修飾する。
【0121】
Fc変異体を含む抗PD-1抗体
本発明のある種の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHにおいて、FcRn受容体への抗体結合を増強するか、もしくは損なう1つまたはそれ以上の変異を含むFcドメインを含む抗PD-1抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域における変異を含む抗PD-1抗体を含み、ここで、変異は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲にあるエンドソームにおいて)、FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。かかる変異は、動物に投与
される場合、抗体の血清半減期の増大をもたらす。かかるFc修飾の非限定的な例は、例えば、250位(例えば、EもしくはQ);250位および428位(例えば、LもしくはF);252位(例えば、L/Y/F/W、もしくはT)、254位(例えば、S、もしくはT)、ならびに256位(例えば、S/R/Q/E/D、もしくはT)における修飾;または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/Q、もしくはK)および/もしくは434位(例えば、A、W、H、F、もしくはY[N434A、N434W、N434H、N434F、もしくはN434Y])における修飾;または250位および/もしくは428位における修飾;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位における修飾を含む。1つの実施形態において、修飾は、428L(例えば、M428L)、ならびに434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)、ならびに308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)、ならびに434(例えば、434Y)修飾;252、254、ならびに256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾;250Q、ならびに428L修飾(例えば、T250Q、およびM428L);ならびに307、ならびに/または308修飾(例えば、308F、もしくは308P)を含む。なお別の実施形態において、修飾は、265A(例えば、D265A)、および/または297A(例えば、N297A)修飾を含む。
【0122】
例えば、本発明は、250Q、ならびに248L(例えば、T250Q、およびM248L);252Y、254T、ならびに256E(例えば、M252Y、S254T、およびT256E);428L、ならびに434S(例えば、M428L、およびN434S);257I、ならびに311I(例えば、P257I、およびQ311I);257I、ならびに434H(例えば、P257I、およびN434H);376V、ならびに434H(例えば、D376V、およびN434H);307A、380A、ならびに434A(例えば、T307A、E380A、およびN434A);ならびに433K、ならびに434F(例えば、H433K、およびN434F):からなる群より選択される変異の1つまたはそれ以上の対または群を含むFcドメインを含む抗PD-1抗体を含む。1つの実施形態において、本発明は、二量体安定化を促進するためのIgG4のヒンジ領域におけるS108P変異を含むFcドメインを含む抗PD-1抗体を含む。前述のFcドメイン変異と、本明細書において開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせは、本発明の範囲内と考えられる。
【0123】
本発明はまた、キメラ重鎖定常(C)領域を含む抗PD-1抗体も含み、ここで、キメラC領域は、1つより多い免疫グロブリンアイソタイプのC領域に由来するセグメントを含む。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、もしくはヒトIgG4分子に由来するC3ドメインの一部または全てと組み合わされた、ヒトIgG1、ヒトIgG2、もしくはヒトIgG4分子に由来するC2ドメインの一部または全てを含むキメラC領域を含む。ある種の実施形態によると、本発明の抗体は、キメラヒンジ領域を有するキメラC領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部のヒンジ」配列(EUナンバリングによる228位~236位のアミノ酸残基)と組み合わされた、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部のヒンジ」アミノ酸配列(EUナンバリングによる216位~227位のアミノ酸残基)を含む。ある種の実施形態によると、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1、またはヒトIgG4上部のヒンジに由来するアミノ酸残基、およびヒトIgG2下部のヒンジに由来するアミノ酸残基を含む。本明細書において記載されるキメラC領域を含む抗体は、ある種の実施形態において、抗体の治療または薬物動態特性に有害に作用することなく、修飾されたFcエフェクター機能を提示する。(例えば、2014年1月31日付けで出願されたUSSN.14/170,166(全体として参照によって本明細書に組み入れられる)を参照。)
【0124】
抗体の生物学的特徴
一般に、本発明の抗体は、PD-1に結合することにより機能する。本発明は、可溶性単量体または二量体PD-1分子を高親和性で結合する抗PD-1抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマットを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、(例えば、25℃において、または37℃において)約50nM未満のKで単量体PD-1に結合する抗体および抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある種の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマット、もしくは実質的に類似のアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、もしくは約1nM未満のKで単量体PD-1に結合する。
【0125】
本発明はまた、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマットを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、(例えば、25℃において、または37℃において)約400pM未満のKで二量体PD-1に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。ある種の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマット、もしくは実質的に類似のアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、約300pM未満、約250pM未満、約200pM未満、約100pM未満、もしくは約50pM未満のKで二量体PD-1に結合する。
【0126】
本発明はまた、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマットを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、(例えば、25℃において、または37℃において)約35nM未満のKでカニクイザル(マカク・ファシクラリス(Macaca fascicularis))PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含
む。ある種の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマット、もしくは実質的に類似のアッセイを用いて、表面プラズモン共鳴により測定される、約30nM未満、約20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、もしくは約5nM未満のKでカニクイザルPD-1に結合する。
【0127】
本発明はまた、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを用いて、25℃もしくは37℃における表面プラズモン共鳴により測定される、約1.1分より長い解離半減期(t1/2)でPD-1に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。ある種の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書における実施例3において定義されるアッセイフォーマット(例えば、mAb捕捉または抗原捕捉フォーマット)、または実質的に類似のアッセイを用いて、25℃または37℃における表面プラズモン共鳴により測定される、約5分より長い、約10分より長い、約30分より長い、約50分より長い、約60分より長い、約70分より長い、約80分より長い、約90分より長い、約100分より長い、約200分より長い、約300分より長い、約400分より長い、約500分より長い、約600分より長い、約700分より長い、約800分より長い、約900分より長い、約1000分より長い、または約1200分より長いt1/2でPD-1に結合する。
【0128】
本発明はまた、例えば、実施例4において示されるELISAベースのイムノアッセイアッセイ、または実質的に類似のアッセイを用いて決定される約3nM未満のIC50でPD-L1へのPD-1結合を遮断する抗体またはその抗原結合フラグメントも含む。本発明はまた、PD-1に結合し、PD-1のPD-L1への結合を増強する抗体およびそ
の抗原結合フラグメントも含む。
【0129】
ある実施形態において、本発明の抗体は、PD-1の細胞外ドメイン、またはドメインのフラグメントに結合する。ある実施形態において、本発明の抗体は、1つより多くのドメインに結合する(交差反応性抗体)。ある種の実施形態において、本発明の抗体は、PD-1のアミノ酸残基21~171(配列番号327)を含む細胞外ドメインに位置するエピトープに結合する。1つの実施形態において、抗体は、配列番号321~324のアミノ酸残基1~146からなる群より選択される1個またはそれ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する。
【0130】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は、アミノ酸配列が配列番号327において示される、全長タンパク質の任意の他の領域もしくはフラグメントに結合することにより、PD-1に関連するPD-L1-結合活性を遮断または阻害することにより機能する。ある種の実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1の間の相互作用を減弱させるか、または調節する。
【0131】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は二重特異性抗体である。本発明の二重特異性抗体は、あるドメインにおけるあるエピトープに結合し、PD-1の異なるドメインにおける第2のエピトープにも結合する。ある種の実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、同一ドメインにおける2つの異なるエピトープに結合する。1つの実施形態において、多特異性抗原結合分子は、PD-L1の細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含む第1の結合特異性、およびPD-1の別のエピトープに対する第2の結合特異性を含む。
【0132】
1つの実施形態において、本発明は、PD-1に結合する、単離された完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体またはそのフラグメントは、次の特徴のうちの1つもしくはそれ以上を示す:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、218、226、234、242、250、258、266、274、282、290、298、306、および314からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCVRを含む;(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、および202からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCVRを含む;(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、224、232、240、248、256、264、272、280、288、296、304、312、および320からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR3ドメイン;ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、および208からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR3ドメインを含む;(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、220、228、236、244、252、260、268、276、284、292、300、308、および316からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR1ドメイン;配列番号6
、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、222、230、238、246、254、262、270、278、286、294、302、310、および318からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR2ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、および204からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR1ドメイン;ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、および206からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR2ドメインを含む;(v)PD-1に対する第1の結合特異性、ならびにPD-1、腫瘍特異的抗原、自己免疫組織特異的抗原、ウイルス性に感染した細胞抗原、異なるT細胞共阻害分子、T細胞受容体、およびFc受容体からなる群より選択される抗原に対する第2の結合特異性を含む多特異性抗原結合分子である;(vi)ヒトPD-1に約28pM~約1.5μMのKで結合する;(vii)カニクイザルPD-1に約3nM~約7.5μMのKで結合する;(viii)PD-1のPD-L1への結合を、約3.3nM以下のIC50で遮断するか、もしくは増強する;(ix)PD-1により誘導されるT細胞下方制御を遮断し、および/もしくはT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、T細胞シグナル伝達をレスキューする;(x)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖および活性を刺激する;(xi)MLRアッセイにおいてIL-2および/もしくはIFNγ産生を誘導する;ならびに(xii)がんを有する対象において、腫瘍成長を抑制し、生存を増大させる。
【0133】
1つの実施形態において、本発明は、PD-L1へのPD-1結合を遮断する、単離された完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体またはそのフラグメントは、次の特徴のうちの1つもしくはそれ以上を示す:(i)配列番号130、162、234、および314からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCVRを含む;(ii)配列番号138、170、186、および202からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCVRを含む;(iii)配列番号136、168、240、および320からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR3ドメイン;ならびに配列番号144、176、192、および208からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR3ドメインを含む;(iv)配列番号132、164、236、および316からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR1ドメイン;配列番号134、166、238、および318からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR2ドメイン;配列番号140、172、188、および204からなる群より選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR1ドメイン;ならびに配列番号142、174、190、および206からなる群よ
り選択されるアミノ酸配列、もしくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR2ドメインを含む;(v)PD-1に対する第1の結合特異性、ならびにPD-1の異なるエピトープ、腫瘍特異的抗原、自己免疫組織特異的抗原、ウイルス性に感染した細胞抗原、異なるT細胞共阻害分子、T細胞受容体、およびFc受容体からなる群より選択される抗原に対する第2の結合特異性を含む多特異性抗原結合分子である;(vi)ヒトPD-1に10-9M以下のKで結合する;(vii)カニクイザルPD-1に10-8M以下のKで結合する;(viii)PD-1のPD-L1への結合を10-10M以下のIC50で遮断する;(ix)PD-1により誘導されるT細胞下方制御を遮断し、および/もしくはT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにおいてT細胞シグナル伝達をレスキューする;(x)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖および活性を刺激する;(xi)MLRアッセイにおいてIL-2および/もしくはIFNγ産生を誘導する;ならびに(xii)がんを有する対象において、腫瘍成長を抑制し、生存を増大させる。
【0134】
本発明の抗体は、前述の生物学的特徴の1つもしくはそれ以上、または任意のその組み合わせを有する。本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書における実施例を含む本開示の説明から当業者に明白であろう。
【0135】
種選択性および種交差反応性
本発明のある種の実施形態によると、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に結合するが、他の種由来のPD-1に結合しない。あるいは、本発明の抗PD-1抗体は、ある種の実施形態において、ヒトPD-1、および1つまたはそれ以上の非ヒト種由来のPD-1に結合する。例えば、本発明の抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に結合し、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、もしくはチンパンジーPD-1のうちの1つもしくはそれ以上に結合するか、または結合しない。ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、ヒトおよびカニクイザルPD-1に、同一の親和性で、または異なる親和性で結合するが、ラットおよびマウスPD-1に結合しない。
【0136】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明は、例えば、細胞外(IgV様)ドメイン、膜貫通型ドメイン、ならびに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)および免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を含有する細胞内ドメインを含むPD-1分子の1つまたはそれ以上のドメイン内で見出される1個またはそれ以上のアミノ酸と相互作用する、抗PD-1抗体を含む。抗体が結合するエピトープは、PD-1分子の前述のドメインのいずれかに位置する、3個またはそれ以上(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個もしくはそれ以上)のアミノ酸の単一の連続配列からなる(例えば、ドメインにおける直線エピトープ)。あるいは、エピトープは、PD-1分子の前述のドメインのいずれかまたは両方に位置する、多数の非連続アミノ酸(もしくはアミノ酸配列)からなる(例えば、立体構造エピトープ)。
【0137】
当業者に公知の種々の技術を用いて、抗体が、ポリペプチドもしくはタンパク質内の「1個またはそれ以上のアミノ酸と相互作用するかどうかが決定される。典型的な技術は、例えば、Antibodies、Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY)において記載されるもののような、慣例的交差-遮断アッセイを含む。他の方法は、アラニンスキャンニング変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke(2004年)Methods Mol. Biol.248:443~63頁)、ペプチド切断解析結晶研究
、およびNMR解析を含む。加えて、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、および化学修飾のような方法が利用される(Tomer(2000年)Prot.Sci.9:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために用いられる別の方法は、質量分析により検出される水素/ジュウテリウム交換である。一般的な用語において、水素/ジュウテリウム交換方法は、目的のタンパク質をジュウテリウム標識すること、続いて、抗体をジュウテリウムで標識されたタンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体は水に移され、抗体複合体により保護されるアミノ酸内の交換可能なプロトンは、接触面の一部でないアミノ酸内の交換可能なプロトンより遅い速度でジュウテリウムから水素への逆交換を受ける。結果として、タンパク質/抗体接触面の部分を形成するアミノ酸は、ジュウテリウムを保持し、それ故、接触面に含まれないアミノ酸と比較して、比較的大きな質量を提示する。抗体の解離後、標的タンパク質は、タンパク質分解酵素切断および質量分析の対象とされ、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応するジュウテリウムで標識された残基が明らかにされる。例えば、Ehring(1999年)Analytical Biochemistry267:252~259頁;EngenおよびSmith(2001年)Anal.Chem.73:256A~265A頁を参照。
【0138】
用語「エピトープ」は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の3次フォールディングにより並べて置かれた連続アミノ酸または不連続アミノ酸両方から形成される。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶媒への曝露の際に典型的に保持され、他方、3次フォールディングにより形成されるエピトープは、変性溶媒での処理の際に典型的に失われる。エピトープは、固有の空間立体構造において少なくとも3個、より通常には、少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を典型的に含む。
【0139】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても公知の修飾補助プロファイリング(MAP)は、化学的または酵素的に修飾された抗原表面へのそれぞれの抗体の結合プロファイルの類似性により、同一の抗原に対して向けられた多数のモノクローナル抗体(mAb)を分類する方法である(US2004/0101920、参照によって全体として本明細書に組み入れられる)。それぞれのカテゴリーは、別のカテゴリーにより表されるエピトープと明らかに異なるか、または部分的に重複するいずれかの固有のエピトープを反映する。この技術は、特徴が、遺伝子学的に明確な抗体に焦点を当てられるように、遺伝子学的に一致する抗体の迅速な選別を可能にする。ハイブリドーマスクリーニングに適用される場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する稀なハイブリドーマクローンの同定を促進する。MAPを用いて、本発明の抗体は異なるエピトープに結合する抗体の群に分類される。
【0140】
ある種の実施形態において、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号327において例示される天然の形態か、もしくは配列番号321~324において例示される組換え産生されているかのいずれかのPD-1において例示される領域の任意の1つまたはそれ以上の内のエピトープ、またはそのフラグメントに結合する。ある実施形態において、本発明の抗体は、PD-1のアミノ酸残基21~171からなる群より選択される1個またはそれ以上のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。ある実施形態において、本発明の抗体は、配列番号322により例示される、カニクイザルPD-1のアミノ酸残基1~146からなる群より選択される1個またはそれ以上のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。
【0141】
ある種の実施形態において、表1に示される、本発明の抗体は、配列番号327のおよそ21位~およそ136の範囲にあるアミノ酸残基;または配列番号327のおよそ136位~およそ171位の範囲にあるアミノ酸残基からなる群より選択される少なくとも1
個のアミノ酸配列と相互作用する。これらの領域は、配列番号321~324において部分的に例示される。
【0142】
本発明は、本明細書における表1において記載される特異的な典型的な抗体、もしくは表1において記載される典型的な抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体のいずれかと、同一のエピトープ、またはエプトープの部分に結合する、抗PD-1抗体を含む。同様に、本発明はまた、PD-1もしくはPD-1フラグメントへの結合について、本明細書における表1において記載される特異的な典型的な抗体、または表1において記載される典型的な抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体のいずれかと競合する、抗PD-1抗体も含む。例えば、本発明は、PD-1への結合について、本明細書における実施例6において定義される1つまたはそれ以上の抗体と交差競合する抗PD-1抗体(例えば、H2aM7788N、H4xH8992P、H4xH8999P、H1M7799N、H2aM7780N、H1M7800N、H2aM7794N、H2aM7798N、H4xH9145P2、H4H9057P2、H4xH9120P2、H4xH9128P2、H4H9019P、H4xH9119P2、H4xH9135P2、H4xH9034P、H2aM7790N、H4xH9035P、H4xH9037P、H4xH9045P、およびH2aM7795N)を含む。
【0143】
当該技術分野において公知の慣例的方法を用いることにより、抗体が、参照抗PD-1抗体と同一のエピトープに結合するか、または結合について参照抗PD-1抗体と競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗PD-1抗体と同一のエピトープに結合するかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でPD-1タンパク質またはペプチドに結合させることを可能にする。次に、PD-1分子に結合する試験抗体の能力が評価される。試験抗体は、参照抗PD-1抗体との飽和結合後にPD-1に結合することができるなら、試験抗体は、参照抗PD-1抗体より異なるエピトープに結合すると結論付けられる。他方、試験抗体は、参照抗PD-1抗体との飽和結合後にPD-1タンパク質に結合することができないなら、次に、試験抗体は、本発明の参照抗PD-1抗体により結合されるエピトープと同一のエピトープに結合する。
【0144】
抗体が、結合について参照抗PD-1抗体と競合するかを決定するために、上で記載された結合方法論は、2つの方針で行われる。第1の方針において、参照抗体を、飽和条件下でPD-1タンパク質に結合させることを可能にし、続いて、試験抗体のPD-1分子への結合が評価される。第2の方針において、試験抗体を、飽和条件下でPD-1分子に結合させることを可能にし、続いて、参照抗体のPD-1分子への結合が評価される。両方の方針において、第1の(飽和)抗体のみが、PD-1分子に結合する能力があるなら、次に、試験抗体と参照抗体は、PD-1への結合について競合すると結論付けられる。当業者により理解される通り、結合について参照抗体と競合する抗体は、参照抗体と一致するエピトープに必ずしも結合しないが、重複または隣接するエピトープに結合することにより、参照抗体の結合を立体的に遮断する。
【0145】
2つの抗体は、それぞれが、他方の抗原への結合を競合的に阻害(遮断)するなら、同一または重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰の一方の抗体が、他方の結合を、競合的結合アッセイにおいて測定される、少なくとも50%だが、好ましくは、75%、90%、もしくは99%でさえ阻害する(例えば、Junghansら、Cancer Res.1990年50:1495~1502頁を参照)。あるいは、一方の抗体の結合を低減するか、もしくは除去する抗原における本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を低減するか、または除去するなら、2つの抗体は同一のエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減するか、もしくは除去する、いくつかのアミノ酸変異が、他方の結合を低減するか、または除去するなら、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0146】
次に、さらなる慣習的実験(例えば、ペプチド変異、および結合解析)を行い、試験抗体の結合の観察された欠如が、事実上、参照抗体と同一のエピトープへの結合に起因するかどうか、または立体的遮断(もしくは別の現象)が、観察された結合の欠如に関与するかが確認される。この選別の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当該技術分野において利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを用いて行われる。
【0147】
免疫複合体
本発明は、細胞毒素、またはがんを処置するための化学療法剤のような、治療部分に結合したヒト抗PD-1モノクローナル抗体(「免疫複合体」)を包含する。本明細書において用いられる用語「免疫複合体」は、細胞毒素、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質、もしくは治療剤に化学的または生物学的に結合される抗体を指す。抗体は、その標的に結合することができる限り、分子に沿った任意の位置において、細胞毒素、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチド、または治療剤に結合される。免疫複合体の例は、抗体薬物複合体、および抗体と毒素の融合タンパク質を含む。1つの実施形態において、剤は、PD-1に対する第2の異なる抗体である。ある種の実施形態において、抗体は、腫瘍細胞、またはウイルス性に感染した細胞に特異的な剤に結合される。抗PD-1抗体に結合される治療部分のタイプは、処置されるべき条件、および達成されるべき所望の治療効果を考慮する。免疫複合体を形成させるのに適切な剤の例は、当該分野で公知であり、例えば、WO05/103081を参照。
【0148】
多特異性抗体
本発明の抗体は、単特異性、二重特異性、または多特異性である。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有する。例えば、Tuttら、1991年、J.Immunol.147:60~69頁;Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.22:238~244頁を参照。
【0149】
1つの態様において、本発明は、多特異性抗原結合分子、またはその抗原結合フラグメントを含み、ここで、免疫グロブリンの1つの特異性は、PD-1の細胞外ドメイン、またはそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他の特異性は、PD-1の細胞外ドメイン、もしくは第2の治療標的の外側の結合に特異的であるか、または治療部分に結合される。ある種の実施形態において、第1の抗原結合特異性は、PD-L1もしくはPD-L2、またはそのフラグメントを含む。本発明のある種の実施形態において、免疫グロブリンの一方の特異性は、PD-1のアミノ酸残基21~171(配列番号327)、またはそのフラグメントを含むエピトープに特異的であり、免疫グロブリンの他の特異性は、第2の標的抗原に特異的である。第2の標的抗原は、PD-1と同一の細胞上、または異なる細胞上にある。1つの実施形態において、第2の標的細胞は、B細胞、抗原提示細胞、単球、マクロファージ、または樹状細胞のようなT細胞以外の免疫細胞上にある。ある実施形態において、第2の標的抗原は、腫瘍細胞上、または自己免疫組織細胞上、またはウイルス性に感染した細胞上に存在する。
【0150】
別の態様において、本発明は、PD-1に結合する第1の抗原結合特異性、およびT細胞受容体、B細胞受容体、またはFc受容体に結合する第2の抗原結合特異性を含む多特異性抗原結合分子またはその抗原結合フラグメントを提供する。関連する態様において、本発明は、PD-1に結合する第1の抗原結合特異性、ならびにLAG-3、CTLA-4、BTLA、CD-28、2B4、LY108、TIGIT、TIM3、LAIR1、ICOS、およびCD160のような異なるT細胞共阻害分子に結合する第2の抗原結合
特異性を含む多特異性抗原結合分子またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0151】
別の態様において、本発明は、PD-1に結合する第1の抗原結合特異性、および自己免疫組織特異的抗原に結合する第2の抗原結合特異性を含む多特異性抗原結合分子またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある種の実施形態において、抗体は、活性化またはアゴニスト抗体である。
【0152】
本発明の多特異性抗原結合分子のいずれか、またはその変異体は、当業者に公知であろう、標準的分子生物学的技術(例えば、組み換えDNA、およびタンパク質発現技術)を用いて構築される。
【0153】
ある実施形態において、PD-1特異的抗体は、PD-1の別個のドメインに結合する可変領域が、単一の結合分子内に二重-ドメイン特異性を付与するよう一緒に結合される、二重特異性フォーマット(「二重特異性」)で作製する。適切には、設計された二重特異性は、特異性および結合活性両方の増大を通じて、全体的なPD-1阻害性効能を増強する。個々のドメイン(例えば、N末端のドメインのセグメント)についての特異性を有する、または1つのドメイン内の異なる領域に結合する可変領域は、それぞれの領域が、別個のエピトープ、または1つのドメイン内の異なる領域に同時に結合することを可能にする、構造スキャフォールド上で対形成される。二重特異性についての1つの例において、1つのドメインについての特異性を有する結合剤由来の重鎖可変領域(V)を、第2のドメインについての特異性を有する、一連の結合剤由来の軽鎖可変領域(V)と再度組み合わせて、そのVについての元の特異性を壊すことなく、元のVと対形成させる、非同族Vパートナーが同定される。この方法において、単一のVセグメント(例えば、V1)は、2つの異なるVドメイン(例えば、V1、およびV2)と組み合わされて、2つの結合「アーム」(V1-V1、およびV2-V1)を含む二重特異性を生じる。単一のVセグメントの使用は、システムの複雑さを低減し、これにより、単純化し、二重特異性を生じるために用いられるクローニング、発現、および精製方法における効率を増大させる(例えば、USSN13/022759、およびUS2010/0331527を参照)。
【0154】
あるいは、1つより多くのドメイン、および非限定的に、例えば、第2の異なる抗PD-1抗体のような第2の標的に結合する抗体は、本明細書において記載される技術、または当業者に公知の他の技術を用いて、二重特異性フォーマットで調製される。別個の領域に結合する抗体可変領域を、例えば、PD-1の細胞外ドメイン上の関連部位に結合する可変領域と一緒に結合させて、単一の結合分子内の二重-抗原特異性が確かにされる。適切には、この性質の設計された二重特異性は、二重機能を果たす。細胞外ドメインについての特異性を有する可変領域は、細胞外ドメインの外側についての特異性を有する可変領域と組み合わされ、それぞれの可変領域が、別の抗原に結合することを可能にする、構造スキャフォールド上で対形成される。
【0155】
本発明の文脈において用いられる典型的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)C3ドメイン、および第2のIg C3ドメインの使用を含み、ここで、第1および第2のIg C3ドメインは、少なくとも1個のアミノ酸により互いに異なり、ここで、少なくとも1個のアミノ酸相違が、アミノ酸相違を欠く二重特異性抗体と比較して、タンパク質Aへの二重特異性抗体の結合を低減する。1つの実施形態において、第1のIg C3ドメインは、タンパク質Aに結合し、第2のIg C3ドメインは、H95R修飾(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによりH435R)のようなタンパク質A結合を低減するか、または消失させる、変異を含有する。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによりY436F)をさらに含む。第2のC3内で見出されるさらなる修飾は:IgG1抗体の場合において、D
16E、L18M、N44S、K52N、V57M、ならびにV82I(IMGTによる;EUにより、D356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合において、N44S、K52N、ならびにV82I(IMGT;EUにより、N384S、K392N、およびV422I);ならびにIgG4抗体の場合において、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、ならびにV82I(IMGTによる;EUにより、Q355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)を含む。上で記載された二重特異性抗体フォーマットにおけるバリエーションは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0156】
本発明の文脈において用いられる他の典型的な二重特異性フォーマットは、限定されることなく、例えば、scFv-ベースもしくは二重特異性抗体二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、knobs-into-holes、共通軽鎖(例えば、knobs-into-holesを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、ならびにMab二重特異性フォーマットを含む(例えば、前述のフォーマットの説明のため、Kleinら、2012年、mAbs4:6、1~11頁、およびそこで引用される参考文献を参照)。二重特異性抗体はまた、ペプチド/核酸結合を用いても構築され、例えば、ここで、直交性化学反応性(orthogonal chemical reactivity)を有する非天然のアミノ酸を用いて、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合を生じ、次に、規定された組成、原子価、および幾何学を有する多量体複合体に自己アセンブルする(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照)。
【0157】
治療投与および製剤
本発明は、本発明の抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む治療組成物を提供する。治療組成物は、本発明に従い、輸送、デリバリー、寛容の好転などをもたらすよう製剤に取り込まれる、適切な担体、賦形剤、および他の剤と共に投与される。多数の適切な製剤は、全ての医薬化学者に公知の処方書:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAにおいて見出される。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ジェル、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオンまたは陰イオン)含有ベシクル(例えば、LIPOFECTIN(商標))、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ジェル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients for
parenteral formulations」PDA(1998年)J Pharm Sci Technol52:238~311頁も参照。
【0158】
抗体の用量は、投与されるべき対象の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに依存して変動する。本発明の抗体が、成人患者において疾患もしくは障害を処置するために、またはかかる疾患の予防のため用いられる場合、本発明の抗体を、通常、体重1kg当たり約0.1~約60mg、より好ましくは、体重1kg当たり約5~約60、約10~約50、または約20~約50mgの単回用量で投与することが有利である。状態の重症度に依存して、処置の頻度および持続時間は調節される。ある種の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約500mg、約5~約300mg、または約10~約200mg、~約100mg、もしくは~約50mgの開始用量として投与される。ある種の実施形態において、開始用量に続き、開始用量のものとおよそ同一であるか、またはそれ未満である量
における第2または多数の続く用量の抗体またはその抗原結合フラグメントが投与され、ここで、続く用量は、少なくとも1日~3日;少なくとも1週;少なくとも2週;少なくとも3週;少なくとも4週;少なくとも5週;少なくとも6週;少なくとも7週;少なくとも8週;少なくとも9週;少なくとも10週;少なくとも12週;または少なくとも14週により隔てられる。
【0159】
種々のデリバリーシステムが公知であり、これを用いて、本発明の医薬組成物、例えば、リポソームにおけるカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現する能力がある組み換え細胞、受容体により仲介されるエンドサイトーシスが投与される(例えば、Wuら(1987年)J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照)。導入の方法は、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路を含むが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入もしくはボーラス注射により、上皮もしくは皮膚粘膜裏層(例えば、経口粘膜、直腸、および腸粘膜など)を通じた吸収により、投与され、他の生物学的に活性な剤と一緒に投与される。投与は全身または局所である。医薬組成物はまた、ベシクル、特に、リポソームにおいてもデリバリーされる(例えば、Langer(1990年)Science249:1527~1533頁を参照)。
【0160】
本発明の抗体をデリバリーするためのナノ粒子の使用も本明細書において考えられる。抗体結合ナノ粒子は、治療上および診断上の適用両方のため用いられる。抗体結合ナノ粒子、ならびに調製および使用方法は、Arruebo,M.ら、2009年(J. Nanomat.における「Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications」2009巻、論文番号439389、24頁、doi:10.1155/2009/439389)(参照によって本明細書において組み入れられる)により詳細に記載される。ナノ粒子が開発され、腫瘍細胞、または自己免疫組織細胞、またはウイルス性に感染した細胞を標的化するための医薬組成物において含有される抗体に結合される。薬物デリバリー用ナノ粒子はまた、例えば、US8257740、またはUS8246995(それぞれ、参照によって、全体として本明細書に組み入れられる)においても記載される。
【0161】
ある種の状況において、医薬組成物は、制御放出システムにおいてデリバリーされる。1つの実施形態において、ポンプが用いられる。別の実施形態において、ポリマー材料が用いられる。なお別の実施形態において、制御放出システムは、組成物の標的の近くに置かれ、従って、少量の全身性用量のみが必要とされる。
【0162】
注射可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、腹腔内および筋内注射用形態、点滴注入用形態などを含む。これらの注射可能な調製物は、公的に公知の方法により調製される。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射のため通常用いられる無菌の水性媒体もしくは油性媒体において、上で記載された抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化することにより、調製される。注射用水性媒体として、例えば、生理的食塩水、グルコースを含有する等調溶液、および他の補助剤などが存在し、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適切な溶解剤と併用で用いられる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、大豆油などが利用され、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような溶解剤と併用して用いられる。従って、調製される注射は、適切なアンプルに好ましく充填される。
【0163】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジで皮下または静脈内にデリバリーされる。加えて、皮下デリバリーに関して、ペンデリバリー装置は、本発明の医薬組成物の
デリバリーにおいて容易に適用される。かかるペンデリバリー装置は、再利用可能であるか、または使い捨てである。再利用可能なペンデリバリー装置は、医薬組成物を含有する置換可能なカートリッジを一般に利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与されると、カートリッジは空になり、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジで置き換えられる。次に、ペンデリバリー装置は再利用される。使い捨てのペンデリバリー装置において、置き換え可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てのペンデリバリー装置は、装置内のリザーバーにおいて保持される医薬組成物で予め充填される。リザーバーは、医薬組成物が空になると、全体の装置は廃棄される。
【0164】
多数の再利用可能なペン、および自動注射デリバリー装置は、本発明の医薬組成物の皮下デリバリーにおいて適用される。例は、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Burghdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)(2、3例のみを挙げる)を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下デリバリーにおいて適用される、使い捨てのペンデリバリー装置の例は、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、ならびにHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park、IL)(2、3例のみを挙げる)を含むが、確かにこれらに限定されない。
【0165】
有利には、上で記載された経口または非経口使用用医薬組成物は、有効成分の用量に適合するよう適した単位用量における投薬形態に調製される。単位用量におけるかかる投薬形態は、例えば、錠剤、ピル、カプセル剤、注射(アンプル剤)、坐剤などを含む。含有される抗体の量は、一般に、単位用量において;特に、注射の形態において1つの投薬形態当たり約5~約500mg、他の投薬形態のため約5~約100mg、および約10~約250mgの抗体が含有されることが好ましい。
【0166】
抗体の治療上の使用
本発明の抗体は、とりわけ、PD-1発現、シグナル伝達、もしくは活性に関連するか、もしくはそれにより仲介される、もしくはPD-1とPD-1リガンド(例えば、PD-L1、もしくはPD-L2)との間の相互作用を遮断すること、もしくはそうでなければPD-1活性および/もしくはシグナル伝達を阻害することにより処置可能な、任意の疾患または障害の処置、予防、および/または改善に有用である。例えば、本発明は、処置を必要とする患者に、本明細書において記載される抗PD-1抗体(もしくは抗PD-1抗体を含む医薬組成物)を投与することによる、がん(腫瘍成長阻害)、慢性ウイルス感染症、および/または自己免疫疾患を処置する方法を提供する。本発明の抗体は、がん、自己免疫疾患、もしくはウイルス感染症のような疾患、もしくは障害、もしくは状態の
処置、予防、および/もしくは改善するのに、ならびに/またはかかる疾患、障害、もしくは状態に関連する少なくとも1つの症状を改善するのに有用である。本明細書において記載される処置の方法の文脈において、抗PD-1抗体は、単独療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤(その例は、本明細書において他の場所で記載される)との併用で投与される。
【0167】
本発明のある実施形態において、本明細書において記載される抗体は、腎細胞癌、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)、頭部および頸部の扁平上皮癌、胃がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がん、乳がん、多発性骨髄腫、ならびにメラノーマを含むが、これらに限定されない、原発性または再発性がんに罹患している対象を処置するのに有用である。
【0168】
抗体を用いて、がんの早期ステージまたは末期ステージの症状が処置される。1つの実施形態において、本発明の抗体またはそのフラグメントを用いて、転移性がんが処置さる。抗体は、固形腫瘍および血液がん両方の腫瘍成長の低減、または阻害、または収縮において有用である。ある種の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントでの処置は、対象において腫瘍の50%より多くの退縮、60%より多くの退縮、70%より多くの退縮、80%より多くの退縮、または90%より多くの退縮を導く。ある種の実施形態において、抗体を用いて、腫瘍の再発が予防される。ある種の実施形態において、抗体は、がんを有する対象における全体的生存の延長において有用である。ある実施形態において、抗体は、がんに罹患している患者における長期生存を維持しながら、化学療法または放射線療法に起因する毒性の低減において有用である。
【0169】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は、慢性ウイルス感染症に罹患している対象を処置するのに有用である。ある実施形態において、本発明の抗体は、宿主におけるウイルスタイターの低減、および/または消耗されたT細胞のレスキューにおいて有用である。ある種の実施形態において、本発明の抗体またはそのフラグメントを用いて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)による慢性ウイルス感染症が処置される。ある実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、治療用量で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、もしくはヒトパピローマウイルス(HPV)、もしくは肝炎B/Cウイルス(HBV/HCV)による感染症を有する患者に投与される。関連する実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて、カニクイザルのようなサル対象においてサル免疫不全ウイルス(SIV)による感染症が処置される。
【0170】
ある種の実施形態において、本発明の遮断抗体は、がんまたはウイルス感染症に罹患している対象に、治療上有効量で投与される。
【0171】
ある種の実施形態において、本発明の抗体は、円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、脈管炎、およびウェゲナー肉芽腫症を含むが、これらに限定されない、自己免疫疾患の処置に有用である。ある種の実施形態において、本発明の活性化抗体を用いて、自己免疫疾患に罹患している対象が処置される。
【0172】
本発明の1つまたはそれ以上の抗体を投与して、疾患または障害の症状または状態のうちの1つまたはそれ以上の重症度が、軽減されるか、または予防されるか、または低減される。
【0173】
本発明の1つまたはそれ以上の抗体を、がん、自己免疫疾患、および慢性ウイルス感染症のような疾患もしくは障害を発症するリスクのある患者に予防的に用いることも本明細書において考えられる。
【0174】
本発明のさらなる実施形態において、本抗体は、がん、自己免疫疾患、またはウイルス感染症に罹患している患者を処置するための医薬組成物の調製のため用いられる。本発明の別の実施形態において、本抗体は、がん、自己免疫疾患、もしくはウイルス感染症を処置するのに有用な、当業者に公知の任意の他の剤を用いた補助療法、または任意の他の療法として用いられる。
【0175】
併用療法および製剤
併用療法は、本発明の抗PD-1抗体、および本発明の抗体、または本発明の抗体の生物学的に活性なフラグメントと有利に組み合わされる、任意のさらなる治療剤を含む。
【0176】
本発明の抗体は、例えば、腎細胞癌、結腸直腸がん、多形神経膠芽腫、頭部および頸部の扁平上皮癌、非小細胞肺がん、大腸がん、卵巣がん、腺癌、前立腺がん、グリオーマ、ならびにメラノーマを含むがんを処置するために用いられる、1つまたはそれ以上の抗がん薬または療法と相乗的に併用される。本明細書において、腫瘍成長を阻害し、および/またはがん患者の生存を増強するために、免疫刺激および/または免疫支持療法と併用して本発明の抗PD-1抗体を用いることも考えられる。免疫刺激療法は、抑制された免疫細胞上で「ブレーキを放出すること」、または免疫応答を活性化するための「アクセルを踏むこと」いずれかにより、免疫細胞活性を増強するための直接的な免疫刺激療法を含む。例は、他のチェックポイント受容体、ワクチン接種、およびアジュバントを標的化することを含む。免疫抑制様式は、免疫原性の細胞死、炎症を促進することにより、腫瘍の抗原性を増大させるか、または抗腫瘍免疫応答を促進する他の直接的効果を有する。例は、放射線、化学療法、抗拮抗剤、および手術を含む。
【0177】
種々の実施形態において、本発明の1つまたはそれ以上の抗体は、PD-L1に対する抗体、PD-1に対する2次抗体(例えば、ニボルマブ)、LAG-3阻害剤、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞共阻害分子もしくはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、もしくはVISTAに対する抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、アフリベルセプトのような「VEGF-Trap」、もしくはUS7,087,411に記載の他のVEGF阻害融合タンパク質、もしくは抗VEGF抗体、もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、もしくはラニビズマブ)、もしくはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、共刺激性受容体のアゴニスト(例えば、グルココルチコイドにより誘導されるTNFRにより放出されるタンパク質のアゴニスト)、腫瘍特異的抗原(例えば、CA9、CA125、メラノーマ関連抗原3(MAGE3)、がん胎児抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9)に対する抗体、ワクチン(例えば、バチルス・カルメッテ・グエリン、がんワクチン)、抗原提示を増大するためのアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、PSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボ
プラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15のようなサイトカイン、抗体と薬物結合体(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド系抗炎症薬)、抗オキシダントのような栄養補助剤、または任意のがんを処置するための対症ケアと併用して用いられる。ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、抗腫瘍応答を増強するための、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含む、がんワクチンと併用して用いられる。本発明の抗PD-1抗体と併用して用いられる、がんワクチンの例は、メラノーマおよび膀胱がんのためのMAGE3ワクチン、乳がんのためのMUC1ワクチン、脳がん(多形神経膠芽腫を含む)のためのEGFRv3(例えば、Rindopepimut)、またはALVAC-CEA(CEA+がんのため)を含む。
【0178】
ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、耐久性のある抗腫瘍応答を生じ、および/またはがんを有する患者の生存を増強する方法において放射線療法と併用して投与される。ある実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、がん患者への放射線療法の投与に先立ち、同時に、または後に、投与される。例えば、放射線療法は、腫瘍病変への1回またはそれ以上の投薬において投与され、続いて、本発明の抗PD-1抗体の1回またはそれ以上の投薬において投与される。ある実施形態において、放射線療法は、患者の腫瘍の局所免疫原性を増強する(放射線を補助する)ため、および/または腫瘍細胞を殺傷するため(切除照射)、腫瘍病変に局所的に投与され、続いて、本発明の抗PD-1抗体が全身的に投与される。例えば、頭蓋内照射は、本発明の抗PD-1抗体の全身性投与と併用して、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫)を有する患者に投与される。ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、放射線療法、および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と併用して投与される。
【0179】
ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、LCMV、HIV、HPV、HBV、またはHCVにより引き起こされる慢性ウイルス感染症を処置するための1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬と併用して投与される。抗ウイルス薬の例は、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、およびコルチコステロイドを含むが、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、慢性ウイルス感染症を処置するためのLAG3阻害剤、CTLA-4阻害剤、または別のT細胞共阻害分子の任意のアンタゴニストと併用して投与される。
【0180】
ある種の実施形態において、本発明の抗PD-1抗体は、自己免疫疾患の処置のため、免疫細胞上のFc受容体に対する抗体と組み合わされる。1つの実施形態において、本発明の抗体またはそのフラグメントは、自己免疫組織に特異的な抗原に標的化された抗体または抗原結合タンパク質と併用して投与される。ある種の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fcα(例えば、CD89)、Fcγ(例えば、CD64、CD32、CD16a、およびCD16b)、CD19などを含むが、これらに限定されない、T細胞受容体もしくはB細胞受容体に標的化された抗体または抗原結合タンパク質と併用して投与される。本発明の抗体またはそのフラグメントは、円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好
酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、脈管炎、およびウェゲナー肉芽腫症を含むが、これらに限定されない、自己免疫疾患もしくは障害を処置するための、当該技術分野において公知の任意の薬物または治療(例えば、コルチコステロイド、および他の免疫抑制剤)と併用して用いられる。
【0181】
さらなる治療上有効な剤/成分は、本発明の抗PD-1抗体投与に先立ち、併用して、または後に投与される。本開示の目的のため、かかる投与治療計画は、第2の治療上活性な成分「と併用した」抗PD-1抗体の投与とみなされる。
【0182】
さらなる治療上有効な成分は、本発明の抗PD-1抗体の投与に先立ち、対象に投与される。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分未満前に投与されるなら、第1の成分は、第2の成分「に先立ち」投与されるとみなされる。他の実施形態において、さらなる治療上有効な成分は、本発明の抗PD-1抗体の投与後、対象に投与される。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与されるなら、第1の成分は、第2の成分「の後に」投与されるとみなされる。なお他の実施形態において、さらなる治療上有効な成分は、本発明の抗PD-1抗体の投与と同時に対象に投与される。本発明の目的上、「同時」投与は、例えば、単回投薬形態(例えば、共製剤化された)、または互いに約30分もしくはそれ以下の内に対象に投与される別の投薬形態における対象への抗PD-1抗体、およびさらなる治療上活性な成分の投与を含む。別の投薬形態で投与されるなら、それぞれの投薬形態は、同一の経路を介して投与される(例えば、抗PD-1抗体、およびさらなる治療上活性な成分両方が、静脈内、皮下などで投与される);あるいは、それぞれの投薬形態は、異なる経路を介して投与される(例えば、抗PD-1抗体は静脈内投与され、さらなる治療上活性な成分は皮下投与される)。任意の現象において、単回投薬形態、同一の経路による別の投薬形態、または異なる経路による別の投薬形態において成分を投与することは、本開示の目的のため、全て「併用投与」とみなされる。本開示の目的のため、さらなる治療上活性な成分の投与「に先立つ」、「同時」、または「の後の」(それらの用語は、本明細書において上で定義された通り)抗PD-1抗体の投与は、さらなる治療上活性な成分「と併用した」抗PD-1抗体の投与とみなされる。
【0183】
本発明は、医薬組成物を含み、ここで、本発明の抗PD-1抗体は、様々な投薬併用を用いて、本明細書において他の場所で記載される通り、さらなる治療上活性な成分の1つまたはそれ以上と共製剤化される。
【0184】
本発明の抗PD-1抗体が、抗PD-1抗体およびVEGF アンタゴニストを含む共製剤の投与を含む、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトのようなVEGF trap)と併用して投与される典型的な実施形態において、個々の成分が対象に投与され、および/または様々な投薬併用を用いて共製剤化される。例えば、抗PD-1抗体は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群より選択される量で、対象に投与され、ならびに/または共製剤において含有され;ならびにVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトのようなVEGF trap)は、0.1mg、0.2mg、0.
3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mg、および3.0mgからなる群より選択される量で、対象に投与され、ならびに/または共製剤において含有される。併用/共製剤は、例えば、1週間に2回、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1月毎に1回、2月毎に1回、3カ月毎に1回、4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回などを含む、本明細書において他の場所で開示される投与治療計画のいずれかに従い、対象に投与される。
【0185】
投与治療計画
本発明のある種の実施形態によると、複数回用量の抗PD-1抗体(または抗PD-1抗体、および本明細書において言及される、さらなる治療上活性な剤のいずれかの併用を含む医薬組成物)は、定義される時間経過に渡り、対象に投与される。本発明のこの態様による方法は、対象に、複数回用量の本発明の抗PD-1抗体を連続して投与することを含む。本明細書において用いられる「連続して投与すること」は、それぞれの用量の抗PD-1抗体が、対象に、時間における異なる点において、例えば、予め決定された間隔(例えば、時間、日、週、または月)により隔てられた異なる日において投与されることを意味する。本発明は、患者に、単回開始用量の抗PD-1抗体、続いて、1つまたはそれ以上の2次用量の抗PD-1抗体、場合により、続いて、1つまたはそれ以上の3次用量の抗PD-1抗体を連続して投与することを含む方法を含む。抗PD-1抗体は、0.1mg/kg~100mg/kgの間の用量において投与される。
【0186】
用語「開始用量」、「2次用量」、および「3次用量」は、本発明の抗PD-1抗体の投与の時間的な並びを指す。従って、「開始用量」は、処置計画の開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」としても言及される);「2次用量」は、開始用量の後に投与される用量であり;「3次用量」は、2次用量後に投与される用量である。開始、2次、および3次用量は、全て、同一量の抗PD-1抗体を含有するが、一般に、投与の頻度の点で互いに異なる。しかしながら、ある種の実施形態において、開始、2次、および/または3次用量において含有される抗PD-1抗体の量は、処置の経過中、互いに異なる(例えば、必要に応じて、上方もしくは下方調節される)。ある種の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、もしくは5回)の用量は、処置治療計画の開始時に、「添加用量」として投与され、続いて、あまり頻繁でない基盤で投与される続く用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0187】
本発明のある種の典型的な実施形態において、それぞれの2次および/または3次用量は、直前の先行する用量の後、1~26(例えば、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5、6、6、7、7、8、8、9、9、10、10、11、11、12、12、13、13、14、14、15、15、16、16、17、17、18、18、19、19、20、20、21、21、22、22、23、23、24、24、25、25、26、26、またはそれ以上)週で投与される。本明細書において用いられる語句「直前の先行する用量」は、複数回投与の並びにおいて、中断のない用量の並びで、まさに次の用量の投与に先立ち患者に投与される、抗PD-1抗体の用量を意味する。
【0188】
本発明のこの態様による方法は、患者に、任意の数の2次および/または3次用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。例えば、ある種の実施形態において、単回2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、もしくはそれ以上)の2次用量が患者に投与される。同様に、
ある種の実施形態において、単回の3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、もしくはそれ以上)の3次用量が患者に投与される。
【0189】
複数回の2次用量を含む実施形態において、それぞれの2次用量は、他の2次用量と同一の頻度で投与される。例えば、それぞれの2次用量は、直前の先行する用量の1~2週間または1~2カ月後に投与される。同様に、複数回の3次用量を含む実施形態において、それぞれの3次用量は、他の3次用量と同一の頻度で投与される。例えば、それぞれの3次用量は、直前の先行する用量の2~12週間後に投与される。本発明のある種の実施形態において、2次および/または3次用量が患者に投与される頻度は、処置治療計画の経過に渡り変動する。投与の頻度もまた、医師による処置の経過中、臨床検査に従い個々の患者のニーズに依存して調節される。
【0190】
本発明は、投与治療計画を含み、ここで、2~6回の添加用量は、患者に、第1の頻度(例えば、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1カ月に1回、2カ月に1回など)で投与され、続いて、2回またはそれ以上の維持用量が、あまり頻繁でない基盤で患者に投与される。例えば、本発明のこの態様によると、添加用量が、例えば、1カ月に1回(例えば、1カ月に1回投与される、2、3、4回、またはそれ以上の添加用量)の頻度で投与されるなら、次に、維持用量が、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、10週間毎に1回、12週間毎に1回などで患者に投与される。
【0191】
抗体の診断上の使用
本発明の抗PD-1抗体を用いて、例えば、診断の目的のため、試料中のPD-1が検出され、および/または測定される。ある実施形態は、がん、自己免疫疾患、もしくは慢性ウイルス感染症のような疾患もしくは障害を検出するためのアッセイにおいて、1つまたはそれ以上の本発明の抗体の使用を考慮する。PD-1についての典型的な診断アッセイは、例えば、患者から得た試料を、本発明の抗PD-1抗体と接触させることを含み、ここで、抗PD-1抗体は、検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識されるか、または患者試料からPD-1を選択的に単離するための捕捉リガンドとして用いられる。あるいは、未標識の抗PD-1抗体は、検出可能に標識されたそれ自体である2次抗体と組み合わせた診断適用において用いられる。検出可能な標識またはレポーター分子は、H、14C、32P、35S、もしくは125Iのようなラジオアイソトープ;フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンのような蛍光もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼのような酵素である。試料中のPD-1を検出または測定するために用いられる特異的な典型的アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞分取(FACS)を含む。
【0192】
本発明によるPD-1診断アッセイにおいて用いられる試料は、患者から得ることができる任意の組織または体液試料を含み、正常もしくは病理条件下で、PD-1タンパク質、またはそのフラグメントいずれかの検出可能な量を含有する。一般に、健常患者(例えば、がんもしくは自己免疫疾患に苦しまない患者)から得られる特定の試料中のPD-1のレベルは、ベースライン、または標準的PD-1レベルをまず確立するために測定される。次に、このPD-1のベースラインレベルは、がん関連状態、またはかかる状態に関連する症状を有することが疑われる個人から得られる試料において測定されるPD-1のレベルに対して比較される。
【0193】
PD-1に特異的な抗体は、さらなる標識もしくは部分を含まず、またはそれらは、N末端もしくはC末端の標識もしくは部分を含有する。1つの実施形態において、標識また
は部分はビオチンである。結合アッセイにおいて、(もしあれば)標識の位置は、ペプチドが結合される表面に関連してペプチドの向きを決定する。例えば、表面がアビジンでコートされるなら、N末端のビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面の遠位であるように、方向付けられる。
【0194】
本発明の態様は、患者におけるがんまたは自己免疫障害の予測的診断のためのマーカーとしての、開示される抗体の使用に関する。本発明の抗体は、患者においてがんの予後を評価するため、および生存を予測するための診断アッセイにおいて用いられる。
【実施例
【0195】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法および組成物の作り方、ならびに用い方の完全な開示または記載を提供するために記述するものであり、本発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を制限することは意図されない。用いた数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを保証するよう試みられたが、実験上の誤差および自差がある程度あることは考慮されるべきである。別段示されなければ、部分は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏におけるものであり、室温は約25℃であり、圧力は雰囲気においてであるか、または雰囲気に近い。
【実施例1】
【0196】
PD-1に対するヒト抗体の生成
C93S変更を有するGenBank受託NP_005009.2(配列番号327)のおよそアミノ酸25~170の範囲にあるPD-1のフラグメントを用いて、PD-1に対するヒト抗体を作製した。免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパー軽鎖可変領域をコードするDNAを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、免疫原を直接的に投与した。PD-1特異的イムノアッセイにより、抗体免疫応答をモニターした。所望の免疫応答を達成したら、脾細胞を回収し、マウスミエローマ細胞と融合させて生存能を保持し、ハイブリドーマ細胞株を形成させた。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、PD-1特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技術、および上で記載した免疫原を用いて、いくつかの抗PD-1キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)を得て;この方法で作製した典型的な抗体を、H1M7789N、H1M7799N、H1M7800N、H2M7780N、H2M7788N、H2M7790N、H2M7791N、H2M7794N、H2M7795N、H2M7796N、およびH2M7798Nと命名した。
【0197】
U.S.2007/0280945A1(参照によって、全体として本明細書に具体的に組み入れる)において記載される通り、ミエローマ細胞に融合させることなく、抗原陽性B細胞から抗PD-1抗体も直接的に単離した。この方法を用いて、いくつかの完全ヒト抗PD-1抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有する抗体)を得て;この方法で作製した典型的な抗体を、次の:H4H9019P、H4xH9034P2、H4xH9035P2、H4xH9037P2、H4xH9045P2、H4xH9048P2、H4H9057P2、H4H9068P2、H4xH9119P2、H4xH9120P2、H4xH9128P2、H4xH9135P2、H4xH9145P2、H4xH8992P、H4xH8999P、およびH4xH9008Pと命名した。
【0198】
この実施例の方法に従い作製した典型的な抗体の生物学的特性を、以下で説明する実施例において詳細に記載する。
【実施例2】
【0199】
重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸およびヌクレオチド配列
表1には、選択した本発明の抗PD-1抗体の重鎖および軽鎖可変領域、ならびにCDRのアミノ酸配列識別名を記載する。対応する核酸配列識別名を表2に記載する。
【0200】
【表1】
【0201】
【表2】
【0202】
抗体は、本明細書において典型的には次の命名法によって言及する:Fc接頭辞(例えば、「H4xH」、「H1M」、「H2M」など)、続いて、数字で表した識別名(例えば、表1において示す「7789」、「7799」など)、続いて「P」、「P2」、「N」、または「B」接尾辞。従って、この命名法により、本明細書において、例えば、「H1H7789N」、「H1M7799N」、「H2M7780N」などとして抗体を指す。本明細書において用いた抗体名称上のH4xH、H1M、H2M、およびH2aM接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H4xH」抗体は、US20100331527において開示される2つまたはそれ以上のアミノ酸変更を有するヒトIgG4 Fcを有し、「H1M」抗体は、マウスIgG1 Fcを有し、「H2M」抗体は、マウスIgG2 Fc(aもしくはbのアイソタイプ)を有する(全ての可変
領域は、抗体名称において最初の「H」により示す通り、完全ヒトである)。当業者が理解する通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体を、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体などに変換することができる)が、いずれの場合も、表1において示した数字で表した識別名により示した可変ドメイン(CDRを含む)は同一のままであり、抗原の結合特性はFcドメインの性質に関わらず、一致または実質的に類似であると予測した。
【0203】
ある種の実施形態において、選択したマウスIgG1 Fcを有する抗体を、ヒトIgG4 Fcを有する抗体に変換した。1つの実施形態において、IgG4 Fcドメインは、二量体安定化を促進するためのヒンジ領域におけるセリンからプロリンへの変異(S108P)を含む。表3に、選択したヒトIgG4 Fcを有する抗PD-1抗体の重鎖および軽鎖配列のアミノ酸配列識別名を記載する。
【0204】
【表3】
【0205】
表3におけるそれぞれの重鎖配列は、可変領域(VまたはHCVR;HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む)、ならびに定常領域(C1、C2、およびC3ドメインを含む)を含んでいた。表3におけるそれぞれの軽鎖配列は、可変領域(VまたはLCVR;LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む)、ならびに定常領域(C)を含んでいた。配列番号330は、アミノ酸1~117を含むHCVR、およびアミノ酸118~444を含む定常領域を含んでいた。配列番号331は、アミノ酸1~107を含むLCVR、およびアミノ酸108~214を含む定常領域を含んでいた。配列番号332は、アミノ酸1~122を含むHCVR、およびアミノ酸123~449を含む定常領域を含んでいた。配列番号333は、アミノ酸1~107を含むLCVR、およびアミノ酸108~214を含む定常領域を含んでいた。配列番号334は、アミノ酸1~119を含むHCVR、およびアミノ酸120~446を含む定常領域を含んでいた。配列番号335は、アミノ酸1~108を含むLCVR、およびアミノ酸109~215を含む定常領域を含んでいた。配列番号336は、アミノ酸1~121を含むHCVR、およびアミノ酸122~448を含む定常領域を含んでいた。配列番号337は、アミノ酸1~108を含むLCVR、およびアミノ酸109~215を含む定常領域を含んでいた。
【実施例3】
【0206】
表面プラズモン共鳴により決定したPD-1への抗体結合
Biacore 4000またはBiacore T200機器におけるリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーアッセイを用いて、精製した抗PD1抗体への抗原結合について、結合ならびに解離速度定数(それぞれ、kおよびk)、平衡解離定数、ならびに解離半減期(それぞれ、Kおよびt1/2)を決定した。Biacoreセンサー表面を、ポリクローナルウサギ抗マウス抗体(GE、番号BR-1008-38)、
またはモノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、番号BR-1008-39)のいずれかで誘導体化して、それぞれ、マウスFcまたはヒトFcいずれかと共に発現させた、およそ100~900RUの抗PD-1モノクローナル抗体を捕捉した。抗PD-1抗体への結合について試験したPD-1試薬は、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させた組み換えヒトPD-1(hPD-1-MMH;配列番号321)、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に発現させた組み換えカニクイザルPD-1(MfPD-1-MMH;配列番号322)、C末端のマウスIgG2a Fcタグと共に発現させた組み換えヒトPD-1二量体(hPD-1-mFc;配列番号323)、またはC末端のヒトIgG1 Fcと共に発現させた組み換えヒトPD-1二量体(hPD1-hFc;配列番号324)、およびmFcを有するサルPD-1(配列番号329)を含んでいた。Biacore 4000における流速30μL/分、またはBiacore T200における流速50μL/分において、抗PD-1モノクローナル抗体捕捉表面に渡り、200nM~3.7nMの範囲にある異なる濃度のPD-1試薬を注入した。捕捉したモノクローナル抗体へのPD-1試薬の結合を、3~5分間モニターし、一方、抗体からのそれらの解離を、HBSTランニングバッファー(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v 界面活性剤P20)において7~10分間モニターした。25℃および37℃において実験を行った。データを処理し、Scrubber 2.0c曲線近似ソフトウェアを用いて1:1結合モデルに近似させることにより、動力学的結合(k)および解離(k)速度定数を決定した。次に、動力学的速度定数から、K(M)=k/k、およびt1/2(分)=[ln2/(60)]として、結合解離平衡定数(K)、ならびに解離半減期(t1/2)を計算した。25℃および37℃において、異なるPD-1試薬に結合する異なる抗PD-1モノクローナル抗体についての結合動力学的パラメーターを、表4~11において表にした。
【0207】
【表4】
【0208】
【表5】
【0209】
【表6】
【0210】
【表7】
【0211】
【表8】
【0212】
【表9】
【0213】
【表10】
【0214】
【表11】
【0215】
表4において示した通り、25℃において、29のうち28の本発明の抗PD-1抗体は、2.1nM~291nMの範囲にあるK値でhPD-1-MMHに結合した。1つの抗体、H4H9068P2は、25℃において、hPD-1-MMHへの測定可能な結合を示さなかった。表5において示した通り、37℃において、29のうち26の本発明の抗PD-1抗体は、3.79nM~1.51μMの範囲にあるK値でhPD-1-MMHに結合した。3つの本発明の抗体は、37℃において、hPD-1-MMHへの決定的な結合を示さなかった。表6において示した通り、25℃において、29の本発明の抗PD-1抗体は全て、65.5pM~59.4nMの範囲にあるK値でhPD-1二量体タンパク質に結合した。表7において示した通り、37℃において、27の本発明の抗PD-1抗体は全て、3.09pM~551nMの範囲にあるK値でhPD-1二量体タンパク質に結合した。表8において示した通り、25℃において、29のうち27の本発明の抗PD-1抗体は、3.09nM~551nMの範囲にあるK値でMfPD-1-MMHに結合した。2つの本発明の抗体は、25℃においてMfPD-1-MMHへの決定的な結合を示さなかった。表9において示した通り、37℃において、29のうち25の本発明の抗PD-1抗体は、7.00nM~7.54μMの範囲にあるK値でMfPD-1-MMHに結合した。4つの本発明の抗体は、37℃においてMfPD-1-M
MHへの決定的な結合を示さなかった。表10において示した通り、25℃において、試験した18の本発明の抗PD-1抗体は全て、137pM~54.2nMの範囲にあるK値でMfPD-1二量体に結合した。表11において示した通り、37℃において、試験した18の本発明の抗PD-1抗体は全て、49pM未満~86.3nMの範囲にあるK値でMfPD-1二量体に結合した。
【実施例4】
【0216】
ELISAにより決定したPD-L1へのPD-1結合の遮断
リガンド、PD-L1受容体へのヒトPD-1結合を遮断する抗PD-1抗体の能力を、3種の競合的サンドイッチELISAフォーマットを用いて測定した。C末端のヒトFcタグ(hPD-L1-hFc;配列番号325)もしくはC末端のマウスFcタグ(hPD-L1-mFc;配列番号326)いずれかと共に発現させたヒトPD-L1細胞外ドメインの部分を含む二量体ヒトPD-L1タンパク質、またはC末端のヒトFcタグ(hPD-L2-hFc;R&D Systems、番号1224-PL)と共に産生させたヒトPD-L2細胞外領域を含む二量体ヒトPD-L2を、PBS中2μg/mLの濃度にて、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、一晩、4℃において別々にコートした。PBS中0.5%(w/v) BSA溶液を用いて、非特異的結合部位を続いて遮断した。第1の競合フォーマットにおいて、抗体の最終濃度が0~200nMの範囲になるように、C末端のマウスFcタグ(hPD-1-mFc;配列番号323)と共に発現させたヒトPD-1細胞外ドメインを含む、1.5nMの一定濃度の二量体ヒトPD-1タンパク質を、抗PD-1抗体またはアイソタイプ対照抗体の連続希釈液に加えた。第2の競合フォーマットにおいて、C末端のヒトFcタグと共に発現させた、ヒトPD-1細胞外ドメイン(biot-hPD-1-hFc;配列番号323)を含む、200pMの一定濃度の二量体ビオチン化ヒトPD-1タンパク質を、0~50nMの範囲にある最終抗体濃度において、抗PD-1抗体またはアイソタイプ対照の連続希釈液に同様に加えた。第3の競合フォーマットにおいて、100pMの一定濃度の二量体hPD-1-mFcタンパク質を、0~100nMの範囲にある最終抗体濃度において、抗PD-1抗体またはアイソタイプ対照の連続希釈液に同様に加えた。次に、これらの抗体とタンパク質複合体を、1時間、室温(RT)においてインキュベートした(incubated)。1.5nM
一定のhPD-1-mFcとの抗体とタンパク質複合体を、hPD-L1-hFcでコートしたマイクロタイタープレートに移し、200pM一定のbiot-hPD-1-hFcとの抗体とタンパク質複合体を、hPD-L1-mFcコートプレートに移し、100pM一定のhPD-1-mFcとの抗体とタンパク質複合体を、hPD-L2-hFcでコートしたマイクロタイタープレートに移した。1時間RTにおいてインキュベートした後、ウェルを洗浄し、プレートに結合したhPD-1-mFcを、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunoResearch Inc.、番号115-035-164)が結合した抗mFcポリクローナル抗体で検出し、プレートに結合したbiot-hPD-1-hFcを、HRP(Thermo Scientific、番号N200)が結合したストレプトアビジンで検出した。試料をTMB溶液(BD Biosciences、番号51-2606KC、および番号51-2607KC)で発展させて、比色分析反応を生じさせ、次に、色の発生を1M 硫酸の添加により安定化させ、その後、VictorX5プレートリーダーにおいて450nmにおける吸光度を測定した。Prism(商標)ソフトウェア(GraphPad)のS状用量応答モデルを用いて、データ解析を行った。ヒトPD-L1またはPD-L2へのヒトPD-1結合の50%を低減するのに必要とされる抗体の濃度として定義される、計算したIC50値を、遮断有効性の指標として用いた。用量曲線から決定した、プレート上のヒトPD-L1またはPD-L2へのヒトPD-1の結合を完全に遮断する抗体の能力の測定値として、パーセント最大遮断を計算した。このパーセント最大遮断は、抗PD-1抗体を含有しないヒトPD-1の試料(0%遮断)について観察したシグナルと、HRPが結合した2次抗体単独(100%遮断)由来のバックグラウンドシグナルの間の相違と比較した、そ
れぞれの抗体について最高の試験濃度の存在下で観察したシグナルにおける低減率を、100%から引くことにより、計算した。
【0217】
35%より多くのhPD-1結合シグナルを遮断する抗体についてのパーセント最大遮断および計算したIC50値を、表12~14において示した。35%またはそれ以下のhPD-1結合シグナルにおける低減を示した抗体を、非遮断剤として定義した。ヒトPD-1の結合シグナルにおける35%またはそれ以上の増大を示した抗体を、非遮断剤/エンハンサーとして特徴付けた。アッセイにおいてヒトPD-1の50%の結合部位を占めるのに理論上必要とする最小抗体濃度として定義した、理論上のアッセイボトムは、1.5nM一定 hPD-1-mFcを用いたフォーマットについて0.75nMであり、200pM一定 biot-hPD-1-hFcを用いたフォーマットについて100pMであり、100pM一定 hPD-1-mFcを用いたフォーマットについて50pMであり、これは、より低い計算したIC50値が、定量的な、タンパク質と抗体部位結合を表さないことを示していた。この理由のため、hPD-1-mFc一定およびhPD-L1コートを用いたアッセイにおいて0.75nM未満、biot-hPD-1-hFc一定およびhPD-L1コートを用いたアッセイにおいて100pM未満、ならびにhPD-1-mFc一定およびhPD-L2コートを用いたアッセイにおいて50pM未満の計算したIC50値を有する抗体を、表12~14において、それぞれ、7.5E-10M未満、1.0E-10M未満、ならびに5.0E-11M未満として報告した。
【0218】
【表12】
【0219】
【表13】
【0220】
【表14】
【0221】
表12において示した通り、第1のアッセイフォーマットにおいて、27のうち23の抗PD-1抗体は、67%~100%の範囲にある最大パーセント遮断を伴い、190pM~3.3nMの範囲にあるIC50値で1.5nMのhPD-1-mFcがhPD-L1-hFcに結合するのを遮断した。1つの抗体、H2aM7796Nを非遮断剤と同定した。3つの抗PD-1抗体(H4H9068P2、H1M7789N、およびH2aM7791N)を、非遮断剤/エンハンサーと同定した。
【0222】
表13において示す通り、第2のアッセイフォーマットにおいて、27のうち23の抗PD-1抗体は、60%~101%の範囲にある最大パーセント遮断を伴い、59pM~1.3nMの範囲にあるIC50値で200pMのbiot-hPD-1-hFcがhPD-L1-mFcに結合するのを遮断した。1つの抗体、H1M7789Nを非遮断剤と同定した。3つの抗PD-1抗体(H4H9057P2、H4H9068P2、およびH2aM7791N)を、非遮断剤/エンハンサーと同定した。
【0223】
表14において示した第3のアッセイフォーマットにおいて、4つの本発明の抗PD-1抗体、およびアイソタイプ対照を試験した。全4つの本発明の抗PD-1抗体は、0.13nM~1.3nMの範囲にあるIC50値、および94%~100%の範囲にある最大パーセント遮断で、100pM(固定濃度)のhPD-1-mFcがプレートにコートしたhPD-L2-hFcに結合するのを遮断した。
【実施例5】
【0224】
バイオセンサーアッセイにより、および表面プラズモン共鳴により決定したPD-L1へのPD-1結合の遮断
いずれかのOctet Red96バイオセンサー機器(Fortebio Inc.)においてリアルタイム生体層インターフェロメトリーアッセイを用いて、またはBiacore3000機器においてリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーアッセイを用いて、異なる抗PD-1モノクローナル抗体による、ヒトPD-1のヒトPD-L1への結合に対する阻害を研究した。
【0225】
マウスFcと共に発現させた抗PD-1モノクローナル抗体についての阻害研究を、Octet Red96機器において行った。まず、100nMのC末端のマウスIgG2a Fcタグと共に発現させた組み換えヒトPD-1(hPD-1-mFc;配列番号323)を、500nMのそれぞれの抗PD-1モノクローナル抗体と共に、少なくとも1時間インキュベートし、その後、阻害アッセイを実行した。およそ0.8nM~1.2n
MのC末端のヒトIgG1 Fcタグと共に発現させた組み換えヒトPD-L1(hPD-L1-hFc;配列番号325)を、抗ヒトIgG Fc捕捉Octetバイオセンサーを用いて捕捉した。次に、hPD-L1-hFcでコートしたOctetバイオセンサーを、hPD-1-mFcと異なる抗PD-1モノクローナル抗体の混合物を含有するウェルに浸漬した。全体の実験を、25℃において、Octet HBSTバッファー(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v 界面活性剤P20、0.1mg/mL BSA)中で、速度1000rpmでプレートを振盪しながら行った。実験のそれぞれの工程間にOctet HBSTバッファー中でバイオセンサーを洗浄した。実験の全体の経過中、リアルタイム結合応答をモニターし、工程毎の終わりの結合応答を記録した。捕捉したhPD-L1-hFcへのhPD-1-mFcの結合を、異なる抗PD-1モノクローナル抗体の存在下と非存在下で比較し、それを用いて、表15において示した通り、試験した抗体の阻害行為を決定した。
【0226】
【表15】
【0227】
表15において示した通り、11のうち9つのOctet Red96機器において試験した抗PD-1抗体は、結合の86%の遮断~完全な遮断の範囲で、hPD-1-mFcのhPD-L1-hFcへの結合に対し強力な遮断を示した。1つの試験した抗PD-1抗体(H1M7789N)は、29%遮断で、hPD-1-mFcのhPD-L1-hFcへの結合に対し弱い遮断を示した。1つの試験した抗体(H2aM7791N)は、hPD-L1-hFcへのhPD-1-mFcの結合を増強する能力を示した。
【0228】
次に、ヒトFcと共に発現させた抗PD-1モノクローナル抗体についての阻害研究を、Biacore3000機器において行った。まず、100nMのC末端のヒトIgG1 Fcタグと共に発現させた組み換えヒトPD-1(hPD-1-hFc;配列番号3
24)を、500nMのそれぞれの抗PD-1モノクローナル抗体と共に、少なくとも2時間インキュベートし、その後、阻害アッセイを実行した。標準的EDC-NHS化学を用いて、CM5 Biacoreセンサー表面を、ポリクローナルウサギ抗マウス抗体(GEカタログ番号BR-1008-38)でまず誘導体化した。次に、およそ730RU
C末端のマウスIgG2a Fcタグと共に発現させた組み換えヒトPD-L1(hPD-L1.mFc;配列番号326)を捕捉し、続いて、100nMのhPD-1.hFcを、異なる抗PD-1モノクローナル抗体の存在下および非存在下、流速25μL/分にて3分間注入した。全体の実験を、25℃において、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v 界面活性剤Tween-20を含むランニングバッファー(HBS-ETランニングバッファー)中で行った。実験の全体の経過中、リアルタイム結合応答をモニターし、工程毎の終わりの結合応答を記録した。捕捉したhPD-L1-mFcへのhPD-1-hFcの結合を、異なる抗PD-1モノクローナル抗体の存在下と非存在下で比較し、それを用いて、表16において示した通り、試験した抗体の阻害行為を決定した。
【0229】
【表16】
【0230】
表16において示した通り、20のうち18のBiacore3000機器において試験した本発明の抗PD-1抗体は、96%~100%の範囲にある遮断で、hPD-1-hFcのhPD-L1-mFcへの結合に対し強力な遮断を示した。1つの抗体は、hPD-L1-mFcへのhPD-1-hFcの結合を増強する能力を示した。この研究において、本発明の試験した抗体の1つ(H4H9057P2)は、抗マウスFc捕捉表面への非特異的バックグラウンド結合を示した。
【実施例6】
【0231】
抗PD-1抗体間のOctet交差競合
Octet RED384バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)におけるリアルタイムの標識を含まないバイオ層インターフェロメトリーアッセイを用いて、抗PD-1モノクローナル抗体間の結合競合を決定した。全体の実験を、25℃において、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDT
A、0.05%v/v 界面活性剤Tween-20、0.1mg/mL BSA(Octet HBS-ETバッファー)中、速度1000rpmにてプレートを振盪しながら行った。2つの抗体が、C末端のmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグと共に組換え発現させたヒトPD-1(hPD-1-MMH;配列番号321)上のそれぞれのエピトープへの結合について、互いに競合することができるかを評価するために、5分間、50μg/mL hPD-1-MMH溶液を含有するウェルにチップを沈めることにより、抗ペンタ-His抗体でコートしたOctetバイオセンサーチップ(Pall ForteBio Corp.、番号18-5079)上におよそ0.1nMのhPD-1-MMHをまず捕捉させた。次に、50μg/mL mAb-1の溶液を含有するウェルに5分間沈めることにより、抗原により捕捉したバイオセンサーチップを、1次抗PD-1モノクローナル抗体(以後、mAb-1として言及)で飽和させた。次に、50μg/mL 2次抗PD-1モノクローナル抗体(以後、mAb-2として言及)の溶液を含有するウェルに、バイオセンサーチップを続いて浸した。実験の工程毎の間にOctet HBS-ETバッファー中でバイオセンサーチップを洗浄した。実験の経過中、リアルタイムの結合応答をモニターし、工程毎の終わりの結合応答を記録した。mAb-1と予め複合体を形成させたhPD-1-MMHに対するmAb-2結合の応答を比較し、異なる抗PD-1モノクローナル抗体の競合的/非競合的行為を決定した。結果を表17において要約した(自己競合するmAb2は挙げなかった)。
【0232】
【表17】
【0233】
【表18】
【0234】
Octet HTXバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)におけるリアルタイムの標識を含まないバイオ層インターフェロメトリーアッセイを用いて、選択した抗PD-1モノクローナル抗体のパネル間での第2の結合競合を決定した。全体の実験を、25℃において、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v 界面活性剤Tween-20、0.1mg/mL BSA(Octet HBS-ETバッファー)中、速度1000rpmでプレートを振盪しながら、行った。2つの抗体が、hPD-1-MMH上のそれぞれのエピトー
プへの結合について互いに競合することができるかを評価するために、150秒間、10μg/mL hPD-1-MMHの溶液を含有するウェルにチップを沈めることにより、抗ペンタ-His抗体でコートしたOctetバイオセンサーチップ(Fortebio
Inc、番号18-5079)上に、およそ0.25nMのhPD-1-MMHをまず捕捉させた。次に、100μg/mL mAb-1の溶液を含有するウェルに5分間浸すことにより、抗原により捕捉したバイオセンサーチップを1次抗PD-1モノクローナル抗体(以後、mAb-1として言及)で飽和させた。次に、100μg/mL 2次抗PD-1モノクローナル抗体(以後、mAb-2として言及)の溶液を含有するウェルに、バイオセンサーチップを4分間続いて浸した。実験の工程毎の間にOctet HBS-ETバッファー中で全てのバイオセンサーを洗浄した。実験の経過中、リアルタイムの結合応答をモニターし、図2において示した通り、工程毎の終わりの結合応答を記録した。mAb-1と予め複合体を形成させたhPD-1-MMHに対するmAb-2結合の応答を比較し、異なる抗PD-1モノクローナル抗体の競合的/非競合的行為を決定した。結果を表18において要約した(自己競合するmAb2は挙げなかった)。
【0235】
【表19】
【0236】
この実施例において開示した実験条件下で、H4H7795N2は、H4H7798Nと交差競合し;H4H7798Nは、H4H7795N2、およびH4H9008Pと交差競合し;H4H9008Pは、H4H7798N、およびH4H9068P2と交差競合し;H4H9068P2は、H4H9008P、およびH4H9048P2と交差競合した。
【実施例7】
【0237】
PD-1を過剰発現する細胞への抗体結合
全長ヒトPD-1(受託番号 NP_005009.2のアミノ酸1~289)で安定的に遺伝子導入したヒト胎児由来腎臓細胞株(HEK293;ATCC、番号CRL-1573)(HEK293/hPD-1)への抗PD-1抗体の結合を、FACSにより決定した。
【0238】
アッセイのため、トリプシンまたは酵素を含まない解離バッファーを用いて、接着細胞を剥離し、完全培地で遮断した。細胞を遠心分離し、2% FBSを含有する冷PBS中2.5~6×10細胞/mLの濃度で再懸濁した。次に、HEK293親およびHEK293/hPD-1細胞を、15~30分間氷上で100nMのそれぞれの抗PD-1抗体と共にインキュベートした。2% FBSを含有するD-PBSで洗浄することにより、未結合の抗体を取り除き、細胞を、ヒトFc(Jackson ImmunoResearch、番号109-136-170)、またはマウスFc(Jackson ImmunoResearch、番号115-136-146)いずれかを認識するアロフィコシアニン結合2次F(ab’)と共に、15~30分間、氷上で続いてインキュベートした。2% FBSを含有するD-PBSで細胞を洗浄し、未結合の2次F(ab’)
を取り除き、HyperCyte(IntelliCyt、Inc.)フローサイトメーター、またはAccuriフローサイトメーター(BD Biosciences)いずれかを用いて、蛍光測定値を取得した。FlowJoソフトウェア(Tree Star)を用いて、データを解析した。
【0239】
【表20】
【0240】
表19において示した通り、27のうち25の本発明の抗PD-1抗体は、親HEK293株における結合と比較して、HEK293/hPD-1細胞への強い結合を示した。2つの本発明の抗体(H2aM7795N、およびH4H9068P2)は、他の試験した抗体と比較して、ヒトPD-1を発現する細胞により弱く結合した。
【0241】
本発明の抗PD1抗体をさらに特徴付けるために、全長ヒトPD-1(受託番号NP_
005009.2のアミノ酸1~289)で安定的に遺伝子導入したヒト胎児由来腎臓細胞株(HEK293;ATCC、番号CRL-1573)(HEK293/hPD-1)への用量依存性結合を、FACSにより決定した。
【0242】
アッセイのため、トリプシンを用いて、接着細胞を剥離し、完全培地で遮断した。細胞を遠心分離し、染色バッファー(PBS中の1% FBS)中6×10細胞/mLの濃度で再懸濁した。抗PD1抗体のEC50およびEmaxを決定するために、細胞懸濁液90μLを、30分間、氷上で、染色バッファー中5pM~100nMの範囲にある最終濃度まで希釈した抗PD-1抗体および対照の連続希釈液と共にインキュベートした(mAbのない試料を、陰性対照として含んだ)。次に、細胞を遠心分離し、ペレットを、染色バッファーで1回洗浄して、未結合の抗体を取り除いた。細胞を、30分間、氷上で、ヒトFc(Jackson ImmunoResearch、番号109-136-170)、またはマウスFc(Jackson ImmunoResearch、番号115-136-071)を認識するアロフィコシアニン結合2次F(ab’)いずれかと共に、続いてインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、洗浄バッファーで1回洗浄して、未結合の2次F(ab’)を取り除き、次に、一晩、Cytofix(BD
Biosciences、番号554655)と染色バッファーの1:1希釈液で固定した。翌日、細胞を遠心分離し、ペレットを染色バッファーで1回洗浄し、再懸濁し、濾過した。Hypercyt(登録商標)サイトメーターにおいて、蛍光測定値を取得し、ForeCyt(商標)(IntelliCyt;Albuquerque、NM)において解析して、平均蛍光強度(MFI)を決定した。GraphPad Prismを用いて、11カ所の応答曲線に渡る4つのパラメーターのロジスティックな方程式から、EC50値を計算した。それぞれの抗体についてのEmaxを、試験した最大抗体用量(100nM)における結合として定義した。
【0243】
【表21】
【0244】
【表22】
【0245】
表20において示した通り、28のうち25の本発明の抗PD1抗体は、33.18pM~2.59nMの範囲にあるEC50値、および37,789~11,368MFIの範囲にあるEmax値でHEK293/hPD-1細胞への用量依存性結合を示した。3つの本発明の抗PD1抗体は、HEK293/hPD-1細胞への強い結合を示さず、それ故、EC50値を決定することはできなかった。アイソタイプ対照のいずれも、このアッセイにおいて測定可能な結合を示さなかった。
【0246】
表21において示した通り、6つのうち3つの本発明の抗PD1抗体は、509pM~4.81nMの範囲にあるEC50値、および39,774~14,111MFIの範囲にあるEmax値でHEK293/hPD-1細胞への用量依存性結合を示した。3つの試験した本発明の抗体は、HEK293/hPD-1細胞に結合したが、プラトーに達しなかった。それ故、それらの正確なEC50値を決定することができず、それらのEC50値を、決定的でないと言及した。アイソタイプ対照のいずれも、このアッセイにおいて測定可能な結合を示さなかった。
【実施例8】
【0247】
T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにおける、PD-1により誘導されるT細胞下方制御の遮断
抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合複合体クラスIまたはIIタンパク質により提示された特異的ペプチドを認識するT細胞受容体(TcR)を刺激することにより、T細胞活性化は起きる。活性化TcRは次にシグナル伝達現象のカスケードを開始させるがこれは、活性化因子-タンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子カッパー-軽鎖-エンハンサー(NFκb)のような転写因子により駆動されるレポーター遺伝子によりモニターすることができる。T細胞応答は、T細胞上で恒常的または誘導的いずれかで発現する共受容体の会合を介して調節される。1つのかかる受容体は、PD-1、T細胞活性の負の調節因子である。PD-1は、そのリガンド、PD-L1と相互作用し、APCまたはがん細胞を含む標的細胞上で発現し、ホスファターゼをTcRシグナロソームに動員させ、正のシグナル伝達の抑制をもたらすことにより、阻害性シグナルを送るよう作用する。
【0248】
ヒトT細胞株においてPD-1受容体を通じてPD-1/PD-L1により仲介されるシグナル伝達と拮抗する抗PD-1抗体の能力を、図1において示すインビトロ細胞ベースのアッセイを用いて評価した。バイオアッセイを発展させて、2種の哺乳類細胞株:ジ
ャーカット細胞(不死化T細胞株)、およびラージ細胞(B細胞株)に由来する混合培養物を利用することにより、APCとT細胞の間での相互作用により誘導させたT細胞シグナル伝達を測定した。バイオアッセイの第1の成分について、ジャーカットクローンE6-1細胞(ATCC、番号TIB-152)を、製造元の指示に従い、Cignal Lenti AP-1 Luc Reporter(Qiagen-Sabiosciences、番号CLS-011L)で形質導入した。レンチウイルスは、最小CMVプロモーター、TPA-誘導性転写応答エレメント(TRE)のタンデム繰り返し、およびピューロマイシン耐性遺伝子の制御下で、ホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードした。操作したジャーカット細胞株を、ヒトPD-1の細胞外ドメイン(ヒトPD1のアミノ酸1~170;受託番号NP_005009.2)、ならびにヒトCD300aの膜貫通型および細胞質ドメイン(ヒトCD300aのアミノ酸181~299;受託番号NP_009192.2)を含むPD-1キメラで、続いて形質導入した。得られた安定な細胞株(ジャーカット/AP1-Luc/hPD1-hCD300a)を選択し、500μg/mL G418+1μg/mL ピューロマイシンを添加したRPMI/10%FBS/ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンにおいて維持した。
【0249】
バイオアッセイの第2の成分について、ラージ細胞(ATCC、番号CCL-86)を、レンチウイルス(pLEX)ベクターシステム(Thermo Scientific
Biosystems、番号OHS4735)にクローン化したヒトPD-L1遺伝子(受託番号NP_054862.1のアミノ酸1~290)で形質導入した。PD-L1陽性のラージ細胞(Raji/hPD-L1)を、PD-L1抗体を用いてFACSにより単離し、1μg/mL ピューロマイシンを添加したIscove/10% FBS/ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン中で維持した。
【0250】
APC/T細胞相互作用を刺激するために、T細胞上のCD3に結合する、1つのFabアーム、ならびにラージ細胞上のCD20に結合する、他の1つのFabアーム結合を含む二重特異性抗体(CD3×CD20二重特異性抗体;例えば、US20140088295において開示される通り)を利用した。アッセイにおける二重特異性分子の存在は、T細胞上のCD3サブユニットをラージ細胞上で内在性に発現させたCD20に結合させることにより、T細胞およびAPCの活性化をもたらした。抗CD3抗体とのCD3のライゲーションは、T細胞の活性化を導くことを示した。このバイオアッセイにおいて、PD1/PD-L1相互作用を遮断する抗体は、阻害性シグナル伝達を無効化し、続いて、AP1-Luc活性化の増大を導くことにより、T細胞活性をレスキューした。
【0251】
ルシフェラーゼベースのバイオアッセイにおいて、10% FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを添加したRPMI1640を、アッセイ培地として用いて、細胞懸濁液および抗体希釈液を調製し、抗PD1モノクローナル抗体(mAb)のスクリーニングを行った。スクリーニングの日に、固定濃度CD3×CD20二重特異性抗体(30pM)の存在下での抗PD1mAbのEC50値、ならびに二重特異性抗体のみのEC50を決定した。次の順序で、細胞および試薬を、96ウェルの白色平底プレートに加えた。抗PD1mAb EC50の決定のため、まず、固定濃度のCD3×CD20二重特異性抗体(最終30pM)を調製し、マイクロタイタープレートのウェルに加えた。次に、抗PD1 mAbおよび対照の12回の連続希釈液を加えた(1.7pM~100nMの範囲にある最終濃度;アッセイ培地のみを含む余分のウェル)。二重特異性抗体(単独)のEC50決定のため、0.17pM~10nMの範囲にある最終濃度の二重特異性抗体(アッセイ培地のみを含む余分のウェル)を、マイクロタイタープレートのウェルに加えた。続いて、2.5×10/mL ラージ/hPD-L1細胞懸濁液を調製し、1ウェル当たり20μLを加えた(最終細胞数/ウェル 5×10細胞)。プレートを室温(15~20分)に置き、一方、2.5×10/mL ジャーカット/AP1-Luc/hPD1(ecto)-hCD300a(TM-Cyto)の懸濁液を調製し
た。ジャーカット懸濁液(最終細胞数/ウェル 5×10細胞)20μLをウェル毎に加えた。共培養液を含有するプレートを、5~6時間、37℃/5% COにおいてインキュベートした。試料をデュプリケートで試験し、ONE-Glo(商標)(Promega、番号E6051)試薬の添加後、ルシフェラーゼ活性を検出し、Victorルミノメーターにおいて相対的光単位(RLU)を測定した。
【0252】
固定(30pM)濃度のCD3/CD20二重特異性抗体を含むが、抗PD-1抗体を含まないアッセイ条件を100%に設定することにより、それぞれのスクリーニングした抗体についてのRLU値を正規化した。この条件は、PD-1/PD-L1阻害性シグナルの存在下で二重特異性分子により誘発される最大AP1-Luc応答に対応した。抗PD-1抗体の添加に際して、阻害性シグナルは抑制され、刺激の増大をここでEmax、つまり試験した最大抗体用量(100nM)の存在下でのシグナルのパーセンテージ増大として示した。試験した抗PD1抗体の有効性を比較するために、GraphPad Prismを用いて、12カ所の応答曲線に渡る4つのパラメーターのロジスティックな方程式から、正規化したRLU値が150%の活性化に達した抗体の濃度を決定した。結果を、それぞれ、表22および表23において要約した。
【0253】
【表23】
【0254】
【表24】
【0255】
表22において示した通り、31のうち25の試験した本発明の抗PD-1抗体は、239~163の範囲にあるEmax値でPD-1/PD-L1阻害を遮断した。31のうち6つの本発明の抗PD-1抗体は、このアッセイにおいて試験したら、PD1/PD-L1相互作用の実質的な遮断を示さなかった。
【0256】
表23において示した通り、4つのうち2つの試験した本発明の抗PD-1抗体は、それぞれ、150および343%のEmax値でPD-1/PD-L1阻害を遮断した。4つのうち2つの本発明の抗PD-1抗体は、このアッセイにおいて試験したら、PD1/PD-L1相互作用の実質的な遮断を示さなかった。
【実施例9】
【0257】
抗PD-1抗体のインビボにおける効能
関連インビボモデルにおいて、選択した数の本発明の抗PD-1抗体の効果を決定するために、腫瘍細胞の皮下注射を含み、異なる日に開始した3つのMC38.ova腫瘍成長研究を、75% C57/Bl6/25% 129株バックグラウンドにおいて、マウスPD-1の細胞外ドメイン(PD-1 HumInマウス)の代わりにヒトPD-1の細胞外ドメインの発現についてホモ接合性であるマウスにおいて行った。
【0258】
研究のため、体重により、研究1について5回の処置または対照群(1群当たり5匹のマウス)、研究2について8回の処置または対照群(1群当たり5匹のマウス)、および研究3について5回の処置または対照群(1群当たり7匹のマウス)に均等にマウスを分けた。0日目に、イソフルレン吸入により、マウスを麻酔し、次に、研究1について、DMEMの懸濁液100μL中のMC38.ova細胞5×10、または研究2および研究3について、DMEMの懸濁液100μL中のMC38.ova細胞1×10を右側腹部に皮下注射した。研究1について、処置群に、3つのうち1つの本発明の抗PD-1抗体、または無関連の特異性を有するアイソタイプ対照抗体いずれか200μgを、実験の3、7、10、14、および17日目に腹腔内注射し、一方、1つの群のマウスを無処置のままにした。研究2について、処置群を、1回用量当たり10mg/kgまたは5mg/kgの3つのうち1つの本発明の抗PD-1抗体、1回用量当たり10mg/kgの1つの本発明の抗体(H4H7795N2)、または10mg/kgの無関連の特異性を有するアイソタイプ対照抗体いずれかを、実験の3、7、10、14、および17日目に腹腔内注射した。研究3について、処置群を、1回用量当たり5mg/kgまたは2.5mg/kgの2つのうち1つの本発明の抗PD-1抗体、または5mg/kgの無関連の特異性を有するアイソタイプ対照抗体いずれかを、実験の3、7、10、14、および17日目に腹腔内注射した。マウスの群のための実験的投薬および処置プロトコールを表2
4において示した。
【0259】
【表25】
【0260】
研究について、それぞれの処置群についてそれぞれの実験の14または17日、および23または24日におけるキャリパー測定およびパーセント生存により決定した平均腫瘍体積を、記録した。加えて、研究の終わりに(研究1について42日、ならびに研究2および研究3について31日)、腫瘍のないマウスの数も評価した。平均腫瘍体積(mm)(±SD)、パーセント生存、ならびに腫瘍のないマウスの数として表した結果を、研究1について表23、研究2について表3、および研究3について表4において示した。
【0261】
【表26】
【0262】
研究1について表25において示した通り、1つの本発明の抗体、H4H7798Nで
処置したマウスは、研究の経過中、検出可能な腫瘍を発生しなかった。H4H9008Pで処置したマウスは、研究の17および24日に対照と比較して、持続した腫瘍体積の低減を示し、これは、それぞれ、実験終了の時点で、5匹のうち3匹のマウス、または5匹のうち4匹のマウスで腫瘍がなかった。対照的に、抗PD1抗体、H4H7795N2の1つでの処置は、対照と比較して、この研究において腫瘍体積の低減における有意な効能を示さなかった。研究の23日まで、H4H7795N2群の5匹のうち1匹のマウスが死亡し、アイソタイプ対照処置群の5匹のうち2匹のマウスが死亡した。無処置群ならびにアイソタイプ対照群において、いく匹かのマウスは、腫瘍の自然退縮を示した(それぞれ、5匹のうち1匹のマウス、および5匹のうち2匹のマウス)。
【0263】
【表27】
【0264】
研究2について表26において示した通り、10mg/kgの1つの本発明の抗体、H4H7798Nで処置したマウスは、研究の経過中、検出可能な腫瘍を発生しなかった。10mg/kg H4H9008P、またはH4H9048P2いずれかで処置したマウスの群は、研究の17および24日において、対照と比較して、腫瘍体積の実質的低減を示した。10mg/kg H4H9008P、またはH4H9048P2いずれかで処置したそれぞれの群の5匹のうち4匹のマウスは、31日において腫瘍がなく、他方、アイソタイプ対照処置群において、5匹のうち1匹のみのマウスが、自然腫瘍退縮の結果として腫瘍がなかった。10mg/kgで試験した1つの抗体、H4H7795N2は、研究の17および24日において、対照と比較して、腫瘍体積の実質的低減を示したが、この抗体は最小の効果的な抗PD1抗体であり、これは、5匹のうち2匹のみのマウスが実験の終わりに生存していたことを伴った。
【0265】
試験した用量(5mg/kg、および10mg/kg)において腫瘍抑制の用量依存性応答を、H4H7798N、H4H9008P、ならびにH4H9048P2で処置した群において観察した。5mg/kgのH4H7798N、またはH4H9008P療法はあまり効果的でなく、21日目の実験の終わりに、5匹のうち4匹の腫瘍のないマウスを伴い、他方、10mg/kgのH4H7798N、およびH4H9008Pの用量群両方において、5匹のうち5匹のマウスに腫瘍がないままであった。
【0266】
2元ANOVA多重比較におけるダネット検定は、参照としての10mg/kg アイソタイプ対照抗体で処置した群と、10mg/kgのH4H7798N、H4H9008P、またはH4H9048P2いずれかで処置した群の間の腫瘍成長における相違は、p値は0.005未満であり統計的に有意であったことが明らかになった。参照としての10mg/kg アイソタイプ対照抗体で処置した群と、5mg/kgのH4H7798N
、H4H9008P、またはH4H9048P2いずれかで処置した群の間の腫瘍成長における相違も、p値が0.05未満であり統計的に有意であった。
【0267】
【表28】
【0268】
研究3について表27において示した通り、5mg/kgの1つの本発明の抗体、H4H7798N、または別の本発明の抗体、H4H9008Pで処置した7匹のうち6匹のマウスは、実験の終わりに腫瘍がなく、他方、アイソタイプ対照群において腫瘍のない動
物は存在しなかった。IgG4対照群において1匹の腫瘍を生じたマウスが、移植後17日目に死亡した。2.5mg/kg用量のH4H9008Pで処置した7匹のうち4匹のみのマウスが、実験の終わりに腫瘍がないままであった。21日において、試験した抗PD-1抗体とアイソタイプ対照群の間で腫瘍体積の相違は、ダネット多重比較後検定を用いた1元ANOVAにより決定し、pは0.01未満であり統計的に有意であった。全4つの抗PD-1抗体は、2.5mg/kgの用量においてより、5mg/kgの用量において同等により効果的であった。
【実施例10】
【0269】
マウス早期処置腫瘍モデルにおいて抗PD-1抗体とVEGFアンタゴニストの併用の抗腫瘍効果
早期処置腫瘍モデルを開発し、抗PD-1抗体とVEGFアンタゴニストの併用の効能を試験した。このモデルにおいて、腫瘍移植の直後に、併用療法を投与した。実験はまた、抗PD-L1抗体単独、およびVEGFアンタゴニストとの併用においても用いた。この実験において用いた抗PD-1抗体は、ラットIgG2bを有する抗マウスPD-1クローン「RPMI-14」(Bio X Cell、West Lebanon、NH)であった。この実験において用いたVEGFアンタゴニストは、アフリベルセプトであった(「VEGF-trap」、または「VEGFR1R2-FcΔC1(a)」としても公知の、VEGF受容体ベースのキメラ分子、この全ての記載を本明細書において他の場所で提供した)。この実験において用いた抗PD-L1抗体は、マウスIgG2aを有する、US20100203056A1(Genentech、Inc.)による抗体「YW243.55S70」のV/V配列を有する抗PD-L1モノクローナル抗体であり、マウスPD-L1と交差反応性であった。
【0270】
この実験モデルについて、結腸-26腫瘍細胞1.0×10を、0日において、BALB/cマウスの皮下に移植した。測定可能な腫瘍の確立に先立ち、3日において開始し、表28に記載の、単独もしくは併用療法の1つ、または対照併用でマウスを処置した。
【0271】
【表29】
【0272】
2週間の期間に渡り5回の異なる時間点において、種々の療法を投与した(すなわち、3日、6日、10日、13日、および19日において注射)。
【0273】
それぞれの療法群における動物を、腫瘍発生率、腫瘍体積、生存期間中央値、および50日における腫瘍のない動物の数の点で評価した。腫瘍成長の程度を、図2(腫瘍成長曲
線)、および図3(28日における腫瘍体積)において要約した。結果も表29において要約した。
【0274】
【表30】
【0275】
いずれかの治療剤単独に関する処置計画と比較して、VEGF Trap+抗PD-1抗体の併用で処置した動物において、腫瘍成長を実質的に低減した(図2および3を参照)。さらに、VEGF Trap+抗PD-1抗体群において、生存を実質的に増大し、これは、70%の動物が腫瘍移植の少なくとも50日後まで生存したことを伴った。対照的に、抗PD-1、ならびにVEGF Trap単独療法群について、50日までの生存は、それぞれ、たった40%、ならびに30%であった(図3、および表29を参照)。
【実施例11】
【0276】
進行した悪性腫瘍を有する患者における、単一療法として、および他の抗がん療法との併用での抗PD-1抗体を用いた繰り返し投薬の臨床試験研究
これは、進行した悪性腫瘍を有する患者における、抗PD-1抗体単独、または放射線療法、シクロホスファミド、もしくは両方との併用での用量増大研究である。この実施例において用いた典型的な抗PD-1抗体(「mAb」)は、配列番号162のHCVR、および配列番号170のLCVRを含んでいた。
【0277】
研究目的
研究の一番目の目的は、進行した悪性腫瘍を有する患者において、安全性、忍容性、単独療法としてまたは標的化放射線との併用でIV投与したmAbのDLT(これが主要な腫瘍切除療法よりむしろ免疫刺激として役立つことを有する目的で)、少ない用量のシクロホスファミド(調節性T細胞応答を阻害することを示した療法)、または両方を特徴付けることである。
【0278】
研究の2番目の目的は:(1)単独療法として、および他の抗がん療法(標的化放射線、少ない用量のシクロホスファミド、または両方)との併用でのmAbの推奨フェーズ2用量(RP2D)を決定すること;(2)単独、およびそれぞれの併用パートナーを伴う場合のmAbの予備的抗腫瘍活性を記載すること;(3)単独療法として、および他の抗がん療法(標的化放射線、少ない用量のシクロホスファミド、または両方)との併用でのmAbのPKを特徴付けること;ならびに(4)mAbの免疫原性を評価することである。
【0279】
研究設計
別々の、標準3+3つの用量増大コホートにおいて(単独療法、放射線療法との併用、シクロホスファミドとの併用、ならびに放射線療法およびシクロホスファミドとの併用における)、安全性を評価する。放射線、シクロホスファミド、または両方との併用療法の
選択は、スポンサーと相談して個々の患者のための療法の最善の選択の治験責任医師による評価に基づく。放射線療法コホートに登録されるためには、患者は、安全に照射することができ、想定される限定的な対症的用量での放射線が医薬上適切であると考えられる病変を有し、応答評価に適切な少なくとも1つの他の病変を有していなければならない。患者は、選択した処置についてのコホートにおいて空きがある場合に限り、登録することを認める。
【0280】
患者は、mAbの最初の投与の前28日以内に、適格性を決定するスクリーニング方法を受ける。患者をmAb単独療法コホートに登録した後、続くコホートの登録は、先のコホートにおけるDLTの発生(すなわち、3人の患者のコホートにおいてDLTのない、または6人の患者の拡大したコホートにおいて1未満のDLT)、および患者の空きがあるかにより、決定する。計画を立てた単独療法投薬レベルは、14日(2週)毎にIV投与した1、3、または10mg/kgである。
【0281】
1mg/kg、または3mg/kg mAb単独療法コホートDLT観察期間の1つまたは両方を、3人の患者のコホートにおけるDLTなしで、または6人の患者の拡大したコホートにおける1未満のDLTで完了したら、患者を、シクロホスファミドまたは放射線療法をその単独療法の用量レベルのmAbと組み合わせたコホートに登録することができる。そのmAb用量レベル+シクロホスファミドについてのコホート、およびそのmAb用量レベル+同一の放射線療法治療計画についてのコホート両方についてDLT観察期間を、3人の患者のコホートにおいてDLTのない、または6人の患者の拡大したコホートにおいて1以下のDLTで完了したら、患者を併用mAb+シクロホスファミド/放射線療法コホートに登録することができる。
【0282】
3mg/kg mAb単独療法コホートDLT観察期間を、3人の患者のコホートにおいてDLTのない、または6人の患者の拡大したコホートにおいて1未満のDLTで完了したら、10mg/kg mAb単独療法コホートを登録してもよい。
【0283】
3mg/kgおよび10mg/kg mAb単独療法コホートは、先の単独療法用量コホート(すなわち、それぞれ、1mg/kg、および3mg/kg)において必要な数の患者が、その用量レベルについて示している最大許容用量(MTD)なく、28日のDLT観察期間をパスした後にのみ、登録する。1mg/kg mAb併用処置コホートは、1mg/kg 単独療法コホートについてのDLT観察期間の完了後にのみ、登録する。3mg/kg mAbを受け取る併用コホートは、それぞれ1mg/kg mAb併用コホートにおいて必要な数の患者が、MTDを示すことなく、DLT観察期間をパスした場合にのみ、登録する。mAbをシクロホスファミドおよび放射線治療計画と組み合わせる3つの併用コホートは、その投薬レベルの対応する2つの併用コホート両方における必要な数の患者が、MTDを示すことなく、DLT観察期間をパスした場合にのみ、登録する。
【0284】
表30は、患者を登録する、用量増大コホートを要約する。
【0285】
【表31】
【0286】
次のいずれかであるものとしてDLTを定義する:非血液学的毒性(例えば、ぶどう膜炎、もしくは任意の他のirAE)、または血液学的毒性(例えば、好中球減少症、血小板減少症、発熱性好中球減少症)。
【0287】
最大許容用量(MTD)を、6人の患者の拡大したコホートの3分の1未満が、第1のサイクルの処置中にDLTを経験する最大用量と定義する。従って、MTDを、6人の患者の拡大したコホートにおいて2例またはそれ以上のDLTの発生に起因して投薬を停止するレベルのすぐ下の用量レベルと定義する。用量増大が、DLTの発生に起因して停止されないなら、MTDを決定されなかったとみなした。この研究において、単独療法群、または個々の併用療法群いずれかについてMTDが規定されない可能性がある。さらに、mAb MTDが、単独療法とそれぞれの併用処置計画の間で異なる可能性がある。
【0288】
研究期間
患者は最大48週の処置を受け、その後、24週の追跡期間をとる。患者は、48週の処置期間が完了するまで、または疾患の進行、受け入れられない毒性、同意の撤回、もしくは別の研究撤回基準のミーティングまで、処置を受ける。最短24週の処置後、確認した完了応答(CR)を有する患者は、処置を中断し、全ての関連研究評価(例えば、効能評価)を続けることを選択してもよい。最短24週の処置後、3つの逐次腫瘍評価について変化していない、安定した疾患(SD)または部分的応答(PR)の腫瘍負荷評価を有する患者も、処置を中断し、全ての関連研究評価(例えば、効能評価)を続けることを選択してもよい。
【0289】
研究集団
この研究のための標的集団は、標準的療法の候補者ではない、進行した悪性腫瘍を有する患者、標準的療法を受けることを望まない患者、または臨床上の利点をもたらす利用可能な療法が予期されない患者;ならびに治癒不可能である悪性腫瘍を有する患者、および標準的療法に応答しなかった患者、もしくは標準的療法にも関わらず腫瘍進行を示した患者を含む。
【0290】
選択基準:患者は、この研究における包含にふさわしい次の基準を満たさなければならない:(1)代替の、利用可能な標準的ケアの治療オプションなしで固形腫瘍の進行を示したこと;(2)応答評価のための少なくとも1つの病変。放射線療法に割り当てられる患者は、指標病変は照射せずに安全に照射することができ、想定される限定的な対症的用量での放射線が医薬上適切であると考えられる少なくとも1つのさらなる病変を必要とす
る;(3)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス1以下;(4)18歳より上;(5)肝臓機能:a.総ビリルビン1.5×正常の上限以下(ULN;肝臓転移が3×ULN以下なら)、b.トランスアミナーゼ3×ULN以下(または肝臓転移なら、5.0×ULN以下)、c.アルカリホスファターゼ(ALP)2.5×ULN以下(または肝臓転移なら、5.0×ULN);(6)腎機能:血清クレアチニン1.5×ULN以下;(7)好中球数(ANC)1.5×10/L以上、c.血小板数75×10/L以上;(8)署名したインフォームドコンセントを用意する能力;ならびに(9)訪問予定、処置計画、臨床検査、および他の研究に関連する方法に応じる能力ならびに意欲。
【0291】
除外基準:次の基準のいずれかを満たす患者は本研究から除外する:(1)irAEのリスクを示唆する、全身性免疫抑制処置での処置を必要とする、有意な自己免疫疾患の進行または最近(5年以内)の証拠;(2)PD-1/PD-L1経路を遮断する剤での先の処置;(3)mAbの最初の投薬に先立ち、4週未満または4半減期(どちらか長い方)、他の免疫調節剤での先の処置;(4)免疫調節剤の例は、CTLA-4の阻害剤、4-1BB(CD137)、OX-40、治療ワクチン、またはサイトカイン処置を含む;(5)活性とみなされる、無処置の脳転移。既に処置した能転移を有する患者は参加してもよい、但し、それらが安定であり(すなわち、研究処置の最初の投与前、少なくとも4週間、画像化による進行の証拠がなく、任意の神経性症状がベースラインに戻っていた)、新たな、または増大する脳転移の証拠が存在しない;(6)mAbの最初の投薬前4週間以内の、免疫抑制性コルチコステロイド投薬(10mgより多い、毎日のプレドニゾン、または等価物);(7)mAbの最初の投薬前6カ月以内の、深部静脈血栓症、肺の塞栓症(画像化の際に同定した無症候性肺の塞栓症を含む)、または他の血栓塞栓症;(8)ヒト免疫不全ウイルスでの公知の感染症、またはB型もしくはC型肝炎ウイルスでの活性感染症を含む、療法を必要とする活性感染症;(9)ここ5年以内の間質性肺炎の既往歴;(10)mAbの最初の投薬前30日以内のいずれかの治験または抗腫瘍処置;(11)一般的な抗体療法、または研究において特異的に用いる剤での処置に起因する、記録されたアレルギー反応、または急性過敏症反応の既往歴;(12)ドキシサイクリン、またはテトラサイクリンに対する公知のアレルギー(mAbにおけるトレース成分の存在に起因する注意);(13)母乳栄養;(14)血清妊娠検査陽性;(15)局所処置により治癒したとみなした、皮膚の制限した/切除した基底もしくは扁平上皮癌、もしくは子宮頸部上皮内癌、または他の局所腫瘍を除き、この研究において処置するもの以外の浸潤性悪性腫瘍のここ5年以内の既往歴;(16)治験責任医師による評価の下、患者が参加に不適格となる、急性または慢性精神問題;ならびに(17)研究中に妥当な避妊を行う気のない、子をなす能力のある男性または女性における継続的な性的活動。
【0292】
研究処置
無菌の単回使用バイアル中の液体として、mAbを供給する。それぞれのバイアルは、25mg/mLの濃度のmAb10mLを取り出すのに十分な容量を含有する。用量調整の指示を、研究参照マニュアルにおいて提供する。外来において、30分のIV注入として設定して、mAbを投与する。それぞれの患者の用量は、個々の体重に依存する。それぞれのサイクル、10%以上の体重における変化に合わせて、mAbの用量を調節しなければならない。単独、ならびに放射線および、またはシクロホスファミドとの併用で、mAbを投与する。
【0293】
単独療法
外来において、48週間14日毎に、30分に渡るIV注入により設定して、mAbを投与する(すなわち、56日サイクルの1日、15±3、29±3、および43±3)。割り当てるべき計画した単独療法治療計画は:(i)48週間14日毎の30分間に渡る1mg/kgIV注入;(ii)48週間14日毎の30分間に渡る3mg/kg注入;
(iii)48週間14日毎の30分間に渡る10mg/kg注入;および(iv)48週間14日毎の30分間に渡る0.3mg/kg注入(MTDは1mg/kg未満であると決定したなら)を含み得る。
【0294】
併用療法
処方を通じて、併用の放射線療法およびシクロホスファミドを供給し、それらの使用、用量、用量改変、低減、または遅延、ならびにそれらの使用をもたらす任意の潜在的AEを、mAbのものと共に追跡する。
【0295】
mAbおよび放射線の同時投与:8日~12日の放射線処置と併用で、48週間14日毎の30分間に渡るIV注入により、mAbを投与する。計画した併用mAbと放射線療法治療計画は:
・48週間14日毎の30分間に渡る1mg/kg mAb注入、加えて30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日)
・48週間14日毎の30分間に渡る1 mg/kg mAb注入、加えて27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日ではない)
・48週間14日毎の30分間に渡る3mg/kg mAb注入、加えて30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日)
・48週間14日毎の30分間に渡る3mg/kg mAb注入、加えて27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日ではない)を含み得る。
【0296】
患者は、mAbの最初の投薬後の1週間に開始する、毎日投与した5回の分量の6Gyとして与えた30Gy、またはmAbの最初の投薬後の1週間に開始する、1日おきに投与した3回の分量の9Gyとして与えた27Gyいずれかを受ける。放射線のため選択した病変は、指標病変を容認しながら、焦点放射線を安全に照射する病変、および制限した放射線のため、考慮した対症投薬が医薬上適切とみなした病変であるべきである。患者のための標的用量は、コホートの割り当てに基づき、標準的放射線腫瘍学実行に従い、正常組織要件に従うべきである。プロトコールにより特定した投薬治療計画における処置を、正常組織基準が合致する場合のみ許可する。正常組織基準が、プロトコールにおいて特定した放射線療法治療計画のいずれかにおいて合致しなかったなら、その患者は、この研究において、併用放射線処置コホートにおける登録に適格でない。
【0297】
mAbおよびシクロホスファミドの同時投与:4回の投薬のため14日毎の200mg/mのシクロホスファミドとの併用で、48週間14日(2週)毎の30分間に渡るIV注入により、mAbを投与する。最初の4回のmAb投薬のそれぞれ1日前に、4回のシクロホスファミド投薬のそれぞれを投与する(第1の56日サイクルの-1、14、28、および42日)。
【0298】
他の薬物との併用で首尾よくシクロホスファミドが用いられているが、シクロホスファミドの代謝の速度および白血球減少活性は、報告によれば、大用量のフェノバルビタールの慢性投与により増大する。シクロホスファミド処置は、コリンエステラーゼ活性の著しくかつ持続性の阻害を引き起こし、従って、塩化スクシニルコリンの効果を増強する。割り当てるように計画される併用mAbとシクロホスファミド治療計画は以下である:
・計4回の投薬のための14日毎(第1の56日サイクルの-1、14、28、および42日)の200mg/mのシクロホスファミド、加えて
・48週間14日毎の30分間に渡る3mg/kg mAb注入(但し、MTD未満
の3mg/kgの単独療法用量;3mg/kgがMTDより高い場合、用量は1mg/kgである)。
【0299】
mAb、放射線、およびシクロホスファミドの同時投与:計画した併用mAb、放射線、およびシクロホスファミド治療計画は以下を含む:
・計4回の投薬のための14日毎(第1の56日サイクルの-1、14、28、および42日)の200mg/mのシクロホスファミド、加えて
・27Gyの放射線療法(9Gy×3回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日ではない)、または
30Gyの放射線療法(6Gy×5回/週;mAbの最初の投薬後所定の1週間、好ましくは、連日)、加えて
・48週間14日毎の30分間に渡る3mg/kg mAb注入(但し、MTD未満の3mg/kgの単独療法用量;3mg/kgがMTDより高い場合、用量は1mg/kgである)。
【0300】
研究変数
1次変数:1次安全性変数は、48週の処置を通じた、DLTの発生率、処置により出現した副作用(TEAE)の発生率および重症度、ならびに異常な検査知見を含む。
【0301】
2次変数:鍵となる2次変数は、以下を含む:
・mAbの血清濃度、および薬物動態(PK)
・指標についての適切な基準を用いて評価した抗腫瘍活性:
・コンピュータ断層撮影(CT)、もしくは磁気共鳴画像法(MRI)により測定した、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)
・RECIST測定が標準的でない特定の腫瘍について、他の評価基準も用いるべきである。
・RECIST測定に適用した免疫関連応答基準(irRC)。
全てのケースにおいて、irRCは、疾患の進行(PD)、SD、CR、またはPRを決定するための管理ツールである。情報の目的のため、標準的RECISTデータも集める。
・抗mAb抗体。
【0302】
研究方法
研究の適格性を決定する、またはベースラインの集団を特徴付ける目的のためのスクリーンングにおいて、以下の方法を行う:(i)血清β-HCG(結果は、最初の投薬前72時間以下でなければならない);(ii)達成した腫瘍材料の回収:患者が所定のインフォームドコンセントを得た後、任意の利用可能な既に回収した腫瘍サンプル(sample)を提供するため用意することを患者に尋ねる;(iii)脳MRI:先の60日において行っていなければ、スクリーニングにおいて、脳MRIが必要とされる;および(iv)胸部x線:先の60日において行っていなければ、スクリーニングにおいて、胸部x線が必要とされる。
【0303】
効能方法:スクリーニング訪問(注入前28日以内)において、および全サイクル中(およそ8週毎)56±3日において、ならびに疾患の進行が疑われる場合、腫瘍評価のためのCTまたはMRIを行う。加えて、研究において進行していない患者について、追跡訪問3、5、および7について、腫瘍評価を行う。CTスキャンまたはMRIを使用することを選択したなら、続いて、同一の様式を用いて評価する。
【0304】
免疫関連応答基準(irRC;Nishino2013年)に従い、腫瘍応答評価を行う。固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)バージョン1.1(Eisenha
uer2009年)よる評価も、補助的探査として行い;しかしながら、個々の患者についての疾患の進行の1次決定はirRCに従って行う。RECIST評価について標的病変として選択した測定可能な病変も、irRC評価についての指標病変として含める。
【0305】
安全性方法:体温、安静時血圧、脈拍、および呼吸を含むバイタルサインも集める。他の方法と同時の訪問においてスケジュール化した場合、臨床検査評価、PK、または探索サンプル採取に先立ち、バイタルサインも測定すべきである。サイクル1中、処置日において処置に先立ち、注入の終わりに、注入後最初の4時間、30分毎、ならびに研究薬物投与の6および8時間後において、バイタルサインを記録する。続くサイクルにおいて、注入に先立ち、30分毎、最初の2時間、次に、研究薬物投与の4時間後まで1時間毎、処置日のバイタルサインを評価し、記録する。
【0306】
訪問時に、徹底的な完全または制限した身体検査を行う。完全な身体検査は、皮膚、頭部、目、鼻、喉、首、関節、肺、心臓、脈拍、腹部(肝臓および脾臓を含む)、リンパ節、ならびに四肢の検査、ならびに簡単な神経性検査を含む。制限した身体検査は、肺、心臓、腹部、および皮膚を含む。
【0307】
標準的12誘導ECGを行う。ベースライン値と比較して、治験責任医師が臨床上有意な変化(悪化)と判断した任意のECG知見をAEとみなし、記録し、モニターする。
【0308】
免疫安全性アッセイは、リウマトイド因子(RF)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、C反応性タンパク質(CRP)、ならびに抗核抗体(ANA)タイターおよびパターンからなる。研究の経過中、RFもしくはANAにおけるベースラインから4倍もしくはそれ以上の増大、またはTSHもしくはCRPの異常レベルを観察したら、次の検査も行う:抗DNA抗体、抗シェーグレン症候群A抗原(SSA)抗体(Ro)、抗シェーグレン症候群B抗原(SSB)抗体(La)、抗サイログロブリン抗体、抗LKM抗体、抗リン脂質抗体、抗膵島細胞抗体、抗好中球細胞質抗体、C3、C4、CH50。部位局所検査室により、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、および国際標準化比(INR)を分析する。
【0309】
安全性
有害事象(AE)は、研究薬物との因果関係があることもないこともある、研究薬物を投与した患者におけるあらゆる有害な医学的出来事である。それ故、AEは、研究薬物と関連するとみなされるか否かに関わらず、あらゆる好ましくなく、かつ意図しないサイン(異常な検査室知見を含む)、症状、または研究薬物の使用に時間的に関連する疾患である。AEはまた、研究薬物の使用に時間的に関連する、既存の状態のいかなる悪化(すなわち、頻度および/または強度における任意の臨床上有意な変化)も含む。原因となる悪性腫瘍の進行は、原因となるがん(時間経過、影響を受けた器官などを含む)の典型的な進行パターンと明確に一致するなら、AEとみなさない。症状が、原因となる悪性腫瘍の進行に排他的に起因すると決定されず、または研究下の疾患について予期される進行パターンに適合しなかったなら、進行の臨床症状をAEとして報告する。
【0310】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量において、死をもたらし、生命を脅かし、患者の入院、または既存の入院期間の延長を必要とし、持続性または有意な無力/無能をもたらし(正常な生命機能を行うその能力の実質的な崩壊)、先天的な異常/出生異常である、任意の有害な医学的出来事である。
【0311】
全てのAEおよびSAEについての患者情報を記録する。
【0312】
統計上の計画
研究用量増大は、用量レベル毎に3人から6人の患者が割り当てられる従来の3+3設計に基づく。研究において登録した患者の正確な数は、プロトコールにより定義されているDLTを観察した数、その時点で定義されている用量レベルを拡大する、またはより少ない用量レベルでの公のさらなるコホートを開始する必要性に依存する。用量増大において次のコホートに必要な開始時登録を行った後、その処置についてMTD未満の従前のコホートのそれぞれへの登録を、(増大中に既に拡大していなければ)計6人の患者まで拡大する。
【0313】
記述統計学のみを用いて、データを要約する。一般に、用量レベルおよび組成により、データを要約する。安全性分析セット(SAF)において、安全性の要約および分析を行う。安全性の1次分析は、処置-緊急AE(TEAE)に基づく。
【0314】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態により、範囲において制限されるべきではない。実際、本明細書に記載されるものに加え本発明の種々の修飾は、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。かかる修飾は、添付の請求の範囲内にあることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【配列表】
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