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特許7562618同軸プラグ用コンタクト装置およびマルチコンタクト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】同軸プラグ用コンタクト装置およびマルチコンタクト装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20240930BHJP
   H01R 24/40 20110101ALI20240930BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R24/40
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022179208
(22)【出願日】2022-11-09
(65)【公開番号】P2023072680
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2021 129 580.7
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2022 109 463.4
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ザミール アブルカセム
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ムンパー
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/181429(WO,A1)
【文献】特開2004-139797(JP,A)
【文献】特開2003-297493(JP,A)
【文献】特開2019-114489(JP,A)
【文献】国際公開第2021/156843(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0391663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
H01R 24/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体コンタクト(5)と、
前記内部導体コンタクト(5)を取り囲む、誘電機能を有する絶縁体(7)と
を備え、
前記内部導体コンタクト(5)は、相手側コンタクトを前記内部導体コンタクト(5)に挿入するための挿入開口部(25)を有し、前記挿入開口部(25)は、前記内部導体コンタクト(5)および前記絶縁体(7)により形成されている複数の挿入ベベル(27)を有し、

前記複数の挿入ベベル(27)は、第一の挿入ベベル(29)および第二の挿入ベベル(31)を有し、
前記内部導体コンタクト(5)の2つの対向する前記第一の挿入ベベル(29)および前記絶縁体(7)の2つの対向する前記第二の挿入ベベル(31)が、共に挿入ファンネル(35)を形成し、

前記2つの対向する第二の挿入ベベル(31)は、前記絶縁体(7)の内面に形成された凸状のベベルであり、
周方向(33)において、前記第一の挿入ベベル(29)と前記第二の挿入ベベル(31)が交互に配置される、
同軸プラグ用コンタクト装置(1)。
【請求項2】
前記内部導体コンタクト(5)は、打ち抜き曲げシーム(45)を有する打ち抜き曲げ部品(43)である、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項3】
前記絶縁体(7)の数は1つであり、前記絶縁体(7)は一体的に形成されている、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項4】
前記コンタクト装置(1)は、2つの同軸ケーブル(4)を接続するためのメス型端部部品である、
請求項3に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項5】
前記内部導体コンタクト(5)および前記絶縁体(7)は、長手方向(19)に沿って延び、前記内部導体コンタクト(5)は、前記長手方向(19)において前記絶縁体(7)のプラグ開口側端部(41)まで延びる、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項6】
前記内部導体コンタクト(5)は、隙間なく前記絶縁体(7)に収容されている、
請求項5に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項7】
前記内部導体コンタクト(5)は、径方向の予張力なしで前記絶縁体(7)に収容されている、
請求項6に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項8】
前記挿入ベベル(27)は、少なくとも部分的に、前記絶縁体(7)に向かって弾性的に屈曲可能な前記内部導体コンタクト(5)のスプリングアーム(37)により形成されている、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項9】
前記絶縁体(7)および前記内部導体コンタクト(5)を取り囲む外部導体コンタクト(13)をさらに備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項10】
前記絶縁体(7)は、前記絶縁体(7)を前記外部導体コンタクト(13)に回転不可能に挿入するための中心合わせ要素(47)を備える、
請求項9に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項11】
前記絶縁体(7)は、前記内部導体コンタクト(5)を前記絶縁体(7)に回転不可能に挿入するためのコーディング要素(51)を備える、
請求項1に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項12】
前記内部導体コンタクトは、前記絶縁体(7)の前記コーディング要素(51)と相互作用し、前記内部導体コンタクト(5)と前記絶縁体(7)との間の少なくとも1つの回転方向の位置合わせを確立するように構成されている相手側コーディング要素(49)を備える、
請求項11に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項13】
前記内部導体コンタクト(5)の前記相手側コーディング要素(49)は、前記絶縁体(7)に挿入されたときの長手方向(19)における前記内部導体コンタクト(5)の位置を制限するように構成されている止め部(59)を形成する、
請求項12に記載のコンタクト装置(1)。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の第1のコンタクト装置(1、1a)と、請求項1から8のいずれか一項に記載の第2のコンタクト装置(1、1b)とを備え、前記第1のコンタクト装置(1、1a)の前記絶縁体(7)および前記第2のコンタクト装置(1、1b)の前記絶縁体(7)は、共通の絶縁体(7a)を形成する、
マルチコンタクト装置(2)。
【請求項15】
前記第1のコンタクト装置(1、1a)の前記内部導体コンタクト(5)および前記第2のコンタクト装置(1、1b)の前記内部導体コンタクト(5)は、前記共通の絶縁体(7a)において対称にかつ/または互いに平行に配置されている、
請求項14に記載のマルチコンタクト装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部導体コンタクト、および内部導体コンタクトを取り囲む誘電機能を有する絶縁体を備える同軸プラグ用コンタクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの同軸コネクタなどの2つのコンタクト装置を嵌合させる、例えばプラグをソケットまたはカップリングと嵌合させる場合、内部の中心コンタクトの誤った位置決めにより、嵌合が妨げられ、中心コンタクトが使用不可能となる程度まで変形する場合がある。連続生産においては、嵌合不良を生じさせることになる同軸プラグ用コンタクト装置が選り分けられる。これは、製造コストの増大につながる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明は、既知のコンタクト装置を嵌合させる場合の誤差の影響の受けやすさを低減する同軸プラグ用コンタクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、内部導体コンタクトが、相手側コンタクトを内部導体コンタクトに挿入するための挿入開口部を有し、挿入開口部が、内部導体コンタクトおよび絶縁体により形成されている複数の挿入ベベル(insertion bevel)を有する点において、上述の同軸プラグ用コンタクト装置についてのこの課題を解決する。
【0005】
これは、挿入開口部が相手側コンタクトの位置決めのより大きな変動を許容するため、挿入ベベルにより嵌合不良のリスクを低減することができるという利点を有する。よって、内部導体コンタクトに課される製造公差および位置公差を緩和することもでき、またそれにより、これらの公差を超過するために選り分ける必要があるコンタクトアセンブリの廃物が低減する。これにより、コンタクト装置の製造コストを低減することができる。内部導体コンタクトも挿入ベベルを形成するので、これを挿入開口部の方向に延ばすことができ、それによりコンタクト装置のRF特性が向上する。
【0006】
本発明はさらに、本発明に係る第1のコンタクト装置と、本発明に係る第2のコンタクト装置とを備え、第1のコンタクト装置の絶縁体および第2のコンタクト装置の絶縁体は、共通の絶縁体を形成する、マルチコンタクト装置(multiple contact arrangement)に関する。
【0007】
第1のコンタクト装置および第2のコンタクト装置は両方、挿入ベベルにより嵌合不良のリスクを低減することができるという利点を有する。
【0008】
本発明に係る同軸プラグ用コンタクト装置および本発明に係るマルチコンタクト装置は、以下で説明するさらなる任意選択的な特徴により改善することができる。これらの追加的な特徴は、必要に応じて互いに組み合わされてもよく、個々の特徴が省略されてもよい。
【0009】
絶縁体は、誘電体、すなわち電気的に弱いまたは非導電性の物質からなっていてよい。
【0010】
同軸プラグ用コンタクト装置は、特に同軸コネクタであってよい。
【0011】
同軸コネクタは、好ましくは同軸ソケットまたは同軸カップリングであってよい。これらは、ピン形状の相手側コンタクトを受け入れるように構成されるメス型内部導体コンタクトを有する。別途明示しない限り、同軸コネクタの各部の互いに対する位置決めを同軸コネクタの組み立て状態と称し、組み立て状態において、例えば、絶縁体は内部導体コンタクトを取り囲む。マルチコンタクト装置の一実施形態において、第1のコンタクト装置の内部導体コンタクトおよび第2のコンタクト装置の内部導体コンタクトは、共通の絶縁体において対称にかつ/または互いに平行に配置されてよい。
【0012】
マルチコンタクト装置の一実施形態において、内部導体コンタクトは、第1の内部導体コンタクトであってよく、マルチコンタクト装置は、第2の内部導体コンタクトを備えてよい。両方の内部導体コンタクト、すなわち第1の内部導体コンタクトおよび第2の内部導体コンタクトは、同一に形成されてよい。
【0013】
マルチコンタクト装置において、第1のコンタクト装置の絶縁体および第2のコンタクト装置の絶縁体は、単体構造で、すなわち一体に、互いに接続または形成される。
【0014】
特に、そのようなマルチコンタクト装置は、二軸コネクタ(twinaxial connector)であってよい。これは、シールドが施された2つの内部導体または内部導体コンタクトを有する。両方の内部導体コンタクトは、相手側コンタクトを内部導体コンタクトに挿入するための挿入開口部を有し、それにより、2つの内部導体コンタクトの挿入開口部は各々、それぞれ内部導体コンタクトおよび絶縁体により形成される複数の挿入ベベルを有する。
【0015】
第1の内部導体コンタクトおよび第2の内部導体コンタクトは、共通の絶縁体において対称に、かつ/または互いに平行に配置されてよい。
【0016】
さらなる実施形態において、マルチコンタクト装置は、本発明に係る2つよりも多くのコンタクト装置を有していてよく、またしたがって2つよりも多くの内部導体コンタクト、例えば3つ、4つ、5つまたはそれより多くの内部導体コンタクトを有していてよい。これらは、例えば収容される相手側コンタクトの直径に関して、全てが同一の形状であってもよく、または全てが異なっていてもよい。
【0017】
よって、絶縁体に設けられる受け入れ開口部(凹部、ポケットまたは貫通孔とも)の数は、コンタクト装置の数、またはマルチコンタクト装置の内部導体コンタクトの数に対応していてよい。好ましくは、受け入れ開口部は、挿入方向に平行に、かつ互いに平行に延びる。さらに好ましくは、受け入れ開口部は、互いから等距離に配置され、それにより、内部導体コンタクトを互いから等距離に絶縁体に挿入または挿入することもできる。
【0018】
マルチコンタクト装置は、二軸コネクタ、特に二軸オス型プラグまたは二軸メス型ソケットであってよい。
【0019】
二軸コネクタは、一対の内部導体を介して平衡信号を伝送するように設計される差動コネクタであってよい。これは、より大きいデータ伝送レートが可能となること、および、接続される複数の端子が接続ごとにアドレス指定可能となることの利点を有する。そのようなコネクタは、例えばSA-TA3またはDisplayPortインターフェースを介したデータ伝送に用いることができる。
【0020】
第1の内部コンタクトおよび第2の内部コンタクトは、対称に、好ましくは鏡像対称に、同軸コネクタに、特に同軸コネクタのプラグ面に配置されてよい。
【0021】
マルチコンタクト装置は、円形のプラグ面を有していてよい。さらなる実施形態において、マルチコンタクト装置のプラグ面は、2つの半円およびそれら半円の間に配置された矩形から構成される形状を有していてよい。ここで、半円の直径は、半円に接する矩形の辺の辺長に対応する。
【0022】
以下の説明において、内部導体コンタクトを有する同軸プラグ用コンタクト装置の任意選択的な特徴を説明する。内部導体コンタクトおよびその構成要素の説明は、第2のコンタクト装置の第2の内部導体コンタクトに転用可能である。同軸プラグ用コンタクト装置を、以下では同軸コネクタと称する。
【0023】
同軸コネクタは、複数の挿入ベベルが挿入ファンネル(insertion funnel)を共に形成することにより、改善することができる。そのような挿入ファンネルは、内部導体コンタクトに課される製造公差および位置公差を緩和することができ、挿入開口部への相手側コンタクトの挿入を容易にする。
【0024】
よって、内部導体コンタクトの各挿入ベベルは、絶縁体の挿入ベベルに隣接することが好ましい。よって、挿入ベベルは、交互に配置されて挿入ファンネルを形成してよい。これは、内部導体コンタクトまたは絶縁体について公差の連鎖が形成されることがなく、内部導体コンタクトおよび絶縁体の個別の公差が考慮されるという利点を有する。この場合、個別の公差の場合における実現可能な誤差の影響の受けやすさを、公差の連鎖の場合よりも低くすることができる。
【0025】
周方向は、好ましくは同軸コネクタの軸の周りを延びていてよい。好ましくは、同軸コネクタの軸は、その延伸方向に平行に配置されまたは向けられる。
【0026】
マルチコンタクト装置において、周方向は、第1の内部導体コンタクトまたは第2の内部導体コンタクトの軸の周りを延びていてよい。各内部導体コンタクトについて、それぞれの周方向が定義されてよい。
【0027】
同軸コネクタのさらなる好適な構成において、内部導体コンタクトの2つの対向する挿入ベベルおよび絶縁体の2つの対向する挿入ベベルが、挿入ファンネルを形成してよい。そのように、挿入ベベルを同軸コネクタの軸に関して互いに反対側に、特に互いに正反対に配置することは、内部導体コンタクトおよび絶縁体の挿入ベベルの配置を簡単に実現することができるという利点を有する。正反対に配される挿入ベベルは各々、同軸コネクタの軸の周りに互いに対して90°回転されていてよい。
【0028】
特に好ましくは、内部導体コンタクトおよび絶縁体は、長手方向に沿って延びていてよく、上記長手方向は、それぞれ同軸コネクタの軸または嵌合方向に対応し、内部導体コンタクトは、長手方向において絶縁体のプラグ開口側端部まで延びていてよい。
【0029】
マルチコンタクト装置において、内部導体コンタクトおよび共通の絶縁体は各々、それぞれ同軸コネクタの軸に平行かつ嵌合方向に平行な向きである長手方向に沿って延びていてよい。
【0030】
絶縁体のプラグ開口側端部は、内部導体コンタクトの挿入開口部と同じ方向を向く端部である。
【0031】
絶縁体に対する内部導体コンタクトのそのような配置は、いくつかの利点を有する。
【0032】
一方では、この配置により、内部導体コンタクトが嵌合方向において絶縁体と共に好ましくは面一で終端するので、同軸コネクタの高周波特性が向上する。よって、挿入開口部に挿入されるコンタクト要素が、絶縁体のプラグ開口側端部と内部導体コンタクトのプラグ開口側端部との間で支えなしで延びる場合、高周波特性が低下することになるが、これを防止することができる。さらに、内部導体コンタクトの、挿入開口部に挿入されるコンタクト要素に対する位置決め距離を最適化することができ、それにより、高周波特性を向上させることができる。同軸コネクタの高周波特性は、例えば、RF信号の減衰品質または伝送品質または干渉信号に対するシールドの品質である。
【0033】
よって、内部導体コンタクトは、絶縁体を越えて延びないことが好ましく、またそのプラグ開口側の端部から後退しないことが好ましい。
【0034】
よって、マルチコンタクト装置において、内部導体コンタクトのいずれもが共通の絶縁体を越えて延びていないことが好ましく、内部導体コンタクトのいずれもがそのプラグ開口端部から陥凹していないことが好ましい。
【0035】
同軸コネクタのさらなる好適な構成において、内部導体コンタクトは、隙間なく絶縁体に受け入れられてよい。特に、絶縁体および内部導体コンタクトの挿入ベベルは、互いに隣接して面一に配置されてもよく、または互いに面一に接触していてもよく、または、好ましくは挿入開口部の直径の10分の1未満の間隙距離を空けて、互いに離隔して配置されてもよい。さらに好ましくは、間隙間隔は、挿入開口部の直径の20分の1未満であってよい。
【0036】
内部導体コンタクトを絶縁体に隙間なく収容することで、絶縁体における内部導体コンタクトの詰まりまたは締め付けが防止される。
【0037】
特に、内部導体コンタクトは、径方向の予張力(radial pretension)なしで絶縁体に収容されてよい。これは、同軸コネクタを組み立てるときに内部導体コンタクトの要素および/または絶縁体の要素の径方向の屈曲が不要になり、それにより両方の要素の互いに対する締め付けまたは詰まりが防止されるという利点を有する。
【0038】
特に好ましくは、挿入ベベルは、少なくとも部分的に、絶縁体に向かって弾性的に屈曲可能な内部導体コンタクトのスプリングアームにより形成されてよい。これは、内部導体コンタクトの弾性的に屈曲可能なスプリングアームが、スプリングアームの径方向内方に働く復元力を挿入されたコンタクト要素に及ぼし、それにより、挿入されたコンタクト要素と確実な電気的接続を確立することができるという利点を有する。
【0039】
本発明に係る同軸コネクタは、絶縁体および内部導体コンタクトを取り囲む外部導体コンタクトをさらに備えることにより、改善することができる。外部導体コンタクトは、内部導体コンタクトに平行かつ絶縁体に平行に延びる。好ましくは、外部導体コンタクトはまた、絶縁体のプラグ開口側端部まで延びる。外部導体コンタクトは、絶縁体により内部導体コンタクトから常にガルバニック絶縁される。
【0040】
マルチコンタクト装置において、外部導体コンタクトは、好ましくは両方の内部導体コンタクトを取り囲んでいてよく、それにより、この構成においても、外部導体コンタクトを共通の絶縁体により内部導体コンタクトから常にガルバニック絶縁することができる。
【0041】
同軸コネクタの組み立て中における挿入ベベルの適正な配置を確実にするために、同軸コネクタの絶縁体は、好適な構成において、絶縁体を外部導体コンタクトにねじれを防止して挿入するための中心合わせ要素(centering element)を有していてよい。これらは、好ましくは径方向外方に、すなわち内部導体コンタクトから離れるように延びていてよい。そのような中心合わせ要素により、外部導体コンタクトに対する絶縁体の、または絶縁体に対する外部導体コンタクトの回転方向の向きの設定が容易になる。同様に、外部導体コンタクトへの絶縁体の適正な挿入を確実にすることができる。
【0042】
同軸コネクタは、絶縁体が、内部導体コンタクトを絶縁体に回転させずに挿入するためのコーディング要素(coding element)を備える点において、さらに改善することができる。絶縁体と外部導体コンタクトとの間の回転方向の位置合わせと同様に、コーディング要素は、内部導体コンタクトを絶縁体に対して回転方向に位置合わせし、内部導体コンタクトを絶縁体に案内して挿入するために用いることができる。回転方向の位置合わせは、挿入軸または長手方向の周りで行われる。
【0043】
マルチコンタクト装置において、コーディング要素は各々、対応する内部導体コンタクトの軸の周りにおける内部導体コンタクトの回転方向の位置合わせに用いられる。各内部導体コンタクトは、それぞれのコーディング要素により位置合わせされてよい。
【0044】
回転方向の位置合わせのために、内部導体コンタクトが、絶縁体のコーディング要素と相互作用し、内部導体コンタクトと絶縁体との間の少なくとも1つの回転方向の位置合わせを確立するように構成されている相手側コーディング要素を有する場合が好適である。
【0045】
これらの相手側コーディング要素は、スロットまたは溝の形態のコーディング要素に挿入され案内され得る隆起部として、例えばタブまたはフィンの形態で形成されてよい。
【0046】
特に好ましくは、内部導体コンタクトの相手側コーディング要素は、絶縁体に挿入されたときの長手方向における内部導体コンタクトの位置を制限するように構成されている止め部を形成してよい。よって、相手側コーディング要素は、これら2つの機能、すなわち回転方向の位置合わせおよび止め部の提供を同時に果たすことができる。
【0047】
マルチコンタクト装置において、各コンタクト装置は、対応する第1の内部導体コンタクトまたは対応する第2の内部導体コンタクトについての相手側コーディング要素を含んでいてよい。
【0048】
止め部は、プラグ開口側端部に面する面により実現することができ、これは、内部導体コンタクトが絶縁体に挿入され、その装着位置に達したときに、プラグ開口側端部の逆側を向く絶縁体の当接面と係合する。
【0049】
この装着位置は、本明細書ではさらに論じないラッチ要素により固定されてよい。
【0050】
内部導体コンタクトおよび/または外部導体コンタクトは、打ち抜き曲げ部品(punched-bent part)であってよい。
【0051】
以下、本発明に係る同軸コネクタについて、添付の図面を参照してより詳細に説明する。図面には、同軸コネクタの単に例示的な構成が示されており、同軸コネクタの他の構成においては、図示の同軸コネクタの特徴は、必要に応じて省略されおよび/または互いに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明に係る同軸プラグ用の同軸コネクタ/コンタクト装置の構成の斜視図である。
図2図1の同軸コネクタの分解組立図である。
図3図1に示す線A-Aに沿った本発明に係る同軸コネクタの断面図である。
図4図1に示す線B-Bに沿った本発明に係る同軸コネクタの断面図である。
図5】マルチコンタクト装置の斜視図である。
図6図5に示す線C-Cに沿った図5のマルチコンタクト装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1において、本発明に係る同軸プラグ用コンタクト装置1が示されている。コンタクト装置1は、同軸コネクタ1と称されてもよく、斜視図で示されている。単に例示的に、x方向、y方向およびz方向を表す座標系が示されている。
【0054】
図1に示す同軸コネクタ1は、単に例示的に同軸カップリング3であるが、同軸ソケット(不図示)として構成されてもよい。同軸カップリング3および同軸ソケットは両方、同軸プラグ(これは不図示であり、同軸プラグは、ピン形状の内部導体を有する)と嵌合するように構成される。よって、同軸カップリング3および同軸ソケット(不図示)は、2つの同軸ケーブル4を接続するためのメス型端部部品である。
【0055】
同軸カップリング3は、内部導体コンタクト5、および内部導体コンタクト5を取り囲む絶縁体7を有する。絶縁体7は、誘電体9、すなわち電気絶縁材料11からなる。
【0056】
さらに、同軸コネクタ1は、金属15から作製され得、同軸ケーブル4の外部導体に電気的に接続される外部導体コンタクト13を有する。外部導体は、同軸ケーブル4のシールドに相当する。
【0057】
内部導体コンタクト5、絶縁体7および外部導体コンタクト13は、z方向に平行な向きの嵌合方向15に延びる。同軸コネクタ1のプラグ面17は、嵌合方向15に向く。嵌合方向15は、同軸コネクタ1が延びる長手方向19に対応する。
【0058】
同軸コネクタ1は、プラグ側端部21およびケーブル側端部23を有する。ケーブル側端部23において、同軸ケーブル4が同軸コネクタ1に接続される。これは模式的に示されている。
【0059】
プラグ面17は、内部導体コンタクト5のプラグ開口側端部41および絶縁体のプラグ開口側端部41により形成される。
【0060】
プラグ側端部21において、内部導体コンタクト5は、挿入開口部25を有する。これは、例えば同軸プラグのピン形状の内部導体の形態の相手側コンタクト(不図示)を受け入れるように構成される。
【0061】
図示の同軸コネクタ1の構成において、挿入開口部25は、4つの挿入ベベル27を有する。これらは、内部導体コンタクト5および絶縁体7の両方により形成される。区別を目的として、内部導体コンタクト5の挿入ベベル27を第1の挿入ベベル29と称する場合があり、絶縁体7の挿入ベベル27を第2の挿入ベベル31と称する場合がある。
【0062】
第1の挿入ベベル27および第2の挿入ベベル29は各々、対として形成され、正反対に配される。図示の同軸コネクタ1の構成は、単に例示的に4つの挿入ベベル27を有するが、他の構成においては、略任意の数の第1の挿入ベベル29および略任意の数の第2の挿入ベベル31が設けられてもよい。しかしながら、特に好ましくかつ実現可能なこととしては、いずれの場合も一対の第1の挿入ベベル29および第2の挿入ベベル31が設けられ、いずれの場合も周方向33において第1の挿入ベベル29が第2の挿入ベベル31に後続する。これらの挿入ベベル27は、挿入ファンネル35を形成する。
【0063】
内部導体コンタクト5は、径方向の予張力なしで絶縁体7に収容される。他の構成(不図示)においては、内部導体コンタクト5は、隙間なく絶縁体7に収容されてよい。
【0064】
第1の挿入ベベル27は、同軸コネクタの軸39から離れるように絶縁体7に向かって径方向に屈曲可能である屈曲可能スプリングアーム37に形成される。
【0065】
図2は、同軸コネクタ1の分解組立図を示し、破線は、どのように、すなわちどの方向に沿って内部導体コンタクト5が絶縁体7に受け入れられ、絶縁体が外部導体コンタクト13に受け入れられるかを模式的に示す。
【0066】
図2において、さらに、内部導体コンタクト5および外部導体コンタクト13の両方が、打ち抜き曲げシーム45を有する打ち抜き曲げ部品43であることがわかる。
【0067】
図2はまた、対になった第1の挿入ベベル29および第2の挿入ベベル31を示す。第1の挿入ベベル29は内部導体コンタクト5により形成され、第2の挿入ベベル31は絶縁体7により形成される。
【0068】
絶縁体7を外部導体コンタクト13に対して適正な向きにするために、絶縁体7は、中心合わせ要素47を有する。
【0069】
内部導体コンタクト5を絶縁体7に対して適正な向きにするために、絶縁体7は、コーディング要素51を有する。これらは、絶縁体7の内側に形成され、図4に示されている。
【0070】
内部導体コンタクト5は、絶縁体7のコーディング要素51と相互作用するように設計される相手側コーディング要素49を有する。
【0071】
図示の構成において、内部導体コンタクト5の相手側コーディング要素49は、絶縁体7の凹部55または溝57に挿入され得るタブまたはフィン53として形成される。図示の構成において、コーディング要素51は、凹部55または溝57として形成される。
【0072】
他の構成においては、溝57が内部導体コンタクト5に形成されてもよく、フィン53が絶縁体7に形成されてもよい。相互作用するコーディング要素49、51の他の構成も想到可能である。
【0073】
中心合わせ要素47、コーディング要素51および相手側コーディング要素49により、絶縁体7を外部導体コンタクト13に対して、または内部導体コンタクト5を絶縁体7に対して回転方向に位置合わせすることが可能である。
【0074】
内部導体コンタクト5の相手側コーディング要素49はまた、止め部59を形成する。これは、長手方向19における、絶縁体7に挿入されたときの内部導体コンタクト5の位置を制限するように構成される。この目的で、止め部59は、図4に示すように、絶縁体7の当接面61に当接してよい。
【0075】
図3において、図1の同軸コネクタ1は、点線A-Aに沿った断面で示されている。内部導体コンタクト5および絶縁体7は、長手方向19に沿って延びることがわかる。内部導体コンタクト5はまた、長手方向19に沿って絶縁体7のプラグ開口側端部41まで延びる。これにより、内部導体コンタクト5の画定された連続的なシールドが常に確保され、相手側コネクタと嵌合した後にも内部導体の画定された連続的なシールドが確保されるので、同軸コネクタ1の高周波特性が向上する。
【0076】
同軸コネクタ1のこの構成は、矩形の形態で模式的に示されている試験先端部(test tip)63を、同軸コネクタ1のプラグ側端部21に、すなわちプラグ面17に向かって移動させ、それと接触させることができるというさらなる利点を有する。この試験先端部63により、内部導体コンタクト5に接触することができる。これにより、絶縁体7における内部導体コンタクト5の位置を決定する、または適正な位置を確認することが可能となる。
【0077】
さらに、図3において、内部導体コンタクト5が、絶縁体7のラッチ開口部69において、ラッチフック67の形態のラッチ要素65により固定されることがわかる。
【0078】
図5および図6においては、マルチコンタクト装置2が示されている。マルチコンタクト装置2は、同軸コネクタ1と称される場合もあり、二軸コネクタ1cである。また、図示の二軸コネクタは、同軸カップリング3、すなわち特に二軸カップリング3aである。
【0079】
コンタクト装置1の前述の構成とは対照的に、マルチコンタクト装置2は、2つのコンタクト装置1を有する。第1のコンタクト装置1aおよび第2のコンタクト装置1bは、同一である。よって、マルチコンタクト装置は、第1の内部導体コンタクト5aおよび第2の内部導体コンタクト5bを有する。内部導体コンタクト5aおよび5bの要素は、前述の構成の内部導体コンタクト5の要素に対応する。
【0080】
よって、図示のマルチコンタクト装置2は、第1の挿入ファンネル35aおよび第2の挿入ファンネル35bを有する。
【0081】
そのようなマルチコンタクト装置2は、例えば、より高いデータレートを有する対称信号を一対の内部導体コンタクト5を介して伝送することができるという利点を有する。そのようなコネクタおよびケーブルは、SA-TA3またはDisplayPortインターフェースとのコンタクトに有利に用いられ得る。内部導体コンタクト5は、互いに隣接して配置され、互いにガルバニック絶縁される。
【0082】
図示のマルチコンタクト装置2の構成はまた、第2の挿入ベベル31、第1の挿入ベベル29、誘電体9すなわち絶縁材料11からなる絶縁体7、および外部導体コンタクト13などのさらなる要素を有する。図示のマルチコンタクト装置2において、第1のコンタクト装置1aの絶縁体7および第2のコンタクト装置1bの絶縁体7は単体構造であり、すなわち単一部品で形成され、共通の絶縁体7aを形成する。
【0083】
図示のマルチコンタクト装置2は、長円形のプラグ面17aを有する。これは、2つの半円および矩形から構成され、矩形がそれらの半円の間に配された形状を表す。
【0084】
プラグ面17の代替的な幾何形状が、円形のプラグ面17bの形態で、図5の右側に模式的に示されている。
【0085】
図6において、図5のマルチコンタクト装置2は、線C-Cに沿った断面図で示されている。第1の内部導体コンタクト5aおよび第2の内部導体コンタクト5b、ならびに挿入ファンネル35aおよび35bの同一の構成を明確に見ることができる。両方の内部導体コンタクト5は、プラグ側端部21まで同じ距離を延びる。両方の内部導体コンタクト5はまた、外部導体コンタクト13により完全に囲まれ、共通の絶縁体7aにより互いにかつ外部導体コンタクト13からガルバニック分離される。
【0086】
さらに、共通の絶縁体7aの内側の内部導体コンタクト5aおよび5bは、図1図4の内部導体コンタクト5とは形状がわずかに異なることがわかる。プラグ側端部21において、すなわちプラグ面17の要素の構成、および特に相手側コンタクトの挿入を容易にするそれらの機能に関しては、2つの構成は異ならない。図1図5と比較してわかるように、プラグ面17の全体的な幾何形状、また内部導体コンタクト5の数が異なり、したがって挿入ファンネル35の数が異なる。
【符号の説明】
【0087】
1 同軸プラグ用コンタクト装置/同軸コネクタ
1a 第1のコンタクト装置
1b 第2のコンタクト装置
1c 二軸コネクタ
2 マルチコンタクト装置
3 同軸カップリング
3a 二軸カップリング
4 同軸ケーブル
5 内部導体コンタクト
5a 第1の内部導体コンタクト
5b 第2の内部導体コンタクト
7 絶縁体
7a 共通の絶縁体
9 誘電体
11 絶縁材料
13 外部導体コンタクト
14 金属
15 嵌合方向
17 プラグ面
17a 長円形のプラグ面
17b 円形のプラグ面
19 長手方向
21 プラグ側端部
23 ケーブル側端部
25 挿入開口部
27 挿入ベベル
29 第1の挿入ベベル
31 第2の挿入ベベル
33 周方向
35 挿入ファンネル
35a 第1の挿入ファンネル
35b 第2の挿入ファンネル
37 屈曲可能スプリングアーム
39 同軸コネクタの軸
41 プラグ開口側端部
43 打ち抜き曲げ部品
45 打ち抜き曲げシーム
47 中心合わせ要素
49 相手側コーディング要素
51 コーディング要素
53 タブまたはフィン
55 凹部
57 溝
59 止め部
61 当接面
63 試験先端部
65 ラッチ要素
67 ラッチフック
69 ラッチ開口部
x x方向
y y方向
z z方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6