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特許7562632絶縁材として使用するための代替的ガス混合物の分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】絶縁材として使用するための代替的ガス混合物の分離方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/00 20060101AFI20240930BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F25J3/00
B01D5/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022502933
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2020063858
(87)【国際公開番号】W WO2021013403
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102019119741.4
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522020184
【氏名又は名称】ディロ アルマツーヘン ウンド アンラゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】グロム セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェッスル マティアス
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0096896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
F17C 1/00-13/12
H02B 13/00-13/08
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用ガスおよび少なくとも1種類の二次ガスからなるガス混合物から利用ガスを回収するための方法であって、
A)圧縮機(11)内で前記ガス混合物を圧縮するステップ、
B)圧縮された圧縮ガス混合物を圧力容器(93)へ移送するステップ、
C)圧力容器(93)内の圧力を、それが前記圧力容器(93)内の現在温度における利用ガスの蒸気圧の少なくとも2倍となり、かつ、前記圧力容器(93)の圧力が前記圧力容器(93)内の現在温度において二次ガスの蒸気圧より少なくとも5%低くして、利用ガスが液相へ行き、二次ガスを含有する気相が残るまで、前記圧力容器(93)内の圧縮ガス混合物を冷却するステップ、
D)前記圧力容器(93)から二次ガスを含有する気相を除去するステップ、
E)液化利用ガスを前記圧力容器(93)から精製容器(95)へ移送するステップ、
F)前記液化利用ガスを前記精製容器(95)内で加熱するステップ、
G)精製容器(95)内の内部圧力が前記精製容器(95)内の現在温度における前記利用ガスの蒸気圧に相当するまで、前記精製容器(95)から前記気相を抽出するステップ
を少なくとも含む構成であって、
前記精製容器(95)内の内部圧力と前記精製容器(95)内の温度はセンサーによって継続的に測定され、これらのセンサーからの測定値に基づいた制御は、精製容器内で利用ガスの蒸気圧に到達すると間もなく抽出を停止し、
1つ以上の圧力および/または温度センサーが精製容器(95)内に設けられ、その測定値は、気相抽出の電子制御、および精製タンク内のヒーターおよび温度の制御に使用される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガス混合物の前記圧力容器(93)への移送B)が周期的に実施され、前記圧力容器(93)からの二次ガスを含有する気相の除去D)前に液相と気相に分離させるための分離時間を経過させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液化利用ガスの移送E)が、前記圧力容器にガス混合物が0.75(+/-20%)kg/lを超えて充填された際に実施される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記精製容器(95)内の前記液化利用ガスの加熱F)が前記圧力容器内での圧縮ガス混合物の冷却C)中に生じる廃熱を利用し、それを前記精製容器(95)に供給する暖房機器としての熱交換器によって達成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出G)中に前記精製容器(95)から抜き取られた気相が前記圧力容器(93)へ再循環される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
利用ガスの蒸気圧曲線が二次ガスの蒸気圧曲線を下回る、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ガス混合物から利用ガスを回収するプラントであって、少なくとも以下の構成要素:
前記ガス混合物を圧縮するための圧縮機(11)、
圧縮ガス混合物を収容するための圧力容器(93)、
ここで、前記圧力容器(93)は、前記圧縮ガス混合物を冷却するための冷却装置(931)を備える、
かつ、前記圧力容器(93)は、二次ガスを含有する気相のための除去管(1401)を備える、
かつ、前記圧力容器(93)は、移送管(1351)を介して精製容器(95)に接続され、この管は液化利用ガスを移送する働きをする、
ここで、前記精製容器(95)には、前記液化利用ガスを加熱するための暖房機器(951)が設けられている、
抽出管(1331)上に配置され、前記精製容器(95)から気相を抜き取る抽出装置、
および分配管(1361)ならびに、
精製された利用ガスは前記分配管(1361)を介して分配され得る
構成であって、
前記精製容器(95)内の内部圧力と前記精製容器(95)内の温度はセンサーによって継続的に測定され、これらのセンサーからの測定値に基づいて、精製容器内で利用ガスの蒸気圧に到達すると間もなく抽出を停止する制御手段を有し、
1つ以上の圧力および/または温度センサーが精製容器(95)内に設けられ、その測定値は、気相抽出の電子制御、および精製タンク内のヒーターおよび温度の制御に使用される、
ことを特徴とする、プラント。
【請求項8】
前記精製容器(95)内の内部圧力が前記精製容器(95)内の現在温度における利用ガスの蒸気圧に相当するまで前記精製容器(95)から気相を抜き取る調節装置が抽出装置上に設けられている、請求項に記載のプラント。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実施することまたは使用することによって、以下の二次ガス:酸素、窒素および/または二酸化炭素のうち少なくとも1つまたは複数を含むガス混合物から利用ガスC4-ニトリル(2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンニトリル)および/またはC5-ケトン(1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オン)を回収するための、請求項およびのいずれか一項に記載のプラントの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用ガスおよび少なくとも1種類の二次ガスからなるガス混合物から利用ガスを回収するための方法に関する。このガス混合物は、まず圧縮され、圧力容器に移送され、そこで冷却が起こる。次に、前記圧力容器から二次ガスを含有する気相が取り出され、液化利用ガスが精製容器に移送される。その後、前記精製容器において、液化利用ガスが加熱され、さらなる気相を抜き取ることによって精製される。本発明はさらに、ガス混合物から利用ガスを回収するためのプラントに関する。最後に、本発明は、ガス混合物から利用ガスを回収するための方法を実施するためのプラントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
工業適用においては、しばしばガス混合物が使用される。これらのガス混合物が使用された後には、それらの成分を処理するため、またはそれらをさらに使用するために、通常、それらを再びそれらの個々のガス成分に分離する必要がある。
【0003】
ガス混合物は、例えば、電気スイッチ設備のための保護ガスとして使用される。これまで、最も一般的な保護ガスはSF6であり、これは極めて良好な絶縁特性を備えている。しかしながら、SF6は気候変動をもたらすことから、近年では、SF6と技術的に同等の特性を備え、同時により環境に優しい他の保護ガスまたは絶縁ガスが開発されている。これらの代替的な保護ガスまたは絶縁ガスはガス混合物により形成される。例えば、このようなガス混合物は、C4-ニトリル(2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンニトリル)またはC5-ケトン(1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オン)に基づく。保護ガスまたは絶縁ガスを形成するためのガス混合物のベースとなるこれらのガスを以下、利用ガスと呼称する。保護ガスまたは絶縁ガスとしてのガス混合物を形成するために、二次ガスとして知られる1種類以上のガスが利用ガスに混合される。これらの二次ガスは、例えば、窒素または二酸化炭素であり得る。利用ガスと二次ガスの混合比は、ガス混合物が使用される適用に合わせられる。このようなガス混合物が、例えばスイッチ設備における絶縁ガスとして使用される場合、これらのガス混合物は、例えば、望まれない空気との混合が起こる場合など、混入が起こる場合がある。この場合、さらなる、望まれない成分(二次ガスとも呼称される)を含有するガス混合物が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、利用ガスおよび少なくとも1種類の二次ガスからなるガス混合物をそれらの個々のガス成分に再び分離するための解決策の必要がある。まず、非意図的に不純物が混入したガス混合物を解放することが必要である。さらにまた、個々の成分から、例えば、個々の成分の混合比が互いに異なる新たなガス混合物を生成するために、混入のないガス混合物を再びそれらの個々の成分に分離する必要もある。特に電気スイッチ設備用の保護ガスおよび絶縁ガスの分野では、このような解決策が大いに必要である。しかしながら、他の技術分野でもガス混合物は確実に分離しなければならず、ガス混合物から利用ガスを回収しなければならない。
【0005】
よって、本発明の目的は、ガス混合物をそれらの個々の成分に確実に分離するための解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの目的は、利用ガスおよび少なくとも1種類の二次ガスからなるガス混合物から利用ガスを回収するための方法であって、
A)圧縮機内で前記ガス混合物を圧縮するステップ、
B)前記圧縮ガス混合物を圧力容器へ移送するステップ、
C)圧力容器内の圧力を、それが前記圧力容器内の現在温度における利用ガスの蒸気圧の少なくとも2倍となり、かつ、前記圧力容器の圧力が前記圧力容器内の現在温度において二次ガスの蒸気圧より少なくとも5%低くなるようにして、利用ガスが液相へ行き、二次ガスを含有する気相が残るまで、前記圧力容器内の圧縮ガス混合物を冷却するステップ、
D)前記圧力容器から二次ガスを含有する気相を除去するステップ、
E)液化利用ガスを前記圧力容器から精製容器へ移送するステップ、
F)前記液化利用ガスを前記精製容器内で加熱するステップ、
G)精製容器内の内部圧力が前記精製容器内の現在温度における前記利用ガスの蒸気圧に相当するまで、前記精製容器から前記気相を抽出するステップ
を少なくとも含む方法によって達成される。
【0007】
本発明の方法は、ガス混合物を分離し、それから利用ガスを回収するために提供される。ガス混合物は利用ガスおよび少なくとも1種類の二次ガスからなる。しかしながら、ガス混合物は通常、複数の二次ガスを含む。少なくとも1種類の二次ガスは、混合物からの利用ガスの回収の結果として残り、従って、ガス混合物の分離が果たされる。
【0008】
第1の方法ステップにおいて、ガス混合物は、圧縮機を用いて圧縮される。ガス混合物は、このステップで好適な圧力まで圧縮される。本発明の方法は、利用ガスを液化するとともに1種類または複数の二次ガスを気相中に残す目的を有する。従って、気体の二次ガスまたは液体の利用ガスのいずれかを除去することによる分離が特に簡単である。よって、第1の方法ステップにおいて圧縮により設定される好適な圧力は、その後の方法ステップで利用ガスが適宜液化されるが1種類または複数の二次ガスは液化されないように選択されなければならない。このような好適な圧力の設定は、理想的には、圧縮機内の初期圧縮によってもっぱら果たされる。代わりに、例えばさらなる圧縮または減圧による圧力のさらなる適合は、圧縮機と圧力容器の間または圧力容器内に設けることができる。
【0009】
第2の方法ステップにおいて、圧縮ガス混合物が圧力容器に移送される。圧力容器は、ガス混合物の、その個々の成分への最初の分画が行われる場所である。ガス混合物は圧縮中に予め生成された圧力下で圧力容器へ移送され、まず一時的にそこに貯蔵される。バルブおよびガス混合物を精製するための装置、例えば、フィルターが圧縮機と圧力容器の間の経路に設けられる。圧力容器は、圧力容器とその中に存在するガス混合物の冷却を可能とする冷却装置を含む。次に、圧力容器内に存在するガス混合物が冷却される。通常、二次ガスよりも有意に低い蒸気圧を有する利用ガスが液化する圧力と温度の組合せが圧力容器内に設定される。同時に、二次ガスは圧力容器内で気体を維持するような圧力と温度の組合せが設定される。ガスが気体で存在するか液体で存在するかを決定する決定因子は、優勢圧力が対応するガスの蒸気圧を上回るか下回るかである。従って、蒸気圧は現在温度に依存する。ガスが液体状態から気体状態となる条件または状況は、このガスの蒸気圧と呼称することができる。別の表し方をすれば、この条件はまた、ガスが他の方向で気体状態から液体状態となる凝縮点にも相当する。蒸気圧という用語は、通常、ある環境に液相と気相が一緒に存在する場合に使用される。このような環境で蒸気圧を下回ると、ガスは気体となり、蒸気圧を上回ると液体となる。凝縮点という用語を使用する場合には、液相と気相の混合物が絶対的に必要なわけではない。凝縮点を上回ると、ガスは常に気体状態である。この場合、液体ガスの相は存在してはならない。よって、純粋な気相が存在する場合、蒸気圧を下回るという特性は、凝縮点を上回るという特性に等しいといえる。本発明によれば、気体ガス混合物は、第1のステップにおいて、その現在温度における全てのガス成分の蒸気圧を下回る圧力まで圧縮することにより圧縮される。この状態において、ガス混合物は、そのガス混合物の全成分が気体形態で存在する状態で圧力容器に導入される。次に、圧力容器内の温度が降下される。この温度の降下の結果として、ガス成分の蒸気圧が降下する。圧力容器内の温度は、圧力容器内で優勢な圧力が設定された温度における利用ガスの蒸気圧より有意に高くなるまで降下される。圧力容器内のこの圧力と温度の組合せにおいて、利用ガスは液体状態となる。圧力容器は、圧力容器内の優勢条件下の利用ガスのガス圧の少なくとも2倍となるように設定される。このために、圧力容器の圧力は利用ガスのガス圧よりも有意に高くなるように設定され、これにより、利用ガスが実際に完全に液化されることを保証する。実施において、この完全な液化は、圧力容器内の圧力が利用ガスの蒸気圧の3~5倍である場合に特に十分に達成され得ることが見出されている。圧力容器内の圧力と温度の組合せは、同時に、圧力が二次ガスの蒸気圧より少なくとも5%低くなるように設定される。二次ガスの蒸気圧からこのような間隔をとることで、前記二次ガスが確実に完全に気相中に留まり、一部が液化することもなくなる。二次ガスのタイプによって、これはまた圧力容器内の優勢条件下に全く蒸気圧がないこともある。これは例えば窒素により形成される二次ガスの場合である。このような二次ガスが優勢条件下に蒸気圧がなければ、圧力容器内の圧力は二次ガスが確実に気相中に留まるに十分低い。他の二次ガス、例えば、二酸化炭素は、圧力容器内の優勢条件下に蒸気圧がある。このような二次ガスの場合、圧力容器の内部の圧力は、二次ガスの蒸気圧よりも好ましくは5~40%、特に好ましくは10~30%低くなるように設定する。この設定の結果として、二次ガスのほとんど大部分がガス混合物から分離される。しかしながら、利用ガスの残りは圧力容器内の気相中に留まり、逆に、二次ガスの残りは大部分が利用ガスからなる液相に留まる。
【0010】
圧力容器内のガス混合物の最初の分画の後、二次ガスを含有する気相は、圧力容器から除去される。この目的で、バルブが付けられた適当な除去管が有利には圧力容器の上部領域に設けられる。
【0011】
さらなる方法ステップにおいて、液化利用ガスは、圧力容器から精製容器に移送される。この精製容器内で、中になお存在する二次ガスの残りを除去する目的で、利用ガスの第2の精製が実施される。この利用ガスの精製容器への移送は通常、圧力容器内で優勢な圧力によって駆動される。
【0012】
精製容器は、精製容器とその中に存在する液化利用ガスを加熱する少なくとも1つの暖房機器を含む。精製容器内でのこの加熱の結果として、その中に存在するガスの蒸気圧は、圧力容器内の条件よりも高くなる。この蒸気圧の上昇のために、液化利用ガス中になお存在する二次ガスの残りは気相へ行き、結果として液化利用ガスが残る。同時に、液体利用ガス中の1種類または複数の二次ガスの溶解度は、精製容器内の温度の上昇により低下し、従って、二次ガスは気相へ行き、液体利用ガスが残り、このようにして利用ガスが精製される。
【0013】
さらなる方法ステップにおいて、分離された二次ガスの残りを含有する気相は、次に、精製容器から抜き取られる。この抽出ステップにおいて、精製容器内で圧力低下が起こり得る。抽出は、精製容器内の内部圧力が最小値として、現在温度における利用ガスの蒸気圧に相当するまで実施される。従って、精製容器内の優勢圧力は常に、容器内の現在温度における利用ガスの蒸気圧以上となる。利用ガスと二次ガスの完全な分離を保証するために、精製容器内の内部圧力は、抽出中に利用ガスの蒸気圧に低下する。結果として、二次ガスの残りは利用ガスから効率的に分離される。利用ガスの蒸気圧に極めて近い圧力では、利用ガスもまた気体状態となり始める。よって、精製容器から抜き取られた気相も、相対的な量の利用ガスを含有し得る。しかしながら、本発明によれば、精製容器にて液化状態で収集される分離された、または回収された利用ガスの良好な純度のためには、精製容器の内部圧力を利用ガスの蒸気圧に極めて近い圧力に設定することが不可欠である。この方法ステップの終了の後、精製容器内に極めて高い純度で、液体状態で存在する。精製容器から抜き取られる利用ガスの残りの回収は、以下にさらに記載されるように、本方法の任意選択の実施形態の手段によって可能である。
【0014】
特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、上記のように正確に個々の方法ステップの順序で実施される。しかしながら、特定の適用においてより良い結果をもたらす場合には、これらの方法ステップの順序を変更することもできる。
【0015】
さらに、本提案は有利には、ガス混合物が特定の適用においてガス混合物が存在する容器から、圧縮A)の前に吸引ポンプの手段によって抜き取られるようにする。この実施形態において、ガス混合物は、圧縮前に、それが工業的に使用される容器から取り出される。例えば、このような容器は、ガス混合物が保護ガスまたは絶縁ガスとして使用される電気スイッチ設備のハウジングであり得る。吸引ポンプは極めて低い抽出圧力を可能とする。このように低い抽出圧力は、通常極めて低い蒸気圧を有する利用ガスが抽出手順中に確実に気相に留まることを保証する。容器からのガス混合物の抽出において、抽出されるガス混合物を精製するためのフィルターは、吸引ポンプの前または後に設置することができる。スイッチ設備において保護ガスまたは絶縁ガスとして使用されるガス混合物は、スイッチ設備から直接抜き取った後に本発明の方法を実施するために圧縮に送ることができる。代わりに、スイッチ設備または容器からの吸引ポンプによる抽出はまた緩衝容器内で行ってもよい。ガス混合物は、この場合、本発明の方法のための圧縮のためにこの緩衝容器に供給され得る。ガス混合物が緩衝容器に一時的に貯蔵される利点は、本発明の方法を実施するためのプラントがガス混合物の使用とは異なる場所に配置できるということである。この場合、吸引ポンプは緩衝容器と構造的に一体としてもよいし、またはそれから分離してもよい。
【0016】
本提案の好ましい実施形態において、ガス混合物は、吸引ポンプを用いて実施される抽出ステップ後に、精製、特に濾過される。この実施形態において、ガス混合物は、抽出後、圧縮機による圧縮の前に精製される。精製のためには、種々のタイプのフィルターを提供することができる。
【0017】
さらに、精製容器からの気相の抽出G)の後、精製容器内の液相に留まっている精製された利用ガスが分配される。この実施形態において、気相の抽出後に精製容器の底部に集まる精製された利用ガスが精製容器から取り出され、分配される。このような分配は、貯蔵容器、例えば、ガス容器中へ行うことができる。回収された利用ガスは次に、新たな使用のための貯蔵容器に取ることができる。例えば、貯蔵容器は、回収された利用ガスが新たなガス混合物と混合される混合プラントに接続することができる。
【0018】
有利な実施形態において、ガス混合物は、圧縮A)と移送B)の間に乾燥および/または精製、特に、濾過される。この実施形態において、ガス混合物の精製および/または乾燥は、圧縮と圧力容器の間で起こる。この精製および/または乾燥は、圧力容器への移送B)の前または最中に行うことができる。乾燥は、ガス混合物中に存在する水分または湿気が除去されることを意味する。精製は通常、フィルターの補助で実施される。第1の精製ステップが圧縮前に実施され、第2の精製ステップが圧縮後に実施される二段階精製を実施することも可能である。
【0019】
ガス混合物は圧縮A)において5~20バール、特に、10バールの圧力に圧縮されることが賢明である。この圧力範囲は、C4またはC5がガス混合物から利用ガスとして回収される方法に特に好適である。この圧力は、圧力容器における現在温度において利用ガスの蒸気圧より有意に高いが二次ガスの蒸気圧を有意に下回る。よって、この圧力範囲は、利用ガスと二次ガスの第1の分離に特に好適である。
【0020】
さらに好ましい実施形態において、圧力容器内での冷却ステップC)において、ガス混合物は、-30~-60℃の温度、特に、-45~-50℃の温度まで冷却される。圧力容器内での冷却時のこの温度範囲は、上記の好ましい、特にガス混合物からC4またはC5を回収するために特に好適な圧力範囲と特に組合せられる。上記で示されるように、圧力容器内での冷却に関するこれらのパラメーターは、圧力が利用ガスの蒸気圧より有意に高いが、それと同時に圧力が二次ガスの蒸気圧より低い条件を作り出す。これらの条件下で、利用ガスは確実に着目する液体状態となり、二次ガスは気体状態となる。
【0021】
さらに、冷却C)では、5~20分間、特に、10分間実施することが有利である。圧力容器内での冷却は通常、周期的に実施される。これは、圧縮からのガス混合物がまず圧力容器に移送されることを意味する。この移送はその後中断され、冷却が開始される。5~20分の時間は、圧力容器内に利用ガスは液体形態で存在するが、二次ガスは気体形態で存在する状態を作り出すために特に有用であることが判明した。当然のことながら、冷却は示された範囲よりも短いまたは長い時間実施することもできる。
【0022】
ガス混合物の圧力容器への移送B)では、周期的に、かつ、圧力容器からの二次ガスを含有する気相の除去D)の前に液相と気相に分離させるための分離時間が経過されるよう実施されることが有利である。ガス混合物の圧力容器への移送は有利には、連続的に実施されずに周期的に実施される。これは、圧縮から圧力容器へのガス混合物の移送が第1のステップで実施されることを意味する。第2のステップにおいて、移送は中断され、圧力容器内で、圧力容器のさらなる充填がない状態で冷却は実施される。圧力容器内に所望のパラメーターが確立された後に時間が経過する。この分離時間の間に、液化利用ガス中に存在する気体の二次ガスが上方に抜け、液体利用ガスの上に気体形態で集まる。分離時間がなければ、気体二次ガスの比較的大きな残存量が液体利用ガス中に存在するであろう。分離時間が経過して二次ガスが抜けた後に、二次ガスを含有する気相が圧力容器から取り出される。
【0023】
さらに、本提案は有利には、除去D)で取り出された二次ガスを含有する気相が処理または破壊されるようにする。特に保護ガスまたは絶縁ガスの場合、二次ガスは、環境または気候に害がないと同時に安く買える。このような場合、さらなる適用に二次ガスを再利用する価値はない。ここでは処理または破壊の方が実施が簡単で安い。
【0024】
本提案の好ましい実施形態において、液化利用ガスの移送E)は、圧力容器にガス混合物が0.75(+/-20%)kg/lを超えて充填された際に実施される。この充填およびまた液化利用ガスの排出または精製容器への移送は、好ましくは周期的に実施される。この液化利用ガスの移送は、有利には0.75(+/-20%)kg/l、すなわち+または-20%の許容範囲で0.75kg/lの充填密度が圧力容器に存在した際に実施される。充填密度がそれより高いと、二次ガスを含有する気相を収集するために十分な空間が圧力容器内に残らない。充填密度がそれより低いと、圧力容器内にはわずかな液体利用ガス相しか存在せず、従って、移送が十分でなくなる。記載の充填密度は、実施上好適であることが判明している。しかしながら、圧力容器の形状または大きさが変更される場合には、異なる範囲の充填密度が液化利用ガスの移送の開始に最適である場合がある。
【0025】
さらに、精製容器は、液化利用ガスの移送E)の前に排気される。この実施形態において、精製容器は液体利用ガス相が圧力容器から移送される前に排出または排気される。結果として、精製容器内に優勢な逆圧がなくなるか、または極めて低くなり、液体利用ガス相が遮られることなく精製容器に移送され得る。加えて、このことは、移送される利用ガス相に精製容器内に存在する残留ガスが混入しないことを保証する。
【0026】
有利な実施形態において、精製容器内での液化利用ガスの加熱F)は、電気的に作動する暖房機器を用いて果たされる。この実施形態において、加熱は、電気または電子暖房機器を用いて実施される。このような暖房機器の動力は特に調節が簡単であり、精製容器の内部の条件の確立は特に簡単となる。暖房機器を制御するための調節回路に組み込まれる1以上の温度センサーは通常、精製容器の内部に設けられる。
【0027】
さらに好ましい実施形態において、精製容器内での液化利用ガスの加熱F)は、圧力容器内での圧縮ガス混合物の冷却C)中に発生する廃熱を利用し、それを精製容器に供給する暖房機器としての熱交換器によって達成される。圧力容器内のガス混合物を冷却する際には通常、熱ポンプが使用される。これにより圧力容器の外部に廃熱が生じ、そしてこれを精製容器内の利用ガスを加熱するために有利に使用することができる。このような熱交換器は、本発明の方法を実施するための全エネルギー消費量を著しく低減し、これは本方法を実施するためのプラントをエネルギー効率の極めてよいものとする。
【0028】
さらに、加熱は熱交換器によって、加えて電気暖房機器によって実施されることが有利である。この実施形態において、加熱は熱交換器と電気暖房機器の組合せによって達成される。加熱の主要部分は有利には、特にエネルギー効率の良い熱交換器によって実施される。精製容器の温度の微調整は、事実上リアルタイムかつ高精度で調節可能な電気暖房機器によって実施される。この微調節は、優勢圧力が精製容器内の利用ガスの蒸気圧に極めて近い条件を設定するために重要である。よって、熱交換器と電気暖房機器の組合せはエネルギー効率が良く、しかもクリーンな単離または利用ガスの回収に極めて効率的である。
【0029】
抽出ステップG)において精製容器から取り出される気相は圧力容器に再循環させることが有利である。精製容器から抽出された気相は大部分が二次ガスからなるが、残留量の利用ガスもなお含有する。これらの残留量の利用ガスを回収するために、気相は有利には、再び本発明の方法に供給される。これは好ましくは、圧縮機またはポンプを介して圧力容器に戻される気相によって生じる。気相中になお存在する利用ガスは、次に、本方法の2回目の通過で回収される。精製容器から本方法への気相のこの再循環は、利用ガスの特に効率的な回収をもたらす。
【0030】
さらに、本提案は有利には、精製容器からの気相の抽出G)が圧縮機を用いて実施されることを提供する。この実施形態において、精製容器からの抽出は、抜き取られた気相をさらに圧縮する圧縮機によって達成される。この抽出は、最初の圧縮A)に使用されるものと同じ圧縮機を用いて実施することもできるし、あるいは代わりに、別のまたはさらなる圧縮機を使用することもできる。最初の圧縮A)と同じ圧縮機を使用するとこの圧縮機が2回利用され、本方法を実施するためのプラントの構造が簡単になる。
【0031】
本提案の好ましい実施形態において、精製容器内の液相中に残留する精製された利用ガスの分配H)は、前記利用ガスが排気された圧力容器内に分配されることを含む。精製された利用ガスが分配される圧力容器を予め排気することで、利用ガスが再び混入しないことが保証される。同時に、この実施形態において、分配のために設けられた圧力容器内に優勢な逆圧はないか、または極めて小さく、これにより分配が簡単かつ効率的となる。
【0032】
さらに、利用ガスの蒸気圧曲線は、二次ガスの蒸気圧曲線より下にある。本発明の方法は、回収される利用ガスが二次ガスよりも低い蒸気圧および/または高い凝縮点を有するガス混合物の分離に特に好適である。ガス混合物の回収または分離は、蒸気圧におけるこの違いに基づく。電気スイッチ設備の分野では、利用ガスとしてC4またはC5を含有するガス混合物が保護ガスまたは絶縁ガスとしてよく使用されている。これらの2種類のガスは両方とも、慣用される二次ガス、例えば、窒素または二酸化炭素の蒸気圧よりも有意に低い、極めて低い蒸気圧を有する。窒素は、臨界温度よりも上に事実上蒸気圧を持たない。この場合、利用ガスの凝縮点は窒素の凝縮点より高い。
【0033】
有利な実施形態において、処理容器内の内部圧力および温度は、精製容器からの気相の抽出G)中にセンサーによって継続的に測定され、これらのセンサーからの測定値に基づいた制御は、精製容器内で利用ガスの蒸気圧に到達すると間もなく抽出G)を停止する。精製容器からの気相の抽出は、容器の内部圧力がそこで優勢な条件下で利用ガスの蒸気圧に相当するまで行われる。極めて純粋な利用ガスの回収のためには、精製容器の内部圧力が利用ガスの蒸気圧に極めて近くなることが重要である。従って、内部圧力の自動電子調節が有利である。この目的で、処理容器には1以上の圧力センサーおよび/または温度センサーが設けられる。これらのセンサーからの測定値は、気相の抽出の電子調節のため、ならびに暖房機器および処理容器内の温度の調節のために使用される。
【0034】
圧力容器への圧縮ガス混合物の移送B)は周期的または継続的に実施されることが賢明である。上記に示されるように、この移送は有利には周期的に実施される。この場合、圧力容器は、ある時点に充填され、充填が起こらない別の時点では、圧力容器の内容物が冷却され、このようにしてガス混合物が分離される。しかしながら、別法としては、圧力容器の充填、従って、分離された気相の取り出しも連続的とすることも可能である。このような連続的プロセスは、このようなプラントの時間効率を高める。連続プロセスは付加的なコストがかかるので、主として大プラントで経済的に実行可能である。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、移送E)は、圧力容器内に優勢な圧力によって駆動される。この実施形態において、圧力容器から精製容器への液化利用ガスの移送は、圧力容器内に優勢な圧力によって駆動される。この実施形態は特に、従前の精製容器の排出と組み合わせると効率的である。このように、液体利用ガス相の移送のためにポンプなどの付加的プラント構成要素を設けなくてもよい。精製容器内での加熱は、室温における蒸気圧に比べて利用ガスの蒸気圧が高くなる。よって、利用ガスは、冷却された圧力容器から加熱された精製容器へ液相として移送され得る。代わりに、当然のことながら、特に、精製容器への移送を行う補足的プラント構成要素を提供することもできる。例えば、精製容器への液相の移送を補助するために、いずれの場合にも存在する圧縮機を使用することができる。
【0036】
本発明の目的は同様に、ガス混合物から利用ガスを回収するためのプラントによっても達成され、このプラントは、少なくとも以下の構成要素:
前記ガス混合物を圧縮するための圧縮機、
前記圧縮ガス混合物を収容するための圧力容器、
ここで、前記圧力容器は、前記圧縮ガス混合物を冷却するための冷却装置を備える、
かつ、前記圧力容器は、二次ガスを含有する気相のための除去管を備える、
かつ、前記圧力容器は、移相管を介して精製容器に接続され、この管は前記液化利用ガスを移送する働きをする、
ここで、前記精製容器には、液化利用ガスを加熱するための暖房機器が設けられている、
抽出管上に配置され、前記精製容器から気相を抜き取る抽出装置、
および分配管ならびに
精製された利用ガスは前記分配管を介して分配され得る、
を含む。
【0037】
本発明によるプラントは、本発明の方法を実施し、ガス混合物から利用ガスを回収するために好適であり、提供される。現在のところ、本発明の方法の記述におけるプラント構成要素に関してなされる開示は本発明によるプラントに関しても開示されることが明確に指摘できる。
【0038】
本発明のプラントは圧縮機を含み、これはガス混合物を圧縮し、それを圧力容器に供給するために設けられる。圧縮機は少なくとも1つの接続管を介して圧力容器に接続される。ガス混合物の第1の分離は、圧力容器内で起こる。圧力容器は冷却装置を含み、これは圧力容器の内容物を冷却するために設けられる。加えて、圧力容器は除去管を含み、これは圧力容器から二次ガスを含有する気相を除去するために設けられる。除去管は、圧力容器の上部領域に接続され、この接続は液化利用ガス相の液面の上に位置する。加えて、圧力容器は、精製容器へ導く移相管を含む。移相管は圧力容器から液体利用ガス相を取り出し、それを精製容器に移送するために設けられる。移相管は、圧力容器の、利用ガス相の液面の下の下部領域に接続される。本発明のプラントは、ガス混合物の第2の分離を実施するために設けられる上述の精製容器をさらに含む。圧力容器から移送された利用ガスは、精製容器内の利用ガスから大部分除去される二次ガスの残りをなお含有する。本発明によるプラントを使用する場合、99%を超える回収利用ガス純度が可能である。精製容器は暖房機器を含み、これは精製容器の内容物を加熱するために設けられる。この暖房機器は複数の構成要素、例えば、電気的に作動する構成要素および圧力容器からの冷却の廃熱を利用する熱交換器に接続される構成要素を含み得る。さらに、精製容器は、少なくとも1つの抽出管を備えた少なくとも1つの抽出装置を含む。抽出装置は、精製容器から二次ガスを含有する気相を取り出すために設けられる。回収、精製された利用ガスを取り出すために、少なくとも1つの分配管が精製容器に接続される。回収された利用ガスは、この分配管を介して本発明によるプラントから取り出される。
【0039】
本発明によるプラントは、信頼性のある工学構成要素からなり、簡単な構成を有する。よって、本発明によるプラントは極めて信頼性が高く、極めて高純度の利用ガスを回収することを可能とする。
【0040】
精製容器から、精製容器の内部圧力が精製容器内の現在温度における利用ガスの蒸気圧に相当するまで気相を抜き取る調節装置は、好ましくは抽出管上に設けられる。プラントのこの実施形態において、精製容器内の条件、特に、圧力および温度を調節する電子的またはコンピューター制御の調節装置が設けられる。この調節装置は、精製容器の内部に配置されたセンサーからの測定値を入力として使用する。出力として、調節装置は、精製容器からの気相の抽出に影響を及ぼす。この目的で、調節装置は、例えば、抽出管内のバルブの開放に影響を及ぼし得る。類似の調節装置はまた、二次ガスを含有する気相の除去を調節するために圧力容器に設けることもできる。調節装置は、プラント制御システムにより形成されてもよいし、またはプラント制御システムの一部であってもよい。
【0041】
さらに、有利には圧力容器にプラント制御システムに接続される少なくとも1つの圧力センサーまたは温度センサーが設けられる。この実施形態において、プラント制御システムまたは調節装置に接続される少なくとも1つの圧力センサーまたは温度センサーは少なくとも圧力容器上に配置されるが、有利には精製容器にも配置される。測定値を入力として圧力容器および/または精製容器内の条件の自動調節に送る複数の圧力センサーおよび温度センサーを設けることが有利である。
【0042】
ガス混合物から利用ガスを回収するためのプラントは、プラント制御システムを用いて特に効率的に作動することができる。このプラント制御システムは、プラントを少なくとも部分的に、自動的に作動するために設けられる。圧力または温度を決定するための上記センサーとは別に、所望によりさらなるセンサーも設けられる。よって、質量流量を決定し、これらをプラント制御システムに伝達するフローセンサーを、例えば、圧縮機から圧力容器、圧力容器から精製容器および/または精製容器から再び圧縮機への管に設けることができる。加えて、圧力容器内および精製容器内のガス混合物の質量または重量を決定するためのセンサーを設けることができる。これらのセンサーにより決定された測定値から、プラント制御システムはまた、容器内の密度も自動的に決定することができる。プラント制御システムは同様に、特に圧力容器内および精製容器内の個々の成分の蒸気圧をリアルタイムで計算し、その方法の要件に従って内部圧力および温度を調節するために設けられる。さらに、プラント制御システムは、ガス混合物をプラントに導くためまたは分離された成分を取り出すために必要とされる種々のバルブにも働き得る。最後に、湿度およびガス混合物への粒子の混入を決定するセンサーを設けることができる。これらのセンサーからの信号に基づき、次に、プラントは、ガス混合物の乾燥が実施されるべきか精製が実施されるべきかを自動的に決定し、この目的で、フィルターおよび/または乾燥装置に影響を及ぼし得る。
【0043】
さらなる実施形態において、圧力容器から二次ガスを含有する気相を取り出すための除去管内にセンサーを配置することができ、このセンサーは、取り出されたこの気相中に残留する利用ガスの量を監視する。これらのセンサーからの信号に基づき、取り出された気相は、次に、利用ガス濃度が低い場合には処理のために大気中に放出することができる。利用ガス濃度が高すぎれば、利用ガスの残分を除去するまたは少なくともそれらを減らすためにその気相を方法に戻すことができる。
【0044】
さらに、ガス混合物の組成、特に、利用ガスの割合、二次ガスの割合およびこれらのガスの純度を決定するセンサーを、分離されるガス混合物がプラントまたは方法に供給される接続の下流に配置することができる。これらのセンサーからの信号に基づき、プラント制御システムは、次に、精製のためにプラントまたは方法に供給可能なガス混合物の最大量を決定することができる。ガス組成のこの決定は、当然のことながら継続的に実施することもでき、プラント制御システムも同様に、決定される信号に基づいて取り出されるガス混合物の量を継続的に調節することができる。
【0045】
本発明の目的は、以下の二次ガス:酸素、窒素および/または二酸化炭素のうち少なくとも1つまたは複数を含むガス混合物から利用ガスC4-ニトリル(2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンニトリル)および/またはC5-ケトン(1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブタン-2-オン)を回収するための上記実施形態の1つに従うプラントの使用によって、特に、上記の実施形態の1つに従う方法の実行または使用で同様に達成される。本発明によるプラントは、本発明による方法を実施するために特に好適である。CAS番号42532-60-5としても表される利用ガスC4-ニトリル、およびCAS番号756-12-7としても表されるC5-ケトンは両方とも極めて低い蒸気圧を有する。この蒸気圧は、保護ガスまたは絶縁ガスとして使用されるガス混合物中の典型的な二次ガス、例えば、窒素または二酸化炭素の蒸気圧よりも有意に低い。本発明によるプラントは、簡単な構成要素から形成され、個々の成分が異なる蒸気圧を有するガス混合物を効率的かつ高純度で分離するために極めて好適である。加えて、本発明によるプラントは、極めてコンパクトな構成を有し得るので、移動式プラントとして作動可能である。
【0046】
これに関して、特に、プラントに関して記載された全ての特徴および特性およびまた手順はまた本発明の方法の考案にも同様に移行可能であり、本発明に関して使用可能であり、開示されるとも見なされることが指摘される。同じことが逆にも当てはまり、すなわち、方法に関してのみ記載された構造、つまり、装置、特徴はまた、装置またはプラントクレームの範囲内で考慮され、特許請求することができ、同様に開示の一部と見なされる。
【0047】
図面では、特に、実施例で本発明を概略的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明によるプラントの一実施形態の概略図を示す。
図2図2は、本発明による方法の一実施形態のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面において、同一または対応する要素はそれぞれ同じ参照番号により表し、よって、これが意図的でない限り、再度記載されることはない。全記載における開示は、同じ参照番号または同じ構成要素表示を有する同一の部分にも同様に当てはまる。本明細書で選択される位置の表示、例えば、上、下、横などは、直接記載および描写された図に関し、位置の変化の場合には、新たな位置にも同様に当てはまり得る。さらに、示され、記載された、種々の実施例からの個々の特徴または特徴の組合せは、それら自体、独立して発明的解決策または本発明による解決策を示す。
【0050】
図1は、本発明によるプラントの一実施形態の概略図を示す。遠位の右下に接続部101が見られ、ここから分離されるガス混合物をプラントに供給することができる。接続部101は、アプリケーション、例えば、電気スイッチ設備に直接接続することができる。代わりに、ガス混合物用の輸送容器、例えば、ガス容器を接続部101に接続することもできる。接続部101から、接続管が吸引ポンプ21に至る。この接続管はバルブ132によって開閉することができる。迂回管は接続部101から吸引ポンプ21の周囲を巡っている。吸引ポンプ21は、この迂回管によって迂回することができる。この迂回管はバルブ131によって開閉することができる。よって、プラントは、接続部101から吸引ポンプ21の手段によってガス混合物を吸い込む、または代わりに、プラント外部に優勢な圧力下で、ガス混合物を、迂回管を介して次のプラント構成要素または方法ステップに供給する機会を与える。選択される、接続部101からの経路の設定は、バルブ132および131を介して行うことができる。フィルター122は、吸引ポンプ21または迂回管の下流に見られる。ガス混合物はこのフィルター内で精製することができ、例えば、ガス混合物中に存在する浮遊物質が除去できる。圧縮機11はフィルター122の下流に配置される。この圧縮機11は上流の管からガス混合物を吸い込み、このガス混合物を圧縮する。プラントが運転されると、圧縮機11は好ましくは、圧縮機11の後では、ガス混合物が圧力容器93にさらに送られた後に利用ガスの所望の液化が生じるような圧力にすでに設定されているように調節される。実施上、5~20バール、好ましくは10バールに設定される圧縮機11からの出口圧力は特に好適であることが判明した。圧縮機の下流には、接続管においてさらなるバルブ201およびさらなるフィルター121が存在する。バルブ201は、圧縮機11から出て行く管を開閉することを可能とする。フィルター121は、従前に圧縮されたガス混合物を精製するために設けられる。圧縮機11の下流に走る管では、ガス混合物から水分が除去される手段による乾燥装置をさらに設けることができる。
【0051】
フィルター121から、バルブ139によって開閉することができる接続管が圧力容器93に向かう。よって、このバルブ139は、ガス混合物が圧力容器93に供給されるかどうかを決定することを可能とする。圧力容器の充填は通常、周期的に起こり、すなわち、バルブ139はある時間開放され、ある時間閉じられる。このバルブ139の制御はプラント制御システムによって達成することができる。当然のことながら、バルブ139は手動によっても開閉可能である。圧力容器93は、その最長寸法が本質的に垂直に配向される長手形状である。バルブ139から圧力容器93へ向かう管は、後者の上部領域に、特に、圧力容器93の上3分の1に接続される。圧力容器93は、耐圧性かつ定格圧力である。圧力容器93は、圧力容器およびその中のガス混合物を冷却する冷却装置931を含む。図面において、冷却装置931は、ジグザグパターンによって表される。実際には、螺旋またはスパイラル冷却管が有利には、圧力容器93に、圧力容器93の長手方向の大部分に配置される。これは、圧力容器93およびその内容物が均一かつ効果的に冷却されることを保証する。冷却装置931は好ましくは、圧力容器93の内容物を-30~-60℃の範囲、特に好ましくは-45~-50℃の範囲の温度まで冷却する。除去管1401も同様に圧力容器93の上3分の1に接続される。この除去管1401は、圧力容器93で形成された二次ガスを含有する気相を圧力容器93から除去する働きをする。この除去を制御または調節するために、バルブ140が除去管1401内に配置されている。除去管1401は接続部105で終わる。接続部105は、二次ガスを含有する気相がプラントから除去できる容器に接続するために設けられている。取り出される二次ガスを含有する気相はその後、廃棄するか再利用することができる。2つのバルブ135および134により開閉可能な移相管1351は、圧力容器93の最低点に接続される。移相管1351は、圧力容器93を圧力容器の右隣に描かれている精製容器95に接続する。図1の概略図において、精製容器95は圧力容器93よりも小さく示されている。しかしながら、実施上、圧力容器と精製容器95がほぼ同じサイズである場合にプラントは最適に機能することが見出されている。液化利用ガスは、圧力容器93から移相管1351を経て精製容器95に移送される。利用ガスと二次ガスを分離するための第1の分離ステップは、圧力容器93内で実施される。しかしながら、圧力容器93から取り出された利用ガスは、二次ガスの残留をなお含んでおり、これは精製容器95内で除去される。よって、利用ガスと二次ガスの第2の分離ステップは精製容器95内で実施される。
【0052】
精製容器95は、精製容器95およびその中に存在するガスを加熱する暖房機器951を含む。暖房機器951の制御または調節は好ましくは、プラント制御システムによって行われる。描写されている実施形態において、暖房機器951は電気暖房機器として構成されている。しかしながら、他のタイプの暖房機器951、例えば、圧力容器93の冷却装置931からの廃熱を利用する熱交換器も代替として使用可能である。従前に予備精製された液体利用ガスを精製容器95内で加熱する。精製容器95内の圧力は、内部圧力が精製容器95内の優勢な条件下で利用ガスの蒸気圧に極めて近くなるように調節される。内部圧力は、この蒸気圧よりやや大きくなるように選択される。結果として、液体利用ガス中に存在する二次ガスの残りは、蒸気圧が有意に高いために液体利用ガスから放出する。その後、二次ガスの残りは、精製容器95の上部領域に気体形態で集まる。この集まった二次ガスを除去するために、抽出管1331が精製容器95の上端に接続される。この抽出管1331は、バルブ133によって開閉可能である。気体二次ガスが精製容器95から抽出されると、精製容器95の内部の圧力が下がる。このプラントは精製容器95の内部圧力は利用ガスの蒸気圧より低くならないように調節される。バルブ136によって開閉可能な分配管1361を精製容器95の底部に接続する。接続部103は、この分配管1361の末端に設けられる。接続部103において、従前に回収され、二段階で精製された利用ガスがプラントから除去される。この目的で、例えば、液体利用ガスが分配される圧力容器が接続部103に接続される。回収された利用ガスは次に、この圧力容器の助けでそのさらなる使用に送ることができる。
【0053】
抽出管1331は、精製容器95を、吸引ポンプ21と吸引ポンプ21周囲の迂回管を圧縮機11に接続している管に接続している。精製容器95から抜き取られた気相は抽出管1331を介して圧縮機11に戻すことができる。抽出された気相は、利用ガスの残りを含有する。抽出された気相が精製容器95から圧縮機11へ再循環される結果、この気相(これまたガス混合物である)は、もう一度、圧力容器93および精製容器95内での分離ステップに送られる。この再循環により、第1の精製後に気相中に残留する利用ガスの残りは、この方法をさらに通過することで回収されることが保証される。よって、事実上、ガス混合物からの利用ガスの完全な回収が可能である。接続部101を介して供給されたガス混合物、抽出管1331を介して再循環される気相、またはこれら2種類の混合物を吸い込んで圧縮しそれを圧力容器93に供給するかどうかは、バルブ133、131および132を用いて設定することができる。どのガス混合物が圧縮機11により圧縮され輸送されるかというこの設定は、有利には、プラント制御システムによって自動的に実施される。プラント制御システムは、プラント内の様々な場所に配置されている複数の異なるセンサーの信号に頼るものである。
【0054】
図2は、本発明による方法の一実施形態のブロック図を示す。本発明の方法の一実施形態は、図2に流れ図として示される。方法の最初に、分離されるガス混合物が存在するアプリケーションからの抽出30が実行される。この抽出は、アプリケーションから直接または緩衝容器(その助けでガス混合物が実際のアプリケーションから本発明の方法が実施されるプラントへ輸送される)から行うことができる。抽出30は、例えば、上記のように吸引ポンプ21の助けで行うことができる。抽出の後に精製31が行われ、ここで、ガス混合物から混入物および水分が除去される。この精製31は任意選択の方法ステップであり、適切に純粋なガス混合物の場合には省くこともできる。好ましくは圧縮機によって達成される圧縮Aが次の工程で行われる。圧縮Aにおいて、ガス混合物は、好ましくは約10バールの圧力まで圧縮される。この圧縮Aでは、全ての成分、すなわち、利用ガスおよび二次ガスが圧縮機11に気体形態で留まり、液化はまだ起こっていない。しかしながら、利用ガスの部分は、室温の管および成分が存在する圧縮機11の下流では液化することが可能であり、利用ガスのこれらの部分は液化形態で圧力容器93に入ることができる。さらなる任意選択の乾燥/精製32は、圧縮Aの後に行われる。この乾燥/精製32は、適切に純粋なガス混合物の場合には省くこともできる。ガス混合物の純度は、有利には、抽出30中ならびに圧縮Aの前または後にセンサーによって決定され、精製31および乾燥/精製32のステップは、センサー信号に基づいて必要な場合にのみ実施される。次に、ガス混合物の、ガス混合物の第1の分離が行われる圧力容器93への移送Bは行われる。この分離は、圧力容器93での冷却Cの助けで行われる。圧力容器93内に存在するガス混合物は、-45~-50℃の範囲の好ましい温度まで冷却される。圧縮Aによって従前に設定されたこの温度および圧力において、利用ガスが次に液化する。利用ガスは、例えば、C4-ニトリルまたはC5-ケトンであり得、いずれも蒸気圧が極めて低い。冷却Cの間、圧力容器93の内部圧力は、利用ガスの蒸気圧よりも有意に高い、特に、少なくとも2倍となり、同時に、二次ガスの蒸気圧よりも有意に低い、特に、5~40%低くなるように設定または調節される。結果として、二次ガスの大部分は気相中へ行くが利用ガスは液化し、圧力容器93に集まる。二次ガスを含有する気相は、除去Dにおいて圧力容器93から除去される。このようにして、二次ガスの大部分がガス混合物から分離される。取り出された二次ガスを含有する相は次に、処理/破壊33によって本方法から除去される。圧力容器93から精製容器95への液体利用ガスの移送Eは、除去Dの後、または除去Dと並行して行われる。この移送Eは好ましくは、圧力容器93内に優勢な圧力によってのみ行われ、この圧力は液体利用ガスをさらに精製容器95へと向かわせる。次の液体利用ガスの加熱Fは、精製容器95内の暖房機器951によって行われる。ここで、液体利用ガスは約0~20℃の温度まで加熱される。この加熱Fの後または最中に、精製容器95からの気相の抽出Gが行われる。加熱Fおよび抽出Gは、精製容器95の内部圧力が精製容器95内に優勢な条件下での利用ガスの蒸気圧よりもやや大きくなるように調節される。よって、精製容器95の内部圧力は、圧力容器93の内部圧力よりも利用ガスの蒸気圧に有意に近い。精製容器95の、蒸気圧に近いこの内部圧力のために、利用ガス中に液体形態でなお存在する二次ガスの最後の残留物が気相中へ効果的に移行し、抽出Fによってガス混合物から除去される。よって、利用ガスは、精製容器95の底部に極めて高い純度で、液体形態で留まる。本発明を用いると、>99%の純度を達成することができる。分配ステップHでは、精製容器95から、精製された液体利用ガスが取り出される。抽出ステップGにおいて精製容器95から取り出した気相は利用ガスの残留物をなお含有している。利用ガスのこれらの最後の残留物を回収するために、気相は再循環34を介してもう一度圧縮Aおよびその後の方法ステップへ供給される。よって、利用ガスのこれらの最後の残留物は本方法の2回目の通過で回収され、その結果、本方法は極めて高い回収率を示す。
【0055】
本明細書でまたその後に現在提出されている特許請求の範囲は、さらなる保護を得るための権利を失うものではない。
【0056】
ある特徴またはその他の特徴は本発明の目的を達成するために有用であり得るが決定的に重要ではないということは、特に関連の従来技術についても、より精密な審査の上に成り立つものであるので、言うまでもなく、特に主クレームにおいてこのような特徴をもはや持たない考案も、現在のところ同様に想定される。このようなサブコンビネーションも本願の開示により包含される。
【0057】
さらに、種々の例示的形態で記載され、図面に示される本発明の実施形態および変形形態は互いにどのように組み合わせてもよいことに留意されたい。ここでは、所望により個々の特徴または複数の特徴を交換することができる。これらの特徴の組合せも同様に開示される。
【0058】
従属クレームに示される後方参照は、主クレームの対象を各従属クレームの特徴を通じて発展させたことを指す。しかしながら、これらは主クレームに戻って参照する従属クレームの特徴に関する独立した素材保護の獲得を放棄するものと解釈されるべきではない。
【0059】
明細書にのみ開示されている特徴または他に、複数の特徴を包含する特許請求の範囲からの個々の特徴は、そのような特徴が他の特徴と関連して述べられている場合または他の特徴と関連して特に有利な結果が達成される場合であっても、本発明を従来技術から区別するために本発明に不可欠な重要性を持つとして1または複数の独立クレームにいつでも取り込むことができる。
【0060】
参照番号の一覧
11 圧縮機
21 吸引ポンプ
30 抽出
31 精製
32 乾燥/精製
33 処理/破壊
34 再循環
93 圧力容器
95 精製容器
101 接続
103 接続
105 接続
121 フィルター
122 フィルター
131 バルブ
132 バルブ
133 バルブ
134 バルブ
135 バルブ
136 バルブ
139 バルブ
140 バルブ
201 バルブ
931 冷却装置
951 暖房機器
1331 抽出管
1351 移送管
1361 分配管
1401 除去管
図1
図2