(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電力及びデータを供給する貫通スロットを有する印字ヘッドモジュール
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240930BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20240930BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240930BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 611
B41J2/155
B41J2/14 613
B41J2/01 307
B41J2/14 603
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2022513478
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020073135
(87)【国際公開番号】W WO2021047868
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-14
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522074028
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】テランダー,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】バーク,デイビッド
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-216601(JP,A)
【文献】国際公開第2018/141565(WO,A1)
【文献】特開2017-189897(JP,A)
【文献】特開2015-039794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシック基板に装着されている印字チップの複数の列を有するモノリシック基板を含む印字ヘッドモジュールであって、印字チップの各列は、前記
モノリシック基板の厚さを介して規定されている各縦スロットを介して電力及びデータを受け取り、各縦スロットは、印字チップの前記列と平行に
前記モノリシック基板の長さに沿って延在し、印字チップの前記列からオフセットされてお
り、
縦インク供給通路が、前記モノリシック基板
の厚さを介して規定され、各
縦インク供給通路は、印字チップの前記列と平行に
前記モノリシック基板の長さに沿って延在し、
前記縦スロットは、隣接
縦インク供給通路の各対が隣接
縦インク供給通路の間に位置決めされている前記縦スロットの1つを有するように、前記縦インク供給通路に沿って交互に配置されている、
印字ヘッドモジュール。
【請求項2】
さらに、前記モノリシック基板の対向端部から延在
する複数の指部を含み、各指部は、各縦インク供給通路の一部を含み、任意の縦スロットの一部を含まない、請求項1に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項3】
前記モノリシック基板は、重合体、金属合金及びセラミックからなる群から選択されている材料で構成されている、請求項1に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項4】
前記モノリシック基板は、対向する第1及び第2の面を有し、前記第1の面は、前記
モノリシック基板に装着されている1つ又は複数の第1のPCBを有し、前記第2の面は、前記
モノリシック基板に装着されている1つ又は複数の第2のPCBを有する、請求項1に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項5】
前記第1及び第2のPCBは、互いに略垂直である、請求項4に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項6】
前記第1及び第2のPCBは、
前記縦スロットを通る電気コネクタを介して接続されている、請求項4に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項7】
複数の第1のPCBを含み、印字チップの各列は、各第1のPCBに電気的に接続されている、請求項6に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項8】
各印字チップは、ワイヤーボンドを介して各第1のPCBに電気的に接続されている、請求項7に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項9】
各第2のPCBは、電力コネクタ及びデータコネクタからなる群から選択されている1つ又は複数の外部コネクタを含む、請求項4に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項10】
各インク供給通路は、複数のインク出口を規定するベース、及び細長い可撓膜を含むルーフを有し、各印字チップは、前記インク出口のうち1つ又は複数のインク出口からインクを受け取る、請求項4に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項11】
前記細長い可撓膜は、硬質カバーで覆われている、請求項10に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項12】
前記縦インク供給通路のうち各1つの縦インク供給通路は、印字チップの前記列のうち各1つの列に整列されている、請求項1に記載の印字ヘッドモジュール。
【請求項13】
交互に配置されている
複数の印字ヘッドモジュールであって、請求項1~12のいずれか一項に記載の複数の印字ヘッドモジュールを含むモジュラーインクジェット印字ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、インクジェット印字ヘッドに関する。この発明は、高品質ページワイド印刷に適しているロバストなフルカラーモジュラー印字ヘッドを提供するために主に開発されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
出願人は、例えば、国際公開第2011/143700号、国際公開第2011/143699号及び国際公開第2009/089567号(その内容を参照により本明細書に引用したものとする)に記載の様々なMemjet(登録商標)インクジェットプリンタを開発している。Memjet(登録商標)プリンタは、単一通過で印字ヘッドを通り過ぎて印刷媒体を供給する供給機構と組み合わせて1つ又は複数の固定インクジェット印字ヘッドを使用する。従って、Memjet(登録商標)プリンタは、従来の走査型インクジェットプリンタよりも非常に速い印刷速度を与える。
【0003】
比較的短い印刷動作に適しているデジタル印刷機は、ページワイド印刷技術の重要な市場機会を示す。高価な媒体供給システムの大幅な変更無しで、オフセット印刷機における従来のアナログ印刷板を交換するために、ページワイドインクジェット印刷ユニットを使用してもよい。本出願人は、既存のオフセット印刷機を高速デジタルインクジェット印刷機にアップグレードしたいOEMのニーズに適している印刷システムを開発している。例えば、米国特許第10,099,494号(参照により本明細書に引用したものとする)には、1つ又は複数の印刷モジュールを有する単色印字バーを含むモジュラー印刷システムが記載されている。各印刷モジュールは、インクジェット印刷機OEMの要件に適している高品質、高速印刷を与える、各印字ヘッドにおける5つのノズル列によって5x冗長性を有する。米国特許第10,099,494号に記載のように、媒体供給通路に沿って単色印字バーを積み重ねることによってフルカラー印刷用に、モジュラー印刷システムを構成してもよい。
【0004】
モジュラーインクジェット印刷システムのこれらの改良にもかかわらず、このようなシステムを更に改良する必要がまだある。単色印字バーの配列を使用する1つの欠点は、フルカラー印刷用の全印刷ゾーンが比較的長いことである。印字バー間の間隔を最小化する革新的な手段でも、4つの印字バー(例えば、CMYK印字バー)に対する印刷ゾーンの長さは、媒体供給通路に沿ってまだ500mmであり得る。より長い印刷ゾーンは、整列及び正確なドットオンドット配置の点だけでなく、既存のオフセット媒体供給システムへの統合の点でも、難問を引き起こす。例えば、限られた空間は、媒体供給通路でインクジェット印刷エンジンに利用できることがあり、このような印刷エンジンを収容する媒体供給システムを再構成することは、OEMにとってコストがかかる。
【0005】
印刷ゾーンのサイズを最小化する1つの手法は、印刷ゾーンにわたって各印字ヘッド及び互い違いの印字ヘッドから4色のインクを印刷することである。このようなプリンタの1つは、例えば、国際公開第2011/011824号に記載されている。しかし、このようなプリンタに関する問題は、各色通路に冗長性がなく、その結果、必然的に速度及び/又は印刷品質に影響を与えることである。従って、この種のプリンタは、デジタルインク印刷機での使用に通常適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、媒体供給方向に沿って最小長の印刷ゾーンを有するデジタルインクジェット印刷機に適しているモジュラー印刷システムを提供することが望ましい。高品質、高速印刷のために十分な冗長性を有するこのような印刷システムを提供することが特に望ましい。更に、インク、電力及びデータを多数の密集印字チップに供給する効率的な配置が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
第1の態様において、モノリシック基板に装着されている印字チップの複数の列を有するモノリシック基板を含む印字ヘッドモジュールであって、印字チップの各列は、基板の厚さを介して規定されている各縦スロットを介して電力及びデータを受け取り、各縦スロットは、印字チップの列と平行に延在し、印字チップの列からオフセットされている、印字ヘッドモジュールを提供する。
【0008】
第1の態様による印刷モジュールは、有利なことに、複雑な多層基板及び配線配置無しで、インクマニホールドに装着されている印字チップの多数の列に電力及びデータを供給する効果的な手段を提供する。
【0009】
好ましくは、モノリシック基板は、モノリシック基板に規定されている縦インク供給通路を有し、各インク供給通路は、印字チップの列と平行に延在する。好ましくは、縦インク供給通路のうち各1つの縦インク供給通路は、印字チップの列のうち各1つの列に整列されている。
【0010】
好ましくは、縦スロットは、モノリシック基板における縦インク供給通路で交互に配置されている。
【0011】
好ましくは、複数の指部は、モノリシック基板の対向端部から延在し、各指部は、各縦インク供給通路の一部を含み、任意の縦スロットの一部を含まない。
【0012】
好ましくは、モノリシック基板は、重合体、金属合金及びセラミからなる群から選択されている材料で構成されている。
【0013】
好ましくは、各基板は、対向する第1及び第2の面を有し、第1の面は、基板に装着されている1つ又は複数の第1のPCBを有し、第2の面は、基板に装着されている1つ又は複数の第2のPCBを有する。
【0014】
好ましくは、第1及び第2のPCBは、互いに略垂直である。
【0015】
好ましくは、第1及び第2のPCBは、基板に規定されている縦スロットを通る電気コネクタを介して接続されている。
【0016】
好ましくは、印字ヘッドモジュールは、複数の第1のPCBを含み、印字チップの各列は、各第1のPCBに電気的に接続されている。
【0017】
好ましくは、各印字チップは、ワイヤーボンドを介して各第1のPCBに電気的に接続されている。
【0018】
好ましくは、各第2のPCBは、電力コネクタ及びデータコネクタからなる群から選択されている1つ又は複数の外部コネクタを含む。
【0019】
好ましくは、各インク供給通路は、複数のインク出口を規定するベース、及び細長い可撓膜を含むルーフを有し、各印字チップは、インク出口のうち1つ又は複数のインク出口からインクを受け取る。
【0020】
好ましくは、細長い可撓膜は、硬質カバーで覆われている。
【0021】
関連態様において、交互に配置されている、ここに記載のような複数の印字ヘッドモジュールを有するモジュラーインクジェット印字ヘッドを提供する。
【0022】
第2の態様において、印字ヘッドモジュールであって、
複数のインク供給通路を規定するインクマニホールドであって、第1及び第2の対向面を有するインクマニホールドと、
第1の面に装着されている複数の印字チップであって、第1の面に規定されているインク出口のセットを介して各インク供給通路からインクを受け取る複数の印字チップと、
インクマニホールドの第1の面に装着されている第1のPCBであって、各印字チップは、各第1のPCBに電気的に接続されている第1のPCBと、
インクマニホールドの第2の面に装着されている第2のPCBと
を含み、
対向する第1及び第2のPCBは、基板に規定されている縦スロットに延在し通る電気コネクタを介して接続されている、
印字ヘッドモジュールを提供する。
【0023】
好ましくは、印字ヘッドモジュールは、複数の第1のPCBを含む。
【0024】
好ましくは、印字ヘッドモジュールは、印字チップの複数の列を含み、各第1のPCBは、印字チップの各列に接続されている。
【0025】
好ましくは、第1及び第2のPCBは、各硬質PCBである。
【0026】
一実施形態において、第2のPCBは、第1のPCBに垂直である。別の実施形態において、第2のPCBは、第1のPCBに平行である。
【0027】
好ましくは、隣接インク供給通路の各対は、隣接インク供給通路の間に位置決めされているこれらの縦スロットの1つを有する。
【0028】
好ましくは、各インク供給通路は、複数のこれらのインク出口を規定するベース、及び細長い可撓膜を含むルーフを有する。
【0029】
好ましくは、各第2のPCBは、電力コネクタ及びデータコネクタからなる群から選択されている1つ又は複数の外部コネクタを含む。
【0030】
好ましくは、複数の平行印字ヘッドセグメントは、基板の長さに沿って縦方向に延在し、各印字ヘッドセグメントは、列を成して交互に配置されている複数のこれらの印字チップを含み、1列における各印字チップは、インク供給通路のうち各1つのインク供給通路からインクを受け取り、各印字チップは、冗長印刷用に構成されている複数のノズル列を含む。
【0031】
好ましくは、複数の指部は、印字ヘッドモジュールの対向端部から縦方向に延在し、各指部は、印字ヘッドセグメントのうち各1つの印字ヘッドセグメントの一部を含み、隣接印字ヘッドモジュールの指部は、隣接印字ヘッドモジュールの印字ヘッドセグメントが重複するように相互噛合されている。
【0032】
好ましくは、指部の数は、印字ヘッドセグメントの数の2倍である。
【0033】
第3の態様において、
列を成して交互に配置されている複数の印字ヘッドモジュールと、
印字ヘッドモジュールを保持する印字ヘッドの長さを延ばす細長い支持構造体と、
支持構造体に沿って延在し、印字ヘッドモジュールから横方向に離れているインクキャリアであって、印字ヘッドモジュールから横方向に延在する複数のインクコネクタを介して印字ヘッドモジュールの各々に流体的に接続されているインクキャリアと、
インクキャリアのルーフに沿って縦方向に延在する1対の細長い母線であって、各母線は、印字ヘッドモジュールから横方向に延在する1対の各コネクタストラップを介して印字ヘッドモジュールの各々に電気的に接続されており、印字ヘッドモジュールの各々に電力を供給する1対の細長い母線と
を含むモジュラーインクジェット印字ヘッドを提供する。
【0034】
第3の態様による印字ヘッドは、有利なことに、印字ヘッドの1つの側から複数の印字ヘッドモジュールへの電力及びインクの供給を統合する。
【0035】
好ましくは、各印字ヘッドモジュールは、印字ヘッドモジュールの複数の印字チップに電力を供給する、印字ヘッドモジュールから上方に延在する少なくとも1つのPCBを有する。
【0036】
好ましくは、各コネクタストラップは、各PCBに電気的に接続されている。
【0037】
好ましくは、各印字ヘッドモジュールは、PCBを含むPCBハウジングを含み、コネクタストラップは、各PCBハウジングのルーフの方へ母線から水平面で延在する。
【0038】
好ましくは、インクキャリアは、入口及び出口インク線を含む。
【0039】
好ましくは、各印字ヘッドモジュールは、1つの端部におけるインク入口ポート及び対向端部におけるインク出口ポートを有し、インク入口ポート及びインク出口ポートは、入口インク線及び出口インク線にそれぞれ接続されている。
【0040】
好ましくは、印字ヘッドモジュールは、印字ヘッドモジュールの各端部で複数の指部を含み、隣接印字ヘッドモジュールの指部は、相互噛合されている。
【0041】
好ましくは、細長い支持構造体は、印字ヘッドモジュールを収容するように構成されているベースを有するU字形通路を含む。
【0042】
好ましくは、ベースは、印字ヘッドモジュールを相補的に収容する少なくとも1つの開口部を規定する。
【0043】
好ましくは、U字形通路は、U字形通路の側壁から横方向外向きに延在する細長いフランジを有し、細長いフランジは、インクキャリアを支持する。
【0044】
好ましくは、各印字ヘッドモジュールは、印字チップの複数の列を含み、印字チップの各列は、異なる着色インクを印刷するように構成されている。
【0045】
好ましくは、各印字ヘッドモジュールは、シアン、マゼンタ、黄色及び黒色インクをそれぞれ印刷する4列の印字チップを含む。
【0046】
1つの態様に関連して記載の好ましい実施形態を、関連のある場合、他の態様に同様に適用できることが、当然分かる。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「インク」は、インクジェット印字ヘッドから印刷可能な任意の印刷流体を意味するものとする。インクは、着色剤を含んでもよく、又は含まなくてもよい。従って、用語「インク」は、従来の染料ベース及び顔料ベースのインク、赤外線インク、紫外線インク、固定剤(例えば、プレコート及び表面処理剤)、機能性流体(例えば、太陽インク、検知インクなど)、三次元印刷流体、生体液などを含んでもよい。流体又は印刷流体を参照する場合、これは、本明細書に記載の「インク」の意味を限定するように意図されていない。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「装着」は、直接装着、及び介在部品を介する間接装着の両方を含む。
【0049】
図面の簡単な説明
ここで、本発明の実施形態について、添付図面を参照してほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】第1の実施形態によるモジュラーインクジェット印字ヘッドの正面斜視図である。
【
図3】第1の実施形態による個々の印字ヘッドモジュールの正面斜視図である。
【
図4】
図3に示す印字ヘッドモジュールの背面斜視図である。
【
図5】縦インク供給通路を見せるために様々な構成要素を取り外した状態の第1の実施形態による印字ヘッドの背面斜視図である。
【
図6】第1の実施形態による印字ヘッドモジュールの断面斜視図である。
【
図7】第1の実施形態による印字ヘッドモジュールの拡大断面斜視図である。
【
図9】第1の実施形態による印字ヘッドモジュールの1つの端部から延在する指部の拡大斜視図である。
【
図10】第1の実施形態による1対の相互噛合指部の拡大平面図である。
【
図11】第1の実施形態による1対の入れ子印字ヘッドモジュールの背面斜視図である。
【
図12】連結マニホールドを示す第1の実施形態による印字ヘッドの断面斜視図である。
【
図13】第2の実施形態によるモジュラーインクジェット印字ヘッドの正面斜視図である。
【
図15】第2の実施形態による隣接印字ヘッドモジュールの平面図である。
【
図16】第2の実施形態による印字ヘッドモジュールの斜視図である。
【
図17】後側PCBを取り外した状態の
図16に示す印字ヘッドモジュールの斜視図である。
【
図18】
図17に示す印字ヘッドモジュールの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
第1の実施形態
図1及び
図2について説明する。
図1及び
図2は、本発明の第1の実施形態によるモジュラーインクジェット印字ヘッド1(又は「印字バー」)を示す。印字ヘッド1は、交互に配置され、相補的支持構造体5に装着された複数の印字ヘッドモジュール3を含む。典型的に、支持構造体5は、印字ヘッドモジュール3を相補的に収容するように構成されている1つ又は複数の開口部を有する。3つの印字ヘッドモジュール3を
図1及び
図2の実施形態に示すけれども、印字ヘッド1は、任意の所要の長さのページワイド印字バーを構成するために、より多数又は少数の印字ヘッドモジュール(例えば、1~20個の印字ヘッドモジュール)を含むことができることが分かる。
【0052】
図3~
図7は、第1の実施形態による個々の印字ヘッドモジュール3を示す。各印字ヘッドモジュール3は、基板7の長さに沿って縦方向に延在する4つの平行インク供給通路9を有する細長いインクマニホールドの形で基板7を含む。インク供給通路9を、基板7の後側面に規定し、複数のインク出口11を、各インク供給通路のベースに規定する。インク出口11は、各インク供給通路9から、基板7の各前側チップ装着面12に沿って列を成して装着された複数の印字チップ13にインクを供給する。典型的にCMYKインクを印刷するために、4列の印字チップ13を、4列のインク供給通路9に整列させる。1つの印字ヘッドモジュール3における各列の印字チップ13は、印字ヘッドの印字ヘッドセグメント15を規定し、各印字ヘッドセグメントは、列を成して交互に当接する6つの印字チップを含む。ページワイド配置で交互に当接するように構成されている印字チップは、当業者に知られている。例えば、出願人の、列を成して印字チップを連結する落下ノズル三角形アーキテクチャは、米国特許第7,290,852号(その内容を参照により本明細書に引用したものとする)に記載されている。
【0053】
当然、各印字ヘッドモジュール3における印字ヘッドセグメント15の数は、特定の用途によって、4つよりも少数又は多数でもよい。例えば、印字ヘッドモジュール3は、追加のスポットカラー(例えば、橙色、紫色、緑色、カーキ色など)、紫外線インク、赤外線インク及び/又は固定流体を印刷するために、最大10個の印字ヘッドセグメントを有してもよい。同様に、各印字ヘッドセグメント15は、6つよりも少数又は多数の印字チップ(例えば、2~15個の印字チップ)を含んでもよい。
【0054】
図7に最も良く示すように、インクを、インク供給通路9のうち各1つのインク供給通路9から各印字チップ13に供給し、各印字チップ13は、単色印刷用に構成されている。各印字チップ13は、冗長単色印刷用の複数のノズル列17(例えば、2~10個のノズル列)を有する。換言すれば、複数のノズルは、所与のインクに対する各画素位置を印刷し、速度及び/又は印刷品質を向上させるために、利用可能である。
図8は、4x冗長性を与える4つのノズル列17を有する分離で印字チップ13を示す。5x冗長性を与える5つのノズル列を有するMemjet(登録商標)印字チップは、印字ヘッドモジュール3での使用に同様に適している。
【0055】
従って、印字ヘッドモジュール3は、比較的狭い印刷ゾーンにわたって多重冗長フルカラー印刷の重要な利点を与える。典型的に、印字ヘッド1の印刷ゾーンは、媒体供給方向に、即ち、印字ヘッドセグメント15及び印字チップ13の縦軸に直角な横方向に、200mm未満、100mm未満、又は80mm未満の寸法を有する。
【0056】
印字ヘッド1において、各印字ヘッドモジュールの対向端部から縦方向に延在する相互噛合指部19を介して、印字ヘッドモジュール3を入れ子にする。図示の実施形態において、1つの印字ヘッドモジュール3の各端部における4つの指部19は、両端部における指部の総数が各印字ヘッドモジュールにおける印字ヘッドセグメントの数の2倍であるように、印字ヘッドモジュールにおける4つの印字ヘッドセグメント15に対応する。
図9に最も良く示すように、隣接印字ヘッドモジュール3の印字ヘッドセグメントが印字ヘッド1における相互噛合指部にわたって重複するように、各指部19は、印字ヘッドセグメント15のうち1つの印字ヘッドセグメント15の一部を含む。
図10及び
図11は、隣接印字ヘッドモジュール3の対に対する重複領域を示す。
【0057】
全印字ヘッドモジュールは同一であるけれども、第1の実施形態によるページワイド印字ヘッド1において、各交互印字ヘッドモジュール(即ち、
図1及び
図2における中央印字ヘッドモジュール)を、媒体供給方向に対して反対方向に方向付ける。さて、
図9及び
図10について説明する。各指部19に含まれる印字チップ13を、指部の1つの側縁21の方へ位置決めする。このオフセット配置及び交互方向付け印字ヘッドモジュール3の結果として、同じ色通路における重複印字チップ13の間の距離を最小化する。
図10に示す重複領域で対応する印字ヘッドセグメント15の間隔を最小化することによって、整列及び印刷品質を、重複領域で向上させる(本文脈で、「対応する印字ヘッドセグメント」は、同じ印刷行で同じインクを印刷する印字ヘッドセグメントである)。典型的に、対応する印字ヘッドセグメント15からの重複印字チップ13の間の距離は、20mm未満、10mm未満、又は6mm未満である。
【0058】
電力及びデータを印字チップ13に供給するために、第1の実施形態による印字ヘッドモジュール3は、基板7の各前側面24及び後側面26に互いに平行に装着された対向する第1及び第2の硬質PCB 23及び25を有する。4つの第1のPCB 23は、4つの印字ヘッドセグメント15に対応し、各第1のPCBを、各列の印字チップ13に沿って位置決めする。1つの印字ヘッドセグメント15における各印字チップ13は、ワイヤーボンド(図示せず)を介して各第1のPCB 23に接続されたボンドパッド27を有する。基板の厚さを介して規定された縦スロット30を通る電気コネクタを介して基板の後側面26に装着された第2のPCB 25に、4つの第1のPCB 23を接続する。第1の実施形態による印字ヘッドモジュール3において、電気コネクタは、第2のPCBから延在する相補的ソケット34に係合された各第1のPCB 23から延在するピンコネクタ32の形をとる。隣接インク供給通路の各対が隣接インク供給通路の間に位置決めされた縦スロットの1つを有するように、これらの電気接続部を収容できる縦スロット30を、縦インク供給通路9に沿って交互に位置決めする。
図5に最も良く示すように、インク供給通路9は、一番端の印字チップ13にインクを供給するために、印字ヘッドモジュール3の各端部で指部19に延在する。しかし、電気接続部を収容できる縦スロット30は、インク供給通路9よりも比較的短く、指部19に延在していない。従って、指部19に位置決めされた印字チップ13は、指部に延在する第1のPCB 23を介して経路設定されたピンコネクタ32からデータ及び電力を受け取る。
【0059】
縦スロット30及びインク供給通路9の交互配置は、基板7を通るインク及び電気配線の経路設定を単純化する。従って、基板7を、モノリシック構成要素として形成してもよい。例えば、基板7を、成形重合体(例えば、液晶重合体)、セラミック材料、又はダイカスト金属合金(例えば、インバール)で形成してもよい。
【0060】
上述のように、各インク供給通路9は、複数のインク出口11を規定するベース10を有し、各印字チップ13は、インク出口のセットからインクを受け取る。
図6及び
図7に最も良く示すように、インク圧力変動を抑制する目的で、細長い可撓膜35は、各インク供給通路9のルーフにわたって封止する。可撓膜35の形状及び機能のより詳細な説明は、米国特許第10,343,402号(その内容を参照により本明細書に引用したものとする)に見られる。
【0061】
第1の実施形態による印字ヘッドモジュール3において、第2のPCB 25は、4つのインク供給通路9の4つの細長い可撓膜35を覆い、必要に応じて、膜の屈曲を可能にする通気口(図示せず)を第2のPCB 25に設けてもよい。
図4について簡単に説明する。基板7に対向する第2のPCBの外面は、第1のPCB 23を介して印字チップ13に供給される外部電力及びデータを受け取る電力コネクタ39及びデータコネクタ40を含む、基板7に装着された多くの電気構成要素38を有する。
【0062】
各インク供給通路9は、インク供給通路の対向端部で基板7の各指部19に位置決めされたインクポート41の対応する対を有する。インクポート41は、基板7の平面に垂直な印字ヘッドモジュール3の後側面から離れて延在する吐出口の形である。典型的に、印字ヘッドモジュール3の1つの端部におけるインクポート41が入口ポートであり、対向端部におけるインクポートが出口ポートであるように、インク供給通路9を介してインクを再循環させる。インクポート41を介して個々にインクを、各印字ヘッドモジュール3のインク供給通路9に供給してもよい。代わりに、印字ヘッドモジュール3のセット、又は印字ヘッド1における全印字ヘッドモジュールは、インクポート41を介して直列接続された対応するインク供給通路9を有してもよい。
【0063】
図12に示すように、隣接印字ヘッドモジュール3のインクポート41を、印字ヘッドにわたって横方向に整列させ、対応する印字ヘッドセグメント15に対する隣接インクポートを相互接続する。図示の実施形態において、印字ヘッド1にわたる連結マニホールド43を便利に使用して、対応する整列インクポート41を流体的に接続する。他のコネクタ(例えば、個々のU字形パイプのセット)を同様に使用して、直列流体接続部を設けてもよい。
【0064】
第2の実施形態
図13及び
図14について説明する。
図13及び
図14は、本発明の第2の実施形態によるモジュラーインクジェット印字ヘッド100(又は「印字バー」)を示す。関連のある場合、第1及び第2の実施形態における同じ特徴を、同じ参照符号で特定する。
【0065】
第2の実施形態による印字ヘッド100は、交互に配置され、U字形通路105の形をとる相補的支持構造体に装着された4つの印字ヘッドモジュール103を含む。U字形通路105は、印字ヘッドモジュール103を相補的に収容するように構成されている1つ又は複数の開口部を有するベース106を有し、上述のように、任意の所要の長さのページワイド配列を構成するために、印字ヘッドモジュールの数を変更してもよい。
【0066】
第1の実施形態による印字ヘッド1と対照的に、印字ヘッドモジュール103の線に沿って延在し、印字ヘッドの縦軸に平行な梁部材の形をとる細長いインクキャリア101からインクを、第2の実施形態による印字ヘッド100に供給する。U字形通路105の側壁109から横方向外向きに延在するフランジ107によって、インクキャリア101を支持する。インクパイプ110は、印字ヘッドモジュール103の方へインクキャリア101から横方向に延在し、インクポート41と接続する一方、インクキャリアは、インクキャリアの1つの端部に接続されたインク管112を介してインク容器(図示せず)からインクを受け取り、戻す。従って、各印字ヘッドモジュール103に4色のインクを個々に供給し、各印字ヘッドモジュール103は、4色のインクをインクキャリア101に戻す。インクキャリア101は、4色の各々に対する共通インク入口及び出口線を含む。
【0067】
更に、
図13について説明する。1対の母線114(電力及び接地)は、複数の印字ヘッドモジュール103に電力を供給するインクキャリア101のルーフに沿って縦方向に延在する。母線114を、インク管112と同じインクキャリア101の端部で電力ケーブル115に接続する。印字ヘッド組立体の1つの縦方向端部から延在する電力ケーブル115及びインク管112で、有利なことに、組立体の設置面積を、媒体供給方向に最小化する。
【0068】
コネクタストラップ116の対は、母線114から水平面で横方向に延在し、個々の印字ヘッドモジュール103に電力を供給する。電力及びデータを印字チップ13に供給する多くのPCBを収納するPCBハウジング119のルーフに位置決めされた電力接点118を介して、コネクタストラップ116を各印字ヘッドモジュール103に電気的に接続する。例えば、タイミング信号及び/又は印刷データを制御器(図示せず)から各印字ヘッドモジュールに供給することができるデイジーチェーンデータコネクタ120を介して、印字ヘッドモジュール103を連結する。代わりに、印刷モジュール103は、データを制御器から並行して個々に受け取ってもよい。
【0069】
図15に示すように、隣接モジュールの重複印字チップ13の間の密な間隔を与えるために、印字ヘッド100における隣接印字ヘッドモジュール103は、相互噛合指部19を有する。しかし、第1の実施形態による印字ヘッド1と対照的に、第2の実施形態による印字ヘッド100は、媒体移動方向に対して同じ方向に方向付けられた全印字ヘッドモジュール103を有する。同様に方向付けられた全印字ヘッドモジュール103、及び重複領域における印字チップの等間隔を用いて、第2の実施形態による印字ヘッド100のデータ処理要件を、第1の実施形態による印字ヘッド1に比べて単純化する。
【0070】
さて、
図16について説明する。
図16は、PCBハウジング119を取り外した状態の第2の実施形態による個々の印字ヘッドモジュール103を示す。印字ヘッドモジュール103の構造は、第1の実施形態による印字ヘッドモジュール3の構造と同様である。従って、第2の実施形態による各印字ヘッドモジュール103は、基板7の長さに沿って縦方向に延在し、基板の前側及び後側でPCBを相互接続する電気コネクタを収容する縦スロット30に組み入れられた4つの平行インク供給通路9を有する細長いインクマニホールドの形の基板7を含む(
図6参照)。
【0071】
第2の実施形態による印字ヘッドモジュール103で電力及びデータを印字チップ13に供給するために、5つの別々のPCBは、基板7の後側面26に装着され、前側面24に装着された第1のPCB 23の面に対して垂直に延在する。
図16に示す最後尾PCBは、各データポート124を介して制御器(図示せず)からデータを受け取るデータPCB 122である。残りの4つのPCBは、PCBハウジング119のルーフ上の電力接点118を介して接続ストラップ116の各対に電気的に接続された電力PCB 126である。データPCB 122は、例えば、リボンコネクタ(図示せず)を介して印刷データを電力PCB 126に分配し、基板7の厚さを介して規定された縦スロット30を通る電気コネクタを介して、4つの電力PCBを各第1のPCB 23に接続する(第1の実施形態による
図6及び
図7に示す印字ヘッドモジュール3と同様)。
【0072】
図13に示すように、各印字ヘッドモジュール103の4つの電力PCB 126及びデータPCB 122は、熱を印字ヘッド100から除去する冷却ファン(図示せず)を組み込むことができる各PCBハウジング119に含まれる。電力PCB 126の間隔及び垂直方向は、基板7から離れて熱を放散するのに役立つ。
【0073】
図17及び
図18は、4つの電力PCB 126に接続する印字ヘッドモジュールの後側面26上の4列のモジュール接点130を見せるためにPCBを取り外した状態の印字ヘッドモジュール103を示す。第2の実施形態による印字ヘッドモジュール103において、基板7を通る電気コネクタは、基板の前側面24で4つの第1のPCB 23に接続されたリードフレーム132の形をとる。基板の上で封止し、4つのインク供給通路9の4つの細長い可撓膜35を保護するカバー板134で、基板7の後側面を覆う。
【0074】
上述から、印字ヘッド1及び100は、高速、高品質冗長印刷が求められるデジタルインクジェット印刷機及び特定のデスクトップ用途での使用に非常に適していることが、当業者は容易に分かる。特に、媒体供給方向における印刷ゾーンの最小長、各色平面内の冗長性、及び単一相補的支持構造体内の印字ヘッドモジュールの優れた整列により、有利なことに、このような印字ヘッドを様々な用途に使用することができる。
【0075】
本発明はほんの一例として説明されていること、及び添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内で詳細な修正を行うことができることが、当然分かる。