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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240930BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240930BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G02B5/02 C
G02F1/1335
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022518163
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017309
(87)【国際公開番号】W WO2021221178
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020080048
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】帆苅 典久
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215448(JP,A)
【文献】特開2019-207381(JP,A)
【文献】特開2015-210273(JP,A)
【文献】特開2015-158537(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051303(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0003093(US,A1)
【文献】特開2008-233870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G02B 5/02
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネル上に配置されるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備え
前記光学層は、少なくともマトリクスと粒子とを含有し、
前記粒子は、平板状粒子により実質的に構成され、
前記平板状粒子は、厚みが0.3nm~3nmの範囲にあり、かつ主面の平均径が10nm~1000nmの範囲にあり、
前記平板状粒子の主面が前記ガラス板の第2面と略平行に配置されている、表示装置。
【請求項2】
記光学層における前記第2面とは反対側の表面は、前記粒子によって凹凸が形成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光学層に、当該光学層の厚み方向に前記粒子が積み重なっている第1領域と、前記第1領域を囲む又は前記第1領域により囲まれる谷状の第2領域とが存在する、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1領域は台地状の領域である、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2領域は、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない部分を含む、請求項3または4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1領域の幅が7.7μm以上、前記第2領域の幅が7μm以上である、請求項3から5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1領域の幅が10μm以上、前記第2領域の幅が10μm以上である、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記光学層には、当該光学層の厚み方向に前記粒子が積み重なっている領域と、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない領域とが存在する、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ガラス板の第2面から測定した前記光学層の最高部と最低部との差分が前記粒子の平均粒径の3倍以上である、請求項に記載の表示装置。
【請求項10】
ISO25178に定めるSmr1が10~30%である、請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
ISO25178に定める負荷面積率20%における表面高さBH20が0.04μm~0.5μmの範囲にある、請求項8から10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
ISO25178に定める負荷面積率80%における表面高さBH80が-0.3μm~0μmの範囲にある、請求項8から11のいずれかに記載の表示装置。
【請求項13】
表示パネルと、
前記表示パネル上に配置されるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備え、
前記光学層は、少なくともマトリクスと粒子とを含有し、
前記光学層には、当該光学層の厚み方向に前記粒子が積み重なっている領域と、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない領域とが存在し、
前記ガラス板の第2面から測定した前記光学層の最高部と最低部との差分が前記粒子の平均粒径の3倍以上であり、
前記粒子は、球状粒子により実質的に構成されている表示装置。
【請求項14】
前記光学層の表面のRsmが0μmを超え35μm以下である、請求項1から13のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Rsmは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線要素の平均長さである。
【請求項15】
前記光学層の表面のRaが20nm~120nmの範囲にある、請求項1から14のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Raは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線の算術平均粗さである。
【請求項16】
前記ガラス板の第2面のRaが10nm以下である、請求項1から15のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Raは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線の算術平均粗さである。
【請求項17】
前記マトリクスは、酸化シリコンを主成分としている、請求項1から16のいずれかに記載の表示装置。
【請求項18】
前記粘着層の屈折率は、空気の屈折率より大きく、前記ガラス板の屈折率より小さい、請求項1から17のいずれかに記載の表示装置。
【請求項19】
前記ガラス板の厚みは、0.5~3mmである、請求項1から18のいずれかに記載の表示装置。
【請求項20】
表示パネルを有する表示装置に設けられる、カバー部材であって、
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備え、
前記光学層は、少なくともマトリクスと粒子とを含有し、
前記粒子は、平板状粒子により実質的に構成され、
前記平板状粒子は、厚みが0.3nm~3nmの範囲にあり、かつ主面の平均径が10nm~1000nmの範囲にあり、
前記平板状粒子の主面が前記ガラス板の第2面と略平行に配置されている、カバー部材。
【請求項21】
表示パネルを有する表示装置に設けられる、カバー部材であって、
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備え、
前記光学層は、少なくともマトリクスと粒子とを含有し、
前記光学層には、当該光学層の厚み方向に前記粒子が積み重なっている領域と、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない領域とが存在し、
前記ガラス板の第2面から測定した前記光学層の最高部と最低部との差分が前記粒子の平均粒径の3倍以上であり、
前記粒子は、球状粒子により実質的に構成されている、カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びこれに設けられるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載用の表示装置が開示されている。この表示装置は、表示パネルの表面に、粘着層を介してカバーガラスが固定されており、表示パネルとカバーガラスとの密着性を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6418241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置には、表示パネルの表示を鮮明に視認できるような鮮明化が要望されている。しかしながら、そのような鮮明化の要望には未だ対応できておらず、さらなる改良が望まれていた。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、鮮明化を向上することができる、表示装置及びこれに設けられるカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.表示パネルと、
前記表示パネル上に配置されるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備えている、表示装置。
【0006】
項2.前記光学層は、少なくともマトリクスと粒子とを含有し、
前記光学層における前記第2面とは反対側の表面は、前記粒子によって凹凸が形成されている、項1に記載の表示装置。
【0007】
項3.前記光学層に、当該膜の厚み方向に前記粒子が積み重なっている第1領域と、前記第1領域を囲む又は前記第1領域により囲まれる谷状の第2領域とが存在する、項1または2に記載の表示装置。
【0008】
項4.前記第1領域は台地状の領域である、項3に記載の表示装置。
【0009】
項5.前記第2領域は、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない部分を含む、項3または4に記載の表示装置。
【0010】
項6.前記第1領域の幅が7.7μm以上、前記第2領域の幅が7μm以上である、項3から5のいずれかに記載の表示装置。
【0011】
項7.前記第1領域の幅が10μm以上、前記第2領域の幅が10μm以上である、項6に記載の表示装置。
【0012】
項8.前記粒子は、平板状粒子により実質的に構成され、
前記平板状粒子は、厚みが0.3nm~3nmの範囲にあり、かつ主面の平均径が10nm~1000nmの範囲にあり、
前記平板状粒子の主面が前記ガラス板の第2面と略平行に配置されている、項1または2に記載の表示装置。
【0013】
項9.前記光学層には、当該光学層の厚み方向に前記粒子が積み重なっている領域と、前記粒子が積み重なっていないか又は前記粒子が存在しない領域とが存在する、項1または2に記載の表示装置。
【0014】
項10.前記ガラス板の第2面から測定した前記光学層の最高部と最低部との差分が前記粒子の平均粒径の3倍以上である、項9に記載の表示装置。
【0015】
項11.ISO25178に定めるSmr1が10~30%である、項9または10に記載の表示装置。
【0016】
項12.ISO25178に定める負荷面積率20%における表面高さBH20が0.04μm~0.5μmの範囲にある、項9から11のいずれかに記載の表示装置。
【0017】
項13.ISO25178に定める負荷面積率80%における表面高さBH80が-0.3μm~0μmの範囲にある、項9から12のいずれかに記載の表示装置。
【0018】
項14.前記粒子は、球状粒子により実質的に構成されている、項3から7,及び9から13のいずれかに記載の表示装置。
【0019】
項15.前記光学層の前記表面のRsmが0μmを超え35μm以下である、項1から14のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Rsmは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線要素の平均長さである。
【0020】
項16.前記光学層の前記表面のRaが20nm~120nmの範囲にある、項1から15のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Raは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線の算術平均粗さである。
【0021】
項17.前記ガラス板の第2面のRaが10nm以下である、項1から16のいずれかに記載の表示装置。
ただし、前記Raは、JIS B0601:2001に定められた粗さ曲線の算術平均粗さである。
【0022】
項18.前記マトリクスは、酸化シリコンを主成分としている、項1から17のいずれかに記載の表示装置。
【0023】
項19.前記粘着層の屈折率は、空気の屈折率より大きく、前記ガラス板の屈折率より小さい、項1から18のいずれかに記載の表示装置。
【0024】
項20.前記ガラス板の厚みは、0.5~3mmである、項1から19のいずれかに記載の表示装置。
【0025】
項21.表示パネルを有する表示装置に設けられる、カバー部材であって
第1面及び第2面を有するガラス板と、
前記ガラス板の第1面に積層され、前記ガラス板を前記表示パネルに固定するための粘着層と、
前記ガラス板の第2面に積層される光学層と、
を備えている、カバー部材。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鮮明化を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る表示装置の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の表示装置に設けられるカバー部材の一部断面図である。
図3】第1の防眩膜に含有される粒子の一例を示す斜視図である。
図4】第2の防眩膜が積層されたカバー部材の断面図である。
図5】第2の防眩膜が積層されたカバー部材の断面図である。
図6】第3の防眩膜が積層されたカバー部材の断面図である。
図7】第3の防眩膜が積層されたカバー部材の断面図である。
図8】第3の防眩膜が積層されたカバー部材の膜の凸部の断面を模式的に示す断面図である。
図9】遮蔽層の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る表示装置を車載用の表示装置に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は表示装置の断面図である。車載用の表示装置としては、例えば、カーナビゲーションシステム、各種の計器や操作パネルを表示する表示装置を挙げることができる。
【0029】
<1.表示装置の概要>
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置は、開口を有する筐体4と、この筐体4に収容される表示パネル500及びバックライトユニット6と、筐体4の開口を塞ぐカバー部材100と、を備えている。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0030】
<2.筐体>
筐体4は、矩形状の底壁部41と、この底壁部41の周縁から立ち上がる側壁部42と、を有し、底壁部41と側壁部42とで囲まれる内部空間に上述した表示パネル500及びバックライトユニット6が収容されている。そして、側壁部42の上端部によって形成される開口を塞ぐように、上述したカバー部材100が取付けられている。筐体4を構成する材料は、特には限定されないが、例えば、樹脂材料、金属などで形成することができる。
【0031】
<3.表示パネル及びバックライトユニット>
表示パネル500としては、公知の液晶パネルを用いることができる。バックライトユニット6は、液晶パネルに向けて光を照射するものであり、例えば、拡散シート、導光板、LED等の光源、反射シート等が積層された公知のものある。なお、表示パネル500としては、液晶パネル以外に、例えば、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、電子インク型パネル等を採用することができる。表示パネル500として、液晶パネル以外を用いる場合には、バックライトユニットは不要である。
【0032】
<4.カバー部材>
カバー部材100は、第1面及び第2面を有するガラス板10と、ガラス板10の第1面に積層される粘着層3と、第2面に積層される光学層20と、を備えている。以下、詳細に説明する。
【0033】
<4-1.ガラス板>
ガラス板10は、例えば、汎用のソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等その他のガラスにより形成することができる。また、ガラス板10は、フロート法、ダウンドロー法等の公知の製法により成形することができる。これらの製法によると平滑な表面を有するガラス板10を得ることができる。但し、ガラス板10は、主面に凹凸を有していてもよく、例えば型板ガラスであってもよい。型板ガラスは、ロールアウト法と呼ばれる製法により成形することができる。この製法による型板ガラスは、通常、ガラス板の主面に沿った一方向について周期的な凹凸を有する。
【0034】
ガラス板10の厚さは、特に制限されないが、軽量化のためには薄いほうがよい。例えば、0.5~3mmであることが好ましく、0.6~2.5mmである事がさらに好ましい。これは、ガラス板10が薄すぎると、強度が低下するからであり、厚すぎると、表示パネル500からカバー部材100を介して視認される画像に歪みが生じるおそれがある。ガラス板10の第2面の表面粗さRaは、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがさらに好ましく、2nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが特に好ましい。このようにすると、後述するように、光学層20が防眩膜であるときに、防眩効果が顕著に現れる。
【0035】
ガラス板10は、通常、平板であってよいが、曲板であってもよい。特に、組み合わせるべき表示パネル500の画像表示面が曲面等の非平面である場合、ガラス板10はそれに適合する非平面形状の主面を有することが好ましい。この場合、ガラス板10は、その全体が一定の曲率を有するように曲げられていてもよく、局部的に曲げられていてもよい。ガラス板10の主面10sは、例えば複数の平面が曲面で互いに接続されて構成されていてもよい。ガラス板10の曲率半径は、例えば5000mm以下である。この曲率半径は、例えば10mm以上であるが、特に局部的に曲げられている部位ではさらに小さくてもよく、例えば1mm以上である。
【0036】
光学層20は、ガラス板10の第2面の全面を覆うように形成されていてもよく、一部を覆うように形成されていてもよい。後者の場合、光学層20は、第2面のうち、少なくとも表示パネル500の画像表示面を覆う部分に形成するとよい。
【0037】
また、ガラス板10は強化ガラスであることが好ましい。ガラス板10の強化処理には、風冷強化と化学強化とがあり、薄いガラス板10には化学強化処理が適している。化学強化処理では、ガラス板10を構成するガラスの歪点以下の温度でアルカリ金属イオンを含む溶融塩にガラス板を浸漬し、ガラス板10の表層のアルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン)をイオン半径が相対的に大きいアルカリ金属イオン(例えばカリウムイオン)と交換し、ガラス板10の表層に圧縮応力を生じさせる。ガラス板10に対する化学強化処理は、光学層を形成する前後のいずれに実施してもよい。また、風冷強化処理も、公知の手法により実施することができる。
【0038】
<4-2.粘着層>
粘着層3は、ガラス板10を表示パネル500に十分な強度で固定できるものであればよい。具体的には、常温でタック性を有するアクリル系、ゴム系、及びメタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合し、所望のガラス転移温度に設定した樹脂などの粘着層を使用できる。アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル及びアクリル酸2エチルヘキシル等を適用することができ、メタクリル系モノマーとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル及びメタクリル酸ステアリル等を適用することができる。また、ヒートラミネートなどで施工をする場合には、ラミネート温度で軟化する有機物を用いても良い。ガラス転移温度は、例えばメタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合した樹脂の場合、各モノマーの配合比を変更することによって調整することができる。紫外線吸収剤が粘着層71に含有されていてもよい。
【0039】
粘着層3の厚みは、例えば、10~500μmにすることができ、20~350μmであることが好ましい。特に、粘着層3の厚みが小さいと、表示パネル500からカバー部材100の最外面までの距離が小さくなり、これによって表示パネル500の画像を鮮明に視認することができる。一方、粘着層3の厚みが小さすぎると、ガラス板と表示パネル500との固定の強度が低下するため、好ましくない。
【0040】
また、粘着層3の屈折率は、空気の屈折率より大きく、ガラス板10の屈折率よりも小さいことが好ましい。これにより表示パネル500に表示される画像の歪みを抑制することができる。
【0041】
<4-3.光学層>
次に、光学層について、説明する。以下では、光学層の一例として、3種類の防眩膜について説明する。なお、以下の説明において、「略平行」とは、対象とする2つの面がなす角度が30°以下、さらには20°以下、特に10°以下であることを意味する。また、「主成分」とは、質量基準で含有率が50%以上、さらには80%以上を占める成分を意味する。また、「実質的に構成されている」とは、質量基準で含有率が80%以上、さらには90%以上、特に95%以上を占めていることを意味する。また、「主面」は、側面を除く表側及び裏側の面であり、より具体的にはその上に膜が形成される面を指す。平板状粒子の「主面」もこれに準じ、当該平板状粒子の表裏一対の面を示す。「台地状」の定義は、図8を参照しつつ後述する。
【0042】
<4-3-1.第1の防眩膜>
まず、第1の防眩膜20について図2も参照しつつ説明する。図2は防眩膜が積層されたガラス板の一部断面図である。なお、図2の例では、ガラス板10の第2面に防眩膜20が直接形成されているが、ガラス板10と防眩膜20との間に別の膜が介在していても構わない。防眩膜20は、粒子1とマトリクス2とを含んでいる。防眩膜20には空隙が含まれていてもよい。空隙は、マトリクス2中に、又は粒子1及びマトリクス2に接するように存在していてもよい。
【0043】
<4-3-1-1.粒子>
粒子1は平板状粒子であってもよい。粒子1は平板状粒子により実質的に構成されていてもよい。ただし、粒子1の一部は、平板状以外の形状、例えば球状の形状を有していてもよいが、球状粒子等を含まず、粒子1は平板状粒子のみにより構成されていてもかまわない。図3に、平板状粒子である粒子1の一例を示す。粒子1は一対の主面1sを有する。一対の主面1sは互いに略平行である。主面1sは実質的に平坦であり得る。ただし、主面1sには段差や微小な凹凸が存在していてもよい。なお、球状の酸化シリコン粒子が連なった粒子は、その外形が鎖状であって平板状ではなく、平板状粒子には該当しない。
【0044】
粒子1の厚み1tは、一対の主面1sの間の距離に相当し、0.3nm~3nmの範囲にある。厚み1tは、好ましくは0.5nm以上、さらに0.7nm以上であり、好ましくは2nm以下、さらに1.5nm以下である。部位により厚み1tに変動がある場合は、最大厚みと最小厚みとの平均により厚み1tを定めればよい。
【0045】
粒子1の主面1sの平均径dは、10nm~1000nmの範囲にある。主面の平均径dは、20nm以上、さらに30nm以上が好ましい。また、平均径dは、700nm以下、さらに500nm以下が好ましい。主面1sの平均径dは、主面1sの重心を通過する径の最小値と最大値との平均により定めることができる。
【0046】
粒子1の平均アスペクト比はd/tにより算出できる。平均アスペクト比は、特に制限されないが、30以上、さらに50以上が好ましい。平均アスペクト比は、1000以下、さらに700以下であってもよい。
【0047】
粒子1は、フィロケイ酸塩(phyllosilicate)鉱物粒子であってもよい。フィロケイ酸塩鉱物粒子に含まれるフィロケイ酸塩鉱物は、層状ケイ酸塩鉱物とも呼ばれる。フィロケイ酸塩鉱物としては、例えばカオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト等のカオリン鉱物、クリソタイル、リザーダイト、アメサイト等のサーペンティン、モンモリロナイト、バイデライト等の2八面体型スメクタイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等の3八面体型スメクタイト、白雲母、パラゴナイト、イライト、セラドナイト等の2八面体型雲母、金雲母、アナイト、レピドライト等の3八面体型雲母、マーガライト等の2八面体型脆雲母、クリントナイト、アナンダイト等の3八面体型脆雲母、ドンバサイト等の2八面体型クロライト、クッケアイト、スドーアイト等の2・3八面体型クロライト、クリノクロア、シャモサイト等の3八面体型クロライト、パイロフィライト、タルク、2八面体型バーミキュライト、3八面体型バーミキュライトを挙げることができる。フィロケイ酸塩鉱物粒子は、スメクタイト、カオリン、又はタルクに属する鉱物を含むことが好ましい。スメクタイトに属する鉱物としては、モンモリロナイトが好適である。なお、モンモリロナイトは単斜晶系に属し、カオリンは三斜晶系に属し、タルクは単斜晶系又は三斜晶系に属する。
【0048】
防眩膜20において、粒子1は、主面1sがガラス板10の第2面と略平行に配置されている。粒子1は、個数基準でその80%以上、さらには85%以上、特に90%以上が略平行に配置されていれば、その残りが略平行に配置されていなくても、全体として略平行に配置されているとみなすものとする。これを判断する場合には、30個、好ましくは50個の平板状粒子の配置を確認することが望ましい。
【0049】
粒子1がフィロケイ酸塩鉱物粒子である場合、ガラス板10の第2面に沿って配向しているフィロケイ酸塩鉱物の結晶面は(001)面であってもよい。このような面配向は、X線回折分析により確認できる。
【0050】
<4-3-1-2.マトリクス>
マトリクス2は、Siの酸化物である酸化シリコンを含み、酸化シリコンを主成分とすることが好ましい。酸化シリコンを主成分とするマトリクス2は、膜の屈折率を低下させ、膜の反射率を抑制することに適している。マトリクス2は、酸化シリコン以外の成分を含んでいてもよく、酸化シリコンを部分的に含む成分を含んでいてもよい。
【0051】
酸化シリコンを部分的に含む成分は、例えば、ケイ素原子及び酸素原子により構成された部分を含み、この部分のケイ素原子又は酸素原子に、両原子以外の原子、官能基その他が結合した成分である。ケイ素原子及び酸素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、炭素原子、水素原子、次段落に記述する金属元素を例示できる。官能基としては、例えば次段落にRとして記述する有機基を例示できる。このような成分は、ケイ素原子及び酸素原子のみから構成されていない点で、厳密には酸化シリコンではない。しかし、マトリクス2の特性を記述する上では、ケイ素原子及び酸素原子により構成されている酸化シリコン部分も「酸化シリコン」として取り扱うことが適当であり、当該分野の慣用にも一致する。本明細書では、酸化シリコン部分も酸化シリコンとして取り扱うこととする。以上の説明からも明らかなとおり、酸化シリコンにおけるシリコン原子と酸素原子との原子比は化学量論的(1:2)でなくてもよい。
【0052】
マトリクス2は、酸化シリコン以外の金属酸化物、具体的にはケイ素以外を含む金属酸化物成分又は金属酸化物部分を含み得る。マトリクス2が含み得る金属酸化物は、特に制限されないが、例えば、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酸化物である。マトリクス2は、酸化物以外の無機化合物成分、例えば、窒化物、炭化物、ハロゲン化物等を含んでいてもよく、有機化合物成分を含んでいてもよい。
【0053】
酸化シリコン等の金属酸化物は、加水分解可能な有機金属化合物から形成することができる。加水分解可能なシリコン化合物としては、式(1)で示される化合物を挙げることができる。
nSiY4-n (1)
Rは、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基から選ばれる少なくとも1種を含む有機基である。Yは、アルコキシ基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である加水分解可能な有機基、又はハロゲン原子である。ハロゲン原子は、好ましくはClである。nは、0から3までの整数であり、好ましくは0又は1である。
【0054】
Rとしては、アルキル基、例えば炭素数1~3のアルキル基、特にメチル基が好適である。Yとしては、アルコキシ基、例えば炭素数1~4のアルコキシ基、特にメトキシ基及びエトキシ基が好適である。上記の式で示される化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。このような組み合わせとしては、例えばnが0であるテトラアルコキシシランと、nが1であるモノアルキルトリアルコキシシランとの併用が挙げられる。
【0055】
式(1)で示される化合物は、加水分解及び重縮合の後、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。この構造において、Rで示される有機基は、シリコン原子に直接結合された状態で含まれる。
【0056】
<4-3-1-3.第1の防眩膜の物性>
防眩膜20におけるマトリクス2に対する粒子1の比は、質量基準で、例えば0.05~10、さらに0.05~7であり、好ましくは0.05~5である。防眩膜20における空隙の体積比率は、特に制限されないが、10%以上、さらに10~20%であってよい。ただし、空隙は存在しなくても構わない。
【0057】
防眩膜20の膜厚は、特に制限されないが、防眩性が適切に得られやすい等の観点からは、例えば50nm~1000nm、さらに100nm~700nm、特に100nm~500nmが適切である。平板状粒子の主面を基材に略平行となるように配向させるためには、防眩膜20の膜厚を上述の上限以下とすることが好ましい。厚い膜では、平板状粒子がランダムに配向する傾向が強くなる。
【0058】
防眩膜20の表面20sには微小な凹凸が存在することが好ましい。これにより、より高い防眩効果が期待できる。ただし、表面20sの凹凸は、ガラス板10の第2面に沿った粒子1の配向によってその発達が抑制されている。防眩膜20の表面20sの表面粗さは、Raにより表示して、20nm~120nm、さらに30nm~110nm、好ましくは40nm~100nmである。Raは、JIS B0601:2001により定められた粗さ曲線の算術平均粗さである。例えば、粒子がランダムに配向していると、表面粗さRaは上述の範囲よりも大きくなる。
【0059】
表面20sのRsmは、0μmを超え35μm以下、さら1μm~30μm、好ましくは2μm~20μmである。Rsmは、JIS B0601:2001により定められた粗さ曲線要素の平均長さである。大きすぎないRsmは、いわゆるスパークルの抑制に好適である。
【0060】
スパークルは、防眩機能を付与するための微小凹凸と表示パネル500の画素サイズとの関係に依存して発生する輝点である。スパークルは、表示装置とユーザの視点との相対的な位置の変動に伴って不規則な光のゆらぎとして観察される。スパークルは、表示装置の高精細化に伴って顕在化してきている。Ra及びRsmが上述の範囲にある防眩膜20は、スパークルを抑制しながら、グロス及びヘイズをバランスよく低下させることに特に適している。
【0061】
<4-3-1-4.カバー部材の光学特性>
グロスは、鏡面光沢度により評価することができる。ガラス板10の60°鏡面光沢度は、例えば60~130%、さらに70~120%、特に80~110%である。これらの鏡面光沢度は、防眩膜20を形成した面10sについて測定された値である。ガラス板10のヘイズ率は、例えば20%以下、さらに15%以下、特に10%以下であり、場合によっては1~8%、さらに1~6%、特に1~5%であってもよい。
【0062】
60°鏡面光沢度Gとヘイズ率H(%)との間には、関係式(a)が成立することが好ましく、関係式(b)が成立することがさらに好ましく、関係式(c)が成立することがさらに好ましい。G及びHは関係式(d)を満たすものであってもよい。
H≦-0.2G+25 (a)
H≦-0.2G+24.5 (b)
H≦-0.2G+24 (c)
H≦-0.15G+18 (d)
【0063】
なお、グロスはJIS Z8741-1997の「鏡面光沢度測定方法」の「方法3(60度鏡面光沢)」に従って、ヘイズはJIS K7136:2000に従ってそれぞれ測定することができる。
【0064】
<4-3-2.第2の防眩膜>
次に、第2の防眩膜について、図4及び図5を参照しつつ説明する。図4及び図5は、それぞれ、第2の防眩膜が積層されたガラス板の一部断面図である。図4及び図5では、ガラス板10の第2面に防眩膜30及び40が直接形成されているが、ガラス板10と防眩膜30及び40との間に別の膜が介在していても構わない。これらの防眩膜30及び40は、粒子5とマトリクス2とを含んでいる。防眩膜30及び40には空隙が含まれていてもよい。空隙は、マトリクス2中に、又は粒子5及びマトリクス2に接するように存在していてもよい。
【0065】
防眩膜30ではすべての領域において膜の厚み方向に粒子5が積み重なっているのに対し、防眩膜40では膜の厚み方向に粒子5が積み重なっている領域40aと、粒子5が同方向に積み重なっていないか又は粒子5が存在しない領域40bとが存在する。領域40bは、粒子5が同方向に積み重なっていないか又は粒子5が存在しない領域ではなく、ガラス板10の第2面に略平行であって粒子5が露出していない表面40sを有する領域であってもよい。領域40bは、例えば0.25μm2以上、さらに0.5μm2以上、特に1μm2以上にわたって広がる領域であってもよい。なお、防眩膜30及び40の領域40aの少なくとも一部において、粒子5は、粒子5の平均粒径の5倍以上、さらには7倍以上の高さにまで積み重なっている。
【0066】
<4-3-2-1.粒子>
粒子5の形状は、特に制限されないが、球状であることが好ましい。粒子5は球状粒子により実質的に構成されていてもよい。ただし、粒子5の一部は、球状以外の形状、例えば平板状の形状を有していてもよい。粒子5は球状粒子のみにより構成されていても構わない。ここで、球状粒子とは、重心を通過する最短径に対する最長径の比が1以上1.8以下、特に1以上1.5以下であって、表面が曲面により構成されている粒子をいう。球状粒子の平均粒径は、5nm~200nm、さらに10nm~100nm、特に20nm~60nmであってもよい。球状粒子の平均粒径は、個々の粒径、具体的には上述の最短径と最長径との平均値、の平均により定まるが、その測定は、SEM像に基づいて、30個、好ましくは50個の粒子を対象として実施することが望ましい。
【0067】
粒子5の一部に含まれていてもよい平板状粒子の厚みt、主面の平均径d、及びアスペクト比d/tの好ましい範囲は、第1の防眩膜と同じである。
【0068】
粒子5を構成する材料は、特に制限されないが、金属酸化物、特に酸化シリコンを含むことが好ましい。ただし、金属酸化物は、例えば、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。
【0069】
粒子5は、粒子5の分散液から防眩膜30及び40へと供給することができる。この場合は、粒子5が個々に独立して分散している分散液を用いることが好ましい。粒子が鎖状に連なっている分散液と比較して、粒子が凝集していない分散液の使用は、防眩膜30及び40における粒子の望ましい凝集状態の実現に適している。互いに独立した粒子5は、分散媒等の液体の揮発に伴って移動しやすく、膜中において良好な特性の達成に適した凝集状態となりやすいためである。
【0070】
<4-3-2-2.マトリクス>
マトリクス2は、上述した第1の防眩膜20と同じである。但し、第2の防眩膜30,40においては、マトリクス2が窒素原子を含むことが好ましい。窒素原子は、有機化合物成分又は官能基、特に窒素原子含有官能基の一部として含まれていることが好ましい。窒素原子含有官能基は、好ましくはアミノ基である。窒素原子は、特に酸化シリコン等の金属酸化物を主成分とするマトリクスを形成するための原料において反応性が高い官能基の一部になりうる。このような官能基は、成膜の際に粒子5の凝集を促進し、粒子5の凝集状態を望ましい形態とする役割を奏しうる。
【0071】
酸化シリコン等の金属酸化物は、加水分解可能な有機金属化合物から形成することができる。加水分解可能なシリコン化合物としては、式(1)で示した化合物を挙げることができる。
【0072】
窒素原子も、ケイ素原子を含む化合物、具体的にはアミノ基含有シランカップリング剤から防眩膜30及び40に供給することができる。この化合物は、例えば、式(2)により示すことができる。
kmSiY4-k-m (2)
【0073】
Aは、アミノ基を含有する有機基である。アミノ基は、一級、二級及び三級アミノ基のいずれであってもよい。Aは、例えばアミノ基含有炭化水素であり、好ましくはアミノ基により一部の原子が置換されたアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくはアミノ基により水素原子が置換されたアルキル基又はアルケニル基、特に好ましくは末端にアミノ基を有するアルキル基又はアルケニル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖であっても分岐を有していても構わない。好ましいAの具体例は、アルキル基の末端にアミノ基を有するω-アミノアルキル基、及びそのアミノ基の水素原子が別のアミノアルキル基に置換されたN-ω'-(アミノアルキル)-ω-アミノアルキル基である。Aは、ケイ素原子に接続する原子として炭素原子を含むことが好ましい。この場合、窒素原子とケイ素原子との間には、アルキル基及びアルケニル基に代表される炭化水素基が介在しうる。言い換えると、窒素原子は、炭化水素基を介して、酸化シリコンを構成するケイ素原子と結合していてもよい。特に好ましいAは、γ-アミノプロピル基、或いはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基である。
【0074】
Bは、Rとして上述した有機基であってもよく、アルキル基又はアルケニル基であってもよい。アルキル基又はアルケニル基は、分岐を有してもよく、その水素原子の一部が置換されていてもよい。Bは、好ましくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基であり、その炭素鎖の炭素数は1~3であり、さらに好ましくはメチル基である。Yは上述したとおりである。kは1~3の整数であり、mは0~2の整数であり、k+mは1~3の整数である。kは1、mは0又は1である。なお、Aがγ-アミノプロピル基である場合はk=1、m=0が好ましく、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基である場合はk=1、m=0又は1が好ましい。
【0075】
式(2)で示される化合物は、加水分解及び重縮合の後、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。式(1)で示される化合物と共に用いた場合、式(2)で示される化合物はネットワーク構造の一部を形成する。この構造において、Aで示される有機基は、シリコン原子に直接結合された状態で含まれる。
【0076】
Aで示される有機基は、コーティング液の溶媒が揮発する過程において、粒子を引き寄せて粒子の凝集を促進すると考えられる。
【0077】
<4-3-2-3.第2の防眩膜の物性>
防眩膜30及び40におけるマトリクス2に対する粒子5の比、防眩膜30及び40の膜厚、表面30s及び40sのRa、表面30s及び40sのRsmは、特に限定されないが、上述した第1の防眩膜20と同じ範囲であってもよい。
【0078】
防眩膜30及び40においては、粒子5が凝集し、局所的に重なり合ってその部位で膜の高さを増す一方、別の部位では粒子5が重なり合わず膜が局所的に薄くなっている。ガラス板10の第2面から測定した防眩膜30及び40の最高部と最低部との差分は、粒子5の平均粒径の3倍以上、さらに4倍以上であってもよい。
【0079】
防眩膜40の領域40bでは、粒子が膜の厚み方向に積み重なっていないか、若しくは粒子自体が存在しない。後者の場合、領域40bでは、膜40はマトリクス2のみで構成されていてもよい。防眩膜40が形成された領域の面積に占める領域40bの比率は、例えば5~90%、さらに10~70%、特に20~50%であってもよい。
【0080】
<4-3-2-4.カバー部材の光学特性>
グロスは、鏡面光沢度により評価することができる。ガラス板10の60°鏡面光沢度は、例えば60~130%、さらに70~120%、特に80~110%、85~110%である。これらの鏡面光沢度は、防眩膜30,40を形成したガラス板の第2面について測定された値である。ガラス板10のヘイズ率は、例えば20%以下、さらに15%以下、特に10%以下であり、場合によっては1~8%、さらに1~6%、特に1~5%であってもよい。
【0081】
60°鏡面光沢度Gとヘイズ率H(%)との間には、関係式(a)が成立することが好ましく、関係式(b)が成立することがさらに好ましい。
H≦-0.2G+25 (a)
H≦-0.2G+24.5 (b)
【0082】
グロス及びヘイズの測定について参照される日本産業規格の番号は上述したとおりである。
【0083】
<4-3-2-5.負荷曲線に係るパラメータ>
第2の防眩膜が積層されたカバー部材200及び300は、ISO25178に準拠した負荷曲線に係るパラメータに関し、以下の特徴を有し得る。なお、ISO25178に規定されているとおり、負荷曲線は、ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を百として百分率で表したものである。負荷曲線に基づき、ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる。ある高さ2点におけるSmrの値の差が40%になる直線のうち最も傾きが小さくなる直線を等価直線として、等価直線が負荷面積率0%及び100%時における高さの差がコア部のレベル差Skである。コア部の高さ以上の突出山部とコア部を分ける負荷面積率がSmr1、逆にコア部の高さ以下の突出谷部とコア部を分ける負荷面積率がSmr2である。負荷面積率20、40、60、80%における表面高さがBH20、BH40、BH60、BH80である。
【0084】
Smr1は、1~40%、さらに3~35%、場合によっては10~30%であってもよい。BH20は、例えば0.04μm~0.5μm、さらに0.06μm~0.5μm、好ましくは0.12μm~0.3μmである。BH80は、例えば-0.3μm~0μm、さらに-0.3μm~-0.05μm、好ましくは-0.25μm~-0.12μmである。
【0085】
<4-3-3.第3の防眩膜>
次に、図6及び図7を参照しつつ、第3の防眩膜について説明する。図6は第3の防眩膜が積層されたガラス板の一部断面図、図7は第3の防眩膜が積層されたガラス板の他の例示す一部断面図である。カバー部材400及び500は、ガラス板10と、ガラス板10の上に設けられた防眩膜50及び60とを備えている。図6及び図7では、ガラス板10の主面10sに防眩膜50及び60が直接形成されているが、ガラス板10と防眩膜50及び60との間に別の膜が介在していても構わない。防眩膜50及び60は、粒子5とマトリクス2とを含んでいる。防眩膜50及び60には空隙が含まれていてもよい。空隙は、マトリクス2中に、又は粒子5及びマトリクス2に接するように存在していてもよい。
【0086】
防眩膜50及び60には、第1領域50p及び60pと第2領域50v及び60vとが存在する。第1領域50p及び60pでは、防眩膜50及び60の厚み方向に粒子5が積み重なっている。第2領域50v及び60vは、防眩膜50及び60をその表面側から厚さ方向に沿って観察すると、第1領域50p及び60pを囲んでいる。ただし、第2領域50v及び60vは、第1領域50p及び60pにより囲まれていてもよい。第1領域50p及び60pと第2領域50v及び60vとは、例えば、いずれか一方の領域が、互いに離間して存在する他方の複数の領域の間に介在する。この構造は海島構造と呼ばれることがある。第2領域50v及び60vは、その表面が周囲の第1領域から後退した谷状領域である。したがって、海島構造の島部は、当該島部が第1領域50p及び60pである場合は海部から突出し、当該島部が第2領域50v及び60vである場合は海部から陥没している。第2領域50v及び60vでは、第1領域50p及び60pよりも粒子5の積み重なりが少ない。第2領域50v及び60vは、粒子5が積み重なった部分50tを含んでいてもよい(図6参照)。第2領域50v及び60vは、粒子5が積み重なっていないか又は粒子5が存在しない部分を含んでいてもよい(図6及び図7参照)。少なくとも一部の第2領域50v及び60vは、粒子5が積み重なっていないか又は粒子5が存在しない部分により構成されていてもよい。第1領域50p及び60pは、その少なくとも一部、さらには個数基準で50%以上、場合によっては全部が、台地状領域であってもよい。
【0087】
「台地状」は、SEM等により膜を観察したときに、防眩膜50及び60の凸部の上部が台地状に見えることを意味するが、厳密には、膜の断面において、L2/L1≧0.75、特にL2/L1≧0.8が成立することをいう。ここで、図8に示すように、L1は、各凸部の高さHの50%相当部分の長さであり、L2は、高さHの70%相当部分、好ましくは75%相当部分の長さである。図8に示すように、1つのL1に対し、L2は、2以上の部分に分かれて存在することがある。この場合、L2は、2以上の部分の合計長さにより定める。
【0088】
第1領域50p及び60pと第2領域50v及び60vとの境界50b及び60bは、防眩膜50及び60の平均厚さTにより定めることができる(図7参照)。平均厚さTは、後述するとおり、レーザー顕微鏡を用いて測定することができる。境界50b及び60bの間隔により、第1領域50p及び60pの幅Wpと第2領域50v及び60vの幅Wvとが定まる。
【0089】
幅Wpは、5μm以上、さらに7.7μm以上、好ましくは10μm以上であってもよい。幅Wvは、3.5μm以上、7μm以上、好ましくは10μm以上であってもよい・BR>B幅Wpが大きい場合、防眩膜に入射した可視光を直接透過しやすくなるためにヘイズ率が低くなる傾向にある。幅Wvが大きい場合、防眩膜に入射した可視光を適度に散乱するため、グロスが低くなる傾向にある。幅Wp及び幅Wvが共に10μm以上である膜は、低いヘイズ率とグロスとの両立に特に適している。
【0090】
第1領域50p及び60p及び第2領域50v及び60vは、それぞれ、例えば0.25μm2以上、さらに0.5μm2以上、特に1μm2以上、場合によっては5μm2以上、さらに10μm2以上、にわたって広がる領域であってもよい。
【0091】
防眩膜50及び60には、第1領域50p及び60pと第2領域50v及び60vとが存在する。防眩膜40が形成された領域の面積に占める第2領域50v及び60vの比率は、例えば5~90%、さらに10~70%、特に20~50%であってもよい。防眩膜50及び60は、第1領域50p及び60p及び第2領域50v及び60vのみから構成されていてもよい。
【0092】
<4-3-3-1.粒子>
粒子5は、第2の防眩膜で述べたとおりである。
【0093】
<4-3-3-2.マトリクス>
マトリクス2は、第1及び第2の防眩膜で述べたとおりである。ただし、第2の防眩膜とは異なり、第3の防眩膜では、窒素原子の添加による粒子5の凝集を促進する必要性は低い。したがって、マトリクス2を形成する酸化シリコン等の金属酸化物は、加水分解可能な有機金属化合物、特に式(1)で示した化合物から形成することが好ましい。マトリクス2は、酸化シリコンから実質的に構成されていてもよい。
【0094】
<4-3-3-3.第3の防眩膜の物性>
防眩膜50及び60において、マトリクス2に対する粒子5の比、膜厚、表面50s及び60sのRa、表面50s及び60sのRsmは、特に限定されないが、第1及び第2の防眩膜で述べた範囲であってもよい。ガラス板10の主面10sから測定した防眩膜50及び60の最高部と最低部との差分は、粒子5の平均粒径の3倍以上、さらに4倍以上であってもよい。
【0095】
<4-3-3-4.カバー部材の光学特性>
グロスは、鏡面光沢度により評価することができる。ガラス板10の60°鏡面光沢度は、例えば60~130%、さらに70~120%、特に80~110%、85~100%である。これらの鏡面光沢度は、防眩膜50及び60を形成した面10sについて測定された値である。ガラス板10のヘイズ率は、例えば20%以下、さらに15%以下、特に10%以下であり、場合によっては1~8%、さらに1~6%、特に1~5%であってもよい。
【0096】
60°鏡面光沢度Gとヘイズ率H(%)との間には、関係式(a)が成立することが好ましく、関係式(b)が成立することがさらに好ましく、関係式(c)が成立することがさらに好ましい。G及びHは関係式(d)を満たすものであってもよい。
H≦-0.2G+25 (a)
H≦-0.2G+24.5 (b)
H≦-0.2G+24 (c)
H≦-0.15G+18 (d)
【0097】
グロス及びヘイズの測定について参照される日本産業規格の番号は上述したとおりである。
【0098】
<5.特徴>
本実施形態に係る表示装置は、以下の効果を奏することができる。すなわち、カバー部材100,200,300に光学層として防眩膜20,30,40,50,60が積層されているため、表示パネル500の画像を鮮明に視認することができる。また、ガラス板10と表示パネル500とが、空気層を介することなく粘着層3により直接固定されているため、これによっても、表示パネル500の画像を鮮明に視認することができる。
【0099】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0100】
<6-1>
筐体4の構成は特には限定されず、表示パネル500及びバックライトユニット6が収容されればよい。また、表示パネル500としては、上述した液晶パネル以外を採用することもでき、例えば、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、電子インク型パネル等を用いることもできる。なお、表示パネル500として、液晶パネル以外を用いる場合には、バックライトユニット6は、不要である。
【0101】
<6-2>
上記実施形態では、カバー部材が筐体4に接するようにしているが、表示パネルにのみ接するようにしてもよい。
<6-3>
ガラス板10には、表示パネル500の表示領域の一部を視認できるように、例えば、図9に示すような遮蔽層9を設けることもできる。この遮蔽層9には、少なくとも1つの開口91や切り欠き92を形成し、このような開口91や切り欠き92を介して表示パネル500に表示された画像を視認できるようにする。このような遮蔽層9は、ガラス板10の第1面及び第2面の少なくとも一方に形成されていればよい。また、光学層は、開口91や切り欠き92を覆うように積層されるほか、遮蔽層9上に形成することもできる。なお、遮蔽層9を形成する材料は、特には限定されないが、例えば、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色のセラミック、シート材により形成することができる。
【0102】
<6-4>
上記実施形態では、光学層の一例として防眩膜について説明したが、光学層は、他の機能膜であってもよく、例えば、公知の反射防止膜、防曇膜、熱反射膜等とすることもできる。なお、光学層が反射防止膜であったとしても、上述したような表面に凹凸が形成されていれば、反射防止効果が向上する。
【0103】
<6-5>
上記実施形態では、本発明の表示装置を車載用の表示装置として説明したが、これに限定されるものではない。上述した表示パネルとともに使用される表示装置全般に適用することができる。また、表示装置にタッチパネルを設け、タッチパネルディスプレイとして用いることもできる。したがって、上述したカバー部材も、種々の表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 ガラス板
20,30,40,50,60 防眩膜(光学層)
3 粘着層
5 表示パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9