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特許7562654リチウム塩を含む電池の温度を制御するための方法
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  • 特許-リチウム塩を含む電池の温度を制御するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リチウム塩を含む電池の温度を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20240930BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M10/653
C09K5/04 F
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6569
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022522298
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2020051697
(87)【国際公開番号】W WO2021074498
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】1911486
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009184(JP,A)
【文献】特表2013-515156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/149392(US,A1)
【文献】特開2010-261679(JP,A)
【文献】国際公開第2011/056824(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/653
C09K 5/04
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/617
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路、及び第2の熱伝達組成物が循環する二次回路を備えるシステムによって、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、
- 電池と第2の熱伝達組成物との間の熱交換;
- 第2の熱伝達組成物と第1の熱伝達組成物との間の熱交換
を含み、
電池が、負電極、正電極及びリチウム塩組成物を含む電解質を備える少なくとも1つの電気化学セルを備え、前記リチウム塩組成物が、
- 少なくとも99.75重量%、好ましくは少なくとも99.85重量%、有利には少なくとも99.95重量%、なおより有利には99.99重量%のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩;
- 厳密に20ppm未満の重量含有量の塩化物Cl
を含み、
塩化物Cl、フッ化物F及びスルホネートSO 2-の総重量含有量が、好ましくは150ppm以下である、方法。
【請求項2】
第1の熱伝達組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の熱伝達組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物が、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物がジフルオロメタンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンが、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2の熱伝達組成物が、好ましくはヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン及びこれらの組合せから選択され、より好ましくは、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、好ましくはZ型の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、並びにE及び/又はZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンから選択される、0~40℃の沸点を有する1つ又は複数の熱伝達化合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の熱伝達組成物が、二次回路において本質的に均一な圧力にあり、前記圧力が、好ましくは、第2の組成物の飽和圧に等しい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電池が、最低温度tと最高温度tの間の温度に維持される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最低温度tが0℃以上であり、最高温度tが60℃以下であり、より好ましくは、最低温度tが15℃以上であり、最高温度tが40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tが16℃以上であり、最高温度tが28℃以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
車両の電池の充電の間に実施され、車両の電池が、好ましくは、その総放電から30分以下、好ましくは15分以下の期間に完全充填される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の熱伝達組成物が、車両の電池と直接接触している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度の調整のための装置であって、
- 第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路(1);及び
- 第2の熱伝達組成物が循環する二次回路(2)
を備え、
第1の熱伝達組成物と第2の熱伝達組成物との間の熱交換が可能となるように、蒸気圧縮回路(1)が、中間熱交換器(5)によって二次回路(2)と連結されており;装置が、電池と第2の熱伝達組成物との間で熱交換するように構成された追加の熱交換器(7)を備え、
電池が、負電極、正電極及びリチウム塩組成物を含む電解質を備える少なくとも1つの電気化学セルを備え、前記リチウム塩組成物が、
- 少なくとも99.75重量%、好ましくは少なくとも99.85重量%、有利には少なくとも99.95重量%、なおより有利には99.99重量%のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩;
- 厳密に20ppm未満の重量含有量の塩化物Cl
を含み、塩化物Cl、フッ化物F及びスルホネートSO 2-の総重量含有量が、好ましくは150ppm以下である、
装置。
【請求項12】
二次回路(2)が、コンプレッサーを備えない、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
二次回路(2)における第2の熱伝達組成物の循環が、ポンプ、又は重力、又は毛細管作用によって実施される、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
車両の車室の空調、及び/又は車両の車室の加熱、及び/又は車両の電子化合物の冷却、及び/又は車両の電子化合物の加熱に適合される、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
第1の熱伝達組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物が、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物がジフルオロメタンである、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンが、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の電池の温度の調整のための方法、及びまたこの方法の実施に適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気又はハイブリッド車両の電池は、特定の使用条件下、とりわけ非常に特定の温度範囲で最大効率をもたらす。最大効率とは、利用可能な高瞬時電力、利用可能な高総容量、及びまた電池寿命の増加を意味する。したがって、電池の最大効率により、良好な性能及び車両の自律だけでなく、1km当たりの車両の低エネルギー消費が可能になる。
【0003】
さらに、電気又はハイブリッド車両の動作の間、電池の温度は上昇し、電池の早期劣化、それどころかさらには破壊を回避するためには、常に60℃未満の温度、好ましくは40℃未満の温度に維持しなくてはならない。15℃未満の温度では、内部抵抗の増加に起因して、電池の充電は減少する。結果として、車両の動作の間、電池の温度は、およそ15℃~40℃の間で維持されるべきである。0℃未満での電池ユニットの動作により、電池のセルが損傷し、結果として、電池ユニットの寿命の大幅な減少につながるため、そのような条件は回避するべきである。
【0004】
自動車両において、熱エンジンは、エンジンを冷却するため、及びまた車室を加熱するために使用される熱交換流体の循環のための回路を備える。この目的のために、回路は、特に、ポンプ及び車室を加熱するために熱交換流体によって貯蔵された熱を回収する気流が循環するユニットヒーターを備える。
【0005】
さらに、冷却システムは、エバポレーター、コンプレッサー、コンデンサー、膨張弁、及び一般に冷媒又は熱伝達流体と記述される、(液/気)状態を変化することが可能な流体を備える。ベルト及びプーリーを使用して車両のエンジンによって直接駆動されるコンプレッサーは、冷媒を圧縮し、冷媒を高圧及び高温下で強制的にコンデンサーに戻す。コンデンサーは、強制換気によって、高圧及び高温で気体状態になるガスの凝縮を引き起こす。コンデンサーは、コンデンサーを通過する空気の温度を低下させることによってガスを液化する。エバポレーターは、車両の車室又は電池に吹き込まれる空気から熱を除去する熱交換器である。膨張弁により、エバポレーター中の温度及び圧力に応じて、通路区画の修正を介してループへのガスの進入についての流速を調整することが可能である。したがって、車両の外部又は電池に由来する熱気は、エバポレーターと接触して冷却される。
【0006】
自動車両の空調に好都合に使用される冷媒は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)である。
【0007】
しかしながら、HFC-134aを含む多数のHFC流体は、温室効果に有害に作用し得る。この作用は、数値パラメーターであるGWP(地球温暖化係数)によって定量化される。
【0008】
今後、熱伝達用途に使用される別の冷媒は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)である。しかしながら、HFO-1234yfは低GWP流体であるが、可燃性流体であると考えられる。
【0009】
文献EP3499634は、少なくとも1つの電池ユニットを備える車両の電池熱管理システムに関する。
【0010】
文献WO2017/143018は、空気及び/又はヒト若しくは他の動物が占有する居所に位置する物品を調節するための冷媒システムに関する。
【0011】
文献DE202014010264は、車両の内部空間を冷却するように設計された少なくとも第1の圧縮冷凍デバイスを備え、循環冷媒を含む車両であって、冷媒が、フルオロケトン及び/又は(ヒドロ)フルオロオレフィン及び/又は(ヒドロ)フルオロクロロオレフィンのファミリー由来の物質であることを特徴とする、車両に関する。
【0012】
自動車両の電池の温度の調整のための方法であって、効果的及び安全であり、一方、車両の可燃性生成物の量又は車両の最熱部分へのこれらの近接を制限又は低減し、このことが、電池の寿命を可能な限り保持しながら行われる、方法を提供することへのニーズが存在している。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、第1に、第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路、及び第2の熱伝達組成物が循環する二次回路を備えるシステムによって、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、
- 電池と第2の熱伝達組成物との間の熱交換;
- 第2の熱伝達組成物と第1の熱伝達組成物との間の熱交換
を含み、
電池が、負電極、正電極及びリチウム塩組成物を含む電解質を備える少なくとも1つの電気化学セルを備え、前記リチウム塩組成物が、
- 少なくとも99.75重量%、好ましくは少なくとも99.85重量%、有利には少なくとも99.95重量%、なおより有利には99.99重量%のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩;
- 厳密に20ppm未満の重量含有量の塩化物Cl
を含み、
塩化物Cl、フッ化物F及びスルホネートSO 2-の総重量含有量が、好ましくは150ppm以下である、方法に関する。
【0014】
一部の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む。
【0015】
一部の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物は、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物はジフルオロメタンである。
【0016】
一部の実施形態では、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンは、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する。
【0017】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、好ましくはヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン及びこれらの組合せから選択され、より好ましくは、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、好ましくはZ型の1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、並びにE及び/若しくはZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンから選択される、0~40℃の沸点を有する1つ又は複数の熱伝達化合物を含む。
【0018】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路において本質的に均一な圧力にあり、前記圧力は、好ましくは、第2の組成物の飽和圧に等しい。
【0019】
一部の実施形態では、電池は、最低温度t~最高温度tの間の温度に維持される。
【0020】
一部の実施形態では、最低温度tは0℃以上であり、最高温度tは60℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは15℃以上であり、最高温度tは40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは16℃以上であり、最高温度tは28℃以下である。
【0021】
一部の実施形態では、方法は、車両の電池の充電の間に実施され、車両の電池は、好ましくは、その総放電から30分以下、好ましくは15分以下の期間に完全充填される。
【0022】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、車両の電池と直接接触している。
【0023】
本発明はまた、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度の調整のための装置であって、
- 第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路;及び
- 第2の熱伝達組成物が循環する二次回路
を備え、
第1の熱伝達組成物と第2の熱伝達組成物との間の熱交換が可能となるように、蒸気圧縮回路が、中間熱交換器によって二次回路と連結されており;装置が、電池と第2の熱伝達組成物との間で熱交換するように構成された追加の熱交換器を備え、
電池が、負電極、正電極及びリチウム塩組成物を含む電解質を備える少なくとも1つの電気化学セルを備え、前記リチウム塩組成物が、
- 少なくとも99.75重量%、好ましくは少なくとも99.85重量%、有利には少なくとも99.95重量%、なおより有利には99.99重量%のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩;
- 厳密に20ppm未満の重量含有量の塩化物Cl
を含み、
塩化物Cl、フッ化物F及びスルホネートSO 2-の総重量含有量が、好ましくは150ppm以下である、
装置に関する。
【0024】
一部の実施形態では、二次回路はコンプレッサーを備えない。
【0025】
一部の実施形態では、二次回路における第2の熱伝達組成物の循環は、ポンプ、又は重力、又は毛細管作用によって実施される。
【0026】
一部の実施形態では、装置は、車両の車室の空調、及び/又は車両の車室の加熱、及び/又は車両の電子化合物の冷却、及び/又は車両の電子化合物の加熱にさらに適合される。
【0027】
一部の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物は、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物はジフルオロメタンである。
【0028】
一部の実施形態では、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンは、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する。
【0029】
本発明により、上で示したニーズを満たすことが可能になる。より詳細には、本発明は、自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、効果的及び安全な方法を提供する。適宜、本発明により、車両の可燃性生成物の量又は車両の最熱部分へのこれらの生成物の近接を制限又は低減することが可能になる。本発明によりまた、電池の寿命を保持することが可能になる。
【0030】
これは、一方は蒸気圧縮回路を循環し、他方は二次回路を循環する2種の熱伝達組成物の連結使用によって達成され、二次回路の熱伝達組成物により、車両の電池に必要な熱伝達が実施される。二次回路の熱伝達組成物は、好ましくは、可燃性熱伝達化合物を含有しない;又はこの組成物は非可燃性である。より詳細には、蒸気圧縮回路の熱伝達流体としてHFO-1234yfが使用される場合、二次回路の使用により、蒸気圧縮回路の範囲を制限し、使用されるHFO-1234yfの量を低減し、及び/又は車両、特に車両の電池の最熱要素へのHFO-1234yfの近接を防止することが可能になり、したがって、漏れ及び発火のリスクが低減される。さらに、二次回路の使用により、車両の熱管理が促進される。より詳細には、電気自動車を例として挙げる場合、多数の熱源(電池、電気及び電子回路、エンジン)、並びにまた多数の加熱及び/又は冷却を必要とするもの(電池、車室)は、異なる温度レベルで存在する。熱伝達流体を含む二次回路の使用により、他の技術と比較して、機器のこれらの品目の熱管理が促進される。
【0031】
一部の実施形態では、二次回路の使用によりまた、単一相熱交換流体の使用と比較して、低ポンプ能力によってエネルギー消費の低減が可能になる。
【0032】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物を含む二次回路の使用により、熱交換を実施するための固相変化材料の使用を回避することによって、車両を軽量化することが可能になる。
【0033】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物が、可燃性熱伝達化合物を含有しない、又は少なくとも非可燃性であるため、第2の熱伝達組成物はまた、車両の電池が過熱される事象において消火剤として働き得る。
【0034】
さらに、上で記載される通りの電解質を含有する電池は、改善された寿命を示すこと、及びその構成成分の腐食は低減され、それどころかさらには排除されることが観察され、これは、その温度が上に記載される2回路装置によって調整される場合、ますますそのようである。
【0035】
本発明の電解質は、より高いイオン伝導性を示し、したがって、電池は、熱くなりにくい傾向がある。熱調整システムと併せて、電池の温度は、特に良好に制御される。
【0036】
さらに、腐食の低減又は排除により、短絡を回避し、おそらくは電池の液浸において機能することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による装置の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで本発明を、以下の記載において、より詳細に、非限定的な方法で記載する。
【0039】
本発明は、熱伝達装置によって実施される、温度を調整するため、すなわち、自動車両の電池を冷却するため及び/又は加熱するための熱伝達方法に関する。装置は、第1及び第2の熱伝達組成物を含有し、各々の熱伝達組成物は、1つ又は複数の熱伝達化合物を含む熱伝達流体を含む。
【0040】
「熱伝達化合物」という用語は、検討中の用途において、蒸発による熱の吸収及び凝縮による放熱が可能な化合物を意味すると理解される。
【0041】
本発明の文脈において、「HFO-1234yf」は2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを指し、「HCFO-1233zd」は1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを指し、「HCFO-1224yd」は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを指し、「HFO-1336mzz」は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを指す。
【0042】
車両の電池
自動車両は、電気又はハイブリッド車両である。自動車両は、少なくとも1つの電動モーター及び適宜、熱エンジンを備える。したがって、自動車両は、電子回路、及び以下の記載においてより単純に電池と呼ばれる牽引用電池を備える。
【0043】
電池は、少なくとも1つの電気化学セル及び好ましくは複数の電気化学セルを備える。各々の電気化学セルは、負電極、正電極、及び負電極と正電極との間に挟まれた電解質を備える。
【0044】
各々の電気化学セルはまた、電解質が含浸されたセパレーターを備え得る。
【0045】
電気化学セルは、電池に直列に及び/又は並列に組み込まれ得る。
【0046】
「負電極」という用語は、電池が電流を送達する場合(つまり、電池が放電の過程にある場合)、アノードとして働き、電池が充電の過程にある場合、カソードとして働く電極を意味すると理解される。負電極は、典型的には、電気化学的に活性な材料、場合により、電子伝導材料、及び場合により、結合剤を含む。
【0047】
「正電極」という用語は、電池が電流を送達する場合(つまり、電池が放電の過程にある場合)、カソードとして働き、電池が充電の過程にある場合、アノードとして働く電極を意味すると理解される。正電極は、典型的には、電気化学的に活性な材料、場合により、電子伝導材料、及び場合により、結合剤を含む。
【0048】
「電気化学的に活性な材料」という用語は、イオンを可逆的に挿入可能な材料を意味することが理解される。
【0049】
「電子伝導材料」という用語は、電子を伝導することが可能な材料を意味することが理解される。
【0050】
電気化学セルの負電極は、特に、電気化学的に活性な材料として、グラファイト、リチウム、リチウム合金、LiTi12型のチタン酸リチウム、又は酸化チタンTiO、シリコン若しくはリチウム/シリコン合金、酸化スズ、リチウム金属間化合物又はそれらの混合物の1つを含み得る。
【0051】
負電極がリチウムを含む場合、後者は、金属リチウム又はリチウムを含む合金のフィルムの形態であり得る。例えば、使用できるリチウムベースの合金の中でも、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-シリカ合金、リチウム-スズ合金、Li-Zn、LiBi、LiCd及びLiSBを挙げることができる。負電極の例は、ローラー間でリチウムのストリップを圧延することによって調製された活性リチウムフィルムを含み得る。
【0052】
正電極は、酸化物型の電気化学的に活性な材料を含む。これは、高ニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/マンガン/コバルト複合酸化物(LiNiMnCo、x+y+z=1、略称NMC、x>y及びx>z)、又は高ニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/コバルト/アルミニウム複合酸化物(LiNix’Coy’Alz’、x’+y’+z’=1、略称NCA、x’>y’及びx’>z’)である。
【0053】
これらの酸化物の具体例は、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2)、及びNMC811(LiNi0.8Mn0.1Co0.1)である。
【0054】
これらの酸化物の混合物を使用できる。上で記載される酸化物材料は、適宜、別の酸化物、例えば、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えば、LiMn又はLi)、リチウム/ニッケル酸化物組成物(例えば、LiNiO)、リチウム/コバルト酸化物組成物(例えば、LiCoO)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えば、LiNi1-yCo)、リチウム及び遷移金属複合酸化物、スピネル構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えば、LiMn2-yNi)、酸化バナジウム、高ニッケル含有量を有さないNMC及びNCA酸化物、並びにそれらの混合物と組み合わせることができる。
【0055】
好ましくは、高ニッケル含有量を有するNMC又はNCA酸化物は、電気化学的に活性な材料として正電極中に存在する酸化物材料の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、及びより好ましくは本質的にすべてを表す。
【0056】
各々の電極の材料はまた、電気化学的に活性な材料の他に、電子伝導材料、例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)炭素、Shawinigan炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(例えば、蒸気成長炭素繊維(VGCF))、有機前駆体の炭化によって得られた非粉末状炭素、又はこれらの2種以上の組合せを含む炭素源を含み得る。セラミック若しくはガラスタイプのリチウム塩若しくは無機粒子、又はまた他の適合性活性材料(例えば、硫黄)などの他の添加剤もまた、正電極の材料中に存在し得る。
【0057】
各々の電極の材料はまた、結合剤を含み得る。結合剤の非限定例は、直鎖状、分枝状及び/若しくは架橋ポリエーテルポリマー結合剤(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)若しくはポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、又はこの2種の混合物(又はEO/POコポリマー)をベースとし、場合により架橋性単位を含むポリマー)、水溶性結合剤(例えば、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム))、又はフルオロポリマー型の結合剤(例えば、PVDF(フッ化ポリビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))、及びそれらの組合せを含む。水溶性のものなどの一部の結合剤はまた、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤を含み得る。
【0058】
セパレーターは、多孔性ポリマーフィルムであり得る。非限定例として、セパレーターは、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メタクリレートコポリマーなどのポリオレフィンの多孔性フィルム、又は上記のポリマーの多層構造からなり得る。
【0059】
電解質
電池中に存在する電解質は、
- 適宜、1つ又は複数の添加剤と共に
- リチウム塩組成物
を含み、好ましくは、それらからなり;
- 前記リチウム塩組成物は、溶媒又は溶媒の混合物に溶解する。
【0060】
溶媒は、以下の非網羅的リスト:エーテル、エステル、ケトン、アルコール、ニトリル及びカーボネートから選択され得る。
【0061】
エーテルの中でも、直鎖状又は環式エーテル、例えば、ジメトキシエタン(DME)、2~5つのオキシエチレン単位のオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
エステルの中でも、リン酸エステル又は亜硫酸エステルを挙げることができる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0063】
特に、ケトンの中でも、シクロヘキサノンを挙げることができる。
【0064】
アルコールの中でも、例えば、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールを挙げることができる。
【0065】
ニトリルの中でも、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0066】
カーボネートの中でも、例えば、環式カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41-1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフルオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、プロパンスルトン、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、ホスホネート、ビニルを含有するシラン化合物及び2-シアノフランからなる群から選択され得る。
【0068】
本発明によると、リチウム塩組成物は、以下の対象物のうちの1つに従う。
【0069】
対象物1.
- 少なくとも99.75重量%、好ましくは少なくとも99.85重量%、有利には少なくとも99.95重量%、なおより有利には99.99重量%のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩;
- 厳密に20ppm未満の重量含有量の塩化物Cl
を含む組成物であって、
- 塩化物Cl、フッ化物F及びスルホネートSO 2-の総重量含有量が、好ましくは150ppm以下である、組成物。
【0070】
本発明の文脈において、「ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩」、「リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド」、「LiFSI」、「LiN(FSO」又は「ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム」は、等価に使用される。
【0071】
ppm又は「百万分率」という表記は、重量によることを意味すると理解される。
【0072】
対象物2:[SO 2-]+[Cl]+[F]≦120ppm、好ましくは、[SO 2-]+[Cl]+[F]≦100ppm、有利には、[SO 2-]+[Cl]+[F]≦80ppm、なおより有利には[SO 2-]+[Cl]+[F]≦50ppm、特に、[SO 2-]+[Cl]+[F]≦30ppm、例えば、[SO 2-]+[Cl]+[F]≦20ppmである、対象物1による組成物。
【0073】
対象物3:組成物の総重量に関して100ppm以下、好ましくは50ppm以下、有利には30ppm以下、なおより有利には20ppm以下、特に10ppm以下の重量含有量のサルフェートを含む、対象物1又は2による組成物。
【0074】
対象物4:サルフェートの重量含有量が、組成物の総重量に関して、厳密に0ppm超、好ましくは0.1ppm以上である、対象物1~3のいずれか1つによる組成物。
【0075】
対象物5:サルフェートの重量含有量が、組成物の総重量に関して、0.1ppm~100ppm、好ましくは0.1ppm~80ppm、優先的には0.1ppm~50ppm、有利には0.1ppm~20ppm、なおより有利には0.1ppm~10ppm、特に0.1ppm~5ppmの範囲である、対象物1~4のいずれか1つによる組成物。
【0076】
対象物6:塩化物Clの重量含有量が、組成物の総重量に関して、18ppm以下、好ましくは15ppm以下、優先的には12ppm以下、有利には10ppm以下である、対象物1~5のいずれか1つによる組成物。
【0077】
対象物7:塩化物Clの重量含有量が、組成物の総重量に関して、厳密に、0ppm超、好ましくは0.1ppm以上、優先的には0.5ppm以上、なおより優先的には1ppm以上、有利には2ppm以上、なおより有利には3ppm以上、特に4ppm以上である、対象物1~6のいずれか1つによる組成物。
【0078】
対象物8:塩化物Clの重量含有量が、組成物の総重量に関して、0.1ppm~20ppm未満、好ましくは0.1ppm~18ppm、優先的には0.1ppm~15ppm、有利には0.1ppm~12ppm、特に0.1ppm~10ppmの範囲である、対象物1~7のいずれか1つによる組成物。
【0079】
対象物9:フッ化物Fの重量含有量が、組成物の総重量に関して、0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、優先的には1ppm以上、有利には2ppm以上、なおより有利には3ppm以上、特に4ppm以上である、対象物1~8のいずれか1つによる組成物。
【0080】
対象物10:フッ化物の重量含有量が、組成物の総重量に関して、100ppm以下、好ましくは80ppm以下、優先的には60ppm以下、有利には50ppm以下、なおより有利には30ppm以下である、対象物1~9のいずれか1つによる組成物。
【0081】
対象物11:組成物中のフッ化物Fの重量含有量が、組成物の総重量に関して、0.1ppm~100ppm、好ましくは0.1ppm~80ppm、優先的には0.1ppm~60ppm、有利には0.1ppm~50ppm、特に0.1ppm~30ppmの範囲である、対象物1~10のいずれか1つによる組成物。
【0082】
対象物12:組成物の総重量に関して、200重量ppm未満、好ましくは150重量ppm未満、優先的には100重量ppm未満、有利には50重量ppm未満、なおより有利には30重量ppm未満、特に10重量ppm未満のKを含む、対象物1~11のいずれか1つによる組成物。
【0083】
対象物13:組成物の総重量に関して、厳密に0重量ppm超、優先的には厳密に0重量ppm超~100重量ppm未満、有利には厳密に0重量ppm超~50重量ppm未満、なおより有利には厳密に0重量ppm超~30重量ppm未満、特に厳密に0重量ppm超~10重量ppm未満のKを含む、対象物1~12のいずれか1つによる組成物。
【0084】
対象物14:[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦150ppmである、対象物1~13のいずれか1つによる組成物。
【0085】
これは、サルフェート(SO 2-)、塩化物(Cl)、フッ化物(F)及びカリウムイオン(K)の総重量含有量の合計が、組成物の総重量に関して、150ppm以下であることを意味する。
【0086】
対象物15:
[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦120ppm、
優先的には[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦100ppm、
有利には[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦80ppm、
なおより有利には[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦50ppm、
特に[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦30ppm、
例えば、[SO 2-]+[Cl]+[F]+[K]≦20ppmである、対象物1~14のいずれか1つによる組成物。
【0087】
対象物16:組成物の総重量に関して、200重量ppm未満の水、好ましくは150重量ppm未満、優先的には100重量ppm未満、有利には50重量ppm未満、なおより有利には30重量ppm未満、特に10重量ppm未満の水、を含む、対象物1~15のいずれか1つによる組成物。
【0088】
対象物17:組成物の総重量に関して、厳密に0重量ppm超、優先的には厳密に0重量ppm超~100重量ppm未満、有利には厳密に0重量ppm超~50重量ppm未満、なおより有利には厳密に0重量ppm超~30重量ppm未満、特に厳密に0重量ppm超~10重量ppm未満の水を含む、対象物1~16のいずれか1つによる組成物。
【0089】
一部の実施形態では、上記対象物のうちの1つの組成物のみが、電解質中の上で言及したイオンの可能な供給源である(かつ、おそらく、上記対象物のうちの1つの組成物のみが、電解質中の水の可能な供給源である)。結果として、上で示した含有量は、必要な変更を加えて、電解質自体に当てはまる。
【0090】
言い換えると、有利には、電解質が対象物1による組成物を含有する場合、電解質中の塩化物イオンClの重量含有量は、LiFSI塩に関して、厳密に20ppm未満であり、電解質中の塩化物Cl、フッ化物F及びサルフェートSO 2-の総重量含有量は、LiFSI塩に関して、好ましくは150ppm以下である。電解質が対象物2~17のうちの1つによる組成物を含有する場合について、同様である。
【0091】
上記対象物のうちの1つによる組成物は、有機溶媒S1中溶液中でビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩を精製するための方法であって、前記方法が、上記対象物のうちの1つによる組成物を得るために、以下の段階:
a)脱イオン水を用いて、有機溶媒S1及び塩を含有する溶液から前記塩を液-液抽出して、前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の水溶液を形成する段階;
a’)場合により、前記水溶液を濃縮する段階;
b)有機溶媒S2を用いて、前記水溶液(段階a)又は段階a’)で得られた)からビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩を液-液抽出する段階;
c)段階b)で得られたビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩を濃縮して、組成物Cを形成する段階;
d)組成物Cからビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩を結晶化する段階;
e)場合により、ろ過段階;
を含むことが可能であり、
前記方法が、組成物Cが少なくとも30重量%の乾燥抽出物DEを含むことを特徴とし、前記乾燥抽出物DEが、
- 前記乾燥抽出物DEの総重量に関して、好ましくは99.90重量%以上の含有量でビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩を含むこと;
- 塩化物、サルフェート及びフッ化物の総重量含有量の合計が、前記乾燥抽出物DEの総重量に関して、厳密に0超かつ500重量ppm以下、好ましくは300重量ppm以下、有利には200重量ppm以下であること
を特徴とする、方法によって得ることができる。
【0092】
乾燥抽出物は、典型的には、以下の段階:
- i)アルミニウムボートをHR73型のMettler Toledo熱天秤デバイスに配置する;
- ii)続いて、ボートは風袋引きする;
- iii)ガラスファイバーディスクをボートに配置し、恒量が得られるまで、110℃で乾燥する;
- iv)ボート及びガラスファイバーディスクを較正する;
- v)次いで、ディスクを、分析する溶液1gに浸し、110℃に加熱する;
- vi)重量が一定になったら、乾燥抽出物を得る
に従って、HR73型のMettler Toledo熱天秤で測定される。
【0093】
一実施形態によると、上述の組成物C中の塩化物の総重量含有量は、20ppm超、好ましくは30ppm以上、優先的には50ppm以上、有利には100ppm以上、例えば、150ppm以上である。
【0094】
好ましくは、組成物Cは、塩化物、サルフェート、フッ化物及びカリウムイオンの総重量含有量の合計が、100ppm以上、優先的には150ppm以上、有利には180ppm以上であることを特徴とする。
【0095】
一実施形態によると、組成物Cは、組成物Cの総重量に関して、少なくとも35重量%、優先的には少なくとも40重量%、有利には少なくとも50重量%の前記乾燥抽出物DEを含む。
【0096】
有機溶媒S1中の溶液中のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩は、例えば、WO2015/158979又はWO2009/1233328に記載の通りの前記塩の調製のための任意の公知の方法によって得ることができる。LiFSI塩は、固体形態又は有機溶媒S1中の溶液の形態のいずれかで得ることができる。
【0097】
上記対象物のうちの1つによる組成物は、以下の段階:
- i)ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の調製のためのプロセスであって、前記塩が、固体又は有機溶媒S1中の溶液の形態であることが可能である、プロセス;
- ii)段階i)で得られたLiFSI塩が固体である場合、有機溶媒S1と接触させる段階;
- iii)上で記載される通りの精製プロセス
を含む方法によって得ることができる。
【0098】
上述の有機溶媒S2は、エステル、ニトリル、エーテル、塩素化溶媒、芳香族溶媒及びそれらの混合物で構成される群から選択され得る。好ましくは、溶媒S2は、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジエチルエーテル及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、有機溶媒S2は、酢酸ブチルである。
【0099】
本発明によると、上述の段階a)及びb)の各々は、少なくとも1回繰り返され得る。
【0100】
一実施形態によると、有機溶媒S1は、エステル、ニトリル、エーテル、塩素化溶媒、芳香族溶媒及びそれらの混合物で構成される群から選択される。好ましくは、溶媒S1は、エーテル、エステル及びそれらの混合物から選択される。例えば、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジエチルエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、溶媒OS1は、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びそれらの混合物から選択され、有機溶媒S1は、優先的には、酢酸ブチルである。
【0101】
上述の段階c)は、2工程:
- 25℃~45℃、好ましくは30℃~40℃の範囲の温度で好ましくは実施される予備濃縮;
- 以下の条件下:
o 30℃~95℃の間、好ましくは30℃~90℃の間、優先的には40℃~85℃の間、特に60℃~80℃の間の温度、
o 10-3mbar abs~5mbar absの間、特に5.10-1~2mbar absの間の圧力;
o 5分以下、好ましくは3分以下の滞留時間
で、短経路薄膜エバポレーター中で実施される濃縮段階
で実施され得る。
【0102】
好ましくは、予備濃縮段階は、減圧下、例えば、50mbar abs以下の圧力、特に30mbar abs以下の圧力で実施される。
【0103】
予備濃縮段階は、濃縮が可能である任意の手段によって、例えば、エバポレーターを使用して実施され得る。
【0104】
本発明の文脈において、別途言及されない限り、「滞留時間」という用語は、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の溶液(特に上述の段階b)の終了時に得られた)のエバポレーターへの進入から溶液の第1の滴が出るまでに経過した時間を意味すると理解される。
【0105】
好ましい実施形態によると、短経路薄膜エバポレーターのコンデンサーの温度は、-50℃~5℃の間、好ましくは-35℃~5℃の間である。特に、コンデンサーの温度は-5℃である。
【0106】
本発明による短経路薄膜エバポレーターはまた、「ワイプドフィルム短経路」(WFSP)エバポレーターの名称でも公知である。それらは、典型的には、蒸発の間に生じる蒸気が短経路を覆った(短距離を移動する)後、コンデンサーで凝縮されるため、そのように呼ばれる。
【0107】
特に、短経路薄膜エバポレーターの中でも、Buss-SMS-Canzler(旧Luwa AG)によって販売されているエバポレーターである、UIC GmbH又はVTA Processを挙げることができる。
【0108】
典型的には、短経路薄膜エバポレーターは、コンデンサーが設備の外側にある他の種類の薄膜エバポレーター(短経路エバポレーターではない)とは異なり、設備(特に、設備の中心)に実際に配置された溶媒の蒸気のコンデンサーを備え得る。
【0109】
この種類の設備では、エバポレーターの熱内壁での蒸留される生成物の薄膜の形成は、典型的には、以下で示す機械的手段を使用して、蒸発表面上への連続展延によって確実になり得る。
【0110】
エバポレーターは、特に、その中心に、壁上での膜の形成を可能にする機械的手段が取り付けられた軸ローターを備え得る。機械的手段は、固定羽根、ローターの全高さにわたって分布する可撓性若しくは剛性材料で作製された3若しくは4枚の羽根を有するローブローター、又は可動羽根、パドル、ドクターブレード若しくはガイド付きスクレーパーを備えたローターであり得る。この場合、ローターは、ラジアルサポートによってシャフト又は軸に取り付けられた一連のピボット連結パドルからなり得る。他のローターは、二次軸に取り付けられた可動ローラーを備え得、前記ローラーは遠心によって壁に対して堅く保持される。設備の大きさに依存するローターの回転速度は、当業者によって容易に決定され得る。異なる回転要素は、様々な材料:金属材料、例えば、鋼、鋼合金(ステンレス鋼)又はアルミニウム、ポリマー材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレンPTFE又はガラス材料(エナメル);ポリマー材料でコーティングされた金属材料製であり得る。
【0111】
結晶化段階d)は、段階c)の終了時に得られた組成物を、塩素化溶媒、例えば、ジクロロメタン及び芳香族溶媒、例えば、トルエンから選択される有機溶媒(「結晶化溶媒」)と接触させることによって実施され得る。
【0112】
好ましくは、結晶化は、25℃以下、優先的には15℃以下の温度で実施される。
【0113】
車両の電池の温度の調整のための装置
本発明は、熱伝達装置における、自動車両の電池の温度の調整を含む熱伝達方法に関する。
【0114】
したがって、本発明による方法は、車両の電池を冷却するための方法;又はこの電池を加熱するための方法;又は冷却及び加熱(要件に従って、経時的に交互する冷却及び加熱)するための方法である。
【0115】
本発明による方法は、以下に提示される装置によって実施される。
【0116】
熱伝達装置は、第1の熱伝達組成物を含有する蒸気圧縮回路(又は冷凍回路)及び第2の熱伝達組成物を含有する二次回路(又は熱交換回路)を備える。
【0117】
図1に模式的に示される本発明の一実施形態によると、蒸気圧縮回路1は、二次回路2と連結される。蒸気圧縮回路1は、少なくとも1つの第1の熱交換器3、膨張弁4、中間熱交換器5及びコンプレッサー6を備える。第1の熱交換器3は、好ましくは、空気/冷媒型のものであり、これは、周囲空気などのエネルギー源との熱交換を可能にする。二次回路2は、少なくとも1つの追加の熱交換器7を備える。
【0118】
「エネルギー源」という用語は、要件に従って熱エネルギーを吸収又は放出し得る固体及び/又は液体及び/又は気体を意味すると理解される。車両の外気、車室の空気、電池及び電子回路は、エネルギー源の例を表す。
【0119】
冷凍モードでは(電池の冷却)では、熱は、電池から追加の熱交換器7に伝導する。場合により、この熱伝達の結果、二次回路2を循環する第2の熱伝達組成物の蒸発が起こる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、この熱伝達の間、液体状態のままである。
【0120】
第2の熱伝達組成物は、その後、二次回路2のコンデンサーとして働き得る中間熱交換器5に送られる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、中間熱交換器5における熱伝達の間、液体状態のままである。
【0121】
蒸気圧縮回路1において、第1の熱伝達組成物は、コンプレッサー6によって圧縮され、コンデンサーとして働く(つまり、外気などの供給源に熱エネルギーを伝導する)第1の熱交換器3、その後、第1の熱伝達組成物が膨張される膨張弁4、次いで、蒸気圧縮回路1のエバポレーターとして働く中間熱交換器5を通過する。したがって、中間熱交換器5において、熱は、第2の熱伝達組成物から第1の熱伝達組成物に伝導し、その結果、場合により、第2の熱伝達組成物の凝縮及び第1の熱伝達組成物の蒸発が起こる。第1の熱伝達組成物は、その後、再度コンプレッサー6に送られる一方、第2の熱伝達組成物は、追加の熱交換器7に送られ、電池の冷却が可能になる。
【0122】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、特に外側温度が低い、例えば、10℃未満、又は5℃未満、又は0℃未満、又は-5℃未満、又は-10℃未満、又は-15℃未満、又は-20℃未満、又は-25℃未満の場合、電池を加熱するのに適している。
【0123】
したがって、本発明はまた、装置によって電池を加熱するための方法を包含する。電池の加熱は、要件に従って、経時的に電池の冷却と交互し得る。
【0124】
電池を加熱する場合、熱は、追加の熱交換器7から電池に伝導し、その結果、二次回路2を循環する第2の熱伝達組成物の凝縮が起こり得る。あるいは、第2の熱伝達組成物は、この熱伝達の間、液体状態のままである。
【0125】
第2の熱伝達組成物は、その後、二次回路2のエバポレーターとして働き得る中間熱交換器5に送られる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、中間熱交換器5における熱伝達の間、液体状態のままである。
【0126】
蒸気圧縮回路1において、第1の熱伝達組成物は、膨張弁4で膨張され、エバポレーターとして働く(つまり、外気などの供給源から熱エネルギーを吸収する)第1の熱交換器3、その後、第1の熱伝達組成物が圧縮されるコンプレッサー6、次いで、蒸気圧縮回路1のコンデンサーとして働く中間熱交換器5を通過する。したがって、中間熱交換器5において、熱は、第1の熱伝達組成物から第2の熱伝達組成物に伝導し、その結果、第1の熱伝達組成物の凝縮及び場合により第2の熱伝達組成物の蒸発が起こる。第1の熱伝達組成物は、その後、再度膨張弁4に送られる一方、第2の熱伝達組成物は、追加の熱交換器7に送られ、電池の加熱が可能になる。
【0127】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置は、電池の加熱の1つ又は複数の相と交互する電池の冷却の1つ又は複数の相を実施するのに適している。
【0128】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、車両の車室及び/又は車両の電子化合物の冷却(空調)に適している。次いで、車室の空気との熱交換専用の熱交換器及び/又は電子化合物との熱交換専用の熱交換器が、存在する。
【0129】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、車両の車室及び/又は車両の電子化合物の加熱に適している。次いで、車室の空気との熱交換専用の熱交換器及び/又は電子化合物との熱交換専用の熱交換器が、存在する。
【0130】
ある特定の実施形態では、1つの同じ熱交換器が、動作モードに応じて、上に記載される中間交換器5の機能を提供し得る。
【0131】
ある特定の実施形態では、1つの同じ熱交換器が、動作モードに応じて、第1の熱交換器3の機能を提供し得る。
【0132】
補助交換器がまた、異なる動作モードを確実にするために追加され得る。各々の交換器の動作モードの変化を確実にするために、配管及び弁のアセンブリが使用され得る。
【0133】
一部の実施形態では、蒸気圧縮回路1は可逆的であり、その動作の逆転のための手段を追加的に備え得る。
【0134】
可逆的蒸気圧縮回路1の動作の逆転のための手段は、冷凍モードの構成と熱ポンプモードの構成との間の蒸気圧縮回路1の動作の逆転のための手段である。
【0135】
上述の逆転手段は、可逆的蒸気圧縮回路1の第1の熱伝達組成物の経路の修正のための手段、又は前記回路1の第1の熱伝達組成物の循環方向の逆転のための手段であり得る。
【0136】
上述の逆転手段は、四方弁、切換弁、閉止弁(開/閉)弁、膨張弁又はそれらの組合せであり得る。
【0137】
例えば、蒸気圧縮回路1の動作モードの逆転の間、熱交換器の役割は、変化し得、例えば、熱交換器は、冷凍モード中にコンデンサーとして、若しくは熱ポンプモード中にエバポレーターとして働き得、又は逆も同様である。
【0138】
あるいは、蒸気圧縮回路1の動作モードの逆転の間、熱交換器の役割は、同じままであり得る。熱交換器は、弁によって、他のエネルギー源に非常に単純に接続されているため、蒸気圧縮回路1のその機能に従って、熱エネルギーを吸収又は放出できる。
【0139】
ある特定の好ましい実施形態では、第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路1において単一の方向に循環し得る。
【0140】
他の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路1において両方の方向、つまり第1の方向及び反対方向に循環し得る。
【0141】
可逆的蒸気圧縮回路1は、典型的には、様々な交換器、膨張弁、他の弁などの間に、配管、導管、ホース、タンク又は第1の熱伝達組成物が循環する他の要素を含有し得る。
【0142】
装置が、車両電池の加熱のためにも用いられる場合、蒸気圧縮回路1、冷凍又は熱ポンプの動作モードに応じて、第1の熱交換器3は、エバポレーター又はエネルギー回収機(コンデンサー)として働き得る。これは、中間熱交換器5について同じである。
【0143】
蒸気圧縮回路1、特に並流熱交換器、又は好ましくは、向流熱交換器において、任意の種類の熱交換器を使用することが可能である。
【0144】
好ましい実施形態によると、本発明は、第1の熱交換器3又は中間熱交換器5のいずれかにおいて、向流熱交換器を提供する。これは、本特許出願に記載の熱伝達組成物が、向流熱交換器で特に効果的であるためである。好ましくは、第1の熱交換器3及び中間熱交換器5の両方は、向流熱交換器である。
【0145】
本発明によると、「向流熱交換器」という用語は、第1の流体と第2の流体との間で熱が交換され、交換器の入口の第1の流体は、交換器の出口の第2の流体と熱を交換し、交換器の出口の第1の流体は、交換器の入口の第2の流体と熱を交換する、熱交換器を意味すると理解される。
【0146】
例えば、向流熱交換器は、第1の流体の流れ及び第2の流体の流れが反対又は事実上反対の方向であるデバイスを備える。向流傾向を有する逆流モードで動作する交換器はまた、本特許出願の意味内の向流熱交換器のうちに含まれる。
【0147】
コンプレッサー6は、密封、半密封又は開放であり得る。密封コンプレッサーは、解体できない密封容器内に収容されたモーター部分及び圧縮部分を備える。半密封コンプレッサーは、互いに対して直接組み立てられたモーター部分及び圧縮部分を備える。モーター部分と圧縮部分との間の連結は、分解によって2つの部分を分離する際に接触可能である。開放コンプレッサーは、分離されるモーター部分及び圧縮部分を備える。それらは、ベルトドライブによって又は直接連結によって動作し得る。
【0148】
特に、コンプレッサーとして、動的コンプレッサー又は容積式コンプレッサーが使用され得る。
【0149】
動的コンプレッサーは、1つ又は複数の段階を有し得る軸流コンプレッサー及び遠心コンプレッサーを含む。小型遠心コンプレッサーを用いることもできる。
【0150】
容積式コンプレッサーは、ロータリーコンプレッサー及び往復式コンプレッサーを含む。
【0151】
往復式コンプレッサーは、ダイアフラムコンプレッサー及びピストンコンプレッサーを含む。
【0152】
ロータリーコンプレッサーは、スクリューコンプレッサー、ローブコンプレッサー、スクロール(又はスパイラル)コンプレッサー、液封コンプレッサー及びベーンコンプレッサーを含む。スクリューコンプレッサーは、好ましくは、二軸又は単軸であり得る。
【0153】
使用される装置において、コンプレッサー6は、電動モーターによって、又はガスタービン(例えば、車両排ガスによって満たされる)、又はギアリングによって駆動され得る。
【0154】
使用される装置において、コンプレッサー6は、蒸気又は液体の射出のためのデバイスを備え得る。射出は、液体又は蒸気状態の冷媒を、圧縮の開始と終了との間の中間レベルで、コンプレッサーに導入することからなる。
【0155】
二次回路2は、少なくとも1つの追加の熱交換器7を備える。
【0156】
各々の追加の熱交換器7は、流体/固体型、又は流体/流体型、又は流体/気体型(空気、例えば車室の空気を加熱若しくは冷却するため)の交換器であり得る。これらの後者2つの場合、追加の熱交換器7は、やはり並流熱交換器、又は好ましくは、向流熱交換器であり得る。
【0157】
少なくとも1つの追加の熱交換器7は、電池を冷却するように構成され得る。同じ追加の熱交換器7又は他の追加の熱交換器7は、電池を加熱する(ただし、1つの同じ追加の熱交換器7が電池の冷却及び加熱の両方をできることが好ましい)、又は車両の車室及び/若しくは電子化合物を冷却及び/若しくは加熱するように構成され得る。
【0158】
電池(及び/又は電子部品)を冷却又は加熱するために、電池(及び/若しくは電子部品)に向けて吹き込まれる空気を冷却若しくは加熱する;又は電池(及び/若しくは電子部品)と直接接触関係になる追加の交換器7を配置する、又は追加の交換器7を電池(及び/若しくは電子部品)に組み込むことが可能である。
【0159】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、車両の電池と直接接触している。言い換えると、車両の電池は、第2の熱伝達組成物に浸漬されている。この場合、対応する追加の熱交換器7は、電池のすべて又は一部を含有する容器に限定され、第2の熱伝達組成物は容器中に含有され、電池の外壁と接触している。
【0160】
これにより、より良好な結果を得るための熱伝達組成物の良好な誘電及び熱特性を調和させることが可能になる。この場合、第2の熱伝達組成物は、30℃の温度で2bar未満の沸騰圧を有することが好ましい。第2の熱伝達組成物の沸騰圧が十分に低くない場合、直接接触のために、圧力に耐えるための電池のハウジングの設計に多大な労力が要される。この場合、圧力ストレスは、例えば、冷却プレートの形態の追加の熱交換器7を使用することによって、より容易に管理される。
【0161】
ある特定の実施形態では、二次回路2はコンプレッサーを備えない。言い換えると、二次回路2は蒸気圧縮回路ではない。
【0162】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路において本質的に均一圧力であり、前記圧力は、第2の熱伝達組成物の温度における第2の熱伝達組成物の飽和圧に等しい。損失水頭の事象において、わずかな変動の可能性がある。第2の熱伝達組成物の温度は、好ましくは、二次回路において均一である。
【0163】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、方法の間、一定温度のままである。
【0164】
「飽和圧」という用語は、閉鎖系において組成物の気相が所与の温度で液相と平衡である圧力を意味すると理解される。
【0165】
ある特定の実施形態では、二次回路2は、特にいくつかの追加の熱交換器7を備える場合、第2の熱伝達組成物を1つ若しくは複数の特定の追加の熱交換器7に方向付けるために;及び/又は二次回路2のすべて若しくは一部の第2の熱伝達組成物の循環の方向を変えることを可能にするために1つ又は複数の弁を備え得る。
【0166】
ある特定の好ましい実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2のすべて又は一部において単一の方向に循環し得る。
【0167】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2のすべて又は一部において両方の方向、つまり第1の方向及び反対方向に循環し得る。
【0168】
ある特定の実施形態では、中間熱交換器5から追加の熱交換器7へ、及び/又は追加の熱交換器7から中間熱交換器5への二次回路2における第2の熱伝達組成物の循環は、ポンプによって、又は重力によって、又は毛細管作用によって実施され得る。
【0169】
本発明によるこの装置では、蒸気圧縮回路1は、中間熱交換器5によって二次回路2と連結され得る。したがって、第1の熱伝達組成物及び第2の熱伝達組成物の両方は、中間熱交換器5を通過し得る。
【0170】
電池の冷却の間、中間熱交換器5は、第1の熱伝達組成物を蒸発(及びおそらく第2の熱伝達組成物を凝縮)させ得、追加の熱交換器7は、電池から第2の熱伝達組成物に熱を伝導するように構成される。
【0171】
電池の加熱の間、中間熱交換器5は、第1の熱伝達組成物を凝縮(及びおそらく第2の熱伝達組成物を蒸発)させ得、追加の熱交換器7は、第2の熱伝達組成物から電池に熱を伝導する(おそらく、第2の熱伝達組成物を凝縮しながら)ように構成される。
【0172】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2全体を通して液体状態にある。第2の熱伝達組成物の温度は、追加の熱交換器7を横切る場合、及び中間熱交換器5を横切る場合、修正される。これは特に、電池が第2の熱伝達組成物に浸漬されている場合、好ましい選択肢である。
【0173】
本特許出願の文脈において、各々の蒸発及び各々の凝縮は、全体又は部分的であり得る。
【0174】
したがって、蒸発は、液体状態から開始して、蒸気状態;又は2相液体/蒸気状態から開始して、蒸気状態;又は液体状態から開始して、2相液体/蒸気状態;又は1つの2相液体/蒸気状態から開始して、別の2相液体/蒸気状態に変化することからなり得る。
【0175】
したがって、凝縮は、蒸気状態から開始して、液体状態;又は蒸気状態から開始して、2相液体/蒸気状態;又は2相液体/蒸気状態から開始して、液体状態;又は1つの2相液体/蒸気状態から開始して、別の2相液体/蒸気状態に変化することからなり得る。
【0176】
蒸発及び凝縮は、一定温度、又は熱伝達化合物の非共沸混合物の場合、可変温度で実施され得る。
【0177】
ある特定の実施形態では、中間熱交換器5において、1つの組成物(第1の熱伝達組成物又は第2の熱伝達組成物)は、他方よりも低温であり、好ましくは、温度差は12℃未満、好ましくは8℃未満、より好ましくは5℃未満である。組成物の温度が中間熱交換器5において一定ではないと仮定すると、上記の温度差の推定のために取る参照は、中間熱交換器の入口と出口の間のメジアン温度である。
【0178】
ある特定の実施形態では、冷却及び/又は加熱により、特に車両が動作中(エンジンオン)の場合、とりわけ車両が動いている場合に、電池の温度を最適温度範囲内に維持することが可能になる。
【0179】
ある特定の実施形態では、したがって、車両の電池の温度は、最低温度t~最高温度tの間に維持される。
【0180】
ある特定の実施形態では、最低温度tは0℃以上であり、最高温度tは60℃以下であり、好ましくは、最低温度tは15℃以上であり、最高温度tは40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは16℃以上であり、最高温度tは28℃以下である。
【0181】
ある特定の実施形態では、最低温度t~最高温度tの間での電池の温度の維持の間の外部温度は、20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上である。
【0182】
最低温度t~最高温度tの間での車両の電池の温度の維持の継続時間の間の外部温度は、特に、-25~-20℃、又は-20~-15℃、又は-15~-10℃、又は-10~-5℃、又は-5~0℃、又は0~5℃、又は5~10℃、又は10~15℃、又は15~20℃、又は20~25℃、又は25~30℃、又は30~35℃、又は35~40℃、又は40~45℃、又は45~50℃であり得る。
【0183】
「外部温度」という用語は、最低温度t~最高温度tの間での車両の電池の温度の維持の前及びその間の車両の外部の周囲温度を意味すると理解される。
【0184】
「電池の温度」という用語は、一般に、電気エネルギー貯蔵素子の1つ又は複数の外壁の温度を意味すると理解される。
【0185】
電池の温度は、温度センサーによって測定できる。いくつかの温度センサーが電池に存在する場合、電池の温度は、測定された異なる温度の平均であると考えることができる。
【0186】
ある特定の実施形態では、本発明の装置及び方法により、車両の電池を冷却又は加熱(好ましくは、冷却)し、電池の充電の間、車両の電池を最適温度範囲(上で詳述される通り)に維持することが可能になる。
【0187】
特に、電池の充電は、急速充電であり得る。したがって、(電池が完全に放電された時から)30分以下、好ましくは15分以下の期間の電池の完全充電の間、本発明による方法により、電池の温度を最適温度範囲内に維持することが可能になる。高速充電の間、電池が急速に加熱し、その動作及びその性能品質に影響し得る高温に達する傾向があることを考慮すると、このことは利点を示す。
【0188】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2全体を通して、10~40℃の間、好ましくは20~30℃の間の温度に維持される。
【0189】
熱伝達組成物
本発明は、第1の熱伝達組成物及び第2の熱伝達組成物を使用し、各々の熱伝達組成物は、場合により滑沢剤及び/又は添加剤と共に、熱伝達流体を含む。熱伝達流体は、1つ又は複数の熱伝達化合物を含み得る。
【0190】
第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路中に存在し、循環する。
【0191】
ある特定の実施形態では、第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、HFO-1234yfを含む。
【0192】
ある特定の実施形態では、この熱伝達流体は、少なくとも50重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも60重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも70重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも80重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも90重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも95重量%のHFO-1234yfを含む。
【0193】
ある特定の実施形態では、この熱伝達流体は、HFO-1234yfから本質的になり、それどころかさらにはHFO-1234yfからなる。
【0194】
他の好ましい実施形態では、この熱伝達流体はまた、1つ又は複数の他の熱伝達化合物、例えば、ヒドロフルオロカーボン、及び/又はヒドロフルオロオレフィン、及び/又は炭化水素、及び/又はヒドロクロロフルオロオレフィン、及び/又はCOを含む。
【0195】
特に、ヒドロフルオロカーボンの中でも、ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0196】
特に、ヒドロフルオロオレフィンの中でも、シス及び/又はトランス型、好ましくはトランス型の1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze);及びトリフルオロエチレン(HFO-1123)を挙げることができる。
【0197】
特に、ヒドロクロロフルオロオレフィンの中でも、Z及び/又はE型、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を挙げることができる。
【0198】
好ましい実施形態によると、第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32を含む。好ましくは、熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32の二成分組成物である(つまり、熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32からなる、又はこれらから本質的になる)。
【0199】
したがって、HFO-1234yfは、60重量%~90重量%の含有量を有し得、HFC-32は、40重量%~10重量%の含有量を有し得、好ましくは、HFO-1234yfは、70重量%~80重量%の含有量を有し得、HFC-32は、20重量%~30重量%の含有量を有し得、より好ましくは、HFO-1234yfは、75重量%~80重量%の含有量を有し得、HFC-32は、20重量%~25重量%の含有量を有し得る。好ましい実施形態によると、HFO-1234yfは、およそ78.5重量%の含有量で存在し、HFC-32は、およそ21.5重量%の含有量で存在する。重量パーセンテージは、第1の熱伝達組成物の熱伝達流体に関して示される。
【0200】
本発明の第1の熱伝達組成物中に存在し得る添加剤は、特に、ナノ粒子、安定化剤、界面活性剤、トレーシング剤、蛍光剤、芳香剤及び可溶化剤から選択され得る。
【0201】
添加剤の総量は、第1の熱伝達組成物の5重量%、特に4重量%、より詳細には3重量%、非常に詳細には2重量%、それどころかさらには1重量%を超えない。
【0202】
ある特定の実施形態では、HFO-1234yfは、不純物を含有する。不純物が存在する場合、それらは、HFO-1234yfに関して、1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満(重量による)を表し得る。
【0203】
第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、場合により、HFO-1243zf(3,3,3-トリフルオロプロペン)及び/又は3,3,3-トリフルオロプロピンを含み得る。
【0204】
熱伝達流体中のHFO-1243zfの含有量は、10000ppm以下、又は5000ppm以下、又は1000ppm以下、又は500ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下であり得る。
【0205】
例として、熱伝達流体中のHFO-1243zfの含有量は、0~1ppm、又は1~10ppm、又は10~50ppm、又は50~100ppm、又は100~500ppm、又は500~1000ppm、又は1000~5000ppm、又は5000~10000ppmであり得る。
【0206】
熱伝達流体中の3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量は、10000ppm以下、又は5000ppm以下、又は1000ppm以下、又は500ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下であり得る。
【0207】
例として、熱伝達流体中の3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量は、0~1ppm、又は1~10ppm、又は10~50ppm、又は50~100ppm、又は100~500ppm、又は500~1000ppm、又は1000~5000ppm、又は5000~10000ppmであり得る。
【0208】
上記のppm値は、重量によって示される。
【0209】
1つ又は複数の滑沢剤が、第1の熱伝達組成物中に存在し得る。これらの滑沢剤は、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、又はポリビニルエーテル(PVE)から選択され得る。
【0210】
滑沢剤は、第1の熱伝達組成物の1%~50%、好ましくは2%~40%、より好ましくは5%~30%(重量による)を表し得る。
【0211】
第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、好ましくは、0~40℃、好ましくは5~35℃、より好ましくは8~34℃の沸点を有する1つ又は複数の熱伝達化合物を含む。
【0212】
「化合物の沸点」という用語は、1barの圧力下で化合物が沸騰する温度を意味すると理解される。
【0213】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、0~40℃、好ましくは5~35℃、より好ましくは8~34℃の沸点を有する。
【0214】
いくつかの化合物の混合物の場合、混合物の沸点は、1barの圧力における沸騰開始点と沸騰終了点との平均に対応する。
【0215】
ある特定の実施形態では、0~40℃の沸点を有する熱伝達化合物は、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン及びこれらの組合せから選択され得る。
【0216】
ある特定の実施形態では、ヒドロクロロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)及び1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)、並びにこれらの組合せから選択され得る。
【0217】
HCFO-1233zdは、E及び/又はZ型であり得る。
【0218】
例えば、HCFO-1233zdは、50mol%超のE型、好ましくは60mol%超のE型、好ましくは70mol%超のE型、好ましくは80mol%超のE型、好ましくは85mol%超のE型、好ましくは90mol%超のE型、好ましくは95mol%超のE型、好ましくは98mol%超のE型、より好ましくは99mol%超のE型を含み得る。好ましくは、HCFO-1233zdは、完全に、又は本質的に完全に、E型である。
【0219】
例えば、HCFO-1233zdは、50mol%超のZ型、好ましくは60mol%超のZ型、好ましくは70mol%超のZ型、好ましくは80mol%超のZ型、好ましくは85mol%超のZ型、好ましくは90mol%超のZ型、好ましくは95mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含み得る。好ましくは、HCFO-1233zdは、完全に、又は本質的に完全に、Z型である。
【0220】
HCFO-1224ydは、E及び/又はZ型であり得る。
【0221】
好ましくは、HCFO-1224ydは、50mol%超のZ型、好ましくは60mol%超のZ型、好ましくは70mol%超のZ型、好ましくは80mol%超のZ型、好ましくは85mol%超のZ型、好ましくは90mol%超のZ型、好ましくは95mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含む。好ましくは、HCFO-1224ydは、完全にZ型である。
【0222】
ある特定の実施形態では、ヒドロフルオロオレフィンは、E及び/又はZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)であり得る。
【0223】
したがって、HFO-1336mzzは、50mol%超のZ型、好ましくは60mol%超のZ型、好ましくは70mol%超のZ型、好ましくは80mol%超のZ型、好ましくは85mol%超のZ型、好ましくは90mol%超のZ型、好ましくは95mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含み得る。HFO-1336mzzは、完全にZ型であり得る。
【0224】
あるいは、HFO-1336mzzは、50mol%超のE型、好ましくは60mol%超のE型、好ましくは70mol%超のE型、好ましくは80mol%超のE型、好ましくは85mol%超のE型、好ましくは90mol%超のE型、好ましくは95mol%超のE型、好ましくは98mol%超のE型、より好ましくは99mol%超のE型を含み得る。HFO-1336mzzは、完全にE型であり得る。
【0225】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物に使用される熱伝達化合物は、100kJ/kg超、好ましくは110kJ/kg超、より好ましくは120kJ/kg超、より好ましくは130kJ/kg超、より好ましくは140kJ/kg超、より好ましくは150kJ/kg超、より好ましくは160kJ/kg超の、20℃における蒸発の潜熱を有する。
【0226】
第2の組成物において熱伝達流体として優先的に使用される熱伝達化合物の潜熱値は、20℃の温度について、以下の表に示される。最高潜熱は、HCFO-1233zd(E)で観察される。
【0227】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、単一の熱伝達化合物を含む。
【0228】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物の二成分混合物であり得る。
【0229】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物の三成分混合物であり得る。
【0230】
第2の熱伝達組成物は、二次回路中に存在し、循環する。
【0231】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、圧縮も膨張も受けない。
【0232】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、少なくとも50重量%の熱伝達流体、又は少なくとも60重量%の熱伝達流体、又は少なくとも70重量%の熱伝達流体、又は少なくとも80重量%の熱伝達流体、又は少なくとも90重量%の熱伝達流体、又は少なくとも95重量%の熱伝達流体を含む。
【0233】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物から本質的になり、それどころかさらには熱伝達化合物からなる。
【0234】
本発明の第2の熱伝達組成物中に存在し得る添加剤は、第1の熱伝達組成物に関連して上に記載されるものと同じであり、同じ濃度範囲が当てはまる。
【0235】
さらに、第2の熱伝達組成物は、C3及びC6アルケン、特にブテン又はペンテン安定剤を含み得る。
【実施例
【0236】
本発明は、以下の例によって例示されるが、これに限定されるものではない。
【0237】
[実施例1及び2]
LiFSIの調製(本発明による)
酢酸ブチル中溶液中の粗製LiFSIを、WO2015/158979に記載の方法の終了時に得る。LiFSI溶液を、水溶液を形成するための、脱イオン化水による前記塩の液-液抽出、続いて、酢酸ブチルによる前記水溶液からのビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の液-液抽出を含む精製法にかける。得られた溶液を、濃縮段階にかけて、30重量%超の乾燥抽出物を含む組成物を得た。乾燥抽出物は、抽出物が99.75重量%超のLiFSIを含むこと、並びに塩化物、サルフェート及びフッ化物の総重量含有量の合計が、厳密に0超かつ500ppm未満であることを特徴とする。その後、組成物を、結晶化及びろ過段階にかけて、実施例1のLiFSIを得る。
【0238】
実施例2のLiFSIは、同様の方法に従って得た。
【0239】
[実施例3]
LiFSIの調製(比較)
酢酸ブチル中溶液中の粗製LiFSIを、WO2015/158979に記載の方法の終了時に得る。LiFSI溶液を、水溶液を形成するための、脱イオン化水による前記塩の液-液抽出、続いて、酢酸ブチルによる前記水溶液からのビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の液-液抽出を含む精製法にかける。得られた溶液を、濃縮段階にかけて、乾燥抽出物を含む組成物を得た。乾燥抽出物は、抽出物が99.75重量%未満のLiFSIを含むこと、並びに塩化物、サルフェート及びフッ化物の総重量含有量の合計が、厳密に600ppm超であることを特徴とする。
【0240】
その後、組成物を、結晶化及びろ過段階にかけて、実施例3のLiFSIを得る。
【0241】
[実施例4]
特徴決定
サイクリックボルタンメトリー試験を実施した。このために、作用電極として20mmの直径を有するアルミニウムシート、基準電極として8mmの直径を有するリチウム金属ペレット、並びに3/7体積比の炭酸エチレン及びメチルエチルカーボネート(CAS=623-53-0)で構成される溶媒混合物中異なる組成のLiFSIの1mol/l溶液12滴(0.6ml)に浸された、18mmの直径を有するガラスファイバーセパレーターを備えるCR2032ボタン電池を、製造した。
【0242】
その後、電圧掃引を、4.5Vボタン電池の末端で実施する。2回の予備掃引を実施し、SEI及びアルミニウムの不動態化などの不動態化層の形成を可能にする。その後、生じた4.5V酸化電流(2回の掃引後)を測定し、記録した。値は以下の通りである。
【0243】
観察された酸化電流は、多数の現象:アルミニウムの腐食、電解質の分解及び電池の膨張を反映し得る。これらすべての現象は、Liイオン電池の寿命の低下に原因がある。電流が低下するほど、電池の寿命はより改善される。4.5Vでは、20ppmの塩化物の含有量を有するLiFSIと比較して、特に20ppm未満の塩化物の含有量を有するLiFSIの使用により、有利には、この酸化電流を低減し、したがって、Liイオン電池の寿命を改善することが可能であることを、結果は示している。
図1