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特許7562655自動車両の電池の温度を制御すための方法
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  • 特許-自動車両の電池の温度を制御すための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】自動車両の電池の温度を制御すための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20240930BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240930BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M10/653
C09K5/04 F
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6569
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022522299
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2020051696
(87)【国際公開番号】W WO2021074497
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】1911485
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガレ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アッバース, ローラン
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-517955(JP,A)
【文献】特表2013-514516(JP,A)
【文献】特表2012-509220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/653
C09K 5/04
H01M 10/617
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路、及び9以下のZ型対E型の比を有する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む第2の熱伝達組成物が循環する二次回路を備えるシステムによって、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、
- 電池と第2の熱伝達組成物との間の熱交換;
- 第2の熱伝達組成物と第1の熱伝達組成物との間の熱交換
を含む、方法。
【請求項2】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのZ型対E型の比が、5以下、好ましくは1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の熱伝達組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物が、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物がジフルオロメタンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンが、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2の熱伝達組成物が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の熱伝達組成物が、二次回路において本質的に均一な圧力にあり、前記圧力が、好ましくは、第2の組成物の飽和圧に等しい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電池が、最低温度t~最高温度tの間の温度に維持される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最低温度tが0℃以上であり、最高温度tが60℃以下であり、より好ましくは、最低温度tが15℃以上であり、最高温度tが40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tが16℃以上であり、最高温度tが28℃以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
車両の電池の充電の間に実施され、車両の電池が、好ましくは、その総放電から30分以下、好ましくは15分以下の期間に完全充填される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
第2の熱伝達組成物が、車両の電池と直接接触している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電池が、負電極、正電極及び電解質を含む少なくとも1つの電気化学セルを備え、正電極が、電気化学的に活性な材料として、式LiNiMnCo(式中、x+y+z=1、x>y及びx>z)、又はLiNix’Coy’Alz’(式中、x’+y’+z’=1、x’>y’及びx’>z’)の少なくとも1つの酸化物を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度の調整のための装置であって、
- 2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路(1);及び
- 9以下のZ型対E型の比を有する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む第2の熱伝達組成物が循環する二次回路(2)
を備え、第1の熱伝達組成物と第2の熱伝達組成物との間の熱交換が可能となるように、蒸気圧縮回路(1)が、中間熱交換器(5)によって二次回路(2)と連結されており、装置が、電池と第2の熱伝達組成物との間で熱交換するように構成されている追加の熱交換器(7)を備える、
装置。
【請求項13】
二次回路(2)が、コンプレッサを備えない、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
二次回路(2)における第2の熱伝達組成物の循環が、ポンプ、又は重力、又は毛細管作用によって実施される、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
車両の車室の空調、及び/又は車両の車室の加熱、及び/又は車両の電子化合物の冷却、及び/又は車両の電子化合物の加熱にさらに適合される、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
第1の熱伝達組成物が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物が、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物がジフルオロメタンである、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンが、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の電池の温度の調整のための方法、及びまたこの方法の実施に適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気又はハイブリッド車両の電池は、特定の使用条件下、とりわけ非常に特定の温度範囲で最大効率をもたらす。最大効率とは、利用可能な高瞬時電力、利用可能な高総容量、及びまた電池寿命の増加を意味する。したがって、電池の最大効率により、良好な性能及び車両の自律だけでなく、1km当たりの車両の低エネルギー消費が可能になる。
【0003】
さらに、電気又はハイブリッド車両の動作の間、電池の温度は上昇し、電池の早期劣化、それどころかさらには破壊を回避するためには、常に60℃未満の温度、好ましくは40℃未満の温度に維持しなくてはならない。15℃未満の温度では、内部抵抗の増加に起因して、電池の充電は減少する。結果として、車両の動作の間、電池の温度は、およそ15℃~40℃の間で維持されるべきである。0℃未満での電池ユニットの動作により、電池のセルが損傷し、結果として、電池ユニットの寿命の大幅な減少につながるため、そのような条件は回避するべきである。
【0004】
自動車両において、熱エンジンは、エンジンを冷却するため、及びまた車室を加熱するために使用される熱交換流体の循環のための回路を備える。この目的のために、回路は、特に、ポンプ及び車室を加熱するために熱交換流体によって貯蔵された熱を回収する気流が循環するユニットヒーターを備える。
【0005】
さらに、冷却システムは、エバポレーター、コンプレッサ、コンデンサー、膨張弁、及び一般に冷媒又は熱伝達流体と記述される、(液/気)状態を変化することが可能な流体を備える。ベルト及びプーリーを使用して車両のエンジンによって直接駆動されるコンプレッサは、冷媒を圧縮し、冷媒を高圧及び高温下で強制的にコンデンサーに戻す。コンデンサーは、強制換気によって、高圧及び高温で気体状態になるガスの凝縮を引き起こす。コンデンサーは、コンデンサーを通過する空気の温度を低下させることによってガスを液化する。エバポレーターは、車両の車室又は電池に吹き込まれる空気から熱を除去する熱交換器である。膨張弁により、エバポレーター中の温度及び圧力に応じて、通路区画の修正を介してループへのガスの進入についての流速を調整することが可能である。したがって、車両の外部又は電池に由来する熱気は、エバポレーターと接触して冷却される。
【0006】
自動車両の空調に好都合に使用される冷媒は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)である。
【0007】
しかしながら、HFC-134aを含む多数のHFC流体は、温室効果に有害に作用し得る。この作用は、数値パラメーターであるGWP(地球温暖化係数)によって定量化される。
【0008】
今後、熱伝達用途に使用される別の冷媒は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)である。しかしながら、HFO-1234yfは低GWP流体であるが、可燃性流体であると考えられる。
【0009】
文献EP3499634は、少なくとも1つの電池ユニットを備える車両の電池熱管理システムに関する。
【0010】
文献WO2017/143018は、空気及び/又はヒト若しくは他の動物が占有する居所に位置する物品を調節するための冷媒システムに関する。
【0011】
文献DE202014010264は、車両の内部空間を冷却するように設計された少なくとも第1の圧縮冷凍デバイスを備え、循環冷媒を含む車両であって、冷媒が、フルオロケトン及び/又は(ヒドロ)フルオロオレフィン及び/又は(ヒドロ)フルオロクロロオレフィンのファミリー由来の物質であることを特徴とする、車両に関する。
【0012】
自動車両の電池の温度の調整のための方法であって、効果的及び安全であり、一方、車両の可燃性生成物の量又は車両の最熱部分へのこれらの近接を制限又は低減する、方法を提供することへのニーズが存在している。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路、及び1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む第2の熱伝達組成物が循環する二次回路を備えるシステムによって、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、
- 電池と第2の熱伝達組成物との間の熱交換;
- 第2の熱伝達組成物と第1の熱伝達組成物との間の熱交換
を含む方法に関する。
【0014】
一部の実施形態では、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのZ型対E型の比は、5以下、好ましくは1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下である。
【0015】
一部の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物は、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物はジフルオロメタンである。
【0016】
一部の実施形態では、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンは、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する。
【0017】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンからなる。
【0018】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路において本質的に均一な圧力にあり、前記圧力は、好ましくは、第2の組成物の飽和圧に等しい。
【0019】
一部の実施形態では、電池は、最低温度t~最高温度tの間の温度に維持される。
【0020】
一部の実施形態では、最低温度tは0℃以上であり、最高温度tは60℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは15℃以上であり、最高温度tは40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは16℃以上であり、最高温度tは28℃以下である。
【0021】
一部の実施形態では、方法は、車両の電池の充電の間に実施され、車両の電池は、好ましくは、その総放電から30分以下、好ましくは15分以下の期間に完全充填される。
【0022】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、車両の電池と直接接触している。
【0023】
一部の実施形態では、電池は、負電極、正電極及び電解質を備える少なくとも1つの電気化学セルを備え、正電極は、電気化学的に活性な材料として、式LiNiMnCo(式中、x+y+z=1、x>y及びx>z)、又はLiNix’Coy’Alz’(式中、x’+y’+z’=1、x’>y’及びx’>z’)の少なくとも1つの酸化物を含む。
【0024】
本発明はまた、電気又はハイブリッド自動車両の電池の温度の調整ための装置であって、
- 2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む第1の熱伝達組成物が循環する蒸気圧縮回路;及び
- 9以下のZ型対E型の比を有する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む第2の熱伝達組成物が循環する二次回路
を備え、第1の熱伝達組成物と第2の熱伝達組成物との間の熱交換が可能となるように、蒸気圧縮回路が、中間熱交換器によって二次回路と連結されており、装置が、電池と第2の熱伝達組成物との間で熱交換するように構成された追加の熱交換器を備える、
装置に関する。
【0025】
一部の実施形態では、二次回路はコンプレッサを備えない。
【0026】
一部の実施形態では、二次回路における第2の熱伝達組成物の循環は、ポンプ、又は重力、又は毛細管作用によって実施される。
【0027】
一部の実施形態では、装置は、車両の車室の空調、及び/又は車両の車室の加熱、及び/又は車両の電子化合物の冷却、及び/又は車両の電子化合物の加熱にさらに適合される。
【0028】
一部の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン以外の1つ又は複数の熱伝達化合物を含み、これらの化合物は、好ましくは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、この化合物はジフルオロメタンである。
【0029】
一部の実施形態では、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、およそ78.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在し、ジフルオロメタンは、およそ21.5重量%の含有量で第1の組成物中に存在する。
【0030】
本発明により、上で示したニーズを満たすことが可能になる。より詳細には、本発明は、自動車両の電池の温度を調整するための方法であって、効果的及び安全な方法を提供する。適宜、本発明により、車両の可燃性生成物の量又は車両の最熱部分へのこれらの生成物の近接を制限又は低減することが可能になる。
【0031】
これは、一方は、HFO-1234yfを含み、蒸気圧縮回路を循環し、他方は、9以下のZ型対E型の比を有するHCFO-1233zdを含み、二次回路を循環する2種の熱伝達組成物の連結使用によって達成され、二次回路の熱伝達組成物により、車両の電池に必要な熱伝達が実施される。二次回路の熱伝達組成物は、好ましくは、可燃性熱伝達化合物を含有しない;又はこの組成物は非可燃性である。より詳細には、蒸気圧縮回路の熱伝達流体としてHFO-1234yfが使用されることを考慮すると、二次回路の使用により、蒸気圧縮回路の範囲を制限し、使用されるHFO-1234yfの量を低減し、及び/又は車両、特に車両の電池の最熱要素へのHFO-1234yfの近接を防止することが可能になり、したがって、漏れ及び発火のリスクが低減される。さらに、二次回路の使用により、車両の熱管理が促進される。より詳細には、電気自動車を例として挙げる場合、多数の熱源(電池、電気及び電子回路、エンジン)、並びにまた多数の加熱及び/又は冷却を必要とするもの(電池、車室)は、異なる温度レベルで存在する。熱伝達流体を含む二次回路の使用により、他の技術と比較して、機器のこれらの品目の熱管理が促進される。
【0032】
さらに、HFO-1234yfを含む第1の熱伝達組成物のHCFO-1233zd(Z/E比<9)を含む第2の熱伝達組成物との組合せにより、車両の電池の温度の特に効果的及び安全な調整が可能になることが見出された。
【0033】
冷却又は加熱の有効性は、容量及び性能係数によって特徴付けることができる。回路において観察される温度及び圧力(特に、コンプレッサ出口の温度、コンデンサーの圧力、それどころかさらにはエバポレーターの圧力)はまた、有効性及び安全性の評価に考慮される要素である。
【0034】
HCFO-1233zd(気体及び液体)の誘電特性は、特に、電池付近での、それどころかさらには電池と接触した使用に有利である。
【0035】
一部の実施形態では、二次回路の使用によりまた、単一相熱交換流体の使用と比較して、低ポンプ能力によってエネルギー消費の低減が可能になる。
【0036】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物を含む二次回路の使用により、熱交換を実施するための固相変化材料の使用を回避することによって、車両を軽量化することが可能になる。
【0037】
一部の実施形態では、第2の熱伝達組成物が、可燃性熱伝達化合物を含有しない、又は少なくとも非可燃性であるため、第2の熱伝達組成物はまた、車両の電池が過熱される事象において消火剤として働き得る。
【0038】
一部の実施形態では、電池パックは、第2の伝達組成物に浸漬され、第2の伝達組成物は誘電性である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による装置の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
ここで本発明を、以下の記載において、より詳細に、非限定的な方法で記載する。
【0041】
本発明は、熱伝達装置によって実施される、温度を調整するため、すなわち、自動車両の電池を冷却するため及び加熱するための熱伝達方法に関する。装置は、第1及び第2の熱伝達組成物を含有し、各々の熱伝達組成物は、1つ又は複数の熱伝達化合物を含む熱伝達流体を含む。
【0042】
「熱伝達化合物」という用語は、検討中の用途において、熱の吸収(例えば、蒸発による)及び放熱(例えば、凝縮による)が可能な化合物を意味すると理解される。
【0043】
本発明の文脈において、「HFO-1234yf」は2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを指し、「HCFO-1233zd」は1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを指し、「HCFO-1224yd」は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを指し、「HFO-1336mzz」は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンを指す。
【0044】
車両の電池
自動車両は、電気又はハイブリッド車両である。自動車両は、少なくとも1つの電動モーター及び適宜、熱エンジンを備える。したがって、自動車両は、電子回路、及び以下の記載においてより単純に電池と呼ばれる牽引用電池を備える。
【0045】
電池は、少なくとも1つの電気化学セル及び好ましくは複数の電気化学セルを備える。各々の電気化学セルは、負電極、正電極、及び負電極と正電極との間に挟まれた電解質を備える。
【0046】
各々の電気化学セルはまた、電解質が含浸されたセパレーターを備え得る。
【0047】
電気化学セルは、電池に直列に及び/又は並列に組み込まれ得る。
【0048】
「負電極」という用語は、電池が電流を送達する場合(つまり、電池が放電の過程にある場合)、アノードとして働き、電池が充電の過程にある場合、カソードとして働く電極を意味すると理解される。負電極は、典型的には、電気化学的に活性な材料、場合により、電子伝導材料、及び場合により、結合剤を含む。
【0049】
「正電極」という用語は、電池が電流を送達する場合(つまり、電池が放電の過程にある場合)、カソードとして働き、電池が充電の過程にある場合、アノードとして働く電極を意味すると理解される。正電極は、典型的には、電気化学的に活性な材料、場合により、電子伝導材料、及び場合により、結合剤を含む。
【0050】
「電気化学的に活性な材料」という用語は、イオンを可逆的に挿入可能な材料を意味することが理解される。
【0051】
「電子伝導材料」という用語は、電子を伝導することが可能な材料を意味することが理解される。
【0052】
電気化学セルの負電極は、特に、電気化学的に活性な材料として、グラファイト、リチウム、リチウム合金、LiTi12型のチタン酸リチウム、又は酸化チタンTiO、シリコン若しくはリチウム/シリコン合金、酸化スズ、リチウム金属間化合物又はそれらの混合物の1つを含み得る。
【0053】
負電極がリチウムを含む場合、後者は、金属リチウム又はリチウムを含む合金のフィルムの形態であり得る。例えば、使用できるリチウムベースの合金の中でも、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-シリカ合金、リチウム-スズ合金、Li-Zn、LiBi、LiCd及びLiSBを挙げることができる。負電極の例は、ローラー間でリチウムのストリップを圧延することによって調製された活性リチウムフィルムを含み得る。
【0054】
正電極は、酸化物型の電気化学的に活性な材料を含む。これは、高ニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/マンガン/コバルト複合酸化物(LiNiMnCo、x+y+z=1、略称NMC、x>y及びx>z)、又は高ニッケル含有量を有するリチウム/ニッケル/コバルト/アルミニウム複合酸化物(LiNix’Coy’Alz’、x’+y’+z’=1、略称NCA、x’>y’及びx’>z’)である。
【0055】
これらの酸化物の具体例は、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2)、及びNMC811(LiNi0.8Mn0.1Co0.1)である。
【0056】
これらの酸化物の混合物を使用できる。上で記載される酸化物材料は、適宜、別の酸化物、例えば、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えば、LiMn又はLi)、リチウム/ニッケル酸化物組成物(例えば、LiNiO)、リチウム/コバルト酸化物組成物(例えば、LiCoO)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えば、LiNi1-yCo)、リチウム及び遷移金属複合酸化物、スピネル構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えば、LiMn2-yNi)、酸化バナジウム、高ニッケル含有量を有さないNMC及びNCA酸化物、並びにそれらの混合物と組み合わせることができる。
【0057】
好ましくは、高ニッケル含有量を有するNMC又はNCA酸化物は、電気化学的に活性な材料として正電極中に存在する酸化物材料の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、及びより好ましくは本質的にすべてを表す。
【0058】
各々の電極の材料はまた、電気化学的に活性な材料の他に、電子伝導材料、例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)炭素、Shawinigan炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(例えば、蒸気成長炭素繊維(VGCF))、有機前駆体の炭化によって得られた非粉末状炭素、又はこれらの2種以上の組合せを含む炭素源を含み得る。セラミック若しくはガラスタイプのリチウム塩若しくは無機粒子、又はまた他の適合性活性材料(例えば、硫黄)などの他の添加剤もまた、正電極の材料中に存在し得る。
【0059】
各々の電極の材料はまた、結合剤を含み得る。結合剤の非限定例は、直鎖状、分枝状及び/若しくは架橋ポリエーテルポリマー結合剤(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)若しくはポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、又はこの2種の混合物(又はEO/POコポリマー)をベースとし、場合により架橋性単位を含むポリマー)、水溶性結合剤(例えば、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム))、又はフルオロポリマー型の結合剤(例えば、PVDF(フッ化ポリビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))、及びそれらの組合せを含む。水溶性のものなどの一部の結合剤はまた、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤を含み得る。
【0060】
セパレーターは、多孔性ポリマーフィルムであり得る。非限定例として、セパレーターは、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メタクリレートコポリマーなどのポリオレフィンの多孔性フィルム、又は上記のポリマーの多層構造からなり得る。
【0061】
電解質は、溶媒又は1つ若しくは複数の添加剤を含む溶媒の混合物に溶解された1つ又は複数のリチウム塩で構成され得る。
【0062】
非限定例として、1つ又は複数のリチウム塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTDI(リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート)、LiPOF、LiB(C、LiFB(C、LiBF、LiNO又はLiClOから選択され得る。
【0063】
溶媒は、以下の非網羅的リスト:エーテル、エステル、ケトン、アルコール、ニトリル及びカーボネートから選択され得る。
【0064】
エーテルの中でも、直鎖状又は環式エーテル、例えば、ジメトキシエタン(DME)、2~5つのオキシエチレン単位のオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0065】
エステルの中でも、リン酸エステル又は亜硫酸エステルを挙げることができる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0066】
特に、ケトンの中でも、シクロヘキサノンを挙げることができる。
【0067】
アルコールの中でも、例えば、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールを挙げることができる。
【0068】
ニトリルの中でも、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0069】
カーボネートの中でも、例えば、環式カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(CAS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41-1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフルオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0070】
添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、プロパンスルトン、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、ホスホネート、ビニルを含有するシラン化合物及び2-シアノフランからなる群から選択され得る。
【0071】
車両の電池の温度の調整のための装置
本発明は、熱伝達装置における、自動車両の電池の温度の調整を含む熱伝達方法に関する。
【0072】
したがって、本発明による方法は、車両の電池を冷却するための方法;又はこの電池を加熱するための方法;又は冷却及び加熱(要件に従って、経時的に交互する冷却及び加熱)するための方法である。
【0073】
本発明による方法は、以下に提示される装置によって実施される。
【0074】
熱伝達装置は、第1の熱伝達組成物を含有する蒸気圧縮回路(又は冷凍回路)及び第2の熱伝達組成物を含有する二次回路(又は熱交換回路)を備える。
【0075】
図1に模式的に示される本発明の一実施形態によると、蒸気圧縮回路1は、二次回路2と連結される。蒸気圧縮回路1は、少なくとも1つの第1の熱交換器3、膨張弁4、中間熱交換器5及びコンプレッサ6を備える。第1の熱交換器3は、好ましくは、空気/冷媒型のものであり、これは、周囲空気などのエネルギー源との熱交換を可能にする。二次回路2は、少なくとも1つの追加の熱交換器7を備える。
【0076】
「エネルギー源」という用語は、要件に従って熱エネルギーを吸収又は放出し得る固体及び/又は液体及び/又は気体を意味すると理解される。車両の外気、車室の空気、電池及び電子回路は、エネルギー源の例を表す。
【0077】
冷凍モードでは(電池の冷却)では、熱は、電池から追加の熱交換器7に伝導する。場合により、この熱伝達の結果、二次回路2を循環する第2の熱伝達組成物の蒸発が起こる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、この熱伝達の間、液体状態のままである。
【0078】
第2の熱伝達組成物は、その後、二次回路2のコンデンサーとして働き得る中間熱交換器5に送られる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、中間熱交換器5における熱伝達の間、液体状態のままである。
【0079】
蒸気圧縮回路1において、第1の熱伝達組成物は、コンプレッサ6によって圧縮され、コンデンサーとして働く(つまり、外気などの供給源に熱エネルギーを伝導する)第1の熱交換器3、その後、第1の熱伝達組成物が膨張される膨張弁4、次いで、蒸気圧縮回路1のエバポレーターとして働く中間熱交換器5を通過する。したがって、中間熱交換器5において、熱は、第2の熱伝達組成物から第1の熱伝達組成物に伝導し、その結果、場合により、第2の熱伝達組成物の凝縮及び第1の熱伝達組成物の蒸発が起こる。第1の熱伝達組成物は、その後、再度コンプレッサ6に送られる一方、第2の熱伝達組成物は、追加の熱交換器7に送られ、電池の冷却が可能になる。
【0080】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、特に外側温度が低い、例えば、10℃未満、又は5℃未満、又は0℃未満、又は-5℃未満、又は-10℃未満、又は-15℃未満、又は-20℃未満、又は-25℃未満、又は-30℃未満、又は-35℃未満の場合、電池を加熱するのに適している。
【0081】
したがって、本発明はまた、装置によって電池を加熱するための方法を包含する。電池の加熱は、要件に従って、経時的に電池の冷却と交互し得る。
【0082】
電池を加熱する場合、熱は、追加の熱交換器7から電池に伝導し、その結果、二次回路2を循環する第2の熱伝達組成物の凝縮が起こり得る。あるいは、第2の熱伝達組成物は、この熱伝達の間、液体状態のままである。
【0083】
第2の熱伝達組成物は、その後、二次回路2のエバポレーターとして働き得る中間熱交換器5に送られる。あるいは、第2の熱伝達組成物は、中間熱交換器5における熱伝達の間、液体状態のままである。
【0084】
蒸気圧縮回路1において、第1の熱伝達組成物は、膨張弁4で膨張され、エバポレーターとして働く(つまり、外気などの供給源から熱エネルギーを吸収する)第1の熱交換器3、その後、第1の熱伝達組成物が圧縮されるコンプレッサ6、次いで、蒸気圧縮回路1のコンデンサーとして働く中間熱交換器5を通過する。したがって、中間熱交換器5において、熱は、第1の熱伝達組成物から第2の熱伝達組成物に伝導し、その結果、第1の熱伝達組成物の凝縮及び場合により第2の熱伝達組成物の蒸発が起こる。第1の熱伝達組成物は、その後、再度膨張弁4に送られる一方、第2の熱伝達組成物は、追加の熱交換器7に送られ、電池の加熱が可能になる。
【0085】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置は、電池の加熱の1つ又は複数の相と交互する電池の冷却の1つ又は複数の相を実施するのに適している。
【0086】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、車両の車室及び/又は車両の電子化合物の冷却(空調)に適している。次いで、車室の空気との熱交換専用の熱交換器及び/又は電子化合物との熱交換専用の熱交換器が、存在する。
【0087】
ある特定の実施形態によると、本発明による装置はまた、車両の車室及び/又は車両の電子化合物の加熱に適している。次いで、車室の空気との熱交換専用の熱交換器及び/又は電子化合物との熱交換専用の熱交換器が、存在する。
【0088】
ある特定の実施形態では、1つの同じ熱交換器が、動作モードに応じて、上に記載される中間交換器5の機能を提供し得る。
【0089】
ある特定の実施形態では、1つの同じ熱交換器が、動作モードに応じて、第1の熱交換器3の機能を提供し得る。
【0090】
補助交換器がまた、異なる動作モードを確実にするために追加され得る。各々の交換器の動作モードの変化を確実にするために、配管及び弁のアセンブリが使用され得る。
【0091】
一部の実施形態では、蒸気圧縮回路1は可逆的であり、その動作の逆転のための手段を追加的に備え得る。
【0092】
可逆的蒸気圧縮回路1の動作の逆転のための手段は、冷凍モードの構成と熱ポンプモードの構成との間の蒸気圧縮回路1の動作の逆転のための手段である。
【0093】
上述の逆転手段は、可逆的蒸気圧縮回路1の第1の熱伝達組成物の経路の修正のための手段、又は前記回路1の第1の熱伝達組成物の循環方向の逆転のための手段であり得る。
【0094】
上述の逆転手段は、四方弁、切換弁、閉止弁(開/閉)弁、膨張弁又はそれらの組合せであり得る。
【0095】
例えば、蒸気圧縮回路1の動作モードの逆転の間、熱交換器の役割は、変化し得、例えば、熱交換器は、冷凍モード中にコンデンサーとして、若しくは熱ポンプモード中にエバポレーターとして働き得、又は逆も同様である。
【0096】
あるいは、蒸気圧縮回路1の動作モードの逆転の間、熱交換器の役割は、同じままであり得る。熱交換器は、弁によって、他のエネルギー源に非常に単純に接続されているため、蒸気圧縮回路1のその機能に従って、熱エネルギーを吸収又は放出できる。
【0097】
ある特定の好ましい実施形態では、第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路1において単一の方向に循環し得る。
【0098】
他の実施形態では、第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路1において両方の方向、つまり第1の方向及び反対方向に循環し得る。
【0099】
可逆的蒸気圧縮回路1は、典型的には、様々な交換器、膨張弁、他の弁などの間に、配管、導管、ホース、タンク又は第1の熱伝達組成物が循環する他の要素を含有し得る。
【0100】
装置が、車両電池の加熱のためにも用いられる場合、蒸気圧縮回路1、冷凍又は熱ポンプの動作モードに応じて、第1の熱交換器3は、エバポレーター又はエネルギー回収機(コンデンサー)として働き得る。これは、中間熱交換器5について同じである。
【0101】
蒸気圧縮回路1、特に並流熱交換器、又は好ましくは、向流熱交換器において、任意の種類の熱交換器を使用することが可能である。
【0102】
好ましい実施形態によると、本発明は、第1の熱交換器3又は中間熱交換器5のいずれかにおいて、向流熱交換器を提供する。これは、本特許出願に記載の熱伝達組成物が、向流熱交換器で特に効果的であるためである。好ましくは、第1の熱交換器3及び中間熱交換器5の両方は、向流熱交換器である。
【0103】
本発明によると、「向流熱交換器」という用語は、第1の流体と第2の流体との間で熱が交換され、交換器の入口の第1の流体は、交換器の出口の第2の流体と熱を交換し、交換器の出口の第1の流体は、交換器の入口の第2の流体と熱を交換する、熱交換器を意味すると理解される。
【0104】
例えば、向流熱交換器は、第1の流体の流れ及び第2の流体の流れが反対又は事実上反対の方向であるデバイスを備える。向流傾向を有する逆流モードで動作する交換器はまた、本特許出願の意味内の向流熱交換器のうちに含まれる。
【0105】
コンプレッサ6は、密封、半密封又は開放であり得る。密封コンプレッサは、解体できない密封容器内に収容されたモーター部分及び圧縮部分を備える。半密封コンプレッサは、互いに対して直接組み立てられたモーター部分及び圧縮部分を備える。モーター部分と圧縮部分との間の連結は、分解によって2つの部分を分離する際に接触可能である。開放コンプレッサは、分離されるモーター部分及び圧縮部分を備える。それらは、ベルトドライブによって又は直接連結によって動作し得る。
【0106】
特に、コンプレッサとして、動的コンプレッサ又は容積式コンプレッサが使用され得る。
【0107】
動的コンプレッサは、1つ又は複数の段階を有し得る軸流コンプレッサ及び遠心コンプレッサを含む。小型遠心コンプレッサを用いることもできる。
【0108】
容積式コンプレッサは、ロータリーコンプレッサー及び往復式コンプレッサを含む。
【0109】
往復式コンプレッサは、ダイアフラムコンプレッサー及びピストンコンプレッサーを含む。
【0110】
ロータリーコンプレッサーは、スクリューコンプレッサー、ローブコンプレッサー、スクロール(又はスパイラル)コンプレッサ、液封コンプレッサ及びベーンコンプレッサーを含む。スクリューコンプレッサーは、好ましくは、二軸又は単軸であり得る。
【0111】
使用される装置において、コンプレッサ6は、電動モーターによって、又はガスタービン(例えば、車両排ガスによって満たされる)、又はギアリングによって駆動され得る。
【0112】
使用される装置において、コンプレッサ6は、蒸気又は液体の射出のためのデバイスを備え得る。射出は、液体又は蒸気状態の冷媒を、圧縮の開始と終了との間の中間レベルで、コンプレッサに導入することからなる。
【0113】
二次回路2は、少なくとも1つの追加の熱交換器7を備える。
【0114】
各々の追加の熱交換器7は、流体/固体型、又は流体/流体型、又は流体/気体型(空気、例えば車室の空気を加熱若しくは冷却するため)の交換器であり得る。これらの後者2つの場合、追加の熱交換器7は、やはり並流熱交換器、又は好ましくは、向流熱交換器であり得る。
【0115】
少なくとも1つの追加の熱交換器7は、電池を冷却するように構成され得る。同じ追加の熱交換器7又は他の追加の熱交換器7は、電池を加熱する(ただし、1つの同じ追加の熱交換器7が電池の冷却及び加熱の両方をできることが好ましい)、又は車両の車室及び/若しくは電子化合物を冷却及び/若しくは加熱するように構成され得る。
【0116】
電池(及び/又は電子部品)を冷却又は加熱するために、電池(及び/若しくは電子部品)に向けて吹き込まれる空気を冷却若しくは加熱する;又は電池(及び/若しくは電子部品)と直接接触関係になる追加の交換器7を配置する、又は追加の交換器7を電池(及び/若しくは電子部品)に組み込むことが可能である。
【0117】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、車両の電池と直接接触している。言い換えると、車両の電池は、第2の熱伝達組成物に浸漬されている。この場合、対応する追加の熱交換器7は、電池のすべて又は一部を含有する容器に限定され、第2の熱伝達組成物は容器中に含有され、電池の外壁と接触している。
【0118】
これにより、より良好な結果を得るための熱伝達組成物の良好な誘電及び熱特性を調和させることが可能になる。この場合、第2の熱伝達組成物は、30℃の温度で2bar未満の沸騰圧を有することが好ましい。第2の熱伝達組成物の沸騰圧が十分に低くない場合、直接接触のために、圧力に耐えるための電池のハウジングの設計に多大な労力が要される。この場合、圧力ストレスは、例えば、冷却プレートの形態の追加の熱交換器7を使用することによって、より容易に管理される。
【0119】
ある特定の実施形態では、二次回路2はコンプレッサを備えない。言い換えると、二次回路2は蒸気圧縮回路ではない。
【0120】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路において本質的に均一圧力であり、前記圧力は、第2の熱伝達組成物の温度における第2の熱伝達組成物の飽和圧に等しい。損失水頭の事象において、わずかな変動の可能性がある。第2の熱伝達組成物の温度は、好ましくは、二次回路において均一である。
【0121】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、方法の間、一定温度のままである。
【0122】
「飽和圧」という用語は、閉鎖系において組成物の気相が所与の温度で液相と平衡である圧力を意味すると理解される。
【0123】
ある特定の実施形態では、二次回路2は、特にいくつかの追加の熱交換器7を備える場合、第2の熱伝達組成物を1つ若しくは複数の特定の追加の熱交換器7に方向付けるために;及び/又は二次回路2のすべて若しくは一部の第2の熱伝達組成物の循環の方向を変えることを可能にするために1つ又は複数の弁を備え得る。
【0124】
ある特定の好ましい実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2のすべて又は一部において単一の方向に循環し得る。
【0125】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2のすべて又は一部において両方の方向、つまり第1の方向及び反対方向に循環し得る。
【0126】
ある特定の実施形態では、中間熱交換器5から追加の熱交換器7へ、及び/又は追加の熱交換器7から中間熱交換器5への二次回路2における第2の熱伝達組成物の循環は、ポンプによって、又は重力によって、又は毛細管作用によって実施され得る。
【0127】
本発明によるこの装置では、蒸気圧縮回路1は、中間熱交換器5によって二次回路2と連結され得る。したがって、第1の熱伝達組成物及び第2の熱伝達組成物の両方は、中間熱交換器5を通過し得る。
【0128】
電池の冷却の間、中間熱交換器5は、第1の熱伝達組成物を蒸発(及びおそらく第2の熱伝達組成物を凝縮)させ得、追加の熱交換器7は、電池から第2の熱伝達組成物に熱を伝導するように構成される。
【0129】
電池の加熱の間、中間熱交換器5は、第1の熱伝達組成物を凝縮(及びおそらく第2の熱伝達組成物を蒸発)させ得、追加の熱交換器7は、第2の熱伝達組成物から電池に熱を伝導する(おそらく、第2の熱伝達組成物を凝縮しながら)ように構成される。
【0130】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2全体を通して液体状態にある。第2の熱伝達組成物の温度は、追加の熱交換器7を横切る場合、及び中間熱交換器5を横切る場合、修正される。これは特に、電池が第2の熱伝達組成物に浸漬されている場合、好ましい選択肢である。
【0131】
本特許出願の文脈において、各々の蒸発及び各々の凝縮は、全体又は部分的であり得る。
【0132】
したがって、蒸発は、液体状態から開始して、蒸気状態;又は2相液体/蒸気状態から開始して、蒸気状態;又は液体状態から開始して、2相液体/蒸気状態;又は1つの2相液体/蒸気状態から開始して、別の2相液体/蒸気状態に変化することからなり得る。
【0133】
したがって、凝縮は、蒸気状態から開始して、液体状態;又は蒸気状態から開始して、2相液体/蒸気状態;又は2相液体/蒸気状態から開始して、液体状態;又は1つの2相液体/蒸気状態から開始して、別の2相液体/蒸気状態に変化することからなり得る。
【0134】
蒸発及び凝縮は、一定温度、又は熱伝達化合物の非共沸混合物の場合、可変温度で実施され得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、中間熱交換器5において、1つの組成物(第1の熱伝達組成物又は第2の熱伝達組成物)は、他方よりも低温であり、好ましくは、温度差は12℃未満、好ましくは8℃未満、より好ましくは5℃未満である。組成物の温度が中間熱交換器5において一定ではないと仮定すると、上記の温度差の推定のために取る参照は、中間熱交換器の入口と出口の間のメジアン温度である。
【0136】
ある特定の実施形態では、冷却及び/又は加熱により、特に車両が動作中(エンジンオン)の場合、とりわけ車両が動いている場合に、電池の温度を最適温度範囲内に維持することが可能になる。
【0137】
ある特定の実施形態では、したがって、車両の電池の温度は、最低温度t~最高温度tの間に維持される。
【0138】
ある特定の実施形態では、最低温度tは0℃以上であり、最高温度tは60℃以下であり、好ましくは、最低温度tは15℃以上であり、最高温度tは40℃以下であり、より好ましくは、最低温度tは16℃以上であり、最高温度tは28℃以下である。
【0139】
ある特定の実施形態では、最低温度t~最高温度tの間での電池の温度の維持の間の外部温度は、20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上である。
【0140】
最低温度t~最高温度tの間での車両の電池の温度の維持の継続時間の間の外部温度は、特に、-35~-30℃、-30~-25℃、-25~-20℃、又は-20~-15℃、又は-15~-10℃、又は-10~-5℃、又は-5~0℃、又は0~5℃、又は5~10℃、又は10~15℃、又は15~20℃、又は20~25℃、又は25~30℃、又は30~35℃、又は35~40℃、又は40~45℃、又は45~50℃であり得る。
【0141】
「外部温度」という用語は、最低温度t~最高温度tの間での車両の電池の温度の維持の前及びその間の車両の外部の周囲温度を意味すると理解される。
【0142】
「電池の温度」という用語は、一般に、電気エネルギー貯蔵素子の1つ又は複数の外壁の温度を意味すると理解される。
【0143】
電池の温度は、温度センサーによって測定できる。いくつかの温度センサーが電池に存在する場合、電池の温度は、測定された異なる温度の平均であると考えることができる。
【0144】
ある特定の実施形態では、本発明の装置及び方法により、車両の電池を冷却及び/又は加熱(好ましくは、冷却)し、電池の充電の間、車両の電池を最適温度範囲(上で詳述される通り)に維持することが可能になる。
【0145】
特に、電池の充電は、急速充電であり得る。したがって、(電池が完全に放電された時から)30分以下、好ましくは15分以下の期間の電池の完全充電の間、本発明による方法により、電池の温度を最適温度範囲内に維持することが可能になる。高速充電の間、電池が急速に加熱し、その動作及びその性能品質に影響し得る高温に達する傾向があることを考慮すると、このことは利点を示す。
【0146】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、二次回路2全体を通して、10~40℃の間、好ましくは20~30℃の間の温度に維持される。
【0147】
熱伝達組成物
本発明は、第1の熱伝達組成物及び第2の熱伝達組成物を使用し、各々の熱伝達組成物は、場合により滑沢剤及び/又は添加剤と共に、熱伝達流体を含む。熱伝達流体は、1つ又は複数の熱伝達化合物を含み得る。
【0148】
第1の熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路中に存在し、循環する。
【0149】
第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、HFO-1234yfを含む。
【0150】
ある特定の実施形態では、この熱伝達流体は、少なくとも50重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも60重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも70重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも80重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも90重量%のHFO-1234yf、又は少なくとも95重量%のHFO-1234yfを含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、この熱伝達流体は、HFO-1234yfから本質的になり、それどころかさらにはHFO-1234yfからなる。
【0152】
他の好ましい実施形態では、この熱伝達流体はまた、1つ又は複数の他の熱伝達化合物、例えば、ヒドロフルオロカーボン、及び/又はヒドロフルオロオレフィン、及び/又は炭化水素、及び/又はヒドロクロロフルオロオレフィン、及び/又はCOを含む。
【0153】
特に、ヒドロフルオロカーボンの中でも、ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0154】
特に、ヒドロフルオロオレフィンの中でも、シス及び/又はトランス型、好ましくはトランス型の1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze);及びトリフルオロエチレン(HFO-1123)を挙げることができる。
【0155】
特に、ヒドロクロロフルオロオレフィンの中でも、Z及び/又はE型、好ましくはE型の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)を挙げることができる。
【0156】
好ましい実施形態によると、第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32を含む。好ましくは、熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32の二成分組成物である(つまり、熱伝達流体は、HFO-1234yf及びHFC-32からなる、又はこれらから本質的になる)。
【0157】
したがって、HFO-1234yfは、60重量%~90重量%の含有量を有し得、HFC-32は、40重量%~10重量%の含有量を有し得、好ましくは、HFO-1234yfは、70重量%~80重量%の含有量を有し得、HFC-32は、20重量%~30重量%の含有量を有し得、より好ましくは、HFO-1234yfは、75重量%~80重量%の含有量を有し得、HFC-32は、20重量%~25重量%の含有量を有し得る。好ましい実施形態によると、HFO-1234yfは、およそ78.5重量%の含有量で存在し、HFC-32は、およそ21.5重量%の含有量で存在する。重量パーセンテージは、第1の熱伝達組成物の熱伝達流体に関して示される。
【0158】
本発明の第1の熱伝達組成物中に存在し得る添加剤は、特に、ナノ粒子、安定化剤、界面活性剤、トレーシング剤、蛍光剤、芳香剤及び可溶化剤から選択され得る。
【0159】
添加剤の総量は、第1の熱伝達組成物の5重量%、特に4重量%、より詳細には3重量%、非常に詳細には2重量%、それどころかさらには1重量%を超えない。
【0160】
ある特定の実施形態では、HFO-1234yfは、不純物を含有する。不純物が存在する場合、それらは、HFO-1234yfに関して、1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満(重量による)を表し得る。
【0161】
第1の熱伝達組成物の熱伝達流体は、場合により、HFO-1243zf(3,3,3-トリフルオロプロペン)及び/又は3,3,3-トリフルオロプロピンを含み得る。
【0162】
熱伝達流体中のHFO-1243zfの含有量は、10000ppm以下、又は5000ppm以下、又は1000ppm以下、又は500ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下であり得る。
【0163】
例として、熱伝達流体中のHFO-1243zfの含有量は、0~1ppm、又は1~10ppm、又は10~50ppm、又は50~100ppm、又は100~500ppm、又は500~1000ppm、又は1000~5000ppm、又は5000~10000ppmであり得る。
【0164】
熱伝達流体中の3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量は、10000ppm以下、又は5000ppm以下、又は1000ppm以下、又は500ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下であり得る。
【0165】
例として、熱伝達流体中の3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量は、0~1ppm、又は1~10ppm、又は10~50ppm、又は50~100ppm、又は100~500ppm、又は500~1000ppm、又は1000~5000ppm、又は5000~10000ppmであり得る。
【0166】
上記のppm値は、重量によって示される。
【0167】
1つ又は複数の滑沢剤が、第1の熱伝達組成物中に存在し得る。これらの滑沢剤は、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、又はポリビニルエーテル(PVE)から選択され得る。
【0168】
滑沢剤は、第1の熱伝達組成物の1%~50%、好ましくは2%~40%、より好ましくは5%~30%(重量による)を表し得る。
【0169】
第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、0~40℃、好ましくは5~35℃、より好ましくは8~34℃の沸点を有する1つ又は複数の熱伝達化合物を含む。
【0170】
「化合物の沸点」という用語は、1barの圧力下で化合物が沸騰する温度を意味すると理解される。
【0171】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、0~40℃、好ましくは5~35℃、より好ましくは8~34℃の沸点を有する。
【0172】
いくつかの化合物の混合物の場合、混合物の沸点は、1barの圧力における沸騰開始点と沸騰終了点との平均に対応する。
【0173】
第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、HFCO-1233zdを含む。
【0174】
ある特定の実施形態では、この熱伝達流体は、少なくとも50重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも60重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも70重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも80重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも90重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも95重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも98重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも99重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも99.5重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも99.9重量%のHCFO-1233zd、又は少なくとも99.95重量%のHCFO-1233zdを含む。
【0175】
ある特定の好ましい実施形態では、この熱伝達流体は、HCFO-1233zdから本質的になり、それどころかさらにはHCFO-1233zdからなる。
【0176】
第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、9以下のHCFO-1233zdのZ型対E型のモル比を有するHCFO-1233zdを含む。
【0177】
好ましくは、この比は、5以下、好ましくは1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下であり得る。例えば、この比は、0.01~0.1、又は0.1~0.5、又は0.5~1、又は1~2、又は2~3、又は3~4、又は4~5、又は5~6、又は6~7、又は7~8、又は8~9であり得る。
【0178】
好ましくは、HCFO-1233zdは、90mol%超のE型、好ましくは92mol%超のE型、好ましくは94mol%超のE型、好ましくは96mol%超のE型、好ましくは98mol%超のE型、より好ましくは99mol%超のE型を含む。ある特定の好ましい実施形態では、HCFO-1233zdは、完全に、又は本質的に完全に、E型である。
【0179】
先行する部分において、第2の熱伝達組成物に含まれるHCFO-1233zdが主にE型であると述べられていたとしても、逆の状況を想定することもまた可能であることに留意すべきである。言い換えると、別の発明(方法及び装置)は、HCFO-1233zdが、第2の熱伝達組成物中で主にZ型である(より詳細には、E/Zモル比が、9以下、好ましくは5以下、又は1以下、又は0.5以下、又は0.1以下である;例えばこの比は、0.01~0.1、又は0.1~0.5、又は0.5~1、又は1~2、又は2~3、又は3~4、又は4~5、又は5~6、又は6~7、又は7~8、又は8~9であり得る)ことを除き、ここまでに記載されている本発明(方法及び装置)からなる。
【0180】
したがって、HCFO-1233zdは、90mol%超のZ型、好ましくは92mol%超のZ型、好ましくは94mol%超のZ型、好ましくは96mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含み得る。ある特定の好ましい実施形態では、HCFO-1233zdは、完全に、又は本質的に完全に、Z型である。
【0181】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物はまた、0~40℃の沸点を有する1つ又は複数の熱伝達化合物を含み得、これは、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン及びこれらの組合せから選択され得る。
【0182】
ある特定の実施形態では、ヒドロクロロフルオロオレフィンは、例えば、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)であり得る。
【0183】
HCFO-1224ydは、E及び/又はZ型であり得る。
【0184】
好ましくは、HCFO-1224ydは、50mol%超のZ型、好ましくは60mol%超のZ型、好ましくは70mol%超のZ型、好ましくは80mol%超のZ型、好ましくは85mol%超のZ型、好ましくは90mol%超のZ型、好ましくは95mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含む。好ましくは、HCFO-1224ydは、完全にZ型である。
【0185】
ある特定の実施形態では、ヒドロフルオロオレフィンは、E及び/又はZ型の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(HFO-1336mzz)であり得る。
【0186】
したがって、HFO-1336mzzは、50mol%超のZ型、好ましくは60mol%超のZ型、好ましくは70mol%超のZ型、好ましくは80mol%超のZ型、好ましくは85mol%超のZ型、好ましくは90mol%超のZ型、好ましくは95mol%超のZ型、好ましくは98mol%超のZ型、より好ましくは99mol%超のZ型を含み得る。HFO-1336mzzは、完全にZ型であり得る。
【0187】
あるいは、HFO-1336mzzは、50mol%超のE型、好ましくは60mol%超のE型、好ましくは70mol%超のE型、好ましくは80mol%超のE型、好ましくは85mol%超のE型、好ましくは90mol%超のE型、好ましくは95mol%超のE型、好ましくは98mol%超のE型、より好ましくは99mol%超のE型を含み得る。HFO-1336mzzは、完全にE型であり得る。
【0188】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物に使用される熱伝達化合物は、100kJ/kg超、好ましくは110kJ/kg超、より好ましくは120kJ/kg超、より好ましくは130kJ/kg超、より好ましくは140kJ/kg超、より好ましくは150kJ/kg超、より好ましくは160kJ/kg超の、20℃における蒸発の潜熱を有する。
【0189】
第2の組成物において熱伝達流体として使用され得る熱伝達化合物の潜熱値は、20℃の温度について以下の表に示される。最高潜熱は、HCFO-1233zd(E)で観察される。
【0190】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、単一の熱伝達化合物、すなわち、HCFO-1233zdを含む。
【0191】
ある特定の好ましい実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物の二成分混合物であり得る。
【0192】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物の三成分混合物であり得る。
【0193】
第2の熱伝達組成物は、二次回路中に存在し、循環する。
【0194】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、圧縮も膨張も受けない。
【0195】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物は、少なくとも50重量%の熱伝達流体、又は少なくとも60重量%の熱伝達流体、又は少なくとも70重量%の熱伝達流体、又は少なくとも80重量%の熱伝達流体、又は少なくとも90重量%の熱伝達流体、又は少なくとも95重量%の熱伝達流体を含む。
【0196】
ある特定の実施形態では、第2の熱伝達組成物の熱伝達流体は、熱伝達化合物から本質的になり、それどころかさらには熱伝達化合物からなる。
【0197】
本発明の第2の熱伝達組成物中に存在し得る添加剤は、第1の熱伝達組成物に関連して上に記載されるものと同じであり、同じ濃度範囲が当てはまる。
【0198】
さらに、第2の熱伝達組成物は、C3及びC6アルケン、特にブテン又はペンテン安定剤を含み得る。
【実施例1】
【0199】
想定される様々な構成における熱伝達流体の特性の計算方法
RK-Soave式を、混合物の密度、エンタルピー、エントロピー及び液体/蒸気平衡データの計算に使用する。この式の使用には、目的の混合物中で使用される純物質の特性、及びまた各々の二成分混合物の相互作用係数の知識が必要である。
【0200】
各々の純物質に関して利用可能なデータは、沸点、臨界温度及び臨界圧力、沸点から臨界点までの温度の関数としての圧力曲線、温度の関数としての飽和液体及び飽和蒸気密度である。
【0201】
したがって、HFC-32及びHFO-1234yfに関するデータは、Refrop(冷媒の特性の計算のためにNISTによって開発されたソフトウェア)で利用可能である。
【0202】
RK-Soave式は、二成分相互作用係数を使用して、混合物としての生成物の挙動を表す。HFC-32/HFO-1234yf二成分混合物についての液体/蒸気平衡データは、Refpropで利用可能である。
【実施例2】
【0203】
冷却における性能品質
以下では、実施例1のデータを使用して、電池を冷却する場合の、本発明による伝達組成物の挙動をシミュレーションする。
【0204】
検討中のシステムは、図1のものである。
【0205】
システムは、0℃の過加熱及び5℃の過冷却で動作する(一次回路)。
【0206】
性能係数(COP)は、システムに導入又はシステムにより消費される電力に関してシステムによって供給される有用な電力であると定義される。
【0207】
システムは、16℃のエバポレーターにおける冷媒の入口温度、及び50℃のコンデンサーにおける冷媒の凝縮の開始温度で動作する。
【0208】
組成物の性能品質は、以下の表に示され、HFC-134a/HCFO-1233zd対の性能品質と比べて表される。
【実施例3】
【0209】
加熱における性能品質
以下では、実施例1のデータを使用して、電池を加熱する場合の、本発明による伝達組成物の挙動をシミュレーションする。
【0210】
検討中のシステムは、図1のものである。
【0211】
システムは、5℃の過加熱及び0℃の過冷却で動作する(一次回路)。
【0212】
性能係数(COP)は、システムに導入又はシステムにより消費される電力に関してシステムによって供給される有用な電力であると定義される。
【0213】
システムは、-10℃のエバポレーターにおける冷媒の入口温度、及び26℃のコンデンサーにおける冷媒の凝縮の開始温度で動作する。
【0214】
組成物の性能品質は、以下の表に示され、HFC-134a/HCFO-1233zd対の性能品質と比べて表される。
図1