(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電気機械式錠及び方法
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
E05B47/00 M
(21)【出願番号】P 2022524651
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020082541
(87)【国際公開番号】W WO2021099388
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012803
【氏名又は名称】イロク オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーライネン、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ティッカネン、ヴェイネ
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03530847(EP,A1)
【文献】特開2005-245047(JP,A)
【文献】特表2018-520284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
H02K 33/00 - 33/18
H01F 7/06 - 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式錠であって、
第1の位置(120)と第2の位置(140)との間で移動する可動永久磁石(100)と、
固定半硬質永久磁石(102)と、
前記固定半硬質永久磁石(102)の極性を第1の磁化構成(S-N)と第2の磁化構成(N-S)との間で切り替えるために前記固定半硬質永久磁石(102)に隣接して位置決めされた電動磁化コイル(104)であって、前記固定半硬質永久磁石(102)の前記第1の磁化構成(S-N)は、前記可動永久磁石(100)を前記第1の位置(120)へ吸引し(122)、また前記固定半硬質永久磁石(102)の前記第2の磁化構成(N-S)は、前記可動永久磁石を前記第2の位置(140)へはね返す(142)、電動磁化コイル(104)と
を有し、
前記可動永久磁石(100)の磁気軸(108)が、前記固定半硬質永久磁石(102)の磁気軸(110)と並んでおり、
前記固定半硬質永久磁石(102)は、前記第1の位置(120)及び前記第2の位置(140)において前記可動永久磁石(100)を少なくとも部分的に取り囲むように形成及び位置決めされ、
前記固定半硬質永久磁石(102)は管状形状であり、前記可動永久磁石(100)は、ピン(106)の中空部の内側に配置され、前記可動永久磁石(100)を収容している前記ピン(106)の部分が、前記固定半硬質永久磁石(102)の前記管状形状内で移動するように遊合及び位置決めされている、電気機械式錠。
【請求項2】
前記可動永久磁石(100)は、前記可動永久磁石(100)の前記磁気軸(108)及び前記固定半硬質永久磁石(102)の前記磁気軸(110)の両方と平行である運動軸(112)に沿って前記第1の位置(120)と前記第2の位置(140)との間で移動する、請求項1に記載の電気機械式錠。
【請求項3】
前記第1の磁化構成(S-N)において、前記固定半硬質永久磁石(102)の第1の極(160)が、前記可動永久磁石(100)の第1の極(164)を吸引し、前記固定半硬質永久磁石(102)の第2の極(162)が、前記可動永久磁石(100)の第2の極(166)を吸引し、
一方、前記第2の磁化構成(N-S)において、前記固定半硬質永久磁石(102)の逆転した第1の極(168)が、前記可動永久磁石(100)の前記第1の極(164)をはね返し、前記固定半硬質永久磁石(102)の逆転した第2の極(170)が、前記可動永久磁石(100)の前記第2の極(166)をはね返す、請求項1又は2に記載の電気機械式錠。
【請求項4】
前記電動磁化コイル(104)は、前記固定半硬質永久磁石(102)の周囲に巻かれており、一方向への電気の流れが、前記第1の磁化構成(S-N)をもたらし、反対方向への電気の流れが、前記第2の磁化構成(N-S)をもたらす、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電気機械式錠。
【請求項5】
前記可動永久磁石(100)の前記第1の位置(120)は、前記電気機械式錠内の係合を分離状態に保ち、それにより前記電気機械式錠はロック状態のままとなり、一方、前記可動永久磁石(100)の前記第2の位置(140)は、電気機械式錠内の前記係合を結合させ、それにより前記電気機械式錠は開放可能状態に変わる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電気機械式錠。
【請求項6】
前記可動永久磁石(100)の前記第1の位置(120)は、前記電気機械式錠内における移動を阻止し、それにより前記電気機械式錠はロック状態のままとなり、一方、前記可動永久磁石(100)の前記第2の位置(140)は、前記電気機械式錠内における前記移動を可能にし、それにより前記電気機械式錠は開放可能状態に変わる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電気機械式錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の実施例は、電気機械式錠及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の電気機械式錠は、錠の機構を動作させるために、磁場の力を利用する。
【0003】
欧州特許出願公開第3530847A1号は、半硬質磁石及び硬質磁石を含むデジタル錠を開示している。半硬質磁石の磁気極性化の変更が、硬質磁石を押すか又は引いてデジタル錠を開閉させるように構成される。しかし、例えば
図3を参照すると、磁石は互いに軸方向に向かい合って設置されるので、生成される磁場の力は比較的小さく、それが錠の設計及び実施を複雑にする。米国特許第10,298,037B2号は、ポータブル電子デバイスのためのスマート充電システムを開示しており、この場合、例えば
図2を参照すると、磁石はやはり互いに軸方向に向かい合って設置されている。独国特許出願公開第102016205831A1号は、電気コイルによりその極性が変更される電磁石を使用して永久磁石を移動させることにより使用者に触覚フィーバックを提供する(車両遠隔キーレス・エントリ・システムの)無線キーを開示している。永久磁石及び電磁石は、並行して(並んで)設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第3530847A1号
【文献】米国特許第10,298,037B2号
【文献】独国特許出願公開第102016205831A1号
【文献】欧州特許第3118977B1号
【文献】欧州特許出願公開第3480396A1号
【文献】欧州特許出願公開第3480395A1号
【発明の概要】
【0005】
一つの観点によれば、独立請求項の主題が提供される。従属請求項は、いくつかの実施例を画定する。
【0006】
実施態様の1つ又は複数の実例が、添付の図面及び実施例の説明においてより詳細に記述される。
【0007】
次に、添付の図面を参照しながら、いくつかの実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルとケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図2B】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルとケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図2C】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルとケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図2D】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルとケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図2E】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルとケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図3A】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルを含むがケースは含まない電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図3B】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルを含むがケースは含まない電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図3C】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルを含むがケースは含まない電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図3D】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルを含むがケースは含まない電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図3E】固定半硬質永久磁石を取り囲む磁化コイルを含むがケースは含まない電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図4A】可動永久磁石及び可動永久磁石と固定半硬質永久磁石との間の間隙内に位置決めされている磁化コイルを取り囲む固定半硬質永久磁石とケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図4B】可動永久磁石及び可動永久磁石と固定半硬質永久磁石との間の間隙内に位置決めされている磁化コイルを取り囲む固定半硬質永久磁石とケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図4C】可動永久磁石及び可動永久磁石と固定半硬質永久磁石との間の間隙内に位置決めされている磁化コイルを取り囲む固定半硬質永久磁石とケースとを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図5A】2つの移動ピンを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図5B】2つの移動ピンを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図5C】2つの移動ピンを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【
図5D】2つの移動ピンを含む電気機械式錠のさらなる実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施例は、単なる実例である。本明細書はいくつかの箇所において「一」実施例に言及する場合があるが、これは、必ずしも、そのようなそれぞれの言及が同じ実施例に対するものであること、又は特徴が単一の実施例にのみ適用されることを意味するものではない。様々な実施例の一つ一つの特徴もまた、他の実施例を提供するために組み合わせられ得る。さらに、「有している、含んでいる(comprising)」及び「含んでいる(including)」という用語は、説明された実施例をそれらの述べられた特徴のみで構成されるように限定するものではないと理解されるべきであり、また、そのような実施例は、明確に述べられていない特徴/構造をも含み得る。
【0010】
参照番号は、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲の両方において、実施例をそれらの実例だけに限定することなしに、図面を参照しながら実施例を説明する機能を果たす。
【0011】
独立請求項の範囲に該当しない、以下の説明において開示される実施例及び特徴は、存在するとしても、本発明の種々の実施例を理解するのに役立つ実例と解釈されるべきである。
【0012】
本出願人であるiLOQ Oyは、適用可能な場合はあらゆる権限において参照として本明細書に組み込まれる種々の欧州特許出願及び欧州特許並びに米国特許出願及び米国特許で開示されているものなどの、電気機械式錠のための多くの改善を発明してきた。それらの詳細全てについての完全な論述は、本明細書では繰り返されないが、読者にはそれらの刊行物を閲覧することを勧告する。
【0013】
【0014】
電気機械式錠は、第1の位置120と第2の位置140との間で移動する可動永久磁石100と、固定半硬質永久磁石102と、固定半硬質永久磁石102とに隣接して位置決めされた電動磁化コイル104とを有する。
【0015】
磁石100、102は、「永久」であり、即ち、磁石100、102は、磁化されてそれ自体の永続的な磁場を作り出す材料から作られる。永久磁石は、それらの内部の微結晶構造を整列させるために製造中に強磁場において加工される(フェライトのような)磁気的に「硬質の」材料から作られ、そのことが、それらを消磁させることを非常に難しくする。(なまし鉄のような)磁気的に「軟質の」材料は、磁化され得るが、磁化されたままでいない傾向がある。飽和磁石を消磁させるために、その磁石の材料の最大保磁力を超える強度を持つ磁場が応用される。磁気的に「硬質の」材料は、高い最大保磁力を有するが、磁気的に「軟質の」材料は、低い最大保磁力を有する。磁気的に「半硬質の」材料は、その最大保磁力が「軟質の」磁性材料と「硬質の」磁性材料との間である合金を含む。
【0016】
一実施例では、可動永久磁石100は、「磁気的に」硬質の材料で作られる。一実施例では、可動永久磁石100は、SmCo(サマリウム-コバルト合金)磁石であり、その最大保磁力は40~2800kA/mである。
【0017】
一実施例では、固定半硬質永久磁石102は、AlNiCo(アルミニウム-ニッケル-コバルト合金)磁石であり、その最大保磁力は30~150kA/mである。
【0018】
一部の分類によれば、AlNiCo磁石は、硬質磁石と見なされるが、本出願においては、半硬質磁石は、容易に消磁されるようにあまり軟質ではないが、適切な電流を使用する電動磁化コイル104によりその極性が逆転(反転)され得るようにあまり硬質ではないような磁石であることに、留意されたい。
【0019】
電動磁化コイル104は、固定半硬質永久磁石102の極性を
図1Cに示されるような第1の磁化構成S-Nと
図1Eに示されるような第2の磁化構成N-Sとの間で切り替える。一実施例では、電動磁化コイル104は、一方向における電気の流れが第1の磁化構成S-Nをもたらし、また、反対方向における電気の流れが第2の磁化構成N-Sをもたらすように、動作する。
【0020】
電動磁化コイル104は、磁化器(図示せず)の一部であってよい。磁化器は、超高電流の非常に短いパルスを生成し、それが、短時間のしかし非常に強力な磁場をもたらす。電気パルスは、蓄電器のバンクにおいて高電圧で電流を蓄え、次いで電子スイッチを通じて蓄電器を突然放電させることによって、もたらされ得る。電気パルスは、その最も単純な形態では電線コイルであり得る電動磁化コイル104に印加される。
【0021】
一実施例では、一方向における電気の流れを有する単一の電気パルスが、第1の磁化構成S-Nをもたらし、反対方向における電気の流れを有する単一の電気パルスが、第2の磁化構成N-Sをもたらす。
【0022】
一実施例では、一方向における電気の流れを有する複数の連続的な電気パルスが、第1の磁化構成S-Nをもたらし、反対方向における電気の流れを有する複数の連続的な電気パルスが、第2の磁化構成N-Sをもたらす。2つ以上の磁化パルスを有することにより、固定半硬質永久磁石102の得られる磁場は、単一の磁化パルスを用いるよりも強力になる。
【0023】
一実施例では、電動磁化コイル104は、単一のコイルで構成される。
【0024】
一実施例では、電動磁化コイルは、複数のコイルを有する。例えば、主コイル以外に、追加のより短いコイルが、主コイルに巻回される。まず、追加のコイルが初期磁化パルスを生成し、続いて、主コイルにより主磁化パルスが生成される。
【0025】
一実施例では、電気エネルギーは、スマートフォン若しくは他のユーザ装置からの近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)を使用して電気機械式錠によって収穫され得るか、又は、電流は、キー挿入によって生成されてよく、どちらも本出願人によって開発された技術である。しかし、他の電気エネルギー源が同様に適用されてもよい。
【0026】
第1の磁化構成S-N、及び第2の磁化構成NーSはまた、逆であってもよく、即ち、第1の磁化構成N-S、及び第2の磁化構成S-Nであってもよく、この場合、可動永久磁石100の極164、166(N-S)は逆(S-N)であることに、留意されたい。
【0027】
また、磁石100、102は、単数形で、即ちそれぞれ1つの磁石で構成されるものとして言及されるが、磁石100、102は、説明されるようにそれらが反発する(はね返す)122及び吸引する(引き付ける)142ように構成並びに位置決めされた複数の磁石からそれぞれ構成され得ることに、留意されたい。
【0028】
磁極モデルは、以下の命名規則を有する:北極N、及び南極N。相反する極(S-N)は互いに吸引するが、類似の極(N-N又はS-S)は互いに反発する。磁性は、遙かに複雑な物理的現象(これは、磁極の他に、微少電流(atomic currents)によってもモデル化され得る)であるが、磁極モデルは、磁石100、102が実施例において作用する方法の理解を可能にする。磁気軸が、磁石の相反する2つの極(S及びN)をつなぐ直線として定められ得る。
【0029】
固定半硬質永久磁石102の第1の磁化構成S-Nは、可動永久磁石100を第1の位置120へ吸引122する。
図1Cに示された実施例では、第1の磁化構成S-Nにおいて、固定半硬質永久磁石102の(第1の端部における)第1の極160が、可動永久磁石100の(第1の端部における)第1の極164を吸引し、固定半硬質永久磁石102の(第2の端部における)第2の極162が、可動永久磁石100の(第2の端部における)第2の極166を吸引する。
【0030】
固定半硬質永久磁石102の第2の磁化構成N-Sは、可動永久磁石を第2の位置140へはね返す142。
図1Eに示された実施例では、第2の磁化構成N-Sにおいて、固定半硬質永久磁石102の(第1の端部における)逆転した第1の極168が、可動永久磁石100の(第1の端部における)第1の極164をはね返し、固定半硬質永久磁石102の(第2の端部における)逆転した第2の極170が、可動永久磁石100の(第2の端部における)第2の極166をはね返す。
【0031】
図1C、
図1D、
図1E、及び
図1Fは、動作シーケンスを示しており(左側は磁石を詳細に示しており、右側は磁場のシミュレーションを示している)、即ち、
-
図1Cでは、第1の磁化構成S-Nは、可動永久磁石100を第1の位置120へ吸引122し、
-
図1Dでは、第2の磁化構成N-Sは、可動永久磁石100をはね返し130始めており、
-
図1Eでは、第2の磁化構成N-Sは、可動永久磁石100を第2の位置140へはね返し142、
-
図1Fでは、第1の磁化構成S-Nは、可動永久磁石100を吸引し150始めている
ことに、留意されたい。
【0032】
図1Bに示されるように、可動永久磁石100の磁気軸108は、固定半硬質永久磁石102の磁気軸110と並行する。
【0033】
一実施例では、可動永久磁石100の磁気軸108は、固定半硬質永久磁石102の磁気軸110と同軸である。これは、2つの軸108、110が共通の軸又は同じ中心を共有する(それにより、2つの軸は同心である)ことを意味する。
【0034】
一実施例では、可動永久磁石100は、可動永久磁石100の磁気軸108及び固定半硬質永久磁石102の磁気軸110の両方に平行な運動軸112に沿って第1の位置120と第2の位置140との間で移動する。
【0035】
一実施例では、可動永久磁石100の磁気軸108は、固定半硬質永久磁石102の磁気軸110と近軸的に(paraxially)並行するということも言える。これは、2つの軸108、110が平行に且つ並行して配置されることを意味する。
【0036】
次に、電気機械式錠の種々の実施例を調べる。
【0037】
まず、磁石100、102及びコイル104を含む説明された構造が電気機械式錠において利用され得る機能、例えば結合及び分離(uncoupled;解放)のための機能、並びに可能化及び不可能化のための機能について検討する。結合/分離、及び/又は可能化/不可能化は、電気機械式錠をロック状態にセットするか、電気機械式錠にロック状態であり続けさせるか、又は、電気機械式錠を開放可能状態に変更することができる。
【0038】
一実施例では、可動永久磁石100の第1の位置120は、電気機械式錠内の係合を分離状態に保ち、それにより、電気機械式錠は、ロック状態にあり続け、一方で、可動永久磁石100の第2の位置140は、電気機械式錠内の係合を結合させ、それにより、電気機械式錠は、開放可能状態に変わる。
【0039】
一実施例では、可動永久磁石100の第1の位置120は、電気機械式錠における移動を阻止し、それにより、電気機械式錠は、ロック状態にあり続け、一方で、可動永久磁石100の第2の位置140は、電気機械式錠における移動を可能にし、それにより、電気機械式錠は、開放可能状態に変わる。
【0040】
上述の2つの実施例は、本出願では説明されないが、読者には、適用可能な場合はあらゆる権限において参照として本明細書に組み込まれる欧州特許第3118977B1号、欧州特許出願公開第3480396A1号、及び欧州特許出願公開第3480395A1号などの本出願人の他の出願並びに特許を閲覧することを勧告する。本実施例は、前述の欧州特許出願公開第3530847A1号において説明される機械構造だけでなく、それらの特許において説明される機械構造の他にも適用され得る。
【0041】
図5A、
図5B、
図5C、及び
図5Dは、同じケース500内に2つの移動ピン106A、106Bを含む電気機械式錠のさらなる実施例を示す。例えば、一方のピン106Aは、係合を係合させる/係脱させるために使用され得るが、他方のピン106Bは、移動を阻止する/可能にするために使用され得る。各ピン106A、106Bは、固定半硬質永久磁石102A、102Bと相互作用する移動永久磁石100A、100Bを収容する。電動磁化コイル104A、104Bは、
図2A~
図2E及び
図3A~
図3Eに関連して説明される実施例におけるように配置され得るか、又は、
図4A~
図4Cに関連して説明される実施例におけるように配置され得る。電動磁化コイル104A、104Bは、電気パルスが各固定半硬質永久磁石102A、102Bに対して類似の(S-N及びS-N、若しくはN-S及びN-S)又は異なる(S-N及びN-S、若しくはN-S及びS-N)磁化構成をもたらすように、直列に接続され得る。この種の動作によると、両方のピン106A、106Bが、1つの制御サイクルだけで同時に移動する。当然ながら、電動磁化コイル104A、104Bが直列に接続されていない場合、各ピン106A、106Bは、互いの動作及びタイミングとは無関係に、別々に制御され得る。
【0042】
別の種の構成(図示せず)は、1つ又は2つの電動磁化コイル104A、104Bを用いて磁化される2つの(又は、それより多くの)固定半硬質永久磁石102によって取り囲まれた単一のピン106に2つの(又は、それより多くの)可動永久磁石100が固定されるような構成であり得る。このようにして、ピン106を移動させる磁気力は、単一の磁石100、102を用いるよりも大きくなる。
【0043】
種々の構成は、ピンなどの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くの機械要素が、説明されるように磁気的に制御され得るように、組み合わせられ得る。
【0044】
図1Aに示された実施例では、固定半硬質永久磁石102は、第1の位置120及び第2の位置140において可動永久磁石100を取り囲むように形成され且つ位置決めされる。
図1Aでは、固定半硬質永久磁石102は、可動永久磁石100を完全に取り囲むが、固定半硬質永久磁石102が可動永久磁石100を部分的に取り囲むような実施例もまた、実現可能である。
【0045】
図1Aに示された実施例では、固定半硬質永久磁石102は、管状形状のものであり、可動永久磁石100は、ピン106内の中空部の内側に配置される。可動永久磁石100を収容するピン106の部分は、固定半硬質永久磁石102の管状形状内で移動するように遊合(clearance fit;すきまばめ)され且つ位置決めされ得る。
【0046】
一実施例では、ピン106は、チタン、ステンレス鋼、又は十分な破壊強さを有する他の非磁性材料で作られる。
【0047】
一実施例では、可動永久磁石100は、2mmの長さであり、固定半硬質永久磁石102は、3mmの長さである。管状形状の内側の中空部の直径は、1.4mmであり、可動永久磁石100の直径は、1mmであり、それにより、ピン106は、可動永久磁石100のための0.2mm足らずの被覆を提供する。これらの寸法は単なる実例であるが、これらの寸法は、説明された磁石100、102の並行した位置決めにより、磁気力は(従来技術におけるように)互いに軸方向に配置された場合よりも遙かに大きくなり、それにより(例えば、安全性、サイズ、機械的な複雑さ、及び電源内蔵式錠における電気効率に関して)電気機械式錠の設計及び実施がより容易になるという事実を示すのに役立つことに、留意されたい。
【0048】
一実施例では、固定半硬質永久磁石102の第1の磁化構成S-Nは、ピン106の両端部が機械的に分離され続け、それにより電気機械式錠がロック状態にあり続けるように、可動永久磁石100を第1の位置120へ吸引し、一方で、固定半硬質永久磁石102の第2の磁化構成N-Sは、ピン106の一方の端部が機械的に結合されることになり、それにより電気機械式錠が開放可能状態に変わるように、可動永久磁石100を第2の位置140へはね返す。これは、
図1Aに示されている。ピン106の左側の広がった部分は、まず、空洞180と分離され続け、ピン106の(南極を含む)右側部分もまた、分離され続けるが、固定半硬質永久磁石102の磁化構成がS-NからN-Sに(即ち、
図1Cから
図1Eに)切り替えられると、ピン160の左側の広がった部分は、空洞180と機械的に結合される。
【0049】
図2A、
図2B、
図2C、
図2D、
図2E、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、及び
図3Eに示された実施例では、電動磁化コイル104は、固定半硬質永久磁石102を取り囲むように位置決めされる。一実施例では、電動磁化コイル104は、固定半硬質永久磁石102に巻回され、一方向における電気の流れが、第1の磁化構成S-Nをもたらし、反対方向における電気の流れが、第2の磁化構成N-Sをもたらす。
【0050】
図2A~
図2Eと
図3A~
図3Eとの違いは、前者では電気機械式錠は任意選択のケース200とともに示されているが、後者では(電気機械式錠は例えば扉の内側の空間に埋め込まれるので)ケース200が必要とされないという点である。
【0051】
図4A、
図4B、及び
図4Cに示された実施例では、固定半硬質永久磁石102は、第1の位置120及び第2の位置140において可動永久磁石100を取り囲むように形成され且つ位置決めされ、電動磁化コイル104は、可動永久磁石100と固定半硬質永久磁石102との間の空隙内に位置決めされる。一実施例では、支持構造400が、電動磁化コイル104に必要とされ得る。
【0052】
最後に、方法の実施例を示す流れ図である
図6を観察する。一実施例では、方法は、電気機械式錠において行われる。一実施例では、方法は、説明された可動永久磁石100、固定半硬質永久磁石102、及び電動磁化コイル104を利用する電気機械式装置において行われる。
【0053】
動作は、厳密に経時的な順序におけるものではなく、動作のうちのいくつかは、同時に行われるか、又は、示されたものとは異なる順序で行われ得る。他の機能もまた、動作間で又は動作内で実行されてよく、また、他のデータが、動作間で交換され得る。動作のうちのいくつか、又は動作の一部もまた、省略されるか、或いは、対応する動作、又は動作の一部に置き換えられ得る。論理的要求に起因して処理順序に必要である場合を除き、動作の特別な順序は要求されないことが、留意されるべきである。
【0054】
方法は、600から始まる。
【0055】
602では、固定半硬質永久磁石(S-MAG)の極性が、第1の磁化構成(1-CONF)と第2の磁化構成(2-CONF)との間で電気的に切り替えられる。
【0056】
604では、可動永久磁石(M-MAG)が、固定半硬質永久磁石の第1の磁化構成により、第1の位置へ吸引される。
【0057】
606では、可動永久磁石は、固定半硬質永久磁石の第2の磁化構成により、第2の位置へはね返される。
【0058】
608では、可動永久磁石は、固定半硬質永久磁石の磁気軸と並行している可動永久磁石の磁気軸に沿って移動される。
【0059】
方法は、624で終了する。
【0060】
電気機械式錠のすでに説明された実施例は、種々のさらなる実施例により方法を強化するために利用され得る。例えば、種々の構造上及び/又は動作上の詳細が、方法を補足し得る。
【0061】
一実施例では、可動永久磁石の磁気軸は、固定半硬質永久磁石の磁気軸と同軸614である。
【0062】
一実施例では、方法は、可動永久磁石を可動永久磁石の磁気軸及び固定半硬質永久磁石の磁気軸の両方と平行616である運動軸に沿って第1の位置と第2の位置との間で移動させる608ことをさらに有する。
【0063】
一実施例では、方法は、第1の磁化構成において、固定半硬質永久磁石の第1の極(1-POLE)により可動永久磁石の第1の極(1-POLE)を吸引し、固定半硬質永久磁石の第2の極(2-POLE)により可動永久磁石の第2の極(2-POLE)を吸引する610ことと、第2の磁化構成において、固定半硬質永久磁石の逆転した第1の極(REV-1-POLE)により可動永久磁石の第1の極をはね返し、固定半硬質永久磁石の逆転した第2の極(REV-2-POLE)により可動永久磁石の第2の極をはね返す620ことと、をさらに有する。
【0064】
一実施例では、方法は、固定半硬質永久磁石により第1の位置及び第2の位置において可動永久磁石を取り囲む618ことをさらに有する。
【0065】
一実施例では、方法は、第1の磁化構成において、可動永久磁石を収容するピンの両端部が機械的に分離され続けるように、可動永久磁石を第1の位置へ吸引する612ことと、第2の磁化構成において、ピンの一方の端部が機械的に結合されることになるように、可動永久磁石を第2の位置へはね返す622ことと、をさらに有する。一実施例では、可動永久磁石を収容するピンの両端部が機械的に分離され続けることにより、(本方法を実行している)電気機械式錠は、ロック状態にあり続け、また、ピンの一方の端部が機械的に結合されることなることにより、電気機械式錠は、開放可能状態に変わる。
【0066】
本発明は、添付の図面に記載の1つ又は複数の実施例を参照して説明されたが、本発明は、それらに制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれる幾通りかの方法で修正され得るものである。全ての用語及び表現は、広義に解釈されるべきであり、またそれらは、実施例を制限するのではなく例示するものとして意図されている。技術が進歩するにつれて本発明の概念は様々な方法で実施され得ることが、当業者には明らかであろう。