IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メニコンの特許一覧

<>
  • 特許-眼用レンズ 図1
  • 特許-眼用レンズ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240930BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F230/08
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022544929
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020032014
(87)【国際公開番号】W WO2022044117
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康介
(72)【発明者】
【氏名】西口 友香
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 有里香
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平8-507798(JP,A)
【文献】特表平10-509763(JP,A)
【文献】特表2010-508546(JP,A)
【文献】国際公開第2009/099164(WO,A1)
【文献】特開2009-223158(JP,A)
【文献】国際公開第03/021336(WO,A1)
【文献】特表2005-513173(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104927002(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
A61F 2/16
G02B 1/00- 1/08
C08F230/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー成分として、シロキサン結合を有するシロキサンモノマーと、シロキサン結合を有さないシロキサン非含有架橋性モノマーと、を含む重合性組成物を重合して得られるポリマー材料を含む、眼用レンズであって、
該重合性組成物が、親水性ポリマーをさらに含み、
該シロキサン非含有架橋性モノマーが、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを含む、眼用レンズ。
【請求項2】
前記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの鎖状部位が、アルキレングリコール繰り返し単位を6~50含む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記アルキレングリコール繰り返し単位が、エチレングリコール繰り返し単位、プロピレングリコール繰り返し単位およびブチレングリコール繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記シロキサン非含有架橋性モノマーの配合割合が、2重量%以上であり、
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、0.9重量%以上である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、2重量%以上である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、3重量%~25重量%である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーのHLB値が、5~20である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記シロキサンモノマーの配合割合が、10重量%~70重量%である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記シロキサンモノマーが、単一の重合性基を有する、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項10】
前記シロキサンモノマーが有するシロキサン結合の繰り返し数が、100以下である、請求項1からのいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項11】
前記シロキサンモノマーが有するシロキサン結合の繰り返し数が、20以下である、請求項1から10のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項12】
前記シロキサンモノマーの重量平均分子量が、10,000以下である、請求項1から11のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記シロキサンモノマーの重量平均分子量が、1,000以下である、請求項1から12のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項14】
前記シロキサンモノマーが、重量平均分子量が1,000以下であるシロキサンモノマーAと、重量平均分子量が1,000を超えるシロキサンモノマーBとを含み、
該シロキサンモノマーAと該シロキサンモノマーBと合計に対する該シロキサンモノマーBの割合が、20重量%以下である、請求項1から13のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項15】
前記モノマー成分が、共重合性モノマーをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項16】
前記共重合性モノマーが、ヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-メチルラクタム、メチル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の親水性モノマーを含む、請求項15に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
前記重合性組成物中における全モノマー成分および前記親水性ポリマーの合計配合量に対する前記共重合性モノマーの配合割合が、20重量%~70重量%である、請求項15または16に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
前記親水性ポリマーが、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む、請求項から17のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項19】
前記ポリマー材料の応力緩和率が、10%~40%である、請求項1から18のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項20】
前記ポリマー材料のヤング率が、0.3MPa~2.3MPaである、請求項1から19のいずれかに記載の眼用レンズ。
【請求項21】
コンタクトレンズである、請求項1から20のいずれかに記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとに大別される。近年、ハードコンタクトレンズの多くは、シロキサン結合(Si-O-Si)を有するシロキサンポリマーを用いて形成されることにより、高い酸素透過性を有するが、その硬さに起因して装用時に異物感を生じさせる場合がある。一方、ソフトコンタクトレンズは、親水性モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとを共重合成分とする共重合ポリマーを用いた含水ハイドロゲルから形成されることにより、優れた装用感が得られる一方で、ハードコンタクトレンズに比べて酸素透過性が低い傾向にある。これに対し、シロキサンモノマーをさらなる共重合成分として含むシリコーンハイドロゲルを用いて、高い酸素透過性と優れた装用感とを両立するコンタクトレンズが開発されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、シリコーンハイドロゲルから形成されたコンタクトレンズは、表面に脂質が付着しやすい。よって、高い酸素透過性と優れた装用感とを両立し、かつ、脂質の付着が抑制されたコンタクトレンズの実現が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6433790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、酸素透過性と装用感とを両立し、かつ、脂質の付着が抑制された眼用レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面によれば、モノマー成分として、シロキサン結合を有するシロキサンモノマーと、シロキサン結合を有さないシロキサン非含有架橋性モノマーと、を含む重合性組成物を重合して得られるポリマー材料を含む、眼用レンズであって、該シロキサン非含有架橋性モノマーが、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを含む、眼用レンズが提供される。
1つの実施形態において、上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの鎖状部位が、アルキレングリコール繰り返し単位を6~50含む。
1つの実施形態において、上記アルキレングリコール繰り返し単位が、エチレングリコール繰り返し単位、プロピレングリコール繰り返し単位およびブチレングリコール繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
1つの実施形態において、上記重合性組成物が、親水性ポリマーをさらに含む。
1つの実施形態において、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記シロキサン非含有架橋性モノマーの配合割合が、2重量%以上であり、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、0.9重量%以上である。
1つの実施形態において、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、2重量%以上である。
1つの実施形態において、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合が、3重量%~25重量%である。
1つの実施形態において、上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーのHLB値が、5~20である。
1つの実施形態において、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記シロキサンモノマーの配合割合が、10重量%~70重量%である。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーが、単一の重合性基を有する。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーが有するシロキサン結合の繰り返し数が、100以下である。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーが有するシロキサン結合の繰り返し数が、20以下である。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーの重量平均分子量が、10,000以下である。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーの重量平均分子量が、1,000以下である。
1つの実施形態において、上記シロキサンモノマーが、重量平均分子量が1,000以下であるシロキサンモノマーAと、重量平均分子量が1,000を超えるシロキサンモノマーBとを含み、該シロキサンモノマーAと該シロキサンモノマーBと合計に対する該シロキサンモノマーBの割合が、20重量%以下である。
1つの実施形態において、上記モノマー成分が、共重合性モノマーをさらに含む。
1つの実施形態において、上記共重合性モノマーが、ヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-メチルラクタム、メチル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の親水性モノマーを含む。
1つの実施形態において、上記重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の上記親水性ポリマーの合計配合量に対する上記共重合性モノマーの配合割合が、20重量%~70重量%である。
1つの実施形態において、上記親水性ポリマーが、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種を含む。
1つの実施形態において、上記ポリマー材料の応力緩和率が、10%~40%である。
1つの実施形態において、上記ポリマー材料のヤング率が、0.3MPa~2.3MPaである。
1つの実施形態において、上記眼用レンズは、コンタクトレンズである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シロキサンモノマーと特定の架橋性モノマーとを含むモノマー成分を重合させて得られるポリマー材料を用いることにより、酸素透過性と装用感とを両立し、かつ、脂質の付着が抑制された眼用レンズを得ることができる。また、本発明によって得られる眼用レンズは、良好な取り扱い性を確保するために適切な柔軟性や変形回復性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例および比較例で得られた眼用レンズの評価結果を示す図である。
図2】応力緩和率の測定において用いた治具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「モノマー」とは、1つ以上の重合性基を有する重合性化合物を意味する。当該重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく例示でき、重合性基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基であり得る。ここで、「(メタ)」は、任意のメチル置換を意味する。よって、「(メタ)アクリロイル」は、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを意味する。「(メタ)アクリル」等の他の記載も同様である。
【0010】
本発明の実施形態による眼用レンズは、モノマー成分として、シロキサン結合を有するシロキサンモノマーと、シロキサン結合を有さないシロキサン非含有架橋性モノマーと、を含む重合性組成物を重合して得られるポリマー材料を含み、該シロキサン非含有架橋性モノマーとして、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを少なくとも用いる。本発明の実施形態による眼用レンズは、代表的には角膜のカーブに沿った半球面形状を有する。本発明の実施形態による眼用レンズは、例えばコンタクトレンズ、人工角膜、角膜オンレイとして用いることができ、好ましくはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである。
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、各実施形態は適宜組み合わせることができる。
【0012】
A.重合性組成物
重合性組成物は、モノマー成分として、シロキサン結合を有するシロキサンモノマーと、シロキサン結合を有さないシロキサン非含有架橋性モノマーと、を含み、該シロキサン非含有架橋性モノマーは、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを含む。モノマー成分は、好ましくは、共重合性モノマーをさらに含む。1つの実施形態において、共重合性モノマーは、親水性モノマーを含む。1つの実施形態において、共重合性モノマーは、相溶化モノマーを含む。また、重合性組成物は、親水性ポリマーをさらに含み得る。モノマー成分と親水性ポリマーとを含む重合性組成物を重合させることによって、モノマー成分由来の構造単位を含むポリマーと親水性ポリマー成分とが高度に複合化したポリマー材料が得られ得る。また、重合性組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含んでもよい。
【0013】
A-1.モノマー成分
モノマー成分は、シロキサンモノマーと、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを含むシロキサン非含有架橋性モノマーと、を含み、好ましくは共重合性モノマーをさらに含む。
【0014】
A-1-1.シロキサンモノマー
シロキサンモノマーは、シロキサン結合(Si-O-Si)と重合性基とを有する限りにおいて、任意の適切なモノマーが用いられ得る。シロキサンモノマーは、シロキサン結合を有することに起因して、ポリマー材料に高い酸素透過性を付与し得る。1つの実施形態において、シロキサンモノマーは単一の重合性基を有する(換言すると、分子内に重合性基を1つのみ有する)非架橋性のシロキサンモノマーであり得る。別の実施形態において、シロキサンモノマーは、分子内に重合性基を2つ以上有する架橋性のシロキサンモノマーであり得る。なお、本発明の実施形態においては、シロキサンモノマーを1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
シロキサンモノマーとしては、コンタクトレンズ用材料として従来用いられているモノマー、例えば、特表2015-503631号公報の0039段落~0044段落に記載のシロキサンモノマー、特開2014-40598号公報の0060段落~0065段落に記載のシロキサンモノマー、WO2015/92858号公報の0024段落~0037段落に記載のシロキサンモノマー(具体的には、以下の式(A)、好ましくは式(A-1)、(A-2)または(A-3)で表されるシロキサンモノマー)が挙げられる。これらの公報は本明細書中においてその全体が参考として援用される。
【0016】
【化1】
上記一般式(A)において、
1)nは0または1~10の整数である。
2)AおよびAは、それぞれ、下記の一般式(A-II)および(A-III)にて表わされる基である。下記一般式(A-II)および一般式(A-III)中、Y21およびY22は、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基またはアリル基であり、また、R21およびR22は、それぞれ独立に、直接結合または炭素数2~6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基である。
21-R21- ・・・(A-II)
-R22-Y22 ・・・(A-III)
3)Z、Z、Z、Z、ZおよびZは、それぞれ独立して、直接結合またはアルキレングリコール(オキシアルキレン基)を繰り返し単位とするポリアルキレングリコール鎖である。但し、Z~Zの中の少なくとも1以上は、エチレングリコールの繰り返し数が2以上、好ましくは4~15であるポリエチレングリコール鎖であり、ポリエチレングリコール鎖ではないZ~Zの中の少なくとも1以上は、エチレングリコールとは異なるアルキレングリコールを繰り返し単位とするポリアルキレングリコール鎖(例えば、プロピレングリコールを構成単位とするポリプロピレングリコール鎖、具体例としては、プロピレングリコールの繰り返し数が5~16であるポリプロピレングリコール鎖)である。
4)Uは、下記の一般式(A-IV)で表わされる基であり、シロキサンモノマーの分子鎖中でウレタン結合を含んでいる。下記一般式(A-IV)において、E21は-NHCO-基(この場合、E21はX21とウレタン結合を形成している)、または、飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(この場合、E21はZおよびX21の間でウレタン結合を形成している)であり、X21は酸素原子である。
-E21-X21- ・・・(A-IV)
5)Uは、下記の一般式(A-VI)で表わされる基であり、シロキサンモノマーの分子鎖中でウレタン結合を含んでいる。下記一般式(A-VI)において、R41およびR42は、それぞれ独立して、炭素数2~6の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基であり、X41およびX42は、それぞれ独立して、酸素原子またはアルキレングリコール基であり、E41は、飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(この場合、E41はX41およびX42の間でウレタン結合を形成している)である。
-R41-X41-E41-X42-R42- ・・・(A-VI)
6)Uは、下記の一般式(A-VII)で表わされる基であり、シロキサンモノマーの分子鎖中でウレタン結合を含んでいる。下記一般式(A-VII)において、X22は酸素原子であり、E22は-NHCO-基(この場合、E22はX22との間でウレタン結合を形成している)、または、飽和若しくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(この場合、E22はZおよびX22の間でウレタン結合を形成している)である。
-X22-E22- ・・・(A-VII)
7)SおよびSは、それぞれ独立して、下記の一般式(A-V)にて表わされる基である。下記一般式(A-V)中、R31およびR38は、それぞれ独立して、炭素数2~6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基であり、R32、R33、R34、R35、R36およびR37は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基、フッ素置換されたアルキル基、またはフェニル基である。また、Kは1~1500の整数、Lは0または1~1500の整数であり、KとLの和:「K+L」は例えば1~1500の整数であり、好ましくは2~1000の整数であり、より好ましくは3~500の整数である。
【化2】
【0017】
【化3】
(上記式中、R51は水素原子またはメチル基を示し、aは2以上の整数、bは2以上の整数、nは1~1500の整数である。また、R52およびR53は水素原子またはメチル基であり、R52が水素原子である場合には、R53はメチル基であり、R52がメチル基である場合には、R53は水素原子である。)
【0018】
【化4】
(上記式中、a’は2以上の整数、b’は2以上の整数、n’は1~1500の整数である。また、R61およびR62は水素原子またはメチル基であり、R61が水素原子である場合には、R62はメチル基であり、R61がメチル基である場合には、R62は水素原子である。)
【0019】
【化5】
(上記式中、a”は2以上の整数、b”は2以上の整数、n”は1~1500の整数である。また、R81およびR82は水素原子またはメチル基であり、R81が水素原子である場合には、R82はメチル基であり、R81がメチル基である場合には、R82は水素原子である。)
【0020】
シロキサンモノマーの別の具体例としては、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等のシリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート;トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジメチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペンタデカメチルヘプタシロキサニルスチレン、ヘンエイコサメチルデカシロキサニルスチレン、ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、トリメチルシロキシペンタメチルジシロキシメチルシリルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシリルスチレン、トリメチルシロキシビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシメチルシリルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシヘキサメチル)テトラシロキシ[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]トリメチルシロキシシリルスチレン、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシリルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、トリメチルシリルスチレン等のシリコーン含有スチレン誘導体;ビス(3-(トリメチルシリル)プロピル)フマレート、ビス(3-(ペンタメチルジシロキサニル)プロピル)フマレート、ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)フマレート等のシリコーン含有フマル酸ジエステルが挙げられる。
【0021】
シロキサンモノマーのさらに別の具体例としては、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ-n-メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル末端モノ-n-メチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ-n-メチル末端ポリジメチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジエチルシロキサン、モノ(メタ)アクリロイルアミノプロピル末端モノ-n-メチル末端ポリジエチルシロキサン等が挙げられる。これらのシロキサンモノマーにおいて、(Si-O)の繰り返し数は、例えば4~20、好ましくは4~12、より好ましくは4~10であり得る。
【0022】
1つの実施形態において、窒素原子を含むシロキサンモノマーが用いられる。シロキサンモノマーに窒素原子が含まれることによって親水性モノマーとの相溶性が向上する結果、シロキサンモノマーの配合割合を増大した場合であっても透明性に優れたシリコーンハイドロゲルを得ることができる。
【0023】
1つの実施形態において、親水性基を有さないシロキサンモノマーと親水性基を有するシロキサンモノマーとが組み合わせて用いられ得る。このような2種類のシロキサンモノマーを併用することにより、親水性モノマーとの相溶性が向上する結果、相溶性モノマーの存在または非存在に関わらず、透明性に優れたシリコーンハイドロゲルを得ることができる。
【0024】
上記親水性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシル基を有するシロキサンモノマーが好ましい。ヒドロキシル基を有するシロキサンモノマーとしては、(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(SiGMA)等が挙げられる。
【0025】
上記シロキサンモノマーの重量平均分子量は、代表的には、10,000g/mol以下である。1つの実施形態において、重量平均分子量が例えば1,000g/mol以下であり、好ましくは200g/mol~900g/mol、より好ましくは300g/mol~800g/molであるシロキサンモノマーが好ましく用いられ得る。このようなシロキサンモノマーを用いることにより、重合性組成物全体の粘度を下げることができ、モールドへの分注時等の取り扱いが容易となる。また、別の実施形態において、重量平均分子量が例えば1,000g/molを超え10,000g/mol以下であり、好ましくは2,000g/mol~9,000g/mol、より好ましくは3,000g/mol~8,000g/molであるシロキサンモノマーが好ましく用いられ得る。このようなシロキサンモノマーを用いることにより、より高い酸素透過性向上効果が得られ得る。これらのシロキサンモノマーはいずれか一方のみを用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。このような2種類のシロキサンモノマーを併用することにより、適切な重合性組成物の粘度を保ちつつ、高い酸素透過性を発現することができる。
【0026】
上記シロキサンモノマーが有するシロキサン結合の繰り返し数は、代表的には1500以下であり、好ましくは100以下である。1つの実施形態において、シロキサン結合の繰り返し数が、例えば1~20、好ましくは2~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは4~10であるシロキサンモノマーが好ましく用いられ得る。このようなシロキサンモノマーを用いることにより、重合性組成物全体の粘度を下げることができ、モールドへの分注時等の取り扱いが容易となる。また、別の実施形態において、シロキサン結合の繰り返し数が、例えば20を超え1500以下、好ましくは20を超え100以下、より好ましくは20を超え80以下であるシロキサンモノマーが好ましく用いられ得る。このようなシロキサンモノマーを用いることにより、より高い酸素透過性向上効果が得られ得る。これらのシロキサンモノマーはいずれか一方のみを用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。このような2種類のシロキサンモノマーを併用することにより、適切な重合性組成物の粘度を保ちつつ、高い酸素透過性を発現することができる。なお、これらの実施形態において、シロキサンモノマーが含有するポリシロキサン構造は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。また、本明細書においては、含有するシロキサン結合の数が20を超えるシロキサンモノマーまたは重量平均分子量が1,000g/molを超えるシロキサンモノマーをシロキサンマクロモノマーとも称する。
【0027】
シロキサンモノマーの配合割合(2種以上のシロキサンモノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば10重量%~70重量%、好ましくは15重量%~65重量%、より好ましくは20重量%~60重量%とすることができる。シロキサンモノマーの配合割合が当該範囲内であれば、高い酸素透過性を有するポリマー材料が得られ得る。
【0028】
シロキサンマクロモノマー(例えば、式(A)で表されるシロキサンモノマー)を他のシロキサンモノマーと併用する場合、シロキサンマクロモノマーの配合割合は、全シロキサンモノマー(シロキサンマクロモノマーと他のシロキサンモノマーとの合計)に対して好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%~15重量%とすることができる。
【0029】
親水性基を有するシロキサンモノマーと親水性基を有さないシロキサンモノマーとを併用する場合、親水性基を有するシロキサンモノマーの配合割合は、全シロキサンモノマー(親水性基を有するシロキサンモノマーと親水性基を有さないシロキサンモノマーとの合計)に対して好ましくは1重量%~60重量%、より好ましくは5重量%~50重量%とすることができる。
【0030】
A-1-2.シロキサン非含有架橋性モノマー
シロキサン非含有架橋性モノマーは、シロキサン結合を有さず、かつ、2つ以上の重合性基を有する。本発明の実施形態においては、シロキサン非含有架橋性モノマーとして、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを用いることを1つの特徴とする。必要に応じて、当該アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマー以外の架橋性モノマー(以下、第2の架橋性モノマーとも称する)をシロキサン非含有架橋性モノマーとしてさらに用いてもよい。
【0031】
シロキサン非含有架橋性モノマーの配合割合(2種以上のシロキサン非含有架橋性モノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば2重量%以上、好ましくは2.2重量%以上、より好ましくは3重量%~25重量%、さらにより好ましくは3重量%~20重量%とすることができる。
【0032】
A-1-2-1.アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマー
アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーは、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む鎖状部位と該鎖状部位の両末端に配置された重合性基とを有する。このように比較的長いポリエーテル鎖の両末端に重合性基が配置された構造を有する架橋性モノマーを用いることにより、ポリエーテル鎖による親水性の網目構造を形成することで酸素透過性を維持しつつ、脂質等の疎水性分子の侵入を抑制し得るポリマーネットワーク構造が形成される。その結果、酸素透過性と表面親水性を両立し、かつ、脂質の付着が抑制されたポリマー材料が得られると推測される。なお、本発明の実施形態においては、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーのHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)は、好ましくは5~20、より好ましくは5.5~18、さらに好ましくは6~15である。HLBが当該範囲内であれば、シロキサンモノマーとの相溶性に優れ得る。なお、本明細書において、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーのHLBは、デイビス法を用いて下記式に基づいて算出される値である(ここで、(EO)の基数は0.33であり、(PO)の基数は-0.15であり、末端のメタクリル基の合計基数は0.1である)。
HLB=7+Σ(親水基の基数)+Σ(親油性の基数)
【0034】
1つの実施形態において、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーは、以下の式(1)で表され得る。
-X-(AO)m1-[L-(AO)m2n1-[L-(AO)m3n2-Z-P (1)
(式中、
およびPは、互いに同一または異なっていてもよい重合性基を表し、
O、AOおよびAOは、互いに同一または異なっていてもよいアルキレングリコール繰り返し単位を表し、
Xは、単結合、-O-、-NH-、-O-CHCH-NH-CO-O-または-O-CHCH(OH)CHO-を表し、
Zは、単結合、-NH-、-CHCH-NH-CO-O-または-CHCH(OH)CHO-を表し、
およびLはそれぞれ独立して、単結合または二価の連結基であり、
n1およびn2はそれぞれ独立して、0または1であり、
m1およびm2およびm3はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
ただし、m1+m2×n1+m3×n2≧6の関係を満たす。)
【0035】
式(1)中、PおよびPで規定される重合性基は、好ましくは(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基であり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0036】
式(1)中、LおよびLで規定される連結基は、上記の通り単結合または二価の連結基である。二価の連結基としては、例えば炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基等が挙げられる。LおよびLで規定される連結基は、好ましくは単結合である。
【0037】
式(1)中、-(AO)m1-[L-(AO)m2n1-[L-(AO)m3n2-で規定される鎖状部位は、アルキレングリコール繰り返し単位を6以上含む。鎖状部位に含まれるアルキレングリコール繰り返し単位の数(m1+m2×n1+m3×n2)は、好ましくは6~50、より好ましくは6~40、さらに好ましくは6~30、さらにより好ましくは6~25、さらにより好ましくは7~20である。鎖状部位に含まれるアルキレングリコール繰り返し単位の数は、例えば8以上または9以上であってもよい。繰り返し数が当該範囲内であれば、優れた脂質の付着防止効果が得られ得る。
【0038】
上記アルキレングリコール繰り返し単位は、上記鎖状部位中、断続的に配置されていてもよく、連続して配置されていてもよい。好ましくは、鎖状部位は、アルキレングリコール繰り返し単位を連続して6以上、より好ましくは連続して6~50、さらに好ましくは6~40、さらにより好ましくは6~30、さらにより好ましくは6~25、さらにより好ましくは7~20含む。鎖状部位中の連続する繰り返し単位数は、例えば8以上または9以上であってもよい。
【0039】
上記鎖状部位に含まれるアルキレングリコール繰り返し単位(式(1)中、AO、AOまたはAO)としては、炭素数5以下のアルキレングリコール繰り返し単位が好ましく、エチレングリコール繰り返し単位(EO)、プロピレングリコール(代表的には、プロパン-1,2-ジオール)繰り返し単位(PO)およびブチレングリコール(代表的には、1,3-ブタンジオールまたは1,4-ブタンジオール)繰り返し単位(BO)がより好ましく、エチレングリコール繰り返し単位およびプロピレングリコール繰り返し単位がさらに好ましい。なお、鎖状部位は、アルキレングリコール繰り返し単位を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。すなわち、式(1)において、AO、AOまたはAOはそれぞれ互いに異なるアルキレングリコール繰り返し単位であってもよく、同じアルキレングリコール繰り返し単位であってもよい。
【0040】
上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
なお、式(1)においては、各アルキレングリコール繰り返し単位がブロック構造を形成している構成を示したが、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーが2種以上のアルキレングリコール繰り返し単位を含む場合、各繰り返し単位は、ランダムに配置されていてもよい。
【0042】
アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合(2種以上のアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば0.9重量%以上、また例えば1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量~25重量%、さらにより好ましくは3重量%~20重量%である。また、全モノマー成分に対するアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーの配合割合は、例えば2mol%~15mol%、好ましくは4mol%~12mol%、より好ましくは7mol%~10mol%である。このような配合割合でアルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーを含む重合性組成物を用いることにより、酸素透過性と表面親水性を両立し、かつ、脂質の付着が抑制されたポリマー材料が好適に得られ得る。
【0043】
A-1-2-2.第2の架橋性モノマー
第2の架橋性モノマーとしては、上記アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマー以外の任意の適切なシロキサン非含有架橋性モノマーが用いられ得る。第2の架橋性モノマーの具体例としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α-メチレン-N-ビニルピロリドン、4-ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3-ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。第2の架橋性モノマーは、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
第2の架橋性モノマーの配合割合(2種以上の第2の架橋性モノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマーとの合計配合割合が、例えば2重量%以上、より好ましくは2.2重量以上、さらに好ましくは3重量%~25重量%、さらにより好ましくは3重量%~20重量%となるように選択され得る。重合性組成物中における第2の架橋性モノマー単独の配合割合は、重合性組成物中の全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば0.1重量%~10重量%、また例えば0.5重量%~5重量%であり得る。
【0045】
A-1-3.共重合性モノマー
共重合性モノマーとしては、単一の重合性基を有し、シロキサン結合を有さないモノマーが用いられる。共重合性モノマーの具体例としては、親水性モノマー、相溶化モノマー、機能性モノマー等が挙げられる。
【0046】
共重合性モノマーの配合割合は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば20重量%~70重量%、好ましくは25重量%~65重量%、より好ましくは30重量%~65重量%である。また、全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対するシロキサンモノマー、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマー、親水性モノマーおよび相溶化モノマーの合計配合割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは94重量%以上であり、その上限は100重量%であってよく、例えば99.99重量%以下、また例えば99重量%以下であり得る。また、全モノマー成分に対するシロキサンモノマー、アルキレングリコール鎖含有架橋性モノマー、親水性モノマーおよび相溶化モノマーの合計配合割合は、例えば90重量%以上、好ましくは95重量%、より好ましくは97重量%以上であり、その上限は100重量%であってよく、例えば99.99重量%以下、また例えば99重量%以下であり得る。
【0047】
A-1-3-1.親水性モノマー
親水性モノマーは、得られるポリマー材料の親水性を増大させ得る。親水性モノマーとしては、例えば、20℃の水への溶解度が0.03g/mL以上、好ましくは0.1g/mL以上であるモノマーが用いられる(ただし、ケイ素原子を含有するもの、および、重合性基を2つ以上有するものを除く)。
【0048】
親水性モノマーの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート(例えば、アルキル基の炭素数が1~5である水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート);N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド(例えば、アルキル基の炭素数が1~5であるアルキル(メタ)アクリルアミド);N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニルラクタム;1-メチル-3-メチレン-2-ピロリジノン等のN-メチルラクタム、メチル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル基の炭素数が2~4であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、メトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が好ましく用いられる。親水性モノマーは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
重合性組成物中における親水性モノマーの配合割合(2種以上の親水性モノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば10重量%~70重量%、好ましくは22重量%~65重量%、より好ましくは25重量%~60重量%である。親水性モノマーの配合割合が当該範囲内であれば、高い含水率および表面親水性を有するポリマー材料が得られ得る。
【0050】
A-1-3-2.相溶化モノマー
相溶化モノマーは、シロキサンモノマーと親水性モノマーおよび/または親水性ポリマーとの相溶性を向上し得る。相溶化モノマーとしては、水素結合性プロトン含有基を有し、ケイ素原子を有さないモノマーであって、重合性基に含まれる炭素原子以外に4つ以上の炭素原子を有するモノマーが好ましく用いられる。
【0051】
相溶化モノマーが有する炭素原子数(重合性基に含まれる炭素原子を除く)は、例えば6以上であり、好ましくは6~25であり、より好ましくは7~15であり、さらに好ましくは8~13である。相溶化モノマーは、例えば、水素結合性プロトン含有基1つあたり、4つ以上の炭素原子を有し、より好ましくは5~15、さらに好ましくは8~13の炭素原子を有し得る。
【0052】
上記水素結合性プロトン含有基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド結合、スルホン酸基(-SOH)、ウレタン結合、尿素結合等が挙げられる。なかでもヒドロキシル基が好ましい。相溶化モノマーが有する水素結合性プロトン含有基の数は、例えば1~12、好ましくは1~5、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1または2である。
【0053】
相溶化モノマーの20℃の水に対する溶解度は、代表的には、0.03g/mL未満であり、好ましくは0.02g/mL以下、より好ましくは0g/mL~0.01g/mLである。ヒドロキシル基等の水素結合性プロトン含有基を有する一方で、全体としては疎水的な性質であるモノマーを用いることにより、シロキサンモノマーと親水性モノマーおよび/または親水性ポリマーとの相溶性向上に寄与し得る。
【0054】
1つの実施形態において、相溶化モノマーは、重合性基および水素結合性プロトン含有基に加えて2つ以上の炭素原子、好ましくは4つ以上の炭素原子を含む疎水性基を有する。当該実施形態においては、相溶化モノマーが、重合性基と、水素結合性プロトン含有基を含む中間部と、2つ以上の炭素原子を含む疎水性末端部とを有すること、より具体的には、相溶化モノマー分子の一方の末端部分に重合性基が配置され、他方の末端部分に疎水性基が配置され、それらの間に水素結合性プロトン含有基を含む比較的親水性の高い基を配置することが好ましい。(メタ)アクリロイル基等の重合性基と比較的近い位置に水素結合性プロトン含有基を有し、遠い位置に末端疎水性基を有する相溶化モノマーは、シロキサンモノマーと親水性モノマーおよび/または親水性ポリマーとの相溶性向上に寄与し得る。
【0055】
上記実施形態における相溶化モノマーは、下記式(B)で表され得る。
-A-B (B)
(式中、
は、(メタ)アクリロイル基を表し、
Aは、水素結合性プロトン含有基を含むか、Pとともに水素結合性プロトン含有基を形成する二価の原子団を表し、
Bは、炭素数2~20の炭化水素基を表し、
ただし、AとBに含まれる炭素数の合計は4以上である。)
【0056】
上記式(A)において、Aで規定される二価の原子団は、例えば、
*-X-Ra1-(La1r1-[(Ra2r2-(La2r3r4- (i)
で表され得る。
(ここで、*はPとの結合手を表し、
Xは、OまたはNRa3を表し、
a1およびRa2はそれぞれ独立して、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表し、
a3は、水素または炭素数1~4のアルキル基を表し、
a1およびLa2はそれぞれ独立して、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、ウレタン結合、または尿素結合を表し、
r1~r3は、それぞれ独立して0または1を表し、
r4は、0~10の整数を表し、
ただし、
a2がヒドロキシル基を有さない場合、r3およびr4は0ではなく、
(i)の原子団は、少なくとも1つの水素結合性プロトン含有基を有する。)
【0057】
a1およびRa2はそれぞれ独立して、好ましくはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、より好ましくはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基を表す。具体的には、Ra1とRa2の少なくとも一方がヒドロキシル基を有することが好ましく、Ra1がヒドロキシル基を有することがより好ましい。このような実施形態としては、Ra1がヒドロキシル基を有し、Ra2が存在しない実施形態(例えば、r1=0または1、r2=0、r3=0の実施形態)またはRa1とRa2の両方がヒドロキシル基を有する実施形態(例えば、r1=1、r2=1、r3=0または1の実施形態)等が挙げられる。
【0058】
存在する場合のLa1およびLa2はそれぞれ独立して、好ましくはエーテル結合またはエステル結合であり得る。ただし、Ra1とRa2の両方がヒドロキシル基を有さない場合は、La1とLa2の少なくとも一方がアミド結合、ウレタン結合、または尿素結合であることが好ましい。
【0059】
上記Bで規定される炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状構造を含んでもよく、任意の位置にヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば、フッ素等のハロゲンが挙げられる。Bは、好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数5~12の未置換またはフッ素置換を有する炭化水素基(例えば、アルキル基)であり得る。
【0060】
上記実施形態における相溶化モノマーの具体例を下記式(I)、(V)または(VI)に示す。
【化6】
(式中、
は、水素原子またはメチル基を表し、
およびRはそれぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレン基を表し、
は、炭素数2~20の炭化水素基、-(R5a-O-R5b、-(R5a-O(C=O)-R5bもしくは-(R5a-(C=O)O-R5bで示される構造を表し(ここで、R5aは、炭素数1~4のアルキレン基を表し、R5bは、炭素数2~20の炭化水素基を表し、sは、0または1を表す)、
1は、OまたはNRを表し(ここで、Rは、水素または炭素数1~4のアルキル基を表す)、
は、単結合または炭素数1~3のアルキレン基を表し、
は、単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-(R7a-O-(R7b-、-(R7a-O(C=O)-(R7b-、-(R7a-(C=O)O-(R7b-、-(R7a-(C=O)-(R7b-もしくは以下の式(II)~(IV)で示される構造を表し
【化7】
(ここで、R7aは、炭素数1~4のアルキレン基を表し、R7bは、炭素数1~20のアルキレン基を表し、R8aおよびR8bはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、tおよびuはそれぞれ独立して、0または1を表す)、
nは0~10の整数であり、
q1およびq2はそれぞれ独立して、0または1であり、
ただし、
重合性基(CH=CR-CO-)を除いた残基に含まれる炭素数の合計は、3以上であり、
、R5b、R、R8aおよびR8bで規定される炭化水素基またはアルキル基はそれぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい。)
【0061】
式(I)に関して、RおよびR5bで規定される炭化水素基はそれぞれ、好ましくは炭素数2~12、より好ましくは炭素数3~10、さらに好ましくは炭素数4~10の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)である。これらの炭化水素基はそれぞれ、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状構造を含んでもよい。これらの炭化水素基が末端疎水性基として機能することにより、相溶化モノマーがシロキサンモノマーに対して親和性を発揮し得ると考えられる。
【0062】
またはR5bで規定される炭化水素基の具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、メチルプロピル基、t-ブチル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、トリメチルブチル基、エチルブチル基、プロピルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、エチルペンチル基、プロピルペンチル基、ブチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基、トリメチルヘキシル基、エチルヘキシル基、プロピルヘキシル基、ブチルヘキシル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘプチル基、エチルヘプチル基、プロピルヘプチル基、メチルオクチル基、ジメチルオクチル基、エチルオクチル基、メチルノニル基等の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等のシクロアルキル基;シクロオクチルエチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロヘプチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロヘキシルブチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロペンチルブチル基、シクロペンチルペンチル基、シクロブチルプロピル基、シクロブチルブチル基、シクロブチルペンチル基、シクロプロピルブチル基、シクロプロピルペンチル基、シクロプロピルヘキシル基等のシクロアルキル環含有アルキル基;ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基等の有橋脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0063】
、R8aおよびR8bの基はそれぞれ、好ましくは水素または炭素数1または2のアルキル基である。
【0064】
、R、R、R5aおよびR7aで規定されるアルキレン基はそれぞれ、好ましくはメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基、ブチレン基であり、より好ましくはメチレン基またはエチレン基である。
【0065】
7bで規定されるアルキレン基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0066】
およびRの基に含まれる炭素数の合計は、好ましくは3以下であり、より好ましくは0~2であり、さらに好ましくは1または2(例えば、Xがメチレン基またはエチレン基であり、Rが存在しない実施形態(すなわち、q1=0の実施形態)、XおよびRがともにメチレン基である実施形態等)である。ヒドロキシル基が(メタ)アクリロイル基に近接して配置されることにより、相溶化モノマーが親水性モノマーおよび/または親水性ポリマーに対して親和性を発揮し得ると考えられる。
【0067】
の基に含まれる炭素数の合計は、好ましくは0~10であり、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。
【0068】
、R5b、R、R8aおよびR8bで規定される炭化水素基またはアルキル基が有し得るヘテロ原子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば、フッ素等のハロゲン等が挙げられる。1つの実施形態において、R、R5b、R、R8aまたはR8bで規定される炭化水素基またはアルキル基は、フルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基であり得る。
【0069】
nは、好ましくは0~5であり、より好ましくは0、1または2である。
【0070】
1つの実施形態において、式(I)中、Rが水素原子またはメチル基であり、XがOであり、Xがメチレン基またはエチレン基、好ましくはメチレン基であり、nが0であり、Rが-(R5a-O-R5bであり(ただし、R5aはメチレン基であり、sは1であり、R5bは炭素数2~20のフッ素で置換されていてもよい炭化水素基である)、q1が0または1、好ましくは0である。
【0071】
1つの実施形態において、式(I)中、Rが水素原子またはメチル基であり、XがOであり、Xがメチレン基またはエチレン基、好ましくはメチレン基であり、nが0であり、Rが-(R5a-O(C=O)-R5bであり(ただし、R5aはメチレン基であり、sは1であり、R5bは炭素数2~20のフッ素で置換されていてもよい炭化水素基である)、q1が0または1、好ましくは0である。
【0072】
1つの実施形態において、式(I)中、Rが水素原子またはメチル基であり、XがOであり、Xがメチレン基またはエチレン基、好ましくはメチレン基であり、nが0であり、Rが炭素数2~20のフッ素で置換されていてもよい炭化水素基であり、q1が0または1、好ましくは0である。
【0073】
【化8】
(式中、
は、水素原子またはメチル基を表し、
10は、炭素数4~20の炭化水素基、-O-R10bまたは-R10a-O-R10b、-R10a-O(C=O)-R10b、-R10a-(C=O)O-R10bもしくは-R10a-(C=O)-R10b(ここで、R10aは、炭素数1~4のアルキレン基を表し、R10bは、炭素数2~20の炭化水素基を表す)で示される構造を表し、
ただし、
10の基に含まれる炭素数の合計は、4以上であり、
10またはR10bで規定される炭化水素基は、ヘテロ原子を有していてもよい。)
【0074】
式(V)に関して、R10またはR10bで規定される炭化水素基はそれぞれ、好ましくは炭素数4~12、より好ましくは炭素数4~10の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)である。これらの炭化水素基はそれぞれ、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状構造を含んでもよい。これらの炭化水素基が末端疎水性基として機能することにより、相溶化モノマーがシロキサンモノマーに対して親和性を発揮し得ると考えられる。
【0075】
10またはR10bで規定される炭化水素基の具体例としては、RまたはR5bで規定される炭化水素基の具体例と同じもの(ただし、炭素原子を4つ以上有するもの)を例示できる。
【0076】
10aで規定されるアルキレン基は、好ましくはメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基、ブチレン基であり、より好ましくはメチレン基またはエチレン基である。
【0077】
10またはR10bで規定される炭化水素基が有し得るヘテロ原子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば、フッ素等のハロゲン等が挙げられる。1つの実施形態において、R10またはR10bで規定される炭化水素基は、フルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基であり得る。
【0078】
【化9】
(式中、
11は、水素原子またはメチル基を表し、
は、OまたはNR14を表し(ここで、R14は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す)、
12は、炭素数2~14のアルキレン基を表し、
は、単結合、Oまたは以下の式(VII)~(IX)で示される構造であり
【化10】
(ここで、R15aおよびR15bはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す)、
13は、炭素数2~20の炭化水素基を表し、
ただし、
がNHでないとき、Xはウレタン結合(-NHCOO-)または尿素結合(-NHCONH-)を含む構造であり、
12、R13、R14、R15aおよびR15bはそれぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい。)
【0079】
式(VI)に関して、R12で規定されるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状構造を含んでもよい。R12は、好ましくは炭素数2~6のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
【0080】
13で規定される炭化水素基は、好ましくは炭素数2~12、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数4~10の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)である。炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状構造を含んでもよい。炭化水素基が末端疎水性基として機能することにより、相溶化モノマーがシロキサンモノマーに対して親和性を発揮し得ると考えられる。
【0081】
13で規定される炭化水素基の具体例としては、RまたはR5bで規定される炭化水素基の具体例と同じものを例示できる。
【0082】
14、R15aおよびR15bで規定されるアルキル基の具体例としては、メチル基またはエチル基が挙げられる。
【0083】
12、R13、R14、R15aおよびR15bが有し得るヘテロ原子としては、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されず、例えば、フッ素等のハロゲンが挙げられる。1つの実施形態において、R12、R13、R14、R15aまたはR15bは、フルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基であり得る。
【0084】
別の実施形態において、相溶化モノマーは、(メタ)アクリロイル基と、4つ以上の炭素原子を含み、少なくとも1つの水素原子が水素結合性プロトン含有基に置換されている脂環を有する。当該脂環としては、好ましくは炭素数5~20、より好ましくは炭素数6~15、さらに好ましくは炭素数8~12のものが挙げられ、橋掛け構造を有するものであってもよい。当該実施形態における相溶化モノマーの具体例としては、1つ以上のヒドロキシル基で置換された有橋脂環基(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基等)を有する(メタ)アクリレート、より具体的には、ヒドロキシ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、ジヒドロキシ(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン等が好ましく例示される。
【0085】
相溶化モノマーの配合割合(2種以上の相溶化モノマーを用いる場合はその合計配合割合)は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば1重量%~40重量%、好ましくは5重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%とすることができる。相溶化モノマーの配合割合が当該範囲内であれば、高い酸素透過性を維持しつつ、優れた透明性と防汚性とを有するポリマー材料が得られ得る。
【0086】
A-1-3-3.機能性モノマー
機能性モノマーは、ポリマー材料に所定の機能を付与することを目的として、必要に応じて添加される。機能性モノマーとしては、重合性色素、重合性紫外線吸収剤、重合性紫外線吸収性色素等が挙げられる。
【0087】
重合性色素の具体例としては、例えば、アゾ系重合性色素、アントラキノン系重合性色素、ニトロ系重合性色素、フタロシアニン系重合性色素等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0088】
重合性紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤、サリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤、2-シアノ-3-フェニル-3-(3’-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
重合性紫外線吸収性色素の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン系重合性紫外線吸収色素、安息香酸系重合性紫外線吸収色素等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0090】
機能性モノマーの配合割合は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば0.001重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~3重量%である。
【0091】
A-1-3-4.他の共重合性モノマー
他の共重合性モノマーとしては、目的に応じて、任意の適切なモノマーが用いられ得る。例えば、アルキル基の炭素数が2~5のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。他の共重合性モノマーの配合割合は、重合性組成物中における全モノマー成分および存在する場合の親水性ポリマーの合計配合量に対して、例えば0.001重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~3重量%である。
【0092】
A-2.親水性ポリマー
親水性ポリマーは、代表的には、重合性基を有さない非重合性成分である。親水性ポリマーの存在下で上記モノマー成分を重合させることにより、上記モノマー成分由来の構造単位を含むポリマーと親水性ポリマーとが高度に複合化し、表面親水性が増大したポリマー材料が得られ得る。
【0093】
親水性ポリマーとしては、ポリマー材料に表面親水性を付与し得る任意の適切なポリマーが用いられ得る。例えば、ポリビニルアミド(例えば、ポリビニルラクタム)、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム等のポリマーを親水性ポリマーとして用いることができる。なかでも、主鎖または側鎖に環状構造、例えば環状アミド構造または環状イミド構造を含むポリマーが好ましく用いられ得る。親水性ポリマーは2種以上のモノマーからなるランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体でもよい。また、親水性ポリマーは、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
親水性ポリマーの具体例としては、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ-N-ビニル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドンおよびポリ-N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ-N-N-ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリ-2-エチル・オキサゾリン、ヘパリン・ポリサッカライド、ポリサッカライド、および、これらのコポリマーが挙げられる。なかでも、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等が好ましく用いられ得る。
【0095】
親水性ポリマーの重量平均分子量は、例えば100,000以上であり、好ましくは150,000~2,000,000、より好ましくは300,000~1,800,000、さらに好ましくは500,000~1,500,000であってよい。
【0096】
親水性ポリマーのK値は、例えば30~150、好ましくは60~120、より好ましくは90~120であってよい。ここでK値は、第16改正日本薬局方中の粘度測定法第1法<2.53>により粘度を測定し、薬局方記載の「K値」の欄記載の方法に従ってFikentscherの式により求めることができる。
【0097】
重合性組成物中における親水性ポリマーの配合割合は、重合性組成物中における全モノマー成分および親水性ポリマーの合計配合量に対して、代表的には1重量%~30重量%、好ましくは3重量%~25重量%、より好ましくは4重量%~20重量%とすることができる。親水性ポリマーの配合量が当該範囲内であれば、高い含水率を有し、表面親水性に優れたポリマー材料が得られ得る。
【0098】
A-3.添加剤
添加剤としては、目的に応じて、任意の適切な添加剤が選択され得る。添加剤としては、例えば、重合開始剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0099】
重合開始剤は、重合方法に応じて適切に選択される。加熱による重合に用いられる熱重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0100】
重合性組成物中における熱重合開始剤の配合割合は、重合性組成物中における全成分(ただし、有機溶媒を除く)に対して、好ましくは0.001重量%~3重量%、より好ましくは0.01重量%~2重量%である。
【0101】
光照射による重合に用いられる光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(HMPPO)、p-イソプロピル-α-ヒドロキシイソブチルフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、N,N-テトラエチル-4,4-ジアミノベンゾフェノン等のフェノン系光重合開始剤;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム;2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2-エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、光重合開始剤と共に光増感剤を用いてもよい。
【0102】
重合性組成物中における光重合開始剤および光増感剤の配合割合は、重合性組成物中における全成分(ただし、有機溶媒を除く)に対して、好ましくは0.001重量%~2重量%、より好ましくは0.01重量%~1重量%である。
【0103】
上記有機溶媒は、極性が高い水溶性有機溶媒であってもよく、極性が低い非水溶性有機溶媒であってもよい。水溶性有機溶媒としては、炭素数1~4のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等を用いることができる。水溶性有機溶媒を用いることにより、モノマー成分相互あるいは親水性ポリマーとモノマー成分との相溶性が向上し得る。また、水への浸漬により、ポリマー材料から容易に水溶性有機溶媒をのぞくことができる。
【0104】
非水溶性有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、炭素数6以上のアルコール等を用いることができる。非水溶性有機溶媒を用いることにより、モノマー成分相互あるいは親水性ポリマーとモノマー成分との相溶性が向上し得る。また、重合性組成物に添加した際、水溶性有機溶媒を用いた場合よりも重合性組成物の動粘度が低下するため、取り扱いを容易にすることができる。
【0105】
重合性組成物中における有機溶媒の配合量は、重合性組成物中における全成分(有機溶媒を含む)に対して、例えば50重量%以下、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下であり得る。
【0106】
上記以外の他の添加剤としては、眼用レンズ用途に従来用いられている添加剤を用いることができる。例えば、清涼化剤、粘稠化剤、界面活性剤および非重合性の色素、紫外線吸収剤または紫外線吸収性色素等が挙げられる。
【0107】
重合性組成物中における上記他の添加剤の配合割合は、重合性組成物中における全成分(ただし、有機溶媒を除く)に対して、例えば0.001重量%~5重量%、好ましくは0.005重量%~3重量%とすることができる。
【0108】
B.重合方法
上記ポリマー材料は、例えば、上記各成分を含有する重合性組成物を加熱および/または光(紫外線および/または可視光)照射し、当該重合性組成物中の各モノマー成分を重合させることによって得ることができる。また、光照射に替えて電子線照射による重合によっても得ることができる。
【0109】
重合方法としては、塊状重合法または溶液重合法が用いられ得る。塊状重合法においては、モノマー成分の一部が未重合のまま残留する場合がある。また溶液重合法においては、反応に関与しない溶媒が得られたポリマー内に残留し得る。医療機器であるコンタクトレンズ等の製造においては、これら残留物を極力減量させるべく、水または有機溶媒またはこれらの混合溶液に、得られたポリマー材料を浸漬し、好ましくはこれを繰り返すことによって、これら残留物を溶出させてポリマー材料から除く処理が施され得る。
【0110】
上記ポリマー材料がコンタクトレンズ用途等である場合、上記重合性組成物を鋳型法にて反応させることにより所望の形状(例えば、半球面形状)に成形することができる。鋳型法にて重合性組成物を加熱して重合させる場合には、所望の眼用レンズ用材料の形状に対応した鋳型内に、上記重合性組成物を充填し、この鋳型を徐々に加熱する。
【0111】
鋳型内の重合性組成物を加熱する際の加熱温度および加熱時間は、重合性組成物の組成等に応じて適切に設定される。加熱温度は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、より好ましくは60℃以上140℃以下である。また、鋳型内の重合性組成物を加熱する際の加熱時間は、好ましくは10分間以上120分間以下、より好ましくは20分間以上60分間以下である。
【0112】
鋳型法において、光照射により重合性組成物を重合させる場合には、所望の眼用レンズの形状に対応した鋳型内に、上記重合性組成物を充填した後、この鋳型に光を照射する。光照射による重合に用いられる鋳型の材質は、重合に必要な光を透過し得る材質である限り特に限定されるものではない。
【0113】
鋳型内の重合性組成物に照射する光の波長は、使用する光重合開始剤の種類等に応じて適切に設定される。光照度および照射時間は、重合性組成物の組成等に応じて適切に設定される。光照度は、好ましくは0.1mW/cm~100mW/cm以下である。照射時間は、好ましくは1分以上である。異なる照度の光を段階的に照射してもよい。
【0114】
上記鋳型法での重合により、所望の形状を有するポリマー材料が得られる。得られた成形体としてのポリマー材料には、必要に応じて切削加工、研磨加工等の機械的加工を施してもよい。切削は、ポリマー材料の一方または両方の面の全面にわたって行ってもよいし、ポリマー材料の一方の面または両方の面の一部に対して行ってもよい。
【0115】
上記ポリマー材料には、表面改質を目的として、低温プラズマ処理、大気圧プラズマ、コロナ放電等の表面改質処理を施すことができる。
【0116】
C.ポリマー材料の特性
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料のヤング率は、好ましくは0.3MPa~2.3MPa、より好ましくは0.3MPa~1.2MPaである。このようなヤング率を有するポリマー材料を用いることにより、コンタクトレンズに加工した際の装用感および取扱い性に優れた眼用レンズが得られ得る。
【0117】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料の応力緩和率は、好ましくは10%~40%、より好ましくは10%~30%である。このような応力緩和率を有するポリマー材料を用いることにより、コンタクトレンズに加工した際の装用感および取扱い性に優れた眼用レンズが得られ得る。
【0118】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料の酸素透過係数(Dk値)は、好ましくは20Barrer以上、より好ましくは30Barrer以上、さらに好ましくは50Barrer~150Barrerである。
【0119】
本発明の1つの実施形態におけるポリマー材料の含水率は、好ましくは11重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは30重量%~70重量%である。ポリマー材料の含水率を11重量%以上とすることにより、得られるポリマー材料をハイドロゲルとすることができ、コンタクトレンズに加工した際の装用感を向上することができ、強度、酸素透過性、表面親水性をバランスよく設定することができる。
【実施例
【0120】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0121】
[使用成分]
以下の実施例および比較例で用いられる使用成分の略称の意味を以下に示す。
<シロキサンモノマー>
・AA-PDMS:以下に示す構造を有する重合性化合物
【化11】
・MAUS:以下に示す構造を有する重合性化合物(式中、n=約40)
【化12】
・SiGMA:(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(構造を以下に示す)
【化13】
<架橋性モノマー>
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート(HLB:7.43)
・TEGMA:テトラエチレングリコールメタクリレート(HLB:8.42)
・PEGDMA(n=6):ヘキサエチレングリコールジメタクリレート(HLB:9.08)
・PEGDMA(n=9):ポリエチレングリコールジメタクリレート(EO繰り返し数:9、HLB:10.07、新中村化学工業社製、「NKエステル9G」)
・PEGDMA(n=14):ポリエチレングリコールジメタクリレート(EO繰り返し数:14、HLB:11.72、新中村化学工業社製、「NKエステル14G」)
・PEGDMA(n=23):ポリエチレングリコールジメタクリレート(EO繰り返し数:23、HLB:14.69、新中村化学工業社製、「NKエステル23G」)
・9PG(n=7):ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PO繰り返し数:7、HLB:6.05、新中村化学工業社製、「NKエステル9PG」)
・25PDC:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジメタクリレート(EO繰り返し数:8、PO繰り返し数:9、AO繰り返し構造:EO-PO-EOのブロックタイプ、HLB:8.39、日油社製、「25PDC-900B」)
・40PDC:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジメタクリレート(EO繰り返し数:15、PO繰り返し数:18、AO繰り返し構造:EO-PO-EOのブロックタイプ、HLB:9.35、日油社製、「40PDC-1700B」)
・AMA:アリルメタクリレート
<相溶化モノマー>
・EH(OH)MA:以下に示す構造を有する重合性化合物(20℃の水に対する溶解度:0.01g/mL未満)
【化14】
<親水性モノマー>
・DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・N-VP:N-ビニル-2-ピロリドン
・2-MTA:メトキシエチルアクリレート
<機能性モノマー>
・HMEPBT:ベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤(2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)
・RB246:アントラキノン系重合性色素
<親水性ポリマー>
・PVP K-90:ポリビニルピロリドン(Mw=1,000,000~1,500,000)
<添加剤>
・TPO:開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド)
・IPA:イソプロピルアルコール
【0122】
[合成例1:EH(OH)MAの調製]
1)褐色ナスフラスコにエチルヘキシルグリシジルエーテル、メタクリル酸、テトラブチルアンモニウムブロマイド、p-メトキシフェノールを加えて溶解させ、ジムロート冷却器を装着し、オイルバス中90℃にて一晩撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻し、ヘキサンに溶解させ、分液ロートに移した。
3)1M炭酸水素ナトリウム水溶液でヘキサン層を洗浄した。
4)蒸留水でヘキサン層を洗浄した。
5)飽和食塩水でヘキサン層を洗浄した。
6)ヘキサン層を回収し、硫酸ナトリウムを適量加えて乾燥し、しばらく放置した。
7)ろ過することにより、硫酸ナトリウムを除去した。
8)ヘキサン層を減圧濃縮し、わずかに黄みをおびた透明液体を得た。H NMR(CDCl,400MHz)およびガスクロマトグラフを測定し、所望の化合物が得られたことを確認した。
【0123】
[合成例2:ヘキサエチレングリコールジメタクリレートの調製]
1)褐色ナスフラスコに、ヘキサエチレングリコール、メタクリル酸を加え溶解させ、硫酸を少量加えたのち、オイルバス100℃にて4時間撹拌した。
2)反応溶液を室温に戻し、トルエン・ヘキサン混合溶媒に溶解させ、分液ロートに移した。
3)炭酸水素ナトリウム水溶液で有機層を洗浄した。
4)蒸留水で有機層を洗浄した。
5)飽和食塩水で有機層を洗浄した。
6)有機層を回収し、硫酸ナトリウムを適量加えて乾燥し、しばらく放置した。
7)ろ過することにより、硫酸ナトリウムを除去した。
8)有機層を減圧濃縮し、無色透明液体を得た。H NMR(CDCl,400MHz)およびガスクロマトグラフを測定し、所望の化合物が得られたことを確認した。
【0124】
[実施例1-A]
シロキサンモノマーとしてAA-PDMSを30重量部、相溶化モノマーとしてEH(OH)MAを25.5重量部、親水性モノマーとしてDMAAを26重量部およびHEMAを5重量部、架橋性モノマーとしてPEGDMA(E=6)を3.6重量部、重合性紫外線吸収剤としてHMEPBTを1.8重量部、重合性色素としてRB246を0.01重量部、親水性ポリマーとしてPVP K-90(BASF社製)を7重量部、重合開始剤としてTPOを0.4重量部、および、溶媒としてIPAを20重量部混合して、重合性組成物を調製した。得られた重合性組成物を、コンタクトレンズ形状を有する鋳型(ポリプロピレン製、直径14.2mmおよび厚さ0.08mmのコンタクトレンズに対応)内に注入した。次いで、室温にて、この鋳型にLED光を照射して光重合を行った。重合後、鋳型からコンタクトレンズ形状のポリマー材料を取り出した。これにより、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを得た。
【0125】
[実施例1-B~4-A、比較例1-A~3-B]
表1~表4に記載の組成となるように各成分を混合して重合性組成物を調製したこと以外は、実施例1-Aと同様にしてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを得た。
【0126】


【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】
【0130】
上記実施例および比較例で得られたコンタクトレンズを蒸留水に浸漬し平衡となるまで膨潤させ、pH7.5リン酸緩衝液に置換し、平衡となるまで膨潤させた。その後、同量の新たな当該リン酸緩衝液に置換し、121℃で20分間オートクレーブ滅菌した後、下記の特性評価を行った。ただし、酸素透過係数の測定においては、コンタクトレンズ形状を有する鋳型の代わりに、平均厚みが約0.3mmとなるようなプレート型試料が得られるPP製鋳型を用いたこと以外は、上記と同様に重合、水和処理および滅菌処理を行い、直径14.0mmの円形に加工したプレート型サンプルを用いた。評価結果を図1に示す。
【0131】
≪脂質付着性評価≫
1)常温で固体の人工脂質(製品名「ファーマゾール」)を60℃に加熱して融解させ、ウェルに1.7mL/レンズ1枚となるように入れた。
2)コンタクトレンズ表面の水分を拭き取り、各ウェルへ入れた後60℃の乾燥器で1h放置した。
3)コンタクトレンズをウェルから取出し、ビーカーに入れたコンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)中で濯いだ後、コンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)であるいは熱水で片面につき20回、両面こすり洗いした。
4)マルチウェルプレートの各ウェルにコンタクトレンズ洗浄液(メニコン社製、製品名「エピカコールド」)とコンタクトレンズを入れ、10℃で4h放置した。その後、コンタクトレンズをウェルから取り出してレンズをこすり洗いし、さらにレンズを一晩静置した。
5)コンタクトレンズをウェルから取り出してさらにレンズをこすり洗いした後、肉眼で外観を確認し、以下の判定基準に基づいて評価した。また、各レンズの顕微鏡写真を図1示す。
[判定基準]
0:ほとんど白く観察されない
1:わずかに一部分が白く観察される
2:全体の約50%が白く観察される
3:レンズがほぼ全体にわたって白く観察されるが、所々に濁度の薄い部分がある
4:レンズが全体にわたって白く観察される
【0132】
≪引張弾性率(ヤング率)の測定≫
作製したコンタクトレンズを打ち抜いて、伸張部分の幅約1.8mm、厚み約0.1mmのダンベル形状のサンプルを作製し、試験サンプルとした。島津製作所社製、島津精密万能試験機オートグラフAG-IS MS型を用いて、20℃生理食塩水中にて引張試験を実施し、応力―伸び曲線から引張弾性率としてヤング率(MPa)を算出した。引張速度は100mm/分とした。
【0133】
≪応力緩和率の測定≫
引張弾性率測定と同様の測定機器および図2に示すような治具を用いて応力緩和率を測定した。具体的には、作製したコンタクトレンズCの中心部を生理食塩水中にて直径約1.6mmの先端部PTを備える圧子Pを用いて、0.1Nの試験力で押し込み、1分間ストローク保持後の応力の変化から応力緩和率(%)を算出した。
【0134】
図1に示されるとおり、実施例のコンタクトレンズは、比較例のコンタクトレンズに比べて脂質の付着が抑制されている。また、実施例のコンタクトレンズは、コンタクトレンズとして好ましいヤング率および応力緩和率を有し、取扱性および装用感に優れ得ることがわかる。
【0135】
≪含水率測定≫
実施例1-Cで得られたコンタクトレンズに関して、含水率を測定した。
具体的には、20℃のpH7.5リン酸緩衝液中で調節したコンタクトレンズの表面の水分を軽く拭き取り、平衡含水状態での質量(W(g))を測定した。その後、該レンズを105℃に設定した乾燥器にて乾燥させた後、放冷した状態での質量(W(g))を測定した。これらの測定値WおよびWを用い、以下の式に従って含水率(質量%)を算出した。その結果、実施例1-Cで得られたコンタクトレンズの含水率は37%であった。
含水率(質量%)={(W-W)/W}×100
【0136】
≪酸素透過係数(Dk値)の測定≫
実施例1-Cで得られた直径14.0mmの円形のプレート型サンプルを測定試料としてDk値を測定した。
具体的には、リファレンススタンダードとして「2WEEKメニコン プレミオ」(メニコン社製)の素材で同様のプレート型サンプルを作製し、このDk値を129とした。
測定試料を電極にセットし、製科研式フィルム酸素透過率計(理化精機工業(株)製)を用い、35℃の生理食塩水中にて窒素バブリングして平衡状態となったときの電流値をゼロとして設定した。次いで、酸素バブリングして平衡状態になったときの電流値を記録した。これをリファレンススタンダードに対しても同様に実施した。下記式に従ってレンズの酸素透過係数を算出した。なお、酸素透過係数の単位は(×10-11(cm/sec)・(mLO/(mL×mmHg)))=Barrer)である。その結果、測定試料のDk値は78Barrerであった。
Dk値=R×(IS/IR)×(TS/TR)×(PR/PS)
ここで、上記式中の記号の意味は、以下の通りである。
R:リファレンススタンダードのDk値(129)
IS:測定試料の電流値(μA)
IR:リファレンススタンダードの電流値(μA)
TS:測定試料の平均厚み(mm)
TR:リファレンススタンダードの平均厚み(mm)
PS:測定試料測定時の大気圧(mmHg)
PR:リファレンススタンダード測定時の大気圧(mmHg)
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の眼用レンズは、例えば、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜オンレイ等の眼用レンズに好適に用いられる。

図1
図2