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特許7562683炭化ケイ素から不純物を分離する方法、ならびに温度処理および精製された炭化ケイ素粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】炭化ケイ素から不純物を分離する方法、ならびに温度処理および精製された炭化ケイ素粉末
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/956 20170101AFI20240930BHJP
   C04B 35/565 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C01B32/956
C04B35/565
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022546696
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021052173
(87)【国際公開番号】W WO2021152134
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】102020102512.2
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】522304741
【氏名又は名称】イー・エス・ケイ-エス・アイ・シー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】ESK-SIC GmbH
【住所又は居所原語表記】Guenter-Wiebke-Strasse 1, 50226 Frechen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク アードラー
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ハイマー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ハウスマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル クリーツ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン レーテル
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ガーベス
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-351614(JP,A)
【文献】特開2000-169246(JP,A)
【文献】特開2012-188299(JP,A)
【文献】特開2011-037675(JP,A)
【文献】特開2014-047105(JP,A)
【文献】特開2010-173916(JP,A)
【文献】特開昭62-027316(JP,A)
【文献】特開昭58-009807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C04B 35/565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素から不純物を分離する方法であって、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.1質量%および金属ケイ素0.1質量%の最低含有量を有する粉末状SiC廃棄物を、真空または非酸化性雰囲気下で1400~2600℃の温度で温度処理に供し、冷却し、機械的衝撃の印加によって機械的に処理し、粒子径、粒子形状、粒子密度ならびに/または粒子の物理的および/もしくは化学的表面特性に応じて物理的に分離し、次いで、前記物理的に分離されたSiC粉末を2つのフラクションに分割し、そのうち一方のフラクションにおいて、不純物の質量は、他方のフラクションの少なくとも2倍である、前記方法。
【請求項2】
一方のフラクションにおいて、不純物の質量は、他方のフラクションの少なくとも10倍、有利には少なくとも20倍である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記粉末状SiC廃棄物は、少なくとも75質量%のSiC、有利には80質量%のSiC、さらに有利には85質量%のSiC、さらに有利には90質量%のSiCを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~500μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
レーザ回折法により測定された平均粒度d50が>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
レーザ回折法により測定された平均粒度d50が>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物を、1400~2000℃未満の温度で温度処理に供する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.5~5.0質量%および金属ケイ素0.5~5.0質量%の含有量を有する粉末状SiC廃棄物を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記SiC廃棄物の前記温度処理を、1400~2000℃未満の温度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記SiC廃棄物の前記温度処理を、2000~2600℃の温度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記加熱段階での真空または非酸化性雰囲気下での温度処理を、1200℃~1400℃未満および1400℃~1800℃の温度範囲で8K/分以下の加熱速度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記加熱段階での真空または非酸化性雰囲気下での温度処理を、1800℃超で5K/分以下の加熱速度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記真空または非酸化性雰囲気下での温度処理を、最高温度での保持時間を10分~300分として行う、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記非酸化性雰囲気下での温度処理を、非酸化性ガスの量を0.5~30 l/hとして行う、請求項1または10記載の方法。
【請求項14】
前記真空または非酸化性雰囲気下での温度処理を、ガス状反応生成物の排出下に行う、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記粉末状SiCの冷却を、0.1~100K/分の冷却速度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記粉末状SiCの冷却を、1200℃~800℃の温度範囲で0.5~10K/分の冷却速度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記再生された粉末状SiCの機械的処理を、混合、粉砕、さらに有利には自己粉砕によって、または渦電流および/もしくは超音波を用いることによって行う、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記機械的処理を、0.1~5MJ/kgのエネルギーを投入して行う、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記粒子径および/または粒子形状に応じた分離を、篩い分け、選別および/またはサイクロンプロセスによって行う、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記分離を、前記粒子密度に関する重力の作用により、浮選、沈降、選別、遠心分離および/もしくはサイクロンプロセスを用いて行うか、または前記分離を、前記粒子密度に応じて浮遊および/もしくはサイクロンプロセスによって行う、請求項1記載の方法。
【請求項21】
少なくとも95質量%の炭化ケイ素を含むフラクションに分離する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
少なくとも98質量%の炭化ケイ素を含むフラクションに分離する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
少なくとも99質量%の炭化ケイ素を含むフラクションに分離する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
不純物として、実質的に金属性の不純物を分離する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
Siおよび/またはCの形態の不純物を除去するために、炭素、有利にはカーボンブラック、グラファイトおよび/もしくはコークス粉末、ならびに/またはケイ素および/もしくは二酸化ケイ素(SiO)を前記温度処理時に添加することで、実質的に化学量論的なSiCの組成を得る、請求項1記載の方法。
【請求項26】
炭化ケイ素粉末であって、前記粉末は、SiC粉末粒子と、金属混相の形態の実質的に金属性の不純物とを含み、かつ金属不純物を前記炭化ケイ素粉末粒子の平坦なおよび/または凸状の表面上に有し、前記金属不純物は、島状に、または炭化ケイ素粉末粒子間の間隙もしくは繋ぎ目に配置されており、かつ1つ以上の炭化ケイ素粉末粒子と堅固に結合しており、前記不純物の接触角は10°~90°である、前記粉末
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用セラミックの分野に関連し、例えば、研削スラッジのSiC粉末、または製造に起因する炭化ケイ素廃棄物、またはいわゆるSiC焼結スクラップへの適用が可能な、炭化ケイ素から不純物を分離する方法、および温度処理され、次いで精製された炭化ケイ素粉末に関する。
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、その優れた特性(硬度、高温特性、耐薬品性)に基づいて、多くの産業分野で使用されている工業用合成鉱物である。特に重要であるのは、マイクロエレクトロニクス/太陽光発電(ウェハーソーイング)、セラミック製造、軍事技術用の防弾セラミック製造、自動車/環境技術(ディーゼルパティキュレートフィルター)、および機械工学全般における、高品質な表面処理用の研磨材としての、高純度で厳密に分別された特定の超微粒子粉末(0.5~約250μm)の形態での使用である。
【0003】
SiC粉粒体は、特定の原料SiCを粉砕、精製および分別することにより製造される。その過程で、低価値で利用可能性の低いSiCが、大量に、かつ一定量で生成される。
【0004】
そのため、粒体の需要の増加は、常に原料SiCの製造の増加を必要とする。この限りにおいて、原料の量の増加は製造者にとって有利なことではなく、構造的な不足および融通の利かない価格を招く。
【0005】
約120年間にわたって使用されてきた電解合成法、いわゆるアチソン法(独国特許出願公開第76629号明細書、独国特許出願公開第85197号明細書)による原料SiCの製造は、電力および石油(原料石油コークス)の価格、ならびに(粉塵、CO/CO、およびSOの排出量の多さによる)環境コストと関連している。代替的な製造方法は、多くの試みがなされているにもかかわらず、主に経済的な理由から成功しておらず、当面は利用できない。
【0006】
SiCは世界的に入手可能なバルク原料とされているが、戦略的に重要な高品質(HQ)の粒体は、すでにここ数年間不足しており、価格の上昇が記録されている。2008年には、欧州でHQ SiC原料が4~6万t不足すると推定されていた(Silicon Carbide & More #24, 2008, S. 3)。しかし、こうした特定の粒体のさらに大きな問題は、ハイテク用途において個別的な帯域の粒子径が大量に必要とされることである。これらはいずれも、前述した融通の利かない価格に関連して、こうした特定のHQ粒体の価格上昇および供給不足を招く。
【0007】
研磨用途のSiC粉末は、切削性能および粒子径の点で磨耗する。SiCの多くが、散逸過程で失われる。SiCを含む廃棄物が回収可能な場合、物質分離は技術的に極めて困難であり、再処理は経済的に見合わない。
【0008】
全体として、非常に様々な物質により汚染されたSiC粉末が大量に存在する。不純物はその起源によって非常に種類が多く、有機および無機の非金属不純物と無機の金属不純物とからなる。有機不純物には、液体油、ポリエチレングリコール(PEG)、溶媒、潤滑物質などの有機ポリマー残渣(主に炭化水素化合物)のほか、プラスチック磨耗物などの固体ポリマーが含まれる。
【0009】
無機の非金属不純物には、特に遊離の炭素およびケイ素酸化物(主にSiO)、およびCa-Al-Si-O化合物が含まれる。金属不純物には、鉄および鉄合金、ホウ素、バナジウム、アルミニウム、チタン、銅、マンガン、タングステン、クロム、ニッケルおよびそれらの化合物が含まれる。
【0010】
さらに、いわゆる遊離ケイ素(Si遊離)が含まれていてもよく、これは、SiCやSiOにおいて結合していない金属または合金のケイ素を意味すると理解される。SiCの廃棄物は、例えばアチソン法でのSiC製造時に、またはSiC成形部材の屑として発生し、さらなる再処理ステップを経なければ工業的に加工することができない。
【0011】
不純物は、例えば、DIN EN ISO 9286、DIN EN ISO 21068 Part 1-3、およびFEPA規格45-1:2011によるC遊離、Si遊離、SiOおよび鉄などの既知の分析方法によって区別される。不純物の分析には、特にDIN EN 15991といった分光法も用いられる。
【0012】
不純物を分離して精製する方法、すなわち汚染されたSiCのSiC含有濃度を高める方法は、すでに多数が知られている。これらは、物理的プロセスと化学的プロセスとに分けられる。
【0013】
物理的プロセスでは、若干の不純物の密度、粒子径、ならびに例えば磁性や濡れ性などの他の物理的特性の違いが利用される。例えば、磁性を示す鉄不純物は、磁気分離により除去される。粒子径や密度の異なる不純物は、サイクロンプロセスやハイドロサイクロンプロセスにより分離される。密度や濡れ性の異なる不純物は、浮選プロセスにより分離される。
【0014】
化学的プロセスでは、基本的に、溶媒、酸またはアルカリなどの薬品への各不純物の溶解性を利用する。SiCはこのような薬品に対して非常に安定しているため、不純物の溶解には、例えばフッ酸のような非常に攻撃的な薬品も使用可能である。
【0015】
また、熱プロセスを利用して不純物を除去することも可能であり、例えば、大気下で400~800℃の温度で遊離炭素を酸化させることができる。また、SiC合成時に部分的にNaClを添加することで、不要な不純物が高温で塩素と反応して易揮発性の塩化物が形成され、これをSiCから除去することも知られている。しかし、この方法による汚染粉末の後処理は、非常に高コストであり、塩素ガスがプラント設備に攻撃的に作用し、環境にも優しくないため、知られていない。
【0016】
公知の方法の欠点は、SiCから不純物を除去するのに高い労力を要することである。なぜならば、特定の不純物を除去するのに、その都度これに向けた特定のプロセスを用いなければならないためである。このように、可能な限り高純度のSiCを高濃度で得るためには、常に複数のプロセスを組み合わせる必要がある。
【0017】
本発明の課題は、炭化ケイ素から不純物を分離する方法であって、簡便かつ経済的な方法で各種不純物を実質的に完全に、あるいは精製された炭化ケイ素粉末の工業的な再利用が可能となる程度に除去して、簡便かつ低コストの方法で容易に精製可能な、温度処理されたSiC粉末と、工業用途、特にハイテク用途のための、精製された炭化ケイ素粉末とを提供できる方法を提示することである。
【0018】
この課題は、特許請求の範囲に示された本発明によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題であり、本発明は、相互に排他的でない限りAND結合の意味で個々の請求項の組み合わせをも包含する。
【0019】
本発明による炭化ケイ素から不純物を分離する方法では、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.1質量%および金属ケイ素0.1質量%の最低含有量を有する粉末状SiC廃棄物を、真空または非酸化性雰囲気下で1400~2600℃の温度で温度処理に供し、冷却した後、機械的に処理して物理的に分離し、その後、物理的に分離されたSiC粉末を2つのフラクションに分割し、そのうち一方のフラクションにおいて、不純物の質量は、他方のフラクションの少なくとも2倍である。
【0020】
有利には、一方のフラクションにおいて、不純物の質量は、他方のフラクションの少なくとも10倍、有利には少なくとも20倍である。
【0021】
さらに有利には、粉末状SiC廃棄物は、少なくとも75質量%のSiC、有利には80質量%のSiC、さらに有利には85質量%のSiC、さらに有利には90質量%のSiCを含む。
【0022】
同様に有利には、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~500μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物が使用される。
【0023】
また有利には、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物が使用される。
【0024】
また、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物が、1400~<2000℃の温度で温度処理に供されると有利である。
【0025】
同様に、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.5~5.0質量%および金属ケイ素0.5~5.0質量%の含有量を有する粉末状SiC廃棄物が使用される場合に有利である。
【0026】
さらに、SiC廃棄物の温度処理が1400~<2000℃の温度で行われる場合に有利である。
【0027】
また、SiC廃棄物の温度処理が2000~2600℃の温度で行われる場合にも有利である。
【0028】
また、加熱段階での真空または非酸化性雰囲気下での温度処理が、1200℃~<1400℃および1400℃~1800℃の温度範囲で8K/分以下の加熱速度で行われる場合にも有利である。
【0029】
さらに、加熱段階での真空または非酸化性雰囲気下での温度処理が、1800℃超で5K/分以下の加熱速度で行われる場合に有利である。
【0030】
同様に、真空または非酸化性雰囲気下での温度処理が、最高温度での保持時間を10分~300分として行われる場合に有利である。
【0031】
また、非酸化性雰囲気下での温度処理が、非酸化性ガスの量を0.5~30 l/hとして行われる場合にも有利である。
【0032】
有利には、真空または非酸化性雰囲気下での温度処理は、ガス状反応生成物の排出下に行われる。
【0033】
また有利には、粉末状SiCの冷却は、0.1~100K/分の冷却速度で行われる。
【0034】
さらに有利には、粉末状SiCの冷却は、1200℃~800℃の温度範囲で0.5~10K/分の冷却速度で行われる。
【0035】
同様に有利には、再生された粉末状SiCの機械的処理は、機械的衝撃の印加によって、有利には混合、粉砕、さらに有利には自己粉砕によって、または渦電流および/もしくは超音波を用いることによって行われる。
【0036】
また、機械的処理が0.1~5MJ/kgのエネルギーを投入して行われる場合に有利である。
【0037】
さらに、再生された粉末状SiCの物理的分離が、粒子径、粒子形状、粒子密度ならびに/または粒子の物理的および/もしくは化学的表面特性に応じて行われる場合に有利である。
【0038】
同様に、粒子径および/または粒子形状に応じた分離が、篩い分け、選別および/またはサイクロンプロセスによって行われる場合に有利である。
【0039】
また、分離が、粒子密度に関する重力の作用により、浮選、沈降、選別、遠心分離および/もしくはサイクロンプロセスを用いて行われるか、または粒子密度に応じて浮選および/もしくはサイクロンプロセスによって行われる場合にも有利である。
【0040】
また、少なくとも95質量%、有利には少なくとも98質量%、さらに有利には少なくとも99質量%の炭化ケイ素を含むフラクションに分離される場合にも有利である。
【0041】
さらに、不純物として、実質的に金属性の不純物が分離される場合に有利である。
【0042】
同様に、Siおよび/またはCの形態の不純物を除去するために、炭素、有利にはカーボンブラック、グラファイトおよび/もしくはコークス粉末、ならびに/またはケイ素および/もしくは二酸化ケイ素(SiO)を温度処理時に添加することで、可能な限り化学量論的なSiCの組成が得られる場合に有利である。
【0043】
本発明による温度処理された炭化ケイ素粉末は、SiC粉末粒子と、金属混相の形態の実質的に金属性の不純物とを含み、かつ金属不純物を炭化ケイ素粉末粒子の平坦なおよび/または凸状の表面上に有し、これらの金属不純物は、島状に、または炭化ケイ素粉末粒子間の間隙もしくは繋ぎ目に配置されており、かつ1つ以上の炭化ケイ素粉末粒子と堅固に結合しており、不純物の接触角は10°~90°である。
【0044】
さらに、本発明による精製された炭化ケイ素粉末は、少なくとも98質量%のSiCと最大2質量%の実質的に金属性の不純物とを含み、不純物は、実質的に炭化ケイ素粉末粒子の表面上に配置されている。
【0045】
有利には、精製された炭化ケイ素粉末は、少なくとも99質量%のSiCを含む。
【0046】
同様に、有利には、精製されたSiC粉末において、不純物は、炭化ケイ素粉末粒子の表面上に金属混相の島状溶融物の形態で存在し、これらの島状溶融物は、炭化ケイ素粉末粒子の機械的処理後に粒子の表面と堅固に結合している。
【0047】
さらに有利には、金属不純物は、炭化ケイ素の一次粒子の場合には表面上に配置されており、炭化ケイ素の二次粒子の場合には粒子の表面上および/または繋ぎ目に配置されている。
【0048】
また有利には、炭化ケイ素粉末粒子の表面上の不純物は、実質的に、炭化ケイ素粉末粒子の表面の凸状に形成された部分に配置されている。
【0049】
本発明による解決策により、炭化ケイ素から様々な不純物を簡便かつ経済的な方法で実質的に完全に、あるいは精製された炭化ケイ素粉末の工業的な再利用が可能となる程度に除去することが初めて可能となる。同様に、本発明による解決策により、簡便かつ低コストの方法で容易に精製可能な温度処理されたSiC粉末を提示するとともに、工業的に、特にハイテク用途のために再利用が可能な、精製された炭化ケイ素粉末を提供することが初めて可能となる。
【0050】
これは、炭化ケイ素から不純物を分離する方法であって、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.1質量%および金属ケイ素0.1質量%の最低含有量を有する粉末状SiC廃棄物を、真空または非酸化性雰囲気下で1400~2600℃の温度で温度処理に供し、冷却した後、機械的に処理して物理的に分離し、そのうち一方のフラクション(「汚染されたフラクション」)において、不純物の質量は、他方のフラクション(「清浄なフラクション」)の少なくとも2倍である方法により達成される。
【0051】
したがって、本発明によれば、「清浄なフラクション」と「汚染されたフラクション」とが存在する。
【0052】
本発明において、フラクションとは、物理的分離により生成された、不純物の含有量に応じたSiC粉末部分を意味すると理解される。ここで、物理的分離は、例えば粒子径、密度、質量、濃度などの様々な物理的特性に応じて行うことができる。
【0053】
例えば、粉末状SiC廃棄物を粒子径に応じて物理的に分離した後、例えば3種類、4種類または5種類の粒子径の粉末群を得ることができる。次いで、粉末群の不純物に関する細分化および組成に応じて、これらは2つのフラクション、すなわち清浄なフラクションと汚染されたフラクションとに割り当てられる。不純物に関する各粉末群の、本発明による2つのフラクションへの分離は、当業者であれば、数回の分別実験および含有物分析により容易に実施可能であり、これにより、本発明によるパラメータを有する「清浄な」フラクションと「汚染された」フラクションとへの分離が達成される。
【0054】
有利には、一方のフラクションである「汚染された」フラクションにおける不純物の質量は、他方のフラクションである「清浄な」フラクションの10倍、さらに有利には20倍である。有利には、2つのフラクションの総質量に対して、「清浄な」フラクションは、60質量%以上、有利には70質量%以上、さらに有利には80質量%以上の質量分率を有する。
【0055】
さらに、本発明において、フラクション中の不純物の質量は、SiC以外の全成分の質量濃度と理解される。
【0056】
SiC粉末の品質特性として、まずSiCの濃度が用いられ、これはFEPA規格45-1:2011に準拠して求められる。100%までの残分を不純物含有量とする。本発明において不純物とみなされないものは、例えばAlやホウ素など、SiC格子に組み込まれたドープ元素である。これらの不純物は、SiCの大半の用途において不利ではなく、また支障となることもない。
【0057】
本発明によれば、不純物を分離することにより、出発SiC粉末と比較して、「清浄な」フラクションにおいてSiC濃度の増加が達成される。有利には、出発粉末における85%から「清浄な」フラクションにおける95%までのSiC濃度の増加、または出発粉末における96%のSiC濃度から「清浄な」フラクションにおける少なくとも99%のSiC濃度までの増加が達成される。出発材料中の不純物の質量は、「清浄な」フラクション中の不純物の質量の少なくとも3倍~100倍である。
【0058】
本発明による炭化ケイ素から不純物を分離する方法では、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.1質量%および金属ケイ素0.1質量%の最低含有量を有する粉末状SiC廃棄物が出発物質として使用される。
【0059】
ここで、粉末状SiC廃棄物が、少なくとも75質量%のSiC、より良好には80質量%のSiC、さらに良好には85質量%のSiC、または90質量%のSiCを含む場合に有利である。粉末状SiC廃棄物において、SiCの割合は通常はさほど高くないが、粉末状SiC廃棄物を本発明による方法で使用する前に、公知の再処理および均質化プロセスを実施して、これらのプロセスですでに分離可能な不純物を除去してもよい。したがって、本発明による方法の出発材料の質量を全体的に減少させて、不純物の分離が不可能な粉末状SiC廃棄物に限定することができる。
【0060】
さらに、本発明によれば、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~500μm、または>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物を使用することが有利であり得る。
【0061】
本発明による解決策によれば、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が0.5~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含み、かつ鉄0.1質量%および金属ケイ素0.1質量%の最低含有量を有する粉末状SiC廃棄物が使用され、これは有利には、鉄0.5~5.0質量%および金属ケイ素0.5~5.0質量%の含有量を有する。本発明によれば、SiC廃棄物は、鉄、鉄合金または鉄化合物の形態で存在し得る鉄の含有量が少なくとも0.1質量%である必要がある。本発明により存在する少なくとも0.1質量%の金属ケイ素は、遊離ケイ素の形態であってよい。本発明により使用されるSiC廃棄物が、こうした少なくとも0.1質量%の鉄および0.1質量%の金属ケイ素の含有量を当初から有していない場合には、これらの含有量を、鉄、鉄合金、鉄化合物および/または金属ケイ素の添加により実現しなければならない。
【0062】
したがって、SiC廃棄物を本発明による方法で使用する前にその材料組成を分析し、その後の温度処理の際にケイ素、SiO、鉄、鉄含有化合物および/または炭素を添加して、温度処理の最終生成物として可能な限り完全に再生された粉末状SiCを得ることができれば有利である。炭素として、有利には、カーボンブラックおよび/またはコークス粉末を添加することができる。また、SiCの酸化によりSiOが存在する場合もある。
【0063】
遊離炭素が熱処理時にSiOおよび遊離ケイ素と化学量論的に反応してSiCを形成できるように、遊離炭素、SiO、遊離ケイ素および鉄の量が熱処理前に調整されており、その際、この反応に対してはるかに過剰に、遊離ケイ素および鉄が60:40~20:80の質量比で含まれるように遊離ケイ素の量が調整されると特に有利である。その結果、熱処理時に化学的な化合物、特にケイ化鉄が形成されることがあり、これは、20~1400℃の温度範囲で>6×10-6 1/Kの高い線熱膨張係数を有する。このことは、その後の精製にとって極めて重要である。
【0064】
また、遊離ケイ素および鉄が35:65~20:80の質量比で含まれている場合にも特に有利である。この場合、熱処理時に主に準安定なケイ化鉄FeSiが形成され、その膨張係数が非常に高いため、その後の再処理時に非常に優れた精製性が得られる。
【0065】
再生された粉末状炭化ケイ素の製造の出発材料としての粉末状SiC廃棄物は、ルーズなバルク状の粉末として使用することができる。また、製造技術に起因しておよび/または粉末の保管によって存在するような圧縮度の低い粉末も同様に出発物質として使用することができる。粉末状SiC廃棄物がルーズなバルク状で使用されるのではなく、本発明による方法で使用される前にわずかな圧縮力を受ける場合に有利である。特に、0.002~100MPaの圧縮力を加えて粉末を圧縮する場合に有利である。
【0066】
バルクの密度の測定は、バルクの秤量および体積測定によって行われる。粉末の純密度の測定は、例えばガスピクノメトリーによって行われ、組成が既知の場合には、成分の既知の純密度から算出することも可能である。炭化ケイ素の場合、純密度は3.21g/cmである。
【0067】
再生された粉末状炭化ケイ素を製造するためのこれらの粉末状SiC廃棄物は、次いで、真空または非酸化性雰囲気下で1400~2600℃の温度で温度処理に供される。ここで、温度は、有利には2000℃~2600℃である。粉末状SiC廃棄物の熱処理では、有利には1200℃~<1400℃および1400℃~1800℃の温度範囲での加熱時に8K/分以下のより低い加熱速度が適用され、有利には1800℃超の温度では5K/分以下の加熱速度が適用される。
【0068】
本発明において、加熱速度とは、温度範囲の最初と最後との温度差をこの温度範囲での加熱の総時間で除したものと理解される。ただし、各温度範囲において、異なる加熱速度や、さらには異なる保持時間を設定することも可能である。本発明において、保持時間とは、この時間の加熱速度が0K/分であることと理解される。
【0069】
保持時間は、本発明による方法の最高温度で有利には10分~300分であるが、これは、処理される粉末体積および温度にも依存する。さらに、最高温度が低いほど、各最高温度での保持時間が長くなる。
【0070】
1400~<2000℃の範囲の温度は、有利には、レーザ回折法により測定された平均粒度d50が>500~1000μmであるSiCを少なくとも50質量%含む粉末状SiC廃棄物にも好適である。
【0071】
非酸化性雰囲気下での温度処理では、加熱時に非酸化性流動ガスのスループットが平均流量0.5~30 l/分に設定される。特に、加熱時に1200~2000℃の温度範囲で、非酸化性流動ガスのスループットが平均流量0.5~30 l/分に設定される場合に有利である。本発明において、平均流量とは、言及された温度範囲において、この温度範囲の最初から最後までに流されたガスの総量を、この温度範囲における加熱の総時間で除したものと理解される。ここで、各温度範囲において、流動非酸化性ガスの流量を様々に設定することも可能である。流動ガス雰囲気は、正圧または負圧に設定することができ、ここで、負圧は、例えば70000~90000Paであることが好ましい。
【0072】
粉末状SiC廃棄物の本発明による温度処理を行う装置に応じて、方法を異なる様式で実施することができる。通常、温度処理は閉鎖された炉体内で行われ、この炉には耐火容器(るつぼ)内の粉末状SiC廃棄物が導入されて存在している。このような閉鎖された炉体内を真空にするか、または非酸化性ガス雰囲気とする。非酸化性ガス雰囲気の場合、流動ガスは、好ましくは容器および粉末の周囲を可能な限り完全に流れるように、炉体に誘導される。これは、例えば、ガスが炉体の片側で流入して反対側で流出し、流入口と流出口との間に容器を配置することで実現することができる。このガス誘導または真空は、非連続的な温度処理のいわゆるバッチ炉でも、連続的な温度処理の連続炉でも可能である。
【0073】
非酸化性雰囲気としては、アルゴン雰囲気や窒素雰囲気など、残存酸素含有量が<100ppmの工業用保護ガス雰囲気が使用される。ただし、SiCの酸化を生じないため、例えばCOとの混合物も使用可能である。温度処理は、わずかな正圧下でも、真空までの負圧下でも可能である。有利には、熱処理はアルゴン雰囲気下で行われる。熱処理は、バッチ炉においても、連続運転でも可能である。
【0074】
真空または非酸化性雰囲気下での粉末状SiC廃棄物の温度処理は、ガス状反応生成物排出下に行うことができる。この場合、有利には、一酸化炭素(CO)および一酸化ケイ素(SiO)が排出される。有利には、加熱段階でのガス状反応生成物の排出は、好ましくは1200℃~2000℃の温度範囲、特に好ましくは1350℃~1800℃の温度範囲で行われる。
【0075】
本発明による方法は、再生された粉末状炭化ケイ素から不純物を分離することを実現するものである。
【0076】
再生された粉末状炭化ケイ素を製造するためにSiC廃棄物を熱処理する際、生成物の実質的に粉末状の構造は維持される。ここで、炭化ケイ素粉末粒子は、個別化された一次結晶および一次結晶子として、すなわち互いに結合せずに存在するか、あるいは二次結晶子としてわずかに相互貫入した状態で、すなわち相互貫入した個々の一次結晶または一次結晶子の結合体として存在する。結晶子とは、結晶構造が均一であり、その外形が結晶構造を有していない、あるいは一部しか有していない単一粒子と理解される。
【0077】
熱処理後、再生された粉末状炭化ケイ素は冷却される。
【0078】
冷却は、有利には0.1~100K/分の冷却速度で、特に有利には200℃の温度に達するまで行われる。通常、工業プロセスでは、この200℃以上の温度で炉を開放し、粉末を大気中でさらに冷却することができる。最終温度2000~2600℃の温度処理で特に有利であるのは、各最終温度から1800℃まで、10~50K/分の冷却速度で急冷することである。同様に、冷却は、有利には1200℃~800℃の温度範囲で、5~25K/分の冷却速度で行われる。このような冷却速度は、工業的には急速冷却装置の使用によって、例えば、低温の非酸化性ガスを炉内に導入して循環させ、熱交換器を通過させることによって達成することが可能である。
【0079】
本発明によるその後の機械的処理は、有利には機械的衝撃を加えることによって、有利には混合もしくは粉砕によって、または渦電流および/または超音波を用いることによって行われる。粉砕は、有利には、負圧での自己粉砕(粒子間運動)によって行うことができる。
【0080】
さらに有利には、機械的処理は、0.1~5MJ/kgのエネルギーを投入して行われる。
【0081】
機械的に処理されたSiC粉末は、その後、物理的に分離される。その際、再生された粉末状SiCの分離は、粒子径、粒子形状、粒子の密度ならびに/または粒子の物理的および/もしくは化学的表面特性および/もしくは固体特性に応じて行うことができる。粒子径および/または粒子形状に応じた分離は、有利には、篩い分け、選別および/またはサイクロンプロセスによって行うことができる。
【0082】
分離を、粒子密度に関する重力の作用により、浮選、沈降、選別、遠心分離および/もしくはサイクロンプロセスを用いて行うか、または分離を、粒子密度に応じて浮選および/もしくはサイクロンプロセスにより行うことができる。電界強度などにより分離する分離プロセスでは、表面特性を利用することができる。例えば磁性などの電気的材料特性を利用した分離プロセスでは、固体特性を利用することができる。
【0083】
物理的分離の後、得られたSiC粉末は2つのフラクションに分割され、この分割は、不純物の質量に従って行われ、本発明によれば、一方のフラクションでは、不純物の質量が他方のフラクションの少なくとも2倍である。
【0084】
本発明により2つのフラクションに分割することにより、驚くべきことに、一方のフラクションは5質量%未満、有利には2質量%未満、さらに有利には1質量%未満の不純物を有するSiC粉末を有し、他方のフラクションは実質的に残りの全ての不純物を含むことが判明した。ここで、少なくとも1つの「清浄な」フラクションと、より不純物含有量の高い少なくとも1つの「汚染された」フラクションとへの分割は、1つ以上の古典的な分離プロセス、有利には篩い分け、選別または磁気分離などの乾式分別プロセスによって行われる。ここで、プロセスにおける分離のカット数に応じて、精製された清浄なおよび汚染されたフラクションが複数製造される場合もあるが、これらを分割/分別の終わりに合一することで、本発明による2つのフラクションが形成される。
【0085】
合一する前に複数のフラクションに分割/分別することにより、各フラクションで精製係数を決定することができ、フラクションを合一することにより、本発明による方法の最後に、本発明による2つのフラクションの精製係数の差を調整することができる。
【0086】
したがって、本発明による方法により、少なくとも1つのフラクションにおいて少なくとも95質量%、有利には少なくとも98質量%、さらに有利には99質量%の炭化ケイ素が達成される。
【0087】
驚くべきことに、金属不純物は温度処理時に溶融し、その結果、少なくとも部分的にSiC粒子を濡らすことができるため、金属不純物は、冷却後に、隣接するSiC粒子間および複数のSiC粒子間の繋ぎ目でSiC粒子と堅固な結合を形成できることが判明した。金属不純物は、例えば、金属ケイ化物、または三元系金属-Si-C化合物もしくは三元系金属-Si-C合金として、あるいはそれらの混合物、いわゆる金属混相として存在する。
【0088】
驚くべきことに、機械的処理により、金属不純物の剥落または剥離が達成され、それによって、これらの不純物をSiCから分離し、必要に応じてさらなる機械的処理時にさらに破砕することができる。これにより、機械的に処理され、再生された粉末状炭化ケイ素のフラクションにおけるこれらの金属不純物の濃縮が達成される。
【0089】
精製された炭化ケイ素粉末の製造の出発材料としてのSiC廃棄物が炭素を含まない場合には、例えばカーボンブラック、グラファイト粉末またはコークス粉末の形態の炭素粒子を添加することが有利である。このような添加は、有利には、遊離Si含有量および/またはSiOのSi含有量に対して、炭素の質量割合が0.3~0.5倍となるようにすることができる。
【0090】
本発明による方法により、工業的に、特にハイテク用途で再利用可能であるとともに、簡便かつ経済的な方法で高収率にて製造可能である精製されたSiC粉末が製造される。
【0091】
本発明による方法によって精製されたSiC粉末は、その後、化学的精製に供給することができる。
【0092】
本発明によれば、再生された粉末状炭化ケイ素は2つのフラクションに分離され、一方のフラクション中の再生された炭化ケイ素粉末は、最大5質量%、有利には最大2質量%、さらに有利には1質量%未満の不純物を有し、残りの不純物は他方のフラクションに含まれている。
【0093】
本発明による方法の利点は、粉末の機械的処理および分別が、例えば研磨剤として使用されるSiC粉末の再処理にとって公知であり、いずれにせよ使用されている公知の慣用のプロセスで実施できることである。
【0094】
少なくとも98質量%のSiC、有利には99質量%のSiCと、最大2質量%の不純物とを含有する本発明による精製された炭化ケイ素粉末は、依然として炭化ケイ素粉末粒子の表面上に金属不純物の付着残留物を有する。驚くべきことに、本発明による方法の後、SiC粉末粒子の表面上には最大2質量%の不純物しか残留していない。
【0095】
本発明による温度処理の後、驚くべきことに、本発明による機械的処理時に材料を分離するための固有の構造を有するSiC粒子が形成される。これらの構造の特徴は、金属不純物が金属混相の形態で存在することができ、この金属混相が炭化ケイ素粉末粒子の表面上で濃縮されて堆積しており、通常はSiC粉末粒子の表面と非常に堅固に結合しているため、SiC粉末粒子から大多数の不純物、特に金属不純物を2つ以上のフラクションに機械的に分離することが容易に実現できることである。このようなSiC粉末粒子の表面への不純物の付着は、これまで観察されていない。同様に、これらのSiC粉末粒子の表面上に付着した不純物構造体は、比較的単純な機械的分離および/または物理的処理によって非常に高度に除去することができるため、1フラクションに少なくとも98質量%のSiCを含む高純度ないし超高純度のSiC粉末を製造することができることは驚くべきことである。
【0096】
ここで、不純物は、実質的に、炭化ケイ素粉末粒子の表面上に金属混相が島状に堆積し、ほとんどが液滴状に溶融した形態で存在する。本発明による機械的処理および物理的分離の後、なおも残存する不純物は、SiC粉末粒子の表面に堅固に結合している。
【0097】
有利には、本発明によれば、温度処理後の個々の炭化ケイ素粉末粒子の表面上のこれらの不純物は、実質的に、炭化ケイ素粉末粒子の表面の平坦なおよび/または凸状に形成された部分に配置されている。この場合、炭化ケイ素粉末粒子の表面におけるこれらの不純物の接触角は大きく異なるが、通常は10°~90°の範囲である。
【0098】
さらに、不純物が、SiC粉末粒子間に金属混相として配置されており、これらが、一方では個々のSiC粉末粒子の表面の平坦なおよび/または凸状の形態と堅固に結合しており、他方では金属混相として互いに結合しており、結果的に、SiC粉末粒子間の間隙またはSiC粉末粒子間の繋ぎ目が埋められることも可能である。これらの位置および/または粒界では、金属混相が、視覚的に隅肉溶接形状の溶接継目(平溶接継目、へこみ溶接継目、凸溶接継目)を連想させる形状を形成している。
【0099】
本発明による方法の温度処理時に不純物として形成される金属混相は、特に存在する金属のケイ化物または炭化物であることを特徴とする。特に、本方法は、ケイ化鉄であるFeSi(α相)、FeSi(ε相)、FeSi(ζ相またはFeSi)、および特に準安定なFeSi(η相)の製造を対象とする。これらのケイ化物は、20~1400℃の範囲で線熱膨張係数が>6×10-6 1/Kであることが一般的である。これは、炭化ケイ素粉末の粒子表面から比較的容易に分離することができるため、本発明による分離方法の基礎を成すものである。
【0100】
上記のケイ化物の他に、三元系Fe-Si-C化合物もわずかに生成される場合がある。他の、Ti、V、Alなどの金属不純物も、ケイ化物および炭化物に溶解した状態で存在する場合があり、また固溶体を形成する場合がある。
【0101】
驚くべきことに、温度処理されたSiC廃棄物の機械的処理により、SiC粉末粒子の表面およびSiC粉末粒子間の双方で、SiC粉末粒子から不純物が比較的清浄に剥落し、実質的に、金属混相の島状に堆積した液滴状溶融物のみが、炭化ケイ素粉末粒子の平坦なおよび/または凸状に形成された表面上に不純物として残る。島状に堆積した溶融物も完全にまたは部分的に剥落すると、炭化ケイ素粉末粒子の平坦なおよび/または凸状の表面上には、これらの溶融物の断片が堅固に付着したままとなる。堅固に付着した断片の破断箇所は、典型的な貝殻状の断口を有する。
【0102】
本発明により熱処理されたSiC粉末は、SiC粉末粒子と、実質的に金属性の不純物とを含み、これらのSiC粉末は、本発明による機械的処理の前の方が、機械的処理の後に比べて、相互貫入し、かつ金属不純物によって結合された二次結晶子の割合が著しく高い。機械的処理時に、このように相互貫入した二次結晶子が個別化されて一次結晶子となり、付着していた金属不純物の大部分が剥離される。本発明による方法によれば、炭化ケイ素粉末粒子の表面上に島状に堆積した不純物は、SiC粉末粒子と堅固に結合しており、これらの金属混相の平坦なおよび/または凸状のSiC粉末粒子表面に対する接触角は、10~90°である。本発明において、SiC粒子表面に対する金属混相の接触角とは、温度処理時にSiC粒子の固体表面と溶融液状金属混相と周囲のガス雰囲気との相境界において界面張力により生じ(ヤングの式)、溶融物の固化後にも維持される角度を意味する。金属混相が、SiC粒子間の接合部としておよび繋ぎ目の形態で配置されている場合にも、SiC粒子表面と金属混相と周囲の雰囲気との相境界には接触角が存在する。接触角は、好ましくは顕微鏡画像によって、特に好ましくは、熱処理粉末粒子のセラミック組織学/金属組織学的に調製された、相境界を通る断面を生成する研磨片の走査型電子顕微鏡によって生成された画像に対する画像評価によって測定される。
【0103】
本発明により機械的に処理され、精製されたSiC粉末についても、SiC粒子表面上に金属混相およびその断片の形態で残り、堅固に付着している不純物の接触角を測定することができる。破断パターンから、精製されたSiC粉末の金属混相および混相断片の、機械的処理時に破断した表面と、温度処理されたSiC粉末の金属混相の、熱処理時に溶融して生じた表面とを容易に区別することが可能である。機械的に処理され、精製されたSiC粉末の場合には、接触角の測定に際して、溶融した混相とSiC粒子の表面と周囲の雰囲気との相境界における接触角のみを用い、金属混相断片の機械的処理によって生じた破面とSiC粒子と周囲の表面との間の角度は用いない。
【0104】
したがって、このような精製された炭化ケイ素粉末は、不純物が主にSiC粒子から分離して存在している、公知の再生SiC粉末とは異なる。
【0105】
したがって、本発明による精製された炭化ケイ素粉末は、SEM、TEMまたはSEM-EDXなどの光学顕微鏡法および電子顕微鏡法により、公知の再生粉末と区別することができる。
【0106】
同様に、温度処理後のSiC粒子の本発明による機械的処理、特に破砕の後、本発明により処理されたSiC粉末粒子には特徴的な破断箇所および破面が形成されており、これは前述の検査方法によって容易に検出可能である。本発明により形成された不純物のこれらの典型的な破断箇所および破面は、精製された炭化ケイ素粉末の本発明による固有の特徴である。
【0107】
本発明による方法により存在する炭化ケイ素粉末粒子は、ほとんどが個々のSiC粒子の粒界で破壊されているため、粒子の個別化も可能である。
【0108】
本発明による解決策の特に有利な点は、SiC廃棄物中の不純物の量が多いほど、溶融した不純物の除去および明確な分別を良好に達成できることである。
【0109】
以下、いくつかの実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0110】
実施例1
SiC一次破砕の副生成物としてのSiC粉末であって、SiC 91.8質量%と、C遊離 1.3質量%と、Si 1.8質量%と、SiO 3.7質量%と、Fe 0.4質量%と、各>300ppmの範囲のAl、V、TiおよびCaを含む不純物とを含むSiC粉末10kgを、コークス粉末180g、Si 100gおよびFe 40gと混合する。この粉末混合物は、レーザ回折法により測定された平均粒度が9.5μmである。この粉末混合物の嵩密度は、0.6g/cmである。この粉末混合物を黒鉛るつぼに充填し、加圧プランジャーを用いて50MPaで圧縮する。このるつぼを、アルゴン雰囲気下の保護ガス炉で8K/分で2500℃まで加熱し、そこで2500℃で60分間保持し、その際、1200℃~2000℃では加熱速度を3K/分に低下させて加熱する。温度処理全体の間、黒鉛るつぼの周囲に20 l/hのArガス流を流す。さらに、保護ガス炉から発生する一酸化炭素(CO)および一酸化ケイ素(SiO)を排出する。
【0111】
全体として2.5K/分の速度で冷却を行う。冷却後、粉末状のるつぼ内容物をエアミルにて0.1MJ/kgで処理し、選別ステップの後、粒子径が<10μm、10~60μm、>60μmの3種の粉末に分割する。機械的処理前のSiC粉末は、SiC含有量が97.8質量%であり、特に金属不純物は出発粉末と同じオーダーの濃度で存在する。エアミルで機械的に処理した後、粒子径が>60μmの粉末は、SiC 99.1質量%のSiC含有量を有する。SiおよびSiOの含有量はそれぞれ0.22質量%であり、C遊離の含有量は0.12質量%であり、Feの含有量は0.16質量%であり、その他の金属不純物の含有量はいずれもそれぞれ明らかに<100ppmであった。合一した他の2種の粉末では、8.6倍の量の不純物が検出された。
【0112】
「清浄な」フラクションの熱処理および機械的精製後の平均粒度は、92.7μmである。よって、これらの粒子は、保護ガス炉に投入された出発材料に比べて平均で9.75倍の大きさである。
【0113】
本発明による方法の結果、「清浄な」フラクションは、81質量%の質量分率を有する。
【0114】
熱処理された粉末は、機械的処理前には、二次粒子を多く有しており、二次粒子の繋ぎ目には不純物が蓄積されていた。機械的処理後に、「清浄な」フラクションは、ほぼ一次粒子のみを含む。これらの粒子では、粒子表面の凸状に形成された部分、および加えられた機械的な力によって二次粒子が一次粒子に戻った箇所に、主にFeSiから構成される島状または断片的な島状の金属溶融物が存在する。残りの二次粒子は、相互貫入した粒子間凝集体の繋ぎ目に不純物を有する。これらの不純物がSiC粒子に堅固に付着した状態で存在することがSEMで検出された。汚染されたフラクションには、不純物が、本明細書中で説明した形状に加え、粉末状でも存在する。
【0115】
実施例2
SiC加工の副生成物としてのSiC粉末であって、SiC 95.8%と、C遊離 0.2%と、Si 1.2%と、SiO 1.2%と、Fe 1.4%と、>100ppmの範囲のAl、V、TiおよびCaを含む不純物とを含むSiC粉末10kgを、コークス粉末80gと混合する。この粉末混合物は、レーザ回折法により測定された平均粒度が41.5μmである。るつぼに導入した粉末混合物は、圧縮ステップ後に1.3g/cmの密度を有する。るつぼを、アルゴン雰囲気下の保護ガス炉で、70000Paの負圧で5K/分で2000℃まで加熱し、6K/分で2300℃まで加熱し、この温度で180分間保持する。温度処理全体の間、黒鉛るつぼの周囲に0.5 l/hのArガス流を流す。さらに、1200℃~2000℃の温度範囲で保護ガス炉から発生する一酸化炭素(CO)および一酸化ケイ素(SiO)を排出する。
【0116】
2K/分で室温までの冷却を行う。1200℃~800℃の範囲では、8K/分の速度で冷却を行う。
【0117】
冷却後でかつ機械的処理の前に、SiC粉末は、SiC含有量が96.1質量%である。金属不純物の存在する量に変化はない。
【0118】
粉末状のるつぼ内容物をミルにて0.3MJ/kgで処理し、篩い分け後に、粒子径が<40μm、40~63μm、63~125μm、125~250μm、>250μmの5種の粉末に分割する。次いで、粒子径<40および40~63μmの粉末を混合して1つのフラクションとし、粒子径63~125μm、125~250および>250μmの粉末を混合して第2のフラクションとする。「清浄な」フラクションは、粒子径が63~125μm、125~250μm、および>250μmのフラクションであり、SiC 98.8%のSiC含有量を有する。SiおよびSiOの含有量はそれぞれ0.2%であり、C遊離の含有量は0.14%であり、Feの含有量は0.25%であり、その他の金属不純物の含有量はいずれも明らかに<50ppmに低下させることができた。粒子径が<40μmおよび40~63μmの「汚染された」フラクションでは、「清浄な」フラクションに比べ13.8倍の量の不純物が認められる。
【0119】
「清浄な」フラクションの熱処理および機械的精製後の平均粒度は、100.4μmである。よって、これらの粒子は、保護ガス炉に投入された出発材料に比べて平均で2.4倍の大きさである。
【0120】
本発明による方法の結果、「清浄な」フラクションは、82.5質量%の質量分率を有する。
【0121】
熱処理された粉末は、機械的処理前には、二次粒子を多く有しており、二次粒子の繋ぎ目には不純物が蓄積されていた。機械的処理後に、「清浄な」フラクションは、ほぼ一次粒子のみを含む。これらの粒子では、粒子表面の平坦なおよび凸状に形成された部分、および加えられた機械的な力によって二次粒子が一次粒子に戻った箇所に、FeSiおよびFeSiから構成される金属溶融物の断片が存在する。残りの二次粒子は、相互貫入した粒子間凝集体の繋ぎ目に同じケイ化物を有する不純物を有する。これらの不純物がSiC粒子に堅固に付着した状態で存在することがSEM-EDXで検出された。「汚染された」フラクションには、不純物が、本明細書中で説明した形状に加え、粉末状でも存在する。
【0122】
実施例3
SiC加工の副生成物としてのダスト状SiC粉末10kgであって、これは、SiC 98.5質量%と、C遊離 0.3質量%と、Si 0.6質量%と、SiO 0.4質量%と、Fe 0.1質量%と、>100ppmの範囲のAl、V、TiおよびCaを含む不純物とを含む。この粉末に、Fe 20gを混入する。この粉末混合物は、レーザ回折法により測定された平均粒度が16.4μmである。この粉末バルクをるつぼに入れ、振動板を用いて>1.2g/cmの密度に圧縮する。るつぼを、窒素雰囲気下の炉で、窒素流量10 l/分で0.9バールの負圧にて5K/分で1800℃まで加熱し、そこから3K/分で2400℃まで加熱する。2400℃で100分間保持する。
【0123】
10K/分の速度で冷却を行う。
【0124】
冷却後、粉末状のるつぼ内容物をミルにて1MJ/kgで処理し、次いで沈降により、密度が2.5~3.9g/cmの3種の粉末に分割する。
【0125】
機械的処理前のSiC粉末は、SiC含有量が99.5質量%であり、特に金属不純物は出発粉末と同じオーダーの濃度で存在する。
【0126】
ミルで機械的に処理した後、密度が3.2g/cmの粉末は、SiC 99.8質量%を有するため、「清浄な」フラクションを形成する。Siの含有量は0.03質量%であり、SiOの含有量は0.02質量%であり、C遊離の含有量は0.11質量%であり、Feの含有量は0.02質量%であり、その他の金属不純物の含有量はいずれも明らかに<20ppmに低下させることができた。
【0127】
密度が2.5g/cmの粉末と密度が3.9g/cmの粉末とを合一し、これが「汚染された」フラクションを形成する。このフラクションには、「清浄な」フラクションと比べて10.4倍の量の不純物が認められる。
【0128】
清浄なフラクションの熱処理および機械的精製後の平均粒度は、59.7μmである。よって、これらの粒子は、保護ガス炉に投入された出発材料に比べて平均で3.6倍の大きさである。
【0129】
本発明による方法の結果、「清浄な」フラクションは、84質量%の質量分率を有する。
【0130】
熱処理された粉末は、機械的処理前には、二次粒子を多く有しており、二次粒子の繋ぎ目には不純物が蓄積されていた。機械的処理後に、「清浄な」フラクションは、ほぼ一次粒子のみを含む。これらの粒子では、粒子表面の凸状に形成された部分、および加えられた機械的な力によって二次粒子が一次粒子に戻った箇所に、FeSiから構成される島状の金属溶融物が存在する。残りの二次粒子は、相互貫入した粒子間凝集体の繋ぎ目に不純物を有する。これらの不純物がSiC粒子に堅固に付着した状態で存在することがSEMで検出された。金属不純物は、SiC粒子表面に対して30~75°の接触角を有しており、これは、粉末粒子の研磨片の画像分析評価により明らかとなった。「汚染された」フラクションには、不純物が、本明細書中で説明した形状に加え、粉末状でも存在する。
【0131】
実施例4
SiC加工の副生成物としてのダスト状SiC粉末であって、SiC 97.5質量%と、C遊離 0.4質量%と、Si 0.6質量%と、SiO 0.5質量%と、Fe 0.2質量%と、>100ppmの範囲のAl、V、TiおよびCaを含む不純物とを含むSiC粉末10kgに、鉄粉末100gおよびSi粉末60gを混合する。この粉末混合物は、レーザ回折法により測定された平均粒度が16.4μmである。この粉末混合物の嵩密度は、1g/cmである。この粉末混合物を、黒鉛るつぼにルーズに充填する。このるつぼを、真空下の炉で、7.5K/分で2050℃まで加熱し、そこで2050℃で270分間保持する。
【0132】
10K/分の速度で冷却を行う。
【0133】
冷却後、粉末状のるつぼ内容物をミルにて0.2MJ/kgで処理し、電界での表面電位の違いにより2つのフラクションに分割する。
【0134】
機械的処理前のSiC粉末は、SiC含有量が98.3%であり、特に金属不純物は出発粉末と同じオーダーの濃度で存在する。
【0135】
ミルで機械的に処理した後、「清浄な」フラクションは、SiC 99.2質量%を有する。清浄なフラクションにおいて、SiおよびSiOの含有量は、それぞれ0.3質量%および0.2質量%であり、C遊離の含有量は0.2質量%であり、Feの含有量は0.1質量%であり、その他の金属不純物の含有量はいずれも明らかに<100ppmに低下させることができた。「汚染された」フラクションには、「清浄な」フラクションと比べて9.6倍の量の不純物が認められる。
【0136】
「清浄な」フラクションの熱処理および機械的精製後の平均粒度は、33μmである。よって、これらの粒子は、保護ガス炉に投入された出発材料に比べて平均で2倍の大きさである。
【0137】
本発明による方法の結果、「清浄な」フラクションは、87質量%の質量分率を有する。
【0138】
熱処理された粉末は、機械的処理前には、二次粒子を多く有しており、二次粒子の繋ぎ目には不純物が蓄積されていた。機械的処理後に、「清浄な」フラクションは、ほぼ一次粒子のみを含む。これらの粒子では、粒子表面の凸状に形成された部分、および加えられた機械的な力によって二次粒子が一次粒子に戻った箇所に、FeSi、FeSi、およびFeSiから構成される島状の金属溶融物が存在する。残りの二次粒子は、相互貫入した粒子間凝集体の繋ぎ目に不純物を有する。これらの不純物がSiC粒子に堅固に付着した状態で存在することがTEMで検出された。「汚染された」フラクションには、不純物が、本明細書中で説明した形状に加え、粉末状でも存在する。
【0139】
実施例5
SiC原材料製造の副生成物としての粉末状SiC粉末であって、SiC 92.6質量%と、C遊離 2.75質量%と、Si 0.1質量%と、SiO 3.5質量%と、Fe 0.2質量%と、>400ppmの範囲のAl、V、TiおよびCaを含む不純物とを含むSiC粉末10kgに、砂150gおよびグラファイト粉末25gを混合する。この粉末混合物は、レーザ回折法により測定された平均粒度が100μmである。この粉末混合物を、黒鉛るつぼにルーズに充填し、次いで>1g/cmに圧縮する。このるつぼを、アルゴン雰囲気下の保護ガス炉で5K/分で1900℃まで加熱し、その際、70000Paの負圧となるよう圧力を調整する。1900℃で、この温度を180分間保持する。
【0140】
25K/分の速度で冷却を行う。
【0141】
冷却後、粉末状のるつぼ内容物をミルにて0.1MJ/kgで処理し、直列に接続されたサイクロンを用いて、粒子径が<20μm、20~70μm、>70μmの3種の粉末に分割する。
【0142】
機械的処理前のSiC粉末は、SiC含有量が98.3質量%であり、特に金属不純物は出発粉末と同じオーダーの濃度で存在する。
【0143】
ミルで機械的に処理した後、粒子径が>70μmの「清浄な」フラクションとしての粉末は、SiC含有量が98.5質量%である。SiおよびSiOの含有量は、それぞれ0.1質量%および0.1質量%であり、C遊離の含有量は1質量%であり、Feの含有量は0.1質量%であり、その他の金属不純物の含有量はいずれも明らかに<200ppmに低下させることができた。
【0144】
粒子径が<20μmである粉末と、粒子径が20~70μmである粉末とを合一して、「汚染された」フラクションとした。「汚染された」フラクションには、「清浄な」フラクションと比べて2.3倍の量の不純物が認められる。
【0145】
「清浄な」フラクションの熱処理および機械的精製後の平均粒度は、125μmである。よって、これらの粒子は、保護ガス炉に投入された出発材料に比べて平均で1.25倍の大きさである。
【0146】
本発明による方法の結果、「清浄な」フラクションは、90質量%の質量分率を有する。
【0147】
熱処理された粉末は、機械的処理前には、二次粒子を多く有しており、二次粒子の繋ぎ目には不純物が蓄積されていた。機械的処理後に、「清浄な」フラクションは、ほぼ一次粒子のみを含む。これらの粒子では、粒子表面の凸状に形成された部分、および加えられた機械的な力によって二次粒子が一次粒子に戻った箇所に、ケイ素およびバナジウムの炭化物およびケイ化物から構成される島状の金属溶融物が存在する。残りの二次粒子は、相互貫入した粒子間凝集体の繋ぎ目に不純物を有する。これらの不純物がSiC粒子に堅固に付着した状態で存在することがSEM-EDXで検出された。「汚染された」フラクションには、不純物が、本明細書中で説明した形状に加え、粉末状でも存在する。