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特許7562688カーボンナノチューブからの鉄除去及び金属触媒リサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブからの鉄除去及び金属触媒リサイクル
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/17 20170101AFI20240930BHJP
【FI】
C01B32/17
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022550722
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 US2021019229
(87)【国際公開番号】W WO2021173549
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】62/980,513
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521257466
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイラス,デービッド
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-527844(JP,A)
【文献】特開2006-182572(JP,A)
【文献】特開昭46-000151(JP,A)
【文献】特開2005-001980(JP,A)
【文献】特開2014-201831(JP,A)
【文献】特表2003-535794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 21/00-39/74
B01D 53/94
JSTPlus/JStchina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ構造材料を精製する方法であって、
(a)ある量の未精製カーボンナノ構造材料を得る工程であって、前記未精製カーボンナノ構造材料は、金属触媒粒子及び非晶質炭素構造で汚染されている、工程と、
(b)前記未精製カーボンナノ構造材料を約150℃~約500℃の温度での二酸化炭素への曝露によって酸化する工程であって、前記酸化は、前記非晶質炭素構造を除去して、二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び一酸化炭素を形成する、工程と、
(c)前記二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料を、工程(b)で生成された少なくとも一酸化炭素を含む流動ガスに曝露する工程であって、前記二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び前記流動ガスの温度を約20℃から約200℃に上昇させて、精製されたカーボンナノ構造材料と揮発性金属種を含むガス流とを生成する工程と、
(e)前記精製されたカーボンナノ構造材料から前記ガス流を移送する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
ある量の未精製カーボンナノ構造材料が、浮遊触媒化学蒸着プロセスから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属触媒粒子が鉄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)における酸化が、約0.01~100気圧の範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び前記流動ガスの温度が、少なくとも150℃に上昇される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(c)における流動ガスの圧力が少なくとも50バールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記揮発性金属種がペンタカルボニル鉄を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
さらに、(f)ガス流を凝縮器に通過させて前記ペンタカルボニル鉄を凝縮させる工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝縮したペンタカルボニル鉄が、新しい量の未精製カーボンナノ構造材料を生成するために、前記浮遊触媒化学蒸着プロセスに再循環される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス流を前記凝縮器に通過させることが、前記凝縮器から退出する一酸化炭素の流れを生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記一酸化炭素の流れが、工程(c)の流動ガスに添加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記精製されたカーボンナノ構造材料が、約10重量%未満の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記精製されたカーボンナノ構造材料が、約10重量%未満の非晶質炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カーボンナノ構造材料が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はその両方を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年2月24日に出願された米国仮特許出願第62/980,513号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が後援する研究又は開発に関する声明
本発明は、DOE、Office of ARPA-Eにより与えられたDE-AR0001017の下で政府の支援を受けて為された。政府は、この発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
分野
本開示は、概して、カーボンナノチューブを実質的に損傷又は破壊することなく、金属触媒及び非晶質炭素の粒子などの、その製造中に形成された不純物を除去することによって、カーボンナノチューブを含むカーボンナノ構造材料を精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
鉄、ニッケル及びコバルトナノ粒子は、カーボンナノチューブの開始及び成長を促進するための触媒として頻繁に使用される。これは、林立成長、浮遊床、HIPCO、レーザアブレーション、アーク及び浮遊触媒化学蒸着法を含む、ほとんどのカーボンナノチューブ合成法に当てはまる。浮遊触媒化学蒸着を含むこれらの方法の多くでは、カーボンナノチューブの作製に成功した金属ナノ粒子が、それらが作製したナノチューブに付着したままであり、典型的には、カーボンナノチューブの成長を開始するには大きすぎる又は小さすぎるために、成功しなかった金属ナノ粒子は、作製されたままのナノチューブ材料の一部として捕捉される。一旦カーボンナノチューブが形成されると、これらの残留金属ナノ粒子は、カーボンナノチューブの特性に有用な寄与を有さず、実際には、典型的には、作製されたままのナノチューブ材料において、寄生質量とみなされ、又はさらに悪くは、化学的若しくは物理的に望ましくないとみなされる。同様に、これらの方法はまた、ナノチューブの形態ではない、作製されたままのナノチューブ材料中の様々な量の炭素材料の生成を伴う。以下では、この非ナノチューブ炭素材料を「非晶質炭素」と称する。
【0005】
ナノチューブに損傷を与えることなく残留金属粒子及び非晶質炭素を除去することは、困難であり得る。典型的な方法は、高温(即ち、1600℃を超える)での真空又は不活性ガスベークアウト、部分酸化と、それに続く、露出した金属又は金属酸化物の酸又はエッチャントによる溶解、及びハロゲン含有ガスとの反応による気相除去を含む。これらの方法の各々は、欠陥の形成、有益な炭素材料の除去、又は黒鉛化若しくは他の方法によるナノチューブ自体の変化によって、ナノチューブを損傷させ得る。
【0006】
従って、精製されたカーボンナノチューブを調製するための効率的かつ安全な方法が必要とされており、特に、方法は、カーボンナノチューブを損傷又は破壊することなく、低~中程度の温度及び圧力で非晶質炭素及び金属触媒不純物を効率的に除去するべきである。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本開示は、カーボンナノチューブの精製方法に関する。カーボンナノチューブ製造の既知の方法は、残留金属触媒粒子と、金属触媒粒子を取り囲み、カーボンナノチューブの側面に現れる少量の非晶質炭素シートとを含む不純物に加えてカーボンナノチューブを含む
カーボンナノ構造材料をもたらす。本開示の精製方法は、カーボンナノチューブを損傷又は破壊することなく、異質の非晶質炭素、及び金属含有残留触媒粒子を実質的に除去する。
【0008】
従って、一態様によれば、本開示は、カーボンナノ構造材料の精製方法に関し、この方法は、(a)ある量の作製されたままの未精製カーボンナノ構造材料を得る工程であって、未精製カーボンナノ構造材料は、カーボンナノチューブを含み、金属触媒粒子及び他の非ナノチューブ(即ち、非晶質)炭素構造で本質的に汚染されている、工程と、(b)未精製カーボンナノ構造材料を高温での二酸化炭素への曝露によって酸化する工程であって、酸化は、非ナノチューブ炭素構造を除去して、二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び一酸化炭素を形成する、工程と、(c)二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料を、工程(b)で生成された少なくとも一酸化炭素を含む流動ガスに曝露する工程と、(d)二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び流動ガスの温度を約20℃から約200℃に上昇させて、精製されたカーボンナノ構造材料と揮発性金属種を含むガス流とを生成する工程と、(e)精製されたカーボンナノ構造材料からガス流を移送する工程と、を含む。
【0009】
さらなる態様では、精製カーボンナノ構造材料からガス流が移送された後、ガス流を凝縮器に通過させて揮発性金属種を凝縮させ、一酸化炭素を分離する。次いで、金属種を回収し、新しい作製されたままの未精製カーボンナノ構造材料を形成するプロセスにリサイクルする場合があり、一酸化炭素は、工程(c)の流動ガス中にリサイクルされる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本開示の態様に関連した、ナノ構造の製造のための浮遊触媒化学蒸着システムの概略図を示す。
図1B図1Aに示したシステムに関連して使用するためのインジェクタ装置の概略図である。
図1C】本開示の態様に関連した、ナノ構造の製造のためのプラズマ発生器を利用する浮遊触媒化学蒸着システムの概略図を示す。
図1D図1Cのシステムに関連して使用するのに適したプラズマ発生器の概略図である。
図2】本開示の方法の様々な工程の流れ図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一般に、製造プロセスで使用された金属触媒と、製造プロセスで生成された非晶質炭素とが実質的に除去された、高度に精製されたカーボンナノ構造材料の製造方法を提供する。一態様において、精製されたカーボンナノ構造材料は、未精製ナノ構造材料の製造に使用された約10重量%未満の金属を含む。別の態様では、精製されたカーボンナノ構造材料は、約8重量%未満のそのような金属、又は約7重量%未満のそのような金属、又は約6重量%未満のそのような金属、又は約5重量%未満のそのような金属、又は約2.5重量%未満のそのような金属、又は約1重量%未満のそのような金属、又は約0.5重量%未満のそのような金属、又はさらには約0.1重量%未満のそのような金属を含む。さらに、本開示の一態様では、精製されたカーボンナノ構造材料は、約10重量%未満の非晶質炭素を含む。別の態様では、精製されたカーボンナノ構造材料は、約5重量%未満の非晶質炭素、又は約2重量%未満の非晶質炭素、又は約1重量%未満の非晶質炭素、又は約0.5重量%未満の非晶質炭素、又はさらには約0.1重量%未満の非晶質炭素を含む。
【0012】
上記の精製されたカーボンナノ構造材料は、(a)カーボンナノチューブ、金属不純物
及び非晶質炭素を含む、ある量の作製されたままの未精製カーボンナノ構造材料を得る工程と、(b)作製されたままの未精製カーボンナノ構造材料を、二酸化炭素を含むガス雰囲気中で酸化して、一酸化炭素及び二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料を形成する工程と、(c)二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料を、工程(b)で形成された少なくとも一酸化炭素を含む流動ガスに暴露する工程と、(d)二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料及び流動ガスの温度を約20℃から約200℃の最高温度まで上昇させて、精製されたカーボンナノ構造材料と揮発性金属種を含むガス流とを生成する工程と、(e)精製されたカーボンナノ構造材料からガス流を移送する工程とを一般に含む方法によって製造される場合がある。本開示の方法は、浮遊触媒化学蒸着プロセスから製造される未精製カーボンナノ構造材料に関連して使用するのに特に適している。しかしながら、本方法はまた、他の金属触媒プロセスによって製造される未精製カーボンナノ構造材料に関連した使用にも容易に適合可能である。
【0013】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
【0014】
用語「含む」及びその派生語は、本明細書に開示されているか否かにかかわらず、いずれの追加の成分、工程又は手順の存在も排除することを意図するものではない。対照的に、用語「から本質的になる」は、本明細書に現れる場合、操作性に必須ではないものを除いて、いずれの後続の列挙の範囲からも、いずれの他の成分、工程又は手順も除外し、用語「からなる」は、使用される場合、具体的に描写又はリストされないいずれの成分、工程又は手順も除外する。用語「又は」は、特に明記しない限り、リストされたメンバーを個々に、及びいずれかの組み合わせで指す。
【0015】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0016】
「一態様において」、「一態様によれば」などの語句は、一般に、その語句に続く特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの局面に含まれ、本開示の2つ以上の局面に含まれる場合があることを意味する。重要なことに、このような語句は、必ずしも同じ局面を指すわけではない。
【0017】
本明細書が、成分又は特徴が含まれ又は特性を有する「場合がある」、「ことができる」、「し得る」、又は「可能性がある」と述べる場合、その特定の成分又は特徴は、含まれ又は特徴を有することを必要とされない。
【0018】
本明細書では、炭素から合成された未精製ナノ構造材料を参照するが、本開示の方法で使用するためのナノ構造材料の合成に関連して、他の化合物を使用してもよいことに留意されたい。例えば、ホウ素から合成された未精製ナノ構造材料も、同様のシステムにおいて、しかし異なる化学前駆体を使用して生成され、次いで、ナノ構造材料を精製するために本開示の方法に供される場合があることが理解される。
【0019】
さらに、本開示は、未精製ナノ構造材料を生成するために浮遊触媒化学蒸着(「CVD」)プロセスを使用する。浮遊触媒CVDプロセスのための成長温度は、比較的低い範囲、例えば約400℃~約1400℃であり得るので、カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)又はその両方が成長する場合がある。SWNT及びMWNTの両方が成長する場合があるが、特定の例では、より高い成長速度と、取扱い、安全性及び強度の利点を提供する場合があるロープを形成する傾向とにより、SWNTが好ましい場合がある。
【0020】
ここで図1Aを参照すると、カーボンナノチューブ、金属不純物、及び非晶質炭素を含
む未精製カーボンナノ構造材料を得る場合があるシステム10が示されている。システム10は、対向する端部111及び112を有するハウジング11(即ち、炉)と、端部111と112の間に延在する通路113とを含む。内部でカーボンナノ構造材料が生成される場合がある管12(即ち、反応器)は、ハウジング11の通路113内に位置する場合がある。図1Aに示すように、管12の端部121及び122は、それらがハウジング11の端部111及び112から各々延びるように配置される場合がある。ハウジング11は、管12内のカーボンナノチューブの成長に必要な約1000℃~約1500℃の範囲の温度を生成するための加熱要素又は機構(図示せず)を含む場合がある。加熱要素はカーボンナノ構造材料の合成中に管12内の温度環境を特定の範囲内に維持しなければならないので、図示されないが、システム10は、管12内の温度環境を監視するために、管12の外部に熱電対を含む場合がある。例えば約1100℃~約1400℃の管12内の温度範囲の維持は、断熱構造123の使用によって最適化される場合がある。断熱構造123は、例えば、ジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)から作製される場合がある。他の断熱材料も使用される場合がある。
【0021】
ハウジング11及び管12は、温度及びガス反応性環境の変動に耐えなければならないので、ハウジング11及び管12は、実質的に耐腐食性の、強く実質的にガス不透過性の材料から製造される場合がある。ハウジング11及び管12は、例えば、Macor(登録商標)機械加工可能ガラスセラミックなどの石英又はセラミック材料から作製されて、増強された衝撃吸収を提供する場合がある。もちろん、ハウジング11及び管12がガスに対して依然として不透過性であり、それらの非腐食性を維持することができる限り、他の材料も使用される場合がある。また、円筒形状で示されているが、ハウジング11及び管12は、いずれの幾何学的断面も提供される場合がある。
【0022】
システム10はまた、管12内で生成されたナノ構造材料を収集するために、管12の端部121と流体連通する収集ユニット13を含む場合がある。管12の反対側の端部122において、システム10は、管12と流体連通するインジェクタ装置14(即ち、噴霧器)を含む場合がある。インジェクタ14は、管12内のナノ構造材料の成長に必要な成分の流体混合物をリザーバ15から受け取るように設計される場合がある。インジェクタ14はまた、ナノ構造材料の生成及び成長のために、混合物を管12内に導く前に、混合物を気化又は流動化する(即ち、小さな液滴を生成する)ように設計される場合がある。
【0023】
流体混合物は、一態様において、とりわけ、(a)金属触媒前駆体(そこから金属触媒粒子が生成して、その上でナノ構造材料がその後成長し得る)、(b)金属触媒前駆体から生成される金属触媒粒子の粒径分布、ひいてはナノ構造材料の直径を制御するための調整化合物、及び(c)ナノ構造材料を成長させるために金属触媒粒子上に炭素原子を堆積させるための炭素源を含むことができる。
【0024】
そこから金属触媒粒子が生成される場合がある金属触媒前駆体の例は、鉄若しくは鉄合金などのフェロセン材料、ニッケル、コバルト、それらの酸化物、又はそれらの合金(又は他の金属若しくはセラミックとの化合物)を含む。代替的に、金属触媒粒子は、Fe、Fe、若しくはFeOなどの金属酸化物、コバルト若しくはニッケルの類似の酸化物、又はそれらの組み合わせから作製される場合がある。
【0025】
本開示の流体混合物に関連して使用するための調整化合物の例は、チオフェン、HS、他のイオウ含有化合物、又はそれらの組み合わせを含む。
【0026】
本開示の流体混合物に関連して使用するための炭素源の例は、エタノール、ギ酸メチル、プロパノール、酢酸、ヘキサン、メタノール、又はメタノールとエタノールのブレンド
を含むが、これらに限定されない。C、CH、及びCHを含む他の液体炭素源も使用される場合がある。
【0027】
ここで図1Bを参照すると、インジェクタ14の詳細な図が示されている。インジェクタ14は、経路142を画定する実質的に管状のチャンバ141を含み、経路142に沿って、気化した流体混合物が生成され、反応管12内に導かれる場合がある。混合物を気化又は流動化するために、インジェクタ14は、リザーバ15から導入される流体混合物から小さな液滴を生成するために、ベンチュリ効果を与えるように設計された噴霧管16を含む場合がある。流体混合物の気化又は流動化は、流体が噴霧管16の遠位端161を通って退出するときに実質的に起こる場合があることを認識するべきである。生成された液滴は、サイズがナノスケールからマイクロスケールまでの範囲である場合がある。気化された流体混合物を噴霧管16に沿って反応管12内に導くために、H、He又はいずれかの他の不活性ガスなどの一定量のガスを使用して、気化された流体を反応管12に向かって押し出す場合がある。
【0028】
実質的に管状として図示されているが、インジェクタ14は、インジェクタが噴霧管16を収容することができ、気化された流体混合物がそれに沿って反応管12内に導かれることができる経路を提供する限り、いずれの幾何学的設計を備えてもよいことを認識するべきである。
【0029】
さらに、インジェクタ14は、流体混合物の一部として供給するのではなく、インジェクタ14内への流体混合物の個々の成分の導入を可能にするように設計される場合があることに留意するべきである。そのような態様では、各成分は、管16と同様の噴霧管を通して個別に気化され、インジェクタ14内に導入される場合があり、そこでそれらは混合され、続いて上述したのと同様の方法でインジェクタ14に沿って導かれる場合がある。
【0030】
インジェクタ14が反応管12及び炉11の一部分内に位置しているので、管12及び炉11内で発生した熱が、インジェクタ14内の温度環境に悪影響を及ぼす場合がある。インジェクタ14を反応管12及び炉11内の熱から遮蔽するために、インジェクタ14の周りに断熱パッケージ17を設ける場合がある。特に、断熱パッケージ17は、インジェクタ14の長さに沿って温度環境を保つように作用する場合がある。
【0031】
断熱パッケージ17の存在により、インジェクタ14内の温度環境は、カーボンナノ構造材料を成長させるために必要な様々な反応に影響を及ぼし得る範囲まで低下する場合がある。そのため、インジェクタ14は、金属触媒前駆体からの金属触媒粒子の形成を可能にするのに十分な温度範囲を提供するために、噴霧管16の下流に位置する加熱ゾーンAも含む場合がある。加熱ゾーンAは、噴霧管16の遠位端161の下流に位置する第1のヒータ18を含む場合がある。ヒータ18は、金属触媒前駆体をその構成原子に分解するのに必要な温度範囲に、例えばTp1において維持するために設けられる場合があり、原子は、その後、その上でナノ構造が成長する場合がある金属触媒粒子にクラスター化される場合がある。Tp1の温度範囲を、金属触媒前駆体を分解するのに必要なレベルに維持するために、一態様では、ヒータ18はTp1のわずかに下流に位置する場合がある。フェロセンが前駆体として使用される態様では、実質的にナノスケールサイズのその構成原子(即ち、鉄粒子)は、Tp1での温度が約200℃~約300℃の範囲に維持されることができるときに生成される場合がある。
【0032】
加熱ゾーンAは、第1のヒータ18の下流、かつ炉11内に配置された第2のヒータ19をさらに含む場合がある。ヒータ19は、例えば、調整化合物をその構成原子に分解するのに必要な温度範囲に、例えばTp2において維持するために設けられる場合がある。これらの原子は、金属触媒粒子のクラスターの存在下で、クラスターと相互作用して、金
属触媒粒子の粒径分布、ひいては生成されるナノ構造の直径を制御することができる。チオフェンが調整化合物として使用される態様では、チオフェンの分解時に硫黄が放出されて、金属触媒粒子のクラスターと相互作用する場合がある。ヒータ19は、一態様では、Tp2での温度範囲を約700℃~約950℃に維持し、このような範囲をヒータ19のわずかに下流の位置で維持するように設計される場合がある。
【0033】
一態様によれば、Tp2は、Tp1から所望の距離に位置する場合がある。様々なパラメータが関与し得るため、Tp1からTp2までの距離は、金属触媒前駆体の分解が起こるTp1からTp2までの流体混合物の流れが、調整化合物の分解の量を最適化して、金属触媒微粒子の粒径分布を最適化することができるような距離であるべきである。
【0034】
インジェクタ14内の第1のヒータ18及び第2のヒータ19によって生成される特定の温度ゾーンに加えて、噴霧管16の遠位端161における温度も、インジェクタ14内の特定の範囲内に維持されて、噴霧管16の遠位端161を通って退出するときの気化流体混合物の凝縮又は流体混合物の不均一な流れのいずれかを回避する必要がある場合があることを認識するべきである。一態様では、遠位端161における温度は、約100℃~約250℃に維持される必要がある場合がある。例えば、温度が示された範囲を下回る場合、インジェクタ16の壁面に沿って流体混合物の凝縮が起こる場合がある。その結果、インジェクタ16から反応管12内に導かれる流体混合物は、リザーバ15から導入される混合物のものと実質的に異なる場合がある。例えば、温度が示された範囲を上回る場合、遠位端161で流体混合物の沸騰が起こる場合があり、スパッタリング及びインジェクタ14への流体の不均一な流れがもたらされる。
【0035】
インジェクタ14は、その長さに沿って温度勾配を維持する必要がある場合があるので、噴霧管16の遠位端161の凝縮を最小限にするために、又は必要なTp1での温度を維持して金属触媒前駆体の分解を可能にするために、又はTp2での温度を維持して調整化合物の分解を可能にするために、断熱パッケージ17は、反応管12及び炉11からの熱を遮蔽することに加えて、各々の重要な位置においてインジェクタ14に沿った所望の温度勾配を維持するように作用することができる。
【0036】
一態様において、断熱パッケージ17は、石英若しくは同様の材料から、又はジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)などの多孔質セラミック材料から作製される場合がある。もちろん、他の断熱材料も使用される場合がある。
【0037】
引き続き図1Bを参照すると、システム10は少なくとも1つの入口を含む場合があり、該入口を通してキャリアガスが反応管12内に導入される場合がある。管12内へのキャリアガスの導入は、インジェクタ14からの退出に続いて、流体混合物を管12に沿って移動させるのを助ける場合がある。さらに、インジェクタ14を退出するときに流体混合物に関連した乱流又は渦流を最小限に抑えることが望ましい場合があるため、キャリアガスは反応管12に沿って、及びインジェクタ14の外面に沿って流れることができる場合がある。一態様では、キャリアガスは、混合物がインジェクタ14を退出するときに、流体混合物の速度と実質的に同様の速度で流れることができて、流体混合物が実質的に層流を維持することを可能にする場合がある。実質的に層流を維持することによって、生成されるナノ構造の成長及び強度が最適化される場合がある。一態様では、キャリアガスは、H、He又はいずれかの他の不活性ガスである場合がある。
【0038】
流体混合物がインジェクタ14を退出するときの乱流又は渦流をさらに最小限にするために、断熱パッケージ17は、インジェクタ14の遠位端の周りに実質的に先細の設計を備える場合がある。代替的に、又は追加的に、インジェクタ14の遠位端の周りに延長部(図示せず)が配置されて、流体混合物がインジェクタの遠位端を退出するときに、イン
ジェクタ14の中心から実質的に半径方向に離れるように流体混合物の流れを拡張する場合がある。そのような延長部の存在は、流体混合物の流速を遅くし、流れパターンが実質的に層状のままであることを可能にすることができる。
【0039】
インジェクタ14は、流体混合物がインジェクタ14に沿って移動するときに、Tp1において金属触媒前駆体を分解し、Tp2において調整化合物を分解するように設計される場合があることを認識するべきである。しかしながら、流体混合物がインジェクタ14に沿って移動するときに、ナノ構造成長に必要な炭素源は分解されず、実質的に化学的に変化しないままである場合がある。
【0040】
しかしながら、インジェクタ14の遠位端は、図1A~Bに見られるように、炉11内に突出しているため、炉11内、ひいては反応管12内の実質的により高い温度範囲への近接は、その後のナノ構造成長のために、インジェクタ14の遠位端を通って退出する際に、炭素源を分解するのに必要な温度範囲に直ちに炭素源を曝露することができる。一態様では、インジェクタの遠位端と炉11との間の界面142における温度範囲は、約1000℃~約1250℃である場合がある。
【0041】
図1Cを参照すると、インジェクタ14の遠位端の周りにプラズマ発生器130が配置される場合がある。この方法で、流体混合物は、反応管12に入る前に、プラズマ発生器130のプラズマ火炎132を通過させる場合がある。一態様では、プラズマ発生器130とインジェクタ14との間の接合部の周りに、及びプラズマ発生器130と反応管12との間に、流体混合物中のガス及び粒子がシステム10から漏出するのを防止するための気密シール又は液密シールを設ける場合がある。一態様では、プラズマ発生器130は、インジェクタ14からプラズマ発生器130を通る流体混合物のための効率的な流路を提供するために、インジェクタ14の管状チャンバ141と軸方向又は直線的に整合される場合がある。一態様では、プラズマ発生器130とインジェクタ14との整合は、流体混合物がプラズマ発生器130の実質的に中央を通過することを可能にするようなものである。いくつかの態様では、これは、プラズマ火炎130の外側領域よりも均一な温度プロファイルを有する場合がある、プラズマ火炎132の中央領域を通過する流体混合物をもたらす場合がある。プラズマ発生器130はまた、反応管12と軸方向又は直線的に整合される場合がある。
【0042】
一態様では、プラズマ発生器130は、プラズマ火炎132の形態の集中エネルギーを提供して、流体混合物の温度をインジェクタ14内の温度範囲よりも高い温度に上昇させる場合がある。一態様では、プラズマ発生器130は、ナノ構造成長の活性化のために、炭素源をその構成原子に分解するのに十分なレベルまで、流体混合物の温度を上昇させることができる。一態様では、プラズマ発生器130は、約1200℃~約1700℃で動作する場合がある。プラズマ火炎132の温度はインジェクタ14内の温度よりも実質的に高いため、プラズマ火炎132によって生成される熱は、インジェクタ14内の温度環境に悪影響を及ぼす場合がある。そのために、プラズマ発生器は、プラズマ火炎132が生成されるプラズマ発生器130の領域とインジェクタ14との間に位置する熱シールド160(図1D参照)を備えて、インジェクタ14の長さに沿った温度環境を保つ場合がある。一態様では、熱シールド160は、ジルコニアセラミック繊維(例えば、ジルコニア安定化窒化ホウ素)などの多孔質セラミック材料から作製される場合がある。もちろん、他の断熱材料も使用される場合がある。
【0043】
プラズマ発生器130は、濃縮エネルギーを流体混合物に提供することによって炭素源のより迅速な分解を開始させる場合があるため、一態様では、より短い反応管12、炉11、又はその両方を使用し、依然として十分な長さのナノチューブを生成する場合がある。もちろん、所望される程度まで、反応管12、炉11、又はその両方は、プラズマ発生
器を有さないシステムにおけるものと同様の、又はより長い長さを備える場合がある。一態様では、プロセスにおけるプラズマ発生器130の利用は、より長いカーボンナノチューブの生成を可能にする場合がある。
【0044】
また、いくつかの態様では、インジェクタ14及びプラズマ発生器130は、最小限の熱で、又は反応管12内の追加の熱なしで利用される場合があることに留意するべきである。また、流体混合物の移動距離にわたって所望の温度勾配を提供するために、システム10内にて複数のプラズマ発生器が利用される場合があることに留意するべきである。
【0045】
図1Dは、プラズマ発生器130の一態様を示す。一態様では、プラズマ発生器130は、直流(DC)発電機である場合がある。プラズマ発生器130は、アノード152及びカソード154を含む場合があり、これらは、電極152、154から離れるように熱を伝達するためのヒートシンクとして作用する場合がある水又は別の冷却流体又は別の材料によって冷却することができる。一態様では、電極152、154は、典型的には銅又は銀で作製されるような、高拡散金属電極である場合がある。プラズマガスは、アノード152及びカソード154の周りを流れる場合があり、アノード152とカソード154との間で開始される電気アーク156によってイオン化されて、プラズマ火炎132を生成する場合がある。適切なプラズマガスは、反応性又は非反応性のいずれかである場合があり、アルゴン酸素、窒素、ヘリウム、水素又は別のガスを含む場合があるが、これらに限定されない。一態様では、プラズマ発生器130は、アーク156を回転させるための磁場を生成するための1つ以上のヘルムホルツコイル158又は別のデバイスを含む場合がある。このような態様では、アノード152及びカソード154は、アーク156の回転を容易にするために環状形状を備える場合がある。図1Dは、プラズマ発生器の1つの適切な態様を示すが、プラズマ発生器の他の設計及びタイプ(即ち、無線周波、交流及び他の放電プラズマ発生器)が実装されてもよい。
【0046】
一態様では、ヘルムホルツコイル158を使用して、反応器チャンバ12内のプラズマ発生器130の下流のナノチューブのインサイチュ整合のための電磁場又は静電場を生成することができる。追加的又は代替的に、プラズマ発生器130によって生成される電磁場は、カーボンナノチューブに対してトルクを発生させることによって、反応管12の軸に向かってカーボンナノチューブを偏向させ、カーボンナノチューブをそのような軸に向かって詰め込むように作用することができる。一態様では、プラズマ発生器130はまた、カーボンナノチューブの雲が反応管12を通って進むにつれて、カーボンナノチューブの雲をより小さい半径方向体積に押し込む又は集束させるように設計することができる。一態様では、カーボンナノチューブが成長する粒子は、粒子が静電力に応答できるように、粒子帯電器(particle charger)によって帯電させることができる。
【0047】
2つ以上のプラズマ発生器130が使用される程度まで、プラズマ発生器の電磁場強度及び位置は、カーボンナノチューブを整合するように最適化され得る。追加的又は代替的に、発電機は、互いに直線的に整合される場合があり、連続する下流の各プラズマ発生器は、より強い静電場を生成するように構成される場合があり、その結果、流れているカーボンナノチューブの雲を、より小さい半径方向体積に向かって強制し又は凝縮させると共に、カーボンナノチューブを反応管12と実質的に軸方向に整合するように移動させる。いくつかの態様では、連続するプラズマ発生器を使用して、流れの加速又は減速を制御することもでき、ナノチューブがフィラメント状の形状に向かって半径方向に凝縮することを可能にする。カーボンナノチューブの流れを凝縮するためのそのような手法は、カーボンナノチューブをより近接させて、隣接するナノチューブ間の接触を強化することができる。隣接するカーボンナノチューブ間の接触は、ロンドン分散力又はファンデルワールス力などのカーボンナノチューブ間の非共有相互作用を介してさらに強化することができる。
【0048】
動作中、システム10の噴霧管16と主炉11との間の領域において、いくつかのプロセスが生じる場合がある。例えば、最初に、金属触媒前駆体、調整化合物及び炭素源の流体混合物が、噴霧管16を介してリザーバ15からインジェクタ14に導入される場合がある。混合物を噴霧管16に沿って導くのを助けるために、H又はHeなどの不活性ガスを使用する場合がある。流体混合物が噴霧管16に沿って移動し、そこから退出するとき、管16は、流体混合物を蒸発させる(即ち、流体混合物から液滴を生成する)ためのベンチュリ効果を付与することができる。流体混合物が噴霧管16を退出するときの凝縮又は沸騰のいずれかの発生の最小限にするために、インジェクタ14内のそのような範囲は、約100℃~約250℃の範囲の温度レベルに維持される場合がある。
【0049】
一態様では、成長条件を最適化し、生成されるカーボンナノチューブから作製されるカーボンナノチューブ材料の強度を高めるために、炭素源のための添加剤を流体混合物に含める場合がある。添加剤の例は、C60、C70、C72、C84、及びC100を含むが、これらに限定されない。
【0050】
次いで、気化した流体混合物は、インジェクタ14に沿って第1のヒータ18に向かって進む場合があり、ここで温度がTp1において約200℃~約300℃の範囲に維持される場合があり、流体混合物内の金属触媒前駆体は、分解され、その構成原子を放出する場合がある。一態様では、金属触媒前駆体の分解温度はキャリアガス(例えば、H又はHe)に依存し得、また他の種の存在に依存する場合がある。構成原子は、続いて、特徴的なサイズ分布の金属触媒粒子にクラスター化する場合がある。金属触媒粒子のこのサイズ分布は、一般に、インジェクタ14を通って炉11内に移動する間に発達し得る。
【0051】
次に、流体混合物は、インジェクタ14に沿って第2のヒータ19に向かってさらに下流に進む場合がある。第2のヒータ19は、一態様では、Tp2においける温度を、調整化合物がその構成原子に分解する場合がある約700℃~約950℃の範囲のレベルに維持する場合がある。次いで、調整化合物の構成原子は、金属触媒粒子のクラスターと反応して、金属触媒粒子のクラスターの粒径分布をもたらす場合がある。特に、調整化合物の構成原子は、金属触媒粒子の成長を停止し、及び/又は蒸発を阻害するように作用することができる。一態様では、調整化合物の構成原子が、インジェクタ14内のHと共に金属触媒粒子のクラスターと相互作用して、金属触媒粒子の粒径分布に影響を及ぼす場合がある。
【0052】
流体混合物内の炭素源は、流体混合物がインジェクタ14の全長に沿って移動するときに、インジェクタ14内で化学的に変化せず、又はさもなければ分解されないままである場合があることを認識するべきである。
【0053】
第2のヒータ19を越えて移動した調整された金属触媒粒子は、その後、インジェクタ14の遠位端141と炉11との間の界面142を横切って移動して、反応管12の主要部分に入る場合がある。インジェクタ14を退出すると、調整された金属触媒粒子は、炭素源と共に、H又はHeなどのキャリアガスの存在下で実質的に層流を維持する場合がある。キャリアガスの存在下で、調整された金属触媒粒子は、キャリアガスの体積によって希釈される場合がある。
【0054】
さらに、反応管12の主要部分に入ると(反応管12内の温度範囲は、炭素源をその構成炭素原子に分解するのに十分なレベルに維持される場合がある)、炭素原子の存在は、ナノ構造成長を活性化し得る。一態様では、温度範囲は、約1000℃~約1250℃である場合がある。一般に、成長は、炭素原子がそれ自体を金属触媒粒子上に実質的に連続的に付着させて、カーボンナノチューブなどのナノ構造を形成するときに起こる。
【0055】
一態様では、インジェクタ14からの流体混合物は、反応管12に入る前にプラズマ発生器130を通過する場合がある。
【0056】
ナノ構造の成長は、金属触媒粒子が不活性になったとき、又は金属触媒粒子の付近の構成炭素原子の濃度が比較的低い値に低下したとき、又は温度範囲が成長のために十分なレベルに維持される反応管12内の範囲を越えて混合物が移動するにつれて温度が低下したときに終了する場合がある。
【0057】
ここで図2を参照すると、上述したようにシステム10内で流体混合物20(とりわけ、(a)金属触媒前駆体(b)調整化合物、及び(c)炭素源を含む)から生成され、カーボンナノチューブ、金属不純物及び非晶質炭素を含む未精製カーボンナノ構造材料202が容器に装入され、酸化工程210において二酸化炭素を含むガス雰囲気中で酸化されて、ナノ構造材料202から非晶質炭素を除去し、以下の反応に従って一酸化炭素を生成する:
C+CO→CO。
酸化は、少なくとも約150℃~約500℃の温度及び約0.01~100気圧の範囲の圧力で行うことができる。酸化工程210は、2つの目的を果たす。第1の目的は、ナノ構造材料202から非晶質炭素を除去し、それによって金属不純物(即ち、金属触媒粒子)を露出させることであり、この金属不純物は、特定の一態様では鉄を含み、第2の目的は、露出した鉄をペンタカルボニル鉄に変換するために使用される一酸化炭素220の生成である。
【0058】
ガス雰囲気中の二酸化炭素濃度は、約1体積%~約100体積%、又は約1体積%~約30体積%の範囲であり得る。窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを使用して、二酸化炭素濃度を希釈する場合がある。酸化時間は、約0.1時間~約20時間の範囲であり得る。より短い時間が好ましい。水蒸気を酸化ガス雰囲気に添加することもでき、水蒸気濃度は、水蒸気を導入する際に使用されるガスの飽和限界までの範囲とすることができる。ガス雰囲気中の水蒸気濃度は、約0.5体積%~約50体積%、又は約0.5体積%~約10体積%、より一般的には、約0.5体積%~約5体積%の範囲であり得る。
【0059】
非晶質炭素の除去後、二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料204は、高温/高圧ソーク工程212において、上記の酸化工程で形成された少なくとも一酸化炭素220を含む流動ガスに曝露される。
【0060】
一酸化炭素に曝露されると、二酸化炭素処理されたカーボンナノ構造材料204内に見出される金属不純物(図2に示す態様の場合は鉄)は、以下の反応に従ってペンタカルボニル鉄に変換される:
Fe+5CO(ガス)→Fe(CO)
金属との反応の速度及び完全性を助けるために、大過剰の一酸化炭素、例えば少なくとも500モルパーセントが好ましく使用され、これは、カーボンナノ構造材料204中の汚染金属と反応するのに必要な化学量論量よりもかなり多い。反応は、一般に、少なくとも100℃、又は少なくとも130℃、又はさらには少なくとも140℃、及びまた一般に、最大200℃、又は最大170℃、又はさらには最大160℃の温度で行われる。適切な温度の例は、150℃である。流動ガスの圧力は、一般に、少なくとも5MPa(50バール)、又は少なくとも10MPa(100バール)、又はさらには少なくとも12MPa(120バール)、及びまた一般に、最大25MPa(250バール)、又は最大20MPa(200バール)、又はさらには最大18MPa(180バール)である。適切な圧力の例は、15MPa(150バール)である。一酸化炭素に加えて不活性ガスが存在する場合、これらの値は、一酸化炭素分圧として設定される。
【0061】
上記で形成されたペンタカルボニル鉄は、上記の温度及び圧力下で気化し、ガス流222として取り除くことができる。次いで、工程214において、カーボンナノ構造材料206をバッチ式又は連続的に採取して、精製されたカーボンナノ構造材料生成物208を生成することができる
【0062】
さらなる態様によれば、ペンタカルボニル鉄は、循環凝縮器中で回収され、新しい未精製カーボンナノ構造材料を生成するプロセスに再循環されてもよく、そこで触媒源として使用される。従って、カーボンナノ構造材料206から取り去られたガス流222は、工程216において凝縮器に送ることができ、凝縮器はガス流222の凝縮をもたらし、重力による水からの凝縮物の分離を可能にする。分離時に、凝縮したペンタカルボニル鉄粒子224は、新しい未精製カーボンナノ構造材料を生成するためにシステム10に戻すことができる。ガス流222はまた、一般に一酸化炭素を含み、これは、もちろん、ガス流222を凝縮器に通過させるときに存在するであろう。一酸化炭素は、凝縮器の水中にある程度溶解するが、水はそれによって飽和され、そのようなガスの蒸気圧は水の外部に蓄積され、一酸化炭素が分離され、ガス流226として凝縮器から出ることを可能にし、そこで、ガス流226は、工程212のために、一酸化炭素流動ガス220に添加される場合がある。
【0063】
本開示の方法の利点は、酸化工程中にカルボニル形成工程をインサイチュで形成するのに必要な十分な一酸化炭素を生成する可能性を含むが、これに限定されない。これは、方法の全体的な炭素排出を低減する場合があるだけでなく、別個の一酸化炭素原料の必要性を低減する場合がある。
【0064】
本発明の様々な態様を作製及び使用することを上記で詳細に説明してきたが、本発明は非常に様々な特定の状況において具現化できる多くの適用可能な発明概念を提供することを認識するべきである。本明細書で論じた特定の態様は、本発明を作製及び使用するための特定の方法の単なる例示であり、本発明の範囲を定めるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2